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特許7581250ポリオールまたは金属イオン塩化物を含む溶解性洗濯用シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】ポリオールまたは金属イオン塩化物を含む溶解性洗濯用シート
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/06 20060101AFI20241105BHJP
   C11D 1/14 20060101ALI20241105BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20241105BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20241105BHJP
   C11D 3/10 20060101ALI20241105BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
C11D17/06
C11D1/14
C11D3/37
C11D3/20
C11D3/10
C11D3/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021570513
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 KR2020006949
(87)【国際公開番号】W WO2020242233
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0062786
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー・エイチアンドエイチ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キュン-フン・オ
(72)【発明者】
【氏名】ミン-ソク・チョ
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0090122(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0028347(KR,A)
【文献】特開2000-169896(JP,A)
【文献】特開2000-26899(JP,A)
【文献】特開昭53-91913(JP,A)
【文献】国際公開第2017/043507(WO,A1)
【文献】特開2017-106002(JP,A)
【文献】特表2020-504251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯用洗浄成分、水溶性フィルム形成高分子及びアルカリビルダーを含んで形成された水溶性洗濯用シートであって、
前記水溶性フィルム形成高分子が、ポリビニルアルコールであり、
前記洗濯用シートは、ポリオールをみ、
前記ポリオールが、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、アラビトール及びソルビトールからなる群より選択されたいずれか一つ以上であり、
前記水溶性フィルム形成高分子が、乾燥後の水溶性洗濯用シートの総重量に対して19~38重量%で含まれ、
前記ポリオールが、乾燥後の水溶性洗濯用シートの総重量に対して5~18重量%で含まれる、水溶性洗濯用シート。
【請求項2】
前記洗濯用洗浄成分が、炭素数8~18のアルキル硫酸アルカリ金属塩である、請求項1に記載の水溶性洗濯用シート。
【請求項3】
前記洗浄成分が、α-オレフィンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸エトキシル化ナトリウム、sec-アルカンスルホン酸塩及びメチルエステルスルホン酸塩からなる群より選択されたいずれか一つ以上を含む、請求項2に記載の水溶性洗濯用シート。
【請求項4】
前記水溶性フィルム形成高分子が、ポリビニルアルコール系共重合体をさらに含む、請求項1に記載の水溶性洗濯用シート。
【請求項5】
前記ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール系共重合体は、数平均分子量が10,000~100,000であり、鹸化度が65~95%である、請求項1または4に記載の水溶性洗濯用シート。
【請求項6】
前記洗濯用洗浄成分が、乾燥後の水溶性洗濯用シートの総重量に対して30~60重量%で含まれる、請求項1に記載の水溶性洗濯用シート。
【請求項7】
前記アルカリビルダーが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アルカリケイ酸ナトリウム、中性ケイ酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、アルミノケイ酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、モノエタノールアミン及びトリエタノールアミンからなる群より選択されたいずれか一つ以上である、請求項1に記載の水溶性洗濯用シート。
【請求項8】
前記水溶性洗濯用シートが、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び塩化カリウムからなる群より選択されたいずれか一つ以上の塩化物さらに含む、請求項1に記載の水溶性洗濯用シート。
【請求項9】
記塩化物が塩化ナトリウムである、請求項に記載の水溶性洗濯用シート。
【請求項10】
前記塩化物が、水溶性洗濯用シートの乾燥後の総重量に対して3~7重量%で含まれる、請求項8に記載の水溶性洗濯用シート。
【請求項11】
前記水溶性洗濯用シートは、25℃でZwickRoell社製の500N zwicki測定機で測定したとき、0.79~3.8kgf/cmの引張強度を有する、請求項1に記載の水溶性洗濯用シート。
【請求項12】
前記ポリオールがソルビトールを含む、請求項1に記載の水溶性洗濯用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に溶ける水溶解性洗濯用シートに関し、具体的には、保管安定性、溶解性及び/または洗浄力が改善された、水に溶ける水溶解性洗濯用シートに関する。
本出願は、2019年5月28日付け出願の韓国特許出願第10-2019-0062786号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
液体洗剤は相対的に重いため使用が不便であり、粉末洗剤は使用時に粉末が飛散するという問題があるため、新たな形態の洗剤が継続的に求められている。洗濯洗剤として使われる粉末洗剤、液体洗剤などの短所を改善した、洗濯水に溶けるシート状の洗濯洗剤が市販されている。シート状の洗濯洗剤は、薄くて軽く、保管が便利であるという長所がある。しかし、シート状の洗濯洗剤に対しては洗浄力の問題が度々指摘されている。
【0003】
シート状の洗濯洗剤を製造するためには剤形化剤が含まれなければならない。しかし、洗浄力を向上させるため洗濯成分の量を増加させれば、剤形化剤の使用量が減少し、シート状にするため剤形化剤の使用量を増加させれば、洗濯成分の使用量が減少するため、当業界において洗浄力と剤形化とを両立させることは容易ではなかった。また、洗浄力向上のために洗濯成分の量を増やせば、洗濯用シートの保管安定性に否定的な影響を及ぼすという問題も発生する。
【0004】
剤形化剤によって形態が維持される、水に溶けるシート状の洗濯洗剤の場合、担持される洗濯成分(例えば、界面活性剤など)の量が制限的であるため、洗浄力向上のためより多くの洗浄補助成分など、洗浄力向上を補助するその他の成分をさらに多く含むようになる。このような洗浄補助成分などの増量は水溶性洗濯用シートの保管安定性などに否定的な影響を及ぼし得るという点を認識し、これを改善しようとして多様に研究した。
【0005】
洗浄力向上のためにはより多くの有効成分を水溶性洗濯用シートに含まないとならないが、有効成分の増量は水溶性洗濯用シートの保管安定性を阻害する恐れがあるため、有効成分の含量を増加させながらも、保管安定性に優れ、少量の剤形化剤でも剤形化し易いシートを製造しようとして長年研究を重ねた。
【0006】
洗濯の際、洗剤が洗濯水に溶解される速度は洗浄力に影響を及ぼし、特に剤形化剤を含むシート状洗剤の場合、溶解度が低いため、洗濯水への溶解速度が遅くて洗濯時間内に十分な洗浄物質を提供できず、洗浄力が低下する問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決するため、保管安定性及び/または溶解速度が改善された水溶性洗濯用シートを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、有効成分を維持または増量しながら、少量の剤形化剤の使用によっても剤形化し易い水溶性洗濯用シートを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、洗浄力が改善され、大量生産のための十分な引張強度を有する洗濯用シートを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、水溶性フィルム形成高分子鎖の間に洗濯用洗浄成分が分布されている、水溶性フィルム形成高分子がフィルム状に固形化された水溶性洗濯用シートを提供し、前記水溶性フィルム形成高分子の外に、さらにポリオールを含む形態の水溶性洗濯用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明は、洗濯用洗浄成分、水溶性フィルム形成高分子、及びアルカリビルダーを含んで形成された水溶性洗濯用シートであって、前記水溶性洗濯用シートにポリオール及び/または金属イオン塩化物を含む水溶性洗濯用シートを提供する。前記水溶性フィルム形成高分子は、水に溶ける洗濯用シートの剤形化剤として使用され得る。
【0012】
本発明者らは、水溶性洗濯用シートの洗浄力を向上させながらもシート状の洗濯洗剤が有する保管安定性を改善するという課題を初めて認識し、それを改善する方案を提供するようになった。本発明者らは、水溶性洗濯シートにポリオールを含むことで、シート内の洗浄成分の量を増量させながら、保管安定性を改善でき、大量生産が可能な適切な物性を確認し、本発明の完成に至った。
【0013】
本明細書で使われる用語「洗濯用シート」は、ハンカチ形態の薄い膜状または層状の洗濯製品を意味すると業界で理解されている。前記洗濯用シートは、水に溶ける水溶性高分子と洗濯用洗浄成分とを混合した溶液から製造でき、製造方法は特に制限されない。前記洗濯用シートは、シート形態にするため剤形化剤が用いられ、前記剤形化剤として、望ましくは水に溶ける水溶性フィルム形成高分子が使用され得る。
【0014】
前記水溶性洗濯シートは、フィルム形成水溶性高分子を含み得る。前記フィルム形成水溶性高分子は、天然、半合成、合成高分子のうち1種以上が選択され得、望ましくは、ポリビニルアルコール(PVA)またはポリビニルアルコール系共重合体が剤形化剤として使用され得る。前記ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール系共重合体によって形成されるマトリクス内に高含量の界面活性剤などの洗濯有効成分を多量含ませてもフィルムの引張強度などの物性が維持され得、シート状洗剤に必要な物性限度内で単位面積当たり界面活性剤を相対的に多量含み得る。本発明の洗濯用シートにおいて、特に、多様な分子量及び鹸化度を有するポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール系共重合体のうち、フィルム剤形性、溶解度、製造容易性、保管安定性、洗浄性能、シートの引張強度、大量生産性などを総合的に考慮するとき、数平均分子量が10,000~100,000である重合体が望ましく、20,000~50,000である重合体がより望ましく、20,000~30,000である重合体が一層望ましい。鹸化度は65~95%、望ましくは68~90%、より望ましくは70~85%であり得る。鹸化度が65%未満であるか又は95%超過である場合、溶解度が低くて水に溶け難いか、または、十分な物性を有さないおそれがある。また、他の一実施形態において、前記ポリビニルアルコール系共重合体は、カルボキシ基を有する陰イオン性モノマーユニットを含むポリビニルアルコール系共重合体を含み得、このような共重合体は、ビニルアルコールモノマーユニット及び下記の化学式1または2の陰イオン性モノマーユニットを含み、陰イオン性モノマーユニットの含量は0.5~5mol%である共重合体が特に望ましい。
【0015】
【化1】
【0016】
化学式1及び2において、R、R及びRは、互いに独立して、Hまたはメチルであり、nは、互いに独立して、0~3の整数である。
【0017】
本発明は、洗濯効果を提供するための洗濯用洗浄成分として、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤など非常に多様な界面活性剤を使用し得る。望ましくは、前記洗浄成分は、RSO-Mの化学式で表される炭素数8~18のアルキル硫酸塩(Mは、アルカリ金属、望ましくはナトリウムまたはカリウム、最も望ましくはナトリウム)、より望ましくはα-オレフィンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸エトキシル化ナトリウム(sodium lauryl ethoxylated sulfate)、sec-アルカンスルホン酸塩(secondary alkanesulfonate)及びメチルエステルスルホン酸塩からなる群より選択されたいずれか一つ以上であってよく、最も望ましくはラウリル硫酸ナトリウム界面活性剤を含み得る。前記界面活性剤は、フィルム形成水溶性高分子との使用性、洗浄力、シートの安定性の面で望ましい。
【0018】
前記洗浄成分として、非イオン界面活性剤または両性界面活性剤をさらに含み得る。前記非イオン性界面活性剤としては、これらに限定されないが、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、コカミドモノメチルアミン、コカミドジメチルアミン、コカミドモノエチルアミン、脂肪酸アルカノールアミン、アミンオキサイド、アルキルポリグルコシド、メチルポリエチレンアルキルエーテルまたは糖エーテルなどが挙げられ、これらを単独または2以上の混合物で使用し得る。特に、下記の化学式3で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル、または、下記の化学式4で表されるポリオキシアルキレンアルキルフェニルエテルを使用することが望ましい。
【0019】
[化学式3]
Cm-H2m+1-O-(CH2CH2O)n-H
[化学式4]
CmH2m+1C6H5-O-(CH2CH2O)n-H
【0020】
化学式3及び化学式4において、mは5~21の整数であり、nは1~20の整数である。
【0021】
また、前記両性界面活性剤は、これらに限定されないが、アミンオキサイド、コカミドプロピルベタイン(cocamidopropyl betaine)などがあり、これらを単独または2以上の混合物で使用し得る。
【0022】
本発明者らは、前記水溶性フィルム形成高分子及び前記洗浄成分を含む洗濯用シートの場合、洗濯時に使用する洗濯洗剤の使用量が少ないため、洗浄力を向上させようとしてアルカリビルダーを用いているが、一緒に使われる成分同士の相互作用によって保管安定性の低下、洗浄力の低下などの問題が発生することを確認し、それを改善するために努力した。アルカリビルダーは、含まれた洗浄成分の洗濯能力を増加させることができ、金属イオン封鎖剤またはキレート剤、緩衝剤、希釈剤または充填剤、運搬体またはpH調節剤として作用することができる。
【0023】
本発明による洗濯用シートは、シートの剤形性、保管安定性、製造容易性などを阻害しない範囲内で洗浄性能または形成能を向上させるため、洗浄補助成分をさらに含み得、例えば蛍光増白剤;酵素(例えば、セルラーゼ、プロテアーゼなど);繊維柔軟剤(例えば、4級アムモニウム塩系の陽イオン界面活性剤、シリコーン類繊維柔軟成分);漂白剤(例えば、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過リン酸塩、ジアシル、テトラアシルペルオキサイド);分散剤/乳化剤(例えば、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー);殺菌/消毒剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、過酸化尿素);香料;防腐剤;色素;抗菌剤などをさらに含み得る。
【0024】
一実施形態において、前記水溶性洗濯用シートは、水溶性フィルム形成高分子、前記洗浄成分、及びアルカリビルダーを含み、前記水溶性フィルム形成高分子は、乾燥後の水溶性洗濯用シートの総重量に対して18~38重量%で含まれ、望ましくは19~35重量%で含まれ得る。水溶性フィルム形成高分子の含量が多ければ、洗濯効果のための有効成分の含量を高めることができず、水溶性フィルム形成高分子の含量が少な過ぎれば、シート状に剤形化し難い。上記の含量範囲であるとき、シートの保管安定性、剤形性、洗浄力及び/または溶解度に優れ、大量生産に適した物性、または引張強度を有し得る。
【0025】
本発明の一実施形態は、水溶性フィルム形成高分子の含量が上記のようであるとき、洗浄成分を乾燥後の水溶性洗濯用シートの総重量に対して30~60重量%で含み得、望ましくは40~57重量%、より望ましくは43~55重量%で含み得る。洗浄成分の含量が多過ぎれば、シートの剤形性及び保管安定性が良くなく、最初生産直後に対して洗浄力が低下する問題が生じ、洗浄成分の含量が少な過ぎれば、所望の洗浄効果を持たないおそれがある。上記の含量範囲であるとき、本発明の目的を容易に達成することができる。
【0026】
本発明の水溶性洗濯用シートは、アルカリビルダーを含み、前記アルカリビルダーは、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アルカリケイ酸ナトリウム、中性ケイ酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、アルミノケイ酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、モノエタノールアミン(MEA)及びトリエタノールアミン(TEA)からなる群より選択されたいずれか一つ以上であってよく、望ましくは炭酸ナトリウムであり得る。アルカリビルダーの種類は、洗濯洗剤の製造業界で一般に使用するアルカリビルダーであれば特に制限されない。前記アルカリビルダーは、乾燥後の水溶性洗濯用シートの総重量に対して1~20重量%で含まれ、望ましくは5~20重量%、より望ましくは5~10重量%で含まれ得る。
【0027】
前記ポリオールは、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、アラビトール及びソルビトールからなる群より選択されたいずれか一つ以上を含み得、望ましくはソルビトールを含み得る。前記ポリオールは、乾燥後の水溶性洗濯用シートの総重量に対して5~20重量%で含まれ、望ましくは10~20重量%、より望ましくは12~18重量%、さらに望ましくは13~17重量%で含まれ得る。上記の含量範囲であるとき、シートの保管安定性、剤形性、洗浄力及び/または溶解度を向上させるとともに、大量生産に適した物性、引張強度を有し得る。
【0028】
前記ポリオールは、ポリビニルアルコールの反応性を減少させてシートの保管安定性を改善し、シートへの剤形化可能性を高められると考えられるが、必ずしもこのような理論に制限されることはない。
【0029】
本発明の一実施形態による前記水溶性洗濯用シートは、前記フィルム形成水溶性高分子と前記ポリオールとを1.1:1~8:1の比率で含み得、望ましくは1:2~8:1の比率、さらに望ましくは1:3~7:1の比率で含み得る。上記の比率を超えれば、安定性及び剤形性に問題が生じるおそれがある。
【0030】
本発明の一実施形態は、水溶性洗濯用シートの溶解度を改善するため、塩化物をさらに含み得、前記塩化物は1族または2族金属の塩化物からなる群より選択されたいずれか一つ以上であってよく、望ましくはNa、Mg、Ca元素の塩化物を含み、より望ましくはNaClであり得る。前記ポリオールを含む水溶性洗濯用シートに塩化物をさらに含むことで、前記洗濯用シートを洗濯水にさらに速く溶解させることができる。前記塩化物は、水溶性洗濯用シートの乾燥後の総重量に対して3~7重量%、望ましくは4~6重量%で含まれ得、使用されるポリオールの量と同じ量の塩化物を含み得る。上記の含量範囲であるとき、ポリオールを含む水溶性洗濯用シートの溶解度を効果的に改善することができる。
【0031】
本発明の一実施形態は、少量の剤形化剤を含みながらも、大量生産が可能な水溶性洗濯用シートを提供する。前記水溶性洗濯用シートは、25℃でZwickRoell社製の500N zwicki測定機で測定したとき、0.79~3.8kgf/cmの引張強度を有し得る。少量の剤形化剤で製造された洗濯用シートは、形態を維持し難いか、又は、大量生産の際、離型紙から剥離しながらロール状に巻き取るとき破断し易いが、上記のような引張強度を有する本発明の洗濯用シートはロール状に巻き取るとき破断し難くて大量生産に有利である。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、前記水溶性洗濯用シートにポリオールなしに金属イオン塩化物のみが含まれる場合、前記金属イオン塩化物は、乾燥後の水溶性洗濯用シートの総重量に対して1~12重量%で含まれ、望ましくは2~10重量%、より望ましくは3~10重量%、さらに望ましくは5~10重量%で含まれ得る。上記の含量範囲であるとき、本発明の目的を達成するのに有利であり、シートの保管安定性、剤形性、洗浄力、溶解度の向上に役に立つ。特に、金属イオン塩化物を含むシートは保管安定性が卓越し、シートが水に溶ける速度が速くて洗濯効果も優れる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、前記金属イオン塩化物とともにポリオールをさらに含み得る。前記ポリオールは、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、アラビトール及びソルビトールからなる群より選択されたいずれか一つ以上を含み、望ましくはソルビトールを含み得る。前記ポリオールは、乾燥後の水溶性洗濯用シートの総重量に対して5~20重量%で含まれ、望ましくは10~20重量%、より望ましくは12~18重量%、さらに望ましくは13~17重量%で含まれ得る。上記の含量範囲であるとき、シートの保管安定性、剤形性、洗浄力及び/または溶解度を向上させることができる。
【0034】
前記ポリオールは、ポリビニルアルコールの反応性を減少させてシートの保管安定性を改善し、シートへの剤形化可能性を高められると考えられるが、必ずしもこのような理論に制限されることはない。
【0035】
本発明の一実施形態による洗濯用シートは、洗濯用洗浄成分、水溶性フィルム形成高分子、金属イオン塩化物及びアルカリビルダーを含んで形成され、
前記洗濯用洗浄成分は、乾燥後の水溶性洗濯用シートの総重量に対して30~60重量%で含まれ、
前記水溶性フィルム形成高分子は、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール系共重合体であり、乾燥後の水溶性洗濯用シートの総重量に対して18~38重量%で含まれ、
前記金属イオン塩化物は、乾燥後の水溶性洗濯用シートの総重量に対して1~10重量%で含まれ、
前記アルカリビルダーは、乾燥後の水溶性洗濯用シートの総重量に対して1~20重量%で含まれ得る。
【0036】
本発明による水溶性洗濯用シートは、調剤に必要なすべての成分を溶媒に溶解させて配合液を製造した後、溶媒を蒸発させて製造し得る。前記溶媒としては、当業界で一般に使用される溶媒が使用され、望ましくは水であり得る。
【0037】
本発明の一実施形態による洗濯用シートは、洗濯用洗浄成分、水溶性フィルム形成高分子、ポリオール及びアルカリビルダーを含んで形成され、
前記洗濯用洗浄成分は、乾燥後の水溶性洗濯用シートの総重量に対して30~60重量%で含まれ、
前記水溶性フィルム形成高分子は、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール系共重合体であり、乾燥後の水溶性洗濯用シートの総重量に対して18~38重量%で含まれ、
前記ポリオールは、乾燥後の水溶性洗濯用シートの総重量に対して5~20重量%で含まれ、
前記アルカリビルダーは、乾燥後の水溶性洗濯用シートの総重量に対して1~20重量%で含まれ得る。
【0038】
本発明による水溶性洗濯用シートは、調剤に必要なすべての成分を溶媒に溶解させて配合液を製造した後、溶媒を蒸発させて製造し得る。前記溶媒としては、当業界で一般に使用される溶媒が使用され、望ましくは水であり得る。
【0039】
本発明による水溶性洗濯用シートは、後述する実施例の評価法による溶解速度が3分以内である得、望ましくは30秒以内であり得る。本発明の驚くべき溶解速度によって、従来の洗濯用シートに比べてさらに優れた洗浄力を発揮することができる。
【0040】
本発明による洗濯用シートの厚さは1μm~1cmであることが望ましく、5μm~0.5cmであることがより望ましく、50μm~1.5mmであることが最も望ましい。乾燥した洗濯用シートの厚さが1μm未満であれば、有効成分の担持が不十分になり、フィルムの強度が弱く、所望の性能を得難い。また、乾燥した洗濯用シートの厚さが1cmを超過すれば、溶解が遅くなって洗浄性能が低下する恐れがある。
【0041】
本発明の水溶性洗濯用シートは、バブリング工程を含み得、バブリング工程を通じて、水溶性洗濯用シートはシート内部及び/またはシート表面にバブルを含み得る。
【0042】
本発明の洗濯用シートは、本発明による一層のシートの外に他の層のシートが積層され、二層以上が一体化した状態として使用され得る。
【0043】
本発明の洗濯用シートは、酵素、漂白剤、漂白活性化剤、ビルダーなどの洗濯補助成分をさらに含み得、前記洗濯補助成分は顆粒状に製造されてシート内部及び/またはシート表面に含まれ得る。
【0044】
本発明は、今まで知られていなかった、ポリオール、望ましくはソルビトールの水溶性洗濯シートの保管安定性改善、溶解度改善、及び/または引張強度向上のための新たな用途を提供する。前記用途は金属イオン塩化物をさらに含み得る。
【0045】
本発明は、今まで知られていなかった、金属イオン塩化物、望ましくは塩化ナトリウムの水溶性洗濯シートの保管安定性改善、溶解度改善などのための新たな用途を提供する。前記用途はポリオールをさらに含み得る。
【0046】
本発明は、洗濯用洗浄成分、水溶性フィルム形成高分子及びアルカリビルダーを含んで形成する水溶性洗濯用シートにおいて、ポリオール、望ましくはソルビトールを洗濯用シートの製造過程で付け加えることで、水溶性洗濯シートの保管安定性を向上させ、溶解度を改善させ、大量生産し易い物性を有する新たな水溶性洗濯用シートの製造方法を提供することを目的とする。前記方法は金属イオン塩化物をさらに含み得る。
【0047】
本発明は、洗濯用洗浄成分、水溶性フィルム形成高分子及びアルカリビルダーを含んで形成する水溶性洗濯用シートにおいて、金属イオン塩化物、望ましくは塩化ナトリウムを洗濯用シートの製造過程で付け加えることで、水溶性洗濯シートの保管安定性を向上させ、溶解度を改善する新たな水溶性洗濯用シートの製造方法を提供することを目的とする。前記方法はポリオールをさらに含み得る。
【発明の効果】
【0048】
本発明による水溶性洗濯用シートは、アルカリビルダーとPVAとの間の反応を抑制でき、アルカリビルダーの機能維持及びPVA変性の最小化を期待することができるため、洗浄力に優れる。
【0049】
本発明による洗濯用シートは、保存安定性及び形態維持力に優れる。
また、少量の剤形化剤を使いながらも洗濯シートの引張強度が優れ、大量生産が容易な水に溶ける洗濯用シートを提供する。
【0050】
本発明の洗濯用シートは溶解性に優れ、洗浄成分が洗濯水に速く溶けることで洗浄力に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】可溶性シートの剤形化評価方法を説明するための図であって、乾燥後、離型紙に貼り付いており、剥離し難い様子を見せている。
図2】可溶性シートの剤形化評価方法を説明するための図であって、乾燥後、離型紙から剥離するとき、シートが破断する様子を見せている。
図3】[図a]可溶性シートの経時安定性評価を示しており、ソルビトールを添加しなかったときの製造直後(b)、及び常温で4週間保管(a)した後のソーダ灰の含量変化を示した結果である。4週が経過した後、含量に差が生じた(比較例1)。[図3b]本発明の実施例8によって製作された水溶性シートの保管安定性改善可否を確認した結果である。製造直後(b)、及び常温で4週間保管(a)した後に確認した結果であって、ソルビトールの添加によってソーダ灰(炭酸ナトリウム)の分解を防止できることを確認した。[図3c]ソルビトール含量に応じたシートの安定性向上結果を示している。2個の矢印はソーダ灰のピークを示している。ソルビトールの追加によってソーダ灰の分解が生じず、シート洗剤の熱安定性が強化したことを見せている。
図4】ソルビトールの有無による洗浄力の比較結果を示している。ソルビトールを含まないシートは、4週後洗浄力が顕著に低下することが分かる。4週経時保管安定性の比較結果を示している。
図5】ソルビトールを含むシートの溶解度を評価した結果を示している。
図6】可溶性シートの洗浄力評価結果を示している。左側から比較例1、実施例8、実施例9、実施例10である。
図7】塩化ナトリウム(塩)を含むシート及び含まないシートを製造するための配合液のIRピークを確認した結果である。無塩が(a)であり、塩が5%含まれた場合は(b)である。塩の存在によって洗濯有効成分のピークの大きさが変わる。
図8】[図8a]塩の含量によるシートの4週経時保管安定性の比較結果である。塩を5重量%含むときのシートの保管安定性がより優れる。[図8b](c)は初期値、(d)は4週経時後の数値を示す。塩の含量が増加するほど、(c)と(d)との差が減り、差が小さいほど、安定性が改善されたことを示唆する。
図9】塩を含むシート(下段、実施例13)及び含まないシート(上段、比較例9)の溶解度を評価した結果である。上段の塩を含むシートの溶解度がより優れる。 すべてのIRグラフにおいて、縦軸は透過率(transmittance)%を示し、横軸は波数(wave numbers)(cm-1)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の理解を助けるため、実施例などを挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形でき、本発明の範囲が後述する実施例によって限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。本明細書に使われた温度は、特に言及しない限り、℃を意味する。下記の実施例において、PVAは日本酢ビ・ポバール社製のJR-05製品を使った。鹸化度は72%であり、重合度は500である。その外に使った他の成分は商用化された成分であって、製造社から入手して使った。
【0053】
1.ポリオールを含む可溶性シートの製造
<ソルビトールを含む可溶性シートの製造>
配合液の製造は、60℃の水に水溶性フィルム形成高分子である剤形化剤→ポリオール→洗浄成分→洗浄補助成分→その他の順に投入し、それぞれの投入段階で投入物が完全に溶解されるまで180RPMで撹拌する。このとき、水の量は剤形化剤+ポリオール+洗浄成分+洗浄補助成分+その他の和と同一である(50%水溶液に製造)。
剤形化工程では、配合液をドクターブレードで大きさ15×25cm、厚さ1.5mmのシート状にし、125℃の乾燥オーブンで12分間乾燥した。
【0054】
<水溶性洗濯用シートの剤形化評価>
下記の方法によって評価する。
製造後に図1及び図2のような現象が起きるかを観察する。すなわち、製造した後、離型紙にくっついて剥離できないかを観察し、次いで、乾燥後離型紙から剥離するときシートが破断しないかを観察する。
20℃、30%の恒温恒湿室で評価を行った。5回繰り返して製造し、すべての現象が観察されなければ良好、図1のみが観察されれば不良、図1及び図2がすべて観察されれば非常に不良と評価した。
下記の実験結果から確認できるように、剤形化剤の代わりにポリオールを添加して洗濯用シートを製造しても剤形化が可能であった。
【0055】
<IRを通じた経時安定性の評価>
PVAを用いて製造された水溶性洗濯シートは、時間が経過するほど、PVAの分解によって洗浄成分及び洗浄補助成分の分解が促進される問題がある。そこで、ポリオールをさらに含むことで、保管安定性が改善されるか否かを確認した。
50%水溶液で製造され、下記の組成を有する洗濯用シート用配合液でIRスペクトルを確認した。
製造直後にIRを測定し、4週間保管(20℃、30%、PET16+LLDPE55材質のパッケージ内に保管)後にIRを再度測定した(使用機器:パーキンエルマーウルトラ2、温度20℃、湿度30%恒温恒湿室)
【0056】
1410、1450cm-1で変化が観察された。このピークはNaCOのうちCO 2-に該当するものである。保管過程で接触する熱と水分によってNaCO+HO→2NaOH+COの反応が進行すると、CO 2-が消耗するため、それに該当する1410、1450cm-1の強度が減ったと考えられる。
ソルビトールが存在するとき、アルカリビルダーであるNaCOの減少を遅延させることができた。
【0057】
このような結果から、洗浄力改善効果が優れることが分かった。
【0058】
<ポリオール(ソルビトール)を利用して性能を改善した可溶性シート>
下記の組成を有する洗濯用シートを製造して評価した。
【0059】
【表1】
【0060】
下記の表2に示されたように、多様な種類のポリオールで実験を行った。
【0061】
【表2】
【0062】
ポリオールとしてソルビトール、エリスリトール及びキシリトールを用いて製造したシートは、いずれも剤形化が容易であって、ソルビトールに類似した効果を示すことを確認した。
ポリオールを使用するとき、剤形化剤の含量をシートの総重量対比最大23%まで減少させてシート内の剤形化剤の含量を減らしても、シートとして製造することが容易であった。
ソルビトールの含量が最大20重量%未満であって、引張強度が0.79~3.87kgf/cmであるとき、シートの大量生産能に優れ、ソルビトールの含量が全体シートの10重量%~20重量%であるときの溶解度が改善されることを確認した。
【0063】
[評価結果3]シート保管期間に応じた洗浄力の変化(ソルビトール適用 VS. ソルビトール未適用)(保管条件:20℃、湿度30%)
比較例1と実施例3で製造されたシートに対し、製造直後及び4週間保管後のシートの洗浄力を比較し、結果を図4に示した。
洗浄力は下記のような方法で評価した。
1.ターゴトメーター(Terg-o-tometer)、水1L、水温20℃、硬度50ppm
2.使用汚染布:日本湿式汚染布(116、2枚/L)、
3.使用サンプル量:標準使用量0.09g/L
4.汚染布とサンプルの所定量を1Lの水に投入した後、10分間撹拌評価。(汚染布毎に評価)
5.色差計を用いて変化した各汚染布のWb値を測定した後、ハリス(Harris)の式を用いて洗浄力計算。
6.製造直後の洗浄力を100に換算して変化確認。
*保管サンプルは4週間、PET16+LLDPE55材質のパッケージ内に保管。
【0064】
【数1】
【0065】
ここで、Rは洗濯前汚染布の表面反射率であり、Rは洗濯後の表面反射率であり、Rは白布の表面反射率である。
図4を参照すると、実施例3のソルビトールを15重量%で含むシートは、4週間保管後にも最初製造時の洗浄力をそのまま維持するが、ソルビトールを含まないシートは、洗浄力が約40%程度減少する結果を見せた。
ソルビトールを適用したとき、保管安定性の強化を通じてソーダ灰(炭酸ナトリウム)の分解による洗浄力低下を防止し、製造直後と常温保管後とで洗浄力の差がないと考えられるが、このような理論に制限されて本発明が解釈されることはない。
【0066】
<可溶性シートの溶解速度評価方法>
[評価方法]
実施例及び比較例で製造されたサンプルを6×6×0.12cmで用意した。温度20℃、湿度30%の恒温恒湿室で、25℃の水を用意した後、25cm×30cmの四角水槽に水位5cmまで水を満たした。
サンプルを水面に浮かべ、撹拌せず溶解するまで5回繰り返して平均時間を測定した。溶解到達時間が30秒以内であれば非常に良好、30秒~3分であれば良好、3分~5分であれば普通、5分~10分であれば不良、10分以上であれば非常に不良と評価した。
*溶解の判断基準:75μmフィルターで濾過したとき、濾過されない残余洗剤の重量が全体洗剤重量の5%未満であるときを溶解されたと判断した。
【0067】
比較例1と実施例3の結果を図5に示した。ポリオールを使用したとき、溶解速度が著しく増加した。図5の上段は比較例1のシートの溶解速度を示す写真であり、下段は実施例3のシートの溶解速度を示す写真である。
【0068】
<洗濯用シートの大量生産性評価方法及び基準>
[大量生産性の評価方法]
1.工場で、製品を乾燥した後、離型紙から剥離するときの破断有無を確認した。
2.配合液800kgを乾燥したとき、破断せずにリワインダに巻き取られると良好、リワインド中に破断すると不良、リワインド前に破断すると非常に不良と評価した。
【0069】
[引張強度の評価方法]
1)横20mm、縦60mm、厚さ1.2mmのサンプルを用意した。
2)ZwickRoell社製の500N zwickiで、20℃、湿度30%の恒温恒湿室で引張強度を測定した。
3)グリップ間の距離を25mmにしてサンプルを固定した後、500mm/分の速度でサンプルが切れるまで動いて引張強度を測定した。
【0070】
[実験結果]
【表3】
【0071】
1.3回測定後、平均値を記録する。
2.ソルビトールの含量が増加するほど引張強度は低下する傾向を見せ、20%含量から引張強度が急激に減少する傾向を見せる。
3.20%以下の含量で、リワインド中に破断することなく、大量生産が容易であった。ソルビトールが20%を超過すると、リワインド工程前、シートの剥離過程で破断して生産自体が不可能であった。
【0072】
<可溶性シートの有効成分増加及び洗浄力の評価>
ソルビトール使用時に、剤形化剤を少量使用しても剤形化が可能であるか否か、及び保管安定性及び溶解度が改善されるか否かを確認した。したがって、ソルビトールを用いて有効成分の比率変化、増量可能性及びそれによる洗浄力変化を確認した。
【0073】
【表4】
【0074】
[洗浄力変化の確認]
1.ターゴトメーター(Terg-o-tometer)、水1L、水温20℃、硬度50ppm
2.使用汚染布:日本湿式汚染布(JIS、8枚/L)、w-20D(20D、8枚/L)、empa-116(116、2枚/L)、empa-117(117、2枚/L)
3.使用サンプル量:標準使用量0.09g/L
4.汚染布とサンプルの所定量を1Lの水に投入した後、10分間撹拌評価。(汚染布毎に評価)
5.色差計を用いて変化した各汚染布のWb値を測定した後、ハリス(Harris)の式を用いて洗浄力計算 。
【0075】
【数2】
【0076】
ここで、Rは洗濯前汚染布の表面反射率であり、Rは洗濯後の表面反射率であり、Rは白布の表面反射率である。
【0077】
有効成分が増加したとき、すべての汚染で従来製品対比約10%以上の洗浄力増加を見せ、特にタンパク質汚染(116/117)で約30%洗浄力が増加した。その結果を図6に示した。
【0078】
<塩化ナトリウムとポリオールとをともに含む水溶性洗濯シートの溶解度評価>
【表5】
【0079】
ソルビトールと塩化ナトリウムとをともに使用したとき、溶解速度が大幅に改善した。
【0080】
2.金属イオン塩化物を含む可溶性シートの製造
<塩化ナトリウム(塩)を含む可溶性シートの製造>
配合液の製造は、60℃の水に水溶性フィルム形成高分子である剤形化剤→ポリオール→洗浄成分→洗浄補助成分→その他の順に投入し、それぞれの投入段階で投入物が完全に溶解されるまで180RPMで撹拌する。このとき、水の量は剤形化剤+ポリオール+洗浄成分+洗浄補助成分+その他の和と同一である(50%水溶液に製造)。
剤形化工程では、配合液をドクターブレードで大きさ15×25cm、厚さ1.5mmのシート状にし、125℃の乾燥オーブンで12分間乾燥した。
【0081】
<水溶性洗濯用シートの剤形化評価>
下記の方法によって評価する。
乾燥後に図1及び図2のような現象が起きるかを観察する。すなわち、乾燥後、離型紙にくっついて剥離できないかを観察し、次いで、乾燥後離型紙から剥離するときシートが破断しないかを観察する。
20℃、30%の恒温恒湿室で評価を行った。5回繰り返して製造し、すべての現象が観察されなければ良好、図1のみが観察されれば不良、図1及び図2がすべて観察されれば非常に不良と評価した。
【0082】
金属イオン塩化物を添加した水溶性洗濯用シートでは、離型紙にくっつく問題やシートが破断する問題の発生が少なかった。すなわち、シートの剤形化に肯定的な影響を及ぼすことを確認した。
【0083】
【表6】
【0084】
<IRを通じた経時安定性の評価>
PVAを用いて製造された水溶性洗濯シートは、時間が経過するほど、PVAの分解によって洗浄成分及び洗浄補助成分の分解が促進される問題がある。そこで、塩をさらに含むことで、保管安定性が改善されるか否かを確認した。結果を図7に示した。
50%水溶液で製造され、下記の組成を有する洗濯用シート用配合液でIRスペクトルを確認した。
製造直後にIRを測定し、4週間保管(20℃、30%、PET16+LLDPE55材質のパッケージ内に保管)後にIRを再度測定した(使用機器:パーキンエルマーウルトラ2、温度20℃、湿度70%恒温恒湿室)
【0085】
図7の結果から、塩を含むとき、洗濯有効成分のIRピークが変わることを確認し、特に図8a及び図8bのように、塩をシートの乾燥重量対比5重量%で含んだとき、有効成分のピーク差が殆どないことを確認した。このような結果から、有効成分の安定性に役立ち、洗浄力改善効果を向上させるのに塩が影響を及ぼすということが分かる。
【0086】
<可溶性シートの溶解速度評価方法>
[評価方法]
実施例及び比較例で製造されたサンプルを6×6×0.12cmで用意した。温度20℃、湿度70%の恒温恒湿室で、25℃の水を用意した後、25cm×30cmの四角水槽に水位5cmで水を満たした。
サンプルを水面に浮かべ、撹拌せず溶解するまで5回繰り返して平均時間を測定した。溶解到達時間が30秒以内であれば非常に良好、30秒~3分であれば良好、3分~5分であれば普通、5分~10分であれば不良、10分以上であれば非常に不良と評価した。
*溶解の判断基準:75μmフィルターで濾過したとき、濾過されない残余洗剤の重量が全体洗剤重量の5%未満である場合に溶解されたと判断した。
【0087】
図9に結果を示した。塩を5重量%で含むシートを製造すると、塩を含まないシートと比べて、洗濯シートの溶解速度が顕著に増加することが分かる。
【0088】
<金属イオン塩化物の種類に応じた溶解速度の改善効果>
塩化物の種類に応じて洗濯シートの溶解度が如何に変わるかを確認するため、下記のような実験を行った。含量は重量%で示した。
【0089】
【表7】
【0090】
表7の組成を有する水溶性洗濯シートを製作し、上述した<可溶性シートの溶解速度評価方法>によって水溶性洗濯シートの溶解速度を評価した。硫酸化物が含まれた水溶性洗濯シート(比較例12)は、上記の方法によって測定したとき、50秒が経過してもシートが殆ど溶解されなかった。しかし、塩化物を含む実施例15~17の水溶性洗濯シートは著しく速い速度で洗濯水に溶解されることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、水に溶けて便利に使用可能なシート状の洗濯洗剤を提供する。本発明によるシート状の洗濯洗剤は溶解度及び保管安定性が優れる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9