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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】高分子洗浄用組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241105BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20241105BHJP
   C11D 7/28 20060101ALI20241105BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20241105BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
H01L21/308 G
C11D7/28
C11D7/50
C11D7/32
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021041403
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2021158352
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0036615
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】房,淳洪
(72)【発明者】
【氏名】崔,慶默
(72)【発明者】
【氏名】姜,ハンビョル
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-509777(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0016430(KR,A)
【文献】特表2010-515246(JP,A)
【文献】特表2015-505886(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0148904(US,A1)
【文献】特開2019-157106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
H01L 21/308
H01L 21/027
C11D 7/00
C11D 7/26
C11D 7/28
C11D 7/32
C11D 7/50
B08B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化アルキル化合物、極性非プロトン性溶媒、およびアミン化合物を含み、
前記アミン化合物は、非環状2級アミン化合物または非環状3級アミン化合物を含むものであ
前記アミン化合物は、下記化学式1~3のいずれか1つで表される化合物である、高分子洗浄用組成物。
【化1】
(前記化学式1において、
およびR は、それぞれ独立して、C2~C8の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基であり、R およびR が同一の場合、R およびR は、C4~C8の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基である)
【化2】
(前記化学式2において、
~R は、それぞれ独立して、C1~C8の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基である)
【化3】
(前記化学式3において、nは、3~6の整数である)
【請求項2】
前記フッ化アルキル化合物は、下記化学式4-1または下記化学式4-2のいずれか1つで表される化合物を1種以上含むものである、請求項1に記載の高分子洗浄用組成物。
【化4-1】
(前記化学式4-1において、
~Rは、それぞれ独立して、C3~C10のアルキル基である)
【化4-2】
(前記化学式4-2において、
10~R12は、それぞれ独立して、C1~C10のアルキル基である)
【請求項3】
前記極性非プロトン性溶媒は、ケトン系、アセテート系、アミド系、ピリジン系、モルホリン系、ピロリドン系、ウレア系、ホスフェート系、スルホキシド系、ニトリル系、カーボネート系、オキサゾリドン系、およびピペラジン系溶媒からなる群より選択される1種以上を含むものである、請求項1に記載の高分子洗浄用組成物。
【請求項4】
前記アミン化合物は、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリイソブチルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジエチルブチルアミン、ジイソブチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ジアミノブタン、およびN,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサンからなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載の高分子洗浄用組成物。
【請求項5】
前記アミン化合物は、沸点が140℃~300℃である、請求項1に記載の高分子洗浄用組成物。
【請求項6】
前記高分子洗浄用組成物は、シリコーン系高分子を除去するものである、請求項1に記載の高分子洗浄用組成物。
【請求項7】
組成物の総重量に対して、
前記フッ化アルキル化合物0.1~20重量%;
前記極性非プロトン性溶媒60~99.89重量%;および
前記アミン化合物0.01~20重量%を含む、請求項1に記載の高分子洗浄用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン系高分子を除去するための高分子洗浄用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造工程において、半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」ともいう)の表面に電子回路などを形成した後、ウエハの厚さを薄くするためにウエハの裏面研削(いわゆる、バックグラインディング)を行う場合がある。この場合、ウエハの回路面の保護、ウエハの固定などのために、通常ウエハの回路面に接着ポリマー(例えば、シリコーン高分子など)を介在して支持体を付着させる。支持体をウエハの回路面に付着させれば、ウエハの裏面研削後に厚さが薄くなったウエハを補強することができ、ウエハの研削面に裏面電極などを形成することもできる。
【0003】
前記ウエハの裏面研削、裏面電極形成などの工程が完了すれば、ウエハの回路面から支持体を除去し、接着ポリマーを剥離して除去し、ウエハを切断してチップを作製する。
【0004】
一方、最近は、ウエハを貫通して設ける貫通電極(例えば、シリコン貫通電極)を用いたチップ積層技術が開発されている。このチップ積層技術によれば、従来のワイヤの代わりに貫通電極を用いて複数のチップの電子回路を電気的に接続するため、チップの高集積化、動作の高速化を図ることができる。このチップ積層技術を利用する場合、複数のチップが積層された集合体の厚さを薄くするためにウエハの裏面研削を行う場合が多く、それによって、支持体や接着ポリマーを用いる機会が増加する。
【0005】
ところが、通常、ウエハの回路面に接着ポリマーを介在して支持体を付着させた後、前記ウエハと支持体との強固な付着のために熱硬化を実施するため、接着ポリマーを剥離する場合、硬化した接着ポリマーが支持体およびウエハの回路面に残存する場合が発生する。そのため、前記ウエハの回路面に残存する硬化した接着ポリマーを効率的に除去する手段が必要である。また、高分子の洗浄時、金属の腐食による金属膜やバンプボールの損傷が誘発される場合があり、問題を生じかねない。
【0006】
大韓民国公開特許第10-2014-0060389号は、接着ポリマー除去用組成物に関する発明であるが、網状型高分子に対する除去速度が遅いという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】大韓民国公開特許第10-2014-0060389号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題点を改善するためのものであって、半導体製造工程においてウエハの回路面に残存する接着ポリマーを金属の腐食なく効率的かつ迅速に除去できる高分子除去用組成物を提供することを目的とする。
【0009】
しかし、本願が解決しようとする課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は以下の記載から通常の技術者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、フッ化アルキル化合物、極性非プロトン性溶媒、およびアミン化合物を含み、前記アミン化合物は、非環状2級アミン化合物または非環状3級アミン化合物を含むものである、高分子洗浄用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非環状2級または3級アミンを含むことにより、高分子除去速度が向上した高分子洗浄用組成物を提供することができ、本発明の高分子洗浄用組成物は、特に、シリコーン系高分子を速い速度で除去することができ、この時、金属の腐食による金属膜やバンプボールの損傷を最小化することができる効果を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、フッ素化合物、溶媒、およびアミン化合物を含む高分子洗浄用組成物に関し、前記フッ素化合物がフッ化アルキル化合物であり、前記溶媒が極性非プロトン性溶媒であり、前記アミン化合物が非環状2級アミン化合物または非環状3級アミン化合物であることを特徴とする。
本発明において、アルキル基は、単結合によって連結された炭化水素基を意味する。
【0013】
<高分子洗浄用組成物>
本発明の高分子洗浄用組成物は、フッ化アルキル化合物、極性非プロトン性溶媒、およびアミン化合物を含むことができ、その他の添加剤を追加的に含んでもよいし、前記高分子洗浄用組成物は、特にシリコーン系高分子を除去するものである。
前記高分子は特に限定されるものではないが、シリコーン系高分子であることが好ましい。具体的には、前記シリコーン系高分子は、線状または網状型高分子を含み、例えば、線状の非反応性ポリジメチルシロキサン系高分子だけでなく、硬化により網状型高分子を形成するポリオルガノシロキサン樹脂を含むことができる。
【0014】
本発明の組成物は特に、本発明のフッ化アルキル化合物がシリコーン高分子を分解して溶解させる作用により、線状高分子だけでなく、網状型高分子も除去可能であることを特徴とする。
本発明の組成物は、本発明のアミン化合物によって本発明の組成物のpHが適正水準に調整されることにより、高分子の洗浄時、金属の腐食による金属膜やバンプボールの損傷を防止する効果を有し、前記損傷防止対象となる金属は、Sn、Sn/Ag合金、およびSn/Au合金のうちの1つ以上であるが、これに限定されない。
【0015】
また、本発明に係る高分子洗浄用組成物は、人為的に水が投入されないものであって、実質的に水を含まないことが好ましいが、必要に応じてフッ化アルキル化合物の水和物が使用可能であり、これによって結果的に少量の水を含むことができる。この場合、前記水は、組成物の総重量に対して、4重量%未満で含まれ、前記含有量範囲を超える場合、高分子除去性が低下し、金属の腐食が増加する問題が発生することがある。
さらに、本発明の高分子洗浄用組成物は、アルコール系化合物などのように分子構造内にヒドロキシド(-OH)グループを含む化合物を含まないことが好ましい。分子構造内にヒドロキシドグループを含む場合、フッ素化合物の活性を阻害してシリコーン樹脂の除去性を低下させる問題が発生することがある。
【0016】
(A)フッ化アルキル化合物
本発明の高分子洗浄用組成物は、フッ化アルキル化合物を含み、高分子洗浄用組成物における前記フッ化アルキル化合物は、高分子(シリコーン高分子)の環を切って分子量を減少させる役割を果たす。
本発明において、フッ化アルキル化合物は、フッ化アルキルアンモニウムを含むものであってもよく、具体的には、下記化学式4-1または下記化学式4-2のいずれか1つで表される化合物を1種以上含むものであってもよい。
【0017】
【化4-1】
【0018】
前記化学式4-1において、R~Rは、それぞれ独立して、C3~C10のアルキル基である。前記R~RがC2以下の場合、溶媒に対するフッ素化合物の溶解度が低下して、混合して直ちに析出物が発生したり、やや時間が経過する場合に析出が発生する問題が発生することがある。
【0019】
【化4-2】
【0020】
前記化学式4-2において、R10~R12は、それぞれ独立して、C1~C10のアルキル基である。
例えば、前記フッ化アルキル化合物としては、テトラブチルアンモニウムビフルオライド(TBAF・HF)、テトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)、テトラオクチルアンモニウムフルオライド(TOAF)、またはベンジルトリメチルアンモニウムフルオライド(BTMAF)などが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上が共に使用できる。
【0021】
また、前記フッ化アルキルアンモニウムが水和物の形態で存在する場合、例えば、テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオライドハイドレート、テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオライドトリハイドレート、ベンジルトリメチルアンモニウムフルオライドハイドレートなどがあり得る。
前記フッ化アルキル化合物は、前記高分子洗浄用組成物の総重量に対して、0.1~20重量%含まれ、好ましくは0.5~17重量%含まれる。前記フッ素化合物が0.1重量%未満で含まれる場合、電子部品などに付着した高分子(シリコーン系樹脂)を効果的に除去できない問題が発生することがあり、20重量%を超える場合、特に水和物形態のフッ化アルキルアンモニウムを使用する時に水分含有量が増加して、むしろシリコーン樹脂などの高分子除去性能が低下し、フッ化物の増加による金属膜質の腐食の問題が発生することがある。
【0022】
(B)極性非プロトン性溶媒
本発明の高分子洗浄用組成物は、極性非プロトン性溶媒を含み、前記極性非プロトン性溶媒は、シリコーン高分子を膨張させ、フッ素化合物と分解されたシリコーン高分子を溶解させる役割を果たす。
一方、一般的に知られた溶媒である水またはアルコール系化合物(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、イソプロピルアルコールなど)の場合、フッ素イオンと水素結合をして高分子の除去が困難なため、本発明に係る高分子洗浄用組成物の溶媒は、実質的に水およびアルコール系化合物を含まないことが好ましい。
【0023】
前記極性非プロトン性溶媒は、ケトン系、アセテート系、アミド系、ピリジン系、モルホリン系、ピロリドン系、ウレア系、ホスフェート系、スルホキシド系、ニトリル系、カーボネート系、オキサゾリドン系、およびピペラジン系溶媒からなる群より選択される1種以上を含むものであってもよい。
【0024】
具体的には、前記ケトン系溶媒は、下記化学式5-1で表される化合物を含むものであってもよい:
【0025】
【化5-1】
【0026】
前記化学式5-1において、R13およびR14は、それぞれ独立して、C1~C18の直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族炭化水素であり、R13およびR14の炭素数の合計は、2個以上30個未満であることが好ましい。
【0027】
例えば、前記ケトン系溶媒としては、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、4-メチル-2-ペンタノン、5-メチル-2-ヘキサノン、2,6-ジメチル-4-ヘキサノンなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0028】
具体的には、前記アセテート系溶媒としては、例えば、メチルアセテート、エチルアセテート(EA)、プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、N-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、sec-ブチルアセテート、アミルアセテート、ペンチルアセテート、イソペンチルアセテート、オクチルアセテート、ベンジルアセテート、フェニルアセテート、エトキシエチルアセテート、メトキシブチルアセテート(MBA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ビニルアセテート、またはエチルエトキシプロピオネート(EEP)などがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0029】
具体的には、前記アミド系溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジプロピルアセトアミド、N-エチル-N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルブチルアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N,N-ジメチルペンタンアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド、またはN,N-ジブチルプロパンアミドなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0030】
具体的には、前記ピリジン系溶媒は、下記化学式5-2で表される化合物を含むものであってもよい:
【0031】
【化5-2】
【0032】
前記化学式5-2において、R15~R17は、それぞれ独立して、水素、C1~C10の直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族炭化水素基、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、アルデヒド基(-CHO)、アセトアルデヒド基(-COCH)、C1~C4のアルコキシ基、ビニル基、アセチレン基、シアノ基(-CN)、またはメチルスルフィド基(-SCH)であってもよい。
【0033】
例えば、前記ピリジン系溶媒としては、ピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、4-エチルピリジン、4-プロピルピリジン、4-イソプロピルピリジン、4-アミルピリジン、2,3-ルチジン、2,4-ルチジン、2,5-ルチジン、3,4-ルチジン、3,5-ルチジン、または2,4,6-トリメチルピリジンなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
具体的には、前記モルホリン系溶媒は、下記化学式5-3で表される化合物を含むものであってもよい:
【0034】
【化5-3】
【0035】
前記化学式5-3において、R18は、水素;C1~C6の直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族炭化水素基;ビニル基;シアノ基(-CN);3級アミンによって置換されたC1~C4の脂肪族炭化水素基;C1~C4のアルキル基、シアノ基(-CN)、ハロゲン基(例えば、F、Cl、Br、I)、またはアルデヒド基(-CHO)によって置換されたフェニル基またはピリジン基であり、Xは、酸素または-NR19-であり、R19は、C1~C4の脂肪族炭化水素基である。
【0036】
例えば、前記モルホリン系溶媒としては、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-アリールモルホリン、N-ブチルモルホリン、N-イソブチルモルホリンなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0037】
具体的には、前記ピロリドン系溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、またはN-ビニルピロリドン(NVP)などがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0038】
具体的には、前記ウレア系溶媒は、下記化学式5-4で表される化合物を含むものであってもよい:
【0039】
【化5-4】
【0040】
前記化学式5-4において、Xは、酸素または-NR19-であり、R19およびR20は、それぞれ独立して、C1~C6の直鎖、分枝鎖もしくは環状脂肪族炭化水素基;またはビニル基、フェニル基、アセチレン基、メトキシ基、またはジメチルアミノ基が置換されたC1~C4の脂肪族炭化水素基である。
【0041】
例えば、前記ウレア系溶媒としては、テトラメチルウレア、テトラエチルウレア、テトラブチルウレアなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0042】
具体的には、前記ホスフェート系溶媒は、下記化学式5-5で表される化合物を含むものであってもよい:
【0043】
【化5-5】
【0044】
前記化学式5-5において、R21~R23は、それぞれ独立して、C1~C8の直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族炭化水素基;隣接する酸素と共に環を形成するC3~C8の2価の脂肪族炭化水素基;非置換もしくはC1~C4の脂肪族炭化水素基によって置換されたフェニル基;ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)によって置換されたC2~C4の脂肪族炭化水素基またはハロゲンによって置換されたフェニル基である。前記C1~C8の直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族炭化水素基に含まれる-CH-は、酸素原子で置換されていてもよい。
【0045】
例えば、前記ホスフェート系溶媒としては、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリアミルホスフェート、トリアリールホスフェート(triallyl phosphate)などがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0046】
具体的には、前記スルホキシド系溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジブチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、ジベンジルスルホキシド、またはメチルフェニルスルホキシドなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0047】
具体的には、前記ニトリル系溶媒としては、例えば、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、アセトニトリル、トリメチルアセトニトリル、またはフェニルアセトニトリルなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0048】
具体的には、前記カーボネート系溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート(PC)、またはビニレンカーボネートなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0049】
具体的には、前記オキサゾリドン系溶媒としては、例えば、2-オキサゾリドン、3-メチル-2-オキサゾリドンなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0050】
具体的には、前記ピペラジン系溶媒としては、例えば、ジメチルピペラジン、ジブチルピペラジンなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0051】
一方、本発明の極性非プロトン性溶媒は、後述する非環状3級アミンを含まない。
前記極性非プロトン性溶媒は、高分子洗浄用組成物の総重量に対して、60~99.89重量%含まれ、好ましくは68~99.45重量%含まれる。前記極性非プロトン性溶媒が60重量%未満で含まれると、金属膜質が腐食する問題が発生することがあり、99.89重量%を超える場合は、電子部品に付着したシリコーン系樹脂を効果的に除去できない問題が発生することがある。
【0052】
(C)アミン化合物
本発明の高分子洗浄用組成物は、アミン化合物を含み、前記アミン化合物は、非環状2級アミン化合物または非環状3級アミン化合物であることを特徴とし、シリコーン高分子の膨潤を促進させ、フッ化アルキル化合物の溶解性を向上させて除去速度を促進させる役割を果たす。また、本発明のアミン化合物は、本発明の高分子洗浄用組成物のpHを適正水準に調節して腐食防止効果を示す。
【0053】
このようなアミン化合物の高分子洗浄用組成物中における機能を極大化するために、特定の構造を有するアミン化合物が本発明により適合し、一例として、シリコーン高分子を膨潤させる機能は、アミンのアルキル基の炭素数が多いほど有利であり、フッ化アルキル化合物の溶解性を向上させるためにはアミンのアルキル基の炭素数が小さいほど有利である。また、フッ化アルキル化合物のイオン化が良くなるほど腐食はより多く発生し、これと相互補完的な効果によって洗浄効果は改善され、腐食も緩和するアミン化合物として、下記の特定の構造を有するアミン化合物が好ましい。
【0054】
具体的には、本発明の前記アミン化合物は、下記化学式1~3のいずれか1つで表される化合物のうちのいずれか1つで表される化合物を含むことができる。
【0055】
【化1】
【0056】
前記化学式1において、RおよびRは、それぞれ独立して、C1~C8の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基であり、RおよびRが同一の場合、RおよびRは、C4以上のアルキル基であることが好ましい。
【0057】
さらに好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、C2~C8の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基であり、RおよびRが同一の場合、RおよびRは、C4~C8の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基であってもよい。
【0058】
【化2】
【0059】
前記化学式2において、R~Rは、それぞれ独立して、C1~C8の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基である。
【0060】
【化3】
【0061】
前記化学式3において、nは、3~6の整数である。
【0062】
また、前記アミン化合物は、沸点が140℃以上であることが好ましく、140℃~300℃であることがさらに好ましい。前記アミン化合物が化学式1~3を満たすと同時に、沸点が140℃以上の場合、揮発成分を最小化して工程の適用が容易であり得る。また、沸点が140℃以上の場合、高分子除去性を向上させる効果だけでなく、金属の腐食防止性を同時に期待することができる。沸点が140℃未満の場合、高分子除去性の向上は効果を期待できるものの、金属の腐食防止効果がわずかで、同時に防食性能と除去性の向上を図りにくいことがある。
【0063】
例えば、前記アミン化合物は、トリプロピルアミン(沸点158℃)、トリブチルアミン(沸点215℃)、トリペンチルアミン(沸点242℃)、トリイソブチルアミン(沸点191℃)、ジメチルオクチルアミン(沸点192℃)、ジエチルブチルアミン(沸点141℃)、ジイソブチルアミン(沸点141℃)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン(沸点144℃)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ジアミノブタン(沸点169℃)、およびN,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン(沸点209℃)からなる群より選択される1種以上を含むことができる。
【0064】
前記アミン化合物は、高分子洗浄用組成物の総重量に対して、0.01~20重量%含まれ、好ましくは0.05~15重量%含まれる。前記アミン化合物が0.01%未満で含まれる場合、除去速度の向上などの効果を期待しにくく、20重量%を超える場合、高分子の膨潤速度が量に比例して増加せず、金属膜質の腐食が増加する問題が発生することがある。
【0065】
(D)その他の添加剤
本発明の高分子洗浄用組成物は、前記成分のほか、この分野で通常使用される腐食防止剤、界面活性剤などの成分をさらに含んでもよい。
【0066】
前記腐食防止剤は、樹脂の除去時、金属含有下部膜の腐食を効果的に抑制するために使用されるものであって、一般的に、各種供給源から商業的に入手可能であり、追加の精製なく使用可能である。
【0067】
前記界面活性剤は、洗浄特性の強化のために使用できる。例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤を用いることができるが、なかでも特に、湿潤性に優れ、気泡の発生がより少ない非イオン性界面活性剤を使用することが好ましく、これらは、1種または2種以上を混合して使用可能である。
【0068】
また、本発明は、本発明に係る高分子洗浄用組成物を用いたデバイスからの高分子の除去方法を提供する。本発明に係る高分子の除去方法は、本発明に係る高分子洗浄用組成物について述べた内容をすべて適用可能であり、重複する部分については詳細な説明を省略したが、その説明が省略されたとしても同一に適用可能である。
【0069】
具体的には、前記高分子の除去方法は、デバイスウエハを薄くする工程で使用されるシリコーン接着剤のような高分子を除去するためのものであって、デバイスウエハを薄くする工程は、キャリアウエハとデバイスウエハとの間にシリコーン接着剤とシリコーン離型層を形成して半導体基板を薄くする工程を含む。前記シリコーン離型層は、工程後にキャリアウエハを除去する過程で分離が起こる位置でデバイスウエハの破損を引き起こさない。前記シリコーン接着剤は、デバイスウエハとキャリアウエハとを接着するものであって、硬化過程を経る。この工程の後、硬化した高分子を本発明に係る高分子洗浄用組成物を用いて除去する。
【0070】
以下、実施例を通じて本発明をより詳しく説明する。しかし、下記の実施例は本発明をさらに具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0071】
実施例および比較例:高分子洗浄用組成物の製造
下記表1および2に記載の成分および組成比に応じて高分子洗浄用組成物を製造した。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
<フッ素化合物>
(A-1)TBAF・HF:テトラブチルアンモニウムビフルオライド;
(A-2)TBAF:テトラブチルアンモニウムフルオライド;
(A-3)BTMAF:ベンジルテトラメチルアンモニウムフルオライド;
(A-20)フッ化アンモニウム(NHHF
【0075】
<溶媒>
(B-1)2-ヘプタノン;(B-2)N,N-ジエチルアセトアミド;
(B-3)N,N-ジメチルプロパンアミド;(B-4)N-エチルピロリドン;
(B-5)N-メチルモルホリン;(B-6)N-ブチルアセテート;
(B-7)PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート;
(B-8)4-メチルピリジン;(B-9)ジメチルピペラジン;
(B-10)トリエチルホスフェート;(B-11)テトラエチルウレア;
(B-20)エチレングリコール;(B-21)イソプロピルアルコール
(B-22)水;(B-23)ジエチレングリコールモノメチルエーテル
【0076】
<アミン化合物>
(C-1)トリプロピルアミン(沸点158℃);
(C-2)ジイソブチルアミン(沸点141℃);
(C-3)トリブチルアミン(沸点215℃);
(C-4)ジメチルオクチルアミン(沸点192℃);
(C-5)N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン(沸点144℃);
(C-6)トリエチルアミン(沸点89℃)
(C-20)オクチルアミン(沸点176℃);
(C-21)モノエタノールアミン(沸点174℃);
(C-22)ヒドロキシルアミン(沸点58℃);
(C-23)テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(20%)(沸点102℃)
(C-24)ジプロピルアミン
(C-25)N-メチルブチルアミン
【0077】
実験例1:高分子除去性評価1-網状型高分子
網状型高分子に対する除去性評価のために、硬化したシリコーン高分子が80μmの厚さにコーティングされたウエハを2×2cmの大きさに切断して用い、25℃の前記実施例および比較例による組成液を400rpmで回転させながら用意されたサンプルを1分間浸漬し、IPA洗浄後に乾燥した。評価後、SEMに硬化したシリコーン高分子の膜厚を測定した。その後、走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)で残存するシリコーン系樹脂の膜厚を測定して除去速度を算出して、下記表3および4にまとめた。
除去速度(μm/min)=[評価前の厚さ(μm)-評価後の厚さ(μm)]/評価時間(min)
【0078】
実験例2:高分子除去性評価2-線状PDMS
線状ポリジメチルシロキサン(PDMS)に対する除去性評価のために、ポリジメチルシロキサンのプレポリマーと硬化剤とを所定の質量比で混合したブレンドをシリコンウエハ上にスピンコーティングし、2×2cmの大きさに切断して用い、25℃の前記実施例および比較例による組成液を400rpmで回転させながら用意されたサンプルを1分間浸漬し、IPA洗浄後に乾燥した。評価後、光学顕微鏡とSEMでウエハ表面の残留物を観察した。残留物の発生の有/無によって下記のように表記して、下記表3および4にまとめた。
○:残留物なし/X:残留物あり
【0079】
実験例3:金属腐食評価1-バンプボール
金属に対する腐食評価のために、Sn、Sn/Ag合金、Sn/Au合金などからなるバンプボール(Bump ball)が1011個形成されたウエハを2×2cmの大きさに切断して用い、25℃の前記実施例および比較例による組成液を400rpmで回転させながら用意されたサンプルを30分間浸漬した後、IPA洗浄後に乾燥した。SEMでBump ball damage個数を確認し、発生個数を下記表3および4にまとめた。
【0080】
実験例4:金属腐食評価2-金属膜
また、アルミニウム薄膜が形成されたウエハを2×2cmの大きさに切断して用い、25℃の前記実施例および比較例による組成液を400rpmで回転させながら用意されたサンプルを10分間浸漬し、IPA洗浄後に乾燥した。そして、洗浄後、膜をSEMでディフェクト(Defect)を確認し、その結果を下記の基準により表3および4にまとめた。
良好:表面モフォロジーの変化および変色なし
発生:表面モフォロジーの変化および変色観察される
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
前記表3を参照すれば、本発明に係る高分子洗浄用組成物(実施例1~21)は、網状型シリコーン系高分子に対する除去速度が23μm/min以上と迅速かつ線状シリコーン系高分子に対する除去性能にも優れ、金属腐食評価に対する結果も優れていた。沸点の低いアミン化合物を使用したり(実施例21)、アミン化合物が過剰添加された場合(実施例20)には性能がやや低下したものの、比較例に比べては著しく優れた性能を示した。
【0084】
これに対し、表4を参照すれば、本発明に係るアミン化合物が使用されていない比較例7、10~12は、網状型高分子の除去速度が12μm/min以下であって、実施例の洗浄用組成物を用いた時より除去速度が著しく遅く、金属に対する腐食性も著しく高くなったことを確認することができた。
【0085】
また、本発明に係るアミン化合物を使用しても、溶媒として水またはアルコール系化合物を用いる場合(比較例5および6)、高分子の除去が困難であり、金属に対する腐食性が著しく高いことを確認することができ、プロトン性溶媒が使用された比較例8および9は、高分子の除去速度が遅く、除去後にも残留物が発生した。
【0086】
一方、極性非プロトン性溶媒を単独で用いる場合、高分子が除去されておらず(比較例1および2)、フッ素化合物としてフッ化アンモニウムを用いる場合(比較例3)、組成物の製造時に析出物が発生して評価が不可能であった。また、アミン化合物としてそれぞれジプロピルアミンおよびN-メチルブチルアミンを用いた比較例13および14は、網状型高分子の除去速度が20μm/min以下と遅くなっただけでなく、Sn、Sn/Ag合金、Sn/Au合金からなるバンプボール1011個のうち40個以上のバンプボールが損傷したことを確認することができた。