(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】発光ユニット及び車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 43/20 20180101AFI20241105BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20241105BHJP
【FI】
F21S43/20
F21W103:20
(21)【出願番号】P 2021073000
(22)【出願日】2021-04-23
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 謙一
(72)【発明者】
【氏名】上野 一彦
(72)【発明者】
【氏名】古藤 澄久
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-034309(JP,A)
【文献】特開2020-102332(JP,A)
【文献】特開2016-193689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/20
F21W 103/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源の前方に配置されたレンズ体とを備え、
前記レンズ体は、後側焦点を前記光源又はその近傍と一致させるように焦点距離が調整された凸レンズにより構成され、前記光源の発光による
形状を反映した描画パターンを路面に向けて投影する投影レンズ部と、
前記光源から出射された光により前記投影レンズ部の周囲を発光させる発光レンズ部とを有し、
前記発光レンズ部は、前記光源と対向する側に位置して、前記光源から出射された光を内部へと入射する入射面と、前記入射面とは反対側に位置して、前記入射面から入射した光を外部へと出射する出射面とを含み、
前記投影レンズ部及び前記発光レンズ部の前記光源と対向する側は、前記入射面として連続した平面を構成しており、
前記凸レンズは、前記入射面とは反対側から前記出射面よりも前方に突出して設けられ、
前記発光レンズ部から出射される光の少なくとも一部は、前記投影レンズ部から出射される光とは異なる方向に向かって出射されることを特徴とする発光ユニット。
【請求項2】
前記入射面と前記出射面との少なくとも一方には、前記出射面から出射される光の配光を制御する配光制御部が設けられていることを特徴とする請求項
1に記載の発光ユニット。
【請求項3】
前記入射面と前記出射面との少なくとも一方には、前記出射面から出射される光を拡散させる光拡散部が設けられていることを特徴とする請求項
2に記載の発光ユニット。
【請求項4】
前記光源は、前記レンズ体との間の距離を順次異ならせた状態で、前記レンズ体と正面視で重なる面内に複数配置され、
前記投影レンズ部は、前記光源の各々に対応して焦点距離が調整された状態で、前記レンズ体の面内に複数配置され、
前記路面に向けて投影距離が異なる複数の描画パターンを並べて投影することを特徴とする請求項1~
3の何れか一項に記載の発光ユニット。
【請求項5】
車両の幅方向に並ぶ複数の発光ユニットを順次点灯させることによって、前記複数の発光ユニットによる発光の流れを演出する車両用灯具であって、
請求項1~
4の何れか一項に記載の発光ユニットを含み、
前記複数の発光ユニットを順次点灯させるのに合わせて、前記路面に向けて投影距離が異なる複数の描画パターンを順次投影させる点灯動作を繰り返すことを特徴とする車両用灯具。
【請求項6】
車両の幅方向に並ぶ複数の発光ユニットを順次点灯させることによって、前記複数の発光ユニットによる発光の流れを演出する車両用灯具であって、
請求項
4に記載の発光ユニットを含み、
前記複数の発光ユニットを順次点灯させた後に、前記路面に向けて投影距離が異なる複数の描画パターンを順次投影させる点灯動作を繰り返すことを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ユニット及び車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具では、運転時の安全性の向上を図るため、車両前方に向けて投影される光とは別に、路面に向かって投影される光によって路面描画を行うことが提案されている(例えば、下記特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両用灯具では、上述した路面描画を行うための発光ユニットを灯体内に別途追加する必要があるため、部品点数の増加や灯体の大型化を招くことになる。
【0005】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、通常の発光を行う機能と、路面描画を行う機能とを併せ持つ発光ユニット、並びに、そのような発光ユニットを用いて、車両の幅方向に並ぶ複数の発光ユニットを順次点灯させながら、複数の発光ユニットによる発光の流れを演出すると共に、路面描画を行うことを可能とした車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 光源と、
前記光源の前方に配置されたレンズ体とを備え、
前記レンズ体は、後側焦点を前記光源又はその近傍と一致させるように焦点距離が調整された凸レンズにより構成され、前記光源の発光による形状を反映した描画パターンを路面に向けて投影する投影レンズ部と、
前記光源から出射された光により前記投影レンズ部の周囲を発光させる発光レンズ部とを有し、
前記発光レンズ部は、前記光源と対向する側に位置して、前記光源から出射された光を内部へと入射する入射面と、前記入射面とは反対側に位置して、前記入射面から入射した光を外部へと出射する出射面とを含み、
前記投影レンズ部及び前記発光レンズ部の前記光源と対向する側は、前記入射面として連続した平面を構成しており、
前記凸レンズは、前記入射面とは反対側から前記出射面よりも前方に突出して設けられ、
前記発光レンズ部から出射される光の少なくとも一部は、前記投影レンズ部から出射される光とは異なる方向に向かって出射されることを特徴とする発光ユニット。
〔2〕 前記入射面と前記出射面との少なくとも一方には、前記出射面から出射される光の配光を制御する配光制御部が設けられていることを特徴とする前記〔1〕に記載の発光ユニット。
〔3〕 前記入射面と前記出射面との少なくとも一方には、前記出射面から出射される光を拡散させる光拡散部が設けられていることを特徴とする前記〔2〕に記載の発光ユニット。
〔4〕 前記光源は、前記レンズ体との間の距離を順次異ならせた状態で、前記レンズ体と正面視で重なる面内に複数配置され、
前記投影レンズ部は、前記光源の各々に対応して焦点距離が調整された状態で、前記レンズ体の面内に複数配置され、
前記路面に向けて投影距離が異なる複数の描画パターンを並べて投影することを特徴とする前記〔1〕~〔3〕の何れか一項に記載の発光ユニット。
〔5〕 車両の幅方向に並ぶ複数の発光ユニットを順次点灯させることによって、前記複数の発光ユニットによる発光の流れを演出する車両用灯具であって、
前記〔1〕~〔4〕の何れか一項に記載の発光ユニットを含み、
前記複数の発光ユニットを順次点灯させるのに合わせて、前記路面に向けて投影距離が異なる複数の描画パターンを順次投影させる点灯動作を繰り返すことを特徴とする車両用灯具。
〔6〕 車両の幅方向に並ぶ複数の発光ユニットを順次点灯させることによって、前記複数の発光ユニットによる発光の流れを演出する車両用灯具であって、
前記〔4〕に記載の発光ユニットを含み、
前記複数の発光ユニットを順次点灯させた後に、前記路面に向けて投影距離が異なる複数の描画パターンを順次投影させる点灯動作を繰り返すことを特徴とする車両用灯具。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明によれば、通常の発光を行う機能と、路面描画を行う機能とを併せ持つ発光ユニット、並びに、そのような発光ユニットを用いて、車両の幅方向に並ぶ複数の発光ユニットを順次点灯させながら、複数の発光ユニットによる発光の流れを演出すると共に、路面描画を行うことを可能とした車両用灯具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る発光ユニットの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す発光ユニットの構成を示す断面図である。
【
図3】(A)は、光源の形状を示す正面図、(B)は、光源の発光による形状を反映した描画パターンを路面に投影したときの形状を示す平面図、(C)は、描画パターンの別の形状を示す平面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る発光ユニットを備えた車両用灯具の構成を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示す発光ユニットの要部を拡大した断面図である。
【
図7】
図5に示す発光ユニットから路面に向けて投影された複数の描画パターンを示し、(A)は、その平面図、(B)は、その斜視図である。
【
図8】(A)は、交差点での旋回時における車両の巻き込み事故を想定した場面を示す模式図、(B)は、交差点での旋回時における車両の出会い頭事故を想定した場面を示す模式図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態に係る車両用灯具の構成及び点灯動作の一例を示し、(A)は、複数の発光ユニットの点灯動作を順に示す模式図、(B)は、路面に投影される複数の描画パターンを順に示す模式図である。
【
図10】本発明の第4の実施形態に係る車両用灯具の構成及び点灯動作の他例を示し、(A)は、複数の発光ユニットの点灯動作を順に示す模式図、(B)は、路面に投影される複数の描画パターンを順に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0010】
また、以下に示す図面では、XYZ直交座標系を設定し、X軸方向を発光ユニット(車両用灯具)の前後方向(長さ方向)、Y軸方向を発光ユニット(車両用灯具)の左右方向(幅方向)、Z軸方向を発光ユニット(車両用灯具)の上下方向(高さ方向)として、それぞれ示すものとする。
【0011】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態として、例えば
図1~
図4に示す発光ユニット1Aについて説明する。
なお、
図1は、発光ユニット1Aの構成を示す斜視図である。
図2は、発光ユニット1Aの構成を示す断面図である。
図3(A)は、光源2の形状を示す正面図である。
図3(B)は、光源2の発光による形状を反映した描画パターンPを路面に投影したときの形状を示す平面図である。
図3(C)は、描画パターンPの別の形状を示す平面図である。
図4は、発光ユニット1Aの変形例を示す断面図である。
【0012】
本実施形態の発光ユニット1は、
図1及び
図2に示すように、光源2と、光源2の前方に配置されたレンズ体3Aとを備えている。
【0013】
光源2は、光Lを発する発光ダイオード(LED)からなる。光源2は、このLEDを駆動する駆動回路が設けられた回路基板4の一面(本実施形態では正面)側に実装されている。また、回路基板4は、その一面を前方(+X軸側)に向けた状態で配置されている。これにより、光源2は、光Lを前方(+X軸側)に向けて放射状に出射する。
【0014】
なお、回路基板4は、上述したLEDを駆動する駆動回路が設けられた構成となっているが、LEDが設けられた実施基板と、駆動回路が設けられた回路基板とを別々に配置し、これら実装基板と回路基板とをハーネスと呼ばれる配線コードを介して電気的に接続し、LEDが発する熱から駆動回路を保護する構成としてもよい。
【0015】
レンズ体3Aは、光源2から出射された光Lを導光させる光透過性部材からなる。光透過性部材には、例えばポリカーボネイトやアクリル等の透明樹脂やガラスなど、空気よりも屈折率の高い材質のものを用いることができる。
【0016】
レンズ体3Aは、投影レンズ部5と、発光レンズ部6とを有して、正面視で発光レンズ部6の内側に投影レンズ部5が位置するように、投影レンズ部5と発光レンズ部6とが一体化された構造を有している。
【0017】
このうち、投影レンズ部5は、その後側焦点を光源2又はその近傍と一致させるように焦点距離が調整された凸レンズ5aにより構成されている。凸レンズ5aは、発光レンズ部6の正面側(後述する出射面8)から前方に突出して設けられている。一方、投影レンズ部5の背面側は、発光レンズ部6の背面側(後述する入射面7)と連続した平面を構成している。
【0018】
投影レンズ部5は、
図3に示すように、光源2の発光による形状を反映した描画パターンPを路面Tに向けて投影する。具体的に、光源2は、
図3(A)に示すように、正面視で矩形状(本実施形態では正方形状)の発光面2aを有している。
【0019】
投影レンズ部5は、
図3(B)に示すように、この光源2から出射された光Lを前方の路面Tに向けて投影する。このとき、光源2の発光面2aの形状を反映した光源像を前方の路面に向けて投影することによって、路面Tの前方に向かって延在し且つ漸次幅が拡大された矩形状の描画パターンPを形成する。
【0020】
なお、描画パターンPの形状については、
図3(C)に示すように、光源2の配置する面内の向きによって、路面Tの前方に向かって延在する菱形形状とすることも可能である。また、描画パターンPについては、光源の発光面2aの形状を変更したり、発光面2aの前方に遮光部材(シェード)を配置したりすることによって、その形状を適宜変更することが可能である。
【0021】
一方、発光レンズ部6は、
図1及び
図2に示すように、矩形平板状に形成されると共に、光源2と対向する側(背面側)に位置する入射面7と、入射面7とは反対側(正面側)に位置する出射面8とを有している。
【0022】
発光レンズ部6は、光源2から出射された光Lを入射面7から内部へと入射し、この入射面7から入射した光Lを出射面8から外部へと出射する。これにより、発光レンズ部6では、光源2から出射された光Lにより投影レンズ部5の周囲に位置する出射面8を発光させることが可能である。
【0023】
また、入射面7と出射面8との少なくとも一方(本実施形態では出射面8)には、出射面8から出射される光Lの配光を制御する配光制御部9が設けられている。配光制御部9は、発光レンズ部6の幅方向に並ぶ複数の配光カット9aを有している。
【0024】
発光レンズ部6では、出射面8に入射した一部の光Lを複数の配光カット9aにより屈折させながら、斜め前方に向けて出射する。すなわち、この発光レンズ部6では、配光制御部9により出射面8から出射される光Lの一部を投影レンズ部5から出射される光Lとは異なる方向に向かって出射することが可能である。
【0025】
また、入射面7と出射面8との少なくとも一方には、出射面8から出射される光Lを拡散させる光拡散部が設けられた構成としてもよい。光拡散部については、出射面8から外部に向けて出射される光Lを拡散させるための複数の拡散カットが設けられた構成であればよい。
【0026】
拡散カットとしては、例えば、フルートカットや魚眼カットと呼ばれるレンズカットや、ローレット加工やシボ加工等を施すことによって形成された凹凸構造などを挙げることができる。また、この拡散カットの形状等を調整することによって、出射面8から出射される光Lの拡散度合いを制御することが可能である。
【0027】
以上のように、本実施形態の発光ユニット1Aでは、上述した従来のような部品点数の増加や灯体の大型化を招くことなく、発光レンズ部6による通常の発光を行う機能と、投影レンズ部5による路面描画を行う機能とを併せ持つことが可能である。
【0028】
なお、上記発光ユニット1Aでは、
図4(A)に示すように、投影レンズ部5から出射される光Lの光軸AXと、発光レンズ部6の出射面8の垂線BXとが平行となっているが、例えば
図4(B)に示すように、投影レンズ部5から出射される光Lの光軸AXと、発光レンズ部6の出射面8の垂線BXとを非平行とすることも可能である。これにより、発光レンズ部6では、出射面8から出射される光Lを投影レンズ部5から出射される光Lとは異なる方向に向かって出射することが可能である。
【0029】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として、例えば
図5~
図8に示す発光ユニット1Bを備えた車両用灯具100Aについて説明する。
【0030】
なお、
図5は、発光ユニット1Bを備えた車両用灯具100Aの構成を示す斜視図である。
図6は、発光ユニット1Bの要部を拡大した断面図である。
図7は、発光ユニット1Bから路面Tに向けて投影された複数の描画パターンP1,P2,P3を示し、(A)は、その平面図である。(B)は、その斜視図である。
図8(A)は、交差点Cでの旋回時における車両Bの巻き込み事故を想定した場面を示す模式図である。
図8(B)は、交差点Cでの旋回時における車両Bの出会い頭事故を想定した場面を示す模式図である。また、以下の説明では、上記発光ユニット1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0031】
本実施形態の発光ユニット1Bを備えた車両用灯具100Aは、
図5に示すように、車両(図示せず。)の前端側の両コーナー部(本実施形態では左前端側のコーナー部)に左右対称に搭載される発光ユニットのうち、橙色発光で点滅する方向指示器(ターンランプ)に本発明を適用したものである。
【0032】
具体的に、この発光ユニット1Bは、複数(本実施形態では3つ)の光源2A,2B,2Cと、複数の光源2A,2B,2Cの前方に配置されたレンズ体3Bとを備えている。
【0033】
複数の光源2A,2B,2Cは、レンズ体3Bとの間の距離s1,S2,S3(本実施形態ではs1<S2<S3)を順次異ならせた状態で、レンズ体3Bと正面視で重なる面内の一方向(本実施形態では幅方向)に並んで配置されている。
【0034】
本実施形態では、光源2A,2B,2Cとして、橙色光(以下、単に「光」という。)L1,L2,L3を発するLEDを用いている。各光源2A,2B,2Cは、各回路基板4A,4B,4Cの一面(本実施形態では正面)側に実装された状態で、それぞれの光L1,L2,L3を前方(+X軸側)に向けて放射状に出射する。
【0035】
レンズ体3Bは、複数(本実施形態では3つ)の投影レンズ部5A,5B,5Cと、発光レンズ部6とを有して、正面視で発光レンズ部6の内側に複数の投影レンズ部5A,5B,5Cが位置するように、複数の投影レンズ部5A,5B,5Cと発光レンズ部6とが一体化された構造を有している。
【0036】
複数の投影レンズ部5A,5B,5Cは、複数の光源2A,2B,2Cの各々に対応して焦点距離が調整された状態で、レンズ体3Bの面内における一方向(本実施形態では幅方向)に並んで配置されている。
【0037】
また、複数の投影レンズ部5A,5B,5Cは、それぞれの焦点距離に応じて、凸レンズ5aの大きさが異なっている。具体的には、投影レンズ部5Aを構成する凸レンズ5aよりも投影レンズ部5Bを構成する凸レンズ5aが大きく、投影レンズ部5Bを構成する凸レンズ5aよりも投影レンズ部5Cを構成する凸レンズ5aが大きくなっている。
【0038】
複数の投影レンズ部5A,5B,5Cのうち、投影レンズ部5Aの背面側には、
図6に示すように、この投影レンズ部5Aから出射される光Lを下方に向けるための屈折面5bが設けられている。
【0039】
複数の投影レンズ部5A,5B,5Cは、
図7に示すように、複数の光源2A,2B,2Cの発光による形状を反映した描画パターンP1,P2,P3を路面Tに向けて投影する。
【0040】
具体的に、複数の光源2A,2B,2Cは、上記
図3(A)に示す光源2と同様に、正面視で矩形状(本実施形態では正方形状)の発光面2a(
図7において図示せず。)を有している。
【0041】
複数の投影レンズ部5A,5B,5Cは、
図7(A),(B)に示すように、これらの光源2A,2B,2Cから出射された光L1,L2,L3を前方の路面Tに向けて投影する。このとき、各光源2A,2B,2Cの発光面2aの形状を反映した光源像を前方の路面に向けて投影することによって、路面Tの前方に向かって延在し且つ漸次幅が拡大された矩形状の描画パターンP1,P2,P3を各々形成する。
【0042】
また、路面Tに向けて投影距離d1,d2,d3(本実施形態ではd1<d2<d3)が異なる複数の描画パターンP1,P2,P3を順に並べて投影する。本実施形態の車両用灯具100Aでは、
図7(A)に示すように、車両Bの前端側のコーナー部から車両外側の斜め前方且つ斜め下方の路面Tに向かって、複数の描画パターンP1,P2,P3を並べて投影する。
【0043】
一方、発光レンズ部6は、
図5に示すように、上記レンズ体3Aの発光レンズ部6と基本的に同じ構成を有している。本実施形態では、発光レンズ部6の出射面8に入射した一部の光Lを配光制御部9の複数の配光カット9aにより屈折させながら、車両Bの前方に向けて出射する。
【0044】
したがって、本実施形態の発光ユニット1Bを備えた車両用灯具100Aでは、ターンランプとして通常の点滅発光を行うと共に、路面Tに向かって複数の描画パターンP1,P2,P3を投影することによって、路面描画を行うことが可能である。
【0045】
また、本実施形態の発光ユニット1Bを備えた車両用灯具100Aでは、ターンランプの点灯時に、路面Tに向けて複数の描画パターンP1,P2,P3を順次投影する点灯動作を繰り返すことで、複数の描画パターンP1,P2,P3による発光の流れを演出した路面描画を行うことも可能である。
【0046】
なお、複数の描画パターンP1,P2,P3を順次投影する点灯動作については、全消灯の状態から、複数の描画パターンP1,P2,P3を1つずつ順に交替で点灯させた後に、全消灯させる動作を繰り返す方法や、全消灯の状態から、描画パターンP1,P2,P3を1つずつ順に追加で点灯させ全点灯させた後に、全消灯させる動作を繰り返す方法を挙げることができる。
【0047】
したがって、本実施形態の車両用灯具100Aでは、例えば
図8(A)に示すように、交差点Cでの旋回時における車両Bの巻き込み事故を想定した場面において、ターンランプの点灯時に、路面Tに投影された複数の描画パターンP1,P2,P3によって、車両Bの死角に位置する二輪車Wに対して、車両Bが旋回することを注意喚起することが可能である。
【0048】
また、本実施形態の車両用灯具100Aでは、例えば
図8(B)に示すように、交差点Cでの旋回時における車両Bの出会い頭事故を相対した場面において、ターンランプの点灯時に、路面Tに投影された複数の描画パターンP1,P2,P3によって、進入側の道路を走行する二輪車Wに対して、死角に位置する車両Bの存在を注意喚起することが可能である。
【0049】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態として、
図9に示す車両用灯具100Bについて説明する。
【0050】
なお、
図9は、車両用灯具100Bの構成及び点灯動作の一例を示し、(A)は、複数の発光ユニットR11,R12,R13の点灯動作を順に示す模式図、(B)は、路面Tに投影される複数の描画パターンP1,P2,P3を順に示す模式図である。
【0051】
本実施形態の車両用灯具100Bは、
図9(A)に示すように、ターンランプとして、車両Bの幅方向に並ぶ複数(本実施形態では3つ)の発光ユニットR11,R12,R13を備えている。
【0052】
複数の発光ユニットR11,R12,R13は、上記発光ユニット1Aと基本的に同じ構成を有している。一方、複数の発光ユニットR11,R12,R13は、それぞれの光源2とレンズ体3Aとの間の距離を順次異ならせると共に、それぞれの光源2に対応して焦点距離が調整された投影レンズ部5を配置している。これにより、複数の発光ユニットR11,R12,R13は、発光レンズ部6を発光させると共に、投影レンズ部5から路面Tに向けて投影距離が異なる複数の描画パターンP1,P2,P3を順に並べて投影する構成となっている。
【0053】
以上のような構成を有する本実施形態の車両用灯具100Bでは、
図9(A),(B)に示すように、ターンランプの点灯時に、複数の発光ユニットR11,R12,R13を順次点灯させるのに合わせて、発光レンズ部6を発光させると共に、投影レンズ部5から路面Tに向けて複数の描画パターンP1,P2,P3を順次投影させる点灯動作を繰り返す。
【0054】
具体的には、手順(1)~(4)の順に従って点灯動作を繰り返す。このうち、手順(1)は、複数の発光ユニットR11,R12,R13を全消灯した状態である。
【0055】
一方、手順(2)は、複数の発光ユニットR11,R12,R13のうち、発光ユニットR11を点灯することによって、発光ユニットR11の発光レンズ部6を発光させると共に、発光ユニットR11の投影レンズ部5から路面Tに描画パターンP1を投影した状態である。
【0056】
一方、手順(3)は、複数の発光ユニットR11,R12,R13のうち、発光ユニットR11,R12を点灯することによって、発光ユニットR11,R12の発光レンズ部6を発光させると共に、発光ユニットR11,R12の投影レンズ部5から路面Tに描画パターンP1,P2を投影した状態である。
【0057】
一方、手順(4)は、複数の発光ユニットR11,R12,R13を全点灯することによって、発光ユニットR11,R12,R13の発光レンズ部6を発光させると共に、発光ユニットR11,R12,R13の投影レンズ部5から路面Tに描画パターンP1,P2,P3を投影した状態である。
【0058】
これにより、本実施形態の車両用灯具100Bでは、ターンランプの点灯時に、複数の発光ユニットR11,R12,R13による発光の流れを演出すると共に、複数の描画パターンP1,P2,P3による発光の流れを演出した路面描画を行うことが可能である。
【0059】
なお、上記車両用灯具100Bでは、全消灯の状態から、複数の発光ユニットR11,R12,R13と、複数の描画パターンP1,P2,P3とを1つずつ順に交替で点灯させた後に、全消灯させる動作を繰り返すことも可能である。
【0060】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態として、
図10に示す車両用灯具100Cについて説明する。
【0061】
なお、
図10は、車両用灯具100Cの構成及び点灯動作の一例を示し、(A)は、複数の発光ユニットR21,R22,R23の点灯動作を順に示す模式図、(B)は、路面Tに投影される複数の描画パターンP1,P2,P3を順に示す模式図である。
【0062】
本実施形態の車両用灯具100Cは、
図10(A)に示すように、ターンランプとして、車両Bの幅方向に並ぶ複数(本実施形態では3つ)の発光ユニットR21,R22,R23を備えている。
【0063】
このうち、発光ユニットR23には、上記発光ユニット1Bを用いている。一方、残りの発光ユニットR21,R22には、路面描画を行わないものを用いている。すなわち、この発光ユニットR21,R22には、橙色光を発する光源2と、光源2から出射された光Lにより全体が橙色発光する発光レンズとを備えたものを用いている。
【0064】
以上のような構成を有する本実施形態の車両用灯具100Cでは、
図10(A),(B)に示すように、ターンランプの点灯時に、複数の発光ユニットR21,R22,R23を順次点灯させた後に、路面Tに向けて複数の描画パターンP1,P2,P3を順次投影させる点灯動作を繰り返す。
【0065】
具体的には、手順(1)~(6)の順に従って点灯動作を繰り返す。このうち、手順(1)は、複数の発光ユニットR21,R22,R23を全消灯した状態である。
【0066】
一方、手順(2)は、複数の発光ユニットR21,R22,R23のうち、発光ユニットR21を点灯することによって、発光ユニットR21の発光レンズ部6を発光させた状態である。
【0067】
一方、手順(3)は、複数の発光ユニットR21,R22,R23のうち、発光ユニットR11,R12を点灯することによって、発光ユニットR21,R22の発光レンズ部6を発光させた状態である。
【0068】
一方、手順(4)は、複数の発光ユニットR21,R22,R23を全点灯することによって、発光ユニットR21,R22,R23の発光レンズ部6を発光させると共に、発光ユニットR23の投影レンズ部5Aから路面Tに描画パターンP1を投影した状態である。
【0069】
一方、手順(5)は、複数の発光ユニットR21,R22,R23を全点灯することによって、発光ユニットR21,R22,R23の発光レンズ部6を発光させると共に、発光ユニットR23の投影レンズ部5A,5Bから路面Tに描画パターンP1,P2を投影した状態である。
【0070】
一方、手順(6)は、複数の発光ユニットR21,R22,R23を全点灯することによって、発光ユニットR21,R22,R23の発光レンズ部6を発光させると共に、発光ユニットR23の投影レンズ部5A,5B,5Cから路面Tに描画パターンP1,P2,P3を投影した状態である。
【0071】
これにより、本実施形態の車両用灯具100Cでは、ターンランプの点灯時に、複数の発光ユニットR11,R12,R13による発光の流れを演出すると共に、複数の描画パターンP1,P2,P3による発光の流れを演出した路面描画を行うことが可能である。
【0072】
なお、上記車両用灯具100Cでは、全消灯の状態から、複数の発光ユニットR21,R22,R23を1つずつ順に交替で点灯させた後に、全消灯させる動作と、発光ユニットR23の点灯時に、複数の描画パターンP1,P2,P3を1つずつ順に交替で点灯させた後に、全消灯させる動作とを繰り返すことも可能である。
【0073】
また、上記車両用灯具100Cでは、上記車両用灯具100Bと同様に、ターンランプの点灯時に、複数の発光ユニットR21,R22,R23を順次点灯させるのに合わせて、路面Tに向けて複数の描画パターンP1,P2,P3を順次投影させる点灯動作を繰り返すことも可能である。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記車両用灯具100A~100Cは、上述したターンランプとして、バンパーやドラミラーなどにも設置可能である。また、上述したターンランプ以外の車両用灯具にも適用可能である。
【0075】
なお、本発明を適用した発光ユニットは、上述したターンランプを構成する車両用灯具に対して好適に用いられるものの、通常の発光を行う機能と、路面描画を行う機能とを併せ持つ発光ユニットに対して本発明を幅広く適用することが可能である。
【0076】
光源については、上述したLED以外にも、例えばレーザーダイオード(LD)などの発光素子を用いることができる。また、発光素子が発する光の色については、上述した橙色光に限らず、赤色光や白色光など、その光源の用途に応じて適宜変更することも可能である。
【0077】
さらに、本発明を適用した発光ユニットは、上述した車両用灯具に好適に用いられるものの、車両用灯具以外の照明装置などにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1A,1B…発光ユニット 2,2A,2B,2C…光源 3A,3B…レンズ体 4,4A,4B,4C…回路基板 5,5A,5B,5C…投影レンズ部 6…発光レンズ部 7…入射面 8…出射面 9…配光制御部 100A,100B,100C…車両用灯具 L…光 P1,P2,P3…描画パターン R11,R12,R13,R21,R22,R23…発光ユニット