IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-蓄電システム 図1
  • 特許-蓄電システム 図2
  • 特許-蓄電システム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】蓄電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20241105BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241105BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241105BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
H02J7/02 B
H02J7/00 302A
H02J7/00 A
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022004701
(22)【出願日】2022-01-14
(65)【公開番号】P2023103904
(43)【公開日】2023-07-27
【審査請求日】2022-09-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 寛人
(72)【発明者】
【氏名】小林 徹大
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-169609(JP,A)
【文献】特開2006-129588(JP,A)
【文献】特開2007-306771(JP,A)
【文献】特開2005-156351(JP,A)
【文献】特開2017-203659(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0059662(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H02J 7/00
H01M 10/48
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、
前記バッテリの電圧値を検出する電圧センサと、
前記バッテリの電流値を検出する電流センサと、
所定の充電電力上限値を上回る充電電力が前記バッテリに供給されないように、前記バッテリの充電を制御する制御装置と、
を備える蓄電システムであって、
前記制御装置は、
前記バッテリの開放電圧の推定値である開放電圧推定値と、前記バッテリの内部抵抗の推定値である内部抵抗推定値とに基づき、前記バッテリが上限電圧値に達する第1充電電力をフィードフォワード的な演算値として導出する第1導出部と、
前記電圧センサによって検出された現在の電圧値と、前記電流センサによって検出された現在の電流値と、前記バッテリの内部抵抗の推定値である内部抵抗推定値とに基づき、前記バッテリが前記上限電圧値に達する第2充電電力をフィードバック的な演算値として導出する第2導出部と、
前記第1導出部によって導出された前記第1充電電力と、前記第2導出部によって導出された前記第2充電電力とに基づき、前記充電電力上限値を設定する設定部と、を備え、
前記設定部は、現在の前記電圧値に応じて、前記第1充電電力を前記充電電力上限値として設定する場合と、前記第2充電電力を前記充電電力上限値として設定する場合と、前記第1充電電力と前記第2充電電力とをそれぞれ所定の比率で足し合わせることにより導出される前記充電電力上限値を設定する場合と、がある、蓄電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電システムであって、
前記設定部は、
現在の前記電圧値が、前記開放電圧推定値から、当該開放電圧推定値よりも大きい合成開始電圧までの第1範囲に含まれる場合には、前記第1充電電力を前記充電電力上限値として設定し、
現在の前記電圧値が、前記合成開始電圧から、当該合成開始電圧よりも大きい合成完了電圧までの第2範囲に含まれる場合には、前記第1充電電力と前記第2充電電力とをそれぞれ所定の比率で足し合わせることにより導出される前記充電電力上限値を設定し、
現在の前記電圧値が、前記合成完了電圧から、当該合成完了電圧よりも大きい前記上限電圧値までの第3範囲に含まれる場合には、前記第2充電電力を前記充電電力上限値として設定する、
蓄電システム。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄電システムであって、
前記合成開始電圧および前記合成完了電圧は、前記開放電圧推定値と前記上限電圧値との差分に応じて変動する、
蓄電システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の蓄電システムであって、
前記第1充電電力と前記第2充電電力とをそれぞれ所定の比率で足し合わせることにより導出される前記充電電力上限値は、前記第1充電電力に第1係数をかけた値と、前記第2充電電力に第2係数をかけた値との和であり、
前記第1係数および前記第2係数は、現在の前記電圧値に応じて変動する、
蓄電システム。
【請求項5】
請求項4に記載の蓄電システムであって、
前記第1係数は、現在の前記電圧値が前記上限電圧値に近づく程、小さくなり、
前記第2係数は、現在の前記電圧値が前記上限電圧値に近づく程、大きくなる、
蓄電システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の蓄電システムであって、
前記第1導出部は、第1内部抵抗推定値を前記内部抵抗推定値として用い、
前記第2導出部は、前記第1内部抵抗推定値とは異なる第2内部抵抗推定値を前記内部抵抗推定値として用いる、
蓄電システム。
【請求項7】
バッテリと、
前記バッテリの電圧値を検出する電圧センサと、
前記バッテリの電流値を検出する電流センサと、
所定の放電電力上限値を上回る放電電力が前記バッテリから出力されないように、前記バッテリの放電を制御する制御装置と、
を備える蓄電システムであって、
前記制御装置は、
前記バッテリの開放電圧の推定値である開放電圧推定値と、前記バッテリの内部抵抗の推定値である内部抵抗推定値とに基づき、前記バッテリが下限電圧値に達する第1放電電力をフィードフォワード的な演算値として導出する第1導出部と、
前記電圧センサによって検出された現在の電圧値と、前記電流センサによって検出された現在の電流値と、前記バッテリの内部抵抗の推定値である内部抵抗推定値とに基づき、前記バッテリが前記下限電圧値に達する第2放電電力をフィードバック的な演算値として導出する第2導出部と、
前記第1導出部によって導出された前記第1放電電力と、前記第2導出部によって導出された前記第2放電電力とに基づき、前記放電電力上限値を設定する設定部と、を備え、
前記設定部は、現在の前記電圧値に応じて、前記第1放電電力を前記放電電力上限値として設定する場合と、前記第2放電電力を前記放電電力上限値として設定する場合と、前記第1放電電力と前記第2放電電力とをそれぞれ所定の比率で足し合わせることにより導出される前記放電電力上限値を設定する場合と、がある、蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の気候変動に対する具体的な対策として、低炭素社会または脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化している。自動車などの車両においても、CO排出量の削減が強く要求され、駆動源の電動化が急速に進んでいる。具体的には、電気自動車(Electrical Vehicle)あるいはハイブリッド電気自動車(Hybrid Electrical Vehicle)といった、駆動源としての電動機と、この電動機に電力を供給可能な二次電池としてのバッテリと、を備える車両(以下「電動車両」ともいう)の開発が進められている。
【0003】
バッテリを含む蓄電システムにおいては、バッテリの性能維持や信頼性確保のため、バッテリを充電する充電電力やバッテリから放電される放電電力に制限をかけることがある。例えば、下記特許文献1には、二次電池を流れる充放電電流、充放電電圧に基づいて二次電池の電流-電圧特性の関数を決定し、二次電池の過放電防止のための所定の下限電圧Vmin、および/または過充電防止のための所定の上限電圧Vmaxと、上記の関数との交点から、放電制限電流Imaxおよび/または充電制限電流Iminを求め、該放電制限電流Imax以上の電流および/または充電制限電流Imin以下の電流を二次電池に通電しないようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-129588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術にあっては、バッテリを充電する充電電力またはバッテリから放電される放電電力を適切に制御する観点から、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、バッテリを充電する充電電力またはバッテリから放電される放電電力を適切に制御することを可能にする蓄電システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明は、
バッテリと、
前記バッテリの電圧値を検出する電圧センサと、
前記バッテリの電流値を検出する電流センサと、
所定の充電電力上限値を上回る充電電力が前記バッテリに供給されないように、前記バッテリの充電を制御する制御装置と、
を備える蓄電システムであって、
前記制御装置は、
前記バッテリの開放電圧の推定値である開放電圧推定値と、前記バッテリの内部抵抗の推定値である内部抵抗推定値とに基づき、前記バッテリが上限電圧値に達する第1充電電力をフィードフォワード的な演算値として導出する第1導出部と、
前記電圧センサによって検出された現在の電圧値と、前記電流センサによって検出された現在の電流値と、前記バッテリの内部抵抗の推定値である内部抵抗推定値とに基づき、前記バッテリが前記上限電圧値に達する第2充電電力をフィードバック的な演算値として導出する第2導出部と、
前記第1導出部によって導出された前記第1充電電力と、前記第2導出部によって導出された前記第2充電電力とに基づき、前記充電電力上限値を設定する設定部と、を備え、
前記設定部は、現在の前記電圧値に応じて、前記第1充電電力を前記充電電力上限値として設定する場合と、前記第2充電電力を前記充電電力上限値として設定する場合と、前記第1充電電力と前記第2充電電力とをそれぞれ所定の比率で足し合わせることにより導出される前記充電電力上限値を設定する場合と、がある、蓄電システムである。
【0008】
第2発明は、
バッテリと、
前記バッテリの電圧値を検出する電圧センサと、
前記バッテリの電流値を検出する電流センサと、
所定の放電電力上限値を上回る放電電力が前記バッテリから出力されないように、前記バッテリの放電を制御する制御装置と、
を備える蓄電システムであって、
前記制御装置は、
前記バッテリの開放電圧の推定値である開放電圧推定値と、前記バッテリの内部抵抗の推定値である内部抵抗推定値とに基づき、前記バッテリが下限電圧値に達する第1放電電力をフィードフォワード的な演算値として導出する第1導出部と、
前記電圧センサによって検出された現在の電圧値と、前記電流センサによって検出された現在の電流値と、前記バッテリの内部抵抗の推定値である内部抵抗推定値とに基づき、前記バッテリが前記下限電圧値に達する第2放電電力をフィードバック的な演算値として導出する第2導出部と、
前記第1導出部によって導出された前記第1放電電力と、前記第2導出部によって導出された前記第2放電電力とに基づき、前記放電電力上限値を設定する設定部と、を備え、
前記設定部は、現在の前記電圧値に応じて、前記第1放電電力を前記放電電力上限値として設定する場合と、前記第2放電電力を前記放電電力上限値として設定する場合と、前記第1放電電力と前記第2放電電力とをそれぞれ所定の比率で足し合わせることにより導出される前記放電電力上限値を設定する場合と、がある、蓄電システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バッテリを充電する充電電力またはバッテリから放電される放電電力を適切に制御することを可能にする蓄電システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の蓄電システムの一実施形態である車両用蓄電システム50を搭載した車両10の概略構成を示す図である。
図2】車両用蓄電システム50の制御装置20による具体的なバッテリBATの充電制御例を示す図である。
図3】車両用蓄電システム50の制御装置20による具体的なバッテリBATの放電制御例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の蓄電システムの一実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、本発明の蓄電システムを、自動車などの車両に搭載される車両用蓄電システムとした場合の例について説明するが、これに限定されるものではない。本発明の蓄電システムは、以下に説明する車両用蓄電システム以外にも適用可能である。また、以下では、同一または類似の要素には同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略または簡略化することがある。
【0012】
[車両]
まず、本実施形態の車両用蓄電システムを搭載する車両について説明する。図1に示すように、本実施形態の車両用蓄電システム50を搭載する車両10は、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle)であり、エンジンENGと、第1モータジェネレータMG1と、第2モータジェネレータMG2と、バッテリBATと、クラッチCLと、電力変換装置11と、各種センサ12と、制御装置20と、を含んで構成される。なお、図1において、太い実線は機械連結を示し、二重点線は電気配線を示し、細い実線矢印は制御信号または検出信号の送受を示す。
【0013】
エンジンENGは、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、供給された燃料を燃焼させることで発生した動力を出力する。エンジンENGは、第2モータジェネレータMG2に連結されるとともに、クラッチCLを介して車両10の駆動輪DWに連結されている。エンジンENGが出力する動力(以下「エンジンENGの出力」ともいう)は、クラッチCLが切断状態である場合には第2モータジェネレータMG2に伝達され、クラッチCLが接続状態(締結状態)である場合には第2モータジェネレータMG2および駆動輪DWに伝達される。なお、第2モータジェネレータMG2およびクラッチCLについては後述する。
【0014】
第1モータジェネレータMG1は、主に車両10の駆動源として用いられるモータジェネレータ(いわゆる駆動用モータ)であり、例えば交流モータである。第1モータジェネレータMG1は、電力変換装置11を介して、バッテリBATおよび第2モータジェネレータMG2と電気的に接続されている。第1モータジェネレータMG1には、バッテリBATおよび第2モータジェネレータMG2の少なくとも一方の電力が供給され得る。第1モータジェネレータMG1は、電力が供給されることによって電動機として動作し、車両10が走行するための動力を出力する。また、第1モータジェネレータMG1は駆動輪DWと連結されており、第1モータジェネレータMG1が出力する動力(以下「第1モータジェネレータMG1の出力」ともいう)は、駆動輪DWに伝達される。車両10は、エンジンENGの出力および第1モータジェネレータMG1の出力の少なくとも一方が駆動輪DWに伝達(すなわち供給)されることで走行する。
【0015】
また、第1モータジェネレータMG1は、車両10の制動時(エンジンENGあるいは駆動輪DWによって回転させられる際)に発電機として回生動作し、発電(いわゆる回生発電)を行う。第1モータジェネレータMG1が回生動作することによって発生した電力(以下「回生電力」ともいう)は、例えば、電力変換装置11を介してバッテリBATに供給される。これにより、回生電力によってバッテリBATを充電できる。
【0016】
また、回生電力は、バッテリBATに供給されず、電力変換装置11を介して第2モータジェネレータMG2に供給されることもある。回生電力を第2モータジェネレータMG2に供給することで、バッテリBATの充電を行わずに回生電力を消費する「廃電」を行うことができる。なお、廃電に際して、第2モータジェネレータMG2に供給された回生電力は第2モータジェネレータMG2の駆動に用いられ、これにより発生した動力はエンジンENGへ入力されることでエンジンENGの機械的摩擦損失などによって消費される。
【0017】
第2モータジェネレータMG2は、主に発電機として用いられるモータジェネレータ(いわゆる発電用モータ)であり、例えば交流モータである。第2モータジェネレータMG2は、エンジンENGの動力によって駆動され、発電を行う。第2モータジェネレータMG2が発電した電力は、電力変換装置11を介してバッテリBATおよび第1モータジェネレータMG1の少なくとも一方に供給される。第2モータジェネレータMG2が発電した電力をバッテリBATに供給することで、該電力によってバッテリBATを充電できる。また、第2モータジェネレータMG2が発電した電力を第1モータジェネレータMG1に供給することで、該電力によって第1モータジェネレータMG1を駆動できる。
【0018】
電力変換装置11は、入力された電力を変換し、変換した電力を出力する装置(いわゆるパワーコントロールユニット。「PCU」ともいう)であり、第1モータジェネレータMG1、第2モータジェネレータMG2、およびバッテリBATと接続されている。例えば、電力変換装置11は、第1インバータ111と、第2インバータ112と、電圧制御装置110と、を含んで構成される。第1インバータ111、第2インバータ112、および電圧制御装置110は、それぞれ電気的に接続されている。
【0019】
電圧制御装置110は、入力された電圧を変換し、変換した電圧を出力する。電圧制御装置110としては、DC/DCコンバータなどを用いることができる。電圧制御装置110は、例えば、バッテリBATの電力を第1モータジェネレータMG1に供給する場合には、バッテリBATの出力電圧を昇圧して第1インバータ111へ出力する。また、電圧制御装置110は、例えば、第1モータジェネレータMG1によって回生発電が行われた場合には、第1インバータ111を介して受け付けた第1モータジェネレータMG1の出力電圧を降圧してバッテリBATへ出力する。また、電圧制御装置110は、第2モータジェネレータMG2によって発電が行われた場合には、第2インバータ112を介して受け付けた第2モータジェネレータMG2の出力電圧を降圧してバッテリBATへ出力する。
【0020】
第1インバータ111は、バッテリBATの電力を第1モータジェネレータMG1に供給する場合には、電圧制御装置110を介して受け付けたバッテリBATの電力(直流)を交流に変換して第1モータジェネレータMG1へ出力する。また、第1インバータ111は、第1モータジェネレータMG1によって回生発電が行われた場合には、第1モータジェネレータMG1から受け付けた電力(交流)を直流に変換して電圧制御装置110へ出力する。また、第1インバータ111は、第1モータジェネレータMG1の回生電力を廃電する場合には、第1モータジェネレータMG1から受け付けた電力(交流)を直流に変換して第2インバータ112へ出力する。
【0021】
第2インバータ112は、第2モータジェネレータMG2によって発電が行われた場合には、第2モータジェネレータMG2から受け付けた電力(交流)を直流に変換して電圧制御装置110へ出力する。また、第2インバータ112は、第1モータジェネレータMG1の回生電力を廃電する場合には、第1インバータ111を介して受け付けた第1モータジェネレータMG1の回生電力(直流)を交流に変換して第2モータジェネレータMG2へ出力する。
【0022】
バッテリBATは、充放電可能な二次電池であり、直列あるいは直並列に接続された複数の蓄電セルを有している。バッテリBATは、例えば100~400[V]といった高電圧を端子電圧として出力可能に構成されている。バッテリBATの蓄電セルとしては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などを用いることができる。
【0023】
クラッチCLは、エンジンENGから駆動輪DWまでの動力伝達経路を接続(締結)する接続状態と、エンジンENGから駆動輪DWまでの動力伝達経路を切断(遮断)する切断状態と、をとり得る。エンジンENGの出力は、クラッチCLが接続状態である場合に駆動輪DWに伝達され、クラッチCLが切断状態である場合には駆動輪DWに伝達されない。
【0024】
各種センサ12は、例えば、車両10の走行速度(「車速」とも称される)を検出する車速センサ、車両10のアクセルペダルに対する操作量を検出するアクセルポジション(「AP」とも称される)センサ、車両10のブレーキペダルに対する操作量を検出するブレーキセンサ、バッテリBATに関する各種情報を検出するバッテリセンサなどを含んで構成される。
【0025】
バッテリセンサとしては、バッテリBATの電圧値Vを検出する電圧センサ12a、バッテリBATの電流値Iを検出する電流センサ12bなどが設けられる。電圧センサ12aは、バッテリBATの閉路電圧(CCV:Closed Circuit Voltage)を、バッテリBATの電圧値Vとして検出する。また、電流センサ12bは、バッテリBATの入出力電流の電流値を、バッテリBATの電流値Iとして検出する。なお、本実施形態では、バッテリBATの電流値Iは、バッテリBATから放電されるときに正の値をとり、バッテリBATが充電されるときに負の値をとるものとする。
【0026】
電圧センサ12aおよび電流センサ12bを含む各種センサ12による検出結果は、検出信号として制御装置20へ送信される。また、電圧センサ12aおよび電流センサ12bに加えて、例えば、バッテリBATの温度を検出する温度センサなども各種センサ12(例えばバッテリセンサ)として設けられていてもよい。
【0027】
制御装置20は、エンジンENG、クラッチCL、電力変換装置11、および各種センサ12と通信可能に設けられている。制御装置20は、エンジンENGの出力を制御したり、電力変換装置11を制御することで第1モータジェネレータMG1や第2モータジェネレータMG2の出力を制御したり、クラッチCLの状態を制御したりする。
【0028】
さらに、制御装置20は、バッテリBATの充放電を制御可能に構成される。例えば、制御装置20は、バッテリBATを充電する充電電力の上限値(後述する充電電力上限値TWIN_now)を設定し、バッテリBATの充電時には、この上限値を上回る充電電力がバッテリBATに供給されないように制御する。また、制御装置20は、バッテリBATから放電される放電電力の上限値(後述する放電電力上限値TWOUT_now)を設定し、バッテリBATからの放電時には、この上限値を上回る放電電力がバッテリBATから放電されないように制御する。なお、制御装置20は、例えば、電力変換装置11を制御することでバッテリBATの充電電力や放電電力を制御できる。制御装置20による具体的な充放電制御例については後述する。
【0029】
制御装置20は、例えば、車両10を制御するための各種演算を行うプロセッサ、車両10を制御するための各種情報(データやプログラム)を記憶する記憶媒体を有する記憶装置、制御装置20の内部と外部とのデータの入出力を制御する入出力装置などを備えるECU(Electronic Control Unit)によって実現することができる。なお、制御装置20は、1つのECUによって実現されてもよいし、複数のECUが協調動作することによって実現されてもよい。
【0030】
なお、本実施形態の車両用蓄電システム50は、前述したバッテリBATと、各種センサ12(例えば電圧センサ12aや電流センサ12b)と、制御装置20とによって構成される。
【0031】
[車両の走行モード]
次に、車両10の走行モードについて説明する。車両10は、走行モードとして、EV走行モードと、ハイブリッド走行モードと、エンジン走行モードと、をとり得る。そして、車両10は、これらの走行モードのうちのいずれかの走行モードによって走行する。車両10をいずれの走行モードで走行させるかは、制御装置20によって制御される。
【0032】
[EV走行モード]
EV走行モードは、バッテリBATの電力のみを第1モータジェネレータMG1に供給し、該電力に応じて第1モータジェネレータMG1が出力する動力によって車両10を走行させる走行モードである。
【0033】
具体的に説明すると、EV走行モードの場合、制御装置20は、クラッチCLを切断状態にする。また、EV走行モードの場合、制御装置20は、エンジンENGへの燃料の供給を停止して(いわゆる燃料カットを行って)、エンジンENGからの動力の出力を停止させる。このため、EV走行モードでは、第2モータジェネレータMG2による発電が行われないことになる。そして、EV走行モードの場合、制御装置20は、バッテリBATの電力のみを第1モータジェネレータMG1に供給するようにし、該電力に応じた動力を第1モータジェネレータMG1から出力させ、該動力によって車両10を走行させる。
【0034】
制御装置20は、第1モータジェネレータMG1にバッテリBATからの電力のみが供給され、該電力に応じて第1モータジェネレータMG1が出力する動力によって、車両10の走行に要求される駆動力(以下「要求駆動力」ともいう)を得られることを条件に、車両10をEV走行モードで走行させる。
【0035】
[ハイブリッド走行モード]
ハイブリッド走行モードは、少なくとも第2モータジェネレータMG2が発電した電力を第1モータジェネレータMG1に供給し、該電力に応じて第1モータジェネレータMG1が出力する動力を主として車両10を走行させる走行モードである。
【0036】
具体的に説明すると、ハイブリッド走行モードの場合、制御装置20は、クラッチCLを切断状態にする。また、ハイブリッド走行モードの場合、制御装置20は、エンジンENGへの燃料の供給を行って、エンジンENGから動力を出力させ、エンジンENGの動力によって第2モータジェネレータMG2を駆動する。これにより、ハイブリッド走行モードでは、第2モータジェネレータMG2による発電が行われる。ハイブリッド走行モードの場合、制御装置20は、クラッチCLにより動力伝達経路を切断状態として、第2モータジェネレータMG2が発電した電力を第1モータジェネレータMG1に供給し、該電力に応じた動力を第1モータジェネレータMG1から出力させ、該動力によって車両10を走行させる。
【0037】
第2モータジェネレータMG2から第1モータジェネレータMG1に供給される電力は、バッテリBATから第1モータジェネレータMG1に供給される電力よりも大きい。したがって、ハイブリッド走行モードでは、EV走行モードに比べて、第1モータジェネレータMG1の出力を大きくすることができ、車両10を走行させる駆動力(以下「車両10の出力」ともいう)として大きな駆動力を得ることができる。
【0038】
なお、ハイブリッド走行モードの場合、制御装置20は、必要に応じてバッテリBATの電力も第1モータジェネレータMG1に供給するようにしてもよい。すなわち、制御装置20は、ハイブリッド走行モードにおいて、第2モータジェネレータMG2およびバッテリBATの双方の電力を第1モータジェネレータMG1に供給するようにしてもよい。これにより、第2モータジェネレータMG2の電力のみを第1モータジェネレータMG1に供給する場合に比べて、第1モータジェネレータMG1に供給する電力を大きくすることができ、車両10の出力として一層と大きな駆動力を得ることができる。
【0039】
[エンジン走行モード]
エンジン走行モードは、エンジンENGが出力する動力を主として車両10を走行させる走行モードである。
【0040】
具体的に説明すると、エンジン走行モードの場合、制御装置20は、クラッチCLを接続状態にする。また、エンジン走行モードの場合、制御装置20は、エンジンENGへの燃料の供給を行って、エンジンENGから動力を出力させる。エンジン走行モードの場合、クラッチCLによって動力伝達経路が接続状態とされているので、エンジンENGの動力は、駆動輪DWに伝達されて駆動輪DWを駆動する。このように、エンジン走行モードの場合、制御装置20は、エンジンENGから動力を出力させ、該動力によって車両10を走行させる。
【0041】
また、エンジン走行モードの場合、制御装置20は、必要に応じてバッテリBATの電力を第1モータジェネレータMG1に供給するようにしてもよい。これにより、エンジン走行モードでは、バッテリBATの電力が供給されることによって第1モータジェネレータMG1が出力する動力も用いて車両10を走行させることができ、エンジンENGの動力のみによって車両10を走行させる場合に比べて、車両10の出力として一層と大きな駆動力を得ることができる。また、これにより、エンジンENGの動力のみによって車両10を走行させるようにした場合に比べて、エンジンENGの出力を抑制することができ、車両10の燃費向上を図ることができる。
【0042】
[制御装置の機能的構成]
次に、制御装置20の機能的構成について説明する。図1に示すように、制御装置20は、例えば、制御装置20の記憶装置に記憶されたプログラムをプロセッサが実行することによって実現される機能部として、第1導出部21と、第2導出部22と、設定部23とを含んで構成される。
【0043】
なお、例えば、制御装置20は、電圧センサ12aによって検出されるバッテリBATの電圧値Vと、電流センサ12bによって検出されるバッテリBATの電流値Iとのそれぞれを所定の間隔(例えば1[s]間隔)で取得する(すなわちサンプリングする)ものとする。そして、制御装置20は、直近に取得された電圧値Vを現在の電圧値Vである電圧値Vnowとして用いるとともに、直近に取得された電流値Iを現在の電流値Iである電流値Inowとして用いるものとする。
【0044】
また、制御装置20は、バッテリBATの開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)の推定値である開放電圧推定値VOCVと、現在のバッテリBATの内部抵抗の推定値である内部抵抗推定値Rnowとのそれぞれを取得可能に構成される。制御装置20は、開放電圧推定値VOCVおよび内部抵抗推定値Rnowを、これらを推定可能な他装置から取得してもよいし、自装置で推定することにより取得してもよい。
【0045】
また、開放電圧推定値VOCVおよび内部抵抗推定値Rnowの推定には任意の方法を用いてよいが、例えば、内部抵抗推定値Rnowは、電圧値V(例えば電圧値Vnow)と、電流値I(例えば電流値Inow)とに基づき推定することができる。そして、開放電圧推定値VOCVは、内部抵抗推定値Rnowと、電圧値V(例えば電圧値Vnow)と、電流値I(例えば電流値Inow)とに基づき推定することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、内部抵抗推定値Rnowとして、第1導出部21が用いる第1内部抵抗推定値Rnow1と、第2導出部22が用いる第2内部抵抗推定値Rnow2との2つが設けられている。これにより、第1導出部21は、後述する第1充電電力P11または第1放電電力P21を導出するのに適した内部抵抗推定値Rnowである第1内部抵抗推定値Rnow1を用いて、第1充電電力P11または第1放電電力P21を導出することができる。一方、第2導出部22は、後述する第2充電電力P12または第2放電電力P22を導出するのに適した内部抵抗推定値Rnowである第2内部抵抗推定値Rnow2を用いて、第2充電電力P12または第2放電電力P22を導出することができる。
【0047】
(制御装置がバッテリの充電を制御する場合)
以下、まず、制御装置20がバッテリBATの充電を制御する場合の各機能部のはたらき(機能)について説明する。
【0048】
第1導出部21は、開放電圧推定値VOCVと、第1内部抵抗推定値Rnow1とに基づき、バッテリBATが上限電圧値VH_limitに達する第1充電電力P11を導出する。ここで、上限電圧値VH_limitはあらかじめ定められている。例えば、第1導出部21は、下記の(1)式によって第1充電電力P11を導出する。
【0049】
【数1】
【0050】
上記の(1)式によれば、フィードフォワード的な演算値としての第1充電電力P11を導出することができる。そして、この第1充電電力P11は、開放電圧推定値VOCVおよび第1内部抵抗推定値Rnow1の変動が小さい場合に安定した値をとるとともに、開放電圧推定値VOCVと上限電圧値VH_limitとの差分がある程度大きい場合であっても後述の第2充電電力P12よりも安定した値をとる。
【0051】
第2導出部22は、電圧値Vnowと、電流値Inowと、第2内部抵抗推定値Rnow2とに基づき、バッテリBATが上限電圧値VH_limitに達する第2充電電力P12を導出する。例えば、第2導出部22は、下記の(2)式によって第2充電電力P12を導出する。
【0052】
【数2】
【0053】
上記の(2)式によれば、フィードバック的な演算値としての第2充電電力P12を導出することができる。そして、この第2充電電力P12は、電圧値Vnowが上限電圧値VH_limitに近づく程(すなわち電圧値Vnowと上限電圧値VH_limitとの差分が小さくなる程)、電圧値Vを上限電圧値VH_limitとする充電電力(すなわち適切な充電電力)に対する誤差が低減された値をとる。逆に、電圧値Vnowが上限電圧値VH_limitから離れている場合には、第2充電電力P12は、適切な充電電力に対して大きな誤差を持ちやすく、また、不安定になりやすい(短期間のうちに大きく変動し得る)という特性を有する。
【0054】
設定部23は、第1導出部21によって導出された第1充電電力P11と、第2導出部22によって導出された第2充電電力P12とに基づき、充電電力上限値TWIN_nowを設定する。
【0055】
具体的に説明すると、設定部23は、第1充電電力P11を充電電力上限値TWIN_nowとして設定する場合と、第2充電電力P12を充電電力上限値TWIN_nowとして設定する場合と、第1充電電力P11と第2充電電力P12とをそれぞれ所定の比率で足し合わせる(以下、単に「合成する」ともいう)ことにより導出される充電電力上限値TWIN_nowを設定する場合と、がある。
【0056】
ここで、図2を参照しながら、設定部23により設定される充電電力上限値TWIN_nowについて、より詳細に説明する。図2は、バッテリBATの充電に伴う電圧値Vnow(すなわちCCV)の時期的な変化の一例を示す図である。なお、図2において、縦軸は電圧[V]をあらわしており、横軸は時期をあらわしている。
【0057】
図2に示すように、本実施形態では、開放電圧推定値VOCVから上限電圧値VH_limitまでの電圧を、第1範囲Ra11と、第2範囲Ra12と、第3範囲Ra13との3つの範囲に分ける。ここで、第1範囲Ra11は、開放電圧推定値VOCVから、開放電圧推定値VOCVよりも大きい合成開始電圧X11までの範囲である。また、第2範囲Ra12は、合成開始電圧X11から、合成開始電圧X11よりも大きい合成完了電圧X12までの範囲である。そして、第3範囲Ra13は、合成完了電圧X12から、合成完了電圧X12よりも大きい上限電圧値VH_limitまでの範囲である。
【0058】
例えば、合成開始電圧X11は、下記の(3)式によってあらわすことができる。
【0059】
【数3】
【0060】
また、合成完了電圧X12は、下記の(4)式によってあらわすことができる。
【0061】
【数4】
【0062】
そして、設定部23は、図2に示す期間T11のように、電圧値Vnowが第1範囲Ra11に含まれる値をとっている場合には、第1充電電力P11を充電電力上限値TWIN_nowとして設定する。換言すると、設定部23は、例えばバッテリBATの充電開始直後など、電圧値Vnowが開放電圧推定値VOCVに近い場合(すなわち電圧値Vnowが上限電圧値VH_limitから離れている場合)には、第1充電電力P11を充電電力上限値TWIN_nowとして設定する。
【0063】
また、設定部23は、図2に示す期間T12のように、電圧値Vnowが第2範囲Ra12に含まれる値をとっている場合には、第1充電電力P11と第2充電電力P12とを合成することにより導出される充電電力上限値TWIN_nowを設定する。換言すると、設定部23は、例えばバッテリBATの充電を開始してから時間がある程度経過して電圧値Vnowが上限電圧値VH_limitにある程度近づいた場合には、第1充電電力P11と第2充電電力P12とを合成することにより導出される充電電力上限値TWIN_nowを設定する。
【0064】
第1充電電力P11と第2充電電力P12とを合成することにより導出される充電電力上限値TWIN_nowは、例えば、下記の(5)式によりあらわすことができる。
【0065】
【数5】
【0066】
上記の(5)式に示すように、第1充電電力P11と第2充電電力P12とを合成することにより導出される充電電力上限値TWIN_nowは、第1充電電力P11に「1-a」という係数をかけた値と、第2充電電力P12に「a」という係数をかけた値との和である。
【0067】
ここで、「a」は、充電電力上限値TWIN_now導出時の電圧値Vnow(例えば図2に示す時期t10の場合にはX10[V])と、合成開始電圧X11との差分である。図2に示すように、「a」は、電圧値Vnowが上限電圧値VH_limitに近づく程、大きくなる。また、「1-a」は、充電電力上限値TWIN_now導出時の電圧値Vnowと、合成完了電圧X12との差分である。図2に示すように、「1-a」は、電圧値Vnowが上限電圧値VH_limitに近づく程、小さくなる。すなわち、上記の(5)式により導出される充電電力上限値TWIN_nowは、電圧値Vnowが上限電圧値VH_limitに近づく程、第2充電電力P12に近づく。
【0068】
そして、設定部23は、図2に示す期間T13のように、電圧値Vnowが第3範囲Ra13に含まれる値をとっている場合には、第2充電電力P12を充電電力上限値TWIN_nowとして設定する。換言すると、設定部23は、例えばバッテリBATの充電を開始してから十分な時間が経過して電圧値Vnowが上限電圧値VH_limit付近となった場合には、第2充電電力P12を充電電力上限値TWIN_nowとして設定する。
【0069】
以上に説明したように、制御装置20は、バッテリBATの充電開始直後など、電圧値Vnowが開放電圧推定値VOCVに近い場合(すなわち電圧値Vnowが上限電圧値VH_limitから離れている場合)には、充電電力上限値TWIN_nowを第1充電電力P11とする。前述したように、フィードフォワード的な演算値としての第1充電電力P11は、開放電圧推定値VOCVと上限電圧値VH_limitとの差分がある程度大きい場合であっても安定した値をとる。したがって、電圧値Vnowが上限電圧値VH_limitから離れている場合には、充電電力上限値TWIN_nowを第1充電電力P11とすることで、充電電力上限値TWIN_nowが不安定になることを回避して、バッテリBATを実際に充電する充電電力を安定させることができ、バッテリBATを適切な充電電力で充電することが可能となる。
【0070】
また、制御装置20は、電圧値Vnowが上限電圧値VH_limitに近づくにつれて、充電電力上限値TWIN_nowを第2充電電力P12に近づけていく。前述したように、フィードバック的な演算値としての第2充電電力P12は、電圧値Vnowが上限電圧値VH_limitに近づく程、適切な充電電力に対して誤差が低減された値をとる。したがって、電圧値Vnowが上限電圧値VH_limitに近づいたことに応じて、第2充電電力P12を考慮した充電電力上限値TWIN_nowに持ち替えることで、バッテリBATを適切な充電電力で充電することが可能となる。
【0071】
以上のことから、制御装置20は、バッテリBATを充電するにあたって、そのときのバッテリBATの充電状態(例えば充電開始時からの経過時間)に応じた適切な充電電力上限値TWIN_nowを設定することができ、バッテリBATを適切な充電電力で充電することが可能となる。これにより、例えば、過剰な充電電力からバッテリBATを保護してバッテリBATの劣化を抑制できるとともに、バッテリBATを時間効率よく充電することが可能となる。
【0072】
また、本実施形態では、合成開始電圧X11および合成完了電圧X12を、一定値とせず、開放電圧推定値VOCVと上限電圧値VH_limitとの差分に応じて変動するようにした。上限電圧値VH_limitは略一定であるのに対し、開放電圧推定値VOCVはバッテリBATのSOC(State Of Charge)や温度などによって変動するため、開放電圧推定値VOCVと上限電圧値VH_limitとの差分も大きく変動し得る。仮に、合成開始電圧X11および合成完了電圧X12を一定値とすると、開放電圧推定値VOCVと上限電圧値VH_limitとの差分が大きかったり、逆に小さかったりした場合に、前述した第1範囲Ra11、第2範囲Ra12、および第3範囲Ra13を適切に設定できなくなることがある。その結果、電圧値Vnowが上限電圧値VH_limitに近づくにつれて、充電電力上限値TWIN_nowを第1充電電力P11から第2充電電力P12に徐々に近づけていくことが難しくなる場合がある。これに対し、本実施形態では、合成開始電圧X11および合成完了電圧X12を、開放電圧推定値VOCVと上限電圧値VH_limitとの差分に応じて変動するようにしたため、開放電圧推定値VOCVと上限電圧値VH_limitとの差分が大きかったり小さかったりする場合であっても、充電電力上限値TWIN_nowを適切に設定することが可能となる。
【0073】
(制御装置がバッテリの放電を制御する場合)
次に、制御装置20がバッテリBATの放電を制御する場合の各機能部のはたらき(機能)について説明する。
【0074】
第1導出部21は、開放電圧推定値VOCVと、第1内部抵抗推定値Rnow1とに基づき、バッテリBATが下限電圧値VL_limitに達する第1放電電力P21を導出する。ここで、下限電圧値VL_limitはあらかじめ定められている。例えば、第1導出部21は、下記の(6)式によって第1放電電力P21を導出する。
【0075】
【数6】
【0076】
上記の(6)式によれば、フィードフォワード的な演算値としての第1放電電力P21を導出することができる。そして、この第1放電電力P21は、開放電圧推定値VOCVおよび第1内部抵抗推定値Rnow1の変動が小さい場合に安定した値をとるとともに、開放電圧推定値VOCVと下限電圧値VL_limitとの差分がある程度大きい場合であっても後述の第2放電電力P22よりも安定した値をとる。
【0077】
第2導出部22は、電圧値Vnowと、電流値Inowと、第2内部抵抗推定値Rnow2とに基づき、バッテリBATが下限電圧値VL_limitに達する第2放電電力P22を導出する。例えば、第2導出部22は、下記の(7)式によって第2放電電力P22を導出する。
【0078】
【数7】
【0079】
上記の(7)式によれば、フィードバック的な演算値としての第2放電電力P22を導出することができる。そして、この第2放電電力P22は、電圧値Vnowが下限電圧値VL_limitに近づく程(すなわち電圧値Vnowと下限電圧値VL_limitとの差分が小さくなる程)、電圧値Vを下限電圧値VL_limitとする放電電力(すなわち適切な放電電力)に対する誤差が低減された値をとる。逆に、電圧値Vnowが下限電圧値VL_limitから離れている場合には、第2放電電力P22は、適切な放電電力に対して大きな誤差を持ちやすく、また、不安定になりやすい(短期間のうちに大きく変動し得る)という特性を有する。
【0080】
設定部23は、第1導出部21によって導出された第1放電電力P21と、第2導出部22によって導出された第2放電電力P22とに基づき、放電電力上限値TWOUT_nowを設定する。
【0081】
具体的に説明すると、設定部23は、第1放電電力P21を放電電力上限値TWOUT_nowとして設定する場合と、第2放電電力P22を放電電力上限値TWOUT_nowとして設定する場合と、第1放電電力P21と第2放電電力P22とをそれぞれ所定の比率で足し合わせる(以下、単に「合成する」ともいう)ことにより導出される放電電力上限値TWOUT_nowを設定する場合と、がある。
【0082】
ここで、図3を参照しながら、設定部23により設定される放電電力上限値TWOUT_nowについて、より詳細に説明する。図3は、バッテリBATの放電に伴う電圧値Vnow(すなわちCCV)の時期的な変化と放電電力との一例を示す図である。なお、図3(A)において、縦軸は電圧[V]をあらわしており、横軸は時期をあらわしている。また、図3(B)において、縦軸は電力[kW]をあらわしており、横軸は時期をあらわしている。
【0083】
図3(A)に示すように、本実施形態では、開放電圧推定値VOCVから下限電圧値VL_limitまでの電圧を、第1範囲Ra21と、第2範囲Ra22と、第3範囲Ra23との3つの範囲に分ける。ここで、第1範囲Ra21は、開放電圧推定値VOCVから、開放電圧推定値VOCVよりも小さい合成開始電圧X21までの範囲である。また、第2範囲Ra22は、合成開始電圧X21から、合成開始電圧X21よりも小さい合成完了電圧X22までの範囲である。そして、第3範囲Ra23は、合成完了電圧X22から、合成完了電圧X22よりも小さい下限電圧値VL_limitまでの範囲である。
【0084】
例えば、合成開始電圧X21は、下記の(8)式によってあらわすことができる。
【0085】
【数8】
【0086】
また、合成完了電圧X22は、下記の(9)式によってあらわすことができる。
【0087】
【数9】
【0088】
そして、設定部23は、図3に示す期間T21のように、電圧値Vnowが第1範囲Ra21に含まれる値をとっている場合には、第1放電電力P21を放電電力上限値TWOUT_nowとして設定する。換言すると、設定部23は、例えばバッテリBATの放電開始直後など、電圧値Vnowが開放電圧推定値VOCVに近い場合(すなわち電圧値Vnowが下限電圧値VL_limitから離れている場合)には、第1放電電力P21を放電電力上限値TWOUT_nowとして設定する。
【0089】
また、設定部23は、図3に示す期間T22のように、電圧値Vnowが第2範囲Ra22に含まれる値をとっている場合には、第1放電電力P21と第2放電電力P22とを合成することにより導出される放電電力上限値TWOUT_nowを設定する。換言すると、設定部23は、例えばバッテリBATの放電を開始してから時間がある程度経過して電圧値Vnowが下限電圧値VL_limitにある程度近づいた場合には、第1放電電力P21と第2放電電力P22とを合成することにより導出される放電電力上限値TWOUT_nowを設定する。
【0090】
第1放電電力P21と第2放電電力P22とを合成することにより導出される放電電力上限値TWOUT_nowは、例えば、下記の(10)式によりあらわすことができる。
【0091】
【数10】
【0092】
上記の(10)式に示すように、第1放電電力P21と第2放電電力P22とを合成することにより導出される放電電力上限値TWOUT_nowは、第1放電電力P21に「1-a」という係数をかけた値と、第2放電電力P22に「a」という係数をかけた値との和である。
【0093】
ここで、「a」は、放電電力上限値TWOUT_now導出時の電圧値Vnow(例えば図3に示す時期t20の場合にはX20[V])と、合成開始電圧X21との差分である。図3に示すように、「a」は、電圧値Vnowが下限電圧値VL_limitに近づく程、大きくなる。また、「1-a」は、放電電力上限値TWOUT_now導出時の電圧値Vnowと、合成完了電圧X22との差分である。図3に示すように、「1-a」は、電圧値Vnowが下限電圧値VL_limitに近づく程、小さくなる。すなわち、上記の(10)式により導出される放電電力上限値TWOUT_nowは、電圧値Vnowが下限電圧値VL_limitに近づく程、第2放電電力P22に近づく。
【0094】
そして、設定部23は、図3に示す期間T23のように、電圧値Vnowが第3範囲Ra23に含まれる値をとっている場合には、第2放電電力P22を放電電力上限値TWOUT_nowとして設定する。換言すると、設定部23は、例えばバッテリBATの放電を開始してから十分な時間が経過して電圧値Vnowが下限電圧値VL_limit付近となった場合には、第2放電電力P22を放電電力上限値TWOUT_nowとして設定する。
【0095】
以上に説明したように、制御装置20は、バッテリBATの放電開始直後など、電圧値Vnowが開放電圧推定値VOCVに近い場合(すなわち電圧値Vnowが下限電圧値VL_limitから離れている場合)には、放電電力上限値TWOUT_nowを第1放電電力P21とする。前述したように、フィードフォワード的な演算値としての第1放電電力P21は、開放電圧推定値VOCVと下限電圧値VL_limitとの差分がある程度大きい場合であっても安定した値をとる。したがって、電圧値Vnowが下限電圧値VL_limitから離れている場合には、放電電力上限値TWOUT_nowを第1放電電力P21とすることで、放電電力上限値TWOUT_nowが不安定になることを回避して、バッテリBATから実際に放電される放電電力を安定させることができ、バッテリBATから適切な放電電力で放電させることが可能となる。
【0096】
また、制御装置20は、電圧値Vnowが下限電圧値VL_limitに近づくにつれて、放電電力上限値TWOUT_nowを第2放電電力P22に近づけていく。前述したように、フィードバック的な演算値としての第2放電電力P22は、電圧値Vnowが下限電圧値VL_limitに近づく程、適切な放電電力に対して誤差が低減された値をとる。したがって、電圧値Vnowが下限電圧値VL_limitに近づいたことに応じて、第2放電電力P22を考慮した放電電力上限値TWOUT_nowに持ち替えることで、バッテリBATから適切な放電電力で放電させることが可能となる。
【0097】
以上のことから、制御装置20は、バッテリBATから放電するにあたって、そのときのバッテリBATの放電状態(例えば放電開始時からの経過時間)に応じた適切な放電電力上限値TWOUT_nowを設定することができ、バッテリBATから適切な放電電力で放電させることが可能となる。これにより、例えば、過剰な放電電力からバッテリBATを保護してバッテリBATの劣化を抑制できるとともに、バッテリBATが本来有する出力性能を活用することが可能となる。
【0098】
より具体的に説明すると、図3(B)において、一点鎖線L1は第1放電電力P21をあらわし、二点鎖線L2は第2放電電力P22をあらわし、破線L3は放電電力上限値TWOUT_nowとしての理想値をあらわしている。前述したように、制御装置20は、電圧値Vnowが下限電圧値VL_limitから離れている場合には放電電力上限値TWOUT_nowを第1放電電力P21とし、その後、電圧値Vnowが下限電圧値VL_limitに近づくにつれて、放電電力上限値TWOUT_nowを第2放電電力P22に近づけていくことで、放電電力上限値TWOUT_nowを、図3(B)における実線L10で示すように変化させていくことができる。これにより、バッテリBATから実際に放電される放電電力を、図3(B)における実線L20で示すように制御することができる。したがって、過剰な放電電力からバッテリBATを保護しつつも、バッテリBATが本来有する出力性能を活用することが可能となる。
【0099】
以上に説明したように、本実施形態によれば、バッテリBATを充電する充電電力またはバッテリBATから放電される放電電力を適切に制御することを可能にする。
【0100】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0101】
例えば、前述した実施形態では、上記の(3)式によってあらわされる合成開始電圧X11と、上記の(4)式によってあらわされる合成完了電圧X12とにより、開放電圧推定値VOCVから上限電圧値VH_limitまでの電圧を三等分して、第1範囲Ra11、第2範囲Ra12、および第3範囲Ra13を設けたが、これに限られない。例えば、第1範囲Ra11、第2範囲Ra12、および第3範囲Ra13の各範囲の幅(広さ)が互いに異なるようにしてもよい。また、第1範囲Ra11、第2範囲Ra12、および第3範囲Ra13のうちの2つの範囲(例えば第1範囲Ra11および第2範囲Ra12)の幅を等しくし、これら2つの範囲の幅と残りの1つの範囲の幅とを異ならせるようにしてもよい。同様にして、第1範囲Ra21、第2範囲Ra22、および第3範囲Ra23についても、開放電圧推定値VOCVから下限電圧値VL_limitまでの電圧を三等分するものに限られず、これら各範囲の幅が互いに異なるようにしてもよいし、これら各範囲のうちの2つの幅(例えば第1範囲Ra21および第2範囲Ra22)を等しくし、且つこれら2つの範囲の幅と残りの1つの範囲の幅とを異ならせるようにしてもよい。
また、前述した実施形態では、制御装置20がバッテリBATの充電および放電の両方を制御するようにしたが、これに限られない。例えば、制御装置20は、バッテリBATの充電および放電のうちの一方のみを制御するようにしてもよい。この場合、バッテリBATの充電および放電のうちの他方は、制御装置20以外の他の制御装置によって制御されるようにしてもよい。
また、前述した実施形態では、内部抵抗推定値Rnowとして、第1導出部21が用いる第1内部抵抗推定値Rnow1と、第2導出部22が用いる第2内部抵抗推定値Rnow2との2つを設けたが、これに限られない。例えば、第1導出部21および第2導出部22が共通の内部抵抗推定値Rnowを用いるようにしてもよい。
また、前述した実施形態では、車両用蓄電システム50がハイブリッド電気自動車である車両10に搭載された例を説明したが、これに限られない。例えば、車両用蓄電システム50を搭載する車両10は、電気自動車(例えばBattery Electric Vehicle)であってもよいし、燃料電池自動車(Fuel Cell Electric Vehicle)であってもよい。
【0102】
本明細書等には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、前述した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0103】
(1) バッテリ(バッテリBAT)と、
前記バッテリの電圧値を検出する電圧センサ(電圧センサ12a)と、
前記バッテリの電流値を検出する電流センサ(電流センサ12b)と、
所定の充電電力上限値(充電電力上限値TWIN_now)を上回る充電電力が前記バッテリに供給されないように、前記バッテリの充電を制御する制御装置(制御装置20)と、
を備える蓄電システム(車両用蓄電システム50)であって、
前記制御装置は、
前記バッテリの開放電圧の推定値である開放電圧推定値(開放電圧推定値VOCV)と、前記バッテリの内部抵抗の推定値である内部抵抗推定値(内部抵抗推定値Rnow、第1内部抵抗推定値Rnow1)とに基づき、前記バッテリが上限電圧値(上限電圧値VH_limit)に達する第1充電電力(第1充電電力P11)を導出する第1導出部(第1導出部21)と、
前記電圧センサによって検出された電圧値(電圧値V)と、前記電流センサによって検出された電流値(電流値I)と、前記バッテリの内部抵抗の推定値である内部抵抗推定値(内部抵抗推定値Rnow、第2内部抵抗推定値Rnow2)とに基づき、前記バッテリが前記上限電圧値に達する第2充電電力(第2充電電力P12)を導出する第2導出部(第2導出部22)と、
前記第1導出部によって導出された第1充電電力と、前記第2導出部によって導出された第2充電電力とに基づき、前記充電電力上限値を設定する設定部(設定部23)と、
を備える、蓄電システム。
【0104】
(1)によれば、フィードフォワード的な演算値としての第1充電電力と、フィードバック的な演算値としての第2充電電力とに基づき充電電力上限値を設定するため、適切な充電電力上限値を設定でき、バッテリを適切な充電電力で充電することが可能となる。
【0105】
(2) (1)に記載の蓄電システムであって、
前記設定部は、現在の前記電圧値に応じて、前記第1充電電力を前記充電電力上限値として設定する場合と、前記第2充電電力を前記充電電力上限値として設定する場合と、前記第1充電電力と前記第2充電電力とをそれぞれ所定の比率で足し合わせることにより導出される前記充電電力上限値を設定する場合と、がある、
蓄電システム。
【0106】
(2)によれば、バッテリを充電するにあたって、そのときの充電状態に応じた適切な充電電力上限値を設定することが可能となる。
【0107】
(3) (2)に記載の蓄電システムであって、
前記設定部は、
現在の前記電圧値が、前記開放電圧推定値から、当該開放電圧推定値よりも大きい合成開始電圧までの第1範囲に含まれる場合には、前記第1充電電力を前記充電電力上限値として設定し、
現在の前記電圧値が、前記合成開始電圧から、当該合成開始電圧よりも大きい合成完了電圧までの第2範囲に含まれる場合には、前記第1充電電力と前記第2充電電力とをそれぞれ所定の比率で足し合わせることにより導出される前記充電電力上限値を設定し、
現在の前記電圧値が、前記合成完了電圧から、当該合成完了電圧よりも大きい前記上限電圧値までの第3範囲に含まれる場合には、前記第2充電電力を前記充電電力上限値として設定する、
蓄電システム。
【0108】
(3)によれば、バッテリを充電するにあたって、そのときの充電状態に応じた適切な充電電力上限値を設定することが可能となる。
【0109】
(4) (3)に記載の蓄電システムであって、
前記合成開始電圧および前記合成完了電圧は、前記開放電圧推定値と前記上限電圧値との差分に応じて変動する、
蓄電システム。
【0110】
(4)によれば、開放電圧推定値と上限電圧値との差分が大きかったり小さかったりする場合であっても、充電電力上限値を適切に設定することが可能となる。
【0111】
(5) (2)から(4)のいずれかに記載の蓄電システムであって、
前記第1充電電力と前記第2充電電力とをそれぞれ所定の比率で足し合わせることにより導出される前記充電電力上限値は、前記第1充電電力に第1係数をかけた値と、前記第2充電電力に第2係数をかけた値との和であり、
前記第1係数および前記第2係数は、現在の前記電圧値に応じて変動する、
蓄電システム。
【0112】
(5)によれば、現在のバッテリの電圧値が上限電圧値に近づく程、第1充電電力と第2充電電力とをそれぞれ所定の比率で足し合わせることにより導出される充電電力上限値を、適切な充電電力に対する誤差が低減された値をとるフィードバック的な演算値としての第2充電電力に近づけることを可能にする。
【0113】
(6) (5)に記載の蓄電システムであって、
前記第1係数は、現在の前記電圧値が前記上限電圧値に近づく程、小さくなり、
前記第2係数は、現在の前記電圧値が前記上限電圧値に近づく程、大きくなる、
蓄電システム。
【0114】
(6)によれば、現在のバッテリの電圧値が上限電圧値に近づく程、充電電力上限値を、適切な充電電力に対する誤差が低減された値をとるフィードバック的な演算値としての第2充電電力に近づけることができる。
【0115】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載の蓄電システムであって、
前記第1導出部は、第1内部抵抗推定値を前記内部抵抗推定値として用い、
前記第2導出部は、前記第1内部抵抗推定値とは異なる第2内部抵抗推定値を前記内部抵抗推定値として用いる、
蓄電システム。
【0116】
(7)によれば、第1導出部は、第1充電電力を導出するのに適した第1内部抵抗推定値を用いて第1充電電力を導出することが可能となり、第2導出部は、第2充電電力を導出するのに適した第2内部抵抗推定値を用いて第2充電電力を導出することが可能となる。
【0117】
(8) バッテリ(バッテリBAT)と、
前記バッテリの電圧値を検出する電圧センサ(電圧センサ12a)と、
前記バッテリの電流値を検出する電流センサ(電流センサ12b)と、
所定の放電電力上限値を上回る放電電力が前記バッテリから出力されないように、前記バッテリの放電を制御する制御装置(制御装置20)と、
を備える蓄電システム(車両用蓄電システム50)であって、
前記制御装置は、
前記バッテリの開放電圧の推定値である開放電圧推定値(開放電圧推定値VOCV)と、前記バッテリの内部抵抗の推定値である内部抵抗推定値(内部抵抗推定値Rnow、第2内部抵抗推定値Rnow2)とに基づき、前記バッテリが下限電圧値(下限電圧値VL_limit)に達する第1放電電力(第1放電電力P21)を導出する第1導出部(第1導出部21)と、
前記電圧センサによって検出された電圧値(電圧値V)と、前記電流センサによって検出された電流値(電流値I)と、前記バッテリの内部抵抗の推定値である内部抵抗推定値(内部抵抗推定値Rnow、第2内部抵抗推定値Rnow2)とに基づき、前記バッテリが前記下限電圧値に達する第2放電電力(第2放電電力P22)を導出する第2導出部(第2導出部22)と、
前記第1導出部によって導出された第1放電電力と、前記第2導出部によって導出された第2放電電力とに基づき、前記放電電力上限値を設定する設定部(設定部23)と、
を備える、蓄電システム。
【0118】
(8)によれば、フィードフォワード的な演算値としての第1放電電力と、フィードバック的な演算値としての第2放電電力とに基づき放電電力上限値を設定するため、適切な放電電力上限値を設定でき、バッテリから適切な放電電力で放電することが可能となる。
【符号の説明】
【0119】
12a 電圧センサ
12b 電流センサ
20 制御装置
21 第1導出部
22 第2導出部
23 設定部
50 車両用蓄電システム(蓄電システム)
BAT バッテリ
図1
図2
図3