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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】灯具システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/50 20060101AFI20241105BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20241105BHJP
   G08G 1/0965 20060101ALI20241105BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20241105BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20241105BHJP
   B60W 30/18 20120101ALI20241105BHJP
   B60Q 1/26 20060101ALI20241105BHJP
   B60Q 1/52 20060101ALI20241105BHJP
   F21V 14/04 20060101ALI20241105BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20241105BHJP
   F21V 9/40 20180101ALI20241105BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20241105BHJP
   F21W 103/60 20180101ALN20241105BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241105BHJP
【FI】
B60Q1/50 Z
G08G1/09 D
G08G1/09 H
G08G1/0965
G08G1/09 F
G08G1/09 V
B60W50/14
B60W60/00
B60W30/18
B60Q1/26 Z
B60Q1/52
F21V14/04
F21V7/00 590
F21V9/40 400
F21W103:00
F21W103:60
F21Y115:10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021573091
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2021000855
(87)【国際公開番号】W WO2021149560
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2020009157
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020025100
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020027807
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】田村 例人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】竹田 新
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】仲田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】田辺 浩一
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-037806(JP,A)
【文献】特開2016-115144(JP,A)
【文献】特開平06-024271(JP,A)
【文献】国際公開第2019/078193(WO,A1)
【文献】特開平01-195154(JP,A)
【文献】特開2018-024291(JP,A)
【文献】特開2008-126910(JP,A)
【文献】特開2005-263028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00
G08G 1/09
G08G 1/0965
B60W 50/14
B60W 60/00
B60W 30/18
F21V 14/04
F21V 7/00
F21V 9/40
F21W 103/00
F21W 103/60
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が路肩に停止した状態において、その側方の歩道を照射可能であり、点灯状態において前記歩道に存在する歩行者前記車両の発車を報知する第1ランプと、
前記車両が、前記路肩に停車した状態から発車する際に、前記第1ランプを点灯するコントローラと、
を備えることを特徴とする灯具システム。
【請求項2】
前記コントローラは前記車両が所定距離、進むと、前記第1ランプを消灯することを特徴とする請求項1に記載の灯具システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記歩行者が検知されないとき、前記第1ランプを点灯しないことを特徴とする請求項1または2に記載の灯具システム。
【請求項4】
前記第1ランプは、ドアミラーに内蔵されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項5】
前記第1ランプは、前記車両の側面または下側に内蔵されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項6】
前記第1ランプは、前記車両の側面に設けられるディスプレイであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項7】
路肩に停車した前記車両が発進する際の進行方向を示すパターンを描画する第2ランプをさらに備え、
前記コントローラは、路肩に停車した前記車両が発車する際に、前記第2ランプを発光させることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記第1ランプを消灯した後に、前記第2ランプを消灯することを特徴とする請求項に記載の灯具システム。
【請求項9】
前記第1ランプは、赤またはアンバーで発光することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の灯具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具、自動車、運転支援装置、交通システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、ヘッドランプ、ポジションランプ、ストップ(ブレーキ)ランプ、バックランプ、ターンランプなどの灯具が搭載され、安全性の向上に貢献している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/078193号
【文献】国際公開2017/073634号公報
【文献】国際公開2015/133302A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自動運転車が普及し始めており、交通環境は大きく変貌を遂げている。自動運転車が多く走行する交通社会では、従来とは異なる新たな灯具システムが求められる。
【0005】
本開示はこうした状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、交通安全に寄与する灯具の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1. 本開示のある態様の灯具システムは、車両が路肩に停止した状態において、その側方の歩行者が認知可能な形態で発光する第1ランプと、路肩に停車した車両が発車する際に、第1ランプを点灯するコントローラと、を備える。
【0007】
2. 本開示のある態様は、運転支援装置に関する。運転支援装置は、車車間通信または路車間通信により、自車の近傍の緊急車両の通過を知らせる第1情報を受信する通信装置を備える。
【0008】
3. 本開示のある態様は運転支援装置に関する。運転支援装置は、現在走行中の車線に待機列ができており、当該待機列が自車と無関係なものである所定状況を検出する制御部と、制御部により所定状況が検出されると、運転者に当該待機列の回避を促す提示部と、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム等の間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本開示のある態様によれば、安全性を高めることができ、また別の態様によれば、交通を円滑化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る灯具システムのブロック図である。
図2】灯具システムを備える車両を示す図である。
図3図3(a)~(d)は、図1の灯具システムの動作を説明する図である。
図4図1の灯具システムの動作を説明するフローチャートである。
図5】変形例1.2に係る車両を示す図である。
図6】実施形態2に係る交通システムのブロック図である。
図7図7(a)~(c)は、図6の交通システムの運用を説明する図である。
図8図8(a)~(c)は、図6の交通システムの運用を説明する図である。
図9図6の交通システムのさらに別の特徴を説明する図である。
図10】交通インフラのアクションの別の例を説明する図である。
図11図11(a)、(b)は、ある走行シーンを説明する図である。
図12】実施形態3に係る運転支援装置のブロック図である。
図13図13(a)~(c)は、運転支援装置の動作を説明する図である。
図14図14(a)~(c)は、路面描画装置が描画する第1図形の例を示す図である。
図15図15(a)、(b)は、路面描画装置が描画する第1図形の変化を示す図である。
図16】第2図形を説明する図である。
図17図17(a)、(b)は、所定状況の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態または複数の実施形態を指すものとして用いる場合がある。
【0013】
1. 実施形態1
1.1. 実施形態1の概要
一実施形態に係る灯具システムは、車両が路肩に停止した状態において、その側方の歩行者が認知可能な形態で発光する第1ランプと、路肩に停車した車両が発車する際に、第1ランプを点灯するコントローラと、を備える。
【0014】
路肩に停車した車両が突然発車すると、歩行者にとって危険である。この態様によれば、第1ランプを点灯させることで、歩行者に注意喚起でき、歩行者と接触するような危険を回避できる。
【0015】
コントローラは車両が所定距離、進むと、第1ランプを消灯してもよい。あるいはコントローラは、発進開始から所定時間経過後に、第1ランプを消灯してもよい。車両が動き始めれば、注意喚起しなくても、歩行者は車両を避けようとするため、消灯することができる。
【0016】
コントローラは、歩行者が検知されないとき、第1ランプを点灯しなくてもよい。
【0017】
第1ランプは、路肩側の路面を照射してもよい。これにより、足下をみて歩く歩行者が、認識しやすくなる。
【0018】
第1ランプは、ドアミラーに内蔵されてもよい。第1ランプは、車両側面または下側に内蔵されてもよい。
【0019】
第1ランプは、車両の側面に設けられるディスプレイであってもよい。この場合、路面が明るい昼間でも、歩行者に対する注意喚起が可能となる。
【0020】
第1ランプは、赤またはアンバーで発光してもよい。これらの色は人間の目が知覚しやすい。
【0021】
灯具システムは、路肩に停車した車両が発進する際の進行方向を示すパターンを描画する第2ランプをさらに備えてもよい。コントローラは、路肩に停車した車両が発車する際に、第2ランプを発光させてもよい。
【0022】
コントローラは、第1ランプを消灯した後に、第2ランプを消灯してもよい。
【0023】
1.3 実施形態1の詳細な説明
以下、本開示を好適な実施形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0024】
図1は、実施形態1に係る灯具システム(あるいは車両用灯具)100のブロック図である。灯具システム100は、第1ランプ110、第2ランプ120、コントローラ130を備える。これらはすべて同じ筐体に内蔵されていてもよいし、別々の筐体に分離して形成されてもよい。
【0025】
図2は、灯具システム100を備える車両800を示す図である。この例では、左側通行の国や地域を想定しており、路肩2は、車道4の左側に設けられる。路肩2を挟んで車道4と反対側には、歩道6が設けられる。路肩2は、車両800が停止あるいは駐車するスペースとして利用される。図2は、車両800が路肩2に停車している状態を示している。
【0026】
車両800は、自動運転車である。第1ランプ110は、車両800が路肩2に停車した状態において、その側方(すなわち歩道6)の歩行者1や自転車が認知可能な形態で発光する。好ましくは第1ランプ110は、歩道6の路面を照射するように構成される。この例では、第1ランプ110は、左側のドアミラー802に内蔵され、あるいは取り付けられている。
【0027】
たとえば第1ランプ110は赤色あるいはアンバーの光源を含むことができる。また第1ランプ110は、数十cm~2m程度の照射領域8を照射する。第1ランプ110は、点滅してもよい。
【0028】
第2ランプ120は、車両800が発車する際の進行方向を示すパターン10を描画する。このパターン10は、車道4を走行する後続車両に、車両800が発進する意図を通知する。たとえばパターン10は、車両800の進行方向を示す矢印であってもよい。
【0029】
コントローラ130はECU(Electronic Control Unit)とも称され、車両の状態や周囲の状況に応じて、第1ランプ110、第2ランプ120の点灯、消灯を制御する。具体的には、コントローラ130は、路肩に停車した車両800が発進する際に、第1ランプ110および第2ランプ120を点灯させる。
【0030】
以上が灯具システム100の構成である。続いてその動作を説明する。
【0031】
図3(a)~(d)は、図1の灯具システム100の動作を説明する図である。図3(a)において車両800は路肩2に停車している。図3(b)に示すように、車両800が発進するとき、第1ランプ110および第2ランプ120の両方が点灯し、歩道6の路面の領域8が照射され、また車道側にパターン10が描画される。路面のパターン10によって、後続車両810に、合流の意図を知らせることができる。また歩道の路面を照射することで、周囲の歩行者1にも、車両800の発車の意図を知らせ、注意喚起することができる。
【0032】
図3(c)に示すように、車両800がある程度進むと、歩行者に接触するリスクは低下するため、第1ランプ110を消灯する。これにより歩道6側の照射領域8が消失する。
【0033】
たとえばコントローラ130は、車両800が所定距離d(たとえば2m以上)進むと、第1ランプ110を消灯してもよい。あるいはコントローラ130は、発進開始から所定時間τ(たとえば数秒)経過後に、第1ランプ110を消灯してもよい。車両800が動き始めれば、注意喚起しなくても、歩行者は車両を避けようとするため、消灯することができる。
【0034】
図3(d)に示すように、車両800の車道4への合流が完了すると、第2ランプ120が消灯する。たとえばコントローラ130は車両800の車道4への合流の完了を検出すると、第1ランプ110を消灯してもよい。コントローラ130は、発進開始から所定距離d(ただしd>d)進むと、第2ランプ120を消灯してもよいし、発進開始から所定時間τ(ただしτ>τ)経過すると、第2ランプ120を消灯してもよい。
【0035】
図4は、図1の灯具システム100の動作を説明するフローチャートである。コントローラ130は、車両800が路肩2に停車中か否かを判定する(S100)。路肩2に停車中でない場合(S100のN)、処理は終了する。路肩2に停車中に(S100のY)、発車のトリガーの有無を監視する(S102)。トリガーが検出されない場合(S102のN)、検出されるまで待機となる。
【0036】
自動運転車の場合、発車のトリガーは、搭乗者の操作入力であってもよい。あるいは自動運転車が遠隔操作される場合、外部から無線で与えられる指令であってもよい。手動運転モードの場合、運転者がアクセルを踏んだことをトリガーとしてもよいし、運転者が右ウィンカーを点灯したことをトリガーとしてもよい。
【0037】
発車のトリガーを検出すると(S102のY)、第1ランプおよび第2ランプを点灯する(S104)。続いて、第1ランプを消灯し(S106)、第2ランプを消灯し(S108)、発車シーケンスが終了する。
【0038】
なおコントローラ130は、発車のトリガーを検出した段階(S102)で、周囲に歩行者が検知されないとき、第1ランプを点灯せず、第2ランプのみを点灯させるようにしてもよい。
【0039】
1.4 実施形態1の変形例
実施形態1に関連する変形例を説明する。
【0040】
(変形例1.1)
第1ランプ110の取り付け場所はドアミラーに限定されず、車両の下側であってもよいし、車両の側面であってもよく、要するに、歩道側の路面を照射できればよい。
【0041】
(変形例1.2)
実施形態では、第1ランプ110によって路面を照射し、歩行者に注意喚起をしたがその限りでない。図5は、変形例1.2に係る車両800Aを示す図である。この変形例1.2では、第1ランプ110Aは、ディスプレイであり、直接、歩行者1が見やすい箇所である車両800Aの側面に設けられている。第1ランプ110Aがディスプレイの場合、発進を想起させる図形112やパターンを描画してもよい。あるいはディスプレイを所定の色で発光させてもよい。第1ランプ110Aは、ディスプレイではなく、平面発光するランプであってもよい。この場合、第1ランプ110Aをアンバーや赤で発光させると、ブレーキランプやウィンカーと誤認識されるおそれがあるため、白、赤、アンバー以外の色を選んでもよい。
【0042】
(変形例1.3)
実施形態では、第1ランプ110と第2ランプ120の両方を備えるシステムを説明したが、第2ランプ120を省略した構成も、本発明の態様として有効である。
【0043】
2. 実施形態2
2.1 実施形態2の課題
救急車や消防車、パトカーなどの緊急車両が通過する際に、その他の一般車両の運転者は、緊急車両が優先的に通過できるように路肩に寄せて停車させる。
【0044】
現状では、緊急車両のサイレンを頼りに、運転者が緊急車両の通過を予測し、必要な退避行動をとる必要がある。また、緊急車両が通過した後は、自身の判断で、元の走行車線に復帰する必要がある。
【0045】
一般車が、緊急車両が通過する道路とは違う道路を走行している際に、その運転者が不要な減速を行うと、円滑な交通を妨げる要因となる。
【0046】
また、緊急車両を通過させるために、複数の一般車両が停車した状況で、それぞれが無秩序に元の走行車線に復帰しようとすると、円滑な交通を妨げる要因となる。
【0047】
本開示の一実施形態はこうした状況においてなされたものである。以下では、円滑な交通に寄与する運転支援装置、自動車および交通システムについて説明する。
【0048】
2.2 実施形態2の概要
【0049】
本明細書に開示される一実施形態は、運転支援装置に関する。運転支援装置は、車車間通信または路車間通信により、自車の近傍の緊急車両の通過を知らせる第1情報を受信する通信装置を備える。
【0050】
これにより、緊急車両の通行と無関係な一般車両が不必要に停車する機会を減らすことができ、交通を円滑化できる。
【0051】
第1情報は、緊急車両から送信されてもよい。あるいは第1情報は、交通インフラから送信されてもよい。
【0052】
運転支援装置は、自動運転車両に搭載されてもよい。運転支援装置は、第1情報にもとづいて、自動運転車両を停車させてもよい。
【0053】
運転支援装置は、第1情報にもとづいて、運転支援装置を搭載する車両の運転者または搭乗者に、当該車両を停車すべきことを提示する第1提示装置をさらに備えてもよい。これにより手動(非自動)運転車両の運転者は、第1提示装置の出力にしたがって、自動車を停車することができる。また自動運転車両の搭乗者は、自分の車両が停車した理由が、緊急車両の通過によるものであることを知ることができる。
【0054】
第1提示装置は、路面描画装置およびHUD(Head-up Display)の少なくともひとつを含んでもよい。
【0055】
通信装置は、車車間通信または路車間通信により、緊急車両の通過後に、元の走行車線への復帰を許可する第2情報を受信してもよい。複数の一般車両が停車した場合に、複数の一般車両に、異なるタイミングで第2情報を与えることにより、秩序を保ちながら、複数の一般車両を元の走行車線に復帰させることができる。
【0056】
第2情報は、緊急車両から送信されてもよい。あるいは第1情報は、交通インフラから送信されてもよい。
【0057】
運転支援装置は、第1情報にもとづいて、別の車両の運転者に車両を停車すべきことを提示する第2提示装置をさらに備えてもよい。
【0058】
第2提示装置は、路面描画装置および車体の側面あるいは後方に取り付けられたディスプレイ装置の少なくともひとつを含んでもよい。
【0059】
本明細書に開示される一実施形態は、交通システムに関する。この交通システムは、緊急車両と、運転支援装置を備える一般車両と、を備える。緊急車両は、その進行経路上に存在する一般車両に、緊急車両の通過を報知する第1情報を車車間通信により送信する。
【0060】
これにより、緊急車両の通行と無関係な一般車両が不必要に停車する機会を減らすことができ、交通を円滑化できる。
【0061】
緊急車両は、第1情報に応じて停車した複数の一般車両に対して、個別に、元の走行車線に復帰すべきタイミングを含む第2情報を車車間通信により送信してもよい。これにより、秩序を保ちながら、複数の一般車両を元の走行状態に復帰させることができる。
【0062】
交通システムは、緊急車両に関連するパターンを路面に描画する交通インフラをさらに備えてもよい。
【0063】
交通インフラは、緊急車両の後方に、一般車両の進入禁止あるいは接近禁止を示す第1パターンを描画してもよい。一般車両は、第1パターンが遠ざかったことを確認すると、元の車線に復帰して走行を再開できる。
【0064】
交通インフラは、緊急車両の進路を示す第2パターンを描画してもよい。これにより、一般車両は第2パターンを避けるように、停車することができる
【0065】
交通インフラは、緊急車両が停車する位置を示す第3パターンを描画してもよい。一般車両が、第3パターンを避けて通行することにより、緊急車両が停車する場所を確保できる。
【0066】
緊急車両は警察車両であり、交通インフラは、警察車両が追跡する車両をマーキングしてもよい。
【0067】
2.3 実施形態2の詳細な説明
図6は、実施形態2に係る交通システム902のブロック図である。交通システム902は、緊急車両910および複数の一般車両920A,920Bを備える。
【0068】
緊急車両910は、走行を優先させるべき車両であり、救急車や消防車、警察車両等が例示される。一般車両920は、緊急車両910以外の車両であり、緊急車両910が接近した際には、その走行の妨げとならないように、退避行動が求められる。一般車両920Aは、自動運転車を示し、一般車両9920Bは、手動運転車を示す。
【0069】
一般車両920Aについて説明する。一般車両920Aは、自動運転車両であり、運転支援装置200Aを備える。運転支援装置200Aは、通信装置210、自動運転システム120、第1提示装置230、第2提示装置240を備える。通信装置210は、第5世代(5G)に準拠した無線インタフェースであり、車車間通信および路車間通信によって、走行に有用な情報を送受信可能となっている。
【0070】
通信装置210は、車車間通信または路車間通信により、自車の近傍の緊急車両910の通過を知らせる第1情報S1を受信する。この第1情報S1は、車車間通信によって、緊急車両910の通信装置912から直接受信してもよいし、交通インフラ930を経由して受信してもよい。あるいは別の一般車両920を経由して、第1情報S1を受信してもよい。
【0071】
通信装置210が第1情報S1を受信すると、自動運転システム120は、第1情報S1にもとづいて一般車両920Aを停止させる。
【0072】
第1情報S1は、停止指示に加えて、右側に寄せて停車すべきか、左側に寄せて停車すべきかの情報を含んでもよい。また第1情報S1は、停止すべき時刻に関する情報を含んでもよい。
【0073】
第1提示装置230は、第1情報S1にもとづいて、運転支援装置200を搭載する車両の搭乗者に、当該車両を停車すべきことを提示する。自動運転車両920Aの搭乗者は、自分の車両が停車した理由が、緊急車両910の通過によるものであることを知ることができる。
【0074】
第1提示装置230は、路面描画装置であってもよい。第1提示装置230は、路面に、緊急車両910が通過することを示す図形やパターンを描画してもよい。それに加えて/代えて、第1提示装置230は、路面に、自車が緊急車両910を避けるために停止すべき位置、あるいは、その方向を示す図形やパターンを描画してもよい。緊急車両に関連する図形やパターンは、一般的な描画と区別できるように、異なる色(たとえば赤色)を用いることが好ましい。
【0075】
第1提示装置230は、HUD(Head-up Display)であってもよい。HUDは、緊急車両910が通過することを示す図形やパターンを表示してもよい。それに加えて/代えて、HUDは、自車が緊急車両910を避けるために停止すべき位置、あるいは、その方向を示す図形やパターンを描画してもよい。
【0076】
そのほか、第1提示装置230は音声再生装置であってもよく、音声案内によって、緊急車両の通過によって停車すべきことを搭乗者に報知してもよい。
【0077】
交通システム902が普及する過渡期においては、運転支援装置200は、すべての車両に搭載されるわけではなく、運転支援装置200を備えない車両が存在することも想定される。第2提示装置240は、第1情報S1にもとづいて、運転支援装置200を備えない別の車両の運転者に、車両を停車すべきことを提示する。第2提示装置240は、路面描画装置であってもよく、後続車の運転者が視認可能な態様で、緊急車両の接近および停車すべきことを示す図形やパターンを描画してもよい。
【0078】
第2提示装置240は、路面描画装置および車体の側面あるいは後方に取り付けられたディスプレイ装置であってもよい。ディスプレイ装置は、後続車の運転者が視認可能な態様で、緊急車両の接近および停車すべきことを示す図形やパターンを表示してもよい。
【0079】
通信装置210は、車車間通信または路車間通信により、緊急車両910の通過後に、元の走行車線への復帰を許可する第2情報S2を受信する。第2情報S2は、緊急車両910から直接受信してもよいし、交通インフラ930経由で受信してもよいし、他の車両経由で受信してもよい。
【0080】
通信装置210が第2情報S2を受信すると、自動運転システム120は、第2情報S2にもとづいて一般車両920Aを発進させる。
【0081】
第2情報S2は、各車両に対して、別々のタイミングで与えられる。緊急車両910は、複数の一般車両920それぞれを追い越すタイミングで、一般車両920それぞれのIDを取得してもよい。これにより緊急車両910のコントローラ14は、複数の一般車両の位置および並び順を知ることができる。なお、緊急車両910は、自身が追い越した複数の一般車両の位置や順序を、交通インフラ930から取得してもよい。コントローラ14は、複数の一般車両を円滑に走行状態に復帰させるべく、各車両が復帰すべきタイミングを計算し、個別に第2情報S2を与えるとよい。
【0082】
複数の一般車両が停車した状態から、復帰する際に、後ろの車両が前の車両を追い越すことは、交通秩序を乱すこととなる。そこで、ある程度、近い範囲に複数の一般車両が存在する場合には、先頭の車両から順番に、第2情報S2を与えるとよい。
【0083】
手動運転車両である一般車両9920Bを参照する。運転支援装置200Bは、通信装置210、第1提示装置230、第2提示装置240を備える。通信装置210が第1情報S1を受信すると、第1提示装置230は、一般車両9920Bの運転者に、当該車両を停車すべきことを提示する。上述したように第1提示装置230は、路面描画装置、HUD、音声再生装置のいずれか、あるいはそれらの組み合わせを含む。これにより運転者は、一般車両9920Bを適切に停車させることができる。
【0084】
運転支援装置200Bの第2提示装置240は、運転支援装置200Aの第2提示装置240と同様である。
【0085】
以上が交通システム902の構成である。続いて交通システム902における走行シーンを説明する。
【0086】
図7(a)~(c)は、図6の交通システム902の運用を説明する図である。ここでは左側走行の国や地域を仮定する。図7(a)に示すように、左側の走行車線40には、緊急車両910が紙面上に向かって走行しており、その前方には、複数の一般車両920_1~920_3が紙面上に向かって走行している。また対向車線42には、複数の一般車両920_3,920_4が紙面下に向かって走行している。緊急車両910は、前方の一般車両920_1~920_5に対して、第1情報S1を送信する。
【0087】
図7(b)に示すように、第1情報S1を受信した一般車両920_1~920_5のうち、自動運転車両は自動で、路肩に停車する。手動運転車両の運転者は第1情報S1にもとづく報知を確認すると、車両を路肩に停車する。この際、各車両に搭載される運転支援装置は、自動運転車両、手動運転車両をとわず、すべての一般車両が、同じ側の路肩(この例では左側の路肩)に停車するように、各車両を誘導してもよい。一般車両が、右側の路肩、左側の路肩に自由に停止すると、緊急車両がジグザグ走行を強いられるところ、すべての一般車両が同じ側の路肩に停車することで、緊急車両の円滑な走行が担保される。
【0088】
その結果、緊急車両910の前方に、緊急車両910が通過できるスペースが生ずる。緊急車両910は、図7(c)に示すように、スペースを走行する。このように第1情報S1にもとづく回避行動により、緊急車両910の円滑な走行が確保される。
【0089】
続いて、停止した一般車両920が、元の走行状態に復帰する様子を説明する。図8(a)~(c)は、図6の交通システム902の運用を説明する図である。
【0090】
図8(a)~(c)は、図7(a)~(c)の続きである。図8(a)~(c)では、緊急車両910は、通過済みであり、図示されていない。図示されない緊急車両910は、走行車線40に存在する複数の一般車両920_1~920_3に対して、先頭の車両から順に、第2情報S2を与える。同様に緊急車両910は、対向車線42に存在する複数の一般車両920_94~920_5に対して、先頭の車両から順に、第2情報S2を与える。
【0091】
図8(a)は、走行車線40の先頭の一般車両920_3と、対向車線42の先頭の一般車両920_5が、第2情報S2を受信し、先行して発車する様子を示す。
【0092】
図8(b)では、走行車線40の二番目の一般車両920_2と、対向車線42の二番目の一般車両920_4が、第2情報S2を受信し、発車する様子を示す。
【0093】
図8(c)では、走行車線40の三番目の一般車両920_1が第2情報S2を受信し、発車する様子を示す。
【0094】
緊急車両910の通過によって停車した一般車両920に対して、適切なタイミングで第2情報S2を順に与えることにより、緊急車両910の通過前の元の走行順序、すなわち秩序を維持することができ、円滑な交通が実現できる。
【0095】
図9は、図6の交通システム902のさらに別の特徴を説明する図である。緊急車両910は、自車の前方に交差点44が存在するとき、交差点44に付随する交通インフラ930(たとえば信号機)に対して、緊急車両910が交差点44を通過すること、さらには、どの方向に進むか(直進、右折、左折)などの情報を含む第3情報S3を、交通インフラ930に対して送信する。
【0096】
第3情報S3を受信した交通インフラ930は、第3情報S3にもとづくアクションを発生する。たとえば、交通インフラ930が信号機を含む場合、緊急車両910の通行が優先されるように、信号の状態を切り替える。
【0097】
また、交通インフラ930が路面描画装置を備える場合、第3情報S3にもとづいて、緊急車両910が走行するであろう進路や、緊急車両910の通過を予告する図形46やパターンを描画してもよい。
【0098】
交通インフラ930に対する第3情報S3は、そのほか、以下のように利用することができる。
【0099】
図10は、交通インフラ930のアクションの別の例を説明する図である。交通インフラ930は、道路に沿って配置されている。交通インフラ930_1は、路面描画装置を備えており、第3情報S3を受信すると、緊急車両910の後方に、一般車両920の進入禁止あるいは接近禁止を示すパターン48を描画する。このパターン48は、緊急車両910に追従するように描画される。路肩に停車中の一般車両920は、パターン48が通過したことを確認すると、元のレーンに復帰することができる。交通インフラ930_1は、緊急車両910に追従して飛行するドローンであってもよい。
【0100】
緊急車両910が送信する第3情報S3は、緊急車両910の目的地に関する情報を含むことができる。目的地の近傍の交通インフラ930_2は、緊急車両910が停車する位置を示すパターン50を描画する。これにより緊急車両910が目的地に到着したときに、円滑な活動が可能となる。交通インフラ930_2は、緊急車両910に先行して飛行するドローンであってもよい。
【0101】
緊急車両910が警察車両であり、特定の一般車両を追跡している場合には、交通インフラ930の描画機能によって、被追跡車両をマーキングしてもよい。
【0102】
3. 実施形態3
3.1 実施形態3の課題
図11(a)、(b)は、ある走行シーンを説明する図である。本明細書では、右側走行の国や地域に準拠して説明する。走行車線500は2車線501,502を含む。この走行車線500の前方には交差点510が存在する。交差点510の直前において、右側車線502は、右折レーン503に分岐する。
【0103】
図11(b)に示すように、右折車が多い場合、右折レーン503に右折待ちの車列520が発生する。このようなシーンにおいて、直進したい車両522が右側の走行レーン502を走行していると、右折待ちの車列520によって円滑な通行が妨げられる。
【0104】
本開示の一実施形態はこうした状況においてなされたものである。以下では、円滑な交通に寄与する運転支援装置、自動車について説明する。
【0105】
3.2 実施形態3の概要
本明細書に開示される一実施形態は、運転支援装置に関する。運転支援装置は、現在走行中の車線に待機列ができており、待機列が自車と無関係なものである所定状況を検出する制御部と、制御部により所定状況が検出されると、運転者に当該待機列の回避を促す提示部と、を備える。
【0106】
この構成によると、運転支援装置を搭載する車両が、進行方向と関係ない待機列に巻き込まれるのを防止でき、交通を円滑化できる。
【0107】
所定状況は、右折レーンまたは左折レーンと、複数の直進レーンが存在する交差点において、右折車または左折車の待機列が、複数の直進レーンのうち、右折レーンまたは左折レーンと隣接する車線まで延びており、かつ自車が隣接する車線を走行している状況であってもよい。
【0108】
提示部は、所定状況に応じた図形を路面に描画する路面描画装置を含んでもよい。
【0109】
路面描画装置は、待機列の回避を促す第1図形を自車前方の路面に描画してもよい。提示部は、路面描画装置に代えて、あるいはそれに加えて、音声再生装置やHUD(Head-Up Display)などによって、運転者に、待機列の回避を促してもよい。
【0110】
第1図形は、他の車線の方向に伸び、元の車線に戻るカーブまたは折れ線を含んでもよい。これにより、運転車に、待機列の追い越しのための一時的な車線変更であることを明確に示すことができる。
【0111】
第1図形は、他の車線の後続車の有無に応じて変化してもよい。他の車線に後続車が存在しない場合は、隣の車両を利用して待機列を回避可能であることを想起させる態様とし、他の車線に後続車が存在する場合は、隣の車線に侵入すべきでないことを想起させる態様としてもよい。この際、第1図形の形状、大きさ、色、パターンの少なくともひとつを変更してもよい。
【0112】
路面描画装置は、自車が他の車線へ侵入することを主張する第2図形を、自車側方または自車後方に描画してもよい。これにより、後続車に注意喚起することができ、後続車の自車への追突を防止できる。
【0113】
第2図形は、自車が走行しうる領域をカバーしてもよい。後続車は、この領域を避けて走行することができる。
【0114】
第2図形は、自車に搭載される路面描画装置に加えて、またはそれに代えて、他の車線の後続車に搭載される路面描画装置により描画されてもよい。警告されるべき後続車の路面描画装置を利用することで、より後続車に見やすい図形を描画できる。
【0115】
3.3 実施形態3の詳細な説明
【0116】
図12は、実施形態3に係る運転支援装置300のブロック図である。運転支援装置300は自動車、特に手動運転車両に搭載され、運転者を支援する。運転支援装置300は、制御部310および提示部320を備える。
【0117】
制御部310は、現在走行中の車線に待機列ができており、待機列が自車と無関係なものである所定状況を検出する。所定状況は、たとえば図11(b)に示すような状況が例示される。具体的には、右折レーン503と、複数の直進レーン501,502が存在する交差点510において、右折車の待機列520が、複数の直進レーン501,502のうち、右折レーン503と隣接する車線502まで延びており、かつ自車522が右折レーン503と隣接する車線502を走行している状況である。右折待ちの待機列は、直進する自車とは無関係であるといえる。
【0118】
制御部310が、所定状況を検出する手法は特に限定されない。たとえば、自車の前方を監視するカメラの出力にもとづいて、画像認識によって所定状況を検出してもよい。あるいは、交差点に存在する交通インフラが撮影した画像を、路車間通信によって受信し、受信した画像にもとづいて、画像認識によって所定状況を検出してもよい。所定状況の検出には、カーナビ情報やGPS情報を利用してもよい。
【0119】
あるいは、制御部310は、交通インフラから、待機列に関する情報を受け、自車との関係の有無を判定してもよい。
【0120】
図12に戻る。提示部320は、運転者に情報を提示するユーザインタフェースである。提示部320は、制御部310により所定状況が検出されると、待機列を回避するように運転者に促す。たとえば提示部320は、路面描画装置322を備え、路面に描画する図形(パターンや文字、記号を含む)によって、運転者にさまざまな情報を提示する。
【0121】
以上が運転支援装置300の構成である。続いてその動作を説明する。図13(a)~(c)は、運転支援装置300の動作を説明する図である。実施形態3に係る運転支援装置300は、車両(注目車両という)522に搭載されており、注目車両522の前方には、上述の所定状況530が発生している。
【0122】
注目車両522の運転支援装置300の制御部310は、所定状況530を検出すると、運転者に、待機列520を回避するように促す。その結果、注目車両522は、図13(b)に示すように、左車線501に移動する。そして、右折の待機列520を通り過ぎると、図13(c)に示すように、注目車両522は元の車線502に戻ることができる。なお注目車両522は、左側の走行車線501をそのまま走り続けてもよい。
【0123】
なお車線502が十分に広い場合には、左車線501にはみ出さずに、待機列520を回避してもよい。
【0124】
以上が運転支援装置300の動作である。この運転支援装置300によれば、所定状況530に遭遇した注目車両522が、無用な待機列に巻き込まれるのを防止でき、交通を円滑化できる。
【0125】
続いて提示部320による、運転者への情報の提示の具体例を説明する。
【0126】
上述のように提示部320は、路面描画装置322を含む。路面描画装置322は、光源と、DMD(Digital Micromirror Device)や液晶デバイスなどの、光源のビームをパターニングする空間光変調器と、を含んでもよい。あるいは路面描画装置322は、μLEDアレイを含んでもよい。
【0127】
路面描画装置322は、さまざまな図形を描画可能であるが、そのうちのひとつは、所定状況に応じた第1図形である。図14(a)~(c)は、路面描画装置322が描画する第1図形F1の例を示す図である。図14(a)に示すように、路面描画装置120は、待機列の回避を促す第1図形F1を自車前方の路面に描画する。
【0128】
図14(b)に示すように、第1図形F1は、他の車線501の方向に伸び、元の車線502に戻る折れ線を含んでもよい。あるいは図14(c)に示すように、第1図形F1は、他の車線501の方向に伸び、元の車線502に戻るカーブを含んでもよい。これにより、運転車に、待機列520の追い越しのための一時的な車線変更であることを明確に示すことができる。
【0129】
図15(a)、(b)は、路面描画装置322が描画する第1図形F1の変化を示す図である。第1図形F1は、変更先の他の車線501の後続車の有無に応じて変化してもよい。すなわち、図15(a)に示すように、変更先の他の車線501に後続車が存在しない場合は、隣の車線を利用して待機列を回避可能であることを想起させる態様の第1図形F1xを描画するとよい。この例では、2つの車線501,502に跨がる第1図形F1xが示される。
【0130】
反対に、図15(b)に示すように、変更先の他の車線501に後続車524が存在する場合は、隣の車線に侵入すべきでないことを想起させる態様の第1図形F1yを描画するとよい。この例では、第1図形F1yは、現在の車線502の範囲のみに描画されており、運転者に、車線501に進入すべきでないことを伝えることができる。第1図形F1xとF1yは、形状や大きさ、色、パターンの少なくともひとつが異なっていてもよい。
【0131】
なお、第1図形F1yが描画されている場合であっても、車線502の車幅が十分に広く、車線502の範囲内で待機列を回避可能な場合は、回避することができる。
【0132】
第1図形F1は、運転支援装置300を搭載する車両の運転者に提示されるものである。路面描画装置322は、第1図形F1に加えて、あるいはそれに代えて、他の車両の運転者に向けた第2図形F2を描画してもよい。
【0133】
図16は、第2図形F2を説明する図である。第2図形F2は、自車が他の車線へ侵入することを主張する図形であり、自車側方または自車後方に描画される。これにより、後続車524に注意喚起することができ、後続車524の自車522への追突を防止できる。
【0134】
たとえば第2図形F2は、自車が走行しうる領域をカバーしてもよい。後続車524は、この領域を避けて走行することができる。第2図形F2は矩形であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0135】
第2図形F2は、注目車両522に搭載される路面描画装置に加えて、またはそれに代えて、変更後の他の車線501の後続車524に搭載される路面描画装置により描画されてもよい。警告されるべき後続車524の路面描画装置を利用することで、より後続車524に見やすい図形を描画できる。後続車524による描画のトリガーは、注目車両522から後続車両522に対して車車間通信によって与えてもよい。
【0136】
3.4 実施形態3の変形例
実施形態3に関連する変形例を説明する。
【0137】
(変形例3.1)
図17(a)、(b)は、所定状況の別の例を示す図である。図17(a)の走行車線600は2車線601,602を含む。この走行車線600の前方には、駐車場610aが面しており、左側車線601から左折によって駐車場610aに入場可能となっている。
【0138】
このようなシーンにおいて、駐車場610aに入場する車両が多い場合、左側車線601に、待機列620aが発生する。駐車場610aに入場する予定がない注目車両522にとってこの待機列620aは無関係であるが、注目車両522がそのまま走行すると、左折待ちの待機列620aに巻き込まれ、円滑な交通が妨げられる。
【0139】
図17(a)の走行シーンを所定状況630aとして定めておき、制御部310の検出対象としてもよい。その場合、注目車両522において、制御部310が所定状況630aを検出すると、提示部320は運転者に、待機列620aの回避を促す。
【0140】
図17(b)では、駐車場610bが、対向車線640に面しており、走行車線600の右側車線602から駐車場610bに右折入庫可能となっている。このようなシーンにおいて、駐車場610bに入場する車両が多い場合、右車線602に待機列620bが発生する。駐車場610bに入場する予定がない注目車両522にとってこの待機列620bは無関係であるが、そのまま走行すると、右折待ちの待機列620bに巻き込まれ、円滑な交通が妨げられる。
【0141】
図17(b)の走行シーンを所定状況630bとして定めておき、制御部310の検出対象としてもよい。その場合、注目車両522において、制御部310が所定状況630bを検出すると、提示部320は運転者に、左側車線601への待機列620bの回避を促す。
【0142】
(変形例3.2)
本明細書では、右側通行の国や地域を例としたが、左側通行の国や地域にも本発明は適用可能である。その場合、図面の左右を反転し、左右を読み替えればよい。
【0143】
(変形例3.3)
提示部320は、運転者の視覚に訴える視覚的手段、聴覚に訴える聴覚的手段、触覚に訴える触覚的手段のいずれか、あるいはそれらの複数を含みうる。視覚的手段としては、路面描画装置、HUD、あるいは通常のディスプレイ装置などを含みうる。聴覚的手段は、スピーカやヘッドホンなどを備える音声再生手段を含む。聴覚的手段は、振動発生器などを含みうる。
【0144】
実施形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本開示は、自動車、車両用灯具、運転支援システムに関する。
【符号の説明】
【0146】
100 灯具システム
110 第1ランプ
120 第2ランプ
130 コントローラ
800 車両
802 ドアミラー
810 後続車両
1 歩行者
2 路肩
4 車道
6 歩道
8 領域
10 パターン
902 交通システム
910 緊急車両
912 通信装置
920 一般車両
930 交通インフラ
200 運転支援装置
210 通信装置
220 自動運転システム
230 第1提示装置
240 第2提示装置
300 運転支援装置
310 制御部
320 提示部
322 路面描画装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17