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特許7581195組換えミノムシ絹糸タンパク質の大量生産システム
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  • 特許-組換えミノムシ絹糸タンパク質の大量生産システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】組換えミノムシ絹糸タンパク質の大量生産システム
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/435 20060101AFI20241105BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241105BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241105BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241105BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241105BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241105BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241105BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
C07K14/435 ZNA
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021520887
(86)(22)【出願日】2020-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2020020457
(87)【国際公開番号】W WO2020235692
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2019097154
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土肥 武
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英雄
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/178466(WO,A1)
【文献】特表2008-506409(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074403(WO,A1)
【文献】Nat. Commun.,2019年04月01日,Vol. 10,Article No. 1469 (pp. 1-11)
【文献】Commun. Biol.,2019年04月29日,Vol. 2,Article No. 148 (pp. 1-9)
【文献】Nature,Vol. 424,2003年,pp. 1057-1061
【文献】繊維と工業,2002年,Vol. 58, No. 3,pp. 8-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/435
C12N 15/12
C12N 1/15-1/21
C12N 5/10
C12P 21/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端側から順にN末端領域、中央領域、及びC末端領域を含む組換えミノムシフィブロインH鎖タンパク質を改変した発現増強改変型組換えミノムシフィブロインH鎖タンパク質であって、
前記発現増強改変型組換えミノムシフィブロインH鎖タンパク質は、前記組換えミノムシフィブロインH鎖タンパク質の
N末端領域の全部若しくは前記組換えミノムシフィブロインH鎖タンパク質の発現抑制機能を喪失させる20個以上のアミノ酸、又は
C末端領域の全部若しくは前記組換えミノムシフィブロインH鎖タンパク質の発現抑制機能を喪失させる5個以上のアミノ酸が欠失しており、
前記N末端領域は
配列番号1で示すアミノ酸配列、
配列番号1で示すアミノ酸配列と90%以上のアミノ酸同一性を有し、かつ前記組換えミノムシフィブロインH鎖タンパク質の発現抑制機能を有するアミノ酸配列
からなり、
前記中央領域はミノムシフィブロインH鎖タンパク質の物性を示す領域で、同一の及び/又は異なるアミノ酸配列からなる中央反復ユニットが3個以上連結してなり、
前記C末端領域は
配列番号2で示すアミノ酸配列、

配列番号2で示すアミノ酸配列と90%以上のアミノ酸同一性を有し、かつ前記組換えミノムシフィブロインH鎖タンパク質の発現抑制機能を有するアミノ酸配列
からなり、ここで
前記中央反復ユニットは、グリシンとアラニンからなる2アミノ酸単位を30単位以上含み、そのN末端側に15~25個のアラニンを含むアラニンクラスターを含む、全長120個~170個のアミノ酸からなる
前記タンパク質。
【請求項2】
前記アラニンクラスターは配列番号3又は4で示すアミノ酸配列からなる、請求項1に記載の発現増強改変型組換えミノムシフィブロインH鎖タンパク質。
【請求項3】
前記中央反復ユニットは配列番号5~13で示すアミノ酸配列から選択される、請求項2に記載の発現増強改変型組換えミノムシフィブロインH鎖タンパク質。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の発現増強改変型組換えミノムシフィブロインH鎖タンパク質をコードする発現増強改変型組換えミノムシフィブロインH鎖遺伝子。
【請求項5】
配列番号16、18、24、又は26で示すいずれかの塩基配列からなる、請求項4に記載の発現増強改変型組換えミノムシフィブロインH鎖遺伝子。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の発現増強改変型組換えミノムシフィブロインH鎖遺伝子を宿主細胞内で発現可能な状態で含む発現増強改変型組換えミノムシフィブロインH鎖遺伝子発現ベクター。
【請求項7】
請求項6に記載の発現増強改変型組換えミノムシフィブロインH鎖遺伝子発現ベクターを含む宿主からなる形質転換体又は前記発現ベクターを含むその後代。
【請求項8】
前記宿主が微生物又は昆虫培養細胞である、請求項7に記載の形質転換体又はその後代。
【請求項9】
発現増強改変型組換えミノムシフィブロインH鎖タンパク質の製造方法であって、請求項7又は8に記載の形質転換体又はその後代を所定の条件下で培養する培養工程、及び
培養工程後の培養液及び/又は形質転換体から発現増強改変型組換えミノムシフィブロインH鎖タンパク質を調製する調製工程
を含む前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子組換え技術を利用して作製されたミノムシ絹糸の繊維主成分であるフィブロインH鎖タンパク質の生産量を増大させる遺伝子発現増強システム、及びそのシステムを用いた組換えミノムシフィブロインH鎖タンパク質の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昆虫の繭を構成する糸や哺乳動物の毛は、古来より動物繊維として衣類等に利用されてきた。特にカイコガ(Bombyx mori)の幼虫であるカイコ由来の絹糸(本明細書では、しばしば「カイコ絹糸」と表記する)は、吸放湿性や保湿性、及び保温性に優れ、また独特の光沢と滑らかな肌触りを有することから、現在でも高級天然素材として珍重されている。
【0003】
しかし、自然界には、カイコ絹糸に匹敵する、又はそれ以上の特性をもつ動物繊維が存在する。例えば、ミノムシ(bagworm)が吐糸する絹糸(本明細書では、しばしば「ミノムシ絹糸」と表記する)もその一つである。ミノムシは、チョウ目(Lepidoptera)ミノガ科(Psychidae)に属する蛾の幼虫の総称で、通常は葉片や枝片を糸で絡めた紡錘形又は円筒形の巣(Bag nest)の中に潜み、摂食の際にも巣ごと移動する等、全幼虫期を巣と共に生活することが知られている。
【0004】
このミノムシ絹糸は、カイコ絹糸よりも力学的に優れた特性をもつ。例えば、弾性率に関して、チャミノガ(Eumeta minuscula)のミノムシ絹糸は、カイコ絹糸の3.5倍にも及び、非常に強い強度を誇る(非特許文献1、2)。また、ミノムシ絹糸の単繊維における断面積は、カイコ絹糸の単繊維のそれの1/7ほどしかないため、木目細かく、滑らかな肌触りを有し、薄くて軽い布を作製することが可能である。しかも、ミノムシ絹糸は、カイコ絹糸と同等か、それ以上の光沢と艶やかさを備える。したがって、ミノムシ絹糸は、新規天然素材として極めて有望な動物繊維となり得る。
【0005】
ところが、ミノムシ絹糸には実用化の上でいくつかの解決すべき課題が存在する。その一つが量産である。ミノムシ絹糸を繊維素材として実用化するには、ミノムシの巣の大量入手が不可欠である。しかし、ミノムシの巣の野外採取量では量産には足りないため、ミノムシの大量飼育とミノムシから絹糸を効率的に採取する方法が不可避である。
【0006】
ミノムシ絹糸の実用化において、もう一つの大きな問題は、ミノムシ絹糸の純度である。ミノムシの巣の表面には葉片や枝片等の夾雑物が必ず付着している。品質の点から繊維素材として実用化するには、これらの夾雑物を完全に除去しなければならない。しかし、除去作業は、膨大な手間とコストを要する上に、既存の技術ではミノムシの巣から夾雑物を完全に除去することは困難である。それ故に、これまでは、高コストな上に、夾雑物由来の色素で染まった低品質なミノムシ絹糸しか得ることができなかった。
【0007】
上記課題の解決策として、現在では、特許文献1や特許文献2で開示されるようなミノムシから純度の高いミノムシ絹糸を効率的に採取する方法が開発されている。しかし、ミノムシ絹糸産業は、黎明期を迎えたばかりである。ミノムシ絹糸を量産するための設備や体制は開発途上であり、量産化までにはまだ時間を要するのが現状である。
【0008】
上記課題の解決策として、ミノムシから直接絹糸を採取する方法以外にも、遺伝子組換え技術を用いて組換えミノムシ絹糸を大量生産する方法がある。クローニングしたミノムシ絹糸の遺伝子を宿主に導入して発現させることで、宿主細胞内で組換えミノムシ絹糸を大量生産することが可能となる。ところが、この生産方法も肝心のミノムシ絹糸の全長遺伝子配列が未だに決定されていないという本質的な問題がある。これは、絹糸の主要繊維成分であるフィブロインH鎖タンパク質(Fib Hタンパク質)が、グリシン残基とアラニン残基が多数繰り返されたアミノ酸配列を有することから、通常のクローニング技術では完全長のフィブロインH鎖遺伝子(Fib H遺伝子)の塩基配列決定が極めて難しいという理由による。この問題を解決するために、特許文献3では、ミノムシFib H(bagworm Fib H:本明細書では、しばしば「bFib H」と表記する)遺伝子とカイコFib H(silkworm Fib H:本明細書では、しばしば「sFib H」と表記する)遺伝子からなる組換えキメラFib H遺伝子を作製している。このキメラFib H遺伝子は、トランスクリプトーム解析によって同定されたオオミノガ(Eumeta japonica)における一部のbFib H遺伝子情報と、既存のsFib H遺伝子情報の一部とを融合して全長化した人工的遺伝子である。特許文献3では、そのキメラFib H遺伝子をカイコに導入して遺伝子組換えカイコを作出して、カイコに吐糸させることで、カイコ絹糸にミノムシ絹糸の物性が付与されたキメラ絹糸を生産する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2018-197415
【文献】特開2019-013207
【文献】特開2018-074403
【非特許文献】
【0010】
【文献】大崎茂芳, 2002, 繊維学会誌(繊維と工業), 58: 74-78
【文献】Gosline J. M. et al., 1999, 202, 3295-3303
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
タンパク質の大量生産系宿主には、前記特許文献3の特開2018-074403で用いられたカイコの他にも、大腸菌(Escherichia coli)や酵母等の微生物が一般的によく利用される。そこで、本発明者らは、微生物を大量生産系宿主とするミノムシFib H遺伝子発現システムを構築するために、オオミノガのミノムシFib H遺伝子を新たにクローニングし、これまでに同定されていなかった領域を含むミノムシFib H cDNAを得ることに成功した。得られた組換えミノムシFib H(recombinant bagworm Fib H:本明細書では、しばしば「rbFib H」と表記する)遺伝子を微生物用の遺伝子発現ベクターに組み込み、大腸菌に導入してrbFib Hタンパク質を生産させたところ、発現量が著しく低下してしまうことが判明した。その具体的な原因は不明であるが、発現を抑制する何らかの制御作用が働いたためと考えられる。しかしながら、タンパク質の大量生産系において、このような発現量の低下は致命的な問題となり得る。
【0012】
そこで、本発明では、rbFib Hタンパク質を微生物発現系等でも大量に生産できるrbFib H遺伝子と、それを含む発現ベクターを開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、rbFib Hタンパク質のN末端領域又はC末端領域のいずれか一方を欠失した片末端欠失型のrbFib Hタンパク質をコードする遺伝子を発現させたときに、その発現量が著しく増加するという新規知見を得た。一方、Fib Hタンパク質の物性に寄与する中央領域のみを残した両末端欠失型のrbFib Hタンパク質では、発現量の増加は認められたもの、同時にrbFib Hタンパク質の分解量も増加した。本発明は、これらの知見に基づくものであって、以下を提供する。
(1)N末端側から順にN末端領域、中央領域、及びC末端領域を含むrbFib Hタンパク質を改変した改変型rbFib H(modified-rbFib H:m-rbFib H)タンパク質であって、前記m-rbFib Hタンパク質は、前記rbFib Hタンパク質のN末端領域の全部若しくは一部、又はC末端領域の全部若しくは一部が欠失しており、前記N末端領域は配列番号1で示すアミノ酸配列、配列番号1で示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換したアミノ酸配列、又は配列番号1で示すアミノ酸配列と90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなり、前記中央領域は同一の及び/又は異なるアミノ酸配列からなる中央反復ユニットが3個以上連結してなり、前記C末端領域は配列番号2で示すアミノ酸配列、配列番号2で示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換したアミノ酸配列、又は配列番号2で示すアミノ酸配列と90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなり、ここで前記中央反復ユニットは、グリシンとアラニンからなる2アミノ酸単位を30単位以上含み、そのN末端側に15~25個のアラニンを含むAlaクラスターを含む、全長120個~170個のアミノ酸からなる前記タンパク質。
(2)前記Alaクラスターは配列番号3又は4で示すアミノ酸配列からなる(1)に記載のm-rbFib Hタンパク質。
(3)前記中央反復ユニットは配列番号5~13で示すアミノ酸配列から選択される、(2)に記載のm-rbFib Hタンパク質。
(4)(1)~(3)のいずれかに記載のm-rbFib Hタンパク質をコードするm-rbFib H遺伝子。
(5)配列番号16、18、24、又は26で示すいずれかの塩基配列からなる、(4)に記載のm-rbFib H遺伝子。
(6)(4)又は(5)に記載のm-rbFib H遺伝子を宿主細胞内で発現可能な状態で含むm-rbFib H遺伝子発現ベクター。
(7)(6)に記載のm-rbFib H遺伝子発現ベクターを含む宿主からなる形質転換体又はその後代。
(8)前記宿主が微生物又は昆虫培養細胞である、(7)に記載の形質転換体又はその後代。
(9)m-rbFib Hタンパク質の製造方法であって、(7)又は(8)に記載の形質転換体又はその後代を所定の条件下で培養する培養工程、及び培養工程後の培養液及び/又は形質転換体からm-rbFib Hタンパク質を調製する調製工程を含む前記製造方法。
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2019-097154号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のm-rbFib H遺伝子発現ベクターによれば、当該発現ベクターを宿主に導入して発現誘導することで、m-rbFib Hタンパク質を大量生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明でクローニングしたrbFib H遺伝子がコードするrbFib Hタンパク質、及びそれを改変したm-rbFib H遺伝子がコードするm-rbFib Hタンパク質の構造模式図を示す。この図では、rbFib Hタンパク質として、実施例で構築したbw753タンパク質とbw592タンパク質を、またm-rbFib Hタンパク質として、実施例で構築したbw592ΔCタンパク質、bw592ΔNタンパク質、及びbw592ΔN/Cタンパク質を、それぞれ示している。図中の黒棒は、rbFib H遺伝子のクローニングに用いたrbFib H遺伝子増幅断片を示し、m-rbFib Hタンパク質上で、その断片がコードするアミノ酸領域に相当する位置を示している。
図2】実施例4の各形質転換体におけるrbFib Hタンパク質のウェスタンブロッティング図である。レーン1はrbFib Hタンパク質であるbw592を、レーン2はm-rbFib Hタンパク質であるbw592ΔCを、レーン3はm-rbFib Hタンパク質であるbw592ΔNを、そしてレーン4はm-rbFib Hタンパク質であるbw592ΔN/Cを示す。図中の矢印は、目的のタンパク質の位置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.改変型組換えミノムシフィブロインH鎖タンパク質
1-1.概要
本発明の第1の態様は、改変型組換えミノムシフィブロインH鎖(modified-recombinant bagworm Fib H:本明細書では、しばしば「m-rbFib H」と表記する)タンパク質である。m-rbFib Hタンパク質は、本発明者らが新たにクローニングしたrbFib H遺伝子に、さらなる改変を加えた改変型組換えミノムシフィブロインH鎖遺伝子(m-rbFib H遺伝子)によってコードされたタンパク質である。
【0017】
本発明のm-rbFib H遺伝子によれば、当該遺伝子を含む発現ベクターを微生物等の宿主細胞内で発現させることにより、rbFib H遺伝子と比較して、15倍以上もの組換えタンパク質を発現させることができる。それによって、微生物遺伝発現系を用いたrbFib Hタンパク質の大量生産が可能となる。
【0018】
1-2.用語の定義
本明細書で頻用する以下の用語について、以下の通り定義する。
【0019】
「ミノムシ」とは、前述のようにチョウ目(Lepidoptera)ミノガ科(Psychidae)に属する蛾の幼虫の総称をいう。したがって、本来は様々なミノガ科の蛾の幼虫を意味するが、本明細書において単にミノムシと表記した場合は、原則的には、rbFib H遺伝子のクローニングにおいて、cDNAライブラリーの構築で用いたオオミノガを意味するものとする。
【0020】
本明細書で「絹糸」とは、昆虫由来又はクモ目生物由来の糸であって、それらの幼虫や成虫が営巣、移動、固定、営繭、餌捕獲等の目的で吐糸するタンパク質製の糸をいう。本明細書で、単に「絹糸」と表記した場合には、原則として由来生物名を特定しない広く一般的な絹糸を意味する。特定の生物由来の絹糸を表す場合には、カイコ絹糸やミノムシ絹糸のように、その由来生物名を絹糸の前に付すものとする。
【0021】
「フィブロインH鎖(Fib H)タンパク質」とは、絹糸の主要な繊維成分であるフィブロインを構成するタンパク質の一つである。例えば、カイコのフィブロインは、主として3つのタンパク質、すなわち、Fib Hタンパク質、Fib Lタンパク質、及びp25タンパク質で構成されている。この中でFib Hタンパク質は、フィブロインにおける主要構成タンパク質であり、絹糸の特性は主としてFib Hタンパク質がもたらす。したがって、本明細書では、絹糸を構成する繊維成分であるFib Hタンパク質を絹糸と表記する場合もある。
なお、本明細書において、単に「Fib H」と表記した場合には、原則として由来生物名を特定しない。特定の生物由来のFib Hタンパク質を表す場合には、カイコFib Hタンパク質(silkworm Fib Hタンパク質:sFib Hタンパク質)やミノムシFib Hタンパク質(bagworm Fib Hタンパク質:bFib Hタンパク質)のように、その由来生物名又はそのイニシャルをFib Hの前に付すものとする。
【0022】
本明細書において「組換えフィブロインH鎖タンパク質」(rFib Hタンパク質)とは、遺伝子クローニング技術を用いてクローニングされた組換えフィブロインH鎖遺伝子にコードされるFib Hタンパク質をいう。rFib Hタンパク質は、Fib Hタンパク質の基本構成成分を含んでいれば、野生型の全長Fib Hタンパク質と同一のアミノ酸配列で構成されている必要はない。前記Fib Hタンパク質の基本構成成分には、N末端領域、中央領域、及びC末端領域が含まれる。これらの基本構成成分については「1-3.構成」の章で詳述する。また、rFib Hタンパク質は、単一生物由来のFib Hタンパク質でなくてもよく、二以上の生物種に由来するポリペプチドで構成されたキメラFib Hタンパク質であってもよい。例えば、ミノムシとカイコのFib Hタンパク質で構成されたキメラFib Hタンパク質が挙げられる。なお、本明細書では、rFib Hタンパク質を構成する全アミノ酸配列のうち半数を超えるアミノ酸が特定の昆虫に由来する場合、その特定の昆虫名のイニシャルをrFib Hタンパク質における「r」の後に付す。例えば、rFib Hタンパク質を構成するアミノ酸配列が90%以上ミノムシFib Hタンパク質のアミノ酸配列に由来する場合には、「rbFib Hタンパク質」と表記する。
【0023】
本明細書において「改変型組換えフィブロインH鎖タンパク質」(m-rFib Hタンパク質)とは、前記rFib Hタンパク質をベースとして、その一部を人為的に改変した、野生型Fib Hタンパク質とは異なるアミノ酸配列で構成されるタンパク質をいう。m-rFib Hタンパク質には、例えば、rFib Hタンパク質のアミノ酸配列に1個又は複数個のアミノ酸の付加、欠失、及び/又は置換を導入した変異rFib Hタンパク質が挙げられる。具体的には、例えば、rFib Hタンパク質において、Fib Hタンパク質の基本構成成分であるN末端領域及び/又はC末端領域を欠失させたrFib Hタンパク質等が該当する。
【0024】
本明細書において「フィブロインH鎖遺伝子」(Fib H遺伝子)は、前記Fib Hタンパク質をコードする遺伝子をいう。本明細書では、Fib Hタンパク質と同様に、単に「Fib H遺伝子」と表記した場合、原則として由来生物種は問わない。特定の生物由来のFib H遺伝子を表す場合には、その由来生物名又はそのイニシャルをFib Hの前に付すものとする。例えば、ミノムシ由来のFib H遺伝子であれば、ミノムシFib H遺伝子、又はbFib H遺伝子のように表記する。
【0025】
本明細書において「組換えフィブロインH鎖遺伝子」(rFib H遺伝子)とは、遺伝子クローニング技術を用いてクローニングされたFib H遺伝子で、前述の組換えFib Hタンパク質をコードする遺伝子いう。
【0026】
本明細書において「改変型組換えフィブロインH鎖遺伝子」(m-rFib H遺伝子)とは、前述のm-rFib Hタンパク質をコードする遺伝子をいう。同様に、本明細書において「改変型組換えミノムシフィブロインH鎖遺伝子」(m-rbFib H遺伝子)とは、「m-rbFib Hタンパク質」をコードする遺伝子をいう。
【0027】
本明細書において「組換えミノムシ絹糸」とは、rbFib Hタンパク質(m-rbFib Hタンパク質を含む)を含むミノムシ絹糸をいう。
【0028】
本明細書において「発現ベクター」とは、遺伝子を発現可能な状態で包含し、その発現を制御できる発現システムをいう。
【0029】
本明細書で「発現可能な状態」とは、ベクターに内包される遺伝子が宿主細胞内で発現できるように発現ベクター内に組み込まれていることを意味する。具体的には、内包された遺伝子が発現ベクター内のプロモーター制御下に配置されていることをいう。
【0030】
1-3.構成
1-3-1.組換えミノムシフィブロインH鎖(rbFib H)タンパク質の構成
本明細書におけるrbFib Hタンパク質は、基本構成成分としてN末端側から順にN末端領域、中央領域、及びC末端領域を含む。さらに、シグナル配列や標識ペプチドを含むこともできる。前記各領域は、それぞれ直接連結されていてもよいし、任意のリンカー配列を介して間接的に連結されていてもよい。以下、それぞれの領域について具体的に説明をする。
【0031】
(N末端領域)
「N末端領域」は、rbFib Hタンパク質を構成するアミノ酸配列において、図1で示すように、次述の中央領域のN末端側に位置するアミノ酸領域をいう。具体的には、配列番号1で示すアミノ酸配列、配列番号1で示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換したアミノ酸配列、又は配列番号1で示すアミノ酸配列と90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列が該当する。また、本明細書において、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換であることが好ましい。保存的アミノ酸置換であれば、野生型タンパク質と実質的に同等な構造又は性質を有し得るからである。保存的アミノ酸とは、同じアミノ酸群に分類されるアミノ酸どうしの関係をいう。前記アミノ酸群には、非極性アミノ酸群(グリシン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、トリプトファン)、極性アミノ酸群(非極性アミノ酸以外のアミノ酸)、荷電アミノ酸群(酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)及び塩基性アミノ酸群(アルギニン、ヒスチジン、リジン)、非荷電アミノ酸群(荷電アミノ酸以外のアミノ酸)、芳香族アミノ酸群(フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン)、分岐鎖アミノ酸群(ロイシン、イソロイシン、バリン)、ならびに脂肪族アミノ酸群(グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン)等が知られている。本明細書において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。「アミノ酸同一性」とは、二つのアミノ酸配列を整列(アラインメント)し、必要に応じていずれかのアミノ酸配列にギャップを導入しながら、両者のアミノ酸一致度が最も高くなるようにしたときの配列番号1のアミノ酸残基数に対する同一アミノ酸残基の割合(%)をいう。アミノ酸同一性は、BLASTやFASTAによるタンパク質の検索システムを用いて算出することができる(Karlin,S.et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877;Altschul,S.F.et al., 1990, J. Mol. Biol., 215: 403-410;Pearson,W.R.et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448)。
【0032】
なお、Fib Hタンパク質は、通常、シグナル配列をN末端側に含むが、N末端領域は、シグナル配列を含まない。
【0033】
(中央領域)
「中央領域」は、bFib Hタンパク質の物性を示す領域で、同一の及び/又は異なるアミノ酸配列からなる中央反復ユニットが複数個連結して構成される。中央反復ユニットの個数は3個以上であれば限定はしない。上限は特になく、例えば、中央反復ユニットを、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、又はそれ以上含んでいてもよい。
【0034】
「中央反復ユニット」(本明細書では、しばしば「CRU:Central Repeat Unit」と表記する)は、1ユニットが全長120個~170個のアミノ酸からなり、1個のアラニンクラスターと複数個のグリシン/アラニン単位を含む。
【0035】
「アラニンクラスター」(本明細書では、しばしば「Alaクラスター」と表記する)は、連続するアラニン(Ala)からなるサブユニットで、CRU内のN末端側に含まれる。1つのAlaクラスターには15~25個のアラニンが含まれ、アラニン以外にもAlaクラスター中央部(例えばAlaクラスターのN末端側から10位の位置)にグルタミン酸又はグルタミンを1個含んでいる。限定はしないが、bFib Hタンパク質におけるAlaクラスターの具体的な例として、配列番号3又は4で示すアミノ酸配列が挙げられる。
【0036】
「グリシン/アラニン単位(G/A単位)」とは、グリシン(Gly:G)とアラニン(Ala:A)で構成される2アミノ酸からなる単位で、グリシン-アラニン(AG)又はアラニン-グリシン(GA)からなる。CRUの大部分はG/A単位で構成されており、1ユニットあたりG/A単位を30単位以上、35単位以上、若しくは40単位以上、又は60単位以下、55単位以下、若しくは50単位以下含んでいる。
【0037】
さらに、CRUは、5~7アミノ酸からなるグリシン及びアラニン以外のアミノ酸配列からなる非G/A部分を含んでいてもよい。非G/A部分のアミノ酸配列は、限定はしない。例えば、セリン、バリン、及びチロシンからなる配列番号44又は45や、配列番号46で示すアミノ酸配列からなる非G/A部分は好適である。
【0038】
bFib Hタンパク質のCRUを構成するアミノ酸配列は、上記各構成要素の条件を満たす限り特に限定はしない。具体例として、限定はしないが、配列番号5~13で示すアミノ酸配列が挙げられる。
【0039】
bFib Hタンパク質の中央領域を構成する各CRUは、互いに直接的に、又は他の1~30アミノ酸、1~20アミノ酸、若しくは1~10アミノ酸からなる任意のリンカー配列を介して、連結している。
【0040】
前述のように中央領域は、bFib Hタンパク質の物性を示す領域である。rbFib Hタンパク質の中央流域は、野生型bFib Hタンパク質における中央領域と同一又は類似の物性を有する。ここで、本発明のm-rbFib Hタンパク質の中央領域は、その数が変動するだけで、アミノ酸配列はrbFib Hタンパク質の中央領域と変わらない。したがって、m-rbFib Hタンパク質は、原則として、rbFib Hタンパク質と同一又は類似の物性を有する。
【0041】
(C末端領域)
「C末端領域」は、rbFib Hタンパク質を構成するアミノ酸配列において、図1で示すように、次述の中央領域のC末端側に位置するアミノ酸領域をいう。具体的には、配列番号2で示すアミノ酸配列、配列番号2で示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換したアミノ酸配列、又は配列番号2で示すアミノ酸配列と90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列が該当する。
【0042】
(シグナルペプチド)
本発明のrbFib Hタンパク質は、必要に応じてシグナルペプチドをN末端領域のN末端側に含むことができる。
【0043】
「シグナルペプチド」(シグナル配列)とは、遺伝子発現によって生合成されたタンパク質を細胞外に分泌させる際に必要となる細胞外移行シグナルである。シグナルペプチドは、翻訳後、細胞外に分泌される前にシグナルペプチダーゼによって切断除去される。シグナルペプチドは、N末端側にリジンやアルギニンのような正電荷を有するアミノ酸を配し、それに続いてアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、及びフェニルアラニンのような疎水性の高いアミノ酸配列を配している。
【0044】
Fib Hタンパク質は、通常、そのN末端側に内因性のシグナルペプチドを有する。bFib Hタンパク質もまたN末端側に内因性のシグナルペプチドを有している。したがって、本態様の本発明のrbFib Hタンパク質がシグナルペプチドを含む場合、内因性のシグナルペプチド及び外因性シグナルペプチドのいずれであってもよい。合成されたrbFib Hタンパク質を効率的に細胞外に移行する場合、シグナルペプチドは、限定はしないが、細胞外移行目的のタンパク質を発現する宿主細胞由来のものを使用することが好ましい。例えば、第3態様に記載のm-rbFib H遺伝子発現ベクターを宿主細胞内に導入するのであれば、その遺伝子発現ベクターに含まれるm-rbFib H遺伝子には、前記宿主に由来するシグナルペプチドがコードされていることが好ましい。より具体的には、宿主が大腸菌であれば大腸菌由来のシグナルペプチドをコードする遺伝子配列がm-rbFib H遺伝子に含まれていればよい。シグナルペプチドのアミノ酸配列、又はそれをコードする塩基配列については公知のものを利用すればよく、限定はしない。例えば、大腸菌のシグナルペプチドには、配列番号47で示すアミノ酸配列が挙げられる。また、大腸菌のシグナルペプチドをコードする塩基配列には、前記配列番号47で示すアミノ酸配列をコードする塩基配列、具体的には配列番号48で示す塩基配列が挙げられる。
【0045】
シグナルペプチドのC末端側には、シグナルペプチドの切断と分泌を促進するシグナル配列後挿入配列及び/又は融合タンパク質からシグナルペプチドを切断するシグナルペプチダーゼ認識部位を含むアミノ酸配列を有することもできる。シグナルペプチドのアミノ酸配列は、特に限定はしない。通常は、3~60アミノ酸の範囲内にあればよい。
【0046】
(標識ペプチド)
本発明のrbFib Hタンパク質は、必要に応じて標識ペプチド含むことができる。「標識ペプチド」とは、目的とするポリペプチド(ここではrbFib Hタンパク質)と共に発現し、目的のポリペプチドの活性を阻害又は抑制することなく、その検出又は抽出する際の指標となるペプチドをいう。通常、標識ペプチドは、融合ポリペプチドの形態でrbFib Hタンパク質と共に発現するように構成されている。標識ペプチドを配置する位置は限定しないが、一般にはrbFib Hタンパク質のN末端側及び/又はC末端側に配置される。標識ペプチドの例として、限定はしないが、ヒスチジン(His)タグ(例えば、(His)6~(His)10)、FLAGタグ、mycタグ、又はHAタグのようなペプチドタグやGFPタンパク質等が挙げられる。
【0047】
rbFib Hタンパク質の具体的なアミノ酸配列の例として、後述する実施例で構築したbw592タンパク質を構成する配列番号15で示すアミノ酸配列、又はbw753タンパク質を構成する配列番号23で示すアミノ酸配列が挙げられる。なお、bw592タンパク質とbw753タンパク質は、図1に示すように、配列番号47で示すアミノ酸配列からなる大腸菌のシグナルペプチドをN末端に、またHisタグをC末端に含んでいる。
【0048】
1-3-2.改変型組換えミノムシフィブロインH鎖(m-rbFib H)タンパク質の構成
本態様のm-rbFib Hタンパク質は、前記組換えミノムシフィブロインH鎖タンパク質のN末端領域の全部若しくは一部、及び/又はC末端領域の全部若しくは一部が欠失した構成を有する。ここで言う「一部」とは、N末端領域又はC末端領域を構成するアミノ酸配列のうち1個、又は連続する若しくは非連続の2個以上のアミノ酸で、かつ全部未満のアミノ酸をいう。好ましくは、N末端領域又はC末端領域の機能を喪失し得るアミノ酸数が該当する。例えば、連続する若しくは非連続の5個、8個、10個、12個、15個、18個、20個以上のアミノ酸である。
【0049】
ただし、本発明の効果を奏するm-rbFib Hタンパク質は、N末端領域の全部若しくは一部、又はC末端領域の全部若しくは一部が欠失した構成を有するタンパク質のみであり、N末端領域の全部若しくは一部、及びC末端領域の全部若しくは一部が欠失した構成を有するタンパク質は、m-rbFib Hタンパク質には包含されるものの、その効果を奏し得ないため、本発明の目的とするm-rbFib Hタンパク質には該当しない。したがって、特に断りが無い場合、本明細書でm-rbFib Hタンパク質と表記した場合、N末端領域の全部若しくは一部、又はC末端領域の全部若しくは一部が欠失したrbFib Hタンパク質を意味するものとする。
【0050】
m-rbFib Hタンパク質は、上記N末端領域又はC末端領域の欠失以外にも、中央領域の機能を失わない範囲で、他の1個又は複数個のアミノ酸の付加、欠失、及び/又は置換の変異を含んでいてもよい。また、N末端領域の全部又は一部が欠失した場合であっても、N末端側に前記シグナル配列を有していてもよい。
【0051】
m-rbFib Hタンパク質の具体的なアミノ酸配列の例として、後述する実施例で構築したbw592ΔNタンパク質を構成する配列番号17で示すアミノ酸配列、bw592ΔCタンパク質を構成する配列番号19で示すアミノ酸配列、bw753ΔNタンパク質を構成する配列番号25で示すアミノ酸配列、又はbw753ΔCタンパク質を構成する配列番号27で示すアミノ酸配列が挙げられる。前述のように、bw592ΔN/Cタンパク質を構成する配列番号21で示すアミノ酸配列やbw753ΔN/Cタンパク質を構成する配列番号29で示すアミノ酸配列は、m-rbFib Hタンパク質ではあるものの、本願発明の効果を奏さないため本発明のm-rbFib Hタンパク質には該当しない。
【0052】
2.改変型組換えミノムシフィブロインH鎖遺伝子(m-rbFib H遺伝子)
2-1.概要
本発明の第2態様は、m-rbFib H遺伝子である。本態様のm-rbFib H遺伝子は第1態様に記載のm-rbFib Hタンパク質をコードする遺伝子である。
本発明のm-rbFib H遺伝子を大腸菌等の宿主細胞内で発現させることによって、改変前のrbFib H遺伝子の15倍以上も組換えタンパク質を発現させることができる。
【0053】
2-2.構成
2-2-1.組換えミノムシフィブロインH鎖(rbFib H)遺伝子の構成
本明細書におけるrbFib H遺伝子は、本発明者らがオオミノガ終齢幼虫の絹糸腺から調製したcDNAライブラリーより新たにクローニングしたrbFib H遺伝子である。rbFib H遺伝子は、特開2018-074403にその部分配列が開示されているが、今回、本発明者らは、特開2018-074403で未同定だったN末端領域及びC末端領域を含む新たなrbFib H遺伝子のクローニングに成功した。本明細書におけるrbFib H遺伝子は、そのクローニングで得られたrbFib H遺伝子の部分的な塩基配列情報に基づいて、基本構成成分であるN末端領域、中央領域、及びC末端領域をコードする塩基配列を含むように再構成した組換え遺伝子である。
【0054】
m-rbFib Hタンパク質を分泌タンパク質として発現させる場合には、前述のようにm-rbFib Hタンパク質のN末端側にシグナルペプチドが含まれるため、rbFib H遺伝子もシグナルペプチドをコードするシグナルDNAをrbFib H遺伝子の5’末端に含んでいればよい。
【0055】
本明細書におけるrbFib H遺伝子は、第1態様に記載のrbFib Hタンパク質をコードする限りその塩基配列は限定しない。rbFib H遺伝子の具体的な塩基配列の例として、後述する実施例で構築したbw592遺伝子の配列番号14で示す塩基配列、又はbw753遺伝子の配列番号22で示す塩基酸配列が挙げられる。
【0056】
2-2-2.改変型組換えミノムシフィブロインH鎖(m-rbFib H)遺伝子の構成
本態様のm-rbFib H遺伝子は、前記m-rbFib Hタンパク質をコードする遺伝子である。本明細書におけるm-rbFib H遺伝子は、第1態様のm-rbFib Hタンパク質をコードする限りその塩基配列は限定しない。m-rbFib H遺伝子の具体的な塩基配列の例として、後述する実施例で構築したbw592ΔN遺伝子の配列番号16で示す塩基配列、bw592ΔC遺伝子の配列番号18で示す塩基配列、bw753ΔN遺伝子の配列番号24で示す塩基配列、又はbw753ΔC遺伝子の配列番号26で示す塩基酸配列が挙げられる。
【0057】
3.改変型ミノムシFib H鎖遺伝子発現ベクター(m-rbFib H遺伝子発現ベクター)
3-1.概要
本発明の第3の態様は、m-rbFib H遺伝子発現ベクターである。本発明の発現ベクターは、第2態様に記載のm-rbFib H遺伝子を大腸菌等の宿主細胞内において発現可能な状態で含んでいる。
本発明の発現ベクターを宿主に導入することで、その形質転換体は、rbFib H遺伝子発現ベクターの形質転換と比較して15倍以上ものm-rbFib Hタンパク質を生産することができる。
【0058】
3-2.構成
3-2-1.改変型ミノムシFib H遺伝子発現ベクターの構成要素
本発明のm-rbFib H遺伝子発現ベクターは、宿主細胞内でm-rbFib H遺伝子を発現可能なように構成されている。本態様のm-rbFib H遺伝子発現ベクターは、コアベクター、m-rbFib H遺伝子、及びプロモーターを必須の構成成分として含む。また、ターミネーター、エンハンサー、マルチクローニングサイト、選抜マーカー、ポリアデニル化シグナル、リボソーム結合部位、複製開始点等を選択的構成成分として含むことができる。以下、本態様のm-rbFib H遺伝子発現ベクターの各構成成分について具体的に説明をする。
【0059】
(1)コアベクター
コアベクターは、本態様のm-rbFib H遺伝子発現ベクターの骨格部分を構成するベクターである。コアベクターには、様々なベクターを利用することができる。例えば、プラスミド若しくはバクミド(Bacmid)のような自律複製可能なベクター、ウイルスベクター、又は染色体中に相同組換え可能なベクターが挙げられる。通常は、プラスミドで足りる。コアベクターとして、一般には導入する宿主生物の細胞内で複製可能なベクターが選択される。また、コアベクターは、大腸菌等の他の細菌と節足動物間で複製可能なシャトルベクターであってもよい。さらに、pETシステムのような、ライフサイエンスメーカー各社から、コアベクター中に後述するプロモーター、ターミネーター、マルチクローニングサイト、選抜マーカー等が既に挿入されたタンパク質発現用ベクターが市販されており、それらをm-rbFib H遺伝子発現ベクターに利用することもできる。
【0060】
(2)m-rbFib H遺伝子
本発明のm-rbFib H遺伝子発現ベクターに包含されるm-rbFib H遺伝子は、前記第2態様に記載したm-rbFib H遺伝子である。したがって、ここでの説明は省略する。
m-rbFib H遺伝子は、m-rbFib H遺伝子発現ベクターにおいて次述のプロモーター制御下に配置される。
【0061】
(3)プロモーター
m-rbFib H遺伝子発現ベクターに含まれるプロモーターは、本発明のm-rbFib H遺伝子発現ベクターにおいてm-rbFib H遺伝子の発現を制御する必須構成成分である。プロモーターは、宿主細胞内で転写制御機能を有するプロモーターであれば、特に限定はしない。当該分野で公知のプロモーターを用いればよい。一般的には、例えば、宿主内で目的の遺伝子を、過剰に発現可能な過剰発現型プロモーター、恒常的に発現可能な構成的活性型プロモーター、そして自由に発現制御できる発現誘導型プロモーター等が知られている。いずれのプロモーターを用いてもよく、本発明のm-rbFib H遺伝子発現ベクターの使用用途を勘案して適宜定めればよい。
【0062】
(4)ターミネーター
ターミネーターは、本発明のm-rbFib H遺伝子発現ベクターにおいてm-rbFib H遺伝子の発現時にその転写を終結できる塩基配列で構成される。プロモーターにより転写されたm-rbFib H遺伝子の転写を終結できる配列であれば特に限定はしない。
【0063】
(5)エンハンサー
エンハンサーは、プロモーターを制御する調節因子であり、本発明のm-rbFib H遺伝子発現ベクターにおける選択構成成分である。エンハンサーはm-rbFib H遺伝子発現ベクター内でプロモーターを制御可能な位置に配置すればよい。
【0064】
(6)マルチクローニングサイト
マルチクローニングサイトは、クローニング用制限酵素部位を多数包含するクラスター領域で、本発明のm-rbFib H遺伝子発現ベクターにおける選択構成成分である。マルチクローニングサイトを構成する塩基配列や包含する制限酵素部位の種類及び数については特に制限はしない。また、m-rbFib H遺伝子発現ベクターにおけるマルチクローニングサイトの数や配置される位置についても制限はしないが、m-rbFib H遺伝子を発現可能な状態でm-rbFib H遺伝子発現ベクターには、少なくともプロモーターの制御領域範囲内に配置しておくことが好ましい。
【0065】
(7)選択マーカー
選択マーカーは、宿主が本発明のm-rbFib H遺伝子発現ベクターを保持していることを示す確認用マーカーとして機能し得る。選択マーカーには、一般に、酵素、蛍光タンパク質、色素合成タンパク質又は発光タンパク質等をコードする遺伝子が利用される。例えば、薬剤耐性遺伝子(例えば、テトラサイクリン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子又はネオマイシン耐性遺伝子)、栄養素遺伝子(例えば、ロイシン、ウラシル、アデニン、ヒスチジン、リジン又はトリプトファンの生合成遺伝子)、蛍光又は発光レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ(GUS)、又はGFP)、酵素遺伝子(ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NPT II)、ジヒドロ葉酸還元酵素等)、ブラストサイジンS耐性遺伝子等の酵素遺伝子が挙げられる。一つのm-rbFib H遺伝子発現ベクターに同一の又は異なる複数の選択マーカーを包含することができる。
【0066】
「選択マーカー」は、第3態様の形質転換体又はその後代において、宿主が本態様のm-rbFib H遺伝子発現ベクターを有していることを確認する時のマーカーとして機能し得る。
【0067】
3-3.m-rbFib H遺伝子発の現ベクター構築
m-rbFib H遺伝子発現ベクターは、当該分野で公知の遺伝子組換え技術を用いて構築することができる。限定はしないが、得られたm-rbFib H遺伝子の両末端を適当な制限酵素で切断処理した後、精製し、コアベクター中のプロモーター制御下で、かつその制限部位と連結可能な制限部位に挿入する方法が一般的である。
【0068】
4.形質転換体又はその後代
4-1.概要
本発明の第4の態様は、m-rbFib H遺伝子発現ベクターの導入によって形質転換した形質転換体又はその後代である。本発明の形質転換体又はその後代は、細胞内に第3態様のm-rbFib H遺伝子発現ベクターを包含することを特徴とする。
【0069】
本発明の形質転換体又はその後代は、rbFib Hタンパク質と同一又は類似の物性を有するm-rbFib Hタンパク質を大量に生産することができる。したがって、rbFib Hタンパク質の大量生産系として利用することができる。
【0070】
4-2.構成
本発明の形質転換体は、第3態様のm-rbFib H遺伝子発現ベクターを細胞内に包含している。つまり、第3態様のm-rbFib H遺伝子発現ベクターの導入によって形質転換された宿主が本態様の形質転換体となる。したがって、本態様の形質転換体は、宿主及び第3態様のm-rbFib H遺伝子発現ベクターで構成されている。
【0071】
また、「その後代」とは、形質転換体の後代であって、形質転換体の子孫個体を意味する。
【0072】
以下、それぞれについて具体的に説明をする。
(1)宿主
本発明の形質転換体を構成する宿主は、m-rbFib H遺伝子発現ベクターに包含されたm-rbFib H遺伝子を発現できる微生物又は細胞であれば、特に制限はされない。宿主が微生物であれば、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)のような原核細胞生物や、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)又は分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)のような真菌が挙げられる。また、宿主が真核細胞であれば、昆虫細胞(例えば、Sf9、Sf21、SF+、High-Five、BmN4)等の培養細胞が挙げられる。
【0073】
(2)m-rbFib H遺伝子発現ベクター
本発明の形質転換体又はその後代に包含されるm-rbFib H遺伝子発現ベクターは、第3態様に記載のm-rbFib H遺伝子発現ベクターである。m-rbFib H遺伝子発現ベクターは、宿主ゲノム内に組み込まれていても構わない。
【0074】
(3)後代
本明細書で「後代」とは、子孫個体をいう。子孫個体は、分裂個体等により発生する無性生殖個体、及び有性生殖により発生する有性生殖個体のいずれも含む。
【0075】
本態様における「形質転換体の後代」とは、形質転換体の子孫個体のうち、第3態様のm-rbFib H遺伝子発現ベクターをその細胞内に保持している個体をいう。後代は、第3態様のm-rbFib H遺伝子発現ベクター保持する限りにおいてその世代数を問わない。
【0076】
4-3.形質転換体の作製方法
本発明の形質転換体の作製は、宿主へのm-rbFib H遺伝子発現ベクターの導入によって行われる。m-rbFib H遺伝子発現ベクターの導入方法は、導入する宿主に応じた公知の導入方法を用いればよい。細菌や酵母に該ベクターを導入する方法であれば、例えば、ヒートショック法、カルシウムイオン法、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等が挙げられる。これらの技術は、いずれも当該分野で公知であり、様々な文献に記載されている。例えば、Green & Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th Ed., (2012),Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載の方法を参照にすればよい。また、細胞に該ベクターを導入する方法であれば、例えば、リポフェクチン法(PNAS,1989,86: 6077;PNAS, 1987,84: 7413)、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法(Virology, 1973, 52: 456-467)、リポソーム法、DEAE-Dextran法等が好適に用いられる。
【0077】
5.改変型組換えミノムシフィブロインH鎖タンパク質(m-rbFib Hタンパク質)の製造方法
5-1.概要
本発明の第5の態様は、m-rbFib Hタンパク質の製造方法である。本製造方法で得られるm-rbFib Hタンパク質がミノムシ絹糸産業上の目的のタンパク質である。本態様の製造方法によれば、m-rbFib Hタンパク質を大腸菌等の形質転換体細胞内で大量に生産することができる。
【0078】
5-2.方法
本態様の製造方法は、培養工程及び調製工程を必須の工程として含む。以下、各工程について説明をする。
(1)培養工程
「培養工程」は、第4態様の形質転換体又はその後代を所定の条件下で培養する工程をいう。所定の条件とは、形質転換体の宿主の至適培養条件をいう。例えば、宿主が大腸菌であれば、LB培地等の公知培地に植菌後、37℃で通気処理を行いながら6時間~12時間培養する条件をいう。この培養条件は、宿主の種類に応じて公知の方法で適宜至適培養方法を適用すればよい。
【0079】
本工程は、発現誘導ステップを含んでいてもよい。「発現誘導ステップ」は、m-rbFib H遺伝子発現ベクター中に挿入されたm-rbFib H遺伝子の発現を誘導するステップである。本ステップは、m-rbFib H遺伝子発現ベクター内でm-rbFib H遺伝子の発現を制御するプロモーターの種類によってその要否が決定する。例えば、プロモーターが発現誘導型プロモーターの場合には、本ステップが必要となる。一方、構成的活性型プロモーターの場合には形質転換体内でm-rbFib H遺伝子が恒常的に発現していることから本ステップは不要である。発現誘導方法は、発現誘導型プロモーターの性質に応じて行えばよい。例えば、m-rbFib H遺伝子発現ベクターがT7 RNAポリメラーゼとT7プロモーターを用いたpETシステム下にm-rbFib H遺伝子を配置している場合、培地にIPTG等の発現誘導剤を添加することでpETシステム中のlacプロモーターが活性化され、その制御下に配置された挿入遺伝子(ここではm-rbFib H遺伝子)の転写が強く促進される。これらは、いずれも公知のタンパク質発現方法であり、前述のGreen & Sambrook,2012を参照すればよい。
【0080】
(2)調製工程
「調製工程」は、培養工程後の培養液及び/又は形質転換体からm-rbFib Hタンパク質を調製する調製工程である。m-rbFib H遺伝子ベクターに含まれるm-rbFib H遺伝子がシグナルDNAを含む場合、発現したm-rbFib Hタンパク質は、細胞外に分泌されることから、生合成されたm-rbFib Hタンパク質の多くは、培養液中に存在する。一方、m-rbFib H遺伝子がシグナルDNAを含まない場合、生合成されたm-rbFib Hタンパク質は、宿主細胞内に蓄積される。本工程では、培養液又は形質転換体細胞内に存在するm-rbFib Hタンパク質を回収する工程である。
【0081】
培養液から目的のm-rbFib Hタンパク質を回収する方法は、当該分野で公知のタンパク質精製方法を用いればよい。例えば、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー等の方法を適宜に選択して、又はこれらを組み合わせることにより、精製されたm-rbFib Hタンパク質を得ることができる。また、宿主細胞内に蓄積されたm-rbFib Hタンパク質を抽出する方法は、宿主細胞を物理的及び/又は化学的処理によって破壊した後、細胞溶解液の上清から上記と同様のタンパク質精製方法を用いて精製すればよい。これらのタンパク質精製方法はいずれも公知であり、Methods in Enzymology, vol.463, :Guide to Protein Purification 2nd ed., (2009)を参照すればよい。
【実施例
【0082】
<実施例1:組換えミノムシフィブロインH遺伝子の構築>
(目的)
特開2018-074403で同定されたミノムシFib H遺伝子の塩基情報を用いて、新たにミノムシFib H遺伝子をクローニングした後、rbFib H遺伝子を構築する。
(方法)
オオミノガの終齢幼虫から絹糸腺を摘出し、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社)を用いて総RNAを抽出した。続いて、総RNAを鋳型に、ランダムヘキサマーをプライマーとして、SuperScript III First-Strand Synthesis SuperMix(Invitrogen社)を用いて、オオミノガのcDNAライブラリーを作製した。
【0083】
(1)bFib H遺伝子の5'末端領域のクローニング
bFib H遺伝子の5'末端側のcDNAクローニングのため、配列番号30及び31からなるPCRプライマーペアをデザインした。そのプライマーペアとPrimeSTAR GXL DNA Polymerase(タカラバイオ社)を用いて使用説明書記載の標準プロトコル(98℃、2分→[98℃、10秒→68℃、2分]×30サイクル→68℃、2分→4℃)でPCRを行った。増幅産物をアガロースゲル電気泳動で分離した後、約1,600bpのバンドを切出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega社)を用いて、DNA断片を抽出及び精製した。得られたDNA断片をMighty Cloning Reagent Set (Blunt End)(タカラバイオ社)を用いてpUC118ベクターのHincII部位に挿入し、bFib H遺伝子の5'末端領域を含むプラスミドベクター「pUC118-bw-N」を調製した。続いて、挿入断片の塩基配列を決定した。その結果、配列番号32で示す1,608bpからなるbFib H遺伝子の5'末端領域の塩基配列情報が明らかになった。この5'末端領域は、bFib Hタンパク質のN末端側から順にシグナル配列、N末端領域、及び中央反復領域の一部をコードする。
【0084】
次に、シグナル配列のコード領域を除くため、pUC118-bw-Nを鋳型に、制限酵素切断配列を付加した配列番号33及び34で示す塩基配列からなるPCRプライマーペアをデザインした。そのプライマーペアとPrimeSTAR GXL DNA Polymerase(タカラバイオ社)を用いてPCRを行った。増幅産物をアガロースゲル電気泳動で分離した結果、約600pbの短いバンドと約1kbの長いバンドが得られた。それぞれのバンドを切り出した後、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega社)を用いて、DNA断片を抽出及び精製した。その後、DNA Ligation Kit, Mighty Mix(タカラバイオ社)を用いて、約600pbと約1kbのDNA断片をpUC118ベクターのHincII部位に挿入した。得られたプラスミドベクターをそれぞれ「pUC118-bw-N-S」及び「pUC118-bw-N-L」とした。それぞれのプラスミドベクターにおける挿入断片の塩基配列を確認した結果、配列番号35で示す585bpの塩基配列情報、及び配列番号36で示す1,068bpの塩基配列情報が明らかになった。
【0085】
(2)bFib H遺伝子の3'末端領域のクローニング
bFib H遺伝子の3'末端側のcDNAクローニングのため、配列番号37及び38からなるPCRプライマーペアをデザインした。そのプライマーペアとPrimeSTAR GXL DNA Polymerase(タカラバイオ社)を用いて使用説明書記載の標準プロトコル(98℃、2分→[98℃、10秒→68℃、2分]×30サイクル→68℃、2分→4℃)でPCRを行った。増幅産物をアガロースゲル電気泳動で分離した後、約1,200bpのバンドを切出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega社)を用いて、DNA断片を抽出及び精製した。得られたDNA断片をMighty Cloning Reagent Set (Blunt End)(タカラバイオ社)を用いてpUC118ベクターのHincII部位に挿入し、bFib H遺伝子の3'末端領域を含むプラスミドベクター「pUC118-bw-C」を調製した。続いて、挿入断片の塩基配列を決定した。その結果、配列番号39で示す1,179bpからなるbFib H遺伝子の3'末端領域の塩基配列情報が明らかになった。この3'末端領域は、bFib Hタンパク質のN末端側から順に中央反復領域の一部、及びC末端領域をコードする。
【0086】
(3)rbFib H遺伝子の構築
(i)rbFib H遺伝子を構築するために、(1)で調製したpUC118-bw-N-SをNheI/HindIIIによって処理した。切断産物をアガロースゲル電気泳動で分離した後、pUC118-bw-N-S由来の585bpのバンドをゲルから切出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega社)を用いて、DNA断片を抽出及び精製した。得られたpUC118-bw-N-S由来のDNA断片を「bw-N-S(N/H)」とした。次に、(2)で調製したpUC118-bw-CをNheI/HindIIIによって切断処理した。得られた開環状プラスミドベクターを「pUC118-bw-C(N/H)」とし、このpUC118-bw-C(N/H)を前記bw-N-S(N/H)と連結反応させて、「pUC118-bw592」クローニングベクターを得た。
【0087】
(ii)前記pUC118-bw592をEcoRI/NheIで処理して3'末端側遺伝子のみを含むクローニングベクター「pUC118-bw592-C」を得た。(1)で調製したpUC118-bw-N-Lを同じ制限酵素で切断した。1068bpのバンドをゲルから切出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega社)を用いて、DNA断片を抽出及び精製した。得られたpUC118-bw-N-L由来でbFib H遺伝子の5'末端領域に相当するDNA断片を「bw-N-L(E/N)」とした。pUC118-bw592-Cとbw-N-L(E/N)を連結反応させて「pUC118-bw753」クローニングベクターを得た。pUC118-bw592及びpUC118-bw753は、それぞれオオミノガ由来の592アミノ酸及び753アミノ酸からなるrbFib Hタンパク質をコードする塩基数の異なるrbFib H遺伝子である。本明細書では、それぞれの遺伝子を「bw592遺伝子」(配列番号14)及び「bw753遺伝子」(配列番号22)と表記する。また、bw592遺伝子がコードするrbFib Hタンパク質は「bw592タンパク質」と表記し、そのアミノ酸配列を配列番号15で示す。bw592タンパク質は、図1で示すように、bFib Hタンパク質のN末端領域、3つの中央反復領域、及びC末端領域からなる。一方、bw753遺伝子がコードするrbFib Hタンパク質は「bw753タンパク質」と表記し、そのアミノ酸配列を配列番号23で示す。bw753タンパク質は、図1で示すように、bFib Hタンパク質のN末端領域、4つの中央反復領域、及びC末端領域からなる。
【0088】
<実施例2:組換えミノムシフィブロインH鎖遺伝子発現ベクターの構築と大腸菌形質転換体の調製>
(目的)
実施例1でクローニングしたrbFib H遺伝子を発現可能な状態で包含する遺伝子発現ベクターを構築する。また、その遺伝子発現ベクターを宿主である大腸菌に導入し、rbFib H遺伝子を発現可能な大腸菌形質転換体を調製する。
【0089】
(方法)
(1)rbFib H遺伝子発現ベクターの構築
実施例1の(3)で調製したbw592遺伝子及びbw753遺伝子を大腸菌で発現させるために、pUC118-bw592及びpUC118-bw753の各クローニングベクターをNcoI/XhoIで処理して、bw592及びbw753のDNA断片を得た。続いて、発現ベクターpET-22b(+)(Novagen社)を同様にNcoI/XhoIで処理した後、同部位にbw592及びbw753をそれぞれ挿入した。得られた発現ベクターをそれぞれ「pET-22b-bw592」及び「pET-22b-bw753」とした。
(2)rbFib H遺伝子を発現する大腸菌形質転換の調製
(1)で構築した各rbFib H遺伝子発現ベクターを精製後、大腸菌BL21(DE3)株、BLR(DE3)株、及びRosetta2(DE3)株(いずれもNovagen社)の細胞内に常法を用いて導入してrbFib H遺伝子を発現可能な大腸菌形質転換体(rbFib H発現大腸菌株)を調製した。
【0090】
<実施例3:改変型組換えミノムシフィブロインH鎖遺伝子発現ベクターの構築と大腸菌形質転換体の調製>
(目的)
実施例1でクローニングしたrbFib H遺伝子に様々な変異を加えた改変型rbFib H遺伝子(m-rbFib H遺伝子)を構築する。また、その遺伝子発現ベクターを宿主である大腸菌に導入し、m-rbFib H遺伝子を発現可能な大腸菌形質転換体を調製する。
(方法)
(1)m-rbFib HΔC遺伝子発現ベクターの構築
rbFib H遺伝子であるbw592遺伝子及びbw753遺伝子のそれぞれについて、絹糸の物性に関連性の高い中央反復領域を維持しながらC末端領域をコードする塩基配列を欠失させたrbFib H遺伝子のΔC末端欠失型改変体(「m-rbFib HΔC遺伝子」と表記する)をPCR法により作製した。
【0091】
実施例2で構築したpET-22b-bw592及びpET-22b-bw753を鋳型として、NcoI/XhoI切断部位を5'末端側に付加したプライマーペア(配列番号40及び41)を用いてPCRを行った。増幅産物をアガロースゲル電気泳動により分離後、予測されるサイズのバンドを切出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega社)を用いて、DNA断片を抽出及び精製した。得られたDNA断片をNcoI/XhoIで処理して、bw592及びbw753のΔC改変体である「bw592ΔC」(配列番号18)及び「bw753ΔC」(配列番号26)のNcoI/XhoI-DNA断片を得た。これらのDNA断片をNcoI/XhoIで処理したpET-22b(+)(Novagen社)のNcoI/XhoI部位にそれぞれ挿入した。得られた発現ベクターをそれぞれ「pET-22b-bw592ΔC」及び「pET-22b-bw753ΔC」とした。なお、bw592ΔC遺伝子がコードするrbFib Hタンパク質は「bw592ΔCタンパク質」と表記し、そのアミノ酸配列を配列番号19で示す。また、bw753ΔC遺伝子がコードするrbFib Hタンパク質は「bw753ΔCタンパク質」と表記し、そのアミノ酸配列を配列番号27で示す。
【0092】
(2)m-rbFib HΔN遺伝子発現ベクターの構築
rbFib H遺伝子であるbw592遺伝子及びbw753遺伝子のそれぞれについて、絹糸の物性に関連性の高い中央反復領域を維持しながらN末端領域をコードする塩基配列を欠失させたrbFib H遺伝子のΔN末端欠失型改変体(「m-rbFib HΔN遺伝子」と表記する)をPCR法により作製した。
【0093】
実施例2で構築したpET-22b-bw592及びpET-22b-bw753を鋳型として、NcoI/XhoI切断部位を5'末端側に付加したプライマーペア(配列番号42及び43)を用いてPCRを行った。増幅産物をアガロースゲル電気泳動により分離後、予測されるサイズのバンドを切出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega社)を用いて、DNA断片を抽出及び精製した。得られたDNA断片をNcoI/XhoIで処理して、bw592及びbw753のΔN改変体である「bw592ΔN」(配列番号16)及び「bw753ΔN」(配列番号24)のNcoI/XhoI-DNA断片を得た。これらのDNA断片をNcoI/XhoIで処理したpET-22b(+)(Novagen社)のNcoI/XhoI部位にそれぞれ挿入した。得られた発現ベクターをそれぞれ「pET-22b-bw592ΔN」及び「pET-22b-bw753ΔN」とした。なお、bw592ΔN遺伝子がコードするrbFib Hタンパク質は「bw592ΔNタンパク質」と表記し、そのアミノ酸配列を配列番号17で示す。また、bw753ΔN遺伝子がコードするrbFib Hタンパク質は「bw753ΔNタンパク質」と表記し、そのアミノ酸配列を配列番号25で示す。
【0094】
(3)m-rbFib HΔN/C遺伝子発現ベクターの構築
rbFib H遺伝子であるbw592遺伝子及びbw753遺伝子のそれぞれについて、絹糸の物性に関連性の高い中央反復領域のみを維持しながらN末端領域とC末端領域をそれぞれコードする塩基配列を欠失させたrbFib H遺伝子の両末端欠失型改変体(「m-rbFib HΔN/C遺伝子」と表記する)をPCR法により作製した。
【0095】
実施例2で構築したpET-22b-bw592及びpET-22b-bw753を鋳型として、プライマーペア(配列番号42及び41)を用いてPCRを行った。増幅産物をアガロースゲル電気泳動により分離後、予測されるサイズのバンドを切出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega社)を用いて、DNA断片を抽出及び精製した。得られたDNA断片をNcoI/XhoIで処理して、bw592及びbw753のΔN/C改変体である「bw592ΔN/C」(配列番号20)及び「bw753ΔN/C」(配列番号28)のNcoI/XhoI-DNA断片を得た。これらのDNA断片をNcoI/XhoIで処理したpET-22b(+)(Novagen社)のNcoI/XhoI部位にそれぞれ挿入した。得られた発現ベクターをそれぞれ「pET-22b-bw592ΔN/C」及び「pET-22b-bw753ΔN/C」とした。なお、bw592ΔN/C遺伝子がコードするrbFib Hタンパク質は「bw592ΔN/Cタンパク質」と表記し、そのアミノ酸配列を配列番号21で示す。また、bw753ΔN/C遺伝子がコードするrbFib Hタンパク質は「bw753ΔN/Cタンパク質」と表記し、そのアミノ酸配列を配列番号29で示す。
【0096】
(4)rbFib H遺伝子を発現する大腸菌形質転換の調製
(1)~(3)で構築した各m-rbFib H遺伝子発現ベクターを精製後、大腸菌BL21(DE3)株(Novagen社)の細胞内に常法を用いて導入してm-rbFib H遺伝子を発現可能な大腸菌形質転換体(m-rbFib H発現大腸菌株)を調製した。bw592遺伝子、bw592ΔN遺伝子、bw592ΔC遺伝子、bw592ΔN/C遺伝子、bw753遺伝子、bw753ΔN遺伝子、bw753ΔC遺伝子、及びbw753ΔN/C遺伝子を導入した形質転換体をそれぞれbw592株、bw592ΔN株、bw592ΔC株、bw592ΔN/C株、bw753株、bw753ΔN株、bw753ΔC株、及びbw753ΔN/C株と表記する。
【0097】
<実施例4:大腸菌形質転換体を用いたbFib Hタンパク質の発現量の検証>
(目的)
実施例2及び3で調製した各種rbFib H発現大腸菌株又はm-rbFib H発現大腸菌株でrbFib Hタンパク質又はm-rbFib Hタンパク質を発現させ、その発現量を検証する。
(方法)
実施例2及び3で調製した各種rbFib H発現大腸菌株(bw592株、bw753株)又はm-rbFib H発現大腸菌株(bw592ΔN株、bw592ΔC株、bw592ΔN/C株、bw753ΔN株、bw753ΔC株、及びbw753ΔN/C株)をそれぞれLB培地(Thermo Fisher Scientific社)に植菌し、37℃で培養後、WPA CO8000 Cell Dense Meter(Biowave社)を用いて濁度を測定した。濁度が0.4~0.6に達した時点で、IPTGを終濃度1mMになるように添加し、さらに25℃で4時間培養した。培養後、遠心にて集菌し、可溶化用緩衝液(Lysonase(Merck社)及びPMSF(Sigma-Aldrich社)を添加したBugBuster reagent(Merck社))に懸濁し、室温に10分間放置した後、4℃で20,000×Gで15分間遠心して、上清を回収した。上清を10%又は12%のSDS-ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した後、分離されたペプチドをトランスブロットTurbo転写システム(Bio-Rad社)を用いて1.3A、25V、7分間の印加条件でPVDF膜に転写した。
【0098】
実施例2及び3で調製した大腸菌株において、各発現ベクターより発現するrbFib Hタンパク質又はm-rbFib Hタンパク質は、いずれもC末端にHis6タグを有している。そこで、転写処理したPVDF膜をスキムミルクでブロッキング処理した後、5,000倍希釈したHRP標識抗His抗体(Anti-His-tag mAb-HRP-DirecT;MBL社)を用いて、添付プロトコルに従い反応させた。続いて、発光基質 Western Lightning Plus-ECL(Perkin Elmer社)を用いて、HRP活性に基づく発光反応を行った。
【0099】
(結果)
結果を図2に示す。この図から、改変を加えていないrbFib Hタンパク質を発現するbw592株では目的のrbFib Hタンパク質は発現したものの、その量は多くはなかった(レーン1)。Fib Hタンパク質の基本構成成分を含むrbFib Hタンパク質を大腸菌で発現させた場合、何らかの制御機構により発現抑制作用が働くようである。この未知の制御機構は、微生物発現系等でrbFib Hタンパク質を大量生産するという本発明の目的において、極めて不都合である。
【0100】
一方、Fib Hタンパク質からN末端領域を除いたm-rbFib H-bw592ΔNタンパク質を発現するbw592ΔN株では、m-rbFib H-bw592ΔNタンパク質の発現量が著しく増加し、m-rbFib H-bw592ΔNタンパク質の分解も認められなかった(レーン3)。したがって、プロテアーゼ耐性を有するrbFib Hタンパク質を大量生産するためには、N末領域の全部又は一部を除去したm-rbFib H-bw592ΔNタンパク質をコードする遺伝子を用いればよいことが明らかとなった。
【0101】
対して、Fib Hタンパク質からC末端領域を除いたm-rbFib H-bw592ΔCタンパク質を発現するbw592ΔC株では、bw592ΔN株と異なり、多数のm-rbFib H-bw592ΔCタンパク質の分解産物が確認された(レーン2)。この結果は、C末領域がrbFib Hタンパク質のプロテアーゼ分解耐性に寄与していることを示唆している。しかしながら、bw592ΔC株では、その分解量を上回る圧倒的量のm-rbFib H-bw592ΔCタンパク質の発現が確認できた。したがって、rbFib Hタンパク質を大量生産するためには、C末領域の全部又は一部を除去したm-rbFib H-bw592ΔCタンパク質をコードする遺伝子を用いて、発現後は非分解産物を抽出すればよいことが明らかとなった。
【0102】
さらに、Fib Hタンパク質のN末端及びC末端の両領域を除き、実質的に中央領域のみにしたm-rbFib H-bw592ΔN/Cタンパク質を発現するbw592ΔN/C株でもm-rbFib Hタンパク質の発現量を検証した。その結果、rbFib Hタンパク質を発現するbw592株よりも発現量は向上したものの、同時に分解産物量も増加した。一方で、bw592ΔC株ほどはm-rbFib H-bw592ΔN/Cタンパク質の激的な発現量の向上は認められなかった(レーン4)。
【0103】
上記傾向は、bw753株、bw753ΔN株、bw753ΔC株、及びbw753ΔN/C株においても同様であった(図示せず)。
【0104】
そこで、bw592株とbw592ΔC株、及びbw753株とbw753ΔC株における発光強度をルミノ・イメージアナライザー Amersham Imager 600(GEヘルスケア社)を用いて定量化し、機器付属の専用ソフトウェア(v.1.2)により算出した後、それぞれのrbFib Hタンパク質量とm-rbFib Hタンパク質量の発現量を求めた。結果を表1で示す。
【0105】
【表1】
【0106】
表1では、大腸菌で発現させたbw592株とbw753株の発現量を1としたときの、それぞれbw592ΔC株、bw753ΔC株の相対的発現量を示している。bw592ΔC株では、bw592株の約20倍、bw753ΔC株ではbw753の約16倍もの発現量の増大が認められた。bw592ΔC株とbw753ΔC株の違いは、CRUの数のみである。
【0107】
以上の結果から、rbFib Hタンパク質を大腸菌等の微生物細胞内で発現させる場合、CRUの数に関係なく、N末端領域、又はC末端領域のいずれか一方の全部、又は一部を除去したm-rbFib Hタンパク質をコードする遺伝子を用いることで、そのm-rbFib Hタンパク質の発現量を増強できることが示された。一方、両末端を除去した場合、発現量はrbFib Hタンパク質よりも増加するものの、分解量も増加し、相対的な発現量は減少してしまうことも明らかとなった。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、そのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
図1
図2
【配列表】
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