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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】ショベル、ショベル診断システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
E02F9/26 A
E02F9/26 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021543094
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2020032784
(87)【国際公開番号】W WO2021040038
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2019156621
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019156622
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019186174
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019199299
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】南部 大河
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 壮太郎
(72)【発明者】
【氏名】塚本 浩之
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/155629(WO,A1)
【文献】特開2010-198159(JP,A)
【文献】特開2019-031205(JP,A)
【文献】特開2015-063864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に搭載された上部旋回体と、
前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、
前記上部旋回体に搭載され、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、を備え、
前記エンジンの出力変動が相対的に小さくなるようなショベルの所定のイベントの完了時においてアクチュエータを作動させない状態で前記エンジンを一定の運転条件で運転させたときに、ショベルの診断用のデータを収集
前記所定のイベントは、ショベルの診断とは無関係に発生するイベントである、
ョベル。
【請求項2】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に搭載された上部旋回体と、
前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、
前記上部旋回体に搭載され、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、を備え、
前記エンジンの出力変動が相対的に小さくなるようなショベルの所定のイベントの完了時において、前記エンジンを一定の運転条件で運転させたときに、ショベルの診断用のデータを収集し、
前記所定のイベントは、ショベルの診断とは無関係に発生するイベントである、
ショベル。
【請求項3】
前記一定の運転条件とは、前記エンジンに対する負荷変動が相対的に小さいことを表す条件を含む、
請求項1又は2に記載のショベル。
【請求項4】
前記一定の運転条件とは、前記エンジンが所定の状態であることを表す条件を含む、
請求項1乃至3の何れか一項に記載のショベル。
【請求項5】
前記所定のイベントの完了時に、前記所定のイベントにおける前記一定の運転条件に対応する前記エンジンの状態を所定時間だけ継続させて、前記データを収集する、
請求項又はに記載のショベル。
【請求項6】
前記データの収集の完了後、前記所定のイベントの終了をオペレータに通知する、
請求項又はに記載のショベル。
【請求項7】
前記データの収集を含むショベルの診断に関する処理の最中に、周辺監視装置によるショベルの周囲の所定距離内へ進入する物体の有無の監視を継続させる、
請求項1乃至の何れか一項に記載のショベル。
【請求項8】
センターバイパスカット弁、制御弁、及び油圧ポンプの少なくとも一つによって前記一定の運転条件に対応する一定の油圧負荷を発生させる
請求項1乃至の何れか一項に記載のショベル。
【請求項9】
前記データの収集開始後に、前記油圧ポンプの圧力を前記一定の油圧負荷に対応する圧力に上昇させる
請求項に記載のショベル。
【請求項10】
前記データの収集に関する処理の最中に、アクチュエータに関する操作、前記エンジンの回転数に関する操作、ショベルの非常停止に関する操作、及びショベルの異常に関する信号の少なくとも一つを検知すると、前記データの収集に関する処理を終了する、
請求項1乃至の何れか一項に記載のショベル。
【請求項11】
ショベルの診断に関する処理が行われる場合に、ショベルの操作ができない旨の注意喚起の表示を行う表示装置を備える、
請求項1乃至1の何れか一項に記載のショベル。
【請求項12】
ショベルの診断に関する処理を開始する前に、ショベルを直ぐに動かす意思があれば、前記診断に関する処理を行わせないように促す表示を行う表示装置を備える、
請求項1乃至1の何れか一項に記載のショベル。
【請求項13】
ショベルの診断に関する処理が行われる場合に、前記診断に関する処理の実行を解除する方法を表示する表示装置を備える、
請求項1乃至1の何れか一項に記載のショベル。
【請求項14】
下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、前記上部旋回体に搭載され、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、を備えるショベルと、前記ショベルと通信可能な管理装置とを含み、
前記ショベルは、前記エンジンの出力変動が相対的に小さくなるようなショベルの所定のイベントの完了時において、アクチュエータを作動させない状態で前記エンジンを一定の運転条件で運転させたときに、前記ショベルの診断用のデータを収集し、収集した前記データを前記管理装置に送信し、
前記所定のイベントは、ショベルの診断とは無関係に発生するイベントであり、
前記管理装置は、前記ショベルから受信される前記データに基づき、前記ショベルに関する診断を行う、
ショベル診断システム。
【請求項15】
下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、前記上部旋回体に搭載され、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、を備えるショベルと、前記ショベルと通信可能な管理装置とを含み、
前記ショベルは、前記エンジンの出力変動が相対的に小さくなるようなショベルの所定のイベントの完了時において、前記エンジンを一定の運転条件で運転させたときに、前記ショベルの診断用のデータを収集し、収集した前記データを前記管理装置に送信し、
前記所定のイベントは、ショベルの診断とは無関係に発生するイベントであり、
前記管理装置は、前記ショベルから受信される前記データに基づき、前記ショベルに関する診断を行う、
ショベル診断システム。
【請求項16】
前記一定の運転条件とは、前記エンジンに対する負荷変動が相対的に小さいことを表す条件を含む、
請求項1又は1に記載のショベル診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、オペレータの操作によって、ショベルに規定動作を行わせて、ショベルに関する診断用のデータとして、規定動作時におけるショベルの各種センサの検出データを取得する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-63864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の技術では、オペレータが自らレバー操作を行い、ショベルにアタッチメントの動作や旋回動作等の規定動作を行わせる必要がある。そのため、油圧アクチュエータの動作の影響で、十分に信頼性の高い診断用のデータを取得できない可能性がある。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、より信頼性の高い診断用のデータを収集可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に搭載された上部旋回体と、
前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、
前記上部旋回体に搭載され、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、を備え、
前記エンジンの出力変動が相対的に小さくなるようなショベルの所定のイベントの完了時において、アクチュエータを作動させない状態で前記エンジンを一定の運転条件で運転させたときに、ショベルの診断用のデータを収集
前記所定のイベントは、ショベルの診断とは無関係に発生するイベントである、
ショベルが提供される。
また、本開示の他の実施形態では、
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に搭載された上部旋回体と、
前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、
前記上部旋回体に搭載され、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、を備え、
前記エンジンの出力変動が相対的に小さくなるようなショベルの所定のイベントの完了時において、前記エンジンを一定の運転条件で運転させたときに、ショベルの診断用のデータを収集し、
前記所定のイベントは、ショベルの診断とは無関係に発生するイベントである、
ショベルが提供される。
【0007】
また、本開示の更に他の実施形態では、
下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、前記上部旋回体に搭載され、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、を備えるショベルと、前記ショベルと通信可能な管理装置とを含み、
前記ショベルは、前記エンジンの出力変動が相対的に小さくなるようなショベルの所定のイベントの完了時において、アクチュエータを作動させない状態で前記エンジンを一定の運転条件で運転させたときに、ショベルの診断用のデータを収集し、収集した前記データを前記管理装置に送信し、
前記所定のイベントは、ショベルの診断とは無関係に発生するイベントであり、
前記管理装置は、前記ショベルから受信される前記データに基づき、前記ショベルに関する診断を行う、
ショベル診断システムが提供される。
また、本開示の更に他の実施形態では、
下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、前記上部旋回体に搭載され、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、を備えるショベルと、前記ショベルと通信可能な管理装置とを含み、
前記ショベルは、前記エンジンの出力変動が相対的に小さくなるようなショベルの所定のイベントの完了時において、前記エンジンを一定の運転条件で運転させたときに、前記ショベルの診断用のデータを収集し、収集した前記データを前記管理装置に送信し、
前記所定のイベントは、ショベルの診断とは無関係に発生するイベントであり、
前記管理装置は、前記ショベルから受信される前記データに基づき、前記ショベルに関する診断を行う、
ショベル診断システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
上述の実施形態によれば、より信頼性の高い診断用のデータを収集可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ショベル管理システムの一例を示す概要図である。
図2】ショベル管理システムの構成の一例を示すブロック図である。
図3】ショベルの油圧システムの構成の一例を概略的に示す図である。
図4】電気式の操作装置の一例を示す図である。
図5】コントローラによる診断用データの取得に関する制御処理の第1例を概略的に示すフローチャートである。
図6】暖機モードにおける表示装置の表示内容の一例を示す図である。
図7】ショベルにおいて取得される診断用データの一例を示す図である。
図8】コントローラによる診断用データの取得に関する制御処理の変形例を概略的に示すフローチャートである。
図9】診断用データの取得に関する制御処理の実行時におけるエンジン回転数、メインポンプの吐出圧、及びエンジンの水温の時間変化の一例を示すタイムチャートである。
図10】コントローラによる診断用データの取得に関する制御処理の第2例を概略的に示すフローチャートである。
図11】診断用データの取得に関する制御処理の実行時におけるエンジン回転数、及びメインポンプの吐出圧の時間変化の一例を示すタイムチャートである。
図12】手動再生モード中における表示装置の表示内容の一例を示す図である。
図13】コントローラによる診断用データの取得に関する制御処理の第6例を概略的に示すフローチャートである。
図14】診断用データの取得に関する制御処理の実行時におけるエンジン回転数、メインポンプの吐出圧、及びエンジンの水温の時間変化の一例を示すタイムチャートである。
図15】診断用データの取得に関する制御処理の実行時における表示装置の表示内容の一例を示す図である。
図16】コントローラによる診断用データの取得に関する制御処理の第7例を概略的に示すフローチャートである。
図17】診断用データの取得に関する制御処理の実行時における表示装置の表示内容の具体例を示す図である。
図18】診断用データの取得に関する制御処理の実行時における表示装置の表示内容の具体例を示す図である。
図19】コントローラによる診断用データの取得に関する制御処理の第8例を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
[ショベル管理システムの概要]
最初に、図1を参照して、本実施形態に係るショベル管理システムSYSの概要について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るショベル管理システムSYSの一例を示す概要図である。
【0013】
図1に示すように、ショベル管理システムSYS(ショベル診断システムの一例)は、ショベル100と、管理装置300とを含む。
【0014】
<ショベルの概要>
本実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回自在に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、掘削アタッチメント(作業機)を構成するブーム4、アーム5、及び、バケット6と、キャビン10とを備える。
【0015】
下部走行体1は、左右一対のクローラが走行油圧モータ1L,1R(図2参照)でそれぞれ油圧駆動されることにより、ショベル100を走行させる。
【0016】
上部旋回体3は、旋回油圧モータ2A(図2参照)で駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。
【0017】
尚、上部旋回体3は、旋回油圧モータ2Aの代わりに、電動機により電気駆動されてもよい。
【0018】
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に枢着され、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に枢着され、アーム5の先端には、エンドアタッチメントとしてのバケット6が上下回動可能に枢着される。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、それぞれ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9により油圧駆動される。
【0019】
尚、バケット6は、エンドアタッチメントの一例であり、アーム5の先端には、作業内容等に応じて、バケット6の代わりに、他のエンドアタッチメント、例えば、法面用バケット、浚渫用バケット、ブレーカ等が取り付けられてもよい。
【0020】
キャビン10は、オペレータ(操作者)が搭乗する運転室であり、上部旋回体3の前部左側に搭載される。
【0021】
また、本実施形態に係るショベル100は、送信装置S1及び受信装置S2を備え、所定の通信回線を通じて、管理装置300と通信可能に接続される。所定の通信回線には、例えば、ブルートゥース(登録商標)やWiFi等の近距離の無線通信回線、基地局を末端とする移動体通信網、通信衛星を利用する衛星通信網、インターネット網等が含まれうる。これにより、ショベル100は、例えば、自機の各種状態に関する情報を管理装置300に送信(アップロード)することができる。
【0022】
<管理装置の概要>
管理装置300は、所定の通信回線を通じて、ショベル100と通信可能に接続され、ショベル100から受信される各種情報に基づき、ショベル100の状態や運用に関する管理を行う。
【0023】
管理装置300は、例えば、ショベル100の作業現場の外部の管理センタに設置されるコンピュータ(例えば、クラウドサーバ)である。また、管理装置300は、例えば、ショベル100に相対的に近い場所(例えば、作業現場内の管理事務所等や作業現場の近くの無線基地局、局舎等の通信施設)に設置されるエッジサーバであってもよい。また、管理装置300は、ショベル100の作業現場内の管理事務所等に設置される定置型のコンピュータ端末(定置端末)であってもよい。また、管理装置300は、ショベル100の管理者等が携帯可能な携帯端末(例えば、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップ型のコンピュータ端末等)であってもよい。
【0024】
[ショベル管理システムの構成]
次に、図1に加えて、図2図4を参照して、本実施形態に係るショベル管理システムSYSの具体的な構成について説明する。
【0025】
図2は、本実施形態に係るショベル管理システムSYSの構成の一例を概略的に示すブロック図である。図3は、本実施形態に係るショベル100の油圧システムの構成の一例を示す図である。図4は、電気式の操作装置26の一例を示す図である。具体的には、図4は、操作装置26に含まれる、ブーム4(ブームシリンダ7)を操作するための電気式のレバー装置26Aの一例を示す図であり、ブームシリンダ7を油圧制御するコントロールバルブ17(制御弁175L,175R)にパイロット圧を作用させるパイロット回路を表している。
【0026】
尚、図2において、機械的動力ライン、作動油ライン、電源ライン、パイロットライン、及び電気信号ラインは、それぞれ、二重線、太い実線、細い実線、破線、及び点線で示されている。また、図3において、機械的動力ライン、作動油ライン、及び電気信号ラインは、それぞれ、二重線、実線、及び点線で示されている。また、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9のそれぞれを油圧制御するパイロット回路は、ブームシリンダ7を油圧制御する図4のパイロット回路と同様に表される。また、下部走行体1(左右それぞれのクローラ)を駆動する走行油圧モータ1L,1Rを油圧制御するパイロット回路についても、図4と同様に表される。また、上部旋回体3を駆動する旋回油圧モータ2Aを油圧制御するパイロット回路についても、図4と同様に表される。そのため、電気式の操作装置26に含まれる、左右のクローラ(下部走行体1)、上部旋回体3、アーム5、バケット6を操作するためのレバー装置やペダル装置等の図示は省略される。
【0027】
<ショベルの構成>
本実施形態に係るショベル100の油圧駆動系は、上述の如く、走行油圧モータ1L,1R、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等の油圧アクチュエータを含む。また、本実施形態に係るショベル100の油圧駆動系は、エンジン11と、レギュレータ13、メインポンプ14、及びコントロールバルブ17等により構成される油圧システムを含む。これらの油圧駆動系を構成する走行油圧モータ1L,1R、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、及びコントロールバルブ17等は、ショベル100の機器に含まれる。
【0028】
エンジン11は、油圧駆動系におけるメイン動力源であり、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。エンジン11は、例えば、上部旋回体3の後部に搭載され、後述するエンジン制御装置(ECU:Engine Control Unit)74の制御下で、予め設定される目標回転数で一定回転する。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14およびパイロットポンプ15の入力軸に接続され、エンジン11は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。また、エンジン11には、その動力で駆動される発電機11a、及びエンジン11を始動させるためのスタータ11b等が搭載される。また、エンジン11には、排気ガスの浄化処理を行う排気ガス処理装置が接続される。排気ガス処理装置には、排気ガス中のPM(Particulate Matter:粒子状物質)を低減させるPM低減装置(例えば、DPF(Diesel Particulate Filter)やDPD(Diesel Particulate Diffuser))や、排気ガス中のNOx(窒素酸化物)を低減させるNOx低減装置(例えば、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システム)が含まれる。
【0029】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を調整する。例えば、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じて、メインポンプ14の斜板の角度(傾転角)を調節する。図3に示すように、レギュレータ13は、例えば、レギュレータ13L,13Rを含む。
【0030】
メインポンプ14(油圧ポンプの一例)は、例えば、エンジン11と同様、上部旋回体3の後部に搭載され、高圧油圧ライン16を通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、上述の如く、エンジン11により駆動される。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、上述の如く、コントローラ30の制御下で、レギュレータ13により斜板の傾転角が調節されることでピストンのストローク長が調整され、吐出流量が制御される。図3に示すように、メインポンプ14は、例えば、メインポンプ14L,14Rを含む。
【0031】
コントロールバルブ17は、油圧システムにおける作動油の流れを制御するように構成されている。コントロールバルブ17は、例えば、上部旋回体3の中央部に搭載され、オペレータによる操作装置26に対する操作に応じて、油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、上述の如く、高圧油圧ライン16を介してメインポンプ14と接続され、メインポンプ14から供給される作動油を、操作装置26の操作状態や遠隔操作の内容等に応じて、油圧アクチュエータ(走行油圧モータ1L,1R、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9)に選択的に供給する。
【0032】
図3に示すように、コントロールバルブ17は、例えば、油圧パイロット式の複数の制御弁(制御弁171,172,173,174,175L,175R,176L,176R)を含むバルブユニットである。制御弁171,172,173,174,175L,175R,176L,176Rは、メインポンプ14から複数の油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する。具体的には、制御弁171は、走行油圧モータ1Lに対応し、制御弁172は、走行油圧モータ1Rに対応し、制御弁173は、旋回油圧モータ2Aに対応する。また、制御弁174は、バケットシリンダ9に対応し、制御弁175L,175Rは、ブームシリンダ7に対応し、制御弁176L,176Rは、アームシリンダ8に対応する。
【0033】
図3に示すように、本実施形態に係るショベル100の油圧システムは、エンジン11により駆動されるメインポンプ14L,14Rのそれぞれから、センタバイパス油路40L,40R、パラレル油路42L,42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
【0034】
レギュレータ13L,13Rは、それぞれ、コントローラ30による制御下で、メインポンプ14L、14Rの斜板の傾転角を調節することによって、メインポンプ14L,14Rの吐出量を調節する。具体的には、レギュレータ13Lは、例えば、メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じてメインポンプ14Lの斜板の傾転角を調節して吐出量を減少させる。レギュレータ13Rについても同様である。これにより、吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないようにすることができる。
【0035】
センタバイパス油路40Lは、メインポンプ14Lを起点として、コントロールバルブ17内に配置される制御弁171,173,175L,176Lを順に通過し、作動油タンクに至る。
【0036】
センタバイパス油路40Rは、メインポンプ14Rを起点として、コントロールバルブ17内に配置される制御弁172,174,175R,176Rを順に通過し、作動油タンクに至る。
【0037】
制御弁171は、メインポンプ14Lから吐出される作動油を走行油圧モータ1Lへ供給し、且つ、走行油圧モータ1Lが吐出する作動油を作動油タンクに排出させるスプール弁である。
【0038】
制御弁172は、メインポンプ14Rから吐出される作動油を走行油圧モータ1Rへ供給し、且つ、走行油圧モータ1Rが吐出する作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0039】
制御弁173は、メインポンプ14Lから吐出される作動油を旋回油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0040】
制御弁174は、メインポンプ14Rから吐出される作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0041】
制御弁175L,175Rは、メインポンプ14L,14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。具体的には、制御弁175Lは、メインポンプ14Lが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。制御弁175Rは、メインポンプ14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0042】
制御弁176L,176Rは、それぞれ、メインポンプ14L,14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0043】
制御弁171,172,173,174,175L,175R,176L,176Rは、それぞれ、パイロットポートに作用するパイロット圧に応じて、油圧アクチュエータに給排される作動油の流量を調整したり、流れる方向を切り換えたりする。
【0044】
パラレル油路42Lは、センタバイパス油路40Lに並行し、センタバイパス油路40Lと並列的に、制御弁171,173,175L,176Lにメインポンプ14Lの作動油を供給する。具体的には、パラレル油路42Lは、制御弁171の上流側でセンタバイパス油路40Lから分岐し、制御弁171,173,175L,176Rのそれぞれに並列してメインポンプ14Lの作動油を供給可能に構成される。これにより、パラレル油路42Lは、制御弁171,173,175Lの何れかによってセンタバイパス油路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0045】
パラレル油路42Rは、センタバイパス油路40Rに並行し、センタバイパス油路40Rと並列的に、制御弁172,174,175R,176Rにメインポンプ14Rの作動油を供給する。具体的には、パラレル油路42Rは、制御弁172の上流側でセンタバイパス油路40Rから分岐し、制御弁172,174,175R,176Rのそれぞれに並列してメインポンプ14Rの作動油を供給可能に構成される。パラレル油路42Rは、制御弁172,174,175Rの何れかによってセンタバイパス油路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0046】
センタバイパス油路40L,40Rにおける制御弁176L,176Rのそれぞれの下流側(作動油タンク側)には、カット弁44L,44Rが設けられる。
【0047】
カット弁44L,44R(センタバイパスカット弁の一例)は、それぞれ、コントローラ30の制御下で、その開度が調整される。
【0048】
また、センタバイパス油路40L,40Rにおけるカット弁44L,44Rのそれぞれと作動油タンクとの間には、ネガティブコントロール絞り(以下、「ネガコン絞り」)18L,18Rが設けられる。これにより、メインポンプ14L,14Rにより吐出された作動油の流れは、ネガコン絞り18L,18Rで制限され、ネガコン絞り18L、18Rは、レギュレータ13L,13Rを制御するための制御圧(以下、「ネガコン圧」)を発生させることができる。
【0049】
また、本実施形態に係るショベル100の油圧システムは、リリーフ弁およびチェック弁を備えてもよい。リリーフ弁は、センタバイパス油路40における作動油の圧力が所定のリリーフ圧を超えたときに作動油を作動油タンクに放出するように構成される。センタバイパス油路40における作動油の圧力の過度の上昇は、油圧システムを構成する油圧機器や構造物の破損をもたらす可能性があるからである。例えば、リリーフ弁は、センタバイパス油路40と作動油タンクとを繋ぐリリーフ油路に配置される。また、リリーフ油路には、上記のチェック弁が配置されている。
【0050】
チェック弁は、作動油タンクからセンタバイパス油路40への作動油の流れを止めるように構成される。例えば、チェック弁は、作動油タンクからセンタバイパス油路40Lへの作動油の流れを止める左チェック弁と、作動油タンクからセンタバイパス油路40Rへの作動油の流れを止める右チェック弁とを含んでよい。
【0051】
バイパス油路は、中央リリーフ油路、左リリーフ油路、及び右リリーフ油路を含む。左リリーフ油路は、センタバイパス油路40Lと中央リリーフ油路とを繋ぎ、右リリーフ油路は、センタバイパス油路40Rと中央リリーフ油路とを繋ぐ。これにより、リリーフ油路は、センタバイパス油路40L,40Rのそれぞれに一端が接続される左リリーフ油路及び右リリーフ油路を他端で中央リリーフ油路に合流させ、中央リリーフ油路により作動油タンクに接続される。
【0052】
例えば、リリーフ弁は、中央リリーフ油路に配置され、左チェック弁は、左リリーフ油路に配置され、右チェック弁は、右リリーフ油路に配置されてよい。これにより、1つのリリーフ弁でセンタバイパス油路40Lとセンタバイパス油路40Rのそれぞれにおける作動油を作動油タンクに放出できる。また、リリーフ弁は、センタバイパス油路40Lにおける作動油を作動油タンクに放出するための左リリーフ弁と、センタバイパス油路40Rにおける作動油を作動油タンクに放出するための右リリーフ弁とに分離されていてもよい。この場合、左リリーフ弁は、センタバイパス油路40Lと作動油タンクとを繋ぐ左リリーフ油路に配置され、右リリーフ弁は、センタバイパス油路40Rと作動油タンクとを繋ぐ右リリーフ油路に配置される。
【0053】
本実施形態に係るショベル100の操作系は、パイロットポンプ15と、ゲートロック弁25Vと、操作装置26とを含む。
【0054】
パイロットポンプ15は、例えば、上部旋回体3の後部に搭載され、パイロットライン25を介して操作装置26等の各種油圧機器にパイロット圧を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプであり、上述の如く、エンジン11により駆動される。
【0055】
尚、パイロットポンプ15の機能は、メインポンプ14によって実現されてもよい。例えば、メインポンプ14は、コントロールバルブ17に作動油を供給する機能とは別に、絞り等により作動油の圧力を低下させた後で操作装置26等に作動油を供給する機能を備えていてもよい。この場合、パイロットポンプ15は、省略される。
【0056】
ゲートロック弁25Vは、パイロットライン25において、パイロットポンプ15からの作動油の供給を受ける全ての各種油圧機器よりも上流に設けられる。ゲートロック弁25Vは、キャビン10の室内のゲートロックレバーの操作と連動するリミットスイッチのON/OFFによって、パイロットライン25の連通及び遮断(非連通)を切り換える。具体的には、ゲートロックレバーが起こされている、つまり、操縦席が開放されている場合、リミットスイッチがOFFされ、ゲートロック弁25Vのソレノイドには、蓄電池70からの電圧が印加されず、ゲートロック弁25Vは非連通状態となる。そのため、パイロットライン25が遮断され、操作装置26或いは後述の操作用油圧制御弁を含む各種油圧機器に作動油が供給されない。一方、ゲートロックレバーが下ろされた状態、つまり、操縦席が閉じられた状態では、リミットスイッチがONされ、ゲートロック弁25Vのソレノイドには、蓄電池70から電圧が印加され、ゲートロック弁25Vは連通状態になる。そのため、パイロットライン25が連通し、操作装置26或いは操作用油圧制御弁を含む各種油圧機器に作動油が供給される。
【0057】
ゲートロック弁25Vは、コントローラ30から入力される制御指令に応じて、その連通及び遮断が切り換え可能に構成されてもよい。
【0058】
操作装置26は、キャビン10の操縦席付近に設けられ、オペレータがショベル100の被駆動部(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、バケット6等)の操作を行うための操作入力手段である。換言すれば、操作装置26は、オペレータがそれぞれの被駆動部を駆動する油圧アクチュエータ(即ち、走行油圧モータ1L,1R、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9等)の操作を行うための操作入力手段である。
【0059】
図2に示すように、操作装置26は、例えば、油圧パイロット式であり、パイロットライン25を通じてパイロットポンプ15から供給される作動油を用いて、その操作内容に応じたパイロット圧を二次側のパイロットライン25aに出力する。操作装置26から出力されるパイロット圧は、操作装置26の操作方向および操作量に応じて変化する。パイロットライン25aは、コントロールバルブ17に接続され、操作装置26の操作内容に対応するパイロット圧は、コントロールバルブ17(制御弁)に入力される。これにより、コントロールバルブ17は、操作装置26に対するオペレータの操作内容に応じた油圧アクチュエータの動作を実現することができる。
【0060】
操作装置26は、例えば、ブーム4(ブームシリンダ7)、アーム5(アームシリンダ8)、バケット6(バケットシリンダ9)、及び上部旋回体3(旋回油圧モータ2A)のそれぞれを操作するレバー装置を含む。また、操作装置26は、例えば、下部走行体1の左右一対のクローラ(走行油圧モータ1L,1R)のそれぞれを操作するレバー装置或いはペダル装置を含む。
【0061】
また、図4に示すように、操作装置26は、電気式であってもよい。この場合、操作装置26は、その操作内容に対応する電気信号(以下、「操作信号」)を出力し、当該操作信号は、例えば、コントローラ30に入力される。そして、コントローラ30は、操作信号に対応する制御指令を、パイロットポンプ15とコントロールバルブ17(のそれぞれの制御弁171,172,173,174,175L,175R,176L,176R)との間のパイロットラインに設置される油圧制御弁(例えば、電磁比例弁)(以下、「操作用油圧制御弁」)に出力する。これにより、操作用油圧制御弁からコントロールバルブ17に、操作装置26の操作内容に応じたパイロット圧が供給される。そのため、コントロールバルブ17は、操作装置26に対するオペレータの操作内容に応じたショベル100の動作を実現させることができる。また、コントローラ30は、操作用油圧制御弁を制御して、遠隔操作を実現してもよい。具体的には、コントローラ30は、外部の装置から入力される遠隔操作の内容に対応する信号(以下、「遠隔操作信号」)に応じて、操作用油圧制御弁を制御してよい。これにより、操作用油圧制御弁からコントロールバルブ17に、遠隔操作の内容に応じたパイロット圧が供給される。そのため、コントロールバルブ17は、遠隔操作の内容に応じたショベル100の動作を実現させることができる。また、操作装置26が電気式である場合、コントロールバルブ17内の制御弁171,172,173,174,175L,175R,176L,176Rは、操作装置26からの操作信号(或いは、コントローラ30からの制御指令)により直接駆動される電磁ソレノイド式のスプール弁であってもよい。
【0062】
本例のパイロット回路は、上述の操作用油圧制御弁として、ブーム4の上げ操作(以下、「ブーム上げ操作」)用の電磁弁60と、ブーム4の下げ操作(以下、「ブーム下げ操作」)用の電磁弁62とを含む。
【0063】
電磁弁60は、パイロットポンプ15とパイロット圧作動型のコントロールバルブ17(具体的には、制御弁175L,175R(図3参照))のブーム上げ側のパイロットポートとを繋ぐ油路(パイロットライン)内の作動油の圧力を調節可能に構成される。
【0064】
電磁弁62は、パイロットポンプ15とコントロールバルブ17(制御弁175L,175R)のブーム下げ側のパイロットポートとを繋ぐ油路(パイロットライン)内の作動油の圧力を調節可能に構成される。
【0065】
ブーム4(ブームシリンダ7)が手動操作される場合、コントローラ30は、レバー装置26A(操作信号生成部)が出力する操作信号(電気信号)に応じて、ブーム上げ操作信号(電気信号)或いはブーム下げ操作信号(電気信号)を生成する。レバー装置26Aから出力される操作信号(電気信号)は、その操作内容(例えば、操作量及び操作方向)を表し、レバー装置26Aの操作信号生成部が出力するブーム上げ用操作信号(電気信号)及びブーム下げ用操作信号(電気信号)は、レバー装置26Aの操作内容(操作量及び操作方向)に応じて変化する。
【0066】
具体的には、コントローラ30は、レバー装置26Aがブーム上げ方向に操作される場合、その操作量に応じたブーム上げ操作信号(電気信号)を電磁弁60に対して出力する。電磁弁60は、ブーム上げ操作信号(電気信号)に応じて動作し、制御弁175L,175Rのブーム上げ側のパイロットポートに作用するパイロット圧、つまり、ブーム上げ操作信号(圧力信号)を制御する。同様に、コントローラ30は、レバー装置26Aがブーム下げ方向に操作された場合、その操作量に応じたブーム下げ操作信号(電気信号)を電磁弁62に対して出力する。電磁弁62は、ブーム下げ操作信号(電気信号)に応じて動作し、制御弁175L,175Rのブーム下げ側のパイロットポートに作用するパイロット圧、つまり、ブーム下げ操作信号(圧力信号)を制御する。これにより、コントロールバルブ17は、レバー装置26Aの操作内容に応じたブームシリンダ7(ブーム4)の動作を実現することができる。
【0067】
また、同様のパイロット回路に基づくアーム5(アームシリンダ8)、バケット6(バケットシリンダ9)、上部旋回体3(旋回油圧モータ2A)、及び下部走行体1(走行油圧モータ1L,1R)の動作についても、ブーム4(ブームシリンダ7)の動作と同様である。
【0068】
操作装置26が電気式である場合、コントローラ30は、操作装置26(操作信号生成部)から入力される操作信号を無効とし、電磁弁60,62に電気信号を出力しないようにすることで、操作装置26に対する操作を無効にすることができる。
【0069】
図2に戻り、本実施形態に係るショベル100の制御系は、操作圧センサ15aと、ネガコン圧センサ19L,19Rと、吐出圧センサ28L,28Rと、表示装置50と、回転数スロットルボリューム52と、手動再生ボタン54と、診断モードスイッチ56と、送信装置S1と、受信装置S2と、測位装置S3と、姿勢検出装置S4と、向き検出装置S5と、カメラS6と、油温センサS7とを含む。また、本実施形態に係るショベル100の制御系は、コントローラ30と、ECU74とを含む。
【0070】
操作圧センサ15aは、操作装置26の操作内容に対応するパイロットライン25aのパイロット圧(操作圧)を検出する。操作圧センサ15aの出力は、コントローラ30に取り込まれる。これにより、コントローラ30は、操作装置26の操作内容を取得できる。
【0071】
尚、操作装置26が電気式である場合、操作圧センサ15aは、省略される。
【0072】
ネガコン圧センサ19L,19Rは、それぞれ、ネガコン絞り18L,18Rのネガコン圧を検出する。ネガコン圧センサ19L,19Rにより検出されたネガコン圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0073】
吐出圧センサ28L,28Rは、それぞれ、メインポンプ14L,14Rの吐出圧を検出する。吐出圧センサ28L,28Rにより検出された吐出圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0074】
表示装置50は、キャビン10内の着座したオペレータから視認し易い場所に設けられ、コントローラ30の制御下で、各種情報画像を表示する。表示装置50は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。表示装置50は、CAN(Controller Area Network)等の車載通信ネットワークを介してコントローラ30に接続されていてもよいし、一対一の専用線を介してコントローラ30に接続されていてもよい。
【0075】
表示装置50は、例えば、カメラS6の撮像画像に基づき、ショベル100の周囲の様子を表す画像(以下、「周囲画像」)を表示する。周囲画像は、カメラS6の撮像画像そのものであってもよいし、カメラS6の撮像画像から生成される視点変換画像(例えば、ショベル100の上から周囲を見た俯瞰画像等)であってもよい。また、表示装置50は、複数のカメラS6によって撮像された複数の画像の合成画像を表示してもよい。また、表示装置50は、視点変換処理等の各種画像処理が施された合成画像を表示してもよい。
【0076】
回転数スロットルボリューム52は、オペレータがエンジン11の目標回転数を設定するために用いられる。回転数スロットルボリューム52の出力は、コントローラ30に取り込まれる。
【0077】
手動再生ボタン54は、排気ガス処理装置に含まれるPM低減装置(例えば、DPF)に溜まったススやPMを高温燃焼させる動作(以下、「再生」)をオペレータが手動でショベル100に実行させるために用いられる。手動再生ボタン54の出力、つまり、その操作状態(ON/OFF)は、コントローラ30に取り込まれる。
【0078】
診断モードスイッチ56は、ショベル100の動作モードをショベル100に関する各種の診断を行うための診断モードに移行させたり、診断モードを強制的に解除したりするために用いられる。ショベル100に関する診断には、例えば、ショベル100に搭載される各種機器(例えば、エンジン11やメインポンプ14等)の異常診断(故障診断)やエンジン11の出力診断等が含まれる。異常診断では、対象の機器の異常(故障)の有無の判断、異常がある場合の異常箇所、並びに異常内容の判断等が行われる。診断モードでは、例えば、ショベル100に関する各種の診断を行うためのデータの収集が行われる。診断モードスイッチ56の出力、つまり、その操作状態(ON/OFF)は、コントローラ30に取り込まれる。
【0079】
尚、ショベル100の動作モードを診断モードに移行させる操作手段と、ショベル100の診断モードを解除する操作手段は、別であってもよい。また、診断モードスイッチ56の機能は、管理装置300に移管されてもよい。この場合、管理装置300で診断モードスイッチが操作されると、その操作入力に対応する信号が管理装置300からショベル100に送信される。そして、コントローラ30は、当該信号の受信に応じて、ショベル100の動作モードを診断モードに移行させたり、診断モードを強制的に解除させたりしてよい。これにより、管理装置300の管理者や作業者等のユーザは、遠隔からショベル100の動作モードを診断モードに移行させたり、ショベル100の診断モードを強制的に解除したりすることができる。また、診断モードへ移行するために用いられる操作手段と診断モードを解除するための操作手段とが別に設けられる場合、その双方が管理装置300に移管されてもよい。
【0080】
送信装置S1は、コントローラ30の制御下で、所定の通信ネットワークを通じて、外部(例えば、管理装置300)に情報を送信する。例えば、送信装置S1は、管理装置300との無線通信を介して、ショベル100で取得された診断用データを管理装置300へ送信する。診断用データは、センサによって一定の時間間隔で連続的に検出された複数の検出値を、時系列的に表し、後述の如く、各種の診断を行うために用いられる。
【0081】
受信装置S2は、コントローラ30の制御下で、所定の通信ネットワークを通じて、外部(例えば、管理装置300)から情報を受信する。
【0082】
測位装置S3は、ショベル100(上部旋回体3)の位置を測定し、ショベル100の位置に関する情報を取得する。測位装置S3は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)モジュールであり、上部旋回体3の位置(例えば、ショベル100の存在位置の緯度、経度、高度)を検出する。GNSSには、例えば、GPS(Global Positioning System)、GLONASS、Galileo等が含まれる。測位装置S3により測定される上部旋回体3の位置に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0083】
姿勢検出装置S4は、ショベル100の機体や掘削アタッチメントの姿勢状態を検出する。姿勢検出装置S4は、例えば、ブーム4の姿勢角度(以下、「ブーム角度」)を検出するブーム角度センサ、アーム5の角度(以下、「アーム角度」)を検出するアーム角度センサ、バケット6の姿勢角度(以下、「バケット角度」)を検出するバケット角度センサ、及び上部旋回体3の姿勢角度(傾斜角度)を検出する機体傾斜センサ等を含んでよい。これらのセンサは、それぞれ、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、6軸センサ、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)等を含んでよい。姿勢検出装置S4により検出されるブーム角度、アーム角度、バケット角度、及び傾斜角度等に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0084】
向き検出装置S5は、ショベル100(具体的には、上部旋回体3)の向きを検出する。向き検出装置S5は、例えば、地磁気センサである。また、向き検出装置S5は、旋回機構2の旋回軸に対応するレゾルバ(或いはエンコーダ)やジャイロセンサ等である。
【0085】
例えば、コントローラ30は、測位装置S3、姿勢検出装置S4、及び向き検出装置S5の出力に基づき、バケット6の作業部位(例えば、爪先や背面等)の位置を算出することができる。作業部位の位置情報に用いられる基準座標系は、例えば、世界測地系であってよい。
【0086】
カメラS6は、ショベル100の周辺を撮像し、ショベル100の周囲の様子を表す画像情報を取得する。カメラS6は、例えば、非常に広い画角を有する単眼の広角カメラである。また、カメラS6は、ステレオカメラ、距離画像カメラ、デプスカメラ等であってもよい。具体的には、カメラS6は、上部旋回体3の上面に取り付けられ、上部旋回体3の周囲の様子を撮像する。図1に示すように、カメラS6は、上部旋回体3の後方を撮像する後方カメラを含む。また、カメラS6は、後方カメラに代えて、或いは、加えて、ショベル100の前方、左側方(左方)、及び右側方(右方)のそれぞれを撮像する前方カメラ、左方カメラ、及び右方カメラの少なくとも一つを含んでもよい。カメラS6により取得される撮像画像は、コントローラ30に取り込まれる。
【0087】
カメラS6は、例えば、周辺監視装置として機能し、ショベル100の周囲の所定距離内(以下、「監視エリア」)に存在する物体を検知するように構成されてよい。検知対象の物体(以下、「監視物体」)は、例えば、人、動物、車両、建設機械、建造物、壁、柵、又は穴等を含む。また、ショベル100は、周辺監視装置として、ステレオカメラ、距離画像カメラ、デプスカメラ等を含みうるカメラS6に代えて、或いは、加えて、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、LIDAR(Light Detection Raging)、赤外線センサ等を含んでもよい。
【0088】
油温センサS7は、例えば、作動油タンクに設けられ、ショベル100の油圧駆動系(油圧システム)で用いられる作動油の温度を検出する。油温センサS7の出力(検出信号)は、コントローラ30に取り込まれる。これにより、コントローラ30は、油圧駆動系(油圧システム)の作動油の油温(の検出値)を取得することができる。
【0089】
コントローラ30は、例えば、キャビン10の内部に設けられ、ショベル100に関する各種制御を行う。コントローラ30は、その機能が任意のハードウェア、或いは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにより実現されてよい。例えば、コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性の補助記憶装置、及び各種の入出力に関するインタフェース装置等を含むコンピュータを中心に構成される。コントローラ30は、例えば、補助記憶装置にインストールされる各種プログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより各種機能を実現する。また、コントローラ30は、送信装置S1、受信装置S2、測位装置S3、姿勢検出装置S4、向き検出装置S5、カメラS6、油温センサS7、表示装置50、回転数スロットルボリューム52、手動再生ボタン54、及び診断モードスイッチ56の各々に接続されている。例えば、コントローラ30は、受信装置S2、測位装置S3、姿勢検出装置S4、向き検出装置S5、及びカメラS6の各々から出力される情報に基づき、各種演算を実行してよい。また、コントローラ30は、当該演算結果に基づき生成した情報を、送信装置S1を介して外部の装置に送信したり、表示装置50に表示させたりしてよい。
【0090】
例えば、コントローラ30は、受信される操作圧センサ15aの出力に応じて、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させてよい。
【0091】
また、例えば、コントローラ30は、吐出圧センサ28L,28Rにより検出されるメインポンプ14L,14Rの吐出圧に応じて、レギュレータ13L,13Rを制御し、メインポンプ14L,14Rの吐出量を調節してよい。具体的には、コントローラ30は、メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて、レギュレータ13Lを制御し、メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することにより、吐出量を減少させてよい。レギュレータ13Rについても同様である。これにより、コントローラ30は、吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14L,14Rの吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないように、メインポンプ14L,14Rの全馬力制御を行うことができる。
【0092】
また、例えば、コントローラ30は、ネガコン圧センサ19L,19Rにより検出されるネガコン圧に応じて、レギュレータ13L,13Rを制御することにより、メインポンプ14L,14Rの吐出量を調節してよい。具体的には、コントローラ30は、ネガコン圧が大きいほどメインポンプ14L,14Rの吐出量を減少させ、ネガコン圧が小さいほどメインポンプ14L,14Rの吐出量を増大させる。
【0093】
より具体的には、ショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態(図3に示す状態)の場合、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油は、センタバイパス油路40L,40Rを通ってネガコン絞り18L、18Rに至る。そして、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油の流れは、ネガコン絞り18L,18Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、メインポンプ14L,14Rの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油がセンタバイパス油路40L,40Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。
【0094】
一方、何れかの油圧アクチュエータが操作装置26を通じて操作された場合、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油の流れは、ネガコン絞り18L,18Rに至る量を減少或いは消失させ、ネガコン絞り18L,18Rの上流で発生するネガコン圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、メインポンプ14L,14Rの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータを確実に駆動させることができる。
【0095】
また、例えば、コントローラ30は、回転数スロットルボリューム52の出力に応じて、目標回転数を設定し、ECU74を介して、エンジン11を一定回転させる駆動制御を行う。
【0096】
また、例えば、コントローラ30は、周辺監視装置(例えば、カメラS6)によるショベル100の周囲の監視エリアに進入する監視物体の有無の監視を行う。具体的には、コントローラ30は、周辺監視装置の出力に基づき、監視エリア内の監視物体を検知してよい。また、コントローラ30は、周辺監視装置の出力に基づき、既知の機械学習等の手法を用いて、監視物体の種類や位置を特定(把握)してよい。また、コントローラ30は、監視エリア内に監視物体を検知している場合、所定の方法で、監視エリア内で監視物体が検知されている旨をオペレータやショベル100の周囲に報知してよい。また、コントローラ30は検知している監視物体が"人"と判断する場合に限定して、オペレータやショベル100の周囲に報知を行ってもよい。例えば、キャビン10内のオペレータに対する報知は、キャビン10の内部の表示装置50や音出力装置(例えば、ブザーやスピーカ等)を通じて、視覚的な方法や聴覚的な方法で行われてよい。また、例えば、ショベル100の周囲への報知は、上部旋回体3に搭載される音出力装置(例えば、ブザーやアラーム)や照明装置(例えば、前照灯や赤色ランプ)を通じて、聴覚的な方法や視覚的な方法で行われてよい。また、例えば、遠隔操作のオペレータに対する報知は、遠隔操作を支援する外部装置(例えば、管理装置300)に報知を要求する信号を送信することにより、外部装置に設置される音出力装置や表示装置を通じて、聴覚的な方法や視覚的な方法で行われてよい。また、コントローラ30は、監視エリア内に監視物体を検知している場合、所定の方法で、ショベル100のアクチュエータ(被駆動部)の動作を制限してよい。また、コントローラ30は、検知している監視物体が"人"と判断する場合に限定して、ショベル100のアクチュエータ(被駆動部)の動作を制限してもよい。アクチュエータの動作の制限には、操作に対するアクチュエータの動作速度を相対的に遅くする制御形態が含まれる。また、アクチュエータの動作の制限には、操作の有無に依らず、アクチュエータの停止状態を維持する制御形態が含まれる。例えば、ゲートロック弁25Vが非連通状態にされることによりアクチュエータの動作の制限(停止状態の維持)が実現されてよい。また、操作装置26が電気式の場合、コントローラ30は、操作信号が入力されても、操作用油圧制御弁に対する信号を出力せずに、操作信号を無効にすることにより、アクチュエータの動作の制限(停止状態の維持)を実現してもよい。
【0097】
また、例えば、コントローラ30は、後述の如く、ショベル100の診断モード中に、周辺監視装置によるショベル100の周囲の監視エリアに進入する監視物体の有無の監視を行ってよい。この場合、コントローラ30は、監視エリア内で監視物体(例えば、人)を検知しても、診断データの取得に関する処理を継続してよい。後述の如く、診断データの取得に関する処理中において、ショベル100(アクチュエータ)の操作が不能になっており、ショベル100の被駆動部が動作して、周囲の人等の監視物体にショベル100のアタッチメント等が接近するような事態が発生することがないからである。そして、コントローラ30は、診断データの取得に関する処理を終了し、且つ、監視エリア内に監視物体(例えば、人)を検知した状態が継続している場合、アクチュエータの動作を制限してよい。診断データの取得に関する処理が終了すると、ショベル100(アクチュエータ)を操作可能な状態になり、ショベル100の被駆動部が動作して、周囲の監視物体にショベル100のアタッチメント等が接近するような事態が発生する可能性があるからである。
【0098】
また、例えば、コントローラ30は、ショベル100の自動暖機運転機能の実行中(即ち、ショベル100の暖機モード中)に、周辺監視装置によるショベル100の周囲の監視エリアに進入する監視物体の有無の監視を行ってもよい。同様に、コントローラ30は、例えば、ショベル100の自動再生機能や手動再生機能の実行中(即ち、ショベル100の自動再生モード中や手動再生モード中)に、周辺監視装置によるショベル100の周囲の監視エリアに進入する監視物体の有無の監視を行ってもよい。ショベル100の暖機モード中や自動再生モード中や手動再生モード中の場合に、コントローラ30は、監視エリア内で監視物体(例えば、人)を検知しても、診断データの取得に関する処理を継続してよい。そして、コントローラ30は、暖機モード、自動再生モード、或いは、手動再生モードを終了し、且つ、監視エリア内に監視物体(例えば、人)を検知した状態が継続している場合、アクチュエータの動作を制限してよい。
【0099】
また、図3に示すように、コントローラ30は、自動暖機制御部301と、自動再生制御部302と、手動再生制御部303と、診断モード設定部304と、診断用データ取得制御部305と、診断用データ送信部306とを含む。
【0100】
自動暖機制御部301は、ショベル100の起動時(即ち、キースイッチがONされたとき)に、ショベル100のエンジン11や油圧システム(作動油)の暖機運転(以下、「ショベル100の暖機運転」)を自動で行う。即ち、自動暖機制御部301は、ショベル100の自動暖機運転機能を実現する。
【0101】
自動再生制御部302は、排気ガス処理装置(PM低減装置)の再生の要否を判断し、再生が必要であると判断する場合に、自動で、排気ガス処理装置の再生を行う。例えば、自動再生制御部302は、ショベル100の相対的に負荷の高い運転時に、エンジン11を相対的に高い負荷状態に維持させ、高温の排気ガスでPM低減装置に溜まったススやPMを燃焼させる。即ち、自動再生制御部302は、排気ガス処理装置(PM低減装置)の自動再生機能を実現する。
【0102】
尚、自動再生制御部302による自動再生機能の実行中には、後述の診断用データの収集は実施されない。
【0103】
手動再生制御部303は、ショベル100の運転状態等の影響(例えば、相対的に低い負荷の運転状態が継続する等)によって、自動再生機能では、排気ガス処理装置(PM低減装置)の再生が完了できない場合に、表示装置50等を通じて、オペレータに手動での排気ガス処理装置の再生が必要であることを示す通知を行う。そして、手動再生制御部303は、オペレータにより手動再生ボタン54がONされると、エンジン11を相対的に高い負荷状態に維持させ、高温の排気ガスでPM低減装置に溜まったススやPMを燃焼させる。即ち、手動再生制御部303は、排気ガス処理装置(PM低減装置)の手動再生機能を実現する。
【0104】
診断モード設定部304は、所定条件(例えば、診断モードスイッチのON操作)に応じて、ショベル100の動作モードを診断モードに設定する(移行させる)。また、診断モード設定部304は、所定条件(例えば、診断モードスイッチのOFF操作)に応じて、ショベル100の診断モードを解除する。
【0105】
診断用データ取得制御部305は、一定の運転条件下で(例えば、ショベル100に一定の負荷を与えて)、ショベル100の診断用データを取得する。例えば、診断用データ取得制御部305は、後述する暖機モード中に、操作レバーとは無関係にカット弁44L,44Rを閉じて、メインポンプ14の吐出圧をリリーフ圧にすることによって、ショベル100の油圧システムに一定の油圧負荷を与え、その状態で、ショベル100の診断用データを取得してよい。診断用データ取得制御部305によって取得される診断用データとしては、例えば、エンジン11の燃料噴射率(0~100%)、エンジン11の回転数指令値、エンジン11の実回転数、メインポンプ14L,14Rの斜板傾転角、メインポンプ14L,14Rの吐出圧、エンジン11が備えるタービンの過給圧、コモンレール圧、エンジン11のオイル圧、排気ガスの温度、排気ガスのNOx測定値、作動油温度等が挙げられる。但し、これらに限らず、診断用データ取得制御部305によって取得される診断用データは、ショベル100が備えるセンサによって検出可能な情報であれば、如何なる情報であってもよい。
【0106】
診断用データ送信部306は、送信装置S1による管理装置300との無線通信を介して、診断用データ取得制御部305によって取得された診断用データを、管理装置300へ送信する。
【0107】
尚、コントローラ30の機能の一部は、他のコントローラ(制御装置)により実現されてもよい。即ち、コントローラ30の機能は、複数のコントローラにより分散される態様で実現されてもよい。
【0108】
ECU74は、コントローラ30の制御下で、エンジン11の駆動制御を行う。例えば、ECU74は、エンジン11のエンジン回転数が設定されたエンジン回転数となるように、エンジン11の燃料噴射量等を制御する。具体的には、ECU74は、エンジン11に搭載される各種のセンサ(例えば、エンジン回転数センサや水温センサ等)の出力に基づき、エンジン11に搭載される各種のアクチュエータ(例えば、燃料をシリンダ内に噴射するインジェクタ等)を制御する。また、エンジン11に搭載される各種のセンサの出力は、ECU74を経由してコントローラ30に取り込まれる。これにより、コントローラ30は、エンジン11の水温(の検出値)等を取得することができる。
【0109】
本実施形態に係るショベル100の電源系には、蓄電池70が含まれる。
【0110】
蓄電池70は、ショベル100の各種の電気機器(例えば、スタータ11b、コントローラ30、表示装置50、及びECU74等)に電力を供給する。また、蓄電池70は、エンジン11の動力で駆動される発電機11aによる発電電力で充電される。蓄電池70は、例えば、鉛バッテリである。
【0111】
<管理装置の構成>
管理装置300は、制御装置310と、送信装置320と、受信装置330と、表示装置340と、操作入力装置350とを含む。
【0112】
制御装置310は、管理装置300に関する各種制御を行う。制御装置310は、その機能が任意のハードウェア、或いは、任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにより実現されてよい。例えば、制御装置310は、CPU、RAM等のメモリ装置、ROM等の不揮発性の補助記憶装置、及び各種の入出力に関するインタフェース装置等を含むコンピュータを中心に構成される。制御装置310は、例えば、補助記憶装置にインストールされる各種プログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより各種機能を実現する。制御装置310は、診断部3101を含む。
【0113】
診断部3101は、受信装置330を通じて、ショベル100から受信される診断用データに基づき、ショベル100に関する各種の診断を行う。ショベル100に関する診断には、例えば、ショベル100に搭載される各種機器(例えば、エンジン11やメインポンプ14等)の異常診断(故障診断)やエンジン11の出力診断等が含まれる。異常診断では、対象の機器の異常(故障)の有無の判断、異常がある場合の異常箇所、並びに異常内容の判断等が行われる。
【0114】
また、診断部3101は、送信装置320を通じて、ショベル100に診断結果を送信してよい。これにより、ショベル100のオペレータ等のユーザは、ショベル100の表示装置50等を通じて、診断結果を確認することができる。また、診断部3101は、送信装置320を通じて、他の管理装置(例えば、ショベル管理システムSYSのユーザが利用するスマートフォン等の携帯端末)に診断結果を送信してもよい。これにより、ユーザは、例えば、スマートフォン等の画面に診断結果を表示させて、診断結果を確認することができる。
【0115】
尚、ショベル100に関する各種の診断を行う機能(診断部3101の機能)は、ショベル100(例えば、コントローラ30)に移管されてもよい。
【0116】
送信装置320は、所定の通信回線を通じて、外部装置に情報(例えば、ショベル100に対する制御指令)を送信する。
【0117】
受信装置330は、所定の通信回線を通じて、外部装置からの情報(例えば、ショベル100からの診断用データ)を受信する。
【0118】
表示装置340は、制御装置310の制御下で、管理装置300の管理者や作業者に向けて、管理装置300に関する各種情報画像(例えば、ショベル100から受信される診断用データや、制御装置310によるショベル100に関する診断結果等)を表示する。表示装置340は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイである。
【0119】
操作入力装置350は、管理装置300の管理者や作業者等のユーザからの操作入力を受け付け、制御装置310に出力する。操作入力装置350は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等が含まれうる。
【0120】
[診断用データ取得処理の第1例]
次に、図5図9を参照して、コントローラ30による診断用データの取得に関する制御処理(以下、「診断用データ取得処理」)の第1例について説明する。
【0121】
<診断用データ取得処理の手順>
図5は、コントローラ30による診断用データ取得処理の第1例を示すフローチャートである。
【0122】
まず、ショベル100において、エンジン11が始動されると(ステップS102)、コントローラ30(自動暖機制御部301)は、作動油温度を検出する油温センサS7の検出値に基づき、作動油温度が所定の閾値未満であるか否かを判断する(ステップS104)。ステップS104において、コントローラ30は、作動油温度が所定の閾値以上であると判断する場合(ステップS104:NO)、図4に示す一連の処理を終了する。
【0123】
一方、ステップS104において、コントローラ30(自動暖機制御部301)は、作動油温度が所定の閾値未満であると判断する場合(ステップS104:YES)、ショベル100のECU74を制御し、ショベル100の暖機運転を開始させる(ステップS106)。
【0124】
尚、ショベル100の暖機運転には、上述の如く、油圧システム(作動油)の暖機が含まれる。そのため、コントローラ30は、ショベル100の暖機運転の開始時にカット弁44L,44Rを閉じてもよい。これにより、メインポンプ14の吐出圧(以下、「メインポンプ圧」と示す)は、徐々に上昇してゆく。そして、メインポンプ圧がリリーフ圧に達すると、作動油は、リリーフ弁から作動油タンクへ放出され、その際に、リリーフ弁との摩擦熱によって徐々に暖められてゆく。そのため、センタバイパス油路40L,40Rを通じて作動油を循環させる場合に比して、より早く作動油の温度を高めることができる。
【0125】
また、ショベル100の暖機運転が開始させると、コントローラ30は、ショベル100の制御モード(動作モード)を暖機モードに切り換える。そして、コントローラ30は、暖機モード中であることをショベル100のオペレータに通知するための暖機モード通知メッセージを、表示装置50に表示させる(ステップS108)。本例では、暖機モードの実施期間には、暖機運転実行期間と、診断用データ収集期間とが含まれる。暖機運転実行期間は、ショベル100の暖機運転が行われる期間である。診断用データ収集期間は、ショベル100の暖機運転が完了した後、一定の負荷をかけて診断用データを収集するための期間である。つまり、本例では、暖機モードの中に、診断モードが含まれており、診断用データ収集期間は、診断モードに対応する。また、暖機モード中において、エンジン11を始動するためにゲートロックがON(即ち、ゲートロック弁25Vが非連通状態)となっているため、オペレータは操作装置26の操作を行うことができない。
【0126】
例えば、図6は、暖機モードにおける表示装置50の表示内容の一例を示す図である。具体的には、図6は、暖機モード通知メッセージの一例を示す図である。図6に示す表示画面は、ショベル100が暖機モードにあるときに、ショベル100の表示装置50に表示される画面の一例である。
【0127】
図6に示すように、表示装置50には、例えば、カメラS6の出力(撮像画像)に基づくショベル100の周囲画像600が表示される。また、表示装置50には、ショベル100に関する各種情報を表す表示部601~613が周囲画像600に重畳して表示される。
【0128】
周囲画像600は、周囲画像600A,600Bを含む。
【0129】
周囲画像600Aは、表示装置50の表示領域の略右半分に表示され、周囲画像600Bは、表示装置50の表示領域の略左半分に表示される。
【0130】
表示部601には、現在の時刻が表示される。
【0131】
表示部602には、所定の入力手段(例えば、回転数スロットルボリューム52やエンジン回転数調整ダイヤル)を通じて設定されているエンジン回転数に対応する運転モードが表示される。
【0132】
表示部603には、設定されている走行モードの種別が表示される。走行モードは、可変容量モータを用いた走行油圧モータ1L,1Rの設定状態を表す。例えば、走行モードは、低速モード及び高速モードを有し、低速モードでは"亀"を象ったマークが表示され、高速モードでは"兎"を象ったマークが表示される。
【0133】
表示部604には、現在装着されているアタッチメントの種類を表すアイコンが表示される。
【0134】
表示部605には、エンジン11の制御状態が表示される。本例では、エンジン11の制御状態として"自動減速・自動停止モード"が選択されている。自動減速・自動停止モードは、非操作状態の継続時間に応じて、エンジン回転数を自動的に低減し、さらにはエンジン11を自動的に停止させる制御状態を意味する。表示部605に表されるエンジン11の制御状態には、更に、"自動減速モード"、"自動停止モード"、及び"手動減速モード"等が含まれてよい。
【0135】
表示部606には、尿素水タンクに貯蔵されている、NOx低減装置の一例である尿素SCRシステムで用いられる尿素水の残量が表示される。本例では、表示部606には、現在の尿素水の残量状態を表すバーゲージが表示されている。尿素水の残量は、尿素水タンクに設けられている尿素水残量センサから出力されるデータに基づき表示される。
【0136】
表示部607には、燃料タンクに貯蔵されている燃料の残量状態が表示される。本例では、表示部607には、現在の燃料の残量状態を表すバーゲージが表示されている。燃料の残量は、燃料タンクに設けられている燃料残量センサから出力されるデータに基づき表示される。
【0137】
表示部608には、エンジン11の冷却水(以下、「エンジン冷却水」)の温度状態が表示される。本例では、表示部608には、エンジン冷却水の温度状態を表すバーゲージが表示されている。エンジン冷却水の温度は、エンジン11に設けられている水温センサから出力されるデータに基づき表示される。
【0138】
表示部609には、エンジン11の累積稼働時間が表示される。本例では、表示部609には、オペレータによりカウントがリスタートされてからの稼働時間の累積が、単位"hr"(時間)と共に表示されている。表示部609には、ショベル100の製造後の全期間の生涯稼働時間或いはオペレータによりカウントがリスタートされてからの区間稼働時間が表示されてもよい。
【0139】
表示部610には、周囲画像600Aとして表示されている周囲画像の範囲が表示される。表示部610には、ショベル100の形状を表すショベル画像610aと、表示中の周囲画像に対応する画像を撮像したカメラS6の撮影方向を表す帯状の方向表示画像610bとが含まれる。
【0140】
本例では、ショベル画像610aの下側(アタッチメントを表す図形の反対側)に方向表示画像610bが表示されている。これは、カメラS6に含まれる後方カメラによって撮影されたショベル100の後方の画像が周囲画像600Aとして表示されていることを表す。例えば、周囲画像600として、カメラS6に含まれる右方カメラによって撮影された画像が表示されている場合、ショベル画像610aの右側に方向表示画像610bが表示される。また、例えば、周囲画像600として、カメラS6に含まれる左方カメラによって撮影された画像が表示されている場合、ショベル画像610aの左側に方向表示画像610bが表示される。
【0141】
表示部611には、周囲画像600Bとして表示されている周囲画像の範囲が表示される。表示部611には、表示部610と同様、ショベル100の形状を表すショベル画像611aと、表示中の周囲画像に対応する画像を撮像したカメラS6の撮影方向を表す帯状の方向表示画像611bとが含まれる。
【0142】
本例では、ショベル画像611aの左側、下側、及び右側に方向表示画像611bが表示されている。これは、カメラS6に含まれる左方カメラ、後方カメラ、及び右方カメラによって撮像されたショベル100の左方、後方、及び右方の画像に基づき生成される合成画像が周囲画像600Bとして表示されていることを表す。具体的には、周囲画像600Bは、ショベル100の周囲(左方、後方、及び右方)を真上から見た俯瞰画像である。また、周囲画像600Bには、俯瞰画像に映っている撮像範囲とショベル100との位置関係を合わせる形で略中央にショベル100を表すショベル画像CGが表示される。これにより、周囲画像600Bの任意の画像部分がショベル100から見てどの方向に該当するのかを容易に把握することができる。
【0143】
オペレータは、例えば、キャビン10内に設けられている所定のスイッチを押すことで、周囲画像600A,600Bとして表示する画像を他のカメラにより撮影された画像や所定の合成画像等に切り換えることができる。
【0144】
尚、ショベル100にカメラS6が搭載されていない場合、表示装置50には、周囲画像600(周囲画像600A,600B)の代わりに、異なる情報が表示されてもよい。
【0145】
表示部612は、送信装置S1及び受信装置S2による外部との通信のための所定の通信回線との接続状況を表す。具体的には、表示部612には、アンテナを象ったアンテナ画像、及びアンテナ画像の横に階段状に並べられる長さの異なる複数(本例では、3本)のバーアイコンが含まれる。バーアイコンは、最大3本表示され、通信回線との接続状況が良好なほど、数が多くなり、通信回線との接続状況が悪くなるほど、数が少なくなる形で可変される。ユーザは、表示バーアイコンの数によって、通信回線との接続状況、具体的には、通信回線を通じて良好に外部と通信を行うことができる状況か否かを確認することができる。
【0146】
表示部613は、測位装置S3によるGNSS信号の受信状況を表すアイコンである。具体的には、表示部613は、測位装置S3によるGPS信号の受信状況を表すアイコンであり、GPS衛星を象った衛星画像、及び"GPS"の文字画像を含む。GPS信号の受信状況が良好で、測位装置S3によりショベル100の測位が可能な場合、表示部613のアイコンが表示され、GPS信号の受信状況が悪く、測位装置S3によりショベル100の測位が不可能な場合、表示部613のアイコンは非表示となる。ユーザは、表示部613のアイコンの有無によって、GPS信号の受信状況、換言すれば、測位装置S3によるショベル100の測位の可否状況を確認することができる。
【0147】
また、表示装置50には、暖機モードの開始時に表示されていた表示内容(本例では、周囲画像600及び表示部601~613)に加えて、これらの上に重畳する形で暖機モード中である旨をオペレータに通知する通知部620が表示される。
【0148】
通知部620は、表示装置50の表示領域における上下方向の中央部に表示される。本例では、通知部620には、暖機モード通知メッセージとして、"暖機モード中(しばらくお待ちください)"が表示されている。これにより、ショベル100のオペレータは、ショベル100が暖機モードに移行し、自動暖機機能が実行されていることを認識することができる。また、オペレータは、暖機モード中であるため、ショベル100の操作ができないことを認識することができる。
【0149】
尚、ショベル100は、暖機モード中において、操作装置26による操作や遠隔操作が必ずしも不能である必要はなく、操作可能な状態であってもよい。
【0150】
図5に戻り、続いて、コントローラ30は、ショベル100の暖機運転を終了するか否かを判断する(ステップS110)。例えば、ショベル100の暖機運転は、所定の終了条件(例えば、油温センサによって検出された作動油温度が所定の閾値に達した場合)が満たされたときに終了される。ステップS110において、コントローラ30(自動暖機制御部301)は、ショベル100の暖機運転を終了しない、即ち、終了条件が成立しない場合(ステップS110:NO)、終了条件が成立するまでステップS110の処理を繰り返し実行する。
【0151】
一方、ステップS110において、ショベル100の暖機運転を終了する場合(ステップS110:YES)、コントローラ30(診断用データ取得制御部305)は、目標エンジン回転数に所定の値を設定する(ステップS112)。そして、コントローラ30(診断用データ取得制御部305)は、各種の診断用データの取得を開始する(ステップS114)。これにより、コントローラ30は、各種診断用データの取得時において、毎回、エンジン11の水温や作動油の油温等を暖機運転の終了時の一定の状態に揃えることができる。また、コントローラ30は、各種診断用データの取得時において、毎回、エンジン11の回転数を上記の所定の値に揃えることができる。そのため、コントローラ30は、エンジン11や油圧システムを一定の運転条件にして、診断用データを取得することができる。
【0152】
尚、上述の如く、カット弁44L,44Rが閉じられる形で急速な暖機運転が行われる場合には、暖機運転の終了時に、カット弁44L,44Rは、一旦、開放され、後述の如く、診断用データの取得開始後に、再度、閉じられる。
【0153】
診断用データ取得制御部305は、診断データの取得開始から所定時間の経過後に、カット弁44L,44Rを閉じる(ステップS116)。これにより、メインポンプ圧(センタバイパス油路40L,40Rの作動油の圧力)は、徐々に上昇し、エンジン11(油圧システム)に対する油圧負荷が高まる。そして、診断用データ取得制御部305は、メインポンプ圧がリリーフ圧に達しているか否かを判断する(ステップS118)。本実施形態では、メインポンプ圧がリリーフ圧に達したことを、"一定の(油圧)負荷"としている。そのため、ここでは、コントローラ30は、メインポンプ圧がリリーフ圧に達していることを確認する。ステップS118において、診断用データ取得制御部305は、メインポンプ圧がリリーフ圧に達していないと判断する場合(ステップS118:NO)、メインポンプ圧がリリーフ圧に達するまで、ステップS118の処理を繰り返し実行する。
【0154】
一方、ステップS118において、メインポンプ圧がリリーフ圧に達していると判断する場合(ステップS118:YES)、診断用データ取得制御部305は、診断用データの取得開始から一定時間(例えば、1分間)が経過するまでの間、診断用データの取得を継続する。また、診断用データ取得制御部305は、メインポンプ圧がリリーフ圧に達したと判断した時点を起点として、一定時間が経過するまでの間、診断用データの取得を継続してもよい。これにより、コントローラ30は、エンジン11や油圧システムに対して、一定の負荷を与える前のデータ、一定の与えたときの過渡期的な状態のデータ、及び一定負荷を与えた後のデータを含む診断用データを取得することができる。また、コントローラ30は、毎回、一定の油圧負荷を与えた状態に相当する一定の運転条件における診断用データを取得することができる。
【0155】
例えば、診断用データ取得制御部305は、診断用データとして、エンジン11の燃料噴射率(0~100%)、エンジン11の回転数指令値、エンジン11の実回転数、メインポンプ14L,14Rの斜板傾転角、メインポンプ14L,14Rの吐出圧、エンジン11が備えるタービンの過給圧、コモンレール圧、エンジン11のオイル圧、排気ガスの温度、排気ガスのNOx測定値、作動油温度等を取得する。コントローラ30は、一定時間の間に取得した各種診断用データを、所定の記憶先(例えば、補助記憶装置や通信可能に接続される外部記憶装置等)に記憶させる。この際、コントローラ30は、診断用データが取得されたときの日時に関する日時情報(例えば、日付及び時刻)と、位置に関する位置情報(例えば、緯度、経度、及び高度等)とを、診断用データと対応付けて記憶させる。
【0156】
尚、診断用データ取得制御部305は、少なくとも故障診断の対象に応じた診断用データを取得すればよい。例えば、エンジン11の負荷率を故障診断の対象とする場合、診断用データ取得制御部305は、少なくともエンジン11の燃料噴射率、エンジン11の回転数指令値、エンジン11の実回転数を取得してもよい。また、診断用データ取得制御部305は、コントローラ30に記憶されている設定情報に基づいて、どの診断用データを取得するかを判断してもよい。この場合、設定情報は、所定の入力手段を通じて、ユーザ(例えば、オペレータやエンジニア等)が設定変更可能であってもよい。
【0157】
診断用データ取得制御部305は、上記の一定時間が経過すると、診断用データの取得を終了し、コントローラ30は、制御モードを暖機モードから通常モードへ移行させると共に、暖機モードの終了通知を行う(ステップS120)。例えば、コントローラ30は、暖機モードの終了メッセージを表示装置50に表示させたり、暖機モードの終了を表す音声をスピーカから出力させたりすることにより、暖機モードが終了したことをオペレータへ通知する。
【0158】
また、コントローラ30(診断用データ送信部306)は、送信装置S1による管理装置300との無線通信を介して、取得された各種診断用データを、位置情報および日時情報と共に、所定のタイミングで、管理装置300へ送信する(ステップS122)。そして、コントローラ30は、ステップS122の処理を完了すると、図5に示す一連の処理を終了する。
【0159】
管理装置300は、受信装置330を通じて、ショベル100から送信される各種診断用データを受信する。これにより、制御装置310(診断部3101)は、上述の如く、各種診断用データに基づき、ショベル100の故障診断を行うことができる。例えば、診断部3101は、公知の統計手法(例えば、ベイジアン推定法、マハラノビス法、ベクトル解析等の所定のアルゴリズム)を用いて、ショベル100の故障診断を行う。そして、診断部3101は、上述の如く、送信装置320を通じて、診断結果に関するデータをショベル100や他の管理装置(例えば、ユーザのスマートフォン等の携帯端末)に送信してよい。
【0160】
このように、診断用データ取得制御部305は、上記の暖機モード通知メッセージが表示装置50に表示されている最中、即ち、暖機モード中に、ショベル100のエンジン11や油圧システムに一定の負荷をかけて診断用データを取得する。このため、診断用データ取得制御部305は、オペレータが操作を行わずに暖機モードが終了するのを待機している間に、バックグラウンドで(即ち、オペレータに違和感を与えることはなく)、診断用データを取得することができる。
【0161】
特に、診断用データ収集期間は、暖機運転実行期間よりも極めて短いため(例えば、1/10以下)、診断用データ取得制御部305は、オペレータに対し、暖機モード中に診断用データの取得まで行われていることを、殆ど気付かせないようにすることができる。更に、診断用データ取得制御部305は、ショベル100の暖機運転が終了した状態で、診断用データを取得するため、診断用データの取得時のショベル100(エンジン11や油圧システム)の運転条件を一定にすることができる。
【0162】
尚、コントローラ30は、暖機運転実行期間及び診断用データ収集期間の少なくとも一方において、周辺監視装置(例えば、カメラS6)によるショベル100の周囲の監視エリアに進入する監視物体の有無の監視を継続させる。
【0163】
仮に、周辺監視装置によりショベル100の周囲の監視エリアへ監視物体の進入が検知された場合であっても、暖機運転実行期間及び診断用データ収集期間では、ゲートロック弁25Vがロック状態に維持されている。そのため、オペレータが操作装置26を操作しても、ショベル100の油圧アクチュエータは動作不能である。また、操作装置26が操作内容に対応する電気信号を出力する電気式である場合や、ショベル100が遠隔操作される場合であっても、コントロールバルブ17にパイロット圧を作用させる操作用油圧制御弁へのコントローラ30からの制御指令が無効にされる。そのため、この場合も油圧アクチュエータの動作は不能になる。よって、暖機運転実行期間及び診断用データ収集期間において、ショベル100の周囲の監視エリアに監視物体が進入しても、ショベル100が動作してしまうような事態を抑制できる。
【0164】
また、暖機モード(診断モード)において、表示装置50に図6の内容が表示されている状況で、監視物体(例えば、人)が検知された場合、通知部620の表示と併せて、監視物体が検知された旨を表す通知が表示装置50に表示されてよい。また、暖機モード(診断モード)において、表示装置50に図6の内容が表示されている状況で、監視物体(例えば、人)が検知された場合、通知部620の表示に代えて、監視物体が検知された旨を表す通知が表示装置50に表示されてもよい。この場合、監視物体が検知された旨を表す通知は、通知部620と同様、周囲画像600及び表示部601~613に重畳する形で表示されてよい。以下、表示装置50に後述の図12図15の内容が表示されている状況で、監視物体(例えば、人)が検知された場合についても同様であってよい。
【0165】
更に、上述の如く、暖機運転実行期間及び診断用データ収集期間の終了後に、ショベル100の周囲の監視エリア内に監視物体が検知される状態が継続している場合、ショベル100の油圧アクチュエータの動作が制限されてよい。暖機運転実行期間及び診断用データ収集期間が終了し、制御モードが暖機モードから通常モードに移行すると、ショベル100の油圧アクチュエータの操作が可能な状態になるからである。これにより、暖機運転実行期間及び診断用データ収集期間の終了後に、ショベル100のアタッチメント等の被駆動部が急に動作して、ショベル100のアタッチメント等が監視物体(例えば、人)に接近するような事態を抑制することができる。
【0166】
<診断用データの具体例>
図7は、ショベル100において取得される診断用データの一例を示す図である。図7では、診断用データ取得制御部305によって診断用データとして取得された、エンジン実回転数を表している。
【0167】
図7において、実線、点線、及び一点鎖線は、それぞれ、メインポンプ14の斜板の異常時、正常時、及びインジェクタの異常時におけるエンジン実回転数を表している。これらのエンジン実回転数の時系列データは、何れも、暖機モードにおける上記の診断用データ収集期間中に、診断用データ取得制御部305によって、ショベル100の油圧システムに一定の負荷をかけた状態(即ち、メインポンプ圧がリリーフ圧に達した状態)で取得された診断用データに該当する。
【0168】
図7に示す例では、目標エンジン回転数が所定値N[rpm]に設定された上で(図6のステップS112参照)、タイミングt0にて、診断用データの取得が開始されている(図6のステップS114参照)。そして、タイミングt0から所定時間が経過した後のタイミングt1において、カット弁44L,44Rが閉じられたことにより、ショベル100の油圧システムに一定の油圧負荷がかけられている(図6のステップS116参照)。そのため、タイミングt1では、正常時、メインポンプ14の斜板の異常時、およびインジェクタの異常時の何れにおいても、エンジン実回転数が低下している。
【0169】
そして、図7に示すように、メインポンプ14の斜板の異常時、及びインジェクタの異常時において、エンジン実回転数が目標エンジン回転数で再度安定するまでの所要時間および波形は、正常時と異なる。具体的には、メインポンプ14の斜板の異常時には、メインポンプ14の吐出圧の上昇に対して、メインポンプ14の吐出量を減らし過ぎるため、エンジンの回転数の低下量が、正常時よりも小さい。一方、インジェクタの異常時には、目標エンジン回転数に対する燃料噴射量が不足するため、エンジンの回転数の低下量が、正常時よりも大きい。そのため、例えば、管理装置300の診断部3101は、このような診断用データの相違に基づき、公知の統計手法(例えば、上述の如く、ベイジアン推定法、マハラノビス法、ベクトル解析等の所定のアルゴリズム)を用いて、ショベル100の故障診断を行うことができる。その際、各種診断用データは、上述の如く、毎回、同一(一定)の運転条件で取得される。そのため、診断部3101は、比較的高精度にショベル100の故障診断を行うことができる。
【0170】
尚、診断部3101による故障診断の対象は、メインポンプ14やエンジン11のインジェクタに限らず、EGR(Exhaust Gas Recirculation)、ターボチャージャ等であってもよい。
【0171】
<診断用データ取得処理の手順の変形例>
図8は、コントローラ30による診断用データ取得処理の変形例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば、ゲートロックがロック状態(即ち、ゲートロックと連動するゲートロックスイッチがON状態)で、ショベル100のキースイッチがONされる場合に実行される。図9は、診断用データ取得処理の実行時におけるエンジン回転数(目標回転数)、メインポンプ14の吐出圧(設定値)、及びエンジン11の水温の時間変化を示すタイムチャート910~930である。
【0172】
尚、診断用データ取得処理の実行時における油圧駆動系(油圧システム)の作動油の油温は、エンジン11の水温と同様の時間変化を表すため、図9にて、図示が省略される。
【0173】
図8に示すように、ステップS202にて、コントローラ30は、ECU74を介して、スタータ11bを作動させながら、エンジン11の各種のアクチュエータ(例えば、インジェクタ等)を制御し、エンジン11を始動させて、ステップS204に進む。このとき、上述の如く、前提条件として、ゲートロックがロック状態であるため、パイロットポンプ15と操作装置26との間のパイロットライン25に介設されるゲートロック弁25Vがパイロットライン25を非連通とし、操作装置26を用いたショベル100(の油圧アクチュエータ)の操作が無効になる。これにより、ショベル100のエンジン11の始動時に、操作装置26が誤操作されて、ショベル100が動いてしまう事態を防止できる。
【0174】
尚、ショベル100は、上述の如く、遠隔操作されてもよい。この場合、操作装置26を用いる操作に代えて、或いは、加えて、コントローラ30により遠隔操作が無効にされてよい。
【0175】
ステップS204にて、自動暖機制御部301は、油圧システムの作動油の油温が所定の閾値未満であるか否かを判定する。自動暖機制御部301は、作動油の油温が所定閾値未満である場合、ステップS206に進み、それ以外の場合、今回の処理を終了する。
【0176】
ステップS206にて、自動暖機制御部301は、ショベル100の暖機運転を開始させ(即ち、ショベル100の動作モードを自動暖機機能に対応する暖機モードに移行させ)、ステップS208に進む。
【0177】
ステップS208にて、自動暖機制御部301は、エンジン11の目標回転数及びメインポンプ14の油圧負荷(吐出圧)を所定の値に設定し、ショベル100の自動暖機運転を行う。この場合、所定の値は、時間経過に応じて、可変されてもよい(図9参照)。
【0178】
例えば、図9に示すように、時刻t11にて、エンジン11が始動されると、エンジン11の目標回転数は、時間経過に応じて、段階的に引き上げられ、エンジン回転数が段階的に上昇する(タイムチャート910参照)。これにより、時刻t11以降、エンジン11の水温は、右肩上がりで上昇する(タイムチャート930参照)。
【0179】
また、同様に、時刻t11にて、エンジン11が始動されると、メインポンプ14の吐出圧は、その設定値が、時間経過に応じて、段階的に引き上げられ、その実際値も段階的に上昇する。これにより、時刻t11以降、エンジン11の水温の場合と同様、油圧駆動系における作動油の油温は、右肩上がりで上昇する。このように、ショベル100は、エンジン回転数の上昇及び油圧負荷の増加に伴いエンジン11の水温及び作動油の油温を上昇させることができる。
【0180】
図8に戻り、ステップS210にて、自動暖機制御部301は、表示装置50に暖機モードに移行したことを示す通知を表示させて、ステップS212に進む。
【0181】
例えば、表示装置50には、図6の表示内容が表示される。
【0182】
ステップS212にて、自動暖機制御部301は、ショベル100の暖機運転を終了してよいか否かを判定する。例えば、自動暖機制御部301は、エンジン11の水温及び油圧駆動系の作動油の油温のそれぞれが所定の閾値以上になっている場合に、暖機運転を終了してよいと判定してよい。自動暖機制御部301は、ショベル100の暖機運転を終了してよい場合、ステップS214に進み、それ以外の場合、ショベル100の暖機運転を終了してよいタイミングが到来するまで待機する(即ち、本ステップの処理を繰り返す)。
【0183】
ステップS214にて、コントローラ30(診断用データ取得制御部305)は、ショベル100に関する各種の診断を行うためのデータ(診断用データ)を取得(収集)する処理を開始し、ステップS216に進む。このとき、コントローラ30は、エンジン始動時からのゲートロックのロック状態(即ち、ゲートロックスイッチのON状態)を継続する。これにより、ショベル100(の油圧アクチュエータ)の操作が無効になる。そのため、ショベル100の油圧アクチュエータが操作され、収集される診断用データの信頼性が低下してしまう事態を抑制することができる。
【0184】
診断用データは、所定期間の間における所定時間ごとの時系列データにより構成される。収集対象の診断用データは、診断対象の機器や診断の内容等に応じて、予め規定されてよい。例えば、診断対象の機器がエンジン11である場合、診断用データには、エンジン11の燃料噴射率、エンジン回転数の指令値、エンジン回転数の測定値、エンジン11のターボチャージャの過給圧、エンジン11の燃料噴射装置(コモンレール)の圧力(コモンレール圧)、エンジン11のオイルの圧力(オイル圧)、排気ガスの温度、排気ガス中のNOxの測定値、メインポンプ14L,14Rの斜板の傾転角の指令値、メインポンプ14の吐出圧の測定値、油圧駆動系(油圧システム)における作動油の油温の測定値等が含まれうる。コントローラ30は、所定期間の間で各種センサから取得(収集)した診断用データを内部メモリ(例えば、補助記憶装置)や通信可能に接続される外部記憶装置に記憶させる。この際、コントローラ30は、診断用データが取得(収集)されたときの日時に関する情報(例えば、日付及び時刻)(以下、「取得日時情報」)や位置に関する情報(例えば、緯度、経度、及び高度等)(以下、「取得位置情報」)を併せて記憶させる。
【0185】
ステップS216にて、コントローラ30(診断用データ取得制御部305)は、診断用データの取得開始から所定時間経過後に、レギュレータ13を制御し、メインポンプ14に一定の負荷を与える(設定する)。このとき、コントローラ30は、メインポンプ14と作動油タンクとの間の油路(PTライン)が一定の圧力になるように、カット弁44L,44Rを閉じ、センタバイパス油路40L,40Rを遮断してよい。これにより、上記のリリーフ弁の作用で、PTラインの圧力が一定に維持されうる。そして、コントローラ30(診断用データ取得制御部305)は、診断用データの取得開始から所定期間が経過すると、診断用データの取得を終了し、ステップS218に進む。
【0186】
例えば、図9に示すように、時刻t12にて、ショベル100の暖機運転を終了してよいと判定されると、暖機運転の終了時のエンジン回転数(エンジン11の目標回転数)及びメインポンプ14の吐出圧(設定値)が維持される。そして、その状態で、時刻t12から時刻t13までの間で、診断用データが取得(収集)される。これにより、コントローラ30は、ショベル100の暖機運転の終了時に診断用データの収集を行うための収集期間を設けることで、ショベル100の暖機運転と診断用データの収集とを両立させることができる。つまり、暖機モード内において診断用データの収集期間が設定される。このように、コントローラ30は、診断用データの収集期間であっても、ショベル100の暖機運転の状態を維持させるため、ショベル100の暖機運転の終了時に、診断用データが収集されていてもオペレータに違和感を与えないようにすることができる。
【0187】
図8に戻り、ステップS218にて、自動暖機制御部301は、オペレータに対して、暖機モード(暖機運転)の終了を通知し通常モードに移行すると共に、ステップS220に進む。例えば、自動暖機制御部301は、キャビン10内のスピーカから暖機モードの終了を表す音声を出力させたり、表示装置50に暖機モードの終了を表す文字情報を表示させたりする。これにより、コントローラ30は、診断用データの収集完了後に、ショベル100の暖機運転の終了を通知するため、オペレータに違和感を与えることなく、ショベル100の暖機運転に合わせて診断用データが収集することができる。
【0188】
ステップS220にて、コントローラ30(診断用データ送信部306)は、送信装置S1を通じて、取得(収集)した診断用データを管理装置300に送信し、今回の処理を終了する。このとき、コントローラ30は、例えば、診断用データに加え、診断用データに対応する上述の取得日時情報や取得位置情報等を併せて管理装置300に送信してよい。これにより、管理装置300(制御装置310)は、ショベル100から受信される診断用データを用いて所定のアルゴリズムに基づき、ショベル100に関する各種の診断を行うことができる。このとき、管理装置300は、上述の如く、既知の統計手法(例えば、ベイジアン推定法、マハラノビス法、ベクトル解析等)を用いて、ショベル100に関する診断を行ってよい。
【0189】
尚、診断用データは、診断用データの取得ごとに管理装置300に送信される代わりに、他のタイミングで送信されてもよい。例えば、診断用データは、ショベル100が停止される(即ち、キースイッチがOFFされる)場合や、次回のショベル100の起動時(即ち、キースイッチがONされる場合)に、管理装置300に送信されてもよい。また、例えば、診断用データは、ある程度の回数分の診断用データが蓄積された時点で、管理装置300に一括して送信されてもよい。
【0190】
コントローラ30は、診断用データの収集期間において、周辺監視装置(例えば、カメラS6)によるショベル100の周囲の監視エリアに進入する監視物体の有無の監視を継続する。また、コントローラ30は、暖機運転中(つまり、暖機モード)において、周辺監視装置によるショベル100の周囲の監視エリアに進入する監視物体の有無の監視を行ってもよい。
【0191】
仮に、周辺監視装置によりショベル100の周囲の監視エリアへ監視物体の進入が検知された場合であっても、診断用データの収集期間では、ゲートロック弁がロック状態に維持されている。そのため、オペレータが操作装置26を操作しても、ショベル100のアクチュエータは動作不能である。また、操作装置26が操作内容に対応する電気信号を出力する電気式である場合やショベル100が遠隔操作される場合でも、コントロールバルブ17にパイロット圧を作用させる操作用油圧制御弁へのコントローラ30からの制御指令が無効にされる。そのため、この場合もアクチュエータの動作は不能になる。よって、暖機運転の最中、特に、診断用データの収集期間において、ショベル100の周囲の監視エリアに監視物体が進入しても、ショベル100が動作してしまうような事態を抑制できる。
【0192】
また、暖機モード(診断モード)において、表示装置50に図6の内容が表示されている状況で、監視物体(例えば、人)が検知された場合、通知部620の表示と併せて、監視物体が検知された旨を表す通知が表示装置50に表示されてよい。また、暖機モード(診断モード)において、表示装置50に図6の内容が表示されている状況で、監視物体(例えば、人)が検知された場合、通知部620の表示に代えて、監視物体が検知された旨を表す通知が表示装置50に表示されてもよい。この場合、監視物体が検知された旨を表す通知は、通知部620と同様、周囲画像600及び表示部601~613に重畳する形で表示されてよい。
【0193】
更に、上述の如く、診断用データの収集期間の終了後に、ショベル100の周囲の監視エリア内に監視物体が検知される状態が継続している場合、ショベル100の油圧アクチュエータの動作が制限されてよい。診断用データの収集期間が終了し、制御モードが暖機モードから通常モードに移行すると、上述の如く、ショベル100の油圧アクチュエータの操作が可能な状態になるからである。これにより、診断用データの収集期間の終了後に、ショベル100のアタッチメント等の被駆動部が急に動作して、ショベル100のアタッチメント等が監視物体(例えば、人)に接近するような事態を抑制することができる。
【0194】
このように、本例では、コントローラ30は、ショベル100の暖機運転が行われる場合に、ショベル100に関する診断を行うための診断用データを収集する。つまり、コントローラ30は、ショベル100の暖機運転に合わせて、バックグラウンド処理で(即ち、診断用データの収集がされていてもオペレータに違和感を与えることなく)、診断用データを収集する。これにより、オペレータの操作に依らず、ショベル100の出力変動が相対的に小さい状態での信頼性の高い診断用データを自動的に取得することができる。つまり、コントローラ30は、より容易にショベル100に関する診断用データを取得することができる。
【0195】
<作用>
このように、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、エンジン11や油圧システムを一定の運転条件で運転させるときに、ショベル100の診断用データを収集(取得)する。具体的には、一定の運転条件とは、エンジン11や油圧システムに対する負荷変動が相対的に小さいこと(例えば、エンジン11や油圧システム一定の負荷が与えられること)を表す条件を含んでよい。また、一定の運転条件とは、エンジン11や油圧システムが所定の状態であること(例えば、エンジン11の水温や作動油の油温が所定の温度状態にあること)を表す条件を含んでよい。
【0196】
これにより、ショベル100は、毎回、一定の運転条件下で診断用データを取得することができる。そのため、例えば、診断用データ同士を容易に比較することが可能となり、より高い精度で各種診断を行うことができる。よって、ショベル100は、信頼性の高い診断用データを収集することができる。
【0197】
また、本例では、ショベル100は、エンジン11と、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14(油圧ポンプ)とを有し、一定の負荷を与えて診断用データを取得してよい。以下、後述の第2例~第5例についても同様であってよい。
【0198】
例えば、上述の特許文献1には、ショベルが、オペレータによる規定動作の実行中に各種センサによって取得された検出値を管理装置に送信し、専門スタッフが、管理装置によって受信された検出値を分析し、ショベルの状態(故障および不調)を判断する技術が開示されている。
【0199】
しかしながら、特許文献1では、アタッチメントの動作や旋回動作等の規定動作中にショベルが一定の負荷条件となることが少ない。そのため、ショベルの出力診断や故障診断を行うには、サービスマン等が、実際に現場に行ってレバー操作を行い、メインポンプ圧をリリーフ圧まで上昇させ、実エンジン回転数等の診断用データを取得する必要が生じる可能性がある。
【0200】
これに対して、本例では、ショベル100は、一定の負荷条件におけるショベル100の診断用データを容易に取得できる。
【0201】
また、本例では、ショベル100は、取得したデータを管理装置300へ送信してよい。以下、後述の第1例~第4例についても同様であってよい。
【0202】
これにより、ショベル100は、一定の負荷条件におけるショベル100の診断用データによる故障診断を、管理装置300に行わせることができる。
【0203】
また、本例では、ショベル100は、オペレータの操作とは無関係に発生される(すなわち、オペレータの操作によって生じる負荷ではない)一定の負荷を与えてデータを取得してよい。以下、後述の第2例~第5例についても同様であってよい。
【0204】
これにより、ショベル100は、一定の負荷条件におけるショベル100の診断用データをより容易に取得できる。
【0205】
また、本例では、ショベル100は、一定の負荷として油圧負荷を与えてデータを取得してよい。以下、後述の第2例~第5例についても同様であってよい。
【0206】
これにより、ショベル100は、一定の油圧負荷におけるショベル100の診断用データを容易に取得できる。
【0207】
また、本例では、ショベル100は、カット弁44L,44Rによって油圧負荷を発生させてよい。以下、後述の第2例~第5例についても同様であってよい。
【0208】
これにより、ショベル100は、一定の油圧負荷をより確実に再現できる。
【0209】
また、本例では、ショベル100は、診断用データの収集開始後に、メインポンプ14の圧力をリリーフ圧(一定の負荷)に上昇させてよい。
【0210】
これにより、ショベル100は、油圧システムに一定の油圧負荷が与えられる前の状態から、一定の油圧負荷が与えられたときの過渡的な状態を経て、一定の油圧負荷が与えられた後の状態までの期間に亘る診断用データを取得することができる。そのため、一定の油圧負荷が与えられたときの前後に亘るデータの時系列的な変化に基づき、より精度良く各種の診断を行うことができる。
【0211】
尚、本例では、カット弁44L,44Rの開口を絞ることにより油圧負荷を発生させるが、制御弁171~174,175L,175R,176L,176Rを遮断位置にすることで油圧負荷を発生させてもよい。また、メインポンプ14の吐出流量を増加させることにより、油圧負荷を発生させてもよい。以下、後述の第1例~第4例についても同様であってよい。このように、無操作状態において一定の油圧負荷を発生させることで、コントローラ30は安定した診断用データを収集することができる。
【0212】
また、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、エンジン11の出力変動が相対的に小さい(即ち、エンジン11の出力が安定している)場合に対応する所定条件(以下、「データ収集条件」)が成立するときに、ショベル100の診断用データを収集してよい。つまり、本例では、ショベル100は、エンジン11の出力変動が相対的に小さくなるようなショベル100の所定のイベントの発生時に、診断用データを収集してよい。
【0213】
例えば、上述の特許文献1では、オペレータの操作によって、ショベルに規定動作を行わせて、ショベルに関する診断用のデータとして、規定動作時におけるショベルの各種センサの検出データを取得する技術が開示されている。
【0214】
しかしながら、上述の特許文献1の技術では、オペレータが自らレバー操作を行い、ショベルにアタッチメントの動作や旋回動作等の規定動作を行わせる必要がある。そのため、診断用のデータの収集の機会が限定される可能性がある。
【0215】
これに対して、本例では、ショベル100は、データ収集条件の成立(即ち、所定のイベントの発生)をトリガにして、オペレータの操作に依らず、ショベル100の診断用データを収集することができる。そのため、ショベル100は、より容易にショベル100に関する診断用データを収集することができる。また、ショベル100は、エンジン11や油圧システムの運転状態を一定の運転条件に合わせやすくなる。そのため、ショベル100は、より確実に、信頼性の高い診断用データを収集することができる。
【0216】
また、本例では、データ収集条件は、"ショベル100の暖機運転が行われていること"であってよい。即ち、所定のイベントは、"ショベル100の暖機運転"であってよい。
【0217】
これにより、ショベル100は、エンジン11の出力変動が相対的に小さい状況を具体的に選択して、診断用データを収集することができる。そのため、ショベル100は、より確実に、信頼性の高い診断用データを収集することができる。
【0218】
また、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、データ収集条件に対応するショベル100の所定の動作(即ち、所定のイベント)(本例では、ショベル100の暖機運転)の完了時に、診断用データを収集してよい。
【0219】
これにより、ショベル100は、具体的に、データ収集条件に対応する自機の所定の動作(所定のイベント)、即ち、ショベル100の本来の目的の動作(イベント)と、診断用データの収集とを両立させることができる。
【0220】
また、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、データ収集条件に対応するショベル100の所定の動作(所定のイベント)の完了時に、所定の動作(所定のイベント)における一定の運転条件に対応するエンジン11や油圧システムの状態(本例では、ショベル100の暖機運転時のエンジン11の負荷状態、エンジン11の水温の状態、作動油の油温の状態等)を所定時間だけ継続させて、診断用データを収集してよい。
【0221】
これにより、ショベル100は、自機の所定の動作(所定のイベント)の終了時に、診断用データが収集されていてもオペレータに違和感を与えないようにすることができる。
【0222】
また、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、診断用データの収集の完了後に、データ収集条件に対応するショベル100の所定の動作(所定のイベント)(本例では、ショベル100の暖機運転)の終了をオペレータに通知してよい。
【0223】
これにより、ショベル100は、自機の所定の動作に合わせて、診断用データが収集されていてもオペレータに違和感を与えないようにすることができる。
【0224】
また、本例では、ショベル100は、ショベル100の診断に関する動作の最中(例えば、監視用データの収集や監視用データに基づく診断処理等)に、周辺監視装置(例えば、カメラS6)によるショベル100の周囲の所定距離内(監視エリア)へ進入する監視物体の有無の監視を継続させてよい。以下、後述の第2例~第5例についても同様であってよい。
【0225】
これにより、ショベル100の診断に関する動作の最中におけるショベル100の安全性を向上させることができる。
【0226】
[診断用データ取得処理の第2例]
次に、図10図12を参照して、コントローラ30による診断用データ取得処理の第2例について説明する。
【0227】
<概要>
例えば、診断用データ取得制御部305は、ショベル100において、排気ガス処理装置(PM低減装置)の手動再生が行われるときに、エンジン11や油圧システムに一定の負荷をかけて、ショベル100の診断用データを取得してもよい。
【0228】
例えば、コントローラ30(手動再生制御部303)は、ショベル100において、PM低減装置の手動再生が開始されるタイミングで、ショベル100の制御モードを手動再生モードに切り換える。手動再生モードの実施期間には、手動再生実行期間と、診断用データ収集期間とが含まれる。手動再生実行期間は、PM低減装置の手動再生が行われる期間である。診断用データ収集期間は、PM低減装置の手動再生が完了した後、エンジン11や油圧システムに一定の負荷をかけて診断用データを収集するための期間である。つまり、本例では、手動再生モードの中に、診断モードが含まれており、診断用データ収集期間は、診断モードに対応する。手動再生モード中、コントローラ30(手動再生制御部303)は、手動再生モード中であることをショベル100のオペレータに通知するための通知画面(例えば、図12参照)を、表示装置50に表示させる。
【0229】
このように、診断用データ取得制御部305は、上記の通知画面が表示装置50に表示されている最中、即ち、手動再生モード中に、エンジン11や油圧システムに一定の負荷をかけて診断用データを取得する。このため、診断用データ取得制御部305は、オペレータが操作を行わずに、手動再生モードが終了するのを待機している間に、バックグラウンドで、エンジン11や油圧システムに一定の負荷がかけられた状態での診断用データを取得できる。
【0230】
特に、診断用データ収集期間は、手動再生実行期間よりも極めて短いため(例えば、1/10以下)、診断用データ取得制御部305は、オペレータに対し、手動再生モード中に診断用データの取得まで行われていることを、殆ど気付かせないようにすることができる。更に、診断用データ取得制御部305は、ショベル100のPM低減装置の手動再生が終了した状態で、診断用データを取得するため、診断用データの取得時のショベル100(エンジン11や油圧システム)の運転条件を一定とすることができる。
【0231】
<診断用データ取得処理の手順>
図10は、コントローラ30による診断用データ取得処理の第2例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば、コントローラ30によって、自動再生機能では排気ガス処理装置の再生が完了できない旨の通知がオペレータに対して行われる場合に実行される。図11は、診断用データ取得処理の実行時におけるエンジン回転数、及びメインポンプ14の吐出圧の時間変化の一例を示すタイムチャート1110,1120である。図12は、手動再生モード中における表示装置50の表示内容の一例を示す図である。
【0232】
図10に示すように、ステップS302にて、コントローラ30は、オペレータの手動再生ボタン54に対する操作に応じて出力される手動再生要求を取得する。
【0233】
ステップS304にて、手動再生制御部303は、手動再生要求の取得をトリガにして、排気ガス処理装置(PM低減装置)の手動再生を開始させ(即ち、ショベル100の動作モードを手動再生機能に対応する手動再生モードに移行させ)、ステップS306に進む。
【0234】
ステップS306にて、手動再生制御部303は、エンジン11の目標回転数及びメインポンプ14の吐出圧を所定の値に設定し、ステップS308に進む。これにより、コントローラ30は、エンジン11の相対的に高い負荷状態を実現し、排気ガス処理装置に溜まったススやPMを高温の排気ガスで燃焼させる工程を進める。
【0235】
例えば、図11に示すように、時刻t21にて、手動再生要求が取得されると、エンジン11の目標回転数は、相対的に高い値に引き上げられ、エンジン回転数は、相対的に高い状態に上昇する(タイムチャート1110参照)。メインポンプ14についても同様である(タイムチャート1120参照)。これにより、エンジン11の相対的に高い負荷状態が実現され、エンジン11から排出される高温の排気ガスによって、排気ガス処理装置に溜まったススやPMが燃焼する。
【0236】
図10に戻り、ステップS308にて、手動再生制御部303は、表示装置50に手動再生モードに移行したことを示す通知を表示させて、ステップS310に進む。
【0237】
例えば、表示装置50には、図12の表示内容が表示される。
【0238】
図12に示すように、表示装置50には、例えば、カメラS6の出力(撮像画像)に基づくショベル100の周囲画像1200が表示される。また、表示装置50には、ショベル100に関する各種情報を表す表示部1201~1213が周囲画像900に重畳して表示される。
【0239】
周囲画像1200及び表示部1201~1208,1210~1213の内容は、図6の周囲画像600A及び表示部601~610,612,613と同じであるため、説明を省略する。
【0240】
表示部1209には、ショベル100の油圧システムの作動油の温度状態が表示される。本例では、表示部1209には、作動油の温度状態を表すバーゲージが表示されている。作動油の温度状態は、油温センサS7から出力されるデータに基づき表示される。
【0241】
また、表示装置50には、手動再生開始時に表示されていた表示内容(本例では、カメラS6の撮像画像に基づくショベル100の周囲画像1200及び表示部1201~1211)に加えて、これらの上に重畳する形で通知部1220が表示されている。具体的には、通知部1220は、表示装置50の表示領域における上下方向の中央部に表示され、通知部1220には、"手動再生中(機械を操作しないでください)"という文字情報が表示されている。これにより、ショベル100のオペレータは、自らの手動再生ボタン54の操作に応じて、ショベル100が手動再生モードに移行し、手動再生機能が実行されていることを認識することができる。また、オペレータは、手動再生中に、ショベル100の操作が禁止されることを認識することができる。
【0242】
図10に戻り、ステップS310にて、手動再生制御部303は、排気ガス処理装置の手動再生が終了したか否かを判定する。手動再生制御部303は、排気ガス処理装置の手動再生が終了した場合、ステップS312に進み、終了していない場合、終了するまで待機する(即ち、本ステップの処理を繰り返す)。
【0243】
ステップS312にて、コントローラ30(診断用データ取得制御部305)は、ショベル100の診断用データを取得(収集)する処理を開始し、ステップS316に進む。
【0244】
ステップS314にて、コントローラ30(診断用データ取得制御部305)は、診断用データの取得開始から所定時間経過後に、レギュレータ13を制御し、メインポンプ14に一定の負荷を与える(設定する)。このとき、コントローラ30は、PTラインの圧力を一定の圧力になるように、カット弁44L,44Rを閉じ、センタバイパス油路40L,40Rを遮断してよい。そして、コントローラ30(診断用データ取得制御部305)は、診断用データの取得開始から所定期間が経過すると、診断用データの取得を終了し、ステップS316に進む。
【0245】
例えば、図11に示すように、時刻t23にて、排気ガス処理装置の手動再生が終了すると、通常、エンジン11の高負荷運転状態が終了し、エンジン回転数(一点鎖線1111参照)及びメインポンプ14の吐出圧(一点鎖線1121参照)は、手動再生の開始前と同様に相対的に低い状態に戻される。
【0246】
これに対して、本例では、時刻t23にて、排気ガス処理装置の手動再生が終了したと判定されると、排気ガス処理装置の手動再生の終了時のエンジン回転数(エンジン11の目標回転数)及びメインポンプ14の吐出圧(設定値)が維持される。そして、その状態で、時刻t23から時刻t24までの間で、診断用データが取得(収集)される。これにより、コントローラ30は、排気ガス処理装置の手動再生の終了時に、診断用データの収集を行うための収集期間を設けることで、排気ガス処理装置の手動再生と診断用データの収集とを両立させることができる。つまり、手動再生モード内において診断用データの収集期間が設定される。このように、コントローラ30は、診断用データの収集期間であっても、排気ガス処理装置の手動再生の状態を維持させるため、排気ガス処理装置の手動再生の終了時に、診断用データが収集されていてもオペレータに違和感を与えないようにすることができる。
【0247】
図10に戻り、ステップS316にて、手動再生制御部303は、オペレータに対して、手動再生モードの終了を通知し通常モードに移行すると共に、ステップS318に進む。例えば、手動再生制御部303は、キャビン10内のスピーカから手動再生モードの終了を表す音声を出力させたり、表示装置50に手動再生モードの終了を表す文字情報を表示させたりする。これにより、コントローラ30は、診断用データの収集完了後に、排気ガス処理装置の手動再生の終了を通知するため、オペレータに違和感を与えることなく、排気ガス処理装置の手動再生に合わせて、診断用データが収集することができる。
【0248】
ステップS318は、図8のステップS220の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0249】
このように、本例では、コントローラ30は、ショベル100の排気ガス処理装置の手動再生が行われる場合に、ショベル100に関する診断を行うための診断用データを収集する。つまり、コントローラ30は、ショベル100の排気ガス処理装置の手動再生に合わせて、バックグラウンド処理で(即ち、診断用データの収集がされていてもオペレータに違和感を与えることなく)、診断用データを収集する。これにより、オペレータの操作に依らず、ショベル100の出力変動が相対的に小さい状態での信頼性の高い診断用データを自動的に取得することができる。つまり、コントローラ30は、より容易にショベル100に関する診断用データを取得することができる。
【0250】
<作用>
このように、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、上述の第1例と同様、エンジン11や油圧システムを一定の運転条件で運転させるときに、ショベル100の診断用データを収集(取得)する。
【0251】
これにより、ショベル100は、上述の第1例と同様の作用・効果を奏することができる。
【0252】
また、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、上述の第1例と同様、エンジン11の出力変動が相対的に小さい(即ち、エンジン11の出力が安定している)場合に対応するデータ収集条件が成立するときに、ショベル100の診断用データを収集してよい。つまり、本例では、ショベル100は、上述の第1例の場合と同様、エンジン11の出力変動が相対的に小さくなるようなショベル100の所定のイベントの発生時に、診断用データを収集してよい。
【0253】
これにより、ショベル100は、上述の第1例と同様の作用・効果を奏することができる。
【0254】
また、本例では、データ収集条件は、"エンジン11の排気ガス処理装置の再生が行われていること"であってよい。即ち、所定のイベントは、"エンジン11の排気ガス処理装置の再生"であってよい。
【0255】
これにより、ショベル100は、エンジン11の出力変動が相対的に小さい状況を具体的に選択して、診断用データを収集することができる。
【0256】
また、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、上述の第1例と同様、データ収集条件に対応するショベル100の所定の動作(所定のイベント)(本例では、ショベル100の排気ガス処理装置の手動再生)の完了時に、診断用データを収集してよい。
【0257】
これにより、ショベル100は、上述の第1例と同様の作用・効果を奏することができる。
【0258】
また、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、上述の第1例と同様、データ収集条件に対応するショベル100の所定の動作(イベント)の完了時に、所定の動作(所定のイベント)における一定の運転条件に対応するエンジン11や油圧システムの状態(本例では、排気ガス処理装置の手動再生時のエンジン11の負荷状態、エンジン11の水温の状態、作動油の油温の状態等)を所定時間だけ継続させて、診断用データを収集してよい。
【0259】
これにより、ショベル100は、上述の第1例と同様の作用・効果を奏することができる。
【0260】
また、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、上述の第1例と同様、診断用データの収集の完了後に、データ収集条件に対応するショベル100の所定の動作(イベント)(本例では、排気ガス処理装置の手動再生)の終了をオペレータに通知してよい。
【0261】
これにより、ショベル100は、上述の第1例と同様の作用・効果を奏することができる。
【0262】
[診断用データ取得処理の第3例]
次に、コントローラ30による診断用データ取得処理の第3例について説明する。
【0263】
<概要>
例えば、診断用データ取得制御部305は、ショベル100において、エンジン11が備える過給器(ターボチャージャ)を冷却するためのターボ冷却(過給器の冷却運転)が行われるときに、エンジン11や油圧システムに一定の負荷をかけてショベル100の診断用データを取得してもよい。
【0264】
過給器の冷却運転は、例えば、ショベル100が停止される場合(即ち、キースイッチがOFFされる場合)に、過給器の温度状態に応じて(例えば、過給器が相対的に温度の高い高温状態にあるとき)に実行される。
【0265】
例えば、コントローラ30は、ショベル100において、ターボ冷却が開始されるタイミングで、ショベル100の制御モードをターボ冷却モードに切り換える。ターボ冷却モードの実施期間には、ターボ冷却実行期間と、診断用データ収集期間とが含まれる。ターボ冷却実行期間は、ターボ冷却が行われる期間である。診断用データ収集期間は、ターボ冷却が完了した後、エンジン11や油圧システムに一定の負荷をかけて診断用データを収集するための期間である。つまり、本例では、ターボ冷却モードの中に、診断モードが含まれており、診断用データ収集期間は、診断モードに対応する。ターボ冷却モード中、診断用データ取得制御部305は、ターボ冷却モード中であることをショベル100のオペレータに通知するための通知画面を、表示装置50に表示させる。
【0266】
このように、診断用データ取得制御部305は、上記の通知画面が表示装置50に表示されている最中、即ち、ターボ冷却モード中に、ショベル100のエンジン11や油圧システムに一定の負荷をかけて診断用データを取得する。このため、診断用データ取得制御部305は、オペレータが操作を行わずにターボ冷却モードが終了するのを待機している間に、バックグラウンドで、一定の負荷がかけられた状態での診断用データを取得できる。
【0267】
特に、診断用データ収集期間は、ターボ冷却実行期間よりも極めて短いため(例えば、1/10以下)、診断用データ取得制御部305は、オペレータに対し、ターボ冷却モード中に診断用データの取得まで行われていることを、殆ど気付かせないようにすることができる。
【0268】
<作用>
このように、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、上述の第1例等と同様、エンジン11や油圧システムを一定の運転条件で運転させるときに、ショベル100の診断用データを収集(取得)する。
【0269】
これにより、ショベル100は、上述の第1例等と同様の作用・効果を奏することができる。
【0270】
本例では、ショベル100(コントローラ30)は、上述の第1例等と同様、エンジン11の出力変動が相対的に小さい(即ち、エンジン11の出力が安定している)場合に対応するデータ収集条件が成立するときに、ショベル100の診断用データを収集してよい。換言すれば、本例では、ショベル100は、エンジン11の出力変動が相対的に小さくなるようなショベル100の所定のイベントの発生時に、診断用データを収集してよい。
【0271】
これにより、ショベル100は、上述の第1例等と同様の作用・効果を奏することができる。
【0272】
また、本例では、データ収集条件は、"エンジン11に搭載される過給器(ターボチャージャ)の冷却運転が行われていること"であってよい。即ち、所定のイベントは、"エンジン11に搭載される過給器(ターボチャージャ)の冷却運転"であってよい。
【0273】
これにより、ショベル100(コントローラ30)は、暖機運転時等と同様、エンジン11の過給器の冷却運転時(ターボ冷却モード中)において、オペレータに違和感を与えることなく、診断用データを収集することができる。そのため、ショベル100は、エンジン11の出力変動が相対的に小さい状況を具体的に選択して、診断用データを収集することができる。
【0274】
また、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、上述の第1例等と同様、データ収集条件に対応するショベル100の所定の動作(所定のイベント)(本例では、エンジン11の過給器の冷却運転)の完了時に、診断用データを収集してよい。
【0275】
これにより、ショベル100は、上述の第1例等と同様の作用・効果を奏することができる。
【0276】
また、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、上述の第1例等と同様、データ収集条件に対応するショベル100の所定の動作(所定のイベント)の完了時に、所定の動作(所定のイベント)の状態(本例では、過給器の冷却運転時のエンジン11の負荷状態、エンジン11の水温の状態、作動油の油温の状態等)を所定時間だけ継続させて、診断用データを収集してよい。
【0277】
これにより、ショベル100は、上述の第1例等と同様の作用・効果を奏することができる。
【0278】
また、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、上述の第1例等と同様、診断用データの収集の完了後に、データ収集条件に対応するショベル100の所定の動作(所定のイベント)(本例では、過給器の冷却運転)の終了をオペレータに通知してよい。
【0279】
これにより、ショベル100は、上述の第1例等と同様の作用・効果を奏することができる。
【0280】
[診断用データ取得処理の第4例]
次に、コントローラ30による診断用データ取得処理の第4例について説明する。
【0281】
<概要>
例えば、コントローラ30(診断用データ取得制御部305)は、姿勢検出装置S4の出力値を校正する校正モード中において診断用データを取得してもよい。
【0282】
姿勢検出装置S4は、外気温度などの影響により出力値が変化する。この場合、作業部位の位置情報に誤差が生じる。このため、コントローラ30は、所定の時期に、制御モードを校正モードに移行させ、校正モードにおいて、姿勢検出装置S4の出力値を校正することにより、作業部位の位置情報の誤差を解消する必要がある。そこで、コントローラ30は、校正モード中において、この校正の終了後に診断用データを取得することで、オペレータに違和感を与えることはなく診断用データを取得することができる。つまり、本例では、校正モードの中に、診断モードが含まれており、姿勢検出装置S4の校正完了後の診断用データ収集期間は、診断モードに対応する。
【0283】
<作用>
このように、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、上述の第1例等と同様、エンジン11や油圧システムを一定の運転条件で運転させるときに、ショベル100の診断用データを収集(取得)する。
【0284】
これにより、ショベル100は、上述の第1例等と同様の作用・効果を奏することができる。
【0285】
また、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、上述の第1例等と同様、エンジン11の出力変動が相対的に小さい(即ち、エンジン11の出力が安定している)場合に対応するデータ収集条件が成立するときに、ショベル100の診断用データを収集してよい。つまり、本例では、ショベル100は、エンジン11の出力変動が相対的に小さくなるようなショベル100の所定のイベントの発生時に、診断用データを収集してよい。
【0286】
これにより、ショベル100は、上述の第1例等と同様の作用・効果を奏することができる。
【0287】
また、本例では、データ収集条件は、"姿勢検出装置S4の校正が行われていること"であってよい。即ち、所定のイベントは、"姿勢検出装置S4の校正"であってよい。
【0288】
これにより、ショベル100(コントローラ30)は、ショベル100の暖機運転時等と同様、姿勢検出装置S4の出力値の校正時(校正モード中)において、オペレータに違和感を与えることなく、診断用データを収集することができる。そのため、ショベル100は、エンジン11の出力変動が相対的に小さい状況を具体的に選択して、診断用データを収集することができる。
【0289】
また、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、上述の第1例等と同様、データ収集条件に対応するショベル100の所定の動作(所定のイベント)(本例では、姿勢検出装置S4の出力値の校正)の完了時に、診断用データを収集してよい。
【0290】
これにより、ショベル100は、上述の第1例等と同様の作用・効果を奏することができる。
【0291】
また、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、上述の第1例等と同様、データ収集条件に対応するショベル100の所定の動作(所定のイベント)の完了時に、所定の動作(所定のイベント)の状態(本例では、姿勢検出装置S4の出力値の校正時のエンジン11の負荷状態、エンジン11の水温の状態、作動油の油温の状態等)を所定時間だけ継続させて、診断用データを収集してよい。
【0292】
これにより、ショベル100は、上述の第1例等と同様の作用・効果を奏することができる。
【0293】
また、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、上述の第1例等と同様、診断用データの収集の完了後に、データ収集条件に対応するショベル100の所定の動作(所定のイベント)(本例では、姿勢検出装置S4の出力値の校正)の終了をオペレータに通知する。
【0294】
これにより、ショベル100は、上述の第1例等と同様の作用・効果を奏することができる。
【0295】
[診断用データ取得処理の第5例]
次に、コントローラ30による診断用データ取得処理の第5例について説明する。
【0296】
上記の例1例~第4例では、診断用データ取得制御部305は、ショベル100において暖機運転、排気ガス処理装置の再生、ターボ冷却、或いは姿勢検出装置S4の校正が行われるときに、ショベル100に一定の負荷をかけて診断用データを収集しているが、これに限らない。
【0297】
例えば、診断用データ取得制御部305は、ショベル100において、その他の処理が行われるときに、ショベル100に一定の負荷をかけて診断用データを収集してもよい。その他の処理には、例えば、尿素SCRシステムのパージ処理(触媒の再生処理)等が含まれる。つまり、本例では、尿素SCRシステムのパージ処理が行われる制御モードの中に、診断モードが含まれており、パージ処理の完了後の診断用データ収集期間は、診断モードに対応する。
【0298】
[診断用データ取得処理の第6例]
次に、図13図15を参照して、コントローラ30による診断用データ取得処理の第6例を説明する。
【0299】
<診断用データ取得処理の手順>
図13は、コントローラ30による診断用データ取得処理の第6例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば、ゲートロックがロック状態(即ち、ゲートロックと連動するゲートロックスイッチがON状態)で、ショベル100のキースイッチがONされる場合に実行される。図14は、診断用データ取得処理の実行時におけるエンジン回転数(目標回転数)、メインポンプ14の吐出圧(設定値)、及びエンジン11の水温の時間変化を示すタイムチャート1410~1430である。図15は、診断用データ取得処理の実行時における表示装置50の表示内容の一例を示す図である。
【0300】
尚、本例に係る診断用データ取得処理の実行時における油圧駆動系(油圧システム)の作動油の油温は、エンジン11の水温と同様の時間変化を表すため、図14にて、図示が省略される。
【0301】
図13に示すように、ステップS402にて、コントローラ30(自動暖機制御部301)は、ECU74を介して、スタータ11bを作動させながら、エンジン11の各種のアクチュエータ(例えば、インジェクタ等)を制御し、エンジン11を始動させて、ステップS404に進む。このとき、上述の如く、前提条件として、ゲートロックがロック状態であるため、パイロットポンプ15と操作装置26との間のパイロットライン25に介設されるゲートロック弁がパイロットライン25を非連通とし、操作装置26を用いたショベル100(の油圧アクチュエータ)の操作が無効になる。これにより、ショベル100のエンジン11の始動時に、操作装置26が誤操作されて、ショベル100が動いてしまう事態を防止できる。
【0302】
尚、ショベル100は、上述の如く、遠隔操作されてもよい。この場合、操作装置26を用いる操作に代えて、或いは、加えて、コントローラ30により遠隔操作が無効にされてよい。
【0303】
ステップS404にて、コントローラ30(自動暖機制御部301)は、油圧システムの作動油の油温が所定の閾値未満であるか否かを判定する。コントローラ30は、作動油の油温が所定閾値未満である場合、ステップS406に進み、それ以外の場合、診断用データを収集可能と判断しステップS416に進む。
【0304】
ステップS406にて、コントローラ30(自動暖機制御部301)は、ショベル100の暖機運転を開始させ(即ち、ショベル100の動作モードを自動暖機機能に対応する暖機モードに移行させ)、ステップS408に進む。
【0305】
ステップS408にて、コントローラ30(自動暖機制御部301)は、エンジン11の目標回転数及びメインポンプ14の油圧負荷(吐出圧)を所定の値に設定し、ショベル100の自動暖機運転を開始し、ステップS410に進む。この場合、所定の値は、時間経過に応じて、可変されてもよい(図14参照)。
【0306】
例えば、図14に示すように、時刻t31にて、エンジン11が始動されると、エンジン11の目標回転数は、時間経過に応じて、段階的に引き上げられ、エンジン回転数が段階的に上昇する(タイムチャート1410参照)。これにより、時刻t31以降、エンジン11の水温は、右肩上がりで上昇する(タイムチャート1430参照)。
【0307】
また、同様に、時刻t31にて、エンジン11が始動されると、メインポンプ14の吐出圧は、その設定値が、時間経過に応じて、段階的に引き上げられ、その実際値も段階的に上昇する。これにより、時刻t31以降、エンジン11の水温の場合と同様、油圧駆動系における作動油の油温は、右肩上がりで上昇する。このように、ショベル100は、エンジン回転数の上昇及び油圧負荷の増加に伴いエンジン11の水温及び作動油の油温を上昇させることができる。
【0308】
図13に戻り、ステップS410にて、コントローラ30(自動暖機制御部301)は、表示装置50に暖機モードに移行したことを示す通知を表示させて、ステップS412に進む。
【0309】
これにより、ショベル100のオペレータは、ショベル100が暖機モードに移行し、自動暖機機能が実行されていることを認識することができる。また、オペレータは、暖機モード中であるため、ショベル100の操作ができないことを認識することができる。
【0310】
尚、ショベル100は、暖機モード中において、操作装置26による操作や遠隔操作が必ずしも不能である必要はなく、操作可能な状態であってもよい。
【0311】
ステップS412にて、コントローラ30(自動暖機制御部301)は、ショベル100の暖機運転を終了してよいか否かを判定する。例えば、コントローラ30は、エンジン11の水温及び油圧駆動系の作動油の油温のそれぞれが所定の閾値以上になっている場合に、暖機運転を終了してよいと判定してよい。コントローラ30は、ショベル100の暖機運転を終了してよい場合、ステップS414に進み、それ以外の場合、ショベル100の暖機運転を終了してよいタイミングが到来するまで待機する(即ち、本ステップの処理を繰り返す)。
【0312】
ステップS414にて、コントローラ30(自動暖機制御部301)は、オペレータに対して、暖機モード(暖機運転)の終了を通知し、ステップS416に進む。例えば、コントローラ30は、キャビン10内のスピーカから暖機モードの終了を表す音声を出力させたり、表示装置50に診断モードの終了を表す文字情報を表示させたりする。これにより、コントローラ30は、ショベル100の暖機運転の終了(即ち、暖機モードの終了)をオペレータに認識させることができる。
【0313】
ステップS416にて、診断モード設定部304は、ショベル100の動作モードを診断モードに設定する。このとき、診断モード設定部304は、エンジン始動時からのゲートロックのロック状態(即ち、ゲートロックスイッチのON状態)を継続する。これにより、診断モードにおいて、ショベル100(の油圧アクチュエータ)の操作が無効になる。そのため、診断モード中に、ショベル100の油圧アクチュエータが操作され、収集される診断用データの信頼性が低下してしまう事態を抑制することができる。
【0314】
具体的には、診断モード設定部304は、エンジン11及びレギュレータ13を制御し、エンジン回転数(エンジン11の目標回転数)及びメインポンプ14の油圧負荷(メインポンプ14の吐出圧)を診断モード用の固有値に設定し、ステップS418に進む。具体的には、診断モード設定部304は、上述の第1例等の場合と同様、エンジン11や油圧システムが一定の運転条件で運転されるように、診断モード用の固有値を設定してよい。これにより、診断用データ取得制御部305は、エンジン11や油圧システムが一定の運転条件で運転されているときの診断用データを取得することができる。また、診断モード設定部304は、上述の第1例等の場合と同様、診断用データの取得開始後に、油圧システムに一定の油圧負荷が付与されるように、診断モード用の固有値(メインポンプ14の油圧負荷)を設定してよい。これにより、診断用データ取得制御部305は、一定の油圧負荷が付与される前後に亘る時間範囲での診断用データを取得することができる。この場合、診断用データ取得制御部305は、診断用データの取得開始から所定時間経過後に、メインポンプ14と作動油タンクとの間の油路(PTライン)が一定の圧力になるように、カット弁44L,44Rを閉じ、センタバイパス油路40L,40Rを遮断してよい。これにより、リリーフ弁の作用で、PTラインの圧力が一定に維持され、一定の油圧負荷が付与されうる。
【0315】
ステップS418にて、診断用データ取得制御部305は、診断用データの取得(収集)を開始する。そして、診断用データ取得制御部305は、診断用データの取得開始から所定期間(例えば、30秒間)が経過すると診断用データの取得(収集)を終了し、ステップS420に進む。
【0316】
診断用データは、上述の第1例等の場合と同様、所定期間の間における所定時間ごとの時系列データにより構成される。収集対象の診断用データは、診断対象の機器や診断の内容等に応じて、予め規定されてよい。例えば、診断対象の機器がエンジン11である場合、診断用データには、エンジン11の燃料噴射率、エンジン回転数の指令値、エンジン回転数の測定値、エンジン11のターボチャージャの過給圧、エンジン11の燃料噴射装置(コモンレール)の圧力(コモンレール圧)、エンジン11のオイルの圧力(オイル圧)、排気ガスの温度、排気ガス中のNOxの測定値、メインポンプ14L,14Rの斜板の傾転角の指令値、メインポンプ14の吐出圧の測定値、油圧駆動系(油圧システム)における作動油の油温の測定値等が含まれうる。コントローラ30は、所定期間の間で各種センサから取得(収集)した診断用データを内部メモリ(例えば、補助記憶装置)や通信可能に接続される外部記憶装置に記憶させる。この際、コントローラ30は、診断用データが取得(収集)されたときの日時に関する情報(例えば、日付及び時刻)(取得日時情報)や位置に関する情報(例えば、緯度、経度、及び高度等)(取得位置情報)を併せて記憶させる。
【0317】
例えば、図14に示すように、時刻t32の直前に、ショベル100の暖機運転を終了してよいと判定されると、診断用データの取得が開始される。そして、診断用データの取得開始後の時刻t32にて、エンジン回転数(エンジン11の目標回転数)及びメインポンプ14の吐出圧(設定値)は、診断モード用の固有値に上昇する。そして、その状態で、時刻t33までの間で、診断用データが取得(収集)される。
【0318】
コントローラ30(診断モード設定部304)は、診断モードにおいて、即ち、ステップS416,S418の処理の間、表示装置50に診断モードである旨を表示させる。
【0319】
例えば、表示装置50には、図15の表示内容が表示される。
【0320】
図15に示すように、表示装置50には、例えば、カメラS6の出力(撮像画像)に基づくショベル100の周囲画像1500が表示される。また、表示装置50には、ショベル100に関する各種情報を表す表示部1501~1513が周囲画像1500に重畳して表示される。
【0321】
周囲画像1500及び表示部1501~1513の内容は、図6の周囲画像600及び表示部613と同じであるため、説明を省略する。
【0322】
また、表示装置50には、診断モードの開始時に表示されていた表示内容(本例では、周囲画像1500及び表示部1501~1513)に加えて、これらの上に重畳する形で診断モード中である旨をオペレータに通知する通知部1520が表示される。
【0323】
通知部1520は、表示装置50の表示領域における上下方向の中央部に表示される。本例では、"診断モード中(しばらくお待ちください)"の文字情報が表示される。これにより、ショベル100のオペレータは、ショベル100が診断モードに移行し、診断用データの収集が実行されていることを認識することができる。また、オペレータは、診断モード中であるため、ショベル100の操作ができないことを認識することができる。
【0324】
尚、ショベル100は、診断モード中において、操作装置26による操作や遠隔操作が必ずしも不能である必要はなく、操作可能な状態であってもよい。
【0325】
図13に戻り、ステップS420にて、コントローラ30は、オペレータに対して、診断モード(診断用データの収集)の終了を通知し通常モードに移行すると共に、ステップS422に進む。例えば、コントローラ30は、キャビン10内のスピーカから診断モードの終了を表す音声を出力させたり、表示装置50に診断モードの終了を表す文字情報を表示させたりする。これにより、コントローラ30は、診断用データの収集完了後に、ショベル100の暖機運転の終了とは別に、診断用データの収集が終了したことをオペレータに認識させることができる。
【0326】
尚、本例(図13)では、暖機モードの終了後に自動で診断モードへ移行するように予め設定されるが、コントローラ30は、暖機モードの終了後、オペレータに対して診断モードを実行するかどうかを確認するようにしてもよい。この場合、暖機モードの終了後であっても自動的に診断モードへは移行しない。例えば、暖機モードの終了後、コントローラ30は、表示装置50への表示やスピーカからの音声出力等によりオペレータへ診断モードへの移行の要否を確認し、オペレータが診断モードスイッチ56をONにした場合に診断モードを実行するようにしてよい。
【0327】
ステップS422にて、診断用データ送信部306は、送信装置S1を通じて、取得(収集)した診断用データを管理装置300に送信し、今回の処理を終了する。このとき、コントローラ30は、例えば、診断用データに加え、診断用データに対応する上述の取得日時情報や取得位置情報等を併せて管理装置300に送信してよい。これにより、管理装置300(制御装置310)は、ショベル100から受信される診断用データを用いて所定のアルゴリズムに基づき、ショベル100に関する各種の診断を行うことができる。このとき、管理装置300は、上述の第1例等の場合と同様、既知の統計手法(例えば、ベイジアン推定法、マハラノビス法、ベクトル解析等)を用いて、ショベル100に関する診断を行ってよい。
【0328】
尚、診断用データは、診断用データの取得ごとに管理装置300に送信される代わりに、他のタイミングで送信されてもよい。例えば、診断用データは、ショベル100が停止される(即ち、キースイッチがOFFされる)場合や、次回のショベル100の起動時(即ち、キースイッチがONされる場合)に、管理装置300に送信されてもよい。また、例えば、診断用データは、ある程度の回数分の診断用データが蓄積された時点で、管理装置300に一括して送信されてもよい。
【0329】
コントローラ30は、診断用データの収集期間、即ち、ショベル100の診断モードにおいて、周辺監視装置(例えば、カメラS6)によるショベル100の周囲の監視エリアに進入する監視物体の有無の監視を継続する。また、コントローラ30は、暖機運転中、即ち、ショベル100の暖機モードにおいて、周辺監視装置によるショベル100の周囲の監視エリアに進入する監視物体の有無の監視を行ってもよい。
【0330】
仮に、周辺監視装置によりショベル100の周囲の監視エリアへ監視物体の進入が検知された場合であっても、診断用データの収集期間では、ゲートロック弁がロック状態に維持されている。そのため、オペレータが操作装置26を操作しても、ショベル100のアクチュエータは動作不能である。また、操作装置26が操作内容に対応する電気信号を出力する電気式である場合やショベル100が遠隔操作される場合でも、コントロールバルブ17にパイロット圧を作用させる制御弁へのコントローラ30からの制御指令が無効にされる。そのため、この場合もアクチュエータの動作は不能になる。よって、診断用データの収集期間において、ショベル100の周囲の監視エリアに監視物体が進入しても、ショベル100が動作してしまうような事態を抑制できる。
【0331】
更に、上述の如く、診断用データの収集期間の終了後に、ショベル100の周囲の監視エリア内に監視物体が検知される状態が継続している場合、ショベル100の油圧アクチュエータの動作が制限されてよい。診断用データの収集期間が終了し、制御モードが診断モードから通常モードに移行すると、上述の如く、ショベル100の油圧アクチュエータの操作が可能な状態になるからである。これにより、診断用データの収集期間の終了後に、ショベル100のアタッチメント等の被駆動部が急に動作して、ショベル100のアタッチメント等が監視物体(例えば、人)に接近するような事態を抑制することができる。
【0332】
このように、本例では、コントローラ30は、ショベル100の暖機運転が行われる場合に、自動的に診断モードに移行する。そして、コントローラ30は、診断モードに対応する固有のエンジン回転数及びメインポンプ14の油圧負荷を設定し、ショベル100に関する診断を行うための診断用データを収集する。つまり、本例では、ショベル100の暖機モードと診断モードとが連動する。これにより、コントローラ30は、一定の条件下で診断用データを取得することができる。そのため、コントローラ30は、より信頼性の高い診断用データを取得することができる。また、本例では、オペレータの操作に依らず、ショベル100の暖機運転に合わせて、信頼性の高い診断用データを自動的に取得することができる。
【0333】
<診断用データ取得処理の手順の変形例>
例えば、診断モード設定部304は、診断モードスイッチ56のON操作に応じて、ショベル100の動作モードを診断モードに移行させる。
【0334】
具体的には、診断モード設定部304は、診断モードスイッチ56がON操作されると、ショベル100の動作モードを診断モードに設定する。このとき、診断モード設定部304は、ゲートロックをロック状態に移行させる(即ち、ゲートロックスイッチをON状態に移行させる)。これにより、診断モードにおいて、操作装置26に対するオペレータの操作が無効になる。そのため、診断モード中に、ショベル100の油圧アクチュエータが操作され、収集される診断用データの信頼性が低下してしまう事態を抑制することができる。
【0335】
診断モード設定部304は、エンジン11及びレギュレータ13を制御し、図13の処理の場合と同様、エンジン回転数(エンジン11の目標回転数)及びメインポンプ14の油圧負荷(メインポンプ14の吐出圧)を診断モード用の固有値に設定する。そして、診断モード設定部304は、所定期間の間(例えば、30秒間)で、診断用データを取得すると共に、送信装置S1を通じて、取得(収集)した診断用データを管理装置300に送信する。また、診断モード設定部304は、油圧負荷を所定の値にするために、カット弁44の開口を所定の開口面積まで小さくしてもよい。また、診断用データの収集のために所定の油圧負荷を発生させるソレノイド弁がセンタバイパス油路40L,40Rに配置されてもよい。また、油圧パイロット式の制御弁171,172,173,174,175L,175R,176L,176Rのパイロット回路に電磁比例弁が配置されてもよい。そして、診断モード設定部304は、この電磁比例弁を制御することにより、所定の油圧負荷を発生させてもよい。
【0336】
即ち、診断モード設定部304は、診断モードスイッチ56がON操作されると、図13のステップS416、S418,S420と同じ処理を実行する。
【0337】
これにより、コントローラ30は、図13の場合と同様、一定の条件下で診断用データを取得することができる。そのため、コントローラ30は、より信頼性の高い診断用データを取得することができる。
【0338】
尚、診断モードスイッチ56のON操作時において、エンジン11の水温、或いは、作動油の油温が相対的に低い場合(例えば、図13のステップS404と同様の判定条件が成立する場合)、図13と同様、診断用データの収集に先立って、暖機運転が行われてもよい。例えば、コントローラ30は、診断モードスイッチ56のON操作時において、エンジン11の水温、或いは、作動油の油温が所定温度よりも低い場合、ショベル100の動作モードを暖機モードへ切り換え、暖機運転を行い、暖機運転の終了後、診断モードに移行し、診断用データを収集してよい。
【0339】
<作用>
このように、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、上述の第1例等と同様、エンジン11や油圧システムを一定の運転条件で運転させるときに、ショベル100の診断用データを収集(取得)する。
【0340】
これにより、ショベル100は、上述の第1例等と同様の作用・効果を奏することができる。
【0341】
また、本例では、ショベル100は、動作モードとして、ショベル100に関する診断を行うための診断モードを有してよい。そして、コントローラ30は、ショベル100の動作モードが診断モードである場合に、ショベル100の診断用データを収集してよい。
【0342】
例えば、上述の特許文献1では、オペレータの操作によって、ショベルに規定動作を行わせて、ショベルに関する診断用のデータとして、規定動作時におけるショベルの各種センサの検出データを取得する技術が開示されている。
【0343】
しかしながら、上述の特許文献1の技術では、オペレータがレバー自ら操作を行い、ショベルにアタッチメントの動作や旋回動作等の規定動作を行わせる必要がある。そのため、油圧アクチュエータの動作の影響で、十分に信頼性の高い診断用のデータを取得できない可能性がある。
【0344】
これに対して、本例では、ショベル100は、診断モードに対応する一定の条件下で、ショベル100の診断用データを収集することができる。そのため、ショベル100は、より信頼性の高い診断用データを収集することができる。
【0345】
また、本例では、コントローラ30は、ショベル100の動作モードが診断モードである場合、診断モードに対応する固有のエンジン回転数を設定してよい。
【0346】
これにより、ショベル100は、診断モードにおいて、エンジン回転数に関する条件を一定に維持することができる。そのため、ショベル100は、具体的に、より信頼性の高い診断用データを収集することができる。
【0347】
また、本例では、コントローラ30は、ショベル100の動作モードが診断モードである場合、診断モードに対応する固有の油圧負荷をメインポンプ14に設定してよい。
【0348】
これにより、ショベル100は、診断モードにおいて、メインポンプ14の油圧負荷に関する条件を一定に維持することができる。そのため、ショベル100は、具体的に、より信頼性の高い診断用データを収集することができる。
【0349】
また、本例では、コントローラ30は、ショベル100の動作に関する所定条件(以下、「診断モード移行条件」)が成立すると、ショベル100の動作モードを自動的に診断モードに移行させてよい。例えば、コントローラ30は、ショベル100の自動暖機機能に対応する暖機運転が終了すると、ショベル100の動作モードを診断モードに移行させる。つまり、診断モード移行条件は、"ショベル100の暖機運転が終了(完了)時であること"であってよい。
【0350】
これにより、ショベル100は、診断用データの収集に適したショベル100の動作状態に合わせて、自動的に診断モードに移行し、診断用データを収集することができる。そのため、ショベル100は、診断用データが収集されていることをオペレータに意識させずに、より信頼性の高い診断用データを取得することができる。
【0351】
尚、診断モード移行条件は、診断用データの収集に適したショベル100の動作状態に対応していれば、ショベル100の暖機運転に関する条件以外であってもよい。例えば、診断モード移行条件は、"排気ガス処理装置の手動再生が終了(完了)時であること"や"エンジン11のターボチャージャの冷却(ターボ冷却)の終了(完了)時であること"であってよい。
【0352】
また、本例では、コントローラ30は、所定操作が行われると(例えば、診断モードスイッチ56がON操作されると)、ショベル100の動作モードを診断モードに移行させてよい。
【0353】
これにより、ショベル100は、オペレータやサービスマン等の意図に合わせて、診断モードに移行し、診断用データを収集することができる。
【0354】
尚、診断モードに移行させるための所定操作は、ショベル100の外部(例えば、管理装置300)で行われてもよい。例えば、診断モードスイッチ56は、上述の如く、管理装置300に移管されてもよい。
【0355】
また、本例では、コントローラ30は、動作モードが診断モードである場合、ショベル100の操作を無効にしてよい。
【0356】
これにより、ショベル100は、例えば、診断用データの収集中に、油圧アクチュエータが操作され、収集される診断用データの信頼性が低下してしまう事態を抑制することができる。
【0357】
尚、ショベル100は、上述の如く、遠隔操作されてもよい。この場合、ショベル100の診断モードにおいて、無効にされる操作は、操作装置26を用いる操作だけでなく、遠隔操作も含まれうる。
【0358】
また、本例では、ショベル100は、所定の動作モード(例えば、暖機モード)と連動して診断モードに移行してよい。
【0359】
これにより、ショベル100は、例えば、自機の診断に関する動作に適した動作モードの実行に併せて、診断モードに移行することができる。そのため、ショベル100は、収集される診断用データの信頼性を向上させることができる。
【0360】
また、本例では、表示装置50は、ショベル100の診断に関する動作(例えば、診断用データの収集や診断用データに基づく診断処理等)の最中に、ショベル100が動作の最中である旨を表示してよい。
【0361】
これにより、ショベル100は、オペレータに対して、ショベル100の診断に関する動作中であることを知らせることができる。そのため、ショベル100は、例えば、ショベル100の診断に関する動作中において、当該動作に不適切な操作を行わないようにオペレータに対して促すことができる。よって、ショベル100は、収集される診断用データの信頼性を向上させることができる。
【0362】
[診断用データ取得処理の第7例]
次に、図16図18を参照して、コントローラ30による診断用データ取得処理の第7例を説明する。
【0363】
<診断用データ取得処理の手順>
図16は、コントローラ30による診断用データ取得処理の第7例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば、診断モードスイッチ56がON操作されると実行される。また、本フローチャートは、診断モードスイッチ56がON操作される以外の診断モードへの移行のトリガとなるイベント(例えば、暖機モードの完了や手動再生モードの完了等)の発生時に実行されてもよい。図17図18は、診断モード設定処理の実行時における表示装置50の表示内容の具体例を示す図である。
【0364】
図16に示すように、ステップS502にて、診断モード設定部304は、表示装置50を通じて、ショベル100が診断モードに移行すると、ショベル100(の油圧アクチュエータ)の操作が無効になる旨の確認(以下、「操作無効の確認」)を促す表示を行う。そして、コントローラ30は、ステップS502の処理の完了後、ステップS504に進む。
【0365】
例えば、図17に示すように、診断モードスイッチ56のON操作時に表示されていた表示内容(本例では、カメラS6の撮像画像に基づくショベル100の周囲画像)に重畳して、操作無効の確認を促すポップアップ通知1710が表示装置50に表示される。
【0366】
ポップアップ通知1710には、メッセージ情報1711及び操作アイコン1712が含まれる。
【0367】
メッセージ情報1711には、"診断中は機械を動かせません。診断を実行しますか?"のメッセージが含まれる。これにより、オペレータは、診断モードでは、ショベル100の操作ができないことを認識することができる。また、オペレータは、操作アイコン1712を通じて、ショベル100を診断モードへ移行させるのか、診断モードへの移行を中止させるのかを選択可能であることを認識することができる。
【0368】
操作アイコン1712は、操作アイコン1712Aと、操作アイコン1712Bを含む。
【0369】
操作アイコン1712Aは、ショベル100の診断モードへの移行を選択するために用いられる。オペレータは、所定の入力装置(例えば、表示装置50に実装されるタッチパネル等)を通じて、操作アイコン1712Aを選択し且つ決定する操作(例えば、タッチパネルの操作アイコン1712Aに対応する位置へのタッチ操作)を行うことにより、ショベル100を診断モードに移行させることができる。
【0370】
操作アイコン1712Bは、ショベル100の診断モードへの移行の中止を選択するために用いられる。オペレータは、所定の入力装置を通じて、操作アイコン1712Bを選択し且つ決定する操作を行うことにより、ショベル100の診断モードへの移行を中止させることができる。
【0371】
図16に戻り、ステップS504にて、診断モード設定部304は、ショベル100の動作モードを診断モードに移行させるか否かを判定する。具体的には、診断モード設定部304は、オペレータにより診断モードへの移行を選択する所定操作(例えば、図17の操作アイコン1712Aに対する操作)が行われた場合、ショベル100の動作モードを診断モードに移行させると判定してよい。一方、診断モード設定部304は、オペレータにより診断モードへの移行の中止を選択する所定操作(例えば、図17の操作アイコン1712Bに対する操作)が行われた場合、ショベル100の動作モードを診断モードに移行させないと判定してよい。診断モード設定部304は、ショベル100の動作モードを診断モードに移行させる場合、ステップS506に進み、ショベル100の動作モードを診断モードに移行させない場合、診断用データが無い状態で、今回の処理を終了する。
【0372】
ステップS506にて、診断モード設定部304は、ショベル100の動作モードを診断モードに設定すると共に、ショベル100の診断に関する処理を開始させて、ステップS508に進む。例えば、コントローラ30(診断モード設定部304)は、所定期間の間、ショベル100の診断を行うためのデータ(以下、診断用データ)を収集(取得)し、収集した診断用データを管理装置300に送信する一連の処理を開始させてよい。このとき、コントローラ30(診断用データ取得制御部305)は、上述の第1例等の場合と同様、エンジン11や油圧システムを一定の運転条件で運転される状態で診断用データを取得する。また、コントローラ30(診断用データ取得制御部305)は、上述の第1例等の場合と同様、診断用データの取得開始後に、油圧システムに一定の油圧負荷が付与されるように、油圧システム(メインポンプ14)の油圧負荷を制御してよい。また、管理装置300の診断部3101の機能がショベル100(例えば、コントローラ30)に移管される場合、一連の処理には、管理装置300に診断用データを送信する処理に代えて、収集された診断用データに基づき、ショベル100に関する診断を行う処理が追加されてもよい。
【0373】
コントローラ30は、所定期間の間で各種センサから取得(収集)した診断用データを内部メモリ(例えば、補助記憶装置)や通信可能に接続される外部記憶装置に記憶させる。この際、コントローラ30は、診断用データが取得(収集)されたときの日時に関する情報(例えば、日付及び時刻)(以取得日時情報)や位置に関する情報(例えば、緯度、経度、及び高度等)(取得位置情報)を併せて記憶させてよい。また、コントローラ30は、診断用データに加え、診断用データに対応する上述の取得日時情報や取得位置情報等を併せて管理装置300に送信してよい。
【0374】
尚、診断用データは、診断用データの取得ごとに管理装置300に送信される代わりに、他のタイミングで送信されてもよい。例えば、診断用データは、ショベル100が停止される(即ち、キースイッチがOFFされる)場合や、次回のショベル100の起動時(即ち、キースイッチがONされる場合)に、管理装置300に送信されてもよい。また、例えば、診断用データは、ある程度の回数分の診断用データが蓄積された時点で、管理装置300に一括して送信されてもよい。
【0375】
診断モード設定部304は、ショベル100の診断モードにおいて、上述の如く、ショベル100の(油圧アクチュエータ)の操作を無効にする。例えば、診断モード設定部304は、実際のゲートロックレバーの状態に関わらず、ゲートロックをロック状態にする、即ち、ゲートロックに連動するゲートロックスイッチをON状態にしてよい。これにより、パイロットポンプ15と操作装置26との間のパイロットライン25に介設されるゲートロック弁25Vがパイロットライン25を非連通とし、操作装置26を用いたショベル100(の油圧アクチュエータ)の操作が無効になる。
【0376】
また、診断モード設定部304は、ショベル100の診断モードの少なくとも診断用データが収集される期間において、エンジン回転数及びメインポンプ14の油圧負荷(吐出流量)を、診断モード対応する固有値に設定する。換言すれば、診断モード設定部304は、当該期間において、エンジン回転数及びメインポンプ14の油圧負荷(吐出流量)の変更を禁止する。これにより、エンジン回転数の変更に関連する操作(例えば、回転数スロットルボリューム52の操作)やメインポンプ14の吐出流量の変更に関連する操作(例えば、操作装置26の操作)が行われても、診断用データの収集に適したエンジン11やメインポンプ14に関する条件が維持される。そのため、コントローラ30は、より信頼性の高い診断用データを取得することができる。
【0377】
また、コントローラ30は、ショベル100の診断モードにおいて、周辺監視装置(例えば、カメラS6)によるショベル100の周囲の監視エリアに進入する監視物体の有無の監視を継続する。
【0378】
仮に、周辺監視装置によりショベル100の周囲の監視エリアへ監視物体の進入が検知された場合であっても、診断モードでは、ゲートロック弁がロック状態に維持されている。そのため、オペレータが操作装置26を操作しても、ショベル100のアクチュエータは動作不能である。また、操作装置26が操作内容に対応する電気信号を出力する電気式である場合やショベル100が遠隔操作される場合でも、コントロールバルブ17にパイロット圧を作用させる制御弁へのコントローラ30からの制御指令が無効にされる。そのため、この場合もアクチュエータの動作は不能になる。よって、診断モードにおいて、ショベル100の周囲の監視エリアに監視物体が進入しても、ショベル100が動作してしまうような事態を抑制できる。
【0379】
更に、上述の如く、診断モードの終了後に、ショベル100の周囲の監視エリア内に監視物体が検知される状態が継続している場合、ショベル100の油圧アクチュエータの動作が制限されてよい。診断モードが終了し、制御モードが診断モードから通常モードに移行すると、上述の如く、ショベル100の油圧アクチュエータの操作が可能な状態になるからである。これにより、診断用データの収集期間の終了後に、ショベル100のアタッチメント等の被駆動部が急に動作して、ショベル100のアタッチメント等が監視物体(例えば、人)に接近するような事態を抑制することができる。
【0380】
ステップS508にて、診断モード設定部304は、ショベル100の診断モードの強制的な解除方法を表示装置50に表示させる(図18参照)。そして、コントローラ30は、ステップS508の処理が完了すると、ステップS510に進む。
【0381】
例えば、図18に示すように、診断モードスイッチ56のON操作時に表示されていた表示内容(本例では、図17の場合と同じショベル100の周囲画像)に重畳して、解除方法を教示するポップアップ通知1820が表示装置50に表示される。
【0382】
ポップアップ通知1820には、メッセージ情報1821,1822、残り時間情報1823、及び強制解除関連情報1824が表示される。
【0383】
尚、ポップアップ通知1820には、メッセージ情報1821,1822、残り時間情報1823、及び強制解除関連情報1824のうちの一部だけが表示されてもよい。例えば、ポップアップ通知1820には、メッセージ情報1822だけが表示されてもよい。
【0384】
メッセージ情報1821は、ショベル100の診断に関する処理が実行中であることを表す。本例では、メッセージ情報1821には、"エンジン出力診断中"のメッセージが含まれる。これにより、オペレータは、現在、ショベル100の診断に関する処理(本例では、エンジン11の出力診断に関する処理"が実行中であることを認識できる。
【0385】
メッセージ情報1822は、ショベル100の診断モードにおける禁止行為を通知する。本例では、メッセージ情報1822には、"エンジンを切らないでください"のメッセージ、及び"レバー操作は無効です"のメッセージが含まれる。これにより、オペレータは、診断モードにおいて、エンジン11を停止させてはならないこと、つまり、エンジン11の停止(キースイッチのOFF)が禁止されることを認識できる。また、オペレータは、ショベル100の診断モードにおいて、操作装置26を用いたショベル100の操作が禁止される(無効にされる)ことを認識できる。
【0386】
残り時間情報1823は、ショベル100の診断モードの残り時間、つまり、ショベル100の診断に関する処理が完了し診断モードが正常に解除されるまでの残り時間を表す。残り時間情報1823は、診断モードの正常な解除(以下、「正常解除」)までの残り時間を表すバーグラフ1823Aと、診断モードの正常解除までの残り時間を表す数値情報1823Bとを含む。これにより、オペレータは、ショベル100の診断モードが正常解除されるまでの残り時間を把握することができる。
【0387】
尚、残り時間情報1823として、バーグラフ1823A及び数値情報1823Bの何れか一方だけが表示されてもよい。
【0388】
強制解除関連情報1824は、診断モードを強制的な解除(以下、「強制解除」)に関する情報を表す。強制解除関連情報1824は、メッセージ情報1824Aと、図示情報1824Bとを含む。
【0389】
メッセージ情報1824Aは、強制解除(緊急解除)の方法を文言で表す。本例では、メッセージ情報1824Aには、"緊急解除はモニタメニューボタンを押してください"のメッセージが含まれる。これにより、オペレータは、モニタ(表示装置50)に付随する操作入力部のメニューボタン(診断モードスイッチ56)を押すことで、ショベル100の診断モードを強制解除可能であることを認識できる。
【0390】
図示情報1824Bは、強制解除(緊急解除)の方法を図で示す。本例では、図示情報1824Bには、モニタ(表示装置50)に付随する操作入力部の図が含まれ、メニューボタン(診断モードスイッチ56)が枠で囲まれている。これにより、オペレータは、ショベル100の診断モードを強制解除させるための操作対象をより具体的に認識することができる。
【0391】
尚、強制解除関連情報1824として、メッセージ情報1824A及び図示情報1824Bの何れか一方だけが表示されてもよい。
【0392】
図16に戻り、ステップS510にて、診断モード設定部304は、診断モードスイッチ56がOFF操作されたか否かを判定する。診断モード設定部304は、診断モードスイッチ56がOFF操作されていない場合、ステップS512に進み、OFF操作された場合、診断用データが無い状態で、今回の処理を終了する。
【0393】
ステップS512にて、診断モード設定部304は、診断モードの正常終了の条件(以下、単に「終了条件」)が成立したか否かを判定する。例えば、診断モード設定部304は、診断用データの収集が終了し、診断用データの管理装置300への送信が完了した場合に、診断モードの終了条件が成立したと判定してよい。また、管理装置300の診断部3101の機能がショベル100(コントローラ30)に移管される場合、診断モード設定部304は、診断用データの収集が終了し、診断用データに基づくショベル100の診断が完了した場合に、診断モードの終了条件が成立したと判定してよい。診断モード設定部304は、診断モードの終了条件が成立していない場合、ステップS510に戻って、ステップS510,S512の処理を繰り返し、診断モードの終了条件が成立した場合、診断用データ有りの状態で、今回の処理を終了し、通常モードに移行する。
【0394】
<作用>
このように、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、上述の第1例等と同様、エンジン11や油圧システムを一定の運転条件で運転させるときに、ショベル100の診断用データを収集(取得)する。
【0395】
これにより、ショベル100は、上述の第1例等と同様の作用・効果を奏することができる。
【0396】
また、本例では、ショベル100には、ショベル100の動作状態に関する物理量をそれぞれ検出する複数のセンサが搭載される。コントローラ30は、これらの複数のセンサの検出値に基づき、ショベル100の機器の診断(例えば、エンジン11の診断)に関する処理を行う診断モード設定部304を備えてよい。そして、コントローラ30は、ショベル100の診断に関する処理が行われる場合に、ショベル100の動作を禁止してよい。
【0397】
例えば、特開2016-23489号公報では、ショベルのアイドリング状態において、ショベルに関する診断用のデータを収集する技術が開示されている。
【0398】
しかしながら、診断用のデータ収集中にショベルの操作がされると、データ収集中のショベルの状態に関する条件にバラツキが生じ、収集される診断用のデータの信頼性が低下したり、データの収集を中止せざるを得なくなったりする可能性がある。
【0399】
これに対して、本例では、ショベル100は、診断用データの収集時に、ショベル100の動作を禁止することができる。そのため、ショベル100は、信頼性の高い診断用データをより確実に収集することができる。
【0400】
また、本例では、コントローラ30は、ショベル100の診断に関する処理が行われる場合に、エンジン回転数の変更を禁止してよい。
【0401】
これにより、ショベル100は、診断用データの収集時に、エンジン回転数に関する条件が変更されることにより、診断用データの信頼性が低下してしまうよう事態を防止することができる。そのため、ショベル100は、より信頼性の高い診断用データを収集することができる。
【0402】
また、本例では、コントローラ30は、ショベル100の診断に関する処理が行われる場合に、メインポンプ14の吐出流量の変更を禁止してよい。
【0403】
これにより、ショベル100は、診断用データの収集時に、メインポンプ14に関する条件が変更されることにより、診断用データの信頼性が低下してしまうよう事態を防止することができる。そのため、ショベル100は、より信頼性の高い診断用データを収集することができる。
【0404】
また、本例では、コントローラ30は、ショベル100の診断に関する処理が行われる場合に、ショベル100の操作を無効にしてよい。
【0405】
これにより、ショベル100は、診断用データの収集時に、自機の油圧アクチュエータの動作をより確実に停止させることができる。そのため、ショベル100は、信頼性の高い診断用データをより確実に収集することができる。
【0406】
また、本例では、表示装置50は、ショベル100の診断に関する処理が行われる場合に、ショベル100の操作ができない(禁止される)旨の注意喚起の表示を行ってよい。
【0407】
これにより、ショベル100は、診断用データの収集時に、オペレータがショベル100の操作を行わないように仕向けることができる。そのため、ショベル100は、信頼性の高い診断用データをより確実に収集することができる。
【0408】
尚、ショベル100は、上述の如く、遠隔操作されてもよい。この場合、遠隔操作を行うオペレータ(以下、「遠隔操作オペレータ」)に対して、同様の注意喚起が図られてよい。例えば、管理装置300を通じて遠隔操作が行われる場合、表示装置340において、同様の注意喚起の表示がされてもよい。
【0409】
また、本例では、表示装置50は、ショベル100の診断に関する処理を開始する前に、ショベル100を直ぐに動かす意思があれば、ショベル100の診断に関する処理を行わせないように促す表示を行ってよい。
【0410】
これにより、ショベル100は、ショベル100を直ぐに動かしたい意図を有するオペレータに対して、ショベル100の診断に関する処理を中止させる機会を与えることができる。
【0411】
尚、ショベル100は、上述の如く、遠隔操作されてもよい。この場合、遠隔操作オペレータに対して、同様の促しが図られてもよい。例えば、管理装置300を通じて遠隔操作が行われる場合、表示装置340において、同様の促し表示がされてもよい。
【0412】
また、本例では、表示装置50は、ショベル100の診断に関する処理が行われる場合に、ショベル100の診断に関する処理の実行を解除する方法を表示してよい。
【0413】
これにより、オペレータは、容易に、ショベル100の診断に関する処理の実行を解除することができる。そのため、オペレータは、例えば、ショベル100を緊急で操作する必要が生じたような状況で、直ぐに、ショベル100の診断に関する処理の実行を解除しショベル100の操作を行うことができる。
【0414】
尚、ショベル100は、上述の如く、遠隔操作されてもよい。この場合、遠隔操作オペレータに対して、同様に、ショベル100の診断に関する処理の実行の解除方法の通知が図られてよい。例えば、管理装置300を通じて遠隔操作が行われる場合、表示装置340において、同様の解除方法に関する表示がされてもよい。
【0415】
[診断用データ取得処理の第8例]
次に、図19を参照して、コントローラ30による診断用データ取得処理の第8例を説明する。
【0416】
図19は、コントローラ30による診断用データ取得処理の第8例を概略的に示すフローチャートである。
【0417】
本フローチャートは、診断モードへの移行のトリガが成立すると、開始される。この場合の診断モードは、上述の第1例等の場合のように他の制御モード(例えば、暖機モード等)に内包される診断モードであってもよい。診断モードへの移行のトリガは、例えば、上述の如く、暖機モード、手動再生モード、ターボ冷却モード、校正モード等の完了であってよい。また、診断モードへの移行トリガは、例えば、上述の如く、診断モードスイッチ56のON操作であってもよい。
【0418】
尚、暖機モード等の他の制御モードに内包される態様の診断モードに移行する場合、本フローチャートの実行中において、表示装置50には、他の制御モードの最中であることを表す通知内容(例えば、図6図12の画面)が表示される。
【0419】
図19に示すように、ステップS602にて、診断モード設定部304は、診断モードに移行し、診断用データの取得を開始させる。このとき、診断モード設定部304は、上述の第1例等の場合と同様、エンジン11や油圧システムが一定の運転条件で運転されるように、エンジン11の回転数や油圧システム(メインポンプ14)の油圧負荷等を設定する。これにより、診断用データ取得制御部305は、診断モード設定部304により設定に基づきエンジン11や油圧システムが一定の運転条件で運転されるときの診断用データの取得(収集)することができる。
【0420】
コントローラ30は、ステップS602の処理が完了すると、ステップS604に進む。
【0421】
ステップS604にて、診断モード設定部304は、診断モードを解除すべきショベル100のイベント(以下、「診断モード解除イベント」)が発生したか否かを判定する。診断モード設定部304は、診断モード解除イベントが発生していない場合、ステップS606に進み、診断モード解除イベントが発生した場合、ステップS612に進む。
【0422】
診断モード解除イベントには、例えば、"アクチュエータ(被駆動部)に関する操作が行われたこと"が含まれてよい。この場合、アクチュエータに関する操作には、操作装置26の操作だけでなく、ショベル100の遠隔操作が含まれてよい。これにより、コントローラ30は、診断モード中に、アクチュエータに関する操作が行われた場合に、アクチュエータに関する操作を優先して、ショベル100の診断モードを解除し、当該操作を有効にすることができる。
【0423】
また、診断モード解除イベントには、例えば、"エンジン11の回転数に関する操作が行われたこと"が含まれてよい。エンジン11の回転数に関する操作は、例えば、回転数スロットルボリューム52の操作であってよい。また、ショベル100の遠隔操作が行われている場合、エンジン11の回転数に関する操作は、遠隔操作を支援する外部装置(例えば、管理装置300)からエンジン11の回転数に関する操作を要求する信号が受信されることであってよい。これにより、コントローラ30は、診断モード中に、エンジン11の回転数に関する操作が行われた場合に、エンジン11の回転数に関する操作を優先して、ショベル100の診断モードを解除し、当該操作を有効にすることができる。
【0424】
また、診断モード解除イベントには、例えば、"ショベル100の非常停止に関する操作が行われたこと"が含まれてよい。ショベル100の非常停止に関する操作は、例えば、ショベル100のキャビン10に設けられる非常停止スイッチの操作であってよい。また、ショベル100の遠隔操作が行われている場合、ショベル100の非常停止に関する操作は、遠隔操作を支援する外部装置(例えば、管理装置300)から非常停止を要求する信号が受信されることであってよい。これにより、診断モード中に、ショベル100の非常停止に関する操作が行われた場合に、非常停止に関する操作を優先して、ショベル100の診断モードを解除し、当該操作を有効にすることができる。

【0425】
また、診断モード解除イベントには、例えば、"ショベル100の異常に関する信号が出力されたこと"が含まれてよい。異常に関する信号は、例えば、ショベル100に搭載される所定の機器から出力される所定のエラー信号であってよい。これにより、ショベル100の所定の機器から異常に関する信号が出力された場合に、当該信号に対する処理を優先して、ショベル100の診断モードを解除し、当該信号に対する処理を有効にすることができる。
【0426】
ステップS606にて、診断モード設定部304は、診断モードの正常終了の条件(終了条件)が成立したか否かを判定する。診断モードの終了条件は、上述の第7例の場合と同様であってよい。診断モード設定部304は、診断モードの終了条件が成立していない場合、ステップS604に戻って、ステップS604,S606の処理を繰り返し、診断モードの終了条件が成立した場合、ステップS608に進む。
【0427】
ステップS608にて、診断モード設定部304は、診断用データの取得を終了させる。これにより、診断用データ取得制御部305は、診断用データの取得処理を終了する。そして、診断モード設定部304は、診断モードを終了し、制御モードを診断モードから通常モードに移行させる。
【0428】
コントローラ30は、ステップS608の処理が完了すると、ステップS610に進む。
【0429】
ステップS610にて、診断モード設定部304は、診断用データ取得制御部305により取得された診断用データを所定の記憶部(例えば、コントローラ30の補助記憶装置やコントローラ30と通信可能な外部記憶装置等)に保存する。
【0430】
コントローラ30は、ステップS610の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0431】
尚、ステップS610の処理の完了後に、コントローラ30(診断用データ送信部306)は、送信装置S1を通じて、診断用データを管理装置300に送信し、その後、本フローチャートの処理が終了されてもよい。
【0432】
一方、ステップS612にて、診断モード設定部304は、診断用データの取得を中断させる。これにより、診断用データ取得制御部305は、診断用データの取得処理を中断する。
【0433】
コントローラ30は、ステップS612の処理が完了すると、ステップS614に進む。
【0434】
ステップS614にて、診断モード設定部304は、診断用データの取得処理の中断までに取得済みのデータが有用か否かを判定する。有用か否かは、例えば、データが取得された期間に基づき判定されてよく、データの取得された期間が所定の閾値以上である場合、有用であると判定されてよい。診断モード設定部304は、取得済みのデータが有用である場合、ステップS610に進み、ステップS610にて、取得済みのデータを診断用データとして所定の記憶部に保存する。一方、診断モード設定部304は、取得済みのデータが有用でない場合、ステップS616に進む。
【0435】
ステップS616にて、診断モード設定部304は、取得済みのデータを破棄する。
【0436】
コントローラ30は、ステップS616の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0437】
<作用>
このように、本例では、ショベル100は、上述の第1例等の場合と同様、(コントローラ30)は、上述の第1例等と同様、エンジン11や油圧システムを一定の運転条件で運転させるときに、ショベル100の診断用データを収集(取得)する。
【0438】
これにより、ショベル100は、上述の第1例等と同様の作用・効果を奏することができる。
【0439】
また、本例では、ショベル100(コントローラ30)は、診断用データの収集(取得)に関する処理の最中(即ち、診断モード中)に、診断モード解除イベントを検知すると、診断用データの取得に関する処理を終了してよい。具体的には、診断モード解除イベントには、例えば、アクチュエータに関する操作、エンジン11の回転数に関する操作、ショベル100の非常停止に関する操作、及びショベル100の異常に関する信号の少なくとも一つが含まれてよい。
【0440】
これにより、ショベル100は、ショベル100に関する各種操作を優先して、診断用データの取得に関する処理を終了させ、各種操作を有効にすることができる。また、ショベル100は、ショベル100を非常停止すべき状態や異常が発生している状態において、診断用データの取得に関する処理を終了させ、これらの状態に対応する処理を優先させることができる。
【0441】
[変形・変更]
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0442】
例えば、上述の実施形態では、ショベル100は、油圧駆動されるが、被駆動部(下部走行体1の左右のクローラ、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6)の少なくとも一部は、電気駆動されてもよい。即ち、ショベル100は、ハイブリッドショベルや電気ショベルであってもよい。この場合、ショベル100の操作の無効は、ショベル100の被駆動部を駆動する電動アクチュエータ、或いは、油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータに対する操作の無効を意味する。
【0443】
最後に、本願は、2019年8月29日に出願した日本国特許出願2019-156621号、2019年8月29日に出願した日本国特許出願2019-156622号、2019年10月9日に出願した日本国特許出願2019-186174号、及び2019年10月31日に出願した日本国特許出願2019-199299号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0444】
1 下部走行体
3 上部旋回体
11 エンジン
13,13L,13R レギュレータ
14 メインポンプ(油圧ポンプ)
26 操作装置
30 コントローラ
50 表示装置
74 ECU
100 ショベル
300 管理装置
301 自動暖機制御部
302 自動再生制御部
303 手動再生制御部
304 診断モード設定部
305 診断用データ取得制御部
306 診断用データ送信部
SYS ショベル管理システム(ショベル診断システム)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19