(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】浮体構造物
(51)【国際特許分類】
B63B 59/02 20060101AFI20241105BHJP
B63B 22/00 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
B63B59/02 L
B63B59/02 Z
B63B22/00 Z
(21)【出願番号】P 2021109139
(22)【出願日】2021-06-30
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】カナデビア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】コ マティアス アドリアン コサシ
(72)【発明者】
【氏名】新里 英幸
(72)【発明者】
【氏名】宮本 卓次郎
(72)【発明者】
【氏名】正木 洋二
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-052294(JP,U)
【文献】実開昭63-063198(JP,U)
【文献】実開昭53-117197(JP,U)
【文献】米国特許第06065415(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 59/02
B63B 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
係留ラインにより係留される浮体構造物であって、
前後方向に垂直な幅方向に配列されるとともにそれぞれが前後方向に延びる2つの浮体本体と、
喫水線よりも上側において前記2つの浮体本体の上部を連結する上部連結部と、
前記上部連結部よりも下側において、前記2つの浮体本体の間で幅方向に延びて前記2つの浮体本体に接続されるとともに、前記浮体構造物の重心よりも前側において係留ラインが接続される係留部と、
を備え
、
前記係留部の全体が喫水線よりも下側に位置し、前記係留部の幅方向の両端部は、喫水線よりも下側にて前記2つの浮体本体に固定されることを特徴とする浮体構造物。
【請求項2】
請求項
1に記載の浮体構造物であって、
前記係留部は、
両端部が前記2つの浮体本体に接続される棒状の係留支持部と、
前記係留支持部に嵌合するとともに前記係留ラインが接続される係留環部と、
を備えることを特徴とする浮体構造物。
【請求項3】
請求項
2に記載の浮体構造物であって、
前記係留環部には、前記係留支持部が挿入される取付孔が設けられており、
前記係留環部は、前記取付孔の全周に亘って前記係留支持部に溶接されることを特徴とする浮体構造物。
【請求項4】
請求項
2または
3に記載の浮体構造物であって、
前記係留環部には、幅方向の一方側から他方側へと貫通するとともに前記係留ラインが接続される接続孔が設けられていることを特徴とする浮体構造物。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1つに記載の浮体構造物であって、
前記係留環部の下端部は、前記2つの浮体本体の底面よりも下側に突出していることを特徴とする浮体構造物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の浮体構造物であって、
前記2つの浮体本体において、前記係留部の幅方向の両端部が固定される部位の板厚は周囲の部位よりも厚く、または、前記係留部の幅方向の両端部が固定される部位にリブが設けられることを特徴とする浮体構造物。
【請求項7】
請求項1ないし
6のいずれか1つに記載の浮体構造物であって、
前記係留部から上方に延びて前記上部連結部に接続される支柱部をさらに備えることを特徴とする浮体構造物。
【請求項8】
請求項1ないし
7のいずれか1つに記載の浮体構造物であって、
前記係留部よりも後側かつ前記上部連結部よりも下側において、前記2つの浮体本体の間で幅方向に延びて前記2つの浮体本体に接続される後接続部をさらに備えることを特徴とする浮体構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、係留ラインにより係留される浮体構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブイや浮魚礁等の海面に浮遊する浮体構造物は、係留ラインにより海底に係留されている。例えば、特許文献1では、縦長円筒形の浮体と、浮体の底部から下方に延びる縦長円柱形の尾筒と、を備えるブイが開示されている。当該ブイでは、係留ラインが接続される係留環が尾筒の下端部に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のブイでは、浮体および尾筒の外形が円柱状であるため、ブイの抗力係数が比較的大きく、潮流や波浪等によりブイに作用する流体抵抗も比較的大きい。したがって、ブイを係留する係留ラインに対して作用する係留張力も増大する。
【0005】
そこで、ブイに作用する流体抵抗を低減する方法として、通常の船舶のような形状を有する船型ブイを採用することが考えられる。ただし、船型ブイの係留については知見が少なく、係留ラインに作用する荷重を低減するための係留構造についても検討されていない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、係留ラインに作用する荷重を低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、係留ラインにより係留される浮体構造物であって、前後方向に垂直な幅方向に配列されるとともにそれぞれが前後方向に延びる2つの浮体本体と、喫水線よりも上側において前記2つの浮体本体の上部を連結する上部連結部と、前記上部連結部よりも下側において、前記2つの浮体本体の間で幅方向に延びて前記2つの浮体本体に接続されるとともに、前記浮体構造物の重心よりも前側において係留ラインが接続される係留部とを備える。前記係留部の全体が喫水線よりも下側に位置する。前記係留部の幅方向の両端部は、喫水線よりも下側にて前記2つの浮体本体に固定される。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の浮体構造物であって、前記係留部は、両端部が前記2つの浮体本体に接続される棒状の係留支持部と、前記係留支持部に嵌合するとともに前記係留ラインが接続される係留環部とを備える。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の浮体構造物であって、前記係留環部には、前記係留支持部が挿入される取付孔が設けられており、前記係留環部は、前記取付孔の全周に亘って前記係留支持部に溶接される。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の浮体構造物であって、前記係留環部には、幅方向の一方側から他方側へと貫通するとともに前記係留ラインが接続される接続孔が設けられている。
請求項5に記載の発明は、請求項2ないし4のいずれか1つに記載の浮体構造物であって、前記係留環部の下端部は、前記2つの浮体本体の底面よりも下側に突出している。
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の浮体構造物であって、前記2つの浮体本体において、前記係留部の幅方向の両端部が固定される部位の板厚は周囲の部位よりも厚く、または、前記係留部の幅方向の両端部が固定される部位にリブが設けられる。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の浮体構造物であって、前記係留部から上方に延びて前記上部連結部に接続される支柱部をさらに備える。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の浮体構造物であって、前記係留部よりも後側かつ前記上部連結部よりも下側において、前記2つの浮体本体の間で幅方向に延びて前記2つの浮体本体に接続される後接続部をさらに備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、係留ラインに作用する荷重を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施の形態に係る係留システムの側面図である。
【
図6】第2の実施の形態に係る浮体構造物を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る浮体構造物2を備える係留システム1の構成を示す側面図である。係留システム1は、浮体構造物2と、係留基体3と、係留ライン4とを備える。係留システム1は、水面91に浮かぶ浮体構造物2を係留ライン4により水底92に係留するシステムである。浮体構造物2は、水底92から上方に離間した状態で水面91に浮かぶ構造物である。浮体構造物2が海上に設置される場合、当該水面91および水底92はそれぞれ、海面および海底である。浮体構造物2は、例えば、所定海域に係留されて津波および/または波浪を観測する観測用ブイである。浮体構造物2の全長は、例えば数m~十数mであり、浮体構造物2の全幅は、例えば数mである。
【0017】
係留基体3は、水底92に固定された物体である。係留基体3は、例えば、水底92に沈められたシンカー(すなわち、錘)またはアンカー(すなわち、把駐力を有する錨)である。あるいは、係留基体3は、水底92に予め設置されている固定構造物であってもよい。係留基体3は、必ずしも水底92に直接的に固定される必要はなく、例えば、水底92に固定された他の構造物を介して、水中において間接的に水底92に固定される物体であってもよい。
【0018】
係留ライン4は、浮体構造物2と係留基体3とを接続する略線状の部材である。係留ライン4は、例えば、金属製のチェーンである。あるいは、係留ライン4は、係留ロープであってもよく、チェーンと係留ロープとが接続されたものであってもよい。係留ロープは、例えば、合成繊維製または金属製のロープである。
図1では、図示の都合上、係留ライン4を線にて示す。
【0019】
図1に示す例では、浮体構造物2は、1本の係留ライン4により、係留基体3に1点係留されている。1点係留とは、1つの浮体構造物2を、水底92に設けられた1つの係留基体3のみに接続して係留する係留方法である。なお、1点係留と異なる係留方法である多点係留では、1つの浮体が、水底92に設けられた2つ以上の係留基体に接続されて係留される。浮体構造物2は、多点係留にて係留基体3に係留されてもよい。浮体構造物2の係留の詳細については後述する。
【0020】
図2は、浮体構造物2を示す側面図である。
図3は、浮体構造物2を示す平面図である。
図4は、浮体構造物2を示す正面図である。
図2~
図4では、互いに直交する3つの方向であるX方向、Y方向およびZ方向を設定している。X方向およびY方向は水平面に平行であり、Z方向は重力方向に平行である。浮体構造物2は、いわゆるカタマラン(双胴船)型の構造物である。浮体構造物2は、2つの浮体本体21と、上部連結部22とを備える。
【0021】
各浮体本体21は、
図2~
図4中のX方向(以下、「前後方向」と呼ぶ。)に略平行に延びる。2つの浮体本体21は、前後方向に垂直な幅方向(すなわち、
図2~
図4におけるY方向)に間隙を空けて配置される。換言すれば、一の浮体本体21の側方に、他の浮体本体21が離間して配置される。2つの浮体本体21の形状は、2つの浮体本体21の幅方向中央にて前後方向に延びるとともに幅方向に垂直な対称面に対して略面対称である。各浮体本体21は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金、FRP等により形成される。
【0022】
各浮体本体21は、前後方向に細長く延びるとともに前端に近づくに従って痩せる形状(いわゆる、船形)を有する部材である。
図3に例示する浮体構造物2では、各浮体本体21は、後端に近づくに従っても痩せる形状を有する。当該痩せる形状は、浮体本体21の前端側あるいは後端側に向かうに従って浮体本体の幅方向の幅が漸次減少する形状を含む。各浮体本体21の幅方向の幅(以下、単に「幅」とも呼ぶ。)は、前後方向の中央部において最大である。各浮体本体21では、平面視において最大幅を有する部位が長手方向(すなわち、前後方向)にある程度の長さ延びている。各浮体本体21の中央部は、前後方向に垂直な断面形状が同じである部位が長手方向に連続する平行部である。当該平行部が設けられることにより、浮体本体21の製造を簡素化することができる。
【0023】
各浮体本体21の中央部から前側に延びる前端部では、前端に近づくに従って幅が漸次減少する。各浮体本体21の中央部から後側に延びる後端部では、後端に近づくに従って幅が漸次減少する。各浮体本体21の形状は、例えば、前後方向の中央において前後方向に垂直な対称面に対して略面対称(すなわち、略前後対称)である。なお、各浮体本体21では、平面視において最大幅を有する部位の前後方向の長さは約0mであってもよい。
【0024】
各浮体本体21の前後方向の中央部では、浮体本体21の下端部(すなわち、底部)は、上下方向(すなわち、Z方向)に略垂直な平面が幅方向の中央部に設けられた形状を有する。なお、各浮体本体21の下端部の形状は、丸みを帯びたU字型や下端が尖ったV字型等、様々に変更されてよい。また、各浮体本体21の下端部以外の部位の形状も、様々に変更されてよい。
【0025】
上部連結部22は、2つの浮体本体21の上部を、浮体構造物2の喫水線(すなわち、設計上における上限の喫水線)よりも上側において連結する。上部連結部22は、2つの浮体本体21の上端部(すなわち、(+Z)側の端部)を接続する上甲板221を備える。上甲板221は、上下方向に略垂直な略平板状の部材であり、水面91から上方に離間した位置に配置される。上甲板221は、例えば、2つの浮体本体21の前後方向の全長に亘って設けられる略矩形状の部材である。上甲板221は、2つの浮体本体21の上面全体、および、2つの浮体本体21間の空間の上方全体を覆う。なお、上甲板221は、必ずしも、略矩形状である必要はなく、他の形状(例えば、略円板状)の部材であってもよい。上甲板221は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金、FRP等により形成される。
【0026】
上甲板221上には、浮体構造物2の使用目的に合わせて、様々な機器や設備等が配置される。上述のように、浮体構造物2が津波や波浪を観測する観測用ブイとして使用される場合、上甲板221上には、例えば、浮体構造物2の3次元の動きを取得するためのGPS(Global Positioning System)受信機222が配置される。そして、GPS受信機222により取得された浮体構造物2の動きに基づいて、水面91の変動(例えば、波浪、潮位、津波等)が求められる。
【0027】
また、上甲板221上には、例えば、GPS受信機222等に電力を供給するためのソーラーパネルが設置されてもよい。浮体構造物2はカタマラン型であり、上甲板221の面積を比較的大きくすることができるため、ソーラーパネルを略水平に配置することができる。これにより、ソーラーパネルの発電量を増大させることができる。また、ソーラーパネルの風圧抵抗を低減することができる。その結果、係留ライン4に作用する係留張力を低減することができる。
【0028】
上部連結部22は、上甲板221に加えて、あるいは、上甲板221に代えて、他の接続部材を備えていてもよい。当該他の接続部材は、例えば、略直線状の鋼材を組み合わせて形成されたトラス構造であってもよい。
【0029】
浮体構造物2は、係留ライン4(
図1参照)が接続される係留部23をさらに備える。係留部23は、上部連結部22よりも下側において、2つの浮体本体21の間で幅方向に延びる略棒状の部材である。
図2~
図4に示す例では、係留部23は、幅方向に略平行に略直線状に延びる部材である。係留部23は、浮体構造物2の喫水線よりも下側に位置する。好ましくは、係留部23の全体が喫水線よりも下側(すなわち、水面91よりも下方)に位置する。浮体構造物2と係留ライン4との係留点は、水面91よりも下方に位置する。
【0030】
係留部23の幅方向の両端部は、2つの浮体本体21の底面よりも上側において、2つの浮体本体21の内側の側面(すなわち、浮体本体21の2つの側面のうち、他の浮体本体21と幅方向において対向する側面)に接続される。係留部23の幅方向の端部(以下、「側端部」とも呼ぶ。)は、浮体本体21の上記平行部に固定される。浮体本体21の側面のうち係留部23の側端部が固定される部位は、幅方向に略垂直な略平面である。これにより、係留部23の浮体本体21への固定を容易に行うことができる。係留部23の側端部は、例えば、浮体本体21に対して溶接またはボルト締め等により固定される。係留部23の浮体本体21に対する固定方法は、様々に変更されてよい。浮体本体21では、係留部23の側端部が固定される部位の板厚が周囲の部位よりも厚くされてもよい。あるいは、当該部位にリブ等が設けられてもよい。
【0031】
係留部23は、その全体が浮体構造物2の重心よりも前後方向の前側に位置し、当該重心よりも前側において2つの浮体本体21に固定される。
図2~
図4に示す例では、浮体構造物2の重心は、2つの浮体本体21、上部連結部22および係留部23のそれぞれの重心を合成した合成重心である。
図2~
図4に示す例では、浮体構造物2の重心(すなわち、当該合成重心)は、浮体構造物2の前後方向の中心(すなわち、浮体構造物2の前端と後端との間の中央)と前後方向において略同じ位置に位置する。なお、例えば、浮体本体21にスケグやビルジキール等の付加物が設けられる場合や、上部連結部22上に所定の積載物が恒常的に積載される場合、浮体構造物2の重心は、当該付加物や積載物を含めて求められる。浮体構造物2の重心は、浮体構造物2の前後方向の中心と前後方向において異なる位置(例えば、当該中心よりも後側)に位置していてもよい。また、係留部23の前後方向の位置は、浮体構造物2の重心よりも前側であれば、
図2に示す位置よりも後側であってもよく、浮体構造物2の前後方向の中心よりも前側または後側であってもよい。
【0032】
図5は、係留部23の幅方向中央部を拡大して示す斜視図である。
図5では、係留部23に接続される係留ライン4の図示を省略している。係留部23は、係留支持部231と、係留環部232と、を備える。係留支持部231は、幅方向に略平行に略直線状に延びる棒状の部材である。
図5に示す例では、係留支持部231は、略円筒状の部材である。係留支持部231の幅方向の両端部は、上述のように、2つの浮体本体21の平行部において内側の側面に接続される。なお、係留支持部231の形状は様々に変更されてよい。例えば、係留支持部231は、略円柱状、略角筒状または略角柱状の部材であってもよく、H型鋼等であってもよい。
【0033】
係留環部232は、幅方向に略垂直な略平板状の部材である。
図5に示す例では、係留環部232の側面視における形状は、略長円状(すなわち、離間して配置された2つの半円の両端間を2本の平行な直線でつないだ形状)である。係留環部232には、係留支持部231が挿入される取付孔が設けられている。当該取付孔は、係留環部232を幅方向の一方側から他方側へと貫通する。当該取付孔に係留支持部231が挿入されることにより、係留環部232が係留支持部231に嵌合する。係留環部232は、係留支持部231の幅方向の中央部に配置され、当該取付孔の全周に亘って係留支持部231に溶接されることにより、係留支持部231に固定される。係留部23(すなわち、係留支持部231および係留環部232)は、例えば、ステンレス鋼等により形成される。
【0034】
係留環部232には、係留ライン4(
図1参照)が接続される接続孔233が設けられている。接続孔233は、係留環部232を幅方向の一方側から他方側へと貫通する。接続孔233の側面視における形状は、略円形である。係留部23では、係留ライン4の上端部に設けられたシャックル等(図示省略)が、係留環部232の接続孔233に接続される。これにより、浮体構造物2の重心よりも前側において、係留部23の幅方向中央部に係留ライン4が接続される。
【0035】
図5に示す例では、接続孔233は、係留支持部231の鉛直下方にて係留支持部231から離間した位置に設けられる。これにより、波浪、潮流および風等の外力により浮体構造物2が動揺した場合であっても、接続ライン4が係留支持部231に接触することが抑制される。なお、係留環部232および接続孔233の側面視における形状は様々に変更されてよい。例えば、係留環部232は、側面視において略円形や略矩形であってもよく、接続孔233は、側面視において略楕円形や略長円形であってもよい。また、係留環部232における接続孔233の位置も適宜変更されてよい。
【0036】
図2に示す例では、係留支持部231の全体、および、係留環部232の大部分は、浮体本体21の底面よりも上側に位置し、係留環部232の下端部は、浮体本体21の底面よりも下側に突出している。これにより、接続孔233と水面91との間の上下方向の距離を比較的大きくすることができる。その結果、浮体構造物2および係留ライン4を一体的に見た場合の重心位置を下げ、外力による浮体構造物2の動揺を抑制することができる。
【0037】
図2に示す例では、接続孔233の全体が浮体本体21の底面よりも上側に位置するが、接続孔233の一部または全体が、浮体本体21の底面よりも下側に位置していてもよい。これにより、接続孔233と水面91との間の上下方向の距離をさらに大きくすることができ、その結果、外力による浮体構造物2の動揺をさらに抑制することができる。なお、係留部23では、係留支持部231および係留環部232の全体が、浮体本体21の底面よりも上側に位置していてもよい。これにより、浮体構造物2の建造時や搬送時等における係留部23に対する異物の衝突等を抑制することができる。
【0038】
図1に示す係留システム1では、浮体構造物2に波浪、潮流および風等の外力が作用すると、浮体構造物2は、係留基体3(または、係留ライン4の水底92に接している部位のうち、係留基体3とは反対側の端部)を中心として振れ回り、外力が作用する方向(以下、「外力方向」とも呼ぶ。)の最も下流側に位置する。係留ライン4は、水底92から当該外力方向に沿って延びる。
【0039】
上述のように、浮体構造物2と係留ライン4との係留点(すなわち、係留部23の接続孔233)は、浮体構造物2の重心よりも前側に位置するため、外力方向の下流側に位置する浮体構造物2は、各浮体本体21の前端部を外力方向の上流側(例えば、波上側)に向けて、各浮体本体21が外力方向に略平行になる姿勢(すなわち、浮体構造物2の前後方向が外力方向に略平行になる姿勢)を取る。また、外力方向の下流側に位置する浮体構造物2に作用する外力が変動する場合、浮体構造物2は、当該変動に対応して係留点を中心として比較的小さく振れ回り、外力に対して最も抵抗が少ない向きを向く。これにより、係留ライン4に作用する係留張力が低減される。
【0040】
以上に説明したように、係留ライン4により係留される浮体構造物2は、2つの浮体本体21と、上部連結部22と、係留部23とを備える。2つの浮体本体21は、前後方向に垂直な幅方向に配列される。2つの浮体本体21のそれぞれは、前後方向に延びる。上部連結部22は、喫水線よりも上側において2つの浮体本体21の上部を連結する。係留部23は、上部連結部22よりも下側において、2つの浮体本体21の間で幅方向に延びて2つの浮体本体21に接続される。係留部23では、浮体構造物2の重心よりも前側において係留ライン4が接続される。
【0041】
このように、浮体構造物2の重心よりも前側において係留部23に係留ライン4が接続されることにより、2つの浮体本体21の前端部が外力方向の上流側を向き、各浮体本体2の長手方向が外力方向に略平行となる。浮体構造物2はカタマラン型であるため、各浮体本体21の幅に対する長さの割合が大きく、浮体本体21の長手方向が外力方向に略平行である場合、外力により浮体本体21に生じる抵抗は、上下方向に延びる円柱状の浮体等に比べて小さくなる。したがって、係留システム1において浮体構造物2に作用する流体抵抗が低減されるため、係留ライン4に作用する荷重を低減することができる。その結果、係留ライン4を小径化および軽量化することができ、係留システム1のコストダウンを実現することができる。
【0042】
また、係留システム1では、係留ライン4が付加質量として働くため、浮体構造物2のピッチングを抑制することもできる。さらに、係留部23によって2つの浮体本体21を接続することにより、浮体構造物2の強度を向上することができる。具体的には、2つの浮体本体21に対して、浮体本体21の下部同士を幅方向において近づけるまたは離間させる力が作用する際に、係留部23により当該力の一部を支持することができる。また、浮体構造物2では、係留部23が上部連結部22よりも下側に位置することにより、浮体構造物2および係留ライン4を一体的に見た場合の重心位置を低くすることができる。その結果、外力による浮体構造物2の動揺を抑制することができる。
【0043】
上述のように、係留部23は喫水線よりも下側に位置することが好ましい。これにより、係留部23が喫水線よりも上側に位置する場合に比べて、波浪等による衝撃が係留部23に作用することを抑制することができる。また、係留部23が水中と空気中とを頻繁に移動することを抑制することができるため、係留部23の腐食を抑制することができる。
【0044】
上述のように、係留部23は、棒状の係留支持部231と、係留環部232とを備えることが好ましい。係留支持部231の両端部は、2つの浮体本体21に接続される。係留環部232は係留支持部231に嵌合する。係留環部232には、係留ライン4が接続される。これにより、係留ライン4が接続される係留部23の構造を簡素化することができ、係留部23および浮体構造物2の製造を容易とすることができる。
【0045】
上述のように、好ましくは、係留環部232には、係留支持部231が挿入される取付孔が設けられており、係留環部232は、当該取付孔の全周に亘って係留支持部231に溶接される。これにより、係留環部232を係留支持部231に強固に固定することができる。
【0046】
上述のように、係留環部232には、幅方向の一方側から他方側へと貫通するとともに係留ライン4が接続される接続孔233が設けられていることが好ましい。これにより、係留環部232を前後方向に貫通する接続孔が設けられる場合に比べて、正面視における係留環部232の幅を小さくすることができる。その結果、係留環部232に作用する潮流等の外力を低減することができる。また、浮体構造物2のピッチング等が生じた際に、係留環部232に作用する水の抵抗を低減することができる。その結果、係留環部232と係留支持部231との固定部(上記例では、溶接部)の疲労を抑制することができる。
【0047】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る浮体構造物2aについて説明する。
図6は、浮体構造物2aを示す側面図である。
図7は、浮体構造物2aを示す平面図である。
図8は、浮体構造物2aを示す正面図である。浮体構造物2aは、支柱部24および後接続部25をさらに備える点を除き、
図2~
図5に示す浮体構造物2と同じ構造を有する。以下の説明では、浮体構造物2aの構成のうち、浮体構造物2の各構成と対応する構成に同符号を付す。また、浮体構造物2aの係留態様は、
図1に示す浮体構造物2の係留態様と同じである。
【0048】
支柱部24は、係留部23から上方に延びて上部連結部22に接続される部材である。支柱部24は、水面91を上下に貫通するストラットである。支柱部24は、係留部23に作用する上向きおよび下向きの力の一部を支持する。
図6~
図8に示す例では、2本の略平板状の支柱部24が、係留部23の係留支持部231の上端部から上方に延び、上部連結部22の上甲板221の下面に接続される。
【0049】
各支柱部24は、幅方向に略垂直な略平板状の部材を幅方向に傾けた形状を有する。各支柱部24の上下方向に垂直な断面の形状は、例えば略矩形である。各支柱部24の下端部は、係留支持部231の幅方向の中央部において、係留環部232の幅方向の一方側に隣接して配置される。各支柱部24の上端部は、下端部よりも幅方向の外側(すなわち、幅方向の上記一方側に位置する浮体本体21に近い側)に位置する。また、各支柱部24の上端部は、下端部よりも後側(すなわち、浮体構造物2aの前後方向の中央部に近い側)に位置する。換言すれば、各支柱部24は、係留部23から幅方向外方かつ後方へと略直線状に斜め上に延びる。2本の支柱部24は、2つの浮体本体21の幅方向中央にて前後方向に延びるとともに幅方向に垂直な対称面に対して略面対称である。支柱部24は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金、FRP等により形成される。
【0050】
なお、支柱部24の形状は、略平板状には限定されず、略円柱状や略角柱状等、様々に変更されてよい。また、支柱部24の傾斜方向および傾斜の有無は、様々に変更されてよい。例えば、支柱部24は、係留部23から前方へと傾斜していてもよく、幅方向内方へと傾斜していてもよい。あるいは、支柱部24は、係留部23から鉛直上方へと延びていてもよい。浮体構造物2aに設けられる支柱部24の数は、1本であってもよく、3本以上であってもよい。
【0051】
後接続部25は、上部連結部22よりも下側において、2つの浮体本体21の間で幅方向に延びる略棒状の部材である。後接続部25は、係留部23よりも後側に配置される。後接続部25は、浮体構造物2aの喫水線よりも下側に位置する。好ましくは、後接続部25の全体が喫水線よりも下側(すなわち、水面91よりも下方)に位置する。
【0052】
図6~
図8に示す例では、後接続部25は、幅方向に略平行に略直線状に延びる部材である。後接続部25は、例えば、係留支持部231と略同形状の略円筒状の部材である。なお、後接続部25の形状は様々に変更されてよい。例えば、後接続部25は、略円柱状、略角筒状または略角柱状の部材であってもよく、H型鋼等であってもよい。後接続部25は、係留支持部231と略同形状であってもよく、異なる形状であってもよい。後接続部25は、例えば、ステンレス鋼等により形成される。
【0053】
後接続部25は、その全体が浮体構造物2aの重心よりも後側に位置し、当該重心よりも後側において2つの浮体本体21に固定される。後接続部25の幅方向の両端部は、2つの浮体本体21の底面よりも上側において、2つの浮体本体21の内側の側面に接続される。後接続部25の幅方向の端部(以下、「側端部」とも呼ぶ。)は、浮体本体21の上記平行部に固定される。浮体本体21の側面のうち後接続部25の側端部が固定される部位は、幅方向に略垂直な略平面である。これにより、後接続部25の浮体本体21への固定を容易に行うことができる。後接続部25の側端部は、浮体本体21に対して溶接またはボルト締め等により固定される。なお、後接続部25の浮体本体21に対する固定方法は、様々に変更されてよい。
【0054】
後接続部25の上下方向の位置は、例えば、係留部23の係留支持部231の上下方向の位置と略同じである。また、後接続部25と浮体構造物2aの重心との間の前後方向の距離は、例えば、係留支持部231と当該重心との間の前後方向の距離と略同じである。あるいは、後接続部25と浮体構造物2aの前後方向の中心との間の前後方向の距離が、係留支持部231と当該中心との間の前後方向の距離と略同じとされてもよい。後接続部25の上下方向および前後方向の位置は、様々に変更されてよい。
【0055】
以上に説明したように、浮体構造物2aは、係留部23から上方に延びて上部連結部22に接続される支柱部24をさらに備える。これにより、浮体構造物2aにおける係留部23の固定強度(すなわち、浮体本体21および上部連結部22に対する固定強度)、および、係留部23の耐荷重を増大することができる。
【0056】
上述のように、支柱部24は、係留部23から後方へと斜め上に延びることが好ましい。これにより、支柱部24が係留部23から鉛直上方に延びる場合に比べて、潮流等により生じる支柱部24の抵抗(特に、造波抵抗)を低減することができる。その結果、係留ライン4に作用する荷重の増大を抑制することができる。また、支柱部24が係留部23から鉛直上方に延びる場合に比べて、支柱部24の重心を後方に移動させることができるため、浮体構造物2aの重心が前後方向の中心から離れることを抑制することができる。
【0057】
上述のように、浮体構造物2aでは、2本の支柱部24が設けられ、各支柱部24は、係留部23から幅方向外方へと斜め上に延びることが好ましい。これにより、係留部23の固定強度および耐荷重をさらに増大することができる。
【0058】
上述のように、浮体構造物2aは、係留部23よりも後側かつ上部連結部22よりも下側において、2つの浮体本体21の間で幅方向に延びて2つの浮体本体21に接続される後接続部25をさらに備える。このように、係留部23に加えて後接続部25を設けることにより、浮体構造物2aの強度をさらに向上することができる。
【0059】
上述のように、後接続部25は、浮体構造物2aの重心よりも後側に配置されることが好ましい。これにより、浮体構造物2aの重心が前後方向の中心から離れることを抑制することができる。
【0060】
上述のように、浮体構造物2aは、浮体構造物2と同じ態様にて係留ライン4により係留されてもよく、他の態様にて係留されてもよい。
図9は、浮体構造物2aの他の係留態様の一例を示す図である。
図9に示す係留システム1aでは、水面91に浮かぶ浮体構造物2aが、
図1と同様に、係留ライン4により水底92の係留基体3に係留される。係留ライン4は、浮体構造物2aの係留部23に接続されている。
【0061】
係留システム1aでは、係留ライン4に加えて予備ライン41が設けられる。予備ライン41は、後接続部25と係留ライン4とを接続する。予備ライン41は、例えば、合成繊維製または金属製の係留ロープである。あるいは、予備ライン41は、金属製のチェーンであってもよく、チェーンと係留ロープとが接続されたものであってもよい。
図9では、図示の都合上、係留ライン4および予備ライン41を線にて示す。
【0062】
予備ライン41の上端は、後接続部25に接続される。予備ライン41と後接続部25との接続は、例えば、後接続部25に係留環部232(
図5参照)と略同様の構造が設けられ、当該構造に予備ライン41の端部に設けられたシャックル等(図示省略)が接続されることにより実現される。予備ライン41の下端は、係留ライン4の途中(すなわち、係留ライン4の上端よりも下側、かつ、水底92よりも上側)に接続される。
【0063】
係留システム1aでは、万一、係留部23の破損等により係留ライン4が浮体構造物2aから離間して下方へと移動した場合であっても、予備ライン41により浮体構造物2aと係留ライン4とが接続されているため、浮体構造物2aが係留海域から外部へと漂流することを防止することができる。
【0064】
上述の浮体構造物2,2aでは、様々な変更が可能である。
【0065】
例えば、浮体構造物2aでは、支柱部24および後接続部25のうち一方が省略されてもよい。
【0066】
浮体構造物2,2aの係留部23では、係留環部232は、例えば、前後方向に略垂直な略平板状であってもよく、接続孔233は、係留環部232を前後方向の一方側から他方側へと貫通していてもよい。
【0067】
係留環部232は、必ずしも、上記取付孔の全周に亘って係留支持部231に溶接される必要はなく、当該取付孔の周方向において部分的に係留支持部231に溶接されていてもよい。
【0068】
あるいは、係留環部232は、係留支持部231の中央部において、係留支持部231を中心として回転可能、かつ、幅方向の移動が制限された構造とされてもよい。具体的には、例えば、係留環部232は係留支持部231に溶接されておらず、係留環部232の取付孔の径は係留支持部231の外径よりも大きい。また、係留支持部231の外側面には、係留環部232の幅方向の両側に隣接して鍔部や突起部が設けられ、係留環部232の幅方向への移動が制限される。これにより、浮体構造物2,2aのピッチング等が生じた際に、係留ライン4から係留環部232に作用する荷重を低減することができる。
【0069】
上記例では、係留環部232は、係留支持部231の幅方向の中央部に配置されるが、
必ずしも係留支持部231の幅方向の中央部に配置される必要はなく、例えば、当該中央部から幅方向に少し離れた位置に配置されてもよい。また、係留部23に複数の係留環部232が設けられる場合、当該複数の係留環部232は、例えば、2つの浮体本体21の幅方向中央にて前後方向に延びるとともに幅方向に垂直な対称面に対して略面対称に配置される。係留環部232の数が3以上の奇数である場合、例えば、1つの係留環部232は、係留支持部231の幅方向の中央部に配置され、残りの係留環部232は、当該1つの係留環部232の幅方向の両側において、上記対称面に対して略面対称に配置される。
【0070】
係留部23の形状および構造は様々に変更されてよい。例えば、係留支持部231に相当する部位と、係留環部232に相当する部位とは、複数の部材を溶接等にて固定するのではなく、一繋がりの部材として形成されていてもよい。また、係留部23は必ずしも直線状に延びる部材である必要はなく、例えば、正面視において下向きに凸となるように湾曲する部材であってもよい。あるいは、係留部23では、平面視においてX字状の部材である係留支持部の4つの端部が、2つの浮体本体21に固定されており、当該係留支持部の交点部分に係留環部が設けられてもよい。
【0071】
本発明に関連する技術では、係留部23は、必ずしも全体が喫水線よりも下側に配置される必要はなく、例えば、係留部23の一部または全体が喫水線よりも上側に位置していてもよい。また、本発明では、係留部23は、必ずしも全体が浮体構造物2の重心よりも前側に配置される必要はなく、例えば、係留部23の一部が浮体構造物2の重心よりも前側に位置していてもよい。
【0072】
後接続部25は、必ずしも全体が喫水線よりも下側に配置される必要はなく、例えば、後接続部25の一部または全体が喫水線よりも上側に位置していてもよい。また、後接続部25は、必ずしも浮体構造物2aの重心よりも後側に配置される必要はなく、例えば、後接続部25の一部または全部が浮体構造物2aの重心よりも前側に位置していてもよい。
【0073】
係留部23は、平面視において2つの浮体本体21の間で幅方向に延びていればよく、必ずしも、2つの浮体本体21と側面視において重なっている必要はない。例えば、係留部23は、2つの浮体本体21の底面よりも下方に配置され、幅方向の両端部が2つの浮体本体21の底面に下側から接続されてもよい。後接続部25についても同様である。
【0074】
浮体本体21では、上述のように、様々な付加物が付加されてもよい。例えば、
図10に示すように、各浮体本体21の後端部にスケグ26が固定されてもよい。スケグ26は、幅方向に略垂直に広がる略板状の部材であり、フィンとも呼ばれる。スケグ26は、浮体本体21の後端部において、浮体本体21の底面から略鉛直下方へと延びる。スケグ26の幅方向の幅は、浮体本体21の幅方向の幅よりも小さい。スケグ26は、例えば、浮体本体21の幅方向の略中央に配置される。スケグ26が設けられることにより、浮体本体21の前端部が外力方向の上流側(例えば、波上側)にさらに向きやすくなる。これにより、係留ライン4に作用する係留張力をさらに低減することができる。
図10に示す例では、浮体構造物2の重心は、2つの浮体本体21、上部連結部22、係留部23および2つのスケグ26のそれぞれの重心を合成した合成重心である。係留ライン4は、当該合成重心よりも前側において、係留部23の幅方向の中央部に接続される。なお、スケグ26は、当該スケグ26が付加される浮体本体21の一部とみなされてもよい。
【0075】
浮体構造物2,2aでは、浮体本体21の数は2以上であればよく、例えば、幅方向に並ぶ3つの浮体本体21が設けられてもよい。この場合、3つの浮体本体21の大きさや形状は同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、幅方向の中央に位置する浮体本体21の前後方向の長さは、幅方向両側に位置する2つの浮体本体21の長さよりも長くてもよい。
【0076】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0077】
2,2a 浮体構造物
4 係留ライン
21 浮体本体
22 上部連結部
23 係留部
24 支柱部
25 後接続部
91 水面
92 水底
231 係留支持部
232 係留環部
233 接続孔