(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】二次電池用電極群
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20241105BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20241105BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20241105BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20241105BHJP
H01G 11/26 20130101ALN20241105BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M10/0585
H01M10/0587
H01G11/26
(21)【出願番号】P 2021043266
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】金井 佑太
(72)【発明者】
【氏名】山下 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】吉間 一臣
(72)【発明者】
【氏名】保科 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】笹川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】原田 康宏
(72)【発明者】
【氏名】高見 則雄
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-273390(JP,A)
【文献】特開2012-174434(JP,A)
【文献】特開2008-226555(JP,A)
【文献】特開2013-073690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01G 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と
、セパレータとを含
む電極群であって、
前記正極は、円弧形状を有する正極第1端部と前記正極第1端部の反対側にある正極第2端部とを含み且つ正極活物質を含有する正極活物質含有層と、
前記正極活物質含有層を担持している正極活物質担持部と、前記正極活物質担持部および前記正極第2端部と隣接し且つ前記正極活物質含有層が設けられていない正極活物質非担持部とを含む正極集電体とを具備し、
前記正極第1端部から前記正極第2端部へ向かう方向を正の値とし、且つ前記正極第1端部上で直線距離1000mm離れた2つの点を結ぶ基準線までの前記正極第1端部からの最大距離で表す正極湾曲量は-1mm以上0mm未満の範囲内にあり、
前記負極は、負極第1端部と前記負極第1端部の反対側にある負極第2端部とを含み且つ負極活物質を含有する負極活物質含有層と、
前記負極活物質含有層を担持している負極活物質担持部と、前記負極活物質担持部および前記負極第2端部と隣接し且つ前記負極活物質含有層が設けられていない負極活物質非担持部とを含む負極集電体とを具備し、
前記負極第1端部から前記負極第2端部へ向かう方向を正の値とし、且つ前記負極第1端部上で直線距離1000mm離れた2つの点を結ぶ基準線までの前記負極第1端部からの最大距離で表す負極湾曲量が、-1mm以上0mm未満の範囲内にあり且つ前記負極第1端部が円弧形状を有するか、又は前記負極湾曲量が0mmであ
り、
前記電極群は、前記正極と、前記負極とがその間に前記セパレータを介在させて渦巻状に捲回された捲回型電極群であるか、又は、
前記正極と、前記負極とがその間に前記セパレータを介在させて積層された積層型電極群である、二次電池用の電極群。
【請求項2】
前記正極集電体がアルミニウムを含むか、又は
前記負極湾曲量が-1mm以上0mm未満の範囲内にあり且つ前記負極第1端部が円弧形状を有し、且つ、前記負極集電体がアルミニウムを含む、請求項1に記載の電極群。
【請求項3】
前記正極第1端部と前記正極第2端部との間の前記正極活物質含有層の幅は60mm以上250mm以下であり、前記正極第2端部と交差する方向への前記正極活物質非担持部の幅は5mm以上25mm以下であるか、又は
前記負極湾曲量が-1mm以上0mm未満の範囲内にあり且つ前記負極第1端部が円弧形状を有し、且つ、前記負極第1端部と前記負極第2端部との間の前記負極活物質含有層の幅は60mm以上250mm以下であり、前記負極第2端部と交差する方向への前記負極活物質非担持部の幅は5mm以上25mm以下である、請求項1又は2に記載の電極群。
【請求項4】
前記正極活物質担持部上の前記正極活物質含有層の単位面積当たりの質量は前記正極集電体の片面毎に100g/m
2以上300g/m
2以下であるか、又は
前記負極湾曲量が-1mm以上0mm未満の範囲内にあり且つ前記負極第1端部が円弧形状を有し、且つ、前記負極活物質担持部上の前記負極活物質含有層の単位面積当たりの質量は前記負極集電体の片面毎に100g/m
2以上300g/m
2以下である、請求項1乃至3の何れか1項に記載の電極群。
【請求項5】
正極と、負極と
、セパレータとを含
む電極群であって、
前記負極は、円弧形状を有する負極第1端部と前記負極第1端部の反対側にある負極第2端部とを含み且つ負極活物質を含有する負極活物質含有層と、
前記負極活物質含有層を担持している負極活物質担持部と、前記負極活物質担持部および前記負極第2端部と隣接し且つ前記負極活物質含有層が設けられていない負極活物質非担持部とを含む負極集電体とを具備し、
前記負極第1端部から前記負極第2端部へ向かう方向を正の値とし、且つ前記負極第1端部上で直線距離1000mm離れた2つの点を結ぶ基準線までの前記負極第1端部からの最大距離で表す負極湾曲量は-1mm以上0mm未満の範囲内にあり、
前記正極は、正極第1端部と前記正極第1端部の反対側にある正極第2端部とを含み且つ正極活物質を含有する正極活物質含有層と、
前記正極活物質含有層を担持している正極活物質担持部と、前記正極活物質担持部および前記正極第2端部と隣接し且つ前記正極活物質含有層が設けられていない正極活物質非担持部とを含む正極集電体とを具備し、
前記正極第1端部から前記正極第2端部へ向かう方向を正の値とし、且つ前記正極第1端部上で直線距離1000mm離れた2つの点を結ぶ基準線までの前記正極第1端部からの最大距離で表す正極湾曲量が0mmであ
り、
前記電極群は、前記正極と、前記負極とがその間に前記セパレータを介在させて渦巻状に捲回された捲回型電極群であるか、又は、
前記正極と、前記負極とがその間に前記セパレータを介在させて積層された積層型電極群である、二次電池用の電極群。
【請求項6】
前記負極集電体がアルミニウムを含む、請求項5に記載の電極群。
【請求項7】
前記負極第1端部と前記負極第2端部との間の前記負極活物質含有層の幅は60mm以上250mm以下であり、前記負極第2端部と交差する方向への前記負極活物質非担持部の幅は5mm以上25mm以下である、請求項5又は6に記載の電極群。
【請求項8】
前記負極活物質担持部上の前記負極活物質含有層の単位面積当たりの質量は前記負極集電体の片面毎に100g/m
2以上300g/m
2以下である、請求項5乃至7の何れか1項に記載の電極群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の小型電子機器用途に加え、近年ではハイブリッド電気自動車などの車両の電源用途に用いられることから、高容量、長サイクル寿命、急速充電性等を兼ね備えた二次電池が求められている。制限ある電池空間内に出来るだけ多くの活物質を充填するため、電極もより高密度に圧縮されるようになった。
【0003】
電極の製造では、例えば金属箔などの帯状集電体からなる基材に活物質を含む電極合材を塗布し、塗膜を乾燥して合材層を形成した後、ロールプレス装置などで合材層を圧縮する。圧縮された塗布領域の集電体も塑性変形によって延びるが、電極合材が塗布されない集電体の非塗布領域にはプレス圧力が掛からないため、当該露出部分の集電体は延びない。その結果、この集電体の延びの差によって塗布領域と非塗布領域との境界に残留応力が働き、電極に歪みや反りが生じる。電極を用いて電極群を作製する際、例えば、正極と負極とを含んだ積層体を捲回して捲回構造の電極群を作製する場合に、電極の歪みや反りに起因して電極の捲きズレなどの不具合が生じる。捲回構造を有さない電極群、例えば、積層構造の電極群(所謂スタック型電極群)の場合も、向かい合う正負極の間で合材層の位置が不一致になりやすいという問題がある。そのため、電極が歪んでいると、電極群を製造する際の生産効率が低下したり、歩留まりが低下したりするという問題がある。
【0004】
電極群作製の歩留向上を目的とした製造方法として、例えば、プレス後の電極の未塗工部に張力を加えて延ばし、電極の湾曲量を小さくする方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-76711号公報
【文献】特開2012-174434号公報
【文献】特開2013-73690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電極群の製造の歩留りを高くする電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、正極と、負極と、セパレータとを含む二次電池用の電極群が提供される。
正極は、正極活物質含有層と正極集電体とを具備する。正極活物質含有層は、円弧形状を有する正極第1端部と正極第1端部の反対側にある正極第2端部とを含み、且つ、正極活物質を含有する。正極集電体は、正極活物質含有層を担持している正極活物質担持部と、正極活物質担持部および正極第2端部と隣接し且つ正極活物質含有層が設けられていない正極活物質非担持部とを含む。正極第1端部から正極第2端部へ向かう方向を正の値とし、且つ正極第1端部上で直線距離1000mm離れた2つの点を結ぶ基準線までの正極第1端部からの最大距離で表す正極湾曲量は、-1mm以上0mm未満の範囲内にある。
負極は、負極活物質含有層と負極集電体とを具備する。負極活物質含有層は、負極第1端部と負極第1端部の反対側にある負極第2端部とを含み、且つ、負極活物質を含有する。負極集電体は、負極活物質含有層を担持している負極活物質担持部と、負極活物質担持部および負極第2端部と隣接し且つ負極活物質含有層が設けられていない負極活物質非担持部とを含む。負極第1端部から負極第2端部へ向かう方向を正の値とし、且つ負極第1端部上で直線距離1000mm離れた2つの点を結ぶ基準線までの負極第1端部からの最大距離で表す負極湾曲量は、-1mm以上0mm未満の範囲内にあり且つ負極第1端部が円弧形状を有するか、又は負極湾曲量が0mmである。
電極群は、正極と負極とがその間にセパレータを介在させて渦巻状に捲回された捲回型電極群であるか、又は、正極と負極とがその間にセパレータを介在させて積層された積層型電極群である。
他の実施形態によれば、正極と、負極と、セパレータとを含む二次電池用の電極群が提供される。
負極は、負極活物質含有層と負極集電体とを具備する。負極活物質含有層は、円弧形状を有する負極第1端部と負極第1端部の反対側にある負極第2端部とを含み、且つ、負極活物質を含有する。負極集電体は、負極活物質含有層を担持している負極活物質担持部と、負極活物質担持部および負極第2端部と隣接し且つ負極活物質含有層が設けられていない負極活物質非担持部とを含む。負極第1端部から負極第2端部へ向かう方向を正の値とし、且つ負極第1端部上で直線距離1000mm離れた2つの点を結ぶ基準線までの負極第1端部からの最大距離で表す負極湾曲量は、-1mm以上0mm未満の範囲内にある。
正極は、正極活物質含有層と正極集電体とを具備する。正極活物質含有層は、正極第1端部と正極第1端部の反対側にある正極第2端部とを含み、且つ、正極活物質を含有する。正極集電体は、正極活物質含有層を担持している正極活物質担持部と、正極活物質担持部および正極第2端部と隣接し且つ正極活物質含有層が設けられていない正極活物質非担持部とを含む。正極第1端部から正極第2端部へ向かう方向を正の値とし、且つ正極第1端部上で直線距離1000mm離れた2つの点を結ぶ基準線までの正極第1端部からの最大距離で表す正極湾曲量は、-1mm以上0mm未満の範囲内にあり且つ正極第1端部が円弧形状を有するか、又は正極湾曲量が0mmである。
電極群は、正極と負極とがその間にセパレータを介在させて渦巻状に捲回された捲回型電極群であるか、又は、正極と負極とがその間にセパレータを介在させて積層された積層型電極群である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る電極の一例を概略的に示す平面図。
【
図5】実施形態に係る電極の製造に用いられる引伸ばし装置を概略的に示す説明図。
【
図6】
図5に示す引伸ばし装置におけるガイドローラーと電極との位置関係を示す説明図。
【
図7】
図6のVII-VII線に沿った概略断面図。
【
図8】
図6のVIII-VIII線に沿った概略断面図。
【
図9】変形例に係るガイドローラーを概略的に示す断面図。
【
図10】他の変形例に係るガイドローラーを概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
電極の製造にあたって、張力をかける処理などのロールプレスにより生じる湾曲を減少させる矯正を行っても、時間の経過とともに湾曲量が再び増加することを、本発明者らは鋭意研究の結果見出した。矯正直後の電極では湾曲の度合いが少量に抑えられていても、一定期間後には電極の湾曲量が電極群の作製にて捲きズレ等の支障を生じさせる程度まで増加し得る。即ち、湾曲した電極を矯正して湾曲量を充分小さくしても、時間の経過とともに湾曲量が増加するため、結果的に電極群作製時の歩留まりが低下し得るという問題がある。
【0010】
以下、実施の形態について適宜図面を参照して説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
【0011】
<電極の構成>
実施形態に係る電極は、電極活物質を含有する活物質含有層と、集電体とを具備する。活物質含有層は、円弧形状を有する第1端部と第2端部とを含む。第2端部は、活物質含有層にて第1端部の反対側にある。集電体は、活物質担持部と活物質非担持部とを含む。活物質担持部は、活物質含有層を担持している。活物質非担持部は、活物質担持部および第2端部と隣接している。活物質非担持部には、活物質含有層が設けられていない。電極の湾曲量を、第1端部から第2端部へ向かう方向を正の値と定義し、且つ、第1端部上で直線距離1000mm離れた2つの点を結ぶ基準線までの第1端部からの最大距離で表した場合、該湾曲量は、-1mm以上0mm未満の範囲内にある。
【0012】
電極の製造におけるプレス処理の際、集電体のうち活物質含有層(合材層)が設けられた活物質担持部(塗布領域)は塑性変形によって延びるものの活物質非担持部(非塗布領域)は延びないため、活物質非担持部が位置する側が湾曲の内側となるように電極が変形する。つまり、プレス処理による変形では、電極は活物質非担持部側へ向かって反る。ここでは、このような湾曲を正方向への湾曲と見なす。
【0013】
実施形態に係る電極は、集電体の活物質非担持部が位置する側が湾曲の外側となるよう、活物質非担持部側から反対方向へ向かって反っている。ここでは、このような湾曲を負方向への湾曲と見なす。言い換えると、係る電極は、プレス処理によって生じる湾曲とは逆方向に湾曲している。係る電極では湾曲量が負の値であるため、湾曲量が増加しても経時変化後の湾曲量が小さく、該電極を用いて高歩留りで電極群を製造できる。
【0014】
図面を参照しながら、係る電極を説明する。
図1は、実施形態に係る電極の一例を概略的に示す平面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿った概略断面図である。
【0015】
電極1は、活物質含有層2と集電体3とを含んでいる。電極1は全体として、一対の長辺を有する帯形状の集電体および該集電体上に設けられた活物質含有層が、帯形状に平行な平面内で湾曲した形状を有する。
【0016】
活物質含有層2は、湾曲した電極1の内縁に沿っており円弧形状を有する第1端部2aと、第1端部2aに対し活物質含有層2の反対側に位置する第2端部2bとを含む。第2端部2bは、活物質含有層2の円弧形状を有した外縁に対応し得る。
【0017】
活物質含有層2は、円弧を描く帯形状を有する集電体3の主面に担持されている。図示する例では集電体3の表裏両方の主面に活物質含有層2が設けられているが、活物質含有層2は集電体3の片方の主面にのみ設けられていてもよい。或いは、集電体3の長辺方向に亘る一部において活物質含有層2が両面に設けられ、他の一部において活物質含有層2が片面にのみ設けられ得る。
【0018】
集電体3は、活物質含有層2を担持している活物質担持部3a、及び活物質含有層が設けられていない活物質非担持部3bとを含む。集電体3をその主面に平行な面内で区分けしたときに、一方または表裏両方の主面に活物質含有層2が設けられている領域に対応する部分が活物質担持部3aに該当し、何れの主面にも活物質含有層2が設けられていない領域に対応する部分が活物質非担持部3bに該当する。つまり、集電体3の片方の主面上にのみ活物質含有層2が設けられている電極や電極の一部においては、他方の主面の全体に亘って活物質含有層が担持されていないものの、その裏側に活物質含有層2が担持されている領域は活物質担持部3aと見なす。
【0019】
集電体3の活物質非担持部3bは、活物質担持部3a及び第2端部2bと隣接している。活物質非担持部3bは、集電体3の円弧の外側の長辺に沿っている。活物質非担持部3bは、電極集電タブとして機能できる。集電体3の活物質非担持部3bを、タブ部と言い換えてもよい。活物質非担持部3bを、単に非担持部と呼ぶことがある。活物質非担持部3bの端部、つまり活物質担持部3aに対し活物質非担持部3bの反対側にある集電体3の外縁側の端部を、便宜上第3端部3cと呼ぶことがある。また、活物質担持部3aを、単に担持部と呼ぶことがある。
【0020】
図示する例の電極1では、活物質含有層2の第1端部2a側で、活物質含有層2の縁(内縁)と集電体3の縁(内縁)の位置が揃っているが、これら縁の位置は多少ずれ得る。第1端部2a側においても集電体3の両方の主面が、活物質含有層を担持していない状態にあり得る。このような場合、集電体3の主面を渡った両端部にて集電体3の表裏両面に活物質含有層を担持していないそれぞれの部分について両側の端部を結ぶ最短距離の長さに沿った第1方向101への幅を比較し、より幅広い部分を集電タブとして機能できる活物質非担持部3bと判断する。活物質含有層2のうちそこに隣接する端部を第2端部2bと判断する。このようにして、第1端部2a、第2端部2b、及び第3端部3cの位置関係を把握することができる。これら端部は、電極1の長手方向に沿った任意の位置にて、活物質非担持部3bに対し電極1の反対側から第1方向101に沿って第1端部2a、第2端部2b、及び第3端部3cの順で配置される。
【0021】
電極1の湾曲量は、次のとおり確認できる。上記のとおり集電体3の活物質非担持部3b及び活物質含有層2(及びその下の活物質担持部3a)の配置に基づいて、活物質含有層2の第1端部2a及び第2端部2bを特定する。第1端部2a上の点P1と点P2を結ぶ直線を基準線Lとする。点P1と点P2は、それらの点を結ぶ直線の距離Dが一定になるように設定する。例えば、点P1と点P2の間の直線距離Dを1000mmと設定する。湾曲量は、この点P1と点P2の間における基準線Lまでの、第1端部2aからの最大距離Mで表す。ここで、第1端部2aから第2端部2bへ向かう方向を正の値とする。つまり湾曲量については、電極1の短辺方向に沿って集電体3の活物質非担持部3bへ向かう方向を正の値とする。第1端部2aの位置をゼロとして、そこから電極主面の短辺幅に沿って電極平面内へ向かう方向が正方向で、電極平面からはみ出る方向が負方向である、と表現することもできる。
【0022】
係る電極では、直線距離Dを1000mmと設定したときの上記湾曲量が-1mm以上0mm未満の範囲内の負の値である。つまり、点P1と点P2を結ぶ基準線Lの位置が第1端部2aよりも外側にある。従って、電極1は、第1端部2aが円弧形状の内縁となるとともに第3端部3cが円弧形状の外縁となるように、湾曲している。
【0023】
実施形態に係る電極は、従来の電極にて生じる湾曲とは反対方向に湾曲している。
図3に示す従来型の電極の例と比較しながら説明する。
【0024】
図3は、従来の電極の一例を概略的に示す平面図である。図示する電極1は、活物質含有層2と集電体3とを含んでいる。電極1は全体として、一対の長辺を有する帯形状の集電体および該集電体上に設けられた活物質含有層が、帯形状に平行な平面内で湾曲した形状を有する。但し、
図3の電極1は、
図1の場合とは逆方向に湾曲している。
【0025】
例えば、活物質含有層2の密度調整のために、活物質含有層2に対し圧延処理が行われる。その長さに沿って直径が一定の円柱状の一般的なローラーを用いたロールプレス処理による圧延では、集電体3のうち活物質含有層2を担持していない活物質非担持部3bにはローラーが接触しない。そのため、集電体3の担持部は圧延されるものの、活物質非担持部3bは圧延されない。集電体3の担持部は圧延により広く延ばされるものの、活物質非担持部3bはほとんど変形しない。その結果、活物質非担持部3bが沿う第3端部3c側が内縁となるとともに活物質含有層2の第1端部2a側が外縁となるように、電極1が円弧形状に湾曲する。
【0026】
図示するとおり、従来の電極1では、第1端部2a上のある点P
1と点P
2を結ぶ基準線Lは、電極1の第1端部2aよりも内側に位置する。そのため、上述した湾曲量は、正の値をとる。従来の電極(
図3)は正の方向へ湾曲することに対し、実施形態に係る電極(
図1)は、負の方向へ湾曲する。
【0027】
図3に例示したような正の方向に湾曲した電極を用いた電極群の作製は、生産効率や歩留りが低くなる。電極に対する矯正により湾曲量をゼロ又はほぼゼロにしても、時間の経過とともに電極が正の方向に再度湾曲し得ることを、本発明者らは新たに発見した。つまり、歪み及び反りを解消すべく矯正された電極にて、経時変化が生じる結果、
図3に示したような正の方向に湾曲した状態に回帰し得る。
【0028】
実施形態に係る電極は、負の方向へ予め湾曲された状態にあり、正の方向へ湾曲する経時変化が進行しても、湾曲量が少なく留まる。そのため、係る電極を用いる電極群の製造は、歩留りを高くすることができる。
【0029】
活物質含有層の幅は、例えば、60mm以上250mm以下であり得る。ここでいう活物質含有層の幅は、第1端部と第2端部との間の距離に対応する。この活物質含有層の幅は、集電体における活物質担持部の幅に対応する。
【0030】
集電体のうち活物質非担持部が占める幅は、例えば、5mm以上25mm以下であり得る。ここでいう活物質非担持部の幅は、活物質含有層の第2端部と交差する方向への幅である。
【0031】
集電体の活物質担持部上に設けられている活物質含有層の単位面積当たりの質量は、例えば、集電体の片面毎に100g/m2以上300g/m2以下であり得る。
【0032】
係る電極は、電池用電極であり得る。電池用電極としての電極は、例えば、二次電池用の正極または負極であり得る。ここでいう二次電池とは、例えば、リチウムイオン二次電池や非水電解質電池などを含む。
【0033】
活物質含有層は、例えば、1.8g/cm3以上3.7g/cm3以下の密度を有し得る。正極の場合、活物質含有層(正極活物質含有層)は2.7 g/cm3以上3.7 g/cm3以下の密度を有し得る。負極の場合、活物質含有層(負極活物質含有層)は1.8 g/cm3以上2.9 g/cm3以下の密度を有し得る。この密度は、集電体を除いた活物質含有層のみの密度である。
【0034】
活物質含有層に含有される電極活物質は、正極活物質または負極活物質を含む。典型的には、正極としての電極の活物質含有層(正極活物質含有層)は電極活物質として正極活物質を含み、負極としての電極の活物質含有層(負極活物質含有層)は電極活物質として負極活物質を含む。
【0035】
正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。同様に、負極は、負極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。
【0036】
正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。酸化物及び硫化物の例には、Li又はLiイオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。
【0037】
このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y≦1、LixCoPO4;0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
【0038】
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。
【0039】
電池の電解質として常温溶融塩を用いる場合、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F(0≦x≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、又はこれらの混合物を含む正極活物質を用いることが好ましい。これらの化合物は常温溶融塩との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。
【0040】
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
【0041】
負極活物質の例には、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi2+xTi3O7、0≦x≦3)、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えば、Li4+xTi5O12、0≦x≦3)、単斜晶型二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、ホランダイト型チタン複合酸化物、直方晶型(orthorhombic)チタン複合酸化物、及び単斜晶型ニオブチタン複合酸化物が挙げられる。
【0042】
上記直方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+aM12-bTi6-cM2dO14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、M1は、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つである。M2はZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、-0.5≦σ≦0.5である。直方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+aNa2Ti6O14(0≦a≦6)が挙げられる。
【0043】
上記単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の例として、LixTi1-yM3yNb2-zM4zO7+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M3は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M4は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の具体例として、LixNb2TiO7(0≦x≦5)が挙げられる。
【0044】
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の他の例として、LixTi1-yM5y+zNb2-zO7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M5は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x<5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。
【0045】
活物質含有層は、電極活物質に加え、導電剤及び結着剤を任意に含むことができる。
【0046】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、電極活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーのような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。或いは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。また、導電剤を用いると共に活物質表面に炭素や導電性材料を被覆することで、活物質含有層の集電性能を向上させることもできる。
【0047】
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、電極活物質と集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0048】
活物質含有層中の電極活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、電極の用途に応じて適宜変更することができる。
【0049】
例えば、電極を二次電池の正極として用いる場合は、活物質(正極活物質)及び結着剤は、それぞれ、80質量%以上99質量%以下、及び1質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。結着剤の量を1質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
【0050】
導電剤を加える場合には、活物質(正極活物質)、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77質量%以上97質量%以下、1質量%以上20質量%以下、及び2質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
【0051】
例えば、電極を二次電池の負極として用いる場合は、活物質(負極活物質)、導電剤及び結着剤を、それぞれ、68質量%以上97質量%以下、2質量%以上30質量%以下及び1質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層と集電体との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ30質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
【0052】
活物質表面を炭素や導電性材料で被覆する場合、被覆材量は導電剤量に含めたものとみなすことができる。炭素または導電性材料による被覆量は、0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。この範囲の被覆量であれば、集電性能と電極密度を高められる。
【0053】
集電体は、電極活物質にリチウム(Li)が挿入及び脱離される電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。
【0054】
例えば、正極として用いられる電極の場合は、集電体(正極集電体)は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
【0055】
例えば、負極として用いられる電極の場合は、集電体(負極集電体)は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiからなる群より選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、電極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
【0056】
正極としての態様および負極としての態様の何れについても、集電体がアルミニウムを含むことが望ましい。
【0057】
係る電極は、電池に実装される際に、例えば、捲回型の電極群を構成する。即ち、電極は、捲回型電極群用の電極であり得る。或いは、係る電極は、例えば、積層型の電極群に含まれて、電池に実装され得る。即ち、電極は積層型電極群用の電極でもあり得る。
【0058】
正極としての態様の実施形態に係る電極と、負極としての他の電極を用いて電極群が構成され得る。又は、負極としての態様の実施形態に係る電極と、正極としての他の電極を用いて電極群が構成され得る。或いは、実施形態に係る電極の正極としての態様と、係る電極の負極としての態様とを用いて電極群が構成され得る。
【0059】
電極群において、上述した負の値の湾曲量で湾曲した実施形態に係る電極に対する対極として他の電極を用いる場合は、当該他の電極は、湾曲が矯正されていることが望ましい。さらに、湾曲矯正直後がより望ましい。つまり電極群において、上記実施形態に係る電極の正極としての態様および負極としての態様を組合わせるか、或いは、上記実施形態に係る電極に、ほとんど湾曲がない電極を対極として組合わせることが望ましい。
【0060】
電極群は、正極および負極に加え、正極と負極との間に配されたセパレータを更に具備することもできる。セパレータは、典型的には電気的絶縁性を有する材料から形成される。セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。
【0061】
電極群の一例を、
図4に示す。
図4に示す電極群50は、扁平状の捲回型電極群である。扁平状で捲回型である電極群50は、正極20と、負極30と、セパレータ40とを含む。セパレータ40は、正極20と負極30との間に介在している。正極20及び負極30のうち少なくとも一方は、実施形態に係る電極である。
【0062】
正極20は、正極集電体23と、その表面に形成された正極活物質含有層22とを含んでいる。正極集電体23は、その表面に正極活物質含有層22が設けられていない部分に該当する正極集電タブ23bを含む。正極集電タブ23bは、正極20における活物質非担持部に該当する。
【0063】
負極30は、負極集電体33と、その表面に形成された負極活物質含有層32とを含む。負極集電体33は、その表面に負極活物質含有層32が設けられていない部分に該当する負極集電タブ33bを含む。負極集電タブ33bは、負極30における活物質非担持部に該当する。
【0064】
例を図示しないが、積層型の電極群は、例えば、矩形形状の正極活物質含有層を含んだ複数の正極と、矩形形状の負極活物質含有層を含んだ複数の負極とを含み得る。電極群は、例えば、1以上のセパレータをさらに含み得る。具体例によれば、積層型電極群は正極、セパレータ、及び負極が“-正極-セパレータ-負極-セパレータ-正極-セパレータ-負極-セパレータ-”という順で積層されている構造を有し得る。例えば、複数のセパレータを正極と負極との間に介在させてもよく、一枚のセパレータを九十九折にして正負極間の各箇所にて介在させてもよい。
【0065】
<電極の製造方法>
係る電極は、例えば、次のとおり製造することができる。
【0066】
先ず、電極活物質および結着剤、並びに任意に導電剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片方の主面又は両方の主面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、活物質含有層と集電体との積層体である電極シートを得る。電極シートに対するプレス処理を行って活物質含有層の密度を調整した後、電極シートに引伸ばし処理を施す。
【0067】
ここで、集電体は、例えば、帯形状を有し得る。一例の集電体は、矩形形状を有し得る。電極シートを作製するにあたって、例えば、集電体の短辺方向の片側の長辺に沿う端部にはスラリーを塗布しないでおくことで、当該集電体上のスラリー未塗布部を活物質含有層非担持部とすることができる。また、電極シートのプレス処理または引伸ばし処理に先駆けて、集電体の長辺の一方のみに活物質非担持部が沿っている状態となるように、電極シートを裁断することが望ましい。
【0068】
電極シートは、例えば、集電体上へのスラリーの塗布およびスラリーの乾燥が連続的に順次行われることで作製され、その後フープ状に巻取られてロールが得られる。電極シートをロールから巻出して、連続的にプレス処理および引伸ばし処理に供することができる。また、電極シートをプレス処理に供してからフープ状に巻き取ることもできる。電極シートをロールに一旦巻取った後でも、例えば、スリット加工により電極シートを裁断することができる。
【0069】
プレス処理および引伸ばし処理の一例を、
図5乃至
図8を参照しながら説明する。各図中の矢印X,Y,Zはそれぞれ互いに直交する3方向を示す。また、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。
【0070】
図5に、係る電極の製造に用いられる引伸ばし装置を概略的に示す。図示する引伸ばし装置70は、電極シート10の送り方向に沿って上流側から下流側に、電極シート10を圧縮して電極密度を向上させるプレスユニット71、圧縮時に正方向へ湾曲する電極シート10を引伸ばすことにより負方向へ湾曲させるストレッチユニット72、及びプレス及び引伸ばした後の電極シート10を巻取る巻取りユニット73、を順番に備えて構成されている。
【0071】
プレスユニット71は、1対のプレスロール71a及びプレスロール71bを有する。プレスロール71a及びプレスロール71bは、駆動部によってY軸に沿う軸心を中心に回転することにより、プレスロール71aとプレスロール71bとの間に挿入された電極シート10を圧縮成形する。
【0072】
巻取りユニット73は、駆動部によって回転軸73aがY軸に沿う軸心を中心に回転することで、電極シート10をフープ状に巻取り、ロールR1を形成するようになっている。
【0073】
ストレッチユニット72は、複数の金属製ガイドローラー74~78(従動ローラ)を有し、プレスユニット71から巻取りユニット73に電極シート10をガイドする。プレスロール71a及びプレスロール71bから巻取りユニット73に搬送される電極シート10には、長手方向に張力(巻取り張力)が加わる。ガイドローラー74~77は、電極シート10に加わる張力が巻取りに適した所望の範囲となるように、電極シート10の上下面に交互に配置されている。ガイドローラー78はストレッチ部材として機能する。
【0074】
図6乃至
図8に示すように、ガイドローラー78は、軸方向に沿って並ぶ小径部81及び大径部82を有している。小径部81及び大径部82の各々は、円柱形状を有する。小径部81と大径部82とは、それぞれの円柱形状の同一軸上に連結されている。小径部81は、円柱の側面にあたる退避面81aを有する。大径部82は、円柱の側面にあたる突出面82aを有する。ガイドローラー78は図示するように、小径部81と大径部82の境界位置から、大径部82側に所定距離離間した部分に逃げ部84を有し得る。図示する逃げ部84は、大径部82から連続して形成され径が逓減するとともにその断面が曲線をなすラウンド形状に形成されている。逃げ部84は、省略してもよい。
【0075】
小径部81の外周面が退避面81aを構成し、大径部82の外周面は突出面82aを構成し、逃げ部84の外周面は逃げ面84aを構成する。即ち、ガイドローラー78の外周面には、電極シート10の活物質含有層2の主面に対向する退避面81aと、集電体3の活物質非担持部3bに対向する突出面82aと、電極シート10の第3端部3cに沿う端部領域に対向する逃げ面84aと、が連続して形成されている。
【0076】
小径部81の径r1と、大径部82の径r2と逃げ部84の径r3は、r1<r3<r2の関係を満たしている。小径部81の径r1は、円柱形状の中心軸から退避面81aまでの距離に対応する。大径部82の径r2は、円柱形状の中心軸から突出面82aまでの距離に対応する。大径部82は小径部81に対し放射方向に突出しており、退避面81aよりも突出面82aの方が外側の位置にある。逃げ部84の径r3は、逃げ部84の円形端面の半径に対応する。
【0077】
突出面82aは図中破線で示す搬送面90に対して突出しており、退避面81aは搬送面90から離間している。逃げ面84aは搬送面90から徐々に離間するように弓状に湾曲している。
【0078】
ガイドローラー78と電極シート10の位置関係として、活物質含有層2は小径部81に対向し、大径部82は活物質含有層2の主面上に乗り上げないように設定されている。即ち、活物質含有層2と活物質非担持部3bとの境界に当たる活物質含有層2の第2端部2bが段差部83の壁面83aと接するように、電極シート10とガイドローラー78との軸方向(Y方向)への配置が設定される。
【0079】
電極シート10をガイドローラー78に巻きつけた状態において、小径部81の外周面である退避面81aは電極シート10の集電体3及び活物質含有層2に接触せず、間に隙間90aが形成されるように設定される。即ち、大径部82の半径r2と小径部81の半径r1の差r2-r1で決定される段差Hが活物質含有層2の厚みt1よりも大きく、H>t1を満たすように設定される。
【0080】
段差H(%)は、活物質含有層2の厚さt1を100%として、150%≦H≦600%の範囲内に在ることが望ましい。
【0081】
段差Hを厚さt1の150%以上にすることによって、活物質非担持部3bに応力を十分に集中させて伸ばすことができる。また、段差Hを厚さt1の600%以下にすることによって、活物質非担持部3bと活物質含有層2との境界付近(つまり、第2端部2b付近)に皺及び亀裂が生じるのを抑えることができる。皺や亀裂を防止する効果を高めるには、200%≦H≦400%の範囲がより好ましい。
【0082】
逃げ面84aと、集電体3のうち第3端部3cに沿う部分とが、対向配置される。即ち、逃げ面84aの開始端部84bよりも軸方向(Y方向)外側に集電体3の第3端部3cが位置するように設定される。
【0083】
また、
図8に示すように、電極シート10がガイドローラー78の外周に巻きつけられる抱き角θは60度以上が望ましい。
【0084】
さらに、ガイドローラー78は加熱装置としてのヒーター78aを備えていても良い。引伸ばし処理においてヒーターにより加熱処理をすることで、電極シート10を引伸ばし変形しやすい状態にできる。
【0085】
以上のように構成されたガイドローラー78の周りに、電極シート10が巻きつけられた状態で、巻取りユニット73に巻取られると、張力により接触面に接触した活物質非担持部3bが長さ方向(送り方向)に引っ張られて伸ばされる。活物質非担持部3bに一定の高さの張力がかけられると、プレス時に伸ばし量の差によって生じた電極シート10の湾曲が矯正される。より大きな張力をかけることで、プレス時の湾曲とは反対方向へ電極シート10を湾曲させることができる。つまり、電極シート10の湾曲を矯正するための張力より大きい張力により活物質非担持部3bを引伸ばすことで、
図3に示した従来の湾曲した電極1の状態から、
図1に示す湾曲状態を有する実施形態に係る電極1を得ることができる。
【0086】
ストレッチユニット72内のガイドローラー78の前後で電極シート10にかける長手方向(搬送方向)への張力を10 N以上100 N以下になる条件を設定することで、プレスによる湾曲とは反対方向に湾曲した実施形態に係る電極を得ることができる。上述した中間点での張力は、例えば、ガイドローラー74~78の位置、電極シート10の巻出し速度、及び電極シート10の巻取り速度を適宜調整することで制御できる。
【0087】
プレス処理としては、例えばロール状に巻かれた電極シート10を巻出しながら、回転しているプレスロール71a及びプレスロール71bの間に挿入し、圧縮成形を施す。電極シート10の挿入方向が電極シート10の長手方向に平行であり、プレス圧力は活物質含有層2に主に加わり、活物質含有層2は圧縮成形されて密度が高められる。このとき、活物質非担持部3bには、プレス圧力がほとんど加わらないため、活物質非担持部3bでは活物質担持部3aに比べて集電体3の伸びが小さくなる。その結果、電極シート10に歪みや反りが生じる。
【0088】
プレスロール71a及びプレスロール71bの間を通過した電極シート10は、下流側に送られガイドローラー74~78を経由して巻取りユニット73まで搬送される。このとき、引伸ばし部材を兼ねたガイドローラー78では、
図6~
図8に示すように、小径部81に活物質担持部3a及び活物質含有層2が対応し、大径部82と活物質非担持部3bとが対向配置する。即ち、大径部82の外周面である突出面82aに集電体3の活物質非担持部3bが接触し、小径部81の外周面である退避面81aと活物質含有層2との間には隙間90aが形成される。
【0089】
この状態で、引伸ばし処理として、巻取りユニット73により電極シート10を巻取る。引伸ばし処理では、電極シート10の短辺方向(幅方向)に平行な断面での引張応力Fを、1N/mm2≦F≦100N/mm2の範囲にすることが好ましい。引張応力Fを1N/mm2以上にすることによって、電極を精度よく巻取るために必要な応力を満たしつつ、集電体3の活物質非担持部3b(集電体露出部)を十分に伸ばすことができる。引張応力Fを100N/mm2以下にすることによって、電極の破断及び巻取り精度低下の問題を生じさせることなく、活物質非担持部3bを十分に伸ばすことができる。よって、引張応力Fを1N/mm2≦F≦100N/mm2の範囲にすることによって、電極を破断させることなく、かつ電極を精度よく巻取りつつ、活物質非担持部3bを十分に伸ばすことができる。段差の高さやコーナー部の形状の条件にも依るが、電極の破断及び巻取り精度低下を防止する効果を高めるためには20N/mm2≦F≦40N/mm2の範囲がより好ましい。
【0090】
引伸ばし処理は、例えば、ヒーター78aにより60℃以上150℃以下の温度で加熱処理を施しつつ行うことが望ましい。加熱処理温度Tを60℃以上にすることによって、塑性変形に必要となる応力を低減させる効果を高めることができる。加熱処理温度Tが高い方が応力を低減させる効果をより高められるが、熱による活物質含有層2の変質を避けるため、加熱処理温度Tは60℃以上150℃以下の範囲にすることが望ましい。
【0091】
圧縮成形後の電極シート10では、集電体3の活物質担持部3aが伸びて弛んでいるため、ガイドローラー78での巻取り張力(応力)は活物質担持部3aにはほとんど加わらず、圧縮後に伸ばされていない活物質非担持部3bに巻取り張力が集中する。
【0092】
ガイドローラー78を通過した電極シート10は、ガイドローラー76及びガイドローラー78を経由して巻取りユニット73に巻き取られる。さらに、フープ状の電極シート10を必要に応じて所望のサイズに裁断することにより、電極が得られる。なお、電極シート10をそのまま電極として用いることもできる。
【0093】
なお、図示した例では、ガイドローラー78にて集電体3のうち第3端部3cに沿う端部領域と、逃げ面84aとを対向配置させているが、このような配置により第3端部3cにおいて応力集中を緩和することができるため、この配置は好ましい。詳細には、引伸ばし処理の際に集電体3の活物質非担持部3bにかかる大きな応力を第3端部3cの付近にのみ集中させず、短辺方向(Y方向)への活物質非担持部3bの幅に亘って応力を分散させることができる。これにより、例えば集電体3の第3端部3cの端面に細かいクラックなどが形成されている場合であっても応力集中の緩和により亀裂や破断を防止することができる。即ち、例えば端面の傷やクラックに応力が集中すると、傷やクラックから亀裂や破断が生じやすくなるが、活物質非担持部3bのうち、特に歪みが大きい活物質含有層2の第2端部2b付近には応力を集中させて引き伸ばしを行いつつ、第2端部2bから一定距離離間した第3端部3cでは応力集中を回避することにより、引伸ばし効果を確保しつつ、亀裂や破断を抑制することが可能となる。当該好ましい態様では、ガイドローラー78が集電体3の第3端部3c付近と対向する部分の径を逓減させて搬送面90から軸心に向かう方向(
図7中下方)に退避する逃げ面84aを形成するだけの単純な構成で、応力集中を回避することができる。
【0094】
以上の態様は、電極シートに対するプレス処理および引伸ばし処理の一例であり、実施形態に係る電極の製造方法は、適宜変更して実施可能である。例えば、ガイドローラー78に逃げ部84及び逃げ面84aを形成せずに、省略してもよい。
【0095】
また、上記の例ではガイドローラー78の逃げ部84の形状として、大径部82から連続して形成され径が逓減するとともにその断面が曲線をなすラウンド形状としたが、これに限られるものではない。例えば
図9に示す変形例に係るガイドローラー178は、段差部83から軸方向に離間した開始端部184bより先の部分に、径が低減するとともにその断面が傾斜するテーパ形状に形成された逃げ部184を備える。この逃げ部184の外面が逃げ面184aを形成する。このような断面形状が直線となるように径を変化させる場合においても、集電体3の第3端部3cへの応力集中を緩和させることができる。
【0096】
上記例では、プレスロール71a及びプレスロール71bを含むプレスユニット71を用いたが、活物質含有層2を高密度化できるものであればプレスロールの代わりに使用することができる。例えば、プレスロールの代わりに平板プレスを用いることができる。また、プレス処理は、プレス圧力を多段階に変化させて行っても良い。
【0097】
上記例では複数のガイドローラーのうち一つのガイドローラー78を引伸ばし部材として使用したが、ガイドローラーの数も上記に限られるものではなく、引伸ばし部材として使用するガイドローラーの数や位置も上記に限られない。
【0098】
ガイドローラー78の回転軸方向の一方の端部に円周面から突出した大径部82の外周面を突出面としたが、これに限定されず、活物質非担持部3bを伸ばす効果が得られるものであれば良い。例えば段差、大径部、小径部の位置や数などは適宜変更可能である。
【0099】
さらに、ガイドローラー78に設ける段差部83は、
図6に図示されるように直角あるいは略直角とした例を示したが、これに限られるものではなくテーパーを設けても良い。例えば
図10に示す他の変形例に係るガイドローラー278は、段差部283のコーナー部分が湾曲面となっている。コーナー部分の曲率半径が小さいほど、集電体3の活物質非担持部3bを伸ばす効果が大きくなる一方で、電極シート10が蛇行した場合に電極破断が生じやすくなる。そのため、コーナー部分の曲率半径R(mm)は、例えば、0.5mm≦R≦7mmの範囲がより好ましい。
【0100】
集電体3の両面に活物質含有層2を設けた例を図示したが、集電体3の片面のみに活物質含有層2を設けることもできる。
【0101】
以上のように製造された電極を、例えば、セパレータを介して対極と積層させて、得られた積層体を渦巻き状に捲回することで捲回型電極群を作製することができる。例えば、電極群を電池用の外装部材に収容し、必要に応じて電解質を導入し、外装部材を封止する、等の各種の手順を順次行うことにより、二次電池を得ることができる。
【0102】
<湾曲量の測定方法>
電極の湾曲量は、下記のとおり測定することができる。
【0103】
先ず、電極において、集電体のうち活物質含有層が設けられていない活物質非担持部の位置を確認する。例えば、平面形状の電極の一つの辺に沿って、表裏の両方の主面の何れにも活物質含有層が設けられてなく集電体が露出している部分が含まれ得る。より具体的な例として、一対の円弧形状の長辺を有する平面形状の電極の一方の長辺に沿って、集電体が露出している部分が含まれ得る。その場合は、露出している集電体の部分を活物質非担持部と判断する。或いは、例えば、一対の長辺の両方に沿って集電体が露出している部分が含まれ得る。その場合は、上述したと同様に、露出している集電体の部分のうちより広い短辺幅を有する方を集電タブとして機能できる活物質非担持部と判断する。
【0104】
活物質非担持部の長辺に沿う端部を、第3端部と定義する。活物質非担持部と活物質含有層との境界に位置する活物質含有層の端部を、第2端部と定義する。電極において第2端部を間に挟んで第3端部に対し反対側に位置する活物質含有層の端部を、第1端部と定義する。
【0105】
活物質含有層の第1端部上で、点P1と点P2を設定する。点P1と点P2は、それらの点を結ぶ直線(基準線L)の距離Dが1000mmとなるように設定する。点P1と点P2を結ぶ直線を基準線Lとする。この基準線Lまでの、第1端部からの最大距離Mを測定する。第1端部から第2端部へ向かう方向を正の値と定義したときの、最大距離Mを湾曲量とする。
【0106】
湾曲量は、活物質含有層の第1端部に沿った複数箇所において測定し、得られた測定値の範囲として評価する。測定箇所は、例えば、第1端部に沿って2mあたり0.5m間隔で5箇所とすることができる。電極形状が帯形状の場合、帯の終端から少なくとも0.5m間隙を有する箇所から測定する。しかし、これに限定されない。
【0107】
上記実施形態に係る電極は、活物質含有層と集電体とを具備する。活物質含有層は、円弧形状を有する第1端部と第1端部の反対側にある第2端部とを含む。活物質含有層は、電極活物質を含有する。集電体は、活物質含有層を担持している活物質担持部と、活物質含有層が設けられていない活物質非担持部とを含む。活物質非担持部は、活物質担持部および第2端部と隣接している。電極は-1mm以上0mm未満の範囲内の湾曲量で湾曲した形状を有している。ここで湾曲量は、第1端部から第2端部へ向かう方向を正の値として、第1端部上で直線距離1000mm離れた2つの点を結ぶ基準線までの第1端部からの最大距離で表す。この電極を用いた電極群は、高い歩留りで製造することができる。
【0108】
[実施例]
以下、実施例に基づいて上記実施形態をさらに詳細に説明する。但し、本発明は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
【0109】
(実施例P1)
電極活物質として式LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2で表される組成を有するリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の粉末を準備した。
【0110】
このリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物粉末と、導電剤としてのアセチレンブラックと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、95重量部:3重量部:2重量部の混合比で、溶媒としてのN-メチルピロリドン(NMP)に投入して、混合した。次いで、このようにして得られた混合物を分散させ、スラリーを調製した。
【0111】
次に、調製したスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の表面に塗布した。次に、塗膜を乾燥させた。アルミニウム箔の裏側にも同様にスラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた。アルミニウム箔をスラリーの塗工巾が100mm、スラリー未塗工部の幅が10mmである帯状に裁断した。次に、得られた電極シートに対し、
図5~
図8に示した引伸ばし装置と類似する装置を用いてプレスと引伸ばし処理を連続して実施した。引伸ばし処理は、引伸ばし部材としてのガイドローラーの近傍の中間点で25Nとなる張力で行った。
【0112】
電極シートに対し、プレスと引き伸ばし処理を連続して実施し、集電体の片面当たりの単位面積当たりの質量が160g/m2であり、且つ密度が3.3g/cm3である活物質含有層を備え、湾曲量が-0.4mm~-0.2mmである電極を作製した。ここでいう湾曲量は、上述した方法にて点P1と点P2との間の直線距離Dを1000mmと設定したときの、基準線Lまでの、活物質含有層の第1端部からの最大距離Mを第1端部に沿って0.5m間隔で5箇所測定した数値を範囲で示したものである。
【0113】
上記手順により電極を作製した。
【0114】
(実施例P2-実施例P13、比較例P1-比較例P3)
下記表1及び表2に示すとおりに、電極活物質の組成、集電体の片面毎の単位面積当たりの活物質含有層の質量、活物質含有層の密度、スラリー塗工幅および未塗工部の幅、並びに引伸ばし処理時の中間点での電極シートに対する張力を、それぞれ変更したことを除き、実施例P1と同様の手順で電極を作製した。なお、集電体の片面当たりの活物質含有層の質量は、集電体への片面当たりのスラリーの塗布量により調整した。表2には、各電極について測定された湾曲量を併せて示す。なお、比較例P1についての湾曲量“ほぼゼロ”は、湾曲量の絶対値が小さく正確な測定ができず、実質的には湾曲が確認できなかったことを意味する。
【0115】
【0116】
【0117】
(実施例N1)
電極活物質として、TiNb2O7で表される組成を有するニオブチタン複合酸化物を準備した。導電剤としてアセチレンブラック(AB)と、結着剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)とスチレンブタジェンゴム(SBR)とを準備した。これらTiNb2O7と、ABと、CMCと、SBRとを、95重量部:2重量部:1.5重量部:1.5重量部の混合比で、溶媒としての純水に投入して混合した。次いで、得られた混合物を分散させ、スラリーを得た。
【0118】
次に、塗膜を乾燥させた。アルミニウム箔の裏側にも同様にスラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた。アルミニウム箔をスラリーの塗工巾が100mm、スラリー未塗工部の幅が10mmである帯状に裁断した。次に、得られた電極シートに対し実施例P1と同様にプレスと引伸ばし処理を連続して実施した。引伸ばし処理は、引伸ばし部材としてのガイドローラーの近傍の中間点で30Nとなる張力で行った。
【0119】
電極シートに対し、プレスと引き伸ばし処理を連続して実施し、集電体の片面当たりの単位面積当たりの質量が140g/m2であり、且つ密度が2.7g/cm3である活物質含有層を備え、湾曲量が-0.4mm~-0.2mmである電極を作製した。
【0120】
上記手順により電極を作製した。
【0121】
(実施例N2-実施例N11、比較例N1-比較例N3)
下記表3及び表4に示すとおりに、電極活物質の組成、集電体の片面毎の単位面積当たりの活物質含有層の質量、活物質含有層の密度、スラリー塗工幅および未塗工部の幅、並びに引伸ばし処理時の巻取り点での張力を、それぞれ変更したことを除き、実施例N1と同様の手順で電極を作製した。なお、集電体の片面当たりの活物質含有層の質量は、集電体への片面当たりのスラリーの塗布量により調整した。表4には、各電極について測定された湾曲量を併せて示す。なお、比較例N1についての湾曲量“ほぼゼロ”は、比較例P1と同様に、実質的には湾曲が確認できなかったことを意味する。
【0122】
(実施例N12)
電極活物質として、Li4Ti5O12で表される組成を有する複合酸化物を準備した。導電剤としてアセチレンブラック(AB)と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を準備し、これらLi4Ti5O12と、ABと、PVdFとを、95重量部:3重量部:2重量部の混合比で、溶媒としてのNMPに投入して混合した点と、下記表3及び表4に示すとおりに、活物質含有層の密度、並びに引伸ばし処理時の中間点での張力を、それぞれ変更したことを除き、実施例N1と同様の手順で電極を作製した。なお、集電体の片面当たりの活物質含有層の質量は、集電体への片面当たりのスラリーの塗布量により調整した。
【0123】
【0124】
【0125】
(実施例G1)
正極として、実施例P1で作製した電極を準備した。負極として、実施例N1で作製した電極を準備した。正極および負極の何れについても、電極製造後一定期間保管したものを準備した。厚さが15μmであるポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレータを準備した。次いで、正極および負極を、その間にセパレータを介して渦巻状に捲回した後、加熱プレスを施すことにより、扁平状電極群を作製した。同様の手順で、扁平状電極群を合計100個作製した。
【0126】
(実施例G2-実施例G26、比較例G1-比較例G9)
用いる電極の組合せを、下記表5-表7に示す組合せに変更したことを除き、実施例G1と同様の手順で電極群を100個ずつ作製した。
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
<評価>
実施例G1-実施例G26及び比較例G1-比較例G9のそれぞれについて100個ずつ製造した電極群のうち、正極、負極、及びセパレータを含んだ積層体の捲回時に捲きズレが生じた“不良”の電極群の数を記録した。その結果を上記表5-表7に示す。
【0131】
上記結果が示すとおり、実施例G1-実施例G26で作製した、引伸ばし処理により湾曲量を-1mm以上0mm未満の範囲内に調整した実施例P1-P13に係る電極を正極に用いる、及び/又は、同様に湾曲量を調整した実施例N1-N12に係る電極を負極に用いた電極群(実施例G1-実施例G26)では、捲きズレによる不良の発生回数が少なかった。比較例G1-比較例G9にて作製した、上記範囲に湾曲量を調整した電極を正極および負極の何れにも使用しなかった電極群では、捲きズレによる不良が頻発した。
【0132】
以上説明した1以上の実施形態および実施例によれば、活物質含有層と集電体とを具備する電極が提供される。活物質含有層は、円弧形状を有する第1端部と第1端部の反対側にある第2端部とを含み、且つ、電極活物質を含有する。集電体は、活物質含有層を担持している活物質担持部と、活物質担持部および第2端部と隣接し且つ活物質含有層が設けられていない活物質非担持部とを含む。第1端部上で直線距離1000mm離れた2つの点を結ぶ基準線までの第1端部からの最大距離で表す、電極の湾曲量は、-1mm以上0mm未満の範囲内にある。湾曲量については、第1端部から第2端部へ向かう方向を正の値とする。当該電極を用いることで、電極群の製造の歩留りを高くすることができる。
【0133】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 円弧形状を有する第1端部と前記第1端部の反対側にある第2端部とを含み且つ電極活物質を含有する活物質含有層と、
前記活物質含有層を担持している活物質担持部と、前記活物質担持部および前記第2端部と隣接し且つ前記活物質含有層が設けられていない活物質非担持部とを含む集電体とを具備し、
前記第1端部から前記第2端部へ向かう方向を正の値とし、且つ前記第1端部上で直線距離1000mm離れた2つの点を結ぶ基準線までの前記第1端部からの最大距離で表す湾曲量は-1mm以上0mm未満の範囲内にある、電極。
[2] 前記集電体はアルミニウムを含む、[1]に記載の電極。
[3] 前記第1端部と前記第2端部との間の前記活物質含有層の幅は60mm以上250mm以下であり、前記第2端部と交差する方向への前記活物質非担持部の幅は5mm以上25mm以下である、[1]又は[2]に記載の電極。
[4] 前記活物質担持部上の前記活物質含有層の単位面積当たりの質量は前記集電体の片面毎に100g/m
2
以上300g/m
2
以下である、[1]乃至[3]の何れか1項に記載の電極。
【符号の説明】
【0134】
1…電極、2…活物質含有層、2a…第1端部、2b…第2端部、3…集電体、3a…活物質担持部、3b…活物質非担持部、3c…第3端部、10…電極シート、20…正極、22…正極活物質含有層、23…正極集電体、23b…正極集電タブ、30…負極、32…負極活物質含有層、33…負極集電体、33b…負極集電タブ、40…セパレータ、50…電極群、70…引伸ばし装置、71…プレスユニット、71a,71b…プレスロール、72…ストレッチユニット、73…巻取りユニット、73a…回転軸、73…巻取りユニット、74,75,76,77…ガイドローラー、78…ガイドローラー(ストレッチ部材)、78a…ヒーター、81…小径部、81a…退避面、82…大径部、82a…突出面、83…段差部、84…逃げ部、84a…逃げ面、90…搬送面、90a…隙間、178…ガイドローラー、184…逃げ部、184a…逃げ面、184b…開始端部、278…ガイドローラー、283…段差部、H…段差。