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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】受信機及び電波監視システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/30 20150101AFI20241105BHJP
   H04B 17/18 20150101ALI20241105BHJP
   H04W 24/00 20090101ALI20241105BHJP
【FI】
H04B17/30
H04B17/18
H04W24/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021145246
(22)【出願日】2021-09-07
(65)【公開番号】P2023038488
(43)【公開日】2023-03-17
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】内田 貴
(72)【発明者】
【氏名】小林 篤
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-139690(JP,A)
【文献】特開2003-134059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
H04B 1/60
H04B 3/46-3/493
H04B 17/00-17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の監視対象の電波の帯域を含む広帯域の電波を受信する受信部と、
前記受信部による受信信号を中間周波数に変換する周波数変換器と、
前記周波数変換器による周波数変換後の信号に対して異なる複数の復調処理を同時に実行可能な復調処理部とを備えた受信機において、
当該受信機が属するシステムの無線通信を受信した場合に、その無線通信を増幅して送信する中継増幅機能と、当該受信機が属するシステムの無線電力供給装置から無線による電源供給を受ける無線給電機能を有し、無線による電源供給を受ける権利を有する受信機であることを示す情報を暗号化して前記無線電力供給装置に送信することを特徴とする受信機。
【請求項2】
複数の監視対象の電波の帯域を含む広帯域の電波を受信する受信部と、
前記受信部による受信信号を中間周波数に変換する周波数変換器と、
前記周波数変換器による周波数変換後の信号に対して異なる複数の復調処理を同時に実行可能な復調処理部とを備えた受信機を用いた電波監視システムであって、
前記受信機は、当該受信機が属するシステムの無線通信を受信した場合に、その無線通信を増幅して送信する中継増幅機能と、当該受信機が属するシステムの無線電力供給装置から無線による電源供給を受ける無線給電機能を有し、無線による電源供給を受ける権利を有する受信機であることを示す情報を暗号化して前記無線電力供給装置に送信することを特徴とする電波監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視対象の電波を監視する機能を備えた受信機及び電波監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無線機(受信機)は、任意の周波数に同調し、必要な電波信号を受信して復調するものであった。また、同時に電波監視を行う機能を備えた受信機も実用されている。電波監視機能付き受信機は、例えば、監視エリア内で行われる無線通信やその発信源の無線装置を監視するために使用される監視用受信機である。
【0003】
図1には、従来例として、監視用受信機を備えた無線通信システムの構成例が示されている。同図では、監視エリア内に、既知の監視対象であるn台の無線装置10(1)~10(n)と、未知の監視対象である1台の無線装置12が存在している。また、電波監視のために、n台の無線装置10(1)~10(n)に対応するn台の監視用受信機20(1)~20(n)と、これら監視用受信機と通信する監視サーバ24とを備えた監視システム25が配備されている。
【0004】
図1の構成では、複数の無線装置の電波監視を行うには、少なくとも、監視対象の無線装置と同数の監視用受信機が必要となる。このため、監視できる無線装置の数が制限されるという問題があった。この問題を解決するために、1台で複数の無線装置を監視することも検討されている。
【0005】
図2には、従来例として、監視用受信機を備えた無線通信システムの別の構成例が示されている。図2の無線通信システムは、n台の監視用受信機20(1)~20(n)に代えて、複数の無線装置を監視可能な広帯域監視用受信機22を備えている。広帯域監視用受信機22は、図3に示すように、広帯域にわたって電波(周波数)を掃引する方式で、複数の無線装置の電波監視を行うことが可能である。しかしながら、この方式では、掃引タイミングによってはデータ信号を取りこぼす可能性があるため、同時に複数の無線装置を監視することはできなかった。
【0006】
ここで、複数の無線装置と通信する受信機に関しては、以下のような発明が提案されている。例えば、特許文献1には、親局が、複数の子局から受信した周波数のRF信号を、周波数コンバータにてIF信号に変換し、ADコンバータにて各子局に応じた周波数成分を抽出し、復調処理を行う発明が開示されている。また、特許文献2には、無線機が、異なる周波数の各々の帯域における通信状況を把握し、未使用の帯域を束ねた形態で無線通信を行う発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-148289号公報
【文献】特開2019-50532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図1の構成は、周波数帯域の使用効率としては、非効率な無線通信システムである。また、既知の監視対象に応じた数の監視用受信機が必要であり、無線通信システムを簡易(小型、ローコスト、低消費電力など)に構成することは難しかった。監視用受信機を1台にまとめた図2の構成では、周波数帯域の使用効率としては、効率的な無線通信システムである。しかしながら、複数の無線装置の監視を同時に行うことはできないので、瞬時な判定をすることは不向きであった。また、図1図2の構成のいずれも、監視用受信機で収集したデータを自システム内でのみ使用することしか想定していないので、広範なエリアを監視するのに不向きであった。また、監視用受信機が属する無線通信システムには、監視用受信機以外の無線装置が存在しているものの、それら無線装置との連携は考慮されていなかった。
【0009】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、同時に複数の監視対象の電波を監視可能な受信機を更に有効活用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様である受信機は、以下のように構成される。
すなわち、本発明に係る受信機は、複数の監視対象の電波の帯域を含む広帯域の電波を受信する受信部と、受信部による受信信号を中間周波数に変換する周波数変換器と、周波数変換器による周波数変換後の信号に対して異なる複数の復調処理を同時に実行可能な復調処理部とを備えた受信機において、当該受信機が属するシステムの無線通信を受信した場合に、その無線通信を増幅して送信する中継増幅機能を有することを特徴とする。また、本発明は、このような受信機を用いた電波監視システムとしても提供され得る。
【0011】
ここで、本発明に係る受信機または電波監視システムは、当該受信機が属するシステムの無線電力供給装置から無線による電源供給を受ける無線給電機能を有するように構成され得る。
【0012】
また、本発明に係る受信機または電波監視システムは、無線による電源供給を受ける権利を有する受信機であることを示す情報を暗号化して無線電力供給装置に送信するように構成され得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、同時に複数の監視対象の電波を監視可能な受信機を更に有効活用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来例に係る監視用受信機を備えた無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】従来例に係る広帯域監視用受信機を備えた無線通信システムの構成例を示す図である。
図3図2の広帯域監視用受信機による受信スペクトラム波形例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る広帯域監視用受信機を備えた無線通信システムの第1構成例を示す図である。
図5図4の広帯域監視用受信機による受信スペクトラム波形例を示す図である。
図6図4の広帯域監視用受信機の構成例を示す図である。
図7図4の広帯域監視用受信機の動作例を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る広帯域監視用受信機を備えた無線通信システムの第2構成例を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る広帯域監視用受信機を備えた無線通信システムの第3構成例を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る広帯域監視用受信機を備えた無線通信システムの第4構成例を示す図である。
図11図6の中継増幅回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る広帯域監視用受信機について、図面を参照して説明する。但し、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し、繰り返しの説明を省略することがある。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であり、本発明の解釈を限定するものではない。
【0016】
(第1構成例)
図4には、本発明の一実施形態に係る広帯域監視用受信機を備えた無線通信システムの第1構成例を示してある。同図では、監視エリア内に、既知の監視対象であるn台の無線装置50(1)~50(n)と、未知の監視対象である1台の無線装置52と、自システムに属する他の無線装置60(1),60(2)が存在している。また、電波監視のために、複数の無線装置を監視可能な広帯域監視用受信機62と、この広帯域監視用受信機と通信する監視サーバ64とを備えた監視システム65が配備されている。本例では、それぞれ異なる監視エリアを監視する複数の監視システム(図4では、監視システム65-Aと監視システム65-Bの2つ)を備え、各システムの監視サーバ64が互いに通信可能に接続されている。これにより、複数の監視システムが連携して動作して、広範なエリアの監視を実現することが可能となる。
【0017】
本例の広帯域監視用受信機62は、従来の広帯域監視用受信機22とは違い、受信スペクトラム例を図5に示すように、同時に複数の無線装置を監視できるように構成されている。図6には、広帯域監視用受信機62の構成例を示してある。
【0018】
広帯域監視用受信機62は、受信部70と、周波数変換器71と、フィルタ部72と、AD変換器73と、分配回路74と、複数であるm個のミキサ回路75-1~75-m,発振回路76-1~76-m,復調ブロック77-1~77-mと、データ変換回路78と、中継増幅回路79と、無線給電回路80と、外部インタフェース部81とを備えている。本明細書では、受信部70からフィルタ部72までを「RF(Radio Frequency)段」と称し、それ以降を「広帯域のIF(Intermediate Frequency)段」と称する。
【0019】
受信部70は、複数の監視対象(例えば、無線装置50(1)~50(n)及び無線装置52)の電波の帯域と、自システムに属する他の無線装置60(1),60(2)が無線通信に使用する電波の帯域とを含む広帯域の電波を受信する。本例の受信部70は、HF帯からEHF帯(3MHz~300GHz)までの周波数を含む広帯域の電波を受信できるアンテナや、LNA(Low Noise Amplifier)等のデバイスにより構成される。
【0020】
周波数変換器71は、広帯域の受信周波数を任意の周波数帯に分けることを目的としたものであり、受信部70による受信信号を中間周波数に変換する。また、周波数変換器71は、任意の発振周波数を局部発振周波数として広帯域のIF段のマッピングを可能とするものであり、例えば、3MHz~3000MHz、3000MHz~6000MHz、・・・300000MHzなどのように分割する処理を行う。
【0021】
フィルタ部72は、周波数変換器71によって中間周波数に変換された受信信号の周波数範囲を制限するフィルタである。フィルタ部72としては、通過させる周波数範囲が可変なフィルタや、様々な帯域のフィルタを切り替え可能に有するフィルタ(例えば、FIL_BANK)などを使用することができる。
【0022】
AD変換器73は、RF段から出力されるアナログ形式の受信信号をデジタル形式に変換する。
【0023】
分配回路74は、AD変換器73によってデジタル形式に変換された受信信号をm個に分岐して、ミキサ回路75-1~75-mに分配する。
【0024】
ミキサ回路75-1は、分配回路74によって分配された受信信号を発振回路76-1により発振された局部発振周波数と混合して、所定周波数への変換処理を行う。他のミキサ75-2~75-mも同様である。
【0025】
復調ブロック77-1は、フィルタ回路77A、可変増幅回路77B、復調回路77Cなどを含み、所定方式の復調処理を行う。他の復調ブロック77-2~77-mも同様である。これら復調ブロック77-1~77-mを使用することで、複数種類の復調処理を同時に実行することができる。例えば、復調ブロック77-1はFM復調を行い、これと同時に、復調ブロック77-2はAM復調を行う。また、このようなアナログ方式の復調処理に限定されず、公衆無線回線で使用されるデジタル方式の復調処理を行うこともできる。
【0026】
データ変換回路78は、AD変換器73によってデジタル形式に変換された受信信号を、そのままの形式で外部出力するためのものである。
【0027】
中継増幅回路79は、RF段によって得られた受信信号のうち、自システムが使用可能な周波数帯の受信信号を増幅し、不図示の送信アンテナを通じて無線送信する。すなわち、中継増幅回路79は、当該受信機が属する自システムの無線通信(例えば、図4の無線装置60(1),60(2)による無線通信)を受信した場合に、その無線信号を中継増幅するための回路である。なお、自システムに割り当てられた周波数帯の信号を全て中継増幅してもよいが、自システムの無線通信であることが特定できた信号のみを中継増幅することが好ましい。自システムの無線通信であるか否かは、例えば、無線信号に含まれるシステム識別情報に基づいて判別することが可能である。また、本例では、自システムの受信信号(高周波信号)を中間周波数に変換した後に中継増幅しているが、中間周波数に変換せずに中継増幅しても構わない。また、送信アンテナは、受信アンテナと同じものを用いてもよく、受信アンテナとは別に設けられてもよい。
【0028】
図11には、中継増幅回路79の構成例を示してある。同図の回路は、当該受信機が属する自システムの無線通信(例えば、図4の無線装置60(1),60(2)による無線通信)を受信した場合に、その無線信号を中継増幅するものである。本例では、中継増幅回路79は、上り信号用の増幅回路101と、下り信号用の増幅回路102とを有する。端末側から基地局への上り信号を増幅する場合には、増幅回路101により増幅された信号を基地局側へ伝送する。基地局側から端末への下り信号を増幅する場合には、増幅回路102により増幅された信号を端末側へ伝送する。これにより、複数の監視システムが連携して動作して、自システムの無線通信に対して通信可能なエリアを広範囲に実現することが可能となる。
【0029】
図11の例では、自システムの受信信号(高周波信号)を中間周波数に変換する構成を示しているが、中間周波数に変換せずに直接増幅する構成としても構わない。増幅回路101と増幅回路102の接続についても、図11の例では、上りと下りを切り替える構成としているが、上り下りの周波数帯が別々となっている場合には、それぞれを通過させるフィルタによる共用機構成としても構わない。
【0030】
無線給電回路80は、当該受信機の動作電源の給電動作を行う回路である。第1構成例では無線給電回路80の使用を想定していないので、無線給電回路80の詳細については後述する。
【0031】
分配回路74、ミキサ回路75-1~75-m、発振回路76-1~76-m、復調ブロック77-1~77-m、データ変換回路78、中継増幅回路79、無線給電回路80は、処理内容をプログラム可能なデバイス(本明細書では「プログラマブルデバイス」と称する)で構成される。プログラマブルデバイスとしては、例えば、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いることができる。したがって、未知の監視対象である無線装置52が検出された場合にそれに対応した復調処理を実行するように処理内容を動的に書き換えるなど、状況に応じた柔軟な対応が可能となる。なお、固定の動作を行う回路部(例えば、データ変換回路78、中継増幅回路79、無線給電回路80)については、プログラマブルデバイスではなく専用のハードウェアにより実現してもよい。
【0032】
外部インタフェース部81は、広帯域監視用受信機62と外部とを接続するためのインタフェースであり、種々の外部出力に対応する。外部インタフェース部81は、例えば、LAN(Local Area Network)出力、オーディオ出力などに対応している。また、外部インタフェース部81は、WiFi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などの無線出力、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)などの有線出力を行うことができる。また、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に出力することもできる。
【0033】
図7には、広帯域監視用受信機62の動作例を示してある。同図に示すように、広帯域監視用受信機62は、受信部70にて周辺の電波を高周波の波形情報として広帯域に受信し、周波数変換器71及びフィルタ部72にて周波数変換及びフィルタ処理を施した後に、AD変換器73による高速な信号処理にてデジタル信号に変換し、復調ブロック77-1~77-mによる復調処理にて情報データに変換する。得られた情報データは、外部インタフェース部81を通じて外部装置(本例では、監視サーバ64)に提供される。情報データの外部装置への提供は、ネットワークを介して行ってもよく、情報データを記憶させた記録媒体の運搬により行ってもよい。
【0034】
監視サーバ64は、広帯域監視用受信機62から出力された情報データを使用して電波解析を行い、周波数、帯域幅、変調方式、通信方式、電波の個癖(固体の識別)などを特定する。また、監視サーバ64は、情報内容の解析(例えば、音声の場合は会話内容の解析、データの場合は暗号解読や情報内容の解析)を行うこともできる。監視サーバ64による解析結果(例えば、電波の諸元情報)は、広帯域監視用受信機62にフィードバックされる。なお、広帯域監視用受信機62にフィードバックする情報に波形情報を含めることも考えられるが、波形情報はデータ量が多いので、フィードバックするとネットワーク回線が占有される懸念がある。そこで、本例の監視サーバ64は、波形情報はフィードバックせず、電波の諸元や特徴などの情報を解析結果としてフィードバックする。
【0035】
広帯域監視用受信機62は、監視サーバ64からフィードバックされた解析結果に基づいて、既知の監視対象(無線装置50(1)~50(n))の特定や、未知の監視対象(無線装置52)の判別などを行う。また、広帯域監視用受信機62は、監視サーバ64による解析結果に基づいてプログラマブルデバイスの処理内容を書き換えて、変調方式などの諸元を電波監視に適したものに変更することも可能である。
【0036】
また、監視サーバ64は、他のシステムに解析結果を伝達することもできる。例えば、監視システム65-Aの監視サーバ64は、解析結果を監視システム65-Bの監視サーバ64に送信する。監視システム65-Bの監視サーバ64は、監視システム65-Aから受信した解析結果を自システムの広帯域監視用受信機62に送信する。これにより、監視システム65-Bの広帯域監視用受信機62は、監視システム65-Aでの解析結果を用いて電波監視を行うことができる。このように、複数の監視システムが連携して動作することで、広範なエリアの監視を実現することが可能である。
【0037】
更に、広帯域監視用受信機62は、自システム(当該受信機が属するシステム)で行われている無線通信(例えば、図4の無線装置60(1),60(2)による無線通信)を、中継増幅回路79を用いて中継増幅する機能を有している。したがって、自システムの通信エリアを実質的に拡張することが可能となる。また、広帯域監視用受信機62と監視サーバ64が無線通信するシステム構成の場合には、他の広帯域監視用受信機62と監視サーバ64の間の無線通信を中継増幅することで、監視エリアも実質的に拡張することが可能となる。
【0038】
(第2構成例)
図8には、本発明の一実施形態に係る広帯域監視用受信機を備えた無線通信システムの第2構成例を示してある。第2構成例では、複数の監視システム(本例では、監視システム65Aと監視システム65-B)の監視サーバ64が、ネットワークケーブル等の有線回線で接続されたデータ解析装置90に、広帯域監視用受信機62から受信した情報データを提供する。データ解析装置90は、各監視システムから提供された情報データに基づく電波解析を行う。データ解析装置90は、各監視システムの監視サーバ64に代替する監視システム毎の電波解析を行ってもよく、各監視システムから提供された情報データに基づく統合的(システム横断的)な電波解析を追加で行ってもよく、これらの両方を行ってもよい。データ解析装置90による解析結果は、各監視システムの監視サーバ64へフィードバックされる。このような構成により、広範なエリアの監視を実現できるだけでなく、システムの拡張性や柔軟性を高めることができる。
【0039】
(第3構成例)
図9には、本発明の一実施形態に係る広帯域監視用受信機を備えた無線通信システムの第3構成例を示してある。第3構成例では、上述のデータ解析装置90が、各監視システムの監視サーバ64と無線回線を介して接続されている。このような構成により、広範なエリアの監視を実現できるだけでなく、システムの拡張性や柔軟性を更に高めることができる。
【0040】
(第4構成例)
図10には、本発明の一実施形態に係る広帯域監視用受信機を備えた無線通信システムの第4構成例を示してある。第4構成例の無線通信システムは、第3構成例の無線通信システムを更に拡張したものであり、広帯域監視用受信機62に対して無線による電源供給(無線給電)を行うための無線電力供給装置63を複数の位置に設けてある。無線電力供給装置63は、その近傍に存在する広帯域監視用受信機62に対して、無線給電用の周波数帯の電波を送信する。無線電力供給装置63は、据置型であってもよく、可搬型であってもよい。
【0041】
広帯域監視用受信機62の無線給電回路80は、RF段によって得られた受信信号のうち、無線給電用の周波数帯の受信信号を電力に変換して、不図示のバッテリーに供給する。これにより、従来は、広帯域監視用受信機62に電源供給するために局舎等の設備を常設又は仮設する必要があったが、その必要が無くなる。また、広帯域監視用受信機62に無線給電機能を持たせることで、電源供給時に局舎等に広帯域監視用受信機62を持ち運ぶ必要性が無くなるため、広帯域監視用受信機62の位置が監視対象の無線装置から特定されにくくなる。また、無線電力供給装置63は任意の位置に設置できるため、広帯域監視用受信機62の中継増幅機能と組み合わせることで、通信エリアや監視エリアの更なる拡張を容易に実現することが可能である。
【0042】
ここで、無線給電は、暗号化通信により行うようにしてもよい。この場合、広帯域監視用受信機62は、無線給電を受ける権利を有する広帯域監視用受信機62であることを示す受信機情報を、暗号化して送信する。受信機情報は、例えば、広帯域監視用受信機62に固有の識別情報であり、無線電力供給装置63に予め登録されている。無線電力供給装置63は、広帯域監視用受信機62から受信した受信機情報が登録済みである場合に、無線給電を受ける権利を有する広帯域監視用受信機62であると判断する。このように、無線給電を暗号化通信により行うことで、無線給電の安全性を高めることができる。
【0043】
暗号化通信は、暗号化と復号化を共通に行える共通鍵暗号方式を用いて行ってもよく、暗号化と復号化をペアとなる公開鍵と秘密鍵で行う公開鍵暗号方式を用いて行ってもよい。また、暗号化通信により、受信機情報以外の情報を伝達するようにしてもよい。例えば、広帯域監視用受信機62がGPS(Global Positioning System)などの測位機能を有している場合には、広帯域監視用受信機62の位置情報(つまり、無線給電を行う場所の情報)を、暗号化通信により無線電力供給装置63に伝達してもよい。
【0044】
(まとめ)
以上のように、本例の広帯域監視用受信機62は、監視対象となり得る複数の無線装置(無線装置50(1)~50(n)や無線装置52)の電波の帯域及び自システムに属する他の無線装置(無線装置60(1),60(2))の電波の帯域を含む広帯域の電波を受信する受信部70と、受信部70による受信信号を中間周波数に変換する周波数変換器71と、周波数変換器による周波数変換後の信号に対して異なる複数の復調処理を同時に実行可能な複数の復調ブロック77-1~77-mとを備える。
【0045】
このような構成により、本例の広帯域監視用受信機62は、同時に複数の監視対象の電波を監視することができる。したがって、監視エリア内で行われる無線通信やその発信源の無線装置を監視する無線通信システムを、簡易(小型、ローコスト、低消費電力など)に構築することが可能となる。また、既知又は未知の無線装置の電波により通信妨害などを受けた場合に、その認識や発信源の特定を速やかに行うことができ、通信妨害への抗たん性を高めることが可能となる。
【0046】
更に、本例の広帯域監視用受信機62は、当該受信機が属するシステムの無線通信を受信した場合に、その無線通信を増幅して送信する中継増幅回路79を有する。これにより、本例の広帯域監視用受信機62は、自システムに属する他の無線装置の無線通信を中継増幅できるため、自システムの通信エリアの拡張及び監視エリアの拡張を容易に実現することができる。
【0047】
また、本例の広帯域監視用受信機62は、当該受信機が属するシステムの無線電力供給装置63から無線による電源供給を受けるための無線給電回路80を有する。これにより、広帯域監視用受信機62に対する電源供給の自在性が高まる。また、中継増幅機能と組み合わせることで、通信エリアや監視エリアの更なる拡張を容易に実現することが可能である。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これら実施形態は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、その他の様々な実施形態をとることが可能であると共に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等の種々の変形を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0049】
また、本発明は、上記の説明で挙げたような装置や、これら装置で構成されたシステムとして提供することが可能なだけでなく、これら装置により実行される方法、これら装置の機能をプロセッサにより実現させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、監視対象の電波を監視する機能を備えた受信機、電波監視システム、及び無線通信システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
10(1)~10(n),12:無線装置、 20:監視用受信機、 22:広帯域監視用受信機、 24:監視サーバ、 25:監視システム、 50(1)~50(n),52:無線装置、 62:広帯域監視用受信機、 63:無線電力供給装置、 64:監視サーバ、 65-A,65-B:監視システム、 70:受信部、 71:周波数変換器、 72:フィルタ部、 73:AD変換器、 74:分配回路、 75-1~75-m:ミキサ回路、 76-1~76-m:発振回路、 77-1~77-m:復調ブロック、 77A:フィルタ回路、 77B:可変増幅回路、 77C:復調回路、 78:データ変換回路、 79:中継増幅回路、 80:無線給電回路、 81:外部インタフェース部、 90:データ解析装置、 101:上り信号用の増幅回路、 102:下り信号用の増幅回路

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