(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】オイル封入デジタルマイクロ流体におけるオイル残渣保護
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20241105BHJP
G01N 37/00 20060101ALN20241105BHJP
【FI】
G01N35/08 B
G01N37/00 101
(21)【出願番号】P 2021576068
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(86)【国際出願番号】 IB2020056483
(87)【国際公開番号】W WO2021005560
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-06-28
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595006223
【氏名又は名称】ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ブラサード, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】マリック, リディヤ
(72)【発明者】
【氏名】モートン, キース
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレス, テオドール
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-329904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/08
G01N 37/00
G01N 35/00
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイル封入(OE)液滴のペイロードをデジタルマイクロ流体(DμF)ネットワークの感受性領域に供給するプロセスであって、前記
プロセスが、
a)
i.各ユニットセルが0.1mL未満の体積の流体の液滴を収容する体積を有する、少なくとも3つの縁部接続ユニットセルと、
ii.OE液滴を前記ユニットセルのうちの1つに
分配することによって、リザーバの液体内容物を前記OE液滴に実質的に離散化するように構成された、前記ネットワークのための供給部であって、前記感受性領域が、全体的に第1の前記ユニットセルの前記体積内にあり、前記感受性領域が、前記感受性領域の周りに連続的に延在する境界によって囲まれる、供給部と、
を有するDμFネットワークを準備するステップと、
b)オイルを含まない流体を前記第1のユニットセルに十分に送達して、前記境界をカバーして封止し、前記感受性領域をカバーするステップであって、前記流体が前記ペイロードと混和性である、カバーするステップと、
前記オイルを含まない流体が前記境界を封止している間に、
c)少なくとも1つのOE液滴を前記供給部から前記ネットワークを介して前記第1のユニットセルに送達し、前記OE液滴を、前記オイルを含まない流体と融合させて、前記境界の直前までオイルで囲まれた融合液滴を生成させるステップと、
を含み、
それにより、前記感受性領域が、前記プロセス中に前記OE液滴のオイルシェルのどの部分とも接触しない、
プロセス。
【請求項2】
前記ネットワークの前記供給部が、埋め込まれた電極と
、前記第1のユニットセル以外のユニットセルとの界面領域と、を有する前記リザーバを備える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記境
界が、前記第1のユニットセルを境界付ける2つの隣り合う壁にわたって連続的に延在する、又は、前記境
界が、前記第1のユニットセルの片側を境界付ける単一の壁にわたって連続的に延在する、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ネットワークを準備するステップが、接地電極、及び充電電極のアレイを、平行平板ユニットセル構造に設けるステップを含み、各充電電極が、前記ユニットセルの前記接地電極とは反対側から前記接地電極に面し、隣り合う前記ユニットセルの各々の前記充電電極から独立してアドレス指定可能であり、前記ネットワークが少なくとも5つのユニットセルを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記感受性領域が、
マイクロ流体チャネルへの開口部を備え、前記境界が前記開口部を周方向に囲むリップを備える、又は、
センサと、
化学反応性表面、光化学的反応性表面、電気化学的反応性表面、熱化学的反応性表面のうちの1つからなる処理表面と、
微小電気機械システム(MEMS)と、
音響、超音波、超低周波、光学、電磁、電気又は磁気エネルギー伝達面と、
のうちの1つの表面を備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
流体を前記第1のユニットセルに送達するステップが、前記流体を、少なくとも前記境界をカバーするように前記チャネルを通して逆流させるステップ、又は、少なくとも1つのオイルを含まない流体液滴を、前記供給部から前記ネットワークを介して前記第1のユニットセルに送達するステップを含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記オイルを含まない流体を送達するためのDμF動作が、前記OE液滴を送達するための動作と同じであり、前記プロセスが、b)とc)との間に、オイルを前記リザーバの前記内容物に供給するステップを更に含む、又は、前記ネットワークが、前記オイルを含まない流体を液滴に離散化し、液滴を前記ユニットセルのうちの1つに移動させ、前記オイルを含まない流体を、前記第1のユニットセルに送達するように構成された第2の供給部を更に備え、前記プロセスが、離散化したオイルを含まない液滴を前記ユニットセルのうちの前記1つから、前記ネットワークを介して前記第1のユニットセルに送達するステップを更に含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記流体が、前記センサ、処理表面、又はエネルギー伝達面に特有の較正サンプル又は基準サンプルを備える、又は、前記液体内容物が水性である、請求項5~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
オイル封入(OE)デジタルマイクロ流体(DμF)ネットワークであって、
各ユニットセルが0.1mL未満の体積の流体の液滴を収容する体積を有する、少なくとも3つの縁部接続されたユニットセルを画定する電極の集合体によって囲まれたDμF空間と、
OE液滴を前記ユニットセルのうちの1つに移動させることによって、リザーバの液体内容物を前記OE液滴に実質的に離散化するように構成された、前記ネットワークのための供給部と、
感受性領域を備える前記デジタルマイクロ流体空間の周壁であって、前記感受性領域が、全体的に第1の前記ユニットセルの前記体積内にある、周壁と、
前記感受性領域の周りに連続的に延在する境界であって、前記境界及び前記感受性領域から離れた前記第1のユニットセル内、又は任意の他のユニットセル内の前記周壁の任意の他の表面よりも、前記OE液滴のペイロード流体の液滴に対して小さい接触角をもたらす表面処理を有する、境界と、
を備え、
それによって、前記感受性領域が、十分な量の流体に露出されて前記境界及び前記感受性領域をカバーし、OE液滴が前記流体と融合されると、前記OE液滴及び前記流体の融合されたペイロードの一部が前記境界に固定され、前記感受性領域をオイルから保護する、
OE-DμFネットワーク。
【請求項10】
前記表面処理によって、前記電極が活性化されていないときの前記境界における流体の前記液滴の接触角が、流体の前記液滴の変位を可能にするために十分な電圧で前記電極が活性化されたときの前記境界の外側の前記第1のユニットセルの接触角よりも、小さくなる、又は、
流体の前記液滴の変位を可能にするために十分な電圧で前記電極が活性化されたときの前記境界の外側の前記第1のユニットセルの接触角よりも、少なくとも10°低い、前記境界における流体の前記液滴の接触角を、前記表面処理がもたらす、
請求項9に記載のOE-DμFネットワーク。
【請求項11】
前記周壁が、2方向における前記第1のユニットセルの限界を画定する2つの接合壁を備え、前記境界が、前記2つの接合壁のセグメントにわたって連続的に延在する、又は、前記境
界が、前記第1のユニットセルの一方の側を境界付ける前記周壁にわたって連続的に延在し、
前記感受性領域が、
センサ、
化学反応性表面、光化学的反応性表面、電気化学的反応性表面、熱化学的反応性表面のうちの1つからなる処理表面、
微小電気機械システム(MEMS)、
音響、超音波、超低周波、光学、電磁、電気若しくは磁気エネルギー伝達面、
又は、
マイクロ流体チャネルの開口部
である、請求項9又は10に記載のOE-DμFネットワーク。
【請求項12】
オイル封入(OE)デジタルマイクロ流体(DμF)ネットワークであって、
各ユニットセルが0.1mL未満の体積の流体の液滴を収容する体積を有する、少なくとも3つの縁部接続されたユニットセルを画定する電極の集合体によって囲まれたデジタルマイクロ流体空間と、
オイル封入(OE)液滴を前記ユニットセルのうちの1つに移動させることによって、リザーバの液体内容物を前記OE液滴に実質的に離散化するように構成された、前記ネットワークのための供給部と、
マイクロ流体チャネルへの開口部を備える前記デジタルマイクロ流体空間の周壁であって、前記開口部が全体的に第1の前記ユニットセルの前記体積内にある、周壁と、
前記セルの中心から前記第1のユニットセルの平均寸法の0.5倍から2.5倍の距離で前記周壁上に配置されたオイルウィッキング材料と、
を備え、
それによって、前記第1のユニットセルに送達された一連のOE液滴からの過剰なオイルシェルが、前記オイルウィッキング材料によって取り込まれる、
OE-DμFネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、オイル封入(OE)空気媒体を使用するデジタルマイクロ流体に関し、それ以外では、オイル残渣による汚れを受けやすいデジタルマイクロ流体チップの感受性領域におけるオイル汚染を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]デジタルマイクロ流体(DμF)は、ユニットセルに分割されたチップの表面にわたって液滴の操作を実現する技術空間である。他のマイクロ流体システムとは異なり、本チップは、移送を案内するためにチップ内に画定されたチャネルを必要とせず、代わりに、各液滴の表面張力が離散化を確保し、セルの作動が液滴の動きを導くものである。少量サンプルの並列処理による高速で複雑な処理、複雑な手順のための高スループット、一体型センサ及び熱、電気、磁気又は光学処理ステーション、少ないサンプリング、液滴の動きに対する優れた制御、並びに高いシステム再構成可能性を含む、DμFシステムの多くの利点がある。
【0003】
[0003]液滴を囲む媒体によって画定される、DμFシステムのいくつかの変形形態がある。異なる非混和性(非導電性)媒体を使用して、異なるDμFシステムにおいて、表面上の開放体積又は閉鎖体積を充填できることは、当技術分野で周知である。空気を用いることが当然最も容易であるが、液滴内容物が空気中で蒸発又はそうでなければ反応し、液滴内の濃度変動及び場合によっては沈殿をもたらす可能性があることを含んで、液滴移送について空気媒体の使用には問題がある。したがって、一部の液滴は、特定の用途に必要な安定性及び完全性を欠いている。加えて、特に水性液滴の高い接触線摩擦力は、空気中の液滴動作の信頼性及び速度を低下させる。本明細書では、水性液滴は、任意の他の液体よりも多くの含水量を有する任意の均一又は不均一な液体ベースを指すことを意図し、液体ベースは、任意選択で、例えば、粒子、細胞、又は生体物質を支持、懸濁、溶解、又は他の方法で含んでもよい。DμF液滴は、水性であってもよく、又はDμFマイクロリアクタ用途に有用な様々な他の組成物であってもよい。当業者は、DμFシステム(本明細書では「DμF液滴組成物」)において電界効果変位を示すことが知られている液滴組成物(炭化水素、溶媒、反応媒体)の範囲に精通している。媒体として使用するための他のガスが提案されているが、他のガス媒体は、サンプル液滴からの揮発性物質の蒸発又はガス放出をほとんど阻害しない。
【0004】
[0004]更に、液滴の意図しない交差汚染は、DμFチップの1つ又は複数の表面上への移動から生じ得る。例えば、水性液滴中の生体分子は、DμFチップの疎水性表面に付着することができ、1つの細胞から別の細胞への移送などの基本的な動作を弱めるか、又は防止することさえできる。生物付着は、オイル媒体中よりも空気媒体中で著しく高いことが分かっている(V.Srinivasan、V.K.Pamula、及びR.B.Fair、「An integrated digital microfluidic lab-on-a-chip for clinical diagnostics on human physiological fluids,」、2004年、Lab Chip、vol.4、no.4、310ページ参照)。これは、酵素、タンパク質、脂質などの疎水性分子を含有する液滴によるDμF動作を複雑にする。
【0005】
[0005]したがって、鉱オイル、シリコーンオイルなどのオイルが、DμFのために、最も使用される媒体である。一部のオイルは、液滴の表面張力、低粘度、及び広範なクラスの液滴材料との高い不混和性に対して望ましい効果を有する。オイル媒体は、作動に必要な電圧を低下させるだけでなく、通常、表面張力を低下させ(液滴とオイルとの間の表面張力は空気との場合よりも低い)、分割、分配などの様々なDμF動作を容易にする。オイル媒体は、液滴の蒸発を大きく防止し、(PCRに必要とされるような)高温での動作を可能にし、サンプルの交差汚染を低減するのに有効であることが証明されている。
【0006】
[0006]これらの利点にもかかわらず、オイル媒体DμFは、オイルを保持するための充填可能なエンクロージャ機構(通常、緩衝液、サンプル、試薬などの供給側と交差しないオイル口及び通気口のマイクロ流体ネットワークを有する)を必要とし、かつそのエンクロージャにオイルを充填し、気泡を除去するために面倒で複雑なプロセスを、時として必要とする。更に、オイル媒体DμFは、動きが鈍い。液滴を移動させるために変位する必要があるオイル媒体の粘性抵抗及び慣性は、液滴の変位速度を制限する傾向があり、その結果、実現可能な高速手順を制限する。
【0007】
[0007]オイル媒体DμF及び空気媒体DμFのこれらの利点及び欠点に注目して、本出願の発明者らは、「Water-oil core-shell droplets for electrowetting-based digital microfluidic devices」、2008年、Lab Chip、vol.8、no.8、1342ページに、両方の利点を組み合わせた技術を教示した。本明細書では、オイル封入(OE-)DμFは、ガス状媒体を有するDμFを指すが、そこでは、液滴がオイルシェルを有する。各液滴は、それ自体のオイルシェルによってカバーされた、独立して移動可能な収容流体ペイロードである。これは、オイル媒体DμF(低い電圧閾値、低減された界面張力、及び改善された液滴安定性と完全性)の利点、並びに空気媒体DμF(単純なチップ、オイル充填の回避、及び低い抗力)の利点を有する。(論文で説明したように)空気-オイル、すなわちDμF液滴組成のオイル界面よりも空気-DμF液滴組成界面からの接触線摩擦が極めて高いため、オイルシェルは、封入されていない液滴と比較して液滴上の抗力を更に減少させると予想される。オイルは完全に不活性な物質ではなく、気体の吸収、及びコア液滴との他の相互作用が依然として起こり得るが、シェルに入る任意の種又は粒子は、シェルを出る前に克服する障壁を有し、液滴間に単一の連続(拡散)媒体を提供するオイル媒体DμFとは異なり、移動を低減させる。したがって、多くの移動機構は、OE-DμFによって排除される。
【0008】
[0008]この理由からも、OE-DμFは、ペイロードではなくオイル相に溶解した試料を移送及び操作することができる。これは、DMFデバイスを使用する可能性を開き、ペイロード内で不溶性の疎水性種に作用する。オイルは、不活性封入であってもよく、又はペイロードから抽出された疎水性試料の保持又は処理に使用されてもよい。
【0009】
[0009]OE-DμFの利点にもかかわらず、いくつかの用途には問題が残っている。具体的には、空気、オイル、ペイロードの3成分は、ユニットセルを通過する液滴によって残され得るオイルの縞又は汚れに関する問題をもたらし得る。これらの縞模様の転写は、交差汚染のリスクを無視できるほどにされ得、又はそうでなければ軽減され得る(特定の表面に残ったオイル残渣は、その表面上の液滴によって処理又は洗浄され得る)が、残渣は、一部のプロセスを動作不能にするか、信頼できないようにするか、又はそうでなければ問題を引き起こす。例えば、センサ、特に表面現象(例えば、表面プラズモン共鳴、電気化学測定、又は液滴を狭い温度範囲内に加熱すると想定される光エネルギー供給)を使用するセンサは、オイルが液滴と表面との間の界面を乱す場合、故障する可能性がある。(E.Samiei、M.Tabrizian、及びM.Hoorfar、「A review of digital microfluidics as portable platforms for lab-on a-chip applications,」、2016年、Lab Chip、vol.16、no.13、2376~2396ページに説明されているように)センサ表面上の薄いオイル膜は、試料分子の検知表面への到達を妨げ、測定に任意の(補償できない)変化を引き起こす可能性がある。検知表面に付着した少量のオイル縞は、信号の読出しの際に、予測不可能なノイズを引き起こす可能性がある。
【0010】
[0010]DμFチップ上のセンサ又は他の表面に封入解除された液滴を供給することに関する問題は、封入自体が困難にする。OE液滴がユニットセルに到達する前に、オイルシェルの前縁部が表面と接触する。隣接するユニットセルに送達する前に、1つのユニットセルでオイルシェルを蒸発させるか、又はそうでなければ除去することが可能であり得るが、これは困難なプロセスであり得、極めて制限されたクラスのオイルをシェルに使用する必要がある。そのようなプロセスは、感受性表面上のオイルガスの凝縮を回避しつつ、オイルガスを除去するために、厄介な熱及び換気制御を、ほとんどのDμFプロセスと比較して多くの時間を、複数の様々なオイル封入システムを必要とし、更に、隣接するユニットセルへの移動など、DμFプロセスが妨げられたり、そうでなければ液滴が乾燥又は影響を受けるほど多くのペイロードが蒸発して液滴を損失させることなく、オイル除去が完了することを確保するための何らかの努力が必要となる場合がある。したがって、OE-DμF技術及びオイル媒体DμFの重要な利点にもかかわらず、DμFにおけるそのような感受性領域の必要性は、重要なクラスのプロセスを空気媒体DμFに委ねている。
【0011】
[0011]実際、空気中のDMFデバイスにはかなりの困難があるため、表面相互作用に依存するアッセイは、液滴を乾燥させない比較的単純な液滴変位手順を用いた概念実証の展示に限定されてきた(L.Malic、T.Veres、及びM.Tabrizian、「Two-dimensional droplet-based surface plasmon resonance imaging using electrowetting-on-dielectric microfluidics」、2009年3月、Lab Chip、vol.9、no.3、473~5ページ、L.Malic、M.Tabrizian、T.Veres、B.Cui、及びF.Normandin、「分子の表面プラズモン共鳴に基づく検出のためのシステム及び方法」、国際公開第2008/101348号、L.Malic、T.Veres、及びM.Tabrizian、「Biochjp functionalization using electrowetting-on-dielectric digital microfluidics for surface plasmon resonance imaging detection of DNA hybridization」、2009年3月、Biosens.Bioelectron、vol.24、no.7、2218~24ページ、L.Malic、T.Veres、及びM.Tabrizian、「Nanostructured digital microfluidics for enhanced surface plasmon resonance imaging」、2011年1月、Biosens.Bioeleclron、vol.26、no.5、2053~9ページ、P.Dubois、G.Marchand、Y.Fouillet、J.Berthier、T.Dould、F.Hassine、S.Gmouh、及びM.Vaultier、「Ionic liquid droplet as e-microreactor.,」2006年、Anal.Chem.、vol.78、no.14、4909~17ページ参照)。
【0012】
[0012]Advanced Liquid Logic及びDuke University(Pollackらによる国際公開第2007/120241号)への特許開示は、空気媒体DμF及びオイル媒体DμF、並びにOE-DμFを教示し、また、特にSPR(8.11.3.3)などの極めて高品質の清浄表面を必要とするセンサを含む様々な種類のセンサ(8.11)を教示しているが、オイル縞表面に起因する欠陥を回避する方法を教示又は説明していない。OE液滴が通過する前後に洗浄液をユニットセル上に塗布することができるが、オイルシェルが表面を横切り、シェルを支持する液滴が表面に入るまでの間に表面を洗浄することはできない。したがって、オイル媒体DμF動作及びOE-DμF動作は、明記されていないが、これらのセンサ表面での使用は想定されていないと推測することができる。
【0013】
[0013]したがって、DμFにおける試料検出は、バルク特性に重点を置いて液滴の特性の変化を監視することによって実施されることが多い。例えば、検出は、液滴の光学吸光度、それらの蛍光、又は化学発光を測定することによって達成することができる。検出が表面上で実施されないので、オイル相からの干渉にもかかわらずアッセイを実施することができる。表面プラズモン共鳴(SPR)などの表面ベースの検知技術を回避することは、望ましくない制限である。一部の一般的な技術は、サンプルを染色するための面倒な作業を必要とする。SPRなどの表面ベースの検知技術の利点は、標的種の吸収の動態をリアルタイムで監視する可能性を含む。例えば、SPR画像化(SPRi)システムは、DNAハイブリダイゼーションの検出のためにデジタルマイクロ流体デバイスと接続されている。すべての液滴動作は、オンチップに集積された検知表面の汚染を回避するために空気中で実施された。別の例では、電気化学センサをDMFデバイスに埋め込んだ。すべての動作はまた、オイルの存在のない、空気中で実施された。両方の例において、デジタルマイクロ流体デバイス及び液滴変位プロセスは、強制的で、極めて短く、かつ単純である。蒸発を避けるために、液滴導入からアッセイまでの時間は短く保たれる。
【0014】
[0014]他のバルク特性センサ及びデバイスが表面上の未知のもの、あるいは表面上で変化するオイル膜又は縞と共に動作することができる場合であっても、表面がオイルを含まない状態に保つことによって、高精度又は低コストの機器、あるいは速い取得/動作が実現される。更に、保護されている場合、低コスト、無標識、又は高感度な方法を代替的に使用し得る。
【0015】
[0015]最後に、オイル封入は、液滴上の複雑で、多くのステップのDμFプロセスに有益であり得るが、他のプロセス(DμFにとって不都合な温度又は雰囲気での結晶化、沈殿、蒸発、気化、又は処理)のために、又は液滴ペイロードをアナログマイクロ流体チップなどの異なる流体処理デバイスに送達するために、液滴を非封入環境に送達することが有益であり得る。
【0016】
[0016]したがって、チップの感受性領域をオイル縞又は汚染から保護するために液滴を封入解除し、液滴内容物を表面に移送し得るOE-DμF技術が依然として必要である。コア液滴内容物は、多くのプロセスのためにシェルから分離可能である必要があり、コスト、チップスペース、及びエネルギー効率の良い方法で分離することは、特に、チップの製造又はDμF動作の実施を複雑にすることなく行われる場合に、この技術分野では必要である。
【発明の概要】
【0017】
[0017]出願人は、精巧な装置、又はチップ設計の変更を必要とせずに、かつOE-DμF動作を大幅に遅くすることなく、OE-DμFチップの感受性領域をオイルから保護する方法を発見した。本明細書では、OE-DμFチップ又はネットワークは、OE-DμF動作に適合したDμFチップ又はネットワークであると理解されるべきであり、したがって、任意の他のDμFチップと同一であってもよいし、ブリード弁を備えた充填エンクロージャシステム、又は気泡を回避するための機構を有さないという点でオイル媒体DμFチップと異なってもよく、更に、液滴移動のために印加される電圧の観点で、又は
図10に関して以下に説明するように別個のサンプル及びオイル領域を有するリザーバを有し得るという点で、空気媒体又はオイル媒体DμFチップ/ネットワークと異なってもよい。
【0018】
[0018]本解決策は、ペイロードのDμF液滴組成と混和性である任意の体積の被覆液を用いて、感受性領域(複数可)を囲むエリアを封止することを含む。ペイロードのDμF液滴組成が水性である場合、好ましくは、被覆液は、精製水、脱イオン水、蒸留水などの非サンプル水性液滴、又はオンチップで利用可能な清浄な緩衝液であり、あるいは感受性領域の特定のセンサのための較正サンプルとして特定の値を有する水性サンプルである。代替的に、被覆液は、DμF液滴組成物のための溶質又は溶媒であり得る。封止は、リザーバのオイル封入前のリザーバから、又は無オイル封入リザーバから、被覆液からなる封入されていない液滴をOE-DμFチップ上に移送することによって、もたらされてもよく、あるいは封止エリアによって囲まれた、又は封止エリアに隣接する開口部を有する別個のチャネル内に被覆液を注入することによって、もたらされてもよい。
【0019】
[0019]被覆液滴に隣接するOE液滴を送達することによって、OE液滴のオイルシェルは、自然に被覆液滴を囲むが、境界の封止で阻害され、オイルが感受性領域と接触することを防止する。したがって、一連のOE液滴は、融合液滴内の拡散によって表面に送達され得、かつ別個のチャネル又はその後のOE-DμF動作のいずれかを介して除去されて、感受性領域にオイルが接触するリスクなしに、異なる時間ステップで表面上のサンプルに濃度変化をもたらし得る。
【0020】
[0020]本方法は、デジタルマイクロ流体(DμF)ネットワークに、2つの構造的特徴のいずれかを付与することができる。境界に、意図した流体との低い接触角を実現することによって、被覆液滴を境界に固定し、DμF動作によって液滴が除去されるリスクを排除又は低減し得る。被覆液滴及びオイル封入(OE)液滴のペイロードを消費又は回収する、感受性領域に隣接したオイルウィッキング材料を提供することによって、OE液滴の過剰なオイルシェルを感受性領域の近傍から除去することができる。
【0021】
[0021]したがって、OE液滴のペイロードをDμFネットワークの感受性領域に供給するプロセスを提供する。本プロセスは、少なくとも3つの縁部接続されたユニットセル、及び供給部を有するDμFネットワークを準備することを含み、各ユニットセルは、0.1mL未満の体積の流体の液滴を収容する体積を有し、供給部は、ネットワークのために、OE液滴をユニットセルのうちの1つに移動させることによって、リザーバの液体内容物をOE液滴に実質的に離散化するように適合している。感受性領域は、全体的に第1のユニットセルの体積内にあり、その周りに連続的に延びる境界によって囲まれている。本方法は、オイルを含まない流体を第1のユニットセルに十分に送達して、境界をカバーし、かつ封止することと、感受性領域をカバーすることと、を含み、流体はペイロードと混和性である。オイルを含まない流体が境界を封止する一方で、本方法は、少なくとも1つのOE液滴を、供給部からネットワークを介して第1のユニットセルに送達することと、OE液滴を、オイルを含まない流体と融合させて、境界の直前までオイルに囲まれた融合液滴を生成することと、を含む。したがって、感受性領域は、プロセス中にオイルシェルのどの部分とも接触しない。
【0022】
[0022]ネットワークは、好ましくは、少なくとも5つのユニットセルを含み、10~200のユニットセルを有してもよい。ネットワークのリザーバの供給部は、埋め込まれた電極と、分配された液滴を受け取る、第1のユニットセル以外のユニットセルとの界面領域と、を有し得る。境界エリアは、第1のユニットセルを境界付ける2つの隣接する壁にわたって連続的に延在してもよく、又は第1のユニットセルの片側を境界付ける単一の壁にわたって連続的に延在してもよい。
【0023】
[0023]ネットワークを準備することは、接地電極及び充電電極のアレイを、平行平板ユニットセル構造に設けることを含むことができ、各充電電極は、ユニットセルの反対側から接地電極に面し、隣接する各々のユニットセルの充電電極から独立してアドレス指定可能である。
【0024】
[0024]感受性領域は、マイクロ流体チャネルへの開口部を備え得、境界は、開口部を周方向に囲むリップを備え得る。そうである場合、第1のユニットセルに流体を送達することは、流体を、チャネルを通して逆流させ、少なくとも境界をカバーすることを含み得る。
【0025】
[0025]第1のユニットセルに流体を送達することは、少なくとも1つのオイルを含まない流体液滴を、供給部からネットワークを介して第1のユニットセルに送達することを含み得る。プロセスがオイルを含まない液滴とOE液滴との送達間に、オイルをリザーバの内容物に供給することを更に含む場合、オイルを含まない流体を送達するためのDμF動作は、OE液滴を送達するための動作と同じであり得る。
【0026】
[0026]ネットワークは、オイルを含まない流体を液滴に離散化し、液滴をユニットセルのうちの1つに移動させるように適合した第2の供給部を更に備え、オイルを含まない流体を第1のユニットセルに送達し、そのプロセスは、離散化したオイルを含まない液滴を、ユニットセルのうちの1つからネットワークを介して第1のユニットセルに送達することを更に含む。
【0027】
[0027]感受性領域は、センサと、化学反応性表面、光化学的反応性表面、電気化学的反応性表面、熱化学的反応性表面のうちの1つからなる処理表面と、微小電気機械システム(MEMS)音響と、超音波、超低周波、光学、電磁、電気又は磁気エネルギー伝達面と、のうちの1つの表面であってもよい。被覆流体は、センサ、処理表面、又はエネルギー伝達面に特有の較正又は基準サンプルであってもよい。液体内容物は水性であってもよい。
【0028】
[0028]したがって、OE DμFネットワークを提供し、ネットワークは、少なくとも3つの縁部接続されたユニットセルを画定する電極の集合体によって囲まれたDμF空間であって、各ユニットセルが、0.1mL未満の体積の流体の液滴を収容する体積を有する、DμF空間と、OE液滴をユニットセルのうちの1つに移動させることによって、リザーバの液体内容物をOE液滴に実質的に離散化するように適合した、ネットワークのための供給部と、感受性領域を備えるデジタルマイクロ流体空間の周壁であって、感受性領域が全体的にユニットセルの第1の体積内にある、周壁と、感受性領域の周りに連続的に延在する境界であって、境界及び感受性領域から離れた第1のユニットセル又は任意の他のユニットセル内の周壁の任意の他の表面よりも、電極を作動させることによって制御可能な流体の液滴に対して小さい接触角をもたらす表面処理を有する、境界と、を含む。感受性領域が、十分な量の流体に露出されて境界及び感受性領域をカバーし、OE液滴が流体と融合すると、OE液滴及び流体の融合したペイロードの一部は、境界に固定され、感受性領域をオイルから保護する。
【0029】
[0029]表面処理によって、電極が活性化されていないときの境界における流体の液滴の接触角が、流体の液滴が十分に変位し得る電圧で、電極が活性化されたときの境界の外側の第1のユニットセルの接触角よりも、小さくなり得る。表面処理は、流体の液滴が十分に変位し得る電圧で、電極が活性化されたとき、境界の外側の第1のユニットセルの接触角よりも少なくとも10°低い境界における流体の液滴の接触角をもたらし得る。
【0030】
[0030]周壁は、第1のユニットセルの2つの方向の限界を画定する2つの接合壁を含むことができ、境界は、2つの接合壁のセグメントにわたって連続的に延在する。
【0031】
[0031]境界エリアは、第1のユニットセルの片側を境界付ける周壁にわたって連続的に延在してもよい。
【0032】
[0032]感受性領域を、プロセスに関して画定することができる。
【0033】
[0033]最終的に、OE DμFネットワークを提供し、ネットワークは、少なくとも3つの縁部接続されたユニットセルを画定する電極の集合体によって囲まれたデジタルマイクロ流体空間であって、各ユニットセルが、0.1mL未満の体積の流体の液滴を収容するための体積を有する、デジタルマイクロ流体空間と、オイル封入(OE)液滴をユニットセルのうちの1つに移動させることによって、リザーバの液体内容物をOE液滴に実質的に離散化するように適合した、ネットワークのための供給部と、マイクロ流体チャネルへの開口部を備えるデジタルマイクロ流体空間の周壁であって、開口部が全体的に第1のユニットセルの体積内にある、周壁と、セルの中心から第1のユニットセルの平均寸法の0.5倍から2.5倍の距離で周壁上に配置されたオイルウィッキング材料と、を含む。第1のユニットセルに送達された一連のOE液滴からの過剰なオイルシェルは、オイルウィッキング材料によって取り込まれる。
【0034】
[0034]出願時の特許請求の範囲の写しを参照により本明細書に挿入する。本発明のさらなる特徴は、以下の詳細な説明の過程で説明されるか、又は明らかになるであろう。
【0035】
[0035]本発明を明確に理解できるように、添付の図面を参照して、その実施形態を例として詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】本発明の実施に適したOE-DμFネットワークの一部の一例の概略側面図である。
図1~
図7は、オイル汚染から感受性領域を保護する方法をまとめて示している。
【
図1B】本発明の実施に適したOE-DμFネットワークの一部の一例の概略上面図である。
図1~
図7は、オイル汚染から感受性領域を保護する方法をまとめて示している。
【
図2A】ユニットセルのうちの2つが活性化されたときの
図1のOE-DμFネットワークの概略側面図である。
図1~
図7は、オイル汚染から感受性領域を保護する方法をまとめて示している。
【
図2B】ユニットセルのうちの2つが活性化されたときの
図1のOE-DμFネットワークの概略上面図である。
図1~
図7は、オイル汚染から感受性領域を保護する方法をまとめて示している。
【
図3A】水性接触が行われたときの
図1のOE-DμFネットワークの概略側面図である。
図1~
図7は、オイル汚染から感受性領域を保護する方法をまとめて示している。
【
図3B】水性接触が行われたときの
図1のOE-DμFネットワークの概略上面図である。
図1~
図7は、オイル汚染から感受性領域を保護する方法をまとめて示している。
【
図4A】接合された水性体積にわたって広がるオイル封入を示す、
図1のOE-DμFネットワークの概略側面図である。
図1~
図7は、オイル汚染から感受性領域を保護する方法をまとめて示している。
【
図4B】接合された水性体積にわたって広がるオイル封入を示す、
図1のOE-DμFネットワークの概略上面図である。
図1~
図7は、オイル汚染から感受性領域を保護する方法をまとめて示している。
【
図5A】接合された水性体積にわたって広がるオイル封入を示す、
図1のOE-DμFネットワークの概略側面図である。
図1~
図7は、オイル汚染から感受性領域を保護する方法をまとめて示している。
【
図6A】接合された水性体積にわたって広がるオイル封入を示す、
図1のOE-DμFネットワークの概略側面図である。
図1~
図7は、オイル汚染から感受性領域を保護する方法をまとめて示している。
【
図7A】接合された水性体積のオイル封入を示す、
図1のOE-DμFネットワークの概略側面図である。
図1~
図7は、オイル汚染から感受性領域を保護する方法をまとめて示している。
【
図7B】接合された水性体積のオイル封入を示す、
図1のOE-DμFネットワークの概略上面図である。
図1~
図7は、オイル汚染から感受性領域を保護する方法をまとめて示している。
【
図8】感受性領域が基板を通して方向付けられたマイクロ流体チャネル開口部である、
図1のOE-DμFネットワークの変形形態の概略側面図である。
【
図9A】サンプルの処理に有用なプロセスステップの拡張されたセットを示す、オイル封入されたリザーバとオイルを含まないリザーバの両方を有するOE-DμFネットワークの一部の概略部分上面図である。
【
図9B】サンプルの処理に有用なプロセスステップの拡張されたセットを示す、オイル封入されたリザーバとオイルを含まないリザーバの両方を有するOE-DμFネットワークの一部の概略部分上面図である。
【
図9C】サンプルの処理に有用なプロセスステップの拡張されたセットを示す、オイル封入されたリザーバとオイルを含まないリザーバの両方を有するOE-DμFネットワークの一部の概略部分上面図である。
【
図9D】サンプルの処理に有用なプロセスステップの拡張されたセットを示す、オイル封入されたリザーバとオイルを含まないリザーバの両方を有するOE-DμFネットワークの一部の概略部分上面図である。
【
図9E】サンプルの処理に有用なプロセスステップの拡張されたセットを示す、オイル封入されたリザーバとオイルを含まないリザーバの両方を有するOE-DμFネットワークの一部の概略部分上面図である。
【
図9F】サンプルの処理に有用なプロセスステップの拡張されたセットを示す、オイル封入されたリザーバとオイルを含まないリザーバの両方を有するOE-DμFネットワークの一部の概略部分上面図である。
【
図9G】サンプルの処理に有用なプロセスステップの拡張されたセットを示す、オイルで封入されたリザーバとオイルを含まないリザーバの両方を有するOE-DμFネットワークの一部の概略部分上面図である。
【
図10A】OE-DμFネットワークを
図1の状態にもたらすためのプロセスステップの代替セットを示す、オイル封入されたリザーバとオイルを含まないリザーバのハイブリッドを有するOE-DμFネットワークの一部の概略上面図である。
【
図10B】OE-DμFネットワークを
図1の状態にもたらすためのプロセスステップの代替セットを示す、オイル封入されたリザーバとオイルを含まないリザーバのハイブリッドを有するOE-DμFネットワークの一部の概略上面図である。
【
図10C】OE-DμFネットワークを
図1の状態にもたらすためのプロセスステップの代替セットを示す、オイル封入されたリザーバとオイルを含まないリザーバのハイブリッドを有するOE-DμFネットワークの一部の概略上面図である。
【
図11A】OE-DμFネットワークとアナログマイクロ流体ネットワークとの間にオイルで保護された界面をもたらし、感受性領域が、OE-DμFネットワークの平面に平行に延在するマイクロ流体チャネルへの開口部として画定される、OE-DμFネットワークの一部の等角図である。
【
図11B】OE-DμFネットワークとアナログマイクロ流体ネットワークとの間にオイルで保護された界面をもたらし、感受性領域が、OE-DμFネットワークの平面に平行に延在するマイクロ流体チャネルへの開口部として画定される、OE-DμFネットワークの一部の上面図である。
【
図11C】OE-DμFネットワークとアナログマイクロ流体ネットワークとの間にオイルで保護された界面をもたらし、感受性領域が、OE-DμFネットワークの平面に平行に延在するマイクロ流体チャネルへの開口部として画定される、OE-DμFネットワークの一部の上面図である。
【
図11D】OE-DμFネットワークとアナログマイクロ流体ネットワークとの間にオイルで保護された界面をもたらし、感受性領域が、OE-DμFネットワークの平面に平行に延在するマイクロ流体チャネルへの開口部として画定される、OE-DμFネットワークの一部の上面図である。
【
図12A】アナログマイクロ流体ネットワークを介して導入されたオイルを含まない水性体積を示す、
図11のOE-DμFネットワークの一部の平面図である。
【
図12B】アナログマイクロ流体ネットワークを介して導入されたオイルを含まない水性体積を示す、
図11のOE-DμFネットワークの一部の平面図である。
【
図13A】アナログマイクロ流体ネットワークを有する2つの界面チャネルと、共通のオイルゲッタ材料と、を有するOE-DμFネットワークの一部の平面図である。
【
図13B】アナログマイクロ流体ネットワークを有する2つの界面チャネルと、分析又は廃棄のためにオイルをアナログマイクロ流体ネットワークに引き込み、水性及びオイルを分離したままにするオイル除去システムと、を有するOE-DμFネットワークの一部の平面図である。
【
図13C】連続するOE液滴から収集されたオイルを再循環又は収集するオイル除去システムを有するOE-DμFネットワークの一部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[0051]デジタルマイクロ流体(DμF)ネットワーク内のオイル封入(OE)液滴のペイロードを、オイル接触に感受性を有する表面又は開口部(すなわち、領域)に供給するための技術を本明細書に記載する。OE-DμFネットワークは、当然、マイクロ流体チップ上に設けられる。
【0038】
[0052]
図1~
図7のすべては、OE-DμFネットワークの同じ部分の図であり、以下のガイダンスで理解することができ、各平面図は、液滴の中央を通る、液滴の断面を示し、液滴は透明であると推定される。説明を簡単にするために、液滴/オイルシェルが基板と接触する接触縁部は図示していない。更に、電極、及び(疎水性コーティングの下に位置する)基板の上面の下に埋め込まれた構造は、それぞれのユニットセルの動作要素との接続について、読者を助けるために、かくれ線で示している。側面図は、液滴の中心に沿った断面図であり、背景にマイクロ流体デバイスの特徴を示していないが、見える場合は、液滴の縁部の特徴(すなわち、液滴も透明であると推定される)を示している。側面図が、基板と、通常、動作中のOE-DμFネットワークの場合よりも約10倍大きいとカバー蓋との間の間隔を示すことを除いて、図はすべて略妥当な縮尺であり、この拡大は液滴の好適な図を提供する。概略的に表現するために、側面図の電極は、クロスハッチングされている場合は「オン」(電気が流れている)として示し、そうでない場合は「オフ」(電気が流れていない)として示す。各画像は同一のOE-DμFネットワークのものであるが、液滴の形を好適に見せるために、一部は標識を付けていない。
【0039】
[0053]
図1A及び
図1Bはそれぞれ、OE-DμFネットワークの一部の概略側面図及び概略上面図である。OE-DμFネットワークは、3つの縁部接続ユニットセル10a、b、cを有し、その各々は、基板15及びカバー蓋16によってそれぞれ支持された底面12及び上面14の表面コーティング11によって上下に境界付けられたそれぞれの体積(点線で示す)によって識別される。表面コーティング11は、ユニットセルの壁へのOE液滴の低接着性、及び高速変位のための低摩擦を確保する。OE液滴が水性ペイロードを有する場合、表面コーティングは疎水性であり得、様々なDμF液滴組成物のための低摩擦表面コーティングとして、テフロン(商標)が好ましい場合がある。完全なOE-DμFネットワークは、通常、サンプルを保持するための少なくとも1つのリザーバ、並びに緩衝液、試薬などのための他のリザーバを、好ましくはオイル封入式に、又は密閉されたマイクロ流体チャンバ内に含み、通常、少なくとも8つのユニットセルを含む。特に多数のOE-DμFプロセスが同時に必要とされる場合、8つを超える多くのユニットセルを設けてもよい。いくつかの制限された機能OE-DμFネットワークは、4つ又は5つだけのユニットセル10を有してもよい。
【0040】
[0054]各ユニットセルは、本明細書では液滴と呼ばれる液体の一定量を保持するように設計されている。量が多い場合、液滴は単一のユニットセルの体積を超えて延在し、2つ以上のユニットセルの協調作動が、オーバーサイズの液滴を引き離し、それを2つの液滴に分割してもよく、これはその両方を、DμF動作に適したサイズにし得る。分割は有用なDμF動作である。しかしながら、液滴の量が供給された閾値を下回って減少する場合、サブ液滴は、ユニットセル(の一部)上で鎖状になり、ユニットセルを適切に占有しなくなる場合があり、その後、別の液滴がサブ液滴と融合した後にのみ移動して、一定の液滴サイズの量を形成する場合がある。供給される閾値は、ユニットセルの特性、特に電極の寸法、及び基板15からのカバー蓋16の間隔によって画定される。閾値は実質的に0.1mL未満である。例えば、合理的なサイズの液滴量は、公称量で0.1nL~50μL、好ましくは1nL~1μL、又は2~20nLであり、液滴サイズの許容公差は+/-0.6~60%であってもよい。
【0041】
[0055]各ユニットセル10は、電極18及び共通接地電極19によって表面的に設けられるそれぞれの電界効果変位アクチュエータを有する。電極18は、絶縁層の下に埋め込まれる。好ましくは、各ユニットセルの電極18は、液滴の変位を制御するために、その隣接するユニットセル10がそうでない場合に活性であってもよいが、電気的接続を低減するために、いくつかのユニットセル(通常は遠く)が接続されてもよい。各ユニットセルは、少なくとも1つの他のユニットセル10に隣接する縁部であり、縁部に隣接するユニットセル10の電界効果がユニットセルの体積のそれぞれの部分に影響を及ぼすように、縁部に隣接するユニットセルの体積はオーバーラップする。例えば概略的に示しているように、オーバーラップは、電極の分岐をインターリーブすることによって、又は対称的なインターリーブで、確保されることが多い。
【0042】
[0056]ユニットセル10cは、感受性領域20(本明細書ではオイル汚染に感受性を有すると理解される)を有し、表面境界22は、感受性領域20の周りに連続的に延在する。感受性領域20、好ましくは境界22も、全体的に単一のユニットセル(すなわち、図示のユニットセル10c)の体積内にあり、好ましくは、縁部に隣接しないセルの体積とオーバーラップする体積10cの一部にあってもよい。感受性領域20を、底面12上の環状境界22によって囲まれた円形表面として示しているが、形状も対称性も重要ではなく、境界22が表面上にあり、感受性領域20に封止をもたらすために感受性領域20を囲んでいる限り、ユニットセル10cを画定する任意の壁又は隔壁を代替的に使用することができる。感受性領域20は、マイクロスケール、ナノスケール又はハイブリッドスケールの構造であってもよく、例えば、本出願人の特許出願国際公開第2012/122628号で教示しているように、表面プラズモン共鳴又は他の電磁若しくは光工学検知能力を高めるために金属化されてもよい。したがって、基板15を貫通して感受性領域20の下に導波路23を設けてもよい。代替的に、図面の詳細と同等に、感受性領域20は、基板15を通るマイクロ流体通路23であってもよい。
【0043】
[0057]図示したように、導波路/通路23が基板15を通って延在して、ユニットセル10cの電極18に穴を開け、ここで、その電極は、埋込電極であるので、
図1Bでかくれ線で示している。導波路/通路23は、基板15、埋込電極18及び表面コーティング11を通る貫通孔を生成するために、準備されたOE-DμFネットワークに、必要な直径の貫通孔を穿孔することによって、かつユニットセル10c上に保持された染色済み水性液滴によって案内されることによって、設けられる。導波路センサは、適切にパターン化された上面を有する光ファイバ導波路の端部など、貫通孔を通して挿入することができる。
【0044】
[0058]代替の実施形態では、接地電極に穴を開け、カバー蓋16を通る導波管/通路23を設ける。更に、感受性領域20は、ユニットセルの側壁において、例えば、OE-DμFネットワークとアナログマイクロ流体ネットワーク(例えば、毛細管駆動又は空気圧駆動)との間の界面にあってもよい。
【0045】
[0059]
図1A、
図1Bは、2つの液滴、つまり、OE液滴25及び被覆液30を有する所与の状態のOE-DμFネットワークの3つのユニットセルセグメントを示している。OE液滴25のペイロード26を、被覆液30と略同じ体積で示しているが、これは必要ではなく、特に、例えば、感受性領域又は本明細書で以下に説明するようなサブ液滴の偶発的な露出のリスクを低減するために、被覆液30が「オーバーサイズ」であることが有効であり得る。代替的に、隣接する電極が活性化されるときのその変位を制限するために、非OE液滴は、ユニットセル10cよりも極めて小さくてもよい。OE液滴25及び被覆液30を、それぞれユニットセル10a、c内に静止状態(非活性化電極)で示している。ユニットセル10aは、オイルシェル28によって囲まれたペイロード26でOE液滴25を保持する。ペイロード26と同じDμF液滴組成を有し得る、又はペイロード26と混和性であり、オイルシェル28と混和性でなく、感受性領域20のセンサと適合性である(感受性領域20に関連する特定のセンサがある場合)別の組成を有し得る被覆液30を、ユニットセル10cは保持する。好ましくは、ペイロード26と被覆液30との任意の混合物もDμF液滴組成物であり、これにより、これらの混和性流体の融合物から分割された任意の液滴もDμF動作に供することができる。ユニットセル10の電極18がすべてオフである場合、両方の液滴は弛緩した形又は「静止」状態にある。結果として、オイル-空気-テフロン界面の接触角(すなわち、一方の側の空気と他方の側のテフロンとによって境界付けされたオイルの限界間の角度)は、30~50°、又は約40°であり得、ペイロード-オイル-テフロン界面は、100~180°、又は約160~170°であり得、ペイロード-空気-テフロン界面は、100~140°、又は約120°であり得る。静的値(平衡)は、容易に識別されるが、動的接触角は変化し得る。
【0046】
[0060]本発明のいくつかの態様によれば、境界22は、表面コーティング11によってカバーされておらず、好ましくは、OE液滴(すなわち、ペイロードが水性である場合、親水性であり得る)に対して、高い表面親和性を有する。通常、被覆液30を境界22に固定することによって、それを横切る液滴の迅速で容易な動きを確保するよりも多くの利点が得られる。例えば、境界22が90°未満、又は80°未満、又は60°未満のペイロードとの接触角(例えば、いくつかの表面では20°又は10°もの低い接触角が示されている)を有する場合、ペイロード水性体積30は、典型的なDμF動作条件下で、境界22から引き離されることに抵抗する。特に、電極の動作電圧において、被覆液30(及びペイロードと被覆液30の任意の混合物)が境界から分離するよりも分裂する可能性が高いほどに、接触角が十分に低い場合、それは固定されていると言われる。このことを達成するために、境界22の接触角は、電極が活性化された状態のユニットセルの残りの部分の接触角よりも低いことが好ましく、電極がオフの状態の水性体積30よりも少なくとも10°低いことが好ましい。
【0047】
[0061]OE-DμFネットワークを示すこととは別に、
図1A、
図1Bは、本発明のプロセスにおける第1の段階を示す役割を果たしている。それぞれ、
図1~
図7は、ユニットセル10aからOE液滴25を移動させて、ユニットセル10c内の被覆液30と融合させる際の7つの段階を概略的に示している。段階1から、被覆液30は境界22を封止し、感受性領域20をカバーして保護する。この封止は、7段階にわたって維持される。
【0048】
[0062]したがって、感受性領域20に水性液滴を送達するための方法を提供し、それは、感受性領域20を汚染することを回避する。本プロセスは、通常、当技術分野で知られているように、センサ又はサンプル処理ユニットセルにサンプルを供給するために複数回繰り返される。繰返しは、サンプルをペイロード26のストリームとして、感受性領域20に送達してもよい。ペイロード26がユニットセル10cで消費されない又はOE-DμFネットワークから除去されない限り、融合液のサイズを制限し、かつサンプルの希釈を回避するために、融合液滴からの断続的な液滴除去が必要とされ得る。サンプルがユニットセル10cで消費される又はOE-DμFネットワークから除去される場合、オイル処理/除去システムが、複数のOE液滴から蓄積されて厚くなったオイルシェルを減少させるために必要とされ得る。
【0049】
[0063]
図1~
図7は、OE-液滴25を、ユニットセル10aからOE-DμFネットワークを介してユニットセル10cに送達し、OE液滴が、オイルを含まない被覆液30と融合し、混和性ペイロード及び被覆液の融合体積を生成することを示し、融合体積は、境界22の直前までオイル28によって囲まれている。被覆液30は、非OEリザーバから、又はオイル封入前のリザーバから、又はユニットセル10cへの通路23を介して、又は当技術分野で知られている他の分配方法からのDμF動作によって、ユニットセル10cに供給されてもよい。
【0050】
[0064]
図2A、
図2Bは、ユニットセル10b、cの電極18が活性化された後、段階1のOE-DμFネットワークに起こる段階2を示している。当技術分野で知られているように、液滴が電界効果アクチュエータの影響を受ける底部基板では、水性相の接触角が減少する。この効果は非常に劇的であり得、オイル-空気-テフロン界面に顕著な影響を与えることなく、90~50°、又は約70°の接触角でペイロード-空気-テフロン界面及びペイロード-オイル-テフロン界面が活性化される。図面の視覚的混乱を低減するために、残りの図には、ユニットセル体積10bのみが示されており、参照番号によって識別される特徴は少ない。ユニットセル10bの電極18の電界効果とオーバーラップする体積26が接触角を変化させ、電界効果と接触する多くの水性液滴を引き込むにつれて、OE液滴は、ユニットセル10b内に変位し始める。これは、
図2Aに示すように、最初に底縁部に沿って発生する傾向があり、(
図2Bに示すように)電極の形状のためにユニットセル10bに非対称に吸収され得る。同時に、ユニットセル10c内の被覆液30の一部をユニットセル10b内に引き込んでもよい。ユニットセル10aが活性化されていないので、ユニットセル10cとは異なり、被覆液30の変位は、液体体積26の変位よりも小さい。また、OE-DμFネットワークの動作電圧は、OE液滴変位に関する閾値を上回る一方で、(非OE)被覆液30を変位させるための閾値を下回るように選択されてもよく、この場合、被覆液30は、方法全体にわたって略静止したままである。
【0051】
[0065]変位は、OE液滴25が被覆液30と接触するまで、電極18が作動している間継続する。被覆液30とOE液滴25との接触の瞬間から、オイルシェル28は、両方の対向する表面から被覆液及びペイロードによって反発され、薄くなり、最終的には、段階3に示すように、ペイロード及び被覆液26、30が接触、接合したときにオイルシェル28が回収される。電極18が作動している間、変位は継続し、液体体積30及びOE液滴25がユニットセル10b上で接触すると、ペイロード-オイル-空気接触曲線31が画定される。ペイロード-オイル-空気接触曲線31は、オイルシェルがどこで終わるかを示しているが、これは、液滴ペイロード26及び水性体積30がこの曲線の下で統合されていないことを示唆するものではない。液滴及び水性体積26、30は融合しており、表面エネルギーが低下した構成への動的変形を継続している。穿孔されたオイルシェル28は、段階3~5に示したペイロード-オイル-空気接触曲線31の進行によって示すように、接合体積26/30にわたって急速に広がり、段階6によって、オイルシェルは融合した水性液体を封入する。
【0052】
[0066]なお、被覆液30の動きは、OE液滴25の動きよりも遅く、液滴液26/30の接合は、大部分がペイロード26のユニットセル10aから10bへの変位に伴って進行する。接触が段階3で開始すると、前進するペイロード26の先端部に接触して、段階3から段階4まで厚くなるように進行する。側面図でのみ示されている段階5によって、液滴26/30と上面14との間の空間は、ほぼ充填されている。段階6によって、空間が充填されるが、小さな部分がオイルシェル28のポケットであり、これも同様に段階7によって変位される。段階7において、融合液滴が形成されるが、依然としてその最低表面エネルギー構成まで変形しており、これは周囲のオイル封入体を有する円筒形ディスクである。セル10bがセル10cの前にオフにされる場合、液滴はセル10cに向かって更に移動することになる。融合液滴が形成されると、それは、接触角によって規定される周囲の自由表面を有するディスク形状に変形し続けることになる。
【0053】
[0067]液滴の変形を説明してきたが、いくつかの競合する進行速度は正確には知られておらず、水性融合物の凝集に対する曲線31の進行速度は、特定のオイル封入、サイズ、動作電圧、又は温度の不変にあるとは推定されないことが理解されよう。融合液滴の液体26/30が、その最終である略円筒形のディスク形状に進行する速度は、液体26/30を超えるオイルコーティングの進行に対して概略的に示している。
【0054】
[0068]この方法に関する課題は、制御の課題である。電極に印加される動作電圧を選択することによって、液滴の動き及び他の動作を高速又は低速にすることができる。(少なくとも感受性領域での最終的な融合動作のために)遅い液滴運動を選択することによって、上述したように、プロセス全体を通して被覆液30を不動にすることができる。別の代替案は、境界22(開口部でない場合、場合によっては感受性領域20も含む)における液滴に対して、高い親和性を有する異なる表面コーティング11を提供することである。境界22/コーティング11/オイル28の接触角が小さいと、ユニットセル10cが境界22から被覆液30を変位させることができない場合がある。境界22は、高い表面親和性(低い接触角)で処理された上面14及び底面12の唯一の部分であってもよい。好適には、境界22が、境界22を出る前に液体が分離することを確保するために十分低い接触角を有する場合、感受性領域がいかなるDμF動作によっても露出されないことが本質的に保証される。したがって、本発明の一実施形態は、ユニットセル10の周囲を画定する1つ又は複数の壁内の感受性領域20の周りに境界22を有するOE-DμFネットワークにおいて提供され、境界20は、境界の外側の壁の任意の他の部分よりも流体に対して低い接触角を有するように表面処理される。
【0055】
[0069]
図8~
図13は、
図1の実施形態の変形例を使用して、段階1によるオイル汚染に感受性を有するOE-DμFネットワークの領域に保護被覆液を提供する様々な技術を概略的に示している。
【0056】
[0070]
図8は、
図1の実施形態の第1の変形例を示し、6つのユニットセルを断面側面図で示している。被覆液30が感受性領域20をカバーし、かつ境界22が感受性領域20の周りに連続的に延在するユニットセル10cを示している。
【0057】
[0071]この変形例では、感受性領域20は、マイクロ流体チャネル23の口部であり、マイクロ流体チャネル23の口部は、電極及び基板15を貫通する貫通孔又はビアとして特徴付けられ、基板15の下にある平面マイクロ流体構造と連通する。基板15は、環状オレフィン又は熱可塑性エラストマなどのプラスチックから形成されることが有効であり得る。
図8は、対応する電極18がオフであるときの低表面エネルギー(静止又は緩和)構成の被覆液30を示し、対応する電極18がオンであるときの静止状態の被覆液30(30’)も示している。なお、被覆液30は、高表面張力状態であっても、感受性領域20及び境界22をカバーするが、典型的なOE液滴よりも小さく、OE-DμFネットワークによって移動できないサブ液滴である。被覆液30は、チャネル23を介して供給され、非OE液滴がOE-DμFネットワークを通過する必要性を回避することができる。
【0058】
[0072]使用中に、本方法によれば、OE液滴25は、ユニットセル10cに連続的に移動され、そこで被覆液30と融合し、境界22に接触又は浸透することなく、したがって感受性領域20を汚染することなく、融合液滴の周り全体をオイルシェルが摺動することを可能にする。この時点で、融合液滴は、OE液滴25のペイロード26の体積だけ大きくなる。融合液滴の一部は、チャネル23を通ってOE-DμFネットワークから引き込まれ得る。サンプルは、逆プロセスによって、ユニットセル10c内のOE液滴25にもペイロードとして注入できることが理解されよう。
【0059】
[0073]一連のOE液滴25が連続的に供給され、それらのペイロード26が抽出された場合、ユニットセル10cに常駐するOE液滴25のオイルシェルが過度に厚くなる。これは、各分割は等しいオイルシェル厚さを有するが、これによりチャネル23を通って送達されるサンプルが少なくなるため、常駐するOE液滴25を分割することによって対処することができる、又は、これは、境界22を囲むゾーンから、例えば、オイルシェルが過度の厚さである場合にオイルシェルが占めるであろうユニットセル10cから距離を置いたカバー蓋16上のオイルを除去する特徴を提供することによって対処することができる。マイクロ流体特徴は、マイクロ流体チャネル及びリザーバ、あるいは多孔質マット又はウィッキング体であってもよい。これらの特徴は、ペイロードの除去を制限するために、好ましくはオイル選択性である。
【0060】
[0074]
図9A~
図9Gは、オイルシェルが感受性領域20を汚染することなく、OE液滴のペイロード26aを感受性領域20に送達するプロセスの各段階において、2つのリザーバ32a、bを備えるOE-DμFネットワークの部分図である。各図は、底部15にあるOE-DμFネットワークの関連部分のすべてを示す
図9Aを除いて、アクションが行われているOE-DμFネットワークのそれぞれの部分に絞られている。
図9A~
図9Gは、対応して番号付けされた段階1~7を示している。
【0061】
[0075]最初の段階は、リザーバ32aが非OEリザーバであり、液滴よりも大きい、分割されていない体積内に被覆液を含むことを示している。リザーバ32bは、オイルシェル28を有する水性体積30を含むOEリザーバである。リザーバ32の下に部分的に電極が示されており、これらの水性体積30の液滴をユニットセル10に分配することができる(両方とも偶然に共通のユニットセルに分配されるが、これは必須ではない)。段階2において、被覆液30の非OE液滴がリザーバ32aから分配され、感受性領域20を有するユニットセル10に送達される。段階3において、リザーバ32bは、ペイロード26aを有するOE液滴を分配し、OE-DμFネットワークをおおよそ
図1の段階1にする。段階4は、
図1の液滴の最終状態であるペイロード26aと液滴30との混合物を含むペイロード26bを有する、安定した形態に達した後の融合されたOE液滴を示している。ペイロード26aを感受性領域20に送達した後、ペイロード26bを有するOE液滴は、ペイロード26c、dを有する2つのOE液滴に分割され得る。段階5、6は、ペイロード26bの分割を示している。ペイロード26aと被覆液30とは混和性であるため、ペイロード26c、dの各々は等しい尤度組成である。ペイロード26cは、ユニットセル10に常駐し、別のOE液滴(ペイロード26eを有する)が送達される場合でも感受性領域20を保護し、このことを、段階7で感受性領域20に接近して示している。
【0062】
[0076]
図10A~
図10Cは、オイルシェル28が感受性領域20を汚染することなく、OE液滴25のペイロード26aを感受性領域20に送達するプロセスの各段階(1~3)において、2つのリザーバ32c、dを備えるOE-DμFネットワークの部分図である。段階1において、被覆液30は、ハイブリッドリザーバ32c、d内に常駐し、オイル液滴28から分離された状態に保たれる。したがって、段階2において、液滴がハイブリッドリザーバ32c、dから分配され、感受性領域20を有するユニットセル1に送達されたとき、液滴は封入されない。それぞれの感受性領域20を有する(図にない)OE-DμFネットワーク内にいくつかのユニットセル10がある場合、プロセスはそれぞれについて繰り返される。リザーバ32c、dから他のそのようなユニットセルへの唯一の経路が、図示したユニットセル10を通過する場合、液滴は融合し、図示したユニットセル10を通過して分割される。段階2では、被覆液30はまた、リザーバ32d内に移動し、その中のオイル28と接触することを示している。被覆液30によって変位されたオイルは、液滴上にオイルを引き込み、被覆液30上にオイルシェル28を形成する。したがって、段階3によって、液滴を分配するプロセスは、OE液滴25を生成し、プロセスを
図1の段階1にする。
【0063】
[0077]
図11A~
図11Dは、OE液滴のオイルシェル28からの汚染リスクなしに、OE液滴のペイロード26aを感受性領域20に送達するプロセスの各段階(1~4)において、異なって形成されたユニットセル10dを有するOE-DμFネットワークの部分図である。各図は、OE-DμFネットワークの関連部分のすべてを等角図で示す
図11Aを除いて、アクションが行われているOE-DμFネットワークのそれぞれの部分に絞られる。
【0064】
[0078]
図11Aは、OE-DμFネットワークの2つの完全な隣接するユニットセル10を示している。ユニットセル10dは、OE-DμFネットワークの縁部において画定され、ユニットセル10dは、壁36に沿って、制御されたアナログネットワークに境界を設定する。その境界設定は、壁36を通って延在するマイクロ流体チャネル23を介して行われ、これは、例えば、制御された弁を有する毛細管ベースであっても、電気浸透圧的に制御された、又は空気圧的に制御されたものであってもよい。マイクロ流体チャネル23の口部は感受性領域20である。オイル汚染がマイクロ流体チャネル23に混入することはない。マイクロ流体チャネル23は、任意選択で、センサ表面38、又はオイル残渣に感受性を有する流体処理領域38を含んでもよい(
図11B、
図11Dに示す)。したがって、境界22は、一方がOE-DμF表面の底部15上にあり、他方が壁36上にある、2つのセグメントから構成される。チャネル23を電極10dの中心に示しているが、これは必須ではなく、境界22全体がユニットセル10dの体積内にあれば、この目的には十分である。
図11Aは、ユニットセル10dに隣接するユニットセル10e内の被覆流体30の液滴を示している。等角図では、底部接触縁部30a及び頂部接触縁部30bをかくれ線で示し、これらの接触縁部間の弓形の曲線を見ることができる。
図11Aに見られる最後の特徴の1つは、多くのOE液滴が連続して供給される場合のオイル蓄積の問題に受動的に対処するため、壁36上に戦略的に配置されてオイルを常駐する液滴から毛管作用で運ぶオイルウィック39である。
図11の残りは、平面図を示している。
【0065】
[0079]状態2において、被覆液30は、ユニットセル10dに移動し、境界22を封止する。状態3によって、ペイロード26aを有するOE液滴がユニットセル10eに接近する。被覆液30が、OE液滴25と融合する前にチャネル23内に部分的に吸収されるか否かにかかわらず、状態4によって、融合された被覆液/ペイロード30/26aの周りにオイル封入28が設けられ、可視チャネル23が充填される。
【0066】
[0080]
図12A、
図12Bは、マイクロ流体チャネル23を通って被覆液30を逆流させることによって、
図11の状態2を達成する代替手段を概略的に示している。したがって、状態4は、OE-DμFネットワークを通って非OE液滴を供給する必要なしに、OE液滴をペイロード26aと融合することによって達成することができる。
【0067】
[0081]
図13A~
図13Cは、本発明で使用され得るオイルウィッキング構造体39の3つの実施形態を概略的に示している。
図13Aでは、ウィッキング材料39のブロックが、2つの境界ユニットセル10d間に配置され、両方から過剰なオイルを吸収する。常駐するOE液滴におけるオイルシェル28が明らかに厚くなる前に、数十のペイロード26を送達する可能性があり、効率的な動作を確保するために必要なのは少量のオイルシェル28の除去だけであり得ることが理解されよう。
図13Bは、常駐するOE液滴からオイルを抽出するための複数のオイル選択ミクロンスケール又は小さいチャネル39を示している。単一のマイクロ流体チップは、OE-DμFネットワークからのオイル流体及びペイロード流体の両方のための並列で別個の処理ネットワークを有し得る。チップはまた、反対方向に動作することによってOE-DμFネットワークをOE液滴と調和させ、リザーバをロードする必要性を回避し得る。
図13Cは、オイルチャネル39が、例えば自己ウィッキングプロセスによって、オイルを、
図10のリザーバ32dなどのオイルリザーバに導き得、それによってオイルを、OE-DμFネットワーク上でリサイクルできることを示している。
【0068】
[0082]このように本発明の方法及び装置の例を説明してきたことで、当業者は、ここに至り、OE-DμF処理を可能にしつつ、DμFネットワークの感受性領域をオイル縞及び汚染から保護することができる。実施形態は、本明細書に例示的に記載されており、特許請求される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者に明らかな前述の実施形態の変形形態は、以下の特許請求の範囲に包含されることが本発明者によって意図される。