(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20241105BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20241105BHJP
A61L 29/04 20060101ALI20241105BHJP
A61L 29/08 20060101ALI20241105BHJP
A61L 29/12 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
A61M25/00 612
A61M25/10
A61L29/04 110
A61L29/08 100
A61L29/12
(21)【出願番号】P 2021131975
(22)【出願日】2021-08-13
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 亮
(72)【発明者】
【氏名】増渕 果奈
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-528855(JP,A)
【文献】特開平05-156203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00 - 25/18
A61L 29/04
A61L 29/08
A61L 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴムからなるカテーテルチューブを有するカテーテルであって、
前記カテーテルチューブの外周に、シランカップリング剤層、及び架橋ポリウレタン網状体を含む水溶性高分子層をこの順に備え
、
前記架橋ポリウレタン網状体の含有量が、前記水溶性高分子層における水溶性高分子の総質量に対し、10質量%以下であるカテーテル。
【請求項2】
前記シランカップリング剤層が、アミノ基及びイソシアネート基の少なくとも一方を有するシランカップリング剤を含有する請求項1記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、例えば、排尿が困難な患者の導尿、手術や絶対安静時の導尿、残尿量の測定等の目的で、フォーリーカテーテルが使用されている。フォーリーカテーテルは、柔軟なチューブ部分を尿道に通し、挿入後は膀胱内で先端のバルーンを膨張させて留置して使用される。フォーリーカテーテルは、通常シリコーン等からなり、尿道を傷つけないように、表面部分の摩擦が低いことが求められている。このような要求に対して、カテーテルの表面に潤滑性を付与する水溶性高分子を含むコーティングを形成する方法が知られている。例えば、特許文献1には、ポリビニルピロリドンとポリウレタンとのインターポリマーを表面に形成する方法が開示されている。また、特許文献2には、医療器具の樹脂成形部の表面に水溶性高分子を含む親水層、及び、樹脂成形部と親水層との間の接着性を向上させるために、イソシアネート化合物、ビニル化合物等を含む中間層を設けることが開示されている。さらに、樹脂成形部にシランカップリング剤を含有させ、樹脂成形部の表面をUV処理することで、樹脂成形部と中間層との接着を強固にすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-156203号公報
【文献】特開2019-72103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、長期間の使用により表面の親水層が剥がれ、カテーテルの潤滑性が低減する場合がある。このようなことから、親水層を有するカテーテルにおいて、長期に亘って潤滑性を維持するためには、更なる改良が求められる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、長期間に亘って潤滑性を有するカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のカテーテルは、シリコーンゴムからなるカテーテルチューブを有するカテーテルであって、カテーテルチューブの外周に、シランカップリング剤層、及び架橋ポリウレタン網状体を含む水溶性高分子層をこの順に備えるカテーテルである。
【0006】
シランカップリング剤層は、アミノ基及びイソシアネート基の少なくとも一方を有するシランカップリング剤を含有することが好ましい。
【0007】
架橋ポリウレタン網状体の含有量は、水溶性高分子層における水溶性高分子の総質量に対し、50質量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカテーテルによれば、長期間に亘って潤滑性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態のバルーンカテーテルを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のカテーテルの一実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態は例示の目的で提示するものであり、本発明は、以下に示す実施形態に何ら限定されるものではない。
【0011】
[カテーテル]
本実施形態のカテーテル10は、フォーリーカテーテルであって、
図1及び
図2に示すように、カテーテルチューブ11の外周に、シランカップリング剤層20及び架橋ポリウレタン網状体を含む水溶性高分子層30をこの順に備える。そして、カテーテルチューブ11の先端部には、尿を取り入れる側孔12及びバルーン部19を備える。
カテーテルチューブ11は、内部に第1ルーメン14と第2ルーメン15を有する。第1ルーメン14は、側孔12と連通する内部導通孔である。側孔12から取り入れられた膀胱内の尿は、排尿用ファネル18を介して採尿バッグ(不図示)に排出される。第2ルーメン15は、バルーンチューブ(不図示)を膨らませるための媒体、例えば、生理食塩水、殺菌精製水、空気等が送排出される内部導通孔である。第2ルーメン15は、第2ルーメン15の内部からカテーテルチューブ11の外壁に至る貫通孔13を有する。第2ルーメン15には、バルブ17によって、例えば空気が第2ルーメン15に圧入され、圧入された空気は、第2ルーメン15から貫通孔13を通ってカテーテルチューブ11とバルーンチューブ(不図示)との間に供給される。これにより、バルーンチューブが拡張するとともに、空気が内部に滞留することでバルーンが形成される。
【0012】
カテーテルチューブ11の側面には、長手方向Xに沿って線状に造影剤が配合された造影部分16が設けられていてもよい。
【0013】
<カテーテルチューブ>
カテーテルチューブ11は、シリコーンゴムからなるものである。カテーテルチューブ11のゴム硬度(JIS K 6253-3)は、体内挿入時の痛みを軽減する観点から、A30以上A80以下であることが好ましく、A40以上A70以下であることがより好ましい。
【0014】
カテーテルチューブ11は、シリコーンゴム組成物を、一次押出成形及び加硫処理により作製することができる。一次押出成形は、公知の水平型押出成形機及び垂直型押出成形機で行うことができる。押出成形工程及び加硫処理では、垂直型押出機と加硫機を使用することが好ましい。垂直型押出機と加硫機を使用することにより、チューブの表面に微細な接触痕跡が残らないため、バルーンの膨張時に偏心が発生せず、又はバルーンの破裂を防止できる。
シリコーンゴム組成物としては、例えば、付加硬化型のミラブル型シリコーンゴム組成物が挙げられる。シリコーンゴム組成物には、架橋剤、触媒等の硬化剤を含有してもよい
。
【0015】
(改質処理)
カテーテルチューブ11の表面11aは、シランカップリング剤層20を形成する前に、改質処理されることが好ましい。改質処理としては、シリコーンゴムの置換基であるメチル基を水酸基に置換可能な低圧水銀UV照射処理、エキシマUV照射処理、プラズマ処理等が好ましい。水酸基に置換されることで、後述するシランカップリング剤の加水分解反応で生成した水酸基と脱水縮合反応して共有結合が形成される。これにより、シランカップリング剤層20とカテーテルチューブ11との接着が強固となる。
【0016】
<シランカップリング剤層>
シランカップリング剤層20は、カテーテルチューブ11と水溶性高分子層30とを接着する役割を有し、後述のシランカップリング剤及び有機溶媒を含有する組成物を塗布した後、架橋及び乾燥させることにより形成することができる。
【0017】
シランカップリング剤は、1個以上の有機材料と化学結合する反応基と2個以上の無機材料と化学結合をする反応基を有する有機ケイ素化合物である。有機材料と化学結合する反応基としては、例えばビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、イソシアネート基、ウレイド基、メルカプト基等が挙げられる。なかでもポリウレタンを生成するために使われずに余ったイソシアネート基との結合を考慮するとアミノ基及びイソシアネート基の少なくとも一方を有するシランカップリング剤が好ましい。無機材料と化学結合する反応基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。
【0018】
具体的なシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p‐スチリルトリメトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3‐アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N‐2-(アミノエチル)-3‐アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N‐2‐(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、3‐トリエトキシシリル‐N‐(1,3‐ジメチル‐ブチリデン)プロピルアミン、N‐フェニル‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐(ビニルベンジル)-2-アミノエチル‐3‐アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3‐ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3‐メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3‐イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのなかでも、N‐2-(アミノエチル)-3‐アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N‐2‐(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、3‐トリエトキシシリル‐N‐(1,3‐ジメチル‐ブチリデン)プロピルアミン、N‐フェニル‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐(ビニルベンジル)-2-アミノエチル‐3‐アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3‐イソシアネートプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0019】
-有機溶媒-
有機溶媒は、シランカップリング剤と反応せず、溶解することができるものを選択する必要がある。
【0020】
シランカップリング剤層20の厚さは、0.1μm以上5.0μm以下であることが好ましい。
【0021】
シランカップリング剤層20は、カテーテルチューブ11の外周に、シランカップリング剤と有機溶媒の組成物を塗布した後、架橋及び乾燥させることにより形成することができる。
【0022】
<水溶性高分子層>
水溶性高分子層30は、ポリオール、ポリイソシアネート、水溶性高分子及び有機溶媒を含む水溶性高分子層形成用組成物を塗布した後、架橋及び乾燥させることにより形成することができる。水溶性高分子層30は、水溶性高分子の中に架橋ポリウレタン網状体を含有するものである。このような構造を有することにより、カテーテル10の表面が長期に亘って潤滑性を有することできる。
【0023】
水溶性高分子層形成用組成物の塗布は、ロールコート法、ディッピング法等により可能である。
図1に示すように、バルーン部19を有するカテーテルの場合は、カテーテルチューブ11にバルーン部19を構成するバルーンチューブを取付け、シランカップリング剤と有機溶媒の組成物を塗布した後、架橋及び乾燥させてシランカップリング剤層20を形成し、さらにその上に水溶性高分子層形成用組成物を塗布した後、架橋及び乾燥させて水溶性高分子層30を形成する。
【0024】
(水溶性高分子層形成用組成物)
以下、水溶性高分子層形成用組成物の構成成分について説明する。
【0025】
-ポリオール-
ポリオールは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリオールであればよく、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールであることが好ましい。
【0026】
ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール-エチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとアルキレンオキサイドとの共重合ポリオール、これらの各種変性体、これらの混合物等が挙げられる。
【0027】
ポリエステルポリオールは、分子内に2つ以上のエステル結合と、2つ以上のヒドロキシル基を有する。ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸とポリオールとの縮合反応物等が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0028】
ポリアクリレートポリオールは、ヒドロキシル基含有モノマーと他のオレフィン系不飽和モノマー、例えば(メタ)アクリル酸のエステル、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル及びマレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル及びフマル酸ジアルキルエステル、α-オレフィン並びに他の不飽和オリゴマー及び不飽和ポリマーとのコポリマーである。
【0029】
ポリカーボネートポリオールは、分子内に2つ以上のカーボネート結合と、2つ以上のヒドロキシル基を有する。ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとカーボネート化合物との縮合反応物等が挙げられる。また、カーボネート化合物としては、例えば、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキレンカーボネート等が挙げられる。ポリカーボネートポリオールの原料として用いられるポリオールとしては、例えば、ヘキサンジオール、ブタンジオール等のジオール、2,4-ブタントリオール等のトリオールなどが挙げられる。
ポリオールは、後述するイソシアネート等との相溶性に優れる点で、1000~8000の数平均分子量を有するのが好ましく、1000~5000の数平均分子量を有するのがより好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレンに換算したときの分子量である。
【0030】
-ポリイソシアネート-
ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体などが挙げられる。ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートなどのポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0031】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m-、p-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’-、2,4’-または2,2’-ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’-トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0032】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0033】
また、脂肪族イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアナートメチル(NBDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等を挙げることができる。さらに、脂環式イソシアネートとしては、例えば、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、4,4’-ジシクロへキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0034】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのTrans,Trans-体、Trans,Cis-体、Cis,Cis-体、もしくはその混合物))(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物)(H6XDI)などの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。これらポリイソシアネート単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0035】
ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート単量体の多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、ポリイソシアネート単量体と後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体とジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(上記したポリイソシアネート単量体の脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
さらに、ポリイソシアネート誘導体として、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)なども挙げられる。
これらポリイソシアネート誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。また、上記ポリイソシアネート化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。さらに、本発明において用いられるポリイソシアネートは、ブロックポリイソシアネートであってもよい。
【0036】
水溶性高分子層形成用組成物には、ポリオールとポリイソシアネートとの反応に通常使用される助剤、例えば、鎖延長剤、架橋剤等を併用してもよい。鎖延長剤、架橋剤としては、例えば、グリコール類、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、アミン類等が挙げられる。
【0037】
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物における混合割合は、ポリオールに含まれる水酸基(OH)と、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基(NCO)とのモル比(NCO/OH)が0.7以上1.15以下であるのが好ましい。このモル比(NCO/OH)は、ポリウレタンの加水分解を防止することができる点で、0.85以上1.10以下であるのがより好ましい。なお、実際には、作業環境、作業上の誤差を考慮して適正モル比の3倍から4倍相当量を配合してもよい。
架橋ポリウレタン網状体の含有量は、水溶性高分子層における水溶性高分子の総質量に対し、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
【0038】
-水溶性高分子-
水溶性高分子としては、限定するものではないが、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、多糖類、ヒアルロン酸及びその塩と誘導体、アルギン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、セルロース、キチン、キトサン、アガロース、キサンタン、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、エミルザン、ジェラン、カードラン、アミロース、カラギーナン、アミロペクチン、デキストラン、グリコーゲン、デンプン、ヘパリン硫酸、及び限界デキストリンならびにそれらの断片、合成親水性ポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、およびポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。本発明での使用に好ましい水溶性高分子はポリビニルピロリドンである。
水溶性高分子層30に含まれる水溶性高分子の種類は1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0039】
-有機溶媒-
水溶性高分子層形成用組成物は、有機溶媒を含むことが好ましい。有機溶媒は、ポリオール、ポリイソシアネート及び水溶性高分子と反応しないが、全てを溶解することができる必要がある。有機溶媒は、反応性アミン、ヒドロキシルおよびカルボキシル基を含まないことが好ましい。具体的には、臭化メチレン、塩化メチレン、二臭化メタン、クロロホルム、二塩化エタン、臭化n-プロピル、アセトニトリル、二臭化エタン、メチルベンキソエート、酢酸ベンジル、臭化n-プロピル、シクロヘキサノン、ジクロエチレン、1,3-ジオキソラン及びN-メチルピロリドンからなる群から選択される。
【0040】
水溶性高分子層形成用組成物は、ポリオール、ポリイソシアネート、水溶性高分子及び有機溶媒以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、触媒、酸化防止剤等が挙げられる。
【0041】
-触媒-
好適な触媒の非限定的な例として、第3級アミン、例えば、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N-ジメチル-シクロヘキサミン-ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N-エチルモルホリン、N,N,N’,N’,N”-ペンタメチル-ジエチレン-トリアミン、および1-2(ヒドロキシプロピル)イミダゾール、並びに金属触媒、例えば、スズ、オクタン酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズメルカプチド、アセチルアセトン第二鉄、オクタン酸鉛、ジブチルスズジリシノレエート、炭酸カルシウム、鉄(III)アセチルアセトネート等が挙げられる。好ましい触媒はジブチルスズジリシノレエート、スズである。最も好ましい触媒は、ジオクチルスズジラウレートである。触媒は、ポリオールとブロック化ポリイソシアネート中0.05質量%以上0.5質量%以下の範囲であることが好ましい。
【0042】
-酸化防止剤-
酸化防止剤は、硬化被覆の酸化安定性改善に効果的である。酸化防止剤としては、ビタミンE、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,2’-メチレンビス(4メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,3,5トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ブチルヒドロキシトルエン、オクタデシル3,5,ジ-t-ブチル4-ヒドロキシヒドロシンナメート、4,4’メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、p,p’-ジオクチルジフェニルアミン、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタンが挙げられるが、これらに限定されない。酸化防止剤は、ポリオール及びブロック化ポリイソシアネートの合計100質量%中0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましい。
【0043】
水溶性高分子層30の厚さは、長期間に亘って潤滑性を保持する観点から、5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。
【0044】
本発明のカテーテルは、バルーン部19を有しないカテーテルであってもよく、その場合は、カテーテルチューブ11の外周にシランカップリング剤層及び架橋ポリウレタン網状体を含む水溶性高分子層をこの順に形成することが好ましい。
【符号の説明】
【0045】
10 フォーリーカテーテル
11 カテーテルチューブ
12 側孔
13 貫通孔
14 第1ルーメン
15 第2ルーメン
16 造影部分
17 バルブ
18 排尿用ファネル
19 バルーン部
20 シランカップリング剤層
30 水溶性高分子層