(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】超電導層の接続構造、超電導線材、超電導コイル、超電導機器、及び超電導層の接続方法
(51)【国際特許分類】
H01F 6/06 20060101AFI20241105BHJP
H01R 4/68 20060101ALI20241105BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20241105BHJP
H01B 12/06 20060101ALN20241105BHJP
【FI】
H01F6/06 140
H01R4/68
H01R43/00 Z
H01F6/06 150
H01B12/06
(21)【出願番号】P 2021149038
(22)【出願日】2021-09-14
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】萩原 将也
(72)【発明者】
【氏名】江口 朋子
(72)【発明者】
【氏名】アルベサール 恵子
(72)【発明者】
【氏名】服部 靖
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-117523(JP,A)
【文献】特開2018-035015(JP,A)
【文献】特開平02-302380(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129469(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0025812(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/06
H01R 4/68
H01R 43/00
H01B 12/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の超電導層と、
第2の超電導層と、
前記第1の超電導層と前記第2の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む第1の物質と、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、銅(Cu)、スズ(Sn)、及び亜鉛(Zn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素を含む第2の物質と、を含む接続層と、を備え、
前記第1の超電導層と前記接続層との間の第1の界面において、前記第2の物質と前記第1の超電導層とが接する第1の領域の単位面積あたりに占める第1の面積割合が1%以上50%以下であり、
前記第2の超電導層と前記接続層との間の第2の界面において、前記第2の物質と前記第2の超電導層とが接する第2の領域の単位面積あたりに占める第2の面積割合が1%以上50%以下であ
り、
前記第2の物質は複数の粒子を含み、前記第1の界面に垂直な断面において、前記複数の粒子の少なくとも一部の粒子は、前記第1の超電導層に接し、かつ、扁平形状であり、
前記断面において、前記複数の粒子の少なくとも別の一部の粒子は、前記第2の超電導層に接し、かつ、扁平形状である超電導層の接続構造。
【請求項2】
前記断面において、前記複数の粒子の少なくとも一部の粒子の長径方向が前記第1の界面に対し0度以上30度以下の範囲にあり、
前記断面において、前記複数の粒子の少なくとも別の一部の粒子の長径方向が前記第2の界面に対し0度以上30度以下の範囲にある請求項1記載の超電導層の接続構造。
【請求項3】
第1の超電導層と、
第2の超電導層と、
前記第1の超電導層と前記第2の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む第1の物質と、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、銅(Cu)、スズ(Sn)、及び亜鉛(Zn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素を含む第2の物質と、を含む接続層と、を備え、
前記第1の超電導層と前記接続層との間の第1の界面において、前記第2の物質と前記第1の超電導層とが接する第1の領域の単位面積あたりに占める第1の面積割合が1%以上50%以下であり、
前記第2の超電導層と前記接続層との間の第2の界面において、前記第2の物質と前記第2の超電導層とが接する第2の領域の単位面積あたりに占める第2の面積割合が1%以上50%以下であり、
前記第2の物質は複数の粒子を含み、
前記第1の界面に垂直な断面において、前記複数の粒子の中で前記第1の超電導層に接する粒子
の少なくとも一部の粒子のアスペクト比が5以上であ
り、前記断面において、前記複数の粒子の中で前記第2の超電導層に接する粒子
の少なくとも一部の粒子のアスペクト比が5以上である超電導層の接続構造。
【請求項4】
前記第1の物質は前記第1の超電導層及び前記第2の超電導層に接する請求項
1から請求項3のいずれか1項に記載の超電導層の接続構造。
【請求項5】
前記複数の粒子の長径の中央値は、100nm以上10μm以下である請求項
1から請求項4のいずれか1項に記載の超電導層の接続構造。
【請求項6】
前記第2の物質は酸素(O)を含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の超電導層の接続構造。
【請求項7】
第1の超電導層と、
第2の超電導層と、
前記第1の超電導層と前記第2の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む第1の物質と、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、銅(Cu)、スズ(Sn)、及び亜鉛(Zn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素を含む第2の物質とを含む接続層と、を備え、
前記第2の物質
の一部は、前記第1の超電導層及び前記第2の超電導層に接し、
前記一部は、前記第1の超電導層と前記第2の超電導層との間で連続
し、
前記一部は、前記第1の物質の第1の部分と前記第1の物質の前記第1の部分と異なる第2の部分との間に設けられる超電導層の接続構造。
【請求項8】
前記第1の物質は前記第1の超電導層及び前記第2の超電導層に接する請求項
7記載の超電導層の接続構造。
【請求項9】
前記第1の超電導層から前記第2の超電導層に向かう方向に平行な断面において、前記第2の物質の単位面積あたりに占める面積割合が5%以上50%以下である請求項
7又は請求項
8記載の超電導層の接続構造。
【請求項10】
前記第1の超電導層と前記接続層との間の第1の界面において、前記第2の物質と前記第1の超電導層とが接する第1の領域の単位面積あたりに占める第1の面積割合が1%以上50%以下であり、
前記第2の超電導層と前記接続層との間の第2の界面において、前記第2の物質と前記第2の超電導層とが接する第2の領域の単位面積あたりに占める第2の面積割合が1%以上50%以下である請求項
7から請求項
9のいずれか1項に記載の超電導層の接続構造。
【請求項11】
第1の超電導層を含む第1の超電導線材と、
第2の超電導層を含む第2の超電導線材と、
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面を有する第3の超電導層と、
前記第1の超電導層と前記第3の超電導層の間、及び、前記第2の超電導層と前記第3の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む第1の物質と、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、銅(Cu)、スズ(Sn)、及び亜鉛(Zn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素を含む第2の物質と、を含む接続層と、を備え、
前記第1の超電導層及び前記第2の超電導層は、前記第3の超電導層の前記第1の面の側に位置し、
前記第1の超電導層と前記接続層との間の第1の界面において、前記第2の物質と前記第1の超電導層とが接する第1の領域の単位面積あたりに占める第1の面積割合が1%以上50%以下であり、
前記第2の超電導層と前記接続層との間の第2の界面において、前記第2の物質と前記第2の超電導層とが接する第2の領域の単位面積あたりに占める第2の面積割合が1%以上50%以下であり、
前記第3の超電導層と前記接続層との間の第3の界面において、前記第2の物質と前記第3の超電導層とが接する第3の領域の単位面積あたりに占める第3の面積割合が1%以上50%以下であ
り、
前記第2の物質は複数の粒子を含み、前記複数の粒子の長径の中央値は、100nm以上10μm以下である超電導線材。
【請求項12】
前記第1の物質は前記第1の超電導層、前記第2の超電導層、及び前記第3の超電導層に接する請求項
11記載の超電導線材。
【請求項13】
前記第1の界面に垂直な断面において、前記複数の粒子の少なくとも一部の粒子は、前記第1の超電導層に接し、かつ、扁平形状であり、
前記第2の界面に垂直な断面において、前記複数の粒子の少なくとも別の一部の粒子は、前記第2の超電導層に接し、かつ、扁平形状であり、
前記第3の界面に垂直な断面において、前記複数の粒子の少なくとも更に別の一部の粒子は、前記第3の超電導層に接し、かつ、扁平形状の粒子である請求項11又は請求項12記載の超電導線材。
【請求項14】
前記第1の界面に垂直な断面において、前記複数の粒子の少なくとも一部の粒子の長径方向が前記第1の界面に対し0度以上30度以下の範囲にあり、
前記第2の界面に垂直な断面において、前記複数の粒子の少なくとも別の一部の粒子の長径方向が前記第2の界面に対し0度以上30度以下の範囲にあり、
前記第3の界面に垂直な断面において、前記複数の粒子の少なくとも更に別の一部の粒子の長径方向が前記第3の界面に対し0度以上30度以下の範囲にある請求項13記載の超電導線材。
【請求項15】
第1の超電導層を含む第1の超電導線材と、
第2の超電導層を含む第2の超電導線材と、
第1の面と前記第1の面と対向する第2の面を有する第3の超電導層と、
前記第1の超電導層と前記第3の超電導層の間、及び、前記第2の超電導層と前記第3の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む第1の物質と、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、銅(Cu)、スズ(Sn)、及び亜鉛(Zn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素を含む第2の物質と、を含む接続層と、を備え、
前記第1の超電導層及び前記第2の超電導層は、前記第3の超電導層の前記第1の面の側に位置し、
前記第2の物質の一部は、前記第1の超電導層及び前記第3の超電導層に接し、
前記第2の物質の前記一部は、前記第1の超電導層と前記第3の超電導層との間で連続し、
前記第2の物質の別の一部は、前記第2の超電導層及び前記第3の超電導層に接し、
前記第2の物質の前記別の一部は、前記第2の超電導層と前記第3の超電導層との間で連続
し、
前記第2の物質の前記一部は、前記第1の超電導層と前記第3の超電導層との間において、前記第1の物質の第1の部分と前記第1の物質の前記第1の部分と異なる第2の部分との間に設けられ、
前記第2の物質の前記別の一部は、前記第2の超電導層と前記第3の超電導層との間において、前記第1の物質の第3の部分と前記第1の物質の前記第3の部分と異なる第4の部分との間に設けられる超電導線材。
【請求項16】
前記第1の物質は前記第1の超電導層、前記第2の超電導層、及び前記第3の超電導層に接する請求項
15記載の超電導線材。
【請求項17】
請求項
11から請求項
16のいずれか1項に記載の超電導線材を備える超電導コイル。
【請求項18】
請求項
17記載の超電導コイルを備える超電導機器。
【請求項19】
第1の超電導層と第2の超電導層とを準備し、
前記第1の超電導層と前記第2の超電導層の上に酸化銀の粒子を含むスラリーを塗布し、
希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む
板状の物質
を、前記第1の超電導層
の上の前記スラリーと前記第2の超電導層
の上の前記スラリーとの間に挟み、
前記第1の超電導層と前記第2の超電導層とを加圧した状態で、熱処理を行う超電導層の接続方法。
【請求項20】
第1の超電導層と第2の超電導層とを準備し、
希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む粒子及び酸化銀の粒子を含むスラリーを、前記第1の超電導層と前記第2の超電導層との間に挟み、
前記第1の超電導層と前記第2の超電導層とを加圧した状態で、熱処理を行う超電導層の接続方法。
【請求項21】
前記熱処理は、第1の温度の第1の熱処理と、
前記第1の熱処理と同じ酸素分圧、又は、前記第1の熱処理よりも高い酸素分圧を有する雰囲気中の、第2の温度の第2の熱処理と、を含む請求項
19又は請求項20記載の超電導層の接続方法。
【請求項22】
前記第1の温度は800℃以下である請求項
21記載の超電導層の接続方法。
【請求項23】
前記第2の温度は前記第1の温度より低い請求項
21又は請求項
22記載の超電導層の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超電導層の接続構造、超電導線材、超電導コイル、超電導機器、及び超電導層の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、核磁気共鳴装置(NMR)や磁気共鳴画像診断装置(MRI)では、強い磁場を発生させるために超電導コイルが用いられる。超電導コイルは、巻枠に超電導線材を巻き回すことにより形成されている。
【0003】
超電導線材を長尺化するために、例えば、複数の超電導線材を接続する。例えば、2本の超電導線材の端部を接続構造を用いて接続する。超電導線材を接続する接続構造には、低い電気抵抗と高い機械的強度が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、低い電気抵抗と高い機械的強度を実現できる超電導層の接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の超電導層の接続構造は、第1の超電導層と、第2の超電導層と、前記第1の超電導層と前記第2の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む第1の物質と、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、銅(Cu)、スズ(Sn)、及び亜鉛(Zn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素を含む第2の物質と、を含む接続層と、を備え、前記第1の超電導層と前記接続層との間の第1の界面において、前記第2の物質と前記第1の超電導層とが接する第1の領域の単位面積あたりに占める第1の面積割合が1%以上50%以下であり、前記第2の超電導層と前記接続層との間の第2の界面において、前記第2の物質と前記第2の超電導層とが接する第2の領域の単位面積あたりに占める第2の面積割合が1%以上50%以下であり、前記第2の物質は複数の粒子を含み、前記第1の界面に垂直な断面において、前記複数の粒子の少なくとも一部の粒子は、前記第1の超電導層に接し、かつ、扁平形状であり、前記断面において、前記複数の粒子の少なくとも別の一部の粒子は、前記第2の超電導層に接し、かつ、扁平形状である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態の超電導層の接続構造の模式断面図。
【
図2】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第2の超電導層との準備を示す図。
【
図3】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の保護層と第2の保護層の除去を示す図。
【
図4】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層及び第2の超電導層の上へのスラリーの塗布を示す図。
【
図5】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第2の超電導層を向き合わせた状態を示す図。
【
図6】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第2の超電導層を重ね合わせた状態を示す図。
【
図7】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第2の超電導層を加圧した状態を示す図。
【
図9】第2の実施形態の超電導層の接続構造の模式断面図。
【
図10】第3の実施形態の超電導層の接続構造の模式断面図。
【
図11】第4の実施形態の超電導線材の模式断面図。
【
図12】第4の実施形態の超電導線材の第1の変形例の模式断面図。
【
図13】第4の実施形態の超電導線材の第2の変形例の模式断面図。
【
図14】第6の実施形態の超電導線材の模式断面図。
【
図15】第6の実施形態の超電導線材の第1の変形例の模式断面図。
【
図16】第6の実施形態の超電導線材の第2の変形例の模式断面図。
【
図17】第6の実施形態の超電導線材の第3の変形例の模式断面図。
【
図18】第7の実施形態の超電導コイルの模式斜視図。
【
図19】第7の実施形態の超電導コイルの模式断面図。
【
図20】第8の実施形態の超電導機器のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する場合がある。
【0009】
本明細書中、粒子等の「粒径」とは、別段の記載のない限り、粒子の長径である。粒子の長径とは、粒子の外周の任意の2点間の長さの中の最大の長さである。また、粒子の短径とは、粒子の長径の基礎となる2点の中点を通り、粒子の長径方向に垂直な線と粒子の外周が交わる2点間の長さである。また、粒子のアスペクト比とは、短径に対する長径の比(長径/短径)である。粒子の長径及び短径は、例えば、走査電子顕微鏡画像(SEM画像)の画像解析により求めることが可能である。なお、上記「粒径」の定義は一例であり、「粒径」の定義はこれに限られるものではない。
【0010】
本明細書中、粒子等に含まれる元素の検出及び元素の原子濃度の測定は、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX)又は波長分散型X線分析法(WDX)を用いて行うことが可能である。また、粒子等に含まれる物質の同定は、例えば、粉末X線回折法を用いて行うことが可能である。
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の超電導層の接続構造は、第1の超電導層と、第2の超電導層と、第1の超電導層と第2の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む第1の物質と、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、銅(Cu)、スズ(Sn)、及び亜鉛(Zn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素を含む第2の物質と、を含む接続層と、を備える。そして、第1の超電導層と接続層との間の第1の界面において、第2の物質と第1の超電導層とが接する第1の領域の単位面積あたりに占める第1の面積割合が1%以上50%以下であり、第2の超電導層と接続層との間の第2の界面において、第2の物質と第2の超電導層とが接する第2の領域の単位面積あたりに占める第2の面積割合が1%以上50%以下である。
【0012】
図1は、第1の実施形態の超電導層の接続構造の模式断面図である。第1の実施形態の接続構造100は、2つの超電導層を物理的及び電気的に接続する構造である。接続構造100は、例えば、2本の超電導線材を接続し、超電導線材を長尺化するために用いられる。
【0013】
接続構造100は、第1の超電導部材10、第2の超電導部材20、及び接続層30を備える。接続構造100は、第1の超電導部材10と第2の超電導部材20が、接続層30によって接続される構造である。接続層30は、第1の超電導部材10と第2の超電導部材20との間に設けられる。
【0014】
第1の超電導部材10は、第1の基板12、第1の中間層14、第1の超電導層16を備える。第2の超電導部材20は、第2の基板22、第2の中間層24、第2の超電導層26を備える。
【0015】
第1の基板12は、例えば、金属である。第1の基板12は、例えば、ニッケル合金又は銅合金である。第1の基板12は、例えば、ニッケルタングステン合金である。
【0016】
第1の超電導層16は、例えば、酸化物超電導層である。第1の超電導層16は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の超電導層16は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及び、ルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0017】
第1の超電導層16は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。第1の超電導層16は、例えば、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、YBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、又はEuBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。第1の超電導層16は、例えば、希土類酸化物超電導体である。
【0018】
第1の超電導層16は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶を含む。
【0019】
第1の超電導層16は、例えば、第1の中間層14の上に、金属有機物堆積法(Metal Organic Deposition法:MOD法)、パルスレーザ蒸着法(Pulsed Laser Deposition法:PLD法)、又は、有機金属気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition法:MOCVD法)を用いて形成される。
【0020】
第1の中間層14は、第1の基板12と第1の超電導層16との間に設けられる。第1の中間層14は、例えば、第1の超電導層16に接する。第1の中間層14は、第1の中間層14の上に形成される第1の超電導層16の結晶配向性を向上させる機能を有する。
【0021】
第1の中間層14は、例えば、希土類酸化物を含む。第1の中間層14は、例えば、複数の膜の積層構造を備える。第1の中間層14は、例えば、第1の基板12側から、酸化イットリウム(Y2O3)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO2)が積層された構造を有する。
【0022】
第2の基板22は、例えば、金属である。第2の基板22は、例えば、ニッケル合金又は銅合金である。第2の基板22は、例えば、ニッケルタングステン合金である。
【0023】
第2の超電導層26は、例えば、酸化物超電導層である。第2の超電導層26は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の超電導層16は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0024】
第2の超電導層26は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。第1の超電導層16は、例えば、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、YBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、又はEuBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。第1の超電導層16は、例えば、希土類酸化物超電導体である。
【0025】
第2の超電導層26は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶を含む。
【0026】
第2の超電導層26は、例えば、第2の中間層24の上に、MOD法、PLD法、又はMOCVD法を用いて形成される。
【0027】
第2の中間層24は、第2の基板22と第2の超電導層26との間に設けられる。第2の中間層24は、例えば、第2の超電導層26に接する。第2の中間層24は、第2の中間層24の上に形成される第2の超電導層26の結晶配向性を向上させる機能を有する。
【0028】
第2の中間層24は、例えば、希土類酸化物を含む。第2の中間層24は、例えば、複数の膜の積層構造を備える。第2の中間層24は、例えば、第2の基板22側から、酸化イットリウム(Y2O3)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO2)が積層された構造を有する。
【0029】
接続層30は、第1の超電導層16と第2の超電導層26との間に設けられる。接続層30は、第1の超電導層16に接する。接続層30は、第2の超電導層26に接する。
【0030】
第1の超電導層16と接続層30との間の界面は第1の界面(
図1中のP1)である。また、第2の超電導層26と接続層30との間の界面は第2の界面(
図1中のP2)である。
【0031】
接続層30を用いて、第1の超電導層16と第2の超電導層26が物理的及び電気的に接続される。
【0032】
接続層30は、第1の物質30aと、第2の物質30bとを含む。
【0033】
第1の物質30aは、第1の超電導層16に接する。第1の物質30aは、第2の超電導層26に接する。
【0034】
第1の物質30aは、酸化物超電導体である。第1の物質30aは、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の物質30aは、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及び、ルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0035】
第1の物質30aは、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。第1の物質30aは、例えば、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、YBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、又はEuBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0036】
第1の物質30aは、例えば、ペロブスカイト構造を有する結晶を含む。
【0037】
第1の物質30aは、例えば、板状である。
【0038】
第2の物質30bは、第1の超電導層16に接する。第2の物質30bは、第2の超電導層26に接する。
【0039】
第2の物質30bは、導電体である。第2の物質30bは、例えば、金属である。
【0040】
第2の物質30bは、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、銅(Cu)、スズ(Sn)、及び亜鉛(Zn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素を含む。第2の物質30bは、例えば、銀(Ag)である。
【0041】
第2の物質30bは、例えば、酸素(O)を含む。第2の物質30bに含まれる酸素(O)の原子濃度は、例えば、0.01%以上35%以下である。
【0042】
第1の超電導層16と接続層30との間の第1の界面P1において、第2の物質30bと第1の超電導層16とが接する第1の領域の単位面積あたりに占める面積割合が1%以上50%以下である。また、第2の超電導層26と接続層30との間の第2の界面P2において、第2の物質30bと第2の超電導層26とが接する第2の領域の単位面積あたりに占める面積割合が1%以上50%以下である。単位面積は、例えば、1mm2である。
【0043】
第1の領域の面積割合は、例えば、第1の超電導層16から第2の超電導層26に向かう方向に平行な複数の接続層30の断面において、第2の物質30bと第1の超電導層16とが接する長さの第1の界面P1の長さに対する割合を取得し、取得された複数の長さの割合の平均値を算出することで得られる。また、第2の領域の面積割合は、例えば、第1の超電導層16から第2の超電導層26に向かう方向に平行な複数の接続層30の断面において、第2の物質30bと第2の超電導層26とが接する長さの第2の界面P2の長さに対する割合を取得し、取得された複数の長さの割合の平均値を算出することで得られる。
【0044】
第2の物質30bは、例えば、
図1に示すように、複数の粒子を含む。複数の粒子の長径の中央値は、例えば、100nm以上10μm以下である。
【0045】
例えば、複数の粒子の中で第1の界面P1に接する粒子のアスペクト比は5以上100以下である。また、複数の粒子の中で第2の界面P2に接する粒子のアスペクト比は5以上100以下である。
【0046】
例えば、
図1に示すように、粒子の長径方向は、第1の界面P1又は第2の界面P2に平行な方向にそろう。特に、複数の粒子の中で、第1の超電導層16又は第2の超電導層26に接する粒子の長径は、第1の界面P1又は第2の界面P2に平行な方向にそろう。
【0047】
粒子の長径方向は、例えば、第1の界面P1に対して0度以上30度以下の範囲にある。また、粒子の長径方向は、例えば、第2の界面P2に対して0度以上30度以下の範囲にある。
【0048】
次に、第1の実施形態の超電導層の接続方法の一例について説明する。第1の実施形態の超電導層の接続方法は、接続構造100の形成方法である。
図2、
図3、
図4、
図5、
図6、及び
図7は、第1の実施形態の超電導層の接続方法を示す図である。
【0049】
第1の実施形態の超電導層の接続方法は、第1の超電導層と第2の超電導層とを準備し、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む物質と、酸化銀を、第1の超電導層と前記第2の超電導層との間に挟み、第1の超電導層と第2の超電導層とを加圧した状態で、熱処理を行う。
【0050】
最初に、第1の超電導層16と第2の超電導層26とを準備する。第1の超電導部材10と第2の超電導部材20とを準備する(
図2)。
【0051】
第1の超電導部材10は、第1の基板12、第1の中間層14、第1の超電導層16、第1の保護層18を備える。第1の保護層18は、第1の超電導層16の上に設けられる。第1の保護層18は、第1の超電導層16を保護する機能を有する。
【0052】
第1の保護層18は、例えば、金属である、第1の保護層18は、例えば、銀(Ag)又は銅(Cu)を含む。
【0053】
第2の超電導部材20は、第2の基板22、第2の中間層24、第2の超電導層26、第2の保護層28を備える。第2の保護層28は、第2の超電導層26の上に設けられる。第2の保護層28は、第2の超電導層26を保護する機能を有する。
【0054】
第2の保護層28は、例えば、金属である、第2の保護層28は、例えば、銀(Ag)又は銅(Cu)を含む。
【0055】
次に、第1の超電導層16の上の第1の保護層18を除去する。次に、第2の超電導層26の上の第2の保護層28を除去する(
図3)。第1の保護層18及び第2の保護層28は、例えば、ウェットエッチング法を用いて除去する。
【0056】
次に、スラリー29を作製する。スラリー29は、酸化銀の粒子29aを含む。
次に、第1の超電導層16及び第2の超電導層26の上に、スラリー29を塗布する(
図4)。
【0057】
次に、第1の物質30aを準備する。第1の物質30aは板状である。
【0058】
第1の物質30aは、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の物質30aは、希土類酸化物である。第1の物質30aは、例えば、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)の焼結体である。
【0059】
第1の物質30aは、例えば、MOD法で作製した希土類酸化物超電導体と酸化物原料から焼成した希土類酸化物超電導体の焼結体の複合物である。例えば、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)の焼結体にMOD溶液を塗布し、熱処理することで複合物を作製できる。熱処理の温度は、例えば、700℃以上850℃以下である。熱処理は、例えば、大気圧で行う。熱処理は、例えば大気雰囲気中、Ar雰囲気中、窒素雰囲気中、酸素雰囲気中、Arと酸素の混合雰囲気中、又は窒素と酸素の混合雰囲気中で行う。複合物を用いることで、接続層30と第1の超電導層16及び第2の超電導層26の電気的な接続性が向上し、電気抵抗を低くすることができる。
【0060】
次に、例えば、第2の超電導層26を反転し、第1の物質30aとスラリー29を間に挟んで、第1の超電導層16と第2の超電導層26を向き合わせる(
図5)。そして、第1の超電導層16と第2の超電導層26を、第1の物質30aを間に挟んで重ね合わせる(
図6)。
【0061】
次に、重ね合わせた第1の超電導層16と第2の超電導層26を、第2の超電導層26から第1の超電導層16に向かう方向に加圧する(
図7)。例えば、重ね合わせた部分に錘を乗せることで加圧する。例えば、プレス機を用いて加圧する。例えば、加圧のための冶具を作製し、挟み込むことで加圧することもできる。冶具を用いた場合には、接続の後に冶具を取り外しても良いし、冶具を取り付けたままでも良い。冶具を取り外すとコイルを巻回しやすくなるため、取り外すことが好ましい。
【0062】
次に、熱処理を行う。熱処理は、第1の超電導層16と第2の超電導層26が加圧された状態で行う。
【0063】
熱処理の温度は、例えば、300℃以上850℃以下である。例えば、400℃以上800℃以下が好ましい。熱処理は、例えば、大気圧で行う。第1の熱処理は、例えば大気雰囲気中、Ar雰囲気中、窒素雰囲気中、酸素雰囲気中、Arと酸素の混合雰囲気中、又は窒素と酸素の混合雰囲気中で行う。
【0064】
熱処理により、酸化銀の粒子29aが還元を伴いながら焼結することで、粒径の大きな銀の粒子が第1の超電導層16と接続層30との間の界面、及び、第2の超電導層26と接続層30との間の界面に形成される。
【0065】
次に、第2の温度で第2の熱処理を行っても良い。第2の熱処理は酸素を含む雰囲気中で行われる。第2の熱処理は、第1の熱処理と同じ酸素分圧、又は、第1の熱処理よりも高い酸素分圧を有する雰囲気中で行われる。第2の熱処理は酸素アニールである。
【0066】
第2の温度は、例えば、第1の温度よりも低い。第2の温度は、例えば、400℃以上600℃以下である。第2の熱処理は、第1の熱処理の後に第2の温度よりも低い温度まで冷却してから、第2の温度に再加熱して行っても良い。また、第2の熱処理は、第1の熱処理の後に第2の温度まで連続的に降温させて行っても良い。
【0067】
第2の熱処理は、例えば、大気圧中で行われる。第2の熱処理の雰囲気の酸素分圧は、例えば、30%以上である。
【0068】
以上の方法により、第1の超電導層16と第2の超電導層26とが接続される。以上の方法により、
図1に示した第1の実施形態の接続構造100が形成される。
【0069】
次に、第1の実施形態の超電導層の接続構造、及び超電導層の接続方法の作用及び効果について説明する。
【0070】
例えば、核磁気共鳴装置(NMR)や磁気共鳴画像診断装置(MRI)では、強い磁場を発生させるために超電導コイルが用いられる。超電導コイルは、巻枠に超電導線材を巻き回すことにより形成されている。
【0071】
超電導線材を長尺化するために、例えば、複数の超電導線材を接続する。例えば、2本の超電導線材の端部を、接続構造を用いて接続する。超電導線材を接続する接続構造には、低い電気抵抗と高い機械的強度が求められる。
【0072】
第1の実施形態の超電導層の接続構造100は、第1の物質30aと第2の物質30bを含む接続層30を用いる。第1の物質30aは、希土類酸化物の超電導体である。第2の物質30bは、金属である。希土類酸化物の超電導体と金属を含む接続層30を用いることで、低い電気抵抗と高い機械的強度を備えた接続構造100が実現できる。
【0073】
また、第1の実施形態の超電導層の接続方法は、酸化銀を用いて接続層30を形成する。酸化銀を用いて接続層30を形成することで、低い電気抵抗と高い機械的強度を備えた接続構造100が実現できる。以下、詳述する。
【0074】
図8は、比較例の超電導層の接続構造の模式断面図である。比較例の超電導層の接続構造900は、接続層30が第2の物質30bを含まない点で、第1の実施形態の接続構造100と異なる。
【0075】
例えば、接続構造900に応力が印加された場合、接続層30と第1の超電導層16との第1の界面(
図8中のP1)で、接続層30と第1の超電導層16とが分離するおそれがある。また、接続構造900に応力が印加された場合、接続層30と第2の超電導層26との第2の界面(
図8中のP2)で、接続層30と第2の超電導層26とが分離するおそれがある。
【0076】
第1の実施形態の超電導層の接続構造100は、接続層30に含まれる第2の物質30bが第1の超電導層16に接することにより、第1の界面P1における接続層30と第1の超電導層16との接続強度が高くなる。また、第1の実施形態の超電導層の接続構造100は、接続層30に含まれる第2の物質30bが第2の超電導層26に接することにより、第2の界面P2における接続層30と第2の超電導層26との接続強度が高くなる。したがって、高い機械的強度を備えた接続構造100が実現できる。
【0077】
そして、接続層30に含まれる第1の物質30aが第1の超電導層16に接することにより、第1の界面P1において、超電導体が連続する経路が確保されている。また、接続層30に含まれる第1の物質30aが第2の超電導層26に接することにより、第2の界面P2において、超電導体が連続する経路が確保されている。したがって、第1の界面P1及び第2の界面P2での接触抵抗が低減し、低い電気抵抗を備えた接続構造100が実現できる。よって、接続構造100に流すことが可能な臨界電流が大きくなる。
【0078】
第1の超電導層16と接続層30との間の第1の界面P1において、第2の物質30bと第1の超電導層16とが接する第1の領域の単位面積あたりに占める第1の面積割合が1%以上50%以下である。第1の面積割合が1%未満となると、第1の界面P1における接続層30と第1の超電導層16との接続強度が不足する。第1の面積割合が50%を超えると、接続構造100の電気抵抗が高くなりすぎる。
【0079】
第1の界面P1における接続層30と第1の超電導層16との接続強度を高くする観点から、第1の面積割合は、5%以上であることが好ましく、8%以上であることがより好ましい。また、接続構造100の電気抵抗を低くする観点から、第1の面積割合は、30%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。
【0080】
第2の超電導層26と接続層30との間の第2の界面P2において、第2の物質30bと第2の超電導層26とが接する第2の領域の単位面積あたりに占める第2の面積割合が1%以上50%以下である。第2の面積割合が1%未満となると、第2の界面P2における接続層30と第2の超電導層26との接続強度が不足する。第2の面積割合が50%を超えると、接続構造100の電気抵抗が高くなりすぎる。
【0081】
第2の界面P2における接続層30と第2の超電導層26との接続強度を高くする観点から、第2の面積割合は、5%以上であることが好ましく、8%以上であることがより好ましい。また、接続構造100の電気抵抗を低くする観点から、第2の面積割合は、30%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。
【0082】
第2の物質30bは複数の粒子を含み、複数の粒子の長径の中央値は、100nm以上10μm以下であることが好ましい。長径の中央値が100nm以上であることにより、第1の界面P1又は第2の界面P2における接続強度が高くなる。また、長径の中央値が10μm以下であることにより、接続構造100の電気抵抗が低くなる。
【0083】
第2の物質30bは複数の粒子を含み、複数の粒子の中で第1の界面P1に接する粒子のアスペクト比が5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。同様に、複数の粒子の中で第2の界面P2に接する粒子のアスペクト比が5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。粒子のアスペクト比が上記下限値を上回ることで、接続構造100の第1の界面P1及び第2の界面P2の接続強度の向上と、接続構造100の電気抵抗の低減の両立が容易となる。
【0084】
第2の物質30bの粒子の長径方向は、第1の界面P1又は第2の界面P2に平行な方向にそろうことが好ましい。特に、複数の粒子の中で、第1の超電導層16又は第2の超電導層26に接する粒子の長径は、第1の界面P1又は第2の界面P2に平行な方向にそろうことが好ましい。
【0085】
第2の物質30bの粒子の長径方向は、第1の界面P1に対して0度以上30度以下の範囲にあることが好ましい。また、粒子の長径方向は、例えば、第2の界面P2に対して0度以上30度以下の範囲にあることが好ましい。
【0086】
第2の物質30bの粒子の長径方向が、第1の界面P1又は第2の界面P2に平行な方向にそろうことで、接続構造100の第1の界面P1及び第2の界面P2の接続強度の向上と、接続構造100の電気抵抗の低減の両立が容易となる。
【0087】
第2の物質30bは酸素(O)を含むことが好ましい。第2の物質30bが酸素を含むことで、第2の物質30bの機械的強度が向上する。したがって、接続構造100の機械的強度が向上する。
【0088】
また、第2の物質30bは、第1の超電導層16、第2の超電導層26、及び第1の物質30aと接合する。第1の超電導層16、第2の超電導層26、及び第1の物質30aは、いずれも酸化物であるため、第2の物質30bが酸素を含むことで、第1の超電導層16、第2の超電導層26、及び第1の物質30aと接合しやすくなり、接合強度が向上する。
【0089】
また、第1の超電導層16、第2の超電導層26、及び第1の物質30aは、例えば、希土類酸化物超電導体である。希土類酸化物超電導体は、酸素欠陥により超電導特性が大きく低下する。第2の物質30bが酸素を含むことで、第1の超電導層16、第2の超電導層26、及び第1の物質30aからの酸素脱離が抑制される。したがって、第1の超電導層16、第2の超電導層26、及び第1の物質30aの高い超電導特性が維持できる。
【0090】
第2の物質30bの機械的強度を向上させる観点、第2の物質30bの接合強度を向上させる観点、及び、第1の超電導層16、第2の超電導層26、及び第1の物質30aの高い超電導特性を維持する観点から、第2の物質30bに含まれる酸素(O)の原子濃度は、0.01%以上であることが好ましく、0.05%以上であることがより好ましく、0.1%以上であることが更に好ましい。一方、第2の物質30bの電気抵抗を低減する観点から、第2の物質30bに含まれる酸素(O)の原子濃度は、35%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましい。
【0091】
第1の実施形態の超電導層の接続方法は、第1の超電導層16と第1の物質30aとの間、及び、第2の超電導層26と第1の物質30aとの間に、酸化銀の粒子29aを挟んで熱処理を加えることで、接続層30を形成する。熱処理により、酸化銀の粒子29aが還元を伴いながら焼結することで、粒径の大きな粒子が第1の超電導層16と接続層30との間の界面、及び、第2の超電導層26と接続層30との間の界面に形成される。粒径の大きな粒子が第2の物質30bである。
【0092】
酸化銀の粒子29aを用いることで、例えば、銀の粒子を用いる場合と比較して、低い温度で粒子の焼結が進む。このため、粒径の大きな粒子を低い温度で形成できる。したがって、酸化物超電導体で形成される第1の超電導層16、第2の超電導層26、及び第1の物質30aを高温にさらすことを抑制できる。よって、第1の超電導層16、第2の超電導層26、及び第1の物質30aの超電導特性の劣化を抑制でき、低い電気抵抗と高い機械的強度を備えた接続構造100が実現できる。
【0093】
以上、第1の実施形態の超電導層の接続構造、及び超電導層の接続方法によれば、低い電気抵抗と高い機械的強度を実現できる。
【0094】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の超電導層の接続構造は、第1の物質が複数の粒子を含む点で、第1の実施形態の超電導層の接続構造と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0095】
図9は、第2の実施形態の超電導層の接続構造の模式断面図である。第2の実施形態の接続構造200は、2つの超電導層を物理的及び電気的に接続する構造である。接続構造200は、例えば、2本の超電導線材を接続し、超電導線材を長尺化するために用いられる。
【0096】
接続構造200は、第1の超電導部材10、第2の超電導部材20、及び接続層30を備える。接続構造200は、第1の超電導部材10と第2の超電導部材20が、接続層30によって接続される構造である。接続層30は、第1の超電導部材10と第2の超電導部材20との間に設けられる。
【0097】
接続層30は、第1の物質30aと、第2の物質30bとを含む。
【0098】
第1の物質30aは、複数の粒子を含む。第1の物質30aは、例えば、複数の粒子が焼結された状態にある。粒子間には空孔が存在する。
【0099】
複数の粒子のそれぞれは、酸化物超電導体である。複数の粒子のそれぞれは、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の物質30aは、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及び、ルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0100】
複数の粒子のそれぞれは、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。第1の物質30aは、例えば、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、YBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、又はEuBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0101】
複数の粒子のそれぞれは、例えば、ペロブスカイト構造を有する結晶を含む。
【0102】
第2の物質30bは、第1の超電導層16に接する。第2の物質30bは、第2の超電導層26に接する。
【0103】
第2の物質30bは、導電体である。第2の物質30bは、例えば、金属である。
【0104】
第2の物質30bは、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、銅(Cu)、スズ(Sn)、及び亜鉛(Zn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素を含む。第2の物質30bは、例えば、銀(Ag)である。
【0105】
第2の物質30bは、例えば、酸素(O)を含む。第2の物質30bに含まれる酸素(O)の原子濃度は、例えば、0.01%以上35%以下である。
【0106】
第1の超電導層16と接続層30との間の第1の界面P1において、第2の物質30bと第1の超電導層16とが接する第1の領域の単位面積あたりに占める面積割合が1%以上50%以下である。また、第2の超電導層26と接続層30との間の第2の界面P2において、第2の物質30bと第2の超電導層26とが接する第2の領域の単位面積あたりに占める面積割合が1%以上50%以下である。
【0107】
第2の物質30bは、例えば、複数の粒子を含む。複数の粒子の長径の中央値は、例えば、100nm以上10μm以下である
【0108】
例えば、複数の粒子の中で第1の界面P1に接する粒子のアスペクト比は5以上100以下である。また、複数の粒子の中で第2の界面P2に接する粒子のアスペクト比は5以上100以下である。
【0109】
次に、第2の実施形態の超電導層の接続方法の一例について説明する。第2の実施形態の超電導層の接続方法は、接続構造200の形成方法である。
【0110】
第1の超電導層16と第2の超電導層26とを準備し、第1の保護層18及び第2の保護層28を用いて除去するまでは、第1の実施形態の超電導層の接続方法と同様である。
【0111】
次に、スラリーを作製する。スラリーは、第1の結晶粒子、第1の粒子、第2の粒子、第3の粒子、及び酸化銀の粒子を含む。
【0112】
第1の結晶粒子は、最終的に第1の物質30aの一部となる。酸化銀の粒子は、最終的に第2の物質30bとなる。
【0113】
第1の結晶粒子は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の結晶粒子は、希土類酸化物である。第1の結晶粒子は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶又は多結晶である。第1の結晶粒子は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0114】
第1の結晶粒子は、例えば、板状又は扁平形状である。第1の結晶粒子の粒径の中央値は、例えば、100nm以上10μm以下である。
【0115】
第1の結晶粒子は、例えば、希土類酸化物の超電導体を、粉砕することによって形成される。希土類酸化物の超電導体は、例えば、粉末原料を焼成することで形成される。
【0116】
第1の結晶粒子は、例えば、希土類酸化物超電導体の焼結体を粉砕した粉末と、MOD法で作製した希土類酸化物超電導体の複合物である。例えば、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)の焼結体粉末にMOD溶液を塗布し、熱処理することで複合物を作製できる。熱処理の温度は、例えば、700℃以上850℃以下である。熱処理は、例えば、大気圧で行う。熱処理は、例えば大気雰囲気中、Ar雰囲気中、窒素雰囲気中、酸素雰囲気中、Arと酸素の混合雰囲気中、又は窒素と酸素の混合雰囲気中で行う。複合物を用いることで、接続層30と第1の超電導層16及び第2の超電導層26の電気的な接続性が向上し、電気抵抗を低くすることができる。
【0117】
第1の粒子は、希土類元素(RE)及び酸素(O)を含む。第1の粒子は、例えば、RE2O3(REは希土類元素)で表記される化学組成を有する。
【0118】
第2の粒子は、バリウム(Ba)、炭素(C)、及び酸素(O)を含む。第2の粒子は、例えば、BaCO3で表記される化学組成を有する。
【0119】
第3の粒子は、銅(Cu)及び酸素(O)を含む。第3の粒子は、例えば、CuOで表記される化学組成を有する。
【0120】
スラリー29は、例えば、焼結助剤及び増粘剤を含む。焼結助剤は、例えば、アルギン酸ナトリウムである。
【0121】
次に、第2の超電導層26の上に、スラリーを塗布する。
【0122】
次に、例えば、第2の超電導層26を反転し、スラリーを間に挟んで、第1の超電導層16と第2の超電導層26を向き合わせる。そして、第1の超電導層16と第2の超電導層26を重ね合わせる。
【0123】
次に、重ね合わせた第1の超電導層16と第2の超電導層26を、第2の超電導層26から第1の超電導層16に向かう方向に加圧する。
【0124】
次に、第1の温度で第1の熱処理を行う。第1の熱処理は、第1の超電導層16と第2の超電導層26が加圧された状態で行う。
【0125】
第1の温度は、例えば、500℃以上850℃以下である。例えば、600℃以上800℃以下が好ましい。第1の熱処理は、例えば、大気圧で行う。第1の熱処理は、例えば大気雰囲気中、Ar雰囲気中、窒素雰囲気中、酸素雰囲気中、Arと酸素の混合雰囲気中、又は窒素と酸素の混合雰囲気中で行う。
【0126】
第1の熱処理により、第1の粒子、第2の粒子、及び第3の粒子が反応して、超電導体である第2の結晶粒子が形成される。第1の粒子、第2の粒子、及び第3の粒子は、超電導体である第2の結晶粒子の原料である。第2の結晶粒子は、最終的に第1の物質30aの一部となる。
【0127】
第2の結晶粒子32は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第2の結晶粒子32は、希土類酸化物である。第2の結晶粒子32は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶又は多結晶である。第2の結晶粒子32は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0128】
第2の結晶粒子32は、例えば、球状又は不定形状である。第2の結晶粒子32の粒径の中央値は、第1の結晶粒子31の粒径の中央値よりも小さい。第2の結晶粒子32の粒径の中央値は、例えば、10nm以上1μm未満である。
【0129】
なお、例えば、第2の結晶粒子の形成に寄与しなかった第1の粒子、第2の粒子、及び第3の粒子は、接続層30の中に残存する。
【0130】
第1の熱処理により、第1の結晶粒子、第2の結晶粒子が焼結する。
【0131】
第1の熱処理により、酸化銀の粒子が還元を伴いながら焼結することで、粒径の大きな銀の粒子が第1の超電導層16と接続層30との間の界面、及び、第2の超電導層26と接続層30との間の界面に形成される。
【0132】
次に、第2の温度で第2の熱処理を行う。第2の熱処理は酸素を含む雰囲気中で行われる。第2の熱処理は、第1の熱処理と同じ酸素分圧、又は、第1の熱処理よりも高い酸素分圧を有する雰囲気中で行われる。第2の熱処理は酸素アニールである。
【0133】
第2の温度は、例えば、第1の温度よりも低い。第2の温度は、例えば、400℃以上600℃以下である。第2の熱処理は、第1の熱処理の後に第2の温度よりも低い温度まで冷却してから、第2の温度に再加熱して行っても良い。また、第2の熱処理は、第1の熱処理の後に第2の温度まで連続的に降温させて行っても良い。
【0134】
第2の熱処理は、例えば、大気圧中で行われる。第2の熱処理の雰囲気の酸素分圧は、例えば、30%以上である。
【0135】
第1の熱処理及び第2の熱処理により、接続層30が形成される。
【0136】
以上の方法により、第1の超電導層16と第2の超電導層26とが接続される。以上の方法により、第2の実施形態の接続構造200が形成される。
【0137】
以上、第2の実施形態の超電導層の接続構造、及び超電導層の接続方法によれば、低い電気抵抗と高い機械的強度を実現できる。
【0138】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の超電導層の接続構造は、第1の超電導層と、第2の超電導層と、第1の超電導層と第2の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む第1の物質と、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、銅(Cu)、スズ(Sn)、及び亜鉛(Zn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素を含む第2の物質とを含む接続層と、を備え、第2の物質は、第1の超電導層及び第2の超電導層に接し、第2の物質は、第1の超電導層と第2の超電導層との間で連続する。第3の実施形態の超電導層の接続構造は、第2の物質が第1の超電導層と第2の超電導層との間で連続する点で、第1の実施形態の超電導層の接続構造と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0139】
図10は、第3の実施形態の超電導層の接続構造の模式断面図である。第3の実施形態の接続構造300は、2つの超電導層を物理的及び電気的に接続する構造である。接続構造300は、例えば、2本の超電導線材を接続し、超電導線材を長尺化するために用いられる。
【0140】
接続構造300は、第1の超電導部材10、第2の超電導部材20、及び接続層30を備える。接続構造300は、第1の超電導部材10と第2の超電導部材20が、接続層30によって接続される構造である。接続層30は、第1の超電導部材10と第2の超電導部材20との間に設けられる。
【0141】
接続層30は、第1の物質30aと、第2の物質30bとを含む。
【0142】
第1の物質30aは、複数の粒子を含む。第1の物質30aは、例えば、複数の粒子が焼結された状態にある。
【0143】
複数の粒子のそれぞれは、酸化物超電導体である。複数の粒子のそれぞれは、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の物質30aは、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及び、ルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0144】
複数の粒子のそれぞれは、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。第1の物質30aは、例えば、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、YBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、又はEuBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0145】
複数の粒子のそれぞれは、例えば、ペロブスカイト構造を有する結晶を含む。
【0146】
第2の物質30bは、第1の超電導層16に接する。第2の物質30bは、第2の超電導層26に接する。第2の物質30bは、第1の超電導層16と第2の超電導層26との間で連続する。
【0147】
第2の物質30bは、導電体である。第2の物質30bは、例えば、金属である。
【0148】
第2の物質30bは、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、銅(Cu)、スズ(Sn)、及び亜鉛(Zn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素を含む。第2の物質30bは、例えば、銀(Ag)である。
【0149】
第2の物質30bは、例えば、酸素(O)を含む。第2の物質30bに含まれる酸素(O)の原子濃度は、例えば、0.01%以上35%以下である。
【0150】
第1の超電導層16から第2の超電導層26に向かう方向に平行な断面において、第2の物質30bの単位面積あたりに占める面積割合は、例えば、5%以上50%以下である。
【0151】
第1の超電導層16と接続層30との間の第1の界面P1において、第2の物質30bと第1の超電導層16とが接する第1の領域の単位面積あたりに占める面積割合が、例えば、1%以上50%以下である。また、第2の超電導層26と接続層30との間の第2の界面P2において、第2の物質30bと第2の超電導層26とが接する第2の領域の単位面積あたりに占める面積割合が、例えば、1%以上50%以下である。
【0152】
第3の実施形態の超電導層の接続構造300は、例えば、第2の実施形態の超電導層の接続方法において、第1の結晶粒子のサイズ、第1の結晶粒子の形状、第1の結晶粒子と酸化銀の粒子の量比等を調整することで形成することが可能である。
【0153】
例えば、第2の実施形態の超電導層の接続方法において、第1の結晶粒子のサイズを比較的に大きくし、酸化銀の粒子の量を比較的に多くすることで、接続構造300を形成することが可能である。
【0154】
接続構造300では、第2の物質30bが、第1の超電導層16と第2の超電導層26との間で連続することにより、第1の実施形態の接続構造100と比較して、更に高い機械的強度を実現できる。
【0155】
第1の超電導層16から第2の超電導層26に向かう方向に平行な断面において、第2の物質30bの単位面積あたりに占める面積割合は、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。面積割合が上記下限値を超えることで、接続構造300の機械的強度が更に高くなる。
【0156】
第1の超電導層16から第2の超電導層26に向かう方向に平行な断面において、第2の物質30bの単位面積あたりに占める面積割合は、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることが更に好ましい。面積割合が上記上限値を下回ることで、接続構造300の電気抵抗が更に低くなる。
【0157】
以上、第3の実施形態の超電導層の接続構造、及び超電導層の接続方法によれば、低い電気抵抗と高い機械的強度を実現できる。
【0158】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の超電導線材は、第1の超電導層を含む第1の超電導線材と、第2の超電導層を含む第2の超電導線材と、第1の面と第1の面と対向する第2の面を有する第3の超電導層と、第1の超電導層と第3の超電導層の間、及び、第2の超電導層と第3の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む第1の物質と、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、銅(Cu)、スズ(Sn)、及び亜鉛(Zn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素を含む第2の物質と、を含む接続層と、を備える。そして、第1の超電導層及び第2の超電導層は、第3の超電導層の第1の面の側に位置し、第1の超電導層と接続層との間の第1の界面において、第2の物質と第1の超電導層とが接する第1の領域の単位面積あたりに占める第1の面積割合が1%以上50%以下であり、第2の超電導層と接続層との間の第2の界面において、第2の物質と第2の超電導層とが接する第2の領域の単位面積あたりに占める第2の面積割合が1%以上50%以下であり、第3の超電導層と接続層との間の第3の界面において、第2の物質と第3の超電導層とが接する第2の領域の単位面積あたりに占める第3の面積割合が1%以上50%以下である。第4の実施形態の超電導線材は、第1の超電導線材と第2の超電導線材を接続する構造として、第1の実施形態の超電導層の接続構造を用いる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0159】
図11は、第4の実施形態の超電導線材の模式断面図である。第4の実施形態の超電導線材400は、第1の超電導線材401、第2の超電導線材402、及び接続部材403を備える。第4の実施形態の超電導線材400は、第1の超電導線材401と第2の超電導線材402が、接続部材403を用いて接続されることで、長尺化されている。
【0160】
第1の超電導線材401は、第1の基板12、第1の中間層14、第1の超電導層16、第1の保護層18を備える。第2の超電導線材402は、第2の基板22、第2の中間層24、第2の超電導層26、第2の保護層28を備える。接続部材403は、第3の基板42、第3の中間層44、第3の超電導層46を備える。
【0161】
第1の基板12は、例えば、金属である。第1の基板12は、例えば、ニッケル合金又は銅合金である。第1の基板12は、例えば、ニッケルタングステン合金である。
【0162】
第1の超電導層16は、例えば、酸化物超電導層である。第1の超電導層16は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の超電導層16は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0163】
第1の超電導層16は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶を含む。
【0164】
第1の超電導層16は、例えば、第1の中間層14の上に、MOD法、PLD法、又は、MOCVD法を用いて形成される。
【0165】
第1の中間層14は、第1の基板12と第1の超電導層16との間に設けられる。第1の中間層14は、例えば、第1の超電導層16に接する。第1の中間層14は、第1の中間層14の上に形成される第1の超電導層16の結晶配向性を向上させる機能を有する。
【0166】
第1の中間層14は、例えば、希土類酸化物を含む。第1の中間層14は、例えば、複数の膜の積層構造を備える。第1の中間層14は、例えば、第1の基板12側から、酸化イットリウム(Y2O3)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO2)が積層された構造を有する。
【0167】
第1の保護層18は、第1の超電導層16の上に設けられる。第1の保護層18は、例えば、第1の超電導層16に接する。第1の保護層18は、第1の超電導層16を保護する機能を有する。
【0168】
第1の保護層18は、例えば、金属である、第1の保護層18は、例えば、銀(Ag)又は銅(Cu)を含む。
【0169】
第2の基板22は、例えば、金属である。第2の基板22は、例えば、ニッケル合金又は銅合金である。第2の基板22は、例えば、ニッケルタングステン合金である。
【0170】
第2の超電導層26は、例えば、酸化物超電導層である。第2の超電導層26は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第2の超電導層26は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0171】
第2の超電導層26は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶を含む。
【0172】
第2の超電導層26は、例えば、第2の中間層24の上に、金属有機物堆積法MOD法、PLD法、又は、MOCVD法を用いて形成される。
【0173】
第2の中間層24は、第2の基板22と第2の超電導層26との間に設けられる。第2の中間層24は、例えば、第2の超電導層26に接する。第2の中間層24は、第2の中間層24の上に形成される第2の超電導層26の結晶配向性を向上させる機能を有する。
【0174】
第2の中間層24は、例えば、希土類酸化物を含む。第2の中間層24は、例えば、複数の膜の積層構造を備える。第2の中間層24は、例えば、第2の基板22側から、酸化イットリウム(Y2O3)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO2)が積層された構造を有する。
【0175】
第2の保護層28は、第2の超電導層26の上に設けられる。第2の保護層28は、例えば、第2の超電導層26に接する。第2の保護層28は、第2の超電導層26を保護する機能を有する。
【0176】
第2の保護層28は、例えば、金属である、第2の保護層28は、例えば、銀(Ag)又は銅(Cu)を含む。
【0177】
第3の基板42は、例えば、金属である。第3の基板42は、例えば、ニッケル合金又は銅合金である。第3の基板42は、例えば、ニッケルタングステン合金である。
【0178】
第3の超電導層46は、第1の面及び第2の面を有する。第1の超電導層16及び第2の超電導層26は、第3の超電導層46の第1の面の側に位置する。
図11において、第1の面は第3の超電導層46の下面、第2の面は第3の超電導層46の上面である。第1の超電導層16及び第2の超電導層26は、第3の超電導層46の下面側に位置する。
【0179】
第3の超電導層46は、例えば、酸化物超電導層である。第3の超電導層46は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第3の超電導層46は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0180】
第3の超電導層46は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶を含む。
【0181】
第3の超電導層46は、例えば、第3の中間層44の上に、MOD法、PLD法、又は、MOCVD法を用いて形成される。
【0182】
第3の中間層44は、第3の基板42と第3の超電導層46との間に設けられる。第3の中間層44は、例えば、第3の超電導層46に接する。第3の中間層44は、第3の中間層44の上に形成される第3の超電導層46の結晶配向性を向上させる機能を有する。
【0183】
第3の中間層44は、例えば、希土類酸化物を含む。第3の中間層44は、例えば、複数の膜の積層構造を備える。第3の中間層44は、例えば、第3の基板42側から、酸化イットリウム(Y2O3)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO2)が積層された構造を有する。
【0184】
例えば、第3の超電導層46に接する保護層は設けられない。例えば、第3の超電導層46に接する金属の保護層は設けられない。例えば、第3の超電導層46に接する銀(Ag)、又は銅(Cu)を含む保護層は設けられない。
【0185】
接続層30は、第1の超電導層16と第3の超電導層46との間に設けられる。接続層30は、第1の超電導層16に接する。接続層30は、第3の超電導層46に接する。
【0186】
接続層30は、第2の超電導層26と第3の超電導層46との間に設けられる。接続層30は、第2の超電導層26に接する。接続層30は、第3の超電導層46に接する。
【0187】
第1の超電導層16と接続層30との間の界面は第1の界面(
図11中のP1)である。また、第2の超電導層26と接続層30との間の界面は第2の界面(
図11中のP2)である。また、第3の超電導層46と接続層30との間の界面は第3の界面(
図11中のP3)である。
【0188】
第1の超電導層16と第3の超電導層46との間の接続層30と、第2の超電導層26と第3の超電導層46との間の接続層30は連続している。
【0189】
接続層30は、例えば、第1の超電導層16と第2の超電導層26との間に存在しない。第1の超電導層16と第2の超電導層26との間は、例えば、空隙(air gap)である。
【0190】
第4の実施形態の接続層30は、
図1に示す第1の実施形態の接続層30と同様の構成を備える。
【0191】
接続層30は、第1の物質30aと、第2の物質30bとを含む。
【0192】
第1の物質30aは、第1の超電導層16に接する。第1の物質30aは、第2の超電導層26に接する。第1の物質30aは、第3の超電導層46に接する。
【0193】
第1の物質30aは、酸化物超電導体である。第1の物質30aは、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の物質30aは、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及び、ルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0194】
第1の物質30aは、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。第1の物質30aは、例えば、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、YBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、又はEuBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0195】
第1の物質30aは、例えば、ペロブスカイト構造を有する結晶を含む。
【0196】
第1の物質30aは、例えば、板状である。
【0197】
第2の物質30bは、第1の超電導層16に接する。第2の物質30bは、第2の超電導層26に接する。第2の物質30bは、第3の超電導層46に接する。
【0198】
第2の物質30bは、導電体である。第2の物質30bは、例えば、金属である。
【0199】
第2の物質30bは、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、銅(Cu)、スズ(Sn)、及び亜鉛(Zn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素を含む。第2の物質30bは、例えば、銀(Ag)である。
【0200】
第2の物質30bは、例えば、酸素(O)を含む。第2の物質30bに含まれる酸素(O)の原子濃度は、例えば、0.01%以上35%以下である。
【0201】
第1の超電導層16と接続層30との間の第1の界面P1において、第2の物質30bと第1の超電導層16とが接する第1の領域の単位面積あたりに占める面積割合が1%以上50%以下である。また、第2の超電導層26と接続層30との間の第2の界面P2において、第2の物質30bと第2の超電導層26とが接する第2の領域の単位面積あたりに占める面積割合が1%以上50%以下である。また、第3の超電導層46と接続層30との間の第3の界面P3において、第2の物質30bと第3の超電導層46とが接する第3の領域の単位面積あたりに占める面積割合が1%以上50%以下である。
【0202】
第2の物質30bは、例えば、複数の粒子を含む。複数の粒子の長径の中央値は、例えば、100nm以上10μm以下である
【0203】
例えば、複数の粒子の中で第1の界面P1に接する粒子のアスペクト比は5以上100以下である。また、複数の粒子の中で第2の界面P2に接する粒子のアスペクト比は5以上100以下である。
【0204】
第4の実施形態の超電導線材400では、例えば、第1の超電導線材401から、接続層30、接続部材403、及び接続層30を通って第2の超電導線材402に電流が流れる。
【0205】
第1の超電導線材401と接続部材403とが接続層30を用いて接続されることで、第1の超電導線材401と接続部材403とを接続する接続構造は、低い電気抵抗と高い機械的強度を備える。また、第2の超電導線材402と接続部材403とが接続層30を用いて接続されることで、第2の超電導線材402と接続部材403とを接続する接続構造は、低い電気抵抗と高い機械的強度を備える。
【0206】
したがって、第1の超電導線材401と第2の超電導線材402とを接続する接続構造は、低い電気抵抗と高い機械的強度を備える。よって、超電導線材400は、低い電気抵抗と高い機械的強度を備える。
【0207】
なお、3本以上の超電導線材を接続し、更に長尺化した超電導線材を形成することも可能である。
【0208】
第4の実施形態の超電導線材では、第1の実施形態の超電導層の接続構造を用いる場合を例に説明したが、第1の実施形態の超電導層の接続構造に代えて、第2の実施形態の接続構造を用いることも可能である。すなわち、接続層30に第2の実施形態に記載の接続層を用いることも可能である。
【0209】
(第1の変形例)
図12は、第4の実施形態の超電導線材の第1の変形例の模式断面図である。第4の実施形態の変形例の超電導線材410は、補強材60を備える点で、第4の実施形態の超電導線材400と異なる。
【0210】
補強材60は、第1の超電導線材401と第2の超電導線材402との間に設けられる。補強材60は、例えば、第1の超電導層16と第2の超電導層26との間に設けられる。
【0211】
補強材60は、例えば、第1の超電導線材401及び第2の超電導線材402に接する。補強材60は、例えば、接続層30に接する。
【0212】
補強材60を備えることで、超電導線材410の機械的強度が向上する。
【0213】
補強材60は、例えば、金属又は樹脂である。補強材60は、例えば、はんだである。補強材60は、例えば、銀(Ag)及びインジウム(In)を含むはんだである。
【0214】
(第2の変形例)
図13は、第4の実施形態の超電導線材の変形例の模式断面図である。第4の実施形態の変形例の超電導線材420は、接続層30の両端部に第2の物質30bが配置されている点で、第4の実施形態の超電導線材400と異なる。
【0215】
接続層30の端部に配置された第2の物質30bは、例えば、第1の超電導層16と接続部材403の超電導層46との間に連続して設けられる。また、第2の超電導層26と接続部材403の超電導層46との間に連続して設けられる。
【0216】
接続層30の端部に第2の物質30bを配置することで、上下からの圧力印加時に、対向する第1の超電導層16及び第2の超電導層26に加わる応力を分散することができる。これにより、第1の超電導層16及び第2の超電導層26に生じるクラックを抑制することができ、高い機械的強度を備える超電導線材が実現できる。また、高い臨界電流を得ることにも有効である。
【0217】
以上、第4の実施形態によれば、2本の超電導線材の接続により長尺化された、低い電気抵抗と高い機械的強度を備える超電導線材が実現できる。
【0218】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の超電導線材は、第1の超電導層を含む第1の超電導線材と、第2の超電導層を含む第2の超電導線材と、第1の面と第1の面と対向する第2の面を有する第3の超電導層と、第1の超電導層と第3の超電導層の間、及び、第2の超電導層と第3の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む第1の物質と、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、銅(Cu)、スズ(Sn)、及び亜鉛(Zn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素を含む第2の物質と、を含む接続層と、を備える。そして、第1の超電導層及び第2の超電導層は、第3の超電導層の第1の面の側に位置し、第2の物質の一部は、第1の超電導層及び第3の超電導層に接し、第2の物質の一部は、第1の超電導層と第3の超電導層との間で連続し、第2の物質の別の一部は、第2の超電導層及び第3の超電導層に接し、第2の物質の別の一部は、第2の超電導層と第3の超電導層との間で連続する。第5の実施形態の超電導線材は、接続層に第3の実施形態と同様の接続層を備える点で、第4の実施形態の超電導線材と異なる。以下、第4の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0219】
第5の実施形態の超電導線材は、
図11に示す第4の実施形態の超電導線材400と同様の構造を備える。第5の実施形態の接続層30は、
図10に示す第3の実施形態の接続層30と同様の構成を備える。
【0220】
第2の物質30bの一部は、第1の超電導層16及び第3の超電導層46に接し、第2の物質30bの一部は、第1の超電導層16と第3の超電導層46との間で連続する。第2の物質30bの一部は、第1の超電導層16及び第3の超電導層46との間の接続層30の中に存在する。
【0221】
第2の物質30bの別の一部は、第2の超電導層26及び第3の超電導層46に接し、第2の物質30bの別の一部は、第2の超電導層26と第3の超電導層46との間で連続する。第2の物質30bの一部は、第2の超電導層26及び第3の超電導層46との間の接続層30の中に存在する。
【0222】
以上、第5の実施形態によれば、2本の超電導線材の接続により長尺化された、低い電気抵抗と高い機械的強度を備える超電導線材が実現できる。
【0223】
(第6の実施形態)
第6の実施形態の超電導線材は、接続層が互いに離間した第1の部分と第2の部分を含む点で、第4又は第5の実施形態の超電導線材と異なる。以下、第4又は第5の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0224】
図14は、第6の実施形態の超電導線材の模式断面図である。第6の実施形態の超電導線材600は、第1の超電導線材401、第2の超電導線材402、及び接続部材403を備える。第6の実施形態の超電導線材600は、第1の超電導線材401と第2の超電導線材402が、接続部材403を用いて接続されることで、長尺化されている。
【0225】
第1の超電導線材401は、第1の基板12、第1の中間層14、第1の超電導層16、第1の保護層18を備える。第2の超電導線材402は、第2の基板22、第2の中間層24、第2の超電導層26、第2の保護層28を備える。接続部材403は、第3の基板42、第3の中間層44、第3の超電導層46を備える。
【0226】
接続層30は、第1の部分30xと第2の部分30yを含む。第1の部分30xと第2の部分30yは離間する。
【0227】
第1の部分30xは、第1の超電導層16と第3の超電導層46との間に設けられる。第1の部分30xは、第1の超電導層16に接する。第1の部分30xは、第3の超電導層46に接する。
【0228】
第2の部分30yは、第2の超電導層26と第3の超電導層46との間に設けられる。第2の部分30yは、第2の超電導層26に接する。第2の部分30yは、第3の超電導層46に接する。
【0229】
第6の実施形態の接続層30は、
図1に示す第1の実施形態の接続層30、
図9に示す第2の実施形態の接続層30、又は
図10に示す第3の実施形態の接続層30と同様の構成を備える。第1の部分30x及び第2の部分30yは、
図1に示す第1の実施形態の接続層30、
図9に示す第2の実施形態の接続層30、又は
図10に示す第3の実施形態の接続層30と同様の構成を備える。
【0230】
第6の実施形態の超電導線材600では、例えば、第1の超電導線材401から、接続層30の第1の部分30x、接続部材403、及び接続層30の第2の部分30yを通って第2の超電導線材402に電流が流れる。
【0231】
(第1の変形例)
図15は、第6の実施形態の超電導線材の第1の変形例の模式断面図である。第6の実施形態の第1の変形例の超電導線材610は、第1の超電導層16の第3の超電導層46に対向する面の一部が露出し、第2の超電導層26の第3の超電導層46に対向する面の一部が露出する点で、第6の実施形態の超電導線材600と異なる。
【0232】
第1の超電導層16の上面の、第2の超電導層26側の端部の近傍に、接続層30が存在しない領域がある。また、第2の超電導層26の上面の、第1の超電導層16側の端部の近傍に、接続層30が存在しない領域がある。
【0233】
(第2の変形例)
図16は、第6の実施形態の超電導線材の第2の変形例の模式断面図である。第6の実施形態の第2の変形例の超電導線材620は、補強材60を備える点で、第1の変形例の超電導線材610と異なる。
【0234】
補強材60は、第1の超電導線材401と第2の超電導線材402との間に設けられる。補強材60は、例えば、第1の超電導層16と第2の超電導層26との間に設けられる。補強材60は、例えば、第1の超電導層16と第3の超電導層46との間に設けられる。補強材60は、例えば、第2の超電導層26と第3の超電導層46との間に設けられる。補強材60は、例えば、第1の部分30xと第2の部分30yとの間に設けられる。
【0235】
補強材60を備えることで、超電導線材620の機械的強度が向上する。
【0236】
補強材60は、例えば、金属又は樹脂である。補強材60は、例えば、はんだである。補強材60は、例えば、銀(Ag)及びインジウム(In)を含むはんだである。
【0237】
(第3の変形例)
図17は、第6の実施形態の超電導線材の変形例の模式断面図である。第6の実施形態の変形例の超電導線材630は、接続層30の第1の部分30xの両端部、及び、接続層30の第2の部分30yの両端部に第2の物質30bが配置されている点で、第6の実施形態の超電導線材600と異なる。
【0238】
接続層30の第1の部分30xの両端部に配置された第2の物質30bは、例えば、第1の超電導層16と接続部材403の超電導層46との間に連続して設けられる。また、接続層30の第2の部分30yの両端部に配置された第2の物質30bは、例えば、第2の超電導層26と接続部材403の超電導層46との間に連続して設けられる。
【0239】
接続層30の第1の部分30xの両端部、及び、接続層30の第2の部分30yの両端部に第2の物質30bを配置することで、上下からの圧力印加時に、対向する第1の超電導層16及び第2の超電導層26及び接続部材の超電導層46に加わる応力を分散することができる。これにより、第1の超電導層16及び第2の超電導層26及び接続部材の超電導層46に生じるクラックを抑制することができ、高い機械的強度を備える超電導線材が実現できる。また、高い臨界電流を得ることにも有効である。
【0240】
以上、第6の実施形態によれば、2本の超電導線材の接続により長尺化された、低い電気抵抗と高い機械的強度を備える超電導線材が実現できる。
【0241】
(第7の実施形態)
第7の実施形態の超電導コイルは、第4ないし第6の実施形態の超電導線材を備える。以下、第4ないし第6の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0242】
図18は、第7の実施形態の超電導コイルの模式斜視図である。
図19は、第7の実施形態の超電導コイルの模式断面図である。
【0243】
第7の実施形態の超電導コイル700は、例えば、NMR、MRI、重粒子線治療器、又は、超電導磁気浮上式鉄道車両などの超電導機器の磁場発生用のコイルとして用いられる。
【0244】
超電導コイル700は、巻枠110、第1の絶縁板111a、第2の絶縁板111b、及び巻線部112を備える。巻線部112は、超電導線材120と、線材間層130を有する。
【0245】
図19は、第1の絶縁板111a、及び第2の絶縁板111bを除いた状態を示す。
【0246】
巻枠110は、例えば、繊維強化プラスチックで形成される。超電導線材120は、例えば、テープ形状である。超電導線材120は、
図16に示すように、巻回中心Cを中心に、同心円状のいわゆるパンケーキ形状に巻枠110に巻き回される。
【0247】
線材間層130は、超電導線材120を固定する機能を有する。線材間層130は、超電導線材120が、超電導機器の使用中の振動や、互いの摩擦により破壊されることを抑制する機能を有する。
【0248】
第1の絶縁板111a及び第2の絶縁板111bは、例えば、繊維強化プラスチックで形成される。第1の絶縁板111a及び第2の絶縁板111bは、巻線部112を外部に対して絶縁する機能を有する。巻線部112は、第1の絶縁板111aと第2の絶縁板111bとの間に位置する。
【0249】
超電導線材120には、第4ないし第6の実施形態の超電導線材が用いられる。
【0250】
以上、第7の実施形態によれば、低い電気抵抗と高い機械的強度を備える超電導線材を備えることで、特性の向上した超電導コイルが実現できる。
【0251】
(第8の実施形態)
第8の実施形態の超電導機器は、第7の実施形態の超電導コイルを備えた超電導機器である。以下、第7の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0252】
図20は、第8の実施形態の超電導機器のブロック図である。第8の実施形態の超電導機器は、重粒子線治療器800である。重粒子線治療器800は、超電導機器の一例である。
【0253】
重粒子線治療器800は、入射系50、シンクロトロン加速器52、ビーム輸送系54、照射系56、制御系58を備える。
【0254】
入射系50は、例えば、治療に用いる炭素イオンを生成し、シンクロトロン加速器52に入射するための予備加速を行う機能を有する。入射系50は、例えば、イオン発生源と線形加速器を有する。
【0255】
シンクロトロン加速器52は、入射系50から入射された炭素イオンビームを治療に適合したエネルギーまで加速する機能を有する。シンクロトロン加速器52に、第7の実施形態の超電導コイル700が用いられる。
【0256】
ビーム輸送系54は、シンクロトロン加速器52から入射された炭素イオンビームを照射系56まで輸送する機能を有する。ビーム輸送系54は、例えば、偏向電磁石を有する。
【0257】
照射系56は、ビーム輸送系54から入射された炭素イオンビームを照射対象である患者に照射する機能を備える。照射系56は、例えば、炭素イオンビームを任意の方向から照射可能にする回転ガントリーを有する。回転ガントリーに、第7の実施形態の超電導コイル700が用いられる。
【0258】
制御系58は、入射系50、シンクロトロン加速器52、ビーム輸送系54、及び照射系56の制御を行う。制御系58は、例えば、コンピュータである。
【0259】
第8の実施形態の重粒子線治療器800は、シンクロトロン加速器52及び回転ガントリーに、第7の実施形態の超電導コイル700が用いられる。したがって、特性の優れた重粒子線治療器800が実現される。
【0260】
第8の実施形態では、超電導機器の一例として、重粒子線治療器800の場合を説明したが、超電導機器は、核磁気共鳴装置(NMR)、磁気共鳴画像診断装置(MRI)、又は、超電導磁気浮上式鉄道車両であっても構わない。
【実施例】
【0261】
実施例1ないし実施例13、及び比較例1ないし比較例3について説明する。実施例1ないし実施例13、及び比較例1ないし比較例3の、第1の面積割合、第2の面積割合、第3の面積割合、及び、第4の面積割合を表1に示す。また、実施例1ないし実施例13、及び比較例1ないし比較例3の評価結果を表1ないし表7に示す。
【0262】
【0263】
(実施例1)
ハステロイ基材上に中間層とGdBa2Cu3O7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を2本用意した。それぞれの長さは10cmとした。それぞれの超電導線材の端部から1cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層(第1及び第2の超電導層)を露出させた。
【0264】
Gd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、十分混合し、混合粉末を900℃で熱処理して仮焼き体を得た。仮焼き体を粉砕し、得られた粉末を圧縮成形して圧粉体を作製した。得られた圧粉体を930℃で焼結した後に酸素雰囲気中500℃で熱処理することで、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の酸化物超電導体を作製した。得られた酸化物超電導体の表面を研磨することで薄板形状に加工した。
【0265】
酸化銀の粉末をアセトン中で分散させ、スラリーを作製した。得られたスラリーを、上記10cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層(第1及び第2の超電導層)に塗布した後、
図8に示す構造となるように、超電導線材のスラリーを塗布した部分同士を向かい合わせて、間に薄板形状の超電導体を挟んで重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだ状態で接続部分に加重が印加されるようにネジ止めをし、そのまま炉に入れた。
【0266】
大気雰囲気中で500℃に加熱し、第1の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0267】
接続後の超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、93K付近で明確な電気抵抗の低下を確認した。本接続構造の、明確な電気抵抗の低下後の電気抵抗値を基準値1.0として、以下実施例、比較例において相対電気抵抗値を示す。
【0268】
実施例1の接続構造は、80Kまで温度を低下させても室温と同等の接続性を維持し、室温から80Kまでの熱収縮に耐える接続強度を有していた。実施例1の接続構造の両端に引張荷重を印加し、接続部が剥がれたときの荷重を基準値1.0として、以下実施例、比較例において相対強度を示す。
【0269】
接続部断面をSEM及びSEM-EDXで観察したところ、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の第1の物質と、銀(第2の物質)とが確認された。第1の超電導層と接続層との間の第1の界面において、第2の物質と第1の超電導層とが接する第1の領域の単位面積あたりに占める第1の面積割合は10%であり、第2の超電導層と接続層との間の第2の界面において、第2の物質と第2の超電導層とが接する第2の領域の単位面積あたりに占める第2の面積割合は15%であった。
【0270】
(実施例2)
ハステロイ基材上に中間層とGdBa2Cu3O7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を2本用意した。それぞれの長さは10cmとした。それぞれの超電導線材の端部から1cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0271】
Gd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、十分混合し、混合粉末を900℃で熱処理して仮焼き体を得た。仮焼き体を粉砕し、得られた粉末を圧縮成形して圧粉体を作製した。得られた圧粉体を950℃で焼結した後に酸素雰囲気中500℃で熱処理することで、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の酸化物超電導体を作製した。得られた酸化物超電導体の表面を研磨することで薄板形状に加工した。
【0272】
Gd
2O
3粉末と、BaCO
3粉末と、CuO粉末とを乳鉢を用いて混合した。混合粉と酸化銀の粉末をアセトン中で分散させ、スラリーを作製した。得られたスラリーを、上記10cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した後、
図8に示す構造となるように、超電導線材のスラリーを塗布した部分同士を向かい合わせて、間に薄板形状の超電導体を挟んで重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだ状態で接続部分に加重が印加されるようにネジ止めをし、そのまま炉に入れた。
【0273】
大気雰囲気中で800℃に加熱し、第1の熱処理を行った。その後、室温付近まで冷却し、炉に酸素ガスを導入して、酸素雰囲気中で500℃に加熱し、第2の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0274】
接続後の超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、93K付近で明確な超電導転移を確認し、相対電気抵抗値は0.3であった。また、本接続構造は、80Kまで温度を低下させても室温と同等の接続性を維持し、室温から80Kまでの熱収縮に耐える接続強度を有していた。相対接続強度は1.4であった。
【0275】
接続部断面をSEM及びSEM-EDXで観察したところ、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の第1の物質と、銀(第2の物質)とが確認された。第1の面積割合は12%であり、第2の面積割合は13%であった。
【0276】
接続部には、Gd2O3、BaCO3、CuO及びGdとCuとOの化合物が存在した。
【0277】
(実施例3)
ハステロイ基材上に中間層とGdBa2Cu3O7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を2本用意した。それぞれの長さは10cmとした。それぞれの超電導線材の端部から1cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0278】
Gd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、十分混合し、混合粉末を900℃で熱処理して仮焼き体を得た。仮焼き体を粉砕し、得られた粉末を圧縮成形して圧粉体を作製した。得られた圧粉体を950℃で焼結した後に酸素雰囲気中500℃で熱処理することで、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の酸化物超電導体を作製した。得られた酸化物超電導体の表面を研磨することで薄板形状に加工した。薄板形状の超電導体にMOD溶液を塗布し、オーブンで乾燥させた後に800℃で熱処理を行った。
【0279】
酸化銀の粉末をアセトン中で分散させ、スラリーを作製した。得られたスラリーを、上記10cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した後、
図8に示す構造となるように、超電導線材のスラリーを塗布した部分同士を向かい合わせて、間に薄板形状の超電導体を挟んで重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだ状態で接続部分に加重が印加されるようにネジ止めをし、そのまま炉に入れた。
【0280】
Arと酸素の混合雰囲気中で800℃に加熱し、第1の熱処理を行った。その後、室温付近まで冷却し、炉に酸素ガスを導入して、酸素雰囲気中で500℃に加熱し、第2の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0281】
接続後の超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、93K付近で明確な超電導転移を確認し、相対電気抵抗値は0.01であった。また、本接続構造は、80Kまで温度を低下させても室温と同等の接続性を維持し、室温から80Kまでの熱収縮に耐える接続強度を有していた。相対接続強度は1.2であった。
【0282】
接続部断面をSEM及びSEM-EDXで観察したところ、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の第1の物質と、銀(第2の物質)とが確認された。第1の面積割合は20%であり、第2の面積割合は18%であった。
【0283】
(実施例4)
ハステロイ基材上に中間層とGdBa2Cu3O7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を2本用意した。それぞれの長さは10cmとした。それぞれの超電導線材の端部から1cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0284】
Gd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、十分混合し、混合粉末を900℃で熱処理して仮焼き体を得た。仮焼き体を粉砕し、得られた粉末を圧縮成形して圧粉体を作製した。得られた圧粉体を950℃で焼結した後に酸素雰囲気中500℃で熱処理することで、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の酸化物超電導体を作製した。得られた酸化物超電導体を粉砕することで、粉末状の超電導体を得た。
【0285】
Gd
2O
3粉末と、BaCO
3粉末と、CuO粉末とを乳鉢を用いて混合した。混合粉と粉末状の超電導体と酸化銀の粉末をアセトン中で分散させ、スラリーを作製した。得られたスラリーを、上記10cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した後、
図9に示す構造となるように、超電導線材のスラリーを塗布した部分同士を向かい合わせて重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだ状態で接続部分に加重が印加されるようにネジ止めをし、そのまま炉に入れた。
【0286】
大気雰囲気中で800℃に加熱し、第1の熱処理を行った。その後、室温付近まで冷却し、炉に酸素ガスを導入して、酸素雰囲気中で500℃に加熱し、第2の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0287】
接続後の超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、93K付近で明確な超電導転移を確認し、相対電気抵抗値は0.6であった。また、本接続構造は、80Kまで温度を低下させても室温と同等の接続性を維持し、室温から80Kまでの熱収縮に耐える接続強度を有していた。相対接続強度は1.2であった。
【0288】
接続部断面をSEM及びSEM-EDXで観察したところ、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の第1の物質と、銀(第2の物質)とが確認された。第1の面積割合は10%であり、第2の面積割合は12%であった。
【0289】
接続部には、Gd2O3、BaCO3、CuO及びGdとCuとOの化合物が存在した。
【0290】
(実施例5)
ハステロイ基材上に中間層とGdBa2Cu3O7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を2本用意した。それぞれの長さは10cmとした。それぞれの超電導線材の端部から1cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0291】
Gd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、十分混合し、混合粉末を900℃で熱処理して仮焼き体を得た。仮焼き体を粉砕し、得られた粉末を圧縮成形して圧粉体を作製した。得られた圧粉体を950℃で焼結した後に酸素雰囲気中500℃で熱処理することで、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の酸化物超電導体を作製した。得られた酸化物超電導体を粉砕することで、粉末状の超電導体を得た。粉末状の超電導体にMOD溶液を塗布し、オーブンで乾燥させた後に800℃で熱処理を行った。
【0292】
粉末状の超電導体と酸化銀の粉末をアセトン中で分散させ、スラリーを作製した。得られたスラリーを、上記10cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した後、
図9に示す構造となるように、超電導線材のスラリーを塗布した部分同士を向かい合わせて重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだ状態で接続部分に加重が印加されるようにネジ止めをし、そのまま炉に入れた。
【0293】
Arと酸素の混合雰囲気中で800℃に加熱し、第1の熱処理を行った。その後、室温付近まで冷却し、炉に酸素ガスを導入して、酸素雰囲気中で500℃に加熱し、第2の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0294】
接続後の超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、93K付近で明確な超電導転移を確認し、相対電気抵抗値は0.03であった。また、本接続構造は、80Kまで温度を低下させても室温と同等の接続性を維持し、室温から80Kまでの熱収縮に耐える接続強度を有していた。相対接続強度は1.1であった。
【0295】
接続部断面をSEM及びSEM-EDXで観察したところ、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の第1の物質と、銀(第2の物質)とが確認された。第1の面積割合は15%であり、第2の面積割合は17%であった。
【0296】
(実施例6)
ハステロイ基材上に中間層とGdBa2Cu3O7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。それぞれの長さは1本を3cm、残りの2本を10cmとした。3cmの線は両端部間を、10cmの2本は端部から1cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0297】
Gd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、十分混合し、混合粉末を900℃で熱処理して仮焼き体を得た。仮焼き体を粉砕し、得られた粉末を圧縮成形して圧粉体を作製した。得られた圧粉体を930℃で焼結した後に酸素雰囲気中500℃で熱処理することで、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の酸化物超電導体を作製した。得られた酸化物超電導体の表面を研磨することで薄板形状に加工した。
【0298】
Gd
2O
3粉末と、BaCO
3粉末と、CuO粉末とを乳鉢を用いて混合した。混合粉と酸化銀の粉末をアセトン中で分散させ、スラリーを作製した。得られたスラリーを、上記10cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層(第1及び第3の超電導層)及び、上記3cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層(第2の超電導層)に塗布した後、
図11に示す構造となるように、超電導線材のスラリーを塗布した部分同士を向かい合わせて、間に薄板形状の超電導体を挟んで重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだ状態で接続部分に加重が印加されるようにネジ止めをし、そのまま炉に入れた。
【0299】
Arと酸素の混合雰囲気中で800℃に加熱し、第1の熱処理を行った。その後、室温付近まで冷却し、炉に酸素ガスを導入して、酸素雰囲気中で500℃に加熱し、第2の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0300】
接続後の超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、93K付近で明確な超電導転移を確認し、相対電気抵抗値は0.4であった。また、本接続構造は、80Kまで温度を低下させても室温と同等の接続性を維持し、室温から80Kまでの熱収縮に耐える接続強度を有していた。相対接続強度は1.0であった。
【0301】
接続部断面をSEM及びSEM-EDXで観察したところ、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の第1の物質と、銀(第2の物質)とが確認された。第1の面積割合は15%であり、第2の面積割合は20%であり、第3の面積割合は13%であった。
【0302】
(実施例7)
ハステロイ基材上に中間層とGdBa2Cu3O7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。それぞれの長さは1本を3cm、残りの2本を10cmとした。3cmの線は両端部間を、10cmの2本は端部から1cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0303】
Gd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、十分混合し、混合粉末を900℃で熱処理して仮焼き体を得た。仮焼き体を粉砕し、得られた粉末を圧縮成形して圧粉体を作製した。得られた圧粉体を930℃で焼結した後に酸素雰囲気中500℃で熱処理することで、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の酸化物超電導体を作製した。得られた酸化物超電導体を粉砕することで、粉末状の超電導体を得た。粉末状の超電導体にMOD溶液を塗布し、オーブンで乾燥させた後に800℃で熱処理を行った。
【0304】
酸化銀の粉末をアセトン中で分散させ、スラリーを作製した。得られたスラリーを、上記3cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層(第2の超電導層)の両端部に塗布した後、大気中500℃で熱処理を行った。
【0305】
粉末状の超電導体と酸化銀の粉末をアセトン中で分散させ、スラリーを作製した。得られたスラリーを、上記10cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層(第1及び第3の超電導層)及び、上記3cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層(第2の超電導層)に塗布した後、図 に示す構造となるように、超電導線材のスラリーを塗布した部分同士を向かい合わせて重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだ状態で接続部分に加重が印加されるようにネジ止めをし、そのまま炉に入れた。
【0306】
Arと酸素の混合雰囲気中で800℃に加熱し、第1の熱処理を行った。その後、室温付近まで冷却し、炉に酸素ガスを導入して、酸素雰囲気中で500℃に加熱し、第2の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0307】
接続後の超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、93K付近で明確な超電導転移を確認し、相対電気抵抗値は0.05であった。また、本接続構造は、80Kまで温度を低下させても室温と同等の接続性を維持し、室温から80Kまでの熱収縮に耐える接続強度を有していた。相対接続強度は1.2であった。
【0308】
接続部断面をSEM及びSEM-EDXで観察したところ、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の第1の物質と、銀(第2の物質)とが確認された。第1の面積割合は25%であり、第2の面積割合は30%であり、第3の面積割合は22%であった。
【0309】
(実施例8)
ハステロイ基材上に中間層とGdBa2Cu3O7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。それぞれの長さは1本を3cm、残りの2本を10cmとした。3cmの線は両端部を、10cmの2本は端部から1cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0310】
Gd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、十分混合し、混合粉末を900℃で熱処理して仮焼き体を得た。仮焼き体を粉砕し、得られた粉末を圧縮成形して圧粉体を作製した。得られた圧粉体を930℃で焼結した後に酸素雰囲気中500℃で熱処理することで、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の酸化物超電導体を作製した。得られた酸化物超電導体を粉砕することで、粉末状の超電導体を得た。粉末状の超電導体にMOD溶液を塗布し、オーブンで乾燥させた後に800℃で熱処理を行った。
【0311】
粉末状の超電導体と酸化銀の粉末をアセトン中で分散させ、スラリーを作製した。得られたスラリーを、上記10cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層(第1及び第4の超電導層)及び、上記3cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層(第2及び第3の超電導層)に塗布した後、
図13に示す構造となるように、超電導線材のスラリーを塗布した部分同士を向かい合わせて重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだ状態で接続部分に加重が印加されるようにネジ止めをし、そのまま炉に入れた。
【0312】
Arと酸素の混合雰囲気中で800℃に加熱し、第1の熱処理を行った。その後、室温付近まで冷却し、炉に酸素ガスを導入して、酸素雰囲気中で500℃に加熱し、第2の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0313】
接続後の超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、93K付近で明確な超電導転移を確認し、相対電気抵抗値は0.04であった。また、本接続構造は、80Kまで温度を低下させても室温と同等の接続性を維持し、室温から80Kまでの熱収縮に耐える接続強度を有していた。相対接続強度は1.0であった。
【0314】
接続部断面をSEM及びSEM-EDXで観察したところ、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の第1の物質と、銀(第2の物質)とが確認された。第1の面積割合は17%であり、第2の面積割合は22%であり、第3の面積割合は24%であり、第4の面積割合は18%であった。
【0315】
(実施例9)
接続構造を形成した後に、
図12に示す構造となるように、インジウム銀はんだで空隙を埋めたこと以外は、実施例6と同様にして接続構造を形成し、測定、観察をおこなった。
【0316】
(実施例10)
スラリー作製時に粉末状の超電導体に対する酸化銀の粉末の割合を増加したこと以外は、実施例5と同様にして接続構造を形成し、測定、観察をおこなった。接続層は
図10に示すような構造であり、第2の物質が第1の超電導層と第2の超電導層の間に連続して存在していた。
【0317】
(実施例11)
Gd(ガドリニウム)をEu(エルビウム)に変えたこと以外は、実施例2と同様にして接続構造を形成し、測定、観察をおこなった。
【0318】
(実施例12)
Gd(ガドリニウム)をY(イットリウム)に変えたこと以外は、実施例2と同様にして接続構造を形成し、測定、観察をおこなった。
【0319】
(実施例13)
酸化銀の粉末をインジウムの粉末に変え、第1の熱処理をAr雰囲気中300℃に変えたこと以外は、実施例1と同様にして接続構造を形成し、測定、観察をおこなった。
【0320】
(比較例1)
ハステロイ基材上に中間層とGdBa2Cu3O7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を2本用意した。それぞれの長さは10cmとした。それぞれの超電導線材の端部から1cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層(第1及び第2の超電導層)を露出させた。
【0321】
Gd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、十分混合し、混合粉末を900℃で熱処理して仮焼き体を得た。仮焼き体を粉砕し、得られた粉末を圧縮成形して圧粉体を作製した。得られた圧粉体を930℃で焼結した後に酸素雰囲気中500℃で熱処理することで、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の酸化物超電導体を作製した。得られた酸化物超電導体の表面を研磨することで薄板形状に加工した。
【0322】
図8に示す構造となるように、露出させた超電導層同士を向かい合わせて、間に薄板形状の超電導体を挟んで重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだ状態で接続部分に加重が印加されるようにネジ止めをし、そのまま炉に入れた。
【0323】
大気雰囲気中で800℃に加熱し、第1の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0324】
比較例1の試料は、炉から取り出すとすぐに剥がれ、接続構造を成していなかった。
【0325】
(比較例2)
ハステロイ基材上に中間層とGdBa2Cu3O7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を2本用意した。それぞれの長さは10cmとした。それぞれの超電導線材の端部から1cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0326】
Gd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、十分混合し、混合粉末を900℃で熱処理して仮焼き体を得た。仮焼き体を粉砕し、得られた粉末を圧縮成形して圧粉体を作製した。得られた圧粉体を950℃で焼結した後に酸素雰囲気中500℃で熱処理することで、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の酸化物超電導体を作製した。得られた酸化物超電導体の表面を研磨することで薄板形状に加工した。
【0327】
酸化銀の粉末に少量の酢酸エチルを加えてスラリーを作製した。得られたスラリーを、上記10cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した後、
図8に示す構造となるように、超電導線材のスラリーを塗布した部分同士を向かい合わせて、間に薄板形状の超電導体を挟んで重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだ状態で接続部分に加重が印加されるようにネジ止めをし、そのまま炉に入れた。
【0328】
大気雰囲気中で500℃に加熱し、第1の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0329】
接続後の超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、明確な超電導転移が確認されず、高い抵抗値を示した。また、本接続構造は、80Kまで温度を低下させても室温と同等の接続性を維持し、室温から80Kまでの熱収縮に耐える接続強度を有していた。相対接続強度は2.0であった。
【0330】
接続部断面をSEM及びSEM-EDXで観察したところ、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の第1の物質と、銀(第2の物質)とが確認された。第1の面積割合は55%であり、第2の面積割合は60%であった。
【0331】
(比較例3)
ハステロイ基材上に中間層とGdBa2Cu3O7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を2本用意した。それぞれの長さは10cmとした。それぞれの超電導線材の端部から1cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0332】
Gd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、十分混合し、混合粉末を900℃で熱処理して仮焼き体を得た。仮焼き体を粉砕し、得られた粉末を圧縮成形して圧粉体を作製した。得られた圧粉体を950℃で焼結した後に酸素雰囲気中500℃で熱処理することで、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の酸化物超電導体を作製した。得られた酸化物超電導体の表面を研磨することで薄板形状に加工した。
【0333】
銀の粉末をアセトン中に分散し、スラリーを作製した。得られたスラリーを、上記10cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した後、図 に示す構造となるように、超電導線材のスラリーを塗布した部分同士を向かい合わせて、間に薄板形状の超電導体を挟んで重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだ状態で接続部分に加重が印加されるようにネジ止めをし、そのまま炉に入れた。
【0334】
大気雰囲気中で500℃に加熱し、第1の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0335】
比較例1の試料は、炉から取り出すとすぐに剥がれ、接続構造を成していなかった。
【0336】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0337】
16 第1の超電導層
26 第2の超電導層
30 接続層
30a 第1の物質
30b 第2の物質
46 第3の超電導層
100 第1の実施形態の接続構造
200 第2の実施形態の接続構造
300 第3の実施形態の接続構造
400 第4の実施形態の超電導線材
401 第1の超電導線材
402 第2の超電導線材
600 第6の実施形態の超電導線材
700 超電導コイル
800 重粒子線治療器
P1 第1の界面
P2 第2の界面
P3 第3の界面