(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】抗ガレクチン9抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241105BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241105BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20241105BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241105BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P35/00
A61P35/04
A61K45/00
A61K39/395 U
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021565064
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(86)【国際出願番号】 US2020031181
(87)【国際公開番号】W WO2020223702
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-04-28
(32)【優先日】2019-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511060836
【氏名又は名称】ニューヨーク・ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】521478599
【氏名又は名称】ピュアテック・エル・ワイ・ティ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PURETECH LYT, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小出 昌平
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】小出 明子
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リンシアオ
(72)【発明者】
【氏名】フィリポビッチ,アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】エレンコ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ボレン,ジョセフ
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-521485(JP,A)
【文献】Oncoimmunogy,2019年04月17日,8, [8],Article.e1601482,<DOI:10.1080/2162402X.2019.1601482>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがんを処置するための方法に使用するための医薬組成物であって、ヒトガレクチン9に結合する抗体(抗ガレクチン9抗体)を含み、前記抗ガレクチン9抗体は、
配列番号8の軽鎖可変ドメイン(V
L
)および軽鎖定常領域を含む軽鎖、ならびに、配列番号7の重鎖可変ドメイン(V
H
)および重鎖定常領域を含む重鎖を含む全長抗体であり、ここにおいて抗体はIgG分子であり、
医薬組成物中の前記抗ガレクチン9抗体は、前記対象の体重のkgあたり1mg~32mgである、医薬組成物。
【請求項2】
前記がんは固形腫瘍である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記固形腫瘍は、膵がん、結腸直腸がん(CRC)、肝細胞がん(HCC)、または胆管がん(CCA)である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記固形腫瘍は、転移性腫瘍である、請求項2または請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記抗ガレクチン9抗体を含む医薬組成物が、前記対象に2週間ごとに1回投与される、請求項1から4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
医薬組成物中の前記抗ガレクチン9抗体が、前記対象の体重のkgあたり1mg~16mgである、請求項1から5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
医薬組成物中の前記抗ガレクチン9抗体が、1mg/kg、2mg/kg、4mg/kg、6mg/kg、8mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、または16mg/kgの用量で投与される、請求項1から6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記抗ガレクチン9抗体を含む医薬組成物が、前記対象に静脈内注入により投与される、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記対象は、前記抗ガレクチン9抗体を伴う処置と併用される他の抗がん治療を施されない、請求項1から8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記対象は、免疫チェックポイント阻害剤をさらに投与される、請求項1から9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1に結合する抗体である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記PD-1に結合する抗体は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、チスレリズマブ、またはセミプリマブからなる群から選択される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記PD-1に結合する抗体はニボルマブであり、前記ニボルマブは前記対象に240mgの用量で2週間ごとに1回投与される、または、
前記PD-1に結合する抗体はチスレリズマブであり、前記チスレリズマブは200mgの用量で3週間ごとに1回、または、480mgの用量で4週間ごとに1回投与される、請求項11または請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、静脈内注入により投与される、請求項10から13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記抗ガレクチン9抗体は、IgG1分子またはIgG4分子である、請求項1から
14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記抗ガレクチン9抗体は、ヒトIgG4の修飾Fc領域を有するIgG4分子である、請求項
15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記ヒトIgG4の修飾Fc領域は、配列番号14のアミノ酸配列を含む、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記
重鎖は配列番号19のアミノ酸配列を含
み、前記軽鎖は配列番号15のアミノ酸配列を含
む、請求項1から
17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記対象は、1つまたは複数の既往の抗がん治療を受けている、請求項1から
18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記1つまたは複数の既往の抗がん治療は、化学療法、免疫療法、放射線療法、生物学的薬剤を伴う治療、またはこれらの組合せを含む、請求項
19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記対象が、前記1つまたは複数の既往の抗がん治療を通して、疾患を進行させているか、または前記1つまたは複数の既往の治療に対して耐性である、請求項
19または請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記対象は、ガレクチン9のレベルが対照値と比べて上昇しているヒト患者である、請求項1から
21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記ヒト患者は、前記対照値と比べてガレクチン9の血清レベルまたは血漿レベルが上昇している、請求項
22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記ヒト患者は、ガレクチン9を発現しているがん細胞を有する、および/または、
前記ヒト患者は、ガレクチン9を発現している免疫細胞を有する、請求項
23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記がん細胞は、前記ヒト患者に由来する腫瘍オルガノイド内にある、および/または、
前記免疫細胞は、前記ヒト患者に由来する腫瘍オルガノイド内にある、請求項
24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記方法は、前記対象における有害作用の発生をモニタリングするステップをさらに含む、請求項1から
25のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記方法は、前記抗ガレクチン9抗体の前記用量、前記チェックポイント阻害剤の前記用量、またはこれらの両方を低減するステップをさらに含む、請求項
26に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、2019年5月1日に出願された米国仮出願第62/841,732号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
免疫系は、がん細胞を認識し、破壊する優れた潜在的可能性を保持するが、腫瘍による免疫回避を統御する複雑なネットワークが、広範にわたって有効な免疫モジュレーションに対する障害となっている(Martinez-Bosch Nら、「Immune Evasion in Pancreatic Cancer:From Mechanisms to Therapy」、Cancer(Basel)、2018、10巻(1号))。承認されたがん免疫(immuno-oncology:IO)剤は、徐々に、多くの腫瘍型(例えば、悪性黒色腫、肺がん、腎がん、膀胱がん、一部の結腸がんなど)に生存の改善をもたらし、手術、化学療法、および放射線療法に加えて、かつ、これらと共に、標準治療として急速に組み込まれつつある。しかし、他の複数の侵襲性悪性腫瘍の処置と生存可能性との間には、依然として大きな懸隔が存在する。例えば、転移性の膵腺がん(pancreatic ductal adenocarcinoma:PDACまたはPDA)、胆管がん(cholangiocarcinoma:CCA)、および結腸直腸がん(colorectal lcancer:CRC)の5年生存率は、未だそれぞれ<9%、<5%、および<15%である。これらの消化器腫瘍は侵襲性が強く、多くの患者は来院時に進行期の疾患を有し、承認された免疫療法の有効性は最適未満である(Rizviら、「Cholangiocarcinoma-evolving concepts and therapeutic strategies」、Nat Rev Clin Oncol.、2018、15巻(2号):95~111;Kalyanら、「Updates on immunotherapy for colorectal cancer」、J Gastrointest Oncol.、2018、9巻(1号):160~169)。
【0003】
第1世代のチェックポイント阻害剤(抗PD1、抗PDL1、および抗CTLA4)の成功は、IOの有効性および差別化についての、新たな臨床試験の爆発的進展をもたらした(Hollら、「Examining Peripheral and Tumor Cellular Immunome in Patients With Cancer」、Front Immunol.、2019、10巻:1767)。しかし、成功の中にあってもまた、残念ながら成功しなかった開発も多く、結果として新規の効果的な処置が依然として必要とされている。
【0004】
ガレクチン9は、2つの炭水化物認識ドメイン(CRD)からなるタンデムリピートレクチンであり、1997年にホジキンリンパ腫(HL)を患う患者において初めて発見され、報告された(Tureciら、J.Biol.Chem.、1997、272巻、6416~6422)。3つのアイソフォームが存在し、細胞内に配置される場合もあり、細胞外に配置される場合もある。悪性黒色腫、ホジキンリンパ腫、肝細胞がん、膵がん、胃がん、結腸がん、および腎明細胞がんを含む広範囲にわたるがんでは、ガレクチン9レベルの上昇が観察されている(Wdowiakら、Int.J.Mol.Sci.、2018、19巻、210)。腎がんでは、ガレクチン9の発現が高度である患者は、腫瘍サイズの大きな疾患の進行のいっそうの進展を示した(Kawashimaら、BJU Int.、2014、113巻:320~332)。悪性黒色腫では、ガレクチン9は腫瘍のうちの57%において発現され、進行性黒色腫を伴う患者の血漿中では、健常対照と比較して顕著に増大した(Enningaら、Melanoma Res.、2016年10月、26巻(5号):429~441)。多数の研究は、予後診断マーカーとして、より最近では、潜在的な新たな薬物標的としての、ガレクチン9の有用性を示している(Enningaら、2016;Kawashimaら、BJU Int、2014、113巻:320~332;Kageshitaら、Int J Cancer.、2002年6月20日、99巻(6号):809~16、および所収の参考文献)。
【0005】
ガレクチン9は、接着、がん細胞の凝集、アポトーシス、および走化性など多数の細胞過程において重要な役割を果たすことが記載されている。近年の研究は、ガレクチン9について、例えば、Th1型応答に対する負の調節、Th2の分極化、およびマクロファージの、M2表現型への分極化を介して腫瘍を支援する免疫モジュレーションにおける役割を示している。この作業はまた、ガレクチン9が、TIM-3(T-cell immunoglobulin and mucin protein 3)受容体との相互作用を介する、T細胞の直接的な不活化に参与することを示した研究も含む(Dardalhonら、J Immunol.、2010、185巻、1383~1392;Sanchez-Fueyoら、Nat Immunol.、2003、4巻、1093~1101)。
【0006】
ガレクチン9はまた、T細胞の分化の腫瘍抑制性表現型への分極のほか、寛容原性のマクロファージのプログラミングおよび獲得性免疫抑制の促進において役割を果たすことも見出されている(Daleyら、Nat Med.、2017、23巻、556~567)。膵腺がん(PDA)についてのマウスモデルでは、腫瘍微小環境(TME)内の自然免疫細胞上で見出される、ガレクチン9と受容体であるデクチン1との間におけるチェックポイント相互作用の遮断は、TME内の抗腫瘍免疫応答を増大させ、腫瘍の進行を遅らせることが示されている(Daleyら、Nat Med.、2017、23巻、556~567)。ガレクチン9はまた、肺がんにおける生存の延長および再発危険性の低下と関連している、マクロファージ由来ケモカインであるCVL22(MDC)の分泌の低減を結果としてもたらす、M2型マクロファージの表面マーカーであるCD206に結合することも見出されている(Enningaら、J Pathol.、2018年8月、245巻(4号):468~477)。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本開示は、少なくとも部分的に、膵腺がん(PDAC)、結腸直腸がん(CRC)、肝細胞がん(HCC)、および胆管がん(CAA)などの固形腫瘍(solid tumor)(例えば、転移性固形腫瘍(metastatic solid tumor))のための処置レジメンであって、単独におけるヒトガレクチン9に結合することが可能な抗体、または抗PD-1抗体などのチェックポイント阻害剤と組み合わせた同抗体を伴う処置レジメンの開発に基づく。
【0008】
したがって、本開示の1つの態様は、ヒトガレクチン9に結合する抗体を投与することにより、対象における固形腫瘍を処置するための方法を提供する。一部の実施形態では、固形腫瘍は、膵腺がん(PDA)、結腸直腸がん(CRC)、または肝細胞がん(HCC)、または胆管がんである。一部の実施形態では、方法は、固形腫瘍、例えば、PDA、CRC、HCC、またはCCAを有する対象に、有効量の、ヒトガレクチン9に結合する抗体(本明細書では、抗Gal9抗体または抗ガレクチン9抗体とも称される)を投与するステップを含む。
【0009】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、その構造が本明細書で提供される抗体であるG9.2-17である。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、その配列が本明細書で提供される参照抗体であるG9.2-17と同じ重鎖相補性決定領域(CDR)および/または同じ軽鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、抗体G9.2-17の重鎖可変ドメインおよび/または抗体G9.2-17の軽鎖可変ドメインを含む。
【0010】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号1として示された軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2として示された軽鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号3として示された軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ/または配列番号4として示された重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5として示された重鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号6として示された重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7を含む重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号19を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号15を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、G9.2-17 IgG4である。
【0011】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、対象に約1mg/kg~約30mg/kg(例えば、約3mg/kg~約15mg/kg、または約2mg/kg~約16mg/kg)の用量で2~3週間ごとに1回投与される。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、対象に2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、または16mg/kgから選択される用量で投与される。一部の実施形態では、抗体は、2週間ごとに1回投与される。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、対象に2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、または16mg/kgから選択される用量で2週間ごとに1回投与される。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、2週間ごとに1回1サイクルにわたるか、2週間ごとに1回2サイクルにわたるか、2週間ごとに1回3サイクルにわたるか、2週間ごとに1回4サイクルにわたるか、または2週間ごとに1回4サイクルを超える投与される。一部の実施形態では、処置の持続期間は、0~3か月間、3~6か月間、12~24か月間、またはこれを超える期間である。一部の実施形態では、処置の持続期間は、12~24か月間、またはこれを超える期間である。一部の実施形態では、サイクルは、3か月間~6か月間、もしくは6か月間~12か月間、もしくは12か月間~24か月間、またはこれを超える持続期間にわたる。一部の実施形態では、サイクルの長さは、例えば、一時的に改変される場合もあり、より長い持続期間、例えば、3週間または4週間にわたり、恒久的に改変される場合もある。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、対象に、静脈内注入により投与される。一部の実施形態では、がんは、上述のがんのうちのいずれかの転移性がんを含む転移性がんである。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む処置法は、他の任意の併用抗がん治療を含まない。
【0012】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体を援用する処置法は、別の併用抗がん治療を含む。したがって、一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体を援用する処置法は、対象に、免疫チェックポイント阻害剤を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1に結合する抗体、例えば、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、チスレリズマブ、またはセミプリマブである。一部の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、対象に240mgの用量で2週間ごとに1回投与されるニボルマブである。一部の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、対象に480mgの用量で4週間ごとに1回投与されるニボルマブである。一部の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、200mgの用量で3週間ごとに1回投与されるペムブロリズマブである。一部の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、350mgの用量で3週間ごとに1回投与されるセミプリマブである。一部の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、200mgの用量で3週間ごとに1回投与されるチスレリズマブである。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、静脈内注入により投与される。
【0013】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号4として示された重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5として示された重鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号6として示された重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ/または配列番号1として示された軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2として示された軽鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号3として示された軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号7の重鎖可変ドメイン、および/または配列番号8の軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、全長抗体である。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、IgG1分子またはIgG4分子である。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、ヒトIgG4の修飾Fc領域を有する、ヒトIgG4分子である。一部の実施形態では、ヒトIgG4の修飾Fc領域は、配列番号14のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトIgG4の修飾Fc領域は、配列番号21のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0014】
本明細書で開示される方法のうちのいずれかでは、対象(例えば、ヒト患者)は、1つまたは複数の既往の抗がん治療、例えば、手術、化学療法、免疫療法、放射線療法、生物学的薬剤、ターゲティング型低分子、ホルモン剤を伴う治療、またはこれらの組合せを受けている場合がある。一部の実施形態では、対象は、1つまたは複数の既往の抗がん治療を終えて進行した疾患を有する。他の実施形態では、対象は、1つまたは複数の既往の治療に対して、耐性(例えば、デノボ耐性、または獲得耐性)である。他の実施形態では、対象は、1つまたは複数の既往の治療の後で再発したことがある。
【0015】
本明細書で開示される処置法のうちのいずれかでは、対象は、ガレクチン9のレベルを対照値と比べて上昇させているヒト患者でありうる。一部の実施形態では、ヒト患者は、ガレクチン9の血清レベルまたは血漿レベルを対照値と比べて上昇させている。一部の実施形態では、ヒト患者は、ヒト患者に由来する細胞の表面上に発現されるガレクチン9のレベルを対照値と比べて上昇させている。このような細胞は、がん患者の腫瘍内および/または血液中のがん細胞および/または免疫細胞でありうる。一部の例では、がん細胞は、ヒト患者に由来する腫瘍オルガノイド内にある。一部の実施形態では、対照値は、健常ヒト対象から得られた値に基づく。
【0016】
本明細書で開示される処置法のうちのいずれかは、対象における有害作用の発生をモニタリングするステップをさらに含みうる。有害作用の(例えば、1つまたは複数の重度の有害作用が生じる)場合、抗ガレクチン9抗体(例えば、G9.2-17)の用量が低減される場合もあり、共使用される場合は、チェックポイント阻害剤(例えば、ニボルマブなどの抗PD-1抗体)の用量が低減される場合もあり、これらの両方が低減される場合もある。
【0017】
また、固形腫瘍(例えば、本明細書で記載される固形腫瘍であり、転移性固形腫瘍を含む)の処置における使用のための医薬組成物、および固形腫瘍を処置するための医薬を製造するための、抗ガレクチン9抗体のうちのいずれかの使用も本開示の範囲内にあり、この場合、一部の実施形態では、本明細書で開示される使用は、これらもまた、本明細書で開示される、処置条件(例えば、用量、投与レジメン、投与経路など)のうちの1つまたは複数を伴う。
【0018】
本発明の1つまたは複数の実施形態についての詳細は、下記の記載に明示される。本発明の他の特色または利点は、以下の図面およびいくつかの実施形態についての詳細な記載から明らかであり、また、付属の特許請求の範囲からも明らかである。
【0019】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、図面の、本明細書で提供される具体的実施形態についての詳細な記載と組み合わせた参照により、よりよく理解されうる、本開示のある特定の態様をさらに裏付けるように組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】抗ガレクチン9抗体についての代表的サイズ除外クロマトグラフィー(SEC)プロファイルを示すグラフである。高分子量ピークが標識される。
【
図2A】
図2A~2Fは、抗ガレクチン9 G9.2-17 Fab断片、および市販の抗ガレクチン9抗体(9M1-3)を使用して、膵腺がん生検に由来するS2およびS3オルガノイド画分内の、T細胞(CD3
+)、マクロファージ(CD11b+)、および腫瘍細胞(Epcam+)内で測定された、ガレクチン9の発現レベルを示す棒グラフを含む図である。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一の細胞。G9.2-17 Fab(「Fabアイソタイプ」)、およびFMO(「fluorescence minus one」)9M1-3(「Gal9 FMO」)に対応するアイソタイプを、特異性、背景染色、および他のチャンネルからの蛍光漏れ込みについての対照として使用した。
図2Aは、S3画分内で測定される、CD3
+細胞内のガレクチン9のレベルを示す。
【
図2B】
図2Bは、S3画分内で測定される、CD11b
+細胞内のガレクチン9のレベルを示す。
【
図2C】
図2Cは、S3画分内で測定される、Epcam
+細胞内のガレクチン9のレベルを示す。
【
図2D】
図2Dは、S2画分内で測定される、CD3
+細胞内のガレクチン9のレベルを示す。
【
図2E】
図2Eは、S2画分内で測定される、CD11b
+細胞内のガレクチン9のレベルを示す。
【
図2F】
図2Fは、S2画分内で測定される、Epcam
+細胞内のガレクチン9のレベルを示す。
【
図3A】
図3A~3Fは、抗ガレクチン9 G9.2-17 Fab断片、および市販の抗ガレクチン9抗体(9M1-3)を使用して、結腸直腸がん生検に由来するS2およびS3オルガノイド画分内の、T細胞(CD3
+)、マクロファージ(CD11b+)、および腫瘍細胞(Epcam+)内で測定された、ガレクチン9の発現レベルを示す棒グラフを含む図である。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一の細胞。G9.2-17 Fab(「Fabアイソタイプ」)、およびFMO 9M1-3(「Gal9 FMO」)に対応するアイソタイプを、特異性、背景染色、および他のチャンネルからの蛍光漏れ込みについての対照として使用した。
図3Aは、S3画分内で測定される、CD3
+細胞内のガレクチン9のレベルを示す。
【
図3B】
図3Bは、S3画分内で測定される、CD11b
+細胞内のガレクチン9のレベルを示す。
【
図3C】
図3Cは、S3画分内で測定される、Epcam
+細胞内のガレクチン9のレベルを示す。
【
図3D】
図3Dは、S2画分内で測定される、CD3
+細胞内のガレクチン9のレベルを示す。
【
図3E】
図3Eは、S2画分内で測定される、CD11b
+細胞内のガレクチン9のレベルを示す。
【
図3F】
図3Fは、S2画分内で測定される、Epcam
+細胞内のガレクチン9のレベルを示す。
【
図4A】
図4A~4Fは、抗ガレクチン9 G9.2-17 Fab断片、および市販の抗ガレクチン9抗体(9M1-3)を使用して、第2の膵腺がん生検に由来するS2およびS3オルガノイド画分内の、T細胞(CD3
+)、マクロファージ(CD11b+)、および腫瘍細胞(Epcam+)内で測定された、ガレクチン9の発現レベルを示す棒グラフを含む図である。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一の細胞。G9.2-17 Fab(「Fabアイソタイプ」)、およびFMO 9M1-3(「Gal9 FMO」)に対応するアイソタイプを、特異性、背景染色、および他のチャンネルからの蛍光漏れ込みについての対照として使用した。
図4Aは、S3画分内で測定される、CD3
+細胞内のガレクチン9のレベルを示す。
【
図4B】
図4Bは、S3画分内で測定される、CD11b
+細胞内のガレクチン9のレベルを示す。
【
図4C】
図4Cは、S3画分内で測定される、Epcam
+細胞内のガレクチン9のレベルを示す。
【
図4D】
図4Dは、S2画分内で測定される、CD3
+細胞内のガレクチン9のレベルを示す。
【
図4E】
図4Eは、S2画分内で測定される、CD11b
+細胞内のガレクチン9のレベルを示す。
【
図4F】
図4Fは、S2画分内で測定される、Epcam
+細胞内のガレクチン9のレベルを示す。
【
図5A】
図5A~5Cは、抗ガレクチン9抗体である1G3を使用する、多様な腫瘍についての免疫組織化学解析の写真を含む図である。全ての拡大率は、200倍である。
図5Aは、強度スコアが2および3(中程度および高度)であり、ガレクチン9の発現が不均一である、化学療法で処置された結腸直腸がんを示す。ガレクチン9の染色は、特に、細胞膜において観察され;加えて、腺内マクロファージは、中程度に陽性であり、腫瘍内の間質反応は、中程度に強いガレクチン9発現を伴う、多核化マクロファージ巨細胞を示す。
【
図5B】
図5Bは、高度(強度スコア3)のガレクチン9発現を伴う、結腸直腸がんの肝転移を示す。染色は、膜上および細胞質内に位置する。
【
図5C】
図5Cは、ガレクチン9陽性(強度スコア2)細胞エントラップ胆管、およびガレクチン9陰性がんを示す。
【
図6】使用される抗体濃度の関数としてプロットされた、アネキシンVおよびヨウ化プロピジウム(PI)陽性細胞の画分を示すグラフを含む図である。MOLM-13細胞を、様々な濃度のG9.2-17またはヒトIgG4アイソタイプ抗体、および組換えヒトガレクチン9と共に、16時間にわたり共インキュベートした。フローサイトメトリーによる解析の前に、アネキシンVおよびヨウ化プロピジウムで細胞を染色した。各条件は、三連で実施した。解析は、FlowJoソフトウェア上で実施した。
【
図7A】
図7Aおよび7Bは、G9.2-17 mIgG2a単体、または抗PD1 mAbと組み合わせて、マウスを処置した研究の結果を示すグラフを描示する図である。KPC腫瘍を同所に移植されたマウス(群1つ当たりn=10)を、市販の抗PD-1 mAb(200μg)もしくはG9.2-17 mIg2a(200μg)、またはG9.2-17と抗PD-1との組合せ、あるいは調和されたアイソタイプで、毎週1回、3週間にわたり処置した。腫瘍を摘出および秤量し(
図7A)、その後、フローサイトメトリーのために、加工および染色した(
図7B)。各点は、1匹のマウスを表し;独立したスチューデントのt検定により、
*p<0.05;
**p<0.01;
***p<0.001;
****p<0.0001である。
【
図7B】
図7Bは、実験の終了時(18日目)に、対照動物および処置動物から腫瘍を切り出し、腫瘍内免疫細胞、ならびに関連する活性化マーカーおよび免疫抑制性マーカーについてのフローサイトメトリーのために加工したことを示す棒グラフを描示する図である。フロー解析の前に、マウス腫瘍を消化した。フローサイトメトリーは、Attune NxTフローサイトメーター(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)上で実施した。データは、FlowJo v.10.1(Treestar、Ashland、OR)を使用して解析した。
【
図8A】
図8Aは、G9.2-17のIgG1形態により実施されたADCCアッセイの結果を示すグラフを描示する図である。予測される通り、ADCCおよびADCPを媒介する、陽性対照としてのG9.2-17のIgG1ヒト対応物に対して、これを調べた。
【
図8B】
図8Bは、G9.2-17のIgG4形態により実施されたADCCアッセイの結果を示すグラフを描示する図である。ヒトIgG4 mAbについて予測される通り、G9.2-17は、ADCCを媒介しない。
【
図9A】
図9Aおよび9Bは、B16F10皮下同系モデルにおける、9.2-17の効果を示すグラフを描示する図である。腫瘍を、皮下に生着させ、G9.2-17 IgG1マウスmAb、抗PD1抗体またはG9.2-17 IgG1マウスmAbと抗PD1抗体との組合せで処置した。
図9Aは、腫瘍体積に対する効果を示すグラフを描示する。
【
図9B】
図9Bは、CD8 T細胞の腫瘍内浸潤を示すグラフを描示する。結果は、併用療法群では、腫瘍内におけるエフェクターT細胞の存在が増強されたことを示す。
【
図10A】
図10Aおよび10Bは、G9.2-17で処置された、ex vivoにおける胆管がん患者由来腫瘍培養物(オルガノイド)を示すチャートを描示する図である。ex vivoにおける患者由来の腫瘍培養物(オルガノイド)を、G9.2-17またはアイソタイプの対照で、3日間にわたり処置した。
図10Aは、PDOTに由来するCD3+ T細胞内のCD44の発現を評価した。
【
図10B】
図10Bは、PDOTに由来するCD3+ T細胞内のTNFαの発現を評価した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な記載
本明細書では、固形腫瘍、例えば、膵腺がん(PDA)、結腸直腸がん(CRC)、肝細胞がん(HCC)、および胆管がんを処置するために、抗ガレクチン9抗体、例えば、G9.2-17を使用する方法が提供される。一部の実施形態では、がんは、転移性である。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法は、具体的用量および/または投与スケジュールを提供する。一部の場合に、本明細書で開示される方法は、具体的患者集団、例えば、既往の処置受け、既往の処置を介して、疾患の進行を示す患者、または既往の処置に対して耐性(デノボ耐性または獲得耐性)である患者をターゲティングする。
【0022】
タンデム-リピートレクチンである、ガレクチン9は、細胞間相互作用、および細胞-マトリックス間相互作用をモジュレートすることにおいて役割を果たすことが示されている、ベータ-ガラクトシド結合性タンパク質である。ガレクチン9は、ホジキン病組織内、および他の病理学的状態において過剰発現されることが見出されている。一部の場合には、ガレクチン9はまた、腫瘍微小環境(TME)内で循環することも見出されている。
【0023】
ガレクチン9は、PDA内のマクロファージ上のほか、がん細胞上でも、高度に発現される自然免疫受容体である、デクチン1と相互作用することが見出されている(Daleyら、Nat Med.、2017、23巻(5号):556~6)。ガレクチン9の供給源に関わらず、そのデクチン1との相互作用を破壊すると、CD4+細胞およびCD8+細胞の、抗腫瘍免疫の不可欠のメディエーターへのリプログラミングをもたらすことが示されている。したがって、ガレクチン9は、デクチン1により媒介されるシグナル伝達を遮断するための、重要な治療標的として用いられる。したがって、一部の実施形態では、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体は、ガレクチン9と、デクチン1との相互作用を破壊する。
【0024】
ガレクチン9はまた、全ての種類の急性骨髄白血病(M3(急性前骨髄球性白血病)を除く)において、白血病性幹細胞の表面上で発現される細胞表面I型糖タンパク質である、TIM-3と相互作用するが、正常ヒト造血幹細胞(HSC)内では発現されないことも見出されている。ガレクチン9のリガンド結合から生じるTIM-3シグナル伝達は、免疫細胞に対して、多面的な効果を及ぼし、Th1細胞内のアポトーシスを誘導し(Zhuら、Nat Immunol.、2005、6巻:1245~1252)、腫瘍壊死因子α(TNFα)の分泌を刺激し、単球の、樹状細胞への成熟をもたらし、自然免疫による炎症を結果としてもたらすことが見出されている(Kuchrooら、Nat Rev Immunol.、2008、8巻:577~580)。さらに、ガレクチン9/TIM-3シグナル伝達は、白血病性幹細胞の自己再生を促進する、2つの経路である、NF-κBシグナル伝達およびβ-カテニンシグナル伝達を共活性化させることが見出されている(Kikushigeら、Cell Stem Cell、2015、17巻(3号):341~352)。ガレクチン9/TIM-3間の結合に干渉する抗ガレクチン9抗体であれば、とりわけ、白血病および他の血液悪性腫瘍に対して、治療効果を及ぼしうるであろう。したがって、一部の実施形態では、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体は、ガレクチン9とTIM-3との相互作用を破壊する。
【0025】
さらに、ガレクチン9は、M2分極化マクロファージ上で高度に発現されるマンノース受容体である、CD206と相互作用し、これにより、腫瘍の生存を促進することが見出されている(Enningaら、J Pathol.、2018年8月、245巻(4号):468~477)。CD206を発現させる腫瘍関連マクロファージは、腫瘍免疫抑制、血管新生、転移、および再発のメディエーターである(例えば、Scodellerら、Sci Rep.、2017年11月7日、7巻(1号):14655、および所収の参考文献を参照されたい)。具体的には、M1(古典的にはまた、活性化マクロファージとも称される)は、Th1関連サイトカインおよび細菌産物により誘発され、高レベルのIL-12を発現させ、殺腫瘍性である。対照的に、M2(いわゆる代替的活性化マクロファージ)は、Th2関連因子により活性化され、IL-10など、高レベルの抗炎症性サイトカインを発現させ、腫瘍進行を容易とする(BiswasおよびMantovani、Nat Immunol.、2010年10月、11巻(10号):889~96)。M2の腫瘍促進性効果は、血管新生の促進、浸潤および転移の進行、ならびに化学療法誘導性アポトーシスからの腫瘍細胞の保護を含む(Huら、Tumour Biol.、2015年12月、36巻(12号):9119~9126、および所収の参考文献)。腫瘍関連マクロファージは、M2様表現型であり、腫瘍促進性の役割を有すると考えられる。ガレクチン9は、骨髄細胞の、M2表現型への分化を媒介することが示されている(Enningaら、Melanoma Res.、2016年10月;26巻(5号):429~41)。ガレクチン9の、CD206への結合は、デクチンについて既に示されていることと同様に、TAMの、M2表現型へのリプログラミングを結果としてもたらしうる可能性がある。理論に束縛されることを望まずに述べると、ガレクチン9とCD206との相互作用の遮断は、抗ガレクチン9抗体、例えば、G9.2-17抗体が、治療的に有益でありうる、1つの機構をもたらしうる。したがって、一部の実施形態では、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体は、ガレクチン9とCD206との相互作用を破壊する。
【0026】
ガレクチン9はまた、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)および4-1BBと相互作用することも示されている(Bi Sら、Proc Natl Acad Sci USA.、2011、108巻(26号):10650~5;Madireddiら、J Exp Med.、2014、211巻(7号):1433~48)。
【0027】
抗ガレクチン9抗体は、ガレクチン9と関連する疾患(例えば、ガレクチン9シグナル伝達が、役割を果たす疾患)を処置するための治療剤として用いられうる。理論に束縛されずに述べると、抗ガレクチン9抗体は、ガレクチン9により媒介されるシグナル伝達経路を遮断しうる。例えば、抗体は、ガレクチン9と、その結合パートナー(例えば、デクチン1、TIM-3、またはCD206)との相互作用に干渉し、これにより、ガレクチン9/リガンド間相互作用により誘発されるシグナル伝達を遮断しうる。代替的に、または加えて、抗ガレクチン9抗体は、ガレクチン9を発現させる罹患細胞に対する遮断作用および/または細胞傷害作用、例えば、ADCC、CDC、またはADCPを誘導することによってもまた、その治療効果を及ぼしうる。罹患細胞とは、疾患の起始および/または発症に、直接的に、または間接的に寄与する細胞を指す。
【0028】
本明細書では、例えば、ADCCを介して、ガレクチン9により媒介されるシグナル伝達(例えば、ガレクチン9/デクチン1またはガレクチン9/Tim-3により媒介されるシグナル伝達経路)を抑制するか、またはガレクチン9を発現させる罹患細胞を消失させることが可能な抗ガレクチン9抗体が開示される。したがって、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体は、ガレクチン9シグナル伝達のうちのいずれかを阻害し、かつ/またはガレクチン9陽性罹患細胞を消失させ、これにより、ガレクチン9と関連する疾患の処置の利益をもたらすために使用されうる。
【0029】
G9.2-17などの抗ガレクチン9抗体は、ガレクチン9を発現させる細胞に対するアポトーシスの誘導において有効であることが見出された。さらに、マウスモデルでは、G9.2-17などの抗ガレクチン9抗体の、それ自体によるか、またはチェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1抗体)と組み合わせた、抗腫瘍効果が裏付けられた。本明細書で報告される通り、G9.2-17の有効性を、PDACおよび黒色腫についてのマウスモデルのほか、患者由来オルガノイド腫瘍モデル(PDOT)において調べた。使用された同所PDAC KPCマウスモデル(LSL-KrasG12D/+;LSL-Trp53R172H/+;Pdx-1-Cre)は、承認されたチェックポイント阻害剤に対する不応性を含む、ヒト疾患の多くの特色を再現する(BishtおよびFeldmann G、「Animal models for modeling pancreatic cancer and novel drug discovery」、Expert Opin Drug Discov.、2019、14巻(2号):127~142;Weidenhoferら、「Animal models of pancreatic cancer and their application in clinical research」、Gastrointestinal Cancer:Targets and Therapy」、2016、6巻)。B16F10悪性黒色腫マウスモデルは、年来、免疫療法について調べるための標準モデルとなっている(Curranら、「PD-1 and CTLA-4 combination blockade expands infiltrating T cells and reduces regulatory T and myeloid cells within B16 melanoma tumors」、Proc Natl Acad Sci USA.、2010、107巻(9号):4275~4280)。
【0030】
採取したてのヒト腫瘍試料から単離されたPDOTは、抗原経験腫瘍浸潤性CD4 Tリンパ球、および抗原経験腫瘍浸潤性CD8 Tリンパ球を含む、自家リンパ細胞集団、および自家骨髄細胞集団を保持し、短期のex vivo培養物中で、免疫療法に応答する(Jenkinsら、「Ex Vivo Profiling of PD-1 Blockade Using Organotypic Tumor Spheroids」、Cancer Discov.、2018、8巻(2号):196~215;Arefら、「3D microfluidic ex vivo culture of organotypic tumor spheroids to model immune checkpoint blockade」、2018、18巻(20号):3129~3143)。本明細書で報告される通り、患者由来オルガノイドアッセイでは、がん細胞上における、ガレクチン9の発現が観察された。
【0031】
承認されたチェックポイント阻害剤が働かない、同所KPCモデルにおいて、単剤として既に、腫瘍増殖の顕著な低減を達成するG9.2-17マウスIgG1(G9.2-17 mIgG1は、G9.2-17ヒトIgG4と全く同じ結合性エピトープを含有し、同じエフェクター機能を及ぼす)により、in vivo研究を実施した。B16F10モデルでは、G9.2-17は、抗PD1の有効性を、顕著に上回る。これらのいずれのモデルにおいても、エフェクターT細胞活性の上方調節、および免疫抑制性シグナルの阻害のほか、CD8 T細胞の腫瘍内浸潤の強化を介する、G9.2-17 mIgG1を使用する、腫瘍内の免疫腫瘍微小環境のモジュレーションを裏付けた。
【0032】
これらの結果は、抗ガレクチン9抗体と、任意選択の組合せで、チェックポイント阻害剤とを伴う、本明細書で開示される抗腫瘍法であれば、標的の固形腫瘍に対する、優れた治療有効性を達成することを裏付ける。
【0033】
したがって、本明細書では、本明細書で開示される、ある特定のがんを処置するための、抗ガレクチン9抗体の治療的使用について記載される。
【0034】
ガレクチン9に結合する抗体
本開示は、本明細書で開示される処置法における使用のための、抗ガレクチン9抗体であるG9.2-17およびその機能的変異体を提供する。
【0035】
抗体(複数形でも互換的に使用される)とは、免疫グロブリン分子の可変領域内に配置された、少なくとも1つの抗原認識部位を介する、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的への特異的結合が可能な免疫グロブリン分子である。本明細書で使用される、「抗体」という用語、例えば、抗ガレクチン9抗体は、無傷(例えば、全長)ポリクローナル抗体または無傷(例えば、全長)モノクローナル抗体だけでなく、また、その抗原結合性断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、単鎖(scFv)、その突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、ダイアボディー、ナノボディー、直鎖状抗体、単鎖抗体、多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、ならびに要求される特異性の抗原認識部位を含む、免疫グロブリン分子の、他の任意の改変構成であって、抗体のグリコシル化変異体、抗体のアミノ酸配列変異体、および共有結合的改変抗体を含む改変構成も包摂する。抗体、例えば、抗ガレクチン9抗体は、IgD、IgE、IgG、IgA、またはIgM(またはこれらのサブクラス)など、任意のクラスの抗体を含み、抗体は、何らかの特定のクラスの抗体である必要はない。その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てられうる。免疫グロブリンには、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に、さらに分けられうる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する、重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元構成は、周知である。
【0036】
典型的な抗体分子は、通例、抗原への結合に関与する、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む。VH領域およびVL領域は、「フレームワーク領域」(「FR」)として公知の、より保存的な領域を散在させた、「相補性決定領域」(「CDR」)としてもまた公知の、超可変領域に、さらに細分されうる。各VHおよび各VLは、典型的に、アミノ末端から、カルボキシ末端に、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された、3つのCDRと、4つのFRとから構成される。本発明の異なる実施形態では、本発明の抗体(またはその抗原結合性断片)のFRは、ヒト生殖細胞株列配列と同一である場合もあり、天然で、または人工的に修飾されている場合もある。アミノ酸のコンセンサス配列は、2つまたはこれを超えるCDRについての比較対照解析に基づき、規定されうる。フレームワーク領域およびCDRの広がりは、それらの全てが当技術分野で周知である、当技術分野で公知の方法、例えば、Kabat定義、Chothia定義、AbM定義、EU定義、「Contact」番号付けスキーム、「IMGT」番号付けスキーム、「AHo」番号付けスキーム、および/またはcontact定義を使用して、正確に同定されうる。例えば、Kabat,E.A.ら(1991)、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH刊行物第91-3242号;Chothiaら(1989)、Nature、342巻:877;Chothia,C.ら(1987)、J.Mol.Biol.、196巻:901~917;Al-lazikaniら(1997)、J.Molec.Biol.、273巻:927~948;Edelmanら、Proc Natl Acad Sci USA.、1969年5月;63巻(1号):78~85;およびAlmagro、J.Mol.Recognit.、17巻:132~143(2004);MacCallumら、J.Mol.Biol.、262巻:732~745(1996);Lefranc M Pら、Dev Comp Immunol、2003年1月;27巻(1号):55~77;ならびにHonegger AおよびPluckthun A、J Mol Biol、2001年6月8日、309巻(3号):657~70を参照されたい。また、hgmp.mrc.ac.uk and bioinf.org.uk/absも参照されたい。
【0037】
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体は、各々が可変ドメインおよび定常ドメインを含む2つの重鎖および2つの軽鎖を含有する全長抗体である。代替的に、抗ガレクチン9抗体は、全長抗体の抗原結合性断片でありうる。全長抗体の「抗原結合性断片」という用語の中に包摂される結合性断片の例は、(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、およびCH1ドメインからなる一価断片である、Fab断片;(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋により連結された、2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab’)2断片;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなる、Fd断片;(iv)抗体の単一のアームのVLドメインおよびVHドメインからなる、Fv断片;(v)VHドメインからなる、dAb断片(Wardら(1989)、Nature、341巻:544~546);ならびに(vi)機能性を保持する、単離相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fv断片の2つのドメインである、VLと、VHとは、個別の遺伝子によりコードされるが、組換え法を使用して、それらを単一のタンパク質鎖として作製することを可能とする、合成リンカーを介して接続される場合があり、この場合、VL領域と、VH領域とは、対合して、単鎖Fv(scFv)として公知の一価分子を形成する。例えば、Birdら(1988)、Science、242巻:423~426;およびHustonら(1988)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85巻:5879~5883を参照されたい。
【0038】
本明細書で記載される抗体、例えば、抗ガレクチン9抗体のうちのいずれかは、モノクローナル抗体の場合もあり、ポリクローナル抗体の場合もある。「モノクローナル抗体」とは、同種抗体集団を指し、「ポリクローナル抗体」とは、異種抗体集団を指す。これらの2つの用語は、抗体の供給源、またはそれが作られる方式を限定しない。
【0039】
参照抗体G9.2-17とは、ヒトガレクチン9に結合することが可能な抗体を指し、それらの両方が下記に示される、配列番号7の重鎖可変ドメインおよび配列番号8の軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法における使用のための抗ガレクチン9抗体は、G9.2-17抗体である。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法における使用のための抗ガレクチン9抗体は、参照抗体G9.2-17と同じ重鎖相補性決定領域(CDR)および/または参照抗体G9.2-17と同じ軽鎖相補性決定領域を有する抗体である。同じVH CDRおよび/またはVL CDRを有する2つの抗体とは、それらのCDRが、同じ手法(例えば、当技術分野で公知の、Kabat法、Chothia法、AbM法、Contact法、またはIMGT法。例えば、bioinf.org.uk/abs/を参照されたい)により決定される場合に、同一であることを意味する。
【0040】
参照抗体G9.2-17の重鎖CDRおよび軽鎖CDRは、下記の表1(Kabat法を使用して決定された)に示される:
【0041】
【0042】
一部の例では、本明細書で開示される方法における使用のための抗ガレクチン9抗体は、(Kabatによるスキームに従い)配列番号4として示された重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5として示された重鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号6として示された重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含むことが可能であり、かつ/または(Kabatによるスキームに従い)配列番号4として示された重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5として示された重鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号6として示された重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含みうる。参照抗体G9.2-17を含む抗ガレクチン9抗体は、本明細書で開示される任意のフォーマット、例えば、全長抗体またはFabでありうる。本明細書で使用される「G9.2-17(Ig4)」という用語は、IgG4分子であるG9.2-17抗体を指す。同様に、「G9.2-17(Fab)」という用語は、Fab分子であるG9.2-17抗体を指す。
【0043】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体またはその結合性部分は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、この場合、軽鎖可変領域の、CDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号1、2、および3に示された軽鎖可変領域の、CDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体またはその結合性部分は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、この場合、重鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号4、5、および6に示された重鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性を有する。
【0044】
例えば、ガレクチン9のCRD1領域および/またはCRD2領域に結合するさらなるガレクチン9抗体については、それらの各々の内容が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、共有、同時係属の米国特許出願第16/173,970号、ならびに共有、同時係属の国際特許出願第PCT/US18/58028号および同第PCT/US2020/024767号において記載されている。
【0045】
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体は、参照抗体G9.2-17の対応するVL CDRと、個別にまたは集合的に比較して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性を有する軽鎖CDRを含む。代替的に、または加えて、一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、参照抗体G9.2-17の対応するVH CDRと、個別にまたは集合的に比較して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖CDRを含む。
【0046】
2つのアミノ酸配列の間の「同一性パーセント」は、KarlinおよびAltschul、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90巻:5873~77、1993における通りに改変された、KarlinおよびAltschul、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87巻:2264~68、1990、のアルゴリズムを使用して決定される。このようなアルゴリズムは、Altschulら、J.Mol.Biol.、215巻:403~10、1990によるNBLASTプログラムおよびXBLASTプログラム(version 2.0)に組み込まれている。スコア=50、ワード長=3とするXBLASTプログラムにより、BLASTタンパク質検索を実施して、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。2つの配列の間にギャップが存在する場合、Altschulら、Nucleic Acids Res.、25巻(17号):3389~3402、1997において記載されている、Gapped BLASTが利用されうる。BLASTプログラムおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトのパラメータが使用されうる。
【0047】
他の実施形態では、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体は、参照抗体G9.2-17のHC CDR1、HC CDR2、およびHC CDR3と比べて、併せて、最大で8つのアミノ酸残基の変異(付加、欠失、および/または置換を含む、8つ、7つ、6つ、5つ、4つ、3つ、2つ、または1つの変異(複数可))を含有する、HC CDR1、HC CDR2、およびHC CDR3を含むVHを含む。代替的に、または加えて、一部の実施形態では、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体は、参照抗体G9.2-17のLC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3と比べて、併せて、最大で8つのアミノ酸残基の変異(付加、欠失、および/または置換を含む、8つ、7つ、6つ、5つ、4つ、3つ、2つ、または1つの変異(複数可))を含有する、LC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3を含むVHを含む。
【0048】
一例では、アミノ酸残基変異は、保存的アミノ酸残基置換である。本明細書で使用される、「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸置換がなされるタンパク質の相対的電荷またはサイズ特徴を変更しないアミノ酸置換を指す。変異体は、当業者に公知の、ポリペプチド配列を変更するための方法であって、このような方法を集成する参考文献、例えば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、J.Sambrookら編、2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、1989;または「Current Protocols in Molecular Biology」、F.M.Ausubelら編、John Wiley&Sons,Inc.、New Yorkにおいて見出される方法などの方法に従い調製されうる。アミノ酸の保存的置換は、以下の群:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;および(g)E、D内のアミノ酸の間でなされる置換を含む。
【0049】
一部の実施形態では、本明細書で開示される重鎖CDRを有する、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体は、生殖細胞系列VH断片のサブクラスに由来するフレームワーク領域を含有する。このような生殖細胞系列VH領域は、当技術分野で周知である。例えば、IMGTデータベース(www.imgt.org)またはwww.vbase2.org/vbstat.phpを参照されたい。例は、IGHV1サブファミリー(例えば、IGHV1-2、IGHV1-3、IGHV1-8、IGHV1-18、IGHV1-24、IGHV1-45、IGHV1-46、IGHV1-58、およびIGHV1-69)、IGHV2サブファミリー(例えば、IGHV2-5、IGHV2-26、およびIGHV2-70)、IGHV3サブファミリー(例えば、IGHV3-7、IGHV3-9、IGHV3-11、IGHV3-13、IGHV3-15、IGHV3-20、IGHV3-21、IGHV3-23、IGHV3-30、IGHV3-33、IGHV3-43、IGHV3-48、IGHV3-49、IGHV3-53、IGHV3-64、IGHV3-66、IGHV3-72、およびIGHV3-73、IGHV3-74)、IGHV4サブファミリー(例えば、IGHV4-4、IGHV4-28、IGHV4-31、IGHV4-34、IGHV4-39、IGHV4-59、IGHV4-61、およびIGHV4-B)、IGHVサブファミリー(例えば、IGHV5-51、またはIGHV6-1)、およびIGHV7サブファミリー(例えば、IGHV7-4-1)を含む。
【0050】
代替的に、または加えて、一部の実施形態では、本明細書で開示される軽鎖CDRを有する、抗ガレクチン9抗体は、生殖細胞系列Vκ断片に由来するフレームワーク領域を含有する。例は、IGKV1フレームワーク(例えば、IGKV1-05、IGKV1-12、IGKV1-27、IGKV1-33、またはIGKV1-39)、IGKV2フレームワーク(例えば、IGKV2-28)、IGKV3フレームワーク(例えば、IGKV3-11、IGKV3-15、またはIGKV3-20)、およびIGKV4フレームワーク(例えば、IGKV4-1)を含む。他の場合に、抗ガレクチン9抗体は、生殖細胞系列Vλ断片に由来するフレームワークを含有する軽鎖可変領域を含む。例は、IGλ1フレームワーク(例えば、IGλV1-36、IGλV1-40、IGλV1-44、IGλV1-47、IGλV1-51)、IGλ2フレームワーク(例えば、IGλV2-8、IGλV2-11、IGλV2-14、IGλV2-18、IGλV2-23)、IGλ3フレームワーク(例えば、IGλV3-1、IGλV3-9、IGλV3-10、IGλV3-12、IGλV3-16、IGλV3-19、IGλV3-21、IGλV3-25、IGλV3-27)、IGλ4フレームワーク(例えば、IGλV4-3、IGλV4-60、IGλV4-69)、IGλ5フレームワーク(例えば、IGλV5-39、IGλV5-45)、IGλ6フレームワーク(例えば、IGλV6-57)、IGλ7フレームワーク(例えば、IGλV7-43、IGλV7-46)、IGλ8フレームワーク(例えば、IGλV8-61)、IGλ9フレームワーク(例えば、IGλV9-49)、またはIGλ10フレームワーク(例えば、IGλV10-54)を含む。
【0051】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法における使用のための抗ガレクチン9抗体は、参照抗体G9.2-17と同じ重鎖可変領域(V
H)および/または同じ軽鎖可変領域(V
L)を有する抗体であることが可能であり、V
H領域およびV
L領域のアミノ酸配列を下記に示す:
【0052】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号7の重鎖可変領域に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有する。代替的に、または加えて、抗ガレクチン9抗体は、配列番号8の軽鎖可変領域に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有する。
【0053】
一部の場合に、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体は、参照抗体G9.2-17の機能的変異体である。機能的変異体は、参照抗体と、構造的に類似し(例えば、本明細書で開示されるG9.2-17の重鎖CDRおよび/もしくは軽鎖CDRのうちの1つまたは複数内に、限定数のアミノ酸残基変異を含むか、または本明細書で開示されるG9.2-17の重鎖CDRおよび/もしくは軽鎖CDR、または本明細書で開示されるG9.2-17のVHおよび/もしくはVLと比べた配列同一性を有する)、ヒトガレクチン9に対する、実質的に同様の結合アフィニティー(例えば、同じ桁数のKD値を有する)を伴う。
【0054】
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体は、ガレクチン9に結合し、この活性を、少なくとも20%(例えば、この中の任意の増分を含む、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれを超えて)阻害しうる。阻害剤の効能の尺度をもたらす、見かけの阻害定数(KiappまたはKi,
app)は、酵素活性を低減するのに要求される阻害剤の濃度と関連し、酵素濃度には依存しない。本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体の阻害活性は、当技術分野で公知の規定の方法により決定されうる。
【0055】
抗体のKi,
app値は、異なる濃度の抗体の、反応(例えば、酵素活性)の程度に対する阻害効果を測定することにより決定される場合があり;阻害剤濃度の関数としての、擬1次速度定数(v)の変化を、改変モリソン式(式1)に当てはめることから、見かけのKi値の推定値を得る。競合的阻害剤について、Kiappは、Ki,
appを、基質濃度と対比したプロットについての線形回帰解析から抽出されるy切片から得られうる。
【0056】
【0057】
[式中、Aは、総酵素濃度(E)で除された、阻害剤(I)の非存在下における、酵素反応の初期速度(vo)である、vo/Eと等しい]。一部の実施形態では、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体は、標的である、抗原または抗原エピトープに対して、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、50、40、30、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5pM、またはこれ未満のKiapp値を有する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、第1の標的(例えば、ガレクチン9のCRD2)に対して、第2の標的(例えば、ガレクチン9のCRD1)に対するKiappと比べて、低値のKiappを有する。Kiappの差違(例えば、特異性についての、または他の比較のための)は、少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、37.5、50、70、80、91、100、500、1000、10,000、または105倍でありうる。一部の例では、抗ガレクチン9抗体は、第1の抗原(例えば、第1のコンフォメーションにある、第1のタンパク質、またはその模倣体)を、第2の抗原(例えば、第2のコンフォメーションにある、同じ第2のタンパク質、もしくはその模倣体;または第2のタンパク質)と比べて大幅に阻害する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体のうちのいずれかは、抗体の、標的抗原、またはその抗原性エピトープに対するKiappを低減するように、さらにアフィニティー成熟されうる。
【0058】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、例えば、マクロファージなど、腫瘍浸潤性免疫細胞内の、デクチン1シグナル伝達を抑制する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、ガレクチン9により誘発される、デクチン1シグナル伝達を、少なくとも30%(例えば、この中の任意の増分を含む、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれを超えて)抑制する。このような阻害活性は、規定のアッセイなど、従来の方法により決定されうる。代替的に、または加えて、抗ガレクチン9抗体は、ガレクチン9により開始される、T細胞免疫グロブリンムチン3(TIM-3)シグナル伝達を抑制する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、例えば、一部の実施形態では、例えば、腫瘍浸潤性免疫細胞内の、T細胞免疫グロブリンムチン3(TIM-3)シグナル伝達を、少なくとも30%(例えば、この中の任意の増分を含む、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれを超えて)抑制する。このような阻害活性は、規定のアッセイなど、従来の方法により決定されうる。
【0059】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、例えば、腫瘍浸潤性免疫細胞内の、CD206シグナル伝達を抑制する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、ガレクチン9により誘発される、CD206シグナル伝達を、少なくとも30%(例えば、この中の任意の増分を含む、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれを超えて)抑制する。このような阻害活性は、規定のアッセイなど、従来の方法により決定されうる。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、ガレクチン9の、CD206への結合を、少なくとも30%(例えば、この中の任意の増分を含む、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれを超えて)遮断または阻止する。このような阻害活性は、規定のアッセイなど、従来の方法により決定されうる。
【0060】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、ガレクチン9を発現させる標的細胞内の、ADCCなど、細胞性細胞傷害作用を誘導し、例えば、この場合、標的細胞は、がん細胞または免疫抑制性免疫細胞である。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、T細胞などの免疫細胞内、またはがん細胞内のアポトーシスを、少なくとも30%(例えば、この中の任意の増分を含む、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれを超えて)誘導する。このような阻害活性は、規定のアッセイなど、従来の方法により決定されうる。一部の実施形態では、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体のうちのいずれかは、ガレクチン9を発現させる標的細胞に対する、補体依存性細胞傷害作用(CDC)などの細胞性細胞傷害作用を誘導する。
【0061】
抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)は、食作用を介して、それらの作用の一部または全部を媒介する抗体についての、重要な作用機構である。この場合に、抗体は、抗原提示細胞による、特異的抗原の取込みを媒介する。ADCPは、そのうちのマクロファージ上のFcγRIIa(CD32a)が、主要な経路を表す、FcγRIIa、FcγRI、およびFcγRIIIaを介して、単球、マクロファージ、好中球、および樹状細胞により媒介されうる。
【0062】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、標的細胞、例えば、がん細胞、または免疫抑制性ガレクチン9を発現させる免疫細胞に対する細胞性食作用(ADCP)を誘導する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、標的細胞、例えば、がん細胞、または免疫抑制性免疫細胞に対する食作用を、少なくとも30%(例えば、この中の任意の増分を含む、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれを超えて)増大させる。
【0063】
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体は、標的細胞、例えば、がん細胞、または免疫抑制性免疫細胞に対する、補体依存性細胞傷害作用(CDC)などの細胞性細胞傷害作用を誘導する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、標的細胞に対するCDCを、少なくとも30%(例えば、この中の任意の増分を含む、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれを超えて)増大させる。
【0064】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、例えば、腫瘍浸潤性T細胞における、T細胞の活性化を誘導する、すなわち、T細胞活性化の、ガレクチン9媒介性阻害を、直接的に、または間接的に抑制する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、T細胞の活性化を、少なくとも30%(例えば、この中の任意の増分を含む、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれを超えて)促進する。T細胞の活性化は、サイトカインおよびチェックポイント阻害剤を測定するための、周知のアッセイ(例えば、CD44、TNFアルファ、IFNガンマ、および/またはPD-1の測定)を使用する方法など、従来の方法により決定されうる。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、CD4+細胞の活性化を、少なくとも30%(例えば、この中の任意の増分を含む、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれを超えて)促進する。非限定例では、抗ガレクチン抗体は、CD4+細胞内の、CD44の発現を誘導する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、CD4+細胞内の、CD44の発現を、少なくとも30%(例えば、この中の任意の増分を含む、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれを超えて)増大させる。非限定例では、抗ガレクチン抗体は、CD4+細胞内の、IFNガンマの発現を誘導する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、CD4+細胞内の、IFNガンマの発現を、少なくとも30%(例えば、この中の任意の増分を含む、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれを超えて)増大させる。非限定例では、抗ガレクチン抗体は、CD4+細胞内の、TNFアルファの発現を誘導する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、CD4+細胞内の、TNFアルファの発現を、少なくとも30%(例えば、この中の任意の増分を含む、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれを超えて)増大させる。
【0065】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、CD8+細胞の活性化を、少なくとも30%(例えば、この中の任意の増分を含む、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれを超えて)促進する。非限定例では、抗ガレクチン抗体は、CD8+細胞内の、CD44の発現を誘導する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、CD8+細胞内の、CD44の発現を、少なくとも30%(例えば、この中の任意の増分を含む、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれを超えて)増大させる。非限定例では、抗ガレクチン抗体は、CD8+細胞内の、IFNガンマの発現を誘導する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、CD8+細胞内の、IFNガンマの発現を、少なくとも30%(例えば、この中の任意の増分を含む、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれを超えて)増大させる。非限定例では、抗ガレクチン抗体は、CD8+細胞内の、TNFアルファの発現を誘導する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、CD8+細胞内の、TNFアルファの発現を、少なくとも30%(例えば、この中の任意の増分を含む、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれを超えて)増大させる。
【0066】
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体は、標的抗原(例えば、ガレクチン9)、またはその抗原性エピトープに対する、適切な結合アフィニティーを有する。本明細書で使用される、「結合アフィニティー」とは、見かけの会合定数またはKAを指す。KAは、解離定数(KD)の逆数である。本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体は、標的抗原または抗原性エピトープに対する、少なくとも10-5、10-6、10-7、10-8、10-9、10-10M、またはこれ未満の結合アフィニティー(KD)を有しうる。結合アフィニティーの上昇は、KDの低下に対応する。結合アフィニティー(または結合特異性)は、平衡透析、平衡結合、ゲル濾過、ELISA、表面プラズモン共鳴、または分光法(例えば、蛍光アッセイを使用する)を含む、様々な方法により決定されうる。結合アフィニティーを査定するための、例示的な条件は、HBS-P緩衝液(10mMのHEPES pH7.4、150mMのNaCl、0.005%(v/v)のSurfactant P20)中の条件である。
【0067】
これらの技法は、結合した結合性タンパク質の濃度を、標的タンパク質濃度の関数として測定するのに使用されうる。ある特定の条件下で、結合した結合性タンパク質の濃度比([結合]/[総計])は、一般に、以下の式:
[結合]/[総計]=[標的]/(Kd+[標的])
により、全標的タンパク質の濃度([標的])と関係づけられる。
【0068】
しかしながら、場合によって、例えば、ELISA解析またはFACS解析などの方法を使用して決定される、アフィニティーの定量的測定値であって、KAに比例するので、高アフィニティーが、例えば、2倍であるのかどうかの決定などの比較に使用されうる、アフィニティーの定量的測定値を得るか、アフィニティーの定性的測定値を得るか、または機能アッセイ、例えば、in vitroアッセイまたはin vivoアッセイにおける、例えば、活性によるアフィニティーの推定値を得れば十分であるので、常に、KAの正確な決定が必要なわけではない。一部の場合に、in vitro結合アッセイは、in vivo活性を指し示す。他の場合に、in vitro結合アッセイは、in vivo活性を、必ずしも指し示すわけではない。一部の場合には、緊密な結合が有益であるが、他の場合には、緊密な結合は、in vivoにおいて所望される通りではなく、結合アフィニティーの小さな抗体が、より所望される。
【0069】
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体のうちのいずれかの重鎖は、重鎖定常領域(CH)またはその部分(例えば、CH1、CH2、CH3、またはこれらの組合せ)をさらに含む。重鎖定常領域は、任意の適切な由来、例えば、ヒト、マウス、ラット、またはウサギでありうる。一具体例では、重鎖定常領域は、本明細書で記載される、任意のIgGサブファミリーのヒトIgG(ガンマ重鎖)に由来する。
【0070】
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗体の重鎖定常領域は、単一のドメイン(例えば、CH1、CH2、またはCH3)、または定常領域の単一のドメイン(例えば、配列番号4、5、6)のうちのいずれかの組合せを含む。一部の実施形態では、本明細書で記載される抗体の軽鎖定常領域は、定常領域の単一のドメイン(例えば、CL)を含む。例示的な軽鎖配列および重鎖配列は、下記に列挙される。例示的な軽鎖配列および重鎖配列は、下記に列挙される。hIgG1 LALA配列は、FcgRへの結合を抑制する2つの突然変異である、L234AおよびL235A(EU番号付け)のほか、補体C1qへの結合を失効化させ、これにより、全ての免疫エフェクター機能を失効化させる、P329G突然変異(EU番号付け)を含む。hIgG4 Fab Arm Exchange突然変異体配列は、Fab Arm Exchangeを抑制する突然変異(S228P;EU番号付け)を含む。IL2シグナル配列(MYRMQLLSCIALSLALVTNS;配列番号9)は、可変領域のN末端に配置されうる。分泌時に切断され、このため、成熟抗体分子内には存在しない、IL2シグナル配列は、発現ベクター内で使用される。成熟タンパク質(分泌の後における)は、重鎖について「EVQ」で始まり、軽鎖について「DIM」で始まる。例示的な重鎖定常領域のアミノ酸配列を下記に示す:
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
一部の実施形態では、上記の重鎖定常領域のうちのいずれかを有する抗ガレクチン9抗体が、以下の軽鎖定常領域を有する軽鎖と対合される:
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
上記の重鎖のうちのいずれかは、下記に示される配列番号15の軽鎖と対合されうる:
【0084】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性に対する、1を有する重鎖IgG1定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体の定常領域は、配列番号10を含む重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体の定常領域は、配列番号10からなる重鎖IgG1定常領域を含む。
【0085】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号20に対する、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体の定常領域は、配列番号20を含む重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体の定常領域は、配列番号20からなる重鎖IgG4定常領域を含む。
【0086】
一部の実施形態では、定常領域は、ヒトIgG4に由来する。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号13に対する、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号13を含む重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号13からなる重鎖IgG4定常領域を含む。
【0087】
一部の実施形態では、定常領域は、ヒトIgG4に由来する。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号20に対する、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号20を含む重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号20からなる重鎖IgG4定常領域を含む。
【0088】
これらの実施形態のうちのいずれかでは、抗ガレクチン9抗体は、配列番号11に対する、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性を有する軽鎖IgG4定常領域を含む。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号11を含む軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号11からなる軽鎖定常領域を含む。
【0089】
一部の実施形態では、IgGは、Fc受容体との係合が最小である突然変異体である。一例では、定常領域は、ヒトIgG1 LALAに由来する。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性に対する、1を有する重鎖IgG1定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号12を含む重鎖IgG1定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号12からなる重鎖IgG1定常領域を含む。
【0090】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、修飾定常領域を含む。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、免疫不活性の修飾定常領域、例えば、補体媒介性溶解を誘発したり、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)を刺激したりしない、修飾定常領域を含む。ADCC活性は、米国特許第5,500,362号において開示されている方法を使用して評価されうる。他の実施形態では、定常領域は、Eur.J.Immunol.(1999)、29巻:2613~2624;PCT出願第PCT/GB99/01441号;および/または英国特許出願第9809951.8号において記載されている通りに修飾される。一部の実施形態では、IgG4定常領域は、重鎖交換が低減された突然変異体である。一部の実施形態では、定常領域は、ヒトIgG4 Fab Arm Exchange S228P突然変異体に由来する。
【0091】
一実施形態では、抗ガレクチン9抗体の定常領域は、配列番号14に対する、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体の定常領域は、配列番号14を含む重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体の定常領域は、配列番号14からなる重鎖IgG4定常領域を含む。
【0092】
一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号21に対する、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号21を含む重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号21からなる重鎖IgG4定常領域を含む。
【0093】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、軽鎖については、配列番号15に対応する鎖;および配列番号10(hIgG1);12(hIgG1 LALA);13(hIgG4);20(hIgG4);14(hIgG4 mut);および21(hIgG4 mut)に対応する、例示的な重鎖のアミノ酸配列を有する。
【0094】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号15を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる軽鎖を有する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号16~19、22、および23からなる群から選択される配列のうちのいずれか1つを含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる重鎖を有する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号15を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる軽鎖、および配列番号16~19からなる群から選択される配列のうちのいずれか1つを含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる重鎖を有する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号15を含む軽鎖、および配列番号16~19、22、および23からなる群から選択される配列のうちのいずれか1つを含む重鎖を有する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号15から本質的になる軽鎖、および配列番号16~19、22、および23からなる群から選択される配列のうちのいずれか1つから本質的になる重鎖を有する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号15からなる軽鎖、および配列番号16~19、22、および23からなる群から選択される配列のうちのいずれか1つからなる重鎖を有する。具体的な一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号15から本質的になる軽鎖、および配列番号19から本質的になる重鎖を有する。別の具体的実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号15から本質的になる軽鎖、および配列番号20から本質的になる重鎖を有する。
【0095】
一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号16に対する、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号16を含む重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号16からなる重鎖配列を含む。
【0096】
一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号17に対する、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号17を含む重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号17からなる重鎖配列を含む。
【0097】
一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号18に対する、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号18を含む重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号18からなる重鎖配列を含む。
【0098】
一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号22に対する、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号22を含む重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号22からなる重鎖配列を含む。
【0099】
一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号19に対する、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号19を含む重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号19からなる重鎖配列を含む。
【0100】
一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号23に対する、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号23を含む重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号23からなる重鎖配列を含む。
【0101】
これらの実施形態のうちのいずれかでは、抗ガレクチン9抗体は、配列番号15に対する、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、およびこの中の任意の増分)の配列同一性を有する軽鎖配列を含む。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号15を含む軽鎖配列を含む。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、配列番号15からなる軽鎖配列を含む。
【0102】
具体例では、本明細書で開示される処置法において使用される抗ガレクチン9抗体は、配列番号19の重鎖および配列番号15の軽鎖を有する。一部の実施形態では、本明細書で開示される処置法において使用される抗ガレクチン9抗体は、G9.2-17 IgG4である。
【0103】
抗ガレクチン9抗体の調製
本明細書で記載される、ガレクチン9に結合することが可能な抗体は、組換え技術を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の、任意の方法により作られうる。下記では1つの例が示される。
【0104】
本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸は、各ヌクレオチド配列が、適切なプロモーターに作動的に連結された、1つの発現ベクターにクローニングされうる。一例では、重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列の各々は、顕著に異なるプロモーターに作動的に連結される。代替的に、重鎖および軽鎖の両方が、同じプロモーターから発現されるように、重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列は、単一のプロモーターと作動的に連結されうる。必要な場合、内部リボソーム侵入部位(IRES)が、重鎖コード配列と軽鎖コード配列との間に挿入されうる。
【0105】
一部の例では、抗体の2つの鎖をコードするヌクレオチド配列は、同じ細胞に導入される場合もあり、異なる細胞に導入される場合もある、2つのベクターにクローニングされる。2つの鎖が、異なる細胞内で発現される場合、これらの各々は、このような鎖を発現させる宿主細胞から単離され、単離された重鎖および軽鎖は、抗体の形成を可能とする、適切な条件下で、混合およびインキュベートされうる。
【0106】
一般に、抗体の1つまたは全ての鎖をコードする核酸配列は、当技術分野で公知の方法を使用して、適切なプロモーターと作動的に連結された、適切な発現ベクターにクローニングされうる。例えば、ヌクレオチド配列およびベクターは、各分子上に、互いと対合することが可能であり、リガーゼにより一体に接続されうる、相補性末端を創出するように、適切な条件下で、制限酵素と接触しうる。代替的に、合成核酸リンカーが、遺伝子の末端にライゲーションされうる。これらの合成リンカーは、ベクター内の特定の制限部位に対応する核酸配列を含有する。発現ベクター/プロモーターの選択は、抗体の作製における使用のための宿主細胞の種類に依存するであろう。
【0107】
サイトメガロウイルス(CMV)中期/早期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスLTR、HIV-LTR、HTLV-1 LTRなどのウイルスLTR、サルウイルス40(SV40)早期プロモーター、E.coli lac UV5プロモーター、および単純ヘルペスウイルスtkプロモーターを含むがこれらに限定されない、様々なプロモーターが、本明細書で記載される抗体の発現に使用されうる。
【0108】
調節性プロモーターもまた、使用されうる。このような調節性プロモーターは、E.coliに由来するlacリプレッサーを、転写モジュレーターとして使用して、lacオペレーターを保有する哺乳動物細胞プロモーターからの転写を調節する調節性プロモーター[Brown,M.ら、Cell、49巻:603~612(1987)]、テトラサイクリンリプレッサー(tetR)を使用する調節性プロモーター[Gossen,M.およびBujard,H.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89巻:5547~5551(1992);Yao,F.ら、Human Gene Therapy、9巻:1939~1950(1998);Shockelt,P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92巻:6522~6526(1995)]を含む。他の系は、アストラジオール、RU486、ジフェノールムリスレロン、またはラパマイシンを使用する、FK506二量体、VP16、またはp65を含む。誘導系は、Invitrogen、Clontech、およびAriadから市販されている。
【0109】
オペロンと共にリプレッサーを含む、調節性プロモーターも使用されうる。一実施形態では、E.coliに由来するlacリプレッサーは、lacオペレーターを保有する哺乳動物細胞プロモーターからの転写を調節する転写モジュレーター(M.Brownら、Cell、49巻:603~612(1987);GossenおよびBujard(1992);M.Gossenら、Natl.Acad.Sci.USA、89巻:5547~5551(1992))であって、哺乳動物細胞における遺伝子発現を制御するように、テトラサイクリンリプレッサー(tetR)を、転写活性化因子(VP 16)と組み合わせて、tetR-哺乳動物細胞転写活性化因子融合タンパク質である、tTa(tetR-VP 16)を創出し、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)主要中期-早期プロモーターに由来する、tetOを保有する最小プロモーターと組み合わせて、tetR-tetオペレーター系を創出する転写モジュレーターとして機能しうる。一実施形態では、テトラサイクリン誘導性スイッチが使用される。テトラサイクリンリプレッサー(tetR)は、tetR-哺乳動物細胞転写因子融合誘導体ではなく、単独で、テトラサイクリンオペレーターが、CMVIEプロモーターのTATAエレメントの下流に、適正に位置した場合に、哺乳動物細胞における遺伝子発現を調節する、強力なトランス型モジュレーターとして機能しうる(Yaoら、Human Gene Therapy、10巻(16号):1392~1399(2003))。このテトラサイクリン誘導性スイッチの、1つの特定の利点は、その調節効果を達成するのに、一部の場合には、細胞に毒性でありうる、テトラサイクリンリプレッサー-哺乳動物細胞トランス型活性化因子またはリプレッサー融合タンパク質(Gossenら、Natl.Acad.Sci.USA、89巻:5547~5551(1992);Shockettら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92巻:6522~6526(1995))の使用を要求しないことである。
【0110】
加えて、ベクターは、例えば、以下:哺乳動物細胞内の、安定的トランスフェクト細胞または一過性トランスフェクト細胞の選択のためのネオマイシン遺伝子などの選択用マーカー遺伝子;高レベルの転写のための、ヒトCMVの中期/早期遺伝子に由来するエンハンサー/プロモーター配列;mRNAの安定性のための、SV40に由来する転写終結シグナルおよびRNAプロセシングシグナル;SV40ポリオーマ複製起点、および適正なエピソーム内の複製のためのColE1;多用途の多重クローニング部位である、内部リボソーム侵入部位(IRES);ならびにセンスRNAおよびアンチセンスRNAのin vitro転写のための、T7 RNAプロモーターおよびSP6 RNAプロモーターの一部または全部を含有しうる。当技術分野では、トランス遺伝子を含有するベクターを作製するのに適するベクターおよび方法が周知であり、市販されている。
【0111】
本明細書で記載される方法を実施するのに有用なポリアデニル化シグナルの例は、ヒトコラーゲンIポリアデニル化シグナル、ヒトコラーゲンIIポリアデニル化シグナル、およびSV40ポリアデニル化シグナルを含むがこれらに限定されない。
【0112】
抗体のうちのいずれかをコードする核酸を含む、1つまたは複数のベクター(例えば、発現ベクター)は、抗体を作製するのに適する宿主細胞に導入されうる。宿主細胞は、抗体またはその任意のポリペプチド鎖の発現に適切な条件下で培養されうる。このような抗体またはそのポリペプチド鎖は、従来の方法、例えば、アフィニティー精製を介して、培養細胞から(例えば、細胞または培養物上清から)回収されうる。必要な場合、抗体のポリペプチド鎖は、抗体の産生を可能とする適切な時間にわたり、適切な条件下でインキュベートされうる。
【0113】
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗体を調製するための方法は、本明細書でもまた記載される、抗ガレクチン9抗体の重鎖および軽鎖の両方をコードする、組換え発現ベクターを伴う。組換え発現ベクターは、従来の方法、例えば、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションにより、適切な宿主細胞(例えば、dhfr-CHO細胞)に導入されうる。陽性形質転換体宿主細胞は、細胞または培養培地から回収されうる抗体を形成する、2つのポリペプチド鎖の発現を可能とするのに適切な条件下で選択および培養されうる。必要な場合、宿主細胞から回収される2つの鎖は、抗体の形成を可能とするのに適切な条件下でインキュベートされうる。
【0114】
一例では、一方は、抗ガレクチン9抗体の重鎖をコードし、他方は、抗ガレクチン9抗体の軽鎖をコードする、2つの組換え発現ベクターが提供される。2つの組換え発現ベクターのいずれも、従来の方法、例えば、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションにより、適切な宿主細胞(例えば、dhfr-CHO細胞)に導入されうる。代替的に、発現ベクターの各々は、適切な宿主細胞に導入されうる。陽性形質転換体は、抗体のポリペプチド鎖の発現を可能とする、適切な条件下で選択および培養されうる。2つの発現ベクターが、同じ宿主細胞に導入される場合、その中で産生される抗体は、宿主細胞または培養培地から回収されうる。必要な場合、ポリペプチド鎖は、宿主細胞または培養培地から回収され、次いで、抗体の形成を可能とするのに適切な条件下でインキュベートされうる。2つの発現ベクターが、異なる宿主細胞に導入される場合、これらの各々は、対応する宿主細胞または対応する培養培地から回収されうる。次いで、2つのポリペプチド鎖は、抗体の形成に適切な条件下でインキュベートされうる。
【0115】
標準的な分子生物学法は、組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞にトランスフェクトし、形質転換体について選択し、宿主細胞を培養し、抗体を、培養培地から回収するのに使用される。例えば、一部の抗体は、プロテインAカップリングマトリックスまたはプロテインGカップリングマトリックスを伴うアフィニティークロマトグラフィーにより単離されうる。
【0116】
本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体の重鎖、軽鎖、またはこれらの両方をコードする核酸のうちのいずれか、このような核酸を含有するベクター(例えば、発現ベクター);およびベクターを含む宿主細胞は、本開示の範囲内にある。
【0117】
このようにして調製された抗ガレクチン9抗体は、ガレクチン9の生物学的活性の軽減、改善、または中和が検出および/または測定される、当技術分野で公知の方法を使用して特徴付けられうる。例えば、一部の実施形態では、ELISA型アッセイが、デクチン1シグナル伝達またはTIM-3シグナル伝達の、ガレクチン9を介する阻害の、定性的測定または定量的測定に適する。
【0118】
抗ガレクチン9抗体の生体活性は、候補抗体を、デクチン1およびガレクチン9と共にインキュベートし、以下の特徴:(a)デクチン1とガレクチン9との結合、結合により媒介されるシグナル伝達の阻害;(b)固形腫瘍の任意の側面の阻止、改善、または処置;(c)デクチン1活性化の遮断または低下;(d)ガレクチン9の合成、産生、または放出の阻害(低減)のうちのいずれか1つまたは複数をモニタリングすることにより検証されうる。代替的に、上記で記載されたプロトコールを使用して、抗ガレクチン9抗体の生体活性を検証するのに、TIM-3が使用されうる。代替的に、上記で記載されたプロトコールを使用して、抗ガレクチン9抗体の生体活性を検証するのに、CD206が使用されうる。
【0119】
一部の実施形態では、生体活性または有効性は、対象において、例えば、末梢および腫瘍内におけるT細胞比、T細胞の活性化を測定することにより、またはマクロファージ表現型解析により評価される。
【0120】
抗ガレクチン9抗体の生体活性を決定する、さらなるアッセイは、(従来の)CD8+ T細胞およびCD4+ T細胞の活性化の測定(in vitroアッセイまたはin vivoアッセイにおいて、例えば、炎症性サイトカインレベル、例えば、IFNガンマ、TNFアルファ、CD44、ICOS、グランザイムB、パーフォリン、IL2(上方調節);CD26LおよびIL-10(下方調節)を測定することによる);マクロファージの、例えば、M2表現型から、M1表現型へのリプログラミング(例えば、MHCIIの上昇、CD206の低減、TNF-アルファおよびiNOSの上昇)の測定(in vitroまたはin vivoにおける)を含むが、代替的に、ADCCのレベルは、例えば、本明細書で記載される、in vitroアッセイにおいても評価されうる。
【0121】
医薬組成物
本明細書で記載される、抗ガレクチン9抗体のほか、コード核酸または核酸セット、このような核酸を含むベクター、またはベクターを含む宿主細胞は、標的疾患の処置における使用のための医薬組成物を形成するように、薬学的に許容される担体(賦形剤)と混合されうる。「許容可能な」とは、担体は、組成物の有効成分と適合性であり(好ましくは、有効成分を安定化させることが可能であり)、処置される対象に対して、有害ではないことを意味する。薬学的に許容される賦形剤(担体)は、当技術分野で周知の緩衝液を含む。例えば、「Remington:Science and Practice of Pharmacy」、20版(2000)、Lippincott Areiams and Wilkins、K.E.Hoover編を参照されたい。
【0122】
本方法で使用される医薬組成物は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態にある、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤を含みうる(「Remington:Science and Practice of Pharmacy」、20版(2000)、Lippincott Areiams and Wilkins、K.E.Hoover編)。許容可能な担体、賦形剤、または安定化剤は、一般に、使用される投与量および濃度で、レシピエントに対して、非毒性であり、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む、抗酸化剤;保存剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノールアルコール、ブチルアルコール、またはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルチノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリシンなどのアミノ酸;単糖、二糖、およびグルコース、マンノース、もしくはデキストランを含む、他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;ならびに金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。一部の例では、本明細書で記載される医薬組成物は、Epsteinら(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82巻:3688;Hwangら(1980)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77巻:4030;ならびに米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号において記載されている方法など、当技術分野で公知の方法により調製されうる、抗体(またはコード核酸)を含有するリポソームを含む。循環時間が増強されたリポソームについては、米国特許第5,013,556号において開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を伴う逆相蒸発法により作出されうる。所望の直径を伴うリポソームをもたらすように、リポソームは、規定された小孔径のフィルターを通して押し出れる。
【0123】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体またはコード核酸(複数可)は、例えば、コアセルベーション法により、または界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)内、またはマクロエマルジョン中の、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセル内またはゼラチンマイクロカプセル内およびポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル内に封入される。当技術分野では、このような技法について公知であり、例えば、「Remington:Science and Practice of Pharmacy」、20版、Mack Publishing(2000)を参照されたい。
【0124】
他の例では、本明細書で記載される医薬組成物は、持続放出フォーマットで製剤化されうる。適切な持続放出調製物の例は、抗体を含有する、固体の疎水性ポリマーによる半透性マトリックスであって、成型品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態にあるマトリックスを含む。持続放出マトリックスの例は、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸と7-エチル-L-グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーと、酢酸ロイプロリドとから構成される注射用マイクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、イソ酪酸酢酸スクロース、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。
【0125】
in vivoにおける投与のために使用される医薬組成物は、滅菌でなければならない。これは、例えば、滅菌濾過膜を介する濾過により、たやすく達せられる。治療用抗体組成物は、一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、静脈内注射用溶液バッグ、または皮下注射用注射針で穿刺可能な止栓を有するバイアルに入れられる。
【0126】
本明細書で記載される医薬組成物は、経口投与、非経口投与、もしくは直腸内投与、または吸入もしくは吹送による投与のための、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、顆粒、溶液もしくは懸濁液、坐剤など、単位用量の剤形でありうる。
【0127】
錠剤などの固体組成物を調製するために、主要有効成分は、本発明の化合物、または非毒性で薬学的に許容されるその塩の均一な化合物を含有する、固体の前製剤組成物を形成するように、医薬担体、例えば、トウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、ソルビトール、滑石、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、二リン酸カルシウム、またはガムなど、従来の錠剤成分、および他の医薬希釈剤、例えば、水と混合されうる。これらの前製剤組成物を、均一であると称する場合、組成物が、錠剤、丸剤、カプセルなど、有効な単位剤形に、たやすく細分されうるように、有効成分が、組成物全体にわたり、一様に分散していることが意図される。次いで、この固体前製剤組成物が、本発明の有効成分0.1~約500mgを含有する、上記で記載した種類の単位剤形に、細分される。新規の組成物の錠剤または丸剤は、作用の延長の利点を有する剤形をもたらすように、コーティイングされる場合もあり、他の形で複合化される場合もある。例えば、錠剤または丸剤は、後者が、前者を包み込む形態にある、内部投与成分および外部投与成分を含みうる。2つの成分は、胃内の崩壊に抵抗し、内部成分が、無傷のまま、十二指腸に通過するか、または放出を遅らせることを可能とするのに用いられる、腸溶性層で隔てられる場合がある。このような腸溶性層またはコーティングには、多数のポリマー酸、およびポリマー酸の、シェラック、セチルアルコール、および酢酸セルロースなどの材料との化合物を含む、様々な材料が使用されうる。適切な表面活性剤は、特に、ポリオキシエチレンソルビタン(例えば、Tween(商標)20、40、60、80、または85)、および他のソルビタン(例えば、Span(商標)20、40、60、80、または85)などの非イオン性薬剤を含む。表面活性剤を伴う組成物は、0.05~5%の間の表面活性剤を含むと好都合であり、0.1~2.5%の間でありうる。必要な場合は、他の成分、例えば、マンニトールまたは他の薬学的に許容される媒体も添加されうることが察知される。
【0128】
適切なエマルジョンは、Intrafat(商標)、Liposyn(商標)、Infonutrol(商標)、Lipofundin(商標)、およびLipiphysan(商標)など、市販の脂肪エマルジョンを使用して調製されうる。有効成分は、あらかじめ混合されたエマルジョン組成物中に溶解する場合もあり、代替的に、油(例えば、ダイズ油、ヒマワリ油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、またはアーモンド油)中に溶解する場合もあり、リン脂質(例えば、鶏卵リン脂質、ダイズリン脂質、またはダイズレシチン)および水と混合すると、エマルジョンが形成されうる。エマルジョンの毒性を調整するように、他の成分、例えば、グリセロールまたはグルコースも添加されうることが察知される。適切なエマルジョンは、典型的に、最大で、20%、例えば、5~20%の間の油を含有する。脂肪エマルジョンは、0.1~1.0.im、特に、0.1~0.5.imの間の脂肪液滴を含むことが可能であり、5.5~8.0の範囲のpHを有しうる。
【0129】
エマルジョン組成物は、抗体を、Intrafat(商標)またはその成分(ダイズ油、鶏卵リン脂質、グリセロール、および水)と混合することにより調製されるエマルジョン組成物でありうる。
【0130】
吸入または吹送のための医薬組成物は、薬学的に許容される、水性溶媒中もしくは有機溶媒中の溶液および懸濁液、またはこれらの化合物、および粉末を含む。液体組成物または固体組成物は、上記で明示された、薬学的に許容される、適切な賦形剤を含有しうる。一部の実施形態では、組成物は、局所効果または全身効果のための、経口経路または経鼻呼吸器経路投与される。
【0131】
滅菌であることが好ましい、薬学的に許容される溶媒中の組成物は、ガスの使用により噴霧されうる。噴霧溶液は、噴霧化デバイスから直接吸入される場合もあり、噴霧化デバイスが、顔用マスク、テント、または間欠的陽圧型吸入機に取り付けられる場合もある。溶液組成物、懸濁液組成物、または粉末組成物は、好ましくは、製剤を、適切な方式で送達するデバイスから、経口投与される場合もあり、経鼻投与される場合もある。
【0132】
処置法
本開示は、抗ガレクチン抗体のうちのいずれか、例えば、G9.2-17、例えば、G9.2-17 IgG4を、単独で、または抗PD-1抗体などのチェックポイント阻害剤と組み合わせて使用して、PDA、CRC、HCC、および胆管がんなどの固形腫瘍を処置するための方法を提供する。本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体のうちのいずれかは、本明細書で記載される方法のうちのいずれかにおいて使用されうる。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、G9.2-17である。このような抗体は、ガレクチン9と関連する疾患を処置するために使用されうる。一部の態様では、本発明は、がんを処置する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、がんと関連する1つまたは複数の症状を軽減するか、改善するか、または消失させる方法を提供する。
【0133】
一部の実施形態では、本開示は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の抗ガレクチン9抗体、または有効量の、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体、もしくはその抗原結合性断片を含む医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、参照抗体G9.2-17と同じ重鎖CDR配列および/または同じ軽鎖CDR配列を有する抗体である。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、参照抗体G9.2-17と同じVH配列およびVL配列を有する抗体である。一部の実施形態では、このような抗体は、IgG1分子(例えば、野生型IgG1定常領域、または本明細書で記載される突然変異体など、その突然変異体を有する)である。代替的に、抗体は、IgG4分子(例えば、野生型IgG4定常領域、または本明細書で開示される突然変異体など、その突然変異体を有する)である。一部の実施形態では、抗体は、配列番号1として示された軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2として示された軽鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号3として示された軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ/または配列番号4として示された重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5として示された重鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号6として示された重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7を含む重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7を含む重鎖可変領域および配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号19を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号15を含む軽鎖を含む。具体例では、本明細書で使用される抗ガレクチン9抗体は、配列番号19の重鎖および配列番号15の軽鎖を有する。一部の実施形態では、抗体は、G9.2-17 IgG4である。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、対象に約1mg/kg~約32mg/kgの用量で投与され、例えば、用量は、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、および16mg/kgから選択されうる。一部の実施形態では、抗体は、2週間ごとに1回、例えば、静脈内注入を介して投与される。一部の実施形態では、方法は、対象に、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD1抗体を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、固形腫瘍は、膵腺がん(PDA)、結腸直腸がん(CRC)、肝細胞がん(HCC)、または胆管がん(CCA)から選択され、一部の実施形態では、固形腫瘍は、転移性腫瘍である。
【0134】
また、固形腫瘍(例えば、本明細書で記載される固形腫瘍であり、転移性固形腫瘍を含む)の処置における使用のための医薬組成物、および固形腫瘍を処置するための医薬を製造するための、抗ガレクチン9抗体のうちのいずれかの使用も本開示の範囲内にあり、この場合、一部の実施形態では、本明細書で開示される使用は、これらもまた、本明細書で開示される、処置条件(例えば、用量、投与レジメン、投与経路など)のうちの1つまたは複数を伴う。一部の実施形態では、固形腫瘍を処置するための医薬を製造するための使用のための抗体は、配列番号1として示された軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2として示された軽鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号3として示された軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ/または配列番号4として示された重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5として示された重鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号6として示された重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7を含む鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号8を含む、軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7を含む重鎖可変領域および配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号19を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号15を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号19を含む重鎖および配列番号15を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、G9.2-17 IgG4である。一部の実施形態では、抗ガレクチン9固形腫瘍を処置するための医薬を製造するための使用のための抗体は、対象に約1mg/kg~約32mg/kgの用量で投与され、例えば、用量は、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、および16mg/kgから選択されうる。一部の実施形態では、固形腫瘍を処置するための医薬を製造するための使用のための抗体は、2週間ごとに1回、例えば、静脈内注入を介して投与される。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、2週間ごとに1回、1サイクルにわたるか、2週間ごとに1回、2サイクルにわたるか、2週間ごとに1回、3サイクルにわたるか、2週間ごとに1回、4サイクルにわたるか、または2週間ごとに1回、4サイクルを超える投与される。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、2週間ごとに1回、4サイクルにわたるか投与される。一部の実施形態では、処置の持続期間は、12~24か月間、またはこれを超える期間である。一部の実施形態では、サイクルは、3か月間~6か月間、もしくは6か月間~12か月間、もしくは12か月間~24か月間、またはこれを超える持続期間にわたる。一部の実施形態では、サイクルの長さは、例えば、一時的に改変される場合もあり、より長い持続期間、例えば、3週間または4週間にわたり、恒久的に改変される場合もある。一部の実施形態では、使用は、対象に、例えば、本明細書で記載されるレジメンに従い投与される、本明細書で記載される、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD1抗体を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、固形腫瘍は、膵腺がん(PDA)、結腸直腸がん(CRC)、肝細胞がん(HCC)、または胆管がん(CCA)から選択され、一部の実施形態では、固形腫瘍は、転移性腫瘍である。
【0135】
ガレクチン9の腫瘍促進性作用は、免疫細胞との相互作用(例えば、TIM-3、CD44、および41BBを介する、リンパ細胞との相互作用、ならびにデクチン1およびCD206を介する、マクロファージとの相互作用)に媒介されることを踏まえ、ガレクチン9は、多数の腫瘍内で発現されることを踏まえると、ガレクチン9をターゲティングすること、例えば、ガレクチン9結合性抗体を使用して、その受容体との相互作用を阻害することは、様々な異なる腫瘍型にわたり適用されうる治療法をもたらす。
【0136】
一部の実施形態では、本開示は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の、G9.2-17 IgG4を含むがこれらに限定されない、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。一部の例では、本明細書で開示される方法は、膵がん、例えば、膵腺がん(PDA)を有するヒト患者に適用される。一部の場合に、PDA患者は、転移性がんを有しうる。一部の例では、本明細書で開示される方法は、結腸直腸がん(CRC)を有するヒト患者に適用される。一部の実施形態では、結腸直腸がんは、転移性である。一部の例では、本明細書で開示される方法は、肝細胞がん黒色腫を有するヒト患者に適用される。一部の実施形態では、肝細胞がんは、転移性である。他の例では、本明細書で開示される方法は、胆管がんを有するヒト患者に適用される。一部の実施形態では、胆管がんは、転移性である。
【0137】
膵腺がん(PDA)は、長期生存者が少数である、壊滅的な疾患である(Yadavら、Gastroenterology、2013、144巻、1252~1261)。発がん性炎症の併発の非存在下の、突然変異単独では、腫瘍形成に不十分であるので、PDAの進行では、炎症が最重要である(Guerraら、Cancer Cell、2007、11巻、291~302)。PDAでは、自然免疫と、獲得免疫とが、協同作用して、腫瘍の進行を促進する。特に、腫瘍微小環境(TME)内の、特異的な自然免疫のサブセットは、獲得免疫エフェクター細胞を、腫瘍許容性の表現型に教育する傾向がある。M2分極腫瘍関連マクロファージ(TAM)および骨髄樹状細胞(DC)を含む抗原提示細胞(APC)集団は、腫瘍保護性Th1細胞を支援する、免疫抑制性Th2細胞の発生を誘導する(Ochiら、J of Exp Med.、2012、209巻、1671~1687;Zhuら、Cancer Res.、2014、74巻、5057~5069)。同様に、骨髄由来抑制性細胞(MDSC)は、PDA内の、抗腫瘍CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の応答を失効化させ、転移性の進行を促進することが示されている(Connollyら、J Leuk Biol.、2010、87巻、713~725;Pylayeva-Guptaら、Cancer Cell、2012、21巻、836~847;Bayneら、Cancer Cell、2012、21巻、822~835)。
【0138】
膵がんは、典型的に、来院の遅れ、化学療法に対して比較的大きな耐性、ならびに有効な免疫療法およびターゲティング療法の欠如のために、依然として、処置することが困難な疾患である。2018年には、世界で、約455,000例の、新たな膵がん症例が報告されており、2040年まで、毎年、355,000例の新たな症例が発生すると推定され、年換算で、新たな症例とほぼ同数の死亡例が報告されている。膵がんは、2030年までに、米国で、がん関連死の2番目に多い死因となると推測されている。介入にも関わらず、現行の処置による、転移性膵がんを伴う患者の中央値平均余命が、1年未満である一方、大半の(80%に及ぶ)患者は、疾患が、治癒反応を凌駕する、進行/転移期に来院する。膵がんの検出および管理の進歩にも関わらず、転移性疾患の5年生存率10パーセントにとどまる。転移性膵がんのための、現行の標準治療は、主に、化学療法であるが、BRCA1/2突然変異腫瘍およびミスマッチ修復欠損腫瘍を伴う、顕著な少数の患者(10パーセントを下回る)は、PARP阻害剤から利益を得、潜在的には、抗PD-1療法から利益を得る場合がある。しかし、この疾患を伴う、圧倒的大部分の患者には、現在のところ承認されている免疫療法は、高度に免疫抑制性の環境のために、一般に不成功である。
【0139】
大腸がん、結腸がん、または直腸がんとしてもまた公知の結腸直腸がん(CRC)は、結腸および直腸に影響を及ぼす、任意のがんである。CRCは、腫瘍細胞の遺伝子変更により駆動され、腫瘍-宿主間相互作用によってもまた影響されることが公知である。近年の報告は、CRC内のある特定のTリンパ球亜集団の密度と、CRCにおける好適な臨床転帰との直接的な相関を裏付けることから、CRCの腫瘍進行の抑制における、T細胞媒介性免疫の主要な役割を裏書きしている。
【0140】
結腸直腸がんは、毎年、全世界で診断される、約700,000人の人々について、世界中で、最大がん量のうちの1つを提示する。標準治療の顕著な進歩にも関わらず、転移性結腸直腸がん(CRC)についての5年生存率は、依然として、約12パーセントにとどまる。CRCによる死は、次の20年以内に、ほぼ2倍になると予測されている。CRCのための、現行の標準治療は、抗血管新生治療および抗EGFRモダリティーと組み合わされ、かつ/または逐次行われる、化学療法レジメンである。加えて、現行の免疫療法は、それらの腫瘍が、ミスマッチ修復欠損を裏付ける患者のうちの20%未満において効果的であるに過ぎない(深甚かつ持続的な応答をもたらすにも関わらず)。マイクロサテライト安定性CRCにおける免疫療法についての転帰は、CRCを伴う患者の大部分において最適未満であり、新規の治療戦略が必要とされている。
【0141】
肝細胞がん(HCC)は、原発肝がんのうちの、最も一般的な種類である。肝細胞がんは、B型肝炎感染またはC型肝炎感染により引き起こされる肝硬変などの慢性肝疾患を伴う人々において、最も高頻度で生じる。HCCは、通例、慢性ウイルス感染に起因して、広範なリンパ球浸潤を伴う、硬変肝を伴う。多くの研究は、腫瘍浸潤エフェクターCD8+ T細胞、およびヘルパーT17(Th17)細胞が、手術に対する腫瘍反応の後における生存の改善と相関することを裏付けている。しかし、腫瘍浸潤エフェクターT細胞は、腫瘍の増殖および転移のコントロールに成功していない(Pangら、Cancer Immunol Immunother、2009;58巻:877~886)。
【0142】
胆管がんは、胆管に発するがんの群である。胆管がんは、一般に、肝臓との関連における、その位置により分類される。例えば、胆管がんの全症例のうちの10%未満を構成する、肝内胆管がんは、肝臓内の細胆管に発する。別の例では、胆管がん症例の過半数を構成する、肝門部胆管がん(クラッキン腫瘍としてもまた公知である)は、2つの主要な胆管が合流し、肝臓を離れる、肝門に発する。他の胆管がんは、肝臓外の胆管に始まる、遠位胆管がんとして分類される。
【0143】
胆管がんは、侵襲性腫瘍であり、大半の患者は、来院時に、進行期疾患を有する。胆管がんの発生率は、上昇しつつあり、有効な治療が、火急に必要とされている。ゲムシタビン+シスプラチンが、依然として、進行胆管がんのための、標準的な、全身性の、第1選択治療であるが、中央値生存は、1年未満であるので、所望されるべきことを多く残している。第1選択治療の不成功を経て、治療の決定を導くのに利用可能な証拠は乏しい。三重化学療法(nab-パクリタキセル+ゲムシタビン-シスプラチン)レジメンが、将来的に承認される見込みであるほか、選択コホート内のFGFR2阻害剤も承認される見込みである。しかし、ヒト臨床試験における、免疫療法に対する、最適未満の応答率は、胆管がんの優越が、非T細胞浸潤腫瘍微小環境を伴う免疫「コールド」腫瘍であることを含意する。実際、現行の免疫療法は、本出願時現在において、17パーセントを超える応答率をもたらしておらず、腫瘍免疫療法剤は承認されていない。
【0144】
上記において言及されたがんのうちのいずれかを有する対象は、規定の健康診断、例えば、検査室検査、臓器機能検査、遺伝子検査、介入手順(生検、手術)、任意の関与性のイメージングモダリティー、および全ての関与性のイメージングモダリティーにより同定されうる。一部の実施形態では、本明細書で記載される方法により処置される対象は、抗がん治療、例えば、化学療法、放射線療法、免疫療法、または手術を受けているか、またはこれらにかけられている、ヒトがん患者である。一部の実施形態では、対象は、既往の抗腫瘍免疫モジュレート剤を施されている。このような免疫モジュレート剤の非限定例は、抗PD1、抗PD-L1、抗CTLA-4、抗OX40、抗CD137などを含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、対象は、処置を通した疾患の進行を示す。他の実施形態では、対象は、処置に対して耐性(デノボ耐性または獲得耐性)である。一部の実施形態では、このような対象は、進行性(例えば、手術不能または転移性)悪性腫瘍を有すると裏付けられる。代替的に、または加えて、一部の実施形態では、対象は、対応する固形腫瘍を処置するために、臨床状況下で一般に使用される治療を指す、標準治療選択肢が利用可能でないか、またはこのような標準処置選択肢に不適格である。
【0145】
一部の場合に、対象は、不応性疾患、例えば、不応性PDA、不応性CRC、不応性HCC、または不応性胆管がんを有するヒト患者でありうる。本明細書で使用される、「不応性」とは、処置に応答しないか、または処置に対して耐性となる腫瘍を指す。一部の場合に、対象は、再発性疾患、例えば、再発性PDA、再発性CRC、再発性HCC、または再発性胆管がんを有するヒト患者でありうる。本明細書で使用される、「再発した」または「再発」とは、処置による改善(例えば、部分奏効または完全奏効)期間の後に再帰または進行する腫瘍を指す。
【0146】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法により処置されるヒト患者は、下記の実施例1で開示される、組入れ基準および除外基準のうちの1つまたは複数を満たす。例えば、ヒト患者は、18歳であるか、またはこれを超え;組織学的に確認された、切除不能の転移性または手術不能がん(例えば、標準治療選択肢を伴わない)を有し;平均余命が>3か月間であり;バイオマーカー解析のために利用可能な、最近の登録保管腫瘍試料(例えば、IHCにより評価される、ガレクチン9の腫瘍組織発現レベルについての登録保管種)を有し;RECIST v1.1に従い測定可能な疾患を有し;Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータスが0~1であるか、またはカルノフスキースコアが>70であり;標準治療選択肢が利用可能でなく;MSI-H(Microsatellite instability high)およびMSS(Microsatellite Stable)を有し;進行/転移状況下で、少なくとも1つの全身選択治療を施されており;十分な血液機能および末端臓器機能(下記の実施例1で規定される)を有し;存在する場合、脳転移のための処置が完了しており(下記の実施例1を参照されたい);過去1か月間以内に、活動性の感染症、および重篤な感染症の証拠を有さず;初回の抗Gal9抗体投与の前における、抗がん治療の最終回投与以来、少なくとも4週間または5半減期(いずれか、短い方)を経ており;該当する場合、骨転移のために、ビスホスホネート処置(ゾレドロン酸)またはデノスマブを継続していること。本処置下に置かれる、CCR患者対象またはCCA患者は、転移状況下で、少なくとも1つの既往の選択治療を施されている場合がある。一部の実施形態では、本処置下に置かれる、CCR患者対象またはCCA患者は、転移状況下で、少なくとも1つの既往の選択治療を施されたことがある。
【0147】
代替的に、または加えて、本明細書で開示される処置に適する対象は、以下:原発が未知の転移性がんを伴うと診断されていること;任意のコントロール不能の活動性出血を有すること、および出血体質(例えば、活性の消化性潰瘍疾患)を伴う任意の患者であること;抗ガレクチン9抗体投与から4週間以内または5半減期以内に、他の任意の治験薬を施されること;抗ガレクチン9抗体の1回目の投与から4週間以内に、骨痛または限局的に有痛の腫瘍塊の処置のためなど、限定的照射野に対する緩和放射線療法を除く、放射線療法を施されること;菌状増殖腫瘍塊を有すること;PDAC患者について、処置の開始後6か月未満に、既往のゲムシタビン含有レジメンを施されること、局所進行PDACを有する患者であること;NCI-CTCAE version 5.0による、>悪性度2で、活動性の、臨床的に重篤な感染を有すること;症候性または活動性の脳転移を有すること;CTCAEにおける、≧悪性度3の毒性を有すること(実施例1における詳細および例外を参照されたい);第2の悪性腫瘍歴を有すること(実施例1における例外を参照されたい);重度またはコントロール不能の全身疾患、うっ血性心不全の証拠を有すること;重篤な非治癒性創傷、活動性潰瘍、または非処置骨折を有すること;頻繁なドレナージ手順を要求する、コントロール不能の胸水、心膜液、または腹水を有すること;手術および/または放射線により、決定的に処置されていない、脊髄圧迫を有することのうちの1つまたは複数に該当しない場合がある。活動性であるか、または既に処置された、軟膜疾患;顕著な血管疾患を有すること;活動性の自己免疫障害を有すること(実施例1における例外を参照されたい);全身免疫抑制処置を要求すること;広範な鎮痛剤介入(経口剤および/またはパッチ剤)に不応性の腫瘍関連疼痛(>悪性度3)を有すること;ビスホスホネートの使用にも関わらず、コントロール不能の高カルシウム血症を有すること;既往のチェックポイント阻害剤療法(CIT)に帰せられる、悪性度4の免疫関連有害事象の任意の履歴を有すること;臓器移植(複数可)を施されていること、および/または透析を受けていること;HCC患者および/またはCCA患者について、処置前に、任意のアブレーション療法を施されていること;肝性脳症または重度の肝腺腫;チャイルド-ピュースコアが≧7であること;少なくとも1つの既往の全身選択治療を施される間に進行した、転移性肝細胞がんを有すること;ソラフェニブを拒絶するか、もしくは忍容しなかったことがある;または標準治療が、無効であるか、忍容不可能であるか、もしくは不適切であるかあると考えられるか、または有効な標準治療が利用可能でないこと。
【0148】
一部の場合に、対象は、ガレクチン9のレベルを、対照レベルと比べて上昇させているヒト患者である。ガレクチン9のレベルは、ヒト患者における、ガレクチン9の血漿レベルまたは血清レベルでありうる。他の例では、ガレクチン9のレベルは、細胞表面ガレクチン9のレベル、例えば、がん細胞上のガレクチン9のレベルでありうる。一例では、ガレクチン9のレベルは、例えば、下記の実施例で開示される方法により調製されうる、患者由来臓器型腫瘍スフェロイド(PDOT)内のがん細胞上で発現される、表面ガレクチン9のレベルでありうる。対照レベルとは、固形腫瘍を施されない、同じ種(例えば、ヒト)の対象のマッチ試料中の、ガレクチン9のレベルを指す場合がある。一部の例では、対照レベルは、健常対象におけるガレクチン9のレベルを表す。
【0149】
このような対象を同定するために、適切な生物学的試料は、固形腫瘍を有することが疑われる対象から得られる可能性があり、従来の方法、例えば、ELISAまたはFACSを使用して、この中に含有されるガレクチン9のレベル(例えば、遊離ガレクチン9、細胞表面発現ガレクチン9、または全ガレクチン9)を決定するように、生物学的試料が解析されうる。一部の実施形態では、例えば、オルガノイド培養物は、本明細書で記載される通りに調製され、対象におけるガレクチン9レベルを評価するように使用される。オルガノイド調製工程の一部として得られた、ある特定の画分に由来する単一細胞もまた、対象におけるガレクチン9レベルの評価に適する。一部の場合に、遊離形態にあるか、または細胞表面で発現される、ガレクチン9のレベルを測定するためのアッセイは、ガレクチン9に特異的に結合する(例えば、ヒトガレクチン9に特異的に結合する)抗体の使用を伴う。当技術分野で公知の抗ガレクチン9抗体のうちのいずれかは、上記で記載されたアッセイのうちのいずれかにおいて、適切性について調べられる場合があり、次いで、規定の方式のアッセイなどのアッセイにおいて使用されうる。一部の実施形態では、本明細書で記載される抗体(例えば、G9.2-17抗体)は、このようなアッセイにおいて使用されうる。一部の実施形態では、それらの各々の関与性の開示が、本明細書で言及される目的および対象物についての参照により組み込まれる、米国特許第10,344,091号およびWO2019/084553において記載された抗体である。一部の例では、抗ガレクチン9抗体は、Fab分子である。本明細書で開示される、ガレクチン9レベルを決定するためのアッセイ法もまた、本開示の範囲内にある。
【0150】
有効量の、本明細書で記載される医薬組成物は、全身経路または局所経路である、適切な経路を介する処置を必要とする対象(例えば、ヒト)に投与されうる。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、静脈内投与により、例えば、ボーラスとして、またはある時間にわたる連続注入により、筋内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路、皮下経路、動脈内経路、関節内経路、滑膜内経路、髄腔内経路、腫瘍内経路、経口経路、吸入経路、または外用経路により投与される。一実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、対象に、静脈内注入により投与される。ジェット噴霧器超音波噴霧器を含む、液体製剤のための市販の噴霧器が、投与に有用である。液体製剤は、直接噴霧される場合があり、凍結乾燥粉末は、再構成の後で噴霧されうる。代替的に、本明細書で記載される抗体は、フルオロカーボン製剤および用量計量型吸入器を使用して、エアゾール化される場合もあり、凍結乾燥粉末および微粉化粉末として吸入される場合もある。
【0151】
本明細書で使用される「有効量」とは、単独で、または1もしくは複数の他の活性薬剤と組み合わせて、対象に治療効果を付与するのに要求される、各活性薬剤の量を指す。一部の実施形態では、治療効果は、ガレクチン9の活性および/または量/発現の低減、デクチン1シグナル伝達の低減、デクチン1シグナル伝達の低減、デクチン1シグナル伝達の低減、または腫瘍微小環境内の抗腫瘍免疫応答の上昇である。抗腫瘍応答の上昇の非限定例は、エフェクターT細胞の活性化レベルの上昇、またはTAMの、M2表現型から、M1表現型への切替えを含む。場合によって、抗腫瘍応答は、ADCC応答の上昇を含む。ある量の抗体が、治療効果を達成したのかどうかの決定は、当業者に明らかであろう。当業者により認識されている通り、有効量は、処置される特定の状態、状態の重症度、個々の患者のパラメータであって、医療従事者の知見および専門知識の範囲内にある、年齢、健康状態、体格、性別、および体重、処置の持続期間、併用療法(存在する場合)の性格、具体的な投与経路などの因子を含むパラメータに応じて変化する。これらの因子は、当業者に周知であり、規定の実験だけで対処されうる。個々の成分またはそれらの組合せの最大用量、すなわち、穏当な医学的判断に従う、安全最高用量が使用されることが一般に好ましい。
【0152】
半減期など、経験的な検討項目は一般に、投与量の決定に寄与する。例えば、一部の場合には、抗体の半減期を延長し、抗体が宿主の免疫系に攻撃されることを防止するように、ヒト化抗体または完全ヒト抗体など、ヒト免疫系に適合性の抗体が使用されうる。投与頻度は、治療の経過にわたり決定および調整される場合があり、一般に、標的疾患/障害の処置、および/または抑制、および/または改善、および/または遅延に基づくが必ずしもそうではない。代替的に、抗体の持続的連続放出製剤が適切でありうる。当技術分野では、持続放出を達成するための、多様な製剤およびデバイスが公知である。
【0153】
一例では、本明細書で記載される抗体の投与量は、抗体の1回または複数回の投与を施された個体において、経験的に決定される。個体は、アンタゴニストの漸増投与量を施される。アンタゴニストの有効性を評価するために、疾患/障害の指標が追跡されうる。
【0154】
一部の場合に、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体(例えば、G9.2-17)は、対象に、適切な用量、例えば、約1~約32mg/kgで投与されうる。例は、1mg/kg~3mg/kg、3mg/kg~4mg/kg、4mg/kg~8mg/kg、8mg/kg~12mg/kg、12mg/kg~16mg/kg、16mg/kg~20mg/kg、20mg/kg~24mg/kg、24mg/kg~28mg/kg、または28mg/kg~32mg/kg(例えば、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、21mg/kg、22mg/kg、23mg/kg、24mg/kg、25mg/kg、26mg/kg、27mg/kg、28mg/kg、29mg/kg、30mg/kg、31mg/kg、または32mg/kg)、またはこれらの範囲内の、任意の増分を含む。一部の実施形態では、ガレクチン9抗体は、2mg/kgで投与される。一部の実施形態では、ガレクチン9抗体は、4mg/kgで投与される。一部の実施形態では、ガレクチン9抗体は、8mg/kgで投与される。一部の実施形態では、ガレクチン9抗体は、12mg/kgで投与される。一部の実施形態では、ガレクチン9抗体は、16mg/kgで投与される。一部の場合に、抗ガレクチン9抗体の複数回投与は、対象に、適切な間隔またはサイクルで、例えば、2~4週間ごと(例えば、2、3、または4週間ごと)に1回実施されうる。処置は、適切な期間、例えば、最長で3か月後まで、最長で6か月後まで、もしくは最長で12か月後まで、または最長で24か月後まで持続しうる。
【0155】
具体的な実施形態では、間隔またはサイクルは、2週間である。一部の実施形態では、レジメンは、2週間ごとに1回、1サイクルにわたるか、2週間ごとに1回、2サイクルにわたるか、2週間ごとに1回、3サイクルにわたるか、2週間ごとに1回、4サイクルにわたるか、または2週間ごとに1回、4サイクルを超える。一部の実施形態では、処置は、2週間ごとに1回1~3か月間にわたるか、2週間ごとに1回3~6か月間にわたるか、2週間ごとに1回6~12か月間にわたるか、もしくは2週間ごとに1回12~24か月間にわたるか、またはこれを超える期間にわたる。
【0156】
具体的な実施形態では、間隔またはサイクルは、3週間である。一部の実施形態では、レジメンは、3週間ごとに1回、1サイクルにわたるか、3週間ごとに1回、2サイクルにわたるか、3週間ごとに1回、3サイクルにわたるか、3週間ごとに1回、4サイクルにわたるか、または3週間ごとに1回、4サイクルを超える。一部の実施形態では、処置は、3週間ごとに1回1~3か月間にわたるか、3週間ごとに1回3~6か月間にわたるか、3週間ごとに1回6~12か月間にわたるか、もしくは3週間ごとに1回12~24か月間にわたるか、またはこれを超える期間にわたる。
【0157】
具体的な実施形態では、間隔またはサイクルは、4週間またはこれを超える期間である。一部の実施形態では、レジメン4週間もしくはこれを超える期間ごとに1回、1サイクルにわたるか、4週間もしくはこれを超える期間ごとに1回、2サイクルにわたるか、4週間もしくはこれを超える期間ごとに1回、3サイクルにわたるか、4週間もしくはこれを超える期間ごとに1回、4サイクルにわたるか、または4週間もしくはこれを超える期間ごとに1回、4サイクルを超えるサイクルにわたる。一部の実施形態では、処置4週間もしくはこれを超える期間ごとに1回、1~3か月間にわたるか、4週間もしくはこれを超える期間ごとに1回、3~6か月間にわたるか、4週間もしくはこれを超える期間ごとに1回、6~12か月間にわたるか、もしくは4週間もしくはこれを超える期間ごとに1回、12~24か月間にわたるか、またはこれを超える期間にわたる。一部の実施形態では、処置は、多様な時点、例えば、2週間後、3週間後、4週間後、または4週間を超える期間後の組合せにおける処置の組合せである。一部の実施形態では、処置間隔は、処置に対する患者の応答に従い調整される。一部の実施形態では、投与量(複数可)は、処置に対する患者の応答に従い調整される。一部の実施形態では、投与量は、処置間隔間で変更される。一部の実施形態では、処置は、一時的に、停止する場合がある。
【0158】
一部の例では、抗ガレクチン9抗体は、本明細書で開示される標的である固形腫瘍(例えば、PDA、CRC、HCC、または胆管がん)を有するヒト患者に、静脈内注入を介して、約3mg/kg、2週間ごとに1回の用量で投与される。他の例では、抗ガレクチン9抗体は、標的である固形腫瘍を有するヒト患者に、静脈内注入を介して、約15mg/kg、2週間ごとに1回の用量で投与される。
【0159】
「約」または「およそ」という用語は、当業者により決定される、特定の値についての、許容可能な誤差範囲内であって、値がどのようにして測定または決定されるのか、すなわち、測定系の限界に、部分的に依存する誤差範囲内を意味する。例えば、「約」は、当技術分野における慣行に従い、許容可能な標準偏差の範囲内を意味しうる。代替的に、「約」は、所与の値の、最大で±20%、例えば、最大で±10%、より好ましくは、最大で±5%であり、さらにより好ましくは、最大で±1%の範囲も意味しうる。代替的に、特に、生物学的系または生物学的過程に関して、「約」という用語は、値の桁数内、好ましくは2倍以内も意味しうる。特定の値が、本出願および特許請求の範囲において記載される場合、そうでないことが言明されない限りにおいて、「約」という用語は、特定の値について、許容可能な誤差範囲内を含意し、この文脈では、許容可能な誤差範囲内を意味する。
【0160】
一部の実施形態では、本開示の方法は、抗腫瘍活性を、処置前のレベル、または対照の対象におけるレベルと比較して、少なくとも約10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはこれを超えて増大させる(例えば、時間経過にわたり、細胞の増殖、腫瘍の増殖、腫瘍の体積、および/もしくは腫瘍量(burdenまたはload)を低減するか、または転移性病変の数を低減する)。一部の実施形態では、軽減は、医薬組成物の投与の前の対象における、細胞の増殖、腫瘍の増殖、および/または腫瘍の体積と、医薬組成物の投与の後におけるこれらの量とを比較することにより測定される。一部の実施形態では、対象におけるがんを処置または改善する方法は、がんの1つまたは複数の症状が、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれを超えて改善されることを可能とする。一部の実施形態では、医薬組成物の投与前、投与時、および投与後に、対象におけるがん性細胞および/またはバイオマーカーは、組織または臓器に由来する、血液、血清、血漿、尿、腹水、および/または生検などの生物学的試料中で測定される。一部の実施形態では、方法は、対象における腫瘍体積、サイズ、腫瘍量(loadまたはburden)を、検出不能なサイズ、または処置前における、対象の腫瘍体積、サイズ、腫瘍量(loadまたはburden)の約1%、2%、5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、もしくは90%未満に低減する、本発明の組成物の投与を含む。他の実施形態では、方法は、対象における細胞増殖速度または腫瘍増殖速度を、検出不能な速度、または処置前における速度の約1%、2%、5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、もしくは90%未満に低減する、本発明の組成物の投与を含む。他の実施形態では、方法は、対象における転移性病変の発生、または数もしくはサイズを、検出不能な比率、または処置前における比率の約1%、2%、5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、もしくは90%未満に低減する、本発明の組成物の投与を含む。
【0161】
本明細書で使用される「~を処置すること」という用語は、1つまたは複数の活性薬剤を含む組成物の、標的疾患もしくは標的障害、疾患/障害の症状、または疾患/障害に対する素因を有する対象への、障害、疾患もしくは障害の症状、または疾患もしくは障害に対する素因を治癒させるか、治すか、緩和するか、和らげるか、変更するか、修復するか、改善する(ameliorate)か、改善する(improve)か、またはこれに影響を及ぼすことを目的とする適用または投与を指す。
【0162】
標的疾患/障害を緩和することは、疾患の発症もしくは進行を遅延させること、または疾患の重症度を軽減すること、または生存を延長することを含む。疾患を緩和することは必ずしも、治癒結果を要求しない。本明細書で使用される、標的疾患または標的障害の発症「を遅延させること」とは、疾患の進行を延期し、妨害し、緩徐化し、遅らせ、妨げ、安定化させ、かつ/または先送りすることを意味する。この遅延は、処置される疾患および/または個体の履歴に応じて、時間の長さが変動する場合がある。疾患の発症「を遅延させる」か、もしくは緩和するか、または疾患の発病を遅延させる方法とは、所与の時間枠内における、疾患の1つ以上の症状の発症の可能性を、方法を使用しない場合と比較して低減し、かつ/または所与の時間枠内における、症状の程度を、方法を使用しない場合と比較して軽減する方法である。このような比較は、典型的に、統計学的に有意な結果をもたらすのに十分な、多数の対象を使用する臨床研究に基づく。
【0163】
疾患の「発症」または「進行」とは、疾患の初期発現および/またはその後の進行を意味する。疾患の発症は、検出可能な場合があり、当技術分野において周知の、標準的な臨床的技法を使用して評価されうる。しかし、発症とはまた、検出不能でありうる進行も指す。本開示の目的で、発症または進行とは、症状の生物学的経過を指す。「発症」は、発生、再発、および発病を含む。本明細書で使用される、標的疾患または標的障害の「発病」または「発生」は、初期発病および/または再発を含む。
【0164】
処置に対する応答、例えば、本明細書で記載される固形腫瘍の処置は、下記の実施例1、およびその内容が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、Eisenhowerら、「New response evaluation criteria in solid tumours:Revised RECIST guideline(version 1.1)」、European Journal Of Cancer、45巻(2009)、228~247において記載されている、RECIST基準または改訂版RECIST 1.1基準に従い評価されうる。
【0165】
一部の実施形態では、処置は、全奏効(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点における)を、例えば、処置の開始前のベースラインレベルと比較して、または処置を施されない対照群と比較して改善しうる。一部の実施形態では、処置は、完全奏効、部分奏効、または安定(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を結果としてもたらしうる。このような応答は、ある特定の期間にわたる、一時的な場合もあり、恒久的な場合もある。一部の実施形態では、処置は、完全奏効、部分奏効、または安定(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)の可能性を、例えば、処置を施されない対照群と比較して改善しうる。このような応答は、ある特定の期間にわたる、一時的な場合もあり、恒久的な場合もある。一部の実施形態では、処置は、進行(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)の、例えば、処置を施されない対照群と比較した軽減または緩和を結果としてもたらしうる。このような緩和は、一時的な場合もあり、恒久的な場合もある。
【0166】
部分奏効とは、処置に応答する、処置の開始前のベースラインレベルと比較した、腫瘍のサイズの減少、または体内のがんの広がり、すなわち、腫瘍量の減少である。例えば、RECIST奏効基準に従い、部分奏効は、ベースラインの合計の直径を参照に取る場合の、標的病変の直径の合計の、少なくとも30%の減少として規定される。進行とは、増殖するか、拡大するか、または増悪する疾患である。例えば、RECIST奏効基準に従い、進行は、標的病変の直径の合計の、少なくとも20%の増大が観察され、合計がまた、少なくとも5mmの絶対増大も裏付ける疾患を含む。加えて、1つまたは複数の新たな病変の出現もまた、進行であると考えられる。広がりまたは重症度が、処置の開始前のベースラインレベルと比較して、低下も、上昇もしない腫瘍は、安定であると考えられる。例えば、RECIST奏効基準に従い、安定は、研究中の最小の合計の直径を、参照に取る場合に、部分奏効にふさわしい、十分な退縮も、進行にふさわしい、十分な増大も見られない場合に生じる。
【0167】
したがって、一部の実施形態では、処置は、処置の開始前におけるベースラインの腫瘍サイズと比べて、恒久的に、または最小期間にわたり、全般的腫瘍サイズの低減、腫瘍サイズの維持(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を結果としてもたらしうる。一部の実施形態では、処置は、例えば、処置を施されない対照群と比較して、恒久的に、または最小期間にわたり、全般的腫瘍サイズの低減、腫瘍サイズの維持(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)の可能性の増大を結果としてもたらしうる。腫瘍サイズ、例えば、腫瘍の直径は、例えば、上記において言及された、Eisenhowerらにおいて記載されている、具体的な測定プロトコールに従い、多様なソフトウェアツールと組み合わせた、CT画像およびMRI画像による測定を含む、当技術分野で公知の方法に従い測定されうる。したがって、一部の実施形態では、腫瘍サイズは、定期的再病期診断スキャン(例えば、造影剤を伴うCT、造影剤を伴うMRI、PET-CT(診断用CT)、および/またはX線)において測定される。一部の実施形態では、腫瘍サイズの低減、腫瘍サイズの維持とは、標的病変のサイズを指す。一部の実施形態では、腫瘍サイズの低減、腫瘍サイズの維持とは、非標的病変のサイズを指す。ベースラインにおいて、RECIST 1.1に従い、1つを超える測定可能な病変が提示される場合、全ての病変は、全ての関与する臓器を表す、最大で、合計5つまでの病変(および臓器1つ当たり最大で2つの病変)が、標的病変として同定されるものとする。罹患リンパ節を含む、他の全ての病変(または疾患部位)は、非標的病変として同定されるものとする。
【0168】
一部の実施形態では、処置は、処置の開始前のベースラインレベルと比較した、腫瘍量の軽減、または腫瘍量の維持(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を結果としてもたらしうる。腫瘍量の低減は、ある特定の期間にわたる、一時的な場合もあり、恒久的な場合もある。一部の実施形態では、処置は、例えば、処置を施されない対照群と比較した、腫瘍量の軽減、または腫瘍量の維持の可能性の増大(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を結果としてもたらしうる。本明細書で使用される腫瘍量とは、全ての疾患部位を構成する、対象の体内における、がんの量、腫瘍のサイズまたは体積を指す。腫瘍量は、FDGポジトロン断層法(FDG-PET)、核磁気共鳴イメージング(MRI)、ならびに生物発光イメージング(BLI)および蛍光イメージング(FLI)を含む、光学イメージングを含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の方法を使用して測定されうる。
【0169】
一部の実施形態では、処置は、処置を施されない対照群と比較した、疾患の進行までの時間の増大、または無増悪生存期間の増大(例えば、処置開始の3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を結果としてもたらしうる。無増悪生存期間は、恒久的無増悪生存期間の場合もあり、ある特定の量の時間にわたる無増悪生存期間の場合もある。一部の実施形態では、処置は、処置を施されない対照群と比較した、無増悪生存期間(恒久的無増悪生存期間、あるいはある特定の量の時間、例えば、3、6、もしくは12か月間にわたる無増悪生存期間、または、例えば、処置開始の3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点測定される無増悪生存期間)の可能性の増大を結果としてもたらしうる。無増悪生存期間(PFS)は、臨床試験における無作為の割当てからの時間、例えば、処置の開始から、疾患の進行、または任意の原因による死までの時間として規定される。一部の実施形態では、処置は、例えば、ある特定の時間における、例えば、6または12か月後における、生存の延長、または生存の可能性の増大を結果としてもたらしうる。
【0170】
処置に対する応答、例えば、本明細書で記載される固形腫瘍の処置は、その内容が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、Seymourら、「iRECIST:guidelines for response criteria for use in trials」、The Lancet、18巻、2017年3月において記載されている、iRECIST基準に従い評価されうる。iRECISTは、具体的には、がん免疫療法試験における、改変RECIST 1.1基準の使用であって、一貫したデザインおよびデータ収集を確保する使用のために開発され、固形腫瘍の測定のための標準的手法に関するガイドライン、および免疫療法が使用される試験における使用のための、目的の腫瘍サイズの変化についての定義として使用されうる。iRECISTは、RECIST 1.1に基づく。iRECISTを使用して割り当てられる応答は、それらをRECIST 1.1を使用して割り当てられる応答から差別化するように、接頭辞である「i」(すなわち、免疫)(例えば、「免疫」完全奏効(iCR)または「免疫」部分奏効(iPR)、および「免疫」不確定進行(iUPD)または「免疫」確定進行(iCPD)または「免疫」安定(iSD))を有し、これらの全ては、Seymourらにおいて規定されている。
【0171】
したがって、一部の実施形態では、処置は、処置の開始前の、ベースラインにおける疾患のレベルと比較した、「免疫」完全奏効(iCR)、「免疫」部分奏効(iPR)、または「免疫」安定(iSD)(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を結果としてもたらしうる。「免疫」応答、例えば、iCR、iPR、またはiSDの軽減は、ある特定の期間にわたる、一時的な場合もあり、恒久的な場合もある。一部の実施形態では、処置は、完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、または安定(iSD)(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)の可能性を、例えば、処置を施されない対照群と比較して改善しうる。一部の実施形態では、処置は、不確定進行(iUPD)または確定進行(iCPD)(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)の、例えば、処置の開始前のベースラインと比較した、全般的軽減を結果としてもたらしうる。iUPDまたはiCPDの軽減は、ある特定の期間にわたる、一時的な場合もあり、恒久的な場合もある。一部の実施形態では、処置は、不確定進行(iUPD)または確定進行(iCPD)(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)の、全般的軽減の、例えば、処置を施されない対照群と比較して、より大きな可能性を結果としてもたらしうる。一部の実施形態では、処置は、iRECIST基準に従う、新たな病変の数(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)の、処置を施されない対照群と比較した全般的低減、または処置の開始前のベースラインと比較した全般的低減を結果としてもたらしうる。病変の軽減は、ある特定の期間にわたる、一時的な場合もあり、恒久的な場合もある。
【0172】
処置に対する応答はまた、血液中および腫瘍内の免疫表現型、サイトカインプロファイル(血清)、血液(血清または血漿)中の可溶性ガレクチン9レベル、免疫組織化学による、ガレクチン9の腫瘍組織(腫瘍細胞、間質細胞、免疫細胞)内の発現レベルおよび発現パターン、腫瘍遺伝子変異量(TMB)、PDL-1発現(例えば、免疫組織化学による)、ミスマッチ修復状態、または疾患に関与性の腫瘍マーカー(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)のうちの1つまたは複数によっても特徴付けられうる。このような腫瘍マーカーの非限定例は、Ca15-3、CA-125、CEA、CA19-9、アルファフェトタンパク質を含む。これらのパラメータは、処置の開始前のベースラインレベルと比較される場合もあり、処置を施されない対照群と比較される場合もある。
【0173】
一部の実施形態では、処置は、血液中または腫瘍内の、免疫細胞および免疫細胞マーカーのレベルの変化を結果としてもたらすことが可能であり、例えば、免疫活性化を結果としてもたらしうる。このような変化は、マルチプレックスのフローサイトメトリーおよびマルチプレックスの免疫組織化学など、当技術分野で公知の方法を使用して、患者の血液試料中および組織試料中で測定されうる。例えば、処置開始前のベースライン、および処置期間中の多様な時点において、PBMCの免疫表現型マーカーおよび免疫機能マーカーについてのパネルが評価されうる。表Aは、これらの評価法に有用なマーカーの非限定例を列挙する。フローサイトメトリー(FC)は、細胞の表現型および機能について解析する、えり抜きの技術を有する、迅速、かつ、高度に有益な方法であり、免疫表現型のモニタリングにおいて卓越している。FCは、血液など、複雑な化合物中の希少なサブセットを含む、多くの細胞のサブセットの特徴付けを可能とし、大量のデータを得るのに迅速な方法を表す。FCの利点は、高速、高感度、および高特異度である。免疫細胞亜型について解析し、分類するのに、標準化された抗体パネルおよび手順が使用されうる。マルチプレックスIHCは、腫瘍免疫コンテキストについて、免疫サブセットの数および位置の両方において記載する、目的の定量データをもたらす、強力なツール探索であり、単一の組織切片上で、複数のマーカーが評価されることを可能とする。コンピュータアルゴリズムは、発色型IHC法と、デジタル病理学法による染色とを組み合わせて、患者生検についての全スライド画像から、IHCベースのバイオマーカー含量を定量するのに使用されうる。
【0174】
【0175】
したがって、一部の実施形態では、処置は、表Aにおける免疫活性化マーカーなどの免疫活性化マーカーのモジュレーションを結果としてもたらし、例えば、処置は、(1)血漿中または腫瘍組織内のより多くのCD8細胞の増大、(2)血漿中または腫瘍組織内の調節性T細胞(Treg)の低減、(3)血漿中または腫瘍組織内のM1マクロファージの増大および(4)血漿中または腫瘍組織内のMDSCの減少、ならびに(5)血漿中または腫瘍組織内(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)のM2マクロファージの減少のうちの1つまたは複数を結果としてもたらす。一部の実施形態では、上記で記載されたか、または当技術分野で公知の技法を使用して評価されるマーカーは、CD4、CD8、CD14、CD11b/c、およびCD25から選択される。これらのパラメータは、処置の開始前のベースラインレベルと比較される場合もあり、処置を施されない対照群と比較される場合もある。
【0176】
一部の実施形態では、本明細書で記載される処置は、免疫促進性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの変化を結果としてもたらす。一部の実施形態では、本明細書で記載される処置は、(1)血漿中または腫瘍組織内のIFNガンマのレベルの上昇;(2)血漿中または腫瘍組織内のTNFアルファのレベルの上昇;(3)血漿中または腫瘍組織内のIL-10のレベル(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)の低下のうちの1つまたは複数を結果としてもたらす。これらのパラメータは、処置の開始前のベースラインレベルと比較される場合もあり、処置を施されない対照群と比較される場合もある。
【0177】
一部の実施形態では、サイトカインまたは免疫細胞の変化は、投与前の1回の腫瘍生検と、適切な時点において行われる反復生検との間で評価されうる。一部の実施形態では、サイトカインまたは免疫細胞の変化は、2回にわたる反復生検の間で評価されうる。一部の実施形態では、処置は、血液(血清または血漿)中の可溶性ガレクチン9レベル、または免疫組織化学による、ガレクチン9の腫瘍組織(腫瘍細胞、間質細胞、免疫細胞)内の発現レベルおよび発現パターン(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)のうちの1つまたは複数の変化を結果としてもたらす。一部の実施形態では、処置は、血液(血清または血漿)中の可溶性ガレクチン9レベル、または免疫組織化学による、ガレクチン9の腫瘍組織(腫瘍細胞、間質細胞、免疫細胞)内の発現レベルおよび発現パターン(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)のうちの1つまたは複数の低下を結果としてもたらす。これらのガレクチン9レベルは、処置の開始前のベースラインレベルと比較される場合もあり、処置を施されない対照群と比較される場合もある。
【0178】
一部の実施形態では、処置は、例えば、免疫組織化学により評価される、PDL-1発現の変化を結果としてもたらす。一部の実施形態では、処置は、疾患に関与性の、1つまたは複数の腫瘍マーカーの変化(増大または減少)(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を結果としてもたらす。このような腫瘍マーカーの非限定例は、Ca15-3、CA-125、CEA、CA19-9、アルファフェトタンパク質を含む。これらのパラメータは、処置の開始前のベースラインレベルと比較される場合もあり、処置を施されない対照群と比較される場合もある。
【0179】
一部の実施形態では、処置は、処置の開始前のベースラインと比較した、または処置を施されない対照群と比較した、生活の質および症状のコントロールの改善(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を結果としてもたらす。一部の実施形態では、改善は、本明細書の実施例1で記載されるECOGスケールにより測定されうる。
【0180】
上記の実施形態のうちのいずれかにおいて、処置は、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体を、単独で、またはチェックポイント阻害剤療法、例えば、抗PD-1抗体と組み合わせて投与するステップを含みうる。一部の実施形態では、本開示は、ヒト対象を含む対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、抗体は、配列番号1として示された軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2として示された軽鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号3として示された軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ/または配列番号4として示された重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5として示された重鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号6として示された重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7を含む重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号19を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号15を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、G9.2-17 IgG4である。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、対象に約1mg/kg~約32mg/kgの用量で投与され、例えば、用量は、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、および16mg/kgから選択されうる。一部の実施形態では、抗体は、2週間ごとに1回、例えば、静脈内注入を介して投与される。一部の実施形態では、方法は、対象に、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD1抗体を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、固形腫瘍は、膵腺がん(PDA)、結腸直腸がん(CRC)、肝細胞がん(HCC)、または胆管がん(CCA)から選択され、一部の実施形態では、固形腫瘍は、転移性腫瘍である。
【0181】
一部の実施形態では、本開示は、ヒト対象を含む対象における、例えば、RECIST 1.1.基準に従う全奏効(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を改善するための方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。RECIST 1.1.基準は、処置の開始前のベースラインレベルと比較される場合もあり、処置を施されない対照群と比較される場合もある。一部の実施形態では、本開示は、完全奏効、部分奏効、または安定(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を達成するための方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。これらの応答は、ある特定の期間にわたる、一時的な場合もあり、恒久的な場合もあり、処置の開始前のベースラインレベルと比較される場合もあり、処置を施されない対照群と比較される場合もある。
【0182】
一部の実施形態では、方法は、例えば、処置を施されない対照群と比較した、完全奏効、部分奏効、または安定(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定され;一時的または恒久的である)の可能性を改善しうる。一部の実施形態では、本開示は、例えば、処置を施されない対照群と比較して、または処置の開始前のベースラインと比較して、疾患の進行を緩和するか、または進行(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を軽減するための方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。緩和または軽減は、ある特定の期間にわたる、一時的な場合もあり、恒久的な場合もある。一部の実施形態では、抗体は、配列番号1として示された軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2として示された軽鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号3として示された軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ/または配列番号4として示された重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5として示された重鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号6として示された重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7を含む重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号19を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号15を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、G9.2-17 IgG4である。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、対象に約1mg/kg~約32mg/kgの用量で投与され、例えば、用量は、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、および16mg/kgから選択されうる。一部の実施形態では、抗体は、2週間ごとに1回、例えば、静脈内注入を介して投与される。一部の実施形態では、方法は、対象に、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD1抗体を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、固形腫瘍は、膵腺がん(PDA)、結腸直腸がん(CRC)、肝細胞がん(HCC)、または胆管がん(CCA)から選択され、一部の実施形態では、固形腫瘍は、転移性腫瘍である。
【0183】
一部の実施形態では、本開示は、ヒト対象を含む対象における腫瘍サイズ(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を、対象における処置の開始の前における、ベースラインの腫瘍サイズと比べて、恒久的に、または最小期間にわたり低減または維持する方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、ヒト対象を含む対象における腫瘍サイズ(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を、例えば、処置を施されない対照群と比較して、恒久的に、または最小期間にわたり低減または維持する可能性を改善するための方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、ヒト対象を含む対象における腫瘍量(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を、処置の開始前のベースラインレベルと比較して、または処置を施されない対照群と比較して低減または維持するための方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、腫瘍量(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を、例えば、処置を施されない対照群と比較して、低減または維持する可能性を増大させる方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。したがって、一部の実施形態では、腫瘍サイズおよび/または腫瘍量は、定期的再病期診断スキャン(例えば、造影剤を伴うCT、造影剤を伴うMRI、PET-CT(診断用CT)、および/またはX線)において測定される。一部の実施形態では、抗体は、配列番号1として示された軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2として示された軽鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号3として示された軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ/または配列番号4として示された重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5として示された重鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号6として示された重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7を含む重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号19を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号15を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、G9.2-17 IgG4である。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、対象に約1mg/kg~約32mg/kgの用量で投与され、例えば、用量は、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、および16mg/kgから選択されうる。一部の実施形態では、抗体は、2週間ごとに1回、例えば、静脈内注入を介して投与される。一部の実施形態では、方法は、対象に、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD1抗体を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、固形腫瘍は、膵腺がん(PDA)、結腸直腸がん(CRC)、肝細胞がん(HCC)、または胆管がん(CCA)から選択され、一部の実施形態では、固形腫瘍は、転移性腫瘍である。
【0184】
一部の実施形態では、本開示は、処置を施されない対照群と比較して、ヒト対象を含む対象における、疾患の進行までの時間を延長するか、または無増悪生存期間の時間(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を延長する方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。方法は、恒久的無増悪生存期間、またはある特定の量の時間にわたる無増悪生存期間を結果としてもたらしうる。一部の実施形態では、本開示は、無増悪生存期間の可能性(恒久的無増悪生存期間、またはある特定の量の時間にわたる無増悪生存期間(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を、処置を施されない対照群と比較して増大させる方法を提供する。一部の実施形態では、抗体は、配列番号1として示された軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2として示された軽鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号3として示された軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ/または配列番号4として示された重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5として示された重鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号6として示された重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7を含む重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号19を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号15を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、G9.2-17 IgG4である。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、対象に約1mg/kg~約32mg/kgの用量で投与され、例えば、用量は、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、および16mg/kgから選択されうる。一部の実施形態では、抗体は、2週間ごとに1回、例えば、静脈内注入を介して投与される。一部の実施形態では、方法は、対象に、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD1抗体を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、固形腫瘍は、膵腺がん(PDA)、結腸直腸がん(CRC)、肝細胞がん(HCC)、または胆管がん(CCA)から選択され、一部の実施形態では、固形腫瘍は、転移性腫瘍である。
【0185】
一部の実施形態では、本開示は、例えば、iRECIST基準に従う、ヒト対象を含む対象における全奏効(iOR)(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を改善するための方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、「免疫」完全奏効(iCR)、「免疫」部分奏効(iPR)、または「免疫」安定(iSD)(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を達成する方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、「免疫」完全奏効(iCR)、「免疫」部分奏効(iPR)、または「免疫」安定(iSD)(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)の可能性を改善しうる。一部の実施形態では、本開示は、疾患の進行を緩和するか、または進行を軽減する、例えば、不確定進行(iUPD)を低減するか、または確定進行(iCPD)を低減する(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)ための方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。これらの上述のiRECIST基準のうちのいずれかは、処置の開始前のベースラインレベルと比較される場合もあり、処置を施されない対照群と比較される場合もあり、応答は、ある特定の期間にわたる、一時的な場合もあり、恒久的な場合もある。一部の実施形態では、本開示は、ヒト対象を含む対象における、不確定進行(iUPD)または確定進行(iCPD)(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)の、全般的軽減の可能性を、例えば、処置を施されない対照群と比較して増大させる方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、iRECIST基準に従う、ヒト対象を含む対象における、新たな病変の数(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を低減するための方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。病変の数の低減は、処置の開始の前におけるベースラインレベルと比べた低減の場合もあり、処置を施されない対照群と比べた低減の場合もあり、軽減は、ある特定の期間にわたる、一時的な場合もあり、恒久的な場合もある。一部の実施形態では、抗体は、配列番号1として示された軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2として示された軽鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号3として示された軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ/または配列番号4として示された重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5として示された重鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号6として示された重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7を含む重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号19を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号15を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、G9.2-17 IgG4である。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、対象に約1mg/kg~約32mg/kgの用量で投与され、例えば、用量は、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、および16mg/kgから選択されうる。一部の実施形態では、抗体は、2週間ごとに1回、例えば、静脈内注入を介して投与される。一部の実施形態では、方法は、対象に、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD1抗体を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、固形腫瘍は、膵腺がん(PDA)、結腸直腸がん(CRC)、肝細胞がん(HCC)、または胆管がん(CCA)から選択され、一部の実施形態では、固形腫瘍は、転移性腫瘍である。
【0186】
一部の実施形態では、本開示は、対象における免疫応答をモジュレートする方法を提供する。本明細書で使用される、「免疫応答」という用語は、免疫細胞活性のモジュレーション、例えば、T細胞の活性化の影響を受ける、T細胞媒介性免疫応答、および/またはB細胞媒介性免疫応答を含む。本開示の一実施形態では、免疫応答は、T細胞媒介性である。本明細書で使用される、「~をモジュレートすること」という用語は、変化させること、または変更することを意味し、上方にモジュレートすること、および下方にモジュレートすることの両方を包摂する。例えば、「免疫応答をモジュレートすること」とは、1つまたは複数の免疫応答パラメータ(複数可)の状態を変化させるか、または変更することを意味する。T細胞媒介性免疫応答の例示的なパラメータは、T細胞のレベル(例えば、エフェクターT細胞の増大または減少)、およびT細胞の活性化のレベル(例えば、ある特定のサイトカインの産生の増大または減少)を含む。B細胞媒介性免疫応答の例示的なパラメータは、B細胞レベル、B細胞活性化レベル、およびB細胞媒介性抗体産生レベルの上昇を含む。
【0187】
免疫応答が、モジュレートされると、一部の免疫応答パラメータは、低下しうるが、他の免疫応答パラメータは、上昇しうる。例えば、一部の場合には、免疫応答をモジュレートすることは、1つまたは複数の免疫応答パラメータの上昇(または上方調節)、および1つまたは複数の、他の免疫応答パラメータの低下(または下方調節)を引き起こし、結果は、免疫応答の全般的増大、例えば、炎症性免疫応答の全般的増大である。別の例では、免疫応答をモジュレートすることは、1つまたは複数の免疫応答パラメータの上昇(または上方調節)、および1つまたは複数の、他の免疫応答パラメータの低下(または下方調節)を引き起こし、結果は、免疫応答の全般的減少、例えば、炎症性応答の全般的減少である。一部の実施形態では、全般的免疫応答の増大、すなわち、全般的炎症性免疫応答の増大は、腫瘍重量、腫瘍サイズ、もしくは腫瘍量の低減、または本明細書で記載される、任意のRECIST基準もしくはiRECIST基準により決定される。一部の実施形態では、全般的免疫応答の増大は、例えば、免疫促進性サイトカインのうちの、2つもしくはこれを超える、3つもしくはこれを超えるなど、または大部分を含む、1つまたは複数の免疫促進性サイトカイン(複数可)のレベル(複数可)の上昇(抗炎症性サイトカインおよび/もしくは免疫抑制性サイトカインのうちの1つもしくは複数、2つもしくはこれを超えるなど、または大部分、ならびに/あるいは最も強力な抗炎症性サイトカインまたは免疫抑制性サイトカインのうちの1つまたは複数が、減少するか、または一定を維持すること)により決定される。一部の実施形態では、全般的免疫応答の増大は、最も強力な免疫促進性サイトカインのうちの1つまたは複数のレベルの上昇(最も強力なサイトカインのうちの1つまたは複数を含む、1つまたは複数の抗炎症性サイトカインおよび/または免疫抑制性サイトカインが、減少するか、または一定を維持すること)により決定される。一部の実施形態では、全般的免疫応答の増大は、免疫抑制性サイトカインおよび/または抗炎症性サイトカインの大部分を含む、1つまたは複数のレベルの低下(例えば、最も強力な免疫促進性サイトカインを含む、免疫促進性サイトカインのうちの1つもしくは複数、または大部分のレベルが、上昇するか、または一定を維持すること)により決定される。一部の実施形態では、全般的免疫応答の増大は、最も強力な抗炎症性サイトカインおよび/または免疫抑制性サイトカインのうちの1つまたは複数のレベルの上昇(例えば、最も強力な免疫促進性サイトカインを含む、免疫促進性サイトカインのうちの1つもしくは複数、または大部分が、増大するか、または一定を維持すること)により決定される。一部の実施形態では、全般的免疫応答の増大は、上記のうちのいずれかの組合せにより決定される。また、1つの種類の免疫応答パラメータの増大(または上方調節)も、別の種類の免疫応答パラメータの、対応する減少(または下方調節)をもたらしうる。例えば、ある特定の免疫促進性サイトカインの産生の増大は、ある特定の抗炎症性サイトカインおよび/または免疫抑制性サイトカインの下方調節をもたらすことが可能であり、この逆もまた成り立つ。
【0188】
一部の実施形態では、本開示は、ヒト対象を含む対象における免疫応答(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)をモジュレートするための方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、ヒト対象を含む対象の血液中または腫瘍内における、本明細書の表Aで記載される免疫細胞および免疫細胞マーカーを含むがこれらに限定されない、免疫細胞および免疫細胞マーカーのレベルを、例えば、処置の開始前のベースラインレベルと比較して、または処置を施されない対照群と比較してモジュレートするための方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、モジュレーションの全般的結果は、免疫促進性免疫細胞の上方調節、および/または免疫抑制性免疫細胞の下方調節である。一部の実施形態では、本開示は、免疫細胞のレベルをモジュレートするための方法であって、モジュレートすることが、(1)血漿中または腫瘍組織内のCD8細胞を増大させること、(1)血漿中または腫瘍組織内のTregを低減すること、(3)血漿中または腫瘍組織内のM1マクロファージを増大させることおよび(4)血漿中または腫瘍組織内のMDSCを減少させること、ならびに(5)血漿中または腫瘍組織内のM2マクロファージを減少させることのうちの1つまたは複数を包摂し、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、このような免疫細胞のレベルを評価するマーカーは、CD4、CD8、CD14、CD11b/c、およびCD25を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、本開示は、ヒト対象を含む対象の血液中または腫瘍内における、免疫促進性サイトカインおよび免疫抑制性サイトカインのレベル(例えば、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を、例えば、処置の開始前のベースラインレベルと比較して、または処置を施されない対照群と比較してモジュレートする方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、モジュレーションの全般的結果は、免疫促進性サイトカインの上方調節、および/または免疫抑制性サイトカインの下方調節である。一部の実施形態では、本開示は、細胞内のサイトカインレベルをモジュレートするための方法であって、モジュレートすることが、(1)血漿中または腫瘍組織内の、IFNガンマのレベルを上昇させること;(2)血漿中または腫瘍組織内の、TNFアルファのレベルを上昇させること;(3)血漿中または腫瘍組織内の、IL-10のレベルを低下させることのうちの1つまたは複数を包摂する方法を提供する。一部の実施形態では、抗体は、配列番号1として示された軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2として示された軽鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号3として示された軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ/または配列番号4として示された重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5として示された重鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号6として示された重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7を含む重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号19を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号15を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、G9.2-17 IgG4である。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、対象に約1mg/kg~約32mg/kgの用量で投与され、例えば、用量は、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、および16mg/kgから選択されうる。一部の実施形態では、抗体は、2週間ごとに1回、例えば、静脈内注入を介して投与される。一部の実施形態では、方法は、対象に、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD1抗体を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、固形腫瘍は、膵腺がん(PDA)、結腸直腸がん(CRC)、肝細胞がん(HCC)、または胆管がん(CCA)から選択され、一部の実施形態では、固形腫瘍は、転移性腫瘍である。
【0189】
一部の実施形態では、本開示は、血液(血清または血漿)中の可溶性ガレクチン9レベル、または免疫組織化学による、ガレクチン9の腫瘍組織(腫瘍細胞、間質細胞、免疫細胞)内の発現レベルおよび発現パターン(例えば、2週間後、4週間後、1か月後、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)のうちの1つまたは複数を変化させる方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。方法についての一部の実施形態では、血液(血清または血漿)中の可溶性ガレクチン9レベル、または免疫組織化学による、ガレクチン9の腫瘍組織(腫瘍細胞、間質細胞、免疫細胞)内の発現レベルおよび発現パターンのうちの1つまたは複数は、不変を維持する。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、血液(血清または血漿)中の可溶性ガレクチン9レベル、または免疫組織化学による、ガレクチン9の腫瘍組織(腫瘍細胞、間質細胞、免疫細胞)内の発現レベルおよび発現パターン(例えば、2週間後、4週間後、1か月後、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)のうちの1つまたは複数を低下させる。ガレクチン9レベルは、処置の開始前のベースラインレベルと比較される場合もあり、処置を施されない対照群と比較される場合もある。一部の実施形態では、処置は、例えば、免疫組織化学による、PDL-1発現の変化を結果としてもたらす。一部の実施形態では、抗体は、配列番号1として示された軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2として示された軽鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号3として示された軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ/または配列番号4として示された重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5として示された重鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号6として示された重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7を含む重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号19を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号15を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、G9.2-17 IgG4である。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、対象に約1mg/kg~約32mg/kgの用量で投与され、例えば、用量は、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、および16mg/kgから選択されうる。一部の実施形態では、抗体は、2週間ごとに1回、例えば、静脈内注入を介して投与される。一部の実施形態では、方法は、対象に、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD1抗体を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、固形腫瘍は、膵腺がん(PDA)、結腸直腸がん(CRC)、肝細胞がん(HCC)、または胆管がん(CCA)から選択され、一部の実施形態では、固形腫瘍は、転移性腫瘍である。
【0190】
一部の実施形態では、本開示は、例えば、免疫組織化学により評価されるPDL-1発現(例えば、2週間後、4週間後、1か月後、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を変化させるための方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。方法についての一部の実施形態では、例えば、免疫組織化学により評価されるPDL-1発現は、不変を維持する。PD-L1レベルは、処置の開始前のベースラインレベルと比較される場合もあり、処置を施されない対照群と比較される場合もある。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、例えば、免疫組織化学により評価されるPDL-1発現を減少させる。一部の実施形態では、抗体は、配列番号1として示された軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2として示された軽鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号3として示された軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ/または配列番号4として示された重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5として示された重鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号6として示された重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7を含む重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号19を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号15を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、G9.2-17 IgG4である。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、対象に、約1mg/kg~約32mg/kgの用量で投与され、例えば、用量は、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、および16mg/kgから選択されうる。一部の実施形態では、抗体は、2週間ごとに1回、例えば、静脈内注入を介して投与される。一部の実施形態では、方法は、対象に、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD1抗体を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、固形腫瘍は、膵腺がん(PDA)、結腸直腸がん(CRC)、肝細胞がん(HCC)、または胆管がん(CCA)から選択され、一部の実施形態では、固形腫瘍は、転移性腫瘍である。
【0191】
一部の実施形態では、本開示は、疾患に関与性の、1つまたは複数の腫瘍マーカー(例えば、2週間後、4週間後、1か月後、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)を変化させる(増大させるか、または減少させる)ための方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。方法についての一部の実施形態では、疾患に関与性の、1つまたは複数の腫瘍マーカー(増大するか、または減少する)は、不変を維持する。このような腫瘍マーカーの非限定例は、Ca15-3、CA-125、CEA、CA19-9、アルファフェトタンパク質を含む。腫瘍マーカーのレベルは、処置の開始前のベースラインレベルと比較される場合もあり、処置を施されない対照群と比較される場合もある。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、疾患に関与性の、1つまたは複数の腫瘍マーカーの発生を減少させる。一部の実施形態では、抗体は、配列番号1として示された軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2として示された軽鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号3として示された軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ/または配列番号4として示された重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5として示された重鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号6として示された重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7を含む重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号19を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号15を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、G9.2-17 IgG4である。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、対象に約1mg/kg~約32mg/kgの用量で投与され、例えば、用量は、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、および16mg/kgから選択されうる。一部の実施形態では、抗体は、2週間ごとに1回、例えば、静脈内注入を介して投与される。一部の実施形態では、方法は、対象に、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD1抗体を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、固形腫瘍は、膵腺がん(PDA)、結腸直腸がん(CRC)、肝細胞がん(HCC)、または胆管がん(CCA)から選択され、一部の実施形態では、固形腫瘍は、転移性腫瘍である。
【0192】
一部の実施形態では、本開示は、ヒト対象を含む対象において、生活の質を改善し、かつ/または症状のコントロールを改善する(例えば、1か月後、3か月後、6か月後、もしくは12か月後、または後の時点において測定される)方法であって、対象に、治療有効量の、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体を投与するステップを含む方法を提供する。処置の開始前のベースラインと比較した、または処置を施されない対照群と比較した、生活の質および症状のコントロールの改善。生活の質の改善は、ある特定の期間にわたる、一時的な場合もあり、恒久的な場合もある。一部の実施形態では、改善は、ECOGスケールにより測定されうる。一部の実施形態では、抗体は、配列番号1として示された軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2として示された軽鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号3として示された軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ/または配列番号4として示された重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5として示された重鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号6として示された重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7を含む重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号19を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号15を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、G9.2-17 IgG4である。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、対象に約1mg/kg~約32mg/kgの用量で投与され、例えば、用量は、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、および16mg/kgから選択されうる。一部の実施形態では、抗体は、2週間ごとに1回、例えば、静脈内注入を介して投与される。一部の実施形態では、方法は、対象に、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD1抗体を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、固形腫瘍は、膵腺がん(PDA)、結腸直腸がん(CRC)、肝細胞がん(HCC)、または胆管がん(CCA)から選択され、一部の実施形態では、固形腫瘍は、転移性腫瘍である。
【0193】
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗体、例えば、G9.2-17は、処置を必要とする対象に、in vivoにおいて、腫瘍内の免疫抑制性免疫細胞内の、ガレクチン9(および/またはデクチン1もしくはTIM-3もしくはCD206)の活性を、少なくとも20%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはこれを超えて)阻害するのに十分な量で投与される。他の実施形態では、本明細書で記載される抗体、例えば、G9.2-17は、腫瘍内の免疫抑制性免疫細胞内の、ガレクチン9(および/またはデクチン1もしくはTIM-3もしくはCD206)の活性レベルを、少なくとも20%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはこれを超えて)(処置前のレベル、または対照の対象におけるレベルと比較して)低減するのに有効な量で投与される。一部の実施形態では、本明細書で記載される抗体、例えば、G9.2-17は、処置を必要とする対象に、in vivoにおいて、TAM内のM1様プログラミングを、少なくとも20%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはこれを超えて)(処置前のレベル、または対照の対象におけるレベルと比較して)促進するのに十分な量で投与される。
【0194】
処置される疾患の種類、または疾患の部位に応じて、医薬組成物を、対象に投与するのに、医学技術分野の当業者に公知である、従来の方法が使用されうる。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、対象に、静脈内注入により投与されうる。
【0195】
注射用組成物は、植物油、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノールおよびポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)など、多様な担体を含有しうる。静脈内注射のために、抗体および生理学的に許容される賦形剤を含有する医薬製剤が注入される点滴法により、抗体が投与されうる。生理学的に許容される賦形剤は、例えば、5%のテキストロース、0.9%の生理食塩液、リンゲル液、または他の適切な賦形剤を含みうる。筋内調製物、例えば、抗体の適切な可溶性塩形態の滅菌製剤は、注射用水、0.9%の生理食塩液、または5%のグルコース溶液などの医薬賦形剤中で溶解させる場合があり、これらにより投与されうる。
【0196】
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体は、本明細書で開示される標的であるがんを処置するための単剤療法として使用される、すなわち、抗ガレクチン9抗体を使用する治療と併用される他の抗がん治療を施されない。
【0197】
他の実施形態では、処置法は、対象に、チェックポイント分子の阻害剤、例えば、PD-1を投与するステップをさらに含む。PD-1阻害剤の例は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、チスレリズマブ、およびセミプリマブなどの抗PD-1抗体を含む。このようなチェックポイント阻害剤は、本開示に従う抗ガレクチン9抗体と同時に投与される場合もあり、本開示に従う抗ガレクチン9抗体と共に、逐次的に(任意の順序で)投与される場合もある。一部の実施形態では、チェックポイント分子は、PD-L1である。PD-L1阻害剤の例は、デュルバルマブ、アベルマブ、およびアテゾリズマブなどの抗PD-L1抗体を含む。一部の実施形態では、チェックポイント分子は、CTLA-4である。CTLA-4阻害剤の例は、抗CTLA-4抗体であるイピリムマブである。一部の実施形態では、阻害剤は、CD40、GITR、LAG-3、OX40、TIGIT、およびTIM-3から選択されるチェックポイント分子をターゲティングする。
【0198】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、例えば、3か月後における全奏効を、チェックポイント分子の阻害剤(例えば、抗PD1、例えば、ニボルマブ)を単独で含むレジメンと比べて改善する。
【0199】
一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブであり、本明細書で記載される方法は、対象への静脈内における2週間ごとに1回240mgの投与を含む。
【0200】
一部の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、固定用量を使用して投与される。一部の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、対象に480mgの用量で4週間ごとに1回投与されるニボルマブである。一部の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、200mgの用量で3週間ごとに1回投与される、ペムブロリズマブである。一部の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、セミプリマブである。一部の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、セミプリマブである。一部の実施形態では、本明細書で記載される方法は、対象への静脈内における3週間ごとに1回350mgの投与を含む。一部の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、チスレリズマブである。一部の実施形態では、本明細書で記載される方法は、対象への静脈内における3週間ごとに1回200mgの投与を含む。
【0201】
一部の実施形態では、PD-L1に結合する抗体は、固定用量を使用して投与される。一部の実施形態では、PD-L1に結合する抗体は、アテゾリズマブである。一部の実施形態では、本明細書で記載される方法は、対象への静脈内における3週間ごとに1回1200mgの投与を含む。一部の実施形態では、PD-L1に結合する抗体は、アベルマブである。一部の実施形態では、本明細書で記載される方法は、アベルマブの対象への静脈内における2週間ごと約10mg/kgの投与を含む。一部の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、デュルバルマブである。一部の実施形態では、本明細書で記載される方法は、デュルバルマブの対象への静脈内における4週間ごと約1500mgの投与を含む。
【0202】
具体例では、本明細書で開示される方法のうちのいずれかは、(i)本明細書で開示される標的である固形腫瘍(例えば、膵腺がん(PDAまたはPDAC)、CRC、HCC、またはCCA)を有するヒト患者に、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体(例えば、G9.2-17、または配列番号19の重鎖および配列番号5の軽鎖を有する抗体)のうちのいずれかを、2週間ごとに1回、約1~約32mg/kg(例えば、約3mg/kg、または約15mg/kg)の用量で投与するステップ;および(ii)ヒト患者に、有効量の抗PD-1抗体(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、チスレリズマブ、またはセミプリマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、およびアテゾリズマブ)を投与するステップを含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号1として示された軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2として示された軽鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号3として示された軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を含み、かつ/または配列番号4として示された重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5として示された重鎖相補性決定領域2(CDR2)、および配列番号6として示された重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7を含む重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号19を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号15を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗体は、G9.2-17 IgG4である。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、対象に約1mg/kg~約32mg/kgの用量で投与され、例えば、用量は、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、および16mg/kgから選択されうる。一部の実施形態では、抗体は、2週間ごとに1回、例えば、静脈内注入を介して投与される。一部の実施形態では、方法は、対象に、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD1抗体を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、固形腫瘍は、膵腺がん(PDA)、結腸直腸がん(CRC)、肝細胞がん(HCC)、または胆管がん(CCA)から選択され、一部の実施形態では、固形腫瘍は、転移性腫瘍である。ニボルマブが使用される場合、適切な投与スケジュールは、約480mgの4週間ごとに1回でありうる。ペムブロリズマブが使用される場合、適切な投与スケジュールは、約200mgの3週間ごとに1回でありうる。セミプリマブが使用される場合、適切な投与スケジュールは、静脈内における、3週間ごとに1回、約350mgの投与でありうる。チスレリズマブが使用される場合、適切な投与スケジュールは、静脈内における、3週間ごとに1回、約200mgの投与でありうる。一部の実施形態では、抗PD-1抗体ではなく、抗PD-L1抗体が使用される。アテゾリズマブが使用される場合、適切な投与スケジュールは、静脈内における、3週間ごとに1回、約1200mgの投与でありうる。アベルマブが使用される場合、適切な投与スケジュールは、静脈内における、2週間ごと、約10mg/kgの投与でありうる。デュルバルマブが使用される場合、適切な投与スケジュールは、静脈内における、4週間ごと、約1500mgの投与でありうる。
【0203】
理論に束縛されずに述べると、それらのデクチン1に対する阻害を介する、抗ガレクチン9抗体は、例えば、CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞を活性化させることによる、例えば、腫瘍微小環境に浸潤したγδT細胞の活性の阻害、および/または腫瘍細胞に対する免疫監視の増強を介して、腫瘍細胞に対する免疫応答をリプログラミングしうることが考えられる。したがって、抗ガレクチン9抗体と、本明細書で記載される免疫モジュレート剤などの免疫モジュレート剤とを組み合わせて使用すれば、抗腫瘍効能を、顕著に増強することが予測されるであろう。
【0204】
一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体が、チェックポイント阻害剤と併用して投与される方法が提供される。一部の実施形態では、抗ガレクチン9抗体は、チェックポイント阻害剤の前または後に投与される。一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、全身投与される。一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、局所投与される。一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、静脈内投与により、例えば、ボーラスとして、またはある時間にわたる連続注入により、筋内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路、皮下経路、動脈内経路、関節内経路、滑膜内経路、髄腔内経路、腫瘍内経路、経口経路、吸入経路、または外用経路により投与される。一実施形態では、チェックポイント阻害剤は、対象に、静脈内注入により投与される。
【0205】
本明細書で記載される方法実施形態のうちのいずれかでは、抗ガレクチン9抗体は、(単独で、または抗PD1抗体と組み合わせて)2週間ごとに1回、1サイクルにわたるか、2週間ごとに1回、2サイクルにわたるか、2週間ごとに1回、3サイクルにわたるか、2週間ごとに1回、4サイクルにわたるか、または2週間ごとに1回、4サイクルを超えて投与されうる。一部の実施形態では、処置は、1~3か月間、3~6か月間、6~12か月間、12~24か月間、またはこれを超える期間にわたる。一部の実施形態では、処置は、2週間ごとに1回1~3か月間にわたるか、2週間ごとに1回3~6か月間にわたるか、2週間ごとに1回6~12か月間にわたるか、もしくは2週間ごとに1回12~24か月間にわたるか、またはこれを超える期間にわたる。
【0206】
単独で、または本明細書で開示されるチェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1または抗PD-L1抗体)と組み合わされた、本明細書で開示される抗ガレクチン9抗体のうちのいずれか(例えば、G9.2-17)により処置される対象は、有害作用(例えば、重度の有害作用)の発生についてモニタリングされうる。モニタリングすべき、例示的な有害作用は、下記の実施例1に示される。有害作用の発生が観察される場合、処置条件は、この対象について変更される場合がある。例えば、抗ガレクチン9抗体の用量が低減される場合もあり、かつ/または投与間隔が延長される場合もある。低減の適切性および程度は、有資格の臨床医により評価されうる。一具体例では、臨床医の評価に従うレベルの低減、または少なくとも30%のレベルの低減が実施される。要求される場合、1つまたはこれを超える、30%の用量低減である、用量レベル-1(用量レベル-2)が実施される。代替的に、または加えて、チェックポイント阻害剤の用量が低減される場合もあり、かつ/またはチェックポイント阻害剤の投与間隔が延長される場合もある。一部の場合(例えば、致死性の有害作用が生じる場合)に、処置は終了する場合がある。
【0207】
ガレクチン9と関連する疾患の処置における使用のためのキット
本開示はまた、ガレクチン9と関連する疾患、例えば、ガレクチン9の、細胞表面の糖タンパク質(例えば、デクチン1、TIM3、CD206など)、またはガレクチン9を発現させる罹患細胞(例えば、がん細胞)への結合と関連する疾患の処置または緩和における使用のためのキットも提供する。例は、PDA、CRC、HCC、または胆管がん、および本明細書で記載される、他の固形腫瘍などの固形腫瘍を含む。このようなキットは、抗ガレクチン9抗体、例えば、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体のうちのいずれかと、任意選択で、これもまた、本明細書で記載される、抗ガレクチン9抗体と共使用される、第2の治療剤(例えば、本明細書で開示される、抗PD-1抗体などのチェックポイント阻害剤)とを含む、1つまたは複数の容器を含みうる。
【0208】
一部の実施形態では、キットは、本明細書で記載される方法のうちのいずれかに従う使用のための指示書を含みうる。組み入れられる指示書は、抗ガレクチン9抗体と、任意選択で、第2の治療剤との投与であって、本明細書で記載される標的疾患などの標的疾患を処置するか、この発病を遅延させるか、または緩和する投与についての記載を含みうる。一部の実施形態では、キットは、例えば、本明細書で記載される診断法を適用して、個体が、標的疾患を有するのかどうかを同定することに基づき、処置に適する個体選択することについての記載をさらに含む。さらに他の実施形態では、指示書は、抗体を、標的疾患の危険性がある個体に投与することについての記載を含む。
【0209】
抗ガレクチン9抗体の使用に関する指示書は、一般に、意図された処置のための、投与量、投与スケジュール、および投与経路についての情報を含む。容器は、単位用量パッケージの場合もあり、バルクパッケージ(例えば、複数回投与用パッケージ)の場合もあり、単位用量未満のパッケージの場合もある。本発明のキットに備えられる指示書は、典型的に、ラベルまたはパッケージインサート(例えば、キット内に組み入れられる紙片)に書かれた指示書であるが、コンピュータ読取り型指示書(例えば、磁気保存ディスク上または光学保存ディスク上に所収の指示書)もまた、許容可能である。
【0210】
ラベルまたはパッケージインサートは、組成物が、ガレクチン9(例えば、デクチン1、TIM-3シグナル伝達、またはCD206シグナル伝達)と関連する疾患を処置し、これらの発病を遅延させ、かつ/またはこれらを和らげるために使用されることを指し示す。一部の実施形態では、指示書は、本明細書で記載される方法のうちのいずれかを実施するために提供される。
【0211】
本発明のキットは、適切なパッケージング内にある。適切なパッケージングは、バイアル、ボトル、ジャー、可撓性のパッケージング(例えば、シーリング型マイラーバッグまたはプラスチックバッグ)などを含むがこれらに限定されない。また、具体的デバイス、など、インヘラー、鼻腔内投与用デバイス(例えば、噴霧器)、またはミニポンプなどの注入デバイスと組み合わせた使用のためのパッケージも想定される。一部の実施形態では、キットは、滅菌アクセスポートを有する(例えば、容器は、皮下注射針により穿刺されうる止栓を有する、静脈内溶液用のバッグまたはバイアルでありうる)。一部の実施形態では、容器もまた、滅菌アクセスポートを有する(例えば、容器は、皮下注射針により穿刺されうる止栓も有する、静脈内溶液用のバッグまたはバイアルでありうる)。組成物中の、少なくとも1つの活性薬剤は、本明細書で記載される抗ガレクチン9抗体としての抗ガレクチン9抗体である。
【0212】
キットは、任意選択で、緩衝液などのさらなる成分、および解釈のための情報を提供する場合もある。通常、キットは、容器、容器上のラベル、または容器と関連するパッケージインサート(複数可)を含む。一部の実施形態では、本発明は、上記で記載したキットの内容物を含む製品を提供する。
【0213】
一般的技法
本技術の実施では、そうでないことが指し示されない限りにおいて、当技術分野の技術の範囲内にある、分子生物学(組換え法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学についての従来の技法を援用する。このような技法については、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、2版(Sambrookら、1989)、Cold Spring Harbor Press;「Oligonucleotide Synthesis:Methods and Applications」(M.J.Gait編、1984);「Methods in Molecular Biology」、Humana Press;「Cell Biology:A Laboratory Notebook」(J.E.Cellis編、1998)、Academic Press;「Animal Cell Culture」(R.I.Freshney編、1987);「Introduction to Cell and Tissue Culture」(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998)、Plenum Press;「Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures」(A.Doyle、J.B.Griffiths、およびD.G.Newell編、1993~8)、J.Wiley and Sons;「Methods in Enzymology」(Academic Press,Inc.);「Handbook of Experimental Immunology」(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);「Current Protocols in Molecular Biology」(F.M.Ausubelら編、1987);「PCR:The Polymerase Chain Reaction」(Mullisら編、1994);「Current Protocols in Immunology」(J.E.Coliganら編、1991);「Short Protocols in Molecular Biology」(Wiley and Sons、1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997);「Antibodies」(P.Finch、1997);「Antibodies:a practical approach」(D.Catty編、IRL Press、1988~1989);「Monoclonal antibodies:a practical approach」(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);「Using Antibodies:A Laboratory Manual」(E.HarlowおよびD.Lane、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);「The Antibodies」(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995)などの文献において完全に記載されている。
【0214】
さらに詳述することはしないが、当業者は、上記の記載に基づき、本発明を、最大限に利用しうると考えられる。したがって、以下の具体的実施形態は、例示的なものであるに過ぎず、いかなる形であれ、本開示の残りの部分に対する限定であるとはみなされないものとする。本明細書で引用される、全ての刊行物は、本明細書で言及される目的または対象物について、参照により組み込まれる。
【実施例】
【0215】
[実施例1]
転移性固形腫瘍を伴う患者において、抗ガレクチン9モノクローナル抗体単独、または抗PD1抗体との組み合わせで使用する、フェーズI~IIの、オープンラベル、非無作為試験
ガレクチン9は、膵がん、結腸直腸がん、および肝細胞がんにおける固形腫瘍を含む、多くの固形腫瘍により過剰発現される分子である。さらに、ガレクチン9は、腫瘍関連マクロファージ上のほか、腫瘍内免疫抑制性ガンマデルタT細胞上でも発現され、これにより、がん関連免疫抑制の強力なメディエーターとして作用する。本明細書で記載される通り、ガレクチン9をターゲティングするモノクローナル抗体(例えば、G9.2-17、IgG4)が開発されている。データは、G9.2-17が、同所KPCモデルにおいて膵臓腫瘍の増殖を50%停止させ、KPC動物の生存を2倍を超えて延長することを裏付けている。理論に束縛されることを望まずに述べると、抗ガレクチン9抗体は、M2表現型をM1表現型に反転させ、腫瘍内CD8+ T細胞の活性化を容易とすることが考えられる。さらに、抗体G9.2-17(IgG4)(配列番号19の重鎖および配列番号15の軽鎖を有する)は、抗PD1と相乗作用することが見出されている。
【0216】
このフェーズI/II多施設研究の目的は、安全性、忍容性、最大耐用量(maximam tolerated dose:MTD)または最大投与用量(maximan administered dose:MAD)、および転移性固形腫瘍、例えば、膵腺がん(PDA)、結腸直腸がん(CRC)、肝細胞がん(HCC)、または胆管がん(CCA)を有する対象における処置の3か月後における、目的の腫瘍応答を決定することである。研究はまた、対象の無増悪生存期間(PFS)、応答の持続期間(RECISTによる)、疾患の安定性、3、6、および12か月後における対象の生存率のほか、薬物動態(PK)パラメータおよび薬力学(PD)パラメータも検討する。対象は、処置前生検および処置後生検のほか、研究前、および8週間ごとに1回、研究の持続期間にわたるPET-CTイメージングを受ける。加えて、末梢と腫瘍内とのT細胞比、T細胞の活性化、マクロファージ表現型解析、および血清ガレクチン9レベルなどの免疫学的評価項目を検討する。研究は、原本の研究プロトコール下で実施し、研究は、12~24か月間にわたり持続する。
【0217】
さらに、前臨床の概念実証データは、同所((LSL-Kras(G12D/±);LSL-Trp53(R172H/+);Pdx-1-Cre)-胆管腺がん)KPCモデル、およびBl6F10黒色腫皮下モデルにおいて、G9.2-17(IgG4)(別称:G9.2-17 IgG4)が、単剤として、膵臓腫瘍増殖を最大で50%低減することを裏付ける。ガレクチン9の遮断はまた、KPC動物の生存も延長する。機構的に述べると、ガレクチン9のターゲティングは、腫瘍内エフェクターT細胞の活性化を容易とする。in vivoにおける、G9.2-17抗体と、抗PD-1との間では、相乗作用が示唆される。すなわち、Bl6F10黒色腫モデルでは、抗ガレクチン9抗体および抗PD-1で処置された群では、腫瘍内CD8+ T細胞の、単剤で処置された群と比べて、顕著に大幅な増大が観察された。非GLP毒性研究では、G9.2-17(IgG4)は、齧歯動物およびカニクイザルにおける最大用量、ならびに齧歯動物における100mg/kg、およびサルにおける300mg/kgを含む用量で安全である。このフェーズla/lb探索試験は、最大耐用量の安全性および忍容性、PK、PD、有効性応答の転帰、疾患のコントロール、ならびに3、6、および12か月後における生存、およびその他の探索パラメータを評価することを目的とする。
【0218】
このフェーズla/lb探索試験は、最大耐用量(または最大投与用量)の安全性および忍容性、PK、PD、免疫原性、有効性応答の転帰、患者の生存、ならびに他の探索パラメータについて査定する。膵がん、結腸直腸がんおよび胆管がんが、計画された拡大コホートであるが、臨床試験の用量設定部は、上記で言及された腫瘍型以外に、転移性固形腫瘍を伴う、全ての来院者に開かれている。PDAC、CRC、およびCCA以外の他のがん型は、抗ガレクチン9処置により有益である可能性があり、現在のところ、拡大コホートのために優先されていないが、用量漸増部において、専門の拡大コホートを正当化するように、有意味な臨床利益および機構的根拠を裏付ける可能性がある。さらに、CRCおよびCCAにおける拡大コホートを、転移状況において、少なくとも1つの既往の選択処置が奏効しておらず、他の点で、研究に適格である患者に対する、単剤のG9.2-17 IgG4のほか、承認されている抗PD-1剤と組み合わせた、G9.2-17 IgG4のために計画する。
【0219】
主要目的は、3か月後における、安全性、忍容性、最大耐用量(MTD)、客観的奏効率(Objective Response Rate:ORR)を含む。副次目的は、無増悪生存期間(Progression Free Survival:PFS)、RECIST 1.1による応答の持続期間、疾患の安定化、3、6、および12か月後における生存のほか、薬物動態(PK)パラメータおよび薬力学(PD)パラメータを含む。
【0220】
対象、疾患および全ての臨床安全性データは、分散についての適切な尺度(すなわち、95%信頼区間、範囲)と共に、平均値、中央値、または比率として、記述的に提示される。ウォーターフォールプロットおよびスイマープロットは、各罹患部位内における、各研究群の、対象についての、ORRおよび応答の持続期間をグラフにより提示するのに使用される。ORRと潜在的に関連しうる、潜在的なバイオマーカーを同定するのに、探索的相関解析もまた企図する。全ての統計学的解析は、SAS、version 9.2.(SAS、Cary、NC)を使用して実施する。
【0221】
本研究は、G9.2-17(IgG4)の単剤療法、およびG9.2-17とニボルマブとの組合せの両方を含む。G9.2-17の用量は2週間ごとに1回、約3mg/kg~15mg/kgの範囲でありうる。抗体は、静脈内注入により投与される。
【0222】
研究目的、持続期間および研究集団を、表Bにまとめる。
【0223】
【0224】
<研究デザイン>
患者集団:3+3用量漸増の第1段階(下記で開示される)においては全ての転移性来院者、次いで、PDA、CRCおよびCCA、または作用方式および/もしくは早期の有効性シグナルが第1段階で捕捉される腫瘍型に拡大される。
【0225】
(第1段階)
用量設定研究は、どのようにして、過去の試験データに基づき、抗Gal9抗体の投与量を、次の患者コホートに適合させるべきかについての情報を与える、モデルベースのデザインである、O’Quigleyら(1990)によるCRM(continual reassessment method)を使用して行うものとする。研究の第1段階は、抗ガレクチン9抗体を単剤として投与する場合の3+3用量設定および安全性研究である。
【0226】
1つパラメータ検出力モデルを使用して、G9.2-17の用量(IgG4)と、用量制限毒性(dose-limiting toxicity:DLT)を観察する確率との関係について記載するものとする。DLTは、転移性腫瘍における疾患の進行、併発疾病、または併用薬に関連せず、研究薬に関連し、研究の第1のサイクルにおいて生じるとして評価され、以下の基準のうちのいずれかを満たす、臨床的に顕著な非血液学的有害事象、または検査室値の異常として規定される:
・任意の持続期間を有する、全ての悪性度4の非血液学的毒性
・全ての悪性度3の非血液学的毒性。例外は、以下の通りである:
・入院または中心静脈栄養法による支持を要求せず、支持ケアにより、48時間以内に、<悪性度2に管理されうる、悪性度3の悪心、嘔吐、および下痢
・24時間以内に、<悪性度2に是正されうる、悪性度3の電解質異常
DLT期間=1サイクル、すなわち、各サイクルの1および15日目における、抗Gal9抗体の2回の投与
・検査室パラメータ、バイタルサイン、およびECGの、臨床的に顕著な変化を含む、AE/CTCAEに基づくAEおよびSAEの発生率および重症度
・DLTの発生率、PK、およびPD
・血漿PKパラメータ(例えば、AUC0-24h、Cmax、Tmax、推定半減期);時間プロファイルと対比した血清濃度
・客観的奏効率(完全奏効および部分奏効)および臨床有用率(3か月またはこれを超える客観的奏効および安定);無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(Overall survival:OS)、疾患コントロール率(DCR)
血液および腫瘍による免疫表現型解析、ガレクチン9の血清レベル、血漿レベル、ならびに組織内の(腫瘍細胞、間質細胞、免疫細胞の)発現レベルおよび発現パターン、応答までの時間(TTR)、ならびに他のバイオマーカー解析、CT(PET)イメージング/他の臨床的に適応のイメージングモダリティー
OBDとは、DLTが、目標毒性レベル(TTL)以下となる推定確率が、25%である最大用量である。利用可能な最大試料サイズを24として、2例の患者に、同時に投与するものとする。各回の用量漸増時における安全性のための注意として、新たな患者は、各コホートの最初の患者を、抗Gal9抗体で処置し、処置後最低7日間が経過した後で初めて、登録し、処置する。
【0227】
用量範囲を、下記の表2に示すが、抗体は、2週間ごとに1回(Q2W)、静脈内投与される。
【0228】
【0229】
用量漸増は、用量を、先行する第1の用量の100%増大させ、次いで、これに続き、先行用量の67%、50%、40%、および30%の増量を行う、改変フィボナッチ数列に従う。最初の3例の患者が、用量制限毒性(DLT)を経なければ、別の3例の対象を、次の高用量レベルで処置する。代替的に、3例中1例の対象が、DLTを有する場合、別の3例の対象も、同じ用量レベルで処置する。3~6例の患者によるコホートの中で、少なくとも2例の患者が、DLTを経るまで、用量漸増を継続する。
【0230】
代替的デザインでは、第1段階は、連続6例の患者が、同じ用量を施された場合に完了するものとし、この用量を、OBDとして同定するものとする。CRMデザイン内では、合計5つの投与量レベルを査定するものとする。
【0231】
1.用量レベル1=2mg/kg
2.用量レベル2=4mg/kg
3.用量レベル3=8mg/kg
4.用量レベル4=12mg/kg
5.用量レベル5=16mg/kg
6.投与レジメン:隔週
7.投与経路:静脈内(IV)。
【0232】
(第2段階)
研究の第2段階は、サイモンによる2段階最適デザイン(6つの群:膵腺がん(PDA)、CRC、および胆管がん)である。研究は、抗ガレクチン9抗体単独(研究単剤群)の使用、およびニボルマブを伴う使用(2週間ごとに1回投与される、240mgの固定用量;研究のIO組合せ群)について探索する。使用される抗ガレクチン9抗体の用量は、フェーズI段階で毒性を呈することが見出されたレベルを下回る。
【0233】
CRCおよびCCAでは、抗Gal9抗体を、単剤として調べる。代替的に、抗Gal9抗体を、承認されている抗PD-1 mAb(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、または)と組み合わせて調べるものとする。
【0234】
最適2段階デザインは、ORRを≦5%とするヌル仮説を、単剤アーム内のORRを≧15%とする、代替的ヌル仮説と対比して検定するのに使用される。第1段階で、23例の患者において薬物を調べた後で、応答する患者が≦1例である場合は、それぞれの試験群を終了させる。試験が、サイモンによる最適デザインの第2部に移行する場合、合計56例の患者を、単剤群の各々に登録する。応答患者の総数が≦5例である場合、この群内の薬物を棄却する。≧6例の患者が、3か月後において、ORRを有する場合、この群のための拡大コホートを起動する。上記の手法は、研究の単剤群に適用する。
【0235】
IO組合せ群(CRCおよびCCA)のために、G9.2-17 IgG4の開始用量は、第1部で同定された、RP2D用量レベルより1段階低い用量(RP2D-1)である。患者の安全性を確保するために、治験依頼者は、安全性ランインを計画する。最初の8例の患者に、組合せを投与し、≦2例の患者だけが、25%のTTLを下回るDLTを発症する場合は、この群を継続する。3例またはこれを超える患者が、DLTを発症する場合は、G9.2-17 IgG4の用量を、臨床医の評価に従う軽減レベル、または少なくとも30%低減する(用量レベル-1)。要求される場合、1つを超える、30%の用量低減である、用量レベル-1(用量レベル-2)を許容する。さらなる用量低減は許容しない。用量レベル-1および用量レベル-2への用量低減は、治験責任医師が、用量低減条件下でも、臨床利益が導出されており、導出され続けると評価する場合に限り許容する。
【0236】
CRCおよびCCAにおける抗PD-1 mAb組合せ群のために、最適2段階デザインはまた、ORRを≦10%とするヌル仮説を、ORRを≧25%とする、代替的ヌル仮説と対比して検定するのにも使用される。第1段階で、18例の患者において組合せを調べた後で、応答する患者が≦2例である場合は、それぞれの試験群を終了させる。試験が、サイモンによる最適デザインの第2部に移行する場合、合計43例の患者を、組合せ群の各々に登録する。応答患者の総数が≦7例である場合、この群内の薬物を棄却する。≧8例の患者が3か月後においてORRを有する場合、この群のための拡大コホートを起動する。
【0237】
(第3段階)
第3段階は、早期の有効性シグナルが、検出されるコホートの拡大を含む。腫瘍型に帰せられる6つの試験群のうちの1つの中で、有望な有効性シグナルが同定される場合、拡大コホートを立ち上げて、所見確認する。拡大群の各々のための試料サイズは、ORRをめぐる95%の信頼区間(95%CI)についての、所定レベルの精度と組み合わせて、第2段階で決定された点推定値に基づき決定する。
【0238】
本研究では、処置前生検試料および処置後生検試料を、例えば、臨床的な適応に応じて、研究前、および8週間ごとに1回、PET-CTイメージングにおいて解析する。PK、PD、免疫学的評価項目は、末梢と腫瘍内とのT細胞比、T細胞の活性化、マクロファージ表現型解析、および血清ガレクチン9レベル、およびガレクチン9の組織発現レベルを含む。
【0239】
<投与(dosingおよびadministration)>
G9.2-17 IgG4は、第1部および第2部における、疾患の進行、許容不可能な毒性、または同意の取下げまで、静脈内(IV)注入を介して、2週間ごと(Q2W)に投与される。用量制限毒性を経る対象は、治験責任医師の判断に従い、研究メディカルモニターとの討議の後に、患者が、臨床利益を享受している場合、G9.2-17 IgG4の投与を再開しうる。30%の用量低減、または治験責任医師の臨床的裁量に従い、メディカルモニターおよび治験依頼者の同意を伴う用量低減がなされる。30%の用量低減を、用量レベル-1と考えるものとする。先行する用量レベルに対する、次の30%の用量低減を、用量レベル-2と考えるものとする。2つを超える、このような用量低減は、許容されない。
【0240】
第1部:対象に、CRMデザインに従い、G9.2-17 IgG4単独を施す。
第2部:第1部で同定されたRP2Dを使用して、対象に、単剤としてのG9.2-17 IgG4、または抗PD-1と組み合わせたG9.2-17 IgG4のRP2Dを施す。しかし、組合せ群の場合、最初の8例の患者に投与し、DLTを発症する患者が≦2例であり、30%の目標毒性レベル(TTL)を下回る場合、この群を持続する。3例を超える患者が、G9.2-17 IgG4に関連し、組合せで使用された薬物/レジメンに関連しないことが決定されたDLTを発症する場合は、G9.2-17 IgG4の用量を、RP2D-1の用量レベル(G9.2-17 IgG4の、30%の用量低減、または臨床医の評価に従う用量低減)に低減する。
【0241】
<研究目的>
(i)第1段階(フェーズ1a)
・主要目的(複数可):安全性、忍容性、生物学的至適用量(OBD)、最大耐用量(MTD)または最大投与用量(MAD)、推奨フェーズ2用量(RP2D)
・副次目的(複数可):薬物動態(PK)パラメータ、薬力学(PD)パラメータ、免疫原性
・下記に列挙された探索評価項目:客観的奏効率(ORR)、疾患コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、6および12か月後における患者生存に加えた、第1段階のための探索評価項目
(ii)CRCおよびCCAにおける第2段階および第3段階
・主要目的(複数可);客観的奏効率(ORR)
・副次目的(複数可):無増悪生存期間(PFS)、疾患コントロール率(DCR)、RECIST 1.1による応答の持続期間および深度、6および12か月後における患者の生存、応答までの時間、安全性および忍容性
(iii)PDACにおける第2段階および第3段階
・主要目的(複数可);6か月後における患者の生存
・副次目的(複数可):3、6および12か月後における、客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、疾患コントロール率(DCR)、6および12か月後における患者の生存、RECIST 1.1による、応答の持続期間および深度、応答までの時間、安全性および忍容性
(iv)全ての研究部分についての探索評価項目:
iRECIST基準、血液および腫瘍による免疫表現型解析、サイトカインプロファイル(血清)、血液(血清または血漿)中の可溶性ガレクチン9レベル、免疫組織化学による、ガレクチン9の腫瘍組織(腫瘍細胞、間質細胞、免疫細胞)内の発現レベルおよび発現パターン、マルチプレックスの免疫組織化学、応答までの時間(TTR)、腫瘍遺伝子変異量(TMB)、免疫組織化学によるPDL-1の発現、ミスマッチ修復状態、疾患に関与性の腫瘍マーカー(およびこれらのパラメータの、応答との相関);生活の質および症状のコントロール。
【0242】
<研究集団>
(i)第1段階:腫瘍型に関わらず、再発性/不応性の転移性がんを伴う患者は、O’Quigley(1990)により記載されているCRM(continual reassessment method)を使用する用量設定研究に適格であるものとする。
【0243】
(ii)第2段階:PDAC、CRC、およびCCA(計画による)、または作用方式および/もしくは早期の有効性シグナルが第1段階で捕捉される腫瘍型では、拡大を想定する。
【0244】
(iii)第3段階:研究の最終部分であり、第3部である部分は、抗腫瘍活性についての最小閾値を裏付ける第2段階からのコホートのさらなる拡大を可能とする。拡大群の各々のための試料サイズは、ORR/患者の生存をめぐる95%の信頼区間(95%CI)についての、所定レベルの精度と組み合わせて、第3段階で決定される点推定値に基づき決定されるものとする。
【0245】
患者組入れ基準:
1.説明同意文書(心神正常であり、説明同意書式を理解する能力があり、これに署名する意思がある)
2.>18歳の男性または非妊娠女性であること
3.組織学的に確認された、切除不能の転移性がんであること
4.治験責任医師の判断で、研究プロトコールを遵守することができること
5.平均余命>3か月
6.バイオマーカー解析のために利用可能な、最近の登録保管腫瘍試料であること。生検検体が得られて以来、施された治療についての情報が入手可能でなければならない。治験責任医師の判断を使用して、このような登録保管検体が許容可能であるのかどうかを決定するものとする。
【0246】
7.入手可能な場合、第5項目の組入れ基準に従い、登録保管検体(複数可)について、IHCにより評価される、ガレクチン9の腫瘍組織内発現レベルを記録するものとする。
【0247】
8.処置前および処置時/処置後生検を受けることが可能な患者であること。治験責任医師の判断に従い、計画される生検は、患者を、合併症の危険性の実質的な上昇に曝露しないものとする。あらゆる努力を払って、反復生検時に、同じ病変が生検にかけられるようにする。
【0248】
9.RECIST v1.1に従い測定可能な疾患である。生検にかけられることが意図される病変は、標的病変ではないことに注意する。
【0249】
10.治験責任医師の判断に従う、予測生存期間が>3か月間であること
11.第1部について:利用可能な標準治療選択肢が存在しないか、または患者が、利用可能であり、かつ、適応の標準治療を拒絶しているか、もしくは利用可能であり、かつ、適応の標準治療に適格でないこと。第2部について:PDAC拡大コホート(転移性がん状況において、少なくとも1つの全身選択治療を施されているコホート、およびゲムシタビン含有レジメンにナイーブであるか、またはゲムシタビン含有レジメンを使用して処置されてから、少なくとも6か月間経過している患者)。CCR拡大コホートおよびCCA拡大コホート(転移状況において、少なくとも1つの既往の選択治療を施されている)。
【0250】
12.研究期間の前、または研究期間中のCOVID-19のためのワクチン接種を許容する。タイミングおよびワクチンの種類についての情報は、記録しなければならない。
【0251】
13.Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータスが0~1であること/カルノフスキースコアが>70であること(可能な限り、両方について記録されたい)
14.研究の第1部(第1段階)では、MSI-H患者およびMSS患者を許容するものとする。
【0252】
15.研究薬処置の初回投与の28日前以内、および研究薬の任意の連続投与の72時間前以内に得られる、以下の検査室結果:1L当たりの好中球カウント≧1×109個、1L当たりの血小板カウント≧100×109個、第1部におけるHCCについては、1L当たり≧50×109個により規定される、血液機能および末端臓器機能が十分であること。先行週において、輸血を伴わない、ヘモグロビン≧8.5/dL、クレアチニン≦1.5 ULN、クレアチニンクリアランス≧30mL/分、AST(SGOT)≦3×ULN(HCCまたは肝転移が存在する場合は、≦5×ULN)、ALT(SGPT)≦3×ULN、(HCCまたは肝転移が存在する場合は、≦5×ULN)ビリルビン≦1.5×ULN(公知のジルベール病を伴う患者は、ビリルビンが、≦3.0×ULNでありうる)、アルブミン≧3.0/dL INR、およびPTT≦1.5×ULN;アミラーゼおよびリパーゼ≦1.5×ULNである。
【0253】
・脳転移が既に診断されている場合は、脳疾患のための処置である、手術または放射線療法が、スクリーニングの、4週間またはこれを超える以前に完了しているか、または研究開始前の、少なくとも3か月間にわたり、脳疾患が安定していなければならないこと。このような場合には、現在、進行性脳転移、ならびに脳内の新たな疾患および/または軟膜疾患についての証拠が見られないことを裏付けるように、脳MRIが要求される。
【0254】
・患者は、研究開始の、少なくとも28日前に、脳転移を管理するために施されるステロイドを中断していなければならない。
【0255】
16.研究開始の4週間前以内に、活動性の感染症および重篤な感染症の証拠が見られないこと。
【0256】
17.妊娠の可能性がある女性は、処置開始の72時間前以内に、妊娠検定が陰性でなければならない。妊娠の可能性がある女性について:処置期間中、および最終回の研究処置の後、少なくとも180日間にわたり、禁欲(異性間性交の忌避)の保持、または1年当たりの不成功率<1%を結果としてもたらす、避妊法の使用に同意すること。女性は、初経後であり、かつ、閉経後状態(更年期以外の原因が同定されない、連続≧12か月間にわたる無月経)に到達しておらず、避妊手術(卵巣および/または子宮の除去)を受けていない場合、妊娠の可能性がある。1年当たりの不成功率が<1%である避妊法の例は、両側卵管結紮、男性避妊、排卵を阻害するホルモン避妊、ホルモン放出型子宮内避妊具、および銅製子宮内避妊具を含む。性的禁欲の信頼性は、臨床試験の持続、ならびに患者の、好ましく、かつ、通例の生活様式との関連で査定するものとする。定期的な禁欲(例えば、暦、排卵、症状体温法、または排卵後法)および離脱は、避妊の許容可能な方法ではない。生殖力のある男性は、不妊症の記録が存在しない限り、研究期間中に、有効な避妊法を実施しなければならない。
【0257】
18.初回のG9.2-17 IgG4投与の前における、抗がん治療の最終回投与以来、少なくとも4週間または5半減期(いずれか、短い方)を経ていること
19.C1D1の前、少なくとも6か月間にわたり安定している骨転移のための、ビスホスホネート処置(ゾレドロン酸)またはデノスマブの継続は、許容される。
【0258】
20.CCR拡大コホートまたはCCA拡大コホートについては、転移状況下で、少なくとも1つの既往の選択治療が要求される。
【0259】
患者除外基準:
1.原発が未知の転移性がんを伴うと診断されている患者
2.プロトコールの要件に従う意思がないか、またはその能力がないこと
3.既往または現行の違法薬物中毒
4.臨床的に顕著な、コントロール不能の活動性出血を有すること、および出血体質(例えば、活性の消化性潰瘍疾患)を伴う任意の患者であること。抗凝固剤の予防的使用または治療的使用は、許容される。
【0260】
5.泌乳中の女性
6.研究のサイクル1の1日目に先立つ、4週間以内、もしくは投与される薬物の5半減期(いずれか、短い方)以内に、固形腫瘍の処置のために、他の任意の治験薬を施されるか、もしくは別の治験薬を伴う、他の任意の臨床試験に参加すること、または同意日から4週間以内に、他の治験治療もしくは大手術を受けること、または想定される研究開始から4週間以内に計画された手術(これは、歯科手術を含む)
7.研究薬の1回目の投与から4週間以内に、骨痛または限局的に有痛の腫瘍塊の処置のためなど、限定的照射野に対する緩和放射線療法を除く、放射線療法を施されること
8.菌状増殖腫瘍塊を伴う患者;局所進行PDACを伴う患者
9.既往のがん治療に起因して、CTCAEにおける、≧悪性度3の毒性(禿頭および白斑を除く)を伴うこと。既往のチェックポイント阻害剤療法による、悪性度4の免疫媒介性毒性を伴うこと。悪性度2もしくは悪性度3の肺炎、または免疫療法処置の中断をもたらした、他の任意の悪性度3のチェックポイント阻害剤関連毒性を伴うこと。
【0261】
10.治癒的意図により処置され、過去5年間を超えて、再発を伴わないか、または再発の可能性が小さい、第2の悪性腫瘍(例えば、非黒色腫性皮膚がん、子宮頸部上皮内がん、前立腺がん、または表在性膀胱がん)を除く、第2の悪性腫瘍の履歴
11.6か月以内における、>New York Heart Association(NYHA)クラス2の、重度であるか、もしくはコントロール不能の全身疾患、うっ血性心不全、心筋梗塞(MI)の証拠、または治験責任医師の考えでは、患者が試験に参加することが所望されない検査室所見
12.治験責任医師が、患者の安全性を害する程度に顕著であると考えるか、またはG9.2-17 IgG4の毒性評価についての解釈を損なう、任意の医学的状態
13.重篤な非治癒性創傷、活動性潰瘍、または非処置骨折
14.頻繁なドレナージ手順を要求する、コントロール不能の胸水、心膜液、または腹水
15.キメラ抗体もしくはヒト化抗体または融合タンパク質に対する、重度のアレルギー反応、アナフィラキシー反応、または他の過敏性反応の履歴
16.サイクル1の1日目から6か月以内における、顕著な血管疾患(例えば、手術による修復を要求する大動脈瘤、または最近の動脈血栓症)
17.サイクル1の1日目の2または3か月前以内における、肺塞栓症、脳卒中、または一過性虚血性発作の履歴
18.サイクル1の1日目の6か月前以内における、腹瘻または消化器穿孔の履歴
19.活動性の自己免疫障害(I型糖尿病、ホルモン置換法だけを要求する甲状腺機能低下症、白斑、乾癬、または禿頭を除く)
20.シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、サリドマイド、および抗腫瘍壊死因子[抗TNF]剤を含むがこれらに限定されない、全身免疫抑制処置を要求すること。急性、低用量の、全身免疫抑制薬(例えば、デキサメタゾンまたはプレドニゾロン)を施されているか、または施されつつある患者は、登録することができる。置換療法(例えば、サイロキシン、インスリン、生理学的コルチコステロイド置換療法(例えば、副腎または下垂体の機能不全のための、1日当たり≦10mgのプレドニゾン同等物))は、全身処置の形態とは考えられない。吸入型コルチコステロイドおよび鉱質コルチコイド(例えば、フルドロコルチゾン)、外用ステロイド、鼻腔内ステロイド、関節内ステロイド、および眼内ステロイドの使用は許容される。
【0262】
21.広域スペクトル鎮痛剤による介入(経口剤および/またはパッチ剤)に不応性の腫瘍関連疼痛(>悪性度3)
22.ビスホスホネートの使用にも関わらない、コントロール不能の高カルシウム血症
23.治験薬の使用を禁忌するか、または結果の解釈に影響を及ぼしうるか、または患者を、処置に由来する合併症の高危険性に置く、疾患または状態についての合理的な疑いをもたらす、任意の他の疾患、代謝機能不全、身体検査所見、または臨床検査室所見
24.臓器移植(複数可)を受けていること
25.透析を受けていること。
【0263】
(肝)胆管がん(第1部についてのHCC、および第1部および第2部についてのCCA)に特異的な、さらなる除外基準
1.HCCのための任意のアブレーション療法(ラジオ周波数アブレーションまたは経皮エタノール注射)についての、既往の試験への登録を<6週間にしていること
2.肝性脳症または重度の肝腺腫
3.チャイルド-ピュースコアが≧7であることソラフェニブを拒絶するか、もしくは忍容しなかったことがある;または標準治療が、無効であるか、忍容不可能であるか、もしくは不適切であるかあると考えられるか、または有効な標準治療が利用可能でないこと
4.ソラフェニブを含む、少なくとも1つの既往の全身選択治療を施される間に進行した、転移性肝細胞がん;あるいは手術による治療および/または局所領域治療、あるいは無効であるか、忍容不可能であるか、もしくは不適切であるかあると考えられるか、または有効な標準治療が利用可能でない標準治療を含む標準治療時における進行の後に、ソラフェニブ処置に対して非忍容性であるか、またはこれを拒絶した転移性肝細胞がん
5.胆管または胃の排出部の閉塞は、内視鏡、手術、または介入手段により、効果的な排出がなされる条件で許容される
6.膵液瘻、胆汁瘻、または腸瘻は、適切で、非感染性で、かつ、開存性のドレーン管によりコントロールされる条件で許容される(任意のドレーンまたはステントが、in situである場合、研究開始の前に開存を確認するものとする)。
【0264】
<研究評価>
評価スケジュールは、処置開始の、最大で、4週間前になされうる、投与前スクリーニングの後で、2週間サイクルに分割する。研究評価は、有資格の医師、医療従事者、または医師の助手により実施される、医学検査および身体検査を含む。聴取される病歴は、腫瘍履歴、放射線療法履歴、手術の履歴、現行の投薬、および過去の投薬を含む。評価は、再病期診断スキャン(造影剤を伴うCT、造影剤を伴うMRI、PET-CT(診断用CT)、および/またはX線)を含む。
【0265】
評価はまた、腫瘍生検(投与前の1回目で開始し、実施可能な生検を反復する)(スキャン(複数回可)に応じる)も含む。代替的に、投与前に、登録保管組織を使用することもできる。
【0266】
関与性の腫瘍マーカー(例えば、Ca15-3、CA-125、CEA、CA19-9、アルファフェトタンパク質など)は、適切な場合、サイクルごとに、投与前に(再病期診断スキャンと同じスケジュールに従い、処置6か月後に、3サイクルごとに減少させることができる)評価する。評価は、バイタルサイン、ECOG、有害事象、血液カウント、血液化学、血液凝固(プロトロンビン時間(PT)および部分トロンボプラスチン時間(PTT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT))、血液および腫瘍バイオマーカー解析(免疫表現型解析、サイトカイン測定)、および尿検査(比重、タンパク質、白血球エステラーゼ、グルコース、ケトン、ウロビリノーゲン、亜硝酸塩、WBC、RBC、およびpH)をさらに含む。血清化学は、グルコース、総タンパク質、アルブミン、電解質[ナトリウム、カリウム、塩化物、全CO2]、カルシウム、リン、マグネシウム、尿酸、ビリルビン(総ビリルビン、直接ビリルビン)、SGPT(ALT)またはSGOT(AST)、アルカリホスファターゼ、ビリルビン、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、クレアチニン、Hgb A1c、血中尿素窒素、CPK、TSH、fT4、リパーゼ、アミラーゼ、PTH、テストステロン、エストラジオール、プロラクチン、FSH、LH、CRPを含む。
【0267】
造影剤を伴うCT(疾患位置を踏まえ、CTが、実施可能でも、適切でもない場合、CTスキャンではなく、またはこれに加えて、MRI、PET-CT、および/または他のイメージングモダリティー)が、再病期診断スキャンに好ましいモダリティーである。最近4~6週間以内に評価していない場合、評価は、6~8週間±1週間ごとに、かつ、処置の終了時に行う。
【0268】
患者の血液試料は、規定の臨床検査室検査のために回収さ、血液学および血清化学を含む。
【0269】
血液化学は、以下:グルコース、Hgb A1c、総タンパク質、アルブミン、電解質[ナトリウム、カリウム、塩化物、全CO2]、カルシウム、リン、マグネシウム、尿酸、ビリルビン(総ビリルビン、直接ビリルビン)、SGPT(ALT)またはSGOT(AST)、アルカリホスファターゼ、ビリルビン、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、クレアチニン、血中尿素窒素、CPK)、TSH、fT4、リパーゼ、アミラーゼ、PTH、テストステロン、エストラジオール、プロラクチン、FSH、LH、CRPを含む。
【0270】
<被験薬、用量、および投与>
抗Gal9抗体は、疾患の進行、許容不可能な毒性、または同意の取下げまで、静脈内(IV)注射を介して、2週間ごと(Q2W)に投与される。用量制限毒性を経る対象は、研究メディカルモニターとの討議の後に、患者が、臨床利益を享受している場合、抗Gal9抗体の投与を再開しうる。最大で、25%の用量低減、または治験責任医師の臨床的裁量に従い、メディカルモニターおよび治験依頼者の同意を伴う用量低減がなされる。
【0271】
・第1段階:対象に、CRMデザインに従い、抗Gal9抗体単独を施す。
・第2段階:第1部で同定されたRP2Dを使用して、対象に、単剤としての抗Gal9抗体、または抗PD-lと組み合わせた抗体のRP2Dを施す。患者が毒性を呈する場合、抗Ga9抗体の用量を低減する(例えば、25%の低減)。
【0272】
・第3段階:第2段階で有効性が観察された処置群を、第3段階でも使用し、第2段階で調べた用量レベルで、適切に拡大する、すなわち、ORR/患者の生存(腫瘍型に応じた)が、規定された最小閾値を越える場合は、これに応じて拡大する。
【0273】
<他の薬物>
・組合せ薬:承認されている抗PD-1 mAb(例えば、上記で言及された抗PD-1 mAb);
・用量:抗PD-1 mAbの用量は、新薬治験開始届出書により決定される承認薬に応じて決定される。
【0274】
・投与方式:静脈内注入。
<統計学的方法>
対象データ、疾患データ、および全ての臨床安全性データは、分散についての適切な尺度(すなわち、95%CI、範囲)と共に、平均値、中央値、または比率として、記述的に提示される。ウォーターフォールプロットおよびスイマープロットは、各疾患部位内における、各研究群の、患者についての、奏効率および応答の持続期間をグラフにより提示するのに使用される。全ての有効性解析は、そうでないことが指定されない限りにおいて、ITT集団に基づくものとする。無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)についての生存曲線は、カプラン-マイヤー法により作成される。6つの研究群のうちのいずれかの間で、比較解析はなされない。潜在的なバイオマーカー、ならびにORR、PFS、およびOSと潜在的に関連する、他の予測因子を同定するのに、探索的相関解析もまた企図する。全ての統計学的解析は、SAS、version 9.2.(SAS、Cary、NC)を使用して実施されるものとする。
【0275】
<研究手順および査定>
・検査室パラメータ、バイタルサイン、およびECGの、臨床的に顕著な変化を含む、AE/CTCAEに基づくAEおよびSAEの発生率および重症度
・DLTの発生率、PK、およびPD
・血漿PKパラメータ(例えば、AUC0-24h、Gm.、Tmax、推定半減期);時間プロファイルと対比した血清濃度
・客観的奏効率(完全奏効および部分奏効)(ORR)および臨床有用率(3か月またはこれを超える客観的奏効および安定);無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、疾患コントロール率(DCR)
・血液および腫瘍による免疫表現型解析、ガレクチン9の血清レベル、血漿レベル、ならびに組織内の(腫瘍細胞、間質細胞、免疫細胞の)発現レベルおよび発現パターン、応答までの時間(TTR)、ならびに他のバイオマーカー解析、CT(PET)イメージング、他の臨床的に関与性のイメージング。
【0276】
<安全性モニタリング>
規定の安全性モニタリングは、メディカルモニターが実施する。PKについての解析を含む、安全性モニタリングは、PI(principal investigator)(および、必要に応じて、Co-I(co-investigator))、および治験依頼者の代表、および研究専門メディカルモニターからなる、Safety Monitoring Committee(SMC)が実施する。必要に応じて、さらなる治験責任医師および研究チームメンバーも、再検討に参加する。このオープンラベル研究には、Independent Data Monitoring Boardを利用しないものとする。
【0277】
第1段階の用量漸増フェーズでは、各コホートのサイクル1について再検討した後で、次のコホートへの用量漸増に進む。安全性データおよび入手可能なPKデータは、SMCが、各コホートの全ての患者において、用量制限毒性(DLT)について評価するのに使用される。用量漸増時における安全性のための注意として、新たな患者は、各コホートの最初の患者を、抗Gal9抗体で処置し、処置後最低7日間が経過した後で初めて、登録し、処置する。各患者について、選択的DLT安全性解析は、サイクル1の完了後に実施される。
【0278】
用量制限毒性(DLT)は、転移性腫瘍における疾患の進行、併発疾病、または併用薬に関連せず、研究薬に関連し、研究の第1のサイクルにおいて生じるとして評価され、以下の基準のうちのいずれかを満たす、臨床的に顕著な血液学的有害事象もしくは非血液学的有害事象、または検査室値の異常として規定される:
・任意の持続期間を有する、全ての悪性度4の血液学的毒性および非血液学的毒性
・全ての悪性度3の血液学的毒性および非血液学的毒性。例外は、以下の通りである:
○入院または中心静脈栄養法による支持を要求せず、支持ケアにより、48時間以内に、≦悪性度2に管理されうる、悪性度3の悪心、嘔吐、および下痢
○24時間以内に、≦悪性度2に是正されうる、悪性度3の電解質異常
○他の悪性度3aの非症候性検査室異常
DLT期間=1サイクル、すなわち、各サイクルの1および15日目における、G9.2-17の2回の投与。
【0279】
患者は、通常、X線により、進行が確認されるまで、研究処置において維持される。患者が、X線では進行を有するが、臨床では明白な進行を有さず、代替的処置が開始されていない場合、治験責任医師の裁量で、患者は、研究処置を持続することができる。しかし、患者が、X線における進行を伴わずに、臨床における明白な進行を有する場合は、研究処置を停止させ、利用可能な処置選択肢について、患者に助言する。
【0280】
特殊な例外(例えば、臨床的に安定な患者における、ある特定の内分泌障害)は、承認された製品表示に記載されうるが、重篤であるか、または致死性の免疫関連有害反応(IMAR)の事象、または全身ステロイドの開始を促す事象では、承認されているチェックポイント阻害剤およびG9.2-17 IgG4のいずれも中断する。
【0281】
プロトコールが、(a)承認されているチェックポイント阻害剤の中断、または(b)IMARのための全身ステロイドの開始の状況でも、被験薬剤の継続を提案する場合、このような手法の安全性を裏書きする、十分な正当性を提示すること。
【0282】
AE管理のために、用量低減を使用する事象では、2つの用量低減を許容する。各用量低減では、ベースライン用量の30%を低減する。用量低減は、治験責任医師が、臨床利益が導出されており、導出され続けると評価する場合に限りなされるものとする。
【0283】
TEAE(treatment emergent adverse event)とは、研究投薬の初回投与時に、またはこの後で生じる事象であると規定されるものとする。コード辞書である、MedDRA(Medical Dictionary for Regulatory Activities)を、AEをコードするために使用するものとする。TEAE、重篤なTEAEまたはCTCによる悪性度3もしくは4のTEAE、および治療に関連するTEAEは、全体として、かつ、処置群ごとに、SOC(system organ class)およびPT(preferred term)によりまとめるものとする。これらは、事象の数、ならびに所与の事象を伴う患者の数およびパーセントをまとめるものとする。加えて、TEAEを伴う患者の数およびパーセントを、最高の重症度により提示するものとする。SOC(system organ class)およびPT(preferred term)によるTEAEであって、いずれかの処置群内の患者のうちの、少なくとも5パーセントにおいて生じるTEAE全ての概要を提示するものとする。
【0284】
≧悪性度3である、任意のAEであって、1つまたは複数の研究薬に、関連する可能性があるか、おそらく関連するか、または確定的に関連するAEは、メディカルモニターとの討議が要求されない以下を例外として、投与を継続する前に、メディカルモニターと討議するものとする:
・<72時間にわたり持続する局所注射部位反応であって、疼痛、発赤、腫脹、硬化、または掻痒を含む、局所注射部位反応
・<72時間にわたり持続する全身注射反応であって、発熱、筋痛、頭痛、または疲労の全身注射反応
治験責任医師の判断に従い(研究メディカルモニターとの討議の後に)、≧悪性度3の有害事象については、毒性の消失まで(悪性度1またはこれ未満まで)、投与の遅延が必要な場合がある。
【0285】
プロトコールの第2部では、1例または複数例の患者が、DLTを発症する場合、G9.2-17 IgG4の投与を、推奨フェーズ2用量(RP2D)を下回る用量による投与1回に低減するものとする。
【0286】
患者が、処置期間を完了したら、全生存追跡を、3か月ごとに、最長で2年間にわたり実施する。臨床的進行のために離脱する患者についても、可能な場合は、X線評価を継続する。
【0287】
59日目、または最終回投与の30日後に、早期に処置を中断した患者を含む、以下の手順を行う。
【0288】
・再病期診断スキャン(造影剤を伴う、CT、MRI、PET-CT、またはX線):研究の終了時が、最終サイクルの>6~8週間後である場合には、反復し、治験責任医師の裁量で、間隔を短くする。
【0289】
・関与性の腫瘍マーカー(例えば、Ca15-3、CA-125、CEA、CA19-9、アルファフェトタンパク質など)は、適切な場合、サイクルごとに、投与前に(再病期診断スキャンと同じスケジュールに従い、処置6か月後に、3サイクルごとに減少させることができる)評価する。
【0290】
・12誘導ECG
・身体検査
・ECOG
・5分間にわたる仰臥後におけるバイタルサイン(温度、HR、BP、RR、体重を含む)
・併用薬(名称、適応、用量、経路、開始日および終了日)
・有害事象
・女性の場合、妊娠検査
・全血算(CBC)、白血球分類、血小板、ヘモグロビン
・血液化学(グルコース、総タンパク質、アルブミン、電解質[ナトリウム、カリウム、塩化物、全CO2]、カルシウム、リン、マグネシウム、尿酸、ビリルビン(総ビリルビン、直接ビリルビン)、SGPT(ALT)またはSGOT(AST)、アルカリホスファターゼ、ビリルビン、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、クレアチニン、血中尿素窒素、CPK)、TSH、fT4、PTH、エストラジオール、プロラクチン、テストステロン、FSH、LH
・血液凝固(PT、PTT)
・尿検査
・PDのための血液:バイオマーカー解析
・PKのための血液試料
<腫瘍評価のためのRECIST基準>
ベースラインの腫瘍評価では、腫瘍病変/リンパ節を、測定可能な腫瘍病変、または測定不可能な腫瘍病変に類別し、測定可能な腫瘍病変を、測定平面内の最長直径に従い記録する(最短軸で測定される、罹患リンパ節を除く)。ベースラインにおいて、1つを超える測定可能な病変が存在する場合、全ての病変は、全ての関与する臓器を表す、最大で、合計5つまでの病変(および臓器1つ当たり最大で2つの病変)を、標的病変として同定するものとする。標的病変は、それらのサイズ(直径が最長である病変)ベースで選択される。全ての標的病変についての直径の合計を計算し、ベースラインの合計の直径として報告する。
【0291】
罹患リンパ節を含む、他の全ての病変(または罹患部位)は、非標的病変として同定し、これらもまた、ベースラインにおいて記録する。測定は要求されず、これらの病変は、「存在」、「非存在」、または「明白な進行」として追跡される。
【0292】
疾患応答(完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定(SD)、および進行(PD))は、下記に概括される通りに評価される。
【0293】
疾患応答尺度は、CR、PR、およびSDを含む、全般的疾患コントロール率(DCR)、CRおよびPR、無増悪生存期間(PFS)、ならびに進行までの時間(TTP)を含む、客観的奏効率(ORR)の計算を可能とする。
【0294】
[RECIST(Response Evaluation CRITERIA IN Solid Tumors)ガイドライン]
RECIST 1.1に従う全奏効は、以下の、腫瘍量に基づく、時点ごとの応答評価に由来する。
【0295】
標的病変の査定:
・完全奏効(CR):全ての標的病変の消失である。任意の罹患リンパ節(標的の場合であれ、標的でない場合であれ)は、短軸が、<10mmに縮減していなければならない。
【0296】
・部分奏効(PR):ベースラインの合計の直径を参照に取る場合の、標的病変の直径の合計の、少なくとも30%の減少である。
【0297】
・進行(PD):研究中の最小の直径の合計(これは、研究中の最小である場合の、ベースラインの直径の合計を含む)を参照に取る場合の、標的病変の直径の合計の、少なくとも20%の増大である。20%の相対的増大に加え、直径の合計がまた、少なくとも5mmの絶対増大も裏付けなければならない(注:1つまたは複数の新たな病変の出現もまた、進行と考えられる)。
【0298】
・安定(SD):研究中の最小の合計の直径を、参照に取る場合に、PRにふさわしい、十分な退縮も、PDにふさわしい、十分な増大も見られない場合である。
【0299】
非標的病変の査定:
・完全奏効(CR):全ての非標的病変の消失、および腫瘍マーカーレベルの正常化である。全てのリンパ節は、非罹患サイズ(短軸が<10mm)でなければならない。
【0300】
・非CR/非PD:1つまたは複数の非標的病変(複数可)の存続、および/または正常限界を上回る腫瘍マーカーレベルの維持である。
【0301】
・進行(PD):存在する非標的病変の、明白な進行である(注:1つまたは複数の新たな病変の出現もまた、進行と考えられる)。
【0302】
[実施例2]
抗ガレクチン9抗体についての安定性試験
候補IgG4抗体を、いくつかの異なる条件下および異なる濃度下で保管した後で、安定性解析にかけた。安定性解析は、TOSOH TSKgel Super SW mAbカラムを使用するサイズ除外クロマトグラフィー(SEC)を介して実施した。保管の前後におけるSECプロファイルを比較して、タンパク質の安定性に関わる、任意の問題(例えば、凝集または分解)を同定した。
【0303】
<材料および方法>
(試料の調製)
抗ガレクチン9抗体は使用時まで-80℃で保管した。解析の前に、試料を室温の水浴中で融解させ、解析まで氷上で保管した。操作する前に、Nanodropを使用して、280nmにおける吸光度を測定した。測定のブランクにはTBS(20mMのトリス、pH8.0、150mMのNaCl)を使用した。次いで、試料を、ポリプロピレン製のマイクロ遠心管(USA Scientific、1615-5500)に移し、4℃、16.1k×gで、30分間にわたり遠心分離した。0.22μmのフィルター(Millipore;SLGV004SL)をして、試料を濾過した。濾過後吸光度を測定した。
【0304】
(HPLC解析)
被験試料条件は、以下:周囲空気における安定性(室温で0時間、室温で8時間)、冷蔵安定性(4℃で0時間、4℃で8時間、4℃で24時間)、および凍結/融解安定性(凍結/融解1回、凍結/融解3回、凍結/融解5回)を含んだ。各条件は、3つの異なる濃度:原液、10倍希釈液、および100倍希釈液において、二連で試行した。各条件について、100μLずつの試料を調製し、ポリプロピレン製のマイクロ遠心管内に保管した。必要な場合、TBS中で、希釈液を調製した。280nmにおける吸光度は、解析の前に読み取った。室温試料は、表示の持続期間にわたり保管した。4℃の試料は、氷上で、または4℃の冷蔵庫内で、表3に表示の期間にわたり保管した。凍結-融解試料は、液体窒素中で瞬時凍結させ、次いで、室温水浴中で融解させた。凍結/融解工程を1回、3回、または5回にわたり実施し、次いで、試料を解析まで4℃で保管した。
【0305】
TOSOH TSKgel SuperSW mAb HRカラムを、280nmにおけるUV検出器を伴う、Shimadzu HPLC上で使用して、SEC解析を実施した。カラムに25μLの試料をロードし、0.5mL/分で40分間にわたり作動させた。KBI緩衝液製剤を移動相として使用した。
【0306】
(結果)
表3に示される通り、濾過の前後に、UV吸光度の測定を使用して、抗体の濃度を決定した。KBIにより供給される、室温条件および凍結/融解条件における使用のための1つのバイアルと、4℃の条件における使用のための他のバイアルとによる、2mLの試料2つを融解させた。吸光度の読取りによれば、濾過後にほぼ完全に回収されていることが示された。
【0307】
【0308】
メインピークより早期に溶出される、2つまたは3つの高分子量ピークを観察した(
図1)。これらのピークは、アッセイされた各条件下で、総試料のうちの約5%を構成する(表4)。いずれのアッセイ条件下でも、タンパク質濃度の有意差は観察されなかった。
【0309】
【0310】
まとめると、抗ガレクチン9抗体は、SECプロファイルに顕著な変化が見られないことからわかるように、解析される全ての条件下における保管の後で、一貫した安定性を示した。濾過の後では、タンパク質の顕著な損失が見られず、2つ~3つの高分子量ピークが確認され、全試料のうちの約5%を占めた。結果は、抗体は、全ての被験条件下で安定であり、凝集物の形成または分解は観察されないことを示唆する。
【0311】
[実施例3]
腫瘍生検由来オルガノイド画分内のガレクチン9の発現についての評価
腫瘍オルガノイドは、元の腫瘍と同様の特徴を伴う腫瘍モデルの使用は、患者における薬物応答の、より正確な予測を結果としてもたらしうるので、患者転帰の予測に適用されうる(例えば、Trends in Biotechnology;36巻、4号、358~371頁、2018年4月1日を参照されたい)。
【0312】
腫瘍内のガレクチン9レベルは、薬物応答を予測する指標として機能しうる。生検由来オルガノイドは、元の腫瘍内のガレクチン9のレベルを評価する代理物として使用されうる。したがって、単一細胞内またはオルガノイド画分中のガレクチン9レベルを評価する能力について調べた。
【0313】
生検は、代表的な膵腺がんおよび結腸直腸がんから受け取り、以下の通りに加工した。ヒトから手術により切除された腫瘍検体を、新鮮な状態で、氷上のDMEM培地中に受け取り、10cmのディッシュ内でミンチ処理した。ミンチ処理された腫瘍を、100U/mLのIV型コラゲナーゼを伴うDMEM+10%FBS中に再懸濁させて、スフェロイドを得た。部分的に消化された試料をペレット化させ、次いで、新鮮なDMEM+10%FBS中に再懸濁させ、100mmおよび40mmフィルターの両方を通してストレーニングして、S1(>100mm)スフェロイド画分、S2(40~100mm)スフェロイド画分、およびS3(<40mm)スフェロイド画分を作出し、その後、これらを、維持された超低付着性組織培養プレート内で維持した。
【0314】
トリプシンにより、15分間にS2画分を消化して、単一細胞を得た。フローサイトメトリー調製物のために、S2画分およびS3画分に由来する細胞ペレットを再懸濁させ、Fc受容体のブロッキング(型番:422301;BioLegend、SanDiego、CA)の後で、細胞を、ヒトCD45(HI30)、CD3(UCHT1)、CD11b(M1/70)、Epcam(9C4)、およびGal9(9M1-3;全てBiolegend)を認識する蛍光コンジュゲートmAb、またはG9.2-17のGal9 FabもしくはFabアイソタイプと共にインキュベートすることにより、細胞の標識付けを実施した。Zombie Yellow(BioLegend)を使用して、死細胞を、解析から除外した。フローサイトメトリーは、Attune NxTフローサイトメーター(Thermo Scientific)によって実施した。データは、FlowJo v.10.1(Treestar、Ashland、OR)を使用して解析した。
【0315】
結果は、
図2A~2F、3A~3F、および4A~4Fに示され、Gal9 G9.2-17 Fabにより検出された、S2単一細胞画分中のガレクチン9のレベルと、S3オルガノイド画分中のガレクチン9のレベルとが相関することを指し示す。したがって、S2単一細胞およびS3オルガノイドのいずれも、腫瘍生検に由来するオルガノイド内のガレクチン9レベルの評価に使用することができる。
【0316】
[実施例4]
細胞解析のための、患者由来臓器型腫瘍スフェロイド(PDOT)の調製
生検由来オルガノイドは、免疫応答を刺激する治療剤の能力を評価する、有用な手段でありうる。したがって、ex vivoにおける培養のために使用され、上記の実施例3において記載されたS2画分を、抗ガレクチン9抗体である、G9.2-17で処置し、免疫プロファイリングのために調製した。
【0317】
S2画分のアリコートをペレットにし、NaOHを使用してpH調整された、フェノールレッド入りの10×PBSを添加した後、ラット尾部I型コラーゲン(Corning)中に、2.5mg/mLの濃度で再懸濁させた。7.0~7.5のpHは、PANPEHA Whatman paper(Sigma-Aldrich)を使用して確認した。次いで、スフェロイド-コラーゲン化合物を、その内容が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、Jenkinsら、Cancer Discov.、2018年2月;8巻(2号):196~215、「Ex Vivo Profiling of PD-1 Blockade Using Organotypic Tumor Spheroids」において記載されている通りに、3Dマイクロ流体培養物デバイスの中央ゲル領域に注入した。30分後に、患者由来臓器型腫瘍スフェロイド(PDOT)を含有する、コラーゲンハイドロゲルに、37℃の抗ガレクチン9モノクローナル抗体である、G9.2-17を伴う培地、またはこれを伴わない培地で浸した。次いで、PDOTを37℃で3日間にわたりインキュベートした。
【0318】
細胞ペレットを、FACS緩衝液中に再懸濁させ、細胞1×106個を、まず、Zombie Yellow(BioLegend)で染色して、死細胞を除外した。生存染色の後、FcγRIII/IIをブロッキングするために、細胞を、抗CD16/CD32 mAb(eBiosciences、SanDiego、CA)と共にインキュベートするのに続き、1μgの蛍光コンジュゲート細胞外mAbによる抗体染色を行った。Fixation/Permeabilization Solution Kit(eBiosciences)を使用して、サイトカインおよび転写因子についての細胞内染色を実施した。有用なヒトフローサイトメトリー抗体は、全て、Biolegend製である、CD45(HI30)、CD3(UCHT1)、CD4(A161A1)、CD8(HIT8a)、CD44(BJ18)、TNFα(MAb11)、IFNγ(4S.B3)、およびEpcam(9C4)を含んだ。フローサイトメトリーは、LSR-IIフローサイトメーター(BD Biosciences)上で実施した。データは、FlowJo v.10.1(Treestar、Ashland、OR)を使用して解析した。
【0319】
[実施例5]
がん患者の血漿中および血清中のガレクチン9レベルについての評価
血漿中および血清中のガレクチン9レベルを、患者試料中で評価し、健常ボランティアと比較した。血液(10ml)は、10例の健常対照および10例の手術不能がん患者の末梢静脈アクセスから採取した。血清および血漿は、各血液試料から抽出した。血液は、本質的に、製造元の指示書に従い使用される、標準的なEDTAチューブである、PicoKine(商標)ELISA;型番:EK1113内に回収した。個々の値の結果を、表5および表6に表す。
【0320】
【0321】
【0322】
[実施例6]
免疫組織化学解析を使用する、ガレクチン9の発現および局在についての評価
免疫組織化学解析を使用して、腫瘍内のガレクチン9の発現レベルを決定する能力を、パラフィン包埋生検由来腫瘍試料を使用して評価した。
【0323】
略述すると、スライドを、脱パラフィン処理し(キシレン:3分間×2回;無水アルコール:3分間×2回;メタノール:3分間×1回)、低温水道水ですすいだ。抗原賦活化のために、クエン酸緩衝液(pH6)を、水浴中で100℃にあらかじめ加熱し、スライドを、クエン酸緩衝液中で、5分間にわたりインキュベートした。スライドを、室温で、約10分間に放置して冷まし、流水中に入れた。スライドを、PBS中で洗浄し、切片の周りにパップペンサークルを描き、切片を、ブロッキング緩衝液(DAKO- Peroxidase blocking solution-S2023)中で、5分間にわたりインキュベートした。無血清ブロッカー(Novocastra serum free Protein Blocker)を添加し、次いで、PBSですすいだ。一次抗体(Sigma、抗ガレクチン9クローン1G3)を、DAKO-S2022希釈液中に、1:2000の希釈率で使用し、切片を4℃で一晩インキュベートした。スライドを、PBSで洗浄し、次いで、二次抗体(抗マウス)と共に、室温で45分間インキュベートした。スライドを洗浄し、ABC VECTOR STAIN(45分間)で染色し、PBSで洗浄し、DAB(1mlのstable DAB buffer+1 drop DAB)で、5分間染色し、流水中で洗浄した。ヘマトキシリンを添加して1分間静置し、70%のETOH+1%のHCLを適用して、過剰染色を回避した。スライドを、流水中に、2~3分間放置し、次いで、水中、次いで、無水アルコール中、次いで、キシレン中に、各々、30秒間にわたり、2回ずつ浸漬した。カバーをして、画像を取得した。化学療法で処置された結腸直腸がん、および結腸直腸がんの肝転移におけるガレクチン9染色を、
図5Aおよび5Bに示す。ガレクチン9陰性胆管がんの結果を、
図5Cに示す。
【0324】
[実施例7]
抗ガレクチン9抗体である、G9.2-17の、他のガレクチンとの交差反応性
抗体の特異性、および他のガレクチンとの交差反応性について評価するために、抗ガレクチン9抗体である、G9.2-17を、ガレクチンファミリーの全てのメンバーからなる、ヒトプロテオームアレイに対する結合について(かつ、2つの作業濃度において)調べた。抗体の特異性は、CDI製のHuProt Human Proteome Microarray(ヒトプロテオームのうちの約75%)を使用して査定した。マイクロアレイを、一次抗体と共にインキュベートし、すすぎ、蛍光標識二次抗体と共にインキュベートし、その後、各標的タンパク質について検出される蛍光量について解析した。結果を、マイクロアレイ画像として集成した。結果は、抗ガレクチン9抗体G9.2-17は、ガレクチン9に対して、高度に特異的であり、他の任意のガレクチンファミリーメンバーと交差反応しないことを指し示した。
【0325】
[実施例7]
抗ガレクチン9抗体は、T細胞を、ガレクチン9媒介性アポトーシスから保護する
抗ガレクチン9抗体である、G9.2-17の作用について探索するために、アポトーシスアッセイを実施して、T細胞が、アポトーシス過程により死滅するのか、他の機構により死滅するのかを決定した。
【0326】
略述すると、MOLM-13(ヒト白血病)細胞を、5%のCO
2、37℃の10%のFBS、2mMのL-グルタミン、10mMのHEPES、1mMのピルビン酸ナトリウム、4.5g/Lのグルコース、および1.5g/Lの炭酸水素ナトリウムを補充されたRPMI培地中で培養した。次いで、細胞を、無血清RPMI培地に移し、無血清培地中に、1mL当たりの細胞2.5×10
6個の濃度で再懸濁させた。細胞を、組織培養グレードの96ウェルプレートのウェルに、ウェル1つ当たりの細胞2×10
5個(ウェル1つ当たり80μLの細胞懸濁液)の密度で播種した。モノクローナル抗ガレクチン9抗体、またはマッチさせたアイソタイプを、各ウェルに添加し、5%のCO
2、37℃で、30分間インキュベートした。このインキュベーションの後、組換え、全長、ヒトガレクチン9(R&D Systems 2045-GA、PBS中で希釈された)を、200nMの最終濃度まで添加した。細胞を、5%のCO
2、37℃で、16時間にわたりインキュベートした。次いで、細胞を、Annexin V-488およびヨウ化プロピジウム(PI)で染色してから、フローサイトメトリーによる解析にかけた。各条件は、三連で実施した。PIは、生細胞およびアポトーシス性細胞には浸透しないが、細胞内の核酸に、緊密に結合して死細胞を赤色蛍光で染色する。緩衝液中のAlexa Fluor(登録商標)488 アネキシンVおよびPIによる細胞集団の染色の後、アポトーシス細胞は緑色蛍光を示し、死細胞は赤色蛍光および緑色蛍光を示し、生細胞は蛍光をほとんどまたは全く示さなかった。励起のためのアルゴン-鉄レーザー線を488nmとして、フローサイトメーターを使用して、細胞を識別した。次いで、FlowJoソフトウェアで解析を実施した。アネキシンV陽性細胞およびヨウ化プロピジウム(PI)陽性細胞の割合を使用される抗体濃度の関数として、
図6にプロットする。
図6に示される通り、抗Gal9抗体で処置されたアポトーシス性T細胞のレベルが、ヒトIgG4アイソタイプ対照抗体で処置されたT細胞よりはるかに低レベルであったことから、抗ガレクチン9抗体G9.2-17は、ガレクチン9媒介性細胞アポトーシスに対してT細胞を保護することを指し示す。
【0327】
[実施例8]
膵がんのマウスモデルにおける、Gal9抗体単独、またはチェックポイント阻害との組み合わせの評価、ならびにG9.2-17 mIgG1で処置されたマウスにおける腫瘍量および免疫プロファイル
G9.2-17 mIgG1の、腫瘍重量および免疫プロファイルに対する効果を、膵がんのマウスモデルにおいて評価した。8週齢の雄C57BL/6マウス(Jackson Laboratory、Bar Harbor、ME)に、Pdx1Cre;KrasG12D;Trp53R172H(KPC)マウス(Zambirinis CPら、「TLR9 ligation in pancreatic stellate cells promotes tumorigenesis」、J Exp Med.、2015;212巻:2077~94)に由来するFC1242 PDA細胞を、膵内注入により投与した。50%のMatrigel(BD Biosciences、Franklin Lakes、NJ)を伴うPBSで腫瘍細胞を再懸濁させ、開腹術を介して、腫瘍細胞1×105個を膵臓の本体に注入した。マウス(群当たりのn=10)に、i.p.における前処置投与1回に続く、市販の抗ガレクチン9 mAb(RG9-1、200ug、BioXcell、Lebanon、NH)またはG9.2-17 mIgG1(200μg)、または対をなすアイソタイプである、G9.2-IsoもしくはラットIgG2a(LTF-2、BioXcell、Lebanon、NH)(200μg)(毎週1回ずつ、3週間にわたる投与)の、3回にわたる投与(毎週1回)を施した。3週間後に、マウスを屠殺し、フローサイトメトリーによる解析のために、腫瘍を摘出した。規定の慣行に従い、組織を加工および調製し、フローサイトメトリー解析を実施した。例えば、米国特許第10,450,374号を参照されたい。
【0328】
単独における、または抗PD1 mAbと組み合わせた、G9.2-17 mIgG2aで処置されたマウスについての腫瘍量および免疫プロファイル
腫瘍重量および免疫プロファイルに対するG9.2-17 mIgG2aの効果を、膵がんのマウスモデルにおいて、単独で、または免疫療法との組み合わせで評価した。8週齢の雄C57BL/6マウス(Jackson Laboratory、Bar Harbor、ME)に、Pdx1Cre;KrasG12D;Trp53R172H(KPC)マウスに由来するFC1242 PDA細胞を、膵内注入により投与した。50%のMatrigel(BD Biosciences、Franklin Lakes、NJ)を伴うPBSで腫瘍細胞を再懸濁させ、開腹術を介して、腫瘍細胞1×10
5個を膵臓の本体に注入した。マウスに、i.p.における前処置投与1回に続く、表示の通り、単独、または組み合わせた、G9.2-17 mIgG2a(200μg)もしくは抗PD-1中和mAb(29F.1A12、200μg、BioXcell、Lebanon、NH)、または対をなすアイソタイプ(LTF-2およびC1.18.4、BioXcell、Lebanon、NH)の、3回にわたる投与(毎週1回)を施した。26日目に、マウスを屠殺し、解析のために腫瘍を摘出した。規定の慣行に従い、組織を加工および調製し、フローサイトメトリー解析を実施した。例えば、US10,450,374を参照されたい。各点は、1匹のマウスを表し;独立スチューデントのt検定により、
*p<0.05;
**p<0.01;
***p<0.001;
****p<0.0001である。これらの結果は、G9.2-17 mIgG2aによる単剤処置が、いずれの用量レベルでも、腫瘍増殖を低減するのに対し、抗PD-1単独は、腫瘍サイズに対して、効果を及ぼさなかったことを示す(
図7)。
【0329】
[実施例9]
免疫コンピテントマウスにおける結腸直腸がんおよび黒色腫がんについての2つの同系モデルにおける、抗Gal9抗体の評価
Gal9抗体である、G9.2-17およびG9.1-8m13を、免疫コンピテントマウスにおける結腸直腸がんおよび黒色腫がんについての同系モデルにおいて評価した。これらの2つの抗体の構造については、本明細書で提示されるか、またはそれらの各々の関与性の開示が、本明細書で言及される目的および対象物についての参照により組み込まれる、PCT/US2020/024767において開示されている。被験薬は、研究の持続期間にわたり、週ベースで製剤化および調製する。
【0330】
<実験デザイン>
研究前動物(雌C57BL/6、6~8週齢(Charles River Labs)を、3日間にわたり馴致し、次いで、左脇腹の皮下の片側に、100μlのPBS中に再懸濁させたB16F10細胞(黒色腫細胞系)またはMC38細胞(結腸直腸がん細胞系)5×105個を植え込んだ。植込みの2~3日後から始まる各実験のために、研究前の腫瘍体積を記録した。腫瘍が50~100mm3(好ましくは、50~75mm3)の平均腫瘍体積に到達したら、腫瘍体積により、投与のために使用される処置群または対照群に動物を合わせ、0日目に投与を開始する。抗Gal9 IgG1および抗Gal9 IgG2を調べるための研究デザインを、表7および表8にまとめる。
【0331】
【0332】
【0333】
腫瘍体積は、毎週3回測定する。最終的な腫瘍体積は、研究が終点に到達する日に測定する。動物が瀕死状態にあることが見出される場合は、最終的な腫瘍体積を測定する。動物は毎週3回秤量する。最終的な体重は、研究が終点に到達する日に、または動物が瀕死状態にあることが見出される場合に測定する。0日目と比較した場合に≧10%の体重減少を呈する動物には、DietGel(登録商標)で不断給餌する。7日間続く期間にわたり、>20%正味の体重減少を呈する任意の動物、またはマウスが0日目と比較した場合に、>30%正味の体重減少を提示する場合は、瀕死状態であると考え、安楽死させる。対照群(非打切り例)の平均値腫瘍体積が、1500mm3に到達するときを、研究の終点と定める。これが、28日目の前に生じる場合、28日目まで処置群および個々のマウスに投与し、測定する。対照群(非打切り例)の平均値腫瘍体積が、28日目までに1500mm3に到達しない場合は、全ての動物についての終点を、最長で60日目までの、対照群(非打切り例)の平均値腫瘍体積が、1500mm3に到達する日とする。各群の全ての動物から血液を回収する。血液回収のために、イソフルラン吸入により誘導された深麻酔下の心穿刺を介して、K2EDTAチューブ(400μl)および血清分離チューブ(残余量)に、可能な最大量の血液を回収する。K2EDTAチューブに回収された血液は、免疫パネルフローを実施するために使用されるまで、氷上に静置する。
【0334】
血清分離チューブに回収された血液は、室温で、少なくとも15分間にわたり凝固させる。試料を、室温、3500×gで、10分間遠心分離する。結果として得られる血清を分離し、個別に表示された透明ポリプロピレンチューブに移し、ブリッジングADAアッセイのための送付まで、ドライアイス上で、または-80℃を保持するように設定された冷凍庫内で、速やかに凍結させる(1週間以内に送付される)。
【0335】
全ての動物に由来する腫瘍は、以下の通りに回収する。サイズが400mm3未満の腫瘍は、瞬時凍結させ、ドライアイス上に静置し、RT-qPCR解析に使用されるまで-80℃で保管する。サイズが400~500mm3の腫瘍については、フローパネルにおける使用のために腫瘍全体をMACS培地に回収する。サイズが500mm3を超える腫瘍については、小片を瞬時凍結させ、ドライアイス上に静置し、RT-qPCR解析のために-80℃で保管し、残りの腫瘍は、フローサイトメトリーのためにMACS培地中に回収する。フローサイトメトリーのために、腫瘍をMACS培地に入れ、加工するまで氷上で保管する。
【0336】
全ての動物に由来する脾臓、肝臓、結腸、肺、心臓、および腎臓を、10%の中性緩衝ホルマリン(NBF)中で、18~24分間にわたり保持し、70%のエタノールに移し、室温で保管した。ホルマリン固定試料はパラフィン包埋する。
【0337】
[実施例10]
胆管がんモデルにおける、Gal9抗体の査定
Gal9抗体の有効性を、その内容が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、S.Rizviら(「YAP-associated chromosomal instability and cholangiocarcinoma in mice」、Oncotarget、9巻 (2018)、5892~5905)において記載されている、胆管がんのマウスモデルにおいて評価する。がん遺伝子(AKT/YAP)を、胆道系に直接注入するこの導入モデルでは、腫瘍は、種差と一致した腫瘍微小環境の免疫コンピテント宿主の胆道から発生する。投与については、表9に記載する。
【0338】
【0339】
略述すると、マウスCCA細胞(S.Rizviらにおいて記載されている)を採取し、DMEM中で洗浄した。1.5~3%のイソフルランを使用して、Jackson Labs製の雄C57BL/6マウスに麻酔をかけた。深麻酔下で、腹腔を、剣状突起の下方において、1cm切開した。滅菌綿棒を使用して、肝臓中葉の上外側面を露出させる。27ゲージ注射針を使用して、細胞1×106個を含有する標準培地40μLを、中葉の外側面に注入する。注射部位の上に綿棒を保持して、細胞の漏出血液の喪失を防止する。その後、吸収性クロム含有3-0消化管縫合材料により、腹壁と皮膚とを別個の層において閉止する。
【0340】
植込みの2週間後、腫瘍体積により、投与のために使用される処置群または対照群に動物を分け、0日目に投与を開始する。腫瘍体積を測定し、動物は毎週3回秤量する。最終的な腫瘍体積および体重は、研究が終点に到達する日(4週間後、または対照の腫瘍量が、1500mm3となるとき)に測定する。各群の全ての動物から血液を回収する。
【0341】
[実施例11]
in vitroおよびin vivoにおける抗Gal9抗体G9.2-17の特徴付け
in vivoおよびin vitroにおける薬力学研究および薬理学研究ならびに安全性薬理学を、下記に開示される通りに行った。この抗体は、G9.2-17と、正確な同じVH鎖およびVL鎖を有し、これにより、これと正確な同じ結合性エピトープを有し、種間で、G9.2-17と同じ交差反応性プロファイルのほか、結合アフィニティーおよび同じ機能プロファイルを有するように開発されたという事実に基づき、マウス研究のための、抗ガレクチン9 mAb G9.2-17のIgG1変化形により、in vivo研究を行った。
【0342】
in vitro研究
G9.2-17は、in vitroで評価されるように、<1nmolと同等の結合アフィニティーで複数種間(ヒト、マウス、ラット、カニクイザル)の交差反応性を有する。例えば、それらの関与性の開示が、本明細書で言及される目的および対象物についての参照により組み込まれる、PCT/US2020/024767を参照されたい。G9.2-17は、ガレクチン9タンパク質のCRD1ドメインと交差反応しない。G9.2-17は、優れた安定性特徴および精製特徴を有し、霊長動物において存在する他のガレクチンタンパク質のうちのいずれに対する交差反応性も有さない。
【0343】
下記の表10は、in vitroにおける薬理学研究の結果をまとめる。
【0344】
【0345】
作用機構を理解するための研究は、ADCC/ADCP(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用/抗体依存性細胞性食作用)、および遮断機能の評価を含んだ。ヒトIgG4 mAbについて予測される通り、G9.2-17は、ADCCまたはADCPを媒介しない(
図8A)。予測される通り、ADCCおよびADCPを媒介する、陽性対照としての、G9.2-17のIgG1ヒト対応物に対して、これを調べた(
図8B)。
【0346】
さらに、G9.2-17の遮断機能を、競合的結合ELISAアッセイにおいて査定した。G9.2-17が、ガレクチン9 CRD2ドメインの、その結合パートナーである、CD206ヒト組換えタンパク質への結合を、強力に遮断することから、ガレクチン9活性を遮断するものとする、G9.2-17について意図された作用方式を確認する。さらに、本発明者らが、MOLM-13 T細胞アポトーシスアッセイを最適化したところ、ここで、G9.2-17は、ガレクチン9タンパク質処理により引き起こされるアポトーシスから、細胞を、巧みにレスキューする(ガレクチン9処理による、約50%のアポトーシス、およびガレクチン9+G9.2-17処置による、約10%のアポトーシス)。
【0347】
さらに、広範なin vitroにおける特徴付けを行って、G9.2-17の結合特徴および機能特徴を、G9.2-17と、正確に同じCDRドメインを含有するため、同じ結合性エピトープ、すなわち、ガレクチン9のCRD2ドメインを有する、マウスIgG1 G9.2-17 mAbと比較した。mIgG1 G9.2-17は、G9.2-17自体による、任意の潜在的な免疫原性の発生を回避するように、マウス同系薬理学有効性研究における使用のために開発された。mIgG1 G9.2-17は、種間で同等の<1ナノモルのアフィニティーを有するほか、ヒトがん細胞系である、CRL-2134に対して、同じ細胞ベースの結合アフィニティーを有する。mIgG1 G9.2-17は、MOLM-13 T細胞アポトーシスアッセイにおいて、G9.2-17自体と同等のデータをもたらす。
【0348】
<in vivoにおける薬理学>
in vivoアッセイは、G9.2-17の交差反応性および結合アフィニティー特徴を共有するマウスmAb(G9.2-17結合性エピトープを、IgG1のマウス骨格にクローニングしたmAb(動物有効性研究のための、G9.2-17のサロゲートmAb))を使用して作製された同系マウスモデルを含む。
【0349】
被験同系マウスモデルは、
・同所膵腺がん(KPC)マウスモデル(単剤、および抗PD-1との組合せ):腫瘍体積の評価およびフローサイトメトリー;
・皮下黒色腫B16F10モデル(単剤、および抗PD-1との組合せ):腫瘍体積の評価およびフローサイトメトリー;
・皮下MC38モデル(単剤、および抗PD-1との組合せ):腫瘍体積の評価
であった。
【0350】
さらに、G9.2-17で処置された、ex vivoにおける患者由来腫瘍培養物(オルガノイド)を、G9.2-17の作用機構を探索するために使用するものとする。
【0351】
機構的に述べると、G9.2-17が、遮断活性を有し、ADCC/ADCP活性は有さないことを見出した。ガレクチン9の、免疫抑制性マクロファージ上のCD206など、その結合性受容体との相互作用の遮断が観察される。機能的に、in vivo研究は、G9.2-17 mIgG1サロゲート抗体で処置された、複数の同系モデル(同所膵KPC腫瘍増殖モデル、および皮下黒色腫B16F10モデル)における腫瘍増殖の低減を裏付けた。単剤の抗ガレクチン9 mAb、および抗PD-1と組み合わせた抗ガレクチン9 mAbで処置されたマウス腫瘍では、G9.2-17は、エフェクターT細胞を再活性化させ、免疫抑制性サイトカインのレベルを低減する。抗PD-1 mAbを伴う、組合せ研究は、腫瘍内におけるエフェクターT細胞の高度の存在を示唆することから、組合せ法についての臨床試験を裏書きする。重要なことは、G9.2-17の機構的作用を探索し、患者由来の腫瘍培養物(Jenkinsら、2018)(PDAC、CRC、CCA、HCCに由来する原発部位および転移部位からの腫瘍の切除)において裏付けたところ、G9.2-17が、再現可能かつ頑健なT細胞再活性化を誘導することから、ex vivoにおいて、ガレクチン9により付与された、腫瘍内免疫抑制の反転を指し示すことである。
【0352】
s.c.における、抗PD-1と抗ガレクチン9 mAbとの組合せを評価するために、黒色腫B16モデルを、単剤の抗PD-1および抗ガレクチン9のほか、これらの組合せで処置した。組合せ群では、エフェクターT細胞の腫瘍内の存在が増強された。
【0353】
200μgの抗ガレクチン9 mIgG1+抗PD-1による処置では、細胞傷害性(CD8)T細胞のレベルの、200μgの抗ガレクチン9 mIgG1の場合と比較した、有意(p<0.001)な上昇が観察され、抗PD-1単独と比較した、200μgの抗ガレクチン9 IgG1+抗PD-1でも観察される(p<0.01)。このような結果は、抗Gal9抗体と、抗PD-1抗体とは、組み合わされると、優れた治療効果を達成すると予測されることを示唆する。
【0354】
下記の表11は、in vivoにおける薬理学研究の結果をまとめる。
【0355】
【0356】
さらに、G9.2-17 IgG1マウスmAb(別称:G9.2-17 mIgG)、抗PD1抗体、またはG9.2-17 IgG1マウスmAbと抗PD1抗体との組合せによる処置に対する腫瘍免疫応答を、本明細書で記載されるB16F10皮下同系モデルにおいて探索した。
図9Aおよび
図9Bにおいて示される通り、G9.2-17と抗PD1との組合せは、マウスモデルにおいて、腫瘍体積を低減し、CD8+細胞を増大させるのに相乗効果を示した。
図10Aおよび10Bは、G9.2-17抗体が、腫瘍内T細胞における、CD44およびTNFaの発現を増大させたことを示す。
【0357】
[実施例12]
投与後1週間および3週間の観察期間を伴う、雄Sprague Dawleyラットにおける、非GLP単回投与、用量設定静脈内毒性研究
本研究は、Sprague Dawleyラットへの単回静脈内ボーラス投与に続く、8および22日目における、1週間後(終了時)および3週間後(回復時)の剖検の後において、G9.2-17 IgG4の解剖学的評価項目について評価した。全ての動物は、予定の剖検まで生存した。本研究の終了時剖検動物または回復時剖検動物には、被験薬関連の肉眼的所見、臓器重量変化、または顕微鏡的所見は見られなかった。
【0358】
この非GLP、探索、単回投与、用量設定、静脈内毒性研究の目的は、Sprague Dawleyラットへの、2分間にわたる静脈内ボーラス投与後における、G9.2-17 IgG4の急性毒性を同定し、特徴付けるのに続き、投与後1週間(終了時)および3週間(回復時)にわたる観察期間を置くことであった。
【0359】
この非GLP単回投与毒性研究は、24匹の雄Sprague Dawleyラットにおいて、G9.2-17 IgG4の毒物動態および潜在的な毒性を決定するために行った。1日目において、少なくとも2分間にわたり、緩徐ボーラス静脈内注射により、動物に、媒体、または10mg/kg、30mg/kg、もしくは70mg/kgのG9.2-17 IgG4を投与するのに続き、投与後1週間(終了時、8日目)または3週間(回復時、22日目)にわたる期間を置いた。研究評価項目は、死亡率、臨床観察、体重、および食物摂取、臨床病理学(血液学、凝固、臨床化学、および尿検査)、トキシコキネティックパラメータ、ADA査定、ならびに解剖病理学(肉眼剖検、臓器重量、および組織病理学)を含んだ。実験デザインの概要を下記の表13に示す。
【0360】
【0361】
8日目または22日目に、全ての生存動物を、剖検にかけた。完全死後検査を実施し、臓器重量を収集した。終了時および回復時に、全ての動物に由来する臓器を秤量した。顕微鏡による査定に要求される組織をトリミングし、規定通りに加工し、パラフィン内に包埋し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。
【0362】
本研究の経過中に、予定外の死亡は見られなかった。全ての動物は、終了時剖検または回復時剖検まで生存した。認められた組織学的変化は、偶発的所見であるか、または被験薬の投与以外の実験操作の一部の側面に関連すると考えられた。これらの偶発的組織変更のうちで、被験薬に関連する、患者数、重症度、または組織学的特徴の変更は見られなかった。臨床観察、体重、食物摂取、臨床病理学、または解剖病理学では、G9.2-17 IgG4関連所見は見られなかった。結論として述べると、10、30、および70mg/kgのG9.2-17 IgG4の、Sprague Dawleyラットへの単回静脈内投与は、有害所見を伴わずに忍容された。したがって、本研究の条件下で、NOELは、70mg/kgであった。
【0363】
[実施例13]
観察期間を投与後3週間とする、カニクイザルにおける、G9.2-17 IgG4についての、非GLP単回投与、用量設定、静脈内注入毒性研究
この非GLP単回投与毒性研究は、8匹のカニクイザルにおいて、G9.2-17 IgG4の急性毒性を同定し、特徴付けるために行った。30分間の静脈内(IV)注入により、動物(群1つ当たり1匹の雄[M]/1匹の雌[F])に、媒体、または30mg/kg、100mg/kg、もしくは200mg/kgのG9.2-17 IgG4を投与するのに続き、投与後3週間にわたる観察期間を置いた。研究評価項目は、死亡率、臨床観察、体重、および定性的食物摂取;臨床病理学(白血球サブセットに対する、血液学、凝固、臨床化学、免疫表現型解析、および白血球サブセット上のガレクチン9発現、ならびにサイトカイン解析);トキシコキネティックパラメータ;可能な抗薬物抗体査定(ADA)のための血清回収;ならびに可溶性ガレクチン9解析;ならびに解剖病理学(肉眼剖検、臓器重量、および組織病理学)を含んだ。
【0364】
臨床観察、体重、食物摂取、臨床病理学(血液学、臨床化学、凝固、またはサイトカイン解析)、白血球サブセットに対する免疫表現型解析、白血球サブセット上のガレクチン9の発現、可溶性ガレクチン9、または解剖病理学では、G9.2-17 IgG4関連所見は見られなかった。
【0365】
結論として述べると、カニクイザルへの30、100、および200mg/kgのG9.2-17 IgG4の単回の静脈内注入による投与は、有害所見を伴わずに忍容された。したがって、本研究の条件下で、無毒性量(No-observed-Adverse-Effect-Level:NOAEL)は、査定された最高用量レベルである、200mg/kgであった。研究デザインを、表14に示す。
【0366】
【0367】
媒体および被験薬は、研究期間中に、伏在静脈内に経皮的に留置されたカテーテルを介する、30分間にわたるIV注入を介して、1回投与した。用量レベルは、30、100、および200mg/kgであり、20mL/kgの投与容量で投与された。対照群に、処置群と同じ方式で溶媒を施した。
【0368】
投与時には、動物をスリングで拘束した。溶媒または被験薬は、直近の体重に基づき、注入ポンプおよび滅菌のディスポーザブル型シリンジを使用して投与した。投与シリンジに、適切な容量の媒体または被験薬(20mL/kg+2mL)を充填した。投与が完了したら、動物を注入システムから取り出した。各回の注入の開始前および終了時に、各投与シリンジの重量を記録して、責任用量範囲を決定した。
【0369】
<詳細な臨床観察>
動物をケージから取り出し、各動物についての、詳細な臨床検査を、1日目における注入開始(SOI)の1および4.5時間後に実施し、その後、研究期間中に毎日1回実施した。動物をケージから取り出し、各動物についての、詳細な臨床検査を、1日目における注入開始(SOI)の1および4.5時間後に実施し、その後、研究期間中に毎日1回実施した。全ての動物について、移動時、-1日目における無作為化の前、および研究期間中毎週、体重を測定し、記録した。
【0370】
臨床病理学の査定(血液学、凝固、および臨床化学)は、試験前、ならびに1日目(投与前)、3、8、および21日目に、全ての動物に対して行った。血液学パラメータの決定のためのさらなる試料、ならびに末梢血リンパ球試料およびサイトカイン解析試料は、SOIの30分後(注入の終了直後)、ならびに4.5、8.5、24.5、および72.5時間後(1日目と比べて)に回収した。骨髄スミアを、回収し、保存した。
【0371】
被験薬の血清濃度を決定するために、大腿静脈を介して、全ての動物から、血液試料(約0.5mL)を回収した(表15を参照されたい)(逸脱については、付録1を参照されたい)。臨床病理学回収のための空腹時と一致する間隔を例外として、血液回収の前に、動物を空腹にしなかった。
【0372】
【0373】
加工のために、血液試料を、添加剤非含有バリアフリー微細管に回収し、回収から1時間以内に、制御された室温で遠心分離した。結果として得られる血清を、あらかじめ表示を施されたクライオチューブ内の、ほぼ等量の2つのアリコートに採取した。全てのアリコートを、回収から2時間以内に、-60℃~-90℃で凍結させて保管した。
【0374】
予定の剖検時に安楽死させた、全ての動物に対して、死後研究査定を実施した。
獣医科病理医により承認された手順下で、剖検検査を実施した。触知可能な腫瘍塊を含む、外部の異常について、注意深く、動物を検討する。腹側正中切開部から、皮膚を裏返し、任意の皮下腫瘍塊を同定し、生前所見と相関させる。腹腔、胸腔、および頭蓋腔を、異常について検討した。臓器を摘出し、検討し、要求される場合は、固定液に入れた。眼(視神経を含む)および睾丸を除く、全ての指定組織を、中性緩衝ホルマリン(NBF)中で固定した。眼(視神経を含む)および睾丸は、改変デイビッドソン固定液に入れ、次いで、70%のエタノールに、最大で、3日間にわたり移してから、最終的に、NBFに入れた。気管を介して、ホルマリンを、肺に注入した。組織および臓器の全装備を、全ての動物から回収した。
【0375】
予定の剖検時に、体重およびプロトコール指定の臓器重量を、全ての動物について記録し、適切な臓器重量比を計算した(体重および脳重量と比べて)。対をなす臓器は、一体にして秤量した。甲状腺および副甲状腺についての組合せ重量を収集した。
【0376】
<結果>
全ての動物は、22日目における予定の剖検まで生存した。処置動物では、被験薬関連臨床観察または獣医学的観察が認められなかった。処置期間中または回復期間中の処置動物では、体重に対する被験薬関連作用は観察されなかった。いずれの用量レベル、いずれの性別、およびいずれの間隔でも、血液学評価項目に対する、G9.2-17 IgG4関連作用は見られなかった。
【0377】
いずれの用量レベル、いずれの性別、いずれの間隔でも、凝固時間(すなわち、活性化部分トロンボプラスチン時間[APTT]およびプロトロンビン時間)またはフィブリノーゲン濃度に対する、G9.2-17 IgG4関連作用は見られなかった。個々の凝固値の間の全ての変動は、散発性であり、生物学的ばらつき、および手順関連のばらつきと符合し、かつ/または無視できる大きさであり、G9.2-17 IgG4の投与に関連しないと考えられた。
【0378】
いずれの間隔、いずれの用量レベルで、いずれの性別でも、臨床化学評価項目に対する、G9.2-17 IgG4関連作用は見られなかった。個々の臨床化学値の間の全ての変動は、散発性であり、生物学的ばらつき、および手順関連のばらつきと符合し、かつ/または無視できる大きさであり、G9.2-17 IgG4の投与に関連しないと考えられた。
【0379】
いずれの間隔、いずれの用量レベルで、いずれの性別でも、サイトカイン評価項目に対する、G9.2-17 IgG4関連作用は見られなかった。個々のサイトカイン値の間の全ての変動は、散発性であり、生物学的ばらつき、および手順関連のばらつきと符合し、かつ/または無視できる大きさであり、G9.2-17 IgG4の投与に関連しないと考えられた。
【0380】
肉眼的剖検観察の再検討は、被験薬に関連すると考えられる所見を明らかにしなかった。被験薬に関連すると考えられる、臓器重量の変更は見られなかった。被験薬関連変化も見られなかった。
【0381】
結論として述べると、30、100、および200mg/kgのG9.2-17 IgG4の、カニクイザルへの、単回の静脈内注入による投与は、有害所見を伴わずに忍容された。したがって、本研究の条件下で、無毒性量(NOAEL)は、査定された最高用量レベルである、200mg/kgであった。
【0382】
動物をケージから取り出し、各動物についての、詳細な臨床検査を、1日目における注入開始(SOI)の1および4.5時間後に実施し、その後、研究期間中に毎日1回実施した。
【0383】
[実施例12]
カニクイザルにおけるG9.2-17についての静脈内注入研究
本研究の目的は、カニクイザルにおける、毎週1回、30分間ずつ、5週間にわたる静脈内(IV)注入の後における、被験薬である、G9.2-17(ガレクチン9に結合するhIgG4モノクローナル抗体)についての毒性およびトキシコキネティックをさらに特徴付け、3週間にわたる回復期間の後における、観察される任意の変化の可逆性、進行、または出現の遅延について査定することであった。
【0384】
<実験デザイン>
表12は、研究デザインをまとめる。
【0385】
【0386】
研究で使用される動物(カニクイザル)を、同様の群平均値体重を達成するようにデザインされた、体重による、標準的な無作為化手順により、研究群に割り当てた。雄と雌とを、個別に無作為化した。研究に割り当てられた動物は、各性別についての平均値体重の±20%以内の体重を有した。
【0387】
G9.2-17を欠く製剤(「媒体」)、またはG9.2-17を含有する製剤(「被験薬」)を、研究期間中に、毎週1回、5週間にわたり(1、8、15、22、および29日目に)、30分間のIV注入を介して、動物に投与した。用量レベルは、投与1回当たり0、100、および300mg/kgであり、10mL/kgの投与容量で投与した。対照動物群に、処置群と同じ方式で、媒体を施した。投与は、伏在静脈に経皮的に留置されたカテーテルを介して実施し、新たな滅菌ディスポーザブル型シリンジを、各回の投与に使用した。トキシコキネティック試料回収日の投与前および投与終了時に、責任用量範囲を測定し、記録して、目標用量の±10%を投与することを確保した。個々の用量は、直近の体重に基づいた。終了時剖検および回復時剖検における回収のために、最終回投与部位に印をつけた。全ての投与は、被験薬の調製から8時間以内に実施した。
【0388】
下記に説明される通りに、動物に、生存中の手順、観察、および測定を実施した。
全ての動物に、心電図検査を実施した。これらの測定における、極度の変動またはアーチファクトを最小化するために、心電図(ECG)を記録する前に、動物の不要な興奮を引き起こすことを回避するように、可能な限りの注意を払った。標準的なECG(10誘導)を、50mm/秒で記録した。適切な誘導を使用して、RR間隔、PR間隔、およびQT間隔、ならびにQRS持続を測定し、心拍数を決定した。補正QT(QTc)間隔は、Bazett(1920)により記載されている方法に基づく手順を使用して計算した。全ての出力波形は、獣医科の心臓専門医に助言を求めることにより、査定し、報告した。
【0389】
連続性および信頼性の一助とするために、2名の独立の評価者が、全ての機会について、機能観察総合評価法(FOB)による査定を行ったが、これらは、飼育ケージおよび開放領域における、詳細な神経行動学的査定(GauvinおよびBaird、2008)からなった。各技官は、サルを、各飼育ケージおよびケージ外における観察スコアについて、独立に(結果を、互いと共有せずに)評定し、次いで、試験の完了の後に、個々のスコアを、それらのパートナーのスコアと一致させるために評価した。FOB査定は、各動物について、ベースラインにおける差違を確立する投与前(-9日目または8日目)、ならびに1および15日目における注入開始から2~4時間後、ならびに終了時剖検および回復時剖検の前に行った。観察は、活動レベル、姿勢、流涙、唾液分泌、振戦、痙攣、線維束性攣縮、常同挙動、顔面筋運動、眼瞼閉鎖、瞳孔反応、刺激(視覚、聴覚、および食物)に対する反応、体温、チャドック-バビンスキー反射、固有受容感覚、不全麻痺、運動失調、測定障害、ならびに傾斜の評価、傾斜における運動および歩行についての査定を含んだがこれらに限定されなかった。
【0390】
各動物の血圧を、測定し、記録したが、これらは、収縮期動脈圧、拡張期動脈圧、および平均値動脈圧からなった。20mmHg以内の平均値動脈圧(MAP)を有する、3つの読取りを使用して、血圧の測定値を報告した。
【0391】
試験施設の標準業務手順書に従い、目視評価により、各動物の呼吸数を、動物1匹/回収間隔当たり3回ずつ測定し、記録した。3回の回収の平均を、報告値とする。
【0392】
臨床的病理学査定(例えば、免疫表現型解析およびサイトカイン査定)は、全ての動物について、所定の間隔で行った。骨髄スミアを、回収し、保存した。被験薬の血清濃度を決定するために、大腿静脈を介して、全ての動物から、血液試料(約0.5mL)を回収した。臨床病理学回収のための空腹時と一致する間隔を例外として、血液回収の前に、動物を空腹にしなかった。研究の終結時(36日目または50日目)に、動物を安楽死させ、組織学による加工のために組織を回収し、顕微鏡による査定を収集した。
【0393】
可溶性ガレクチン9は、以下の通りに査定した。投与前、ならびに1、8、15、および29日目における注入開始から24時間後、ならびに終了時剖検および/または回復時剖検の前に、血清中の可溶性ガレクチン9を決定するために、全ての動物から、大腿静脈を介して、血液試料(約1mL)を回収した。臨床病理学回収のための空腹時と一致する間隔を例外として、血液回収の前に、動物を空腹にしなかった。
【0394】
可溶性ガレクチン9試料は、以下の通りに加工した。血液試料を、添加剤非含有バリアフリー微細管に回収し、周囲空気温度で凝固させ、周囲空気温度で遠心分離した。結果として得られる血清を、あらかじめ表示を施されたクライオチューブ内の、2つのアリコートに採取した(100μLを、アリコート1に採取し、残りを、アリコート2に採取した)。全てのアリコートを、回収から2時間以内に、ドライアイス上で、瞬時凍結させ、-60℃~-90℃で凍結させて保管した。
【0395】
報告の表中で示される全ての結果は、生データを丸める手順に従い、丸められていない値を使用して計算したものであり、示される個々のデータから正確に再現されていない場合がある。
【0396】
<結果>
・死亡
全ての動物は、予定の、36日目における終了時剖検、および50日目における回復時剖検まで生存した。
【0397】
・詳細な臨床観察および獣医学的観察
処置期間中または回復期間中の処置動物では、被験薬関連臨床観察または獣医学的観察は認められなかった。
【0398】
・機能的観察総合評価法
処置期間中または回復期間中の処置動物では、被験薬関連FOB観察は認められなかった。
【0399】
・体重および体重増加
処置期間中または回復期間中の処置動物では、体重および体重増加における被験薬関連作用は認められなかった。
【0400】
・眼科検査
処置期間中または回復期間中の処置動物では、眼科検査における被験薬関連作用は認められなかった。
【0401】
・血圧値
処置期間中または回復期間中の処置動物では、血圧値における被験薬関連作用は認められなかった。
【0402】
・呼吸数値
処置期間中または回復期間中の処置動物では、呼吸数値における被験薬関連作用は認められなかった。
【0403】
・心電学
処置期間中または回復期間中の処置動物では、心電図査定における被験薬関連作用は認められなかった。
【0404】
・血液学
いずれの時点の、いずれの用量レベルの、いずれの性別においても、血液学パラメータの間で、G9.2-17関連作用は見られなかった。
【0405】
・凝固
いずれの時点の、いずれの用量レベルの、いずれの性別においても、凝固パラメータの間で、G9.2-17関連作用は見られなかった。
【0406】
・臨床化学
いずれの時点の、いずれの用量レベルの、いずれの性別においても、臨床化学パラメータの間で、G9.2-17関連作用は見られなかった。
【0407】
・尿検査
13週間の中間の、いずれの用量レベルの、いずれの性別においても、尿検査パラメータの間で、G9.2-17関連変更は観察されなかった。
【0408】
・サイトカイン
いずれの用量レベルまたは時点においても、サイトカインに対する、決定的なG9.2-17関連作用は見られなかった。
【0409】
・末梢血白血球解析(PBLA)
いずれの用量レベルまたは時点においても、PBLA評価項目に対するG9.2-17関連作用は見られなかった。
【0410】
・バイオアナリシス、ガレクチン9、およびトキシコキネティックについての査定
G9.2-17は、用量の投与の後における、全てのG9.2-17投与動物に由来する全てのカニクイザル試料中で定量可能であった。対照カニクイザル試料中では、測定可能量のG9.2-17は検出されなかった。可溶性ガレクチン9は、全ての動物に由来する、全てのカニクイザル試料中で定量可能であった。1日目の投与前に、大半のG9.2-17処置動物、ならびに1および29日目に、対照動物から得られた、全ての血清試料中のG9.2-17血清濃度は、バイオアナリシスの定量限界を下回った(LLOQ<0.04ug/mL)。
【0411】
・肉眼的病理学および臓器重量
主要研究動物または回復動物について、被験薬関連の決定的な肉眼的観察は見られなかった。主要研究動物または回復動物について、被験薬関連の臓器重量変化もまた見られなかった。
【0412】
・組織病理学
決定的な、被験薬関連の顕微鏡的観察は見られなかった。
【0413】
結論として述べると、100および300mg/kgの、G9.2-17の、5週間にわたる、カニクイザルへの、毎週1回の静脈内注入投与は、有害所見を伴わずに忍容された。
【0414】
[実施例13]
Sprague DawleyラットにおけるG9.2-17についての静脈内注入研究
本研究の目的は、Sprague Dawleyラットに、連続4週間にわたり、毎週1回の静脈内注射により投与されるのに続き、投与後3週間にわたる回復期間を置いた場合における、ガレクチン9に対して方向付けられた、IgG4ヒトモノクローナル抗体である、G9.2-17の潜在的毒性について査定することであった。加えて、G9.2-17のトキシコキネティック特徴を決定した。
【0415】
<実験デザイン>
表13は、研究デザインをまとめる。
【0416】
【0417】
186匹の動物(Sprague Dawleyラット)を、体重ごとに、無作為に、処置群に割り当てた。被験薬のための製剤緩衝液である、対照薬/媒体と、被験薬である、G9.2-17とを、1、8、15、22、および29日目に、尾静脈における、0、100、および300mg/kgの用量レベルの、単回IV注射を介して、1回ずつ投与した。被験薬は、1日目に、SSD亜群に割り当てられた動物へも、100および300mg/kgの用量レベルで、1回投与した。
【0418】
臨床観察は、馴致の2日目に始めて、毎日1回、午前中の室内清掃の前に実施した。動物の全般的な健康状態および福利を評価するように、死亡の点検を、毎日2回行った。食物摂取は、容器内の食物の供給量および残量を、毎週1回秤量することにより推定した。1日当たり動物1匹当たりの平均グラム(g)は、毎週の食物摂取量から計算した。体重は、-1日目における無作為化の前、次いで、研究を通して毎週1回、および各剖検日に測定した。機能観察総合評価法(FOB)による観察を、SSB動物について、1、35、および49日目における投与実施の約24時間後に記録した。尿は、代謝ケージを使用して、一晩にわたり回収した。試料は、36および50日目に得た。
【0419】
血清化学のための検体を含む、一連の各回収の前に、一晩にわたり、動物を、空腹状態に置いた。これらの場合に、臨床病理学査定は、空腹動物によった。終結時に、拘束覚醒動物の頸静脈、または麻酔下動物の大静脈から、血液を回収した。
【0420】
研究のうちの、生存中検査時に評価されるパラメータは、臨床観察、食物摂取、体重、機能観察総合評価法を含んだ。血液試料は、臨床病理学(血液学、凝固、および血清化学)解析のために、選択された時点において回収した。尿試料は、尿検査のために回収した。血液試料はまた、選択された時点において、トキシコキネティック(TK)解析、免疫原性(例えば、抗薬物抗体またはADA)解析、およびサイトカイン解析のためにも回収した。動物は、36および50日目に、剖検にかけた。各剖検時に、肉眼観察および臓器重量を記録し、顕微鏡による検査のために、組織を回収した。
【0421】
<結果>
生存中の検査
死亡:研究期間中に、この動物について、異常な臨床観察または体重変化は認められなかった。
【0422】
臨床観察:研究期間中にG9.2-17関連臨床観察は認められなかった。
食物摂取/体重:研究期間中に食物摂取、体重のG9.2-17関連変化、またはG9.2-17関連の体重増加は認められなかった。
【0423】
臨床病理学:臨床病理学パラメータの、G9.2-17関連変化は認められなかった。
【0424】
サイトカイン解析:IL-2、IL-4、IFN-γ、IL-5、IL-6、IL-10、および/またはTNFα、MCP-1およびMIP-1bの血清濃度の、G9.2-17関連変化は見られなかった。
【0425】
肉眼的病理学:G9.2-17関連肉眼的観察は見られなかった。さらに、絶対臓器重量または相対臓器重量の、G9.2-17関連変化も見られなかった。
【0426】
組織病理学:G9.2-17関連組織学所見は見られなかった。
結論として述べると、G9.2-17の、Sprague Dawleyラットへの、毎週1回ずつ、合計5回にわたる静脈内投与は、一般に良好に忍容された。臨床観察、食物摂取、体重、FOBパラメータ、臨床病理学、サイトカイン、肉眼観察、または臓器重量における、G9.2-17関連変化は見られなかった。
【0427】
同等物
上記の記載から、当業者は、本発明の基本的特徴を容易に確認することができ、それを、多様な使用および条件に適合させるように、その精神および範囲から逸脱しない限りにおいて、本発明の多様な変化および改変を施すことができる。したがって、他の実施形態もまた、特許請求の範囲内にある。
【0428】
本明細書では、本発明のいくつかの実施形態が、記載および例示されたが、当業者は、機能を実施し、かつ/または本明細書で記載される結果および/もしくは利点のうちの1つもしくは複数を得るための、他の様々な手段および/または構造を、たやすく想定し、このような変動および/または改変の各々は、本明細書で記載される、本発明の実施形態の範囲内にあるものとみなされる。より一般に、当業者は、本明細書で記載される、全てのパラメータ、寸法、材料、および構成は、例示的であることを意図するものであり、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、具体的な適用、または本発明の教示が使用される適用に依存することをたやすく察知するであろう。当業者は、規定を超えない実験を使用して、本明細書で記載される、本発明の特異的実施形態の、多くの同等物を認識または確認することが可能であろう。したがって、前出の実施形態は、例だけを目的として示されるものであり、付属の特許請求、およびこれらの同等物の範囲内で、本発明の実施形態は、具体的に記載され、特許請求されるのと別の形でも実施されうることを理解されたい。本開示における、本発明の実施形態は、本明細書で記載される、各個別の特徴、システム、品目、材料、キット、および/または方法を対象とする。加えて、2つまたはこれを超える、このような特徴、システム、品目、材料、キット、および/または方法の、任意の組合せも、このような特徴、システム、品目、材料、キット、および/または方法が、相互に矛盾しない限りにおいて、本開示における、本発明の範囲内に含まれる。
【0429】
本明細書で規定され、使用される、全ての定義は、辞書による定義、参照により組み込まれる文献における定義、および/または規定された用語の通常の意味に優先されて理解されるものとする。
【0430】
本明細書で開示される、全ての参考文献、特許、および特許出願は、それについてそれらの各々が引用される対象物に関して、参照により組み込まれ、場合によって、文献の全体を包摂しうる。
【0431】
本明細書および特許請求の範囲において使用される不定冠詞である、「ある(a)」および「ある(an)」は、逆のことが明確に指し示されない限りにおいて、「少なくとも1つの」を意味するように理解されるものとする。
【0432】
本明細書および特許請求の範囲において使用される、「および/または」という語句は、このように接続された要素の「一方または両方」、すなわち、ある場合には、連言的に存在し、他の場合には、選言的に存在する要素を意味するように理解されるものとする。「および/または」を伴って列挙される複数の要素は、同じ形で、すなわち、このように接続される要素のうちの「1つまたは複数」であると理解されるものとする。「および/または」節により、具体的に同定される要素以外に、具体的に同定される要素と関連する場合であれ、関連しない場合であれ、任意選択で、他の要素も存在しうる。したがって、非限定例として述べると、「~を含むこと」などのオープンエンドの表現と共に使用される場合の、「Aおよび/またはB」に対する言及は、一実施形態では、Aだけを指す場合もあり(任意選択で、B以外の要素を含む);別の実施形態では、Bだけを指す場合もあり(任意選択で、A以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、AおよびBの両方を指す場合もある(任意選択で、他の要素を含む)などである。
【0433】
本明細書および特許請求の範囲において使用される、「または」とは、上記で規定された「および/または」と同じ意味を有するように理解されるものとする。例えば、リスト内の項目を分ける場合、「または」または「および/または」は、包含的である、すなわち、要素の数またはリストのうちの、少なくとも1つの包含であるが、また、1つを超える数またはリストも含み、任意選択で、列挙されていない、さらなる項目を含むと解釈されるものとする。「~のうちの1つだけ」もしくは「~のうちの正確に1つ」、または、特許請求の範囲で使用される場合の、「~からなること」など、逆のことが明確に指し示された用語だけが、要素の数またはリストのうちの、正確に1つの要素の包含を指す。一般に、本明細書で使用される「または」という用語は、「いずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つだけ」、または「~のうちの正確に1つ」など、排他性の用語により先立たれている場合に限り、排他的代替物(すなわち、「一方または他方であるが、両方ではない」)を指し示すと解釈されるものとする。特許請求の範囲で使用される場合の、「~からなること」は、特許法の分野で使用される場合の、その通常の意味を有するものとする。
【0434】
1つまたは複数の要素を有するリストに言及して、本明細書および特許請求の範囲で使用される、「少なくとも1つの」という語句は、要素のリスト内の要素のうちの、いずれか1つまたは複数から選択されるが、要素のリスト内で、具体的に列挙される、各要素およびあらゆる要素のうちの少なくとも1つを、必ずしも含まず、要素のリスト内の要素の任意の組合せを除外しない、少なくとも1つの要素を意味するように理解されるものとする。この定義はまた、要素が、具体的に同定される要素に関連する場合であれ、関連しない場合であれ、「少なくとも1つの」という語句が指す要素のリスト内で、具体的に同定される要素以外に存在しうることを可能とする。したがって、非限定例として述べると、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または、これと同義に、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または、これと同義に「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)とは、一実施形態では、任意選択で、1つを超えるAを含むが、Bは存在しない、少なくとも1つのAを指す場合もあり(かつ、任意選択で、B以外の要素を含む);別の実施形態では、任意選択で、1つを超えるBを含むが、Aは存在しない、少なくとも1つのBを指す場合もあり(かつ、任意選択で、A以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、任意選択で、1つを超えるAを含む、少なくとも1つのA、および1つを超えるBを含む、少なくとも1つのBを指す場合もある(かつ、任意選択で、他の要素を含む)などである。
【0435】
また、逆のことが明確に指し示されない限り、本明細書で特許請求される、1つを超えるステップまたは行為を含む、任意の方法において、方法のステップまたは行為の順序は、列挙された方法のステップまたは行為の順序に、必ずしも限定されないことも理解されたい。
【配列表】