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特許7581143復水脱気装置、脱気復水器および復水脱気方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】復水脱気装置、脱気復水器および復水脱気方法
(51)【国際特許分類】
   F28B 9/10 20060101AFI20241105BHJP
   F28C 3/08 20060101ALI20241105BHJP
   F28B 11/00 20060101ALI20241105BHJP
   F28B 1/02 20060101ALI20241105BHJP
   F28C 1/02 20060101ALI20241105BHJP
   F28F 27/00 20060101ALI20241105BHJP
   F01K 9/00 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
F28B9/10
F28C3/08 A
F28B11/00
F28B1/02
F28C1/02
F28F27/00 511J
F01K9/00 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021119527
(22)【出願日】2021-07-20
(65)【公開番号】P2023015624
(43)【公開日】2023-02-01
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 晃
(72)【発明者】
【氏名】津田 将太
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-018846(JP,A)
【文献】国際公開第2013/080950(WO,A1)
【文献】特開2003-148876(JP,A)
【文献】特開平09-133479(JP,A)
【文献】特開平10-325686(JP,A)
【文献】米国特許第05154227(US,A)
【文献】特開2014-153039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28B 9/10
F28C 3/08
F28B 11/00
F28B 1/02
F28C 1/02
F28F 27/00
F01K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝熱管を有し、蒸気タービンの排気蒸気を凝縮させて復水を生成し、前記復水を復水管に供給する脱気復水器に設けられる復水脱気装置であって、
前記複数の伝熱管から落下する前記復水を受け止めて底部から前記復水を下方に導く上部トレイと、
前記上部トレイの下方に接続され、下端が開放されて、前記復水を下方に移送する筒状部と、
前記上部トレイから前記筒状部を介して導かれた前記復水を加熱する蒸気を噴出する噴射部と、前記噴射部への前記蒸気の流路である蒸気管と、前記蒸気管に設けられ前記蒸気の流量を調節可能な蒸気調節弁と、を有する蒸気供給装置と、
前記筒状部の前記下端が内部に挿入され、前記蒸気により加熱された前記復水を貯留するとともに、前記筒状部との間に形成された間隙流路を通じて周方向に亘って上端縁から前記復水を溢流する下部トレイと、
を備え、
前記筒状部の前記下端の鉛直方向高さ位置は、前記下部トレイの上端の鉛直方向高さ位置よりも下側にある、
ことを特徴とする復水脱気装置。
【請求項2】
前記上部トレイは、前記複数の伝熱管から落下する前記復水を受ける上部トレイ受け板と、前記上部トレイ受け板の縁部から上方に拡がる上部トレイ側板とを有することを特徴とする請求項1に記載の復水脱気装置。
【請求項3】
前記蒸気調節弁を制御する監視制御装置をさらに備え、
前記噴射部は、前記下部トレイ内の下方に配されて、
前記監視制御装置は、前記筒状部内の温度と、前記脱気復水器内の圧力と、前記復水管の前記復水の溶存酸素濃度と、を入力として、前記溶存酸素濃度を所定の値に維持するように前記蒸気調節弁への指令信号を演算するとともに、前記脱気復水器内の前記圧力の飽和温度と前記筒状部内の前記温度との差が所定の値を超えないように監視する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の復水脱気装置。
【請求項4】
前記上部トレイの前記底部が、前記復水の下方への流れの抵抗となる抵抗体で構成されることを特徴とする請求項3に記載の復水脱気装置。
【請求項5】
前記上部トレイの上端は、溢流する前記復水を散水可能な鋸状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の復水脱気装置。
【請求項6】
前記筒状部内の断面を塞ぐように軸方向に設けられた複数の脱気エレメントと、を有する脱気槽を備え、
前記上部トレイは、前記上部トレイ受け板の下側に接続され前記上部トレイ受け板より水平方向の断面積の小さな上部トレイ縮小部をさらに有し、
前記上部トレイ縮小部の底部が、前記復水の下方への流れの抵抗となりかつ前記復水を下方に散水する抵抗体で構成され、
前記噴射部は、前記脱気槽内の下部に配されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の復水脱気装置。
【請求項7】
前記蒸気調節弁を制御する監視制御装置をさらに備え、
前記監視制御装置は、前記脱気槽内の圧力と前記脱気復水器内の圧力との差圧と、前記復水管の前記復水の溶存酸素濃度と、を入力として、前記溶存酸素濃度を所定の値に維持するように前記蒸気調節弁への指令信号を演算するとともに、前記差圧が所定の値を超えないように監視する、
ことを特徴とする請求項6に記載の復水脱気装置。
【請求項8】
前記下部トレイの上端は、溢流する前記復水を散水可能な鋸状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の復水脱気装置。
【請求項9】
前記下部トレイから溢流する前記復水を受け止め可能な位置に配されて、複数の散水エレメントを有する散水部をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の復水脱気装置。
【請求項10】
前記蒸気がタービンの前記排気蒸気を受け入れて冷却する空間を形成する筐体と、
前記空間内に配されて前記排気蒸気を冷却する前記複数の伝熱管と、
前記複数の伝熱管により冷却された前記復水を一次的に貯留するホットウェルと、
前記複数の伝熱管で冷却されて前記ホットウェルに移行する前記復水を脱気する請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の復水脱気装置と、
を具備することを特徴とする脱気復水器。
【請求項11】
複数の伝熱管を有し、蒸気タービンの排気蒸気を凝縮させて復水を生成し、前記復水を復水管に供給する脱気復水器において、前記復水を脱気する復水脱気方法であって、
前記複数の伝熱管で冷却されて凝縮し落下する前記復水を上部トレイで受け止め液面を形成するステップと、
次に、監視制御装置が、前記復水中の溶存酸素濃度を所定の値に維持するために蒸気調節弁を制御し蒸気流量を調節するステップと、
前記上部トレイから移行した前記復水を下部トレイで受け止めて、その下方から上方に移行する際に前記復水をフラッシュさせて脱気するステップと、
を有することを特徴とする復水脱気方法。
【請求項12】
前記上部トレイで受け止めて液面を形成するステップの後に、前記復水を、脱気槽において脱気するステップをさらに有することを特徴とする請求項11に記載の復水脱気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、復水脱気装置、これを有する脱気復水器、および復水脱気方法に関する。
【背景技術】
【0002】
復水器は、冷却水入口から冷却水を伝熱管に導入し、蒸気タービンから排気されるタービン排気蒸気を冷却、凝縮して復水としてホットウェルに落下させる。ホットウェルに落下した復水は、たとえばボイラ等の蒸気供給装置(ボイラ等)に供給される。また、タービン排気蒸気と熱交換し温められた冷却水は、冷却水出口から流出する。
【0003】
タービン排気蒸気には、ボイラ等で発生しタービンで仕事をした蒸気の他に、系統の途中で大気からインリークした空気や、復水あるいは給水に注入された薬品の分解物質などが、不凝縮ガスとして含まれる。
【0004】
この不凝縮ガスは、復水器の伝熱管の表面付近に滞留して伝熱性能の低下を引き起こす。また、不凝縮ガス中の酸素は、機器の腐食を引き起こす原因となる。
【0005】
伝熱管により冷却されて生じた凝縮水である復水は、伝熱管の管束の領域すなわち管巣内を流下する。この際、高い濃度の酸素領域が形成されると、復水に酸素が溶解する。管巣から落下する際、周囲のタービン排気蒸気により再熱され、ある程度溶存した酸素は脱気される。しかしながら、凝縮水の溶存酸素量が大きい場合や、過冷却度が大きい場合には、溶存酸素の濃度の高い凝縮水が落下する。
【0006】
このため、復水器では、伝熱管の管束に滞留する不凝縮ガスを、ガス抽出系統を介して排出する。
【0007】
蒸気タービン発電プラントの発電効率は、復水器の真空度が高いほど向上する。このため、通常はこのガス抽出系統を使い、不凝縮ガスを滞留させないよう保つことが最良の方法である。
【0008】
冷却水としては、海水または冷却塔で大気に冷やされた冷却塔水を用いる。しかしながら、特に寒冷地などの冬場では、冷却水の温度が極端に下がり、復水器の真空度が計画値よりも過度に高まる場合がある。このため、蒸気タービンの許容真空度を超える場合には、復水器の真空度を下げる運用が求められることがある。
【0009】
この場合、真空ポンプによる排出能力を落とすことにより、復水器の真空度の過度の上昇を抑制する場合がある。すなわち、真空ポンプによる排出能力を落として不凝縮ガスの排出が阻害することにより、管束の周囲に不凝縮ガス溜まりを形成し、蒸気と伝熱管の熱交換を阻害する方法である。
【0010】
不凝縮ガス溜まりは、酸素と窒素で構成される大気と、タービン排気に含まれる酸素と窒素、水素等である。これらのガス成分は、タービン排気蒸気が伝熱管の管束で凝縮した凝縮水と接触し、一部は凝縮水に溶け込む。この凝縮水が復水として系統中に供給されると、復水に溶存している酸素が、配管、熱交換器、ボイラ等の機器を腐食させるなどの悪影響を及ぼす。このため、このような溶存酸素量の限度を超える状態が、継続的な運転を不可能にする場合がある。
【0011】
以上は意図的に真空ポンプ能力を低下させる場合であるが、復水器真空度の上昇に対して、真空ポンプの達成真空度の限界に達し、不凝縮ガスの排出量が減って同様の事象が発生することも考えられる。
【0012】
また、復水器の特性として、真空度が高まるほど蒸気の体積が大きくなり圧力損失が高まる傾向にあり、凝縮水が、部分的に復水器の飽和温度より低くなる、いわゆる過冷却の状態となり、周囲の不凝縮ガスに含まれる酸素を取り込む傾向が強くなる。この結果、伝熱管から流下する凝縮水に含まれる溶存酸素量が増え、ホットウェルに流下し、高濃度の酸素を溶存させた復水として系統に供給されることも考えられる。
【0013】
このように、予め復水中の溶存酸素量が高くなることが見込まれる場合、たとえば、脱気トレイを管束下に設置し、管束から落下する凝縮水をタービン排気と接触させ再熱脱気する方法が知られている。あるいは、管束の下方に蒸気を導入して、管束から落下する凝縮水を再熱脱気させるなどの構成が知られている。
【0014】
このように、一般に凝縮水がホットウェルに落下する前に、凝縮水を脱気エレメントにより受け、脱気蒸気管からから供給される脱気蒸気と接触して加熱脱気するなどして、一旦溶け込んだ酸素を脱気する対策が必要となる。
【0015】
この場合、脱気エレメントおよび脱気蒸気管などにより構成される脱気装置を設置する空間を確保するため、復水器を大きくする必要があり、さらに脱気を行うために蒸気エネルギーを必要とする。
【0016】
特に蒸気源を用いた脱気装置の場合、低温であるほど脱気を支配する物質移動係数は小さくなり脱気性能が低下するため、装置がより大きくなる傾向となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特許第3735464号公報
【文献】実開昭60-168699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述したタービンプラントの復水器において、特に寒冷地の冬場など、冷却水温度が低い場合には、復水器の管束の周囲に大気による不凝縮ガス溜まりが形成され、管束を落下する凝縮水に酸素が溶解し、要求される復水の酸素濃度を超える可能性があった。また、復水を脱気するための加熱脱気装置においては、脱気を支配する物質移動係数が小さくなるため、脱気装置のサイズが大きくなり復水器が大型になる欠点があった。また、脱気蒸気のためのエネルギーロスが発生するもところにも課題があった。
【0019】
本発明が解決しようとする課題は、復水器の伝熱管で凝縮した復水の脱気を行うにあたり、加熱脱気の効率を向上させることができる復水脱気装置および復水脱気方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
実施形態によれば、復水脱気装置は、複数の伝熱管を有し、蒸気タービンの排気蒸気を凝縮させて復水を生成し、前記復水を復水管に供給する脱気復水器に設けられる復水脱気装置であって、前記複数の伝熱管から落下する前記復水を受け止めて底部から前記復水を下方に導く上部トレイと、前記上部トレイの下方に接続され、下端が開放されて、前記復水を下方に移送する筒状部と、前記上部トレイから前記筒状部を介して導かれた前記復水を加熱する蒸気を噴出する噴射部と、前記噴射部への前記蒸気の流路である蒸気管と、前記蒸気管に設けられ前記蒸気の流量を調節可能な蒸気調節弁と、を有する蒸気供給装置と、前記筒状部の前記下端が内部に挿入され、前記蒸気により加熱された前記復水を貯留するとともに、前記筒状部との間に形成された間隙流路を通じて周方向に亘って上端縁から前記復水を溢流する下部トレイと、を備え、前記筒状部の前記下端の鉛直方向高さ位置は、前記下部トレイの上端の鉛直方向高さ位置よりも下側にある、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施形態に係る復水脱気装置を有する脱気復水器の構成を示す伝熱管の長手方向に垂直な部分立断面図である。
図2】第1の実施形態に係る復水脱気装置を有する脱気復水器の下部トレイを示す図1のA-A線矢視部分側面図である。
図3】第1の実施形態に係る復水脱気装置の脱気エレメントの占有体積の温度への依存性の例を示すグラフである。
図4】第1の実施形態に係る復水脱気装置の監視制御装置の構成を示すブロック図である。
図5】第1の実施形態に係る脱気方法の手順を示すフロー図である。
図6】第1の実施形態に係る第1の実施形態に係る復水脱気装置の上部トレイおよび下部トレイにおける水面からの深さと飽和温度との関係を示すグラフである。
図7】第2の実施形態に係る復水脱気装置を有する脱気復水器の構成を示す伝熱管の長手方向に垂直な部分立断面図である。
図8】第2の実施形態に係る復水脱気装置の監視制御装置の構成を示すブロック図である。
図9】第2の実施形態に係る脱気方法の手順を示すフロー図である。
図10】第3の実施形態に係る復水脱気装置を有する脱気復水器の構成を示す伝熱管の長手方向に垂直な部分立断面図である。
図11】第3の実施形態に係る脱気方法の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る復水脱気装置、脱気復水器および復水脱気方法について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0023】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る復水脱気装置100を有する脱気復水器10の構成を示す伝熱管15の長手方向に垂直な部分立断面図である。
【0024】
脱気復水器10は、タービン排気を受け入れて冷却する空間を形成する筐体11、冷却された復水を一次的に貯留するホットウェル12、タービン排気を冷却する複数の伝熱管15を有する管巣16、および、復水脱気装置100を有する。
【0025】
筐体11は、空間を側方から囲む4枚の胴板およびこれらに接続する底板を有する。ホットウェル12は、筐体11の底部に形成される。ホットウェル12には、復水管20が接続されており、復水はボイラ等の蒸気供給装置に送られる。脱気復水器10には、その器内圧の測定のために復水器内圧力計11aが設けられている。また、復水管20中の復水をサンプリングして溶存酸素濃度を計測する溶存酸素濃度計21が設けられている。
【0026】
複数の伝熱管15の管束である管巣16は、多くの場合、水平方向に互いに間隔を置いて複数配置されているが、図1では、そのうちの一つを示している。また、図1では、管巣16の領域の一部に、伝熱管15を示している。管巣16の中心付近には、複数の伝熱管15の管束である空気冷却部17が設けられ残る蒸気分を冷却、凝縮する。空気冷却部17の中心付近に、空気などの不凝縮ガスと残る蒸気分を外部に排出するために設けられた排気管18の一端が開放されている。
【0027】
復水脱気装置100は、上部トレイ110、脱気槽120、下部トレイ130、蒸気供給装置140、監視制御装置150、および散水部160を有する。
【0028】
上部トレイ110は、タービン排気が管巣16内の伝熱管15で冷却され凝縮して、図1の破線矢印F1のように伝熱管15から落下してきた復水を受け止めて、一時貯留し、下方に噴水する部分である。上部トレイ110は、上部トレイ受け部111、上部トレイ受け部111の下面に接続された上部トレイ縮小部112、および上部トレイ縮小部112の下端を塞ぐように取り付けられた抵抗体113を有する。
【0029】
上部トレイ受け部111は、伝熱管15から落下してきた復水を受け止めるために管巣16の下方で十分に水平方向に拡がっており、水平に配され中央に開口が形成された上部トレイ受け板111aと、上部トレイ受け板111aの縁部の全てから上方あるいは斜め外側上方(「上方」)に延びる上部トレイ側板111bを有する。
【0030】
上部トレイ縮小部112は、上部トレイ受け板111aに形成された開口の縁部に接続されて下方に延びた筒状の部分である。なお、上部トレイ縮小部112の断面形状は、後述する筒状部121の断面形状に対応する形状である。
【0031】
抵抗体113は、上部トレイ縮小部112の下端に取り付けられている。抵抗体113は、流れの抵抗となるとともに、図1の矢印F2で示すように均一な流れの分配が可能な、複数の孔113aが形成された多孔板である。その複数の孔113aは、上部トレイ110内に、伝熱管15から落下してきた復水の液面が形成され、かつ上部トレイ側板111bの上端から溢流しない程度の流動抵抗を有する。なお、それぞれの孔113aは、復水を抵抗体113の下方に向けて広角度で散水されるような口径、形状に形成されていることが好ましい。
【0032】
脱気槽120は、筒状部121、筒状部121の内部に収納された複数の脱気エレメント122、および、分離された不凝縮ガスを筒状部121内の上部空間121aから復水器内空間11s内に排出するベント管123を有する。ここで、筒状部121は、断面が円形の円筒、あるいは、断面が多角形の角筒など、両端が開放されて長手方向に延びた形状を有する。なお、ベント管123は、筒状部121内の上部空間121a内の圧力と復水器内空間11s内の圧力との差を確保するために、必要に応じてオリフィスなどの抵抗体を有する。
【0033】
筒状部121は、上部トレイ110の上部トレイ縮小部112に接続された、筒状の部分である。筒状部121には、脱気槽120内の圧力を測定するために脱気槽内圧力計125が設けられている。
【0034】
脱気エレメント122は、上部トレイ110の抵抗体113により筒状部121内の上方から散水された復水を細分化して表面積を拡大することにより、蒸気供給装置140により供給され筒状部121の下方から上昇する蒸気との接触面積を拡大する。脱気エレメント122としては、たとえば、多孔板、V字トレイ、不規則充填物、金属片などを用いることができる。
【0035】
ここで、図3を引用しながら、脱気槽120について説明する。図3は、第1の実施形態に係る復水脱気装置100の脱気エレメント122の占有体積の温度への依存性の例を示すグラフである。
【0036】
横軸は、脱気エレメント122の周囲温度を示す。縦軸は、脱気エレメント122が筒状部121内に均一に配されている場合においての脱気エレメント122の占有体積、すなわち脱気エレメント122が配されている領域の体積であり、温度が20℃の場合の脱気エレメント122の体積を基準にした相対値である。なお、ここで、均一とは、個々の脱気エレメント122により形成される表面積の分布が、水平方向にほぼ均一であり、かつ、高さ方向に規則的に配されていることにより、3次元的にもほぼ均一とみなせることを言うものとする。
【0037】
所定の流動条件において、温度が高くなるほど、物質移動速度が増加する。すなわち、温度が高くなるほど、脱気特性は良くなる。この結果、同じ脱気性能を確保する上で、温度が高くなるほど、脱気エレメント122によって得られる液表面積は小さくて済むことになる。脱気エレメント122が筒状部121内に均一に配されている場合においては、脱気エレメント122によって得られる液表面積は脱気エレメント122の量すなわち脱気エレメント122が配されている領域の体積に比例する。また、図3に示すように筒状部121内側の断面積は高さ方向に一定である場合には、縦軸は、脱気エレメント122配されている領域の体積の高さにも対応する。
【0038】
たとえば、復水の温度が20℃である場合、たとえば、30℃まで昇温すれば、脱気エレメントのサイズは72%までに、あるいは、40℃まで昇温すれば55%までに削減することができる。
【0039】
下部トレイ130は、脱気槽120から落下する復水を受け入れて、ホットウェル12に排出する部分である。下部トレイ130は、下部トレイ底板131と、下部トレイ底板131の縁部の全てから上方あるいは斜め外側上方(「上方」)に延びる下部トレイ側板132とを有する。下部トレイ底板131の形状は、脱気槽120の筒状部121の断面形状に対応する形状である。すなわち、筒状部121が円筒の場合は、円形、筒状部121が角筒の場合は、その断面の多角形である。また、下部トレイ底板131の大きさは、筒状部121の断面の大きさを包絡するような大きさである。
【0040】
脱気槽120の筒状部121の下端は、下部トレイ130内まで延びている。すなわち、筒状部121の下端の鉛直方向高さ位置は、下部トレイ側板132の上端の鉛直方向高さ位置よりも下側にある。より詳細には、筒状部121の下端の鉛直方向高さ位置は、下部トレイ130の下部トレイ側板132から復水が溢水する状態において、復水の液面の鉛直方向高さ位置よりも下側にある。
【0041】
したがって、筒状部121の下側部分と下部トレイ側板132とが、水平方向に二重の隔壁となることにより間隙流路130aを形成する部分が、鉛直方向に存在する。すなわち、下部トレイ130内の復水は、筒状部121の内外で連通している。筒状部121を下方に落下する復水は、筒状部121内に形成された液面上に落下した後に、筒状部121を下方に移動する。筒状部121の下端より下側に移動した後に、径方向外側に流れる。径方向外側に流れた復水は、筒状部121の下側部分と下部トレイ側板132とに挟まれた空間を上昇する。この際、復水は静水頭の減少による減圧により図1に示すようにフラッシュしながら上昇する。上昇した復水は、図1の破線F3で示すように下部トレイ側板132から溢水する。
【0042】
図2は、第1の実施形態に係る復水脱気装置を有する脱気復水器の下部トレイを示す図1のA-A線矢視部分側面図である。
図2に示すように、下部トレイ側板132の上端には、鋸状部132aが形成されている。なお、溢水する際に復水が散水されるように形成されていれば、他の形状でもよい。なお、フラッシュした蒸気は、脱気復水器10の器内に放出される。
【0043】
蒸気供給装置140は、脱気槽120に蒸気を供給する。蒸気供給装置140は、図示しない外部からの蒸気の流路となる蒸気管142と、複数のノズル(図示せず)を有し蒸気管142により供給される蒸気を噴出する噴射部141と、蒸気管142に設けられて蒸気の流量を調節可能な蒸気調節弁143とを有する。噴射部141から噴射された蒸気が筒状部121内を上昇して、筒状部121内を落下する復水と接触するように、噴射部141は、脱気槽120の筒状部121内の下方に設けられている。蒸気調節弁143は、監視制御装置150からの指令により、開閉する。
【0044】
監視制御装置150は、復水管20を流れる復水中の溶存酸素濃度を測定する溶存酸素濃度計21の出力、復水器内圧力計11aの出力および脱気槽内圧力計125の出力をそれぞれ入力として、蒸気調節弁143への開度指令を演算して出力する。なお復水器内圧力計11aおよび脱気槽内圧力計125に代えて、脱気復水器10内の圧力と脱気槽120内の圧力の差圧を直接計測する差圧検出器の出力を受けてもよい。
【0045】
散水部160は、下部トレイ側板132の上端から溢れて散水される復水が落下する位置に配されている。散水部160の内部には、復水を細分化する散水エレメント161が収納されている。散水エレメント161により、下部トレイ130から溢流した復水のホットウェル12までの落下時間と表面積を拡大し、脱気効果をさらに高めることができる。散水部160でさらに脱気された復水は、破線F5で示すように、ホットウェル12に落下する。
【0046】
図4は、第1の実施形態に係る復水脱気装置100の監視制御装置150の構成を示すブロック図である。
【0047】
監視制御装置150は、減算部151、制御演算部152、減算部153、減算部154、判定部155、および、警報発生部156を有する。
【0048】
減算部151は、監視制御装置150が記憶する溶存酸素濃度目標値から、溶存酸素濃度計21の出力信号である溶存酸素濃度を減じて、溶存酸素濃度偏差を出力する。ここで、溶存酸素濃度目標値は、溶存酸素濃度管理値がたとえば7ppbの場合、7ppbあるいはこの値に余裕を見込んだ値として(7-α)ppbに設定される。
【0049】
制御演算部152は、減算部151で算出された溶存酸素濃度偏差を入力として、制御演算を行い、蒸気調節弁143への指令信号を出力する。ここで、制御演算部152は、たとえば、比例要素および積分要素を有する。なお、蒸気調節弁143が動作してから、復水管20中の復水の溶存酸素濃度の変化に至るまでの時間遅れが大きいことから、比例ゲインが大きすぎたり、積分時間が小さすぎたりせずに、適切な値を設定する。また、図示しないが、応答性を確保するためには、復水流量をパラメータとして蒸気流量と溶存酸素濃度の関係を予め求めておき、この関係により先行制御を行い、比例要素および積分要素によるフィードバック制御は、時間をかけて目標値にあわせるための制御とする方法を採用してもよい。
【0050】
減算部153は、脱気槽内圧力計125から受け入れた圧力値から復水器内圧力計11aから受け入れた圧力値を減じて、これらの差圧を出力する。減算部154は、監視制御装置150が記憶する差圧制限値から、減算部153の出力である差圧を減じて、差圧偏差を判定部155に出力する。
【0051】
ここで、差圧制限値は以下のように設定される。
いま、蒸気流量が増加すれば脱気槽120内の圧力は上昇する。しかしながら、蒸気流量を増加しすぎて脱気槽120内の圧力が上昇しすぎると、上部トレイ110における復水の液面高さによる静圧(水柱ヘッド)と、抵抗体113の上下の差圧が逆転し、抵抗体113から脱気槽120への復水の流れが無くなり、上部トレイ110から直接復水が溢れることになる。差圧制限値は、適正な流動がなされる範囲の差圧の上限、あるいはこれに余裕を見た値に設定される。
【0052】
判定部155は、減算部154で算出された差圧偏差が、正常な範囲であるか異常な範囲であるかを判定する。すなわち、たとえば、差圧偏差が、マイナスの値となった場合には、実際の差圧が差圧制限値を超えたとして異常と判定する。あるいは、差圧偏差が、正の場合であっても、ある値βより小さい場合は、異常と判定することでもよい。判定部155は、差圧偏差を異常と判定した場合は、異常信号を、制御演算部152および警報発生部156に出力する。制御演算部152は、異常信号を受けた場合は、出力をロックする。あるいは、出力を所定の幅だけ減少させることでもよい。
【0053】
警報発生部156は、異常信号を受けた場合は、警報を表示し、運転員に異常であることを告知する。あるいは、警報発生部156は、警報信号を他の操作盤等に出力することでもよい。警報は、単独の警報、あるいは他の異常警報と併せた一括警報として、たとえば図示しない中央制御盤に表示することでもよい。
【0054】
図5は、第1の実施形態に係る脱気方法の手順を示すフロー図である。以下、図5にしたがって、脱気方法の手順の各ステップの内容、および作用について説明する。
【0055】
伝熱管15により冷却されて生じた凝縮水である復水は、管巣16内を流下するが、高い濃度の酸素領域が形成されると、復水に酸素が溶解する。
【0056】
管巣16から上部トレイ110に落下する際、周囲のタービン排気蒸気により再熱され、ある程度溶存した酸素は脱気される効果を有するが、凝縮水の溶存酸素量が大きい場合や、過冷却度が大きい場合には、溶存酸素の濃度の高いまま落下する。
【0057】
まず。伝熱管15から落下する復水を、上部トレイ110で受け止め、液面を形成させる(ステップS01)。上部トレイ110の抵抗体113に形成された複数の孔113aは、前述のように、上部トレイ110内に、伝熱管15から落下してきた復水の液面が形成され、かつ上部トレイ側板111bの上端から溢流しない程度の流動抵抗を有する。したがって、復水は、上部トレイ側板111bの上端から溢流することなく上部トレイ110内に一時的に貯留され、上部トレイ110内に液面が形成される。
【0058】
次に、上部トレイ110に貯留された復水を、上部トレイ110の抵抗体113を介して、脱気槽120内の上方から散水する(ステップS02)。脱気槽120内には、下方から蒸気が供給されることから脱気槽120内の圧力は、脱気復水器10の器内圧より高くなっている。この結果、抵抗体113の上下には差圧が存在する。一方、上部トレイ110内に液面が形成されることから、その静水頭が存在する。静水頭が通常の運転状態における上下の差圧より大きくなるように、上部トレイ110の高さが設定されている。前述のように、この状態において、抵抗体113に形成されたそれぞれの孔113aから、抵抗体113の下方に復水が散水される。
【0059】
次に、脱気槽120内で、上方から散水された復水と、下方から供給される蒸気とを接触させ復水を脱気する(ステップS03)。すなわち、上方から散水された復水は、脱気エレメント122により細分化し、表面積が拡大し、下方から上昇する蒸気と接触して、加熱脱気される。
【0060】
この状態において、監視制御装置150は、復水中の溶存酸素濃度を所定の値に維持するために蒸気調節弁143を制御して蒸気流量を調節する(ステップS04)。すなわち、ステップS03とステップS04は互いに並行して行われる。
【0061】
なお、この制御状態において、判定部155が、差圧が異常と判定した場合は、制御演算部152に出力のロックあるいは出力を所定の幅だけ減少させる指令が出されるとともに、警報発生部156から警報が出力される。警報により異常の発生を認知した運転員は、そのプラントの異常時操作手順に従って、対応操作を行う。
【0062】
次に、脱気槽120から落下する脱気された復水を下部トレイ130で受け止め液面を形成させる(ステップS05)。ここで、復水は、前述のように、脱気槽120の筒状部121の内側に落下する。
【0063】
次に、下部トレイ130の下方から上方に移行する際に復水をフラッシュさせて脱気する(ステップS06)。すなわち、筒状部121を下降した後、復水は径方向外側に流れ、さらに、筒状部121と下部トレイ130の下部トレイ側板132との間の間隙流路130aを上昇する。この間に、復水は、脱気復水器10の器内圧まで減圧することにより、図1のバブルで示すようにフラッシュする。このフラッシュ現象により、復水が効果的に脱気される。フラッシュして生じた蒸気は、図1の破線F4で示すように脱気復水器10の器内に放出される。
【0064】
次に、図1の破線F3で示す下部トレイ130から溢流する復水を散水部160の散水エレメント161で脱気する(ステップS07)。
【0065】
図6は、第1の実施形態に係る復水脱気装置100の上部トレイ110および下部トレイ130における水面からの深さと飽和温度との関係を示すグラフである。横軸は、水面からの深さ(mm)、縦軸は、その深さにおける飽和温度である。
【0066】
4本の曲線A、B、C、およびDは、脱気復水器10の器内圧力が、それぞれ、絶対圧力で、0.0234bar、0.03bar、0.04bar、および0.05barの場合の、それぞれの深さにおける飽和温度を示す。水面からの深さが同じ場合は、脱気復水器10の器内圧力が高くなるほど、飽和温度は高くなる。
【0067】
たとえば、脱気復水器10内の圧力が曲線Aに対応する0.0234bar(a)のとき、飽和温度は20℃となる。この際、上部トレイ110に形成される液面と抵抗体113の圧力損失の合計が、200mmAqであれば、脱気槽120の飽和温度は30℃となり、515mmであれば40℃まで温度を上昇させることができる。
【0068】
また、脱気復水器10内の圧力が、たとえば0.0234bar(a)のとき、飽和温度は20℃になるが、蒸気供給装置140の噴射部141の鉛直方向の高さ位置に対する下部トレイ130に形成される液面の相対的な高さが200mmであれば、噴射部141付近の飽和温度は30℃となる。また、515mmであれば40℃まで上昇する。噴射部141から噴射された蒸気は瞬時に凝縮し過熱水となる。
【0069】
以上のように、本実施形態による復水脱気装置100、脱気復水器10および復水脱気方法においては、上部トレイ110による脱気槽120内の圧力すなわち飽和温度の保持および脱気槽120への散水、脱気槽120における加熱脱気、下部トレイ130におけるフラッシュによる脱気、さらには、散水部160での脱気により、効率的かつ確実に脱気を行うことができる。また、復水の温度が高いほど脱気能力は高くはなるが必要以上の蒸気量の消費はエネルギーの損失となる。本実施形態では、監視制御装置150により、復水中の溶存酸素濃度を所定の値に維持するのに必要な蒸気量のみを使用することにより、脱気に必用な蒸気量を最適にすることができる。
【0070】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態に係る復水脱気装置100aを有する脱気復水器10aの構成を示す伝熱管の長手方向に垂直な部分立断面図である。
【0071】
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。第1の実施形態との相違点は、以下のとおりである。これらの点以外は、第1の実施形態と同様である。
【0072】
第1に、第1の実施形態では上部トレイ110が抵抗体113を有しているが、本実施形態の上部トレイ110aは、抵抗体を有しない。また、第1の実施形態では、上部トレイ110の下側に脱気槽120が接続しているが、本実施形態においては、上部トレイ110aの下側には、筒状部121のみが接続されている。筒状部121には、筒状部121の内部の温度を測定する筒状部内温度計126が設けられている。
【0073】
第2に、第1の実施形態においては、蒸気供給装置140の噴射部141が筒状部121の内部に配されているが、本実施形態においては、噴射部141aが筒状部121の下方でかつ下部トレイ130の内部に配されている。
【0074】
さらに、監視制御装置150aについて第1の実施形態の監視制御装置150と異なる部分がある。
【0075】
図8は、第2の実施形態に係る復水脱気装置100aの監視制御装置150aの構成を示すブロック図である。
【0076】
溶存酸素濃度計21からのフィードバック信号により、蒸気調節弁143を制御する部分は第1の実施形態と同様であるが、異常と判定した場合に警報発生部156および制御演算部152に出力する判定部155aの入力側が、第1の実施形態では、差圧偏差を算出するが、本実施形態では以下のように温度差偏差を算出する点で異なる。
【0077】
すなわち、監視制御装置150aは、減算部151、制御演算部152、判定部155a、および警報発生部156の他に、飽和温度演算部157、減算部158および減算部159を有する。
【0078】
飽和温度演算部157は、飽和テーブルを内蔵し、復水器内圧力計11aから出力された復水器内圧力値を受け入れて、その圧力値に対応する復水器内飽和温度を出力する。
【0079】
減算部158は、筒状部内温度計126から出力された筒状部内温度から、飽和温度演算部157で算出した復水器内飽和温度を減じて、温度差を出力する。
【0080】
減算部159は、減算部158で算出した温度差から、監視制御装置150a内に記憶する温度差制限値を減じて温度差偏差を算出し、判定部155aに出力する。
【0081】
いま、蒸気流量が増加すれば筒状部121および下部トレイ130内の温度は上昇する。上部トレイ110aおよび筒状部121を下降し、下部トレイ130内から下部トレイ130と筒状部121に挟まれた間隙流路130aを上昇する流れにおいて、噴射部141近傍の温度が上昇しすぎると、下方ほど温度が高くなり浮力の効果が大きくなる、あるいは、下方にて沸騰が生ずるなど、この復水の流動に不安定性が生ずる場合がある。したがって、温度差の値には、上限が存在する。温度差制限値は、適正な流動がなされる範囲の温度差の上限、あるいはこれに余裕を見た値に設定される。
【0082】
判定部155aは、温度差偏差が、正常な範囲であるか異常な範囲であるかを判定する。判定の内容については、第1の実施形態における判定部155と同様である。
【0083】
図9は、第2の実施形態に係る脱気方法の手順を示すフロー図である。
【0084】
まず、伝熱管15で冷却されて凝縮し管巣から落下する復水を上部トレイで受け止め液面を形成する(ステップS01a)。ここで、第1の実施形態と異なるのは、本実施形態の上部トレイ110aは抵抗体を有しないため、復水は、上部トレイ110aおよび筒状部121が一体となった筒状の部分に落下して液面を形成する。液面の高さ位置は、上部トレイ110a内あるいは筒状部121内のいずれかであり、管巣から落下する復水の流量、筒状部121から下部トレイ130に移行して下部トレイ130から溢れ出る流れの流動抵抗等に依存する。
【0085】
次に、監視制御装置150aが、復水中の溶存酸素濃度を所定の値に維持するために、蒸気調節弁143を制御し蒸気流量を調節する(ステップS21)。
【0086】
次に、下部トレイ130の下方から上方に移行する際に復水をフラッシュさせて復水を脱気する(ステップS06)。次に、下部トレイから溢流する復水を散水エレメントでさらに脱気する(ステップS07)。
【0087】
以上のように、本実施形態における復水脱気装置100aは、第1の実施形態のような脱気槽120を有さず、上部トレイ110aおよびこれに接続する筒状部121が一体化した筒状を形成して、その下端が下部トレイ130内まで延びた構成を有する。
【0088】
この結果、高さ方向にコンパクト化した構成となっている。
【0089】
また、下部トレイ130内の復水を加熱する位置は、第1の実施形態が脱気槽120内の下部に噴射部141を設置するのに対して、本実施形態では、下部トレイ130内の下方に設置している。この結果、第1の実施形態に比べて、さらに水深の深い位置で加熱することから、静水頭が大きくなり飽和温度が上昇し、復水をさらに高温化することができる。この結果、下部トレイ130内を上昇する際のフラッシュの程度が大きい。水中に発生したフラッシュ蒸気は、一般に高い脱気性能を有することが知られていることから、この部分での高い脱気性能が期待できる。
【0090】
[第3の実施形態]
図10は、第3の実施形態に係る復水脱気装置100bを有する脱気復水器10bの構成を示す伝熱管の長手方向に垂直な部分立断面図である。
【0091】
本実施形態は、第2の実施形態の変形である。すなわち、本実施形態における上部トレイ110bは、抵抗体114を有する。
【0092】
抵抗体114は、たとえば、複数の孔114aが形成された多孔板である。抵抗体114は、伝熱管15から落下してきて上部トレイ110bによって受け止められた復水の一部が、上部トレイ110bの上部トレイ側板111bの上端から溢れ出る程度の抵抗係数を有するように形成される。
【0093】
図示しないが、上部トレイ側板111bの上端は、下部トレイ側板132と同様に、溢水する際に復水が散水されるように、たとえば鋸状に形成されている。
【0094】
図11は、第3の実施形態に係る脱気方法の手順を示すフロー図である。
【0095】
まず、伝熱管15から落下する復水を上部トレイ110bで受け止め、図10の破線F6で示すように、一部を、溢流させるような液面を形成する(ステップS31)。
【0096】
次に、抵抗体114および筒状部を通過した復水を下部トレイで受け止め液面を形成する(ステップS05)。
【0097】
次に、監視制御装置150aが、復水中の溶存酸素濃度を所定の値に維持するために、蒸気調節弁143を制御して蒸気流量を調節する(ステップS21)。
【0098】
次に、復水が下部トレイ130の下方から上方に移行する際に復水をフラッシュさせて脱気する(ステップS06)。
【0099】
次に、図10の破線F4で示すフラッシュした蒸気を、破線F6で示すように上部トレイ110bから溢流した復水で冷却し回収する(ステップS32)。第1および第2の実施形態では、フラッシュした蒸気は、脱気復水器10bの器内に放出されることから、排気管18から排出される場合もあり、必ずしも復水として回収できるとは限らない。本実施形態では、上部トレイ110bから復水の一部を溢流させることにより、フラッシュ蒸気の冷却に利用し、復水として回収することができる。また、上部トレイ110bから溢流した復水は、フラッシュ蒸気によって脱気される。
【0100】
次に、下部トレイ130から溢流する復水を散水部160でさらに脱気する(ステップS07)。
【0101】
以上のように、本実施形態では、上部トレイ110bから溢流した復水をフラッシュ蒸気によって脱気するとともに、下部トレイ130でフラッシュした蒸気を復水として回収することにより、脱気効率の向上および復水器効率の向上を図ることができる。
【0102】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、脱気装置が、上部トレイと、筒状部と、下部トレイと、蒸気供給装置とを有することにより、加熱脱気の効率を向上させることができる。
【0103】
[その他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
10、10a、10b…脱気復水器、11…筐体、11a…復水器内圧力計、11s…復水器内空間、12…ホットウェル、15…伝熱管、16…管巣、17…空気冷却部、18…排気管、20…復水管、21…溶存酸素濃度計、100、100a、100b…復水脱気装置、110、110a、110b…上部トレイ、111…上部トレイ受け部、111a…上部トレイ受け板、111b…上部トレイ側板、112…上部トレイ縮小部、113…抵抗体、113a…孔、114…抵抗体、114a…孔、120…脱気槽、121…筒状部、122…脱気エレメント、123…ベント管、125…脱気槽内圧力計、126…筒状部内温度計、130…下部トレイ、130a…間隙流路、131…下部トレイ底板、132…下部トレイ側板、132a…鋸状部、140…蒸気供給装置、141…噴射部、142…蒸気管、143…蒸気調節弁、150、150a…監視制御装置、151…減算部、152…制御演算部、153、154…減算部、155…判定部、156…警報発生部、157…飽和温度演算部、158、159…減算部、160…散水部、161…散水エレメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11