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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】光走査装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/12 20060101AFI20241105BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20241105BHJP
   B41J 2/47 20060101ALI20241105BHJP
   G03G 15/04 20060101ALI20241105BHJP
   H04N 1/113 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
G02B26/12
G02B26/10 E
B41J2/47 101D
G03G15/04 111
H04N1/113
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021049648
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2021165834
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2024-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2020066473
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】谷田部 透
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-9069(JP,A)
【文献】特開2017-90593(JP,A)
【文献】特開平9-33842(JP,A)
【文献】特開2008-158415(JP,A)
【文献】特開2010-156976(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0105570(US,A1)
【文献】MIL-HDBK-141, MILITARY STANDARDIZATION HANDBOOK: OPTICAL DESIGN,2062年10月05日,8-15,http://everyspec.com/MIL-HDBK/MIL-HDBK-0099-0199/MIL-HDBK-141_24399/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10 -26/12
B41J 2/47
G03G 15/04 -15/043
H04N 1/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光源からの光束を偏向して第1の被走査面を主走査方向に走査する第1の偏向器と、
第1及び第2の結像光学素子を含み、前記第1の偏向器によって偏向された光束を前記第1の被走査面に導光する第1の結像光学系とを備え、
前記第1及び第2の結像光学素子の夫々の入射面及び出射面について、光軸との交点を原点、光軸に平行な軸をx軸、主走査断面内において光軸に垂直な軸をy軸、副走査断面内において光軸に垂直な軸をz軸、非球面係数をMmn、光軸を含む副走査断面内における曲率半径をr、変化係数をEとし、前記第1及び第2の結像光学素子の夫々の入射面及び出射面の副走査断面内での形状を以下の式で表したとき、
【数1】
【数2】
前記第1の結像光学素子の入射面及び出射面の少なくとも一方と前記第2の結像光学素子の入射面及び出射面とにおいて、mが0ではないMmnの少なくとも一つが0ではなく、
前記第2の結像光学素子の入射面及び出射面において、M01は互いに同符号であることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記第1の結像光学素子の入射面及び出射面の少なくとも一方と前記第2の結像光学素子の入射面とのそれぞれにおいて
【数3】
なる値をT及びTとしたとき、前記y軸の各座標において、
×T≧0
なる条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記第1の結像光学素子の入射面及び出射面の少なくとも一方において、M01は0であることを特徴とする請求項1または2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記第1の結像光学系からの光束を透過させる透過部材を備え、
該透過部材の光学面の副走査断面内での光軸上における法線は、前記第2の結像光学素子の入射面及び出射面の副走査断面内での光軸上における法線と同一の方向に傾斜していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項5】
副走査断面内において前記第1の偏向器の第1の偏向面に対して前記第1の光源からの光束を垂直入射させる第1の入射光学系を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項6】
副走査断面内において前記第1の偏向器の第2の偏向面に対して第2の光源からの光束を垂直入射させる第2の入射光学系と、
前記第2の偏向面によって偏向された光束を第2の被走査面に導光する第2の結像光学系とを備え、
前記第1の偏向器は、前記第2の光源からの光束を偏向して前記第2の被走査面を主走査方向に走査することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項7】
第3及び第4の光源からの光束を偏向して第3及び第4の被走査面を主走査方向に走査する第2の偏向器と、
副走査断面内において前記第2の偏向器の第1及び第2の偏向面に対して前記第3及び第4の光源からの光束を垂直入射させる第3及び第4の入射光学系と、
前記第2の偏向器の前記第1及び第2の偏向面によって偏向された光束を前記第3及び第4の被走査面に導光する第3及び第4の結像光学系と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項8】
複数の発光点を含む前記第1の光源からの複数の光束の副走査方向における光束径を規制する副走査絞りを有し、前記第1の偏向器の第1の偏向面に対して前記複数の光束を入射させる第1の入射光学系を備え、
前記第1の結像光学素子の入射面及び出射面において、mが0ではないMmnの少なくとも一つが0ではなく、
前記第1の入射光学系の副走査断面内における横倍率をβs、前記第1の光源から前記副走査絞りまでの光軸上における距離をLs、前記第1の偏向器の軸上偏向点から前記第1の被走査面までの距離をTcとしたとき、
Ls≦Tc/(βs)
なる条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項9】
前記第1の結像光学素子は、前記第1の結像光学系の中で主走査断面内における正の屈折力が最も大きい光学面を有することを特徴とする請求項8に記載の光走査装置。
【請求項10】
前記第1の結像光学素子は、前記第1の結像光学系の中で副走査断面内における正の屈折力が最も小さい光学面を有することを特徴とする請求項8または9に記載の光走査装置。
【請求項11】
前記第1の入射光学系は、副走査断面内において前記第1の偏向器に対して前記複数の光束を斜入射させることを特徴とする請求項8乃至10の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項12】
前記第1の偏向器の前記第1の偏向面に対して複数の発光点を含む第2の光源からの複数の光束を斜入射させる第2の入射光学系と、
前記第1の偏向面によって偏向された前記第2の光源からの複数の光束を第2の被走査面に導光する第2の結像光学系と、
を備え、
前記第1の偏向器は、前記第2の光源からの複数の光束を偏向して前記第2の被走査面を主走査方向に走査することを特徴とする請求項11に記載の光走査装置。
【請求項13】
前記第2の結像光学系は、前記第1の結像光学素子を含むことを特徴とする請求項12に記載の光走査装置。
【請求項14】
前記第1及び第2の光源からの複数の光束は、前記第1の結像光学素子の第1及び第2の入射面から入射した後、第1及び第2の出射面から出射し、
前記第1及び第2の入射面それぞれにおいて
【数4】
なる値をTi1及びTi2としたとき、前記y軸の各座標において、
i1×Ti2≦0
なる条件を満たすことを特徴とする請求項13に記載の光走査装置。
【請求項15】
光軸に垂直な断面内において、前記第1の光源の複数の発光点の配列方向が主走査方向に対してなす角度をγ、前記第2の光源の複数の発光点の配列方向が主走査方向に対してなす角度をγとしたとき、
γ/γ<0
なる条件を満たすことを特徴とする請求項12乃至14の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項16】
請求項1乃至15の何れか一項に記載の光走査装置と、該光走査装置により前記第1の被走査面に形成される静電潜像をトナー像として現像する現像器と、現像された前記トナー像を被転写材に転写する転写器と、転写された前記トナー像を前記被転写材に定着させる定着器とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
請求項1乃至16の何れか一項に記載の光走査装置と、外部機器から出力された信号を画像データに変換して前記光走査装置に入力するプリンタコントローラとを備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置に関し、レーザビームプリンタ(LBP)やデジタル複写機、マルチファンクションプリンタ(MFP)等の画像形成装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光走査装置において結像光学素子の光学面によって反射された反射光が不要光(ゴースト)として被走査面に入射することで画質が低下してしまったり、反射光が不要光(戻り光)として偏向器を介して光源に戻ることで光源の出力が不安定化してしまったりすることが知られている。
特許文献1は、そのような不要光の発生を抑制するために、子線が光軸に対してチルトした光学面(子線チルト面)を有する結像光学素子を用いた光走査装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-157205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、副走査断面内で偏向器に対して光束を斜入射させる構成(副走査斜入射系)において子線チルト面に起因して生じる走査線湾曲を補正するための非球面を設けている。
しかしながら、副走査断面内で偏向器に対して光束を垂直入射させる構成においては、特許文献1のように非球面を一面設けるだけでは、子線チルト面に起因する光学性能の低下を十分に補正することが難しい。
また、特許文献1に係る非球面の副走査断面における定義式は3次の非球面係数を含んでいるため、結像光学素子上における光線振れによる光学性能に対する敏感度が高くなってしまう。
そこで本発明は、不要光の発生を抑制しつつ、十分な光学性能を確保することができる光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る光走査装置は、第1の光源からの光束を偏向して第1の被走査面を主走査方向に走査する第1の偏向器と、第1及び第2の結像光学素子を含み、第1の偏向器によって偏向された光束を第1の被走査面に導光する第1の結像光学系とを備え、第1及び第2の結像光学素子の夫々の入射面及び出射面について、光軸との交点を原点、光軸に平行な軸をx軸、主走査断面内において光軸に垂直な軸をy軸、副走査断面内において光軸に垂直な軸をz軸、非球面係数をMmn、光軸を含む副走査断面内における曲率半径をr、変化係数をEとし、第1及び第2の結像光学素子の夫々の入射面及び出射面の副走査断面内での形状を以下の式で表したとき、
【数1】
【数2】
第1の結像光学素子の入射面及び出射面の少なくとも一方と第2の結像光学素子の入射面及び出射面とにおいて、mが0ではないMmnの少なくとも一つが0ではなく、
第2の結像光学素子の入射面及び出射面において、M01は互いに同符号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、不要光の発生を抑制しつつ、十分な光学性能を確保することができる光走査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第一実施形態に係る光走査装置の主走査断面内展開図及び副走査断面図。
図2】第一実施形態に係る光走査装置の結像光学素子による反射の様子を示した図。
図3】従来の光走査装置及び第一実施形態に係る光走査装置における結像光学素子の副走査断面図。
図4】従来の光走査装置における結像光学素子の光学面の子線チルト角の主走査方向位置依存性を示した図。
図5】従来の光走査装置における各光学性能の像高依存性を示した図。
図6】第一実施形態に係る光走査装置における結像光学素子の光学面の子線チルト角の主走査方向位置依存性を示した図。
図7】第一実施形態に係る光走査装置における各光学性能の像高依存性を示した図。
図8】第二実施形態に係る光走査装置の主走査断面内展開図、副走査断面図及び副走査断面内展開図。
図9】第二実施形態に係る光走査装置における結像光学素子の光学面の子線チルト角の主走査方向位置依存性を示した図。
図10】第二実施形態に係る光走査装置における各光学性能の像高依存性を示した図。
図11】第三実施形態に係る光走査装置の主走査断面内展開図及び副走査断面内展開図。
図12】第三実施形態に係る光走査装置における光源の発光点の配置を示した図。
図13】従来の光走査装置において主走査ジッターが発生する様子を示した図。
図14】第三実施形態に係る光走査装置及び比較例の光走査装置における主走査ジッター量の像高依存性を示した図。
図15】第四実施形態に係る光走査装置の主走査断面内展開図、副走査断面内展開図及び副走査断面図。
図16】第四実施形態に係る光走査装置における光源の発光点の配置を示した図。
図17】第四実施形態に係る光走査装置における結像光学素子のレンズ形状を示した図。
図18】第四実施形態に係る光走査装置における結像光学素子の光学面の子線チルト角の主走査方向位置依存性を示した図。
図19】第四実施形態に係る光走査装置における主走査ジッター量の像高依存性を示した図。
図20】実施形態に係るカラー画像形成装置の要部副走査断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態に係る光走査装置について図面に基づいて説明する。なお、以下に示す図面は、本実施形態を容易に理解できるようにするために、実際とは異なる縮尺で描かれている場合がある。
【0009】
従来、光走査装置はレーザービームプリンタ(LBP)やデジタル複写機等に広く利用されている。
光走査装置では、画像信号に応じてレーザー等の光源から光変調されて出射した光束を、例えば回転多面鏡(ポリゴンミラー)よりなる偏向器によって周期的に偏向させている。
そして、偏向された光束を、fθ特性を有する結像光学系によって感光体(像担持体)の感光面(被走査面)上にスポット状に集光することで、感光面上を光走査して画像記録を行っている。
【0010】
そして、レーザービームプリンタ、デジタル複写機やマルチファンクションプリンタ等の画像形成装置では、小型化や高画質化が望まれている。
また、画像形成装置の高画質化を図る上で、光走査装置の結像光学系に設けられた結像光学素子の光学面からの反射光が画質を劣化させる一つの要因となり得ることも知られている。
【0011】
具体的には、結像光学素子の光学面からの反射光が偏向器に再入射した後、光源に戻ることで光源の出力が不安定化する戻り光が発生する可能性がある。
また、結像光学系に設けられた結像光学素子の光学面からの反射光が偏向器に再入射した後、再度結像光学系に入射し、被走査面に到達するゴーストも発生する可能性がある。
さらに、結像光学系に設けられた結像光学素子の光学面からの反射光が対向側に配置された別の結像光学系の光路に侵入し、対向側の被走査面に到達するゴーストも発生する可能性がある。
さらに、小型化を図ると光学素子同士が近接して配置されるため、そのような戻り光やゴーストがより発生しやすくなる。
【0012】
そこで、そのような戻り光やゴーストを低減するために、結像光学素子の光学面をチルトさせることで結像光学素子からの反射光の光路への侵入を抑制する構成が知られている。
しかしながら、そのように結像光学素子の光学面をチルトさせると、それに伴って光学性能が低下する可能性があり、その場合低下した光学性能を補正するための構成も必要となってくる。
本実施形態に係る光走査装置は、戻り光やゴーストの発生を抑制しつつ十分な光学性能を確保することで、高画質化を達成することができる光走査装置及びそれを用いた画像形成装置を得ることを目的としている。
【0013】
[第一実施形態]
図1(a)及び(b)はそれぞれ、第一実施形態に係る光走査装置100の主走査断面内展開図及び結像光学系の副走査断面図を示している。
なお以下の説明において、主走査方向とは、偏向器(回転多面鏡)の回転軸及び結像光学系の光軸に垂直な方向(偏向器により被走査面が光走査される方向)であり、副走査方向とは、偏向器の回転軸に平行な方向である。
また主走査断面とは、副走査方向に垂直な断面(主走査方向及び結像光学系の光軸に平行な断面)であり、副走査断面とは、主走査方向に垂直な断面(副走査方向及び結像光学系の光軸に平行な断面)である。
【0014】
図1(a)及び(b)に示されているように、本実施形態に係る光走査装置100は、光源1a、1b、1c及び1d(第1、第2、第3及び第4の光源)、アナモフィックレンズ2a、2b、2c及び2d、及び副走査絞り31a、31b、31c及び31dを備えている。
また本実施形態に係る光走査装置100は、主走査絞り32a、32b、32c及び32d、偏向器41及び42、及び第1の結像光学素子71a、71b、71c及び71dを備えている。
また本実施形態に係る光走査装置100は、第2の結像光学素子72a、72b、72c及び72d、及び折り返しミラー7a、7b、7c及び7dを備えている。
【0015】
光源1a乃至1dは、例えば発光点を有する半導体レーザーである。
アナモフィックレンズ2a乃至2dは、主走査断面内と副走査断面内とで互いに異なる正のパワー(屈折力)を有する。そして、入射した光束を主走査断面内において略平行光束に変換すると共に、副走査方向に集光する。なおここで、略平行光束とは、弱発散光束、弱収束光束及び平行光束を含むものとする。
【0016】
副走査絞り31a乃至31dは、入射した光束の副走査方向における形状(副走査方向における光束の幅、光束径)を規制する。
主走査絞り32a乃至32dは、入射した光束の主走査方向における形状(主走査方向における光束の幅、光束径)を規制する。
従って、副走査絞り31a乃至31d及び主走査絞り32a乃至32dによって入射した光束が所望の形状に形成される。
【0017】
偏向器41及び42は、偏向手段としての回転多面鏡(ポリゴンミラー)であり、図中矢印A方向に一定速度で回転している。なお、本実施形態に係る光走査装置100では、偏向器41及び42は、各々独立に回転可能であるように副走査方向に整列して配置されている。
第1の結像光学素子71a乃至71d及び第2の結像光学素子72a乃至72dは、例えば入射した光束を被走査面9a乃至9dに導光(集光)する結像レンズである。
折り返しミラー7a乃至7dは、入射した光束を被走査面9a乃至9dに向けて折り返す(反射する)。
【0018】
本実施形態に係る光走査装置100では、副走査絞り31a、アナモフィックレンズ2a及び主走査絞り32aによって、第1の入射光学系75aが構成される。
また、副走査絞り31b、アナモフィックレンズ2b及び主走査絞り32bによって、第2の入射光学系75bが構成される。
また、副走査絞り31c、アナモフィックレンズ2c及び主走査絞り32cによって、第3の入射光学系75cが構成される。
また、副走査絞り31d、アナモフィックレンズ2d及び主走査絞り32dによって、第4の入射光学系75dが構成される。
【0019】
また、本実施形態に係る光走査装置100では、第1の結像光学素子71a及び第2の結像光学素子72aによって第1の結像光学系85aが構成され、第1の結像光学素子71b及び第2の結像光学素子72bによって第2の結像光学系85bが構成される。
また、第1の結像光学素子71c及び第2の結像光学素子72cによって第3の結像光学系85cが構成され、第1の結像光学素子71d及び第2の結像光学素子72dによって第4の結像光学系85dが構成される。
【0020】
図1(a)及び(b)に示されているように、光源1a乃至1dそれぞれから出射した光束Ra、Rb、Rc及びRdは、副走査絞り31a乃至31dによって副走査方向における形状が規制される。
そして、副走査絞り31a乃至31dを通過した光束Ra乃至Rdはそれぞれ、アナモフィックレンズ2a乃至2dによって主走査断面内において略平行光束に変換されると共に、副走査方向に集光される。
【0021】
次に、アナモフィックレンズ2a乃至2dを通過した光束Ra乃至Rdはそれぞれ、主走査絞り32a乃至32dによって主走査方向における形状が規制される。
そして、主走査絞り32a及び32bを通過した光束Ra及びRbはそれぞれ、偏向器41(第1の偏向器)の第1の偏向面41a及び第2の偏向面41bに垂直に入射する。
また、主走査絞り32c及び32dを通過した光束Rc及びRdはそれぞれ、偏向器42(第2の偏向器)の第1の偏向面42a及び第2の偏向面42bに垂直に入射する。
【0022】
すなわち、第1乃至第4の入射光学系75a及び75dはそれぞれ、その光軸が偏向器41及び42の回転軸に垂直な主走査断面に平行になるように配置されている。
そして、光源1a乃至1dから射出された光束Ra乃至Rdはそれぞれ、第1乃至第4の入射光学系75a及び75dを介して、主走査断面内において偏向器41及び42の偏向面(偏向反射面)41a、41b、42a及び42bに入射する。
これにより、光束Ra乃至Rdはそれぞれ、副走査断面内においてのみ集光され、偏向面41a、41b、42a及び42b近傍において主走査方向に長い線像として結像される。
【0023】
そして、偏向器41の第1の偏向面41aによって反射偏向された光束Raは、第1の結像光学素子71a、折り返しミラー7a及び第2の結像光学素子72aを介して、被走査面9a(第1の被走査面)上に集光(光スポットとして結像)される。
また、偏向器41の第2の偏向面41bによって反射偏向された光束Rbは、第1の結像光学素子71b、折り返しミラー7b及び第2の結像光学素子72bを介して、被走査面9b(第2の被走査面)上に集光(光スポットとして結像)される。
また、偏向器42の第1の偏向面42aによって反射偏向された光束Rcは、第1の結像光学素子71c、折り返しミラー7c及び第2の結像光学素子72cを介して、被走査面9c(第3の被走査面)上に集光(光スポットとして結像)される。
また、偏向器42の第2の偏向面42bによって反射偏向された光束Rdは、第1の結像光学素子71d、折り返しミラー7d及び第2の結像光学素子72dを介して、被走査面9d(第4の被走査面)上に集光(光スポットとして結像)される。
【0024】
そして、偏向器41及び42が図中矢印A方向に回転し、被走査面9a乃至9d上を光スポットがそれぞれ矢印Ba、Bb、Bc及びBd方向に走査することで静電潜像が形成される。
なお、被走査面9a乃至9dとしては、例えば感光ドラム面などが挙げられる。
【0025】
なお、本実施形態に係る光走査装置100において用いられているアナモフィックレンズ2a乃至2dの代わりに、入射した光束を略平行光束に変換するコリメータレンズと、副走査方向に集光するシリンダーレンズとを用いても構わない。
【0026】
次に、本実施形態に係る光走査装置100の第1乃至第4の入射光学系75a乃至75d及び第1乃至第4の結像光学系85a乃至85dの諸特性を以下の表1に示す。
なお表1において、「E±x」は「10±x」を示しており、また特に表記していない係数については全て0である。
【0027】
【表1】
【0028】
ここで、各レンズ面と光軸との交点(レンズ面頂点)を原点とし、光軸に平行な軸をx軸、主走査断面内において光軸に垂直な軸をy軸、副走査断面内において光軸に垂直な軸をz軸とする。
このとき、第1の結像光学素子71a乃至71d及び第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面及び出射面の主走査断面内における非球面形状(母線形状)は、以下の式(1)で表される。
【数3】
ここで、Rは曲率半径、kは離心率、B(i=1,2,3,・・・,16)は非球面係数である。
【0029】
また、第1の結像光学素子71a乃至71d及び第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面及び出射面の副走査断面内における非球面形状(子線形状)は、以下の式(2)で表される。
【数4】
ここで、Mmn(m=0~16及びn=1~8)は非球面係数である。
【0030】
また、副走査断面内における曲率半径r’は、レンズ面のy座標に従って以下の式(3)で表されるように連続的に変化する。
【数5】
【0031】
ここで、rは光軸を含む副走査断面内における曲率半径、E(i=1~16)は変化係数である。
【0032】
また、式(2)における以下の係数
【数6】
は、n次の子線における非球面係数と称することができる。
【0033】
特に、1次の子線における非球面係数は、
【数7】
と表され、これを副走査断面内におけるチルト角(子線チルト角)と称することができる。
また、光軸上ではy=0であるため、光軸を含む副走査断面内におけるチルト角はM01で表される。
【0034】
表1に示されているように、本実施形態に係る光走査装置100では、第1の結像光学素子71a乃至71dの出射面、第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面、及び第2の結像光学素子72a乃至72dの出射面が、zの1次の非球面を有している。
すなわち、各光学面は、子線チルト角が主走査方向の位置yに応じて変化する子線チルト変化面となっている。
換言すると、第1の結像光学素子71a乃至71dの出射面、第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面、及び第2の結像光学素子72a乃至72dの出射面では、mが0ではないMmnの少なくとも一つが0ではない。
【0035】
また表1に示されているように、第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面及び出射面においては、M01が0ではない。
すなわち、第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面及び出射面は、光軸上においても子線チルト角を有する。
そのため、第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面及び出射面においては、形状定義の原点と面頂点(最も光軸方向に突出した点)とが互いに一致していない。
【0036】
また、本実施形態に係る光走査装置100では、第1の結像光学素子71a乃至71dは互いに同一形状であり、第1の結像光学素子71b及び71dはそれぞれ、第1の結像光学素子71a及び71cに対して副走査方向に反転して配置されている。
同様に、第2の結像光学素子72a乃至72dは互いに同一形状であり、第2の結像光学素子72b及び72dはそれぞれ、第2の結像光学素子72a及び72cに対して副走査方向に反転して配置されている。
また、本実施形態に係る光走査装置100では、第1の結像光学素子71a乃至71d及び第2の結像光学素子72a乃至72dは、プラスチックモールドレンズで形成されている。
【0037】
次に、本実施形態に係る光走査装置100における効果について説明する。
図1(a)及び(b)に示されているように、本実施形態の光走査装置100では、第1及び第3の結像光学系85a及び85cと第2及び第4の結像光学系85b及び85dとが、偏向器41及び42を挟んで互いに両側に配置されている。
そして、偏向器41及び42の互いに異なる偏向面41a、41b、42a及び42bによって光束Ra乃至Rdが偏向されることで、複数の被走査面9a乃至9dが走査される。
【0038】
そのような両側走査系においては、一方の結像光学系に設けられた結像光学素子の光学面によって反射された反射光が、他方の結像光学系に入射してしまう可能性がある。
それにより、本来走査されるべきでない被走査面、すなわち一方の側に設けられた結像光学素子によって反射された反射光が他方の側における被走査面に到達してしまうゴーストが発生する。
【0039】
さらに、結像光学素子の光学面によって反射された反射光が偏向器41及び42に再入射した後、光源に戻ることで、光源の出力が不安定になる戻り光も発生する可能性がある。
加えて、結像光学素子の光学面によって反射された反射光が偏向器41及び42に再入射した後に再び偏向され、その結像光学素子を介して被走査面へ到達するゴーストが発生する可能性がある。
従って、本実施形態に係る光走査装置100において用いられているような両側走査系では、上記に示したようなゴーストや戻り光によって画像不良が引き起こされてしまう虞がある。
【0040】
そこで、本実施形態に係る光走査装置100では、光学面からの反射光が特に問題となる第2の結像光学素子72a乃至72dにおいて、各光学面(すなわち、入射面及び出射面)を光軸上において子線チルト角を有するように設計している。
これにより、図2(a)及び(b)それぞれに示されているように、第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面及び出射面によって反射された反射光が、偏向器41及び42の副走査方向上方又は下方を通過するようになる。
従って、本実施形態に係る光走査装置100では、第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面及び出射面によって反射された反射光が、偏向器41及び42や偏向器41及び42を挟んで他方の側に配置された結像光学系へ入射することを抑制することができる。
【0041】
図3(a)は、斜入射系を用いた従来の光走査装置における第2の結像光学素子の副走査断面図を示している。
また図3(b)は、垂直入射系を用いた本実施形態に係る光走査装置100における第2の結像光学素子72a乃至72dの副走査断面図を示している。
【0042】
図3(a)に示されているように、斜入射系を用いた従来の光走査装置における第2の結像光学素子は、入射面の子線チルト角T1aと出射面の子線チルト角T2aとが通常互いに異符号、もしくは互いの差が大きくなるように設計されている。これにより、走査線湾曲及び45度アス(45度方向の非点収差)を補正している。
【0043】
一方、垂直入射系を用いた本実施形態に係る光走査装置100においてそのような構成を用いようとすると、光軸上におけるサジタルコマ収差が大きくなるため、光学性能の観点で好ましくない。
そこで本実施形態に係る光走査装置100では、図3(b)に示されているように、第2の結像光学素子72a乃至72dそれぞれの入射面及び出射面の光軸を含む副走査断面内におけるチルト角T1b及びT2bを互いに同一の方向に設定している。
換言すると、本実施形態に係る光走査装置100では、第2の結像光学素子72a乃至72dそれぞれの入射面及び出射面において、M01は互いに同符号である。
【0044】
図4(a)は、比較例の光走査装置における第1の結像光学素子の入射面及び出射面の子線チルト角の主走査方向位置依存性を示している。
また図4(b)は、比較例の光走査装置における第2の結像光学素子の入射面及び出射面の子線チルト角の主走査方向位置依存性を示している。
【0045】
また、図5(a)、(b)及び(c)はそれぞれ、比較例の光走査装置における光学性能である照射位置、サジタルコマ収差及び45度アスの像高依存性を示している。
なお、比較例の光走査装置の諸特性は以下の表2に示されている。比較例の光走査装置では、第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面及び出射面のみが子線チルト変化面となるように子線チルト角を設定している。
【0046】
【表2】
【0047】
図4(b)に示されているように、比較例の光走査装置において、走査線湾曲及び45度アスを補正するように第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面及び出射面における子線チルト角を設定すると、最軸外像高近傍において両面の子線チルト角が大きくなる。
それにより、図5(b)に示されているように、最軸外像高近傍においてサジタルコマ収差が悪化してしまう。
【0048】
図6(a)は、本実施形態に係る光走査装置100における第1の結像光学素子71a乃至71dの入射面及び出射面の子線チルト角の主走査方向位置依存性を示している。
また図6(b)は、本実施形態に係る光走査装置100における第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面及び出射面の子線チルト角の主走査方向位置依存性を示している。
また、図7(a)、(b)及び(c)はそれぞれ、本実施形態に係る光走査装置100における光学性能である照射位置、サジタルコマ収差及び45度アスの像高依存性を示している。
【0049】
図6(a)に示されているように、本実施形態に係る光走査装置100では、第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面及び出射面に加えて、第1の結像光学素子71a乃至71dの出射面においても子線チルト変化面となるように子線チルト角を設定している。
また、図6(a)及び(b)に示されているように、本実施形態に係る光走査装置100では、第1の結像光学素子71a乃至71dの出射面の子線チルト角と第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面の子線チルト角とを互いに同一の方向に設定している。
【0050】
換言すると、本実施形態に係る光走査装置100では、第1の結像光学素子71a乃至71dの出射面の子線チルト角と第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面の子線チルト角とをそれぞれ、T及びTとしたとき、各y座標において以下の式(4)を満たしている。
【数8】
【0051】
これにより、本実施形態に係る光走査装置100では、図7(a)、(b)及び(c)に示されているように各光学性能、すなわち照射位置、サジタルコマ収差及び45度アスを良好に補正することができる。
【0052】
従って、本実施形態に係る光走査装置100では上記に示した構成を採ることにより、第2の結像光学素子72a乃至72dによって反射された反射光によるゴーストや戻り光の発生を抑制しつつ、光学性能を良好に補正することができる。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る光走査装置100によれば、ゴーストや戻り光の低減と光学性能の補正とを両立することができ、画像形成装置に用いた際に良好な画像を容易に形成することができる。
【0054】
[第二実施形態]
図8(a)、(b)及び(c)はそれぞれ、第二実施形態に係る光走査装置200の主走査断面内展開図、副走査断面図及び副走査断面内展開図を示している。
なお、第二実施形態に係る光走査装置200は、防塵ガラス8a乃至8dが設けられていること以外は第一実施形態に係る光走査装置100と同一の構成であるため、同一の部材には同一の付番を付して、説明を省略する。
【0055】
本実施形態に係る光走査装置200の第1乃至第4の入射光学系75a乃至75d及び第1乃至第4の結像光学系85a乃至85dの諸特性が以下の表3に示されている。
なお、第二実施形態に係る光走査装置200に設けられた第1の結像光学素子71a乃至71d及び第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面及び出射面の非球面形状は、第一実施形態に係る光走査装置100と同様に、上記の式(1)乃至(3)によって表される。
【0056】
【表3】
【0057】
図8(a)乃至(c)に示されているように、本実施形態に係る光走査装置200では、第2の結像光学素子72a乃至72dと被走査面9a乃至9dとの間にそれぞれ、塵やトナー等の進入を抑制するためのパワーを有さない防塵ガラス8a、8b、8c及び8d(透過部材)が設けられている。
また表3に示されているように、防塵ガラス8a乃至8dはそれぞれ、第1乃至第4の結像光学系85a乃至85dの光軸に対して9.6度だけ傾斜して配置されている。
これにより、図8(c)に示されているように、防塵ガラス8a乃至8dはそれぞれ、第2の結像光学素子72a乃至72dの光軸上における子線チルトの方向と同一の方向に傾斜している。
換言すると、防塵ガラス8a乃至8dそれぞれの光学面の副走査断面内での光軸上における法線は、第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面及び出射面の副走査断面内での光軸上における法線と同一の方向に傾斜している。
【0058】
図9(a)は、本実施形態に係る光走査装置200における第1の結像光学素子の入射面及び出射面の子線チルト角の主走査方向位置依存性を示している。
また図9(b)は、本実施形態に係る光走査装置200における第2の結像光学素子の入射面及び出射面の子線チルト角の主走査方向位置依存性を示している。
また、図10(a)、(b)及び(c)はそれぞれ、本実施形態に係る光走査装置200における光学性能である照射位置、サジタルコマ収差及び45度アスの像高依存性を示している。
【0059】
図9(b)に示されているように、本実施形態に係る光走査装置200における第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面及び出射面の最軸外像高近傍における子線チルト角は、第一実施形態に係る光走査装置100と比べて低減できていることがわかる。
また、図10(a)乃至(c)に示されているように、本実施形態に係る光走査装置200においても各光学性能、すなわち照射位置、サジタルコマ収差及び45度アスを良好に補正することができている。
【0060】
上記のように、本実施形態に係る光走査装置200では、防塵ガラス8a乃至8dを設けている。また、防塵ガラス8a乃至8dはそれぞれ、第2の結像光学素子72a乃至72dの光軸上における子線チルトの方向と同一の方向に傾斜するように、光路に対して9.6度だけ傾斜して配置している。
これにより、第2の結像光学素子72a乃至72dの入射面及び出射面の最軸外像高近傍における子線チルト角を低減しつつ、第2の結像光学素子72a乃至72dによって反射された反射光によるゴーストや戻り光の発生を抑制すると共に、光学性能を良好に補正することができる。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る光走査装置200によれば、ゴーストや戻り光の低減と光学性能の補正とを両立することができ、画像形成装置に用いた際に良好な画像を容易に形成することができる。
【0062】
[第三実施形態]
結像光学素子の光学面が子線チルト変化面で形成されている第一及び第二実施形態のような光走査装置において、複数の発光点を有するマルチビーム光源を用いる場合を考える。
このとき、複数の発光点は互いに副走査方向に離間して配置されているため、複数の発光点から出射した各光束の主光線が結像光学素子に入射する位置は、副走査方向において互いに離間してしまう。
【0063】
そのため、各光束に対する主走査断面内における倍率が互いに異なることとなる。それにより、導光される被走査面上の軸上像高における集光点と最軸外像高における集光点との間隔が各光束で互いに異なることとなり、主走査ジッターが発生する。
そこで以下では、そのような主走査ジッターを抑制することをできる光走査装置を提供することを目的としている。
【0064】
図11(a)、(b)及び(c)はそれぞれ、第三実施形態に係る光走査装置300の主走査断面内展開図、入射光学系75の副走査断面内展開図及び結像光学系85の副走査断面内展開図を示している。
【0065】
図11(a)乃至(c)に示されているように、本実施形態に係る光走査装置300は、光源1、アナモフィックレンズ2、副走査絞り31、主走査絞り32、偏向器6、第1の結像光学素子71、第2の結像光学素子72及び防塵ガラス8を備えている。
【0066】
光源1は、複数の発光点を有しており、例えば半導体レーザーを用いることができる。なお、本実施形態に係る光走査装置300では、以下に示すように光源1は四つの発光点を有している。
アナモフィックレンズ2は、主走査断面内と副走査断面内とで互いに異なる正のパワー(屈折力)を有するレンズであり、入射した光束を主走査断面内において略平行光束に変換すると共に、副走査断面内において集光する。なおここで、略平行光束とは、弱発散光束、弱収束光束及び平行光束を含むものとする。
【0067】
副走査絞り31は、入射した光束の副走査方向における形状(副走査方向における光束の幅、光束径)を規制する。
主走査絞り32は、入射した光束の主走査方向における形状(主走査方向における光束の幅、光束径)を規制する。
従って、副走査絞り31及び主走査絞り32によって入射した光束が所望の形状に形成される。
【0068】
偏向器6は、偏向手段としての回転多面鏡(ポリゴンミラー)であり、図中矢印A方向に一定速度で回転している。
第1の結像光学素子71及び第2の結像光学素子72は、例えば入射した光束を被走査面9に導光(集光)する結像レンズである。
防塵ガラス8は、光走査装置300への塵やトナー等の進入を抑制するためのパワーを有さない平板ガラスである。
【0069】
本実施形態に係る光走査装置300では、副走査絞り31、アナモフィックレンズ2及び主走査絞り32によって、入射光学系75が構成される。
また、本実施形態に係る光走査装置300では、第1の結像光学素子71及び第2の結像光学素子72によって結像光学系85が構成される。
【0070】
図11(a)及び(b)に示されているように、光源1から出射した光束Rは、副走査絞り31によって副走査方向における形状が規制される。
そして、副走査絞り31を通過した光束Rは、アナモフィックレンズ2によって主走査断面内において略平行光束に変換されると共に、副走査方向に集光される。
【0071】
次に、アナモフィックレンズ2を通過した光束Rは、主走査絞り32によって主走査方向における形状が規制される。
そして、主走査絞り32を通過した光束Rは、偏向器6の偏向面(偏向反射面)6aに垂直に入射する。
【0072】
すなわち、入射光学系75は、その光軸が偏向器6の回転軸に垂直な主走査断面に平行になるように配置されている。
そして、光源1から射出された光束Rは、入射光学系75を介して、主走査断面内において偏向器6の偏向面6aに入射する。
これにより、光束Rは、副走査断面内においてのみ集光され、偏向面6a近傍において主走査方向に長い線像として結像される。
【0073】
そして、偏向器6の偏向面6aによって反射偏向された光束Rは、第1の結像光学素子71、第2の結像光学素子72及び防塵ガラス8を介して、被走査面9上に集光(光スポットとして結像)される。
【0074】
そして、偏向器6が図中矢印A方向に回転し、被走査面9上を光スポットが矢印B方向に走査することで静電潜像が形成される。
なお、被走査面9としては、例えば感光ドラム面などが挙げられる。
【0075】
なお、本実施形態に係る光走査装置300において用いているアナモフィックレンズ2の代わりに、入射した光束を略平行光束に変換するコリメータレンズと、副走査方向に集光するシリンダーレンズとを用いても構わない。
また、本実施形態に係る光走査装置300では、アナモフィックレンズ2、第1の結像光学素子71及び第2の結像光学素子72は、プラスチックモールドレンズで形成されている。
また、本実施形態に係る光走査装置300では、結像光学系85が二枚の結像光学素子で構成されているが、これに限らず、三枚以上の結像光学素子で構成しても同様の効果を得ることができる。
【0076】
図12は、本実施形態に係る光走査装置300の光源1における発光点LD1、LD2、LD3及びLD4の配置を示している。
【0077】
図12に示されているように、発光点LD1乃至LD4の隣接する発光点同士は、主走査断面内及び副走査断面内それぞれにおいて互いに等間隔で離間して配置されている。
そして、発光点LD1乃至LD4は、主走査方向及び副走査方向を含む、光軸方向に垂直な断面内において、主走査方向に対して角度γをなす方向に沿って30μm間隔で一次元配列されている。
【0078】
ここで、本実施形態に係る光走査装置300では、副走査方向の解像度や入射光学系75及び結像光学系85の製造誤差等に応じて、被走査面9上に結像される各光スポットの副走査方向における間隔が所望の大きさになるように、光軸回りの回転角度、すなわち角度γを変更することができる構成となっている。
【0079】
次に、本実施形態に係る光走査装置300の入射光学系75及び結像光学系85の諸特性が以下の表4に示されている。
【0080】
【表4】
【0081】
本実施形態に係る光走査装置300では、アナモフィックレンズ2の入射面に回折面を形成することで、環境変動によるスポット径の変動を抑制している。
ここで、アナモフィックレンズ2の入射面に形成されている回折面の位相係数は、以下の式(5)で表される。
【数9】
【0082】
ここで、mは回折次数、Cijは位相係数である。なお、本実施形態に係る光走査装置300では、回折次数mが1、すなわち1次の回折光を用いることで、製造上有利に、具体的には昇温時における屈折率の変動と波長の変動とを互いに相殺させている。
【0083】
また、第1の結像光学素子71及び第2の結像光学素子72の入射面及び出射面の非球面形状は、第一実施形態に係る光走査装置100と同様に、上記の式(1)乃至(3)によって表される。
【0084】
また表4に示されているように、本実施形態に係る光走査装置300では、第1の結像光学素子71の入射面、第1の結像光学素子71の出射面、第2の結像光学素子72の入射面及び第2の結像光学素子72の出射面が、zの1次の非球面を有している。
すなわち、各光学面は、子線チルト角が主走査方向の位置yに応じて変化する子線チルト変化面となっている。
換言すると、第1の結像光学素子71の入射面、第1の結像光学素子71の出射面、第2の結像光学素子72の入射面及び第2の結像光学素子72の出射面では、mが0ではないMmnの少なくとも一つが0ではない。
【0085】
また表4に示されているように、第2の結像光学素子72の入射面及び出射面においては、M01が0ではない。
すなわち、第2の結像光学素子72の入射面及び出射面は、光軸上においても子線チルト角を有する。
そのため、第2の結像光学素子72の入射面及び出射面においては、形状定義の原点と面頂点(最も光軸方向に突出した点)とが互いに一致していない。
【0086】
次に、従来の光走査装置において主走査ジッターが発生する要因について説明する。
【0087】
図13(a)及び(b)はそれぞれ、従来の光走査装置における光源1から出射した複数の光束の軌跡を示した副走査断面内展開図及び主走査断面内展開図を示している。
なお、ここで示す従来の光走査装置は、諸特性が異なること以外は本実施形態に係る光走査装置300と同一の構成であるため、同一の部材には同一の付番を付して、説明を省略する。
また、図13(a)及び(b)では、光源1の四つの発光点のうち互いに最も離間した発光点LD1及びLD4それぞれから出射した光束R1及びR4の軌跡のみを示している。
【0088】
図13(a)に示されているように、発光点LD1及びLD4それぞれから出射した光束R1及びR4は、結像光学系85に含まれる第1の結像光学素子71及び第2の結像光学素子72それぞれにおいて互いに異なる高さを通過する。
このとき、第1の結像光学素子71及び第2の結像光学素子72の入射面及び出射面はそれぞれ、副走査断面内における曲率半径r’及び子線チルト角が主走査方向の位置yに応じて変化している。
【0089】
そのため、各光束が第1の結像光学素子71及び第2の結像光学素子72の入射面及び出射面に互いに異なる高さで入射すると、各光束に対する主走査断面内における倍率が互いに異なることとなる。
その結果、図13(b)に示されているように、被走査面9上の軸上像高における集光点(すなわち、光スポット)と最軸外像高における集光点との間隔が各光束で互いに異なることとなり、主走査ジッター量ΔYが発生する。
【0090】
そこで、本実施形態に係る光走査装置300では、以下に示すような構成を採ることにより、主走査ジッター量ΔYを低減している。
まず、入射光学系75の副走査断面内における横倍率をβs、光源1から副走査絞り31までの光軸上における距離をLsとする。
また、被走査面9上の軸上像高に到達する光束(以下、軸上光束と称する。)を偏向器6が偏向する際の偏向面6a上における偏向点C0(以下、軸上偏向点と称する。)から被走査面9までの距離をTcとする。
【0091】
このとき、本実施形態に係る光走査装置300では、以下の式(6)を満たすように副走査絞り31を配置する。これにより、第1の結像光学素子71及び第2の結像光学素子72の入射面及び出射面に入射した際の各光束の副走査方向における離間量を低減することができる。
【数10】
【0092】
本実施形態に係る光走査装置300では、βs=2.24、Ls=14.4、Tc=153.85であり、式(6)を満足していることがわかる。
【0093】
また、本実施形態に係る光走査装置300では、偏向器6に最も近い第1の結像光学素子71の入射面及び出射面は、子線チルト変化面となっている。
なおここで、「偏向器6に最も近い結像光学素子」とは、光学的に最も近い、すなわち偏向器6から被走査面9までの光路上において偏向器6に最も近い位置に配置された結像光学素子を意味している。
【0094】
また、第1の結像光学素子71の出射面の主走査断面内における屈折力は、第1の結像光学素子71及び第2の結像光学素子72の入射面及び出射面のうち最も大きくなっており、第1の結像光学素子71は主走査断面内における倍率の補正を行うのに適している。
本実施形態に係る光走査装置300では、上述のような構成を採ることで、第2の結像光学素子72上での各光束の副走査方向における入射位置の違いに応じて発生する主走査断面内の倍率ずれを低減することができる。
【0095】
図14は、本実施形態に係る光走査装置300及び比較例の光走査装置それぞれにおける主走査ジッター量ΔYの像高依存性を示している。
なお、比較例の光走査装置の諸特性は以下の表5に示されており、比較例の光走査装置では、第1の結像光学素子71の出射面、第2の結像光学素子72の入射面及び第2の結像光学素子72の出射面のみが子線チルト変化面となっている。
【0096】
【表5】
【0097】
図14に示されているように、本実施形態に係る光走査装置300では、第1の結像光学素子71及び第2の結像光学素子72上での各光束の副走査方向における入射位置の違いに応じて発生する主走査ジッター量ΔYを低減できていることがわかる。
【0098】
以上のように、本実施形態に係る光走査装置300では、ゴーストや戻り光の低減と主走査ジッターを含む光学性能の補正とを両立することができ、画像形成装置に用いた際に良好な画像を容易に形成することができる。
【0099】
[第四実施形態]
図15(a)及び(b)はそれぞれ、第四実施形態に係る光走査装置400の主走査断面内展開図及び入射光学系の副走査断面内展開図を示している。
また、図15(c)及び(d)はそれぞれ、第四実施形態に係る光走査装置400の結像光学系の副走査断面内展開図及び副走査断面図を示している。
【0100】
図15(a)乃至(d)に示されているように、本実施形態に係る光走査装置400は、光源1a及び1b、コリメータレンズ3a及び3b、シリンドリカルレンズ4a及び4b、及び副走査絞り31a及び31bを備えている。
また、本実施形態に係る光走査装置400は、主走査絞り32a及び32b、偏向器6、第1の結像光学素子71、第2の結像光学素子72a及び72b、折り返しミラー81a、81b及び82a、及び防塵ガラス8a及び8bを備えている。
【0101】
光源1a及び1bは、複数の発光点を有しており、例えば半導体レーザーを用いることができる。なお、本実施形態に係る光走査装置400では、以下に示すように光源1a及び1bはそれぞれ、四つの発光点を有している。
コリメータレンズ3a及び3bは、入射した光束を主走査断面内において略平行光束に変換する。なお、ここで、略平行光束とは、弱発散光束、弱収束光束及び平行光束を含むものとする。
シリンドリカルレンズ4a及び4bは、副走査断面内において有限のパワー(屈折力)を有しており、入射した光束を副走査断面内において集光する。
【0102】
副走査絞り31a及び31bは、入射した光束の副走査方向における形状(副走査方向における光束の幅、光束径)を規制する。
主走査絞り32a及び32bは、入射した光束の主走査方向における形状(主走査方向における光束の幅、光束径)を規制する。
【0103】
偏向器6は、偏向手段としての回転多面鏡(ポリゴンミラー)であり、図中矢印A方向に一定速度で回転している。
第1の結像光学素子71a及び第2の結像光学素子72aは、例えば入射した光束を被走査面9aに導光(集光)する結像レンズである。同様に、第1の結像光学素子71b及び第2の結像光学素子72bは、例えば入射した光束を被走査面9bに導光(集光)する結像レンズである。
折り返しミラー81a、81b及び82aは、入射した光束を被走査面9a及び9bに向けて折り返す(反射する)。
防塵ガラス8a及び8bは、光走査装置400への塵やトナー等の進入を抑制するためのパワーを有さない平板ガラスである。
【0104】
本実施形態に係る光走査装置400では、副走査絞り31a、コリメータレンズ3a、シリンドリカルレンズ4a及び主走査絞り32aによって、第1の入射光学系75aが構成される。
また、副走査絞り31b、コリメータレンズ3b、シリンドリカルレンズ4b及び主走査絞り32bによって、第2の入射光学系75bが構成される。
また、第1の結像光学素子71及び第2の結像光学素子72aによって第1の結像光学系85aが構成される。
また、第1の結像光学素子71及び第2の結像光学素子72bによって第2の結像光学系85bが構成される。
【0105】
図15(a)及び(b)に示されているように、光源1a及び1bそれぞれから出射した光束Ra及びRbは、副走査絞り31a及び31bによって副走査方向における形状が規制される。
そして、副走査絞り31a及び31bそれぞれを通過した光束Ra及びRbは、コリメータレンズ3a及び3bによって主走査断面内において略平行光束に変換される。
そして、コリメータレンズ3a及び3bそれぞれを通過した光束Ra及びRbは、シリンドリカルレンズ4a及び4bによって、副走査断面内において集光される。
【0106】
次に、シリンドリカルレンズ4a及び4bそれぞれを通過した光束Ra及びRbは、主走査絞り32a及び32bによって主走査方向における形状が規制される。
そして、主走査絞り32aを通過した光束Raは、偏向器6の偏向面(偏向反射面)6aに副走査方向上側から斜入射し、主走査絞り32bを通過した光束Rbは、偏向器6の偏向面(偏向反射面)6aに副走査方向下側から斜入射する。
【0107】
すなわち、本実施形態に係る光走査装置400では、第1及び第2の入射光学系75a及び75bはそれぞれ、その光軸が副走査断面内において偏向器6の回転軸に垂直な主走査断面に対して角度をなすように配置されている。
そして、光源1a及び1bそれぞれから射出された光束Ra及びRbは、第1及び第2の入射光学系75a及び75bを介して、副走査断面内において偏向器6の偏向面6aに斜入射する。
これにより、光束Ra及びRbはそれぞれ、副走査断面内においてのみ集光され、偏向面6a近傍において主走査方向に長い線像として結像される。
なお、本実施形態に係る光走査装置400では、第1及び第2の入射光学系75a及び75bの光軸が副走査断面内において主走査断面に対してなす角度はそれぞれ、+3.0°及び-3.0°となっている。
【0108】
そして、偏向器6の偏向面6aによって反射偏向された光束Raは、第1の結像光学素子71、折り返しミラー81a及び82a、第2の結像光学素子72a及び防塵ガラス8aを介して、被走査面9a上に集光(光スポットとして結像)される。
同様に、偏向器6の偏向面6aによって反射偏向された光束Rbは、第1の結像光学素子71、第2の結像光学素子72b、折り返しミラー81b及び防塵ガラス8bを介して、被走査面9b上に集光(光スポットとして結像)される。
【0109】
そして、偏向器6が図中矢印A方向に回転し、被走査面9a及び9b上を光スポットが矢印B方向に走査することで静電潜像が形成される。
なお、被走査面9a及び9bとしては、例えば感光ドラム面などが挙げられる。
【0110】
図16(a)は、本実施形態に係る光走査装置400の光源1a(第1の光源)における発光点LD1a、LD2a、LD3a及びLD4aの配置を示している。
また、図16(b)は、本実施形態に係る光走査装置400の光源1b(第2の光源)における発光点LD1b、LD2b、LD3b及びLD4bの配置を示している。
【0111】
図16(a)に示されているように、発光点LD1a乃至LD4aの隣接する発光点同士は、主走査断面内及び副走査断面内それぞれにおいて互いに等間隔で離間して配置されている。
同様に、図16(b)に示されているように、発光点LD1b乃至LD4bの隣接する発光点同士は、主走査断面内及び副走査断面内それぞれにおいて互いに等間隔で離間して配置されている。
【0112】
そして、発光点LD1a乃至LD4aは、主走査方向及び副走査方向を含む、光軸方向に垂直な断面内において、主走査方向に対して角度γaをなす方向に沿って30μm間隔で一次元配列されている。
また、発光点LD1b乃至LD4bは、主走査方向及び副走査方向を含む、光軸方向に垂直な断面内において、主走査方向に対して角度γbをなす方向に沿って30μm間隔で一次元配列されている。
ここで、本実施形態に係る光走査装置400では、角度γa及びγbは互いに異符号となる。
【0113】
図17は、本実施形態に係る光走査装置400における第1の結像光学素子71のレンズ形状を示している。
【0114】
図17に示されているように、第1の結像光学素子71の入射側には、光束Rbが入射する第1の入射面711bと光束Raが入射する第2の入射面711aとが副走査方向に並んで配置されている。
また、第1の結像光学素子71の出射側には、光束Rbが出射する第1の出射面712bと光束Raが出射する第2の出射面712aとが副走査方向に並んで配置されている。
すなわち、本実施形態に係る光走査装置400では、第1の結像光学素子71は、光束Ra及びRbがそれぞれ副走査方向下側及び上側を通過する多段レンズとして形成されている。
【0115】
次に、本実施形態に係る光走査装置400の第1及び第2の入射光学系75a及び75bと第1及び第2の結像光学系85a及び85bとの諸特性が以下の表6に示されている。
なお、特に表記していない係数については全て0である。
【0116】
【表6】
【0117】
本実施形態に係る光走査装置400では、シリンドリカルレンズ4a及び4bそれぞれの出射面に回折面を形成することで、環境変動によるスポット径の変動を抑制している。
そして、シリンドリカルレンズ4a及び4bそれぞれの出射面に形成されている回折面の位相係数は、上記の式(5)で表される。
【0118】
また、第1の結像光学素子71と第2の結像光学素子72a及び72bとの入射面及び出射面の非球面形状は、第一実施形態に係る光走査装置100と同様に、上記の式(1)乃至(3)によって表される。
【0119】
また、本実施形態に係る光走査装置400では、第三実施形態に係る光走査装置300と同様に、主走査ジッター量ΔYを低減するために、上記の式(6)を満たすように副走査絞り31a及び31bを配置している。
なお、本実施形態に係る光走査装置400では、βs=3.1、Ls=9.9、Tc=240であり、式(6)を満足していることがわかる。
これにより、第1の結像光学素子71と第2の結像光学素子72a及び72bとの入射面及び出射面に入射した際の各光束の副走査方向における離間量を低減することができる。
【0120】
また表6に示されているように、本実施形態に係る光走査装置400では、第1の結像光学素子71の第1の入射面711b、第1の出射面712b、第2の入射面711a及び第2の出射面712aが、zの1次の非球面を有している。
すなわち、各光学面は、子線チルト角が主走査方向の位置yに応じて変化する子線チルト変化面となっている。
換言すると、第1の結像光学素子71の第1の入射面711b、第1の出射面712b、第2の入射面711a及び第2の出射面712aでは、mが0ではないMmnの少なくとも一つが0ではない。
【0121】
同様に、第2の結像光学素子72aの入射面及び出射面、及び第2の結像光学素子72bの入射面及び出射面が、zの1次の非球面を有している。
すなわち、各光学面は、子線チルト角が主走査方向の位置yに応じて変化する子線チルト変化面となっている。
換言すると、第2の結像光学素子72aの入射面及び出射面、及び第2の結像光学素子72bの入射面及び出射面では、mが0ではないMmnの少なくとも一つが0ではない。
【0122】
また表6に示されているように、本実施形態に係る光走査装置400では、第1の結像光学素子71の第1の入射面711b、第1の出射面712b、第2の入射面711a及び第2の出射面712aにおいては、M01が0ではない。
すなわち、第1の結像光学素子71の第1の入射面711b、第1の出射面712b、第2の入射面711a及び第2の出射面712aは、光軸上においても子線チルト角を有する。
そのため、第1の結像光学素子71の第1の入射面711b、第1の出射面712b、第2の入射面711a及び第2の出射面712aにおいては、形状定義の原点と面頂点(最も光軸方向に突出した点)とが互いに一致していない。
【0123】
同様に、第2の結像光学素子72aの入射面及び出射面、及び第2の結像光学素子72bの入射面及び出射面においては、M01が0ではない。
すなわち、第2の結像光学素子72aの入射面及び出射面、及び第2の結像光学素子72bの入射面及び出射面は、光軸上においても子線チルト角を有する。
そのため、第2の結像光学素子72aの入射面及び出射面、及び第2の結像光学素子72bの入射面及び出射面においては、形状定義の原点と面頂点(最も光軸方向に突出した点)とが互いに一致していない。
【0124】
図18(a)は、本実施形態に係る光走査装置400における第1の結像光学素子71の第1の入射面711b及び第2の入射面711aの子線チルト角の主走査方向位置依存性を示している。
また図18(b)は、本実施形態に係る光走査装置400における第1の結像光学素子71の第1の出射面712b及び第2の出射面712aの子線チルト角の主走査方向位置依存性を示している。
【0125】
図18(a)に示されているように、第1の結像光学素子71の第1の入射面711b及び第2の入射面711aそれぞれの形状は互いに異なっている。
また、図18(b)に示されているように、第1の結像光学素子71の第1の出射面712b及び第2の出射面712aそれぞれの形状は互いに異なっている。
【0126】
ここで、第1の結像光学素子71の第1の入射面711bの子線チルト角をTi1、第1の結像光学素子71の第2の入射面711aの子線チルト角をTi2とする。
このとき、本実施形態に係る光走査装置400は、主走査方向位置yの各々において以下の式(7)を満たしている。
【数11】
【0127】
本実施形態に係る光走査装置400は、式(7)を満たすことで、光束Rbが折り返しミラー81aに入射しないように、折り返しミラー81aの位置における光束Rbの折り返しミラー81aに対する副走査方向における離間量を十分に確保することができる。
これにより、本実施形態に係る光走査装置400において光学素子の配置に伴う干渉を抑制することができる。
【0128】
また、本実施形態に係る光走査装置400では、光軸に垂直な断面内において光源1aの発光点LD1a乃至LD4aの配列方向及び光源1bの発光点LD1b乃至LD4bの配列方向それぞれが主走査方向に対してなす角度γ及びγが以下の式(8)を満たしている。
【数12】
【0129】
本実施形態に係る光走査装置400は、式(8)を満たすことで、被走査面9a及び9bそれぞれで発生する主走査ジッター量ΔYの間の差を低減することができる。
【0130】
図19は、本実施形態に係る光走査装置400における主走査ジッター量ΔYの像高依存性を示している。
【0131】
図19に示されているように、本実施形態に係る光走査装置400においても、第1の結像光学素子71及び第2の結像光学素子72上での各光束の副走査方向における入射位置の違いに応じて発生する主走査ジッター量ΔYを低減できていることがわかる。
【0132】
このように、本実施形態に係る光走査装置400では、上記に示したような構成を採ることにより、主走査ジッターを低減することによって高画質化を達成することができる。
また、光学素子の配置に伴う干渉を抑制することによって、コンパクト化を達成することができる。
【0133】
以上のように、本実施形態に係る光走査装置400によれば、斜入射系を用いた際にもゴーストや戻り光の低減と主走査ジッターを含む光学性能の補正とを両立することができ、画像形成装置に用いた際に良好な画像を容易に形成することができる。
【0134】
[画像形成装置]
図20は、第一実施形態に係る光走査装置311を備えるカラー画像形成装置360の要部模式的断面図を示している。
【0135】
カラー画像形成装置360は、光走査装置311によって像担持体である感光ドラム面上に画像情報を記録するタンデムタイプのカラー画像形成装置である。
カラー画像形成装置360は、第一実施形態に係る光走査装置311、各々像担持体としての感光ドラム341、342、343及び344、現像器321、322、323及び324、搬送ベルト351、プリンタコントローラ353及び定着器354を備えている。
【0136】
カラー画像形成装置360には、パーソナルコンピューター等の外部機器352からR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色信号が入力する。
そして、これらの色信号は、装置内のプリンタコントローラ353によって、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の画像データ(ドットデータ)に変換される。
【0137】
そして、取得された各画像データは光走査装置311に入力され、光走査装置311から各画像データに応じて変調された光ビーム331、332、333及び334が出射される。
そして、これらの光ビームによって感光ドラム341、342、343及び344それぞれの感光面が主走査方向に走査される。
【0138】
そして、光走査装置311により各々の画像データに基づいて射出された光ビーム331、332、333及び334によって各々対応する感光ドラム341、342、343及び344の感光面上に各色の潜像が形成される。
その後、各色の潜像が現像器321、322、323及び324によって各色トナー像に現像される。
そして、搬送ベルト351によって搬送される記録材(被転写材)に現像された各色トナー像が不図示の転写器によって多重転写され、転写されたトナー像が定着器354によって定着され、1枚のフルカラー画像が形成される。
【0139】
本実施形態に係るカラー画像形成装置360は、光走査装置311によって各々がC、M、Y、Kの各色に対応した感光ドラム341、342、343及び344の感光面上に、各々並行して画像信号(画像情報)を記録し、カラー画像を高速に印字するものである。
すなわち、本実施形態に係るカラー画像形成装置360は、上述の如く光走査装置311により各々の画像データに基づいた光ビームを用いて各色の潜像を各々対応する感光ドラム面上に形成している。その後、記録材に多重転写して1枚のフルカラー画像を形成している。
【0140】
なお、本実施形態に係るカラー画像形成装置360では、第一実施形態に係る光走査装置311の代わりに、第二実施形態に係る光走査装置を用いてもよく、四つの第三実施形態に係る光走査装置又は二つの第四実施形態に係る光走査装置を用いても構わない。
また、外部機器352としては、例えばCCDセンサを備えたカラー画像読取装置を用いることができる。この場合には、このカラー画像読取装置とカラー画像形成装置360とで、カラーデジタル複写機が構成される。
【0141】
以上、好ましい実施形態について説明したが、これらの実施形態に限定されず、要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0142】
1a、1b、1c、1d 光源(第1の光源)
41、42 偏向器(第1の偏向器)
9a、9b、9c、9d 被走査面(第1の被走査面)
71a、71b、71c、71d 第1の結像光学素子
72a、72b、72c、72d 第2の結像光学素子
85a、85b、85c、85d 結像光学系(第1の結像光学系)
100 光走査装置
Ra、Rb、Rc、Rd 光束
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20