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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】ダクテッドファン装置及び航空機
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/28 20060101AFI20241105BHJP
   B64C 27/24 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
B64C27/28
B64C27/24
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021081076
(22)【出願日】2021-05-12
(65)【公開番号】P2022174988
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森崎 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】小田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】齋木 康寛
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104773290(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109484634(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/28
B64C 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸線周りに回転して気流を発生させるファン及び該ファンを前記第1軸線周りに包囲するとともに前記第1軸線方向に延びる円筒状の小ダクトを有する複数のファン装置と、
前記第1軸線に平行な第2軸線方向に延びる円筒状の大ダクトと、
を備え、
前記第2軸線方向から見たとき、各前記ファン装置は、前記大ダクトの内側に配置され、
前記第2軸線と直交する方向から見たとき、各前記小ダクトの少なくも一部分が、気流の流れ方向の上流側における前記大ダクトの外部に配置されているダクテッドファン装置。
【請求項2】
全ての前記小ダクトの前記流れ方向の下流側における端面は、前記大ダクトの前記流れ方向の上流側における端面よりも前記流れ方向の上流側にある請求項1に記載のダクテッドファン装置。
【請求項3】
前記第1軸線に沿った前記小ダクトの寸法をHとしたとき、
前記小ダクトの前記流れ方向の下流側における端面と前記大ダクトの前記流れ方向の上流側における端面との前記第2軸線に沿った距離が0H以上0.5H以下とされている請求項2に記載のダクテッドファン装置。
【請求項4】
全ての前記小ダクトの前記流れ方向の下流側における端面は、前記大ダクトの前記流れ方向の上流側における端面よりも前記流れ方向の下流側にあり、
全ての前記小ダクトの前記流れ方向の上流側における端面は、前記大ダクトの前記流れ方向の上流側における端面よりも前記流れ方向の上流側にある請求項1に記載のダクテッドファン装置。
【請求項5】
前記第1軸線に沿った前記小ダクトの寸法をHとしたとき、
前記小ダクトの前記流れ方向の下流側における端面と前記大ダクトの前記流れ方向の上流側における端面との前記第2軸線に沿った距離が0Hよりも大きく0.5H以下とされている請求項4に記載のダクテッドファン装置。
【請求項6】
前記ファン装置は、前記第2軸線を中心として周方向に等角度間隔に配置されている請求項1から5のいずれかに記載のダクテッドファン装置。
【請求項7】
前記小ダクトの直径をDとしたとき、
周方向に隣り合う前記小ダクト同士の間隔は、0.5D以上1.5D以下とされている請求項6に記載のダクテッドファン装置。
【請求項8】
各前記ファン装置は、それぞれ電動モータによって別個に駆動されている請求項1から7のいずれかに記載のダクテッドファン装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のダクテッドファン装置を備えている航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ダクテッドファン装置及び航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パワーエレクトロニクスの性能向上に伴って、航空機を電動化する開発が盛んに行われており、その開発のひとつにVTOL(Vertical Take Off & Landing:垂直離着陸)型の航空機がある。
【0003】
電動のVTOL機は、巡航速度、巡航距離、ペイロード等の要求によって機体の形式が異なる。例えば、早い巡航速度や長い巡航距離が要求される場合、主翼を有したチルトウィング機やチルトロータ機が採用されることが多い。
一方で、主翼やロータをチルト(傾斜)させると飛行の安定した制御が難しくなるので、巡航速度が遅く巡行距離が短い場合、固定ロータ機が採用されることが多い。
このとき、いずれの形式であっても、騒音やホバリング時の推力等を考慮すると、ダクテッドファンを採用することが望ましい。
【0004】
ダクテッドファンにおいては、空気が導入されるダクトの開口近傍(リップ部)での空気の剥離が推力に大きく影響する。特に、離着陸から巡行飛行への遷移モード時や横風がある場合等、ダクトの軸線に対して空気が斜めに流れ込む場合にリップ部で剥離が生じやすい。このため、リップ部での剥離をいかに抑制するかが重要な課題となる。
【0005】
また、どのようなファンの形式であっても、より効率的に推力を発生させることが望ましい。この場合、例えば特許文献1には、ダクト下端の内周側及び外周側にカウルを設けることで推力を増大させるダクテッドファンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2013-527364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されているダクテッドファンの他に、それとは異なる方法で効率的に推力を発生させることが望まれる。また、特許文献1では、ダクトのリップ部における剥離の抑制について言及されていない。
【0008】
本開示は、このような事情に鑑みてなされてものであって、リップ部における剥離の抑制、推力の向上及び静粛性の向上等を実現できるダクテッドファン装置及び航空機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示のダクテッドファン装置及び航空機は以下の手段を採用する。
すなわち、本開示の一態様に係るダクテッドファン装置は、第1軸線周りに回転して気流を発生させるファン及び該ファンを前記第1軸線周りに包囲するとともに前記第1軸線方向に延びる円筒状の小ダクトを有する複数のファン装置と、前記第1軸線に平行な第2軸線方向に延びる円筒状の大ダクトと、を備え、前記第2軸線方向から見たとき、各前記ファン装置は、前記大ダクトの内側に配置され、前記第2軸線と直交する方向から見たとき、各前記小ダクトの少なくも一部分が、気流の流れ方向の上流側における前記大ダクトの外部に配置されている。
【0010】
また、本開示の一態様に係る航空機は、上記のダクテッドファン装置を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、リップ部における剥離の抑制、推力の向上及び静粛性の向上等を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態及び第2実施形態に係るダクテッドファン装置が設けられている航空機の平面図である。
図2】第1実施形態及び第2実施形態に係るダクテッドファン装置の平面図である。
図3】第1実施形態に係るダクテッドファン装置の縦断面図である。
図4】第1実施形態に係るダクテッドファン装置の縦断面図である。
図5】第1実施形態に係るダクテッドファン装置の縦断面図である。
図6】第2実施形態に係るダクテッドファン装置の縦断面図である。
図7】第2実施形態に係るダクテッドファン装置の縦断面図である。
図8】第2実施形態に係るダクテッドファン装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態に係るダクテッドファン装置について、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明では、「内側」や「外側」と記載した場合、軸線Xf,Xdを中心とした「半径方向の内側」や「半径方向の外側」を意味するものとする。
また、「上流」や「下流」と記載した場合、「気流の流れ方向における上流」や「気流の流れ方向における下流」を意味するものとする。
【0014】
図1に示すように、ダクテッドファン装置10Aは、例えば、チルトロータ機やチルトウィング機等の航空機1に取り付けられ、航空機1の飛行に必要な推力(浮上及び推進のための推力)を発生させる装置とされている。
なお、図1のダクテッドファン装置10Aは、理解の容易のために、主翼や胴体等から離間して示されているが、実際には翼や胴体等に対して接続されている。
【0015】
[ダクテッドファン装置10Aの構成について]
図2及び図3に示すように、ダクテッドファン装置10Aは、複数のファン装置20と、円筒状の大ダクト30とを備えている。
なお、図3は、理解の容易のために、一部のファン装置20が省略されている。
【0016】
ファン装置20は、ファン22及びファン22を包囲する円筒状の小ダクト23を有している。すなわち、ファン装置20は、ダクテッドファンとされている。
【0017】
ファン22は、軸線Xf周りに回転駆動されることで気流を生成する装置である。この気流がファン装置20の推力源となる。
各ファン22は、図示しない電動モータによって軸線Xf周りに別個独立して回転駆動される。別個に駆動されることで、ダクテッドファン装置10Aとしての冗長性を確保できる。各電動モータは、図示しない制御部によってそれぞれ制御されている。
【0018】
制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。
そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。
なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。
コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0019】
小ダクト23は、軸線Xf方向に延びる円筒状の部材であり、一端面にある開口が導入口24とされ、他端面にある開口が排出口25とされている。このとき、導入口24から排出口25までの軸線Xfに沿った寸法(小ダクト23の高さ寸法)をHとしている。
小ダクト23は、ファン22の全周方向を包囲するようにしてファン22を内側に収容している。
【0020】
小ダクト23に収容されたファン22が軸線Xf周りに回転することで、導入口24から排出口25に向かう気流が発生する。
小ダクト23は、ファン22が生成した気流を整流する機能をもつ。これにより、ファン装置20ごとの推力を向上させることができる。
【0021】
大ダクト30は、軸線Xd方向に延びる円筒状の部材であり、一端面にある開口が導入口32とされ、他端面にある開口が排出口33とされている。大ダクト30は、小ダクト23よりも十分に大径とされている。
【0022】
図2に示すように、ダクテッドファン装置10Aを平面視した場合(すなわち、軸線Xd方向から見た場合)、各ファン装置20は、大ダクト30の内側に配置されている。
このとき、ファン装置20は、軸線Xdを中心とする仮想的な円C上において周方向に等角度間隔で配置されることが好ましい。これによって、ファン装置20を均等かつ効率的に配置することができる。また、ファン装置20をランダムに配置した場合と比べて、ファン装置20同士の間隔、及び、ファン装置20と大ダクト30との間隔を管理しやすくなる。
【0023】
図3に示すように、ダクテッドファン装置10Aを側面視(側断面視)した場合(すなわち、軸線Xdと直交する方向から見た場合)、各ファン装置20は、小ダクト23の全部分が大ダクト30の外部に配置されている。詳細には、小ダクト23の排出口25が大ダクト30の導入口32よりも上流側に配置されている。
このとき、小ダクト23の排出口25から大ダクト30の導入口32までの距離d1は、0H以上0.5H以下とされることが好ましい。これによって、後述するエジェクタ効果による気流を発生させやすくしている。
【0024】
図2に示すように、小ダクト23の直径をDとしたとき、周方向に隣り合う小ダクト23の外周面同士の間隔L1は、0.5D以上1.5D以下とされることが好ましい。これによって、後述するコアンダ効果による気流を発生させやすくしている。
また、小ダクト23の外周面と大ダクト30との内周面との間隔L2は、0.5D以上1.5D以下とされることが好ましい。これによって、後述するエジェクタ効果による気流を発生させやすくしている。また、後述するように、小ダクト23の外周面に衝突した空気が大ダクト30に導かれやすくなる。
【0025】
[コアンダ効果による気流について]
図3に示すように、各ファン装置20は、それぞれ別個に駆動されて気流(以下、「ファン装置20による気流」とも呼ぶ。)を生成する。
【0026】
このとき、例えば、一のファン装置20による気流及びそれに隣り合う他のファン装置20による気流は、各気流の間にある空気をコアンダ効果で流れ方向に沿って引き込む。
これによって、ファン装置20同士の間にもコアンダ効果によって追加的な気流(以下、「コアンダ効果による気流」とも呼ぶ。)が誘起されることになる。このため、複数のファン装置20のみによる気流と比べて、多くの気流が大ダクト30の導入口32から排出口33に向かって発生することになる。
【0027】
また、平面視で各ファン装置20は大ダクト30の内側に配置されているので、ファン装置20による気流及びコアンダ効果によって発生した気流(これらの気流をまとめて「2つの気流」とも呼ぶ。)が大ダクト30で整流されて、ダクテッドファン装置10Aとしてより大きな推力が発生することになる。
【0028】
このとき、間隔L1を0.5D以上1.5D以下とすることで、コアンダ効果による気流を効率的に誘起させることができる。仮に、間隔L1を0.5D未満とした場合、一のファン装置20による気流及びそれに隣り合う他のファン装置20による気流が引き寄せられて、コアンダ効果による気流の流れが阻害されてしまう。また、間隔L1を1.5Dよりも大きくした場合、コアンダ効果による気流が誘起されにくくなってしまう。間隔L1は、0.5D以上1.0D以下であれば更に好ましい。
【0029】
[横風に対する効果について]
図4に示すように、ダクテッドファン装置10Aに対して側方から空気が流れている場合(すなわち横風が吹いている場合)、大ダクト30に対して次のように空気が流れる。
【0030】
すなわち、横風は、小ダクト23の外周面に衝突した後、小ダクト23の外周面で偏向されて強制的に大ダクト30の導入口32に向かって流れる。これによって、横風が吹いた場合でも、大ダクト30のリップ部35での剥離が抑制されることになる。
【0031】
このとき、小ダクト23の外周面と大ダクト30との内周面との間隔L2を0.5D以上とすることで(図2参照)、空気が通る面積が適切に確保されて、小ダクト23の外周面に衝突した空気が大ダクト30に導かれやすくなる。
【0032】
[エジェクタ効果による気流について]
図5に示すように、2つの気流が大ダクト30に導かれる過程で、2つの気流が周囲の空気をエジェクタ効果によって引き込む。これによって生じる追加的な気流を「エジェクタ効果による気流」と呼ぶ。
【0033】
エジェクタ効果による気流は、2つの気流と共に大ダクト30の導入口32に向かって流れる。このため、2つの気流のみの場合と比べて、多くの気流が大ダクト30の導入口32から排出口33に向かって発生することになる。
【0034】
また、平面視で各ファン装置20は大ダクト30の内側に配置されているので、2つの気流及びエジェクタ効果による気流が大ダクト30で整流されて、ダクテッドファン装置10Aとして更に大きな推力が発生することになる。
【0035】
このとき、小ダクト23の排出口25から大ダクト30の導入口32までの距離d1を0H以上0.5H以下とすることで、空気が通る面積が適切に確保されて、周囲の空気がエジェクタ効果で引き込まれやすくなる。仮に、距離d1を0H未満とした場合、空気が通る面積が十分に確保されず、エジェクタ効果による気流の効果が小さくなる。また、距離d1を0.5Hよりも大きくした場合、エジェクタ効果が発揮されにくくなる。
また、小ダクト23の外周面と大ダクト30との内周面との間隔L2を0.5D以上1.5D以下とすることで、空気が通る面積が適切に確保されて、周囲の空気がエジェクタ効果で引き込まれやすくなる。仮に、間隔L2を0.5D未満とした場合、空気が通る面積が十分に確保されず、エジェクタ効果による気流の効果が小さくなる。また、間隔L2を1.5Dよりも大きくした場合、エジェクタ効果が発揮されにくくなる。
【0036】
本実施形態においては、以下の効果を奏する。
軸線Xd方向から見たとき、各ファン装置20は、大ダクト30の内側に配置され、軸線Xdと直交する方向から見たとき、各小ダクト23の全部分が、気流の流れ方向の上流側における大ダクト30の外部に配置されているので、ダクテッドファン装置10Aの側方から空気が流れ込んだとしても、小ダクト23によって流れが偏向されて強制的に大ダクト30に導かれる。これにより、大ダクト30のリップ部35での剥離が抑制される。結果として、ダクテッドファン装置10Aとしての推力の低減が抑制されることになる。
【0037】
また、コアンダ効果によってファン装置20とそれに隣り合う他のファン装置20との間に新たな気流を誘起させることができる。これにより、ダクテッドファン装置10Aとしての推力が向上することになる。
【0038】
また、距離d1が0H以上0.5H以下とされているので、小ダクト23と大ダクト30との間隔を適切に保つことができる。これにより、エジェクタ効果によって効率的に空気を引き込むことができる。
【0039】
また、間隔L1は、0.5D以上1.5D以下とされているので、コアンダ効果による気流が誘起されるファン装置20と他のファン装置20との間隔を適切に保つことができる。仮に、間隔L1を0.5D未満とした場合、各ファン装置20による気流(排気)が引き寄せられて、コアンダ効果による気流の流れが阻害されてしまう。また、間隔を1.5Dよりも大きくした場合、コアンダ効果による気流が誘起されにくくなってしまう。
【0040】
[第2実施形態]
以下、本開示の第2実施形態に係るダクテッドファン装置について、図面を参照して説明する。
【0041】
[ダクテッドファン装置10Bの構成について]
図2及び図6に示すように、ダクテッドファン装置10Bは、複数のファン装置20と、円筒状の大ダクト30とを備えている。
【0042】
図2に示すように、ダクテッドファン装置10Bを平面視した場合(すなわち、軸線Xd方向から見た場合)、各ファン装置20は、大ダクト30の内側に配置されている。この点は、第1実施形態と同様である。
【0043】
図6に示すように、ダクテッドファン装置10Aを側面視(側断面視)した場合(すなわち、軸線Xdと直交する方向から見た場合)、各ファン装置20は、小ダクト23の一部分が大ダクト30の外部に配置され、小ダクト23の残りの部分が大ダクト30の内部に配置されている。詳細には、小ダクト23の導入口24が大ダクト30の導入口32よりも上流側に配置され、小ダクト23の排出口25が大ダクト30の導入口32よりも下流側に配置されている。
このとき、小ダクト23の排出口25から大ダクト30の導入口32までの距離d2は、0Hよりも大きく0.5H以下とされることが好ましい。これによって、エジェクタ効果の過度な低下を回避しつつ、後述する遮音効果を発揮させている。
【0044】
[コアンダ効果による気流について]
図6に示すように、第1実施形態と同様の原理で、コアンダ効果による気流が誘起されることになる。
【0045】
[横風に対する効果について]
図7に示すように、第1実施形態と同様の原理で、小ダクト23の外周面に衝突した空気が大ダクト30に導かれることになる。
【0046】
[エジェクタ効果による気流について]
図8に示すように、第1実施形態と同様の原理で、エジェクタ効果による気流が発生することになる。
ただし、空気が通る面積の関係上、第1実施形態と比べて、エジェクタ効果による気流は弱くなる。
【0047】
[遮音効果について]
図6に示すように、各ファン装置20は、小ダクト23の一部分が大ダクト30の外部に配置され、小ダクト23の残りの部分が大ダクト30の内部に配置されている。すなわち、ファン装置20は、部分的に大ダクト30に収容されることになる。
【0048】
大ダクト30がファン装置20を包囲することで、ファン装置20で発生した騒音は大ダクト30で遮られることになる。これにより、ファン装置20の騒音を大ダクト30で遮音することができる。
【0049】
このとき、小ダクト23の排出口25から大ダクト30の導入口32までの距離d2を、0Hよりも大きく0.5H以下とすることで、エジェクタ効果の過度な低下を回避するとともに、遮音性を確保することができる。仮に、距離d2を0H以下とした場合(小ダクト23の排出口25が大ダクト30の導入口32よりも上流側に配置された場合)、大ダクト30がファン装置20を包囲しなくなり遮音効果が発揮されない。また、距離d2を0.5Hよりも大きくした場合、大ダクト30の内部に配置された小ダクト23の外周面による摩擦が増加して、エジェクタ効果による気流の流れが阻害されてしまう。
【0050】
本実施形態においては、以下の効果を奏する。
軸線Xd方向から見たとき、各ファン装置20は、大ダクト30の内側に配置され、軸線Xdと直交する方向から見たとき、各小ダクト23の一部分が、気流の流れ方向の上流側における大ダクト30の外部に配置されているので、ダクテッドファン装置10Aの側方から空気が流れ込んだとしても、小ダクト23によって流れが偏向されて強制的に大ダクト30に導かれる。これにより、大ダクト30のリップ部35での剥離が抑制される。結果として、ダクテッドファン装置10Bとしての推力の低減が抑制されることになる。
【0051】
また、コアンダ効果によってファン装置20とそれに隣り合う他のファン装置20との間に新たな気流を誘起させることができる。これにより、ダクテッドファン装置10Aとしての推力が向上することになる。
【0052】
また、小ダクト23の一部分が大ダクト30の外部に配置され、小ダクト23の残りの部分が大ダクト30の内部に配置されていので、ファン装置20の騒音を大ダクト30で遮音することができる。
【0053】
また、距離d2が0Hよりも大きく0.5H以下とされているので、エジェクタ効果の過度な低下を回避するとともに、遮音性を確保することができる。
【0054】
以上の通り説明した各実施形態に係るダクテッドファン装置及び航空機は、例えば、以下のように把握される。
すなわち、本開示の一態様に係るダクテッドファン装置(10A,10B)は、第1軸線(Xf)周りに回転して気流を発生させるファン(22)及び該ファンを前記第1軸線周りに包囲するとともに前記第1軸線方向に延びる円筒状の小ダクト(23)を有する複数のファン装置と、前記第1軸線に平行な第2軸線(Xd)方向に延びる円筒状の大ダクト(30)と、を備え、前記第2軸線方向から見たとき、各前記ファン装置は、前記大ダクトの内側に配置され、前記第2軸線と直交する方向から見たとき、各前記小ダクトの少なくも一部分が、気流の流れ方向の上流側における前記大ダクトの外部に配置されている。
【0055】
本態様に係るダクテッドファン装置によれば、第2軸線方向から見たとき、各ファン装置は、大ダクトの内側に配置され、第2軸線と直交する方向から見たとき、各小ダクトの少なくも一部分が、気流の流れ方向の上流側における大ダクトの外部に配置されているので、ダクテッドファン装置の側方から空気が流れ込んだとしても、小ダクトによって流れが偏向されて強制的に大ダクトに導かれる。これにより、大ダクトのリップ部での剥離が抑制される。結果として、ダクテッドファン装置としての推力の低減が抑制されることになる。
【0056】
また、コアンダ効果によってファン装置とそれに隣り合う他のファン装置との間に新たな気流を誘起させることができる。これにより、ダクテッドファン装置としての推力が向上することになる。
【0057】
また、各小ダクトの全部分が、流れ方向の上流側における大ダクトの外部に配置されている場合、小ダクトと大ダクトとの間隔を広く確保できる。これにより、ファン装置が発生させる気流に起因したエジェクタ効果によって当該間隔からより多くの空気が大ダクト内に吸い込まれることになる。結果として、ダクテッドファン装置の推力が向上することになる。
【0058】
また、各小ダクトの一部分のみが流れ方向の上流側における大ダクトの外部に配置されている場合、すなわち、各小ダクトの残りの部分が大ダクトの内部に収容されている場合、リップ部での剥離を抑制しつつ、ファン装置の騒音を大ダクトで遮音することができる。
【0059】
また、本開示の一態様に係るダクテッドファン装置において、全ての前記小ダクトの前記流れ方向の下流側における端面(25)は、前記大ダクトの前記流れ方向の上流側における端面(32)よりも前記流れ方向の上流側にある。
【0060】
本態様に係るダクテッドファン装置によれば、全ての小ダクトの流れ方向の下流側における端面は、大ダクトの流れ方向の上流側における端面よりも流れ方向の上流側にあるので、小ダクトと大ダクトとの間隔を広く確保できる。これにより、ファン装置が発生させる気流に起因したエジェクタ効果によって当該間隔からより多くの空気が大ダクト内に吸い込まれることになる。
【0061】
また、本開示の一態様に係るダクテッドファン装置において、前記第1軸線に沿った前記小ダクトの寸法をHとしたとき、前記小ダクトの前記流れ方向の下流側における端面と前記大ダクトの前記流れ方向の上流側における端面との前記第2軸線に沿った距離(d1)が0H以上0.5H以下とされている。
【0062】
本態様に係るダクテッドファン装置によれば、第1軸線に沿った小ダクトの寸法をHとしたとき、小ダクトの流れ方向の下流側における端面と大ダクトの流れ方向の上流側における端面との第2軸線に沿った距離が0H以上0.5H以下とされているので、小ダクトと大ダクトとの間隔を適切に保つことができる。これにより、エジェクタ効果によって効率的に空気を引き込むことができる。
【0063】
また、本開示の一態様に係るダクテッドファン装置において、全ての前記小ダクトの前記流れ方向の下流側における端面は、前記大ダクトの前記流れ方向の上流側における端面よりも前記流れ方向の下流側にあり、全ての前記小ダクトの前記流れ方向の上流側における端面(24)は、前記大ダクトの前記流れ方向の上流側における端面よりも前記流れ方向の上流側にある。
【0064】
本態様に係るダクテッドファン装置によれば、全ての小ダクトの流れ方向の下流側における端面は、大ダクトの流れ方向の上流側における端面よりも流れ方向の下流側にあり、全ての小ダクトの流れ方向の上流側における端面は、大ダクトの流れ方向の上流側における端面よりも流れ方向の上流側にあるので、小ダクトを部分的に大ダクトで包囲することができる。これにより、ファン装置の騒音を大ダクトで遮音することができる。
【0065】
また、本開示の一態様に係るダクテッドファン装置において、前記第1軸線に沿った前記小ダクトの寸法をHとしたとき、前記小ダクトの前記流れ方向の下流側における端面と前記大ダクトの前記流れ方向の上流側における端面との前記第2軸線に沿った距離(d2)が0Hよりも大きく0.5H以下とされている。
【0066】
本態様に係るダクテッドファン装置によれば、第1軸線に沿った小ダクトの寸法をHとしたとき、小ダクトの流れ方向の下流側における端面と大ダクトの流れ方向の上流側における端面との第2軸線に沿った距離が0Hよりも大きく0.5H以下とされているので、大ダクトに包囲される小ダクトの部分を限定することができる。これにより、エジェクタ効果を発揮させつつ遮音を実現することができる。仮に、小ダクトの全部分が大ダクトに包囲された場合、小ダクトの外周面の摩擦によって空気が吸い込まれにくくなり、エジェクタ効果が十分に発揮されなくなる可能性がある。
【0067】
また、本開示の一態様に係るダクテッドファン装置において、前記ファン装置は、前記第2軸線を中心として周方向に等角度間隔に配置されている。
【0068】
本態様に係るダクテッドファン装置によれば、各ファン装置は、第2軸線を中心として周方向に等角度間隔に配置されているので、効率的に、かつ、均等にファン装置を配置することができる。
【0069】
また、本開示の一態様に係るダクテッドファン装置において、前記小ダクトの直径をDとしたとき、周方向に隣り合う前記小ダクト同士の間隔(L1)は、0.5D以上1.5D以下とされている。
【0070】
本態様に係るダクテッドファン装置によれば、小ダクトの直径をDとしたとき、周方向に隣り合う小ダクト同士の間隔は、0.5D以上1.5D以下とされているので、コアンダ効果による気流が誘起されるファン装置と他のファン装置との間隔を適切に保つことができる。仮に、間隔を0.5D未満とした場合、各ファン装置による気流(排気)が引き寄せられて、コアンダ効果による気流の流れが阻害されてしまう。また、間隔を1.5Dよりも大きくした場合、コアンダ効果による気流が誘起されにくくなってしまう。
【0071】
また、本開示の一態様に係るダクテッドファン装置において、各前記ファン装置は、それぞれ電動モータによって別個に駆動されている。
【0072】
本態様に係るダクテッドファン装置によれば、各ファン装置は、それぞれ電動モータによって別個に駆動されているので、ダクテッドファン装置としての冗長性を確保できる。
【0073】
また、本開示の一態様に係る航空機は、上記のダクテッドファン装置を備えている。
【符号の説明】
【0074】
1 航空機
10A,10B ダクテッドファン装置
20 ファン装置
22 ファン
23 小ダクト
24 導入口
25 排出口
30 大ダクト
32 導入口
33 排出口
35 リップ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8