(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】走行管理システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20241105BHJP
G05D 1/00 20240101ALI20241105BHJP
【FI】
A01B69/00 303Q
G05D1/00
(21)【出願番号】P 2021210930
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中林 隆志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 脩
(72)【発明者】
【氏名】伊原 亮輔
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-106976(JP,A)
【文献】特開2021-074016(JP,A)
【文献】特開2021-058163(JP,A)
【文献】特開2021-077190(JP,A)
【文献】特開2019-097535(JP,A)
【文献】特開2021-151271(JP,A)
【文献】特開2018-038291(JP,A)
【文献】特開2021-184763(JP,A)
【文献】特開2019-110790(JP,A)
【文献】特開2021-108614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場における作業対象領域を取得する領域取得部と、
作業車が前記作業対象領域を作業走行するための経路群を生成する経路生成部と、を備え、
前記経路群は複数の目標経路により構成されており、
前記目標経路に沿って前記作業車が自動走行するように前記作業車の走行を制御可能な走行制御部と、
前記複数の目標経路のうち、
前記経路群の生成後且つ前記作業対象領域における自動走行の開始前に手動操舵での前記作業車による作業走行が行われた前記目標経路である既作業経路を取得する経路取得部と、
前記経路取得部により取得された前記既作業経路を走行対象外として決定する決定部と、を備え
、
前記走行制御部は、前記決定部により走行対象外として決定されていない前記目標経路に沿って前記作業車が自動走行するように前記作業車の走行を制御する走行管理システム。
【請求項2】
前記経路群を表示する表示部と、
前記既作業経路を人為操作により入力可能な入力部と、を備え、
前記経路取得部は、前記入力部に入力された前記既作業経路を取得する請求項1に記載の走行管理システム。
【請求項3】
前記作業車が手動操舵により走行した軌跡を取得する軌跡取得部を備え、
前記表示部は、前記経路群と、前記軌跡取得部が取得した軌跡と、を同時に表示可能である請求項2に記載の走行管理システム。
【請求項4】
前記表示部は、前記経路群と、前記軌跡取得部が取得した軌跡と、を重ね合わせて表示可能である請求項3に記載の走行管理システム。
【請求項5】
前記作業車が走行した軌跡に基づいて前記圃場における既作業領域を算出する領域算出部と、
前記目標経路同士を繋ぐ旋回経路を前記既作業領域に基づいて生成する旋回経路生成部と、を備え、
前記領域算出部は、前記決定部により走行対象外として決定された前記既作業経路に対応する領域が前記既作業領域に含まれるように、前記既作業領域を算出する請求項1から
4の何れか一項に記載の走行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車が作業対象領域を作業走行するための経路群を生成する走行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような走行管理システムとして、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この走行管理システムにおいて、経路群は、複数の目標経路(特許文献1では「作業経路」)により構成されている。そして、作業車(特許文献1では「トラクタ」)が、目標経路に沿って自動走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
経路群が生成された後、経路群のうちの一つの目標経路に沿って、手動操舵での作業走行が行われた場合、その後の自動走行では、当該目標経路に沿った作業走行を行う必要はない。しかしながら、特許文献1では、そのようなケースが想定されていない。そのため、特許文献1に記載の走行管理システムにおいては、経路群が生成された後、経路群のうちの一つの目標経路に沿って、手動操舵での作業走行が行われた場合、その後の自動走行において、当該目標経路に沿った作業走行が行われてしまう。これにより、不要な作業走行が行われてしまうこととなる。
【0005】
このことは、経路群が生成された後、手動操舵で作業走行が行われる目標経路の本数が複数であっても、同様である。また、目標経路に沿った自動走行が行われることに代えて、目標経路に沿った手動走行がガイダンスされるように構成されている場合であっても、同様である。
【0006】
本発明の目的は、経路群が生成された後に手動操舵での作業走行が行われた場合に、当該作業走行の後に不要な作業走行が行われてしまうことを回避しやすい走行管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、圃場における作業対象領域を取得する領域取得部と、作業車が前記作業対象領域を作業走行するための経路群を生成する経路生成部と、を備え、前記経路群は複数の目標経路により構成されており、前記目標経路に沿って前記作業車が自動走行するように前記作業車の走行を制御可能な走行制御部と、前記複数の目標経路のうち、前記経路群の生成後且つ前記作業対象領域における自動走行の開始前に手動操舵での前記作業車による作業走行が行われた前記目標経路である既作業経路を取得する経路取得部と、前記経路取得部により取得された前記既作業経路を走行対象外として決定する決定部と、を備え、前記走行制御部は、前記決定部により走行対象外として決定されていない前記目標経路に沿って前記作業車が自動走行するように前記作業車の走行を制御することにある。
【0008】
本構成によれば、経路群が生成された後に手動操舵での作業車による作業走行が行われた場合に、当該作業走行が行われた目標経路である既作業経路が、走行対象外として決定される。そのため、当該作業走行の後に既作業経路に沿った作業走行が行われてしまうことを回避しやすい。
【0009】
従って、本構成によれば、経路群が生成された後に手動操舵での作業走行が行われた場合に、当該作業走行の後に不要な作業走行が行われてしまうことを回避しやすい走行管理システムを実現できる。
また、本構成によれば、作業車は、既作業経路に沿った作業走行が行われないように、自動走行を行うことが可能となる。これにより、不要な作業走行が行われてしまうことを確実に回避しやすい。
【0010】
さらに、本発明において、前記経路群を表示する表示部と、前記既作業経路を人為操作により入力可能な入力部と、を備え、前記経路取得部は、前記入力部に入力された前記既作業経路を取得すると好適である。
【0011】
本構成によれば、ユーザーが、表示部に表示された経路群の中から既作業経路を選んで入力することができる。そのため、既作業経路を自動的に且つ正確に検知するための複雑な構成を備える必要がない。これにより、システムの構成を比較的シンプルなものにしやすい。
【0012】
さらに、本発明において、前記作業車が手動操舵により走行した軌跡を取得する軌跡取得部を備え、前記表示部は、前記経路群と、前記軌跡取得部が取得した軌跡と、を同時に表示可能であると好適である。
【0013】
本構成によれば、ユーザーは、経路群と、作業車が手動操舵により走行した軌跡と、を見比べて、既作業経路を入力することができる。これにより、ユーザーは、既作業経路を正確に入力しやすい。
【0014】
さらに、本発明において、前記表示部は、前記経路群と、前記軌跡取得部が取得した軌跡と、を重ね合わせて表示可能であると好適である。
【0015】
本構成によれば、ユーザーは、経路群のうち、作業車が手動操舵により走行した軌跡と重複して表示されている目標経路を既作業経路として入力するだけで、既作業経路を正確に入力することができる。これにより、ユーザーは、既作業経路を正確に入力しやすい。
【0016】
【0017】
【0018】
さらに、本発明において、前記作業車が走行した軌跡に基づいて前記圃場における既作業領域を算出する領域算出部と、前記目標経路同士を繋ぐ旋回経路を前記既作業領域に基づいて生成する旋回経路生成部と、を備え、前記領域算出部は、前記決定部により走行対象外として決定された前記既作業経路に対応する領域が前記既作業領域に含まれるように、前記既作業領域を算出すると好適である。
【0019】
本構成によれば、既作業領域を通る旋回経路が生成される場合、既作業経路に対応する領域を作業車の旋回のためのスペースとして利用することができる。これにより、作業車の旋回のためのスペースを広く確保しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】第1刈取走行の完了時点での圃場を示す図である。
【
図4】制御部に関する構成を示すブロック図である。
【
図5】手動操舵でのコンバインによる刈取走行を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」とする。また、図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0022】
〔コンバインの全体構成〕
図1に示すように、普通型のコンバイン1(本発明に係る「作業車」に相当)は、収穫部H、クローラ式の走行装置11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、搬送部16、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール80を備えている。
【0023】
走行装置11は、コンバイン1における下部に備えられている。また、走行装置11は、コンバイン1に搭載されたエンジン(図示せず)からの動力によって駆動する。そして、コンバイン1は、走行装置11によって走行可能である。
【0024】
また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11より上側に備えられている。運転部12は運転座席12aを有している。運転部12にはユーザー(オペレータ)が搭乗可能である。
【0025】
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の上側に設けられている。また、衛星測位モジュール80は、運転部12の上面に取り付けられている。
【0026】
収穫部Hは、コンバイン1における前部に備えられている。そして、搬送部16は、収穫部Hの後側に設けられている。また、収穫部Hは、左右の分草具10、刈刃15、リール17を含んでいる。
【0027】
左右の分草具10は、収穫部Hの前端部における左端部及び右端部に設けられている。左右の分草具10は、圃場の植立穀稈を、収穫対象と対象外とに分草する。左の分草具10よりも右側、且つ、右の分草具10よりも左側の植立穀稈は、収穫対象として分草される。左の分草具10よりも左側の植立穀稈、及び、右の分草具10よりも右側の植立穀稈は、対象外として分草される。
【0028】
刈刃15は、左右の分草具10により収穫対象として分草された植立穀稈を刈り取る。また、リール17は、機体左右方向に沿うリール軸芯17b周りに回転駆動しながら収穫対象の植立穀稈を掻き込む。刈刃15により刈り取られた刈取穀稈は、搬送部16へ送られる。
【0029】
この構成により、収穫部Hは、圃場の穀物を収穫する。そして、コンバイン1は、刈刃15によって圃場の植立穀稈を刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。尚、刈取走行は、本発明に係る「作業走行」の具体例である。
【0030】
収穫部Hにより収穫された刈取穀稈は、搬送部16によって機体後方へ搬送される。これにより、刈取穀稈は脱穀装置13へ搬送される。
【0031】
脱穀装置13において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0032】
また、
図1に示すように、運転部12には、通信端末4(本発明に係る「表示部」に相当)が配置されている。通信端末4は、種々の情報を表示可能に構成されている。本実施形態において、通信端末4は、運転部12に固定されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、通信端末4は、運転部12に対して着脱可能に構成されていても良いし、通信端末4は、コンバイン1の機外に位置していても良い。
【0033】
ここで、コンバイン1は、圃場における刈取作業を行う場合、第1刈取走行と、第2刈取走行と、によって圃場における刈取走行を行うように構成されている。第1刈取走行は、
図2に示すように、圃場の外周領域において行われる刈取走行である。第2刈取走行は、第1刈取走行によって既作業領域SA(
図3参照)となった領域よりも内側の作業対象領域CA(
図3参照)において行われる刈取走行である。尚、既作業領域SAとは、圃場のうち、コンバイン1による刈取走行が完了した領域である。
【0034】
図2に示すように、コンバイン1は、第1刈取走行では、圃場における外周側の領域で穀物を収穫しながら周回走行を行う。第1刈取走行での周回数は、1回でも良いし、2回以上であっても良い。また、第1刈取走行は、手動走行により行われても良いし、自動走行により行われても良い。尚、手動走行とは、手動操舵での走行である。また、自動走行とは、自動操舵での走行である。
【0035】
また、第2刈取走行は、手動走行により行われても良いし、自動走行により行われても良い。
【0036】
本実施形態では、第1刈取走行は手動走行により行われる。また、第2刈取走行は自動走行により行われる。
【0037】
コンバイン1の走行は、走行管理システムA(
図4参照)によって管理される。以下では、走行管理システムAについて詳述する。
【0038】
〔経路群の生成〕
図4に示すように、走行管理システムAは、上述の通信端末4及び衛星測位モジュール80を含んでいる。また、走行管理システムAは、制御部20を備えている。制御部20は、コンバイン1に搭載されている。制御部20は、位置算出部21、軌跡取得部22、領域管理部23を有している。
【0039】
衛星測位モジュール80は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)で用いられる人工衛星GS(
図1参照)からのGPS信号を受信する。そして、
図4に示すように、衛星測位モジュール80は、受信したGPS信号に基づいて、コンバイン1の自車位置を示す測位データを位置算出部21へ送る。
【0040】
尚、本発明はこれに限定されない。衛星測位モジュール80は、GPSを利用するものでなくても良い。例えば、衛星測位モジュール80は、GPS以外のGNSS(GLONASS、Galileo、みちびき、BeiDou等)を利用するものであっても良い。
【0041】
位置算出部21は、衛星測位モジュール80により出力された測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。位置算出部21による算出結果は、軌跡取得部22へ送られる。
【0042】
軌跡取得部22は、位置算出部21による算出結果に基づいて、コンバイン1が走行した軌跡を算出する。これにより、軌跡取得部22は、コンバイン1が走行した軌跡を取得する。軌跡取得部22は、コンバイン1が走行した軌跡を、領域管理部23へ送る。
【0043】
領域管理部23は、第1領域算出部24(本発明に係る「領域算出部」に相当)及び第2領域算出部25(本発明に係る「領域取得部」に相当)を有している。第1領域算出部24は、コンバイン1が走行した軌跡に基づいて、既作業領域SAを算出する。
【0044】
即ち、走行管理システムAは、コンバイン1が走行した軌跡に基づいて圃場における既作業領域SAを算出する第1領域算出部24を備えている。
【0045】
第2領域算出部25は、第1領域算出部24に算出された既作業領域SAに基づいて、作業対象領域CAを算出する。具体的には、第2領域算出部25は、第1刈取走行の完了時点での既作業領域SAよりも圃場内側の領域を、作業対象領域CAとして算出する。これにより、第2領域算出部25は、圃場における作業対象領域CAを取得する。
【0046】
即ち、走行管理システムAは、圃場における作業対象領域CAを取得する第2領域算出部25を備えている。
【0047】
図4に示すように、制御部20は、経路生成部26を有している。第2領域算出部25により算出された作業対象領域CAを示す情報は、領域管理部23から経路生成部26へ送られる。経路生成部26は、領域管理部23から送られた作業対象領域CAを示す情報に基づいて、コンバイン1が作業対象領域CAを刈取走行するための経路群P(
図3参照)を生成する。
【0048】
即ち、走行管理システムAは、コンバイン1が作業対象領域CAを刈取走行するための経路群Pを生成する経路生成部26を備えている。
【0049】
図3に示すように、経路群Pは複数の目標経路LIにより構成されている。経路生成部26は、経路群Pにより作業対象領域CAの全体が網羅されるように、経路群Pを生成する。
図3に示すように、本実施形態においては、複数の目標経路LIは、縦横方向に延びる複数のメッシュ線である。
【0050】
尚、制御部20、及び、制御部20に含まれる位置算出部21等の各要素は、マイクロコンピュータ等の物理的な装置であっても良いし、ソフトウェアにおける機能部であっても良い。
【0051】
〔経路取得部及び決定部〕
図4に示すように、制御部20は、経路取得部27及び決定部28を有している。経路取得部27は、経路群Pが生成された後、第2刈取走行が開始される前に、手動操舵でのコンバイン1による刈取走行が行われた場合、既作業経路LA(
図8参照)を取得する。既作業経路LAとは、複数の目標経路LIのうち、手動操舵でのコンバイン1による刈取走行が行われた目標経路LIである。
【0052】
また、決定部28は、経路取得部27により取得された既作業経路LAを、第2刈取走行における走行対象外として決定する。
【0053】
以下では、経路取得部27及び決定部28について詳述する。また、以下では、経路群Pが生成された後、第2刈取走行が行われる前に、
図5に示すように手動操舵でのコンバイン1による刈取走行が行われたものとして説明する。尚、
図5に示す刈取走行では、作業対象領域CAにおける、紙面上下方向での上端部、及び、紙面左右方向での左端部での刈取走行が行われている。
【0054】
上述のように、
図4に示す軌跡取得部22は、コンバイン1が走行した軌跡を取得する。ここで、軌跡取得部22は、取得した軌跡の中から、手動刈取軌跡を抽出する。これにより、軌跡取得部22は、手動刈取軌跡を取得する。尚、手動刈取軌跡とは、経路群Pが生成された後、第2刈取走行が開始される前にコンバイン1が手動操舵により刈取走行した軌跡である。
【0055】
即ち、走行管理システムAは、コンバイン1が手動操舵により走行した軌跡を取得する軌跡取得部22を備えている。
【0056】
詳述すると、軌跡取得部22は、コンバイン1が走行した軌跡のうち、第1条件及び第2条件を満たす部分を、手動刈取軌跡として抽出する。第1条件は、「経路群Pが生成された後にコンバイン1が走行した部分であること」である。第2条件は、「コンバイン1が収穫部Hを駆動させた状態で手動操舵により走行した部分であること」である。
【0057】
図4に示すように、軌跡取得部22は、手動刈取軌跡を示す情報を通信端末4へ送る。また、領域管理部23は、既作業領域SAを示す情報、及び、作業対象領域CAを示す情報を、通信端末4へ送る。また、経路生成部26は、経路群Pを示す情報を、通信端末4へ送る。
【0058】
通信端末4は、軌跡取得部22、領域管理部23、経路生成部26から受け取った情報に基づいて、
図6に示すように、通信端末4のタッチパネル式のディスプレイ47に、手動刈取軌跡を示す軌跡情報Gと、既作業領域SAと、作業対象領域CAと、経路群Pと、を同時に表示可能である。特に、通信端末4は、ディスプレイ47に、経路群Pと、軌跡情報Gと、を重ね合わせて表示可能である。
【0059】
即ち、走行管理システムAは、経路群Pを表示する通信端末4を備えている。通信端末4は、経路群Pと、軌跡取得部22が取得した軌跡と、を同時に表示可能である。また、通信端末4は、経路群Pと、軌跡取得部22が取得した軌跡と、を重ね合わせて表示可能である。
【0060】
図6に示すように、軌跡情報Gは、
図5においてコンバイン1が刈取走行を行った領域に対応している。また、本実施形態では、軌跡情報Gは、帯状の領域として表示される。当該領域の幅は、コンバイン1の刈幅に対応している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、軌跡情報Gは、線状の表示であっても良い。
【0061】
図6に示すように、ディスプレイ47に、削除ボタン40、第1選択ボタン41、第2選択ボタン42、取消ボタン43、軌跡表示ボタン44が表示されている。削除ボタン40、第1選択ボタン41、第2選択ボタン42、取消ボタン43、軌跡表示ボタン44は、何れも、タッチボタンである。
【0062】
削除ボタン40、第1選択ボタン41、第2選択ボタン42により、入力部48が構成されている。ユーザーは、入力部48に対して、既作業経路LAを人為操作により入力可能である。
【0063】
即ち、走行管理システムAは、既作業経路LAを人為操作により入力可能な入力部48を備えている。
【0064】
詳述すると、ユーザーは、第1選択ボタン41及び第2選択ボタン42を操作することにより、経路群Pの中から、一つの目標経路LIを選択できる。より具体的には、各目標経路LIには、それぞれ固有のナンバーが付与されている。そして、一つの目標経路LIが選択されている状態で、ユーザーが第1選択ボタン41を操作すると、当該目標経路LIよりもナンバーの一つ大きい目標経路LIが選択された状態となる。また、一つの目標経路LIが選択されている状態で、ユーザーが第2選択ボタン42を操作すると、当該目標経路LIよりもナンバーの一つ小さい目標経路LIが選択された状態となる。
【0065】
図6に示すように、選択されている目標経路LIは、強調表示される。より具体的には、選択されている目標経路LIは、太い線で表示される。そして、ユーザーが削除ボタン40を操作すると、選択されている目標経路LIが、既作業経路LAとして通信端末4に入力される。
【0066】
尚、削除ボタン40が操作された後、ユーザーは、取消ボタン43を操作することにより、既作業経路LAの入力を取り消すことができる。また、軌跡表示ボタン44が操作される度に、軌跡情報Gは、ディスプレイ47に表示されている状態と表示されていない状態との間で切り替わる。
【0067】
また、削除ボタン40が操作された後、ユーザーは、さらに、削除ボタン40、第1選択ボタン41、第2選択ボタン42の操作を行うことができる。これにより、複数の目標経路LIを、既作業経路LAとして入力することが可能である。
【0068】
ユーザーは、削除ボタン40、第1選択ボタン41、第2選択ボタン42を操作することにより、軌跡情報Gと重複している目標経路LIを、既作業経路LAとして入力する。これにより、経路群Pが生成された後、第2刈取走行が開始される前に、手動操舵でのコンバイン1による刈取走行が行われた目標経路LIが、既作業経路LAとして入力されることとなる。
図4に示すように、経路取得部27は、通信端末4から、入力された既作業経路LAを示す情報を取得する。
【0069】
このように、走行管理システムAは、複数の目標経路LIのうち、手動操舵でのコンバイン1による刈取走行が行われた目標経路LIである既作業経路LAを取得する経路取得部27を備えている。また、経路取得部27は、入力部48に入力された既作業経路LAを取得する。
【0070】
図4に示すように、経路取得部27は、既作業経路LAを示す情報を、決定部28へ送る。そして、決定部28は、当該情報に基づいて、既作業経路LAを、第2刈取走行における走行対象外として決定する。
【0071】
このように、走行管理システムAは、経路取得部27により取得された既作業経路LAを走行対象外として決定する決定部28を備えている。
【0072】
決定部28による決定内容は、領域管理部23へ送られる。領域管理部23の第1領域算出部24は、決定部28による決定内容に基づいて、既作業領域SAを改めて算出する。より具体的には、第1領域算出部24は、決定部28により走行対象外として決定された既作業経路LAに対応する領域が既作業領域SAに含まれるように、既作業領域SAを算出する。これにより、既作業領域SAの算出結果が更新されることとなる。また、これにより、既作業領域SAが拡大することとなる。
【0073】
尚、このような既作業領域SAの算出結果の更新によって新たに既作業領域SAとなった領域は、作業対象領域CAから除外されることとなる。ただし、本発明はこれに限定されず、新たに既作業領域SAとなった領域は、作業対象領域CAの一部でもあるものとして取り扱われても良い。
【0074】
また、「既作業経路LAに対応する領域」は、特に限定されないが、例えば、既作業経路LAに沿った刈取走行によって植立穀稈が刈り取られた領域であっても良いし、コンバイン1の刈幅に等しい幅を有すると共に既作業経路LAを中心線とする帯状の領域であっても良い。
【0075】
図6には、第1経路LI1、及び、第2経路LI2が示されている。第1経路LI1、及び、第2経路LI2は、何れも、目標経路LIである。第1経路LI1、及び、第2経路LI2が既作業経路LAとして入力され、走行対象外として決定されると、ディスプレイ47の表示は、
図7に示す状態となる。
【0076】
図7に示すディスプレイ47では、第1経路LI1、及び、第2経路LI2の表示形態が、他の目標経路LIとは異なっている。より具体的には、第1経路LI1、及び、第2経路LI2は破線で表示されているが、他の目標経路LIは実線で表示されている。また、第1経路LI1、及び、第2経路LI2に対応する領域が既作業領域SAに含まれている。
【0077】
〔走行制御部〕
図4に示すように、制御部20は、経路選択部29及び走行制御部30を有している。走行制御部30は、走行装置11を制御することにより、コンバイン1の走行を制御可能に構成されている。
【0078】
走行制御部30は、上述の第2刈取走行において、複数の目標経路LIのうちまだ走行しておらず、且つ、決定部28により走行対象外として決定されていない目標経路LIに沿った刈取走行をコンバイン1が繰り返すように、コンバイン1の走行を制御する。これにより、第2刈取走行が自動走行にて行われることとなる。
【0079】
詳述すると、経路選択部29は、位置算出部21からコンバイン1の位置座標を受け取ると共に、経路生成部26から経路群Pを示す情報を受け取る。さらに、経路選択部29は、決定部28による決定内容を決定部28から受け取る。経路選択部29は、これらの情報に基づいて、コンバイン1が次に走行するべき目標経路LIを選択する。このとき、経路選択部29は、複数の目標経路LIのうちまだ走行しておらず、且つ、決定部28により走行対象外として決定されていない目標経路LIを選択する。経路選択部29により選択された目標経路LIを示す情報は、走行制御部30へ送られる。
【0080】
また、走行制御部30は、位置算出部21からコンバイン1の位置座標を受け取る。そして、走行制御部30は、位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、経路選択部29により選択された目標経路LIを示す情報と、に基づいて、コンバイン1の自動走行を制御する。より具体的には、走行制御部30は、目標経路LIに沿った自動走行によって刈取走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0081】
この自動走行において、走行制御部30は、現在走行している目標経路LIに沿った刈取走行の後に、既作業領域SAにおける方向転換が行われ、その後、経路選択部29により選択された目標経路LIに沿った刈取走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0082】
この構成により、コンバイン1は、第2刈取走行において、決定部28により走行対象外として決定されていない目標経路LIに沿って自動走行を行う。例えば、
図8に示す例では、第1経路LI1、及び、第2経路LI2が決定部28により走行対象外として決定されている。そのため、コンバイン1は、第1経路LI1、及び、第2経路LI2以外の目標経路LIに沿って自動走行を行う。
【0083】
このように、走行管理システムAは、決定部28により走行対象外として決定されていない目標経路LIに沿ってコンバイン1が自動走行するようにコンバイン1の走行を制御可能な走行制御部30を備える。
【0084】
〔旋回経路の生成〕
図4に示すように、制御部20は、旋回経路生成部31を有している。旋回経路生成部31は、
図8に示すように、目標経路LI同士を繋ぐ旋回経路Tを生成するように構成されている。
【0085】
詳述すると、
図4に示すように、旋回経路生成部31は、領域管理部23から、既作業領域SAを示す情報を受け取る。このとき、上述のように既作業領域SAの算出結果が更新されている場合、旋回経路生成部31は、最新の既作業領域SAを示す情報を受け取る。
【0086】
また、旋回経路生成部31は、経路生成部26から経路群Pを示す情報を受け取る。さらに、旋回経路生成部31は、経路選択部29により選択された目標経路LIを示す情報を経路選択部29から受け取る。
【0087】
旋回経路生成部31は、既作業領域SAを示す情報と、経路群Pを示す情報と、経路選択部29により選択された目標経路LIを示す情報と、に基づいて、コンバイン1が現在走行している目標経路LIの終端と、経路選択部29により選択された目標経路LI(コンバイン1が次に走行する目標経路LI)の始端と、を繋ぐ旋回経路Tを生成する。尚、目標経路LIの終端とは、目標経路LIのうち、コンバイン1の走行方向の下手側の端を意味する。また、目標経路LIの始端とは、目標経路LIのうち、コンバイン1の走行方向の上手側の端を意味する。
【0088】
このとき、旋回経路生成部31は、
図8に示すように、旋回経路Tが既作業領域SAを通るように旋回経路Tを生成する。より具体的には、旋回経路生成部31は、旋回経路Tの全体が既作業領域SA内に位置するように、旋回経路Tを生成する。
【0089】
このように、走行管理システムAは、目標経路LI同士を繋ぐ旋回経路Tを既作業領域SAに基づいて生成する旋回経路生成部31を備えている。
【0090】
図4に示すように、走行制御部30は、旋回経路生成部31から、旋回経路Tを示す情報を受け取る。そして、走行制御部30は、位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、旋回経路生成部31から受け取った旋回経路Tを示す情報と、に基づいて、コンバイン1の自動走行を制御する。より具体的には、走行制御部30は、コンバイン1が目標経路LIの終端に到達した後、旋回経路Tに沿って旋回走行を行うように、コンバイン1の走行を制御する。この旋回走行により、コンバイン1は、次に走行する目標経路LIの始端に到達することとなる。
【0091】
次に走行する目標経路LIの始端に到達すると、走行制御部30は、コンバイン1が当該目標経路LIに沿って刈取走行を行うように、コンバイン1の走行を制御する。このように、第2刈取走行において、コンバイン1は、目標経路LIに沿った刈取走行と、旋回経路Tに沿った旋回走行と、を繰り返す。
【0092】
ここで、上述のように、経路群Pが生成された後、第2刈取走行が開始される前に、手動操舵でのコンバイン1による刈取走行が行われた目標経路LIは、既作業経路LAとして入力される。当該既作業経路LAは、決定部28により、第2刈取走行における走行対象外として決定される。そして、第1領域算出部24は、決定部28により走行対象外として決定された既作業経路LAに対応する領域が既作業領域SAに含まれるように、既作業領域SAを算出する。
【0093】
そのため、経路群Pが生成された後、第2刈取走行が開始される前に、手動操舵でのコンバイン1による刈取走行が行われた場合、当該刈取走行が行われた目標経路LIに対応する領域を旋回経路Tが通ることが許容されることとなる。
【0094】
例えば、
図8に示す例では、経路群Pが生成された後、第2刈取走行が開始される前に、第1経路LI1及び第2経路LI2に沿って手動操舵でのコンバイン1による刈取走行が既に行われている。その結果、第1経路LI1及び第2経路LI2は、決定部28により、第2刈取走行における走行対象外として決定されている。そして、第1経路LI1及び第2経路LI2に対応する領域が既作業領域SAに含まれている。
【0095】
この例では、コンバイン1は、第3経路LI3に沿って自動走行した後、第4経路LI4に沿って自動走行する。その後、コンバイン1は、第5経路LI5に沿って自動走行する。尚、第3経路LI3、第4経路LI4、第5経路LI5は、何れも、目標経路LIである。
【0096】
この例では、コンバイン1が第3経路LI3に沿って自動走行しているとき、旋回経路生成部31により、第1旋回経路T1が生成される。第1旋回経路T1は、第3経路LI3の終端と、第4経路LI4の始端と、を繋ぐ旋回経路Tである。また、コンバイン1が第4経路LI4に沿って自動走行しているとき、旋回経路生成部31により、第2旋回経路T2が生成される。第2旋回経路T2は、第4経路LI4の終端と、第5経路LI5の始端と、を繋ぐ旋回経路Tである。
【0097】
図8に示すように、第1旋回経路T1及び第2旋回経路T2は、何れも、既作業領域SA内に位置している。特に、第1旋回経路T1の全体が、第2経路LI2に対応する領域内に位置している。
【0098】
以上で説明した構成によれば、経路群Pが生成された後に手動操舵でのコンバイン1による刈取走行が行われた場合に、当該刈取走行が行われた目標経路LIである既作業経路LAが、走行対象外として決定される。そのため、当該刈取走行の後に既作業経路LAに沿った刈取走行が行われてしまうことを回避しやすい。
【0099】
従って、以上で説明した構成によれば、経路群Pが生成された後に手動操舵での刈取走行が行われた場合に、当該刈取走行の後に不要な刈取走行が行われてしまうことを回避しやすい走行管理システムAを実現できる。
【0100】
〔その他の実施形態〕
(1)通信端末4は、経路群Pと、軌跡情報Gと、をそれぞれ別画面で同時に表示可能であっても良い。また、通信端末4は、経路群Pと、軌跡情報Gと、を同時に表示できなくても良い。
【0101】
(2)通信端末4は設けられていなくても良い。この場合、経路取得部27は、経路群Pの中から、既作業経路LAを自動的に特定することにより、既作業経路LAを取得するように構成されていても良い。
【0102】
(3)コンバイン1は、自動走行できないように構成されていても良い。この場合、目標経路LI及び旋回経路Tに沿った手動走行がガイダンスされる構成であっても良い。
【0103】
(4)入力部48は、通信端末4とは別体の部材であっても良い。例えば、通信端末4とは別体である操作具が、入力部48として設けられていても良い。
【0104】
(5)旋回経路生成部31は設けられていなくても良い。
【0105】
(6)決定部28により走行対象外として決定された既作業経路LA(目標経路LI)を、走行対象の目標経路LIに変更可能であっても良い。また、このような変更が、自動走行(第2刈取走行)の開始前に行えるように構成されていても良いし、自動走行(第2刈取走行)の実行中に行えるように構成されていても良い。
【0106】
(7)各目標経路LIを走行する順番が、自動走行(第2刈取走行)の開始前に決定される構成であっても良い。即ち、自動走行(第2刈取走行)の開始前に、自動走行(第2刈取走行)での走行経路の全体が決定される構成であっても良い。この場合、旋回走行以外ではコンバイン1が既作業経路LAを通過しないように走行経路の全体が決定される構成であっても良い。
【0107】
(8)予め設定された走行基準に基づいて自動操舵を実行可能であっても良いし、手動操舵で直進走行することによって走行基準を決定した直後から自動操舵を実行可能であっても良い。尚、走行基準は、例えば、走行の基準となる方位であっても良いし、走行の基準となる直線や曲線であっても良い。
【0108】
(9)第2領域算出部25に代えて、作業対象領域CAを取得する装置または機能部が備えられていても良い。当該装置または機能部は、コンバイン1の外部に設けられた管理施設や管理サーバから、作業対象領域CAを取得しても良い。
【0109】
(10)手動操舵でのコンバイン1による刈取走行が行われていない目標経路LIを、入力部48に入力可能であっても良い。この場合、決定部28は、入力部48に入力された目標経路LIを走行対象外として決定する。即ち、決定部28は、手動操舵でのコンバイン1による刈取走行が行われていない目標経路LIを走行対象外として決定可能であっても良い。
【0110】
(11)走行装置11は、ホイール式であっても良いし、セミクローラ式であっても良い。
【0111】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、普通型のコンバインだけではなく、自脱型のコンバイン、トラクタ、田植機、トウモロコシ収穫機、ジャガイモ収穫機、ニンジン収穫機、建設作業機等の種々の作業車に利用可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 コンバイン(作業車)
4 通信端末(表示部)
22 軌跡取得部
24 第1領域算出部(領域算出部)
25 第2領域算出部(領域取得部)
26 経路生成部
27 経路取得部
28 決定部
30 走行制御部
31 旋回経路生成部
48 入力部
A 走行管理システム
CA 作業対象領域
LA 既作業経路
LI 目標経路
P 経路群
SA 既作業領域
T 旋回経路