(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】健康支援装置、健康支援方法及び健康支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20241105BHJP
【FI】
G16H50/30
(21)【出願番号】P 2021110860
(22)【出願日】2021-07-02
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】道庭 賢一
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】春木 耕祐
(72)【発明者】
【氏名】小澤 政博
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-113042(JP,A)
【文献】国際公開第2017/204233(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0035017(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
健診データのうちで健診者の生活習慣の改善
によって値が変化する第1の因子と、
前記健診データのうちで前記健診者の生活習慣の改善によ
る前記第1の因子の値の変化によって値が変化する第2の因子との入力を受け付ける入力部と、
前記生活習慣の組み合わせパターンを生成するパターン生成部と、
前記組み合わせパターンに応じた前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算する因子変化計算部と、
前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量に基づき、前記健診者の疾病の発症リスクを示す発症リスク値を予測するリスク予測部と、
を具備し、
前記因子変化計算部は、前記生活習慣の組み合わせパターンと、前記第1の因子及び前記第2の因子の変化量との関係を学習した因子変化予測モデルに、前記生活習慣の組み合わせパターンと、前記健診者の前記第1の因子の値と、前記健診者の前記第2の因子の値とを入力して、前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算する、
健康支援装置。
【請求項2】
健診データのうちで健診者の生活習慣の改善
によって値が変化する第1の因子と、
前記健診データのうちで前記健診者の生活習慣の改善によ
る前記第1の因子の値の変化によって値が変化する第2の因子との入力を受け付ける入力部と、
前記生活習慣の組み合わせパターンを生成するパターン生成部と、
前記組み合わせパターンに応じた前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算する因子変化計算部と、
前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量に基づき、前記健診者の疾病の発症リスクを示す発症リスク値を予測するリスク予測部と、
を具備し、
前記因子変化計算部は、前記生活習慣の組み合わせパターンと、前記第1の因子及び前記第2の因子の変化量との関係を層別に学習した複数の因子変化予測モデルのうちの対応する層の因子変化予測モデルに、前記生活習慣の組み合わせパターンと、前記健診者の前記第1の因子の値と、前記健診者の前記第2の因子の値とを入力して、前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を層別に計算する、
健康支援装置。
【請求項3】
健診データのうちで健診者の生活習慣の改善
によって値が変化する第1の因子と、
前記健診データのうちで前記健診者の生活習慣の改善によ
る前記第1の因子の値の変化によって値が変化する第2の因子との入力を受け付ける入力部と、
前記生活習慣の組み合わせパターンを生成するパターン生成部と、
前記組み合わせパターンに応じた前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算する因子変化計算部と、
前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量に基づき、前記健診者の疾病の発症リスクを示す発症リスク値を予測するリスク予測部と、
を具備し、
前記因子変化計算部は、前記生活習慣の組み合わせパターンと、前記第1の因子及び前記第2の因子の変化量との関係を層別に学習した因子変化予測モデルに、前記生活習慣の組み合わせパターンと、対応する層の識別子が付された前記健診者の前記第1の因子の値と、対応する層の識別子が付された前記健診者の前記第2の因子の値とを入力して、前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を層別に計算する、
健康支援装置。
【請求項4】
健診データのうちで健診者の生活習慣の改善
によって値が変化する第1の因子と、
前記健診データのうちで前記健診者の生活習慣の改善によ
る前記第1の因子の値の変化によって値が変化する第2の因子との入力を受け付ける入力部と、
前記生活習慣の組み合わせパターンを生成するパターン生成部と、
前記組み合わせパターンに応じた前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算する因子変化計算部と、
前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量に基づき、前記健診者の疾病の発症リスクを示す発症リスク値を予測するリスク予測部と、
を具備し、
前記因子変化計算部は、
前記生活習慣の組み合わせパターンと前記第1の因子の変化量との関係が層別に記録された第1の因子の変化テーブルと、前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量との関係が層別に記録された第2の因子の変化テーブルとに基づいて、前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を層別に計算する、
健康支援装置。
【請求項5】
前記因子変化計算部は、前記健診者の性別で分けて前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算する、
請求項
2乃至
4の何れか1項に記載の健康支援装置。
【請求項6】
前記因子変化計算部は、前記健診者の年齢層で分けて前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算する、
請求項
2乃至
5の何れか1項に記載の健康支援装置。
【請求項7】
前記因子変化計算部は、前記健診者の投薬の有無で分けて前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算する、
請求項
2乃至
6の何れか1項に記載の健康支援装置。
【請求項8】
前記因子変化計算部は、前記健診者の食習慣で分けて前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算する、
請求項
2乃至
7の何れか1項に記載の健康支援装置。
【請求項9】
前記因子変化計算部は、前記健診者の家族の肥満者の有無で分けて前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算する、
請求項
2乃至
8の何れか1項に記載の健康支援装置。
【請求項10】
前記第1の因子は、前記健診者の体重を含み、
前記第2の因子は、前記健診者の生体検査値を含む、
請求項1乃至
9の何れか1項に記載の健康支援装置。
【請求項11】
健診データのうちで健診者の生活習慣の改善
によって値が変化する第1の因子と、
前記健診データのうちで前記健診者の生活習慣の改善によ
る前記第1の因子の値の変化によって値が変化する第2の因子との入力を受け付けることと、
前記生活習慣の組み合わせパターンを生成することと、
前記生活習慣の組み合わせパターンと、前記第1の因子及び前記第2の因子の変化量との関係を学習した因子変化予測モデルに、前記生活習慣の組み合わせパターンと、前記健診者の前記第1の因子の値と、前記健診者の前記第2の因子の値とを入力して、前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算することと、
前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量に基づき、前記健診者の疾病の発症リスクを示す発症リスク値を予測することと、
を具備するコンピュータが行う健康支援方法。
【請求項12】
健診データのうちで健診者の生活習慣の改善
によって値が変化する第1の因子と、
前記健診データのうちで前記健診者の生活習慣の改善によ
る前記第1の因子の値の変化によって値が変化する第2の因子との入力を受け付けることと、
前記生活習慣の組み合わせパターンを生成することと、
前記生活習慣の組み合わせパターンと、前記第1の因子及び前記第2の因子の変化量との関係を層別に学習した複数の因子変化予測モデルのうちの対応する層の因子変化予測モデルに、前記生活習慣の組み合わせパターンと、前記健診者の前記第1の因子の値と、前記健診者の前記第2の因子の値とを入力して、前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を層別に計算することと、
前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量に基づき、前記健診者の疾病の発症リスクを示す発症リスク値を予測することと、
を具備するコンピュータが行う健康支援方法。
【請求項13】
健診データのうちで健診者の生活習慣の改善
によって値が変化する第1の因子と、
前記健診データのうちで前記健診者の生活習慣の改善によ
る前記第1の因子の値の変化によって値が変化する第2の因子との入力を受け付けることと、
前記生活習慣の組み合わせパターンを生成することと、
前記生活習慣の組み合わせパターンと、前記第1の因子及び前記第2の因子の変化量との関係を層別に学習した因子変化予測モデルに、前記生活習慣の組み合わせパターンと、対応する層の識別子が付された前記健診者の前記第1の因子の値と、対応する層の識別子が付された前記健診者の前記第2の因子の値とを入力して、前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を層別に計算することと、
前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量に基づき、前記健診者の疾病の発症リスクを示す発症リスク値を予測することと、
を具備するコンピュータが行う健康支援方法。
【請求項14】
健診データのうちで健診者の生活習慣の改善
によって値が変化する第1の因子と、
前記健診データのうちで前記健診者の生活習慣の改善によ
る前記第1の因子の値の変化によって値が変化する第2の因子との入力を受け付けることと、
前記生活習慣の組み合わせパターンを生成することと、
前記生活習慣の組み合わせパターンと前記第1の因子の変化量との関係が層別に記録された第1の因子の変化テーブルと、前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量との関係が層別に記録された第2の因子の変化テーブルとに基づいて、前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を層別に計算することと、
前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量に基づき、前記健診者の疾病の発症リスクを示す発症リスク値を予測することと、
を具備するコンピュータが行う健康支援方法。
【請求項15】
健診データのうちで健診者の生活習慣の改善
によって値が変化する第1の因子と、
前記健診データのうちで前記健診者の生活習慣の改善によ
る前記第1の因子の値の変化によって値が変化する第2の因子との入力を受け付けることと、
前記生活習慣の組み合わせパターンを生成することと、
前記生活習慣の組み合わせパターンと、前記第1の因子及び前記第2の因子の変化量との関係を学習した因子変化予測モデルに、前記生活習慣の組み合わせパターンと、前記健診者の前記第1の因子の値と、前記健診者の前記第2の因子の値とを入力して、前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算することと、
前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量に基づき、前記健診者の疾病の発症リスクを示す発症リスク値を予測することと、
をコンピュータに実行させるための健康支援プログラム。
【請求項16】
健診データのうちで健診者の生活習慣の改善
によって値が変化する第1の因子と、
前記健診データのうちで前記健診者の生活習慣の改善によ
る前記第1の因子の値の変化によって値が変化する第2の因子との入力を受け付けることと、
前記生活習慣の組み合わせパターンを生成することと、
前記生活習慣の組み合わせパターンと、前記第1の因子及び前記第2の因子の変化量との関係を層別に学習した複数の因子変化予測モデルのうちの対応する層の因子変化予測モデルに、前記生活習慣の組み合わせパターンと、前記健診者の前記第1の因子の値と、前記健診者の前記第2の因子の値とを入力して、前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を層別に計算することと、
前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量に基づき、前記健診者の疾病の発症リスクを示す発症リスク値を予測することと、
をコンピュータに実行させるための健康支援プログラム。
【請求項17】
健診データのうちで健診者の生活習慣の改善
によって値が変化する第1の因子と、
前記健診データのうちで前記健診者の生活習慣の改善によ
る前記第1の因子の値の変化によって値が変化する第2の因子との入力を受け付けることと、
前記生活習慣の組み合わせパターンを生成することと、
前記生活習慣の組み合わせパターンと、前記第1の因子及び前記第2の因子の変化量との関係を層別に学習した因子変化予測モデルに、前記生活習慣の組み合わせパターンと、対応する層の識別子が付された前記健診者の前記第1の因子の値と、対応する層の識別子が付された前記健診者の前記第2の因子の値とを入力して、前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を層別に計算することと、
前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量に基づき、前記健診者の疾病の発症リスクを示す発症リスク値を予測することと、
をコンピュータに実行させるための健康支援プログラム。
【請求項18】
健診データのうちで健診者の生活習慣の改善
によって値が変化する第1の因子と、
前記健診データのうちで前記健診者の生活習慣の改善によ
る前記第1の因子の値の変化によって値が変化する第2の因子との入力を受け付けることと、
前記生活習慣の組み合わせパターンを生成することと、
前記生活習慣の組み合わせパターンと前記第1の因子の変化量との関係が層別に記録された第1の因子の変化テーブルと、前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量との関係が層別に記録された第2の因子の変化テーブルとに基づいて、前記第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を層別に計算することと、
前記第1の因子の変化量と前記第2の因子の変化量に基づき、前記健診者の疾病の発症リスクを示す発症リスク値を予測することと、
をコンピュータに実行させるための健康支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、健康支援装置、健康支援方法及び健康支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、精密医療が提唱されている。精密医療は、個人レベルで治療方法を分析し、分析した治療方法の中から最適な治療方法を選択する医療である。生活習慣病の健康指導においても、精密医療と同様に個人レベルの最適な目標設定が望まれている。例えば、糖尿病リスク低減のために5%の減量を全員一律に指導するのではなく、ある人には7%の減量、別の人には3%の減量と、個人の健康状態に合わせて指導することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、健康指導において個人レベルでの疾病予測をすることが可能な健康支援装置、健康支援方法及び健康支援プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様の健康支援装置は、入力部と、パターン生成部と、因子変化計算部と、リスク予測部とを有する。入力部は、健診データのうちで健診者の生活習慣の改善によって値が変化する第1の因子と、前記健診データのうちで前記健診者の生活習慣の改善による前記第1の因子の値の変化によって値が変化する第2の因子との入力を受け付ける。パターン生成部は、生活習慣の組み合わせパターンを生成する。因子変化計算部は、組み合わせパターンに応じた第1の因子と第2の因子のそれぞれの変化量を計算する。リスク予測部は、少なくとも第2の因子の変化量に基づき、健診者の疾病の発症リスクを示す発症リスク値を予測する。因子変化計算部は、生活習慣の組み合わせパターンと、第1の因子及び第2の因子の変化量との関係を学習した因子変化予測モデルに、生活習慣の組み合わせパターンと、健診者の前記第1の因子の値と、健診者の前記第2の因子の値とを入力して、第1の因子と前記第2の因子のそれぞれの変化量を計算する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る健康支援装置の一例の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、生活習慣の改善の組み合わせパターンの一例を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、第1の例の因子変化予測モデルの機械学習の概念図である。
【
図3B】
図3Bは、第2の例の因子変化予測モデルの機械学習の概念図である。
【
図3C】
図3Cは、第3の例の因子変化予測モデルの機械学習の概念図である。
【
図4】
図4は、健康支援装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態における健康支援装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2の実施形態における因子変化計算部の一例の構成を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、40代の男性用の体重変化率テーブルの例を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、60代の男性用の体重変化率テーブルの例を示す図である。
【
図8A】
図8Aは、40代の男性用の第2の因子の変化テーブルの例を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、60代の男性用の第2の因子の変化テーブルの例を示す図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態における健康支援装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る健康支援装置の一例の構成を示す図である。健康支援装置1は、入力部100と、探索パターン生成部120と、因子変化計算部130と、リスク予測部140と、ロス計算部150と、選択部160とを有する。
【0008】
入力部100は、健診データ及び目標値の入力を受け付ける。例えば、入力部100は、ユーザの健康支援装置1の操作により、健診データ及び目標値の入力を受け付けるように構成されていてもよい。ここでの「ユーザ」は、健康支援装置1を使用する人である。ユーザは、健診者自身であってもよいし、医師等の医療従事者であってもよい。この他、入力部100は、図示しない健康支援装置1の外部の記憶媒体に記憶されている健診データを、通信媒体を介して受け付けるように構成されていてもよい。また、入力部100は、記憶媒体が健康支援装置1に装着されたことを受けて、この記憶媒体から転送されてくる健診データを受け付けるように構成されていてもよい。
【0009】
ここで、実施形態の健診データは、生活習慣病のリスクの予測に用いられる因子の検査値を含む。この因子は、第1の因子と、第2の因子を含む。第1の因子は、健診者の生活習慣の改善によって直接的にコントロールできる因子である。例えば、体重は、運動の実施及び食生活の改善によって直接的に変化する。したがって、体重は、第1の因子に含まれる。この他、体脂肪率等も第1の因子に含まれ得る。一方、第2の因子は、健診者の生活習慣の改善によって直接的にコントロールできない因子である。例えば、HbA1c(ヘモグロビンA1c)は、運動の実施及び食生活の改善によって直接的には変化しない。したがって、HbA1cは、第2の因子に含まれる。この他、GOT(Glutamic Oxaloacetic Transaminase)、LDL(Low Density Lipoprotein)、血圧等の各種の生体検査値も第2の因子に含まれ得る。なお、HbA1c等は、生活習慣の改善によって直接的にはコントロールできない因子であるが、生活習慣の改善に伴う体重等の変化によって間接的に変化し得る。つまり、第2の因子は、第1の因子の変化によって間接的にコントロールされる因子を含む。
【0010】
また、目標値は、例えば生活習慣病等の特定の疾病の疾病リスク値をどの程度低減したいかの目標値であり、相対値で指定されてもよいし、絶対値で指定されてもよい。ここで、「疾病リスク値」とは、ある期間内の特定の疾病の発症確率である。例えば、糖尿病の疾病リスクを30%から20%に低減したい場合、相対値で指定される場合にはリスク低減目標値(相対値)は、10(%)である。絶対値で指定される場合にはリスク低減目標値(絶対値)は、20(%)である。また、目標値は、健診データに含まれる体重等の何れかの因子の変化の目標値であってもよい。因子の変化の目標値は、疾病リスク値の低減目標値と同様に、絶対値で指定されてもよいし、相対値で指定されてもよい。
【0011】
探索パターン生成部120は、生活習慣の改善の探索パターンを生成する。生活習慣の改善の探索パターンは、予め定められた複数の生活習慣の組み合わせパターンである。
図2は、生活習慣の改善の組み合わせパターンの一例を示している。
図2の例では、生活習慣として、「運動習慣」、「日常の歩行」、「飲酒」の少なくとも3つの項目が示されている。探索パターン生成部120は、例えばこれらの生活習慣の「あり」、「なし」を設定することで生活習慣の改善の組み合わせパターンを生成する。例えば、「運動習慣」及び「日常の歩行」については「あり」に設定されたときに生活習慣の改善が図られることを意味する。一方、「飲酒」については「なし」に設定されたときに生活習慣の改善が図られることを意味する。例えば、「No.1」のパターンは、「運動習慣」、「日常の歩行」、「飲酒」は、何れも「なし」に設定されている。このような「No.1」のパターンは、「飲酒」を実施しないことで生活習慣の改善が図られることを意味している。また、例えば、「No.2」のパターンは、「運動習慣」、「日常の歩行」は「なし」、「飲酒」は「あり」に設定されている。このような「No.2」のパターンは、「運動習慣」、「日常の歩行」、「飲酒」による生活習慣の改善が図られないことを意味している。ここで、
図2の「なし」は、「運動習慣」、「日常の歩行」、「飲酒」をまったく実施しないことを意味してはいない。
図2の「なし」は、疾病リスク値の予測に影響を与えない程度の少量の「運動習慣」、「日常の歩行」、「飲酒」の実施を含むものであってよい。また、
図2では、生活習慣の「あり」、「なし」が設定されることで生活習慣の改善のパターンが生成されるとしている。これに対し、さらにそれぞれの生活習慣の量が考慮されて生活習慣の組み合わせパターンが生成されてもよい。例えば、運動習慣の「あり」が「少ない」、「中」、「多い」といった3つのパターンに分けられてもよい。
【0012】
ここで、探索パターン生成部120で生活習慣の探索パターンを生成するために用いられる生活習慣のデータは、例えば探索パターン生成部120に記憶されている。この他、生活習慣のデータは、健康支援装置1の外部の記憶媒体に記憶されていてもよい。この場合、探索パターン生成部120は、必要に応じて外部の記憶媒体から生活習慣のデータを取得する。
【0013】
因子変化計算部130は、探索パターン生成部120で生成された生活習慣の探索パターンに基づいて、健診データに含まれるそれぞれの因子の変化量を計算する。因子変化計算部130は、例えば因子の変化量の予測モデルに基づき、因子の変化量を予測する。この因子変化予測モデルは、例えば健診データと探索パターンとを入力として因子毎の変化量を出力するように構成された機械学習モデルである。
【0014】
因子変化予測モデルの学習方法の例を説明する。
図3Aは、第1の例の因子変化予測モデルの機械学習の概念図である。
図3Aに示すように、因子変化予測モデルにおける機械学習に際しては、学習データ210が機械学習部220に入力されることで学習が実施される。そして、ある一定量の学習データ210を用いた学習が実施されることで因子変化予測モデルとしての学習済みモデル230が生成される。
【0015】
学習データ210は、特徴量データと教師データとを含む。特徴量データは、因子の変化の予測に用いられ得る特徴量、具体的には性別、年齢、体重、生体検査値、生活習慣といった特徴量のデータである。生体検査値は、血圧、GOT、LDLといった第1の因子及び第2の因子を含む各種の生体検査値である。また、生活習慣は、前述した「運動習慣」、「日常の歩行」、「飲酒」の有無又は量である。また、教師データは、関連付けられた特徴量による予測対象の因子の実際の変化量である。
【0016】
機械学習部220は、学習データ210により、生活習慣の組み合わせパターンと、それによって変化する因子の変化量との関係を学習する。機械学習部220における機械学習アルゴリズムは、ニューラルネットワーク、決定木、線形回帰といった特徴量と因子の変化量との関係を学習できる任意の機械学習アルゴリズムであってよい。そして、機械学習部220は、ある一定量の学習の結果として生成される学習済みモデル230を因子変化予測モデルとして因子変化計算部130に記憶させる。機械学習部220は、プロセッサと、メモリ等を含むコンピュータで実現され得る。生活習慣の改善に伴う体重の変化により、第2の因子としてのGOT、HbA1c、LDLといった生体検査値が有意に変化することが例えば、津下一代,「生活習慣介入のエビデンスと実際」,日本内科学会雑誌第105巻第9号,[Online][令和3年4月28日検索],インターネットURL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/9/105_1654/_article/-char/ja/において報告されている。つまり、生活習慣の改善により、体重といった第1の因子と、GOT、HbA1c、LDLといった第2の因子としての生体検査値はある割合で変化する。したがって、この因子変化予測モデルに生活習慣の探索パターンと生活習慣の改善前のそれぞれの因子の値が入力されることにより、因子変化予測モデルは、生活習慣の改善に伴って変化するそれぞれの因子の値を出力することになる。例えば、機械学習アルゴリズムがニューラルネットワークである場合、生活習慣の組み合わせパターンと生活習慣の改善前のそれぞれの因子の値とが入力され、生活習慣の改善に伴って変化するそれぞれの因子の値を出力するように、ニューラルネットワークの重み係数やバイアス等のパラメータが訓練される。より詳細には、特徴量データに含まれる因子の値をニューラルネットワークに順伝播して得た予測変化量と、教師データに含まれる実際の変化量との誤差が最小化するようにパラメータが訓練される。この際、生活習慣の組合せパターンも特徴量データとともにニューラルネットワークに入力してパラメータを訓練してもよいし、生活習慣の組合せパターン毎にニューラルネットワークのパラメータを訓練してもよい。
【0017】
ここで、因子変化予測モデルは、性別毎、年齢層毎といった層別にも生成され得る。この場合、層別に収集された学習データを用いて学習が実施される。
図3Bは、第2の例の因子変化予測モデルの機械学習の概念図である。
【0018】
図3Bでは、層別化された学習データが、N(Nは自然数)個の学習データ、すなわち学習データ211、学習データ212、…、21Nで示されている。学習データ211、学習データ212、…、21Nは、それぞれ、学習データ210と同様の特徴量データと教師データとを含む。ただし、学習データ211、212、…、21Nは、層別化の対象となる特徴量によって層別化されている。例えば、性別によって層別化されている場合、学習データ211、学習データ212、…、21Nは、それぞれ、性別が共通の学習データである。例えば、学習データ211は、性別が男性の学習データのグループであり得る。また、学習データ212は性別が女性の学習データのグループであり得る。同様に、年齢層によって層別化されている場合、学習データ211、212、…、21Nは、それぞれ、年齢が同一の年齢層に含まれる学習データである。例えば、学習データ211は、年齢が40代の学習データのグループであり得る。また、学習データ212は性別が60代の学習データのグループであり得る。
【0019】
機械学習部220は、学習データ211、212、…、21Nのそれぞれを個別に用いて学習を実施する。そして、機械学習部220は、ある一定量の学習の結果として生成される学習済みモデル231、232、…、23Nを因子変化予測モデルとして因子変化計算部130に記憶させる。それぞれの学習済みモデルの学習は、層別化された学習データを用いて実施されている。したがって、それぞれの学習済みモデルは、対応する層の因子の変化量をより学習し得る。因子変化計算部130は、学習済みモデル231、232、…、23Nのうちの入力された健診データと対応する層の学習済みモデルを選択して因子の変化量を予測する。
【0020】
図3Cは、第3の例の因子変化予測モデルの機械学習の概念図である。第3の例は、1つの学習済みモデルで層別化がされる例である。
【0021】
図3Cでは、層別化された学習データが、学習データ211、学習データ212、…、21Nで示されている。学習データ211、学習データ212、…、21Nは、第2の例と同様に層別化された学習データである。ただし、第3の例では、層別化して収集された学習データを区別できるように、特徴量データに識別子が追加されている。識別子は、識別番号等であってよい。例えば、学習データ211の特徴量データには識別番号1が、学習データ212の特徴量データには識別番号2が追加されている。
【0022】
機械学習部220は、学習データ211、212、…、21Nのそれぞれを用いて学習を実施する。そして、機械学習部220は、ある一定量の学習の結果として生成される学習済みモデル230を因子変化予測モデルとして因子変化計算部130に記憶させる。因子変化計算部130は、入力された健診データと同じ識別番号が含まれた特徴量データを学習済みモデルに入力して因子の変化量を予測する。
【0023】
リスク予測部140は、因子変化計算部130で予測された因子の変化量に基づいて、探索パターン毎の疾病の疾病リスク値を予測する。リスク予測部140は、例えば疾病リスクの予測モデルに基づき、例えばユーザによって指定された疾病の疾病リスク値を予測する。このリスク予測モデルは、例えば健診データを入力として疾病毎の疾病リスク値を出力するように構成された機械学習モデルである。疾病リスクの予測方法としては、一般的に知られている任意の予測方法が用いられ得る。前述したように、生活習慣の改善により、体重といった第1の因子と、GOT、HbA1c、LDLといった第2の因子としての生体検査値はある割合で変化する。したがって、このリスク予測モデルに生活習慣の改善に伴う変化後の第1の因子と第2の因子の値が入力されることにより、リスク予測モデルは、生活習慣の改善に伴って変化する疾病リスク値を出力することになる。
【0024】
ロス計算部150は、選択部160における選択に用いられる第3のロスLoss3を例えば以下の(式1)に基づいて計算する。
Loss3=Loss1+α×Loss2 (式1)
ここで、Loss1は、リスク予測部140で予測された疾病リスク値と、この疾病リスク値と対応する目標値との差分に基づく第1のロスである。また、Loss2は、予測に用いられる生活習慣とそれぞれの因子を変更することによる、すなわち生活習慣改善とその改善に伴う因子の変更による第2のロスである。さらにαは、第1のロスLoss1と第2のロスLoss2の重みを調整するパラメータである。
ロス計算部150は、第1のロスLoss1を以下の(式2)に基づいて計算する。
a)予測された疾病リスク値≦リスク低減目標値のとき
Loss1=0
b)予測された疾病リスク値>リスク低減目標値のとき
Loss1=(予測された疾病リスク値-リスク低減目標値)2
(式2)
また、ロス計算部150は、第2のロスLoss2を以下の(式3)に基づいて計算する。
Loss2=Σ(Xi-Xi_org)2/Num_X (式3)
(式3)のXiは予測モデルのi(iは自然数)番目の入力値の目標値の候補である。また、Xi_orgは予測モデルのi番目の入力値の実際の検査値である。さらに、Num_Xは、入力値の数である。なお、それぞれの入力値のスケールは、大きく異なっていることがあり得る。この場合、Loss2の値は、スケールの大きな入力値の影響を受けやすい。このような特定の入力値の影響を抑制するため、Xi及びXi_orgの値は例えば0から1の範囲に規格化されてもよい。
【0025】
また、入力部100が健診データに含まれる因子の変化の目標値を受け付けた場合、ロス計算部150は、以下の(式4)に従ってLoss1を計算してもよい。
Loss1=(F1-F2)2 (式4)
ここで、F1は、入力された因子変化目標値を達成するために必要な因子の変化率である。F2は、生活習慣改善により達成できる因子の変化率である。例えば、入力された因子変化目標値がGOTの目標値であれば、F1はGOT変化目標値を達成するために必要な体重の変化率であり、F2は生活習慣改善により達成できる体重の変化率であり得る。
【0026】
選択部160は、ロス計算部150で計算されたロスを用いて1つ以上の生活習慣の組み合わせパターンを選択する。例えば、(式1)でロスが計算されるときには第3のロスLoss3の値が小さいほど、そのときの生活習慣の組み合わせパターンによって改善される疾病リスク値がリスク低減の目標値に近い又は生活習慣の組み合わせパターンによって改善される因子の生体検査値が目標値に近いことを意味している。したがって、例えば(式1)でロスが計算されるときには、選択部160は、生成された探索パターンのうちで第3のロスLoss3の値の小さい順に1つ以上の生活習慣の組み合わせパターンを選択する。ロスの計算によっては、ロスの値が大きいほど、そのときの生活習慣の組み合わせパターンによって改善される疾病リスク値がリスク低減目標値に近い又は生活習慣の組み合わせパターンによって改善される因子の生体検査値が目標値に近いことを意味していることもある。この場合には、選択部160は、生成された探索パターンのうちでロスの値の大きい順に1つ以上の生活習慣の組み合わせパターンを選択する。
【0027】
図4は、健康支援装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。健康支援装置1は、例えばプロセッサ301と、メモリ302と、入力装置303と、表示装置304と、通信装置305と、ストレージ306とをハードウェアとして有している。プロセッサ301と、メモリ302と、入力装置303と、表示装置304と、通信装置305と、ストレージ306とは、バス307に接続されている。健康支援装置1は、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、タブレット端末といった端末装置であってよい。
【0028】
プロセッサ301は、健康支援装置1の全体的な動作を制御するプロセッサである。プロセッサ301は、例えばストレージ306に記憶されている健康支援プログラムを実行することによって、入力部100と、探索パターン生成部120と、因子変化計算部130と、リスク予測部140と、ロス計算部150と、選択部160として動作する。プロセッサ301は、例えばCPUである。プロセッサ301は、MPU、GPU、ASIC、FPGA等であってもよい。プロセッサ301は、単一のCPU等であってもよいし、複数のCPU等であってもよい。
【0029】
メモリ302は、ROM及びRAMを含む。ROMは、不揮発性のメモリである。ROMは、健康支援装置1の起動プログラム等を記憶している。RAMは、揮発性のメモリである。RAMは、例えばプロセッサ301における処理の際の作業メモリとして用いられる。
【0030】
入力装置303は、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力装置である。入力装置303の操作がされた場合、操作内容に応じた信号がバス307を介してプロセッサ301に入力される。プロセッサ301は、この信号に応じて各種の処理を行う。入力装置303は、例えば健診データ及び目標値の入力に用いられ得る。
【0031】
表示装置304は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置である。表示装置304は、各種の画像を表示する。
【0032】
通信装置305は、健康支援装置1が外部の機器と通信するための通信装置である。通信装置305は、有線通信のための通信装置であってもよいし、無線通信のための通信装置であってもよい。
【0033】
ストレージ306は、例えばフラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブといったストレージである。ストレージ306は、健康支援プログラム3061等のプロセッサ301によって実行される各種のプログラムを記憶している。また、ストレージ306は、生活習慣の探索パターンを生成するための生活習慣データ3062を記憶している。生活習慣データ3062は、例えばそれぞれの生活習慣毎に割り振られたIDである。また、ストレージ306は、因子変化予測モデル3063を記憶している。また、ストレージ306は、疾病リスク値の予測に用いられるリスク予測モデル3064を記憶している。生活習慣データ3062、因子変化予測モデル3063及びリスク予測モデル3064は、必ずしもストレージ306に記憶されている必要はない。例えば、生活習慣データ3062、因子変化予測モデル3063及びリスク予測モデル3064は、健康支援装置1の外部のサーバに記憶されていてもよい。この場合、健康支援装置1は、通信装置305を用いてサーバにアクセスすることで必要な情報を取得する。
【0034】
バス307は、プロセッサ301と、メモリ302と、入力装置303と、表示装置304と、通信装置305と、ストレージ306との間のデータのやり取りのためのデータ転送路である。
【0035】
次に、第1の実施形態における健康支援装置1の動作を説明する。
図5は、第1の実施形態における健康支援装置1の動作を示すフローチャートである。
図5の処理は、プロセッサ301によって実行される。
【0036】
ステップS1において、プロセッサ301は、健診データ及び目標値を取得する。健診データは、例えば、表示装置304に表示されるGUI(Graphical User Interface)上でのユーザの入力装置303の操作を介して入力されてもよいし、健康支援装置1の外部の記憶媒体を介して入力されてもよい。また、目標値は、例えば、表示装置304に表示されるGUI上でのユーザの入力装置303の操作を介して入力されてもよい。
【0037】
ステップS2において、プロセッサ301は、生活習慣データ3062を参照し、生活習慣の探索パターンを生成する。プロセッサ201は、生活習慣データ3062から生成され得るすべての生活習慣の組み合わせで探索パターンを生成してもよいし、一部の生活習慣の組み合わせで探索パターンを生成してもよい。
【0038】
ステップS3において、プロセッサ201は、探索パターン毎の疾病リスクの予測に用いられる因子の変化量を予測する。例えば、プロセッサ301は、因子変化予測モデルに探索パターンと健診データとを入力してそれぞれの因子の変化量を予測する。
【0039】
ステップS4において、プロセッサ301は、疾病リスク値を予測する。例えば、プロセッサ301は、疾病のリスク予測モデルに変化後の因子の値を入力して探索パターン毎の疾病リスク値を予測する。
【0040】
ステップS5において、プロセッサ301は、ロス計算を実施する。例えば、プロセッサ301は、(式1)、(式2)、(式3)又は(式1)、(式2)、(式4)に従ってロスを計算する。
【0041】
ステップS6において、プロセッサ301は、ユーザに対して提示する生活習慣の組み合わせパターンを選択する。例えば、プロセッサ301は、ロスの値の小さい順に1以上の生活習慣の組み合わせパターンを選択する。
【0042】
ステップS7において、プロセッサ301は、ユーザに対して結果を提示する。その後、
図5の処理は終了する。例えば、プロセッサ301は、表示装置304の画面上に、選択した生活習慣の組み合わせパターンと、その生活習慣において予測される疾病リスク値とを表示する。疾病リスク値に代えて、疾病リスク値の低減値が表示されてもよいし、体重等の因子の低減目標値及び生活習慣によって改善する因子の値が表示されてもよい。
【0043】
以上説明したように第1の実施形態によれば、健診者の生活習慣の組み合わせパターンに応じて健診者の生活習慣の改善によって直接的にコントロールできる第1の因子及び健診者の生活習慣の改善によって直接的にコントロールできない第2の因子の変化量がそれぞれ機械学習モデルを用いて予測される。そして、第1の因子及び第2の因子に基づいて疾病リスク値が予測され得る。例えば、生活習慣を改善することで半年後及び1年後といった長期的に体重が減少し、長期的に体重が減少することで生体検査値は改善する。第1の実施形態では、これらの長期的な体重変化、長期的な生体検査値変化が考慮されて疾病リスク値が計算され得る。このようにして第1の実施形態では、疾病リスク値の予測において健診者の生活習慣の改善によって直接的にコントロールできない第2の因子も予測結果に適切に反映されるので、健康指導において個人レベルの最適な生活習慣の目標設定がされ得る。
【0044】
また、因子の変化の予測に用いられる学習データが層別化されていることにより、より健診者の個人レベルでの第1の因子及び第2の因子の変化量が予測され得る。これにより、健診者に対してより適切な指導が可能である。
【0045】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態を説明する。第2の実施形態における因子変化計算部130は、探索パターン生成部120で生成された生活習慣の探索パターンに基づいて、健診データに含まれるそれぞれの因子の変化量を計算する。
図6は、第2の実施形態における因子変化計算部130の一例の構成を示す図である。
図6に示すように、因子変化計算部130は、第1の因子変化計算部131と、第2の因子変化計算部132とを有していてよい。
【0046】
第1の因子変化計算部131は、生活習慣の探索パターンに基づいて第1の因子の変化量を計算する。第2の因子変化計算部132は、第2の因子の変化量を計算する。第2の因子変化計算部132は、第1の因子の変化が第2の因子の変化に影響を与え得るときには、第1の因子の変化量に基づいて第2の因子の変化量を計算する。
【0047】
図7A及び
図7Bは、第1の因子の変化テーブルの一例としての体重変化率テーブルの例を示す図である。体重変化率は、元の体重からの体重変化を百分率で表した値である。体重変化率テーブルは、生活習慣の改善による体重変化率を表すテーブルである。第2の実施形態において、体重変化率テーブルは、層別に準備されている。
図7Aは、40代の男性用の体重変化率テーブルの例である。
図7Bは、60代の男性用の体重変化率テーブルの例である。体重変化率テーブルは、例えば年齢層毎の及び性別毎の多数人についての生活習慣の改善に伴う体重変化を実測することで生成され得る。他の年齢層別の体重変化率テーブル及び女性用の年齢層別の体重変化率テーブルもさらに準備されてよいことは言うまでもない。
【0048】
図7A及び
図7Bでは、体重変化率が、メタボリック症候群該当群と予備群と非該当群の3群に分けられている。第1の因子変化計算部131は、体重変化率テーブルを用いて第1の因子としての体重変化率を計算し、計算した体重変化率に基づいて体重の変化量を計算する。体重の変化量は、例えば健診者の体重と体重変化率との積である。ここで、体重変化率テーブルは、生活習慣の量に応じた体重変化率を含んでいてもよい。
【0049】
図7A及び
図7Bのテーブルは、体重変化率を計算するためのテーブルとして用いられ得る。
図7A及び
図7Bと同様のテーブルは、第1の因子の種類毎に準備されている。第1の因子変化計算部131は、対応する層の第1の因子の変化テーブルを用いてそれぞれの第1の因子の変化量を計算する。
【0050】
図8A及び
図8Bは、第2の因子の変化テーブルの例である。
図8A及び
図8Bは、体重変化率と第2の因子の変化率との関連を表すテーブルを示している。第2の実施形態において、第2の因子の変化テーブルは、層別に準備されている。
図8Aは、40代の男性用の第2の因子の変化テーブルの例である。
図8Bは、60代の男性用の第2の因子の変化テーブルの例である。第2の因子の変化テーブルは、例えば年齢層毎の及び性別毎の多数人についての体重変化に伴う生体検査値の変化を実測することで生成され得る。他の年齢層別の第2の因子の変化テーブル及び女性用の年齢層別の第2の因子の変化テーブルもさらに準備されてよいことは言うまでもない。
【0051】
第2の因子変化計算部132は、第1の因子変化計算部131で計算される生活習慣の探索パターン毎の第1の因子の変化量に基づいて第2の因子の変化量を計算する。例えば、
図8Aにおいて、体重変化量が-1%から+1%であるとき、GOT、HbA1c、LDLの何れの変化率も0.00%である。一方、体重変化量が-1%から-3%であるとき、GOTの変化率は-2.00%、HbA1cの変化率は-1.00%、LDLの変化率は-3.00%である。
【0052】
図8A及び
図8Bのテーブルは、体重変化率から第2の因子の変化量を計算するためのテーブルとして用いられ得る。
図8A及び
図8Bと同様のテーブルは第1の因子の種類毎に準備されている。第2の因子変化計算部132は、対応する層の第2の因子の変化テーブルを用いてそれぞれの第2の因子の変化量を計算する。
【0053】
さらに、因子変化計算部130は、探索パターン生成部120で生成された生活習慣の探索パターンに応じて因子の変化量を計算する。因子変化計算部130は、運動や日常の歩行等の生活習慣の個別の改善パターン毎の変化率を合計することによって計算してもよいし、複数の生活習慣の組み合わせにより変化量を計算してもよい。
【0054】
健康支援装置1のハードウェア構成としては、基本的には
図4の構成が適用され得る。ただし、ストレージ306には、第1の因子の変化テーブル及び第2の因子の変化テーブルが記憶され得る。第1の因子の変化テーブル及び第2の因子の変化テーブルは、必ずしもストレージ306に記憶される必要はない。
【0055】
次に、第2の実施形態における健康支援装置1の動作を説明する。
図9は、第2の実施形態における健康支援装置1の動作を示すフローチャートである。
図9の処理は、プロセッサ301によって実行される。
【0056】
ステップS11において、プロセッサ301は、健診データ及び目標値を取得する。健診データは、例えば、表示装置304に表示されるGUI上でのユーザの入力装置303の操作を介して入力されてもよいし、健康支援装置1の外部の記憶媒体を介して入力されてもよい。また、目標値は、例えば、表示装置304に表示されるGUI上でのユーザの入力装置303の操作を介して入力されてよい。
【0057】
ステップS12において、プロセッサ301は、生活習慣データ3062を参照し、生活習慣の探索パターンを生成する。プロセッサ301は、生活習慣データ3062から生成され得るすべての生活習慣の組み合わせで探索パターンを生成してもよいし、一部の生活習慣の組み合わせで探索パターンを生成してもよい。
【0058】
ステップS13において、プロセッサ301は、探索パターン毎の疾病リスクの予測に用いられる因子の変化量を計算する。第1の因子の変化が第2の因子の変化に影響を与え得るときには、プロセッサ301は、先に第1の因子の変化テーブルを用いて第1の因子の変化量を計算し、その後に第2の因子の変化テーブルを用いて第2の因子の変化量を計算する。
【0059】
ステップS14において、プロセッサ301は、疾病リスク値を予測する。例えば、プロセッサ301は、疾病のリスク予測モデルに変化後の因子の値を入力して探索パターン毎の疾病リスク値を予測する。
【0060】
ステップS15において、プロセッサ301は、ロス計算を実施する。例えば、プロセッサ301は、(式1)、(式2)、(式3)又は(式1)、(式2)、(式4)に従ってロスを計算する。
【0061】
ステップS16において、プロセッサ301は、ユーザに対して提示する生活習慣の組み合わせパターンを選択する。例えば、プロセッサ201は、ロスの値の小さい順に1以上の生活習慣の組み合わせパターンを選択する。
【0062】
ステップS17において、プロセッサ301は、ユーザに対して結果を提示する。その後、
図9の処理は終了する。例えば、プロセッサ301は、表示装置304の画面上に、選択した生活習慣の組み合わせパターンと、その生活習慣において予測される疾病リスク値とを表示する。疾病リスク値に代えて、疾病リスク値の低減値が表示されてもよいし、体重等の因子の低減目標値及び生活習慣によって改善する因子の生体検査値が表示されてもよい。
【0063】
以上説明したように第2の実施形態によれば、健診者の生活習慣の組み合わせパターンに応じて健診者の生活習慣の改善によって直接的にコントロールできる第1の因子及び健診者の生活習慣の改善によって直接的にコントロールできない第2の因子の変化量がそれぞれテーブルに基づいて計算される。そして、第1の実施形態によれば、第1の因子及び第2の因子に基づいて疾病リスク値が予測され得る。このようにして第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、疾病リスク値の予測において健診者の生活習慣の改善によって直接的にコントロールできない第2の因子も予測結果に適切に反映されるので、健康指導において個人レベルの最適な生活習慣の目標設定がされ得る。
【0064】
また、因子の変化の計算に用いられるテーブルは、性別、年齢等の層別に準備されている。このため、健診者の性別及び年齢等の違いを含めた生活習慣の組み合わせパターンに応じた因子の変化量が計算され得る。これにより、第2の実施形態では第1の実施形態と同様に性別差、年齢差といった層別の因子の変化量をリスク予測に用いることができるので、健診者に対して適切な指導が可能である。
【0065】
[変形例]
第1の実施形態及び第2の実施形態では、層別化の例として、性別による層別化及び年齢層による層別化が挙げられている。しかしながら、これら以外の層別化が行われてもよい。例えば、層別化は、ある種の投薬の有無による層別化であってもよい。この他に、層別化は、BMI(Body Mass Index)の値による層別化であってもよい。また、層別化は、肉類を多く食べる、肉類を多く食べない、ベジタリアンであるといった食生活習慣による層別化であってもよい。さらには、層別化は、家族の肥満者の有無による層別化等の任意の層別化であってよい。これらの層別化は、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0067】
1 健康支援装置、100 入力部、120 探索パターン生成部、130 因子変化計算部、131 第1の因子変化計算部、132 第2の因子変化計算部、140 リスク予測部、150 ロス計算部、160 選択部、 210,211,212,…,21N 学習データ、220 機械学習部、230,231,232,…,23N 学習済みモデル、301 プロセッサ、302 メモリ、303 入力装置、304 表示装置、305 通信装置、306 ストレージ、307 バス、3061 健康支援プログラム、3062 生活習慣データ、3063 因子変化予測モデル、3064 リスク予測モデル。