(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】有機溶剤ガス除去装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/44 20060101AFI20241105BHJP
B01D 53/06 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
B01D53/44 110
B01D53/44 ZAB
B01D53/06 100
(21)【出願番号】P 2021118366
(22)【出願日】2021-07-19
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390020215
【氏名又は名称】株式会社西部技研
(72)【発明者】
【氏名】古木 啓明
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-149732(JP,A)
【文献】特開2005-161128(JP,A)
【文献】特開2000-042340(JP,A)
【文献】特開平07-136449(JP,A)
【文献】特開平02-090921(JP,A)
【文献】特開平07-075714(JP,A)
【文献】特開平09-173758(JP,A)
【文献】特開2012-061389(JP,A)
【文献】特開2017-101913(JP,A)
【文献】特開2010-264330(JP,A)
【文献】特開昭61-071821(JP,A)
【文献】中国実用新案第211864457(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/44
B01D 53/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の吸着ロータと第2の吸着ロータを有し、それぞれ吸着ロータを少なくとも処理ゾーン、パージゾーン、再生ゾーンに分割し、被処理ガスを第1の処理ゾーンに通し、前記第1の処理ゾーンを通過したガスの一部を第2の処理ゾーンへ通過させ、前記第2の処理ゾーン通過したガスを供給先へ送り、或いは大気放出し、前記第1の処理ゾーンを通過したガスの残りの一部及び/又は外気と混合し
たガスを第2のパージゾーンに通過させた後、第2の加熱手段により加熱して第2の再生ゾーンに通し、前記第2の再生ゾーンを通過したガスを、外気及び/又は被処理ガスの一部と混合して第1のパージゾーンに通過させた後、第1の加熱手段により加熱して第1の再生ゾーンに通過させ、前記第1の再生ゾーンを通過したガスをVOC浄化装置へ送るようにしたことを特徴とする有機溶剤ガス除去装置。
【請求項2】
少なくとも処理ゾーン、パージゾーン、再生ゾーンに分割された第1の吸着ロータと、少なくとも処理ゾーンと再生ゾーンに分割された第2の吸着ロータとを有し、被処理ガスを第1の処理ゾーンに通し、前記第1の処理ゾーンを通過したガスを第2の処理ゾーンへ通過させ、前記第2の処理ゾーン通過したガスを供給先へ送り、或いは大気放出し、外気及び/又は前記被処理ガスの一部を第1のパージゾーンへ通し、前記第1のパージゾーンを通過したガスを第2の加熱手段により加熱して、第2の再生ゾーンに通した後、第1の再生ゾーンに通過させ、前記第1の再生ゾーンを通過したガスをVOC浄化装置へ送るようにしたことを特徴とする有機溶剤ガス除去装置。
【請求項3】
少なくとも処理ゾーンと再生ゾーンに分割された第1の吸着ロータと、少なくとも処理ゾーン、パージゾーン、再生ゾーンに分割された第2の吸着ロータとを有し、被処理ガスを第1の処理ゾーンに通し、前記第1の処理ゾーンを通過したガスの一部を前記第2の処理ゾーンへ通過させ、前記第2の処理ゾーン通過したガスを供給先へ送り、或いは大気放出し、前記第1の処理ゾーンを通過したガスの残りの一部及び/又は外気を第2のパージゾーンに通過させた後、第2の加熱手段により加熱して第2の再生ゾーンに通し、前記第2の再生ゾーンを通過したガスを第1の再生ゾーンに通過させ、前記第1の再生ゾーンを通過したガスをVOC浄化装置へ送るようにしたことを特徴とする有機溶剤ガス除去装置。
【請求項4】
前記第1の再生ゾーンの前に第1の加熱手段を設け、前記第2の再生ゾーンを通過したガスを前記第1の再生ゾーンに通過させる前に、前記第1の加熱手段によって加熱するようにしたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の有機溶剤ガス除去装置。
【請求項5】
前記VOC浄化装置がVOC酸化分解装置、或いはVOC燃焼装置、或いはVOC回収装置であることを特徴とする請求項1から請求項3いずれか一項に記載の有機溶剤ガス除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤ガス除去装置に関するもので、生産設備等の排ガス中の揮発性有機化合物(以下VOCと書く)を極めて高い除去効率で除去でき、除去されたVOCを高い濃度で濃縮できる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機溶剤ガス除去装置は、半導体や化学工場、塗装工場或いは印刷工場などの各生産設備から排出されるトルエンやキシレンなどのVOCを除去或いは濃縮し、燃焼処理などを行ってVOCを無害化するものである。
【0003】
このようなVOCの除去濃縮手段として、例えば疎水性ゼオライトなどのVOC吸着剤の担持されたハニカムロータを用いたものは省エネルギー効果が高くなるため急速に普及している。
【0004】
一方、近年では、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)やCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の観点から、大気放出する濃度を極限まで低くしたいという要望がある。そこで、有機溶剤ガス除去装置は被処理ガスの濃度が高くても排出される浄化ガス濃度の低いものの開発が求められている。このために吸着ロータを多段にして吸着率を向上させ、単段除去では成し得ない極めて高い除去効率を達成することが考えられる。このような技術として例えば特許文献1に開示されたものがある。
【0005】
特許文献1に開示された有機ガス処理装置は、2つの吸着ロータを有し、それぞれの吸着ロータを処理ゾーン、パージゾーン、再生ゾーンに分割し、第2吸着ロータのパージゾーンに外気を通過させ、第2吸着ロータの再生ゾーンを通過したガスを第1吸着ロータのパージゾーンに通過させた後、加熱して第1吸着ロータの再生ゾーンに通過させるように構成してあるので、VOCの吸着が2段階で行われ、VOCの除去効率が極めて高くなり、放出ガスの濃度を極めて希薄にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特許文献1に開示された有機ガス処理装置よりも高い除去効率で除去でき、除去されたVOCを高い濃度で濃縮でき、及び/又は省エネルギーである有機溶剤ガス除去装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような課題を解決するため本発明は、有機溶剤ガスの吸着能力を有する吸着ロータを多段にして配置し(少なくとも2つ以上設け)、 2つの吸着ロータを有する場合、第1の吸着ロータと第2の吸着ロータをそれぞれ少なくとも処理ゾーン、パージゾーン、再生ゾーン(以降、第1の吸着ロータの処理ゾーンを「第1の処理ゾーン」、パージゾーンを「第1のパージゾーン」、再生ゾーンを「第1の再生ゾーン」、第2の吸着ロータの処理ゾーンを「第2の処理ゾーン」、パージゾーンを「第2のパージゾーン」、再生ゾーンを「第2の再生ゾーン」という)に分割し、生産工程などから排出した被処理ガスを第1の処理ゾーンに通し、第1の処理ゾーンを通過したガスの一部を第2の処理ゾーンへ通過させ、第2の処理ゾーン通過したガスを供給先へ送り、或いは大気放出し、第1の処理ゾーンを通過したガスの残りの一部及び/又は外気と混合して第2のパージゾーンに通過させた後、第2の吸着ロータの加熱手段(以降、「第2の加熱手段」という)により加熱して第2の再生ゾーンに通し、第2の再生ゾーンを通過したガスを、外気及び/又は被処理ガスの一部と混合して第1のパージゾーンに通過させた後、第1の吸着ロータの加熱手段(以降、「第1の加熱手段」という)により加熱して第1の再生ゾーンに通過させ、第1の再生ゾーンを通過したガスをVOC浄化装置へ送るようにした。
【0009】
また、本発明の有機溶剤ガス除去装置は、有機溶剤ガスの吸着能力を有する2つの吸着ロータを設ける場合、少なくとも処理ゾーン、パージゾーン、再生ゾーンに分割された第1の吸着ロータと、少なくとも処理ゾーンと再生ゾーンに分割された第2の吸着ロータとを有し、生産工程などから排出した被処理ガスを第1の処理ゾーンに通し、第1の処理ゾーンを通過したガスを第2の処理ゾーンへ通過させ、第2の処理ゾーン通過したガスを供給先へ送り、或いは大気放出し、外気及び/又は被処理ガスの一部を第1のパージゾーンへ通し、第1のパージゾーンを通過したガスを第2の加熱手段により加熱して、第2の再生ゾーンに通した後、第1の再生ゾーンに通過させ、第1の再生ゾーンを通過したガスをVOC浄化装置へ送るようにした
【0010】
さらに、本発明の有機溶剤ガス除去装置は有機溶剤ガスの吸着能力を有する2つの吸着ロータを設ける場合、少なくとも処理ゾーンと再生ゾーンに分割された第1の吸着ロータと、少なくとも処理ゾーン、パージゾーン、再生ゾーンに分割された第2の吸着ロータとを有し、生産工程などから排出した被処理ガスを第1の処理ゾーンに通し、第1の処理ゾーンを通過したガスの一部を第2の処理ゾーンへ通過させ、第2の処理ゾーン通過したガスを供給先へ送り、或いは大気放出し、第1の処理ゾーンを通過したガスの残りの一部及び/又は外気を第2のパージゾーンに通過させた後、第2の加熱手段により加熱して第2の再生ゾーンに通し、第2の再生ゾーンを通過したガスを第1の再生ゾーンに通過させ、第1の再生ゾーンを通過したガスをVOC浄化装置へ送るようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明の有機溶剤ガス除去装置は、上記の如く構成したので、特許文献1に開示された有機ガス処理装置よりも高い除去効率で除去でき、及び/又は省エネルギーである有機溶剤ガス除去装置を提供することができる。
【0012】
また、有機ガスの吸着が少なくとも2段階で行われ、単段除去では成し得ない有機ガスの除去効率が極めて高い除去効率を達成するとともに、放出ガスの濃度を極めて希薄にすることができる。
【0013】
さらに、2つの吸着ロータを有する場合、第2の吸着ロータを脱着した後のガスで第1の吸着ロータを脱着するように構成したので、脱着後のガス濃度が高くなり濃縮率(再生出口ガス中のVOC濃度÷処理入口ガス中のVOC濃度)が高くなるため、濃縮後のガス処理が容易になる。
【0014】
以上のように、高い除去効率を維持しながら、高い濃縮率を達成でき、濃縮後のVOC濃度をより高くすることができるため、後の燃焼装置などのVOC浄化装置を小さくすることができ、装置のイニシャルコストを低減できる。さらに燃焼装置を使う場合、VOC濃度を高くすることが可能となるため、燃焼用補助燃料ガスの使用量も削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は本発明の有機溶剤ガス除去装置の実施例1におけるフロー図である。
【
図2】
図2は本発明の有機溶剤ガス除去装置の実施例2におけるフロー図である。
【
図3】
図3は本発明の有機溶剤ガス除去装置の実施例3におけるフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の有機溶剤ガス除去装置は、有機溶剤ガスの吸着能力を有する吸着ロータを多段にして配置し(少なくとも2つ以上設け)、 2つの吸着ロータを有する場合、第1の吸着ロータと第2の吸着ロータをそれぞれ少なくとも処理ゾーン、パージゾーン、再生ゾーンに分割し、生産工程などから排出した被処理ガスを第1の処理ゾーンに通し、第1の処理ゾーンを通過したガスの一部を第2の処理ゾーンへ通過させ、第2の処理ゾーン通過したガスを供給先へ送り、或いは大気放出し、第1の処理ゾーンを通過したガスの残りの一部及び/又は外気と混合して第2のパージゾーンに通過させた後、第2の加熱手段により加熱して第2の再生ゾーンに通し、第2の再生ゾーンを通過したガスを、外気及び/又は被処理ガスの一部と混合して第1のパージゾーンに通過させた後、第1の加熱手段により加熱して第1の再生ゾーンに通過させ、第1の再生ゾーンを通過したガスをVOC浄化装置へ送るようにした。
【0017】
また、本発明の有機溶剤ガス除去装置は、有機溶剤ガスの吸着能力を有する2つの吸着ロータを設ける場合、少なくとも処理ゾーン、パージゾーン、再生ゾーンに分割された第1の吸着ロータと、少なくとも処理ゾーンと再生ゾーンに分割された第2の吸着ロータとを有し、生産工程などから排出した被処理ガスを第1の処理ゾーンに通し、第1の処理ゾーンを通過したガスを第2の処理ゾーンへ通過させ、第2の処理ゾーン通過したガスを供給先へ送り、或いは大気放出し、外気及び/又は被処理ガスの一部を第1のパージゾーンへ通し、第1のパージゾーンを通過したガスを第2の加熱手段により加熱して、第2の再生ゾーンに通した後、第1の再生ゾーンに通過させ、第1の再生ゾーンを通過したガスをVOC浄化装置へ送るようにした
【0018】
さらに、本発明の有機溶剤ガス除去装置は有機溶剤ガスの吸着能力を有する2つの吸着ロータを設ける場合、少なくとも処理ゾーンと再生ゾーンに分割された第1の吸着ロータと、少なくとも処理ゾーン、パージゾーン、再生ゾーンに分割された第2の吸着ロータとを有し、生産工程などから排出した被処理ガスを第1の処理ゾーンに通し、第1の処理ゾーンを通過したガスの一部を第2の処理ゾーンへ通過させ、第2の処理ゾーン通過したガスを供給先へ送り、或いは大気放出し、第1の処理ゾーンを通過したガスの残りの一部及び/又は外気を第2のパージゾーンに通過させた後、第2の加熱手段により加熱して第2の再生ゾーンに通し、第2の再生ゾーンを通過したガスを第1の再生ゾーンに通過させ、第1の再生ゾーンを通過したガスをVOC浄化装置へ送るようにした。
【実施例1】
【0019】
以下、有機溶剤ガス除去装置の実施例1について
図1のフロー図に沿って説明する。第1の吸着ロータ1及び第2の吸着ロータ2には、セラミック基材やガラス基材などのハニカムロータにゼオライトや活性炭などのVOC吸着剤を担持したものが用いられる。
【0020】
第1の吸着ロータ1及び第2の吸着ロータ2は、直列に配置され、それぞれ処理ゾーン3及び6、パージゾーン4及び7、再生ゾーン5及び8に分割されている。第1の吸着ロータ1及び第2の吸着ロータ2はそれぞれギヤドモータ(図示せず)などによって回転駆動される。
【0021】
図1に示すように生産設備などからのVOCを含む排気(被処理ガス)は、第1の吸着ロータ1の処理ゾーン3に送られ、第1の処理ゾーン3でVOCを吸着する。第1の処理ゾーン3を通ったガスは、第2の吸着ロータ2の処理ゾーン6に送られ、第2の処理―ゾーン6でさらにVOCが吸着された後、浄化ガスとして大気に放出される。この浄化ガスは、大気放出に限定されるものでは無く、供給先としての生産設備に戻してもよい。
【0022】
第1の処理ゾーン3を通過したガスの残りの一部及び/又は外気と混合して第2のパージゾーン7に通過させた後、第2の加熱手段10により加熱して第2の再生ゾーン8に通す。第2の再生ゾーン8を通過したガスを、外気及び/又は被処理ガスの一部と混合して第1のパージゾーン4に通過させた後、第1の加熱手段9により加熱して第1の再生ゾーン5に通過させる。第1の再生ゾーン5を通過したガスをVOC燃焼装置、VOC酸化分解装置、VOC回収装置などのVOC浄化装置(図示せず)へ送る。
【0023】
本発明の実施例1は以上のような構成よりなり、以下詳細を説明する。半導体や塗装工場のような生産設備から排出されるVOCを含んだガス(被処理ガス)は、第1の吸着ロータ1の処理ゾーン3へ送られ、被処理ガス中のVOCがVOC吸着剤によって吸着除去される。被処理ガス中のVOC濃度が500mg/Nm3の場合、第1の処理ゾーン3の処理出口のVOC濃度は19.8mg/Nm3となる。
【0024】
この第1の処理ゾーン3を通過したガスは、第2の吸着ロータ2の処理ゾーン6を通過し、第2の処理ゾーン6でさらにVOCが吸着される。その濃度は0.9mg/Nm3となり、極めて希薄な浄化ガスとなって装置外へ大気放出されるか生産設備などの供給先に送られる。
【0025】
第1の処理ゾーン3を通過したガスの残りの一部及び/又は外気と混合して第2のパージゾーン7に通過させることにより、第2の再生ゾーン8で温度が上昇した第2の吸着ロータ2のVOC吸着剤を冷却し、VOC吸着剤の吸着性能を回復させる。第2のパージゾーン7を通過したガスは、通過前の温度が35℃(以降、温度は全て「摂氏」とする)であったとすると、第2のパージゾーン7での熱交換によって温度が141℃まで上昇する。この温度の上昇したガスを、さらに第2の再生ヒータ10で、第2の吸着ロータ2のVOC吸着剤からVOCを脱着させるのに十分な温度、例えば220℃まで加熱して、第2の再生ゾーン8に送る。
【0026】
この高温のガスによって、第2吸着ロータ2に吸着されていたVOCが脱着され、第2の再生ゾーン8を通過したガスのVOC濃度は566mg/Nm3となる。つまり、第2の処理ゾーン6を通過するガスの濃度が第2の再生ゾーン8でおよそ29倍に濃縮される。
【0027】
第2の再生ゾーン8を通過したガスは、外気及び/又は被処理ガスの一部と混合して第1の吸着ロータのパージゾーン4へ送られ、第1のパージゾーン4での熱交換によって温度が151℃まで上昇する。この温度の上昇したガスを、さらに第1の再生ヒータ9で、第1の吸着ロータ1のVOC吸着剤からVOCを脱着させるのに十分な温度、例えば220℃まで加熱され、第1の再生ゾーン5に送る。
【0028】
この高温のガスによって、第1の吸着ロータ1に吸着されていたVOCが脱着され、、第1の再生ゾーン5の再生出口のVOC濃度は7487mg/Nm3となる。つまり、第1の処理ゾーン3を通過するガスの濃度が第1の再生ゾーン5でおよそ15倍に濃縮される。そして、この濃縮されたVOCは、VOC燃焼装置、VOC酸化分解装置、VOC回収装置などのVOC浄化装置や燃料として使うためにボイラなどの燃焼設備へ送られる。
【0029】
このように第2の吸着ロータ2の濃縮率は処理入口濃度が低いため、高倍率に設定することができる。第2の吸着ロータ2の再生出口ガスを、第1の吸着ロータ1のパージガスとして使用し、第1の吸着ロータ1の再生風量が足りない場合は、被処理ガスから一部を使用してもよいし、外気を用いてもよい。
【0030】
特許文献1に開示の有機ガス処理装置では、浄化後のガス濃度を元のガス濃度の1/100に浄化すると例示されており、即ち除去効率は99%である。ガス条件の違いもあるが、実施例1にかかるフローでは除去効率99.8%と極めて高い除去効率を発揮する。
【実施例2】
【0031】
以下、有機溶剤ガス除去装置の実施例2について
図2のフロー図に沿って説明する。実施例1と重複する部分の説明は省略する。実施例2では、第1の吸着ロータ1は、処理ゾーン3、パージゾーン4、再生ゾーン5に分割されており、第2の吸着ロータ2は処理ゾーン6、再生ゾーン8に分割されている。
【0032】
図2に示すように生産設備などからのVOCを含む排気(被処理ガス)は、第1の吸着ロータ1の処理ゾーン3に送られ、第1の処理ゾーン3でVOCを吸着する。第1の処理ゾーン3を通ったガスは、第2の吸着ロータ2の処理ゾーン6に送られ、第2の処理―ゾーン6でさらにVOCが吸着された後、浄化ガスとして大気に放出される。この浄化ガスは、大気放出に限定されるものでは無く、供給先としての生産設備に戻してもよい。
【0033】
外気及び/又は被処理ガスの一部を第1の吸着ロータ1のパージゾーン4に通し、第2の加熱手段10により加熱して第2の再生ゾーン8に通す。第2の再生ゾーン8を通過したガスを、第1の再生ゾーン5に通過させる。第1の再生ゾーン5を通過したガスをVOC燃焼装置、VOC酸化分解装置、VOC回収装置などのVOC浄化装置(図示せず)へ送る。
【0034】
本発明の実施例2は以上のような構成よりなり、以下詳細を説明する。半導体や塗装工場のような生産設備から排出されるVOCを含んだガス(被処理ガス)は、第1の吸着ロータ1の処理ゾーン3へ送られ、被処理ガス中のVOCがVOC吸着剤によって吸着除去される。被処理ガス中のVOC濃度が500mg/Nm3の場合、第1の処理ゾーン3の処理出口のVOC濃度は26.1mg/Nm3となる。
【0035】
この第1の処理ゾーン3を通過したガスは、第2の吸着ロータ2の処理ゾーン6を通過し、第2の処理ゾーン6でさらにVOCが吸着される。その濃度は2.1mg/Nm3となり、極めて希薄な浄化ガスとなって装置外へ大気放出されるか生産設備などの供給先に送られる。
【0036】
外気及び/又は被処理ガスの一部を第1の吸着ロータ1のパージゾーン4に通すことにより、第1の再生ゾーン5で温度が上昇した第1の吸着ロータ1のVOC吸着剤を冷却し、VOC吸着剤の吸着性能を回復させる。第1のパージゾーン4を通過したガスは、通過前の温度が30℃であったとすると、第1のパージゾーン4での熱交換によって温度が107℃まで上昇する。この温度の上昇したガスを、さらに第2の再生ヒータ10で、第2の吸着ロータ2のVOC吸着剤からVOCを脱着させるのに十分な温度、例えば220℃まで加熱して、第2の再生ゾーン8に送る。
【0037】
この高温のガスによって、第2吸着ロータ2に吸着されていたVOCが脱着され、第2の再生ゾーン8を通過したガスのVOC濃度は336mg/Nm3となる。つまり、第2の処理ゾーン6を通過するガスの濃度が第2の再生ゾーン8でおよそ13倍に濃縮される。
【0038】
ここで、第2の吸着ロータ2の回転数を遅くし、高温の再生出口ガス(150~200℃)を得るようにする。第2の再生ゾーン8を通過したガスは例えば180℃となり、そのまま第1の再生ゾーン5に送る。この高温のガスによって、第1の吸着ロータ1に吸着されていたVOCが脱着され、第1の再生ゾーン5の再生出口のVOC濃度は7476mg/Nm3となる。つまり、第1の処理ゾーン3を通過するガスの濃度が第1の再生ゾーン8でおよそ15倍に濃縮される。そして、この濃縮されたVOCは、VOC燃焼装置、VOC酸化分解装置、VOC回収装置などのVOC浄化装置や燃料として使うためにボイラなどの燃焼設備へ送られる。
【0039】
このように、実施例2では第2の吸着ロータ2の回転数を遅くし高温の再生出口ガスを得るようにする。通常、回転数を落とすと性能も低下していくが、第1の吸着ロータ1で処理した後の極めて低いVOC濃度のガスを第2の吸着ロータ2は処理するため、低回転数で運転しても第2の吸着ロータ2の性能は発揮できる。
【0040】
第2の再生ゾーン8を通過した高温の再生出口ガスを第1の再生ゾーン5の再生ガスとして使うことで、第1の吸着ロータ1の再生に必要な熱エネルギーを得ることができ、省エネルギーである。即ち、実施例1のように第1の加熱手段を設けずともよく、第1の吸着ロータ1を再生することができ、実施例2にかかるフローでは除去効率99.6%と極めて高い除去効率を発揮する。必要に応じて、第1の加熱手段を設けて、例えば220℃まで追加で昇温させることにより、第1の吸着ロータ1の性能を向上させることもできる。
【0041】
また、第1の吸着ロータ1の再生風量が足りない場合は、第1のパージゾーン4に導入するガスとして外気を混合して用いてもよい。
【実施例3】
【0042】
以下、有機溶剤ガス除去装置の実施例3について
図3のフロー図に沿って説明する。実施例1及び実施例2と重複する部分の説明は省略する。実施例3では、第1の吸着ロータ1は、処理ゾーン3、再生ゾーン5に分割されており、第2の吸着ロータ2は処理ゾーン6、パージゾーン7、再生ゾーン8に分割されている。
【0043】
図3に示すように生産設備などからのVOCを含む排気(被処理ガス)は、第1の吸着ロータ1の処理ゾーン3に送られ、第1の処理ゾーン3でVOCを吸着する。第1の処理ゾーン3を通ったガスの一部は、第2の吸着ロータ2の処理ゾーン6に送られ、第2の処理ゾーン6でさらにVOCが吸着された後、浄化ガスとして大気に放出される。この浄化ガスは、大気放出に限定されるものでは無く、供給先としての生産設備に戻してもよい。
【0044】
第1の処理ゾーン3を通過したガスの残りの一部及び/又は外気を第2の吸着ロータのパージゾーン7に通し、第2の加熱手段10により加熱して第2の再生ゾーン8に通す。第2の再生ゾーン8を通過したガスを、第1の再生ゾーン5に通過させる。第1の再生ゾーン5を通過したガスをVOC燃焼装置、VOC酸化分解装置、VOC回収装置などのVOC浄化装置(図示せず)へ送る。
【0045】
本発明の実施例3は以上のような構成よりなり、以下詳細を説明する。半導体や塗装工場のような生産設備から排出されるVOCを含んだガス(被処理ガス)は、第1の吸着ロータ1の処理ゾーン3へ送られ、被処理ガス中のVOCがVOC吸着剤によって吸着除去される。被処理ガス中のVOC濃度が500mg/Nm3の場合、第1の処理ゾーン3の処理出口のVOC濃度は35.0mg/Nm3となる。
【0046】
この第1の処理ゾーン3を通過したガスは、第2の吸着ロータ2の処理ゾーン6を通過し、第2の処理ゾーン6でさらにVOCが吸着される。その濃度は2.8mg/Nm3となり、極めて希薄な浄化ガスとなって装置外へ大気放出されるか生産設備などの供給先に送られる。
【0047】
第1の処理ゾーン3を通過したガスの残りの一部及び/又は外気を第2の吸着ロータ2のパージゾーン7に通すことにより、第2の再生ゾーン8で温度が上昇した第2の吸着ロータ2のVOC吸着剤を冷却し、VOC吸着剤の吸着性能を回復させる。第2のパージゾーン7を通過したガスは、通過前の温度が40℃であったとすると、第2のパージゾーン7での熱交換によって温度が146℃まで上昇する。この温度の上昇したガスを、さらに第2の再生ヒータ10で、第2の吸着ロータ2のVOC吸着剤からVOCを脱着させるのに十分な温度、例えば220℃まで加熱して、第2の再生ゾーン8に送る。
【0048】
この高温のガスによって、第2吸着ロータ2に吸着されていたVOCが脱着され、第2の再生ゾーン8を通過したガスのVOC濃度は485mg/Nm3となる。つまり、第2の処理ゾーン6を通過するガスの濃度が第2の再生ゾーン8でおよそ14倍に濃縮される。
【0049】
ここで、第2の吸着ロータ2の回転数を遅くし、高温の再生出口ガス(150~200℃)を得るようにする。第2の再生ゾーン8を通過したガスは例えば200℃となり、そのまま第1の再生ゾーン5に送る。この高温のガスによって、第1の吸着ロータ1に吸着されていたVOCが脱着され、、第1の再生ゾーン5の再生出口のVOC濃度は7461mg/Nm3となる。つまり、第1の処理ゾーン3を通過するガスの濃度が第1の再生ゾーン8でおよそ15倍に濃縮される。そして、この濃縮されたVOCは、VOC燃焼装置、VOC酸化分解装置、VOC回収装置などのVOC浄化装置や燃料として使うためにボイラなどの燃焼設備へ送られる。
【0050】
このように、実施例3においても実施例2と同様、第2の吸着ロータ2の回転数を遅くし高温の再生出口ガスを得るようにする。通常、回転数を落とすと性能も低下していくが、第1の吸着ロータ1で処理した後の極めて低いVOC濃度のガスを第2の吸着ロータ2は処理するため、低回転数で運転しても第2の吸着ロータ2の性能は発揮できる。
【0051】
第2の再生ゾーン8を通過した高温の再生出口ガスを第1の再生ゾーン5の再生ガスとして使うことで、第1の吸着ロータ1の再生に必要な熱エネルギーを得ることができ、省エネルギーである。即ち、実施例1のように第1の加熱手段を設けずともよく、第1の吸着ロータ1を再生することができ、実施例2にかかるフローでは除去効率99.4%と極めて高い除去効率を発揮する。実施例3では実施例2に比べて、除去効率はわずかに劣るが、第2の吸着ロータ2にパージゾーン7を設けることで、第2のパージゾーン7を出たガスの温度が高いので、実施例2に比べて第2の加熱手段10の負荷を低減することができ、さらに第2の再生ゾーン8を出たガスの温度が実施例2よりも高いという特長がある。
【0052】
なお、第2の吸着ロータ2の再生風量が足りない場合は、第2のパージゾーン7に導入するガスとして外気を混合して用いてもよい。
【0053】
なお、図示しないが、実施例2及び実施例3のフローにおいては、実施例1のように、必要に応じて第1の再生ゾーン5の前に第1の加熱手段を設け、第2の再生ゾーン8を通過したガスを第1の再生ゾーン5に通過させる前に、第1の加熱手段によって加熱し、例えば220℃まで追加で昇温させることにより、第1の吸着ロータ1の性能を向上させるようにしてもよい。
【0054】
また、実施例1、実施例2、実施例3において、加熱手段は、電気ヒータやガスヒータの他に、熱交換器や高温の燃焼排ガスを処理中のガスと混合するミキシングチャンバとしてもよい。さらに、2つの吸着ロータの構成で説明したが、2つ以上の複数の吸着ロータで構成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、排ガス中に大量のVOCを含む自動車、航空機、船舶などの塗装工場からの排気、半導体の洗浄工程からの排気、リチウムイオン二次電池に用いられる電極板製造工程からの排気、磁気記録媒体の製造工程からの排気などにも利用可能な有機溶剤ガス除去装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 第1の吸着ロータ
2 第2の吸着ロータ
3 第1の処理ゾーン
4 第1のパージゾーン
5 第1の再生ゾーン
6 第2の処理ゾーン
7 第2のパージゾーン
8 第2の再生ゾーン
9 第1の加熱手段
10 第2の加熱手段