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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】電気化学的発電機を破砕する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/54 20060101AFI20241105BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
H01M10/54
H01M10/44 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021568071
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2020063203
(87)【国際公開番号】W WO2020229477
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】1905066
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル・ビリー
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/192743(WO,A1)
【文献】中国特許第104124487(CN,B)
【文献】特表2007-531977(JP,A)
【文献】特開2005-26089(JP,A)
【文献】特開平8-306394(JP,A)
【文献】特開平7-88617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/54
H01M 10/44
H01M 6/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム又はナトリウムを含有する負極(20)及び正極(30)を含む電気化学的発電機(10)をナイフミルを用いて破砕する方法であって、イオン性液体、及び負極(20)で還元されて電気化学的発電機(10)を放電させることができるいわゆる酸化性レドックス種を含有するイオン性液体溶液(100)中で、電気化学的発電機(10)をナイフミルを用いて破砕する工程を含み、イオン性液体溶液(100)が深共晶溶媒を形成し、ナイフミルの破砕領域はイオン性液体溶液(100)で満たされていることを特徴とする、方法。
【請求項2】
イオン性液体溶液(100)が、正極(30)において酸化されることが可能な第2のいわゆる還元性レドックス種を含有し、いわゆる酸化性レドックス種及びいわゆる還元性レドックス種がレドックス種対を形成することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
レドックス種対が、金属対、有機分子対、メタロセン対、又はハロゲン化分子対であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
イオン性液体溶液(100)がさらなるイオン性液体を含有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
電気化学的発電機(10)が不活性雰囲気中で破砕されることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
電気化学的発電機(10)を破砕する工程の前に、解体工程及び/又は選別工程を含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
電気化学的発電機(10)を破砕する工程に続いて、高温冶金工程及び/又は湿式冶金工程を含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
電気化学的発電機(10)がリチウムイオン発電機又はナトリウムイオン発電機であることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
電気化学的発電機(10)を破砕する工程が、0℃~100℃の範囲の温度で行われることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
金属対が、Mn 2+ /Mn 3+ 、Co 2+ /Co 3+ 、Cr 2+ /Cr 3+ 、Cr 3+ /Cr 6+ 、V 2+ /V 3+ 、V 4+ /V 5+ 、Sn 2+ /Sn 4+ 、Ag /Ag 2+ 、Cu /Cu 2+ 、Ru 4+ /Ru 8+ 、及びFe 2+ /Fe 3+ から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
メタロセン対が、Fc/Fc であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
ハロゲン化分子対が、Cl /Cl 又はCl /Cl 3- であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的発電機、例えばLiイオン、Naイオン、又はリチウム金属の蓄電池又は電池などを、特にそれらのリサイクル及び/又は保管を視野に入れて破砕する方法に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、イオン性液体及びレドックス活性種を含有する溶液中で電気化学的発電機を破砕する方法に関する。レドックス活性種を使用して電気化学的発電機を放電させる。イオン性液体は、特に爆発性雰囲気の形成を防ぐことにより、この工程が完全に安全に行われることを可能にする。
【0003】
こうして電気化学的発電機の回収可能な破片を安全にリサイクルすることができる。
【背景技術】
【0004】
電気化学的発電機は化学エネルギーを電気エネルギーへ変換する発電デバイスである。これは例えば、電池セル又は蓄電池であってもよい。
【0005】
蓄電池市場、特にLiイオン型のリチウム蓄電池の市場は、一方ではいわゆる携帯用途(スマートフォン、コンピューター、カメラなど)のため、他方では新たなモビリティ関連用途(電気自動車及びハイブリッド車)及びいわゆる定置用途(電力網へ接続されている)のために、現在急速に拡大している。
【0006】
近年の蓄電池数の成長に起因して、それらのリサイクルの問題が重要な課題となっている。
【0007】
従来、リチウムイオン蓄電池はアノード、カソード、セパレータ、電解質、及びケーシングを含む。
【0008】
典型的には、アノードはPVDF型のバインダーと混合され銅箔上に堆積させたグラファイトから形成され、カソードはバインダーと混合されアルミニウム箔上に堆積させたリチウム金属挿入材料(例えばLiCoO、LiMnO、LiNiO、LiNiMnCoO、又はLiFePO)である。
【0009】
電解質は、非水性溶媒及びリチウム塩、並びに二次反応を減速させる任意選択の添加剤の混合物である。
【0010】
これは次のように作動する。充電時、リチウムが金属酸化物から脱インタカレートし、グラファイトへインタカレートするが、これは熱力学的に不安定である。放電時、このプロセスが逆行し、リチウムイオンがリチウム金属酸化物にインタカレートされる。
【0011】
セルを使用すると、経年劣化が容量の低下を生じさせ、これはリサイクルされなければならない。
【0012】
しかし、リサイクルしようとする多数の蓄電池又はバッテリーパックはまだ少なくとも部分的に充電されており、特に一次リチウム電池セル(Li-SOCl)では、それらの破砕は火花及び著しい引火又は爆発さえも発生させる。
【0013】
損傷したセルもリサイクルされなければならない。しかし、これらのセルはアノード上にリチウム金属堆積物を有する場合があり、これは空気又は水にさらされると非常に反応性が高い。
【0014】
そのためリサイクルしようとする寿命に達した及び/又は損傷したセルは最大限に注意して処理されなければならない。
【0015】
蓄電池リサイクル法は複数の工程:
- 解体段階及び安全化段階を含む、前処理工程と、
- 熱処理及び/又は湿式冶金処理を行ってこれらの電池セル及び蓄電池に含有される様々な材料及び変換可能な金属を回収する工程と
を含む。
【0016】
これまでは、主な困難はこれらのリチウム系(一次及び二次)電気化学的システムを安全化する段階にある。
【0017】
より具体的には、格納性が損なわれると、毒性、可燃性、かつ腐食性の生成物である電解質が液体状だけでなくガス状形態でも漏れ出る。このようにして生じ空気と混合された蒸気は次いで爆発性雰囲気(ATEX)を形成することがある。この雰囲気は、引火源、例えば火花又は高温表面などと接触すると引火することが可能である。これは熱効果及び圧力効果の両方を伴う爆発をもたらす。更に、電解質塩、例えば六フッ化リン酸リチウムLiPF、四フッ化ホウ酸リチウムLiBF、過塩素酸リチウムLiClO、及び六フッ化ヒ酸リチウムLiAsFなどは、リン、フッ素、及び/又はリチウムを含有する特に毒性で腐食性の煙霧を発することがある。例えば、Liイオン電池の熱分解の間にフッ化水素酸(HF)が形成される恐れがある。
【0018】
これらの欠点を克服するために、制御された雰囲気を有し制御された圧力下のチャンバー内及び電池を破砕することができる。例として、国際公開第2005/101564号の文献は、周囲温度及び不活性雰囲気において湿式冶金法によりリチウムアノード電池をリサイクルする方法を記載している。雰囲気はアルゴン及び/又は二酸化炭素を含有する。2種のガスは酸素を追い出し、破砕装入物の上方に保護ガス空間を形成することになる。二酸化炭素の存在は炭酸リチウムを表面に形成させることによるリチウム金属の不動態化を生じさせることになり、これはこの金属の反応性を減速させる。リチウム含有破砕装入物の加水分解は水素の形成につながる。水素引火及び爆発のリスクを防ぐために、リチウム含有破砕装入物を注意深く制御された方法で水溶液へ加え、浴の上方に非常に強い乱流を作る。この操作は雰囲気中の酸素の欠乏を伴う。水は水酸化リチウムが豊富となり、炭酸ナトリウム又はリン酸を加えることによりリチウムが回収される。
【0019】
米国特許第5,888,463号明細書に記載される方法において、電池セル及び蓄電池は極低温法を使用して安全化される。電池セル及び蓄電池は破砕される前に-196℃の液体窒素中で凍結される。次いで破砕材料を水に浸す。HSの形成を防ぐために、LiOHを加えることによりpHを少なくとも10のpHで維持する。炭酸ナトリウムを加えることにより、形成されるリチウム塩(LiSO、LiCl)が炭酸塩として析出する。
【0020】
加国特許出願公開第2313173号明細書の文献は、リチウムイオン電池セルをリサイクルする方法を記載している。電池セルを事前に無水の不活性雰囲気中で切り開く。第1の有機溶媒(アセトニトリル)を使用して電解質を溶解させ、第2の有機溶媒(NMP)を使用してバインダーを溶解させる。次いで粒子状挿入材料を溶液から分離し電気分解により還元する。
【0021】
国際公開第2011/113860号の文献において、いわゆる乾燥技術が記載されている。ミルの温度を40~50℃に維持し、燃焼のリスクを最小限にするために、サイクロン様の気流によって、電池から放出される水素及び酸素の混合物を排除する。選別後に回収された電池の断片及び塵埃を周囲温度まで冷却する。リチウムの抽出は空気中の酸素及び水分との反応により行われると見られ、燃焼及び爆発につながる恐れがある、水素、酸素、及び熱が同時に存在することに付随するリスクをもたらす。更に、電解質が分解され、塵埃及びガスの扱いにおけるリスク、損失、及び困難につながる。
【0022】
Georgi-Maschler等による論文(「Development of a recycling process for Li-ion batteries」、Journal of Power Sources 207 (2012年) 173~182頁)に記載される、UmiCore VAL’EAS(商標)法は、高温冶金処理及び湿式冶金処理を組み合わせている。解体された電池を炉に直接供給する。高温冶金処理を使用してそれらを不活性化し、電解質をおよそ300℃で蒸発させ、プラスチック700℃で熱分解し、最後に残りを1,200~1,450℃で溶融及び還元する。この方法において、電池セルに含有される有機材料の一部は還元剤として作用する。アルミニウム及びリチウムは失われる。鉄、銅、及びマンガンは水溶液中に回収される。コバルト及びニッケルはLiCoO及びNi(OH)として回収され、リサイクルされてカソード材料を得る。しかし、このタイプの熱処理は大量のエネルギーを消費し、電池部材の著しい分解を引き起こす。
【0023】
欧州特許出願公開第0613198号明細書の文献は、リチウム電池セルから材料を回収する方法を記載している。燃焼を防ぐために高圧ウォータージェット下又は不活性雰囲気中のいずれかで電池セルを開封する。次いでリチウムを水、アルコール、又は酸と反応させてそれぞれ水酸化リチウム、リチウムアルコキシド、又はリチウム塩(例えばLiCl)を得る。しかし、高圧ウォータージェットを使用した開封によるプロセスの安全化は大量の水を消費し、空気中にHガスを発生させる。
【0024】
今まで、上記の様々な方法は高温処理、極低温処理、及び/又は制御された雰囲気中での処理を必要とし、これは工業化が難しい条件である及び/又は高コストである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【文献】国際公開第2005/101564号
【文献】米国特許第5,888,463号明細書
【文献】加国特許出願公開第2313173号明細書
【文献】国際公開第2011/113860号
【文献】欧州特許出願公開第0613198号明細書
【非特許文献】
【0026】
【文献】Georgi-Maschler等、「Development of a recycling process for Li-ion batteries」、Journal of Power Sources 207、2012年、173~182頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明の目的は、先行技術の欠点を克服する方法、特に、高温、超低温、及び/又は制御された雰囲気を必要とせずに容易に工業化できる、電気化学的発電機を破砕する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
これは、リチウム又はナトリウムを含有する負極及び正極を含む電気化学的発電機を破砕する方法であって、イオン性液体、及び負極で還元されて電気化学的発電機を放電させることができるいわゆる酸化性レドックス種を含有するイオン性液体溶液中で、電気化学的発電機を破砕する工程を含む、方法によって実現される。
【0029】
本発明は、イオン性液体及びレドックス種を含有するイオン性液体溶液の存在下で電気化学的発電機を破砕するという点で、先行技術とは基本的に異なる。
【0030】
この破砕方法は電池を開封し、リチウム又はナトリウムの利用手段をもたらす。イオン性液体溶液は電気化学的発電機を開封するために安全化し、反応性レドックス種が導入されることを可能にし、これは破砕と同時にリチウム(又はナトリウム)による酸化-還元によって電気化学的発電機を放電させる。
【0031】
水が存在しないことは、爆発性雰囲気を作る恐れがある、水素、酸素、及び/又は熱が発生するのを防ぐ。
【0032】
下記の説明において、リチウムが記載される場合、このリチウムはナトリウムで置き換えることができる。
【0033】
第1の実施例によれば、リチウム金属蓄電池の場合、いわゆる酸化性レドックス種の還元反応がイオン形態のリチウム金属の酸化を生じさせる。
【0034】
別の実施例によれば、リチウムイオン蓄電池の場合、いわゆる還元性レドックス種の還元反応が負極の活性物質からのリチウムイオンの脱挿入を生じさせる。
【0035】
アノードから抽出された遊離イオンはイオン伝導性電解質を通って移動し、カソードに固定化され、それらはここで熱力学的に安定な酸化リチウムを形成する。熱力学的に安定とは、水及び/又は空気と激しく反応しない酸化物を意味すると理解される。
【0036】
本発明による破砕方法により、引火及び/又は爆発のリスクを防ぎながらリチウムが負極(アノード)から迅速に抽出される。
【0037】
有利には、溶液は正極において酸化されることが可能な第2のいわゆる還元性レドックス種を含有し、いわゆる酸化性レドックス種及びいわゆる還元性レドックス種はレドックス種対を形成する。
【0038】
レドックスメディエーター、電気化学的シャトル、又はレドックスシャトルとも呼ばれるレドックス対は、溶液形態の酸化/還元(Ox/Red)対を意味すると理解され、ここで酸化剤はアノード(負極)で還元され、還元剤はカソード(正極)で酸化され得る。レドックス対がレドックス反応を生じさせそれにより発電機を放電させ、その結果媒体は損なわれないままであり試薬は消費されない。
【0039】
1つ又は複数のレドックス種は、電極の化学エネルギー、ひいては電極間(アノードとカソード)の電位差を低下させながら、電気化学的発電機が著しく又はそれどころか完全に放電されることを可能にする。この放電は内部短絡効果も減少させる。
【0040】
この方法は費用効率が高く、なぜなら溶液形態のレドックス対が電気化学的発電機の電極において同時にレドックス反応を生じさせ、その結果試薬の消費がゼロであり、溶液を使用して複数の電気化学的発電機を順次安全化することができるためである。
【0041】
有利には、レドックス種対は、好ましくはMn2+/Mn3+、Co2+/Co3+、Cr2+/Cr3+、Cr3+/Cr6+、V2+/V3+、V4+/V5+、Sn2+/Sn4+、Ag/Ag2+、Cu/Cu2+、Ru4+/Ru8+、又はFe2+/Fe3+から選択される金属対、有機分子対、メタロセン対、例えばFc/Fcなど、又はハロゲン化分子対、例えばCl/Cl若しくはCl/Cl3-である。
【0042】
有利には、イオン性液体溶液はさらなるイオン性液体を含有する。
【0043】
有利には、イオン性液体溶液は深共晶溶媒を形成する。
【0044】
有利には、電気化学的発電機はイオン性液体溶液中に浸漬される。
【0045】
有利には、電気化学的発電機は0℃~100℃、好ましくは15℃~60℃の範囲の温度で放電される。
【0046】
有利には、電気化学的発電機は空気中で放電される。
【0047】
有利には、この方法は、電気化学的発電機を放電させる工程の前に、解体工程及び/又は選別工程を含む。
【0048】
有利には、この方法は、電気化学的発電機を放電させる工程に続いて、高温冶金工程及び/又は湿式冶金工程を含む。
【0049】
本発明による破砕方法は多くの利点を有する:
- 発電機が安全化され(放電され)1つの工程で開封され、これは相当量の時間及び投資を節約する、
- 湿式粉砕工程が実施されず、このことは水素、酸素、及び熱を扱うこと、ひいては爆発性雰囲気を扱うことに付随する問題(安全性、流入液の処理、さらなる経済コスト)を回避し、多量の水を使用し水性廃液を処理する必要性を回避する;
- 熱処理プロセスが実施されず、このことはガス排出(例えば温室効果ガス又は人間及び環境に対して有害で危険である任意の他のガスの排出)に付随する、特にそれらの処理に関する問題を回避し、この方法の財政コスト及びエネルギーコストを削減する;
- 水の使用に関連する制約がかなり軽減され、なぜならイオン性液体が、200℃を超えることが可能である温度(例えば200℃~400℃の間)において不揮発性、不燃性、及び化学的に安定であるためである;
- 電池を開封する際に、特に不活性ガスを使用して、ガス雰囲気を制御する必要性がなく、このことはこの方法を簡便化し、より費用効率が高いものにする、
- リチウムを直接入手することができ、放電工程が数時間又は数日さえも要する先行技術とは対照的に、このことは発電機がきわめて迅速に放電されることを確実にする、
- 1つのレドックス種が使用される:レドックス対を使用する必要がなく、このことは利用可能な種の選択及び性質広げ、なぜならその種は単にリチウムよりも高い電気化学的電位を有する必要があり、一方でリチウムは最も低い電気化学的電位を有する種であるためである。したがってリチウムは-3.05V vs SHEを超える電位まで還元されることが可能である任意の種によって抽出できる。
- 損傷した発電機、放電されていない又は不十分に放電された発電機、及び/又は放電することができない発電機(それらの端子が劣化及び/又は腐食しているため)は、それらを開封する際に安全性の問題を生じさせることなく処理される。
【0050】
破砕による開封は、発電機への損傷の状態に依存することを防ぐ。無水及び無気の環境における破砕の使用はこのタイプの問題を克服する。
- 電池を開封する際に、特に不活性ガスを使用して、ガス雰囲気を制御する必要がなく、このことはこの方法を簡便化し費用効率が高いものにする、
- 実施するのが迅速で容易である。
【0051】
下記に示すさらなる説明を読むと本発明の他の特徴及び利点が明らかになる。
【0052】
言うまでもなく、このさらなる説明は単に本発明の目的を例証する目的で示され、決してそれに限定するものとして解釈されてはならない。
【0053】
本発明は、例証のみの目的で示され本発明の範囲を限定することを意図していない、例となる実施形態の以下の説明を読んだ後に、添付の図面を参照して、より良く理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明の1つの特定の実施形態による電気化学的発電機の概略的な断面図である。
図2】本発明の方法の1つの特定の実施形態による電気化学的発電機の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図を読みとりやすくするために、図に示される異なる部品は必ずしも均一のスケールにしたがって表されていない。
【0056】
様々な可能性(代替物及び実施形態)が互いに排他的なものではないと理解される必要があり、互いに組み合わせることができる。
【0057】
以下で、説明がLiイオン蓄電池に言及するものであっても、本発明は、任意の電気化学的発電機、例えば公称の動作電圧及び/又は供給されるエネルギーの量に応じて直列又は並列で接続された複数の蓄電池を含む電池(バッテリーパックとも呼ばれる)、又は電池セルに置き換え可能である。
【0058】
これらの様々な電気化学的デバイスは、金属イオン型、例えばリチウムイオン若しくはナトリウムイオン、又はLi金属型などであってもよい。
【0059】
これはまたLi/MnOなどの一次システム、又はレドックスフロー電池であってもよい。
【0060】
1.5Vを超える電位を有する電気化学的発電機が有利に選択される。
【0061】
リチウムイオン(又はLiイオン)蓄電池10を示す図1をまず参照する。電気化学単セルが示されるが、しかし発電機は複数の電気化学セルを含んでいてもよく、各セルは、この場合はアノードである第1の電極20、及びこの場合はカソードである第2の電極30、セパレータ40、及び電解質50を含む。別の実施形態によれば、第1の電極20及び第2の電極30は反対であってもよい。
【0062】
アノード(負極)20は好ましくは炭素系であり、例えば、PVDF型バインダーと混合し銅箔上に堆積させることができるグラファイトでできている。これはまた、Liイオン蓄電池についてはチタン酸リチウムLiTi12(LTO)などのリチウム混合酸化物、又はNaイオン蓄電池についてはチタン酸ナトリウムなどのナトリウム混合酸化物であってもよい。これはまた、選択される技術に応じてリチウム合金又はナトリウム合金であってもよい。
【0063】
カソード(正極)30は、Liイオン蓄電池においてはリチウムイオン挿入材料である。これは、LiMO型の層状酸化物、カンラン石構造を有するLiMPOリン酸塩、又はLiMnスピネル化合物であってもよい。Mは遷移金属を表す。例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiNiMnCoO、又はLiFePOでできた正極が選択される。
【0064】
カソード(正極)30は、Naイオン蓄電池においてはナトリウムイオン挿入材料である。これは、少なくとも1つの遷移金属元素を含有する酸化ナトリウム型材料、少なくとも1つの遷移金属元素を含有するリン酸ナトリウム若しくは硫酸ナトリウム型材料、フッ化ナトリウム型材料、又は少なくとも1つの遷移金属元素を含有する硫化物型材料であってもよい。
【0065】
挿入材料は、ポリフッ化ビニリデン型バインダーと混合しアルミニウム箔上に堆積させることができる。
【0066】
電解質50は、選択される蓄電池技術に応じて、非水性溶媒混合物に可溶化されたリチウム塩(例えばLiPF、LiBF、LiClO)、又はナトリウム塩(例えばNNa)を含有する。溶媒混合物は、例えば二成分系又は三成分系混合物である。溶媒は、例えばカーボネート系溶媒(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート)、直鎖状又は分岐状カーボネート系溶媒(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメトキシエタン)から、様々な比率で選択される。
【0067】
あるいは、これはまた、有機及び/又は無機材料でできたポリマーマトリックス、1つ又は複数の金属塩を含有する液体混合物、及び任意選択の機械的強化材料を含有する、ポリマー電解質であってもよい。ポリマーマトリックスは、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)、又は、ポリ(N-ビニルイミダゾリウム)ビス(トリフルオロメタンスルホニルアミド))、N,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)-N-メチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(DEMM-TFSI)のタイプのポリ(イオン性液体)から選択される、1つ又は複数のポリマー材料を含有していてもよい。
【0068】
セルは、巻き軸の周りで自身に巻き付けられていてもよく、又積層構造を有していてもよい。
【0069】
例えばポリマーパウチ、又は例えば鋼でできた金属パッケージであるケーシング60は、蓄電池を密封するのに使用される。
【0070】
各電極20、30は、ケーシング60を貫通しケーシング60の外側で端子22、32(出力端子又は電気端子又は極とも呼ばれる)をそれぞれ形成する集電体21、31に接続されている。集電体21、31は、活性物質のための機械的支持だけでなく、セルの端子への電気的導通を提供するという、2つの機能を有する。端子(電気端子又は極とも呼ばれる)は出力端子を形成し、「受電装置」に接続されることを意図している。
【0071】
いくつかの構成によれば、端子22、32の1つ(例えば負極に接続されているもの)を電気化学的発電機のアースに接続してもよい。こうしてアースは電気化学的発電機の負電位とされ、正端子は電気化学的発電機の正電位である。したがって正電位は、正極/正端子並びにこの極から電気的導通により接続されたあらゆる金属部品と定義される。
【0072】
アースに接続されている端子とアースとの間に中継電子デバイスを任意に配置してもよい。
【0073】
電気化学的発電機を安全化するために、イオン性液体、及びリチウムと反応してそれを中性化することが可能なレドックス種を含有する、イオン性液体溶液100(イオン性液体の溶液とも呼ばれる)の存在下で、電気化学的発電機を破砕する。
【0074】
このイオン性液体溶液100は、廃棄物(電池セル又は蓄電池)/水/空気の間の接触を防ぐと同時に、イオン性液体中に存在する電気化学的レドックス種を介した廃棄物の放電を確実にする。このようにしてプロセス全体が燃焼の三要素に関して安全化される。
【0075】
好ましくは、電気化学的発電機10を完全に放電させる。遊離イオンはカソード30に固定化され、ここでそれらは水又は空気と激しく反応しない熱力学的に安定なリチウム金属酸化物を形成する。これは低い環境コスト及び経済コストで行われる。更に、この処理はリサイクルを妨げない(特に電解質が分解しない)。放電時間は電池セル及び蓄電池のタイプ並びに充電速度にしたがって見積もられることになる。
【0076】
電気化学的発電機10は少なくとも部分的にイオン性液体溶液に覆われる。好ましくは、イオン性液体溶液100に完全に浸漬される(図2)。
【0077】
イオン性液体溶液100は、溶媒イオン性液体と呼ばれる少なくとも1種のイオン性液体LI、及びレドックス活性種Aを含有する。
【0078】
イオン性液体は、約100℃以下の融点を有する液体を生じる、少なくとも1つのカチオン及び1つのアニオンの会合物を意味すると理解される。これらは溶融塩である。
【0079】
溶媒イオン性液体は、放電現象の際に媒体の分解を最小限にする、熱的及び電気化学的に安定であるイオン性液体を意味すると理解される。
【0080】
イオン性液体溶液は、1種又は複数種の(例えば2種又は3種の)さらなるイオン性液体を更に含有していてもよく、すなわち数種のイオン性液体の混合物を含有していてもよい。
【0081】
LIの参照記号で示される、さらなるイオン性液体は、安全化工程及び放電工程に関して1つ又は複数の特性を向上させるイオン性液体を意味すると理解される。特に、これは以下の特性: 消火性、難燃性、レドックスシャトル、塩安定化、粘度、溶解性、疎水性、及び伝導性のうちの1つ又は複数にかかわる場合がある。
【0082】
有利には、イオン性液体、及び任意選択のさらなるイオン性液体は、周囲温度(20~25℃)で液体である。
【0083】
溶媒イオン性液体において、及び1つ又は複数のさらなるイオン性液体において、カチオンは好ましくはイミダゾリウム、ピロリジニウム、アンモニウム、ピペリジニウム、及びホスホニウムのファミリーから選択される。
【0084】
有利には、イオン性液体の分解を防ぐ又は最小限にするカソード反応を予測するのに十分な大きさの広いカチオン窓を有するカチオンが好ましくは選択される。
【0085】
有利には、LIにおけるLIの溶解性を高めるためにLI及びLIは同じカチオンを有することになる。多くの考えられる系の中で、低コストで、環境への影響が少なく(生分解性)、非毒性の媒体が好ましい。
【0086】
有利には、広い電気化学窓、中程度の粘度、低い融点(周囲温度で液体)、並びにイオン性液体及び溶液中の他の種による良好な溶解性を同時に実現し、イオン性液体の加水分解(分解)を生じさせないアニオンが使用される。
【0087】
TFSIアニオンは、多くの会合において、例えば、LI:[BMIM][TFSI]、又はタイプ[P66614][TFSI]のイオン性液体、イオン性液体1-エチル-2,3-トリメチレンイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド([ETMIm][TFSI])、イオン性液体N,N-ジエチル-N-メチル-N-2-メトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド[DEME][TFSA]、イオン性液体N-メチル-N-ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([PYR14][TFSI])、又はイオン性液体N-メチル-N-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PP13-TFSI)の使用において、上記の基準を満たす1つの例である。アニオンはまた、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSA又はFSI)のタイプ、例えばイオン性液体N-メチル-N-プロピルピロリジニウムFSI(P13-FSI)、N-メチル-N-プロピルピペリジニウムFSI(PP13-FSI)、又は1-エチル-3-メチルイミダゾリウムFSI(EMI-FSI)などであってもよい。
【0088】
溶媒イオン性液体LI及び/又はさらなる液体LIのアニオンは、電気化学的シャトルとの錯体を形成する錯形成アニオンであってもよい。
【0089】
好ましくは広いアノード窓を有し、カチオンが有機又は無機であってもよいアニオンと会合しているイオン性液体による、他の会合が考えられる。
【0090】
イオン性液体溶液100は有利には深共晶溶媒(又はDES)を形成する。これは一般式:
[Cat].[X].z[Y]
の2種の塩の共晶混合物を形成することにより得られる、周囲温度で液体の混合物であり、式中、
[Cat]は溶媒イオン性液体のカチオン(例えばアンモニウム)であり、
[X]はハロゲン化物アニオン(例えばCl)であり、
[Y]は溶媒イオン性液体のXアニオンと錯形成することができるルイス酸又はブレンステッド酸であり、
zは分子Yの数である。
【0091】
共晶物はYの性質によって3つのカテゴリーに分けることができる。
【0092】
第1のカテゴリーはタイプI共晶物に相当する:
Y=MCl、式中、例えば、M=Fe、Zn、Sn、Fe、Al、Ga
第1のカテゴリーはタイプII共晶物に相当する:
Y=MClx.yHO、式中、例えば、M=Cr、Co、Cu、Ni、Fe
第1のカテゴリーはタイプIII共晶物に相当する:
Y=RZ、式中、例えば、Z=CONH、COOH、OH。
【0093】
例えば、DESは、非毒性で非常に低コストのDESを保証する、非常に毒性の低いH-結合ドナー、例えばグリセリン又は尿素などと会合している塩化コリンである。
【0094】
別の例となる実施形態によれば、塩化コリンはベタインで置き換えることができる。これらの系は限られた電気化学的安定性窓を有するにもかかわらず、任意に開放型の蓄電池のフラッディング及び非活性化を保証することができる。
【0095】
有利には、酸化及び/又は還元されることが可能な、電気化学的シャトルとして作用することができる化合物「Y」が選択される。例えば、Yは、イオン性液体溶液中に溶解して金属イオンを形成することができる金属塩である。例えば、Yは鉄を含有する。
【0096】
例証として、塩化物アニオンイオン性液体と金属塩FeCl及びFeClとの間で様々な割合で様々なカチオンにより共晶物を形成させることができる。
【0097】
このタイプの反応は、金属塩に水分子を取り込むタイプII共晶物により行われることも可能であり、水含量が低い場合、これは危険を生じない。低いとは典型的には溶液10wt%未満、例えば溶液の5~10wt%を意味すると理解される。
【0098】
イオン性液体及び水素結合ドナー種(Y)を組み合わせる、タイプIII共晶物を、タイプ[LI]/[Y]の混合物と共に使用することもでき、式中、LIは第4級アンモニウムであってもよくYは錯形成分子(水素結合ドナー)、例えば尿素、エチレングリコール、又はチオ尿素などであってもよい。
【0099】
媒体を放電させるための溶液の特性を有利に改質することになる混合物も作ることができる。特に、非常に安定であり周囲温度で液体であるが、塩化鉄などの、電気化学的シャトル(又はレドックスメディエーター)をわずかに可溶化させる、タイプ[BMIM][NTF]の溶媒イオン性液体を組み合わせることができる。
【0100】
例えば、LIのアニオンとの錯体形成により塩化物の形態の金属塩の可溶性を高めることになる、タイプ[BMIM][Cl]のさらなるイオン性液体LIを組み合わせることができる。これはレドックスメディエーターの良好な輸送特性及び良好な溶解性を同時に可能にし、それにより放電現象を増進する。
【0101】
溶液100はレドックス種を含有する。これはA→A*にしたがって負極で酸化されることが可能であるイオン又は溶液形態の種であり、ここでA*は種Aの酸化形態である(図2)。レドックス種は、リチウムを負極から抽出することにより蓄電池が安全化されるのを可能にする。
【0102】
提案される方法は蓄電池を空気に対して非反応性にする。
【0103】
電気化学対又はそれらの組み合わせも使用できる。好ましくは、これは酸化還元反応を行うことにより電気化学的シャトル(又はレドックスメディエーター)として作用して媒体の分解を低減させるレドックス対である。
【0104】
レドックス対は、電池セルの電極においてそれぞれ還元及び酸化されることが可能である溶液形態の酸化剤及び還元剤を意味すると理解される。それらの酸化/還元は、有利には、最初に溶液形態で存在するレドックス種を再生させることができる。電気化学的シャトルの使用はデバイスが閉ループ内で操作されるのを可能にし、媒体の分解を低減させる。
【0105】
酸化剤及び還元剤を等モル又は非等モルの割合で導入することができる。
【0106】
レドックス種の1つは発電機自体に由来する場合がある。これは特にコバルト、ニッケル、及び/又はマンガンであってもよい。
【0107】
レドックス対は電気化学的金属対又はそれらの組み合わせ: Mn2+/Mn3+、Co2+/Co3+、Cr2+/Cr3+、Cr3+/Cr6+、V2+/V3+、V4+/V5+、Sn2+/Sn4+、Ag/Ag2+、Cu/Cu2+、Ru4+/Ru8+、又はFe2+/Fe3+であってもよい。
【0108】
レドックス種及びレドックス対は、有機分子から、特に2,4,6-トリ-t-ブチルフェノキシル、ニトロニルニトロキシド/2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ(TEMPO)、テトラシアノエチレン、テトラメチルフェニレンジアミン、ジヒドロフェナジン、芳香族分子で、例えばメトキシ基、N,N-ジメチルアミノ基を有するもの、例えばメトキシベンゼンアニソール、ジメトキシベンゼンなど、又はN,N-ジメチルアニリン基を有するもの、例えばN,N-ジメチルアミノベンゼンなどから選択することもできる。他の例としては、10-メチル-フェノチアジン(MPT)、2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ジメトキシベンゼン(DDB)、及び2-(ペンタフルオロフェニル)-テトラフルオロ-1,3,2-ベンゾジオキサボロール(PFPTFBDB)が挙げられる。
【0109】
これはまた、メタロセン(Fc/Fc+、Fe(bpy)(ClO及びFe(phen)(ClO並びにその誘導体)のファミリー、又はハロゲン化分子(Cl/Cl、Cl/Cl3-、Br/Br、I/I、I/I )のファミリーに由来するものであってもよい。
【0110】
特に、臭化物又は塩化物が選択される。これは好ましくは容易に金属と錯形成することができる塩化物である。例えば、鉄は塩化物アニオンにより錯体化され、FeCl を形成し、これは負極の反応性を低下させることができる。
【0111】
これはまた、テトラメチルフェニレンジアミンであってもよい。
【0112】
複数のレドックス対を組み合わせることもでき、金属イオンの金属は同じ又は異なっている。
【0113】
例えば、Fe2+/Fe3+及び/又はCu/Cu2+が選択される。後者は2つの酸化状態で可溶性であり、非毒性であり、イオン性液体を分解しない。
【0114】
特に蓄電池の開封というイベントにおいて、熱暴走を防ぐために、溶液は消火剤及び/又は難燃剤を含んでいてもよい。これは、アルキルホスフェートで、任意にフッ素化されているもの(フッ素化アルキルホスフェート)、例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、又はトリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスフェート)などであってもよい。活性種の濃度は、80wt%~5wt%、好ましくは30wt%~10wt%であってもよい。
【0115】
任意選択により、イオン性液体溶液は、乾燥剤、及び/又は物質の輸送を向上させる薬剤、及び/又は例えばPF、HF、及びPOFから選択される腐食性で毒性の種の安定化剤/還元剤である保護剤を含有していてもよい。
【0116】
物質の輸送を向上させる薬剤は、例えば、粘度を低下させるために加えることができるわずかな共溶媒である。
【0117】
これは、少ない割合の水、例えば5%の水などであってもよい。
【0118】
好ましくは、有機溶媒は、放電又は可燃性リスクを伴わない効果的な作用のために選択される。これは、ビニレンカーボネート(VC)、ガンマ-ブチロラクトン(γ-BL)、プロピレンカーボネート(PC)、ポリ(エチレングリコール)、又はジメチルエーテルであってもよい。物質の輸送を向上させる薬剤の濃度は、有利には1wt%~40wt%、より有利には10wt%~40wt%である。
【0119】
腐食性及び/又は毒性の元素を還元及び/又は安定化することが可能な保護剤は、例えば、ブチルアミンタイプの化合物、カルボジイミド(N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミドのタイプのもの)、N,N-ジエチルアミノトリメチル-シラン、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファイト(TTFP)、アミン系化合物、例えば1-メチル-2-ピロリジノン、フッ素化カルバメート、又はヘキサメチルホスホラミドなどである。これはまた、ヘキサメトキシシクロトリホスファゼンなどの、シクロホスファゼンファミリーの化合物であってもよい。
【0120】
有利には、イオン性液体溶液は10wt%未満、好ましくは5wt%未満の水を含有する。
【0121】
更により好ましくは、イオン性液体溶液は水を含まない。
【0122】
この方法は0℃~100℃、好ましくは20℃~60℃の範囲の温度で行うことができ、更により好ましくは周囲温度(20~25℃)で行われる。
【0123】
この方法は、空気中、又は不活性雰囲気中、例えばアルゴン、二酸化炭素、窒素、若しくはそれらの混合物中で行うことができる。これは酸素含量が制御された雰囲気中で行うこともできる。
【0124】
電気化学的発電機がイオン性溶液中に浸漬される場合、溶液を撹拌して試薬の取り込みを改善することができる。例えば、これは50~2,000rpmの間、好ましくは200~800rpmの間での撹拌を含んでいてもよい。
【0125】
例証として、破砕工程はリサイクルプロセスにおいて行われ、これは以下の工程:選別、解体、破砕、次いで回収しようとする元素のリサイクル(例えば高温冶金、湿式冶金など)を含んでいてもよい。
【0126】
発電機を安全に開封してその回収可能な部分を利用する。
【0127】
実施形態の例示的な及び非限定的な実施例:
この実施例において、放電はグリセリンタイプの媒体(塩化コリン及びグリセリンの混合物)中で行われる。
【0128】
イオン性液体溶液は、塩化コリン及びグリセリンを1:2の体積比で含有しCpが2.2J.g-1.K-1であり、5wt%のトリメチルホスフェートを消火剤として含有する、イオン性液体混合物である。溶液を乾燥させた後、密封したナイフミルの破砕領域を溶液で満たす。次いで18650 Liイオン型電池セルを周囲温度でミルに入れる。回転は50rpmで行われる。この破砕方法は電池セルを開封し同時にリチウムと浴との反応を生じさせ、それにより電池セルを放電及び安全化させる。
【符号の説明】
【0129】
10 リチウムイオイン蓄電池
20 第1の電極
21 集電体
22 端子
30 第2の電極
31 集電体
32 端子
40 セパレータ
50 電解質
60 ケーシング
100 イオン性液体溶液
図1
図2