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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】自己位置推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/30 20060101AFI20241105BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20241105BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
G01C21/30
G09B29/00 Z
G09B29/10 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021028396
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022129641
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 雄一郎
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/115945(WO,A1)
【文献】特開2020-125960(JP,A)
【文献】特開2020-034772(JP,A)
【文献】特開2020-034771(JP,A)
【文献】特開2020-034452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/30
G09B 29/00
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周辺に存在する物体の情報である周辺物体情報を取得する周辺物体情報取得部と、
地図情報と、動的物体の情報である動的物体情報と、が記憶された記憶部と、
前記移動体の周辺に前記動的物体が存在するか否かを判定する動的物体判定部と、
前記地図情報と前記周辺物体情報との照合により前記地図情報における前記移動体の位置を推定する自己位置推定部と、を備え、
前記動的物体情報は、前記動的物体の形態が変化しない固定部分の情報である固定部分情報と、前記動的物体の形態が変化する可動部分の情報である可動部分情報と、を有し、
前記動的物体判定部は、前記周辺物体情報と前記固定部分情報との照合により前記移動体の周辺に前記動的物体が存在するか否かを判定し、
前記自己位置推定部は、前記動的物体判定部が前記移動体の周辺に前記動的物体が存在すると判定した場合前記地図情報と、前記周辺物体情報から前記動的物体に対応する部分を除外した周辺物体情報との照合により前記地図情報における前記移動体の位置を推定する、
自己位置推定装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記固定部分情報が同じで前記可動部分情報が異なる複数の前記動的物体情報を記憶している、
請求項1に記載の自己位置推定装置。
【請求項3】
前記周辺物体情報取得部は、レーザーレーダである、
請求項1又は2に記載の自己位置推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の位置を推定する自己位置推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、CCDカメラ及びレーザーポインタを用いて自分の位置を測定する自己位置認定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平07-071978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転等の分野では、SLAM(Simultaneous Localizationand Mapping)等の技術において自己位置推定が行われている。SLAMでは、例えば、レーザーレーダの一種であるLiDAR(Light Detection and Ranging)によって移動体の周囲に存在する物体を周辺物体情報(レーザー点群)として取得し、この取得した周辺物体情報を地図情報(点群)に照合することで、移動体の自己位置を推定する。しかしながら、地図情報に含まれない動的物体が移動体の周囲に存在すると、地図情報と周辺物体情報との照合により移動体の自己位置を推定できない可能性がある。つまり、動的物体に対するロバスト性が低いという問題がある。
【0005】
ここで、周辺物体情報から動的物体に対応する部分を除外して、地図情報と周辺物体情報とを照合することも考えられる。しかしながら、ダンプトラック等の動的物体は、形態が変化する可動部分を有するため、可動部分が可動すると、周辺物体情報における動的物体に対応する部分を推定することが難しくなる。
【0006】
そこで、本発明は、移動体の周辺に動的物体が存在している場合の位置推定精度を向上することができる自己位置推定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る自己位置推定装置は、移動体の周辺に存在する物体の情報である周辺物体情報を取得する周辺物体情報取得部と、地図情報と、動的物体の情報である動的物体情報と、が記憶された記憶部と、移動体の周辺に動的物体が存在するか否かを判定する動的物体判定部と、地図情報と周辺物体情報との照合により地図情報における移動体の位置を推定する自己位置推定部と、を備え、動的物体情報は、動的物体の形態が変化しない固定部分の情報である固定部分情報と、動的物体の形態が変化する可動部分の情報である可動部分情報と、を有し、動的物体判定部は、周辺物体情報と固定部分情報との照合により移動体の周辺に動的物体が存在するか否かを判定し、自己位置推定部は、動的物体判定部が移動体の周辺に動的物体が存在すると判定した場合、周辺物体情報から動的物体に対応する部分を除外して、地図情報と周辺物体情報との照合により地図情報における移動体の位置を推定する。
【0008】
この自己位置推定装置では、周辺物体情報と固定部分情報との照合により移動体の周辺に動的物体が存在するか否かを判定するため、動的物体の可動部分が形態変化していても、移動体の周辺に動的物体が存在するか否かを判定することができる。そして、移動体の周辺に動的物体が存在すると判定した場合に、周辺物体情報から動的物体に対応する部分を除外して、地図情報と周辺物体情報との照合により地図情報における移動体の位置を推定するため、移動体の周辺に動的物体が存在している場合の移動体の位置推定精度を向上することができる。
【0009】
記憶部は、固定部分情報が同じで可動部分情報が異なる複数の動的物体情報を記憶していてもよい。この自己位置推定装置では、記憶部が、固定部分情報が同じで可動部分情報が異なる複数の動的物体情報を記憶していることで、地図情報と周辺物体情報とを照会する際に、動的物体の形態に応じて、周辺物体情報から動的物体に対応する部分を除外することができる。これにより、移動体の周辺に動的物体が存在している場合の移動体の位置推定精度を更に向上することができる。
【0010】
周辺物体情報取得部は、レーザーレーダであってもよい。この自己位置推定装置では、周辺物体情報取得部がレーザーレーダであることで、周辺物体情報を高精度に取得することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、移動体の周辺に動的物体が存在している場合の位置推定精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る自己位置推定装置を示すブロック構成図である。
図2】可動物体の形態変化を説明するための模式図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、可動部分の形態が異なる動的物体の例を示す模式図。
図4】移動体の周辺に動的物体が存在している例を示す模式図である。
図5】移動体の周辺に存在する動的物体を除外した例を示す模式図である。
図6】自己位置推定装置の処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、実施形態に係る自己位置推定装置を示すブロック構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る自己位置推定装置1は、移動体2に搭載されて、移動体2の位置を推定するための装置である。自己位置推定装置が搭載される移動体2としては、特に限定されないが、例えば、自動車、バイク等が挙げられる。自己位置推定装置1は、周辺物体情報取得部3と、記憶部4と、制御部5と、を備える。
【0015】
周辺物体情報取得部3は、移動体2の周辺に存在する物体の情報である周辺物体情報を取得する。周辺物体情報取得部3としては、例えば、LiDAR等のレーザーレーダ、ミリ波センサ、カメラなどを用いることができる。本実施形態では、周辺物体情報取得部3はLiDARであるものとして説明する。LiDARである周辺物体情報取得部3は、レーザー光線を利用して移動体2の周囲の物体を検出する。周辺物体情報取得部3は、レーザー光線を移動体2の周囲に送信し、物体で反射されたレーザー光線を受信することで、移動体2の周囲に存在する物体が、レーザー点群(ライダー点群)として検出される。このレーザー点群が、周辺物体情報となる。
【0016】
記憶部4は、地図情報Aと、動的物体情報Bと、を記憶している。地図情報Aは、移動体2の位置の推定に必要となる、建物の位置及び形状、道路の位置及び形状等の情報である。地図情報Aは、周辺物体情報と照合可能な情報であり、例えば、周辺物体情報取得部3が周辺物体情報として取得するレーザー点群と照合可能な点群の情報である。動的物体情報Bは、移動体2の周囲に存在する可能性のある動的物体の情報である。動的物体情報Bは、周辺物体情報と照合可能な情報であり、例えば、周辺物体情報取得部3が周辺物体情報として取得するレーザー点群と照合可能な点群の情報である。
【0017】
ところで、図2に示すように、動的物体10は、形態が変化しない固定部分11と、形態が変化する可動部分12と、を有している。例えば、ダンプトラックの場合、車体が固定部分11となり、車体に対して傾動する荷台が可動部分12となる。また、クレーン車の場合、車体が固定部分11となり、車体に対して傾動及び伸縮するクレーン部分が可動部分12となる。また、ショベルカーの場合、車体が固定部分11となり、車体に対して傾動及び屈曲するショベル部分が可動部分12となる。
【0018】
そこで、動的物体情報Bは、動的物体10の形態が変化しない固定部分11の情報である固定部分情報b1と、動的物体10の形態が変化する可動部分12の情報である可動部分情報b2と、を有している。固定部分情報b1及び可動部分情報b2は、周辺物体情報と照合可能な情報であり、例えば、周辺物体情報取得部3が周辺物体情報として取得するレーザー点群と照合可能な点群の情報である。
【0019】
また、記憶部4は、固定部分情報b1が同じで可動部分情報b2が異なる複数の動的物体情報Bを記憶している。例えば、記憶部4は、図3(a)に示す動的物体10の情報である動的物体情報Bと、図3(b)に示す動的物体10の情報である動的物体情報Bと、を記憶している。図3(a)及び図3(b)では、動的物体10の固定部分11を実線部分で示しており、動的物体10の可動部分12を破線部分で示している。図3(a)及び図3(b)では、動的物体10としてダンプトラックを示しており、ダンプトラックの車体が固定部分11となっており、ダンプトラックの荷台が可動部分12となっている。図3(a)の動的物体情報Bと図3(b)の動的物体情報Bとは、固定部分11である車体の情報である固定部分情報b1が同じであるが、可動部分12である荷台の情報である可動部分情報b2が異なっている。具体的には、図3(a)に示す動的物体情報Bの可動部分情報b2は、車体に対して傾動していない形態の荷台の情報となっており、図3(b)に示す動的物体情報Bの可動部分情報b2は、車体に対して傾動した形態の荷台の情報となっている。
【0020】
制御部5は、CPU、ROM、RAM等を有する電子制御ユニット(ECU)である。制御部5では、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することで、各種の制御を実行する。制御部5は、単一の電子制御ユニットにより構成されていてもよく、複数の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。制御部5は、動的物体判定部6と、自己位置推定部7と、を有する。なお、動的物体判定部6と自己位置推定部7とは、同じ電子制御ユニットにより構成されていてもよく、別の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。
【0021】
動的物体判定部6は、移動体2の周辺に動的物体10が存在するか否かを判定する。つまり、動的物体判定部6は、周辺物体情報取得部3が取得した周辺物体情報と記憶部4に記憶されている動的物体情報Bの固定部分情報b1との照合により、移動体2の周辺に動的物体10が存在するか否かを判定する。例えば、公知のパターンマッチング技術等により、記憶部4に記憶されている全ての動的物体情報Bの固定部分情報b1を、周辺物体情報取得部3が取得した周辺物体情報に照合する。そして、周辺物体情報に、少なくとも一つの固定部分情報b1に対応する部分が見つかった場合、移動体2の周辺に動的物体10が存在すると判定する。一方、周辺物体情報に、何れの固定部分情報b1にも対応する部分が見つからなかった場合、移動体2の周辺に動的物体10が存在しないと判定する。そして、動的物体判定部6は、判定結果を自己位置推定部7に送信する。
【0022】
自己位置推定部7は、地図情報Aと周辺物体情報との照合により地図情報Aにおける移動体2の位置を推定する。例えば、公知のパターンマッチング技術等により、周辺物体情報取得部3が取得した周辺物体情報を、記憶部4に記憶されている地図情報Aに照合することで、地図情報Aにおける移動体2の位置を推定する。
【0023】
このとき、図4に示すように、移動体2の周辺に動的物体10が存在していると、地図情報Aと周辺物体情報との照合により地図情報Aにおける移動体2の位置を推定することが難しくなる。そこで、自己位置推定部7は、動的物体判定部6が移動体2の周辺に動的物体10が存在すると判定した場合、図5に示すように、周辺物体情報から動的物体10に対応する部分を除外して、地図情報Aと周辺物体情報との照合により地図情報Aにおける移動体2の位置を推定する。つまり、動的物体判定部6が移動体2の周辺に動的物体10が存在すると判定した場合、周辺物体情報から動的物体10の固定部分11及び可動部分12の双方に対応する部分を除外して、地図情報Aと周辺物体情報との照合により地図情報Aにおける移動体2の位置を推定する。このような推定は、例えば、周辺物体情報から動的物体10に対応する部分を除去した照合用周辺物体情報を生成し、この生成した照合用周辺物体情報と地図情報Aとを照合することにより行うことができる。
【0024】
次に、図6を参照して、自己位置推定装置1の処理動作の一例について説明する。
【0025】
まず、周辺物体情報取得部3が、移動体2の周辺に存在する物体の情報である周辺物体情報を取得する(ステップS1)。
【0026】
次に、動的物体判定部6が、周辺物体情報取得部3が取得した周辺物体情報と記憶部4に記憶されている動的物体情報Bの固定部分情報b1とを照合し(ステップS2)、移動体2の周辺に動的物体10が存在するか否かを判定する(ステップS3)。
【0027】
移動体2の周辺に動的物体10が存在しないと判定すると(ステップS3:NO)、自己位置推定部7は、地図情報Aと周辺物体情報との照合により地図情報Aにおける移動体2の位置を推定する(ステップS5)。
【0028】
一方、移動体2の周辺に動的物体10が存在すると判定すると(ステップS3:YES)、自己位置推定部7は、周辺物体情報から動的物体10に対応する部分を除外して(ステップS4)、地図情報Aと周辺物体情報との照合により地図情報Aにおける移動体2の位置を推定する(ステップS5)。
【0029】
以上説明したように、本実施形態に係る自己位置推定装置1では、周辺物体情報と固定部分情報b1との照合により移動体2の周辺に動的物体10が存在するか否かを判定するため、動的物体10の可動部分12が形態変化していても、移動体2の周辺に動的物体10が存在するか否かを判定することができる。そして、移動体2の周辺に動的物体10が存在すると判定した場合に、周辺物体情報から動的物体10に対応する部分を除外して、地図情報Aと周辺物体情報との照合により地図情報Aにおける移動体2の位置を推定するため、移動体2の周辺に動的物体10が存在している場合の移動体2の位置推定精度を向上することができる。
【0030】
また、記憶部4が、固定部分情報b1が同じで可動部分情報b2が異なる複数の動的物体情報Bを記憶していることで、地図情報Aと周辺物体情報とを照会する際に、動的物体10の形態に応じて、周辺物体情報から動的物体10に対応する部分を除外することができる。これにより、移動体2の周辺に動的物体10が存在している場合の移動体2の位置推定精度を更に向上することができる。
【0031】
また、周辺物体情報取得部3がレーザーレーダであることで、周辺物体情報を高精度に取得することができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。例えば、上記実施形態では、記憶部に、固定部分情報が同じで可動部分情報が異なる2つの動的物体情報が記憶されているものとして説明したが、可動部分の形態変化が複雑である場合等は、これらの動的物体情報を記憶部に3以上記憶していてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…自己位置推定装置、2…移動体、3…周辺物体情報取得部、4…記憶部、5…制御部、6…動的物体判定部、7…自己位置推定部、10…動的物体、11…固定部分、12…可動部分、A…地図情報、B…動的物体情報、b1…固定部分情報、b2…可動部分情報。
図1
図2
図3
図4
図5
図6