(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】基板及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
G01R 31/54 20200101AFI20241105BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20241105BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20241105BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
G01R31/54
G01R31/28 U
H01L23/12 F
H05K3/34 512A
(21)【出願番号】P 2021574502
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2020045920
(87)【国際公開番号】W WO2021153023
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2020015675
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020146222
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 廣仁
(72)【発明者】
【氏名】西田 裕史
(72)【発明者】
【氏名】ライト クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】エリオット-バウマン ベルナデッテ
(72)【発明者】
【氏名】ベアード ティモシー
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-180437(JP,A)
【文献】特開2020-016624(JP,A)
【文献】特開2016-215517(JP,A)
【文献】特開2001-291738(JP,A)
【文献】特開平01-207671(JP,A)
【文献】特開2004-354520(JP,A)
【文献】特開2012-057119(JP,A)
【文献】国際公開第2007/015532(WO,A1)
【文献】特開2006-337385(JP,A)
【文献】特開平10-224021(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0169453(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/54
H05K 3/34
G01R 31/28
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材部と、
応力に応じて発光する応力発光体が配置されるとともに透明な部材により構成されて前記基材部に配置され、素子の端子が接合されるランドと、
前記基材部および前記ランドの間に配置されて前記応力発光体からの光を検出する光検出部と
を具備する基板。
【請求項2】
前記応力発光体は、前記素子が有する複数の端子が接合される複数のランドのうち
、角隅のランドにのみ配置される請求項1に記載の基板。
【請求項3】
前記角隅のランドに接合される角隅の端子は、前記素子の内外間での電気信号が通過する信号線としての機能を有しない配線構造とする請求項
2に記載の基板。
【請求項4】
前記光検出部は、前記応力発光体からの光に応じた電気信号を前記検出の結果として出力する請求項1
~3のいずれか1項に記載の基板。
【請求項5】
前記光検出部における検出結果に基づいて前記ランドの応力を検出する応力検出部をさらに具備する請求項1
~4のいずれか1項に記載の基板。
【請求項6】
前記応力検出部は、前記光検出部における検出結果と所定の閾値とを比較することにより前記応力を検出する請求項5記載の基板。
【請求項7】
前記応力検出部は、前記光検出部の検出結果が変化した際に前記応力を検出する請求項5記載の基板。
【請求項8】
前記光検出部の検出結果を保持する保持部をさらに具備し、
前記応力検出部は、前記光検出部の検出結果と前記保持部に保持された検出結果とを比較することにより前記光検出部の検出結果の変化を検出する
請求項7記載の基板。
【請求項9】
複数の前記光検出部が前記基材部および前記ランドの間に配置され、
前記応力検出部は、前記複数の光検出部の検出結果に基づいて前記応力を検出する
請求項5記載の基板。
【請求項10】
前記検出した応力に基づいて前記端子および前記ランドの接合部の損傷を検出する損傷検出部をさらに具備する請求項5記載の基板。
【請求項11】
前記ランドは、前記素子の端子を接着することにより前記端子を接合する請求項1記載の基板。
【請求項12】
前記ランドは、前記基材部に形成された凹部に配置される請求項1記載の基板。
【請求項13】
多数の端子を設けた半導体を搭載する基板と、
前記半導体の端子
側及び/又は半導体のパッケージ
側に
設けられ、加えられた応力に応じて発光す
る応力発光体と、
を具備し、
前記応力発光体の発光を外部から検出する
ものであり、
前記応力発光体は、前記パッケージの外部構造となる樹脂体及び/又はガラス体と基板側との間を接着する接着剤に設けた、
半導体パッケージ。
【請求項14】
多数の端子を設けた半導体を搭載する基板と、
前記半導体の端子
側及び/又は半導体のパッケージ
側に
設けられ、加えられた応力に応じて発光す
る応力発光体と、
を具備し、
前記応力発光体の発光を外部から検出する
ものであり、
前記応力発光体は、半導体の端子のうちコーナー部分の端子に設ける、
半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板及び半導体パッケージに関する。詳しくは、電子部品などの素子が実装される基板及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品が実装される基板の損傷を検出する装置が提案されている。例えば、有機発光素子を使用して基板に配置された配線の断線を検出する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この有機発光素子は、発光層が陽極および陰極により挟持され、陽極および陰極を介して発光層に電圧を印加して発光させる素子である。また、この有機発光素子には、共通の陽極と検査対象の複数の配線にそれぞれ対応する複数の陰極とが配置される。基板の配線の断線を検出する際には、検査対象となる配線の一端に陰極を接触させ、配線の他端と陽極との間に電圧を印加して、有機発光素子を発光させる。断線を生じた配線においては有機発光素子が非発光となるため、配線の断線を検出することができる。
【0004】
また、能動素子と回路パターンを接続する接合材の接合部での破断を検出し、能動素子の接合部を含む回路基板の故障を予兆することが可能なモジュールが提案されている(特許文献2参照)。このモジュールには、電流量が多く発熱量の大きい電子部品近傍に検出回路を、基板上に別に設けている。また、この検出回路には、異なる金属または異なる合金からなる第1導体およびこれと接合した第2導体検出器を備えている。なお、電子部品は複数の電極を有しており、この電極は金バンプを介して基板の回路パターンに接続されている。
【0005】
このようなモジュールにおいて、検出回路に備える検出器が電子部品の発熱により加熱されると、検出器を構成する第1導体と第2導体との接合部で破断が生じ、断線する。これにより、回路基板自体での故障に先立ち、導通が図れなくなることから、回路基板の故障を予兆可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平09-015288号公報
【文献】特開2011-209199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1に記載の従来技術では、電子部品が実装された基板の破損は検出できない、という問題がある。電子部品の実装は、例えば基板に配置されたランドに電子部品の端子が接合されることにより行われる。この接合は、例えば半田付けにより行われる。また、電子部品が実装された基板は、電子機器に搭載されて使用される。この電子機器を使用中に、電子部品の端子および基板のランドの接合部に損傷を生じる場合がある。例えば、使用時の温度の変化により、基板および電子部品は膨張および収縮を繰り返す。基板および電子部品の熱膨張係数が異なる場合、膨張および収縮の変位に差を生じて接合部分に応力が発生する。この応力が大きくなると接合部の破断等の損傷を生じる。上述の特許文献1に記載の従来技術では、このような電子部品の端子の接合部における損傷を検出できないという問題がある。
【0008】
一方、特許文献2に記載の従来技術では、電子部品の発熱などに伴い、電子部品と回路パターンとを接続する接合部などの故障が発生するのを、検出回路に備えた検出器で察知するものである。しかしながら、この破断察知のためには、態々、検出回路を基板上に別途設置する必要がある。
【0009】
本開示は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、基板上に検出回路を設置しなくても、実装された電子部品の端子との接合部の損傷や半導体パッケージの損傷を検出できることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、上述の問題点を解消するためになされたものであり、その第1の態様は、基材部と、応力に応じて発光する応力発光体が配置されるとともに透明な部材により構成されて上記基材部に配置され、素子の端子が接合されるランドと、上記基材部および上記ランドの間に配置されて上記応力発光体からの光を検出する光検出部とを具備する基板である。
【0011】
また、この第1の態様において、上記応力発光体は、上記素子が有する複数の端子が接合される複数のランドのうち、特に角隅のランドにのみ配置されてもよい。
【0012】
また、この第1の態様において、上記角隅のランドに接合される角隅の端子は、上記素子の内外間での電気信号が通過する信号線としての機能を有しない配線構造としてもよい。
【0013】
また、この第1の態様において、上記光検出部は、上記応力発光体からの光に応じた電気信号を上記検出の結果として出力してもよい。
【0014】
また、この第1の態様において、上記光検出部における検出結果に基づいて上記ランドの応力を検出する応力検出部をさらに具備してもよい。
【0015】
また、この第1の態様において、上記応力検出部は、上記光検出部における検出結果と所定の閾値とを比較することにより上記応力を検出してもよい。
【0016】
また、この第1の態様において、上記応力検出部は、上記光検出部の検出結果が変化した際に上記応力を検出してもよい。
【0017】
また、この第1の態様において、上記光検出部の検出結果を保持する保持部をさらに具備し、上記応力検出部は、上記光検出部の検出結果と上記保持部に保持された検出結果とを比較することにより上記光検出部の検出結果の変化を検出してもよい。
【0018】
また、この第1の態様において、複数の上記光検出部が上記基材部および上記ランドの間に配置され、上記応力検出部は、上記複数の光検出部の検出結果に基づいて上記応力を検出してもよい。
【0019】
また、この第1の態様において、上記検出した応力に基づいて上記端子および上記ランドの接合部の損傷を検出する損傷検出部をさらに具備してもよい。
【0020】
また、この第1の態様において、上記ランドは、上記素子の端子を接着することにより上記端子を接合してもよい。
【0021】
また、この第1の態様において、上記ランドは、上記基材部に形成された凹部に配置されてもよい。
【0022】
本開示の第1の態様により、ランドに配置した応力発光体の発光を検出するという作用をもたらす。端子およびランドの接合部の応力の検出が想定される。
【0023】
本開示の第2の態様は、多数の端子を設けた半導体を搭載する基板と、上記記半導体の端子及び/又は半導体のパッケージに損傷を生じると発光する、上記端子側及び/又はパッケージ側に設けた応力発光体と、を具備し、上記応力発光体の発光を外部から検出する半導体パッケージである。
【0024】
また、本開示の第2の態様において、前記応力発光体は、前記パッケージの外部構造となる樹脂体及び/又はガラス体と基板側との間を接着する接着剤に設けた、シート状の応力発光体であってもよい。
【0025】
また、本開示の第2の態様において、上記応力発光体の発光により出射する光線は、可視光線帯域の波長以外の、紫外線又は近赤外線などの波長も含んでもよい。
【0026】
また、本開示の第2の態様において、上記応力発光体は、半導体の端子のうちコーナー部分の端子にのみ設けるようにしてもよい。
【0027】
また、本開示の第2の態様において、上記パッケージの周囲に光検出器を設置していてもよい。
【0028】
また、本開示の第2の態様において、上記応力発光体は、ユウロピウムをドープし構造制御したアルミン酸ストロンチウム(SrAl2O4:Eu)、遷移金属や希土類をドープした硫化亜鉛(ZnS:Mn)やチタン酸バリウム・カルシウム((Ba,Ca)TiO3:Pr)、アルミン酸カルシウム・イットリウム(CaYAl3O7:Ce)のいずれかの材料が使用可能であってもよい。
【0029】
また、本開示の第2の態様により、応力体の発光を外部から直接目視することで、半導体の端子及び/又は半導体のパッケージの損傷を外部から直接確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本開示の第1の実施の形態に係る基板の構成例を示す模式図である。
【
図2】本開示の第1の実施の形態に係る基板の構成例を示す断面図である。
【
図3】本開示の第1の実施の形態に係る基板のランド部分の構成例を示す拡大断面図である。
【
図4】本開示の第1の実施の形態に係る光検出部の配置の一例を示す模式図である。
【
図5】本開示の第1の実施の形態に係る光検出部の構成例を示す模式図である。
【
図6】本開示の第1の実施の形態に係る応力発光体の発光の一例を示す模式図であり、Aは実装直後、Bは応力が加えられたときの発光の変化した一例を示すものである。
【
図7】本開示の第1の実施の形態に係る応力検出部の構成例を示す模式図である。
【
図8】本開示の第2の実施の形態に係る応力検出部(第1の実施の形態に係る応力検出部の変形例)の構成例を示す模式図である。
【
図9】Aは本開示の第3の実施の形態に係る半導体パッケージの構成例を示す模式図、BはAの平面的模式図である。
【
図10】本開示の第3の実施の形態に係る基板のランドのうちコーナー部分のランドなどの構成例を示す、拡大させた断面模式図である。
【
図11】本開示の第3の実施の形態以降の基本構成を得るのに用いた本開示の実験例に使用した、BGA構造の半導体の端子配置を示す説明図である。
【
図12】
図11に示す半導体の各端子において、本開示の実験例で実施した各端子に対する通電回数と各端子の故障率との関係を示すグラフ、及び多数配置の各端子の故障頻度を求める本開示の実験例から得られた実験データを示す説明図である。
【
図13】Aは本開示の第4の実施の形態に係る半導体パッケージの構成例を示す模式図、BはAのコーナー部分の拡大断面図である。
【
図14】Aは本開示の第4の実施の形態に係る半導体パッケージの第1の変形例を示す模式図、Bは本開示の第4の実施の形態に係る半導体パッケージの第2の変形例を示す模式図である。
【
図15】本開示の第5の実施の形態に係る光検出部の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、図面を参照して、本開示を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)を説明する。以下の図面において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。また、以下の順序で実施の形態の説明を行う。
1.第1の実施の形態
2.第2の実施の形態
3.第3の実施の形態(実験例を含む)
4.第4の実施の形態
5.第4の実施の形態の変形例
6.第5の実施の形態
【0032】
<1.第1の実施の形態>
[基板の構成]
図1は、本開示の実施の形態に係る半導体パッケージの基板10の構成例を示す図である。同図の基板10は、基材部200およびランド100を備える。
【0033】
基材部200は、基板10を構成する板状の基材である。この基材部200の表面にランド100が配置される。ランド100は、電子部品等の端子が接合される導電体である。同図のランド100は、矩形形状に構成されるランドの例を表したものである。ランド100は、実装する電子部品の端子に応じた配置に構成される。同図は、複数のランド100が矩形形状に配列される例を表したものである。なお、基板10には、複数の電子部品を実装することができる。ランド100同士の間は、不図示の配線により電気的に接続される。なお、基板10は、面実装の半導体部品およびチップ抵抗等が実装される回路基板や半導体チップがベアチップ実装される半導体パッケージの基板に該当する。
【0034】
[基板の構成]
図2は、本開示の実施の形態に係る半導体パッケージ1の基板10の構成例を示す断面図である。同図は、基板10に電子部品20Aが実装された状態を表す図である。電子部品20Aは、端子21を備える。同図の端子21は、半田ボール等の球状の金属により構成される例を表したものである。この端子21が基板10のランド100に接合されることにより、電子部品20Aが基板10に実装される。同図の基板10は、基材部200にランド100が埋め込まれた形状に構成される例を表したものである。
【0035】
なお、電子部品20Aの端子21には、銅(Cu)等により構成された面実装用のリード端子を適用することもできる。また、チップ抵抗の電極を端子21に適用することもできる。なお、電子部品20Aは、請求の範囲に記載の素子の一例である。
【0036】
電子部品20Aには、半導体素子が該当する。この半導体素子は、半導体チップ等の比較的熱膨張係数が小さい部材により構成される。一方、基材部200は、樹脂等の比較的熱膨張係数が大きい部材により構成される。このため、温度が変化した場合にそれぞれ異なる歪みを生じる。例えば、基板10および電子部品20Aの温度が上昇した場合には、電子部品20Aより基板10の方が大きく膨張する。このため、基板10および電子部品20Aの接続部分に応力を生じる。具体的には、端子21およびランド100の接合部に応力が掛かることとなる。この応力が過大な場合には、接合部に損傷を生じる。また、このような歪みを生じる温度の変化が繰り返されると、接合部の損傷が進展して接合部の破断に至る場合がある。電子部品20Aが実装された基板10の信頼性を向上させるためには、このような接合部の損傷を早期に検出する必要がある。
【0037】
[ランド部分の構成]
図3は、本開示の実施の形態に係る半導体パッケージ1の基板10のランド100の部分の構成例を示す断面図である。同図は、
図2におけるランド100が配置される領域を拡大して表した図である。基板10は、基材部200と、ランド100と、光検出部130と、応力検出部300とを備える。
【0038】
基材部200は、前述のように、基板10を構成する板状の基材である。この基材部200は、絶縁体により構成され、ランド100や配線が配置される。この基材部200は、例えば、樹脂やセラミックにより構成することができる。また、複合材料により基材部200を構成することもできる。具体的には、ガラス布にエポキシ樹脂を含浸させて構成された基材部200を使用することもできる。
【0039】
ランド100は、前述のように、電子部品等の端子が接合される導電体である。同図のランド100は、導電性の樹脂により構成することができる。この場合、ランド100およびこの端子21との接合は、ランド100を構成する樹脂が端子21を接着することにより行うことができる。後述するように、ランド100は光を透過する必要があり、ランド100を構成する樹脂には透明な樹脂を使用する。また、同図のランド100は、基材部200に形成された凹部110に配置される例を表したものである。ランド100は、例えば、幅1mmの矩形形状に構成することができる。
【0040】
ランド100には、応力発光体120が配置される。この応力発光体120は、自身に加えられた応力に応じて発光するものである。この応力発光体には、例えば、マンガン(Mn)をドープした硫化亜鉛(ZnS)を使用することができる。また、ユーロピウム(Eu)をドープしたアルミン酸ストロンチウム(SrAl2O4)を使用することもできる。また、プラセオジム(Pr)をドープしたチタン酸バリウム・カルシウム((Ba,Ca)TiO3)を使用することもできる。また、セリウム(Ce)をドープしたアルミン酸カルシウム・イットリウム(CaYAl3O7)を使用することもできる。応力発光体120には、このような応力発光体が粒子状に凝集されたものを使用することができる。応力発光体120は、例えば、200nmの径の粒子に構成することができる。同図のランド100は、ランド100を構成する樹脂に複数の応力発光体120が分散されて構成される例を表したものである。
【0041】
周囲の温度変化等により、端子21およびランド100の接合部に応力が発生した場合、応力発光体120が発光する。この発光を検出することにより、接合部の応力を検出することができる。
【0042】
光検出部130は、応力発光体120からの光を検出するものである。この光検出部130には、光センサを使用することができる。同図の光検出部130は、凹部110の底部に配置される。また、同図は、複数の光検出部130が配置される例を表したものである。このように、光検出部130は、基材部200およびランド100の間に配置することができる。光検出部130は、光を検出して検出結果を出力する。具体的には、光検出部130は、照射された光に応じた電気信号を生成して出力する。以下、この信号を光検出信号と称する。同図の光検出部130は、信号線301を介して光検出信号を出力する。
【0043】
応力検出部300は、光検出部130の検出結果に基づいて応力を検出するものである。同図の応力検出部300は、複数の光検出部130から出力される光検出信号に基づいて応力の検出を行う。応力検出部300は、マイコン等の半導体素子により構成することができ、基材部200に内蔵することができる。応力検出部300の構成の詳細については後述する。
【0044】
[光検出部の配置]
図4は、本開示の実施の形態に係る光検出部の配置の一例を示す図である。同図は、複数の光検出部130が基材部200の凹部110に配置される例を表した図である。同図に表したように、複数の光検出部130を2次元格子状に配列することができる。なお、同図には10行10列の光検出部130が配置されているが、光検出部130の個数を限定するものではない。
【0045】
[光検出部の構成]
図5は、本開示の実施の形態に係る光検出部の構成例を示す図である。同図は、光検出部130の構成例を表す図である。同図の光検出部130は、光導電体131と、電極132および133と、を備える。
【0046】
光導電体131は、照射された光に応じて電気伝導度が変化するものである。この光導電体131は、例えば、グラフェンにより構成された光導電体を使用することができる。同図の光導電体131は、グラフェンの薄膜により構成される。
【0047】
電極132および133は、光導電体131に接続される電極である。この電極132および133は、光導電体131の表面に配置されるとともに互いに対向する位置に離隔して配置される。電極132および133は、例えば、金(Au)により構成することができる。また、電極132および133は、それぞれ複数配置され、配線134および135にそれぞれ接続される。配線134および135は、それぞれ信号線301に接続される。
【0048】
同図の光検出部130に光が照射されると、電極132および133の間の光導電体131の電気伝導度が変化する。この際、信号線301を介して電極132および133の間に電圧を印加することにより、電気伝導度の変化に応じた電流を検出することができる。具体的には、同図の光検出部130に光が照射されると、光導電体131の電気伝導度が増加し、電極132および133の間を流れる電流が増加する。この電流の増加を検出することにより、照射された光を検出することができる。この電流が前述の光検出信号に該当する。
【0049】
[応力発光体の発光]
図6は、本開示の実施の形態に係る応力発光体の発光の一例を示す図である。同図は、端子21およびランド100の接続部に応力が加えられた際の応力発光体120の発光の様子を表す図である。同図において、実線の矩形は、ランド100を表す。実線の円は応力発光体120を表し、円の内部のハッチングは応力発光体120の発光の強度を表す。ハッチングの密度が高い程、強い発光を表す。また、1点鎖線の円は、ランド100に接合された端子21を表す。
【0050】
同図におけるAは、電子部品20Aの実装直後のランド100の様子を表した図である。端子21は球状であるため、端子21が接合される領域の中央部に応力が強く掛かかる。このため、端子21が接合される領域の中央部に配置される応力発光体120が強く発光する。
【0051】
同図におけるBは、基板10および電子部品20Aに歪みを生じ、端子21およびランド100の接合部に応力が加えられた場合の例を表した図である。同図におけるBの白抜きの矢印は、応力の方向を表す。同図におけるBに表したように、紙面の右方向に応力が加えられることにより、強く発光する応力発光体120が増加する。また、発光する応力発光体120の位置が右方向に遷移する。このような応力発光体120の発光の変化を捉えることにより、端子21およびランド100の接合部の応力の変化を検出することができる。
【0052】
[応力検出部の構成]
図7は、本開示の第1の実施の形態に係る応力検出部の構成例を示す図である。同図の応力検出部300は、電源部310と、比較部320と、損傷検出部330とを備える。
【0053】
電源部310は、光検出部130に電源を供給するものである。この電源部310は、定電圧電源により構成することができる。電源部310は、2本の信号線301のうちの1本を介して
図5において説明した配線134および135の何れか一方、例えば、配線135に電源電圧を印加する。この場合、配線134は、信号線301の他の1本を介して後述する比較部320に接続される。
図3において説明したように、複数の光検出部130が配置される場合には、電源部310はそれぞれの光検出部130に接続される信号線301に共通に接続される。
【0054】
比較部320は、光検出部130からの光検出信号を所定の閾値と比較することにより、応力を検出するものである。この比較部320は、光検出信号が所定の閾値より大きい場合に応力を検出することができる。なお、複数の光検出部130が配置される場合には、比較部320は、複数の光検出部130からの光検出信号のそれぞれに対して個別に閾値との比較を行う。
【0055】
損傷検出部330は、比較部320により検出された応力に基づいて端子21およびランド100の接合部の損傷を検出するものである。損傷検出部330は、比較部320が応力を検出した際に損傷を検出することができる。また、複数の光検出部130が配置される際には、損傷検出部330は、検出した応力に対応する光検出部130の個数に基づいて損傷を検出することもできる。また、損傷検出部330は、検出した応力に対応する光検出部130が占める面積に基づいて損傷を検出することもできる。
【0056】
損傷検出部330は、損傷を検出した際に検出信号を外部に対して出力する。また、損傷検出部330は、比較部340(
図8)により検出された応力を直接出力することもできる。この場合には、ランド100における応力の分布を画像として表示させることができる。応力検出部300を配置することにより、電子機器や半導体パッケージに内蔵された基板10の損傷を外部から確認することができる。また、電子機器等の動作中であっても基板10の損傷の検出を行うことができる。
【0057】
[作用・効果]
以上説明したように、本開示の実施の形態の基板10は、ランド100に配置した応力発光体120からの発光をランド100の底部に配置した光検出部130を使用して検出することにより、端子21およびランド100の接合部の応力を検出することができる。これにより、端子21およびランド100の接合部の損傷を検出することができる。
【0058】
<2.第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態の基板10は、応力検出部300において、光検出信号と所定の閾値と比較することにより、応力を検出していた。これに対し、本開示の第2の実施の形態の基板10は、光検出信号の変化を検出することにより応力の検出を行う点で、上述の第1の実施の形態と異なる。
【0059】
[応力検出部の他の構成]
図8は、本開示の第2の実施の形態に係る応力検出部の構成例を示す図である。同図は、
図7と同様に、応力検出部300の構成例を表す図である。比較部320の代わりに比較部340が配置され、保持部350をさらに備える点で、
図7の応力検出部300と異なる。
【0060】
比較部340は、光検出信号が変化した際の応力の変化を検出する。この比較部340は、初期状態において、光検出部130からの光検出信号を初期値として保持部350に保持させる。その後、比較部340は、光検出部130により出力された光検出信号と保持部350に保持された光検出信号とに基づいて応力の変化を検出することができる。具体的には、光検出部130により出力された光検出信号と保持部350に保持された光検出信号との差分を検出することにより新たな応力の発生を検出することができる。この新たに検出された応力については、所定の閾値との比較を行うことができる。
【0061】
また、比較部340は、光検出部130により出力された光検出信号と保持部350に保持された光検出信号との比較を行い、光検出部130により出力された光検出信号が減少した場合に応力の変化(低下)を検出することもできる。端子21およびランド100の接合部の損傷が進んで端子21がランド100から離脱した場合やランド100の表面が剥離した場合には、当該領域の応力が略0に低下する。光検出部130により出力された光検出信号の減少を検出することにより、このような端子21のランド100からの離脱等の損傷を検出することができる。この損傷の検出は、損傷検出部330により行うことができる。
【0062】
保持部350は、光検出部130毎の光検出信号を保持するものである。この保持部350は、メモリ等により構成され、比較部340の制御に基づいて光検出信号の保持および保持した光検出信号の比較部340への出力を行う。
【0063】
保持部350を備えて、光検出信号の変化を検出することにより、端子21およびランド100の接合部の損傷の進展を検出することが可能となる。
【0064】
これ以外の基板10の構成は本開示の第1の実施の形態において説明した基板10の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
[作用・効果]
以上説明したように、本開示の第2の実施の形態の基板10は、保持部350に保持された光検出信号と新たに検出された光検出信号とを比較することにより、応力の変化を検出することができる。これにより、端子21およびランド100の接合部の損傷の進展を検出することができる。
【0066】
<3.第3の実施の形態>
次に、本開示の第3の実施の形態の半導体パッケージ2について、
図9および
図10を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施の形態において、第1及び第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
【0067】
図9には、本実施の形態の半導体パッケージ2を示す。本実施の形態の半導体パッケージ2に設けた電子部品20Bでは、BGA(Ball Grid Allay)タイプのパッケージ構造を用いており、多数の端子21で基板10側のランド100と接続されている。なお、電子部品20Bは、請求の範囲に記載の素子の一例である。
【0068】
基板10には、本実施の形態でも、複数の電子部品を実装することができる。なお、基板10は、面実装の半導体部品およびチップ抵抗等が実装される回路基板や、半導体チップがベアチップ実装される半導体パッケージの基板であってもよい。詳細は後述するが、角隅、例えば四隅部分のランド100(以下、「コーナーランド100C」と称する。)を除く他のランド100同士の間は、不図示の配線により互いに電気的に接続される。
【0069】
本実施の形態の半導体パッケージ2では、後述の実験例から得られた知見に基づき、第1の実施の形態とは異なり、基板10に多数格子状に設けてあるランド100のうち四隅部分のコーナーランド100Cにのみ応力発光体150を設けている。端子21にクラックなどの損傷を発生するような場合には、最初にコーナーランド100Cと接続された端子21(以下、「コーナー端子21C」とよぶ)にクラックなどを発生しやすいことが判明しているからである。また、四隅のコーナーランド100Cの内部には光検出部160も設置している。
【0070】
[端子の構成]
本実施の形態の多数の端子21のうち特にコーナー端子21Cは、電子部品20B側及び基板10側との間を接続させるのではなく、第1の実施形態のものと同様の構成を有する定電圧電源を電源部310に単純に電気的に通電させるだけの機能としている。従って、このコーナー端子21Cは、半導体パッケージ2を設けた電子機器の使用に伴う電源のON/OFFに同期して通電を繰り返すものである。換言すれば、このコーナー端子21Cは、コーナー端子21C以外の端子21の破損を予見するためのものである。つまり、電子部品20Bや基板10側との間のデータをやり取りさせる信号線の一部としては機能させていない。このため、コーナー端子21Cは、電子部品20Bの内部では電極400Cにのみ接続されており、電子部品20Bの内部の他の電極400を含む他の機能部とは配線接続されていない。
【0071】
[ランドの構成]
本実施の形態のランド100についても、図
9A及び
図9Bに示すように、第1の実施の形態と同様、基材部200の上面に格子状に複数個所の凹部110を設け、これらの凹部110にランド100,100Cが設置されている。このランド100,100Cは、実装する電子部品20Bの端子21,21Cに応じた配置に構成される。
【0072】
コーナーランド100Cは、コーナー端子21が接合される導電体であり、他のランド100と同様、凹部110に設置されている。コーナーランド100Cの具体的な構成としては、第1の実施の形態と同様の導電性の透明樹脂体を用い、応力発光体150を分散状態で混在させている。透明性の導電性樹脂で形成されたコーナーランド100Cでは、半田ボールなどの端子21Cを熱圧着させることでコーナー端子21Cとの間を電気的に接続できる。
【0073】
一方、コーナーランド100C以外のランド100については、特に導電性の透明樹脂で構成されていなくてもよい。他のランド100は、例えば金(Au)や銅(Cu)などの導電性の良好な金属で形成することができる。また、同じく半田ボールなどの端子21で、ランド100と電子部品20Bの電極などとの電気的に接続できる。
【0074】
[応力発光体の構成] 応力発光体150は、第1の実施形態でも同様だが、物体に力を加えたときなどにその力が光エネルギーに変わって発光するメカノルミネッセンス(Mechanoluminescence)粒子を用いることで、これによる発光現象が利用できる。本実施の形態の応力発光体150には、例えば薄肉状の透明な導電性樹脂体の中にメカノルミネッセンス粒子を混在させたシート状のもの(以下、「応力発光シート」とよぶ)が使用可能である。応力発光シートは、ある程度の厚さを有するバルク状のコーナーランド100Cの応力発光体150に比べ薄肉である分、応力がダイレクトに伝播し易い。また応力発光シートは、内部の発光光線が外界へ伝播するまでの光学距離も薄肉である分だけ短くてすみ、その分の減衰量も少ないので、強光度の発光が可能である。
【0075】
応力発光体150は、必ずしもコーナーランド100C内に設置していなくてもよい。例えば、コーナー端子21Cの上部側と電子部品20Bの電極400C側との間に設けてもよい。この場合、導電性の透明樹脂体に応力発光体を混在させた応力発光シートが使用可能である。
【0076】
[光検出部の構成]
光検出部160は、応力発光体150から出射する光を受光すると受光量や受光強度に応じて電気信号を出力する適宜の光電変換手段などで構成できる。即ち、この光検出部160は、第1の実施の形態も同様であるが、応力発光体150から出射する波長の光を受光すると、所定の起電流(光電流、または起電力)を発生する光センサ、例えばフォトダイオード(Photodiode)やフォトトランジスタ(Phototransistor)などが使用できる。本開示の光検出部は、応力発光体から出射する波長の光を検出可能なものであればよい。
【0077】
本実施の形態の光検出部160は、基板10である基材部200のコーナーランド100Cを設置する凹部110の底部に埋め込んである。この光検出部160は、
図5に示す第1の実施の形態の光検出部130と同様の構成のものが使用可能である。また、この光検出部160の出力信号処理のために、
図7又は
図8に示すような応力検出部300を接続している。
【0078】
なお、コーナーランド100C内の応力発光体150の発光現象を基板10外部から目で直接視認可能であれば、光検出部160は設置しなくてもよい。この場合には、コーナーランド100Cを光透過性の高い透明樹脂体で形成するだけでなく、基板10を構成する基材部200についても、光透過性の高い透明な材質を使用すると便宜である。このような構成にすれば、コーナーランド100C内での効力発光体150からの発光現象を、基材部200外部から一層確実に確認できる。
【0079】
[作用・効果]
通常、半導体パッケージ2を製造する際には、半田ボールなどの端子21とランド100との接続の際に、端子21に上下方向の圧着力が作用し、端子21の上下部などにストレスを受け易い。後述する実験例によれば、特に角隅の端子である半田ボールに応力が集中しやすいことが判明している。
そのため、本実施の形態の半導体パッケージ2でも、電子部品20Bへの多数回の通電により、他の端子21に先立ち、まず初めに、コーナー端子21Cが損傷を受けてクラックを生じる傾向が強い。損傷を受けたコーナー端子21Cに集中する応力は、コーナーランド100C内の応力発光体150へ伝播して発光現象を引き起こす。このようにして、コーナーランド100C内の応力発光体150が発光することで、この光を受光した光検出部160が光検出信号を出力する。第1の実施の形態と同様、光検出信号は、照射された光強度に応じた電気信号を生成して出力する。これにより、コーナー端子21Cが損傷したことを検出できる。
【0080】
例えば、光検出部160に
図7と同様の応力検出部300を接続した構成のものでは、第1の実施の形態と同じように、電子機器や半導体パッケージに内蔵された基板10の損傷を外部から確認できる。また、電子部品20B等の動作中であっても基板10の損傷の検出ができる。
一方、光検出部160に
図8と同様の応力検出部300を接続したものでは、第2の実施の形態と同じように、端子21およびランド100の接合部の損傷の進展を検出することができる。
【0081】
さらに、本実施の形態では、後述する実験例からの知得により、損傷を検知するための光検出部160をコーナーランド100Cにのみ設置させてある。従って、最小限の個数設置した応力発光体150および光検出部160だけで、端子21の損傷を検出可能であり、コストの削減が可能となる。
【0082】
しかも、コーナーランド100C内の応力発光体150の発光を基材部200の外部から視認可能な構成の場合には、光検出部を必要としない。このため、さらにコスト削減を図ることができる効果がある。特に、応力発光体150として応力発光シートを用いることによって強発光が実現可能であれば、外部からの目視での視認がより容易に、かつ、確実になるので、便宜である。
【0083】
さらに、本実施の形態では、コーナー端子21Cには、データをやり取りさせるための信号線としての機能を何ら有していない。換言すれば、他の電極400や電子部品20B内部の他とは配線接続されていない。従って、仮にコーナー端子21Cがクラックなどの破損を生じた後でも、電子部品20Bはそのまま使用し続けることが可能である。
【0084】
<実験例>
なお、本開示の発明者らは、前述した第3の実施の形態に係る構成の基礎となる実験(以下、これを「実験例」と称する。)を行ってみた。この実験例について、
図11及び
図12を参照しながら詳細に説明する。
【0085】
[実験構成]
図11は、第3の実施の形態に用いたものと同様のBGA構造の半導体パッケージ20に設けた半田ボールなどの端子21(以下、この実施例では半田ボール21と称する。)が、基板10上で格子状に多数配置されている状態を示す模式図である。本実験例では、電子部品20に電流を多数回通電及び遮断させたときに、各ランド(不図示)に配置・接続させた多数の半田ボール21の中で、特にどの半田ボール21にクラックを発生し易いかを調べたものである。この半田ボール21は、ランドとの接続の際に下方向への押圧力や圧着力が作用して上下部が押潰され易いことが予想される。その結果、上下押し潰れた部分にクラックなどの損傷やカーケンダルボイド(Kirkendall boid)などの原子欠陥を発生し易いことが想定される。
【0086】
さらに、また、半田のような複数の異種金属原子から形成された金属合金などでは、例えば電子部品の通電によって受ける熱的な作用に伴い、金属内の原子格子が熱的な振動や拡散を生じ易く、それらの一部などで格子欠陥を生みやすい。ところが、それぞれの金属原子は、その種類によって拡散速度が異なる。そのため、異種の金属原子どうしの接合部位などでは拡散速度のずれから微視的な原子欠陥が大きく成長し易い。このような熱履歴を繰り返し受けると、原子欠陥がさらに進行することとなる。その結果、多数回の熱履歴を受けることにより、前述したカーケンダルボイドなどが大きく成長する虞がある。また、原子格子の欠陥の生成が大きく進んでいき、巨視的なレベルまで成長していくと、クラックの発生につながる虞もある。このため、クラックやカーケンダルボイドなどが発生した半田では、これらの脆弱な部位などで強度の低下をもたらし、応力が集中すると半田の損傷につながる。
【0087】
このような理論的な知見から上記の実験例を独自に想起し、これを踏まえたうえで上記実験を行ってみた。このときの実験により得られたデータに基づき作成したグラフを、
図12に示す。同図のグラフにおいて、横軸は電子部品20へ通電を実際に実施したときの、積算延べ通電回数(サイクル数)、縦軸はクラックなどの発生による故障率の累積割合(%)を示す両対数グラフである。
【0088】
また、
図11では、基板10上で格子状配置の各半田ボール21について得られた故障個所の具体的な発生状況を、模式的に示してある。なお、これらの半田ボール21については、ドット数の多い(色の濃い)箇所の半田ボール21ほど、抵抗値が高い(損傷が大きい)ことを示す。即ち、応力が集中的に作用してクラックなどの損傷の発生回数(故障率)が多いことを示している。
【0089】
また、
図12のグラフ上の任意の3か所の点では、クラックの発生部位を具体的な亀裂としてとらえたサンプル写真も併記する。各サンプル写真は、それぞれ、格子状に配置された多数の半田ボール21のうち、いずれも、右最下部(No.1)及び右最上部(No.14)の角隅の半田ボール21についての撮影画像を示す。これらのサンプル写真では、上下で押し潰れた状態になっているものが半田ボール21である。この半田ボール21は、下部がランドに接続され、上部が電子部品の電極に接続されている。
【0090】
[実験結果]
同実験例によれば、クラックなどの損傷の発生回数(故障率)が多いのは、各ランドに接続した半田ボール21の中で、特に、四隅のコーナー部分の半田ボール21Cであることが判明した。これは、半導体パッケージ20の四隅部分に応力が集中し易いことが原因ではないかと思われる。この実験結果で得られた知見に基づき、第3の実施の形態での構成を想起した。即ち、本開示の実施の形態では、格子状の多数配置の端子21およびランド100のうち、特に、コーナー端子21Cに対応するコーナーランド100Cにのみ、応力発光体150を設置させた。また、このコーナーランド100C内部に付設した応力発光体150からの発光を、光検出部160でモニターすることで、早期に、かつ、効果的に、電子部品の端子の損傷を検知でき、電子部品の経時劣化に伴う故障を未然に確認することが可能となった。
【0091】
<4.第4の実施の形態>
次に、本開示の第4の実施の形態の半導体パッケージ3について、
図13を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施の形態について、第1乃至第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。なお、本実施の形態の半導体パッケージ3では、BGA構造の電子部品20Cを使用している点では先の実施の形態と同様ではあるが、これらの実施の形態とは異なり、電子部品20Cを搭載させているインターポーザ20D上面が側板30及び天井板40で封止されている。
【0092】
さらに、本実施の形態の半導体パッケージ3において、第1乃至第3の実施の形態の半導体パッケージ1、2と異なるのは、基板10に多数設けたランド100との接続用の端子21のうち特に四隅のコーナー端子21Cに、応力発光体120(同
図B参照)を分散・混在させた導電性の透明樹脂体1
40(以下、これを応力発光ブロック170と称する。)を設けている点と、光検出部を設置していない点、である。
【0093】
本実施の形態の応力発光ブロック170は、コーナーランド100Cの内部ではなく、外部から観察可能となるよう、コーナー端子21Cの外面に設けている。即ち、コーナーランド100C内部には、導電性の透明樹脂体や応力発光体を設ける必要がない。なお、コーナー端子21Cに設ける応力発光体の構成としては、上述のようなブロック態様のものに設けるのではなく、導電性を有するシート状に形成した透明樹脂体に応力発光体を分散・混在させたもの(これを応力発光シート170Sと称する。)であってもよい。
【0094】
本実施形態の応力発光ブロック170の替りに応力発光シート170Sを貼り付けた場合には、強光度のものが構成可能であり、肉眼で視認するのにより都合がよい。そのため、応力発光ブロック170や応力発光シート170Sは、可視光領域内の波長の光を出射するものが好ましい。このような構成の応力発光ブロック170や応力発光シート170Sを用いることによって、発光現象を外部から直接目で視認することで、コーナー端子21Cにクラックなどの損傷が発生していることが容易に確認可能である。
【0095】
[作用・効果]
本実施の形態では、前述の実験例での知見に基づき、クラックなどの損傷の起こり易いコーナー端子21C、即ち外部に臨んだ角隅の端子にのみ、応力発光ブロック170を貼り付けてある。従って、端子のなかで初めに破損する可能性が高いコーナー端子21Cに対して外部から直接目で発光現象が視認可能である。しかも、視認すべき端子は、多数格子状に配置された端子の中の特に一番目につき易い最外部にある。従って、外部から容易に、かつ、確実にコーナー端子21Cの破損を確認できる。なお、応力発光体が、可視光域外の固有波長の光(例えば、近赤外光や近紫外光など)で発光するタイプの場合には、その波長域の光を検出する光検出部を半導体パッケージ3又はその近傍に用意しておけばよい。
【0096】
従って、本実施の形態によれば、応力発光ブロック170や応力発光シート170Sを、ランド100,100C内部ではなくコーナー端子21Cの外面に直接貼り付けるだけでよい。従って、設置作業が簡単であり、コストの大幅削減が図れる。特に、応力発光ブロック170や応力発光シート170Sからの発光光線が可視光の場合には、光検出部を必要としないので、さらにコストの削減を図ることができる。
【0097】
しかも、本実施の形態によれば、半導体パッケージ3を備えた電子機器を製造したのち、端子21のクラックなどの損傷を確認する必要性が生じたときに、応力発光ブロック170や応力発光シート170Sを端子21に張り付けるだけで済む。従って、後付けで応力発光ブロック170や応力発光シート170Sを設置しても、クラックなどの損傷の発生が検出可能になる。
【0098】
<5.第4の実施の形態の変形例>
次に、本開示の第4の実施の形態の変形例の半導体パッケージ4A、4Bについて、
図14を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施の形態について、第1乃至第4の実施の形態(特に第4の実施の形態)と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
【0099】
[構成]
半導体パッケージ4A、4Bでは、第4の実施の形態と同様、電子部品20Cを搭載したインターポーザ20D上面に接着剤で適宜のプラスチック樹脂材料で形成した側壁板30を固着している。さらに、側壁板30の天上面には、ガラス体などの透明封止材料で形成した天井板40を接着剤で固着している。
【0100】
接着剤は、一般に、温度や環境変化などにより亀裂、クレーズ、クラック(ソルベントクラック)などの損傷を起こし易い。また、例えば接着剤にヨウ素などが添加されているような場合、この添加物が接着界面から被接着物の方へ侵入し、その界面などで欠陥が生じて破断や亀裂などを発生する虞がある。従って、接着剤の成分として欠陥原因を起こしやすいものを含まないのが好ましい。
【0101】
本開示において、同
図Aに示す変形例(以下、第1の変形例)では、インターポーザ20Dと側板30との間の不図示の接着剤の亀裂・損傷などを検出するために、これらの間の接着剤の外部に、第4の実施の形態で説明したものと同様の応力発光シート170S´を貼り付けてある。同
図Bに示す変形例(以下、第2の変形例)でも、側壁板30と天井板40との間の接着剤の外部に、同様の応力発光シート170S´を貼り付けてある。
【0102】
なお、第1、第2の変形例の応力発光シート170S´は、例えばシート状に形成した透明樹脂体に応力発光体を分散・混在させたものであり、第4の実施の形態で述べた応力発光シート170Sのような導電性ではなくてもよい。また、上記した第1、第2の変形例でも、第4の実施の形態の場合と同様、光検出部は設置していないが、半導体パッケージ4A、4Bの周囲に光検出器を設け、応力発光シートから出射する光を検出させてもよい。なお、本実施の形態の構成のような側壁板30と天井板40の替りに、電子部品20C全体をプラスチック樹脂でモールド封止する構成でもよい。その場合には、プラスチック樹脂とインターポーザとの境界に応力発光シートを取り付けることが可能である。
【0103】
[作用・効果]
従って、第1、第2の変形例によれば、上記応力発光シート170S´は、各接着剤の温度や環境などの変化に伴い、界面などで亀裂やクラックなどの損傷を生じた場合、その接着剤に貼り付けてある応力発光シート170S´に強い応力を生じて可視光を出射する。従って、観察者は、外部からその光線を肉眼で観察・確認できる。
【0104】
また、第1、第2の変形例では、光検出部を設けていないので、その分、コストの削減を図ることができる。また、いずれの変形例でも、応力発光シート170S´はランド100、100C内に埋設させていないので、その分製造が容易であるとともに、コストの削減が図れる。さらに、第4の実施の形態と同様、後付けで応力発光シート170S´を貼り付けることができる。しかもこの応力発光シート170S´の設置作業を、簡易に、かつ、簡便に行える。
【0105】
<6.第5の実施の形態>
次に、本開示の第5の実施の形態の半導体パッケージ2について、
図15を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施の形態において、第1乃至第4の実施の形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
本実施の形態の半導体パッケージ5において、第4の実施の形態の半導体パッケージ3と異なる点は、応力発光シート170Sからの発光を検出する手段として、肉眼での確認ではなく、画像撮影手段180を設置している点である。
【0106】
画像撮影手段180には、CCDイメージセンサ(charge coupled device image sensor)やCMOSイメージセンサ(Complimentry Metal Oxcide imege sensor)のような個体撮像素子などを用いた、ビデオカメラやデジタルカメラなどを使用できる。また、画像撮影手段180から出力する撮影信号を信号線を介して外部へ取り出し、画像録画手段などで録画させるようにしてもよい。また、この発光検出手段としては、これら画像撮影手段180や画像録画手段には必ずしも限定されない。光検出器など各種のものが適用可能であり、これを半導体パッケージの周囲に設置してもよい。
【0107】
[作用・効果]
従って、本実施の形態によれば、第4の実施の形態と同様、特にクラックなどの損傷の起こり易いコーナー端子21C、即ち外部に臨んだ最外部の端子に応力発光シート170Sを貼り付けてある。このため、例えばビデオカメラなどの画像撮影手段180で応力発光シート170Sから出射する発光を撮影できる。そのため、この撮影画像を録画するように構成した場合、観察者が常時そばで観察していなくても、端子21の損傷などの異常をその後いつでも容易に確認できる。
【0108】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本開示の一例であり、本開示は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0109】
また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無い。また、他の効果があってもよい。
【0110】
さらに、本開示の適用範囲としては、特に本開示の基板や半導体パッケージに限定するものではない。例えば、橋梁の鉄骨部分やトンネルのコンクリートなどの構造物において損傷を生じやすい部分での損傷検出のために、本開示の応力発光体や光検出部などを設置して損傷を検出するようにしてもよい。また、手術用の内視鏡(例えば光学内視鏡や電子内視鏡を含む)において、オートクレーブによる多数回の滅菌作業で損傷を受けやすい部位に本開示の応力発光シートなどを設けておき、滅菌消毒作業に先立ち、損傷の有無を事前に検出させてもよい。さらに、車検検査などの前に、各部品での故障を事前に察知できるようにするため、損傷を起こしやすい部品にあらかじめ本開示の応力発光シートや光検出部などを設置しておいてもよい。
【0111】
なお、上述の実施の形態における図面は、模式的なものであり、各部の寸法の比率等は現実のものとは必ずしも一致しない。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれることは勿論である。
【0112】
また、上述の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。この記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)およびメモリカード等を用いることができる。
【0113】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)基材部と、
応力に応じて発光する応力発光体が配置されるとともに透明な部材により構成されて前記基材部に配置され、素子の端子が接合されるランドと、
前記基材部および前記ランドの間に配置されて前記応力発光体からの光を検出する光検出部と
を具備する基板。
(2)前記応力発光体は、前記素子が有する複数の端子が接合される複数のランドのうち、特に角隅のランドにのみ配置される前記(1)に記載の基板。
(3)前記角隅のランドに接合される角隅の端子は、前記素子の内外間での電気信号が通過する信号線としての機能を有しない配線構造とする前記(1)に記載の基板。
(4)前記光検出部は、前記応力発光体からの光に応じた電気信号を前記検出の結果として出力する前記(1)に記載の基板。
(5)前記光検出部における検出結果に基づいて前記ランドの応力を検出する応力検出部をさらに具備する前記(1)に記載の基板。
(6)前記応力検出部は、前記光検出部における検出結果と所定の閾値とを比較することにより前記応力を検出する前記(5)に記載の基板。
(7)前記応力検出部は、前記光検出部の検出結果が変化した際に前記応力を検出する前記(5)に記載の基板。
(8)前記光検出部の検出結果を保持する保持部をさらに具備し、
前記応力検出部は、前記光検出部の検出結果と前記保持部に保持された検出結果とを比較することにより前記光検出部の検出結果の変化を検出する前記(7)に記載の基板。
(9)複数の前記光検出部が前記基材部および前記ランドの間に配置され、
前記応力検出部は、前記複数の光検出部の検出結果に基づいて前記応力を検出する前記(5)に記載の基板。
(10)前記検出した応力に基づいて前記端子および前記ランドの接合部の損傷を検出する損傷検出部をさらに具備する前記(5)に記載の基板。
(11)前記ランドは、前記素子の端子を接着することにより前記端子を接合する前記(1)に記載の基板。
(12)前記ランドは、前記基材部に形成された凹部に配置される前記(1)に記載の基板。
(13)多数の端子を設けた半導体を搭載する基板と、
前記半導体の端子及び/又は半導体のパッケージに損傷を生じると発光する、前記端子側及び/又はパッケージ側に設けた応力発光体と、
を具備し、
前記応力発光体の発光を外部から検出する半導体パッケージ。
(14)前記応力発光体は、前記パッケージの外部構造となる樹脂体及び/又はガラス体と基板側との間を接着する接着剤に設けた、シート状の応力発光体である、前記(13)に記載の半導体パッケージ。
(15)前記応力発光体の発光により出射する光線は、可視光線帯域の波長以外の、紫外線又は近赤外線などの波長も含む前記(13)に記載の半導体パッケージ。
(16)前記応力発光体は、半導体の端子のうちコーナー部分の端子にのみ設け、
この応力発光体をモニター手段として用いて前記端子の損傷を監視する前記(13)に記載の半導体パッケージ。
(17)前記パッケージの周囲に光検出器を設置している前記(13)に記載の半導体パッケージ。
(18)前記応力発光体は、ユウロピウムをドープし構造制御したアルミン酸ストロンチウム(SrAl2O4:Eu)、遷移金属や希土類をドープした硫化亜鉛(ZnS:Mn)やチタン酸バリウム・カルシウム((Ba,Ca)TiO3:Pr)、アルミン酸カルシウム・イットリウム(CaYAl3O7:Ce)のいずれかの材料が使用可能である、前記(13)に記載の半導体パッケージ。
【符号の説明】
【0114】
1、2、3、4A、4B、5 半導体パッケージ
10 基板
20、20A、20B、20C 電子部品(半導体、素子)
20D インターポーザ
21 端子(ボール端子)
21C コーナー端子
30 側壁板
40 天井板
100 ランド
100C コーナーランド
110 凹部
120、150 応力発光体
130、160 光検出部
140 導電性の透明樹脂体
170 応力発光ブロック
170S、170S´ 応力発光シート
180 画像撮影手段(画像録画手段)
200 基材部
300 応力検出部 310 電源部
320、340 比較部
330 損傷検出部
350 保持部