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▶ クリスパー セラピューティクス アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】ユニバーサルドナー細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20241105BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20241105BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20241105BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241105BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241105BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20241105BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20241105BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20241105BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241105BHJP
   C12N 9/22 20060101ALI20241105BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20241105BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20241105BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241105BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241105BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20241105BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/85 Z
C12N15/55
C07K19/00
C07K16/28
C12N5/071
C12N5/074
C12N5/0735
C12N5/10
C12N9/22
A61K35/12
A61P37/06
A61P43/00 111
A61K48/00
A61K35/545
C12N15/12 ZNA
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021512530
(86)(22)【出願日】2019-09-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 IB2019057555
(87)【国際公開番号】W WO2020049535
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】62/728,529
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518370079
【氏名又は名称】クリスパー セラピューティクス アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】アリレザ レザニア
(72)【発明者】
【氏名】トニー ダブリュ.ホー
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ ラモス-ザヤス
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/079673(WO,A1)
【文献】Nature,2017年,Vol.543,p.113-117,doi:10.1038/nature21405
【文献】Nature Biotechnology,2017年,Vol.35, No.8,p.765-772,doi:10.1038/nbt.3860
【文献】BioTechniques,2014年,Vol.57,p.115-124,doi 10.2144/000114196
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12N 5/071
C12N 5/074
C12N 5/0735
C12N 5/10
C12N 9/22
A61K 35/12
A61P 37/06
A61P 43/00
A61K 48/00
A61K 35/545
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニバーサルドナー細胞を作製する方法であって
記細胞のゲノムにおいて、プログラム死リガンド1(PD-L1)である免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドの挿入を導入することによって、細胞を遺伝子改変することを含む方法であって、
ここで、前記遺伝子改変が、CRISPRヌクレアーゼ及びベータ-2-ミクログロブリン(B2M遺伝子座位内の部位を標的化するガイドRNAを含む少なくとも1つのRNA誘導型エンドヌクレアーゼ系を送達することを含み、そして前記免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドは、(a)前B2M遺伝子座位内の部位の左に位置する領域と配列相同性を有する配列番号13で示されるヌクレオチド配列及び(b)前B2M遺伝子座位内の部位の右に位置する領域と配列相同性を有する配列番号19で示されるヌクレオチド配列と隣接し、ここで前記B2M遺伝子座位は、前記標的部位で切断され、且つPD-L1をコードするポリヌクレオチドが、前B2M遺伝子座位内の部位の50塩基対以内で前記B2M遺伝子座位に挿入され、それにより前記B2M遺伝子を破壊し、そしてユニバーサルドナー細胞を作製し、
前記遺伝子改変された細胞が、多能性幹細胞(PSC)、胚性幹細胞(ESC)、成体幹細胞(ASC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、又は造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)である、方法。
【請求項2】
前記ユニバーサルドナー細胞が、未改変細胞と比較して免疫回避及び/又は細胞生存の増加を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガイドRNAによって標的化される部位は、配列番号1~3の少なくとも1つの核酸配列を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガイドRNAによって標的化される部位は、配列番号2の核酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドが外来プロモーターをさらに含み、前記免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドが前記外来プロモーターに作動可能に連結される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記外来プロモーターが、構成的、誘導性、時間特異的、組織特異的、又は細胞型特異的プロモーターである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記外来プロモーターがCAGプロモーターである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドがベクターを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ベクターが、配列番号33で示される核酸配列を含むプラスミドベクターである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記CRISPRヌクレアーゼが、Cas9ヌクレアーゼである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記Cas9ヌクレアーゼが、S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記CRISPRヌクレアーゼが、N末端核移行シグナル(NLS)及び/又はC末端NLSを含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記CRISPRヌクレアーゼ及び前記ガイドRNAが、1:1の重量比で存在する、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記CRISPRヌクレアーゼが、リボ核タンパク質粒子(RNP)として、1つ以上のガイドRNAと予め複合体を形成する、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ユニバーサルドナー細胞が哺乳動物細胞である、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ユニバーサルドナー細胞が、系列限定前駆細胞又は完全に分化した体細胞に分化することができる、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記系列限定前駆細胞が、膵臓内胚葉前駆細胞、膵臓内分泌性前駆細胞、間葉系前駆細胞、筋肉前駆細胞、芽球細胞、又は神経前駆細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記完全に分化した体細胞が、膵ベータ細胞などの内分泌性細胞、上皮細胞、内胚葉細胞、マクロファージ、肝細胞、脂肪細胞、腎細胞、血液細胞、又は免疫系細胞である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年9月7日に出願された米国仮特許出願第62/728,529号明細書の利益を主張するものであり、その開示は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、遺伝子編集の分野に関し、いくつかの実施形態では、複数の対象に適合する細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞を作製するための遺伝子改変に関する。
【背景技術】
【0003】
HLA適合、抗体によりT細胞活性化を誘発する経路の遮断、免疫抑制剤のカクテルの使用、及び自己細胞療法を含む、移植された細胞又は生着された細胞の同種拒絶を克服するために、様々な手法が提案されてきた。移植片拒絶を弱める別の戦略は、移植された細胞又は生着された細胞とレシピエントの間の同種間相違の最小化を含む。6番染色体上のヒト主要組織適合抗原複合体に位置する遺伝子によってコードされる分子である細胞表面に発現されるヒト白血球抗原(HLA)は、免疫拒絶の主要なメディエーターである。ドナーと対象の間の単一のHLA遺伝子の不一致が、強い免疫応答を引き起こし得る(Fleischhauer K.et al.「Bone marrow-allograft rejection by T lymphocytes recognizing a single amino acid difference in HLA-B44」,N Engl J Med.,1990,323:1818-1822)。HLA遺伝子は、MHCクラスI(MHC-I)及びMHCクラスII(MHC-II)に分類される。MHC-I遺伝子(HLA-A、HLA-B、及びHLA-C)は、ほとんど全ての組織型において発現され、「非自己」の抗原がプロセシングされたペプチドをCD8+T細胞に提示し、それにより細胞溶解性CD8+T細胞へのそれらの活性化を促進する。「非自己」MHC-I分子を発現する移植された細胞又は生着された細胞は、これらの細胞に向けられる強い細胞性免疫応答を引き起こすことになり、最終的に、活性化された細胞溶解性CD8+T細胞によるそれらの消滅をもたらす。MHC-Iタンパク質は、本質的に、小胞体中のベータ-2-ミクログロブリン(B2M)と関連し、これは細胞表面上で機能的MHC-I分子を形成するのに必須である。
【0004】
MHC-I遺伝子の広範な細胞での発現とは対照的に、MHC-II遺伝子の発現は、樹状細胞、マクロファージ、及びB細胞などの抗原提示細胞に制限される。HLA抗原遺伝子は、ヒトゲノムにおいて観察される最も多型の遺伝子である(Rubinstein P.,「HLA matching for bone marrow transplantation--how much is enough?」N Engl J Med.,2001,345:1842-1844)。どのHLA遺伝子型とも適合する「ユニバーサルドナー」細胞の作製は、免疫拒絶及び免疫回避のための既存の方法論の関連する経済的コストを解決し得る代替の戦略を提供する。
【0005】
そのようなユニバーサルドナー細胞の系列を作製するために、先行する1つの手法は、MHC-I及びMHC-IIクラス遺伝子の発現を機能的に破壊した。これは、例えば、MHC-I軽鎖、B2Mをコードする両方の遺伝子アレルの遺伝子破壊により活性化され得る。得られたB2M KO細胞株及びその派生体は、表面MHC-Iの著しい減少、それにより同種のCD8+T細胞に対する免疫原性の低減を呈すると予想されるであろう。転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)で標的化する手法を使用して、B2M遺伝子のエクソン2中の数ヌクレオチドの欠失によってB2M欠損hESC株を作製してきた(Lu,P.et al.,「Generating hypoimmunogenic human embryonic stem cells by the disruption of beta 2-microglobulin」,Stem Cell Rev.2013,9:806-813)。B2M標的化hESC株は表面HLA-I欠損であると思われたが、それらは、依然としてB2M及びMHC-Iに特異的なmRNAを含有することが見出された。B2M及びMHC-I mRNAは、非標的化hESCのものと同等のレベルで発現された(両方ともに構成的であり且つIFN-g誘導性)。したがって、これらのTALEN B2M標的化hESC株は、B2M mRNAも発現するB2M2/2マウス細胞で観察されたように、免疫拒絶を引き起こすのに十分であると考えられる残留の細胞表面MHC-Iを発現する可能性があるという懸念がある(Gross,R.及びRappuoli,R.「Pertussis toxin promoter sequences involved in modulation」,Proc Natl Acad Sci,1993,90:3913-3917)。TALEN B2M標的化hESC株は、オフターゲット切断現象について試験されなかったが、TALENを使用する際の非特異的切断の発生は、それらの臨床使用に対して主要な安全性の懸念を強いると考えられる重大な問題のままである(Grau,J.et al.「TALENoffer:genome-wide TALEN off-target prediction」,Bioinformatics,2013,29:2931-2932;Guilinger J.P.et al.「Broad specificity profiling of TALENs results in engineered nucleases with improved DNA-cleavage specificity」,Nat Methods 2014,11:429-435)。さらに、別の報告では、第1のB2Mアレルをノックアウトし、且つ第2のB2MアレルでHLA-E遺伝子をノックインして、HLA-A、HLA-B、又はHLA-Cの表面発現がない状態でHLA-Eの二量体又は三量体の表面発現をもたらすことによって、同種認識を回避したIPS細胞を作製した(Gornalusse,G.G.et al.,「HLA-E-expressing pluripotent stem cells escape allogeneic responses and lysis by NK cells」,Nature Biotechnology,2017,35,765-773)。
【0006】
上記の戦略のうちの一部の潜在的な制約は、MHCクラスI陰性細胞が、HLA分子がナチュラルキラー(NK)細胞に対する主要なリガンド阻害剤として機能するためナチュラルキラー(NK)細胞によって溶解されやすいことである。宿主NK細胞は、移植されたか又は生着されたB2M-/-ドナー細胞を除去することが示されており、同様の現象は、MHCクラスI陰性ヒト白血病株によりインビトロで発生する(Bix,M.et al.,「Rejection of class I MHC-deficient haemopoietic cells by irradiated MHC-matched mice」,Nature,1991,349,329-331;Zarcone,D.et al.,「Human leukemia-derived cell lines and clones as models for mechanistic analysis of natural killer cell-mediated cytotoxicity」,Cancer Res.1987,47,2674-2682)。したがって、先行する方法を改善して免疫応答を回避できるユニバーサルドナー細胞を作製する必要性、及び生着後に生存できる細胞を作製する必要性が存在する。本明細書に記載されるとおり、生着後の細胞の生存は、同種拒絶に依存しない多くの他の経路、例えば、低酸素、活性酸素種、栄養欠乏、及び酸化ストレスによって媒介され得る。また、本明細書に記載されるとおり、生存因子(遺伝子及び/又はタンパク質)の遺伝的導入は、細胞が生着後に生存する助けとなり得る。本明細書に記載されるとおり、ユニバーサルドナー細胞株は、同種拒絶及び生着後の生存の両方に対処する特性を兼ね備え得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの態様では、本開示は、ユニバーサルドナー細胞を作製する方法を包含する。第1の方法は、(i)MHC-I若しくはMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の構成要素若しくは転写調節因子のうちの1つ以上をコードする少なくとも1つの遺伝子内又は近傍の部位で細胞のゲノム中の少なくとも1つの塩基対の欠失及び/又は挿入を導入すること;並びに(ii)細胞のゲノムにおいて(i)の部位に部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位で免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドの挿入を導入することによって、細胞を遺伝子改変し、それによりユニバーサルドナー細胞を作製することを含む。第2の方法は、(i)MHC-I若しくはMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の構成要素若しくは転写調節因子のうちの1つ以上をコードする少なくとも1つの遺伝子内又は近傍の部位で細胞のゲノム中の少なくとも1つの塩基対の欠失及び/又は挿入を導入すること;並びに(ii)細胞のゲノムにおいてセーフハーバー座位に免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドの挿入を導入することによって、細胞を遺伝子改変し、それによりユニバーサルドナー細胞を作製することを含む。いくつかの実施形態では、ユニバーサルドナー細胞は、未改変細胞と比較して免疫回避及び/又は細胞生存の増加を有する。
【0008】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMHC-I若しくはMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の構成要素若しくは転写調節因子をコードする少なくとも1つの遺伝子は、HLA-A、HLA-B、若しくはHLA-Cから選択されるMHC-I遺伝子、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、若しくはHLA-DRから選択されるMHC-II遺伝子、又はB2M、NLRC5、CIITA、RFX5、RFXAP、若しくはRFXANKから選択される遺伝子である。
【0009】
いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドは、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CTLA-4、又はCD47のうちの1つ以上をコードする1つ以上のポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドは、外来プロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、外来プロモーターは、構成的、誘導性、時間特異的、組織特異的、又は細胞型特異的プロモーターであり、任意選択により、外来プロモーターは、CMV、EFla、PGK、CAG、又はUBCプロモーターである。
【0010】
いくつかの実施形態では、(i)の欠失及び/又は挿入は、B2M内又は近傍にあり、(ii)の挿入は、PD-L1又はHLA-Eをコードするポリヌクレオチドである。
【0011】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、未修飾細胞に対して少なくとも1つの生存因子の発現を増加させるか又は減少させる少なくとも1つの遺伝子改変を導入することを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの生存因子の発現を増加させるか又は減少させる少なくとも1つの遺伝子改変は、未改変細胞に対してMANFの発現を増加させる、MANFをコードするポリヌクレオチドの挿入;又は未改変細胞に対してZNF143、TXNIP、FOXO1、若しくはJNKの発現を減少させるか又は消失させる、ZNF143、TXNIP、FOXO1、若しくはJNKをコードする遺伝子内又は近傍での少なくとも1つの塩基対の欠失及び/若しくは挿入である。いくつかの実施形態では、MANFをコードするポリヌクレオチドは、セーフハーバー座位、又はMHC-I、MHC-II、若しくはMHC-I若しくはMHC-IIの転写調節因子に属する遺伝子に挿入される。
【0012】
いくつかの実施形態では、細胞を遺伝子改変することは、少なくとも1つのRNA誘導型エンドヌクレアーゼ系を細胞に送達することを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNA誘導型エンドヌクレアーゼ系は、CRISPRヌクレアーゼ及びガイドRNAを含むCRISPR系である。いくつかの実施形態では、CRISPRヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、そのホモログ、その改変バージョン、そのコドン最適化バージョン、又はこれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態では、CRISPRヌクレアーゼは、S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9である。いくつかの実施形態では、CRISPRヌクレアーゼは、N末端核移行シグナル(NLS)及び/又はC末端NLSを含む。いくつかの実施形態では、CRISPRヌクレアーゼ及びガイドRNAは、1:1の重量比で存在する。
【0013】
いくつかの実施形態では、(i)の欠失及び/又は挿入は、B2M遺伝子座位内又は近傍にあり、(ii)の挿入は、PD-L1をコードするポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、(i)及び(ii)のために使用されるガイドRNAは、配列番号1~3又は配列番号35~44の少なくとも1つを含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、(a)(i)における部位の左に位置する領域と配列相同性を有するヌクレオチド配列及び(b)(i)における部位の右に位置する領域と配列相同性を有するヌクレオチド配列と隣接する。いくつかの実施形態では、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、(i)における部位の50塩基対以内のB2M遺伝子座位に挿入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド中の(a)は、配列番号13のヌクレオチド配列から本質的になり、且つポリヌクレオチド中の(b)は、配列番号19のヌクレオチド配列から本質的になる。いくつかの実施形態では、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、外来プロモーターに作動可能に連結され、任意選択により、外来プロモーターは、CAGプロモーターである。
【0014】
いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞であり、任意選択により、細胞は、ヒト細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、幹細胞であり、任意選択により、幹細胞は、多能性幹細胞(PSC)、胚性幹細胞(ESC)、成体幹細胞(ASC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、又は造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)である。いくつかの実施形態では、細胞は、分化細胞又は体細胞である。
【0015】
いくつかの実施形態では、ユニバーサルドナー細胞は、系列限定前駆細胞又は完全に分化した体細胞に分化することができる。いくつかの実施形態では、系列限定前駆細胞は、膵臓内胚葉前駆細胞、膵臓内分泌性前駆細胞、間葉系前駆細胞、筋肉前駆細胞、芽球細胞、又は神経前駆細胞である。いくつかの実施形態では、完全に分化した体細胞は、膵ベータ細胞などの内分泌性細胞、上皮細胞、内胚葉細胞、マクロファージ、肝細胞、脂肪細胞、腎細胞、血液細胞、又は免疫系細胞である。
【0016】
他の態様では、本開示は、本明細書で開示される方法のいずれかによって作製される複数のユニバーサルドナー細胞を包含する。いくつかの実施形態では、複数のユニバーサルドナー細胞は、細胞が分化を経るのに十分な時間及び条件下で維持され得る。
【0017】
さらなる態様では、本開示は、(i)1つ以上のMHC-1及びMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の構成要素若しくは転写調節因子をコードする少なくとも1つの遺伝子内又は近傍での少なくとも1つの欠失;並びに(ii)(i)の遺伝子欠失の部位に部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位での少なくとも1つの免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドの少なくとも1つの挿入を含む細胞の組成物を提供する。
【0018】
追加の態様では、本開示は、治療を必要とする対象に本明細書で開示されるユニバーサルドナー細胞のいずれかを投与する方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、系列限定前駆細胞又は完全に分化した体細胞への分化後に本明細書で開示されるとおりの複数のユニバーサルドナー細胞を得ること又は得たこと;及び対象に系列限定前駆細胞又は完全に分化した体細胞を投与することを含む。本発明はまた、必要とする対象への投与のための細胞を得る方法を提供する。方法は、(i)本明細書で開示されるユニバーサルドナー細胞のいずれかを得ること又は得たこと;及び(ii)細胞が系列限定前駆細胞又は完全に分化した体細胞に分化するのに十分な時間及び条件下でユニバーサルドナー細胞を維持することを含む。いくつかの実施形態では、系列限定前駆細胞は、膵臓内胚葉前駆細胞、膵臓内分泌性前駆細胞、間葉系前駆細胞、筋肉前駆細胞、芽球細胞、又は神経前駆細胞である。いくつかの実施形態では、完全に分化した体細胞は、膵ベータ細胞などの内分泌性細胞、上皮細胞、内胚葉細胞、マクロファージ、肝細胞、脂肪細胞、腎細胞、血液細胞、又は免疫系細胞である。いくつかの実施形態では、対象は、疾患を有するか、有すると疑われるか、又はそのリスクがあるヒトであり、疾患は、遺伝的に受け継がれる疾患であり得る。
【0019】
本開示は、様々な改変及び代替の形態に影響されやすいが、その特定の実施形態は、図面中の例を通して示され、本明細書で詳細に記載されることになる。しかしながら、本明細書に示される図面及び詳細な説明は、本開示を開示された特定の実施形態に限定することを意図したものではなく、逆に、添付の特許請求の範囲によって定義されるとおりの本開示の精神及び範囲内に入る全ての変更形態、同等物、及び代替物を包含することを意図していることが理解されるべきである。
【0020】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明において明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A-1C】免疫回避のための特定の遺伝子編集戦略を提供する。図1Aは、指定された細胞型における免疫回避のための例示的な改変を記載する表である。図1Bは、B2M座位を改変するための例示的な戦略を提供する。図1Cは、HLA-A、HLA-B/C、及びCIITA座位を改変するための例示的な戦略を提供する。
図2】B2M遺伝子(配列番号6)の一部及び標的化するエクソン1のためのgRNA(B2M-1、B2M-2、及びB2M-3)の位置を示す。PCRプライマー(B2MF2及びB2MR2)の位置も示される。
図3A-3C】TC1133 iPSC細胞株におけるB2M gRNAのスクリーニングから結果を示す。図3Aは、各B2M gRNAのインデル(挿入+欠失)頻度を示すグラフである。B2M-1 gRNAは、2.5%±1.1%(n=2)のインデル頻度をもたらした。B2M-2 gRNAは、87.6%±14.1%(n=2)のインデル頻度をもたらした。B2M-3 gRNAは、63.9%±0.9%(n=2)のインデル頻度をもたらした。図3B及び3Cは、B2M-2(図3B)及びB2M-3(図3C)gRNAに関するインデル結果の分布の概要を示すグラフである。
図4A-4B】B2M-2 gRNAを使用するiPSCにおけるB2Mノックアウト(KO)の結果を示す。図4Aは、iPSCにおけるB2M-2 gRNAに関するインデル結果の分布の概要を示すグラフである。図4Bは、B2Mノックアウト(KO)のためのクローンホモ接合型(「ホモ」)及びB2M KOのためのクローンヘテロ接合型(「ヘテロ」)を示す。
図5】B2M KO iPSCクローンの評価を示す。試験された3つ全てのB2M KOクローンは、野生型、又は未改変細胞に対してB2MのmRNA発現の減少を示した。
図6A-6D】インターフェロン-ガンマによる47時間の処理の後のB2M KO iPSCクローンにおけるB2M及びHLA-ABCの発現を示す。図6Aは、野生型細胞における発現を示す。図6Bは、B2M KOクローンC4における発現を示す。図6Cは、B2M KOクローンC9における発現を示す。図6Dは、B2M KOクローンC12における発現を示す。
図7A-7D】SSEA-4及びTRA-1-60の発現レベルの評価を通してB2M KO iPSCクローンの多能性を実証する。図7Aは、野生型細胞における発現を示す。図7Bは、B2M KOクローンC4における発現を示す。図7Cは、B2M KOクローンC9における発現を示す。図7Dは、B2M KOクローンC12における発現を示す。
図8】CyT49細胞におけるB2M gRNA切断のTIDE分析を示す。B2M gRNA-1、-2、又は-3が試験された。
図9A-9B】WT CyT49細胞(図9A)及び編集されたCyT49細胞(図9B)におけるIFN-γ有り無し両方でのB2M発現のフローサイトメトリー評価を示す。
図10】HDRのためのB2M-CAGGS-PD-L1ドナーベクターのプラスミドマップを示す。
図11】B2M KO+PD-L1 KI CyT49幹細胞の多能性のフローサイトメトリー分析を示す。派生したクローンは、多能性に不可欠な2つの転写因子であるOCT4及びSOX2の>99%の二重陽性であった。IgGは、陰性対照として使用された。
図12A-12B】WT CyT49(図12A)及びB2M KO/PD-L1 KI(図12B)に由来する幹細胞クローンのフローサイトメトリー分析を示す。WT細胞は、IFNγに応答するB2M発現を上方制御する。B2M KO/PD-L1 KIクローンは、PD-L1を十分に発現し、IFNγ処理の有無に関わらずB2Mを発現しない。NT-1=未処理。INTG-1=50ng/mL IFNγで48時間処理された細胞。
図13】HDRのためのB2M-CAGGS-HLA-Eドナーベクターのプラスミドマップを示す。
図14】B2M KO/HLA-E KI CyT49幹細胞の多能性のフローサイトメトリー分析を示す。派生したクローンは、多能性に不可欠な2つの転写因子であるOCT4及びSOX2の>99%の二重陽性であった。IgGは、陰性対照として使用された。
図15】WT CyT49及びB2M KO/HLA-E KI CyT49幹細胞クローンのフローサイトメトリー分析を示す。WT細胞は、IFNγに応答するHLA-A、B、C発現を上方制御する。B2M KO/HLA-E KIクローンは、IFNγ処理の有無に関わらずHLA-A、B、Cを発現しない。IFNγ=50ng/mL。細胞は、IFNγで48時間処理された。
図16】B2M KO/HLA-E KI CyT49幹細胞クローンのHLA-E発現のためのフローサイトメトリー分析を示す。未編集のクローンは、HLA-E発現のための対照として使用された。
図17】野生型、PD-L1 KI/B2M KO、又はB2MKO hESCから分化した段階1(胚体内胚葉)細胞でのFOXA2及びSOX17に関するフローサイトメトリーを示す。
図18】野生型、PD-L1 KI/B2M KO、又はB2M KO細胞から分化した段階1(胚体内胚葉)細胞におけるFOXA2及びSOX17発現に関する定量的パーセンテージを示す。
図19】野生型、B2M KO、PD-L1 KI/B2M KO(V1A)、又はHLA-E KI/B2M KO(V2A)細胞から分化した段階4(PEC)細胞におけるCHGA、PDX1、及びNKX6.1発現の定量的パーセンテージを示す。
図20】段階4(PEC)の細胞の不均一な集団を示す。
図21A-21B】野生型、PD-L1KI/B2MKO、又はB2MKO細胞から分化した細胞(図21A)及びB2M KO/HLA-E KI(V2A)細胞から分化した細胞(図21B)における分化時間経過にわたる選択された遺伝子発現を示す。
図22A-22F】野生型、PD-L1 KI/B2M KO、又はB2M KO細胞から分化した細胞におけるPEC段階でのB2M及びPD-L1発現を示す。図22Aは、野生型細胞におけるB2M発現を示す。図22Bは、B2M KO細胞におけるB2M発現を示す。図22Cは、PD-L1 KI/B2M KO細胞におけるB2M発現を示す。図22Dは、野生型細胞におけるPD-L1発現を示す。図22Eは、B2M KO細胞におけるPD-L1発現を示す。図22Fは、PD-L1 KI/B2M KO細胞におけるPD-L1発現を示す。
図23A-23F】野生型、PD-L1/B2M KO、又はB2M KO細胞から分化した細胞におけるPEC段階でのMHCクラスI及びクラスII発現を示す。図23Aは、野生型細胞におけるMHCクラスI発現を示す。図23Bは、B2M KO細胞におけるMHCクラスI発現を示す。図23Cは、PD-L1 KI/B2M KO細胞におけるMHCクラスI発現を示す。図23Dは、野生型細胞におけるMHCクラスII PD-L1発現を示す。図23Eは、B2M KO細胞におけるMHCクラスII発現を示す。図23Fは、PD-L1 KI/B2M KO細胞におけるMHCクラスII発現を示す。
図24A-24D】CFSE増殖アッセイを使用するT細胞活性化のためのフローサイトメトリー分析を示す。ヒト初代CD3+ T細胞を、WT、B2M KO、又はB2M KO/PD-L1 KI CyT49クローンに由来するPECと共インキュベートした。図24Aは、野生型細胞における活性化を示す。図24Bは、PD-L1 KI/B2M KO細胞における活性化を示す。図24Cは、B2M KO細胞における活性化を示す。図24Dは、様々な細胞におけるT細胞活性化を要約する。対照として「CFSE-T単独」セットを伴う一方向ANOVA(ダネット多重比較検定によるα=0.05)。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;****、p<0.0001。n.s.=非有意。
【発明を実施するための形態】
【0022】
I.定義
欠失:本明細書で使用する場合、用語「遺伝子欠失」又は「ノックアウト」と互換的に使用され得る用語「欠失」は一般に、ゲノムDNAの部位又は領域が、任意の分子生物学的方法、例えば、本明細書に記載される方法、例えば、ゲノムDNAの部位にエンドヌクレアーゼ及び少なくとも1つのgRNAを送達することによって除去される遺伝子改変を指す。任意の数のヌクレオチドが欠失され得る。いくつかの実施形態では、欠失は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、又は少なくとも25個のヌクレオチドの除去を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、10~50、25~75、50~100、50~200、又は100を超えるヌクレオチドの除去を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、標的遺伝子全体、例えば、B2M遺伝子の除去を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、標的遺伝子の部分、例えば、B2M遺伝子のプロモーター及び/又はコード配列の全て又は部分の除去を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、転写調節因子、例えば、標的遺伝子のプロモーター領域の除去を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、コード領域によって正常に発現される産物が、もはや発現されないか、切断型として発現されるか、又は低いレベルで発現されるようなコード領域の全て又は部分の除去を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、未改変細胞に対して、遺伝子の発現の減少をもたらす。
【0023】
エンドヌクレアーゼ:本明細書で使用する場合、用語「エンドヌクレアーゼ」は一般に、ポリヌクレオチド内のホスホジエステル結合を切断する酵素を指す。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、DNAポリヌクレオチド内のホスホジエステル結合を特異的に切断する。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)、メガヌクレアーゼ、MegaTAL、又はCRISPR関連エンドヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、RNA誘導型エンドヌクレアーゼである。ある種の態様では、RNA誘導型エンドヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ、例えば、II型CRISPR Cas9エンドヌクレアーゼ又はV型CRISPR Cpf1エンドヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1及びCsx12としても知られる)、Cas100、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、若しくはCpf1エンドヌクレアーゼ、若しくはそのホモログ、その天然に存在する分子の組換え、そのコドン最適化バージョン、若しくはその改変バージョン、又はその組合せである。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、1つ以上の一本鎖切断(SSB)及び/又は1つ以上の二本鎖切断(DSB)を導入し得る。
【0024】
遺伝子改変:本明細書で使用する場合、用語「遺伝子改変」は一般に、任意の分子生物学的方法、例えば、本明細書に記載される方法を使用して、例えば、ゲノムDNAの部位にエンドヌクレアーゼ及び少なくとも1つのgRNAを送達することによって遺伝的に編集されたか又は操作されたゲノムDNAの部位を指す。遺伝子改変の例としては、挿入、欠失、重複、逆位、及び転座、及びこれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、遺伝子改変は、欠失である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変は、挿入である。他の実施形態では、遺伝子改変は、標的遺伝子のリーディングフレームが移動されて、改変された遺伝子産物をもたらすか又は遺伝子産物をもたらさないような挿入-欠失変異(又はインデル)である。
【0025】
ガイドRNA(gRNA):本明細書で使用する場合、用語「ガイドRNA」又は「gRNA」は一般に、エンドヌクレアーゼと相互作用でき、例えば、結合でき、且つ標的ゲノム部位又は領域と結合できるか、又はハイブリダイズできる短いリボ核酸を指す。いくつかの実施形態では、gRNAは、一分子ガイドRNA(sgRNA)である。いくつかの実施形態では、gRNAは、スペーサー伸長領域を含んでもよい。いくつかの実施形態では、gRNAは、tracrRNA伸長領域を含んでもよい。いくつかの実施形態では、gRNAは、一本鎖である。いくつかの実施形態では、gRNAは、天然に存在するヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、化学修飾されたgRNAである。いくつかの実施形態では、化学修飾されたgRNAは、化学修飾、例えば、2’-O-メチル糖修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含むgRNAである。いくつかの実施形態では、化学修飾されたgRNAは、修飾された核酸骨格を含む。いくつかの実施形態では、化学修飾されたgRNAは、2’-O-メチル-ホスホロチオエート残基を含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、DNAエンドヌクレアーゼと予め複合体を形成し得る。
【0026】
挿入:本明細書で使用する場合、用語「遺伝子挿入」又は「ノックイン」と互換的に使用され得る用語「挿入」は一般に、ポリヌクレオチドが、任意の分子生物学的方法、例えば、本明細書に記載される方法、例えば、ゲノムDNAの部位にエンドヌクレアーゼ及び少なくとも1つのgRNAを送達することによって、ゲノムDNAの部位又は領域に導入されるか又は付加される遺伝子改変を指す。いくつかの実施形態では、挿入は、以前の遺伝子改変、例えば、欠失又は挿入-欠失変異の部位であったゲノムDNAの部位の内部又は近傍で起こり得る。いくつかの実施形態では、挿入は、以前の遺伝子改変、例えば、欠失又は挿入-欠失変異の部位と部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有されるゲノムDNAの部位で起こる。いくつかの実施形態では、挿入は、セーフハーバー座位で起こる。いくつかの実施形態では、挿入は、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの導入を含む。いくつかの実施形態では、挿入は、免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドの導入を含む。いくつかの実施形態では、挿入は、生存因子をコードするポリヌクレオチドの導入を含む。いくつかの実施形態では、挿入は、外来プロモーター、例えば、構成的プロモーター、例えば、CAGプロモーターの導入を含む。いくつかの実施形態では、挿入は、非コード遺伝子をコードするポリヌクレオチドの導入を含む。一般に、挿入されることになるポリヌクレオチドは、挿入の部位にあるか又はその近傍のゲノムDNAと実質的な配列相同性を有する配列(例えば、ホモロジーアーム)と隣接する。
【0027】
主要組織適合抗原複合体クラスI(MHC-I):本明細書で使用する場合、用語「主要組織適合抗原複合体クラスI」又は「MHC-I」は一般に、哺乳動物、例えば、ヒトを含む脊椎動物における全ての有核細胞の細胞表面に見出される生体分子のクラス;及び免疫応答を刺激するために、非自己又は外来抗原のペプチド、例えば、タンパク質を、細胞内(すなわち、サイトゾル)から細胞傷害性T細胞、例えば、CD8+T細胞に提示する機能を指す。いくつかの実施形態では、MHC-I生体分子は、MHC-I遺伝子又はMHC-Iタンパク質である。MHC-Iタンパク質のベータ-2ミクログロブリン(B2M)タンパク質との複合体形成は、全てのMHC-Iタンパク質の細胞表面発現のために必要とされる。いくつかの実施形態では、未改変細胞に対してMHC-Iヒト白血球抗原(HLA)の発現を減少させることは、MHC-I遺伝子の発現における減少(又は低減)を含む。いくつかの実施形態では、未改変細胞に対してMHC-Iヒト白血球抗原(HLA)の発現を減少させることは、MHC-Iタンパク質の細胞表面発現における減少(又は低減)を含む。いくつかの実施形態では、MHC-I生体分子は、HLA-A(NCBI遺伝子ID番号:3105)、HLA-B(NCBI遺伝子ID番号:3106)、HLA-C(NCBI遺伝子ID番号:3107)、又はB2M(NCBI遺伝子ID番号:567)である。
【0028】
主要組織適合抗原複合体クラスII(MHC-II):本明細書で使用する場合、用語「主要組織適合抗原複合体クラスII」又は「MHC-II」は一般に、哺乳動物、例えば、ヒトを含む脊椎動物における抗原提示細胞の細胞表面に典型的に見出される生体分子のクラス;及び免疫応答を刺激するために、非自己又は外来抗原のペプチド、例えば、タンパク質を、細胞の外部(細胞外)から細胞傷害性T細胞、例えば、CD8+T細胞に提示する機能を指す。いくつかの実施形態では、抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージ、又はB細胞である。いくつかの実施形態では、MHC-II生体分子は、MHC-II遺伝子又はMHC-IIタンパク質である。いくつかの実施形態では、未改変細胞に対してMHC-IIヒト白血球抗原(HLA)の発現を減少させることは、MHC-II遺伝子の発現における減少(又は低減)を含む。いくつかの実施形態では、未改変細胞に対してMHC-IIヒト白血球抗原(HLA)の発現を減少させることは、MHC-IIタンパク質の細胞表面発現における減少(又は低減)を含む。いくつかの実施形態では、MHC-II生体分子は、HLA-DPA(NCBI遺伝子ID番号:3113)、HLA-DPB(NCBI遺伝子ID番号:3115)、HLA-DMA(NCBI遺伝子ID番号:3108)、HLA-DMB(NCBI遺伝子ID番号:3109)、HLA-DOA(NCBI遺伝子ID番号:3111)、HLA-DOB(NCBI遺伝子ID番号:3112)、HLA-DQA(NCBI遺伝子ID番号:3117)、HLA-DQB(NCBI遺伝子ID番号:3119)、HLA-DRA(NCBI遺伝子ID番号:3122)、又はHLA-DRB(NCBI遺伝子ID番号:3123)である。
【0029】
ポリヌクレオチド:本明細書で使用する場合、用語「核酸」と互換的に使用され得る用語「ポリヌクレオチド」は一般に、2個以上のヌクレオチドを含む生体分子を指す。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、少なくとも2個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも250個、少なくとも500個、又は任意の数のヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドは、DNA若しくはRNA分子又はハイブリッドDNA/RNA分子であり得る。ポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖であり得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ゲノムDNAの部位又は領域である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、未改変細胞又はユニバーサルドナー細胞のゲノム内に含まれる内在性の遺伝子である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ゲノムDNAに組み込まれていない外来ポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ゲノムDNAに組み込まれている外来ポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、プラスミド、又はアデノ随伴ウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、環状又は線状分子である。
【0030】
セーフハーバー座位:本明細書で使用する場合、用語「セーフハーバー座位」は一般に、遺伝子挿入を、細胞に対する有害作用を伴わずに当該位置、部位、又は領域に収容できるゲノムDNAの任意の位置、部位、又は領域を指す。いくつかの実施形態では、セーフハーバー座位は、遺伝子内又は遺伝子外領域である。いくつかの実施形態では、セーフハーバー座位は、典型的には転写的にサイレントであるゲノムDNAの領域である。いくつかの実施形態では、セーフハーバー座位は、AAVS1(PPP1R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、又はTTR座位である。いくつかの実施形態では、セーフハーバー座位は、Sadelain,M.et al.,「Safe harbours for the integration of new DNA in the human genome」,Nature Reviews Cancer,2012,Vol 12,51-58頁において記載される。
【0031】
安全スイッチ:本明細書で使用する場合、用語「安全スイッチ」は一般に、細胞にアポトーシスを起こさせる生体分子を指す。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、タンパク質又は遺伝子である。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、自殺遺伝子である。いくつかの実施形態では、安全スイッチ、例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)は、プロドラッグ、例えば、ガンシクロビルを代謝することによって、細胞にアポトーシスを起こさせる。いくつかの実施形態では、自身に対する過剰発現された安全スイッチの存在が、細胞にアポトーシスを起こさせる。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、p53系分子、HSV-tk、又は誘導性カスパーゼ-9である。
【0032】
対象:本明細書で使用する場合、用語「対象」は、哺乳動物を指す。いくつかの実施形態では、対象は、非ヒト霊長類又は齧歯類である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、疾患又は障害を有するか、有すると疑われるか、又はそのリスクがある。いくつかの実施形態では、対象は、疾患又は障害の1つ以上の症状を有する。
【0033】
生存因子:本明細書で使用する場合、用語「生存因子」は一般に、細胞において増加するか又は減少するとき、未改変細胞に対して、宿主対象への移植又は生着後に細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞がより高い生存率で生存することを可能にするタンパク質(例えば、本明細書に記載されるとおりのポリヌクレオチドによって発現される)を指す。いくつかの実施形態では、生存因子は、ヒト生存因子である。いくつかの実施形態では、生存因子は、細胞生存に関与する決定的な経路のメンバーである。いくつかの実施形態では、細胞生存に関与する決定的な経路は、低酸素、活性酸素種、栄養欠乏、及び/又は酸化ストレスに対する影響を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの生存因子の遺伝子改変、例えば、欠失又は挿入は、生着後に未改変細胞より長い期間、例えば、少なくとも1.05倍、少なくとも1.1倍、少なくとも1.25倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、又は少なくとも50倍長い期間ユニバーサルドナー細胞が生存することを可能にする。いくつかの実施形態では、生存因子は、ZNF143(NCBI遺伝子ID番号:7702)、TXNIP(NCBI遺伝子ID番号:10628)、FOXO1(NCBI遺伝子ID番号:2308)、JNK(NCBI遺伝子ID番号:5599)、又はMANF(NCBI遺伝子ID番号:7873)である。いくつかの実施形態では、生存因子は、細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞に挿入される。いくつかの実施形態では、生存因子は、細胞、ユニバーサルドナー細胞から欠失される。いくつかの実施形態では、MANFをコードするポリヌクレオチドの挿入は、未改変細胞に対して、宿主対象への移植又は生着の後に細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞がより高い生存率で生存することを可能にする。いくつかの実施形態では、ZFN143、TXNIP、FOXO1、又はJNK遺伝子内又は近傍での欠失又は挿入-欠失変異は、未改変細胞に対して、宿主対象への移植又は生着の後に細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞がより高い生存率で生存することを可能にする。
【0034】
免疫寛容原性因子:本明細書で使用する場合、用語「免疫寛容原性因子」は一般に、細胞において増加するか又は減少するとき、未改変細胞に対して、宿主対象への移植又は生着後に細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞がより高い率で免疫拒絶を阻害するか又は回避することを可能にするタンパク質(例えば、本明細書に記載されるとおりのポリヌクレオチドによって発現される)を指す。いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子は、ヒト免疫寛容原性因子である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫寛容原性因子の遺伝子改変(例えば、少なくとも1つの免疫寛容原性因子の挿入又は欠失)は、生着後に未改変細胞より少なくとも1.05倍、少なくとも1.1倍、少なくとも1.25倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、又は少なくとも50倍高い率で細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞が免疫拒絶を阻害するか又は回避することを可能にする。いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子は、HLA-E(NCBI遺伝子ID番号:3133)、HLA-G(NCBI遺伝子ID番号:3135)、CTLA-4(NCBI遺伝子ID番号:1493)、CD47(NCBI遺伝子ID番号:961)、又はPD-L1(NCBI遺伝子ID番号:29126)である。いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子は、細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞に挿入される。いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子は、細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞から欠失される。いくつかの実施形態では、HLA-E、HLA-G、CTLA-4、CD47、及び/又はPD-L1をコードするポリヌクレオチドの挿入は、宿主対象への移植又は生着後に細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞が免疫拒絶を阻害するか又は回避することを可能にする。
【0035】
MHC-I又はMHC-IIの転写調節因子:本明細書で使用する場合、用語「MHC-I又はMHC-IIの転写調節因子」は一般に、MHC-I及び/又はMHC-IIヒト白血球抗原の発現を調節する、例えば、増加させるか又は減少させる生体分子を指す。いくつかの実施形態では、生体分子は、ポリヌクレオチド、例えば、遺伝子、又はタンパク質である。いくつかの実施形態では、MHC-I又はMHC-IIの転写調節因子は、少なくとも1つのMHC-I又はMHC-IIタンパク質の細胞表面発現を増加させることになるか又は減少させることになる。いくつかの実施形態では、MHC-I又はMHC-IIの転写調節因子は、少なくとも1つのMHC-I又はMHC-II遺伝子の発現を増加させることになるか又は減少させることになる。いくつかの実施形態では、転写調節因子は、CIITA(NCBI遺伝子ID番号:4261)又はNLRC5(NCBI遺伝子ID番号:84166)である。いくつかの実施形態では、CIITA又はNLRC5の発現の欠失又は低減は、少なくとも1つのMHC-I又はMHC-II遺伝子の発現を減少させる。
【0036】
ユニバーサルドナー細胞:本明細書で使用する場合、用語「ユニバーサルドナー細胞」は一般に、未改変細胞に対して、細胞移植中に同種拒絶になりにくく、且つ/又は移植後の生存の増加を実証する遺伝子改変細胞を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるとおりの遺伝子改変細胞は、ユニバーサルドナー細胞である。いくつかの実施形態では、ユニバーサルドナー細胞は、未改変細胞と比較して免疫回避及び/又は細胞生存の増加を有する。いくつかの実施形態では、ユニバーサルドナー細胞は、未改変細胞と比較して細胞生存の増加を有する。いくつかの実施形態では、ユニバーサルドナー細胞は、幹細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、ユニバーサルドナー細胞は、胚性幹細胞(ESC)、成体幹細胞(ASC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、又は造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)であってもよい。いくつかの実施形態では、ユニバーサルドナー細胞は、分化細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、ユニバーサルドナー細胞は、体細胞(例えば、免疫系細胞)であってもよい。いくつかの実施形態では、ユニバーサルドナー細胞は、対象に投与される。いくつかの実施形態では、ユニバーサルドナー細胞は、疾患を有するか、又は有すると疑われるか、又はそのリスクがある対象に投与される。いくつかの実施形態では、ユニバーサルドナー細胞は、系列限定前駆細胞又は完全に分化した体細胞に分化することができる。いくつかの実施形態では、系列限定前駆細胞は、膵臓内胚葉前駆細胞、膵臓内分泌性前駆細胞、間葉系前駆細胞、筋肉前駆細胞、芽球細胞、又は神経前駆細胞である。いくつかの実施形態では、完全に分化した体細胞は、膵ベータ細胞などの内分泌性細胞、上皮細胞、内胚葉細胞、マクロファージ、肝細胞、脂肪細胞、腎細胞、血液細胞、又は免疫系細胞である。
【0037】
未改変細胞:本明細書で使用する場合、用語「未改変細胞」は、MHC-I、MHC-I、MHC-I若しくはMHC-IIの転写調節因子、生存因子、及び/又は免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチド又は遺伝子を含む遺伝子改変にかけられたことがない細胞を指す。いくつかの実施形態では、未改変細胞は、幹細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、未改変細胞は、胚性幹細胞(ESC)、成体幹細胞(ASC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、又は造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)であってもよい。いくつかの実施形態では、未改変細胞は、分化細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、未改変細胞は、体細胞(例えば、免疫系細胞、例えば、T細胞、例えば、CD8+T細胞)から選択され得る。ユニバーサルドナー細胞が、「未改変細胞に対して」比較される場合、ユニバーサルドナー細胞及び未改変細胞は、同じ細胞型であるか又は共通の親細胞株を共有し、例えば、ユニバーサルドナーiPSCは、未改変iPSCに対して比較される。
【0038】
遺伝子内又は近傍:本明細書で使用する場合、用語「遺伝子内又は近傍」は、前記遺伝子のイントロン又はエクストロン構成要素であるか又は前記遺伝子に隣接して位置するゲノムDNAの部位又は領域を指す。いくつかの実施形態では、ゲノムDNAの部位は、それが前記遺伝子のイントロン又はエクソンの少なくとも一部を含む場合、遺伝子内にある。いくつかの実施形態では、遺伝子の近傍に位置するゲノムDNAの部位は、前記遺伝子の5’又は3’末端(例えば、前記遺伝子のコード領域の5’又は3’末端)にあってもよい。いくつかの実施形態では、遺伝子の近傍に位置するゲノムDNAの部位は、前記遺伝子の発現を調節するプロモーター領域又はリプレッサー領域であってもよい。いくつかの実施形態では、遺伝子の近傍に位置するゲノムDNAの部位は、前記遺伝子と同じ染色体上にあってもよい。いくつかの実施形態では、ゲノムDNAの部位又は領域は、前記遺伝子の5’又は3’末端(例えば、前記遺伝子のコード領域の5’又は3’末端)に対して50Kb、40Kb、30Kb、20Kb、10Kb、5Kb、1Kb以内、又はそれより近傍にある場合、遺伝子の近傍にある。
【0039】
II.ゲノム編集方法
ゲノム編集は一般に、ゲノムのヌクレオチド配列を、好ましくは的確な又は既定の様式で改変するプロセスを指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるとおりのゲノム編集方法、例えば、CRISPR-エンドヌクレアーゼ系を使用して、例えば、ユニバーサルドナー細胞を作製するために本明細書に記載されるとおりの細胞を遺伝子改変してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるとおりのゲノム編集方法、例えば、CRISPR-エンドヌクレアーゼ系を使用して、例えば、未改変細胞に対して、1つ以上のMHC-I及び/若しくはMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の他の構成要素の発現を減少させる少なくとも1つの遺伝子内又は近傍に少なくとも1つの遺伝子改変を導入するため;未改変細胞に対して、免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドの発現を増加させる少なくとも1つの遺伝子改変を導入するため;及び/又は未改変細胞に対して、生存因子をコードする少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させるか又は減少させる少なくとも1つの遺伝子改変を導入するために本明細書に記載されるとおりの細胞を遺伝子改変してもよい。
【0040】
本明細書に記載されるゲノム編集の方法の例は、ゲノム中の的確な標的位置でデオキシリボ核酸(DNA)を切断する部位特異的ヌクレアーゼを使用して、それによりゲノム内の特定の位置で一本鎖又は二本鎖DNA切断を作製する方法を含む。そのような切断は、Cox et al.,「Therapeutic genome editing:prospects and challenges」,Nature Medicine,2015,21(2),121-31において記載されるとおり、相同組換え修復(HDR)及び非相同末端連結(NHEJ)などの天然の内在性細胞プロセスによって修復される場合があり、且つ規則的に修復される。これらの2つの主要なDNA修復プロセスは、代替の経路のファミリーからなる。NHEJは、二本鎖切断の結果生じるDNA末端を直接的に結合するものであり、ヌクレオチド配列の欠損又は付加を伴うこともあり、遺伝子の発現を破壊するか又は増強し得る。HDRは、切断点で既定のDNA配列を挿入する鋳型として、相同配列、又はドナー配列を利用する。相同配列は、姉妹染色分体などの内在性のゲノム中に存在し得る。或いは、ドナー配列は、ヌクレアーゼ切断座位と高い相同性の領域(例えば、左及び右ホモロジーアーム)を有するが、切断される標的座位に組み込まれ得る欠失を含む追加の配列又は配列変化も含有し得るプラスミド、一本鎖オリゴヌクレオチド、二本鎖オリゴヌクレオチド、二重鎖オリゴヌクレオチド又はウイルスなどの外来ポリヌクレオチドであってもよい。第三の修復機構は、遺伝的な結果が、若干の欠損及び挿入が切断部位で生じ得るという点でNHEJに類似する、「代替的NHEJ」とも呼ばれるマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)であってもよい。MMEJは、DNA切断部位に隣接する数塩基対の相同配列を利用して、より好ましいDNA末端連結修復結果を促進でき、最近の報告はさらに、このプロセスの分子メカニズムを解明した;例えば、Cho及びGreenberg,Nature,2015,518,174-76;Kent et al.,Nature Structural and Molecular Biology,2015,22(3):230-7;Mateos-Gomez et al.,Nature,2015,518,254-57;Ceccaldi et al.,Nature,2015,528,258-62を参照されたい。いくつかの場合において、DNA切断の部位での潜在的なマイクロホモロジーの分析に基づいて、修復結果を予測できる可能性がある。
【0041】
これらのゲノム編集機構の各々を使用して、所望の遺伝子改変を作製できる。ゲノム編集プロセスにおける工程は、1つ又は2つのDNA切断を作製することであり得るが、後者は、意図した変異部位の近傍としての標的座位における、二本鎖切断又は2つの一本鎖切断である。これは、本明細書に記載され、且つ示されるとおりのエンドヌクレアーゼの使用を介して達成され得る。
【0042】
CRISPRエンドヌクレアーゼ系
CRISPR-エンドヌクレアーゼ系は、遺伝子編集のために使用されるRNA誘導型DNA標的化プラットフォームとして転用されてきた原核生物において天然に存在する防御機構である。CRISPR系としては、I、II、III、IV、V、及びVI型の系が挙げられる。いくつかの態様では、CRISPR系は、II型CRISPR/Cas9系である。他の態様では、CRISPR系は、V型CRISPR/Cprf系である。CRISPR系は、DNAの切断を標的化するDNAヌクレアーゼ、例えば、Cas9、並びに2つの非コードRNAであるcrisprRNA(crRNA)及びトランス活性化RNA(tracrRNA)に依拠する。
【0043】
crRNAは、典型的には標的DNA中の約20ヌクレオチド(nt)配列とのワトソン-クリック塩基対形成を介してCRISPR-エンドヌクレアーゼ複合体の配列認識及び特異性を促進する。crRNA中の5’ 20ntの配列を変化させることによって、特定の座位へのCRISPR-エンドヌクレアーゼ複合体の標的化が可能になる。CRISPR-エンドヌクレアーゼ複合体は単に、標的配列が、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる特定の短いDNAモチーフ(配列NGGを有する)に続いている場合、シングルガイドRNA(sgRNA)の最初の20ntに一致する配列を含有するDNA配列に結合する。
【0044】
TracrRNAは、crRNAの3’末端とハイブリダイズしてRNA二重鎖構造を形成し、エンドヌクレアーゼによって結合されて触媒活性のあるCRISPR-エンドヌクレアーゼ複合体を形成し、続いてこれにより標的DNAを切断できる。
【0045】
CRISPR-エンドヌクレアーゼ複合体が標的部位でDNAに結合すると、エンドヌクレアーゼ内の2つの独立したヌクレアーゼドメインがそれぞれPAM部位の3塩基上流のDNA鎖の一方を切断し、DNAの両鎖が塩基対(平滑末端)で終結する二本鎖切断(DSB)を残す。
【0046】
いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、Cas9(CRISPR関連タンパク質9)である。いくつかの実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼは、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)に由来するが、他のCas9ホモログ、例えば、S.アウレウス(S.aureus)Cas9、N.メニンギティディス(N.meningitidis)Cas9、S.サーモフィルス(S.thermophilus)CRISPR1 Cas9、S.サーモフィルス(S.thermophilus)CRISPR3 Cas9、又はT.デンティコラ(T.denticola)Cas9が使用されてもよい。他の場合において、CRISPRエンドヌクレアーゼは、Cpf1、例えば、L.バクテリウム(L.bacterium)ND2006 Cpf1又はアシダミノコッカス(Acidaminococcus)sp.BV3L6 Cpf1である。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1及びCsx12としても知られる)、Cas100、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、又はCpf1エンドヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、野生型バリアントが使用されてもよい。いくつかの実施形態では、前述のエンドヌクレアーゼの改変バージョン(例えば、そのホモログ、その天然に存在する分子の組換え、そのコドン最適化、又はその改変バージョン)が使用されてもよい。
【0047】
CRISPRヌクレアーゼは、少なくとも1つの核移行シグナル(NLS)に連結され得る。少なくとも1つのNLSは、CRISPRヌクレアーゼのアミノ末端の50アミノ酸で又はそれ以内に位置してもよく、且つ/又は少なくとも1つのNLSは、CRISPRヌクレアーゼのカルボキシ末端の50アミノ酸で又はそれ以内に位置してもよい。
【0048】
例示的なCRISPR/Casポリペプチドは、Fonfara et al.,「Phylogeny of Cas9 determines functional exchangeability of dual-RNA and Cas9 among orthologous type II CRISPR-Cas systems」,Nucleic Acids Research,2014,42:2577-2590において公表されるとおりのCas9ポリペプチドを含む。CRISPR/Cas遺伝子の命名法は、Cas遺伝子が発見されて以来、広範な書き直しを経てきた。Fonfara et.al.もまた、様々な種に由来するCas9ポリペプチドのためのPAM配列を提供する。
【0049】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、II型エンドヌクレアーゼFokIの触媒ドメインに連結された操作されたジンクフィンガーDNA結合ドメインで構成されるモジュラータンパク質である。FokIは二量体としてのみ機能するため、一対のZFNは、触媒活性のあるFokI二量体の形成を可能にするために、反対側のDNA鎖上の同一標的「ハーフサイト」配列に、正確な間隔で結合するように設計されなければならない。それ自体は配列特異性を有しないFokIドメインが二量体化すると、ゲノム編集の開始ステップとしてZFNのハーフサイト間にDNA二本鎖切断が生じる。
【0050】
各ZFNのDNA結合ドメインは通常、豊富なCys2-His2構造の3~6個のジンクフィンガーで構成されており、各フィンガーは主に標的DNA配列の一本鎖上のヌクレオチドのトリプレットを認識するが、4番目のヌクレオチドとの鎖交差相互作用も重要であり得る。DNAと重要な接触を作る位置におけるフィンガーのアミノ酸の改変は、所与のフィンガーの配列特異性を改変する。したがって、4フィンガーのジンクフィンガータンパク質は、12bpの標的配列を選択的に認識することになり、標的配列は、各フィンガーによって与えられるトリプレット優先度で構成されるが、トリプレット優先度は、隣接するフィンガーによって様々な程度まで影響され得る。ZFNの重要な態様は、それらが、個々のフィンガーを単に改変することによって、ほとんどのゲノムアドレスに容易に再標的化され得ることである。ZFNの大部分の適用において、4~6個のフィンガーのタンパク質が使用され、それぞれ12~18bpを認識する。したがって、一対のZFNは通常、ハーフサイト間に典型的な5~7bpのスペーサーを含まない24~36bpの組み合わされた標的配列を認識することになる。結合部位は、15~17bpを含むより大きいスペーサーによりさらに分離され得る。この長さの標的配列は、ヒトゲノムの中で固有なものになると考えられ、設計プロセスの間に反復した配列又は遺伝子ホモログは除外されると想定される。それにもかかわらず、ZFNのタンパク質-DNAの相互作用は、それらの特異性において絶対的なものではないため、2つのZFNの間のヘテロ二量体として、又は一方若しくは他方のZFNのホモ二量体として、オフターゲットの結合及び切断現象が生じる。後者の可能性は、FokIドメインの二量体化インターフェースを操作して、互いに且つそれら自体ではなく単に二量体化できる絶対ヘテロ二量体バリアントとしても知られる「プラス」及び「マイナス」のバリアントを作ることによって、効率的に排除された。絶対ヘテロ二量体を強制することによって、ホモ二量体の形成を妨げる。これにより、ZFNだけでなく、これらのFokIバリアントを採用する任意の他のヌクレアーゼの特異性が大幅に増強された。
【0051】
様々なZFNに基づく系は、当該技術分野において記載されており、その変更形態は、定期的に報告され、多数の参考文献が、ZFNの設計を導くために使用される規則及びパラメーターを記載している;例えば、Segal et al.,Proc Natl Acad Sci,1999 96(6):2758-63;Dreier B et al.,J Mol Biol.,2000,303(4):489-502;Liu Q et al.,J Biol Chem.,2002,277(6):3850-6;Dreier et al.,J Biol Chem.,2005,280(42):35588-97;及びDreier et al.,J Biol Chem.2001,276(31):29466-78を参照されたい。
【0052】
転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)
TALENは、ZFNと同様に、操作されたDNA結合ドメインがFokIヌクレアーゼドメインに連結され、一対のTALENが直列に作動して標的化されるDNAの切断を実現する、モジュラーヌクレアーゼの別の形式を表す。ZFNとの主な違いは、DNE結合ドメインの性質及び会合される標的DNA配列認識の特性である。TALEN DNA結合ドメインは、TALEタンパク質に由来し、これは、植物の病原性微生物であるキサントモナス属(Xanthomonas sp)において最初に記載された。TALEは、33~35アミノ酸リピートの直列配列で構成され、各リピートは、典型的には最大で20bpの長さの標的DNA配列において一塩基対を認識し、最大で40bpの総標的配列長を与える。各リピートのヌクレオチド特異性は、12位及び13位での2つのアミノ酸を含む反復可変二残基(RVD)によって決定される。塩基のグアニン、アデニン、シトシン及びチミンは、それぞれ4つのRVD:Asn-Asn、Asn-Ile、His-Asp及びAsn-Glyによって主に認識される。これは、ジンクフィンガーよりもはるかに単純な認識コードとなり、したがって、ヌクレアーゼ設計においてジンクフィンガーよりも有利となる。それにもかかわらず、ZFNと同様に、TALENのタンパク質-DNA相互作用は、それらの特異性において絶対的ではなく、且つTALENもまた、オフターゲット活性を低減するFokIドメインの絶対ヘテロ二量体バリアントの使用から恩恵を得た。
【0053】
触媒機能において不活性化されているFokIドメインの追加のバリアントが作製されてきた。TALEN又はZFNのいずれかの対の片方が不活性なFokIドメインを含有する場合、DSBではなく、標的部位で一本鎖DNAの切断(ニッキング)のみが生じることになる。この結果は、CRISPR/Cas9又はCRISPR/Cpf1の「ニッカーゼ」変異体(Cas9切断ドメインの1つが不活性化されている)の使用と同等である。DNAニックを使用して、HDRによるゲノム編集を駆動することができるが、DSBによるものより効率は低い。主な利点は、オフターゲットニックが、NHEJに媒介される誤修復を起こしやすいDSBとは異なり、迅速且つ正確に修復されることである。
【0054】
様々なTALENに基づく系は、当該技術分野において記載されており、その変更形態は、定期的に報告される;例えば、Boch,Science,2009 326(5959):1509-12;Mak et al.,Science,2012,335(6069):716-9;及びMoscou et al.,Science,2009,326(5959):1501を参照されたい。「ゴールデンゲート」プラットフォーム、又はクローニングスキームに基づくTALENの使用は、複数のグループによって記載されている;例えば、Cermak et al.,Nucleic Acids Res.,2011,39(12):e82;Li et al.,Nucleic Acids Res.,2011,39(14):6315-25;Weber et al.,PLoS One.,2011,6(2):e16765;Wang et al.,J Genet Genomics,2014,41(6):339-47.;及びCermak T et al.,Methods Mol Biol.,2015 1239:133-59を参照されたい。
【0055】
ホーミングエンドヌクレアーゼ
ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)は、長い認識配列(14~44塩基対)を有する配列特異的エンドヌクレアーゼであり、高い特異性で(ゲノム中の固有の部位である場合が多い)DNAを切断する。真核生物、原生生物、細菌、古細菌、シアノバクテリア及びファージを含む幅広い宿主に由来するGIY-YIG、His-Cisボックス、H-N-H、PD-(D/E)xK、及びVsr様を含むそれらの構造によって分類されるとおりの少なくとも6つの既知のHEのファミリーがある。ZFN及びTALENと同様に、HEを使用して、ゲノム編集における最初の工程として標的座位でDSBを引き起こすことができる。加えて、いくつかの天然のHE及び操作されたHEは、DNAの一本鎖のみを切断し、それにより、部位特異的ニッカーゼとして機能する。HEの広い標的配列及びそれらが提供する特異性が、それらを部位特異的なDSBを起こすための魅力的な候補にした。
【0056】
様々なHEに基づく系は、当該技術分野において記載されており、その変更形態は、定期的に報告される;例えば、Steentoft et al.,Glycobiology,2014,24(8):663-80;Belfort and Bonocora,Methods Mol Biol.,2014,1123:1-26;並びにHafez及びHausner,Genome,2012,55(8):553-69による概説を参照されたい。
【0057】
MegaTAL/Tev-mTALEN/MegaTev
ハイブリッドヌクレアーゼのさらなる例として、MegaTALプラットフォーム及びTev-mTALENプラットフォームは、TALEのDNA結合ドメイン及び触媒活性のあるHEの融合を使用し、TALEの調整可能なDNA結合及び特異性の両方、並びにHEの切断配列特異性を利用する;例えば、Boissel et al.,Nucleic Acids Res.,2014,42:2591-2601;Kleinstiver et al.,G3,2014,4:1155-65;並びにBoissel及びScharenberg,Methods Mol.Biol.,2015,1239:171-96を参照されたい。
【0058】
さらなる変種において、MegaTev構造は、メガヌクレアーゼ(Mega)のGIY-YIGホーミングエンドヌクレアーゼI-TevI(Tev)に由来するヌクレアーゼドメインとの融合物である。2つの活性部位は、DNA基質上で約30bp離れた位置にあり、適合性のない付着末端を伴う2つのDSBを生成する;例えば、Wolfs et al.,Nucleic Acids Res.,2014,42,8816-29を参照されたい。既存のヌクレアーゼに基づく手法の他の組合せは、発展することになり、且つ本明細書に記載される標的化ゲノム改変を実現するのに有用であることが予想される。
【0059】
dCas9-FokI又はdCpf1-FokI及び他のヌクレアーゼ
上記のヌクレアーゼプラットフォームの構造的且つ機能的な特性を組み合わせることによって、固有の欠点のいくつかを克服できる可能性のあるゲノム編集へのさらなる手法を提供する。例として、CRISPRゲノム編集系は通常、単一のCas9エンドヌクレアーゼを使用して、DSBを引き起こす。標的化の特異性は、標的DNAとワトソン-クリック塩基対形成を起こすガイドRNA中の20又は24個のヌクレオチド配列(その上、S.ピオゲネス(S.pyogenes)に由来するCas9の場合においては隣接するNAG又はNGG PAM配列中の追加の2塩基)によって促進される。そのような配列は、ヒトゲノムにおいて固有であるのに十分なほど長いが、RNA/DNA相互作用の特異性は絶対的ではなく、特に、標的配列の5’側の半分において著しい乱雑さが許容される場合があり、特異性を促進する塩基の数を効率的に低減する。これに対する一つの解決策は、Cas9又はCpf1の触媒機能を完全に不活性化し(RNA誘導型DNA結合機能のみ保持する)、代わりに不活性化されたCas9にFokIドメインを融合することであった;例えば、Tsai et al.,Nature Biotech,2014,32:569-76;及びGuilinger et al.,Nature Biotech.,2014,32:577-82を参照されたい。FokIは二量体化して、触媒的に活性にならなければならないため、2つのガイドRNAが、二量体を形成し且つDNAを切断するために、近位に2つのFokI融合物を繋ぎ止めるために必要となる。これにより、組み合わされた標的部位における塩基の数が本質的に2倍になり、それによって、CRISPRに基づく系による標的化の厳密さが高まる。
【0060】
さらなる例として、I-TevIなどの触媒活性のあるHEへのTALE DNA結合ドメインの融合は、オフターゲット切断がさらに低減され得るとの期待をもって、TALEの調整可能なDNA結合及び特異性の両方、並びにI-TevIの切断配列特異性を利用する。
【0061】
RNA誘導型エンドヌクレアーゼ
本明細書で使用されるとおりのRNA誘導型エンドヌクレアーゼ系は、野生型の例示的なエンドヌクレアーゼ、例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)由来のCas9(米国特許出願公開第2014/0068797号明細書の配列番号8又はSapranauskas et al.,Nucleic Acids Res,39(21):9275-9282(2011))と少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は少なくとも100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。エンドヌクレアーゼは、野生型エンドヌクレアーゼ(例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)由来のCas9、上記)と10個の連続したアミノ酸にわたって少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、又は100%の同一性を含み得る。エンドヌクレアーゼは、野生型エンドヌクレアーゼ(例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)由来のCas9、上記)と10個の連続したアミノ酸にわたって最大70、75、80、85、90、95、97、99、又は100%の同一性を含み得る。エンドヌクレアーゼは、野生型エンドヌクレアーゼ(例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)由来のCas9、上記)とエンドヌクレアーゼのHNHヌクレアーゼドメイン中の10個の連続したアミノ酸にわたって少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、又は100%の同一性を含み得る。エンドヌクレアーゼは、野生型エンドヌクレアーゼ(例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)由来のCas9、上記)とエンドヌクレアーゼのHNHヌクレアーゼドメイン中の10個の連続したアミノ酸にわたって最大70、75、80、85、90、95、97、99、又は100%の同一性を含み得る。エンドヌクレアーゼは、野生型エンドヌクレアーゼ(例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)由来のCas9、上記)とエンドヌクレアーゼのRuvCヌクレアーゼドメイン中の10個の連続したアミノ酸にわたって少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、又は100%の同一性を含み得る。エンドヌクレアーゼは、野生型エンドヌクレアーゼ(例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)由来のCas9、上記)とエンドヌクレアーゼのRuvCヌクレアーゼドメイン中の10個の連続したアミノ酸にわたって最大70、75、80、85、90、95、97、99、又は100%の同一性を含み得る。
【0062】
エンドヌクレアーゼは、野生型の例示的なエンドヌクレアーゼの改変形態を含み得る。野生型の例示的なエンドヌクレアーゼの改変形態は、エンドヌクレアーゼの核酸切断活性を低減する変異を含み得る。野生型の例示的なエンドヌクレアーゼの改変形態は、野生型の例示的なエンドヌクレアーゼ(例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)由来のCas9、上記)の核酸切断活性の90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、又は1%未満を有し得る。エンドヌクレアーゼの改変形態は、実質的な核酸切断活性を有し得ない。エンドヌクレアーゼが、実質的な核酸切断活性を有しない改変形態であるとき、それは、「酵素活性のない」と本明細書で呼ばれる。
【0063】
企図される変異は、置換、付加、及び欠失、又はこれらの任意の組合せを含み得る。変異は、変異されるアミノ酸をアラニンに変換する。変異は、変異されるアミノ酸を別のアミノ酸(例えば、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リジン、又はアルギニン)に変換する。変異は、変異されるアミノ酸を非天然アミノ酸(例えば、セレノメチオニン)に変換する。変異は、変異されるアミノ酸をアミノ酸ミミック(例えば、ホスホミミック)に変換する。変異は、保存的変異であってもよい。例えば、変異は、変異されるアミノ酸を、変異されるアミノ酸のサイズ、形状、電荷、極性、立体配座、及び/又は回転異性体と類似するアミノ酸に変換する(例えば、システイン/セリン変異、リジン/アスパラギン変異、ヒスチジン/フェニルアラニン変異)。変異は、リーディングフレームの移動及び/又は未成熟終止コドンの生成を引き起こす可能性がある。変異は、遺伝子の調節領域又は1つ以上の遺伝子の発現に影響を及ぼす座位に対する変化を引き起こす可能性がある。
【0064】
ガイドRNA
本開示は、ポリヌクレオチド内の特定の標的部位に対して関連するエンドヌクレアーゼの活性を方向づけることができるガイドRNA(gRNA)を提供する。ガイドRNAは、目的の標的核酸配列、及びCRISPRリピート配列にハイブリダイズする少なくとも1つのスペーサー配列を含み得る。II型CRISPR系において、gRNAはまた、tracrRNA配列と呼ばれる第2のRNAを含む。II型CRISPR ガイドRNA(gRNA)において、CRISPRリピート配列及びtracrRNA配列は、互いにハイブリダイズして、二重鎖を形成する。V型CRISPR系において、gRNAは、二重鎖を形成するcrRNAを含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、エンドヌクレアーゼに結合することができ、その結果、gRNA及びエンドヌクレアーゼは複合体を形成する。gRNAは、エンドヌクレアーゼとの会合のために複合体に対する標的特異性をもたらすことができる。したがって、ゲノム標的化核酸は、エンドヌクレアーゼの活性を方向づけることができる。
【0065】
例示的なガイドRNAとしては、15~200個のヌクレオチドを含むスペーサー配列を含み、gRNAは、GRCh38ヒトゲノムアセンブリに基づくゲノム位置を標的化する。当業者によって理解されるとおり、各gRNAは、そのゲノム標的部位又は領域に相補的なスペーサー配列を含むように設計され得る。Jinek et al.,Science,2012,337,816-821及びDeltcheva et al.,Nature,2011,471,602-607を参照されたい。
【0066】
gRNAは、二重分子ガイドRNAであり得る。gRNAは、一分子ガイドRNAであり得る。
【0067】
二重分子ガイドRNAは、RNAの二本の鎖を含み得る。第1の鎖は、5’から3’方向において、任意選択のスペーサー延長配列、スペーサー配列及び最小CRISPRリピート配列を含む。第2の鎖は、最小tracrRNA配列(最小CRISPRリピート配列に相補的)、3’tracrRNA配列及び任意選択のtracrRNA延長配列を含み得る。
【0068】
一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’から3’方向において、任意選択のスペーサー延長配列、スペーサー配列、最小CRISPRリピート配列、一分子ガイドリンカー、最小tracrRNA配列、3’tracrRNA配列及び任意選択のtracrRNA延長配列を含み得る。任意選択のtracrRNA延長は、ガイドRNAに対する追加の機能性(例えば、安定性)に寄与する要素を含み得る。一分子ガイドリンカーは、最小CRISPRリピート及び最小tracrRNA配列を連結して、ヘアピン構造を形成することができる。任意選択のtracrRNA延長は、1つ以上のヘアピンを含み得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の5’末端で20ヌクレオチドのスペーサー配列を含む。いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の5’末端で20ヌクレオチド未満のスペーサー配列を含む。いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の5’末端で20ヌクレオチドより長いスペーサー配列を含む。いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の5’末端で17~30ヌクレオチドを有する可変長スペーサー配列を含む。いくつかの実施形態では、sgRNAは、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、又は200個を超えるヌクレオチドの長さを有するスペーサー延長配列を含む。いくつかの実施形態では、sgRNAは、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、又は100個未満のヌクレオチドの長さを有するスペーサー延長配列を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、sgRNAは、別の部分(例えば、安定性制御配列、エンドリボヌクレアーゼ結合配列、又はリボザイム)を含むスペーサー延長配列を含む。部分は、核酸を標的化する核酸の安定性を低減することができるか又は増大させることができる。部分は、転写ターミネーターセグメント(すなわち、転写終結配列)であり得る。部分は、真核細胞において機能し得る。部分は、原核細胞において機能し得る。部分は、真核細胞及び原核細胞の両方において機能し得る。好適な部分の非限定的な例としては、5’キャップ(例えば、7-メチルグアニレートキャップ(m7 G))、リボスイッチ配列(例えば、タンパク質及びタンパク質複合体による安定性の調節並びに/又は接触性の調節を可能にする)、dsRNA二重鎖(すなわち、ヘアピン)を形成する配列、RNAを細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、クロロプラストなど)に標的化する配列、追跡をもたらす修飾又は配列(例えば、蛍光分子への直接的なコンジュゲーション、蛍光検出を容易にする部分へのコンジュゲーション、蛍光検出を可能にする配列など)、及び/又はタンパク質のための結合部位をもたらす修飾又は配列(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含む、DNAに対して作用するタンパク質)が挙げられる。
【0071】
いくつかの実施形態では、sgRNAは、標的ポリヌクレオチド中の配列にハイブリダイズするスペーサー配列を含む。gRNAのスペーサーは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対形成)を介して配列特異的な様式で標的ポリヌクレオチドと相互作用することができる。スペーサーのヌクレオチド配列は、目的の標的核酸の配列に依存して変化してもよい。
【0072】
CRISPR-エンドヌクレアーゼ系において、スペーサー配列は、系において使用されるエンドヌクレアーゼのPAMの5’に位置する標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズするように設計され得る。スペーサーは、標的配列と完全に一致してもよいし、ミスマッチを有してもよい。各エンドヌクレアーゼ、例えば、Cas9ヌクレアーゼは、それが標的DNA中で認識する特定のPAM配列を有する。例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9は、配列5’-NRG-3’(ここで、Rは、A又はGのいずれかを含み、Nは、任意のヌクレオチドであり、Nは、スペーサー配列によって標的化される標的核酸配列の3’のすぐ近くにある)を含むPAMを認識する。
【0073】
標的ポリヌクレオチド配列は、20個のヌクレオチドを含み得る。標的ポリヌクレオチドは、20個未満のヌクレオチドを含み得る。標的ポリヌクレオチドは、20個より多いポリヌクレオチドを含み得る。標的ポリヌクレオチドは、少なくとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30個以上のヌクレオチドを含み得る。標的ポリヌクレオチドは、最大5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30個以上のヌクレオチドを含み得る。標的ポリヌクレオチド配列は、PAMの第1のヌクレオチドの5’のすぐ近くに20個の塩基を含み得る。
【0074】
標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズするスペーサー配列は、少なくとも約6個のヌクレオチド(nt)の長さを有し得る。スペーサー配列は、少なくとも約6nt、少なくとも約10nt、少なくとも約15nt、少なくとも約18nt、少なくとも約19nt、少なくとも約20nt、少なくとも約25nt、少なくとも約30nt、少なくとも約35nt若しくは少なくとも約40nt、約6nt~約80nt、約6nt~約50nt、約6nt~約45nt、約6nt~約40nt、約6nt~約35nt、約6nt~約30nt、約6nt~約25nt、約6nt~約20nt、約6nt~約19nt、約10nt~約50nt、約10nt~約45nt、約10nt~約40nt、約10nt~約35nt、約10nt~約30nt、約10nt~約25nt、約10nt~約20nt、約10nt~約19nt、約19nt~約25nt、約19nt~約30nt、約19nt~約35nt、約19nt~約40nt、約19nt~約45nt、約19nt~約50nt、約19nt~約60nt、約20nt~約25nt、約20nt~約30nt、約20nt~約35nt、約20nt~約40nt、約20nt~約45nt、約20nt~約50nt、又は約20nt~約60ntであり得る。いくつかの例において、スペーサー配列は、20個のヌクレオチドを含み得る。いくつかの例において、スペーサーは、19個のヌクレオチドを含み得る。いくつかの例において、スペーサーは、18個のヌクレオチドを含み得る。いくつかの例において、スペーサーは、22個のヌクレオチドを含み得る。
【0075】
いくつかの例において、スペーサー配列と標的核酸の間の相補性パーセントは、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%である。いくつかの例において、スペーサー配列と標的核酸の間の相補性パーセントは、最大約30%、最大約40%、最大約50%、最大約60%、最大約65%、最大約70%、最大約75%、最大約80%、最大約85%、最大約90%、最大約95%、最大約97%、最大約98%、最大約99%、又は100%である。いくつかの例において、スペーサー配列と標的核酸の間の相補性パーセントは、標的核酸の相補鎖の標的配列の6個の連続した5’の大部分のヌクレオチドにわたって100%である。スペーサー配列と標的核酸の間の相補性パーセントは、約20個の連続したヌクレオチドにわたって少なくとも60%であり得る。スペーサー配列及び標的核酸の長さは、1~6個のヌクレオチドで異なってもよく、これは、バルジ又はバルジ(複数)と考えられ得る。
【0076】
tracrRNA配列は、細胞中において最小CRISPRリピート配列にハイブリダイズするヌクレオチドを含み得る。最小tracrRNA配列及び最小CRISPRリピート配列は、二重鎖、すなわち、塩基対形成した二本鎖構造を形成し得る。合わせると、最小tracrRNA配列及び最小CRISPRリピートは、RNA誘導型エンドヌクレアーゼに結合できる。最小tracrRNA配列の少なくとも一部は、最小CRISPRリピート配列にハイブリダイズできる。最小tracrRNA配列は、最小CRISPRリピート配列と少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は100%相補的であり得る。
【0077】
最小tracrRNA配列は、約7ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの長さを有し得る。例えば、最小tracrRNA配列は、約7ヌクレオチド(nt)~約50nt、約7nt~約40nt、約7nt~約30nt、約7nt~約25nt、約7nt~約20nt、約7nt~約15nt、約8nt~約40nt、約8nt~約30nt、約8nt~約25nt、約8nt~約20nt、約8nt~約15nt、約15nt~約100nt、約15nt~約80nt、約15nt~約50nt、約15nt~約40nt、約15nt~約30nt又は約15nt~約25nt長であり得る。最小tracrRNA配列は、およそ9ヌクレオチド長であり得る。最小tracrRNA配列は、およそ12ヌクレオチドであり得る。最小tracrRNAは、上記のJinek et al.において記載されるtracrRNA nt 23~48からなり得る。
【0078】
最小tracrRNA配列は、一続きの少なくとも6、7、又は8個の連続したヌクレオチドにわたって基準の最小tracrRNA(例えば、野生型、S.ピオゲネス(S.pyogenes)由来のtracrRNA)配列と少なくとも約60%同一であり得る。例えば、最小tracrRNA配列は、一続きの少なくとも6、7、又は8個の連続したヌクレオチドにわたって基準の最小tracrRNA配列と少なくとも約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一、約99%同一又は100%同一であり得る。
【0079】
最小CRISPR RNAと最小tracrRNAの間の二重鎖は、二重らせんを含み得る。最小CRISPR RNAと最小tracrRNAの間の二重鎖は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以上のヌクレオチドを含み得る。最小CRISPR RNAと最小tracrRNAの間の二重鎖は、最大約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以上のヌクレオチドを含み得る。
【0080】
二重鎖は、ミスマッチを含み得る(すなわち、二重鎖の2本の鎖は、100%相補的ではない)。二重鎖は、少なくとも約1、2、3、4、又は5個のミスマッチを含み得る。二重鎖は、最大約1、2、3、4、又は5個のミスマッチを含み得る。二重鎖は、2個以下のミスマッチを含み得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、tracrRNAは、3’tracrRNAであり得る。いくつかの実施形態では、3’tracrRNA配列は、基準のtracrRNA配列(例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)由来のtracrRNA)に対して少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は100%の配列同一性を有する配列を含み得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、gRNAは、tracrRNA延長配列を含み得る。tracrRNA延長配列は、約1ヌクレオチド~約400ヌクレオチドの長さを有し得る。tracrRNA延長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、又は200個を超えるヌクレオチドの長さを有し得る。tracrRNA延長配列は、約20~約5000個以上のヌクレオチドの長さを有し得る。tracrRNA延長配列は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、又は100個未満の長さを有し得る。tracrRNA延長配列は、10未満のヌクレオチド長を含み得る。tracrRNA延長配列は、10~30ヌクレオチド長であり得る。tracrRNA延長配列は、30~70ヌクレオチド長であり得る。
【0083】
tracrRNA延長配列は、機能性部分(例えば、安定性制御配列、リボザイム、エンドリボヌクレアーゼ結合配列)を含み得る。機能性部分は、転写ターミネーターセグメント(すなわち、転写終結配列)を含み得る。機能性部分は、約10ヌクレオチド(nt)~約100ヌクレオチド、約10nt~約20nt、約20nt~約30nt、約30nt~約40nt、約40nt~約50nt、約50nt~約60nt、約60nt~約70nt、約70nt~約80nt、約80nt~約90nt、若しくは約90nt~約100nt、約15nt~約80nt、約15nt~約50nt、約15nt~約40nt、約15nt~約30nt、又は約15nt~約25ntの全長を有し得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、sgRNAは、約3ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの長さを有するリンカー配列を含み得る。上記のJinek et al.において、例えば、単純な4ヌクレオチド「テトラループ」(-GAAA-)が使用された(Jinek et al.,Science,2012,337(6096):816-821)。例示的なリンカーは、約3ヌクレオチド(nt)~約90nt、約3nt~約80nt、約3nt~約70nt、約3nt~約60nt、約3nt~約50nt、約3nt~約40nt、約3nt~約30nt、約3nt~約20nt、約3nt~約10ntの長さを有する。例えば、リンカーは、約3nt~約5nt、約5nt~約10nt、約10nt~約15nt、約15nt~約20nt、約20nt~約25nt、約25nt~約30nt、約30nt~約35nt、約35nt~約40nt、約40nt~約50nt、約50nt~約60nt、約60nt~約70nt、約70nt~約80nt、約80nt~約90nt、又は約90nt~約100ntの長さを有し得る。一分子ガイド核酸のリンカーは、4~40ヌクレオチドであり得る。リンカーは、少なくとも約100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、又は7000個以上のヌクレオチドであり得る。リンカーは、最大約100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、又は7000個以上のヌクレオチドであり得る。
【0085】
リンカーは、様々な配列のうちのいずれかを含み得るが、いくつかの例において、リンカーは、ガイドの他の機能性領域に支障をきたすであろう分子内結合を引き起こす可能性があるガイドRNAの他の部分と相同性の広範な領域を有する配列を含まないことになる。上記のJinek et al.において、単純な4ヌクレオチド配列-GAAA-が使用されたが(Jinek et al.,Science,2012,337(6096):816-821)、より長い配列を含む多数の他の配列が同様に使用されてもよい。
【0086】
リンカー配列は、機能性部分を含み得る。例えば、リンカー配列は、アプタマー、リボザイム、タンパク質-相互作用ヘアピン、タンパク質結合部位、CRISPRアレイ、イントロン、又はエクソンを含む1つ以上の特徴を含み得る。リンカー配列は、少なくとも約1、2、3、4、又は5個以上の機能性部分を含み得る。いくつかの例において、リンカー配列は、最大約1、2、3、4、又は5個以上の機能性部分を含み得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、sgRNAは、例えば、sgRNA配列の3’末端にウラシルを含まない。いくつかの実施形態では、sgRNAは、例えば、sgRNA配列の3’末端に1つ以上のウラシルを含む。いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のウラシル(U)を含む。
【0088】
sgRNAは、化学修飾されてもよい。いくつかの実施形態では、化学修飾されたgRNAは、化学修飾、例えば、2’-O-メチル糖修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含むgRNAである。いくつかの実施形態では、化学修飾されたgRNAは、修飾された核酸骨格を含む。いくつかの実施形態では、化学修飾されたgRNAは、2’-O-メチル-ホスホロチオエート残基を含む。いくつかの実施形態では、化学修飾は、当該技術分野において記載されるとおり、安定性を増強し、自然免疫応答の可能性又は程度を低減し、且つ/又は他の特質を増強する。
【0089】
いくつかの実施形態では、修飾されたgRNAは、修飾された骨格、例えば、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、モルホリノ、メチルホスホネート、短鎖アルキル若しくはシクロアルキル糖間結合又は短鎖ヘテロ原子若しくは複素環式糖間結合を含んでもよい。
【0090】
モルホリノ系化合物は、Braasch and David Corey,Biochemistry,2002,41(14):4503-4510;Genesis,2001,Volume 30,Issue 3;Heasman,Dev.Biol.,2002,243:209-214;Nasevicius et al.,Nat.Genet.,2000,26:216-220;Lacerra et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,2000,97:9591-9596;及び1991年7月23日に登録された米国特許第5,034,506号明細書において記載されている。
【0091】
シクロヘキセニル核酸オリゴヌクレオチドミメティックは、Wang et al.,J.Am.Chem.Soc.,2000,122:8595-8602において記載されている。
【0092】
いくつかの実施形態では、修飾されたgRNAは、2’位において1つ以上の置換された糖部分、例えば、以下のもののうちの1つを含んでもよい:OH、SH、SCH3、F、OCN、OCH3、OCH3O(CH2)nCH3、O(CH2)nNH2、又はO(CH2)nCH3(nは1~約10である);C1~C10低級アルキル、アルコキシアルコキシ、置換低級アルキル、アルカリール又はアラルキル;Cl;Br;CN;CF3;OCF3;O-、S-、又はN-アルキル;O-、S-、又はN-アルケニル;SOCH3;SO2CH3;ONO2;NO2;N3;NH2;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリール;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA切断基;レポーター基;干渉物質;2’-O-(2-メトキシエチル);2’-メトキシ(2’-O-CH3);2’-プロポキシ(2’-OCH2CH2CH3);及び2’-フルオロ(2’-F)。同様の修飾はまた、gRNA上の他の位置、特に、3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位及び5’末端ヌクレオチドの5’位でなされてもよい。いくつかの例において、ヌクレオチド単位の糖及びヌクレオシド間結合の両方、すなわち、骨格は、新規の基で置き換えられてもよい。
【0093】
ガイドRNAはまた、追加的に又は代替的に、核酸塩基(当該技術分野において単に「塩基」と呼ばれる場合が多い)修飾又は置換を含んでもよい。本明細書で使用する場合、「未修飾」又は「天然」核酸塩基は、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、及びウラシル(U)を含む。修飾された核酸塩基としては、天然の核酸においてまれに又は一時的にのみ見出される核酸塩基、例えば、ヒポキサンチン、6-メチルアデニン、5-Meピリミジン、特に、5-メチルシトシン(5-メチル-2’-デオキシシトシンとも呼ばれ、且つ当該技術分野において5-Me-Cと呼ばれる場合が多い)、5-ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルMHC及びゲントビオシルHMC、並びに合成核酸塩基、例えば、2-アミノアデニン、2-(メチルアミノ)アデニン、2-(イミダゾリルアルキル)アデニン、2-(アミノアルキルアミノ)アデニン又は他のヘテロ置換アルキルアデニン、2-チオウラシル、2-チオチミン、5-ブロモウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、8-アザグアニン、7-デアザグアニン、N6(6-アミノヘキシル)アデニン、及び2,6-ジアミノプリンが挙げられる。Kornberg,A.,DNA Replication,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,pp75-77,1980;Gebeyehu et al.,Nucl.Acids Res.1997,15:4513。当該技術分野において知られる「ユニバーサル」塩基、例えば、イノシンもまた含まれてもよい。5-Me-C置換は、0.6~1.2℃によって核酸二重鎖の安定性を増大させることが示され(Sanghvi,Y.S.,in Crooke,S.T.and Lebleu,B.,eds.,Antisense Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276-278)、塩基置換の態様である。
【0094】
修飾された核酸塩基は、5ーメチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6-メチル並びに他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2-プロピル並びに他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニルウラシル及びシトシン、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(プソイド-ウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル並びに他の8-置換アデニン及びグアニン、5-ハロ、特に、5-ブロモ、5-トリフルオロメチル並びに他の5-置換ウラシル及びシトシン、7-メチルクアニン(7-methylquanine)及び7-メチルアデニン、8-アザグアニン及び8-アザアデニン、7-デアザグアニン及び7-デアザアデニン、並びに3-デアザグアニン及び3-デアザアデニンなどの他の合成並びに天然核酸塩基を含んでもよい。
【0095】
ゲノム標的化核酸及びエンドヌクレアーゼの複合体
gRNAは、エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9などのRNA誘導型ヌクレアーゼ)と相互作用し、それにより複合体を形成する。gRNAは、エンドヌクレアーゼを標的ポリヌクレオチドに導く。
【0096】
エンドヌクレアーゼ及びgRNAはそれぞれ、細胞又は対象に別々に投与され得る。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、1つ以上のガイドRNA、又はtracrRNAと合わせた1つ以上のcrRNAと予め複合体を形成し得る。次に、予め複合体を形成した材料が、細胞又は対象に投与され得る。そのような予め複合体を形成した材料は、リボ核タンパク質粒子(RNP)として知られる。RNP中のエンドヌクレアーゼは、例えば、Cas9エンドヌクレアーゼ又はCpf1エンドヌクレアーゼであってもよい。エンドヌクレアーゼは、1つ以上の核移行シグナル(NLS)によって、N末端、C末端、又はN末端及びC末端の両方で隣接され得る。例えば、Cas9エンドヌクレアーゼは、2つのNLSであるN末端に位置する1つ目のNLS及びC末端に位置する2つ目のNLSによって隣接され得る。NLSは、SV40 NLSなどの当該技術分野において知られる任意のNLSであり得る。RNP中のゲノム標的化核酸とエンドヌクレアーゼの重量比は、1:1であり得る。例えば、RNP中のsgRNAとCas9エンドヌクレアーゼの重量比は、1:1であり得る。
【0097】
核酸コード化系構成要素
本開示は、本開示のゲノム標的化核酸をコードするヌクレオチド配列を含む核酸、本開示のエンドヌクレアーゼ、及び/又は本開示の方法の態様を実行するのに必要な任意の核酸若しくはタンパク質性分子を提供する。コード化核酸は、RNA、DNA、又はその組合せであり得る。
【0098】
本開示のゲノム標的化核酸をコードする核酸、本開示のエンドヌクレアーゼ、及び/又は本開示の方法の態様を実行するのに必要な任意の核酸若しくはタンパク質性分子は、ベクター(例えば、組換え発現ベクター)を含み得る。
【0099】
用語「ベクター」は、連結されている別の核酸を輸送できる核酸分子を指す。ベクターの1つの型は、追加の核酸セグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。ベクターの別の型は、ウイルスベクターであり、追加の核酸セグメントは、ウイルスゲノムにライゲートされ得る。ある種のベクターは、それらが導入される宿主細胞における自律的複製が可能である(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それにより宿主ゲノムとともに複製される。
【0100】
いくつかの例において、ベクターは、それらが作動可能に連結される核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」、又はより単純には、同じ機能を果たす「発現ベクター」と呼ばれる。
【0101】
用語「作動可能に連結された」は、目的のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で調節配列に連結されていることを意味する。用語「調節配列」は、例えば、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。そのような調節配列は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology,1990,185,Academic Press,San Diego,CAにおいて記載されている。調節配列としては、宿主細胞の多くの型においてヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの、ある種の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指示するもの(例えば、組織特異的調節配列)が挙げられる。発現ベクターの設計が、標的細胞の選択、所望される発現のレベルなどの要因に依存し得ることは当業者によって認識されることになる。
【0102】
企図される発現ベクターとしては、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルス(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、並びにラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、及び乳癌ウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクター)及び他の組換えベクターに基づくウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。真核生物の標的細胞のために企図される他のベクターとしては、ベクターpXT1、pSG5、pSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVLSV40(Pharmacia)が挙げられるが、これらに限定されない。宿主細胞と適合する限り、他のベクターを使用してもよい。
【0103】
いくつかの例において、ベクターは、1つ以上の転写及び/又は翻訳制御エレメントを含んでもよい。利用される宿主/ベクター系に依存して、構成的プロモーター及び誘導性プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含むいくつかの好適な転写及び翻訳制御エレメントのうちのいずれかが、発現ベクターにおいて使用され得る。ベクターは、ウイルス配列又はCRISPR機構若しくは他のエレメントの構成要素のいずれかを不活性化する自己不活性化ベクターであってもよい。
【0104】
好適な真核生物のプロモーター(すなわち、真核細胞において機能するプロモーター)の非限定的な例としては、サイトメガロウイルス(CMV)最初期、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、初期及び後期SV40、レトロウイルス由来の末端反復配列(LTR)、ヒト伸長因子-1プロモーター(EF1)、ニワトリベータ-アクチンプロモーター(CBA)、ユビキチンCプロモーター(UBC)、ニワトリベータ-アクチンプロモーターに融合されたサイトメガロウイルスエンハンサーを含むハイブリッドコンストラクト(CAG)、プロモーター、第1エクソン、及びニワトリベータ-アクチン遺伝子の第1イントロンに融合されたサイトメガロウイルスエンハンサーを含むハイブリッドコンストラクト(CAG又はCAGGS)、マウス幹細胞ウイルスプロモーター(MSCV)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1座位プロモーター(PGK)、及びマウスメタロチオネイン-Iプロモーターに由来するものが挙げられる。
【0105】
プロモーターは、誘導性プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節性プロモーター、ステロイド調節性プロモーター、金属調節性プロモーター、エストロゲン受容体調節性プロモーターなど)であってもよい。プロモーターは、構成的プロモーター(例えば、CMVプロモーター、UBCプロモーター、CAGプロモーター)であってもよい。いくつかの場合において、プロモーターは、空間に制約されるプロモーター及び/又は時間に制約されるプロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーターなど)であってもよい。
【0106】
本開示の複合体、ポリペプチド、及び核酸の細胞への導入は、ウイルス又はバクテリオファージ感染、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介性トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、リポソーム媒介性トランスフェクション、粒子銃技術、リン酸カルシウム沈殿、直接的マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介性核酸送達などによって行われてもよい。
【0107】
III.免疫応答を回避し、生存期間を増加させる戦略
本明細書では、遺伝子改変細胞、すなわち、ユニバーサルドナー細胞が、免疫応答を回避し、且つ/又は対象への生着後のそれらの生存期間、又は生存率を増加させることを可能にする戦略が記載される。いくつかの実施形態では、これらの戦略は、ユニバーサルドナー細胞が、未改変細胞より高い成功率で免疫応答を回避し、且つ/又は生存することを可能にする。いくつかの実施形態では、遺伝子改変細胞は、未改変細胞に対して、1つ以上のMHC-I及びMHC-IIヒト白血球抗原の発現を減少させる少なくとも1つの遺伝子内又は近傍での少なくとも1つの遺伝子改変;未改変細胞に対して、免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドの発現を増加させる少なくとも1つの遺伝子改変;並びに/又は未改変細胞に対して、生存因子をコードする少なくとも1つの遺伝子の発現を改変する少なくとも1つの遺伝子改変の導入を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変細胞は、未改変細胞に対して、1つ以上のMHC-I及びMHC-IIヒト白血球抗原の発現を減少させる少なくとも1つの遺伝子内又は近傍での少なくとも1つの遺伝子改変;未改変細胞に対して、免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドの発現を増加させる少なくとも1つの遺伝子改変;並びに未改変細胞に対して、生存因子をコードする少なくとも1つの遺伝子の発現を改変する少なくとも1つの遺伝子改変の導入を含む。他の実施形態では、遺伝子改変細胞は、未改変細胞に対して、1つ以上のMHC-I及びMHC-IIヒト白血球抗原の発現を改変する少なくとも1つの遺伝子内又は近傍での少なくとも1つの欠失又は挿入-欠失変異;並びに1つ以上のMHC-I及びMHC-II HLAの発現を改変する遺伝子の欠失の部位と部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位での少なくとも1つの免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドの少なくとも1つの挿入を含む。さらに他の実施形態では、遺伝子改変細胞は、未改変細胞に対して、生存因子をコードする少なくとも1つの遺伝子の発現を改変する少なくとも1つの遺伝子改変を含む。
【0108】
主要組織適合抗原複合体(MHC)をコードする遺伝子は、ヒトChr.6p21上に位置する。MHC遺伝子によってコードされる結果としてのタンパク質は、細胞移植中のドナー適合性に必須である一連の表面タンパク質である。MHC遺伝子は、MHCクラスI(MHC-I)及びMHCクラスII(MHC-II)に分類される。MHC-I遺伝子(HLA-A、HLA-B、及びHLA-C)は、ほとんど全ての組織型において発現され、「非自己」の抗原がプロセシングされたペプチドをCD8+T細胞に提示し、それにより細胞溶解性CD8+T細胞へのそれらの活性化を促進する。「非自己」MHC-I分子を発現する移植された細胞又は生着された細胞は、これらの細胞に向けられる強い細胞性免疫応答を引き起こすことになり、最終的に、活性化された細胞溶解性CD8+T細胞によるそれらの消滅をもたらす。MHC-Iタンパク質は、本質的に、小胞体中のベータ-2-ミクログロブリン(B2M)と関連し、これは細胞表面上で機能的MHC-I分子を形成するのに必須である。加えて、免疫調節機能を有する3つの非古典的MHC-1b分子(HLA-E、HLA-F、及びHLA-G)が存在する。MHC-II生体分子としては、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、及びHLA-DRが挙げられる。免疫応答におけるそれらの主要な機能に起因して、MHC-I及びMHC-II生体分子は、非宿主細胞の細胞生着、例えば、再生医療を目的とする細胞生着後の免疫拒絶に寄与する。
【0109】
MHC-I細胞表面分子は、MHCにコードされる重鎖(HLA-A、HLA-B、又はHLA-C)及びインバリアントなサブユニットベータ-2-ミクログロブリン(B2M)で構成される。したがって、細胞内でのB2M濃度の低減は、MHC-I細胞表面分子の細胞表面発現を低減する効果的な方法を可能にする。
【0110】
いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上のMHC-I又はMHC-II遺伝子の遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、MHC-I及び/又はMHC-IIの発現を調節する1つ以上のポリヌクレオチド配列の遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子改変は、本明細書に記載される方法を含むが、それらに限定されない任意の遺伝子編集方法を使用して実施される。
【0111】
いくつかの実施形態では、未改変細胞に対して、1つ以上のMHC-I及びMHC-IIヒト白血球抗原の発現を減少させることは、例えば、MHC-I及び/又はMHC-II遺伝子における直接的な少なくとも1つの塩基対の遺伝子欠失及び/又は挿入のための標的化によって達成される。いくつかの実施形態では、未改変細胞に対して、1つ以上のMHC-I及びMHC-IIヒト白血球抗原の発現を減少させることは、例えば、遺伝子欠失のために、CIITA遺伝子を標的化することによって達成される。いくつかの実施形態では、未改変細胞に対して、1つ以上のMHC-I及びMHC-IIヒト白血球抗原の発現を減少させることは、例えば、遺伝子欠失のために、MHC-I又はMHC-IIの少なくとも1つの転写調節因子を標的化することによって達成される。いくつかの実施形態では、MHC-I又はMHC-IIの転写調節因子は、NLRC5、又はCIITA遺伝子である。いくつかの実施形態では、MHC-I又はMHC-IIの転写調節因子は、RFX5、RFXAP、RFXANK、NFY-A、NFY-B、NFY-C、IRF-1、及び/又はTAP1遺伝子である。
【0112】
いくつかの実施形態では、細胞のゲノムは、HLA-A、HLA-B、及び/又はHLA-C遺伝子の全体又は一部を欠失させるために改変されている。いくつかの実施形態では、細胞のゲノムは、HLA-A、HLA-B、及び/又はHLA-C遺伝子のプロモーター領域の全体又は一部を欠失させるために改変されている。いくつかの実施形態では、細胞のゲノムは、MHC-I又はMHC-IIの転写調節因子をコードする遺伝子の全体又は一部を欠失させるために改変されている。いくつかの実施形態では、細胞のゲノムは、MHC-I又はMHC-IIの転写調節因子をコードする遺伝子のプロモーター領域の全体又は一部を欠失させるために改変されている。
【0113】
いくつかの実施形態では、細胞のゲノムは、ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)の発現を減少させるために改変されている。B2Mは、全ての多型MHCクラスI重鎖の表面発現に必要となる共有のタンパク質サブユニットをコードする非多型遺伝子である。HLA-Iタンパク質は、小胞体においてB2Mと直接的に会合し、これは機能性の細胞表面で発現されるHLA-I分子を形成するのに必須である。いくつかの実施形態では、gRNAは、5’GCTACTCTCTCTTTCTGGCC3’配列(配列番号1)を含むB2M遺伝子内の部位を標的化する。いくつかの実施形態では、gRNAは、5’GGCCGAGATGTCTCGCTCCG3’配列(配列番号2)を含むB2M遺伝子内の部位を標的化する。いくつかの実施形態では、gRNAは、5’CGCGAGCACAGCTAAGGCCA3’配列(配列番号3)を含むB2M遺伝子内の部位を標的化する。代替的な実施形態では、gRNAは、以下の配列のいずれかを含むB2M遺伝子内の部位を標的化する:5’-TATAAGTGGAGGCGTCGCGC-3’(配列番号35)、5’-GAGTAGCGCGAGCACAGCTA-3’(配列番号36)、5’-ACTGGACGCGTCGCGCTGGC-3’(配列番号37)、5’-AAGTGGAGGCGTCGCGCTGG-3’(配列番号38)、5-GGCCACGGAGCGAGACATCT-3’(配列番号39)、5’-GCCCGAATGCTGTCAGCTTC-3’(配列番号40)、5’-CTCGCGCTACTCTCTCTTTC-3’(配列番号41)、5’-TCCTGAAGCTGACAGCATTC-3’(配列番号42)、5’-TTCCTGAAGCTGACAGCATT-3’(配列番号43)、又は5’-ACTCTCTCTTTCTGGCCTGG-3’(配列番号44)。いくつかの実施形態では、gRNAは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、又は配列番号44のいずれか1つのポリヌクレオチド配列を含む。gRNA/CRISPRヌクレアーゼ複合体は、B2M座位中の標的部位を標的化し、且つ切断する。NHEJによる二本鎖切断の修復は、少なくともヌクレオチド上の欠失及び/又は少なくとも1つのヌクレオチドの挿入をもたらす可能性があり、それによりB2Mの発現を破壊するか又は消失させる。或いは、B2M座位は、それぞれ異なるgRNAを含む少なくとも2つのCRISPR系によって標的化される場合があり、その結果、B2M座位中の2つの部位での切断が、2つの切断の間の配列の欠失をもたらし、それによりB2Mの発現を消失させる。
【0114】
いくつかの実施形態では、細胞のゲノムは、クラスIIトランス活性化因子(CIITA)の発現を減少させるために改変されている。CIITAは、タンパク質のLR又はヌクレオチド結合ドメイン(NBD)ロイシンリッチリピート(LRR)ファミリーのメンバーであり、MHCエンハンセオソームと会合することによってMHC-IIの転写を調節する。CIITAの発現は、発生段階に応じてB細胞及び樹状細胞において誘導され、大部分の細胞型においてIFN-γによって誘導可能である。
【0115】
いくつかの実施形態では、細胞のゲノムは、NLRファミリーであるCARDドメイン含有5(NLRC5)の発現を減少させるために改変されている。NLRC5は、MHC-I媒介性免疫応答の非常に重要な調節因子であり、CIITAと同様に、NLRC5は、IFN-γによって高度に誘導可能であり、核内に移動できる。NLRC5は、MHC-I遺伝子のプロモーターを活性化し、MHC-I及びMHC-I抗原提示に関与する関連遺伝子の転写を誘導する。
【0116】
いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子を、遺伝子改変細胞に挿入又は再挿入して、免疫特権のあるユニバーサルドナー細胞を作製することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるユニバーサルドナー細胞はさらに、1つ以上の免疫寛容原性因子を発現するために改変されている。例示的な免疫寛容原性因子としては、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、PD-L1、CTLA-4-Ig、CD47、CI-阻害剤、及びIL-35のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドの遺伝子改変、例えば、挿入は、生着後に未改変細胞より少なくとも1.05倍、少なくとも1.1倍、少なくとも1.25倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、又は少なくとも50倍高い率でユニバーサルドナー細胞が免疫拒絶を阻害するか又は回避することを可能にする。いくつかの実施形態では、HLA-E、HLA-G、CTLA-4、CD47、及び/又はPD-L1をコードするポリヌクレオチドの挿入は、宿主対象への移植又は生着後にユニバーサルドナー細胞が免疫拒絶を阻害するか又は回避することを可能にする。
【0117】
免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドは一般に、免疫寛容原性因子をコードする配列に隣接する左及び右ホモロジーアームを含む。ホモロジーアームは、標的化される挿入部位又はその近傍にあるゲノムDNAと実質的な配列相同性を有する。例えば、左ホモロジーアームは、標的部位又は切断部位の左又は上流に位置する領域と相同なヌクレオチド配列であり得るし、右ホモロジーアームは、標的部位又は切断部位の右又は下流に位置する領域と相同なヌクレオチド配列であり得る。各ホモロジーアームの近位端は、切断部位に隣接するゲノムDNA配列と相同であり得る。或いは、各ホモロジーアームの近位端は、切断部位から最大約10、20、30、40、50、60、又は70核酸塩基離れて位置するゲノムDNA配列と相同であり得る。そのため、免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドは、切断部位の約10、20、30、40、50、60、又は70塩基対以内の標的化される遺伝子座位に挿入され得るし、且つ切断部位に隣接する(及びホモロジーアームと相同性を有しない)さらなるゲノムDNAが、欠失され得る。ホモロジーアームは、約50ヌクレオチドから数千ヌクレオチドの長さの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、ホモロジーアームは、約500ヌクレオチドから約1000ヌクレオチドの長さの範囲であり得る。ホモロジーアームとゲノムDNAの間の実質的な配列相同性は、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約99%であり得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、ホモロジーアームは、B2Mガイド(例えば、配列番号1~3又は35~44のヌクレオチド配列を含むgRNA)とともに使用される。いくつかの実施形態では、ホモロジーアームは、B2M遺伝子の開始部位を除去することになる任意のB2Mガイドとともに使用されるように設計される。いくつかの実施形態では、B2Mホモロジーアームは、配列番号13若しくは19のポリヌクレオチド配列、又は配列番号13若しくは19のものと少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得るか又はそれから本質的になり得る。いくつかの実施形態では、左B2Mホモロジーアームは、配列番号13、又は配列番号13のものと少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得るか又はそれから本質的になり得る。いくつかの実施形態では、右B2Mホモロジーアームは、配列番号19、又は配列番号19のものと少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得るか又はそれから本質的になり得る。
【0119】
少なくとも1つの免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドは、外来プロモーターに作動可能に連結され得る。外来プロモーターは、構成的、誘導性、時間特異的、組織特異的、又は細胞型特異的プロモーターであり得る。いくつかの実施形態では、外来プロモーターは、CMV、EFla、PGK、CAG、又はUBCプロモーターである。
【0120】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドは、セーフハーバー座位、例えば、AAVS1座位に挿入される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドは、MHC-I遺伝子、MHC-II遺伝子、又はMHC-I若しくはMHC-IIの転写調節因子と部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される(すなわち、その中又は近傍にある)ゲノムDNAの部位又は領域に挿入される。
【0121】
いくつかの実施形態では、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座位内又は近傍の部位で挿入される。いくつかの実施形態では、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子若しくはプロモーターの全て又は部分の欠失と一致するか、又はそれに続くB2M遺伝子座位内又は近傍にある部位で挿入される。PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、外来プロモーターに作動可能に連結される。外来プロモーターは、CMVプロモーターであり得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座位内又は近傍の部位で挿入される。いくつかの実施形態では、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子若しくはプロモーターの全て又は部分の欠失と一致するか、又はそれに続くB2M遺伝子座位内又は近傍にある部位で挿入される。HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、外来プロモーターに作動可能に連結される。外来プロモーターは、CMVプロモーターであり得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、HLA-A、HLA-B、又はHLA-C遺伝子座位内又は近傍にある部位で挿入される。いくつかの実施形態では、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、HLA-A、HLA-B、若しくはHLA-C遺伝子若しくはプロモーターの欠失と一致するか、又はそれに続くHLA-A、HLA-B、若しくはHLA-C遺伝子座位内又は近傍にある部位で挿入される。
【0124】
いくつかの実施形態では、CD47をコードするポリヌクレオチドは、CIITA遺伝子座位内又は近傍の部位で挿入される。いくつかの実施形態では、CD47をコードするポリヌクレオチドは、CIITA遺伝子若しくはプロモーターの欠失と一致するか、又はそれに続くCIITA遺伝子座位内又は近傍にある部位で挿入される。
【0125】
いくつかの実施形態では、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、CIITA遺伝子座位内若しくは近傍の部位にあるCD47をコードするポリヌクレオチドの挿入と一致するHLA-A、HLA-B、若しくはHLA-C遺伝子座位内又は近傍の部位で挿入される。
【0126】
いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上の生存因子の発現の増加又は減少を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、生存因子をコードする1つ以上のポリヌクレオチド配列の挿入を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、さらなる生存因子のうちの1つの欠失を含む。いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子改変は、本明細書に記載される方法を含むが、それらに限定されない任意の遺伝子編集方法を使用して実施される。いくつかの実施形態では、細胞は、未改変細胞に対して、少なくとも1つの生存因子の発現の増加又は減少を含む。いくつかの実施形態では、生存因子は、細胞生存に関与するメンバー又は決定的な経路、例えば、低酸素、活性酸素種、栄養欠乏、及び/又は酸化ストレスである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの生存因子の遺伝子改変は、生着後に未改変細胞より長い期間、例えば、少なくとも1.05倍、少なくとも1.1倍、少なくとも1.25倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、又は少なくとも50倍長い期間ユニバーサルドナー細胞が生存することを可能にする。いくつかの実施形態では、生存因子は、ZNF143、TXNIP、FOXO1、JNK、又はMANFである。
【0127】
いくつかの実施形態では、細胞は、MANFをコードするポリヌクレオチドの挿入を含み、未改変細胞に対して、宿主対象への移植又は生着の後にユニバーサルドナー細胞がより高い生存率で生存することを可能にする。いくつかの実施形態では、MANFをコードするポリヌクレオチドは、セーフハーバー座位に挿入される。いくつかの実施形態では、MANFをコードするポリヌクレオチドは、MHC-I、MHC-II、又はMHC-I若しくはMHC-IIの転写調節因子に属する遺伝子に挿入される。
【0128】
いくつかの実施形態では、細胞のゲノムは、ZNF143、TXNIP、FOXO1、及び/又はJNK遺伝子の全体又は一部を欠失させるために改変されている。いくつかの実施形態では、細胞のゲノムは、ZNF143、TXNIP、FOXO1、及び/又はJNK遺伝子のプロモーター領域の全体又は一部を欠失させるために改変されている。
【0129】
いくつかの実施形態では、2つ以上の生存因子が、細胞内で遺伝子改変される。
【0130】
ある種の実施形態では、MHC-II発現を有しない且つMHC-Iの中程度の発現を有する細胞は、MHC-I又はMHC-IIの表面発現を有しないように遺伝子改変される。別の実施形態では、MHC-I/IIの表面発現を有しない細胞はさらに、PD-L1の発現、例えば、PD-L1をコードするポリヌクレオチドの挿入を有するように編集される。さらに別の実施形態では、MHC-I/IIの表面発現を有しない細胞はさらに、PD-L1の発現、例えば、PD-L1をコードするポリヌクレオチドの挿入を有するように編集され、且つ未改変細胞に対して、生存因子をコードする少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させるか又は減少させるようにも遺伝子改変される。
【0131】
いくつかの実施形態では、細胞はさらに、例えば、遺伝子改変による、生着後の免疫回避又は細胞生存のいずれかに必ずしも関係づけられない1つ以上のさらなる遺伝子の発現の増加又は減少を含む。いくつかの実施形態では、細胞はさらに、未改変細胞に対して、1つ以上の安全スイッチタンパク質の発現の増加を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、安全スイッチタンパク質をコードする1つ以上のさらなる遺伝子の発現の増加を含む。いくつかの実施形態では、安全スイッチはまた、自殺遺伝子である。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、単純ヘルペスウイルス-1チミジンキナーゼ(HSV-tk)又は誘導性カスパーゼ-9である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの安全スイッチをコードするポリヌクレオチドは、ゲノムに、例えば、セーフハーバー座位に挿入される。いくつかの他の実施形態では、遺伝子改変される1つ以上のさらなる遺伝子は、コンストラクトとともに組み込まれた安全スイッチタンパク質;標的化モダリティー;受容体;シグナル伝達分子;転写因子;薬学的に活性なタンパク質又はペプチド;薬物標的候補;並びにその生着、輸送、回遊、生存率、自己再生、持続、及び/又は生存を促進するタンパク質のうちの1つ以上をコードする。
【0132】
本発明の一態様は、ゲノム操作されたユニバーサルドナー細胞を作製する方法(ユニバーサルドナー細胞は、ゲノム中の1つ以上の選択された部位で少なくとも1つの標的化されたゲノム改変を含む)であって、選択された部位で標的化された改変を可能にする1つ以上のコンストラクトを前記細胞に導入することによって本明細書に記載されるとおりの細胞型を遺伝子操作すること;選択された部位認識ができる1つ以上のエンドヌクレアーゼを使用して、選択された部位で1つ以上の二本鎖切断を前記細胞に導入すること;及び選択された部位で標的化された挿入又は欠失を生成するための内在性DNA修復を可能にするように編集された細胞を培養し;それによりゲノム改変されたユニバーサルドナー細胞を得ることを含む方法を提供する。この方法によって作製されたユニバーサルドナー細胞は、少なくとも1つの機能的な標的化されたゲノム改変を含むことになり、且つゲノム改変された細胞は、それらが幹細胞である場合、前駆細胞又は完全に分化した細胞に分化することができる。
【0133】
いくつかの他の実施形態では、ゲノム操作されたユニバーサルドナー細胞は、HLA-E、HLA-G、CD47、又はD-L1のうちの少なくとも1つにおける発現の導入又は増加を含む。いくつかの実施形態では、ゲノム操作されたユニバーサルドナー細胞は、HLAクラスI及び/又はクラスII欠損である。いくつかの実施形態では、ゲノム操作されたユニバーサルドナー細胞は、B2Mヌル又は不十分なB2Mを含む。いくつかの実施形態では、ゲノム操作されたユニバーサルドナー細胞は、HLA-E、HLA-G、及びPD-L1のうちの1つ以上をコードする組込み又は非組込み外来ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、導入された前記発現は、前記細胞中に含まれる発現されないか又は不十分に発現される遺伝子のいずれかにから発現が増加したものである。いくつかの実施形態では、非組込み外来ポリヌクレオチドは、センダイウイルス、AAV、エピソーム、又はプラスミドを使用して導入される。いくつかの実施形態では、ユニバーサルドナー細胞は、B2Mヌルであり、HLA-E、HLA-G、PD-L1のうちの1つ以上の発現の導入、及び少なくとも1つの安全スイッチタンパク質の発現の増加又は減少を伴う。別の実施形態では、ユニバーサルドナー細胞は、HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cヌルであり、HLA-E、HLA-G、PD-L1、及び少なくとも1つの安全スイッチタンパク質のうちの1つ以上の発現の導入を伴う。いくつかの実施形態では、ユニバーサルドナー細胞は、B2Mヌルであり、HLA-E、HLA-G、PD-L1のうちの1つ以上の発現の導入、及び少なくとも1つの生存因子、例えば、MANFの発現の増加又は減少を伴う。本明細書に記載される遺伝子改変細胞のいずれかを作製する方法は、本明細書に記載される遺伝子編集方法のうちの少なくともいずれかを使用して実施されることが企図される。
【0134】
IV.細胞型
本明細書に記載されるとおりの細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞(及び対応する未改変細胞)は、任意の可能なクラスの細胞型に属してもよい。いくつかの実施形態では、細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞(及び対応する未改変細胞)は、哺乳動物細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞(及び対応する未改変細胞)は、ヒト細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞(及び対応する未改変細胞)は、幹細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞(及び対応する未改変細胞)は、多能性幹細胞(PSC)であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞(及び対応する未改変細胞)は、胚性幹細胞(ESC)、成体幹細胞(ASC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、又は造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞(及び対応する未改変細胞)は、分化細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞(及び対応する未改変細胞)は、体細胞、例えば、免疫系細胞又は収縮細胞、例えば、骨格筋細胞であってもよい。
【0135】
本明細書に記載される細胞、例えば、ユニバーサルドナー幹細胞は、HLA発現、及びユニバーサル幹細胞株の免疫原性の評価を判断するために適切な細胞型に分化され得る。一般に、分化は、細胞が目的の分化細胞に分化するのに十分な期間及び条件下で目的の細胞を維持することを含む。例えば、本明細書で開示されるユニバーサルドナー細胞は、間葉系前駆細胞(MPC)、低免疫原性心筋細胞、筋肉前駆細胞、芽球細胞、内皮細胞(EC)、マクロファージ、幹細胞、ベータ細胞(例えば、膵ベータ細胞)、膵臓内胚葉前駆細胞、膵臓内分泌前駆細胞、又は神経前駆細胞(NPC)に分化され得る。
【0136】
幹細胞は、増殖及びさらなる前駆細胞を生じさせる能力の両方があり、これらは分化した娘細胞又は分化可能な娘細胞を生じさせることができる多数の母細胞を生成する能力を有する。娘細胞自体は、増殖し、引き続いて1つ以上の成熟細胞型に分化する後代を生成するように誘導され得るが、親の発生潜在力を有する1つ以上の細胞も保持する。次に、用語「幹細胞」は、特定の状況下でさらに特定的な表現型又は分化した表現型に分化する能力又は潜在力を有し、且つ一定の状況下で、実質的に分化することなく増殖する能力を保持する細胞を指す。一態様では、前駆細胞又は幹細胞という用語は、全般的な母細胞を指し、その子孫(後代)は、分化、例えば、胚細胞及び組織の漸進的な多様化に見られるとおり、完全に個別の特徴を獲得することによって、多くの場合異なる方向に特殊化する。細胞分化は、典型的には多くの細胞分裂を介して起こる複雑なプロセスである。分化細胞は、それ自体が多能性細胞などに由来する多能性細胞に由来し得る。これらの多能性細胞の各々は、幹細胞であると考えられ得るが、各々が生じさせることができる細胞型の範囲は、非常に変動し得る。一部の分化細胞はまた、より高い発生潜在力を有する細胞を生じさせる能力を有する。そのような能力は、天然であってもよいし、様々な因子による処理時に人工的に誘導されてもよい。多くの生物学的な例において、幹細胞はまた、それらが、2つ以上の異なる細胞型の後代を生成できるため「多能性」であり得るが、これは「幹細胞性」に必要ではない。
【0137】
「分化細胞」は、比較される細胞より発生経路がさらに進んだ細胞である。したがって、幹細胞は、系列限定前駆体細胞(筋細胞前駆細胞など)に分化することができ、これは、さらに進んだ経路の他の型の前駆細胞(筋細胞前駆体など)、続いて筋細胞などの最終段階の分化細胞に分化することができ、ある種の組織型において特徴的な役割を果たし、且つさらに増殖する能力を保持する場合があるか又は保持しない場合がある。
【0138】
胚性幹細胞
本明細書に記載される細胞は、胚性幹細胞(ESC)であってもよい。ESCは、哺乳動物胚の未分化胚芽細胞に由来し、任意の細胞型に分化し、迅速に増殖することができる。ESCはまた、正常な核型を有すると考えられており、高いテロメラーゼ活性を維持し、且つ顕著な長期間の増殖ポテンシャルを呈し、これらの細胞をユニバーサルドナー細胞としての使用のための優れた候補にする。
【0139】
成体幹細胞
本明細書に記載される細胞は、成体幹細胞(ASC)であってもよい。ASCは、哺乳動物、例えば、ヒトにおいて見出され得る未分化細胞である。ASCは、それらの自己再生する、例えば、未分化状態を維持しながら複数のラウンドの細胞複製を通して継代される能力、及び複数の異なる細胞型、例えば、グリア細胞に分化する能力によって定義される。成体幹細胞は、造血幹細胞、乳腺幹細胞、腸管幹細胞、間葉系幹細胞、内皮幹細胞、神経幹細胞、嗅覚成体幹細胞、神経冠幹細胞、及び精巣細胞を包含し得る広範なクラスの幹細胞である。
【0140】
人工多能性幹細胞
本明細書に記載される細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)であってもよい。iPSCは、多能性に関与する決定的な転写因子、例えば、Oct4、Sox2、cMyc、及びKlf4をコードする遺伝子を導入することによって成体ヒト細胞から直接的に作製され得る。iPSCは、引き続く前駆細胞が投与されることになる同じ対象に由来し得る。すなわち、体細胞は、対象から得られ、人工多能性幹細胞に初期化され、続いて対象に投与されることになる前駆細胞(例えば、自己細胞)に再分化され得る。しかしながら、自己細胞の場合、生着後の免疫応答及び不十分な生存率のリスクは残存する。
【0141】
ヒト造血幹細胞・前駆細胞
本明細書に記載される細胞は、ヒト造血幹細胞・前駆細胞(hHSPC)であってもよい。この幹細胞系列は、赤血球系(赤血球又は赤血球細胞(RBC))、骨髄性(単球及びマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、巨核球/血小板、及び樹状細胞)、及びリンパ系(T細胞、B細胞、NK細胞)を含む全ての血液細胞型を生じさせる。血液細胞は、自己再生によってそれ自体を補充する能力を有する非常に少数の多能性造血幹細胞(HSC)の増殖及び分化によって産生される。分化の間、HSCの後代は、様々な中間の成熟段階を通って発達し、成熟に達する前に多分化能を有し且つ系列に関係付けられた前駆細胞を生成する。骨髄(BM)は、ヒトにおける造血発生の主要な部位であり、通常の条件下で、ほんの少数の造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)が、末梢血液(PB)中に見出され得る。サイトカイン、癌治療において使用されるいくつかの骨髄抑制性薬物、及び造血間質細胞とBM間質細胞の間の相互作用を破壊する化合物による治療により、多数の幹細胞及び前駆細胞を血行へと迅速に動員できる。
【0142】
他の細胞型への細胞の分化
本開示の方法の別の工程は、分化細胞へと細胞を分化させることを含み得る。分化させる工程は、当該技術分野において知られる任意の方法に従って実施され得る。例えば、ヒトiPSCは、アクチビン及びB27サプリメント(Life Technologies)を含む様々な処理を使用して胚体内胚葉に分化される。胚体内胚葉はさらに、肝細胞に分化され、処理は、FGF4、HGF、BMP2、BMP4、オンコスタチンM、デキサメタゾンなどを含む。(Duan et al,Stem Cells,2010;28:674-686;Ma et al,Stem Cells Translational Medicine,2013;2:409-419)。別の実施形態では、分化させる工程は、Sawitza et al,Sci Rep.2015;5:13320に従って実施され得る。分化細胞は、哺乳動物、例えば、ヒトの任意の体細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、体細胞は、内分泌性上皮細胞(例えば、甲状腺ホルモン分泌細胞、副腎皮質細胞)、外分泌性上皮細胞(例えば、唾液腺粘液細胞、前立腺細胞)、ホルモン分泌細胞(例えば、下垂体前葉細胞、膵島細胞)、角化上皮細胞(例えば、表皮角化細胞)、湿性重層化障壁上皮細胞、感覚変換細胞(例えば、光受容体)、自律神経性神経細胞、感覚器及び末梢ニューロン支持細胞(例えば、シュワン細胞)、中枢神経系ニューロン、グリア細胞(例えば、星状細胞、乏突起膠細胞)、レンズ細胞、脂肪細胞、腎細胞、バリア機能細胞(例えば、導管細胞)、細胞外マトリックス細胞、収縮細胞(例えば、骨格筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞)、血液細胞(例えば、赤血球)、免疫系細胞(例えば、巨核球、ミクログリア細胞、好中球、マスト細胞、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞)、生殖細胞(例えば、精子細胞)、ナース細胞、又は間質細胞であってもよい。
【0143】
V.製剤化及び投与
遺伝子編集のための製剤化及び送達
本明細書に記載されるとおりのガイドRNA、ポリヌクレオチド、例えば、免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチド又はエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、及びエンドヌクレアーゼは、当該技術分野において知られる任意の様式で製剤化され、細胞に送達され得る。
【0144】
ガイドRNA及び/又はポリヌクレオチドは、特定の投与様式及び剤形に依存して、担体、溶媒、安定剤、アジュバント、希釈剤などの薬学的に許容される賦形剤とともに製剤化され得る。ガイドRNA及び/又はポリヌクレオチド組成物は、製剤化及び投与経路に依存して、生理学的に適合性のpH、及び約3のpH~約11のpH、約3のpH~約7のpHの範囲に達するように製剤化され得る。いくつかの場合において、pHは、約pH5.0~約pH8の範囲に調整され得る。いくつかの場合において、組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とともに、本明細書に記載されるとおりの治療有効量の少なくとも1つの化合物を含み得る。任意選択により、組成物は、本明細書に記載される化合物の組合せを含んでもよいし、細菌増殖の処置又は予防において有用な第2の活性成分(限定されないが、例えば、抗細菌剤又は抗微生物剤)を含んでもよいし、本開示の試薬の組合せを含んでもよい。
【0145】
好適な賦形剤としては、例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、及び不活性ウイルス粒子などの巨大でゆっくりと代謝される高分子を含む担体分子が挙げられる。他の例示的な賦形剤としては、抗酸化剤(限定されないが、例えば、アスコルビン酸)、キレート剤(限定されないが、例えば、EDTA)、炭水化物(限定されないが、例えば、デキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、及びヒドロキシアルキルメチルセルロース)、ステアリン酸、液体(限定されないが、例えば、油、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノール)、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質などを挙げることができる。
【0146】
ガイドRNAポリヌクレオチド(RNA又はDNA)及び/又はエンドヌクレアーゼポリヌクレオチド(RNA又はDNA)は、当該技術分野において知られるウイルス性又は非ウイルス性送達ビヒクルによって送達され得る。或いは、エンドヌクレアーゼポリペプチドは、エレクトロポレーション又は脂質ナノ粒子などの当該技術分野において知られるウイルス性又は非ウイルス性送達ビヒクルによって送達され得る。さらなる代替的な態様では、DNAエンドヌクレアーゼは、1つ以上のポリペプチドとして、単独で又は1つ以上のガイドRNA、若しくはtracrRNAと合わせた1つ以上のcrRNAと予め複合体を形成して送達され得る。
【0147】
ポリヌクレオチドは、ナノ粒子、リポソーム、リボ核タンパク質、正に荷電したペプチド、小分子RNAコンジュゲート、アプタマー-RNAキメラ、及びRNA-融合タンパク質複合体を含むが、これらに限定されない非ウイルス性ビヒクルによって送達され得る。いくつかの例示的な非ウイルス性送達ビヒクルは、Peer and Lieberman,Gene Therapy,2011,18:1127-1133(他のポリヌクレオチドの送達にも有用であるsiRNAのための非ウイルス性送達ビヒクルに焦点を当てている)において記載される。
【0148】
本開示のポリヌクレオチドに関して、製剤化は、例えば、国際出願PCT/US2012/069610号パンフレットにおいて教示されるもののうちのいずれかから選択され得る。
【0149】
ガイドRNA、sgRNA、及びエンドヌクレアーゼをコードするmRNAなどのポリヌクレオチドは、脂質ナノ粒子(LNP)によって細胞又は対象に送達され得る。
【0150】
LNPは、1000nm未満、500nm未満、250nm未満、200nm未満、150nm未満、100nm未満、75nm未満、50nm未満、又は25nm未満の直径を有する任意の粒子を指す。或いは、ナノ粒子は、1~1000nm、1~500nm、1~250nm、25~200nm、25~100nm、35~75nm、又は25~60nmのサイズの範囲であり得る。
【0151】
LNPは、カチオン性、アニオン性、又は中性脂質から作製され得る。膜融合リン脂質DOPE又は膜成分コレステロールなどの中性脂質は、トランスフェクション活性及びナノ粒子安定性を増強する「ヘルパー脂質」としてLNP中に含まれ得る。カチオン性脂質の制約としては、不十分な安定性及び迅速なクリアランス、並びに炎症性又は抗炎症性応答の発生に起因する低い有効性が挙げられる。
【0152】
LNPはまた、疎水性脂質、親水性脂質、又は疎水性脂質及び親水性脂質の両方で構成され得る。
【0153】
当該技術分野において知られる任意の脂質又は脂質の組合せを使用して、LNPを生成することができる。LNPを生成するために使用される脂質の例は、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC-コレステロール、DOTAP-コレステロール、GAP-DMORIE-DPyPE、及びGL67A-DOPE-DMPE-ポリエチレングリコール(PEG)である。カチオン性脂質の例は、98N12-5、C12-200、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、及び7C1である。中性脂質の例は、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、及びSMである。PEG修飾脂質の例は、PEG-DMG、PEG-CerC14、及びPEG-CerC20である。
【0154】
脂質は、LNPを生成するために任意の数のモル比において組み合わされ得る。加えて、ポリヌクレオチドは、LNPを生成するために広範なモル比において脂質と組み合わされ得る。
【0155】
組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、送達のために使用され得る。送達されることになるポリヌクレオチド、rep及びcap遺伝子、並びにヘルパーウイルス機能を含む、パッケージ化されることになるAAVゲノムが細胞に提供されるrAAV粒子を生成するための手法は、当該技術分野において標準的なものである。rAAVの生成は通常、次の成分が単一の細胞(本明細書でパッケージング細胞と表示される)内に存在することを必要とする:rAAVゲノム、rAAVゲノムから分離された(すなわち、その中にない)AAV rep及びcap遺伝子、並びにヘルパーウイルス機能。AAV rep及びcap遺伝子は、組換えウイルスが由来することができ、本明細書に記載されるAAV血清型を含むが、これらに限定されないrAAVゲノムITRとは異なるAAV血清型に由来し得る任意のAAV血清型に由来し得る。偽型rAAVの生成は、例えば、国際特許出願公開番号国際公開第01/83692号パンフレットにおいて開示される。
【0156】
細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞の製剤化及び投与
本明細書に記載されるとおりの遺伝子改変細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞は、製剤化され、且つ当該技術分野において知られる任意の様式によって対象に投与され得る。
【0157】
用語「投与する」、「導入する」、「埋入する」、「生着する」及び「移植する」は、所望の部位での導入細胞の少なくとも部分的な局在をもたらす方法又は経路による細胞、例えば、前駆細胞の対象への留置の文脈において互換的に使用される。細胞、例えば、前駆細胞、又はそれらの分化した後代は、埋入された細胞又は細胞の構成要素の少なくとも一部が生存したままである対象における所望の位置への送達をもたらす任意の適切な経路によって投与され得る。対象への投与後の細胞の生存期間は、数時間、例えば、24時間という短い期間、数日、数年もの間、或いは対象の寿命、すなわち、長期の生着であり得る。
【0158】
本明細書に記載されるとおりの遺伝子改変細胞、例えば、ユニバーサルドナー細胞は、対象への投与の後、未改変細胞のものより長い期間生存可能であり得る。
【0159】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるとおりの細胞を含む組成物は、例えば、一定期間かけた大量投与として又は持続注入による静脈内投与を含み得る好適な経路によって投与され得る。いくつかの実施形態では、静脈内投与は、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、又は髄腔内経路によって実施され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、固体形態、水性形態、又は液体形態であり得る。いくつかの実施形態では、水性又は液体形態は、噴霧され得るか、又は凍結乾燥され得る。いくつかの実施形態では、噴霧又は凍結乾燥形態は、水性又は液体溶液により再構成され得る。
【0160】
細胞組成物はまた、乳化手順が細胞生存率に悪影響を及ぼさないという条件で、リポソーム組成物として乳化され得るか又は提示され得る。細胞及び任意の他の活性成分は、薬学的に許容され、且つ活性成分と適合性である賦形剤とともに、且つ本明細書に記載される治療方法における使用のために好適な量で混合され得る。
【0161】
細胞組成物中に含まれる追加の薬剤は、その成分に薬学的に許容される塩を含み得る。薬学的に許容される塩は、例えば、塩酸若しくはリン酸などの無機酸、又は酢酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸とともに形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基とともに形成される)を含む。遊離カルボキシル基と形成される塩はまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム又は水酸化第二鉄などの無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基に由来し得る。
【0162】
生理学的に許容できる担体は、当該技術分野においてよく知られる。例示的な液体担体は、活性成分及び水に加えて材料を含有しないか、又はリン酸緩衝食塩水などの、生理的pH値のリン酸ナトリウム、生理食塩水若しくはその両方などの緩衝液を含有する滅菌水溶液である。さらに、水性担体は、2つ以上の緩衝液塩、並びに塩化ナトリウム及び塩化カリウムなどの塩、デキストロース、ポリエチレングリコール及び他の溶質を含有し得る。液体組成物はまた、水に加えて、及び水を除いて、液相を含有し得る。そのような追加の液相の例は、グリセリン、綿実油などの植物油、及び水-油エマルションである。特定の障害又は状態の治療において有効である細胞組成物において使用される活性化合物の量は、障害又は状態の性質に依存する可能性があり、標準的な臨床手法によって決定され得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、細胞を含む組成物は、疾患を有するか、有することが疑われるか、又はそのリスクがある対象、例えば、ヒト対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、疾患を有しないか、有すると疑われないか、又はそのリスクがない対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、対象は、健康なヒトである。いくつかの実施形態では、遺伝的に受け継がれる疾患を有するか、有すると疑われるか、又はそのリスクがある対象、例えば、ヒト対象。いくつかの実施形態では、対象は、疾患の症状に罹患しているか、又はそれを発症するリスクがある。
【0164】
VI.本開示の特定の組成物及び方法
したがって、本開示は、特に、以下の非限定的な組成物及び方法に関する。
【0165】
第1の組成物、組成物1において、本開示は、(i)1つ以上のMHC-I及びMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の他の構成要素若しくは転写調節因子をコードする少なくとも1つの遺伝子内又は近傍での少なくとも1つの遺伝子改変;(ii)未改変細胞に対して、免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドの発現を増加させる少なくとも1つの遺伝子改変;並びに(iii)未改変細胞に対して、生存因子をコードする少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させるか又は減少させる少なくとも1つの遺伝子改変を含む細胞を含む組成物を提供する。
【0166】
別の組成物、組成物2において、本開示は、(i)1つ以上のMHC-I及びMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の他の構成要素若しくは転写調節因子をコードする少なくとも1つの遺伝子内又は近傍での少なくとも1つの塩基対の少なくとも1つの欠失及び/又は挿入;並びに(ii)(i)の遺伝子欠失の部位に部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位での少なくとも1つの免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドの少なくとも1つの挿入を含む細胞を含む組成物を提供する。
【0167】
別の組成物、組成物3において、本開示は、未改変細胞に対して、生存因子をコードする少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させるか又は減少させる少なくとも1つの遺伝子改変を含む細胞を含む組成物を提供する。
【0168】
別の組成物、組成物4において、本開示は、(i)の遺伝子改変が欠失である、組成物1において提供されるとおりの組成物を提供する。
【0169】
別の組成物、組成物5において、本開示は、(ii)の遺伝子改変が、セーフハーバー座位又は(i)の遺伝子改変の部位に部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位での免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドの挿入である、組成物1において提供されるとおりの組成物を提供する。
【0170】
別の組成物、組成物6において、本開示は、(i)の遺伝子改変が、1つ以上のMHC-I及びMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の他の構成要素若しくは転写調節因子をコードする遺伝子の欠失であり;且つ(ii)の遺伝子改変が、(i)の遺伝子改変の部位に部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位での少なくとも1つの免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドの挿入である、組成物1において提供されるとおりの組成物を提供する。
【0171】
別の組成物、組成物7において、本開示は、1つ以上のMHC-I及びMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の他の構成要素若しくは転写調節因子をコードする少なくとも1つの遺伝子が、MHC-I遺伝子(例えば、HLA-A、HLA-B及びHLA-C)、MHC-II遺伝子(例えば、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、及びHLA-DR)、又はMHC-I若しくはMHC-IIの転写調節因子又はMHC-I複合体の他の構成要素(例えば、B2M、NLRC5、及びCIITA)をコードする遺伝子のうちの1つ以上である、組成物1、2、又は4~6のいずれか1つにおいて提供されるとおりの組成物を提供する。
【0172】
別の組成物、組成物8において、本開示は、1つ以上のMHC-I及びMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の他の構成要素若しくは転写調節因子をコードする少なくとも1つの遺伝子が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、B2M、又はCIITAのうちの1つ以上である、組成物1、2、又は4~6のいずれか1つにおいて提供されるとおりの組成物を提供する。
【0173】
別の組成物、組成物9において、本開示は、(i)が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、B2M、又はCIITAのうちの1つ以上内又は近傍での欠失である、組成物1又は2において提供されるとおりの組成物を提供する。
【0174】
別の組成物、組成物10において、本開示は、(i)が、HLA-A内若しくは近傍での欠失、HLA-B内若しくは近傍での欠失、HLA-C内若しくは近傍での欠失、又はB2M内若しくは近傍での欠失である、組成物9において提供されるとおりの組成物を提供する。
【0175】
別の組成物、組成物11において、本開示は、(i)が、HLA-A内若しくは近傍での欠失、HLA-B内若しくは近傍での欠失、HLA-C内若しくは近傍での欠失、又はCIITA内若しくは近傍での欠失である、組成物9において提供されるとおりの組成物を提供する。
【0176】
別の組成物、組成物12において、本開示は、免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドが、HLA-E、HLA-G、CTLA-4、CD47、又はPD-L1のうちの1つ以上をコードする1つ以上のポリヌクレオチドである、組成物1、2、又は4~11のいずれか1つにおいて提供されるとおりの組成物を提供する。
【0177】
別の組成物、組成物13において、本開示は、(i)が、B2M内又は近傍で欠失であり、且つ(ii)が、(i)における欠失に部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位でのPD-L1をコードするポリヌクレオチドの挿入である、組成物12において提供されるとおりの組成物を提供する。
【0178】
別の組成物、組成物14において、本開示は、(i)が、HLA-A内若しくは近傍での欠失、HLA-B内若しくは近傍での欠失、又はHLA-C内若しくは近傍での欠失であり、且つ(ii)が、(i)における欠失(例えば、HLA-A欠失)に部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位でのHLA-Gをコードするポリヌクレオチドの挿入である、組成物12において提供されるとおりの組成物を提供する。
【0179】
別の組成物、組成物15において、本開示は、(i)が、HLA-A内若しくは近傍での欠失、HLA-B内若しくは近傍での欠失、HLA-C内若しくは近傍での欠失、又はCIITA内若しくは近傍での欠失であり、且つ(ii)が、HLA-A内若しくは近傍における欠失に部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位でのHLA-Gをコードするポリヌクレオチドの挿入及びCIITA内若しくは近傍における欠失に部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位でのCD47をコードするポリヌクレオチドの挿入である、組成物12において提供されるとおりの組成物を提供する。
【0180】
別の組成物、組成物16において、本開示は、生存因子をコードする少なくとも1つの遺伝子が、ZNF143、TXNIP、FOXO1、JNK、又はMANFのうちの1つ以上をコードする1つ以上の遺伝子である、組成物1又は3~15のいずれか1つにおいて提供されるとおりの組成物を提供する。
【0181】
別の組成物、組成物17において、本開示は、未改変細胞に対して、生存因子をコードする遺伝子の発現を増加させるか又は減少させる遺伝子改変が、例えば、セーフハーバー座位での、MANFをコードするポリヌクレオチドの挿入である、組成物1又は3~16のいずれか1つにおいて提供されるとおりの組成物を提供する。
【0182】
別の組成物、組成物18において、本開示は、未改変細胞に対して、生存因子をコードする遺伝子の発現を増加させるか又は減少させる遺伝子改変が、未改変細胞に対して、ZNF143、TXNIP、FOXO1、又はJNK遺伝子の発現を減少させるか又は消失させるZNF143、TXNIP、FOXO1、又はJNK遺伝子内又は近傍での欠失である、組成物1又は3~16のいずれか1つにおいて提供されるとおりの組成物を提供する。
【0183】
別の組成物、組成物19において、本開示は、細胞がさらに、細胞のゲノムDNAに組み込まれない外来ポリヌクレオチドを含む、組成物1~18のいずれか1つにおいて提供されるとおりの組成物を提供する。
【0184】
別の組成物、組成物20において、本開示は、外来ポリヌクレオチドが、HLA-E、HLA-G、CTLA-4、CD47、MANF、及び/又はPD-L1をコードする、組成物19において提供されるとおりの組成物を提供する。
【0185】
別の組成物、組成物21において、本開示は、細胞がさらに、未改変細胞に対して、1つ以上の安全スイッチの発現の増加を含む、組成物1~20のいずれか1つにおいて提供されるとおりの組成物を提供する。
【0186】
別の組成物、組成物22において、本開示は、安全スイッチが、単純ヘルペスウイルス-1チミジンキナーゼ(HSV-tk)又は誘導性カスパーゼ-9である、組成物21において提供されるとおりの組成物を提供する。
【0187】
別の組成物、組成物23において、本開示は、1つ以上の安全スイッチの発現の増加が、安全スイッチタンパク質をコードするポリヌクレオチドの、例えば、セーフハーバー座位への遺伝子挿入に起因する、組成物21又は22において提供されるとおりの組成物を提供する。
【0188】
別の組成物、組成物24において、本開示は、セーフハーバー座位が、AAVS1(PPP1 R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、及びTTRからなる群から選択される、組成物5、17、又は23のいずれか1つにおいて提供されるとおりの組成物を提供する。
【0189】
別の組成物、組成物25において、本開示は、細胞がさらに、任意の追加の遺伝子の発現を減少させる追加の遺伝子改変を含む、組成物1~24のいずれか1つにおいて提供されるとおりの組成物を提供する。
【0190】
別の組成物、組成物26において、本開示は、遺伝子改変、遺伝子欠失、又は遺伝子挿入が、細胞にエンドヌクレアーゼ及びガイドRNA(gRNA)を送達することによって生成される、組成物1~25のいずれか1つにおいて提供されるとおりの組成物を提供する。
【0191】
別の組成物、組成物27において、本開示は、エンドヌクレアーゼが、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1及びCsx12としても知られる)、Cas100、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、若しくはCpf1エンドヌクレアーゼ;そのホモログ、その天然に存在する分子の組換え、そのコドン最適化、又はその改変バージョン、及びその組合せである、組成物26において提供されるとおりの組成物を提供する。
【0192】
別の組成物、組成物28において、本開示は、エンドヌクレアーゼが、Cas9、任意選択により、S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9、又はN末端SV40 NLS及びC末端SV40 NLSを含むそのバリアントである、組成物27において提供されるとおりの組成物を提供する。
【0193】
別の組成物、組成物29において、本開示は、前記gRNAと前記エンドヌクレアーゼの重量比が、1:1である、組成物26において提供されるとおりの組成物を提供する。
【0194】
別の組成物、組成物30において、本開示は、ポリヌクレオチドが、外来プロモーターを含む、組成物2、5、6、12~15、17、19、又は23のいずれか1つにおいて提供されるとおりの組成物を提供する。
【0195】
別の組成物、組成物31において、本開示は、外来プロモーターが、CMV、EFla、PGK、CAG、UBC、又は他の構成的、誘導性、時間特異的、組織特異的、若しくは細胞型特異的プロモーターである、組成物30において提供されるとおりの組成物を提供する。
【0196】
別の組成物、組成物32において、本開示は、外来プロモーターがCAGプロモーターである、組成物31において提供されるとおりの組成物を提供する。
【0197】
別の組成物、組成物33において、本開示は、細胞が、幹細胞(例えば、ヒト幹細胞)である、組成物1~32のいずれか1つにおいて提供されるとおりの組成物を提供する。
【0198】
別の組成物、組成物34において、本開示は、細胞が、胚性幹細胞(ESC)、成体幹細胞(ASC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、又は造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)である、組成物1~33のいずれか1つにおいて提供されるとおりの組成物を提供する。
【0199】
別の組成物、組成物35において、本開示は、細胞が、分化細胞である、組成物1~32のいずれか1つにおいて提供されるとおりの組成物を提供する。
【0200】
別の組成物、組成物36において、本開示は、細胞が、体細胞である、組成物1~32又は35のいずれか1つにおいて提供されるとおりの組成物を提供する。
【0201】
第1の方法、方法1において、本開示は、改変細胞を作製する方法であって、(i)1つ以上のMHC-I及びMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の他の構成要素若しくは転写調節因子をコードする少なくとも1つの遺伝子内又は近傍での少なくとも1つの遺伝子改変を導入すること;(ii)細胞において免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドの発現を増加させる少なくとも1つの遺伝子改変を導入すること;並びに(iii)ユニバーサルドナー細胞において生存因子をコードする少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させるか又は減少させる少なくとも1つの遺伝子改変を導入することを含む方法を提供する。
【0202】
別の方法、方法2において、本開示は、ユニバーサルドナー細胞を作製する方法であって、(i)1つ以上のMHC-I及びMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の他の構成要素若しくは転写調節因子をコードする少なくとも1つの遺伝子内又は近傍でゲノムDNAの少なくとも1つの領域の少なくとも1つの欠失を導入すること;並びに(ii)(i)の欠失の部位に部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位で免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドの少なくとも1つの挿入を導入することを含む方法を提供する。
【0203】
別の方法、方法3において、本開示は、ユニバーサルドナー細胞を作製する方法であって、生存因子をコードする少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させるか又は減少させる少なくとも1つの遺伝子改変を導入することを含む方法を提供する。
【0204】
別の方法、方法4において、本開示は、(i)の遺伝子改変が欠失である、方法1において提供されるとおりの方法を提供する。
【0205】
別の方法、方法5において、本開示は、(ii)の遺伝子改変が、セーフハーバー座位又は(i)の遺伝子改変の部位に部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位での免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドの挿入である、方法1において提供されるとおりの方法を提供する。
【0206】
別の方法、方法6において、本開示は、(i)の遺伝子改変が、1つ以上のMHC-I及びMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の他の構成要素若しくは転写調節因子をコードする遺伝子の欠失であり;且つ(ii)の遺伝子改変が、(i)の遺伝子改変の部位に部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位での少なくとも1つの免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドの挿入である、方法1において提供されるとおりの方法を提供する。
【0207】
別の方法、方法7において、本開示は、1つ以上のMHC-I及びMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の他の構成要素若しくは転写調節因子をコードする少なくとも1つの遺伝子が、MHC-I遺伝子(例えば、HLA-A、HLA-B及びHLA-C)、MHC-II遺伝子(例えば、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、及びHLA-DR)、又はMHC-I若しくはMHC-IIの転写調節因子(例えば、B2M、NLRC5、及びCIITA)をコードする遺伝子のうちの1つ以上である、方法1、2、又は4~6のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0208】
別の方法、方法8において、本開示は、1つ以上のMHC-I及びMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の他の構成要素若しくは転写調節因子をコードする少なくとも1つの遺伝子が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、B2M、又はCIITAのうちの1つ以上である、方法1、2、又は4~6のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0209】
別の方法、方法9において、本開示は、(i)が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、B2M、又はCIITAのうちの1つ以上内又は近傍での欠失である、方法1又は2において提供されるとおりの方法を提供する。
【0210】
別の方法、方法10において、本開示は、(i)が、HLA-A内又は近傍での欠失、HLA-B内又は近傍での欠失、HLA-C内又は近傍での欠失、及びB2M内又は近傍での欠失である、方法9において提供されるとおりの方法を提供する。
【0211】
別の方法、方法11において、本開示は、(i)が、HLA-A内又は近傍での欠失、HLA-B内又は近傍での欠失、HLA-C内又は近傍での欠失、及びCIITA内又は近傍での欠失である、方法9において提供されるとおりの方法を提供する。
【0212】
別の方法、方法12において、本開示は、免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドが、HLA-E、HLA-G、CTLA-4、CD47、又はPD-L1のうちの1つ以上をコードする1つ以上のポリヌクレオチドである、方法1、2、又は4~11のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0213】
別の方法、方法13において、本開示は、(i)が、B2M内又は近傍で欠失であり、且つ(ii)が、(i)における欠失に部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位でのPD-L1をコードするポリヌクレオチドの挿入である、方法12において提供されるとおりの方法を提供する。
【0214】
別の方法、方法14において、本開示は、(i)が、HLA-A内又は近傍での欠失、HLA-B内又は近傍での欠失、及びHLA-C内又は近傍での欠失であり、且つ(ii)が、(i)における欠失(例えば、HLA-A欠失)に部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位でのHLA-Gをコードするポリヌクレオチドの挿入である、方法12において提供されるとおりの方法を提供する。
【0215】
別の方法、方法15において、本開示は、(i)が、HLA-A内又は近傍での欠失、HLA-B内又は近傍での欠失、HLA-C内又は近傍での欠失、及びCIITA内又は近傍での欠失であり、且つ(ii)が、HLA-A内若しくは近傍における欠失に部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位でのHLA-Gをコードするポリヌクレオチドの挿入及びCIITA内若しくは近傍における欠失に部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位でのCD47をコードするポリヌクレオチドの挿入である、方法12において提供されるとおりの方法を提供する。
【0216】
別の方法、方法16において、本開示は、生存因子をコードする少なくとも1つの遺伝子が、ZNF143、TXNIP、FOXO1、JNK、又はMANFのうちの1つ以上をコードする1つ以上の遺伝子である、方法1又は3~15のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0217】
別の方法、方法17において、本開示は、生存因子をコードする遺伝子の発現を増加させるか又は減少させる遺伝子改変が、例えば、セーフハーバー座位での、MANFをコードするポリヌクレオチドの挿入である、方法1又は3~16のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0218】
別の方法、方法18において、本開示は、生存因子をコードする遺伝子の発現を増加させるか又は減少させる遺伝子改変が、未改変細胞に対して、ZNF143、TXNIP、FOXO1、又はJNK遺伝子の発現を減少させるか又は消失させるZNF143、TXNIP、FOXO1、又はJNK遺伝子内又は近傍での欠失である、方法1又は3~16のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0219】
別の方法、方法19において、本開示は、細胞が、幹細胞(例えば、ヒト幹細胞)である、方法1~18のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0220】
別の方法、方法20において、本開示は、細胞が、胚性幹細胞(ESC)、成体幹細胞(ASC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、又は造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)である、方法1~19のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0221】
別の方法、方法21において、本開示は、細胞が、分化細胞である、方法1~18のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0222】
別の方法、方法22において、本開示は、細胞が、体細胞である、方法1~18又は21のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0223】
別の方法、方法23において、本開示は、方法がさらに、細胞のゲノムDNAに組み込まれない細胞に外来ポリヌクレオチドを導入することを含む、方法1~22のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0224】
別の方法、方法24において、本開示は、外来ポリヌクレオチドが、HLA-E、HLA-G、CTLA-4、CD47、MANF、及び/又はPD-L1をコードする、方法23において提供されるとおりの方法を提供する。
【0225】
別の方法、方法25において、本開示は、方法がさらに、未改変細胞に対して、1つ以上の安全スイッチの発現を増加させることを含む、方法1~24のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0226】
別の方法、方法26において、本開示は、安全スイッチが、単純ヘルペスウイルス-1チミジンキナーゼ(HSV-tk)又は誘導性カスパーゼ-9である、方法25において提供されるとおりの方法を提供する。
【0227】
別の方法、方法27において、本開示は、1つ以上の安全スイッチの発現の増加が、安全スイッチをコードするポリヌクレオチドの、例えば、セーフハーバー座位への遺伝子挿入に起因する、方法25又は26において提供されるとおりの方法を提供する。
【0228】
別の方法、方法28において、本開示は、セーフハーバー座位が、AAVS1(PPP1 R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、及びTTRからなる群から選択される、方法5、17、又は27のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0229】
別の方法、方法29において、本開示は、方法がさらに、任意の追加の遺伝子の発現を減少させる追加の遺伝子改変を導入することを含む、方法1~28のいずれか1つにおいて提供されるとおりの組成物を提供する。
【0230】
別の方法、方法30において、本開示は、遺伝子改変、欠失、又は挿入が、細胞にエンドヌクレアーゼ及び少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)を送達することによって生成される、方法1~29のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0231】
別の方法、方法31において、本開示は、エンドヌクレアーゼが、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1及びCsx12としても知られる)、Cas100、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、若しくはCpf1エンドヌクレアーゼ;そのホモログ、その天然に存在する分子の組換え、そのコドン最適化、又はその改変バージョン、及びその組合せである、方法30において提供されるとおりの方法を提供する。
【0232】
別の方法、方法32において、本開示は、エンドヌクレアーゼが、Cas9、任意選択により、S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9、又はN末端SV40 NLS及びC末端SV40 NLSを含むそのバリアントである、方法31において提供されるとおりの方法を提供する。
【0233】
別の方法、方法33において、本開示は、前記gRNAと前記エンドヌクレアーゼの重量比が、1:1である、方法30において提供されるとおりの方法を提供する。
【0234】
別の方法、方法34において、本開示は、ポリヌクレオチドが、外来プロモーターを含む、方法2、5、6、12~15、17、23、25、又は27のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0235】
別の方法、方法35において、本開示は、外来プロモーターが、CMV、EFla、PGK、CAG、UBC、又は他の構成的、誘導性、時間特異的、組織特異的、若しくは細胞型特異的プロモーターである、方法34において提供されるとおりの方法を提供する。
【0236】
別の方法、方法36において、本開示は、外来プロモーターがCAGプロモーターである、方法35において提供されるとおりの方法を提供する。
【0237】
別の方法、方法37において、本開示は、組成物1~36のいずれか1つにおいて提供されるとおりの細胞の組成物又は方法1~36のいずれか1つによって作製される複数の細胞を含む組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0238】
別の方法、方法38において、本開示は、(i)組成物1~34のいずれか1つにおいて提供されるとおりの細胞の組成物を得ること;(ii)細胞を系列限定細胞又は完全に分化した細胞に分化させること;及び(iii)系列限定細胞又は完全に分化した細胞を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【0239】
別の方法、方法39において、本開示は、対象が、疾患を有するか、有することが疑われるか、又はそのリスクがあるヒトである、方法37又は38において提供されるとおりの方法を提供する。
【0240】
別の方法、方法40において、本開示は、疾患が遺伝的に受け継がれる疾患である、方法39において提供されるとおりの方法を提供する。
【0241】
別の方法、方法41において、本開示は、細胞がさらに、疾患と関連する遺伝子又はタンパク質の発現を減少させる遺伝子改変を含む、方法39又は40において提供されるとおりの方法を提供する。
【0242】
別の方法、方法42において、本開示は、遺伝子改変が、疾患又は疾患の症状を治療することができる、方法39~41のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0243】
別の方法、方法43において、本開示は、細胞が、対象以外の供給源から得られる、方法37~42のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0244】
別の方法、方法44において、本開示は、ユニバーサルドナー細胞を作製する方法であって、(i)MHC-I若しくはMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の構成要素若しくは転写調節因子のうちの1つ以上をコードする少なくとも1つの遺伝子内又は近傍の部位で細胞のゲノム中の少なくとも1つの塩基対の欠失及び/又は挿入を導入すること;並びに(ii)細胞のゲノムにおいて(i)の部位に部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位で免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドの挿入を導入することによって、細胞を遺伝子改変し、それによりユニバーサルドナー細胞を作製することを含む方法を提供する。
【0245】
別の方法、方法45において、本開示は、ユニバーサルドナー細胞を作製する方法であって、(i)MHC-I若しくはMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の構成要素若しくは転写調節因子のうちの1つ以上をコードする少なくとも1つの遺伝子内又は近傍の部位で細胞のゲノム中の少なくとも1つの塩基対の欠失及び/又は挿入を導入すること;並びに(ii)細胞のゲノムにおいてセーフハーバー座位に免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドの挿入を導入することによって、細胞を遺伝子改変し、それによりユニバーサルドナー細胞を作製することを含む方法を提供する。
【0246】
別の方法、方法46において、本開示は、ユニバーサルドナー細胞が、未改変細胞と比較して、免疫回避及び/又は細胞生存の増加を有する、方法44又は45において提供されるとおりの方法を提供する。
【0247】
別の方法、方法47において、本開示は、1つ以上のMHC-I若しくはMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の構成要素若しくは転写調節因子をコードする少なくとも1つの遺伝子が、HLA-A、HLA-B、若しくはHLA-Cから選択されるMHC-I遺伝子、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、若しくはHLA-DRから選択されるMHC-II遺伝子、又はB2M、NLRC5、CIITA、RFX5、RFXAP、若しくはRFXANKから選択される遺伝子である、方法44~46のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0248】
別の方法、方法48において、本開示は、免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドが、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CTLA-4、又はCD47のうちの1つ以上をコードする1つ以上のポリヌクレオチドである、方法44~47のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0249】
別の方法、方法49において、本開示は、免疫寛容原性因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドが、外来プロモーターに作動可能に連結される、方法44~48のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0250】
別の方法、方法50において、本開示は、外来プロモーターが、構成的、誘導性、時間特異的、組織特異的、若しくは細胞型特異的プロモーターであり、構成的プロモーターがCMV、EFla、PGK、CAG、又はUBCプロモーターである、方法49において提供されるとおりの方法を提供する。
【0251】
別の方法、方法51において、本開示は、(i)の欠失及び/又は挿入が、B2M内又は近傍にあり、且つ(ii)の挿入が、PD-L1又はHLA-Eをコードするポリヌクレオチドである、方法44~50のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0252】
別の方法、方法52において、本開示は、方法がさらに、未改変細胞に対して、少なくとも1つの生存因子の発現を増加させるか又は減少させる少なくとも1つの遺伝子改変を導入することを含む、方法44~51のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0253】
別の方法、方法53において、本開示は、少なくとも1つの生存因子の発現を増加させるか又は減少させる少なくとも1つの遺伝子改変が、未改変細胞に対してMANFの発現を増加させる、MANFをコードするポリヌクレオチドの挿入;又は未改変細胞に対してZNF143、TXNIP、FOXO1、若しくはJNKの発現を減少させるか又は消失させる、ZNF143、TXNIP、FOXO1、若しくはJNKをコードする遺伝子内又は近傍での少なくとも1つの塩基対の欠失及び/若しくは挿入である、方法52において提供されるとおりの方法を提供する。
【0254】
別の方法、方法54において、本開示は、MANFをコードするポリヌクレオチドが、セーフハーバー座位、又はMHC-I、MHC-II、若しくはMHC-I若しくはMHC-IIの転写調節因子に属する遺伝子に挿入される、方法53において提供されるとおりの方法を提供する。
【0255】
別の方法、方法55において、本開示は、遺伝子改変が、少なくとも1つのRNA誘導型エンドヌクレアーゼ系を細胞に送達することを含む、方法44~54のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0256】
別の方法、方法56において、本開示は、少なくとも1つのRNA誘導型エンドヌクレアーゼ系が、CRISPRヌクレアーゼ及びガイドRNAを含むCRISPR系である、方法55において提供されるとおりの方法を提供する。
【0257】
別の方法、方法57において、本開示は、CRISPRヌクレアーゼが、Cas9、Cpf1、そのホモログ、その改変バージョン、そのコドン最適化バージョン、又はその任意の組合せである、方法56において提供されるとおりの方法を提供する。
【0258】
別の方法、方法58において、本開示は、CRISPRヌクレアーゼが、S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9である、方法56又は57において提供されるとおりの方法を提供する。
【0259】
別の方法、方法59において、本開示は、CRISPRヌクレアーゼが、N末端核移行シグナル(NLS)及び/又はC末端NLSを含む、方法56~58のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0260】
別の方法、方法60において、本開示は、CRISPRヌクレアーゼ及びガイドRNAが、1:1の重量比で存在する、方法56~59のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0261】
別の方法、方法61において、本開示は、(i)の欠失及び/又は挿入が、B2M遺伝子座位内又は近傍にあり、且つ(ii)の挿入が、PD-L1をコードするポリヌクレオチドである、方法44又は46~60のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0262】
別の方法、方法62において、本開示は、(i)及び(ii)のために使用されるガイドRNAが、配列番号1~3又は35~44の少なくとも1つを含むヌクレオチド配列を含む、方法61において提供されるとおりの方法を提供する。
【0263】
別の方法、方法63において、本開示は、PD-L1をコードするポリヌクレオチドが、(a)(i)における部位の左に位置する領域と配列相同性を有するヌクレオチド配列及び(b)(i)における部位の右に位置する領域と配列相同性を有するヌクレオチド配列と隣接する、方法61又は62において提供されるとおりの方法を提供する。
【0264】
別の方法、方法64において、本開示は、PD-L1をコードするポリヌクレオチドが、(i)における部位の50塩基対内でB2M遺伝子座位に挿入される、方法63において提供されるとおりの方法を提供する。
【0265】
別の方法、方法65において、本開示は、(a)が配列番号13のヌクレオチド配列から本質的になり、且つ(b)が配列番号19のヌクレオチド配列から本質的になる、方法63又は64において提供されるとおりの方法を提供する。
【0266】
別の方法、方法66において、本開示は、PD-L1をコードするポリヌクレオチドが、外来プロモーターに作動可能に連結され、任意選択により、外来プロモーターが、CAGプロモーターである、方法61~65のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0267】
別の方法、方法67において、本開示は、細胞が哺乳動物細胞であり、任意選択により、細胞がヒト細胞である、方法44~66のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0268】
別の方法、方法68において、本開示は、細胞が、幹細胞である、方法44~67のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0269】
別の方法、方法69において、本開示は、細胞が、多能性幹細胞(PSC)、胚性幹細胞(ESC)、成体幹細胞(ASC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、又は造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)である、方法44~68のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0270】
別の方法、方法70において、本開示は、細胞が、分化細胞又は体細胞である、方法44~69のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0271】
別の方法、方法71において、本開示は、ユニバーサルドナー細胞が、系列限定前駆細胞又は完全に分化した体細胞に分化することができる、方法44~69のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0272】
別の方法、方法72において、本開示は、系列限定前駆細胞が、膵臓内胚葉前駆細胞、膵臓内分泌性前駆細胞、間葉系前駆細胞、筋肉前駆細胞、芽球細胞、又は神経前駆細胞である、方法71において提供されるとおりの方法を提供する。
【0273】
別の方法、方法73において、本開示は、完全に分化した体細胞が、膵ベータ細胞などの内分泌性細胞、上皮細胞、内胚葉細胞、マクロファージ、肝細胞、脂肪細胞、腎細胞、血液細胞、又は免疫系細胞である、方法71において提供されるとおりの方法を提供する。
【0274】
別の組成物、組成物37において、本開示は、方法44~73のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法によって作製される複数のユニバーサルドナー細胞を含む組成物を提供する。
【0275】
別の組成物、組成物38において、本開示は、複数のユニバーサルドナー細胞が、細胞が分化を経るのに十分な時間及び条件下で維持され得る、組成物37において提供されるとおりの方法を提供する。
【0276】
別の組成物、組成物39において、本開示は、(i)1つ以上のMHC-1及びMHC-IIヒト白血球抗原又はMHC-I若しくはMHC-II複合体の構成要素若しくは転写調節因子をコードする少なくとも1つの遺伝子内又は近傍での少なくとも1つの欠失;並びに(ii)(i)の遺伝子欠失の部位に部分的に重複するか、完全に重複するか、又はその内部に含有される部位での少なくとも1つの免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドの少なくとも1つの挿入を含む細胞を含む組成物を提供する。
【0277】
別の方法、方法74において、本開示は、対象に組成物37又は38の複数のユニバーサルドナー細胞を投与することを含む方法を提供する。
【0278】
別の方法、方法75において、本開示は、必要とする対象を治療するための方法であって、(i)系列限定前駆細胞又は完全に分化した体細胞への分化後に組成物37又は38の複数のユニバーサルドナー細胞を得ること又は得たこと;及び(ii)対象に系列限定前駆細胞又は完全に分化した体細胞を投与することを含む方法を提供する。
【0279】
別の方法、方法76において、本開示は、必要とする対象への投与のための細胞を得る方法であって、(i)組成物37又は38のユニバーサルドナー細胞を得ること又は得たこと;及び(ii)ユニバーサルドナー細胞を細胞が系列限定前駆細胞又は完全に分化した体細胞に分化するのに十分な時間及び条件下で維持することを含む方法を提供する。
【0280】
別の方法、方法77において、本開示は、系列限定前駆細胞が、膵臓内胚葉前駆細胞、膵臓内分泌性前駆細胞、間葉系前駆細胞、筋肉前駆細胞、芽球細胞、又は神経前駆細胞である、方法75又は76において提供されるとおりの方法を提供する。
【0281】
別の方法、方法78において、本開示は、完全に分化した体細胞が、膵ベータ細胞などの内分泌性細胞、上皮細胞、内胚葉細胞、マクロファージ、肝細胞、脂肪細胞、腎細胞、血液細胞、又は免疫系細胞である、方法75又は76において提供されるとおりの方法を提供する。
【0282】
別の方法、方法79において、本開示は、対象が、疾患を有するか、有することが疑われるか、又はそのリスクがあるヒトである、方法74~78のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0283】
別の方法、方法80において、本開示は、疾患が遺伝的に受け継がれる疾患である、方法79において提供されるとおりの方法を提供する。
【0284】
別の方法、方法81において、本開示は、ユニバーサルドナー細胞を作製するための方法であって、多能性幹細胞(PSC)に(a)RNA誘導型ヌクレアーゼ;(b)ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)遺伝子座位における標的部位を標的化するガイドRNA(gRNA);並びに(c)(i)B2M遺伝子座位における標的部位の左に位置する領域と相同であるヌクレオチド配列、(ii)免疫寛容原性因子をコードするヌクレオチド配列、及び(iii)B2M遺伝子座位における標的部位の右に位置する領域と相同であるヌクレオチド配列を含む核酸を含むベクターを送達することを含み、B2M遺伝子座位が標的部位で切断され、且つ核酸が、標的部位の50塩基対以内でB2M遺伝子座位に挿入され、それによりユニバーサルドナー細胞を作製し、ユニバーサルドナー細胞が、B2M遺伝子座位に挿入される核酸を含まないPSCと比較して、免疫回避及び/又は細胞生存の増加を有する方法を提供する。
【0285】
別の方法、方法82において、本開示は、gRNAが、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3から選択されるヌクレオチド配列を含む、方法81において提供されるとおりの方法を提供する。
【0286】
別の方法、方法83において、本開示は、(i)が配列番号13のヌクレオチド配列から本質的になり、且つ(iii)が配列番号19のヌクレオチド配列から本質的になる、方法81又は82において提供されるとおりの方法を提供する。
【0287】
別の方法、方法84において、本開示は、免疫寛容原性因子が、プログラム死リガンド1(PD-L1)又はヒト白血球抗原E(HLA-E)である、方法81~83のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0288】
別の方法、方法85において、本開示は、免疫寛容原性因子をコードするヌクレオチド配列が、外来プロモーターに作動可能に連結される、方法81~84のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0289】
別の方法、方法86において、本開示は、外来プロモーターが、構成的であるか、細胞型特異的であるか、組織型特異的であるか、又は時間的に調節される、方法85において提供されるとおりの方法を提供する。
【0290】
別の方法、方法87において、本開示は、外来プロモーターがCAGプロモーターである、方法85又は86において提供されるとおりの方法を提供する。
【0291】
別の方法、方法88において、本開示は、ベクターが、プラスミドベクターである、方法81~87のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0292】
別の方法、方法89において、本開示は、プラスミドベクターが、配列番号33又は配列番号34のヌクレオチド配列を含む、方法88において提供されるとおりの方法を提供する。
【0293】
別の方法、方法90において、本開示は、RNA誘導型ヌクレアーゼが、Cas9ヌクレアーゼである、方法81~89のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0294】
別の方法、方法91において、本開示は、Cas9ヌクレアーゼが、少なくとも1つの核移行シグナル(NLS)に連結される、方法90において提供されるとおりの方法を提供する。
【0295】
別の方法、方法92において、本開示は、Cas9ヌクレアーゼが、S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9である、方法90又は91において提供されるとおりの方法を提供する。
【0296】
別の方法、方法93において、本開示は、PSCが、胚性幹細胞(ESC)、成体幹細胞(ASC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、又は造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)である、方法81~92のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0297】
別の方法、方法94において、本開示は、PSCが、ヒトPSCである、方法81~93のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0298】
別の方法、方法95において、本開示は、ユニバーサルドナー細胞を作製するための方法であって、多能性幹細胞(PSC)に(a)RNA誘導型ヌクレアーゼ;(b)ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)遺伝子座位における標的部位を標的化するガイドRNA(gRNA)(gRNAは、配列番号2のヌクレオチド配列を含む);並びに(c)(i)配列番号13から本質的になるB2M遺伝子座位における標的部位の左に位置する領域と相同であるヌクレオチド配列、(ii)免疫寛容原性因子をコードするヌクレオチド配列、及び(iii)配列番号19から本質的になるB2M遺伝子座位における標的部位の右に位置する領域と相同であるヌクレオチド配列を含む核酸を含むベクターを送達することを含み、B2M遺伝子座位が標的部位で切断され、且つ核酸が、標的部位の50塩基対以内でB2M遺伝子座位に挿入され、それによりユニバーサルドナー細胞を作製し、ユニバーサルドナー細胞が、B2M遺伝子座位に挿入される核酸を含まないPSCと比較して、免疫回避及び/又は細胞生存の増加を有する方法を提供する。
【0299】
別の方法、方法96において、本開示は、免疫寛容原性因子が、プログラム死リガンド1(PD-L1)又はヒト白血球抗原E(HLA-E)である、方法95において提供されるとおりの方法を提供する。
【0300】
別の方法、方法97において、本開示は、免疫寛容原性因子をコードするヌクレオチド配列が、外来プロモーターに作動可能に連結される、方法95又は96において提供されるとおりの方法を提供する。
【0301】
別の方法、方法98において、本開示は、外来プロモーターが、構成的であるか、細胞型特異的であるか、組織型特異的であるか、又は時間的に調節される、方法97において提供されるとおりの方法を提供する。
【0302】
別の方法、方法99において、本開示は、外来プロモーターがCAGプロモーターである、方法97又は98において提供されるとおりの方法を提供する。
【0303】
別の方法、方法100において、本開示は、ベクターが、プラスミドベクターである、方法95~99のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0304】
別の方法、方法101において、本開示は、プラスミドベクターが、配列番号33又は配列番号34のヌクレオチド配列を含む、方法100において提供されるとおりの方法を提供する。
【0305】
別の方法、方法102において、本開示は、RNA誘導型ヌクレアーゼが、Cas9ヌクレアーゼである、方法95~101のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0306】
別の方法、方法103において、本開示は、Cas9ヌクレアーゼが、少なくとも1つの核移行シグナル(NLS)に連結される、方法102において提供されるとおりの方法を提供する。
【0307】
別の方法、方法104において、本開示は、Cas9ヌクレアーゼが、S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9である、方法102又は103において提供されるとおりの方法を提供する。
【0308】
別の方法、方法105において、本開示は、PSCが、胚性幹細胞(ESC)、成体幹細胞(ASC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、又は造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)である、方法95~104のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【0309】
別の方法、方法106において、本開示は、PSCが、ヒトPSCである、方法95~105のいずれか1つにおいて提供されるとおりの方法を提供する。
【実施例
【0310】
VII.実施例
下の実施例は、本開示に従うユニバーサルドナー細胞の作製及び特徴付けを記載する。表1は免疫寛容原性因子を列挙し、表2は、前記細胞において遺伝子改変され得る生存因子を列挙する。図1A~1Cは、免疫回避のために利用され得る様々な遺伝子編集戦略を示す。
【0311】
【表1】
【0312】
【表2】
【0313】
実施例1:B2MノックアウトIPSCの作製
B2MのためのガイドRNA(gRNA)選択。B2M DNA標的領域を編集できる非常に多様なgRNAを同定するため、インビトロで転写された(IVT)gRNA選別が実施された。B2M標的化gRNAは、B2M遺伝子のエクソン1を標的化するように設計された。B2Mゲノム配列は、gRNA設計ソフトウェアを使用して分析のために提示された。得られたgRNAのリストは、配列(ゲノム中のどこか他の位置と完全な適合を有しないgRNAのみが選別された)の特有性及び最小限の予測されるオフターゲットに基づいて、約200個のgRNAのリストに絞られた。gRNAのこのセットは、インビトロで転写され、MessengerMaxを使用してCas9を構成的に発現するHEK293T細胞にトランスフェクトされた。細胞はトランスフェクションの48時間後に収集され、ゲノムDNAが単離され、切断効率は、TIDE分析を使用して評価された。高いインデル及び低い予測されるオフターゲット作用を有するガイドRNAが、さらなる分析のために選択された。表3は、選択されたB2M gRNAの標的配列を提示する。
【0314】
【表3】
【0315】
IPSCにおけるB2M gRNAの選別。3つのgRNA(B2M-1、B2M-2、及びB2M-3)を使用して、iPSCを編集した。これらのgRNAの各々の標的配列の位置は、図2において図示される。IPSC(TC-1133細胞株、RUDCR、NJ)細胞は、Lonza 4Dヌクレオフェクター並びに125pmol Cas9及び375pmol gRNAの最終濃度にて3:1(gRNA:Cas9)のモル比でCas9(Aldevron、cat#9212-5MG)及びgRNA(Synthego)のRNP混合物を伴うP3初代細胞キット(Lonza、cat#V4XP-3024)を使用してヌクレオフェクションされた。細胞は、Accutase(Stempro、cat#A1110501)を使用して解離され、続いてDMEM/F12培地(Gibco、cat#11320033)中で再懸濁され、Cellometer(Nexcellon)を使用して計数され、遠心分離された。細胞は、2×103細胞/μLの濃度で補給物1(4.5:1比)を伴うP3緩衝液中において再懸濁された。合計で2×105個の細胞が、RNP複合体と合わせられ、ヌクレオフェクションキュベット(Lonzaキット)に移され、プログラムCA-137を使用してヌクレオフェクションされた。各キュベットに関して、CloneR(Stem Cell Technologies、cat#05888)(1:10比)を伴う250μLのStemFlex培地(Gibco、cat#A3349401)を使用して、ヌクレオフェクションされた細胞を再懸濁した。この細胞懸濁液を、CloneRを伴う追加の250μLのStemFlexを有するビトロネクチン(Gibco、cat#A14700)コーティングされた24ウェルプレートの2つのウェルに分割した。細胞は、低酸素インキュベーター(37℃、4% O2、8% CO2)中で48時間回復された。48時間後、ゲノムDNAを、gDNA単離キット(Qiagen、cat#69506)を使用してそれぞれの実用上の複製物のうちの1つのウェルから収集した。
【0316】
単離されたgDNAをPCRにかけて、インデル頻度を決定した。関連している領域のためのPCRは、B2MプライマーとともにPlatinum Taq Supermix(Invitrogen、cat#125320176及びCat#11495017)を使用して実施された。プライマー配列は表4において提供され、gRNA標的部位に対するB2Mプライマーの位置は、図2において示される。サイクル条件は、表5において提供される。
【0317】
【表4】
【0318】
【表5】
【0319】
得られた増幅産物をPCR精製及びサンガー配列決定にかけた。サンガー配列決定の結果は、ガイド配列とともにTsunamiに入力された。インデルのパーセンテージ及び同一性は、ソフトウェアによって計算された(図3A)。B2M-1、B2M-2、及びB2M-3 gRNAは、それぞれ2.5%±1.1%、87.6%+14.1%、及び63.9%+0.9%のインデル頻度を有した(n=2)。図3B及び3Cは、B2M-2(図3B)及びB2M-3 gRNA(図3C)についてのインデル結果の分布を示す。
【0320】
複製ウェル中の細胞は、コンフルエントまで維持され、順次より大きい容器へと継代された。大部分の集団は、維持のためにAdvanced 20/10/10培地(表6を参照のこと)及びLaminin-521(Stem Cell Technologies、cat#77004)に移行された。
【0321】
【表6】
【0322】
B2M KO IPSクローン作製及び特徴付け。配列が検証された一括編集された集団(図4A)は、FACS-ARIA(BD Bioscience)を使用してビトロネクチンでコーティングされた96ウェルプレート中にソーティングされた単一細胞であり、CloneRを伴うStemFlex中に回収された。簡潔に述べると、細胞を、Accutaseを使用して維持フラスコから解離し、CloneRを伴うStemFlex中で再懸濁した。次に、細胞を、Cellometerを使用して計数し、1×105/mLに希釈した。2mLのこれを、セルストレーナー(Falcon、#352235)に通してFACSチューブ中へと濾過し、オペレーターへと供給し、単一の細胞を個別のウェルにソーティングした。播種された単一細胞を、コロニーが単一細胞として再播種されるほど大きくなるまで、1日おきに培地を交換しながら低酸素インキュベーター(37℃、8%CO2、4%O2)中で増殖させた。コンフルエントになったとき、試料を、維持及びgDNA抽出のために分割した(上を参照のこと)。クローンの同一性は、PCR及びサンガー配列決定により確認された(詳細については下を参照のこと)。表7は、切断部位周囲の選択クローンの配列を提示する(欠失及び/又は挿入された配列は、太字で示される)。
【0323】
【表7】
【0324】
クローン配列は、インデル同一性及びホモ又はヘテロ接合性を決定するためにSnapgeneソフトウェアにおいて整列させられた。図4Bにおいて示されるとおり、8個のクローンがB2M KOに関してホモ接合性であり、7個のクローンがB2M KOに関してヘテロ接合性であった。所望の編集を有するホモ接合性クローンを増殖させ、配列決定及びフローサイトメトリーによりさらに検証した。最初に、クローンは、ビトロネクチンでコーティングされたプレート上のStemFlex培地中で維持され、続いて最終的に、Advanced 20/10/10培地及びLaminin-521でコーティングされた容器に移された。
【0325】
細胞はさらに、Advanced 20/10/10とともにLaminin-521でコーティングされたフラスコ上で維持された。編集されたクローンは、B2M領域のPCR及びサンガー配列決定によりインデル同一性について検証された。ノックアウトは、B2M及びHLA-Aについてはフローサイトメトリー(利用された抗体のリストについては表8及び9を参照のこと)及び標準的なTaqmanプロトコル(Taqman FastAdvanced Mastermix、ThermoFisher、cat#4444556)を使用するB2M発現のTaqman qPCR分析により検証された。3つのB2M KOクローン及び野生型(未改変)細胞に関するB2M発現のレベルは、図5において提示される。試験された3つ全てのKOクローンは、野生型細胞に対してB2MのmRNA発現の減少を示した。
【0326】
【表8】
【0327】
【表9】
【0328】
RNA抽出は、製造業者の指示書に従ってリボヌクレアーゼフリーデオキシリボヌクレアーゼを有するQiagen RNeasyキットを使用して実施された(Qiagen、cat#74104及び79254)。cDNA合成は、製造業者の指示書に従ってRT-qPCRのためのAdvanced iScript cDNA合成キット(BioRad、cat#1725037)を使用して実施された。クローンの核型状態は、核型サービス(ThermoFisher)並びに59℃のアニーリング温度及び基準アッセイとしてのRPP30を用いて製造業者の指示書及びプローブのためのddPCRスーパーミックス(dUTPなし)(BioRad、cat#1863024;表10におけるプライマー)を使用するddPCRによる既知の核型異常BCL2L1の追跡によって評価された。
【0329】
【表10】
【0330】
得られた増幅産物は、プレキャスト2%アガロースゲル(ThermoFisher、cat#G501802)上でゲルにより確認され、PCR精製及びサンガー配列決定のために提示された。得られた配列決定ファイルは、gRNA配列並びにインデル同一性及びパーセンテージを決定するための制御配列ファイルとともにTsunamiソフトウェアに入力された。
【0331】
クローンはまた、そのフローサイトメトリーを通して、インターフェロン-ガンマ処理(25ng/mL、R&D Systems、285-IF)の有無に関わらず、B2M及びMHCクラスI抗原(HLA-A、B、C)の発現について陰性であることが確認された。図6A~6Dを参照されたい。
【0332】
クローンは、多能性細胞表面マーカーのためのフローサイトメトリーにより多能性を保持することが確認された(図7A~7D)。多能性の追加の確認は、Taqman Scorecard(ThermoFisher、cat#A15872)、Thermo Pluritestサービス及び三血球系分化を含んだ(完全なプロトコルについては下を参照のこと)。
【0333】
細胞は、解離され、上のとおりに計数された後、遠心分離され、2μMのY-27632(Tocris、cat#1245)を含むAdvanced 20/10/10培地に1x106/mLまで再懸濁された。次に、再懸濁された細胞は、40μMフィルター(Fisherbrand、cat#22363547)に通して濾過され、5mLの懸濁液は、超低接着6ウェルディッシュ(Corning、cat#3471)の単一のウェル中に播種された。次に、細胞は、オービタルシェーカー上に98RPMで一晩置かれて、凝集体を形成した。16時間後、使用済みの培地は、凝集体を回収するためにプレートを注意深く回旋することによって各ウェルから除去された。4mLの新鮮なAdvanced 20/10/10が加えられた。
【0334】
さらに24時間後、細胞は分化された。最初に、凝集体を50mLのコニカルチューブに回収し、1000RPMで1分間遠心分離して凝集体を沈殿させた。培地を吸引し、凝集体をDMEM/F12で洗浄した。凝集体を遠心分離により再度回収し、4mLのそれぞれの分化培地中で懸濁させた後、ディッシュ及び振盪機に戻した。全ての分化は、以下の基本培地を使用した:480mL IMDM +Glutamax(Gibco、cat#31980030)、480mL F12+Glutamax(Gibco、cat#31765035)、10mLの非必須アミノ酸(Gibco、cat#11140076)、5mLの20% BSA(Sigma、cat#A7638-5G)、2mL 既知組成の脂質(Gibco、cat#11905031)、1mLの200mMアスコルビン酸(Sigma、cat#A4403-100MG)、1mLの10mg/mLホロ-トランスフェリン(Sigma、cat#T0665)、及び100μLの140μg/ml亜セレン酸ナトリウム(Sigma、cat#S5261)。細胞を外胚葉細胞に分化させるために、4mg/mLのインスリン(Gibco、cat#12585014)、2μMのA83-01、2μMのドルソモルフィン(Peprotech、cat#8666430)及び2μMのPNU-74654の最終濃度を2日間使用した。細胞を中胚葉細胞に分化させるために、1μg/mLのインスリン、0.1μMのPIK-90、3μMのCHIR99021(Peprotech、cat#2520691)及び0.5μMのLDN193189(Peprotech、cat#1062443)の最終濃度を2日間使用した。1日目の内胚葉分化のために、0.2μg/mLのインスリン、0.1μMのPIK-90、100ng/mLのアクチビン-A(Peprotech、cat#120-00)、2μMのCHIR00021及び20ng/mLのFGF塩基性(Peprotech、cat101-18b)の最終濃度を使用した。内胚葉のための分化の追加の2日間は、0.2μg/mLのインスリン、0.1μMのPIK-90、100ng/mLのアクチビンA及び0.25μMのLDN193189で実施された。培地は、全ての分化に関して毎日変えられた。全てが、3日目にTaqman Scorecardを使用してRNA分析のために回収された。
【0335】
実施例2:細胞維持及び増殖.
hESC/hiPSCの維持。ヒト胚性幹細胞(hESC)株CyT49の細胞は、Schulz et al.(2012)PLoS ONE 7(5):e37004において記載されるとおりに維持され、培養され、継代され、増殖され、且つ播種された。CyT49細胞は、ACCUTASE(登録商標)(Stemcell Technologies 07920又は等価物)を使用して解離された。
【0336】
TC1133細胞株(Lonza)などのヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)は、BIOLAMININ 521 CTG(BioLamina Cat#CT521)でコーティングされた組織培養プレート上でStemFlex Complete(Life Technologies、A3349401)中において維持された。プレートは、DPBS中のBIOLAMININ、カルシウム、マグネシウム(Life Technologies、14040133)の1:10又は1:20希釈物により37℃で2時間予めコーティングされた。細胞はStemFlex培地を毎日供給された。細胞の継代に関して、CyT49のためのものと同じ細胞密度が使用された。単一細胞として細胞を播種するために、細胞は、BIOLAMININでコーティングされたプレート上でStemFlex中において1% RevitaCell(商標)補給物(100×)(Thermofisher Cat#A2644501)とともに播種された。
【0337】
hPSCの単一細胞クローニング。単一細胞クローニングのために、hPSC(hESC又はhiPSC)は、ACCUTASE(登録商標)による解離の3~4時間前にRevitacell(1×Revitacellの最終濃度)とともにStemFlex Completeを供給された。解離の後、細胞は、BIOLAMININでコーティングされた96ウェル組織培養プレートのウェル当たり単一細胞としてソーティングされた。WOLF FACSソーター(Nanocellect)を使用して、単一細胞をウェルにソーティングした。プレートは、Revitacellとともに100~200μLのStemFlex Completeで予め充填された。細胞播種の3日後、細胞は、新鮮なStemFlexを供給され、100~200μLの培地が1日おきに供給され続けた。増殖の10日後、細胞は、12~14日目までStemFlexを毎日供給された。この時点で、プレートはACCUTASE(登録商標)で解離され、回収された細胞懸濁液は、1:2に分割され、半分は維持のために新しい96ウェルプレートに入れられ、半分はDNA抽出溶液QuickExtract(商標)DNA抽出溶液(Lucigen)に入れられた。DNA抽出の後、PCRを実施して、標的化されたDNA座位での所望の遺伝子編集の有無を評価した。サンガー配列決定を使用して所望の編集を検証した。
【0338】
単一細胞に由来するhPSCクローンの増殖。CyT49に関して、順調に標的化されたクローンは、純粋な10% XF KSR A10H10培地を含む24ウェルプレートであるがBIOLAMININでコーティングされたプレート上に継代された。24ウェルの段階の後、CyT49クローンは、Schulz et al.(2012)PLoS ONE 7(5):e37004において記載されるとおりに継代された。
【0339】
hiPSC(TC1133)に関して、細胞は、クローニング及び継代段階でのRevitacellを含むBIOLAMININでコーティングされたプレート上での定期的な維持プロセス全体にわたってStemFlex Complete中で維持された。
【0340】
実施例3:B2Mノックアウトヒト多能性幹細胞(hPSC)の作製
hPSC中のB2MのためのガイドRNA(gRNA)選択。上の実施例1において記載される3つのB2M標的化gRNAを使用して、hPSC中のB2M遺伝子を標的化した。hPSCにおけるそれらの切断効率を評価するために、CyT49細胞は、125pmol Cas9及び375pmol gRNAの絶対値を有する3:1(gRNA:Cas9)のモル比のCas9タンパク質(Biomay)及びガイドRNA(Synthego)のリボ核タンパク質(RNP)混合物とともにNeonエレクトロポレーター(Neonトランスフェクションキット ThermoFisher Cat#MPK5000)を使用して電気穿孔された。RNP複合体を形成するために、gRNA及びCas9を、R-緩衝液(Neonトランスフェクションキット)を含む1つの容器中で合わせて、25μLの合計体積にし、室温で15分間インキュベートした。細胞は、ACCUTASE(登録商標)を使用して解離され、続いてDMEM/F12培地(Gibco、cat#11320033)中で再懸濁され、NC-200(Chemometec)を使用して計数され、遠心分離された。合計で1×106個の細胞が、RNP複合体とともに再懸濁され、R-緩衝液が加えられて、125μLの合計体積になった。次に、この混合物は、1100Vにて30秒間2パルスで電気穿孔された。エレクトロポレーションの後、細胞は、RevitaCellを含むStemFlexで充填されたEppendorfチューブにピペットで移された。次に、この細胞懸濁液は、1:20の希釈度のBIOLAMININ 521 CTGで予めコーティングされた組織培養ディッシュに播種された。細胞は、正常酸素圧インキュベーター(37℃、8% CO2)中で48時間培養された。48時間後、ゲノムDNAが、QuickExtract(Lucigen、Middleton、WI;Cat#QE09050)を使用して細胞から収集された。
【0341】
標的B2M配列のためのPCRが実施され、得られた増幅DNAは、TIDE分析によって切断効率について評価された。関連している領域のためのPCRは、Platinum Taq Supermix(Invitrogen、cat#125320176及びCat#11495017)を使用して実施された。PCRプライマーの配列は表4に示され;サイクル条件は表5にいおいて提供される。得られた増幅産物をPCR精製及びサンガー配列決定にかけた。サンガー配列決定の結果は、ガイド配列とともにTsunamiソフトウェアに入力された。インデルのパーセンテージ及び同一性は、ソフトウェアによって計算された。次に、特定のgRNAが、hPSCにおけるそれらのインデル頻度に基づいて選択された。図8は、3つのB2M gRNAに関する切断効率を示す。
【0342】
選択されたgRNAのオフターゲットは、配列類似性が予測される部位のハイブリッド捕捉分析を使用して幹細胞に由来するDNAにおいて評価された。B2M-2及びB2M-3ガイドは、検出可能なオフターゲット作用を示さなかった。B2M-2 gRNAは、その高いオンターゲット活性及び検出不可能なオフターゲット活性に起因してさらなるクローン作製について選択された。
【0343】
B2M KO hPSCクローン作製及び特徴付け。B2M-2 gRNAを使用して、CyT49 hESCは電気穿孔され、エレクトロポレーションの3日後に、単一細胞が、WOLF FACS-ソーター(Nanocellect)を使用してStemFlex及びRevitacellを含むBIOLAMININ 521 CTGでコーティングされた96ウェルプレートにソーティングされた。播種された単一細胞を、コロニーが単一細胞として再播種されるほど大きくなるまで、1日おきに培地を交換しながら正常酸素圧インキュベーター(37℃、8%CO2)中で増殖させた。コンフルエントになったとき、試料を、維持及びゲノムDNA抽出のために分割した。
【0344】
クローンのB2M KO状態は、PCR及びサンガー配列決定を介して確認された。標的B2M領域の得られたDNA配列は、インデル同一性及びホモ又はヘテロ接合性を決定するためにSnapgeneソフトウェアにおいて整列させられた。所望の編集を有するクローンが増殖され、B2M発現についてのフローサイトメトリー評価を介してさらに検証された(利用される抗体のリストについては表11を参照のこと)。クローンは、インターフェロン-ガンマ処理の有無で評価された(25ng/mL、R&D Systems、285-IF)。図9Aは、野生型細胞におけるB2M発現を示し、図9Bは、KO細胞におけるB2M発現を示す。クローンの核型状態は、Cell Line Geneticsサービス(Madison、WI)を介して評価され、正常な核型が報告された。
【0345】
【表11】
【0346】
クローンは、多能性マーカーOCT4及びSOX2のための細胞内フローサイトメトリーにより多能性を保持することが確認された。確認された多能性クローンは、以前に確立された方法(Schulz et al.(2012)PLoS ONE 7(5):e37004)を使用して膵臓内分泌性前駆細胞に分化された。
【0347】
実施例4:B2MノックアウトPD-L1ノックインヒト多能性幹細胞(hPSC)の作製
B2M-KO PD-L1-KI戦略の設計。PD-L1(CD274)をB2M座位に挿入するためのプラスミド設計は、B2Mの開始コドンが、相同組換え修復(HDR)を経た後に除去されて、PD-L1を挿入して、部分的なB2M発現の機会を無効にするようになされた。図10は、プラスミドの模式図を示し、表12はその中の要素及び位置を特定する。ドナープラスミドは、エクソン1の周りのB2M座位と同一な配列を有する800塩基対ホモロジーアームに隣接するPD-L1のCAGGSプロモーター駆動cDNAを含有した。プラスミドの完全な配列は、配列番号33において示される。
【0348】
【表12】
【0349】
B2M-2 gRNAは、標的化されたB2M座位でのPD-L1導入遺伝子の挿入を容易にするために使用された。PD-L1ドナープラスミドは、B2M標的化gRNA及びCas9タンパク質で構成されるRNP複合体とともに導入された。100万個のCyT49細胞当たり、4μgのプラスミドDNAがRNPとともに送達された。エレクトロポレーションは、実施例3において記載されるとおりに実施された。エレクトロポレーションの7日後に、細胞は、WOLF FACS-ソーター(Nanocellect)を使用して、PD-L1表面発現についてRevitacellとともにStemFlexを含むBIOLAMININ 521 CTGでコーティングされた96ウェルプレートにソーティングされた。FACS-ソーティングに関して、未編集の細胞は、陰性対照として機能した。PD-L1陽性細胞は、ソーティング及び単一細胞クローニングのために選択された。
【0350】
PD-L1表面発現を検出するために、抗PD-L1蛍光抗体が使用された(表11を参照のこと)。播種された単一細胞を、コロニーが単一細胞として再播種されるほど大きくなるまで、1日おきに培地を交換しながら正常酸素圧インキュベーター(37℃、8%CO2)中で増殖させた。コンフルエントになったとき、試料を、維持及びゲノムDNA抽出のために分割した。
【0351】
正確に標的化されたクローンは、プラスミドのホモロジーアームの外側からPD-L1 cDNA挿入部までの領域を増幅するプライマーを使用して、PD-L1ノックイン(KI)挿入物のためにKI組込みDNAのみの増幅を可能にするPCRを介して同定された。オンターゲット挿入物は、PCRによって接合状態について試験されて、KIがヘテロ接合性又はホモ接合性様式において生じたかどうかが評価された。ヘテロ接合性クローンが同定された場合、KI陰性アレルをサンガー配列決定に送って、それがB2M-破壊インデルを含有したことを検証した。完全なB2M破壊を伴う正確なKIクローン(KI挿入物又はインデル形成のいずれかによる)は、3000万個の細胞の集団サイズに達するまで、増加性の組織培養形式において増殖された。およそ10個のクローンがこの様式で増殖され、細胞内フローサイトメトリーを介してOCT4及びSOX2について試験することによって多能性であると確認された(図11)。次に、上の試験を通過したクローンは、下記のとおりの核型分析(Cell Line Genetics)についてさらに試験された。さらに、クローンは、下記のとおりの確立されたプロトコル(Schulz et al.(2012)PLoS ONE 7(5):e37004)を介して膵臓内胚葉前駆細胞(PEC)に分化するそれらの能力について試験された。B2Mの消失はさらに、フローサイトメトリーを介してインターフェロン-ガンマ処理(25ng/mL、R&D Systems、285-IF)の有無におけるB2Mの発現の欠如によって確認された。図12A及び12Bは、それぞれ野生型及びB2M KO/PD-L1 KI細胞においてPD-L1発現を示す。
【0352】
実施例5:B2MノックアウトHLA-Eノックインヒト多能性幹細胞(hPSC)の作製
B2M-KO HLA-E-KI戦略の設計。HLA-E三量体をB2M座位に挿入するためのプラスミド設計は、B2Mの開始コドンが、相同組換え修復(HDR)を経た後に除去されて、HLA-E三量体を挿入して、部分的なB2M発現の機会を無効にするようになされた。図13は、プラスミドの模式図を示し、表13はその中の要素及び位置を特定する。HLA-E三量体cDNAは、そのシグナルペプチドを伴わずにHLA-Eタンパク質に融合されたB2M膜タンパク質に融合されたHLA-G提示ペプチドに融合されたB2Mシグナルペプチドで構成された。この三量体設計は以前に公開されている(Gornalusse et al.(2017)Nat.Biotechnol.35(8):765-772)。HLA-E送達のためのドナープラスミドは、エクソン1の周りのB2M座位と同一な配列を有する800塩基対ホモロジーアームに隣接するHLA-E三量体のCAGGSプロモーター駆動発現を含有する。プラスミドの完全な配列は、配列番号34において示される。
【0353】
【表13】
【0354】
B2M-2 gRNAは、標的化されたB2M座位でのHLA-E導入遺伝子の挿入を容易にするために使用された。HLA-Eドナープラスミドは、B2M標的化gRNA及びCas9タンパク質で構成されるRNP複合体とともに導入された。100万個のCyT49細胞当たり、4μgのプラスミドがRNPとともに送達された。エレクトロポレーションは、実施例3において記載されるとおりに実施された。エレクトロポレーションの7日後に、細胞は、WOLF FACS-ソーター(Nanocellect)を使用して、HLA-E表面発現についてRevitacellとともにStemFlexを含むBIOLAMININ 521 CTGでコーティングされた96ウェルプレートにソーティングされた。FACS-ソーティングに関して、未編集の細胞は、陰性対照として機能した。HLA-E陽性細胞は、ソーティング及び単一細胞クローニングのために選択された。
【0355】
HLA-E表面発現を検出するために、抗HLA-E蛍光抗体が使用された(表11)。播種された単一細胞を、コロニーが単一細胞として再播種されるほど大きくなるまで、1日おきに培地を交換しながら正常酸素圧インキュベーター(37℃、8%CO2)中で増殖させた。コンフルエントになったとき、試料を、維持及びゲノムDNA抽出のために分割した。
【0356】
正確に標的化されたクローンは、プラスミドのホモロジーアームの外側からHLA-E cDNA挿入部までの領域を増幅するプライマーを使用して、HLA-Eノックイン(KI)挿入物のためにKI組込みDNAのみの増幅を可能にするPCRを介して同定された。オンターゲット挿入物は、PCRによって接合状態について試験されて、KIがヘテロ接合性又はホモ接合性様式において生じたかどうかが評価された。ヘテロ接合性クローンが同定された場合、KI陰性アレルをサンガー配列決定に送って、それがB2M-破壊インデルを含有したことを検証した。完全なB2M破壊を伴う正確なKIクローン(KI挿入物又はインデル形成のいずれかによる)は、3000万個の細胞の集団サイズに達するまで、増加性の組織培養形式において増殖された。およそ10個のクローンがこの様式で増殖され、細胞内フローサイトメトリーを介してOCT4及びSOX2について試験することによって多能性であると確認された(図14)。次に、上の試験を通過したクローンは、核型分析(Cell Line Genetics)についてさらに試験された。さらに、クローンは、確立されたプロトコル(Schulz et al.(2012)PLoS ONE 7(5):e37004)を介して膵臓内胚葉前駆細胞(PEC)に分化するそれらの能力について試験された。B2Mの消失はさらに、フローサイトメトリーを介してインターフェロン-ガンマ処理(50ng/mL、R&D Systems、285-IF)の有無におけるHLA-A、B、Cの発現の欠如によって確認された(図15)。図16は、HLA-E発現を示す。
【0357】
実施例6:編集されたクローンの核型分析
編集された胚性幹(ES)細胞のG-バンド核型分析。100万個の編集されたES細胞は、培養培地(DMEM/F12+10% XenoフリーKSRと10ng/mLアクチビン及び10ng/mLヘレグリン)を含むT-25培養フラスコ中に継代された。一晩培養した後、3つのT25培養フラスコは、核型分析;染色体1、12、17、20のためのFISH分析;及び標準的な8×60Kアレイによるアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)分析のために細胞遺伝学研究室(Cell Line Genetics,Inc.)に送られた。非切断ガイド(「NCG」)、B2M KOクローン、B2M HO/PD-L1 HIクローン(「V1-A」)、及びB2M KO/HLA-E KIクローン(「V2-A」)とともに電気穿孔された、選択された細胞のG-バンディング結果は、表14において示される。
【0358】
【表14】
【0359】
実施例7:編集されたヒト胚性幹細胞の膵臓内胚葉細胞(PEC)への分化
編集されたヒト胚性幹細胞(ES)の維持。様々な継代数(P38~42)の編集されたヒト胚性幹細胞は、hESM培地(DMEM/F12+10% KSR+ 10ng/mLアクチビンA及び10ng/mLヘレグリン)及び最終10%のヒトAB血清とともに、4日間の継代のために33,000細胞/cm2又は3日間の継代のために50,000細胞/cm2で播種された。
【0360】
PEC分化のための編集されたヒト胚性幹細胞の凝集。編集されたESは、ACCUTASE(登録商標)で単一細胞に解離され、続いて遠心分離され、1ml当たり100万個の細胞でDMEM/F12培地中の2% StemPro(Cat#A1000701、Invitrogen、CA)中において再懸濁され、合計で350~400万個の細胞が、8RPM±0.5RPMの回転速度により1つの850cm2のローターボトル(Cat#431198、Corning、NY)中に分化前の18~20時間播種された。編集されたヒト胚性幹細胞に由来するES凝集物は、Schulz et al.(2012)PLoS ONE 7(5):e37004において記載されるとおりにローターボトルを使用して膵臓系列に分化した。
【0361】
実施例8:分化した膵臓内胚葉細胞(PEC)の特徴付け
段階1(DE)のFOXA2及びSOX17並びにPEC段階のCHGA、PDX1及びNKX6.1のためのフローサイトメトリー。hESCに由来する段階1の凝集物、又はhESCに由来する膵性凝集物を、PBSで洗浄し、続いてACCUMAX(商標)(カタログ#A7089、Sigma、MO)を使用して37℃で酵素的に解離して、単一細胞懸濁液にした。MACS分離緩衝液(Cat#130-091-221、Miltenyi Biotec、North Rhine-Westphalia、Germany)を加え、懸濁液を、40μmフィルターに通過させ、ペレットにした。細胞内マーカーの染色のために、細胞を、4%(wt/v)パラホルムアルデヒド中で30分間固定し、FACS緩衝液(PBS、0.1%(wt/v)BSA、0.1%(wt/v)NaN3)中で洗浄し、続いて細胞を、氷上でPerm緩衝液(PBS、0.2%(v/v)Triton X-100(Cat#A16046、Alfa Aesar、MA)、5%(v/v)正常ロバ血清、0.1%(wt/v)NaN3)により30分間透過処理し、続いて洗浄緩衝液(PBS、1%(wt/v)BSA、0.1%(wt/v)NaN3)で洗浄した。細胞を、ブロック緩衝液(PBS、0.1%(v/v)、Triton X-100、5%(v/v)正常ロバ血清、0.1%(wt/v)NaN3)で希釈された一次抗体(表15)と4℃で一晩インキュベートした。細胞を、IC緩衝液中で洗浄し、続いて適切な二次抗体と4℃で60分間インキュベートした。細胞をIC緩衝液中で洗浄し、続いてFACS緩衝液中で洗浄した。フローサイトメトリーデータは、NovoCyteフローサイトメーター(ACEA Biosciences、Brussels)により得られた。データは、FlowJoソフトウェア(Tree Star,Inc.)を使用して分析された。無処置の細胞は、前方(低角度)及び側方(直交性、90°)光散乱に基づいて同定された。バックグラウンドは、抗体対照及び未分化細胞を使用して推定された。図面において、代表的なフローサイトメトリープロットは、亜集団のうちの1つについて示される。図面において報告される数は、無処置の細胞ゲートからの全細胞のパーセンテージを表す。
【0362】
【表15】
【0363】
DE段階では、FOXA2及びSOX17二重陽性細胞の集団は、CyT49野生型分化細胞の全細胞の90%を超えた。PD-L1 KI/B2M KO、HLA-E KI/B2M KO、及びB2M KO細胞は、野生型細胞と比較して同等のDEのパーセンテージを示した(図17A~17B及び図18)。
【0364】
PEC段階では、クロモグラニン(CHGA)、PDX1及びNKX6.1のためのフローサイトメトリーが実施された。PEC段階の不均一な集団は、膵臓前駆細胞、初期内分泌を含む(図19)。不均一な集団の円グラフから(図20)、分化した編集細胞(PD-L1 KI/B2M KO又はB2M KO)の細胞集団の分布は、野生型細胞と非常に類似していた。
【0365】
ターゲットRNAseq。遺伝子発現分析のためのターゲットRNAseqは、Illumina TruSeq及び111個の遺伝子を標的化するオリゴのカスタムパネルを使用して実施された。パネルは主に、膵臓分化中の発生段階のマーカーである遺伝子を含有した。各分化段階の最後において、10μLのAPV(凝集したペレットの体積)が回収され、オンカラムデオキシリボヌクレアーゼ処理を含む、Qiagen RNeasy又はRNeasy 96スピンカラムプロトコルを使用して抽出された。定量化及び品質管理は、Qubitと合わせたTapeStation、又はQiagen QIAxcelのいずれかを使用して実施された。50~200ngのRNAは、Qubitと合わせたTapeStation、又はQiagen QIAxcelのいずれかを使用する得られたdsDNAライブラリーの定量化及び品質管理の前に、cDNA合成、カスタムオリゴプールのハイブリダイゼーション、結合オリゴの洗浄、伸長、ライゲーション、ライブラリーのPCR増幅、及びライブラリーの精製からなるIllumina TruSeqライブラリー調製プロトコルに従って処理された。その後、ライブラリーは、4nMの濃度に希釈され、プールされた後、変性、PhiX対照のスパイクイン、及びIllumina MiSeqシークエンサー上への添加の前に10~12pMへのさらなる希釈が行われた。配列決定の実行の後、最初のデータ分析は、BaseSpaceにより自動的に実施され、カスタムプローブの各々についての生のリードカウントを生成した。次に、各遺伝子に関して、これらのリードカウントは、1つのリードカウントを加えることにより(0による下流の除算を防ぐため)当該遺伝子に対応する全てのプローブについて合計された。正規化は遺伝子SF3B2に対して実施され、リードは通常、段階0に対する倍率変化として可視化された。データが主要な成分分析のために処理されたとき、正規化は、DEseq法を使用して実施された。選択された遺伝子発現は、図21において示された。PD-L1 KI/B2M KO又はB2M KO細胞からのFOXA2、CHGA、PDX1及びNKX6.1の動的発現パターンは、野生型細胞と類似していた。
【0366】
PEC段階でのB2M及びPD-L1発現の確認。PEC段階では、分化した凝集物は、インターフェロン-ガンマ(50ng/ml)の有無で48時間刺激された。凝集物を、PBSで洗浄し、続いてACCUMAX(商標)(カタログ#A7089、Sigma、MO)を使用して37℃で酵素的に解離して、単一細胞懸濁液にした。MACS分離緩衝液(Cat#130-091-221、Miltenyi Biotec、North Rhine-Westphalia、Germany)を加え、懸濁液を、40μmフィルターに通過させ、ペレットにした。表面マーカーの染色のために、解離した細胞を、MACS分離緩衝液中に希釈された蛍光コンジュゲート抗体とともに20分間インキュベートし、続いてMACS分離緩衝液中で洗浄した。細胞を、フロー取得のためにFACS緩衝液中で再懸濁した。フローサイトメトリーデータは、NovoCyteフローサイトメーターにより得られた。図22A~22Fで示されるとおり、B2M発現は、PD-L1 KI/B2M KO又はB2M KOに由来する分化したPECにおいて検出限界未満であり、且つPDL1は、PD-L1 KI/B2M KO細胞に由来する分化したPECにおいて発現された。
【0367】
PEC細胞の免疫表現型。PEC段階では、分化した凝集物は、インターフェロン-ガンマ(50ng/ml)の有無で48時間刺激された。凝集物は、MHCクラスI及びII染色のために収集された。野生型又は編集された細胞(PD-L1 KI/B2M KO及びB2M KO細胞)に由来するPEC段階でMHCクラスIIの発現はなかった(図23D~23F)。HLA-ABC(MHCクラスI)の発現は低く(野生型から1.3%)、それは、IFN-γ刺激時に高度に調節された。しかしながら、HLA-ABCは、編集された細胞(PD-L1 KI/B2M KO及びB2M KO細胞)においてIFN-γ刺激下でさえ発現しなかった(図23A~23C)。
【0368】
実施例9:T細胞活性化/増殖アッセイ
PEC分化細胞は、インビトロヒトT細胞活性化/増殖アッセイを介して免疫応答を誘発するそれらの能力について試験された。新鮮なドナーPBMCは、Hemacareから購入され、CD3+T細胞は、汎T細胞単離キット、ヒト(Miltenyi Cat#130-096-535)を使用して精製された。単離されたT細胞は、製造業者の指示書によりCellTrace(商標)CFSE細胞増殖キットプロトコル(Thermofisher Cat#34554)で標識され、分化したPECとともに5日間共インキュベートされた。T細胞増殖及び活性化のためのDynabeads(商標)ヒトT-アクチベーターCD3/CD28(Thermofisher Cat#11161D)は、T細胞を活性化する陽性対照として使用された。T細胞単独でCFSEにより標識され、陰性対照として使用された。CD3+ CFSE+細胞のパーセントが、T細胞増殖のパーセントを評価するために測定された(図24A~24D)。WT PECは、T細胞単独の対照を超えてT細胞増殖を誘発した。B2M KO及びB2M KO/PD-L1 KI CyT49に由来するPECは、T細胞のみの対照を超えてT細胞増殖を誘発しなかったが、これは編集された細胞の低免疫原性を示している。
図1A
図1B-1C】
図2
図3A-3B】
図3C
図4A
図4B
図5
図6A-6B】
図6C-6D】
図7A-7B】
図7C-7D】
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図22A
図22B
図22C
図22D
図22E
図22F
図23A
図23B
図23C
図23D
図23E
図23F
図24A
図24B
図24C
図24D
【配列表】
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