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  • 特許-風車の点検装置、方法及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】風車の点検装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F03D 17/00 20160101AFI20241105BHJP
【FI】
F03D17/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021185264
(22)【出願日】2021-11-12
(65)【公開番号】P2023072595
(43)【公開日】2023-05-24
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】吉水 謙司
(72)【発明者】
【氏名】池田 和徳
(72)【発明者】
【氏名】谷山 賀浩
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 直孝
(72)【発明者】
【氏名】馬場 敬行
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-506968(JP,A)
【文献】特開2017-025750(JP,A)
【文献】特開2019-073999(JP,A)
【文献】特表2003-532835(JP,A)
【文献】特開2013-087732(JP,A)
【文献】特開2011-256881(JP,A)
【文献】特開2007-231911(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0018291(US,A1)
【文献】特開2021-011857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風の流動エネルギーから変換した回転エネルギーを伝達するロータ軸、及び前記回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機を少なくとも収容するナセルの内部で作業する作業ツールと、
前記ナセルの内部空間において前記作業ツールを支持し、その作業位置及び作業姿勢の少なくとも一方を可変的に設定する作業ロボットと、
前記作業位置及び前記作業姿勢を指定した作業情報を前記作業ロボットの駆動部に送信する送信部と、
前記ナセルに設置した揺れセンサから検出データを受信する受信部と、
前記検出データから揺れ振幅を読み取る読取部と、
前記作業情報に従う前記作業ツールの実行を待機させるか否かについて前記揺れ振幅に基づいて判定する判定部と、を備える風車の点検装置。
【請求項2】
請求項1に記載の風車の点検装置において、
気象データ、海況データ及び風況データのうち少なくとも一つが含まれる予報情報を取得する取得部と、
前記予報情報に基づいて少なくとも前記揺れ振幅を推測する推測部と、
前記作業情報に従う前記作業ツールの実行タイミングを記述した点検計画を、推測される発電出力及び前記揺れ振幅に基づいて作成する作成部と、を備える風車の点検装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の風車の点検装置において、
前記作業ロボットは、単独又は複数で構成される飛翔体及び多関節アームの少なくとも一方である風車の点検装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の風車の点検装置において、
前記作業ツールは、カメラ、センサ及び工具の少なくともひとつである風車の点検装置。
【請求項5】
風の流動エネルギーから変換した回転エネルギーを伝達するロータ軸、及び前記回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機を少なくとも収容するナセルの内部で作業ツールが作業するステップと、
前記ナセルの内部空間において前記作業ツールを支持し、その作業位置及び作業姿勢の少なくとも一方を可変的に作業ロボットが設定するステップと、
前記作業位置及び前記作業姿勢を指定した作業情報を前記作業ロボットの駆動部に送信するステップと、
前記ナセルに設置した揺れセンサから検出データを受信するステップと、
前記検出データから揺れ振幅を読み取るステップと、
前記作業情報に従う前記作業ツールの実行を待機させるか否かについて前記揺れ振幅に基づいて判定するステップと、を含む風車の点検方法。
【請求項6】
コンピュータに、
風の流動エネルギーから変換した回転エネルギーを伝達するロータ軸、及び前記回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機を少なくとも収容するナセルの内部で作業ツールが作業するステップ、
前記ナセルの内部空間において前記作業ツールを支持し、その作業位置及び作業姿勢の少なくとも一方を可変的に作業ロボットが設定するステップと、
前記作業位置及び前記作業姿勢を指定した作業情報を前記作業ロボットの駆動部に送信するステップ、
前記ナセルに設置した揺れセンサから検出データを受信するステップ、
前記検出データから揺れ振幅を読み取るステップ、
前記作業情報に従う前記作業ツールの実行を待機させるか否かについて前記揺れ振幅に基づいて判定するステップ、を実行させる風車の点検プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、風力発電に使用する風車を点検する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
風力は、どこにでも存在し、二酸化炭素を排出せず、枯渇せずに永続的に利用できる、再生可能エネルギーの一つである。このような風力を利用した発電を促進するには、発電の安定性及び持続性を向上させるため、運転の健全性を点検する技術の確立が重要である。そして、風力発電の予期しない中断につながるような事故発生の防止の観点から、定期的な点検の実施が義務付けられている。
【0003】
洋上風力発電では、作業員の風車への現場派遣にかかるコストが高く、派遣回数の削減が望まれている。そこで、風車のナセル内にドローンや多関節アーム等の作業ロボットを導入し、可能な限り遠隔操作により点検等の作業を完遂させることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-112631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
定期点検は、風車の運転を一定期間停止させる必要があるために、その頻度、期間が増える程に設備稼働率が低下し逸失発電出力が増加する。さらに、風力発電の効率は、風や波といった気象状況に大きく左右されるため、定期点検の実施方法や実施時期によって、逸失発電出力が大きく変化する。また、作業ロボットを使用してナセル内の点検等を行う際に、風や波といった気象状況によっては洋上の風車は大きく揺れてナセル内の機器や内壁に作業ロボットが衝突し故障する懸念がある。
【0006】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、作業ロボットによる点検の実施方法や実施時期を最適化し、設備利用率を向上させ逸失発電出力を少なくする風車の点検技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る風車の点検装置において、風の流動エネルギーから変換した回転エネルギーを伝達するロータ軸、及び前記回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機を少なくとも収容するナセルの内部で作業する作業ツールと、前記ナセルの内部空間において前記作業ツールを支持しその作業位置及び作業姿勢の少なくとも一方を可変的に設定する作業ロボットと、前記作業位置及び前記作業姿勢を指定した作業情報を前記作業ロボットの駆動部に送信する送信部と、前記ナセルに設置した揺れセンサから検出データを受信する受信部と、前記検出データから揺れ振幅を読み取る読取部と、前記作業情報に従う前記作業ツールの実行を前記揺れ振幅に基づいて待機させるか否か判定する判定部と、を備える風車の点検装置。
を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態により、作業ロボットによる点検の実施方法や実施時期を最適化し、設備利用率を向上させ逸失発電出力を少なくする風車の点検技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(A)(B)本発明の実施形態が適用される風車の全体図。
図2】各実施形態に係る風車の点検装置における機構部が設置されたナセルの内部概念図。
図3】第1実施形態に係る風車の点検装置における制御部のブロック図。
図4】第2実施形態に係る風車の点検装置における制御部のブロック図。
図5】実施形態に係る風車の点検方法の工程及び風車の点検プログラムのアルゴリズムを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1(A)(B)は本発明の実施形態が適用される風車20の全体図である。このように図1(A)(B)に示す風車20は浮体式の洋上設置方式を示しているが、各実施形態が適用される風車は着床式の洋上設置方式や陸上設置方式であることを妨げない。このように風車20は、ブレード25と、タワー26と、ナセル30と、ハブ51を備えている。
【0011】
ブレード25は、ハブ51でロータ軸27(図2)に連結されるように放射状に配置されている。これらのブレード25は、風の流動エネルギーを効率よく回転エネルギーに変換できるよう、風の流入方向に対しピッチ角が調節される。このピッチ角を調整するモータやブレーキ、非常用電源などの駆動機構(図示略)がハブ51内に設けられている。タワー26は、海底に築かれた基礎59に係留索58を介して繋がれた浮体56に、海面から露出するように接続されている。
【0012】
図2は各実施形態に係る風車の点検装置(以下、単に「点検装置」という)における機構部40が設置されたナセル30の内部概念図である。このようにナセル30は、ロータ軸27を風向きに自動的に追従させるヨー駆動部23を介して、タワー26の頂部に設けられている。そして。このタワー26の内部には、海上輸送され浮体56に上陸させた物品もしくは作業員を、ナセル30の内部に移送する昇降手段24が設けられている。
【0013】
そして、このナセル30には、各種の構造物33が収容されている。そのような構造物33は、ロータ軸27を支持する主軸受33aと、このロータ軸27の末端に接続して回転数を増速させる増速器33bと、回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機33cと、発電機33cの出力を変調・変圧等し系統周波数及び系統電圧に合わせた電力の外部出力29とする変換回路33eと、これら構造物33(33a,33b…)に設置された複数のセンサ34に接続し各々の検出データ43を集約して外部伝送する伝送回路33dと、が例示されている。
【0014】
ここで、センサ34は、設置されている構造物33(33a,33b…)の各々の振動を個別に検出することを主目的とするが、ナセル30の揺れも検出することも可能である。そのような揺れを検出できる揺れセンサ34としては、ジャイロセンサ、加速度センサ、圧力センサ、距離センサ等が挙げられる。
【0015】
点検装置の機構部40は、ナセル30の内部で作業する作業ツール45(45a,45b)と、ナセル30の内部空間47において作業ツール45を支持しその作業位置及び作業姿勢の少なくとも一方を可変的に設定する作業ロボット46(46a,46b)と、を備えている。さらにナセル30には、制御部10から作業情報36を入力し作業ロボット46の駆動信号を出力する駆動部49が設けられている。
【0016】
ここで作業ロボット46は、飛翔体46aや多関節アーム46bが挙げられる。これら作業ロボット46は、いずれか一方のみで配置される場合もあるし、両方が配置される場合もある。また、作業ロボット46は、単数で構成される場合もあるし、複数で構成されて協調制御される場合もある。飛翔体46aは、平時は、ナセル30の内部に設けられたヘリポートに常駐し、給電等が行われている。
【0017】
また多関節アーム46bは、その基端部においてレール19を移動するように構成され、広範囲に亘りナセル30の内部で作業することができる。またレール19の構成としては、走行のみでなく、横行と上下方向のテレスコピック機構などを組み合わせた3次元移動が可能な構成をとることもできる。さらに上記構成の横行、走行、テレスコピック機構によりテレスコピック機構先端で飛翔体46aを把持してナセル30内を移動し、タワー26上端から飛翔体46aをリリースして飛翔体46aのみでタワー26内の点検を実施することができる。なお多関節アーム46bは、レール19に替えて、移動ロボット(図示略)に設けられる場合もある。
【0018】
また作業ロボット46は、ナセル30の内部のみに限らず、タワー26の内部やハブ51の内部も作業ツール45で作業できる。この場合、タワー26の継目のボルトの締結具合や、その内部に配置されている構造物33に対して作業を行える。主な作業ツール45であるカメラとしては、光学カメラ、赤外線カメラ、マルチスペクトル、ハイパースペクトルを採用することが考えられ、また360度カメラを採用することも考えられる。
【0019】
その他の作業ツール45としては、ミリ波レーダーやレーザー等を用いた距離計測器、振動や加速度、温度などの状態量を計測するセンサが挙げられる。さらに作業ツール45は、揺れセンサ34同等の可搬式の揺れセンサ(図示略)や構造物33に対し接触作業を行う工具も挙げられる。また、それぞれ異なる種類のカメラやセンサを作業ツール45として複数支持してもよい。さらに、検出した不具合事象に合わせて、もしくは検査員が適切と考える種類の作業ツール45に交換、装着することもできる。
【0020】
図3は第1実施形態に係る風車の点検装置における制御部10A(10)の一例を示すブロック図である。このように点検装置の制御部10Aは、作業ツール45の作業位置及び作業姿勢を指定した作業情報36を作業ロボット45(45a,45b)の駆動部49に送信する送信部21と、ナセル30に配置された揺れセンサ34から検出データ43を受信する受信部15と、検出データ43から揺れ振幅44aを読み取る読取部11と、作業情報36に従う作業ツール45の実行を待機させるか否かについて揺れ振幅44aに基づいて判定する判定部12と、を備えている。
【0021】
送信部21は、作業ツール45の作業情報36を駆動部49に送信することで、予め指定した構造物33に作業ツール45をアプローチさせることができる。この作業ツール45がカメラである場合は、様々な位置・姿勢から、解析に必要な箇所のみフォーカスして、構造物33の画像データ39を得ることができる。また注目すべき構造物33が複数ある場合も、作業ツール45(カメラ)の位置・姿勢を変えて、それぞれにアプローチさせることができる。
【0022】
さらに点検装置の制御部10は、送信される作業情報36を任意に操作して作業ツール45の作業位置及び作業姿勢をマニュアルで設定する操作部18を備えている。作業情報36は予め登録されている他に、レーザスキャンデータや3DCADデータなどから構築された3次元データ上から操作部18を用いて作業情報36を登録・指定することもできる。これにより、予め紐付けられている作業情報36では、満足のいく作業ができなかった場合でも、作業ツール45の位置・姿勢に修正を加えて再度作業することができる。
【0023】
また3次元データは360度カメラ(全方位カメラ)や単眼カメラの動画(時系列データ)、ステレオ画像などから再構成により生成することもできる。作業ツール45としてのカメラによる画像データ39から3次元データを更新することで、作業情報36を更新するだけでなく、形状の変化(過去からの差分)の検査にも利用することができる。
【0024】
作業ツール45(45a,45b)がカメラである場合、このカメラが撮影した画像データ39は、表示部(図示略)に表示させる。なお、画像データ39は、静止画であったり動画であったりする。また、受信された画像データ39は、リアルタイムで表示される場合の他に、記録され後日に再生することもできる。
【0025】
受信部15に取得される検出データ43は、上述したCMS(Condition Monitoring System)用途の揺れセンサ34もしくはナセル30の揺れ検出専用に設けたセンサの出力値である。この検出データ43は、風車20が位置する海面における波のうねりや風の揺さぶりにより上下左右に揺動するナセル30の変位を反映している。
【0026】
読取部11は、検出データ43の波形信号から、上記したナセル30の揺動に由来する波形成分を抽出し、その揺れ振幅44aを読み取る。ナセル30が風や波の影響を受けて、地表の絶対座標系において揺動する場合、その内部に配置されている構造物33もこのナセル30と同位相・同振幅で揺動する。
【0027】
しかし、稼働中の作業ツール45(46a,46b)及び作業ロボット46(46a,46b)は、自身の慣性により絶対座標系において静止しようとする。このためナセル30の相対座標系において、これら作業ツール45(46a,46b)及び作業ロボット46(46a,46b)は、構造物33に対し相対的に揺動することとなる。そして揺れ振幅44aが大きい場合、作業ツール45又は作業ロボット46は、構造物33に衝突し破損したり近傍の構造物33に損傷を与えたりする。
【0028】
判定部12は、作業情報36に従う作業ツール45の実行を、予め作成されている待機条件35に揺れ振幅44aを照らし、待機させるか否か判定する。その結果、揺れ振幅44aが大きく「待機要」の判定がなされた場合は、送信された作業情報36に従う作業ツール45の実行を緊急停止させる緊急停止命令22を発動する。揺れ振幅44aが小さく「待機不要」の判定がなされた場合は、この緊急停止命令22は発動されない。
【0029】
(第2実施形態)
次に図4を参照して本発明における第2実施形態について説明する。図4は第2実施形態に係る風車の点検装置における制御部10B(10)の一例を示すブロック図である。なお、図4において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0030】
第2実施形態に係る点検装置10B(10)は、上述した第1実施形態の点検装置10Aの構成に加えて、気象データ、海況データ及び風況データのうち少なくとも一つが含まれる予報情報31を取得する取得部16と、この予報情報31に基づいて少なくとも揺れ振幅44bを推測する推測部17と、作業情報36に従う作業ツール45の実行タイミングを記述した点検計画37を推測される発電出力41及び揺れ振幅44bに基づいて作成する作成部19と、を備えている。
【0031】
気象データ、海況データ及び風況データ等の予報情報31は、気象庁、自治体、民間事業者等から外部提供されるものを、インターネット等を経由して取得することができる。そして詳細な説明は省略するが、このような予報情報31に基づいて、風車20における発電出力41や揺れ振幅44bを推測することができる。
【0032】
風力発電所では、年間を通じて、風車20の運転期間と定期点検期間とを定めた運転計画38を策定している。この運転計画38は、過去の気象データ等から統計的に分析した長期予測に基づいて、逸失発電出力が少なくなるよう策定される。このため、実観測された気象データ等に基づいて短期予測した予報情報31に従ってこの運転計画38に修正を加えることは、逸失発電出力の削減をさらに推し進める観点から有意義である。
【0033】
作成部19における点検計画37の作成方針は、次のとおりである。すなわち、予報情報31に基づき発電出力41が見込めるときは風車20の運転を実行する。そして、予報情報31に基づき発電出力41が見込めずさらに揺れ振幅44bが小さいときは点検を実行する。なお揺れ振幅44bが大きい/小さいの判断は、待機条件35に準拠する。
【0034】
このような作成方針に則って作成された点検計画37に基づいて、作業ツール45の作業情報36が、オート操作されたタイミングでナセル30の駆動部49に送信され作業ツール45を実行させる。このように、予報情報31に基づき点検計画37が作成されることで、必要に応じで修正部14において運転計画38が修正される。
【0035】
図5のフローチャートに基づいて実施形態に係る風車の点検方法の工程及び風車の点検プログラムのアルゴリズムを説明する(適宜、図2図3参照)。ナセル30の内部における作業ツール45の作業位置及び作業姿勢を指定した作業情報36を送信部21から作業ツール45の駆動部49に送信する(S11)。
【0036】
この作業情報36に基づいて作業ロボット46を可変的に動作させ(S12)、作業位置及び作業姿勢を設定し(S13)、作業ロボット46が支持する作業ツール45に作業をさせる(S14)。
【0037】
他方においてナセル30に設置した揺れセンサ34の検出データ43を受信する(S15 No,S16)。そして、この検出データ43から揺れ振幅44aを読み取る(S17)。そして揺れ振幅44aが大きく待機条件35を充足する場合は(S18:Yes)、作業情報36を実行している作業ツール45の緊急停止命令22が発動される(S19,END)。そして、揺れ振幅44aが小さく待機条件35を満たさない場合は(S18:No)、作業ツール45による作業情報36の実行が終了するまで継続される(S12~S15:Yes,END)。
【0038】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の風車の点検装置によれば、ナセルの揺れ振幅に基づいて作業を待機するか否か判定することで、作業ロボットによる点検の実施方法や実施時期を最適化し、設備利用率を向上させ逸失発電出力を少なくすることが可能となる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0040】
以上説明した風車の点検装置は、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスやキーボードなどの入力装置と、通信I/Fとを、備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。このため風車の点検装置の構成要素は、コンピュータのプロセッサで実現することも可能であり、風車の点検プログラムにより動作させることが可能である
【0041】
また風車の点検プログラムは、ROM等に予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供するようにしてもよい。
【0042】
また、本実施形態に係る風車の点検プログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしてもよい。また、風車の点検装置は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワーク又は専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【符号の説明】
【0043】
10(10A,10B)…点検装置の制御部、11…読取部、12…判定部、14…修正部、15…受信部、16…取得部、17…推測部、18…操作部、19…作成部、20…風車、21…送信部、22…緊急停止命令、23…ヨー駆動部、24…昇降手段、25…ブレード、26…タワー、27…ロータ軸、29…外部出力、30…ナセル、33…構造物、33a…主軸受(構造物)、33b…増速器(構造物)、33c…発電機(構造物)、33d…伝送回路(構造物)、33e…変換回路(構造物)、34…センサ、35…待機条件、36…作業情報、37…点検計画、38…運転計画、39…画像データ、40…点検装置の機構部、43…検出データ、44a…読み取った揺れ振幅、44b…推測した揺れ振幅、45(45a,45b)…作業ツール、46…作業ロボット、46a…飛翔体(作業ロボット)、46b…多関節アーム(作業ロボット)、47…内部空間、49…駆動部、51…ハブ、56…浮体、58…係留索、59…基礎。
図1
図2
図3
図4
図5