(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】管内調査装置
(51)【国際特許分類】
G01B 5/24 20060101AFI20241105BHJP
G01B 21/22 20060101ALI20241105BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20241105BHJP
F16L 55/30 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
G01B5/24
G01B21/22
F16L1/00 V
F16L55/30
(21)【出願番号】P 2021054935
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健吾
(72)【発明者】
【氏名】吉田 義徳
(72)【発明者】
【氏名】魚津 颯二郎
(72)【発明者】
【氏名】小仲 正純
(72)【発明者】
【氏名】藤田 弘司
【審査官】三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-209239(JP,A)
【文献】特開2006-234525(JP,A)
【文献】実開平03-125204(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00- 5/30
21/00-21/32
F16L 1/00- 1/26
5/00- 7/02
51/00-55/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管(P)の内部に挿入される接続された管体(4、5)の一方の管体(4、5)に固定される複数の変位計(2)と、
前記接続された管体(4、5)の他方の管体(4、5)に固定され、前記各変位計(2)の検出プローブが当接するターゲット(3)と、を有し、
前記各変位計(2)の変位量から、前記接続された管体(4、5)の間の屈曲角度θを算出
し、
前記複数の変位計(2)のうち一の変位計(2a)が、前記一方の管体(4、5)の管軸方向に対し傾斜する方向の変位を測定するように設けられ、かつ、前記複数の変位計(2)のうち他の変位計(2b)が、前記一方の管体(4、5)の管軸方向および前記一の変位計(2a)の変位測定方向の両方に対し傾斜する方向の変位を測定するように設けられており、
前記一の変位計(2a)が、前記一方の管体(4、5)の管軸方向に直交する方向の変位を測定するように設けられ、かつ、前記他の変位計(2b)が、前記一方の管体(4、5)の管軸方向および前記一の変位計(2a)の変位測定方向の両方に対し直交する方向の変位を測定するように設けられており、
前記他方の管体(4、5)の管端部から前記一の変位計(2a)の検出プローブ先端までの管軸方向距離をL1、前記接続された管体(4、5)が真直状態から屈曲したときの前記一の変位計(2a)の検出プローブの変位量をΔ1、前記他方の管体(4、5)の管端部から前記他の変位計(2b)の検出プローブ先端までの管軸方向距離をL2、前記接続された管体(4、5)が真直状態から屈曲したときの前記他の変位計(2b)の検出プローブの変位量をΔ2としたときに、前記一の変位計(2a)による検出方向への傾斜角θ1、前記他の変位計(2b)による検出方向への傾斜角θ2、前記接続された管体(4、5)の間の屈曲角度θである前記両傾斜角θ1、θ2の合成角を次の(1)~(3)式で算出する、または、
前記一の変位計(2a)が、前記一方の管体(4、5)の管軸方向に直交する方向の変位を測定するように設けられ、かつ、前記他の変位計(2b)が、前記一方の管体(4、5)の管軸方向および前記一の変位計(2a)の変位測定方向の両方に対し直交する方向の変位を測定するように設けられており、
前記一の変位計(2a)と同方向の変位を測定する、前記一の変位計(2a)と管軸方向に並んで設けられた一の並設変位計(2a’)と、前記他の変位計(2b)と同方向の変位を測定する、前記他の変位計(2b)と管軸方向に並んで設けられた他の並設変位計(2b’)と、をさらに有し、
前記一の変位計(2a)と前記一の並設変位計(2a’)のそれぞれの検出プローブの先端の管軸方向距離をL1、前記接続された管体(4、5)が真直状態から屈曲したときの前記一の変位計(2a)と前記一の並設変位計(2a’)の変位量差をΔ1、前記他の変位計(2b)と前記他の並設変位計(2b’)のそれぞれの検出プローブの先端の管軸方向距離をL2、前記接続された管体(4、5)が真直状態から屈曲したときの前記他の変位計(2b)と前記他の並設変位計(2b’)の変位量差をΔ2としたときに、前記一の変位計(2a)による検出方向への傾斜角θ1、前記他の変位計(2b)による検出方向への傾斜角θ2、前記接続された管体(4、5)の間の屈曲角度θである前記両傾斜角θ1、θ2の合成角θを次の(1)~(3)式で算出する管内調査装置。
(1)式:θ1=tan
-1
(Δ1/L1)
(2)式:θ2=tan
-1
(Δ2/L2)
(3)式:θ=cos
-1
(cosθ1×cosθ2)
【請求項2】
前記接続された管体(4、5)の少なくとも一方に、その管軸周りの回転を検出する回転センサ(9)が設けられている請求項
1に記載の管内調査装置。
【請求項3】
前記既設管(P)への前記接続された管体(4、5)の挿入量を測定して、前記挿入量と前記屈曲角度
θとの関係を導出するデータ処理部をさらに有する請求項1
または2に記載の管内調査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道などの流体輸送配管の布設工事に先立って、既設管などのさや管内にパイプインパイプ工法によって新管を挿入可能かどうか事前調査する管内調査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダクタイル鉄管(PN形管、PII形管など)の新管を既設管(さや管)内に挿入して、劣化した既設管内に新たな管路を構築するパイプインパイプ工法においては、実際の施工前に、新管をスムーズに挿入できるかどうか確認するための事前調査が行われることがある。この事前調査方法の一つとして、実際に挿入する新管を模擬した模擬管を2本接合し、この接合した模擬管をウィンチによって牽引されるワイヤなどで既設管内に引き込み、発進立坑から到達立坑まで模擬管がスムーズに通過できるかどうか調査する方法がある。
【0003】
上記の事前調査方法においては、接合した模擬管が通過できるかどうか判断できるものの、既設管の管路の屈曲角度を詳細に把握できない。接合された管体はロックリングを介して推力が伝達されるが、許容される推力は新管の屈曲角度によって決まり、屈曲角度が大きい場合は過大な推力を負荷することができない。このため、屈曲角度が詳細に把握できない場合は、管体の推進に必要な所定の大きさの推力に耐えるため、安全を見越して溶接リング付き管やフランジ・リブ付き管などの補強管を採用する必要がありコスト高となるおそれがある。
【0004】
既設管内の屈曲角度を調査すべく、例えば下記特許文献1に記載の管路形状測定装置においては、管路4内に通される第1の円筒状ケース1と第2の円筒状ケース2を自在継手部7で連結している。この自在継手部7は、回転位置検出器8a、8bを有しており、この回転位置検出器8a、8bによって、円筒状ケース1の円筒状ケース2に対する屈曲角とその方向を検出している(特許文献1の第2図など参照)。
【0005】
また、下記特許文献2に記載の屈曲角測定装置においては、既設管1内に設けられた第1のユニット4と第2のユニット5を伸縮ラム6およびユニバーサルジョイント7、8を介して連結している。各ユニバーサルジョイント7、8には屈曲角測定装置10、11が併設されており、この屈曲角測定装置などのデータから、既設管1の継手部2における3次元方向の屈曲角が求められる(特許文献2の第1図など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平2-118808号公報
【文献】実公平3-18885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に係る構成においては両円筒状ケース1、2の間が、また、特許文献2に係る構成においては両ユニット4、5の間が、それぞれ自由に屈曲することによって既設管(管路)の屈曲角度を検出している。しかしながら、接続された実際の管体はその屈曲角度が制限されたり、既設管と新管の管長が異なるときなどに、管体間の屈曲角度と既設管の屈曲角度との間にずれが生じたりする可能性がある。このため、管体間の屈曲角度に基づいて決まる許容推力を正確に判断することが難しいという問題がある。
【0008】
そこで、この発明は、接続された管体を既設管に通したときの管体間の屈曲角度を簡便かつ正確に検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、この発明では、
既設管の内部に挿入される接続された管体の一方の管体に固定される複数の変位計と、
前記接続された管体の他方の管体に固定され、前記各変位計の検出プローブが当接するターゲットと、を有し、
前記各変位計の変位量から、前記接続された管体の間の屈曲角度を算出する管内調査装置を構成した。
【0010】
このようにすると、接続された管体間の屈曲角度を簡便かつ正確に検出することができるため、その屈曲角度に対応した適切な管体を選択することができ、過剰にコスト高となるのを防止することができる。
【0011】
前記構成においては、
前記複数の変位計のうち一の変位計が、前記一方の管体の管軸方向に対し傾斜する方向の変位を測定するように設けられ、かつ、前記複数の変位計のうち他の変位計が、前記一方の管体の管軸方向および前記一の変位計の変位測定方向の両方に対し傾斜する方向の変位を測定するように設けられている構成とすることができる。
【0012】
このようにすると、傾斜方向が異なる各変位計によって測定された変位に基づいて、管体間の傾斜角度を容易に算出することができる。
【0013】
前記変位計を傾斜させた構成においては、
前記一の変位計が、前記一方の管体の管軸方向に直交する方向の変位を測定するように設けられ、かつ、前記他の変位計が、前記一方の管体の管軸方向および前記一の変位計の変位測定方向の両方に対し直交する方向の変位を測定するように設けられており、
前記他方の管体の管端部から前記一の変位計の検出プローブ先端までの管軸方向距離をL1、前記接続された管体が真直状態から屈曲したときの前記一の変位計の検出プローブの変位量をΔ1、前記他方の管体の管端部から前記他の変位計の検出プローブ先端までの管軸方向距離をL2、前記接続された管体が真直状態から屈曲したときの前記他の変位計の検出プローブの変位量をΔ2としたときに、前記一の変位計による検出方向への傾斜角θ1、前記他の変位計による検出方向への傾斜角θ2、前記接続された管体の間の屈曲角度θである前記両傾斜角θ1、θ2の合成角を次の(1)~(3)式で算出する構成とすることができる。
(1)式:θ1=tan-1(Δ1/L1)
(2)式:θ2=tan-1(Δ2/L2)
(3)式:θ=cos-1(cosθ1×cosθ2)
【0014】
このようにすると、各変位計によって検出された変位量を各式に当てはめることによって、屈曲角度をスムーズに算出することができる。
【0015】
前記変位計を傾斜させた構成においては、上記の代わりに、
前記一の変位計が、前記一方の管体の管軸方向に直交する方向の変位を測定するように設けられ、かつ、前記他の変位計が、前記一方の管体の管軸方向および前記一の変位計の変位測定方向の両方に対し直交する方向の変位を測定するように設けられており、
前記一の変位計と同方向の変位を測定する、前記一の変位計と管軸方向に並んで設けられた一の並設変位計と、前記他の変位計と同方向の変位を測定する、前記他の変位計と管軸方向に並んで設けられた他の並設変位計と、をさらに有し、
前記一の変位計と前記一の並設変位計のそれぞれの検出プローブの先端の管軸方向距離をL1’、前記接続された管体が真直状態から屈曲したときの前記一の変位計と前記一の並設変位計の変位量差をδ1、前記他の変位計と前記他の並設変位計のそれぞれの検出プローブの先端の管軸方向距離をL2’、前記接続された管体が真直状態から屈曲したときの前記他の変位計と前記他の並設変位計の変位量差をδ2としたときに、前記一の変位計による検出方向への傾斜角θ1’、前記他の変位計による検出方向への傾斜角θ2’、前記接続された管体の間の屈曲角度θ’である前記両傾斜角θ1’、θ2’の合成角θ’を次の(4)~(6)式で算出する構成とすることができる。
(4)式:θ1’=tan-1(δ1/L1’)
(5)式:θ2’=tan-1(δ2/L2’)
(6)式:θ’=cos-1(cosθ1’×cosθ2’)
【0016】
このようにすると、管軸方向に並んで設けられた2個の変位計の変位量の差分から、接続された両管体の受口と挿し口の間の偏心量を相殺することができるため、両管体の間の屈曲角度をより精度よく検出することができる。
【0017】
前記構成においては、
前記接続された管体の少なくとも一方に、その管軸周りの回転を検出する回転センサが設けられている構成とすることができる。
【0018】
このようにすると、接続された管体を既設管に挿入する際にこの管体が軸心周りに回転(ローリング)しても、回転センサによって検出した回転量に基づいて、屈曲角度(合成角)の方向を正確に検出することができる。
【0019】
前記構成においては、
前記複数の変位計が、前記一方の管体の管軸方向と同一の面法線を有する平面内の直角二等辺三角形の各頂点に対応する位置において管軸方向の変位を測定するように設けられた3個の変位計であって、
前記ターゲットが、前記他方の管体の管軸と同一方向の面法線を有するように固定されており、
前記直角二等辺三角形の2本の等辺の長さXBと、前記3個の変位計で測定された管軸方向の変位量ZA、ZB、ZCから、次の(7)式で前記ターゲットが含まれる面の3次元の面法線ベクトルdを算出し、この面法線ベクトルdと前記直角二等辺三角形が含まれる面の3次元の面法線ベクトルn=(0、0、1)から、前記接続された管体の間の屈曲角度θの余弦を次の(8)式で算出する構成とすることができる。
(7)式:ベクトルd=XB・(ZA-ZB、ZA-ZC、XB)
(8)式:cosθ=XB÷√{(ZA-ZB)2+(ZA-ZC)2+XB
2}
【0020】
このようにすると、3個の変位計の変位量からターゲットが含まれる面の屈曲角度を直接的に算出することができる。しかも、3個の変位計の配置を直角二等辺三角形の各頂点の位置としたことにより、各頂点の座標値を共通化して、簡便な数式によってターゲットが含まれる面の面法線ベクトルd、および、接続された屈曲角度θの余弦を算出することができる。また、各変位計の設置位置が所定位置からずれて、直角二等辺三角形の直角を挟む2辺のベクトルのなす角度に誤差が生じた場合でも、その誤差が計算結果に与える影響を極小とすることができる。
【0021】
前記3個の変位計を直角二等辺三角形の各頂点に配置した構成においては、
前記3個の変位計によって構成される直角二等辺三角形の各辺よりも内側に前記一方の管体の軸心が位置している構成とすることができる。
【0022】
このようにすると、軸心を基準として傾斜するターゲットが含まれる面の屈曲角度をより高精度に検出することができる。
【0023】
前記構成においては、
前記既設管への前記接続された管体の挿入量を測定して、前記挿入量と前記屈曲角度θ、θ’との関係を導出するデータ処理部をさらに有する構成とすることができる。
【0024】
このようにすると、既設管のどの位置でどの程度屈曲しているかが明確となるため、実際の管体の挿入時にその屈曲データに基づいて作業をスムーズに進めることができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明では、上記のように管内調査装置を構成したので、接続された管体を既設管に通したときの管体間の屈曲角度を簡便かつ正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】この発明に係る管内調査装置の第一実施形態において、管体同士が真直な状態を示し、(a)は正面から見た断面図、(b)は(a)中のb-b線に沿う断面図
【
図2】第一実施形態において、管体同士が屈曲した状態を示し、(a)は正面から見た断面図、(b)は(a)中のb-b線に沿う断面図
【
図3】この発明に係る管内調査装置の第二実施形態(要部)において、管体同士が真直な状態を示し、(a)は正面から見た断面図、(b)は(a)中のb-b線に沿う断面図
【
図4】第二実施形態において、管体同士が屈曲した状態を示し、(a)は正面から見た断面図、(b)は(a)中のb-b線に沿う断面図
【
図5】この発明に係る管内調査装置の第三実施形態(要部)において、管体同士が真直な状態を示し、(a)は正面から見た断面図、(b)は(a)中のb-b線に沿う断面図
【
図6】第三実施形態において、管体同士が屈曲した状態を示し、(a)は正面から見た断面図、(b)は(a)中のb-b線に沿う断面図
【
図7】この発明に係る管内調査装置の第四実施形態において、管体同士が真直な状態を示す、正面から見た断面図
【
図8】第四実施形態において、変位計を三角形の各頂点位置に配置した状態を示し、(a)は挿し口側への変位計の設置位置(座標)を示す図、(b)は受口側のターゲットへの検出プローブの当接位置(座標)を示す図
【
図9】第四実施形態において、変位計を直角二等辺三角形の各頂点位置に配置した状態を示し、(a)は挿し口側への変位計の設置位置(座標)を示す図、(b)は受口側のターゲットへの検出プローブの当接位置(座標)を示す図
【
図10】この発明に係る管内調査装置の第五実施形態において、管体同士が真直な状態を示す、正面から見た断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明に係る管内調査装置1の第一実施形態を
図1(a)(b)に示す。この管内調査装置1は、水道などの流体輸送配管の布設工事に先立って、既設管P内にパイプインパイプ工法によって新管を挿入可能かどうか事前調査するための装置であって、既設管Pの内部に挿入される接続された管体の一方の管体に固定される複数の変位計2と、接続された管体の他方の管体に固定され、各変位計2の検出プローブが当接するターゲット3と、を有している。
図1(a)(b)は、管体同士が真直な状態を示している。この実施形態においては、一方の管体を受け側管体4、他方の管体を挿し側管体5としたが、一方の管体を挿し側管体5、他方の管体を受け側管体4とすることもできる。
【0028】
変位計2は、本体部と、この本体部から出没する棒状の検出プローブとを有している。この検出プローブは付勢部材(図示せず)によって、その長さ方向の一方向(ターゲット3に向かう方向)に付勢されている。この検出プローブは、付勢部材の付勢力に抗して本体部側に押し込まれ、その押し込み量から検出プローブの先端に当接するターゲット3の変位量を検出する仕組みとなっている。本体部には取り付け治具6が設けられており、この取り付け治具6によって、変位計2が受け側管体4の受口内面または受口内面付近に取り付けられる。
【0029】
この実施形態においては、受口内面の管底部と、管底部から周方向に約90度の位置の2か所に取り付け治具6が固定されている。管底部に固定された取り付け治具6に取り付けられた一の変位計2(以下、垂直変位計2aという。)は、その検出プローブが上下方向に出没し、管底部から周方向に約90度の位置に固定された取り付け治具6によって取り付けられた他の変位計2(以下、水平変位計2bという。)は、その検出プローブが水平方向に出没するように配置されている。
【0030】
取り付け治具6として、例えば、管体の内面に磁力によって着脱可能な、アーム付きのマグネットスタンドを採用することができる。このアームへの変位計2の固定位置を変えることによって、管体の呼び径に関係なく、変位計2を管内の所望の位置に取り付けることができる。
【0031】
ターゲット3は、挿し側管体5の挿し口の先端付近に設けられた、管軸中心に向かって延びる部分と、管軸中心側の端部から管軸方向に沿って延びる部分とを有する、側面視L字形の板状の部材である。このターゲット3は、挿し口先端の管頂部と、管頂部から周方向に90度の位置(取り付け治具の固定位置の約180度対称位置)に固定されている。管頂部に固定されたターゲット3a(以下、垂直ターゲット3aという。)は、その管軸方向に沿って延びる部分が、垂直変位計2aの検出プローブの先端に当接している。また、管頂部から周方向に90度の位置に固定されたターゲット3b(以下、水平ターゲット3bという。)は、その管軸方向に沿って延びる部分が、水平変位計2bの検出プローブの先端に当接している。このターゲット3(3a、3b)は、管体の呼び径に関係なく使用することができる。
【0032】
このように、各変位計2(2a、2b)と各ターゲット3(3a、3b)を配置することにより、垂直変位計2aの検出プローブの押し込み量から、両管体4、5の屈曲に伴う垂直方向の変位量を、水平変位計2bの検出プローブの押し込み量から、両管体4、5の屈曲に伴う水平方向の変位量をそれぞれ検出することができる。各変位計2a、2bによって検出された変位量のデータは、管体4、5内に設けられたデータロガー7に蓄積される。
【0033】
この管内調査装置1の進行方向前側となる受け側管体4の前端には、この受け側管体4と同一形状の管体の直管部を切断して短尺とした先端部材8が接続されている。この先端部材8は、受け側管体4の挿し口側がその自重によって下向きに傾くのを防止するスペーサとしての機能と、その挿し口側と既設管Pの内面との間の摩擦を低減する摩擦低減部材(ソリ)としての機能を有している。
【0034】
受け側管体4の管頂部には、接続された管体4、5の管軸周りの回転量(ローリング量)を検出する回転センサ9が設けられている。管内調査装置1の挿入時に管体4、5にローリングが生じた場合でも、この回転センサ9によって検出された回転量に基づいて、各変位計2(2a、2b)によって検出された変位量を補正することによって、接続された管体4、5同士の屈曲角度および屈曲方向を正確に把握することができる。
【0035】
挿し側管体5の受口には係止部材10が固定されており、この係止部材10には牽引部材11が設けられている。この牽引部材11を牽引することによって、管内調査装置1を前方に向かって移動させることができる。
【0036】
接続された管体4、5内には、ワイヤ12の繰り出し長さから管内調査装置1の移動距離を検出する巻き取り式距離計13が設けられている。この巻き取り式距離計13のワイヤ12の一端は、発進立坑(図示せず)側に固定されており、管内調査装置1が到達立坑(図示せず)側に向かって移動するに伴って、巻回されたワイヤ12が繰り出されるようになっている。ワイヤ12の繰り出し量のデータは、データロガー7に蓄積される。
【0037】
このデータロガー7は、ワイヤ12の繰り出し量のデータ、各変位計2(2a、2b)によって検出された変位量のデータ、および、回転センサ9によって検出された回転量に基づいて、管内調査装置1の挿入量と屈曲角度との関係を導出するデータ処理部としての機能を備えている。このデータロガー7によって得られた屈曲位置や屈曲角度などのデータに基づいて、通常管、溶接リング付き管、フランジ・リブ付き管などの種々の選択肢の中から適切な管形式を選択することができる。なお、以下においては、データロガー7、回転センサ9、牽引部材11、および、巻き取り式距離計13などの図示は適宜省略する。
【0038】
既設管Pへの管内調査装置1の挿入時に、管体4、5同士が屈曲した状態を
図2(a)(b)に示す。管体4、5同士が真直の状態(
図1(a)(b)参照)における挿し側管体5の管端部から垂直変位計2aの検出プローブ先端までの管軸方向距離をL1、垂直ターゲット3aに当接する垂直変位計2aの検出プローブの突出長をL
11、水平ターゲット3bに当接する水平変位計2bの検出プローブの突出長をL
12とし、管体4、5同士が屈曲した状態における垂直ターゲット3aに当接する垂直変位計2aの検出プローブの突出長をL
21、水平ターゲット3bに当接する水平変位計2bの検出プローブの突出長をL
22とする。このとき、この屈曲に伴う垂直変位計2aの検出プローブの変位量Δ1はL
11-L
21、水平変位計2bの検出プローブの変位量Δ2はL
12-L
22となり、垂直方向の傾斜角θ1、水平方向の傾斜角θ2、および、接続された管体4、5の間の屈曲角度θは、次の(1)~(3)式で算出することができる。傾斜角θ1、θ2およびθの計測精度は、L1、L2の値が大きいほど向上する。
【0039】
(1)式:θ1=tan-1(Δ1/L1)
(2)式:θ2=tan-1(Δ2/L2)
(3)式:θ=cos-1(cosθ1×cosθ2)
【0040】
この構成によると、管体4、5の呼び径に関係なく共通の変位計2(2a、2b)およびターゲット3(3a、3b)を用いることができるため、管内調査をスムーズに行うとともに調査コストの低減を図ることができる。また、大口径の管体4、5や、継手伸縮代がある耐震継手においても、比較的小さい変位計2で対応できる。また、大口径の管体4、5において屈曲角度が大きい場合でも、検出プローブの先端がターゲット3から外れにくく、スムーズに管内調査を行うことができる。
【0041】
この発明に係る管内調査装置1の第二実施形態を
図3(a)(b)に示す。この管内調査装置1の基本的な構成は第一実施形態のものと共通する部分が多いが、垂直変位計2a(一の変位計)と同方向の変位を測定する、この垂直変位計2aと管軸方向に並んで設けられた並設垂直変位計2a’(一の並設変位計)と、水平変位計2b(他の変位計)と同方向の変位を測定する、この水平変位計2bと管軸方向に並んで設けられた並設水平変位計2b’(他の並設変位計)と、をさらに有する点、および、挿し側管体5の挿し口先端に固定された取り付け治具6によって各変位計2(2a、2a’、2b、2b’)が取り付けられているとともに、受け側管体4の受口内面に各ターゲット3(3a、3b)が設けられている点において相違する。なお、第一実施形態と共通する部材についての説明は省略する。
【0042】
この構成において、垂直ターゲット3aは、垂直変位計2aおよび並設垂直変位計2a’の両方の検出プローブの先端に当接し、水平ターゲット3bは、水平変位計2bおよび並設水平変位計2b’の両方の検出プローブの先端に当接している。
【0043】
既設管Pへの管内調査装置1の挿入時に、管体4、5同士が屈曲した状態を
図4(a)(b)に示す。管体4、5同士が真直の状態(
図3(a)(b)参照)における垂直変位計2aと並設垂直変位計2a’のそれぞれの検出プローブの先端の管軸方向距離をL1’、水平変位計2bと並設水平変位計2b’のそれぞれの検出プローブの先端の管軸方向距離をL2’とし、管体4、5同士が屈曲した状態における垂直変位計2aと並設垂直変位計2a’の変位量差をδ1、水平変位計2bと並設水平変位計2b’の変位量差をδ2とする。このとき、この屈曲に伴う垂直方向の傾斜角θ1’、水平方向の傾斜角θ2’、および、接続された管体4、5の間の屈曲角度θ’は、次の(4)~(6)式で算出することができる。傾斜角θ1’、θ2’およびθ’の計測精度は、L1’、L2’の値が大きいほど向上する。
【0044】
(4)式:θ1’=tan-1(δ1/L1’)
(5)式:θ2’=tan-1(δ2/L2’)
(6)式:θ’=cos-1(cosθ1’×cosθ2’)
【0045】
第一実施形態に係る構成においては、両管体4、5間に剪断荷重が作用して両管体4、5の軸心が偏心すると、管体4、5同士が屈曲していなくても検出プローブが変位し(上記(1)または(2)式中のΔ1、Δ2)、この変位が、管体4、5同士の屈曲または偏心のいずれに起因するものか不明となることがある。これに対し、第二実施形態に係る構成のように、垂直変位計2aと並設垂直変位計2a’、および、水平変位計2bと並設水平変位計2b’を管軸方向に並んで設けると、両管体4、5の偏心に起因する変位は相殺され、屈曲に起因する変化量のみを正確に測定することができる。
【0046】
この発明に係る管内調査装置1の第三実施形態を
図5(a)(b)に示す。この管内調査装置1の基本的な構成は第二実施形態のものと共通する部分が多いが、垂直変位計2aおよび並設垂直変位計2a’が受け側管体に設けられている一方で、ターゲット3が挿し側管体5側に設けられている点において相違する。このターゲット3は、挿し口の先端に固定された管軸方向と同一の面法線を有する円板状部材の中心から、受け側管体4に向かって垂直に立設された四角棒状の部材を有する。この四角棒状の部材の一面に、垂直変位計2aおよび並設垂直変位計2a’の検出プローブの先端が、この一面と90度の角度で隣り合う他面に、水平変位計2bおよび並設水平変位計2b’の検出プローブの先端がそれぞれ当接している。
【0047】
この構成においても、第二実施形態に係る構成と同様に、
図6(a)(b)に示すように両管体4、5が屈曲したときの垂直方向の傾斜角θ1’、水平方向の傾斜角θ2’、および、接続された管体4、5の間の屈曲角度θ’を上記の(4)~(6)式で算出することができる。
【0048】
この発明に係る管内調査装置1の第四実施形態を
図7に示す。この管内調査装置1の基本的な構成は第一実施形態のものと共通する部分が多いが、変位計2およびターゲット3の構成が相違する。
【0049】
この実施形態においては、挿し側管体5の挿し口の内部に固定された管軸と同一方向の面法線を有するように固定された円板状の取り付け治具6に、
図8(a)に示すように、三角形の頂点位置A、B、Cに対応して3個の貫通孔が形成されており、各貫通孔にそれぞれ変位計2(以下、これらの変位計2を管軸変位計2c、2d、2eという。)が取り付けられている。この3個の管軸変位計2c、2d、2eは、その検出プローブが管軸方向と平行に出没するように配置されている。挿し側管体5の軸心は、3個の管軸変位計2c、2d、2eによって構成される三角形の各辺よりも内側に位置している。
【0050】
ターゲット3は、受け側管体4の受口にその管軸と同一方向の面法線を有するように固定された円板状の部材である。
図8(b)に示すように、各検出プローブの先端は各変位計2c、2d、2eの位置に対応してターゲット3に当接している。各変位計2c、2d、2eが設けられる取り付け治具6、および、ターゲット3の中心には、牽引部材11を通すための貫通穴が形成されている。
【0051】
各変位計2c、2d、2eの取り付け治具6上の設置座標をA(0、0、0)、B(XB、YB、0)、C(XC、YC、0)とし、各変位計2c、2d、2eで測定された管軸方向の変位量をZA、ZB、ZCとすると、検出プローブの先端のターゲット3上の当接座標は、A’(0、0、ZA)、B’(XB、YB、ZB)、C’(XC、YC、ZC)と表記することができる。この設置座標A、B、Cの3点で各変位計2c、2d、2eの取り付け面が、当接座標A’、B’、C’の3点でターゲット3の当接面がそれぞれ定義される。
【0052】
ここで、3個の管軸変位計2c、2d、2eを取り付けた取り付け治具6の法線ベクトルnは、
ベクトルn=(0、0、1)
で表すことができる。また、ターゲット3の法線ベクトルdは、次に示すようにベクトルA’B’とベクトルA’C’の外積で求めることができる。
ベクトルd=ベクトルA’B’×ベクトルA’C’
=(XB-0、YB-0、ZB-ZA)×(XC-0、YC-0、ZC-ZA)
=(XB、YB、ZB-ZA)×(XC、YC、ZC-ZA)
=(YB(ZC-ZA)-(ZB-ZA)YC、(ZB-ZA)XC-XB(ZC-ZA)、XBYC-YBXC)
【0053】
ベクトルnとベクトルdのなす角度θが受け側管体4と挿し側管体5の間の屈曲角度θとなり、この屈曲角度θは、
cosθ=ベクトルn・ベクトルd÷(|ベクトルn|・|ベクトルd|)
=(0、0、1)・(YB(ZC-ZA)-(ZB-ZA)YC、(ZB-ZA)XC-XB(ZC-ZA)、XBYC-YBXC)
÷[1×√{(YB(ZC-ZA)-(ZB-ZA)YC)2+((ZB-ZA)XC-XB(ZC-ZA))2+(XBYC-YBXC)2}]
=(XBYC-YBXC)÷√{(YB(ZC-ZA)-(ZB-ZA)YC)2+((ZB-ZA)XC-XB(ZC-ZA))2+(XBYC-YBXC)2}
の関係式を満たす。この関係式に上記の各点A、B、C、A’、B’、C’の座標を代入することによって屈曲角度θを導出することができる。
【0054】
上記のように管軸変位計2c、2d、2eを三角形の各頂点に対応する位置に設ける構成においては、
図9(a)(b)に示すように、この三角形を直角二等辺三角形とすることができる。この場合、直角二等辺三角形の等辺の長さをX
Bとすると、各変位計2c、2d、2eの取り付け治具6上の設置座標は、A(0、0、0)、B(X
B、0、0)、C(0、X
B、0)と表記することができ、各変位計2c、2d、2eで測定された管軸方向の変位量をZ
A、Z
B、Z
Cとすると、検出プローブの先端のターゲット3上の当接座標は、A’(0、0、Z
A)、B’(X
B、0、Z
B)、C’(0、X
B、Z
C)と簡便に表記することができる。この構成においても、挿し側管体5の軸心は、3個の管軸変位計2c、2d、2eによって構成される直角二等辺三角形の各辺よりも内側に位置している。
【0055】
ここで、上記と同様に、3個の管軸変位計2c、2d、2eを取り付けた取り付け治具6の法線ベクトルnを
ベクトルn=(0、0、1)
で表すと、ターゲット3の法線ベクトルdは、次に示すようにベクトルA’B’とベクトルA’C’の外積で求めることができる。
ベクトルd=ベクトルA’B’×ベクトルA’C’
=(XB-0、0-0、ZB-ZA)×(0-0、XB-0、ZC-ZA)
=(XB、0、ZB-ZA)×(0、XB、ZC-ZA)
=(0・(ZC-ZA)-(ZB-ZA)XB、(ZB-ZA)・0-XB(ZC-ZA)、XB
2-0)
=XB・(ZA-ZB、ZA-ZC、XB)
【0056】
ここで、
ベクトルd=XB・ベクトルd’
ベクトルd’=(ZA-ZB、ZA-ZC、XB)
とおくと、ベクトルnとベクトルd’のなす角度θが受け側管体4と挿し側管体5の間の屈曲角度θとなり、この屈曲角度θは、
cosθ=ベクトルn・ベクトルd’÷(|ベクトルn|・|ベクトルd’|)
=(0、0、1)・(ZA-ZB、ZA-ZC、XB)÷√{(ZA-ZB)2+(ZA-ZC)2+XB
2}
=XB÷√{(ZA-ZB)2+(ZA-ZC)2+XB
2}
という、上記において説明した一般的な三角形の各頂点に3個の管軸変位計2c、2d、2eを配置した場合と比較して、より簡便な数式で表現することができる。
【0057】
また、ターゲット3の法線ベクトルdの大きさは、ベクトルA’B’とベクトルA’C’のなす角度をθdとすると、
|ベクトルd|=|ベクトルA’B’|・|ベクトルA’C’|・sinθd
で求めることができる。この実施形態においては、直角二等辺三角形の頂点に3個の管軸変位計2c、2d、2eを設置するため角度θdは90度となるが、実際には、設置位置の誤差に起因して、角度θdの値が90度から若干ずれることがある。
【0058】
この角度θdに誤差が生じたときのベクトルdの大きさに与える影響は、角度θdの微小変化に対するsinθdの変化量、すなわち、sinθdの微分値であるcosθdによって評価することができる。角度θdが90度のとき、cosθd=0となり最小値となる。つまり、変位計の設置位置の誤差に起因してベクトルA’B’とベクトルA’C’のなす角度θdに誤差が生じても、sinθdの計算結果に及ぼす影響を最小に抑えることができる。その検証のため、3個の管軸変位計2c、2d、2eを本実施形態のように直角二等辺三角形の頂点に設置した場合と、正三角形の頂点に設置した場合において、角度θdの値に5度の誤差が生じた(ベクトルA’B’とベクトルA’C’のなす角度が85度となった)ときの正弦値を計算した。その計算結果を表1に示す。
【0059】
【0060】
このように、3個の管軸変位計2c、2d、2eを直角二等辺三角形の頂点に配置することにより、この管軸変位計2c、2d、2eの設置精度の誤差が、両管体4、5の屈曲角度θの計算精度に与える影響を極力小さくすることができる。また、挿し側管体5の軸心が、3個の管軸変位計2c、2d、2eによって構成される直角二等辺三角形の各辺よりも内側に位置しているため、軸心を基準として傾斜するターゲット3が含まれる面の屈曲角度θをより高精度に検出することができる。
【0061】
この発明に係る管内調査装置1の第五実施形態を
図10に示す。この管内調査装置1の基本的な構成は第四実施形態のものと共通する部分が多いが、管軸変位計2c、2d、2eの取り付け治具6、および、ターゲット3の構成が相違する。
【0062】
この実施形態においては、ターゲット3および取り付け治具6が、いずれも管軸方向と平行に延びる円筒状部材と、この円筒状部材の両端部から径方向外向きに延設された一対のフランジとを有している。このフランジの板面はいずれも管軸と同一方向の面法線を有している。このフランジの外周縁は、受け側管体4または挿し側管体5の内周面に固定されている。
【0063】
取り付け治具6の一対のフランジには、
図8(a)または
図9(a)に示したのと同様に、三角形(直角二等辺三角形)の頂点位置A、B、Cに対応して、それぞれ3個(合計で6個)の貫通孔が形成されている。各フランジに形成された貫通孔の面内位置は一致しており、一対のフランジに形成された貫通孔に管軸変位計2c、2d、2eを挿入すると、この管軸変位計2c、2d、2eを簡便に軸心と平行状態に保持することができる。このように、ターゲット3および取り付け治具6を構成すると、ターゲット3および取り付け治具6の軸心に対する垂直性、および、取り付け治具6によって保持される管軸変位計2c、2d、2eの軸心に対する平行性を簡便かつ確実に出すことができ、検査精度の向上を図ることができる。
【0064】
上記の各実施形態においては、管体4、5内に設けられたデータロガー7によって管内調査装置1の挿入量に係るデータを得る構成としたが、管内調査装置1を牽引する牽引部材11に距離計を設置し、管体4、5内に設置するデータロガー7とは別のデータロガーに、管内調査装置1の引き込み距離と計測時刻を記録させることもできる。このようにすると、管体4、5内に設けられたデータロガー7と前記別のデータロガーの内蔵時計の時刻を対応付ける、または、両者の時刻にずれがある場合はそのずれを考慮することにより、管内調査装置1の位置と屈曲角度を関連付けることができる。
【0065】
また、データロガー7によって管内調査装置1の挿入量に係るデータを得る構成とする代わりに、管内調査装置1を牽引する牽引部材11に一定間隔(例えば10メートル)ごとにテープなどで目印を付け、一定の巻き取り距離ごと(管内調査装置1の挿入距離ごと)の時刻をメモしたり、牽引部材11をビデオ撮影したりすることで挿入量を記録することもできる。このようにすると、管内調査装置1が既設管Pの各区間を通過する時刻が明らかになり、その時刻とデータロガー7の内蔵時計の時刻を対応付けることにより、各区間ごとの最大屈曲角度を推定することができる。
【0066】
また、牽引部材11による管内調査装置1の牽引速度が一定であると仮定し、全引き込み時間に対する屈曲角度の時間変化から、挿入距離と屈曲角度の関係を比例計算によって推定することもできる。
【0067】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味およびすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1 管内調査装置
2 変位計
2a 垂直変位計(一の変位計)
2a’ 併設垂直変位計(一の並設変位計)
2b 水平変位計(他の変位計)
2b’ 併設水平変位計(他の並設変位計)
2c、2d、2e 管軸変位計
3 ターゲット
3a 垂直ターゲット
3b 水平ターゲット
4 受け側管体(管体)
5 挿し側管体(管体)
6 取り付け治具
7 データロガー
8 先端部材
9 回転センサ
10 係止部材
11 牽引部材
12 ワイヤ
13 巻き取り式距離計
P 既設管