(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G03B 9/02 20210101AFI20241105BHJP
G03B 17/14 20210101ALI20241105BHJP
H04N 13/296 20180101ALI20241105BHJP
H04N 23/75 20230101ALI20241105BHJP
G03B 35/08 20210101ALN20241105BHJP
【FI】
G03B9/02 B
G03B17/14
H04N13/296
H04N23/75
G03B35/08
(21)【出願番号】P 2021163591
(22)【出願日】2021-10-04
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 章
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-049387(JP,A)
【文献】特開2013-231821(JP,A)
【文献】特開2013-092630(JP,A)
【文献】特開2012-142748(JP,A)
【文献】特開2012-085252(JP,A)
【文献】特開2007-065592(JP,A)
【文献】特開平08-029895(JP,A)
【文献】特開平07-049456(JP,A)
【文献】特開昭63-099693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/00 - 9/07
G01C 3/06
G03B 17/14
G03B 19/00 -19/16
G03B 35/00 -37/06
H04N 13/239
H04N 13/243
H04N 13/296
H04N 23/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ開口径が可変である開口絞りを有する複数の光学系を制御するための制御装置であって、
前記複数の光学系のそれぞれの
前記開口絞りの駆動
量を設定する駆動量設定手段と、
前記駆動
量に基づいて前記複数の光学系のそれぞれの
前記開口絞りの駆動速度を設定する速度設定手段
とを有し、
前記駆動量設定手段は、前記複数の光学系のそれぞれの前記開口絞りの絞り値が同等となるように前記駆動量を設定し、
前記速度設定手段は、前記複数の
光学系のそれぞれの
前記開口絞りの駆動時間が同等となるように前
記駆動速度を
設定することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記駆動量設定手段は、前記複数の光学系のそれぞれの
前記開口絞りに対して、互いに異なる
前記駆動
量を設定することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前
記駆動量を補正するための補正量情報を記憶する記憶手段をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記速度設定手段は、
前記駆動
量と、前記複数の光学系のそれぞれの
前記開口絞りに共通である第1の駆動速度
とに基づいて
該開口絞りの第1の駆動時間を算出し、
前記複数の光学系のそれぞれの
前記開口絞りの少なくとも
一つについて、前記第1の駆動速度で駆動させた場合に比べて前記複数の光学系のそれぞれの
前記開口絞り間の駆動時間の差が小さくなるよう
に前記駆動速度を
設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御装置は、交換レンズとカメラ本体を含むカメラシステムにおける交換レンズに設けられており、
前記第1の駆動速度は
、前記カメラ本体から前記交換レンズに対して指示される速度であることを特徴とする請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記速度設定手段は、前記複数の光学系のそれぞれの
前記開口絞りのうち
一つの開口絞りを基準として駆動時間が同等となるように他の開口絞りの
前記駆動速度を
設定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前
記駆動速度には上限または下限が設けられており、
前記速度設定手段は、前記
一つの開口絞り
の駆動速度が前記上限または前記下限を超える場合に
は該駆動速度を前記上限または前記下限に設定し、
前記一つの開口絞りを基準として駆動時間が同等となるように
前記他の開口絞りの
前記駆動速度を
設定することを特徴とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記複数の光学系のうち
前記一つの
開口絞りを有する光学系は自動露出の基準となる画像を得るために用いられ、
前記速度設定手段は、前記
一つの開口絞りを基準として駆動時間が同等となるように
前記他の開口絞りの
前記駆動速度を決定することを特徴とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項9】
前記複数の光学系のうち
前記一つの
開口絞りを有する光学系は合焦判定の基準となる画像を得るために用いられ、
前記速度設定手段は、前記
一つの開口絞りを基準として駆動時間が同等となるように
前記他
の開口絞りの
前記駆動速度を決定することを特徴とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項10】
それぞれ開口径が可変である開口絞りを有する複数の光学系を制御するための制御方法であって、
前記複数の光学系のそれぞれの
前記開口絞りの駆動
量を設定するステップと、
前記駆動
量に基づいて前記複数の光学系のそれぞれの
前記開口絞りの駆動速度を設定するステップ
とを有し、
前記駆動量を設定するステップにおいて、前記複数の光学系のそれぞれの前記開口絞りの絞り値が同等となるように前記駆動量を設定し、
前記駆動速度を設定するステップにおいて、前記複数の光学系のそれぞれの
前記開口絞りの駆動時間が同等となるように前
記駆動速度
を設定することを特徴とする制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光学系を有する光学機器に設けられた各開口絞りの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ステレオ立体映像の撮影手法として、複数の光学系を有する複眼レンズユニットをカメラに装着して撮影する方法がある。
【0003】
複眼レンズユニットにおいては、それぞれの光学系(個眼)毎に開口絞りが設けられており、カメラから絞りの操作を行うことができる場合がある。
【0004】
例えば、特許文献1では複眼撮影系における開口絞り制御に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複眼レンズユニットにおける開口絞りの制御では、開口絞りの駆動速度にずれが生じると撮影結果に違和感を生じることがわかった。
【0007】
例えば、個眼ごとの開口絞りの動作のタイミングにずれが生じると、絞り量の変化にズレが生じてしまう。この場合、ステレオ撮影により得られる複数の画像の光量変化のタイミングや深度変化のタイミングに差が生じ得る。この差が大きくなってくると、ステレオ撮影により取得された動画や画像に違和感が生じてしまう場合がある。
【0008】
特許文献1に記載の技術では、光量分布を考慮して開口絞りを制御しているが、開口絞りの同期等については考慮されていなかった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、複数の光学系を有する光学機器において、開口絞りの駆動に伴う画像や動画の違和感を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の制御装置は、それぞれ開口径が可変である開口絞りを有する複数の光学系を制御するための制御装置であって、前記複数の光学系のそれぞれの開口絞りの駆動量に関する駆動量情報を設定する駆動量設定手段と、前記駆動量情報に基づいて前記複数の光学系のそれぞれの開口絞りの駆動速度を設定する速度設定手段と、を有し、前記速度設定手段は、前記複数のそれぞれの開口絞りの駆動時間が同等となるように前記複数の光学系のそれぞれの開口絞りの駆動速度を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の光学系を有する光学機器において、開口絞りの駆動に伴う画像や動画の違和感を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】第1の実施形態における絞り駆動制御の処理フローチャートである。
【
図4】第2の実施形態における絞り駆動制御の処理フローチャートである。
【
図5】複数絞りの駆動時間を略同じとするためのデシジョンテーブルである。
【
図6】絞り駆動速度再計算処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の光学系及びそれを有する撮像装置の実施例について、添付の図面に基づいて説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係るレンズ装置としての交換レンズ100と、撮像装置(カメラ本体)としてのカメラ200を接続した状態のレンズ交換式カメラシステムを表すブロック図である。カメラ200と交換レンズ100はそれぞれカメラマウント50とレンズマウント60を有する。カメラ200と交換レンズ100は互いのマウントに設けられた電気接点を通じてカメラ200から交換レンズ100に電源を供給したり、相互に通信したりすることができる。カメラ200は、交換レンズ100内の複数の個眼(光学系)としての右眼レンズユニット101Rと左眼レンズユニット101Lにより形成された2つの被写体像を光電変換した電気信号を出力する撮像素子208を有する。
【0015】
また、カメラ200は、撮像素子208から出力されたアナログ電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換部203と、前記デジタル信号に対する各種画像処理を行って画像を生成する画像処理部204とを有する。画像処理部204にて生成された画像は表示部205に表示されたり、記録媒体202に記録されたりする。
【0016】
さらに、カメラ200は、電源のオン/オフを行うための電源スイッチ、画像の記録を開始させる撮影スイッチおよび各種メニューの設定を行うための選択/設定スイッチ等を含む操作部206を有する。カメラ制御部201は、マイクロコンピュータを含み、操作部206からの信号に応じて画像処理部204の制御や交換レンズ100との通信制御を行う。
【0017】
交換レンズ100の2つの光学系としての右眼レンズユニット101Rと左眼レンズユニット101Lは、それぞれ反射により光軸の向きを90度変えるプリズム107R、108R、107L、108Lを有する。さらに、交換レンズ100は、カメラ通信部207、レンズ通信部106を介したカメラレンズ通信によって受け取った制御信号に応じて開口絞り(絞りユニット)等を制御する駆動制御部としてのレンズ制御部104を有する。レンズ制御部104はマイクロコンピュータ等で構成される。レンズ制御部104は後述のように、絞りユニットの駆動量を設定する駆動量設定手段としての機能を有する。また、レンズ制御部104は絞りユニットの駆動速度を設定する速度設定手段としての機能を有する。
【0018】
次に本実施形態の絞り機構について述べる。
【0019】
交換レンズ100の右眼レンズユニット101Rと左眼レンズユニット101Lは、光量や深度を変化させるための、開口径が可変である開口絞りとしての絞りユニット102R、102Lを有する。絞りユニット102R、102Lはステッピングモータをアクチュエータとする電磁絞りである。これらの複数の絞り機構を駆動させるための駆動手段としての絞り駆動部103R、103Lを有する。本実施形態における絞りユニット102R、102Lは、ステッピングモータを1ステップ駆動させるごとにAV値として1/8段ずつ絞り込み量が変化するよう設計されている。しかしながら、ステッピングモータのロータ着磁ムラや機構部品の精度の個体差などの影響で、わずかに絞り込み量に誤差(ステップ数と理想的な絞り込み量のずれ)が生じる。また、右眼レンズユニット101Rと左眼レンズユニット101Lの設計段階であえて左右の絞りユニット102R、102Lに対してステップ数と絞り込み量の関係を異ならせることもある。このように、左右の絞りユニット102R、102Lの駆動量に差異があると、右眼レンズユニット101Rと左眼レンズユニット101Lの間で光量変化に差を生じたり、深度変化に差を生じたりしてしまう。
【0020】
そこで、本実施例における撮影システムは、絞りユニット102R、102Lのそれぞれに個別に設定された補正駆動量情報(補正量情報)を記憶部(記憶手段)105に格納している。本実施形態における補正駆動量情報は、絞りユニット102R、102Lのそれぞれを所定の光量または深度とするために必要な駆動量(ステップ数)に関する情報のまとまりである。
【0021】
補正駆動量情報は次の要領で事前に測定した結果を用いて構成する。右眼レンズユニット101Rと左眼レンズユニット101Lに被写体側から光を入射させる。そして、絞りユニット102R、102Lそれぞれについて、開放状態から少しずつ絞りながら、撮像素子側で測光される光量値を実測する。この結果から、1/8段ずつ絞り量変化させるために必要な絞り駆動量(ステップ数)を計測し、それぞれ保存する。
【0022】
本実施形態における補正駆動量情報を
図2に示す。なお、
図2は補正駆動量情報としての一例を示すにすぎず、絞りユニット102R、102Lの絞り値と駆動量の差を軽減(補正)できる情報であれば、補正駆動量情報は必ずしもこのようなデータ形態である必要はない。
【0023】
図2に示すように、補正量(補正駆動量)は、絞りユニットごとに個別に設定されている。図中、四角で囲った枠の上の数字(0~56)はインデックス値、枠の中の数値が補正量である。例えばインデックス4番には、開放から4/8段絞り込んだ位置に開口絞りを駆動するための補正駆動量が格納されている。絞りユニット102Rの4/8段絞り込み位置の補正量は+0.23ステップである。これは、各絞りユニットは理想的には1ステップで1/8段絞り込む設計であるが、絞りユニット102Rを開放位置から4.23ステップ絞り込み方向に駆動することで開放から4/8段絞り込めることを意味している。
【0024】
このように、所定の絞り込み量となるための補正値を開放から最小絞りまで記憶部105(メモリ)の所定領域に順番に格納しておく。そして、格納データの先頭アドレスからデータサイズ×インデックス分ずれたアドレスを参照することで、所望の補正値を取得できる。本実施形態においては、1/8段絞るごとにインデックスを1増加させて参照する。
【0025】
次に、本実施形態(第1の実施形態)における開口絞りの駆動制御の流れについて具体的に説明する。
【0026】
図3に、本実施形態における絞り駆動制御の処理フローチャートを示す。本フローチャートの制御方法は、コンピュータに同機能を実行させるプログラムとして実現可能である。本実施形態において、
図3に示された処理は主に交換レンズ100に設けられた内部回路によって行われる。すなわち、本実施形態において、絞りユニットを制御する制御装置は、交換レンズ100に設けられている。
【0027】
まず、カメラ制御部201はレンズ制御部104に対して絞り駆動要求を通知する(S-1)。
【0028】
カメラ制御部201から絞り駆動要求が通知されるきっかけは、例えばユーザによって操作部206で絞り値の変更操作された場合や、カメラ制御部201におけるAE処理(自動露出処理)で適正露出を維持するために絞りを駆動させる必要が生じた場合などである。
【0029】
本実施例において、カメラ制御部201からの絞り駆動要求は、絞り込み量と、絞り駆動速度で指定される。絞り込み量は1/8段単位での絞り込み操作量で指定され、絞り駆動速度は絞りユニット102R、102Lのステッピングモータの駆動パルスのパルスレート(pps)で指定される。カメラ制御部201から指定される絞り駆動速度は、絞りユニット102R,102Lに共通の駆動速度(第1の駆動速度)である。
【0030】
次に、レンズ制御部104は、指定された絞り込み量に相当する絞り駆動量を絞りユニット102R、102Lのそれぞれについて算出する(S-2)。
【0031】
ここで、絞り駆動量の算出方法を具体的に説明する。レンズ制御部104は、現在の絞り込み段数位置の情報を記憶部105に格納している。カメラ制御部201から指定された絞り込み量は、現在の絞り込み段数位置からの差分操作量に相当する量なので、目標絞り込み位置=現在の絞り込み段数位置+指定された絞り込み量の関係から駆動量を求めることができる。
【0032】
ここで、現在の絞り込み段数位置=3/8段位置で、指定された絞り込み量=2/8段のときを例にして述べる。このとき、絞りユニット102R、102Lの駆動量は、
図2の補正量から、下記の通りとなる。
絞りユニット102Rの現在の絞り込み段数位置 3/8段→3.15ステップ。
絞りユニット102Rの目標絞り込み段数位置 5/8段→5.23ステップ
絞りユニット102Lの現在の絞り込み段数位置 3/8段→2.97ステップ
絞りユニット102Lの目標絞り込み段数位置 5/8段→4.88ステップ
絞りユニット102Rの駆動量=2.08ステップ
絞りユニット102Lの駆動量=1.91ステップ
【0033】
このように、本実施形態においては、絞りユニット102R,102Lに対して、補正駆動量情報に基づき、互いに異なる駆動量が設定される。
【0034】
次にレンズ制御部104は絞りユニット102R、102Lの駆動速度を計算する(S-3)。
【0035】
S-1でカメラ制御部201から指定された絞り駆動速度が50ppsであるとする。このとき、レンズ制御部104は絞りユニット102R、102Lの駆動速度は下記のように計算することで絞りユニット102R、102Lの駆動時間が互いに同等となるようにする。同等とは理想的には同一であるが、小さな誤差があっても許容される。
【0036】
本実施形態においては、絞り駆動速度が50ppsで駆動した際の絞り駆動時間(第1の駆動時間)が長い方を基準として、絞り駆動時間が短い方の駆動速度を調節することで絞りユニット102R、102Lの駆動時間が略同じとなるようにする。
【0037】
この場合、駆動時間は駆動量が多い方が長くなるので、駆動量が多い方の絞り駆動時間を求める。本実施例においては絞りユニット102R側を50ppsで駆動したときの駆動時間は41.6msとなる。
【0038】
このとき、絞りユニット102Lの1パルス当たりの駆動時間は、下記計算で求められる。
1パルス当たりの駆動時間=41.6ms/1.91ステップ=21.78ms/pls
【0039】
したがって、絞りユニット102Lの駆動速度は次のように算出される。
絞りユニット102Lの駆動速度=1000/21.78=45.9pps
【0040】
ゆえに、絞りユニット102Rの駆動速度50ppsに対して、絞りユニット102Lの駆動速度は45.9ppsとなる。このように駆動速度を決定することで、絞りユニット102R、102Lを共に50ppsで駆動させる場合と比較して、駆動時間の差を小さくすることができる。
【0041】
S-4では、上記の要領で求めた絞り駆動量および駆動速度で絞りユニット102R、102Lをそれぞれ駆動させる。これにより、カメラ制御部201から指定された絞り込み量2/8段、駆動速度50ppsについて、左右の絞り駆動タイミング(駆動時間)をほぼ同期させた状態で絞りユニット102R、102Lを駆動することが可能となる。
【0042】
本実施例の場合、絞りユニット102R、102Lの絞り駆動時間は共に41.6msであるので、駆動開始タイミングを揃えれば、駆動完了タイミングも揃う。これによって、左右の光量変化および深度変化の開始および終了のタイミグが揃うので、左右画像の光量、深度変化のズレによる違和感を軽減することが可能となる。
【0043】
本実施形態では各絞りユニットの総駆動時間を揃えるために、駆動速度の再計算を行うが、この時に基準とする絞りユニットは、自動露出の基準となる画像を撮影する個眼の絞りユニットとしても良い。これにより、自動露出の測光基準としている絞りユニットを基準として他の絞りユニットの駆動タイミングを揃えるようになるため、カメラ200の自動露出処理によりよく追従することが期待できる。
【0044】
また、本実施形態では各絞りユニットの総駆動時間を揃えるために、駆動速度の再計算を行うが、この時基準とする絞りユニットは、合焦判定の基準となる画像を撮影する個眼の絞りユニットとする。これにより、合焦判定基準としている絞りユニットを基準として他の絞りユニットの駆動タイミングを揃えるようになるため、各個眼の合焦具合がよりよく同期することが期待できる。
【0045】
[第2の実施形態]
次に、第2実施形態における開口絞りの駆動制御の流れについて説明する。
【0046】
本実施形態における交換レンズ100およびカメラ200の構成は先述の第1の実施形態と同様であるが、絞りユニットの駆動速度に対して駆動上限速度、下限速度が設定されている点で第1の実施形態と異なる。
【0047】
本実施形態において、絞りユニットの駆動速度の上限速度、下限速度は記憶部105に格納されている。それぞれの値は絞り駆動のパルスレートで、ppsの値として格納されている。
【0048】
なお、絞りユニットの駆動速度に下限を設定しているのは、例えば口径精度を確保するためである。絞りユニットを極めてゆっくりと駆動させる場合、絞り羽根の摩擦などの影響で、所望の口径精度が出せなくなる場合がある。また、絞りユニットの駆動速度に上限を設定しているのは、例えば騒音対策のためである。絞りユニットを所定以上の高速で駆動させると、騒音が生じる場合がある。
【0049】
本実施形態においては、絞りユニットの駆動の上限速度100pps、下限速度5ppsとする。
【0050】
次に、本実施形態における絞りの駆動制御の流れについて説明する。
【0051】
図4に、本実施例における絞り駆動制御の処理フローチャートを示す。
【0052】
まず、カメラ制御部201がレンズ制御部104に絞り駆動要求を通知する(S2-1)。カメラ制御部201から絞り駆動要求が通知されるきっかけは第1の実施形態と同様である。
【0053】
本実施例において、カメラ制御部201からの絞り駆動要求は、絞り込み量と、絞り駆動速度で指定される。絞り込み量は1/8段単位での絞り込み操作量で指定される。絞り駆動速度は第1の実施形態と異なり、絞り段数の変化速度で指定される。指定単位は、0.01段/Secで、一秒あたりの絞り段数変化量である。
【0054】
以下の例では、カメラ制御部201から指示される絞り込み量は第1の実施形態と同じく2/8段で、絞りの現在位置も同じく3/8段位置とする。また、絞り駆動速度(絞り段数の変化速度)は13.00段/Secであるとする。
【0055】
次に、レンズ制御部104は、指定された絞り込み量に相当する絞り駆動量を、絞りユニット102R、102Lのそれぞれに対して算出する(S2-2)。
【0056】
ここでの処理は第1の実施形態での(S-2)と同等の処理であり、絞りユニット102R、102Lそれぞれの駆動量は、
図2の補正量から、下記のとおりとなる。
絞りユニット102Rの駆動量=2.08ステップ
絞りユニット102Lの駆動量=1.91ステップ
【0057】
次に、絞りユニット102R、102Lそれぞれについて駆動速度を計算する(S2-3)。
【0058】
まず、カメラ200が指定する絞り駆動速度に対応した絞り駆動時間を計算する。13.00段/Secの速度で2/8段駆動させるので、以下の通りとなる。
絞り駆動時間=1000/(13/(2/8))=19.23ms
【0059】
この時絞りユニット102R、102Lそれぞれの駆動速度および駆動速度の計算結果に基づくステータス、総駆動時間を計算する。
【0060】
ステータスは、「通常設定」「上限リミット」「下限リミット」「駆動不要」の4つのステータスである。駆動速度を計算した結果が、上限または下限を超えた場合は、それぞれ「上限リミット」「下限リミット」、駆動速度が下限以上、上限以下の場合は「通常設定」、駆動量が0ステップの時は「駆動不要」のステータスがセットされる。
【0061】
ここで、絞りユニット102Rの駆動速度は以下のように計算される。
絞りユニット102Rの駆動速度=(1000/(19.23/2.08))=108.2pps
【0062】
絞りユニット102Rの駆動速度は絞り駆動上限速度100ppsを超える。このため、絞りユニット102Rの駆動速度の計算結果は上限速度である100ppsとして記憶する。
【0063】
そして、絞り駆動速度を速度上限値でリミットしたので、絞りユニット102Rのステータスは「上限リミット」となる。
【0064】
また、絞りユニット102Rの総駆動時間は20.8msと計算される。
【0065】
一方、絞りユニット102Lの駆動速度は以下のように計算される。
絞りユニット102Lの駆動速度=(1000/(19.23/1.91))=99.3pps
【0066】
絞りユニット102Lの駆動速度は上限速度、下限速度でリミットされないので、駆動速度計算結果ステータスは「通常設定」となる。
【0067】
そして、絞りユニット102Lの総駆動時間は19.23msとなる。
【0068】
次に、レンズ制御部104は各絞りユニットの駆動速度調整を行う(S2-4)。
【0069】
この工程では、絞りユニット102R、102L双方の駆動時間が略同じとなるように、駆動速度をレンズ制御部104が再設定する。
【0070】
図5に、絞りユニット102R、102Lの駆動時間を略同じとするための処理判断を記載したデシジョンテーブルを示す。このデシジョンテーブルは、絞りユニット102R、102Lそれぞれの駆動速度のステータスに基づいて、どちらの駆動速度がどのように再設定されるかを表現している。なお、このデシジョンテーブルは、テーブルデータとして記憶部105に格納されているのではなく、プログラム処理(判断、分岐処理)を表に表現したものである。
【0071】
例えば、ステータスが「通常設定」となった絞りユニットは、「上限リミット」、「下限リミット」となった絞りに合わせるように速度調整する余地があり、駆動速度を再設定できる。
【0072】
また、双方「上限リミット」となる場合は、駆動速度を遅くすることは可能なので、総駆動時間がより長い方の絞りユニットに合わせるように速度調整可能である。また、双方「下限リミット」となる場合は、駆動速度を速くすることは可能であるので、総駆動時間が短い方に合わせるようにして速度調整可能である。なお、双方の結果が「上限リミット」と「下限リミット」というように相反するステータスとなった場合は、双方が速度調整する余地がないため、S2-3工程で計算した駆動速度そのままで駆動させるしかない。このように、2つの絞りユニット102R、102Lの駆動時間を略同等に揃えることはできないケースもあり得る。
【0073】
なお、双方「通常設定」であった場合には、速度調整が行われない。なぜなら、「通常設定」となる場合、絞りユニットは13.00段/Secで移動するので、2/8段移動するのに要する駆動時間は同じであるためである。この時、絞りユニット102Rと102Lでは駆動量(ステップ)が異なるため、絞りユニット102Rと102Lの間でppsで表示した際の駆動速度は異なることに注意が必要である。
【0074】
本実施例の場合、絞りユニット102Rの駆動速度計算結果ステータスが「上限リミット」、絞りユニット102Lの駆動速度計算ステータスが「通常設定」なので、絞りユニット102Rに合わせて絞りユニット102Lの速度を再計算する。
【0075】
このとき、絞りユニット102Rの総駆動時間が20.8msなので、絞りユニット102Lの総駆動時間が20.8msとなるように駆動速度を計算する。すなわち、以下のような計算をすればよい。
絞りユニット102Lの駆動速度=(1000/(20.8/1.91))=91.8pps
【0076】
次に、レンズ制御部104は絞りユニット102R、102Lのそれぞれについて決定された駆動量、駆動速度で、絞りユニット102R、102Lを駆動させる(S2-5)。
【0077】
以上の要領により、絞りユニット102R、102Lに駆動速度の上限、下限が設定されている場合においても、ほとんど全ての状況において駆動開始、終了タイミングを略同等に揃えた駆動が可能となる。
【0078】
[第3の実施形態]
上述した実施形態では、交換レンズ100が2つの個眼のみを有する例について述べたが、本実施形態では交換レンズ100が3つ以上の個眼を有する例について説明する。
【0079】
図6は、3つ以上の個眼を有する交換レンズ100を用いる場合の絞り駆動速度の計算処理のフローチャートである。
図6に示す処理は、3つ以上の各絞りユニットの駆動量と駆動速度の計算(
図4のS2-3)までの処理が完了した後(S3-1)の処理として記載している。以下の処理はレンズ制御部104にて行われる。
【0080】
S3-2において、各絞りユニットのステータスが全て「通常設定」であると判断される場合には、駆動速度の調整不要としてS3-3に進む。「通常設定」の絞りユニット同士は速度調整が不要であることは実施例2に述べた通りである。なお、この時一部の絞りユニットのステータスが駆動不要であっても良い。
【0081】
S3-3では速度調整を行わず、S3-17に進む。
【0082】
S3-4において、各絞りユニットのステータスが全て「上限リミット」であると判断される場合には、S3-5に進む(この時一部の絞りユニットのステータスが駆動不要であっても良い)。S3-5では、各絞りユニットのうち、駆動時間が最長であるものの駆動時間を特定する。そして、S3-6において、駆動時間が最長となる絞りユニット以外の絞りユニットに対して、最長の駆動時間に合わせるようにして駆動速度を再計算し、S3-17に進む。
【0083】
S3-7において、各絞りユニットのステータスが全て「下限リミット」であると判断される場合には、S3-8に進む(この時一部の絞りユニットのステータスが駆動不要であっても良い)。S3-8では、各絞りユニットのうち、駆動時間が最短であるものの駆動時間を特定する。そして、S3-9において、駆動時間が最長となる絞りユニット以外の絞りユニットに対して、最短の駆動時間に合わせるようにして駆動速度を再計算し、S3-17に進む。
【0084】
S3-10において、各絞りユニットのステータスが全て「駆動不要」である場合と判断される場合には、S3-11に進む。S3-11では各絞りユニットを駆動させないように設定し、S3-17に進む。
【0085】
S3-12において、各絞りユニットのステータスが「上限リミット」と「下限リミット」であると判断される場合には、S3-13に進む(この時一部の絞りユニットのステータスが駆動不要であっても良い)。S3-13では、速度調整を行わない。これは、各絞りユニットも上限および下限リミット内で駆動速度を揃えるような速度調整を行う余地がほとんどないと考えられるためである。
【0086】
S3-14において、各絞りユニットのステータスが「上限リミット」、「下限リミット」、「通常設定」であると判断される場合には、S3-15に進む(この時一部の絞りユニットのステータスが駆動不要であっても良い)。S3-15では、各絞りユニットの総駆動時間の平均時間を算出する。そして、S3-16では、全ての絞りユニットの中で総駆動時間が最長となるものと、最短となるものを除く絞りユニットについて、駆動時間が上記平均時間と等しくなるように、駆動速度を再計算する。
【0087】
このように各絞りユニットを制御することで、多眼構成における絞りの駆動タイミングずれを軽減することが可能となる。
【0088】
以上、本発明に好ましい実施形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の組合せ、変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
104 レンズ制御部(駆動量設定手段、速度設定手段)
102R、102L 絞りユニット(開口絞り)