(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】水中スクーター
(51)【国際特許分類】
B63C 11/46 20060101AFI20241105BHJP
B63C 11/02 20060101ALI20241105BHJP
B63H 21/17 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
B63C11/46
B63C11/02
B63H21/17
(21)【出願番号】P 2021541560
(86)(22)【出願日】2019-12-30
(86)【国際出願番号】 EP2019087128
(87)【国際公開番号】W WO2020148077
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】102019101251.1
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519261493
【氏名又は名称】カヤゴ テック ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CAYAGO TEC GMBH
【住所又は居所原語表記】Benzstrasse 10, 32108 Bad Salzuflen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ペーター ヴァルプルギス
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2001/0025594(US,A1)
【文献】特開平02-212289(JP,A)
【文献】特開2001-301690(JP,A)
【文献】特表2018-502012(JP,A)
【文献】特表2016-503743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/46
B63C 11/02
B63H 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中スクーター、すなわち水泳補助具および潜水補助具であって、後部(12)および前部(11)を有したボディ(10)を備え、前記ボディ(10)内にまたは前記ボディ(10)表面上に、水入口(22)から水出口(24)まで延在する2つの流路(27)が設けられており、前記両流路(27)のそれぞれに、水加速装置(52)が、特にプロペラまたはアルキメディアンスクリュが配置されており、各水加速装置(52)はモータ(50)によって駆動され、前記前部(11)と前記後部(12)との間の中央領域には、またはボディ領域には、使用者が掴むことができる保持グリップ(31)が配置されており、前記後部(12)に向かう方向で前記保持グリップ(31)に続いて載置面(40)が設けられており、前記載置面上には使用者が少なくとも部分的に乗ることができ、前記ボディ(10)の下面には、前記ボディ(10)の長手方向で延在する、互いに間隔を置いて位置する2つの膨出部が設けられており、前記膨出部の間に少なくとも1つの水スライド面(14,15)が配置されている、水中スクーターにおいて、
前記流路(27)は少なくとも所定の領域で、前記膨出部の領域に延在しており、
前記膨出部は、側方のブラケット(20)の部分であって、各ブラケット(20)の領域に、モータ(50)および浸水スペース(28)が設けられており、
前記モータ(50)は、別個の浸水スペース(28)内に取り付けられており、前記浸水スペース(28)には周囲の水が流れ込むことができ
、
前記水加速装置(52)は、前記浸水スペース(28)と前記流路(27)とを貫通する駆動軸(51)によって支持されており、前記駆動軸(51)は前記モータ(50)に接続されていることを特徴とする、水中スクーター。
【請求項2】
前記両流路(27)のそれぞれは、それぞれ前記膨出部に設けられる固有の水入口(22)を有している、請求項1記載の水中スクーター。
【請求項3】
前記水入口(22)は、下面に向かって、かつ/または前記膨出部の間に配置された領域に向かって、開かれている、請求項2記載の水中スクーター。
【請求項4】
両流路(27)の前記水出口(24)は、水中スクーターの背面に向かって開かれている、請求項1から3までのいずれか1項記載の水中スクーター。
【請求項5】
前記流路(27)には、流れ方向における前記水加速装置(52)の下流側に、それぞれ1つの流れステータ(53)が配置されていて、前記流れステータは、前記水加速装置の下流側の水の渦流を減じるために、または解消するために、好適にはウォータージェットを整流するために、形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の水中スクーター。
【請求項6】
前記両水加速装置(52)に配属された前記モータ(50)は、前記流路(27)の外側で、前記ボディ(10)に配置されており、好適には、前記水中スクーターの中央長手方向軸線の両側に配置されている、請求項5記載の水中スクーター。
【請求項7】
前記浸水スペース(28)は、少なくとも1つの水流入開口(23)及び水流出開口(25)を介して周囲と接続されていて、前記水中スクーターの走行運転中に、前記浸水スペース(28)内で水流を発生させるために、前記水流入開口(23)と前記水流出開口(25)とは、前記前部(11)から前記後部(12)へと延在する、前記ボディ(10)の長手方向延在の方向で互いにずらされて配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の水中スクーター。
【請求項8】
前記両モータ(50)のそれぞれは、別個に制御可能かつ/または調整可能である、請求項1から7までのいずれか1項記載の水中スクーター。
【請求項9】
各保持グリップ(31)には、制御装置の制御エレメント(31a,31b)が配属されており、これにより、一方の前記保持グリップ(31)の前記制御エレメント(31a,31b)によって一方の前記モータ(50)の出力が制御可能であり、他方の前記保持グリップ(31)の前記制御エレメント(31a,31b)によって他方の前記モータ(50)の出力が制御可能である、請求項1から8までのいずれか1項記載の水中スクーター。
【請求項10】
両モータ(50)は1つの共通の電源(60)から給電される、または各モータ(50)に固有の電源(60)が配属される、請求項1から9までのいずれか1項記載の水中スクーター。
【請求項11】
前記モータ(50)のための前記両電源(60)が、それぞれ1つの浸水スペース(28)内に配置されている、請求項10記載の水中スクーター。
【請求項12】
制御装置によって、前記モータ(50)の回転方向が、個別にまたは一緒に、反転可能であり、ひいては前記水加速装置(52)の推進方向が反転可能である、請求項1から11までのいずれか1項記載の水中スクーター。
【請求項13】
水中スクーター、すなわち水泳補助具および潜水補助具であって、後部(12)および前部(11)を有したボディ(10)を備え、前記ボディ(10)内にまたは前記ボディ(10)表面上に2つの流路(27)が設けられており、前記流路は水入口(22)から水出口(24)まで延在しており、前記両流路(27)のそれぞれに、水加速装置(52)が、特にプロペラまたはアルキメディアンスクリュが配置されており、各水加速装置(52)はモータ(50)によって駆動されており、前記前部(11)と前記後部(12)との間の中央領域には、またはボディ領域には、使用者が掴むことができる保持グリップ(31)が配置されている、水中スクーターにおいて、
前記水中スクーターは、前記水中スクーターの中央長手方向軸線を中心とした前記水中スクーターの傾きを定性的または定量的に検出する傾斜センサを有しており、前記傾斜センサは制御装置に接続されており、前記制御装置は、前記水中スクーターの傾斜の際に前記傾斜センサの信号に応じて、前記モータ(50)が互いに異なる出力を有するように、前記両モータ(50)を制御することを特徴とする、水中スクーター。
【請求項14】
請求項1から12までのいずれか1項を特徴とする、請求項13記載の水中スクーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中スクーター、特に水泳補助具および/または潜水補助具であって、後部および前部を有したボディを備え、ボディ内にまたはボディ表面上に、水入口から水出口まで延在する2つの流路が設けられており、両流路のそれぞれに、水加速装置が、特にプロペラまたはアルキメディアンスクリュが配置されており、各水加速装置はモータによって駆動され、前部と後部との間の中央領域には、またはボディ領域には、使用者が掴むことができる保持グリップが配置されており、後部に向かう方向で保持グリップに続いて載置面が設けられており、載置面上には使用者が少なくとも部分的に乗ることができ、ボディの下面には、ボディの長手方向で延在する、互いに間隔を置いて位置する2つの膨出部が設けられており、これらの膨出部の間に少なくとも1つの水スライド面が配置されている、水中スクーターに関する。
【0002】
このような水中スクーターは、余暇用器具またはスポーツ器具として、ならびにプロフェッショナル利用のための救命手段として使用される。水中スクーターによって、使用者を水面上で牽引することができる。同時に、水中スクーターは、水面走行から潜水走行へと移行することもできる。特に、水中スクーターは、比較的長い潜水走行のために使用される。
【0003】
米国特許出願公開第2001/0025594号明細書により公知の水中スクーターでは、側方に突出した翼を有したボディが設けられている。このボディは、使用者が上体を載せることができる載置面を有している。この水中スクーターは、オートバイのようにハンドルを有している。ハンドルは2つの保持グリップを有している。使用者はこの保持グリップを掴むことができる。ボディにはさらに2つの流路が設けられており、流路の内側にはインペラが設けられている。これらのインペラは軸上に配置されていて、電気モータによって駆動することができる。この水中スクーターはその下面に、互いに間隔を置いて配置されている膨出部を有している。この公知の水中スクーターの構造は比較的大きく、これにより扱いにくい。特に、タイトな曲率半径で走行しなければならない水中走行の際には使用できない。さらに、この水中スクーターの構成高さは高いので、比較的高い流れ抵抗が生じる。
【0004】
別の水中スクーターが、独国特許出願公開第3523758号明細書によっても公知である。この水中スクーターは、ダブルデッカーのように互いに間隔を置いて位置する2つの翼を有している。これらの翼の間に、流路が形成されている。流路内には、それぞれ1つのプロペラを駆動するモータが配置されている。さらに、翼の間にはグリップが設けられている。このグリップによってモータを個別に制御することができる。
【0005】
2つの流路と、これら流路に配属されたモータとを備えた別の水中スクーターが、仏国特許発明第2915172号明細書により公知である。
【0006】
本発明の課題は、比較的低い流れ抵抗のためにコンパクトな構造を有し、スポーティな走行方式のために容易に取り扱うことのできる、冒頭で述べた形式の水中スクーターを提供することである。
【0007】
この課題は、流路が少なくとも所定の領域で、膨出部の領域に延在していることにより解決される。
【0008】
したがって本発明によれば、流路が、膨出部の領域に省スペースに組み込まれており、これにより水中スクーターの構造高さは、公知の水中スクーターよりも著しく減じられる。これにより流れ抵抗は減じられる。これにより、水中スクーターのエネルギ消費は著しく減じられ、スポーティな走行方式が可能となる。さらには、流路を膨出部に組み込むことにより、潜水走行中の水中スクーターのバランスが改善されることが示された。水面走行の際には、波打つ水のもとでも、流路への改善された水の供給が得られ、このような走行方式のもとで空気が流路に引き込まれる危険が著しく低減される。
【0009】
本発明の好適な変化態様によれば、両流路のそれぞれは、それぞれ膨出部に設けられる固有の水入口を有している。これにより、一方では、改善された直線状の流出が得られる。これにより他方では、両流路のうちの一方が意図に反して空気を引き込むが、他方の流路ではそうではない場合に、作動状態が改善される。この場合、他方の流路は、引き続き所望の推力で駆動される。
【0010】
考えられる本発明の構成によれば、水入口は、下面に向かって、かつ/または膨出部の間に配置された領域に向かって、開かれていてよい。水入口が下面に向かって開かれているように、水入口を方向付けると、流路への理想的な水の供給が保証される。水入口を、膨出部の間に配置された領域に向かって開かれているように、水入口を方向付けると、これにより走行方式が改善され、水は、膨出部の間のスライド面を介して、膨出部の間の領域に能動的に引き込まれる。水入口を、両方向に、すなわち、下面に向かって、かつ膨出部の間の領域に向かって方向付けると、これらの効果が組み合わせられて、キャビテーション作用の危険が回避される。
【0011】
最大の推力効果を得るためには、両流路の水出口は、水中スクーターの背面に向かって開かれていてよい。
【0012】
著しい効率の最適化は、流路に、流れ方向における水加速装置の下流側に、それぞれ1つの流れステータが配置されていて、流れステータは、水加速装置下流側の水の渦流を減じるために、または解消するために、好適にはウォータージェットを整流するために、形成されていることにより得られる。流路を通って、水加速装置、例えばプロペラによって引き込まれる水は、水加速装置で渦流を与えられる。この渦流により、推力が減じられる。この渦流を流れステータによって減じるまたは解消することにより、ウォータージェットの推力、ひいては水中スクーターの出力全体が著しく高められる。
【0013】
両水加速装置に配属されたモータが、流路の外側でボディ内に配置されているならば、モータに影響されない流路の自由横断面が残され、これにより最大の水の流量が達成される。好適には、モータは、水中スクーターの中央長手方向軸線の両側に配置されている。これにより、モータの重量が、水中走行中の水中スクーターの安定化のために貢献する。
【0014】
好適な本発明のオプションは、モータが、1つの共通のまたは別個の浸水スペース内に取り付けられており、浸水スペースには周囲の水が流れ込むことができることである。これにより、走行運転中、モータを周囲の水によって効率的に冷却することができる。周囲の水は、実際に、無限に冷却のために使用できる。
【0015】
この場合、効率的な貫流を生じさせることができるように、浸水スペースは、少なくとも1つの水流入開口と水流出開口とを介して周囲と接続されていて、水中スクーターの走行運転中に、浸水スペース内で水流を発生させるために、水流入開口と水流出開口とは、前部から後部へと延在する、ボディの長手方向延在の方向で互いにずらされて配置されていることが想定され得る。
【0016】
浸水スペースに、1つ以上の排気開口を配属することも考えられる。水中スクーターが水中に置かれると、空気は浸水スペースから、排気開口を介して迅速に逃げることができ、これにより浸水スペースを水で満たすことができる。好適には、できるだけ完全な排気を行うことができるように、スクーター下面とは逆に上方に配置された排気開口が、浸水スペースの領域に配置されている。
【0017】
浸水スペースは、水中スクーターが水の中に置かれるときに、水中スクーターの浮力を減じるためにも利用することができる。これは、水中スクーターの自重の低減に通じ、これにより水中スクーターを水の外では簡単に搬送することができる。
【0018】
2つの浸水スペースを使用する場合には、走行運転中の水中スクーターのバランスはさらに改善される。
【0019】
考えられる本発明の変化態様によれば、膨出部は、側方のブラケットの部分であって、好適には、各ブラケットの領域に、モータおよび/または浸水スペースが設けられていてよい。ブラケットは、この場合、実際のボディ本体に対して間隔を置かずに、または間隔を置いて配置されていてよい。ブラケットは、ボディ本体に組み込まれていてもよい。各ブラケットに、モータおよび/または浸水スペースが配置されているならば、これにより走行運転中の水中スクーターの安定した中間位置が得られる。
【0020】
特に好適には、両モータのそれぞれは、別個に制御可能かつ/または調整可能であってよい。これにより、カーブ走行の際に改善された走行特性が得られる。例えば、カーブ走行の際、カーブの外半径側のモータは、内半径側のモータよりも高い出力で作動される。これによりタイトなカーブを高速で走行することができる。
【0021】
特にこの場合、各保持グリップには、制御装置の制御エレメントが配属されており、これにより、一方の保持グリップの制御エレメントによって一方のモータの出力が制御可能であり、他方の保持グリップの制御エレメントによって他方のモータの出力が制御可能であることも想定され得る。このようにして、使用者は、走行運転中、カーブ走行特性に能動的に影響を与えることができ、これによりスポーティな走行方式が支援される。
【0022】
本発明の別の変化態様によれば、両モータが1つの共通の電源によって給電されることが想定されてよく、この場合、使用者が載置面上に加える負荷を、電源の重量を介して補償するために、蓄電池として形成することができる電源を、スクーター中央の中心に、または水中スクーターの前部領域に配置することが推奨される。各モータに固有の電源を配属させることも考えられる。この場合、冗長性が得られる。走行運転中、一方の電源が故障した場合、使用者は、第2の蓄電池の補助により、減じられた速度で浜辺まで到達することができる。この場合、残っている電源を、両モータに切り換えることができる切替スイッチを設けることも考えられる。2つの電源を使用する場合、これらの電源は、好適には、水中スクーターの中央長手方向軸線に対して対称に、かつ水中スクーターの、中央長手方向軸線を通って延在する中央横断面の両側に配置されており、これにより水中スクーターの良好な安定性が達成される。
【0023】
2つの電源を使用する場合には、モータのための両電源が、それぞれ1つの浸水スペース内に、または1つの共通の浸水スペース内に配置されていることも推奨される。この場合、走行運転中、電源を浸水スペース内で冷却することができる。これにより、電源の一定の出力が保証される。
【0024】
制御装置によって、モータの回転方向が、個別にまたは一緒に、反転可能であり、ひいては水加速装置の推進方向が反転可能であることが想定される。これにより、水中スクーターの逆走または回転を極めて狭い空間で行うことができる。
【0025】
本発明の課題を解決するために、水中スクーターが、後部および前部を有したボディを備え、ボディ内にまたはボディ表面上に2つの流路が設けられており、これらの流路は水入口から水出口まで延在しており、両流路のそれぞれに、水加速装置が、特にプロペラまたはアルキメディアンスクリュが配置されており、各水加速装置はモータによって駆動されており、前部と後部との間の中央領域には、またはボディ領域には、使用者が掴むことができる保持グリップが配置されるように、水中スクーターを構成することができる。このような水中スクーターでは、水中スクーターが、水中スクーターの中央長手方向軸線を中心とした水中スクーターの傾きを定性的または定量的に検出する傾斜センサを有しており、傾斜センサは制御装置に接続されていて、制御装置は、水中スクーターの傾斜の際に傾斜センサの信号に応じて、モータが互いに異なる出力を有するように、両モータを制御することができる。
【0026】
このような水中スクーターの使用者がカーブ走行を行いたい場合、使用者は、水中スクーターを、その長手方向軸線を中心として直感的に傾ける。傾斜センサはこの傾きを検知する。そして制御装置が、両モータをその出力に関して制御する。例えば、カーブ内側に面したモータを、外側のモータよりも低い出力で作動させることができる。これにより、タイトな曲率半径のカーブ走行が実現され、これによりスポーティな走行方式となる。傾斜センサが、傾斜の程度を、特に傾斜角度を定性的に検出することが考えられる。制御装置には、メモリに、機能性の関係または特性マップが保存されている。測定された傾斜角度に応じて、制御装置は、両モータに割り当てられた制御パラメータを取得する。これにより、最大の走行出力で最適なカーブ走行が可能となる。
【0027】
次に、本発明を、図示した実施例につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】後方から後部領域を見た水中スクーターの図である。
【
図2】
図1の水中スクーターを下方から見た図である。
【
図3】
図1および
図2の水中スクーターを側方から見た断面図である。
【0029】
図1および
図2には、ボディ10を含む水中スクーターが示されており、このボディ10は、前部11と後部12とを有している。前部11の領域には、ディスプレイ32を有したコックピット30が設けられている。ディスプレイ32によって、水中スクーターの所定の運転パラメータが表示される。例えば、このディスプレイ32によって、電源60の充電状態、潜水深さ、または速度を表示することができる。
【0030】
ディスプレイ32の両側で、コックピット30には保持グリップ31が設けられている。この保持グリップで使用者は水中スクーターに掴まることができる。保持グリップ31は、制御エレメント31a,31bを有していてよい。
【0031】
後部12に向かう方向で、コックピット30には載置面40が続いている。この載置面40上に、使用者は部分的に乗ることができ、例えば、腕および/または上体の部分領域を置くことができる。好適には、載置面40には、
図1に示したように、中央領域でくぼみ状の凹部が設けられている。しかしながら、凹部が設けられておらず、外側に向かって湾曲した中央領域または平坦な中央領域が設けられていることも考えられる。
【0032】
中央領域には、水中スクーターの中央長手方向軸線の両側で、ブラケット20が続いている。ブラケット20は、上方の湾曲移行部42を有している。この湾曲移行部42は、外方に向かって凸状に湾曲して形成されている。勿論、他の移行部をここに設けることもできる。湾曲移行部42は、載置面の一部を成し、載置面40の中央領域へと移行している。ブラケット20の、外方に向かって続いている上面は、使用者の腕の載置面を成す。ブラケット20は、その長手方向側で、側壁21で終端している。側壁21は、流体力学的に最適化されて凸面状に、水中スクーターの下面に到る。ここで側壁21は、内側の画定壁26へと移行する。画定壁26もブラケット20の一部である。
図2からわかるように、画定壁26はそれぞれ、前方部分26.1、中央部分26.2、および後方部分26.3に分けられる。
【0033】
画定壁26の前方部分26.1は、外方に向かう方向で逸れ、したがって流体力学的に最適化されて配置されている。
【0034】
ブラケット20は、水中スクーターの下面に向けられた膨出部を形成する。これらの膨出部は、
図2に示したように、水中スクーターの長手方向軸線の方向で延在している。膨出部は、側壁21と画定壁26とによって形成されており、画定壁26は側壁21に続いている。これらの膨出部は互いに間隔を置いて配置されている。これらの膨出部の間には、少なくとも1つの、この実施例では2つの排水面14,15がスクーター下面13に設けられている。スライド面14,15と画定壁26とは、1つの水ガイド通路を形成している。この水ガイド通路は、水中スクーターの下面に向かって開かれている。さらに、水ガイド通路は、後部の領域および前部の領域でも開かれている。このことは
図2に詳しく示されている。
【0035】
図3には、
図2のIII-IIIで示した断面延在に沿ったブラケット20の断面図が示されている。この図からわかるように、ブラケット20は、流路27を有しており、この通路は少なくとも所定の領域でブラケット20を貫通している。流路27は、水入口22と水出口24とを有している。水入口22は、水中スクーターの下面に向かっていて、
図2からわかるように、両ブラケット20の間に配置された領域に向かって開かれている。水入口22は、下面に向かってのみ、または両ブラケット20の間の領域に向かってのみ開かれていることも考えられる。
【0036】
流路27には、水加速装置52が配置されている。これはこの場合、プロペラとして形成されている。水加速装置52は、駆動軸51によって支持される。駆動軸51は、好適には炭素繊維強化プラスチックから製造されている。このため、駆動軸は僅かな重量しか有していない。これにより、一方では、水中スクーターの全重量が減じられる。これにより他方では、質量慣性が減じられるので、迅速な反応挙動を実現することができる。
【0037】
駆動軸51はモータ50に接続されている。モータ50は、インナーロータモータとしてまたはアウターロータモータとして形成されていてよい。利用可能な高いトルクを、ひいては高い推力を実現するためには、好適には、アウターロータモータが使用される。
【0038】
駆動モータ50は、浸水スペース28に取り付けられている。浸水スペース28は、少なくとも部分的にブラケット20の領域に配置されている。浸水スペース28には、水流入開口23と、水流出開口25とが配属されている。この場合、水流入開口23と水流出開口25とは、水中スクーターの長手方向延在の方向で互いにずらされて配置されている。
図2からわかるように、水流入開口23は前部の領域に配置されている。水流出開口25は、後部12の領域に配置されている。
【0039】
図1からわかるように、水流出開口25は例えば、水出口24を中心として環状に開かれていてよい。
図3からさらにわかるように、浸水スペース28内にモータ50が配置されている。浸水スペース28と流路27との間には壁エレメントが配置されている。軸51はこの壁エレメントを適切な位置で貫通している。
【0040】
両ブラケット20は構造的に同一に形成されているので、上述の説明は両ブラケット20に当てはまり、好適には両ブラケット20は鏡像対称的に構成されている。
【0041】
両モータ50には中央で、電源60から給電することができる。電源60は、水中スクーターのボディ10に取り付けられている。好適には電源60は、
図3からわかるように、水中スクーターの前部11の領域に配置されている。しかしながら、電源60が、スクーター中央の領域に配置されていることも考えられる。
【0042】
さらに、2つの別個の電源60を使用することが考えられる。この場合、各電源60が好適には、ブラケット20における両モータ50のそれぞれ1つに給電する。電源60は例えば、水中スクーターの長手方向で延在する中央横断面の両側に配置されていてよい。これにより負荷の分散が得られる。好適にはこの場合、電源60は同一に形成されており、このことは一方では、部品数の削減になり、他方では均一な重量配分に通ずる。さらに好適には、両電源60は、中央横断面に対して対称に配置されている。
【0043】
一方の電源60または両方の電源60が、浸水スペース28の領域に配置されていることも考えられる。これにより、走行運転中の電源の冷却が可能である。
【0044】
図示した実施例では、浸水スペース28には、別個の水流入開口23が設けられている。しかしながら、両浸水スペースのために1つの共通の水流入開口23が設けられている、かつ/または両浸水スペース28のための1つの共通の水流出開口25が設けられていることも可能である。
【0045】
さらに、両モータ50および/または電源60が配置されている1つの共通の浸水スペース28が設けられていることが考えられる。冷却目的で、水中スクーターのための電気的な調整ユニットを浸水スペース28に取り付けることも考えられる。勿論、この調整ユニットは、水中スクーターの他の適切な位置に配置されてもよい。
【0046】
この調整ユニットは例えば、電源60に接続された両モータ50の出力を個々に制御するために使用することができる。この実施例では、保持グリップ31は、上述したように、制御エレメント31a,31bを有している。制御エレメント31a,31bは、左側の保持グリップ31によって一方のモータを、右側の保持グリップ31によって他方のモータ50を制御することができるように相互接続されている。特にこの場合、使用者は、モータ50の出力を個々に制御することができる。これにより、改善されたカーブ走行特性が可能となる。例えば、右舷側のモータ50を、左舷側のモータ50よりも高い出力で作動させると、左舷に向かう方向のカーブ走行が支援される。
【0047】
モータ50のこのような制御可能性に対して付加的にまたは代替的に、ボディ10内にまたはボディ10表面に、傾斜センサを配置することもできる。このような傾斜センサは、中央長手方向軸線を中心とした水中スクーターの傾きを検出する。この場合、中央長手方向軸線を中心とした水中スクーターの傾きは、傾斜センサによって定性的または定量的に検出することができる。傾斜センサは、制御装置に接続されている。制御装置は、水中スクーターの傾斜の際に傾斜センサの信号に応じて、これらモータ50が互いに異なる出力を有するように、両モータ50を制御するように構成されている。これにより、カーブ走行特性に、水中スクーターの傾斜のみによって影響を与えることができる。
【0048】
水中スクーターが水中に置かれると、水は、水流入開口23および水流出開口25を介して、浸水スペース28内に流入するので、浸水スペースは満たされる。
【0049】
水を完全に満たすためには、または水をほぼ完全に満たすためには、浸水スペース28に、1つ以上の排気開口を、好適には上方領域に配置することができる。
【0050】
さらに、流路27には、水入口22および水出口24を介して水が満たされる。
【0051】
これにより、水中スクーターを走行作動させることができる。作動のために、使用者は、保持グリップ31の制御エレメント31a,31bを介してモータ50を作動させる。モータ50の作動により駆動軸51が作動され、駆動軸によって水加速装置52が作動される。水加速装置52は、水入口22から水を吸い込み、この水を流路27内で加速させる。水加速装置52に続いて、加速された水は、水加速装置52によってこの水に与えられる渦流を有する。したがって、
図3からわかるように、水加速装置52に続いて、流れステータ53が設けられていて、この流れステータ53は、水ガイドベーンを有しており、水ガイドベーンは、ウォータージェットの渦流に対抗するように配置されており、ウォータージェットの渦流を低減させ、好適には完全になくす。流れステータ53に続いて、ウォータージェットは、水中スクーターを離れ、その推力効果を発揮する。
【0052】
水中走行中、水は、膨出部とスライド面14,15との間にガイドされる。スライド面14,15はこの場合、凸面または凹面として形成されていてよい。水は、膨出部とスライド面14,15との間の水ガイド通路内に引き込まれ、加速されるので、改善された走行特性が生じる。
【0053】
水中走行の終了後、使用者は、水中スクーターを水から持ち上げることができる。この場合、浸水スペース28および流路27は、水入口22、水出口24、水流入開口23、および水流出開口25を介して排水される。これにより、水中スクーターの重量は著しく減じられ、簡単に運ぶことができる。