(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】超音波検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/265 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
G01N29/265
(21)【出願番号】P 2021096857
(22)【出願日】2021-06-09
【審査請求日】2024-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】成重 将史
(72)【発明者】
【氏名】三木 将裕
(72)【発明者】
【氏名】中田 理公
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-106408(JP,A)
【文献】実開平03-040293(JP,U)
【文献】特開2000-180584(JP,A)
【文献】実開平01-163810(JP,U)
【文献】特開昭63-030756(JP,A)
【文献】特開昭62-021014(JP,A)
【文献】特開2008-139035(JP,A)
【文献】特開2003-329453(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0011840(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01C 3/00 - G01C 3/32
G01S 7/48 - G01S 7/51
G01S 17/00 - G01S 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の表面に沿って移動する移動体と、
前記移動体に接続され、前記被検体の表面に沿って延在するアームと、
前記アームに沿って移動するスライダと、
前記スライダで保持され、前記被検体の表面に配置された超音波探触子と、
前記移動体及び前記スライダの移動を制御する移動制御装置と、
前記超音波探触子から前記被検体に超音波を送信させると共に、前記超音波探触子で受信された反射波の情報を取得する超音波探傷装置と、
前記移動制御装置及び前記超音波探傷装置を制御するコンピュータとを備えた超音波検査装置において、
前記移動体に設けられ、レーザ光を用いて前記超音波探触子との距離を計測する距離センサと、
前記距離センサを回転して前記距離センサのレーザ光の照射方向を可変する回転機構と、
前記コンピュータからの指令に応じて前記回転機構を制御する回転制御装置とを備え、
前記コンピュータは、
前記超音波探触子の被照射面上の複数の計測点の位置を、それぞれに対応する前記距離センサのレーザ光の照射方向と前記距離センサで計測された距離に基づいて演算し、前記超音波探触子の実位置を、前記複数の計測点の位置の平均によって演算しており、
更に、前記超音波探触子の前記被照射面の全体に対応する前記距離センサのレーザ光の照射方向の可変範囲角度に対して前記距離センサの回転速度が比例するように、前記スライダの移動に応じて前記距離センサの回転速度を可変する指令を前記回転制御装置へ出力することを特徴とする超音波検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波検査装置において、
前記アームの先端側に設けられ、前記アームの先端位置を調整するアーム駆動機構と、
前記コンピュータからの指令に応じて前記アーム駆動機構を制御するアーム制御装置とを備え、
前記コンピュータは、前記超音波探触子の前記実位置を目標位置に近づけるための指令を前記アーム制御装置へ出力することを特徴とする超音波検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型構造物を検査する超音波検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントや化学プラントでは、圧力容器やタンク等の大型構造物に割れや減肉等の欠陥がないことを確認するための点検作業が義務付けられている。特許文献1は、大型構造物(被検体)を検査する超音波検査装置を開示する。
【0003】
特許文献1の超音波検査装置は、被検体の表面に沿って移動する移動体と、移動体に接続され、被検体の表面に沿って延在するアームと、アームに沿って移動するスライダと、スライダで保持され、被検体の表面に配置された超音波探触子と、移動体及びスライダの移動を制御する移動制御装置と、超音波探触子から被検体に超音波を送信させると共に、超音波探触子で受信された反射波の情報を取得する超音波探傷装置と、移動制御装置及び超音波探傷装置を制御するコンピュータとを備える。
【0004】
コンピュータは、移動体及びスライダの制御情報から得られた超音波探触子の位置に基づいて被検体の検査位置を演算し、被検体の検査位置と反射波の情報との組合せを取得する。ところが、アームの撓り等の変形が生じれば、超音波探触子の位置のずれ、ひいては、被検査体の検査位置のずれが生じる。そのため、このままでは、検査の正当性が損なわれる。
【0005】
そこで、特許文献1の超音波検査装置は、アームの変形パターンに応じて変化する情報を取得する検出装置を更に備える。この検出装置は、例えば、アームの一端側に配置されたレーザ光源と、アームの他端側に配置されたスクリーンと、レーザ光源からスクリーンに投影されたレーザ像を撮影するカメラとで構成されている。
【0006】
コンピュータは、カメラの撮影画像からレーザ像を抽出し、レーザ像の変形パターンからアームの変形パターンを演算する。そして、アームの変形パターンに基づいて超音波探触子の位置を補正し、被検体の検査位置を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の超音波検査装置では、検出装置で検出された情報に基づいてアームの変形パターンを演算し、アームの変形パターンに基づいて側壁の検査位置を補正しているものの、それらの校正作業などに時間がかかる。
【0009】
そこで、本願発明者らは、代替案として、光学式の距離センサと、距離センサを回転する回転機構とを移動体に設けることを考えた。
【0010】
距離センサは、レーザ光を所定の周期で出射し、超音波探触子の被照射面で反射されたレーザ光を入射する。そして、例えば、レーザ光が出射されてから入射されるまでの時間を用いるか、出射されたレーザ光と入射されたレーザ光との位相差を用いるか、又はレンズを介し入射されたレーザ光の位置を用いて、超音波探触子との距離を計測する。
【0011】
回転機構は、距離センサを回転して、距離センサのレーザ光の照射方向を可変する。これにより、スライダの移動によって超音波探触子が移動しても、距離センサのレーザ光が超音波探触子に照射される。超音波探触子の被照射面は、距離センサのレーザ光の照射方向によって異なる複数の計測点(照射点)を有する。
【0012】
コンピュータは、複数の計測点の位置を、それぞれに対応する距離センサのレーザ光の照射方向と距離センサで計測された距離に基づいて演算し、超音波探触子の実位置を、複数の計測点の位置の平均(中心)によって演算する。
【0013】
ここで、距離センサの回転速度を固定した場合を仮想すると、次のような課題が生じる。距離センサに対して超音波探触子が近くにあるとき、遠くにあるときと比べ、超音波探触子の被照射面の全体に対応するレーザ光の照射方向の可変範囲角度が大きい。そのため、超音波探触子の被照射面上の計測点の数が多くなり、計測時間が長くなる。そして、スライダを高速移動させながら複数の計測点の距離を計測すれば、計測中の超音波探触子の移動距離が大きくなる。そのため、計測データが不安定となり、それに基づいて演算される超音波探触子の実位置の精度が低下する。かといって、スライダを低速移動させるか若しくは断続的に停止させながら複数の計測点の距離を計測すれば、検査時間が増大する。
【0014】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、スライダを高速移動させても超音波探触子の位置の計測精度を高めることができる超音波検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、被検体の表面に沿って移動する移動体と、前記移動体に接続され、前記被検体の表面に沿って延在するアームと、前記アームに沿って移動するスライダと、前記スライダで保持され、前記被検体の表面に配置された超音波探触子と、前記移動体及び前記スライダの移動を制御する移動制御装置と、前記超音波探触子から前記被検体に超音波を送信させると共に、前記超音波探触子で受信された反射波の情報を取得する超音波探傷装置と、前記移動制御装置及び前記超音波探傷装置を制御するコンピュータとを備えた超音波検査装置において、前記移動体に設けられ、レーザ光を用いて前記超音波探触子との距離を計測する距離センサと、前記距離センサを回転して前記距離センサのレーザ光の照射方向を可変する回転機構と、前記コンピュータからの指令に応じて前記回転機構を制御する回転制御装置とを備え、前記コンピュータは、前記超音波探触子の被照射面上の複数の計測点の位置を、それぞれに対応する前記距離センサのレーザ光の照射方向と前記距離センサで計測された距離に基づいて演算し、前記超音波探触子の実位置を、前記複数の計測点の位置の平均によって演算しており、更に、前記超音波探触子の前記被照射面の全体に対応する前記距離センサのレーザ光の照射方向の可変範囲角度に対して前記距離センサの回転速度が比例するように、前記スライダの移動に応じて前記距離センサの回転速度を可変する指令を前記回転制御装置へ出力する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スライダを高速移動させても超音波探触子の位置の計測精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態における超音波検査装置の構成を被検体の一部と共に表す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態におけるアームの変形を表す図である。
【
図3】比較例における超音波探触子の被照射面上の複数の計測点を、距離センサのレーザ光の照射方向の可変範囲角度と共に表す図である。
【
図4】本発明の一実施形態における距離センサのレーザ光の照射方向の可変範囲角度と距離センサの回転速度との関係を表す図である。
【
図5】本発明の一実施形態におけるスライダの位置(又は超音波探触子の軸方向位置)と距離センサの回転速度との関係を表す図である。
【
図6】本発明の一実施形態における超音波探触子の被照射面上の複数の計測点を、距離センサのレーザ光の照射方向の角度と共に表す図である。
【
図7】本発明の一変形例における超音波検査装置の構成を被検体の一部と共に表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は、本実施形態における超音波検査装置の構成を被検体の一部と共に表す概略図である。
【0020】
本実施形態の超音波検査装置は、原子炉圧力容器の円筒状の側壁1(被検体)の内面を検査するためのものである。この超音波検査装置は、側壁1の外側に設けられ、側壁1の外面に沿って(詳細には、側壁1の周方向に)延在するレール2と、レール2に沿って移動可能に設けられた移動体3と、移動体3に接続され、側壁1の外面に沿って(詳細には、側壁1の軸方向に)延在するアーム4と、アーム4に沿って移動可能に設けられたスライダ5と、スライダ5で保持され、側壁1の外面に配置された超音波探触子6とを備える。
【0021】
移動体3は、図示しないものの、レール2に噛み合う歯車と、歯車を回転する第1の電動モータとを有する。そして、第1の電動モータの駆動により、移動体3がレール2に沿って移動する。これにより、超音波探触子6が側壁1の周方向に移動する。
【0022】
図示しないボールネジは、アーム4に対して並行となるように延在すると共に、スライダ5に形成されたネジ穴に螺合する。移動体3は、図示しないものの、ボールネジを回転する第2の電動モータを有する。そして、第2の電動モータの駆動により、スライダ5がアーム4に沿って移動する。これにより、超音波探触子6が側壁1の軸方向に移動する。
【0023】
本実施形態の超音波検査装置は、上述した第1及び第2の電動モータを制御して移動体3及びスライダ5の移動を制御する移動制御装置7と、超音波探触子6を制御する超音波探傷装置8と、移動制御装置7及び超音波探傷装置8を制御するコンピュータ9と、コンピュータ9に接続された入力装置10及び表示装置11とを備える。コンピュータ9は、図示しないものの、プログラムに従って処理を実行するプロセッサと、プログラムや処理結果を記憶するメモリとを有する。入力装置10は、キーボードやマウス等で構成され、表示装置11は、ディスプレイ等で構成されている。
【0024】
移動制御装置7は、コンピュータ9からの指令に応じて、まず、移動体3の移動を制御して、超音波探触子6の周方向位置を設定する。そして、移動体3の位置を固定したままスライダ5の移動を制御して、超音波探触子6の軸方向位置を連続的に変える。この制御を繰り返す。
【0025】
超音波探傷装置8は、図示しないものの、パルサ及びレシーバを有する。パルサは、上述したスライダ5の移動に連動して、超音波探触子6の圧電素子(図示せず)にパルス信号(電気信号)を所定の周期で出力する。これにより、超音波探触子6の圧電素子は、側壁1の内面に向けて超音波を送信する。超音波探触子6の圧電素子は、側壁1の内面に欠陥が生じている場合に欠陥で反射された反射波を受信し、波形信号(電気信号)に変換してレシーバに出力する。レシーバは、波形信号に対し所定の処理を行ってコンピュータ9に出力する。
【0026】
コンピュータ9は、超音波探触子6の位置と超音波探傷装置8から得られた波形情報(詳細には、波形信号、又はこれに基づいて得られた情報)との組み合わせを取得して収録する。あるいは、超音波探触子6の位置から側壁1の検査位置(詳細には、側壁1の内面において超音波が到達する位置)を演算し、側壁1の検査位置と波形情報との組み合わせを収録する。なお、コンピュータ9は、波形情報に基づいて欠陥の有無などを評価する機能を有してもよい。
【0027】
移動体3を基準とした相対座標系における超音波探触子6の位置は、スライダ5の制御情報に基づいて演算可能である。側壁1を基準とした絶対座標系における超音波探触子6の位置は、移動体3の制御情報に基づいて、前述した相対座標系における超音波探触子6の理論位置から変換可能である。しかし、例えば
図2(a)の実線で示すようにアーム4の撓り等の変形が生じれば、超音波探触子6の位置のずれ、ひいては側壁1の検査位置のずれが生じる。詳しく説明すると、
図2(b)の点線で示すように超音波探触子6の位置のずれが生じていない場合は、超音波が側壁1の外面の位置Paから入射し、側壁1の内面の位置Qaに到達する。一方、
図2(b)の実線で示すように超音波探触子6の位置のずれが生じた場合は、超音波が側壁1の外面の位置Pbから入射し、側壁1の内面の位置Qbに到達する。そのため、側壁1の検査位置のずれが生じる。
【0028】
そこで、本実施形態の超音波検査装置は、超音波探触子6の実位置を計測するように構成されている。詳しく説明すると、移動体3に設けられた距離センサ12と、距離センサ12を回転する回転機構13と、コンピュータ9からの指令に応じて回転機構13を制御する回転制御装置14とを備える。
【0029】
距離センサ12は、レーザ光を所定の周期で出射し、超音波探触子6の被照射面で反射されたレーザ光を入射する。そして、例えば、レーザ光が出射されてから入射されるまでの時間を用いるか、出射されたレーザ光と入射されたレーザ光との位相差を用いるか、又はレンズを介し入射されたレーザ光の位置を用いて、超音波探触子6との距離を計測する。
【0030】
回転機構13は、距離センサ12を回転して、距離センサ12のレーザ光の照射方向を可変する。これにより、スライダ5の移動によって超音波探触子6が移動しても、距離センサ12のレーザ光が超音波探触子6に照射される。超音波探触子6の被照射面は、距離センサ12のレーザ光の照射方向によって異なる複数の計測点(照射点)を有する(詳細は後述)。
【0031】
コンピュータ9は、例えば距離センサ12の1回転毎に、移動体3を基準とした相対座標系(詳細には、側壁1の周方向をX軸、側壁1の軸方向をY軸とした相対座標系)における超音波探触子6の実位置を演算する。詳しく説明すると、複数の計測点の位置を、それぞれに対応する距離センサ12のレーザ光の照射方向と距離センサ12で計測された距離に基づいて演算し、超音波探触子6の実位置を、複数の計測点の位置の平均(中心)によって演算する。そして、側壁1を基準とした絶対座標系における超音波探触子6の実位置を演算し、この実位置と超音波探傷装置8から得られた波形情報との組み合わせを収録する。あるいは、超音波探触子6の実位置から側壁1の検査位置を演算し、側壁1の検査位置と波形情報との組み合わせを収録する。
【0032】
ここで、比較例として、距離センサ12の回転速度を固定した場合を仮想する。
図3で示すように、距離センサ12(言い換えれば、移動体3)に対して超音波探触子6が遠くにあるとき、超音波探触子6の被照射面15の全体に対応する距離センサ12のレーザ光の照射方向の可変範囲角度がθ1となり、距離センサ12のレーザ光の出射周波数や距離センサ12の回転速度によって計測点P1の数が決まる。例えば、移動体3からの超音波探触子6の移動距離が3000mm、距離センサ12のレーザ光の出射周波数が16kHz、距離センサ12の回転周波数が12Hz、超音波探触子6の被照射面15の長さが100mmであれば、計測点P1の数が6になる。
【0033】
一方、距離センサ12に対して超音波探触子6が近くにあるとき、超音波探触子6の被照射面15の全体に対応する距離センサ12のレーザ光の照射方向の可変範囲角度がθ2となり、超音波探触子6が遠くにあるときより大きくなる。そのため、距離センサ12の回転速度が固定されていれば、超音波探触子6の被照射面15上の計測点P2の数が、超音波探触子6が遠くにあるときより多くなり、計測時間が長くなる。例えば、移動体3からの超音波探触子6の移動距離が200mm、距離センサ12のレーザ光の出射周波数が16kHz、距離センサ12の回転周波数が12Hz、超音波探触子6の被照射面15の長さが100mmであれば、計測点P1の数が100になり、計測時間が長くなる。
【0034】
そして、スライダ5(言い換えれば、超音波探触子6)を高速移動させながら複数の計測点P2の距離を計測すれば、計測中の超音波探触子6の移動距離が大きくなる。例えば、スライダ5を100mm/sで移動すれば、計測中の超音波探触子6の移動距離が0.7mmとなる。そのため、計測データが不安定となり、それに基づいて演算される超音波探触子6の実位置の精度が低下する。かといって、スライダ5を低速移動させるか若しくは断続的に停止させながら複数の計測点の距離を計測すれば、検査時間が増大する。
【0035】
そこで、本実施形態のコンピュータ9は、スライダ5の移動に連動して距離センサ12の回転速度を可変する指令を回転制御装置14へ出力する。詳細には、
図4で示すように、上述した距離センサ12のレーザ光の照射方向の可変範囲角度に対して比例するように、距離センサ12の回転速度を可変する指令を出力する。別の言い方をすれば、
図5で示すように、移動体3からのスライダ5の移動距離(言い換えれば、超音波探触子6の移動距離)に対して反比例するように、距離センサ12の回転速度を可変する指令を出力する。
【0036】
その結果、
図6で示すように、超音波探触子6の移動に応じて距離センサ12のレーザ光の照射方向の可変範囲角度が変化しても、超音波探触子6の被照射面15上の計測点の数が同じになり、計測時間が同じになる。例えば、移動体3からの超音波探触子6の移動距離が3000mm、距離センサ12のレーザ光の出射周波数が16kHz、距離センサ12の回転周波数が4Hz、超音波探触子6の被照射面15の長さが100mmであれば、計測点P1の数が20になる。例えば、移動体3からの超音波探触子6の移動距離が200mm、距離センサ12のレーザ光の出射周波数が16kHz、距離センサ12の回転周波数が60Hz、超音波探触子6の被照射面15の長さが100mmであれば、計測点P2の数が20になる。そのため、スライダ5を高速移動させながら複数の計測点の距離を計測しても、計測中の超音波探触子6の移動距離が変わらない。そのため、計測データが不安定とならず、それに基づいて演算される超音波探触子6の実位置の精度も低下しない。
【0037】
したがって、本実施形態では、スライダ5を高速移動させても超音波探触子6の位置の計測精度を高めることができる。また、スライダ5の高速移動により、検査時間の短縮を図ることができる。
【0038】
なお、上記実施形態において、コンピュータ9は、スライダ5の移動に連動して距離センサ12の回転速度を可変する指令を回転制御装置14へ出力する場合を例にとって説明したが、これに限られない。例えば距離センサ12の1回転毎に超音波探触子6の実位置(詳細には、周方向位置及び軸方向位置)を演算し、超音波探触子6の軸方向位置に基づいて距離センサ12の回転速度を可変する指令を回転制御装置14へ出力してもよい。
【0039】
更に、例えば
図7で示す変形例のように、超音波検査装置は、アーム4の先端側に設けられ、アーム4の先端位置を調整するアーム駆動機構16と、コンピュータ9からの指令に応じてアーム駆動機構16を制御するアーム制御装置17とを備えてもよい。アーム駆動機構16は、図示しないものの、側壁1の周方向に走行可能な走行輪と、走行輪を回転する第3の電動モータとを有する。コンピュータ9は、例えば距離センサ12の1回転毎に、超音波探触子6の実位置(詳細には、周方向位置)を、アーム4の変形が生じていない場合の目標位置に近づけるための指令をアーム制御装置17へ出力する。アーム制御装置17は、コンピュータ9からの指令に応じて第3の電動モータを制御する。これにより、超音波探触子6の位置のずれや、側壁1の検査位置のずれを抑えることができる。
【0040】
また、上記実施形態において、移動体3は、原子炉圧力容器の側壁1の外側に設けられたレール2に沿って移動するように構成された場合を例にとって説明したが、これに限られない。例えば、移動体3は、側壁1の外面に吸着して移動するための磁気車輪を有してもよい。
【0041】
また、上記実施形態において、被検体は、原子炉圧力容器の側壁1である場合を例にとって説明したが、これに限られず、他の大型構造物(詳細には、例えば液体を貯える圧力容器又はタンク等)であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 原子炉圧力容器の側壁(被検体)
3 移動体
4 アーム
5 スライダ
6 超音波探触子
7 移動制御装置
8 超音波探傷装置
9 コンピュータ
12 距離センサ
13 回転機構
14 回転制御装置
15 超音波探触子の被照射面
16 アーム駆動機構
17 アーム制御装置