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特許7581146チャック、基板保持装置、基板処理装置、及び物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】チャック、基板保持装置、基板処理装置、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20241105BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20241105BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
G03F7/20 501
H01L21/30 502D
H01L21/68 P
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021124135
(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公開番号】P2022134074
(43)【公開日】2022-09-14
【審査請求日】2024-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2021032662
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】神谷 重雄
(72)【発明者】
【氏名】是永 伸茂
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-185607(JP,A)
【文献】特開2005-032977(JP,A)
【文献】特開2001-060617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H01L 21/027
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を吸着保持するためのチャックであって、
吸着保持された前記基板の裏面に当接する複数の凸部と、
環状の隔壁と、
前記複数の凸部と前記隔壁が配置された底部と、を含み、
前記複数の凸部は、前記隔壁の外側に配置された第1凸部、及び前記隔壁の内側であって前記隔壁を挟んで前記第1凸部と隣り合う位置に配置された第2凸部を1つのグループとする複数のグループから構成され、
前記複数のグループのそれぞれに含まれる前記第1凸部と前記第2凸部の間の距離をL、当該第2凸部と前記隔壁の間の距離をsとするとき、
s/L<0.5
を満たすことを特徴とするチャック。
【請求項2】
前記隔壁は、前記複数のグループのそれぞれに含まれる前記第2凸部よりも低い高さであることを特徴とする請求項1に記載のチャック。
【請求項3】
前記隔壁は隣り合う2重の隔壁から構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のチャック。
【請求項4】
前記2重の隔壁の内の外側の隔壁は、前記複数のグループのそれぞれに含まれる前記第1凸部よりも低い高さであることを特徴とする請求項3に記載のチャック。
【請求項5】
前記隔壁の内周側を吸引するための第1の吸引口を前記底部に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のチャック。
【請求項6】
前記2重の隔壁の間を吸引するための第2の吸引口を前記底部に備えることを特徴とする請求項3または4に記載のチャック。
【請求項7】
前記隔壁は前記基板の径より小さい径であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のチャック。
【請求項8】
前記複数の凸部とは異なる凸部である第3凸部を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のチャック。
【請求項9】
前記複数のグループのそれぞれに含まれる前記第1凸部の高さをho、前記複数のグループのそれぞれに含まれる前記第2凸部の高さをhi、とするとき、
hi>ho
を満たすことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のチャック。
【請求項10】
前記複数のグループのそれぞれに含まれる前記第1凸部は、前記底部に配置された前記複数の凸部の内の最も外周側に配置される凸部であることを特徴とする請求項9に記載のチャック。
【請求項11】
前記隔壁の高さは、前記複数のグループのそれぞれに含まれる前記第2凸部の高さ以下であることを特徴とする請求項9または10に記載のチャック。
【請求項12】
前記複数のグループのそれぞれに含まれる前記第1凸部の断面積をSo、前記複数のグループのそれぞれに含まれる前記第2凸部の断面積をSi、とするとき、
Si>So
を満たすことを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載のチャック。
【請求項13】
前記隔壁は、前記複数のグループのそれぞれに含まれる前記第2凸部よりも前記複数のグループのそれぞれに含まれる前記第1凸部に近い位置に配置されることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載のチャック。
【請求項14】
前記隔壁は隣り合う2重の隔壁から構成されることを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載のチャック。
【請求項15】
前記2重の隔壁の内の外側の隔壁は、前記複数のグループのそれぞれに含まれる前記第2凸部よりも低い高さであることを特徴とする請求項14に記載のチャック。
【請求項16】
請求項1に記載の前記チャックを有する前記基板を吸着保持するための基板保持装置であって、
前記基板の歪みを示すディストーションをdx、前記基板のヤング率をE、前記基板の厚さをh、前記基板に対する吸引圧力をPvとするとき、
前記隔壁の配置位置が、
dx<補正係数×(h/2)×PvL/4Eh(3u-4u
を満たすことを特徴とする基板保持装置。
【請求項17】
前記基板の平面度をdz、最外周に配置された前記第1凸部より外側方向に突出した前記基板の寸法をoh、とするとき、
前記隔壁の配置位置が、
dz<補正係数×oh×PvL/4Eh(3u-4u
を満たすことを特徴とする請求項16に記載の基板保持装置。
【請求項18】
前記隔壁の内周側を吸引するための流路の開閉をするバルブと、前記バルブを制御する制御部を備えることを特徴とする請求項16または17に記載の基板保持装置。
【請求項19】
請求項16乃至18のいずれか1項に記載の前記基板保持装置によって吸着保持された前記基板をパターン形成処理することを特徴とする基板処理装置。
【請求項20】
請求項19に記載の前記基板処理装置を用いて基板にパターンを形成するパターン形成工程と、
前記パターン形成工程で前記パターンが形成された前記基板を加工する加工工程と、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャック、基板保持装置、基板処理装置、及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子製造等に用いられる露光装置(縮小投影露光装置)は、素子の微細化に対応するための高NA化が進んでいる。高NA化によって解像力は向上するが、有効な焦点深度は減少してしまう。そこで、解像力は維持しかつ十分な実用深度を確保するために、投影光学系の像面湾曲の軽減や、ウエハ(基板)の厚みムラやウエハを吸着保持するためのチャックの平面精度の向上などウエハフラットネス(基板表面の平面度)の改善が図られてきた。
【0003】
基板表面の平面度を低下させる原因として、チャックと基板との間の異物挟み込みがある。異物を挟み込むと挟み込んだ部分の基板は盛り上がるように変形して、基板に形成するパターンの形成不良を生じて歩留まりが低下する場合がある。このような異物による歩留まりの低下を確率的に回避するため、チャックと基板との接触率を大幅に減少させた、いわゆるピン(凸部)を使用したピンコンタクトチャック(ピンチャック)が用いられている。
【0004】
このピンチャックを使用した場合、基板が凸部間で真空吸引力により変形してたわむ(歪む)ことで基板が変形して、基板表面の平面度が低下する場合もあり、これを改善するための種々の提案がなされている。例えば、特許文献1においては、複数の凸部を囲うような環状の隔壁(土手)をピンチャックに設けるようにしており、この隔壁を外周側の凸部と外周側の凸部と隣り合う凸部である内周側の凸部の間に配置している。そして、この隔壁の配置位置として可能な限り外周部側の凸部に近づけるように配置している。
【0005】
また、特許文献2では、隔壁を最も外周側に配置された凸部より外側の位置、または最も外周側の凸部と最も外周側の凸部と隣り合う内周側の凸部との間に配置している。この隔壁の配置位置として、隔壁を最も外周側の凸部と、最も外周側の凸部と隣り合う内周側の凸部における距離の中心から外周方向の所定の範囲内の位置に配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許4298078号公報
【文献】特開2001-185607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基板を真空吸着すると隔壁の内側はほぼ真空圧に保たれ吸着力が発生するが、隔壁の外側が大気圧になり吸着力がほぼ発生しない。特許文献1及び2では、吸着力をできるだけ基板の外側まで作用させるために隔壁を外周側凸部に近い位置に配置している。しかし、基板の外側まで吸着力が作用するため、基板表面の平面度が低下してしまい、基板の歪み(ディストーション)は大きくなってしまう問題がある。
【0008】
そこで本発明は、例えば、隔壁と凸部の配置位置を所定の関係とすることで、基板の歪みを減少させることが可能なチャックを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのチャックは、吸着保持された基板の裏面に当接する複数の凸部と、環状の隔壁と、複数の凸部と隔壁が配置された底部と、を含み、複数の凸部は、隔壁の外側に配置された第1凸部、及び隔壁の内側であって隔壁を挟んで第1凸部と隣り合う位置に配置された第2凸部を1つのグループとする複数のグループから構成され、複数のグループのそれぞれに含まれる第1凸部と第2凸部の間の距離をL、当該第2凸部と隔壁の間の距離をsとするとき、s/L<0.5を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、隔壁と凸部の配置位置を所定の関係とすることで、基板の歪みを減少させることが可能なチャックを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の露光装置の構成を例示した概略図である。
図2】等分布荷重を受ける片側固定で片側自由の梁の材料力学モデルを例示した図である。
図3】実施例1の基板保持装置を例示した図である。
図4】実施例1の材料力学モデルを例示した図である。
図5】実施例1の隔壁位置とディストーションの関係を例示した図である。
図6】実施例2の基板保持装置を例示した図である。
図7】実施例3の基板保持装置を例示した図である。
図8】片持ち梁における材料力学モデルを例示している図である。
図9】実施例3のチャックの断面図を例示している図である。
図10】実施例5の基板保持装置を例示した図である。
図11】デバイスの製造プロセスを例示するフローチャートである。
図12】ウエハプロセスを例示するフローチャートである。
図13】一般的な基板保持装置で使用するピンチャックを例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について実施例や図を用いて説明する。なお、各図において、同一の部材ないし要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略ないし簡略化する。
【0013】
<実施例1>
図1は、本実施例の露光装置100の構成を概略的に例示する構成図である。露光装置100は、光源から照射された光(露光光)をレジストに対し照射して硬化させ、レチクル104に形成されたパターンが転写された硬化物のパターンを形成することができる装置である。
【0014】
また、以下では、基板110上のレジストに対して照射する光の光軸に平行な方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な平面内で互いに直交する2方向をX軸方向及びY軸方向とする。本実施例の露光装置100は、複数のパターン形成領域(露光領域)に順次フォーカス駆動を行う装置及び順次露光を行う装置(投影露光装置、基板処理装置)等に適用可能である。以下、本実施例の露光装置100を、図1を参照して説明する。なお、本実施例の露光装置100は、ステップアンドリピート方式の露光装置として説明する。
【0015】
基板(ウエハ)110は、表面に露光光によって化学反応を効果的に起こす感光剤(レジスト)が塗布されている被処理基板である。基板110は、ガラス、セラミックス、金属、シリコン、樹脂等が用いられ、必要に応じて、その表面に基板110とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。また基板110は、ガリ砒素ウエハ、複合接着ウエハ、石英を材料に含むガラスウエハ、液晶パネル基板、レクチルなど各種基板でもよい。また、外形形状も円形だけでなく方形などでもよく、その場合、後述するチャック1の外形も基板外形に合わせた形状にすればよい。
【0016】
レチクル(原版)104は、投影光学系106の光軸に直交する平面内及びこの光軸方向に移動可能な構成となっているレチクルステージ103上に載置されている。レチクル104は、矩形の外周形状を有し、基板110に対向する面(パターン面)に3次元状に形成されたパターン(回路パターンなどの基板に転写すべき凹凸パターン)を備えたパターン部を有する。レチクル104は、光を透過させることが可能な材料、例えば、石英で構成される。
【0017】
本実施例の露光装置100は基板処理装置としても機能し、基板保持装置101と、基板ステージ102と、レチクルステージ103と、照明光学系105と、投影光学系106と、オフアクシススコープ107と、計測部108と、制御部109とを含みうる。
【0018】
基板保持装置101は、基板110を吸着保持するためのチャック1と、基板110の裏面とチャック1との間の空間を吸引(排気)する真空源である不図示の吸引部と、吸引部を制御する不図示の制御部とを含みうる。本実施例における基板保持装置101の詳細は後述する。
【0019】
基板ステージ102は、基板保持装置101を介して基板110を保持するθZチルトステージと、θZチルトステージを支持する不図示のXYステージと、XYステージを支持する不図示のベースとを備えている。基板ステージ102はリニアモータ等の駆動装置(不図示)により駆動される。駆動装置はX、Y、Z、θX、θY、θZの6軸方向に駆動可能であり、後述する制御部109により制御される。なお、駆動装置は、6軸方向に駆動可能としたが、1軸方向から6軸方向のいずれかで駆動可能としてもよい。
【0020】
レチクルステージ103は、例えば、後述する投影光学系106の光軸に垂直な平面内、すなわちXY平面内で移動可能及びθZ方向に回転可能に構成される。レチクルステージ103はリニアモータ等の駆動装置(不図示)により駆動され、駆動装置はX、Y、θZの3軸方向に駆動可能であり、後述の制御部109により制御される。なお、駆動装置は、3軸方向に駆動可能としたが、1軸方向から6軸方向のいずれかで駆動可能としてもよい。
【0021】
照明光学系105は、不図示の光源を備え、転写用の回路パターン(レチクルパターン)が形成されたレチクル104を照明する。光源に含まれる光源としては、例えば、レーザを使用する。使用可能なレーザは、波長約193nmのArFエキシマレーザ、波長約248nmのKrFエキシマレーザ、波長約157nmのF2エキシマレーザ等である。なお、レーザの種類は、エキシマレーザに限定されず、例えば、YAGレーザを使用してもよいし、レーザの個数も限定されない。また、光源部にレーザが使用される場合、レーザ光源からの平行光束を所望のビーム形状に整形する光束整形光学系、コヒーレントなレーザをインコヒーレント化するインコヒーレント光学系を使用することが好ましい。更に、使用可能な光源は、レーザに限定されるものではなく、一又は複数の水銀ランプやキセノンランプ等のランプも使用可能である。
【0022】
また、照明光学系105は、不図示であるが、レンズ、ミラー、ライトインテグレーター、及び絞り等を含む。一般に、内部の光学系は、コンデンサーレンズ、ハエの目、開口絞り、コンデンサーレンズ、スリット、結像光学系の順で整列する。この場合、ライトインテグレーターは、ハエの目レンズや2組のシリンドリカルレンズアレイ板を重ねることによって構成されるインテグレーター等を含む。
【0023】
投影光学系106は、照明光学系105からの露光光で照明されたレチクル104上のパターンの回折光を所定倍率(例えば、1/2、1/4、若しくは1/5)で基板110上に結像、干渉させる。基板110上に形成された干渉像は、レチクルパターンとほぼ同じ像を形成する。この干渉像は一般的に光学像と呼び、光学像の形状が基板110上に形成される線幅を決める。投影光学系106は、複数の光学要素のみから構成される光学系や、複数の光学要素と少なくとも一枚の凹面鏡とから構成される光学系(カタディオプトリック光学系)が採用可能である。若しくは、投影光学系106として、複数の光学要素と少なくとも一枚のキノフォーム等の回折光学要素とから構成される光学系や、全ミラー型の光学系等も採用可能である。
【0024】
オフアクシススコープ107は、基板110の位置決め、及び基板110の複数のパターン形成領域の位置を検出するために使用される。基板ステージ102に配置された基準マークと、基板ステージ102に搭載されている基板110に形成されたマークとの相対位置を検出し計測することができる。計測部(面位置計測手段)108は、投影光学系106の焦点を基板110の露光対象領域に合わせることのできる計測装置であって、投影光学系106の焦点を基板表面に合わせる合焦装置を構成している。
【0025】
制御部109は、CPUやメモリ(記憶部)などを含み、少なくとも1つのコンピュータで構成され、露光装置100の各構成要素に回線を介して接続される。また、制御部109は、メモリに格納されたプログラムに従って、露光装置100全体の各構成要素の動作及び調整などを統括的に制御する。また、制御部109は、露光装置100の他の部分と一体で(共通の筐体内に)構成してもよいし、露光装置100の他の部分とは別体で(別の筐体内に)構成してもよいし、露光装置100とは別の場所に設置し遠隔で制御してもよい。
【0026】
ここで、露光装置100の露光シーケンスを以下に説明する。なお、当該露光シーケンスで示す各動作(処理)は、制御部109がコンピュータプログラムを実行することによって制御される。露光シーケンスを開始するに際し、基板110が露光装置100に自動的にあるいは作業者の手によってセッティングされた状態から、露光開始指令により露光装置100の動作が開始される。
【0027】
まず、最初に露光する1枚目の基板110が不図示の搬送機構によって露光装置100内の基板キャリアに搬入される(搬入工程)。次に、基板110は、搬送機構によって基板ステージ102上に搭載されたチャック1上に送り込まれ、基板保持装置101によって吸着保持される(基板保持工程)。
【0028】
次に、露光装置100に搭載されたオフアクシススコープ107によって基板110上に形成されたマークを複数個検出して基板110の倍率、回転、X軸及びY軸方向のずれ量を確定し、位置補正を行なう(位置合わせ工程)。
【0029】
次に、基板ステージ102は、搭載した基板110の最初に露光を行う所定のパターン形成領域が露光装置100の露光位置に合うように基板110を移動する。次に、計測部108により合焦後、光源から光を照射し、所定のパターン形成領域内に塗布されているレジストに対し所定の時間露光を行なう(露光工程)。なお、露光時間は例えば、約0.2秒程度である。
【0030】
次に、基板ステージ102は、基板110上で次のパターン形成領域に基板110を移動(ステップ移動)して上記と同様に露光する。露光をする全てのパターン形成領域で露光が完了するまで、同様のパターン形成処理を順次繰り返す。これにより1枚の基板110上にレチクル104に形成されたパターンを形成することができる。そして、チャック1上から不図示の回収搬送ハンドに受け渡された基板110は露光装置100内の基板キャリアに戻される(搬出工程)。なお、基板110の搬出処理後は、当該基板110に対し、例えばエッチング等の処理を行い、基板110を加工し(加工工程)、当該加工された基板110から不要な硬化物等を除去することにより物品を製造することができる。
【0031】
本実施例では上記したようにステップアンドリピート方式の露光装置を想定しているが、これに限らず、走査型露光装置に適用することも可能である。走査型露光装置に適用する場合はレチクルと基板110は露光倍率に基づいて同期してスキャンされ、スキャン中に露光が行われる。
【0032】
なお、本実施例の基板保持装置101は、露光装置100における使用に限定されるものではない。例えば、インプリント装置(リソグラフィ装置)等を含む基板処理装置、液晶基板製造装置、磁気ヘッド製造装置、半導体検査装置、液晶基板検査装置、磁気ヘッド検査装置、及びマイクロマシンの製造等においても用いることができる。
【0033】
ここで、チャック1に基板110を吸着保持させる際に、基板110とチャック1との間に異物を挟み込むことがある。例えば、数μm程の異物であっても、当該異物を挟み込むと、挟み込んだ部分の基板110は変形し、一部が盛り上がって、パターン成形不良を生じる場合もある。一例としては、有効な焦点深度が1μm以下である場合等に起こり得る。
【0034】
このような異物による挟み込みを回避するため、基板110の裏面に当接させる箇所をピン状の凸部として形成したいわゆるピンコンタクトチャック(以下、チャック)を使用して、基板110との接触面積を大幅に減少させている。以下に、従来用いられている一般的な基板保持装置で使用するチャックについて図13を参照して説明する。
【0035】
図13は、一般的な基板保持装置で使用するチャック200を例示した図である。図13(A)はチャック200を+Z方向から見た場合の平面図である。図13(B)は、図13(A)で示したチャック200の部分断面図である。図13に例示している基板保持装置は、チャック200、凸部201、隔壁(第1の隔壁)204、吸引口205により構成されうる。
【0036】
凸部201は、基板110の裏面に当接させる当接面(基板を載置した後、支持する支持面)として機能する。複数のピン状の凸部201は、複数のピン状の凸部(外周側凸部)202、複数のピン状の凸部(内周側凸部)203、及び外周側凸部202と内周側凸部203とは異なる複数のピン状の凸部とを含みうる。
【0037】
隔壁204は、外周側凸部202より内側となるようにチャック200の底部に環状に設けられている。隔壁204の高さは、外周側凸部202の上面に対して1~2μm程度低く形成されている。吸引口205は、チャック200の底部に形成される貫通穴であり、不図示の真空源(吸引部)から連通する配管等で形成される流路と接続される。
【0038】
外周側凸部202は、基板110の外周方向の裏面に当接させるべく、隔壁204より外側に配置される。外周側凸部202は、基板110と同じ半径の外周上に複数配置されている。図13に例示している外周側凸部202は、チャック200の最も外周側(最外周)に配置されている凸部である。内周側凸部203は、基板110の内周方向の裏面に当接させるべく、隔壁204より内側に配置される。内周側凸部203は、基板110と同じ半径の内周上に複数配置されている。図13に例示している内周側凸部203は、最も外周側の底部に配置される外周側凸部202から隔壁204を挟んで隣に配置されている。また、チャック200における複数のピン状の凸部201は、所定の距離(間隔、周期、幅)で格子状に配置されうる。また、隔壁204の外側に配置された外周側凸部202、及び隔壁204の内側であって隔壁204を挟んで外周側凸部202と隣り合う位置に配置された内周側凸部203を1つのグループとしてそれぞれ構成する。そして、外周側凸部202と内周側凸部203で構成される複数の凸部を、それぞれのグループを含む複数のグループから構成されるようにする。
【0039】
上記のように構成されたチャック200で基板110を吸着する方法を以下に説明する。まず、基板110をチャック200の凸部201上に載置する。これにより複数の凸部201上に基板110の裏面が当接する。次に、不図示の真空源の作動により吸引口205を介して基板110が真空吸引されることにより、基板110は、チャック200の凸部201に支持されて吸着保持される。このとき、基板110は凸部201間で真空吸着力により変形し、たわんでしまう。基板110がたわむことにより、基板110の平面度が低下し、いわゆるウエハディストーション(以下、ディストーション)が発生する。
【0040】
図13(B)に例示している、隔壁204の配置位置を一例として、外周側凸部202における基板110の平面度及びディストーションの発生量を材料力学上のモデルから図2を参照して以下に説明する。図2は、等分布荷重を受ける片側固定であって片側自由の梁の材料力学モデルを例示した図である。そして、チャック200の外周領域(外周部)における基板110のたわみの状態の材料力学上のモデルは、図2に例示するモデルに当てはまる。なお、図13(B)で例示しているように隔壁204は、内周側凸部203より外周側凸部202に近い位置に配置されている。
【0041】
基板110のヤング率をE、基板110の厚さをh、とする。次に、前述した複数のグループ(以下、複数のグループ)のそれぞれに含まれる外周側凸部202と内周側凸部203の間の距離をLとする。さらに、単位長さあたり作用力をw、たわみをy、内周側凸部203基準の径方向位置をxとする。このとき、傾斜(θ)dy/dxは以下の式(1)で表される。なお、距離Lは、複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部202と内周側凸部203の間の距離を平均値としたものを用いてもよい。
【0042】
【数1】
上記式(1)における傾斜dy/dxは、x=Lで最大となり以下の式(2)で表される。
【0043】
【数2】
ここで、上記式(2)における、マイナス表記は傾斜dy/dxが反時計回り(CCW)の回転方向であることを示している。また、真空源による吸引圧を吸引圧力Pvとして、奥行寸法をbとすると、単位長さあたりの作用力wは、以下の式(3)で表される。
【0044】
【数3】
ここで、片側自由の梁における断面二次モーメントE=1/12bhとして、上記式(3)を上記式(2)に代入すると、以下の式(4)が得られる。
【0045】
【数4】
そして、ディストーションdxは以下の式(5)で表される。
【0046】
【数5】
なお、厳密には、外周側凸部202は、吸引等により基板110に荷重が掛かった際に基板110の変形により、当該外周側凸部202の中心部(外周側凸部の中心軸上における支持面)ではなく、中心部からずれた角部で基板110を支持することになる。そのため、この場合の上記距離L(mm)は、厳密には当該外周側凸部202の基板110の中心方向に対して外周側凸部202の角部から隔壁204を挟んで当該外周側凸部の隣に配置される内周側凸部203の中心軸までの距離となる。上記ディストーションを算出する上では、距離Lにおける距離が長い方がディストーションは大きくなるため、安全側で計算すべくディストーションの算出には上記の距離Lを採用している。
【0047】
ここで、一例として一般的なチャックの設計値で、E=160GPa、Pv=0.1MPa、L=2mm、h=0.7mmを上記式(5)に代入すると、dx=1.29nmが得られる。例えば、理想的な水平の基準に対するオーバーレイの誤差の許容量が1.5nmを例にすると、当該許容量が0.29nmしか残らないことになる。さらに、例えば、理想的な水平の基準に対するオーバーレイの誤差の許容量が例えば3nmや5nm等であっても、1.29nmのディストーションは基板110にパターンを形成する処理を実施する上では影響が大きい。そのため基板110を吸着保持後、パターン形成等の処理を実施していくには、ディストーションを減少させた状態で基板110を吸着保持する必要がある。
【0048】
そこで、本実施例では、後述する凸部2に対して隔壁5の配置位置を所定の関係とすることで、ディストーションを減少させることが可能なチャックを提供することができる。以下に、本実施例の基板保持装置101について図3図5を参照して詳細に説明する。
【0049】
図3は、本実施例の基板保持装置101を例示する図である。図3(A)は基板保持装置101を+Z方向からみた平面図である。図3(B)は図3(A)の基板保持装置101の部分断面図である。以下、図3を参照して本実施例の基板保持装置101を詳細に説明する。本実施例の基板保持装置101はチャック1と不図示の吸引部、及び制御部を含みうる。
【0050】
チャック1は、基板110より小さい径で円形状に構成され、複数のピン状の凸部2と、隔壁(第1の隔壁)5と、吸引口(第1の吸引口)6とを含みうる。また、チャック1は基板ステージ102上に配置される。
【0051】
凸部2は、チャック1の底部に複数配置されるピン状の凸部(ピン)であって、基板110をチャック1上に載置した際には、凸部2の上面に基板110の裏面が当接される。凸部2は、チャック1の底部に所定の距離L(mm)で格子状に底部に配置される。凸部2の径はチャック1の仕様に応じ様々であるが、一般的な径はφ0.2mm程度である。また、凸部2の配列としては格子状の配列以外にも、同心円状に配列することもでき、角度をつけた配列、例えば60度の千鳥で格子状配列するようにしてもよい。また、ランダム配列とすることもでき、あるいはそれらを組み合わせた配列であってもよい。
【0052】
凸部2は、複数のピン状の凸部(外周側凸部、第1凸部)3及び複数のピン状の凸部(内周側凸部、第2凸部)4、及び外周側凸部3と内周側凸部4とは異なる複数のピン状の凸部(第3凸部)を含みうる。外周側凸部3は、基板110の外周方向の裏面に当接させるべく、隔壁5より外側に配置される。外周側凸部3は、基板110と同じ半径の外周上に複数配置されている凸部である。図3に例示している外周側凸部3は、チャック1の最も外周側(最外周)に配置されている。内周側凸部4は、基板110の内周方向の裏面に当接させるべく、隔壁5より内側に配置される。内周側凸部4は、基板110と同じ半径の内周上に複数配置されている。図3に例示している内周側凸部4は、最も外周側の底部に配置される外周側凸部3から隔壁5を挟んで隣に配置されている。本実施例では、第3凸部を除いた複数の凸部2を、隔壁5の外側に配置された外周側凸部3、及び隔壁5の内側であって隔壁5を挟んで外周側凸部3と隣り合う位置に配置された内周側凸部4を1つのグループとする複数のグループから構成されるようにする。
【0053】
隔壁5は、複数の凸部2の一部を囲うように円環状にチャック1の底部に少なくとも1つ配置される。本実施例の隔壁5は、隔壁5を挟んで外周側凸部3と隣り合う内周側凸部4に近い位置に配置される。隔壁5は、複数の内周側凸部4よりも低く形成される。複数の内周側凸部4の高さとは、例えば平均の高さである。また、隔壁5の高さを特定の内周側凸部4の高さ、例えば、複数の内周側凸部4のうち最も高さが低い内周側凸部4より低くしてもよい。また、隔壁5の高さを、複数の凸部2の上面から1~2μm程度低く形成してもよい。1~2μm程度低く形成したとしても、1~2μm程度の隙間では、後述する吸引部による基板110の裏面とチャック1との空間(領域)を吸引して基板110を吸着保持する際の真空圧の低下は僅かであって問題とならない。また、1~2μm程度の差よりも小さい径のゴミやパーティクル等の異物が隔壁5に付着しても、付着した異物が基板110の裏面に接触する確率は非常に低いため、隔壁5の高さを複数の複数の凸部2の上面から1~2μm程度低く形成としても問題とならない。
【0054】
吸引口6は、チャック1に形成された貫通穴であって、本実施例では、後述する吸引部が基板110の裏面とチャック1との間の空間を吸引(排気)する際の吸引口として機能する。なお、吸引口6は、図3では1つしか設けられていないが、これに限らず1つ以上の吸引口6をチャック1に形成するようにしてもよい。
【0055】
吸引部は、基板110の裏面とチャック1との間の空間を真空吸引等で吸引可能に構成される不図示の真空源である。吸引部は制御部109からの信号によって動作を開始し、吸引部に接続されている配管等の流路と吸引口6を介して、基板110の裏面とチャック1との間の空間を吸引し、基板110をチャック1に対し吸着させることができる。なお、吸引部は基板保持装置101に配置されることに限らず、基板保持装置101の外部または露光装置100の外部に配置されていてもよい。
【0056】
図4は、本実施例の隔壁5の配置位置における材料力学モデルを例示した図である。図4(A)は、本実施例の基板保持装置101の部分断面図である。図4(B)は、図4(A)の部分断面図における材料力学モデルを例示した図である。
【0057】
図4(B)では、内周側凸部4で傾斜dy/dxが0(零)なのでここを固定端で近似したものである。また、図4(B)では、内周側凸部4から隔壁5の位置までの間に真空圧Pによる力が等分布荷重として作用し、隔壁5を挟んで内周側凸部4と隣り合う外周側凸部3までは力が作用しない。そのため、外周側凸部3では傾斜dy/dxが自由となるので、ここを自由端で近似したものである。これは、図2と同様にいわゆる不静定はりであり、力のつりあい、モーメントのつり合いに加えて外周側凸部3における変位=0の条件を与えることにより固定端反力Rfと自由端反力Rpと、固定端におけるモーメントMfを計算することができる。以下に図4(B)における材料力学モデルを使用した、本実施例の基板保持装置101におけるディストーションの算出について説明する。
【0058】
たわみをyとし、隔壁5を挟んで複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部3と隣り合う内周側凸部4のうち当該外周側凸部3と最も直線距離で近い位置に配置されている内周側凸部4から隔壁5までの距離を、距離sとする。次に、複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部3と内周側凸部4の間の距離を、距離Lとする。なお、距離Lは、複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部3と内周側凸部4の間の距離を平均値としたものを用いてもよい。このとき、たわみの方程式は上記したRf、Rp、Mfを用いて、0<x≦sとした場合において、以下の式(6)で表すことができる。
【0059】
【数6】
そして、s<x≦Lとした場合では、以下の式(7)で表すことができる。
【数7】
【0060】
次に、上記式(7)を積分して、固定端でdy/dx=0の条件を入れることで、以下の式(8)が得られる。
【0061】
【数8】
次に、上記式(7)を積分して、隔壁5の配置位置での傾斜dy/dxが連続という条件を入れることで、以下の式(9)が得られる。
【0062】
【数9】
【0063】
また、Rf、Mfを前述の変位つりあい、力つり合い、及びモーメントつりあいから計算するとu=s/Lをパラメータとして、以下の式(10)と式(11)が得られる。
【0064】
【数10】
【0065】
そして、x=Lとして、上記式(3)と断面二次モーメントE=1/12bhを上記式(9)に代入すると、以下の式(12)が得られる。
【0066】
【数11】
ここで、上記式(12)における傾斜dy/dxは時計回り(CW)を+(プラス)表記としている。なお、予め反時計回り(CCW)を+と定義しているなら-1を掛ければ同様となる。また、傾斜dy/dxに厚さh/2を掛けるとディストーションdxが以下の式(13)によって得られる。
【0067】
【数12】
【0068】
次に、上記式(13)で得られるディストーションdxに基づいて、以下に示す式(14)を満たすように、uを決定する。
【0069】
【数13】
上記式(14)における補正係数とは実質的な距離Lを考慮した係数であって、凸部2の配置位置により異なるが、1に近い数字である。
【0070】
また平坦度仕様をdzとして、基板110の最も外周側に配置されている外周側凸部3よりも外周方向(外側方向)に突出している部分の長さ、いわゆるオーバーハングする長さをohとするとき、以下の式(15)を満たすように、uを決定してもよい。
【数14】
【0071】
図5は、本実施例の隔壁5の配置位置に対するディストーションの関係を例示した図である。図5におけるグラフは、補正係数×(h/2)×PvL/4Eh(3u-4u)に、例えば一般的なチャック1の設計値である、E=160GPa、Pv=0.1MPa、L=2mm、h=0.7mmを代入して算出した値を縦軸としている。また、uを変数として横軸としている。
【0072】
図5によれば、u<0.5とすれば最大でもディストーションdxは0.4nmとすることができ、基板110を吸着保持して基板110にパターンを形成する処理等を実施する上での影響を大幅に少なくすることができる。
【0073】
また、実際には複数の凸部2は2次元配置されており実際の凸部2間の距離Lは前述の凸部の角部当たりによる減少も含めると、上記で定義した距離Lより実質的に小さく(距離が短い)なる。そのため、上記ディストーションの算出で使用した距離Lであれば、実際の配置よりも大きい(距離が長い)ため、ディストーションは大きくなる。本実施例では、安全側で計算すべくディストーションの算出には上記の距離Lを採用している。
【0074】
以上、本実施例では、u<0.5を満たすように、隔壁5の配置位置を調整する(凸部2に対して隔壁5の配置位置を所定の関係とする)ことで、ディストーションを減少させることができる。これにより、パターン形成等の処理を実施して行く上で、最適な状態で基板110を吸着保持することが可能なチャックを提供することができる。
【0075】
<実施例2>
本実施例の基板保持装置101は、実施例1のチャック1における隔壁(第1の隔壁)5とは異なる隔壁として補助隔壁(第2の隔壁)7と、吸引口6とは異なる吸引口である吸引口(第2の吸引口)8をさらに設けた基板保持装置である。即ち、実施例2の基板保持装置101では第1の隔壁は隣り合う2重の隔壁から構成されるように構成している。なお、本実施例においてはこの2重の隔壁の内の外側の隔壁を補助隔壁(第2の隔壁)と呼ぶ。以下に、図6を参照して本実施例の基板保持装置101を説明する。図6は、本実施例の基板保持装置101を例示する図である。図6(A)は基板保持装置101を+Z方向から見た平面図である。図6(B)は図6(A)の基板保持装置101の部分断面図である。なお、本実施例の基板保持装置101の構成は、実施例1の基板保持装置101と同様の構成であるため重複する箇所については説明を省略する。
【0076】
本実施例のチャック1は、実施例1と同様に複数のピン状の凸部2、隔壁5、吸引口6を含み、さらに補助隔壁7及び吸引口8を含みうる。
【0077】
補助隔壁7は、隔壁5と、隔壁5の外周側の隣に配置された外周側凸部3の間に配置される。即ち、内周側凸部4よりも外周側凸部3に近い位置に配置される。なお、この際の補助隔壁7の配置位置は実施例1で示した複数のグループ(以下、複数のグループ)に含まれる凸部2の位置の平均値同士を比較した上で配置される。また、補助隔壁7は、距離Lの中心位置より隔壁5の外周側の隣に配置された外周側凸部3に可能な限り近い位置に配置することが好ましい。本実施例においては、u≒1となるように補助隔壁7を配置する。なお、隔壁5の配置位置としては、u<0.5を満たすように配置することは実施例1と同様である。また、補助隔壁7の高さは、複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部3の高さよりも低く形成される。複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部3の高さとは、例えば平均の高さである。また、補助隔壁7の高さを特定の外周側凸部3の高さ、例えば、複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部3のうち最も高さが低い外周側凸部3より低くしてもよい。
【0078】
吸引口8は、実施例1の吸引口6と同様の機能を有し、隔壁5と補助隔壁7の間に形成される。吸引口8は、実施例1の吸引口6と同様に配管等の流路によって吸引部と接続されている。さらに本実施例の基板保持装置101における吸引部は、吸引のための流路の開閉をする不図示のバルブ(切替弁)を、吸引口6及び吸引口8と吸引部とを接続する流路にそれぞれ備えうる。本実施例では、吸引口6と吸引部との間に配置されるバルブを第1のバルブ、吸引口8と吸引部との間に配置されるバルブを第2のバルブとする。
【0079】
本実施例では、基板110をチャック1に吸着保持させる際に、吸引口6及び吸引口8を介して吸引する。以下に、本実施例における基板110の吸引処理について説明する。なお、吸引処理は基板保持装置101の不図示の制御部がコンピュータプログラムを実行することによって制御される。
【0080】
まず、不図示の制御部は、吸引部に対し動作指令を送信して吸引(排気)を開始させる。吸引部が吸引を開始することで、吸引口6及び吸引口8を介して、基板110の裏面とチャック1との空間を吸引する。これにより、補助隔壁7より基板110の内側の面積が吸引面積となり、より大きな吸引力を発生させ、反りの大きな基板であっても反りの矯正することが可能になる。なお、基板110の反りが矯正されて吸引が完了した時点でディストーションが発生している。
【0081】
次に、不図示の制御部は、第2のバルブを制御し、吸引口8を介した領域の吸引を停止する。これにより吸引口8から隔壁5と補助隔壁7との間の空間が大気開放され、吸引されている領域が、吸引口6を介した領域である隔壁5より基板110の内側の領域に遷移し、ディストーションが低減する。なお、これらの吸引処理における各種制御は制御部109によって行われてもよい。
【0082】
一度矯正された基板110は、基板110の外周側(外周部)の吸引を停止または吸引力を減じたとても、元に戻ってしまう確率は低い。よって、ディストーションは小さいままに保たれる。
【0083】
以上、本実施例では、実施例1と同様にディストーションの減少に加え、基板110の反りを減少させることができる。これにより、パターン形成等の処理を実施して行く上で、最適な状態で基板110を吸着保持することが可能なチャックを提供することができる。
【0084】
また、一部の反りの大きな基板110では吸引口8を大気解放したときに反りが戻る場合も少なからずある。この場合は、基板110の反りの状況により吸引口8を介してα×マイナス1気圧(αは1より小さい整数)程度の負圧を吸引部によって付加するようにすればよい。あるいは、吸引部により基板110の裏面とチャック1との空間を吸引する前に吸引口8からの圧力をマイナス1気圧程度の負圧とし、吸引口8からの圧力をα×マイナス1気圧(αは1より小さい整数)の負圧とする。これにより、基板110の矯正前後の切り替えをする必要はなくなり、反りが戻ることはなくなる。
【0085】
<実施例3>
本実施例では、後述する内周側凸部4と外周側凸部3の高さを所定の関係とすることで、ディストーションを減少させることが可能なチャックを提供することができる。以下に、本実施例の基板保持装置101について図7図9を参照して詳細に説明する。
【0086】
図7は、本実施例の基板保持装置101を例示する図である。図7(A)は基板保持装置101を+Z方向からみた平面図である。図7(B)は図7(A)の基板保持装置101の部分断面図である。以下、図7を参照して本実施例の基板保持装置101を詳細に説明する。本実施例の基板保持装置101はチャック1と不図示の吸引部、及び制御部を含みうる。
【0087】
チャック1は、基板110より小さい径で円形状に構成され、複数のピン状の凸部2と、隔壁(第1の隔壁)5と、吸引口(第1の吸引口)6とを含みうる。また、チャック1は基板ステージ102上に配置される。
【0088】
凸部2は、チャック1の底部に複数配置されるピン状の凸部であって、基板110をチャック1上に載置した際には、凸部2の上面に基板110の裏面が当接される。凸部2は、チャック1の底部に所定の距離L(mm)で格子状に底部に配置される。凸部2の径はチャック1の仕様に応じ様々であるが、一般的な径はφ0.2mm程度である。また、凸部2の配列としては格子状の配列以外にも、同心円状に配列することもでき、角度をつけた配列、例えば60度の千鳥で格子状配列するようにしてもよい。また、ランダム配列とすることもでき、あるいはそれらを組み合わせた配列であってもよい。
【0089】
凸部2は、複数のピン状の凸部(外周側凸部、第1凸部)3及び複数のピン状の凸部(内周側凸部、第2凸部)4、及び外周側凸部3と内周側凸部4とは異なる複数のピン状の凸部(第3凸部)を含みうる。外周側凸部3は、基板110の外周方向の裏面に当接させるべく、隔壁5より外側に配置される。外周側凸部3は、基板110と同じ半径の外周上に複数配置されている凸部である。図7に例示している外周側凸部3は、チャック1の最も外周側(最外周)に配置されている。内周側凸部4は、基板110の内周方向の裏面に当接させるべく、隔壁5より内側に配置される。内周側凸部4は、基板110と同じ半径の内周上に複数配置されている。図7に例示している内周側凸部4は、最も外周側の底部に配置される外周側凸部3から隔壁5を挟んで隣に配置されている。本実施例では、第3凸部を除いた複数の凸部2を、隔壁5の外側に配置された外周側凸部3、及び隔壁5の内側であって隔壁5を挟んで外周側凸部3と隣り合う位置に配置された内周側凸部4を1つのグループとする複数のグループから構成されるようにする。後述するが、当該複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部3は内周側凸部4より低い高さとする。
【0090】
隔壁5は、複数の凸部2の一部を囲うように円環状にチャック1の底部に少なくとも1つ配置される。吸引口6は、チャック1に形成された貫通穴であって、本実施例では、後述する吸引部が基板110の裏面とチャック1との間の空間を吸引(排気)する際の吸引口として機能する。なお、吸引口6は、図7では1つしか設けられていないが、これに限らず1つ以上の吸引口6をチャック1に形成するようにしてもよい。
【0091】
吸引部は、基板110の裏面とチャック1との間の空間を真空吸引等で吸引可能に構成される不図示の真空源である。吸引部は制御部109からの信号によって動作を開始し、吸引部に接続されている配管等の流路と吸引口6を介して、基板110の裏面とチャック1との間の空間を吸引し、基板110をチャック1に対し吸着させることができる。なお、吸引部は基板保持装置101に配置されることに限らず、基板保持装置101の外部または露光装置100の外部に配置されていてもよい。
【0092】
次に、前述した複数のグループ(以下、複数のグループ)のそれぞれに含まれる外周側凸部3の高さをhoとする。そして、複数のグループのそれぞれに含まれる内周側凸部4の高さをhiとして、望ましいhoの値について図8及び図9を参照して以下に説明する。なお、本実施例では、hoは複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部3の平均の高さとし、hiは複数のグループのそれぞれに含まれる内周側凸部4の平均の高さとする。図8は、本実施例の外周側凸部3を無くした場合の片持ち梁における材料力学モデルを例示している図である。図8に示すモデルは片持ち梁となっている。図9は、本実施例のチャック1の断面図を例示している図である。
【0093】
図9では、図8に示しているような外周側凸部3を無くした場合の基板110のたわみのモデル2minと、ho=hiの際の基板110のたわみモデル2jを示している。
【0094】
ここで、図9に例示しているたわみモデルの傾斜をdy/dx、たわみをy、内周側凸部4基準の径方向位置をx、複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部3と内周側凸部4の間の距離をLとする。これにより、u=x/Lに対しての傾斜dy/dxを以下の式(16)、たわみyを以下の式(17)で表すことができる。
【数15】
【0095】
そして、u=1のとしたとき、ymaxは、以下の式(18)で表すことができる。
【数16】
上記式(18)は、hoをhi-(PvL)/(Eh)よりも小さくすると、基板110の裏面が外周側凸部3の支持面に触れなくなることを示している。そのため、以下の式(19)を満たすことで、hi=hoとしたときよりも傾斜dy/dxを低減することができ、ディストーションを低減することができる。
【数17】
【0096】
また、隔壁5の高さは、複数のグループのそれぞれに含まれる内周側凸部4よりは低くして、且つ複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部3以下の高さとする。隔壁5を複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部3より高くしてしまうと、隔壁5が複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部3と同様の機能を果たしてしまうためである。なお、隔壁5は、複数のグループのそれぞれに含まれる内周側凸部4よりも複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部3に近い位置に配置される。この際の隔壁5の配置位置は複数のグループのそれぞれに含まれる凸部の位置の平均値同士を比較した上で配置される。また、隔壁5は複数のグループに含まれる外周側凸部3に可能な限り近い位置に配置することが好ましく、本実施例においては、u≒1となるように隔壁5を配置する。
【0097】
以上、本実施例では、hi-ho<(PvL)/(Eh)を満たすように、hoに対してhiの高さを設定することで、ディストーションを減少させることができる。これにより、パターン形成等の処理を実施して行く上で、最適な状態で基板110を吸着保持することが可能なチャックを提供することができる。
【0098】
なお、例えば、上記式(18)に、Pv=0.1013MPa、L=2mm、E=160GPaを代入すると、h=0.7mmの時、ymax=44.3nmとなる。この場合は、hi-hoは例えば、45nm程度より小さく設計することでディストーションを減少させることができる。
【0099】
<実施例4>
本実施例の基板保持装置101は、実施例3で示した複数のグループ(以下、複数のグループ)のそれぞれに含まれる外周側凸部3の断面積を、複数のグループのそれぞれに含まれる内周側凸部4の断面積より小さくした基板保持装置である。なお、基板保持装置101の構成は、実施例3の基板保持装置101と同様の構成であるため重複する箇所については説明を省略する。
【0100】
本実施例では、複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部3の断面積をSo、複数のグループのそれぞれに含まれる内周側凸部4の断面積をSiとした場合、Si>Soとなるように外周側凸部3と内周側凸部4を設計し、加工を行う。これにより、加工時に外周側凸部3の加工抵抗が減少し、凸部の加工が容易になる。なお、本実施例では、Soは複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部3の断面積の平均値とし、Siは複数のグループのそれぞれに含まれる内周側凸部4の断面積の平均値とする。
【0101】
さらに、加工抵抗が減少することで、複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部3の除去量が多くなり、結果として、hi>hoに寄与する。さらに複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部3の鉛直方向の剛性が複数のグループのそれぞれに含まれる内周側凸部4のそれよりも小さくなる。これにより、吸引部で吸引した際に基板110の鉛直方向の圧縮量が増えて、結果としてhi>hoに寄与する。なお、凸部2の加工としては例えばラップ加工による加工が考えられるが、これに限らず、Si>Soとなるような加工を行える方法であれば他の方法を用いて加工してもよい。
【0102】
以上、本実施例では、Si>Soとなるように複数のグループのそれぞれに含まれる外周側凸部3と複数のグループのそれぞれに含まれる内周側凸部4の加工を行う。これにより、加工精度の向上や加工時間の短縮が図れる。さらに、実施例3と同様にディストーションを減少させることができ、パターン形成等の処理を実施して行く上で、最適な状態で基板110を吸着保持することが可能なチャックを提供することができる。
【0103】
<実施例5>
本実施例の基板保持装置101は、実施例3のチャック1における隔壁(第1の隔壁)5とは異なる隔壁として補助隔壁(第2の隔壁)7と、吸引口6とは異なる吸引口である吸引口(第2の吸引口)8をさらに設けた基板保持装置である。即ち、実施例5の基板保持装置101では第1の隔壁は隣り合う2重の隔壁から構成されるように構成している。なお、本実施例においてはこの2重の隔壁の内の外側の隔壁を補助隔壁(第2の隔壁)と呼ぶ。以下に、図10を参照して本実施例の基板保持装置101を説明する。図10は、本実施例の基板保持装置101を例示する図である。図10(A)は基板保持装置101を+Z方向から見た平面図である。図10(B)は図10(A)の基板保持装置101の部分断面図である。なお、本実施例の基板保持装置101の構成は、実施例3の基板保持装置101と同様の構成であるため重複する箇所については説明を省略する。
【0104】
本実施例のチャック1は、実施例3と同様に複数のピン状の凸部2、隔壁5、吸引口6を含み、さらに補助隔壁7及び吸引口8を含みうる。
【0105】
補助隔壁7は、隔壁5と、隔壁5の内周側の隣に配置された内周側凸部4の間に配置される。補助隔壁7は、距離Lの中心位置より隔壁5の内周側の隣に配置された内周側凸部4に近い位置に配置することが好ましい。例えば、u<0.5を満たすように配置する。なお、隔壁5の配置位置としては、u≒1となるように配置することは実施例3と同様である。
【0106】
補助隔壁7の高さは、複数のグループのそれぞれに含まれる内周側凸部4の高さよりも低く形成される。複数のグループのそれぞれに含まれる内周側凸部4の高さとは、例えば平均の高さである。また、補助隔壁7の高さを特定の内周側凸部4の高さ、例えば、複数のグループのそれぞれに含まれる内周側凸部4のうち最も高さが低い内周側凸部4より低くしてもよい。また、補助隔壁7の高さを、複数の凸部2の上面から1~2μm程度低く形成してもよい。1~2μm程度低く形成したとしても、1~2μm程度の隙間では、吸引部による基板110の裏面とチャック1との空間(領域)を吸引して基板110を吸着保持する際の真空圧の低下は僅かであって問題とならない。また、1~2μm程度の差よりも小さい径のゴミやパーティクル等の異物が補助隔壁7に付着しても、付着した異物が基板110の裏面に接触する確率は非常に低い。そのため、補助隔壁7の高さを複数の複数の凸部2の上面から1~2μm程度低く形成としても問題とならない。
【0107】
吸引口8は、実施例3の吸引口6と同様の機能を有し、隔壁5と補助隔壁7の間に形成される。吸引口8は、実施例3の吸引口6と同様に配管等の流路によって吸引部と接続されている。さらに本実施例の基板保持装置101における吸引部は、吸引のための流路の開閉をする不図示のバルブ(切替弁)を、吸引口6及び吸引口8と吸引部とを接続する流路にそれぞれ備えうる。本実施例では、吸引口6と吸引部との間に配置されるバルブを第1のバルブ、吸引口8と吸引部との間に配置されるバルブを第2のバルブとする。
【0108】
本実施例では、基板110をチャック1に吸着保持させる際に、吸引口6及び吸引口8を介して吸引する。以下に、本実施例における基板110の吸引処理について説明する。なお、吸引処理は基板保持装置101の不図示の制御部がコンピュータプログラムを実行することによって制御される。
【0109】
まず、不図示の制御部は、吸引部に対し動作指令を送信して吸引(排気)を開始させる。吸引部が吸引を開始することで、吸引口6及び吸引口8を介して、基板110の裏面とチャック1との空間を吸引する。これにより、隔壁5より基板110の内側の面積が吸引面積となり、より大きな吸引力を発生させ、反りの大きな基板であっても反りの矯正することが可能になる。なお、基板110の反りが矯正されて吸引が完了した時点でディストーションが発生している。
【0110】
次に、不図示の制御部は、第2のバルブを制御し、吸引口8を介した領域の吸引を停止する。これにより吸引口8から隔壁5と補助隔壁7との間の空間が大気開放され、吸引されている領域が、吸引口6を介した領域である補助隔壁7より基板110の内側の領域に遷移し、ディストーションが低減する。なお、これらの吸引処理における各種制御は制御部109によって行われてもよい。
【0111】
一度矯正された基板110は、基板110の外周側(外周部)の吸引を停止または吸引力を減じたとても、元に戻ってしまう確率は低い。よって、ディストーションは小さいままに保たれる。
【0112】
以上、本実施例では、実施例3と同様に、ディストーションの減少に加え、基板110の反りを現減少させることができる。これにより、パターン形成等の処理を実施して行く上で、最適な状態で基板110を吸着保持することが可能なチャックを提供することができる。
【0113】
また、一部の反りの大きな基板110では吸引口8を大気解放したときに反りが戻る場合も少なからずある。この場合は、基板110の反りの状況により吸引口8を介してα×マイナス1気圧(αは1より小さい整数)程度の負圧を吸引部によって付加するようにすればよい。あるいは、吸引部により基板110の裏面とチャック1との空間を吸引する前に吸引口8からの圧力をマイナス1気圧程度の負圧とし、吸引口8からの圧力をα×マイナス1気圧(αは1より小さい整数)の負圧とする。これにより、基板110の矯正前後の切り替えをする必要はなくなり、反りが戻ることはなくなる。
【0114】
また、例えば、上記各実施例の基板保持装置101のうち少なくとも2つを組わせるようにしてもよい。つまり、図3図6図7、及び図10に図示されたチャック1のうち少なくとも2つを組み合わせたチャックを用いた基板保持装置101としてもよい。
【0115】
なお、上記各実施例においては、凸部2は、チャック1の底部に所定の距離で格子状に底部に配置されているが、これに限らない。例えば、基板110の内周側と外周側それぞれにおいて凸部2間の距離を任意に設定してもよい。さらに、均一の距離ではなく、不均一な距離としてしてもよい。
【0116】
また、上記各実施例におけるチャック1は、真空吸着方式のものとしているが、これに限らず、例えば、静電チャック方式のものでもよいし、真空吸着方式と静電チャック方式など他の方式を併用するものでもよい。それらの場合、本実施例の真空圧Pは、他の方式の吸着力、あるいはそれに真空圧を足したものに置き換えればよい。
【0117】
また、上記各実施例におけるチャック1は、ピンチャックを用いているが、これに限らず、その他の形状でもよい。例えば、吸着溝である同心円状の環状凹部と基板支持面となる同心円状の環状凸部が交互に構成された、いわゆるリング状チャックであってもよい。また、隔壁は、隔壁5と補助隔壁7のみに限らず、隔壁5と補助隔壁7以外の隔壁をチャック1に配置するようにしてよい。
【0118】
<物品製造方法に係る実施例>
次に、上述した各実施例の露光装置100を利用したデバイスの製造方法の実施形態を説明する。図11は、微小デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造のフローを示す。ステップ1(回路設計)ではデバイスのパターン設計を行なう。
【0119】
ステップ2(マスク製作)では設計したパターンを形成したマスク(モールド、型)を製作する。一方、ステップ3(ウエハ製造)ではシリコンやガラス等の材料を用いてウエハ(基板)を製造する。ステップ4(ウエハプロセス)は前工程と呼ばれ、上記用意したマスクとウエハを用いて、リソグラフィ技術によってウエハ上に実際の回路を形成する。
【0120】
次のステップ5(組立)は後工程と呼ばれ、ステップ4によって作製されたウエハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ6(検査)ではステップ5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行なう。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップ7)される。
【0121】
図12は、上記ウエハプロセスの詳細なフローを示す。ステップ11(酸化)ではウエハの表面を酸化させる。ステップ12(CVD)ではウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ13(電極形成)ではウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ14(イオン打込み)ではウエハにイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)ではウエハにレジストを塗布する。ステップ16(露光)では上述した投影露光装置によってマスクの回路パターンをウエハの複数のパターン形成領域に並べて焼き付け露光する。ステップ17(現像)では露光したウエハを現像する。ステップ18(エッチング)では現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)ではエッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行なうことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
【0122】
このように、本実施例のチャック1を用いたデバイスの製造方法によれば、基板の歪みや反りが抑制されるので、デバイスの精度や歩留まり等が向上する。これにより、従来は製造が困難であった高集積度のデバイスを安定的に低コストで製造することができる。
【0123】
<その他の実施例>
以上、本発明をその好適な実施例に基づいて詳述してきたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨に基づき種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0124】
また、上記実施例における制御の一部または全部を上述した実施例の機能を実現するコンピュータプログラムをネットワーク又は各種記憶媒体を介して基板保持装置101や基板処理装置等に供給するようにしてもよい。そしてその基板保持装置101や基板処理装置等におけるコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。その場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することとなる。
【符号の説明】
【0125】
101 基板保持装置
1 チャック
2 凸部
3 凸部(外周側凸部)
4 凸部(内周側凸部)
5 隔壁
6 吸引口

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13