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特許7581269スライド式切換弁及び冷凍サイクルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】スライド式切換弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/065 20060101AFI20241105BHJP
   F25B 41/26 20210101ALI20241105BHJP
【FI】
F16K11/065 Z
F25B41/26 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022023905
(22)【出願日】2022-02-18
(65)【公開番号】P2023120826
(43)【公開日】2023-08-30
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】三留 陵
(72)【発明者】
【氏名】村田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 秀剛
(72)【発明者】
【氏名】岡田 聡
(72)【発明者】
【氏名】剱持 大一郎
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-196009(JP,A)
【文献】特開2021-089023(JP,A)
【文献】特開2018-031461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00-11/22
F16K 27/00-27/12
F25B 41/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の弁本体の両端それぞれの開口が蓋部材で塞がれた弁ハウジングと、
前記弁本体の周壁に当該弁本体の内部と連通するように少なくとも一対接続された配管と、
前記弁本体の内部に、当該弁本体の軸方向にスライド可能に設置されて前記配管の連通状態を切換えるスライド弁体と、を備え、
前記スライド弁体が、
前記軸方向にスライドすることで前記配管の連通状態を切換える弁体と、
前記軸方向について前記弁体を挟むように一対設けられて前記軸方向のスライド駆動力を受けるピストンと、
前記弁体に一対の前記ピストンを連結する連結板と、
各前記ピストンよりも前記蓋部材に近い位置に前記連結板に設けられて前記弁体のスライド時に前記蓋部材に当接してスライドを止めるストッパ板と、
前記連結板に前記ピストンとともに前記ストッパ板を固定する固定部材と、を備え、
前記蓋部材が、
前記軸方向について前記弁本体の前記開口の外側に位置し、前記軸方向に対する交差方向に、前記開口の開口面積よりも狭い延在面積で延在する板状の底部と、
前記底部の周縁から前記軸方向について前記開口に向かって延びる筒部と、
前記筒部における前記弁本体の前記開口の側の端縁から前記筒部の外側に向かって鍔状に延在し、その外周端部が、前記弁本体において前記開口を囲む開口端に固定される鍔部と、を備え、
前記鍔部には、前記軸方向に対する交差方向について、前記開口の中心側に向かって平面状に延在し、前記ストッパ板を当接させることで前記スライド弁体の前記軸方向の作動範囲を規定する平面部が設けられ
前記鍔部の前記外周端部には、前記平面部よりも外周側となる位置に、前記弁本体の前記軸方向について前記底部側に凹んだ段差部が設けられ、
前記段差部は、前記軸方向に対する前記交差方向に延在する第一面と前記軸方向に延在する第二面を有し、
前記弁本体の前記開口端が、前記段差部における前記第一面に当接することを特徴とするスライド式切換弁。
【請求項2】
前記鍔部には、前記筒部の内周面と前記平面部とを繋ぐ曲面部が設けられ、
前記曲面部が、前記底部に対面する方向からの平面視において、前記筒部の外周面よりも前記筒部の中心寄りに位置していることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項3】
前記スライド弁体における前記固定部材は、前記蓋部材に向かって前記ストッパ板から突出する突出部を有し、
前記突出部は、前記鍔部の前記平面部に前記ストッパ板が当接した状態において、前記蓋部材における前記底部及び前記筒部で区画される内部空間に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載のスライド式切換弁。
【請求項4】
前記弁本体が円筒状の部材であり、
前記段差部の前記第二面が、前記弁本体の内径寸法以下の径寸法で形成された円筒面であることを特徴とする請求項1~3のうち何れか一項に記載のスライド式切換弁。
【請求項5】
前記段差部は、前記鍔部において前記平面部を有する板部分よりも肉厚が薄肉化された部位であることを特徴とする請求項1~4のうち何れか一項に記載のスライド式切換弁。
【請求項6】
前記弁本体の前記開口端の内周側に面取りが形成されていることを特徴とする請求項1~5のうち何れか一項に記載のスライド式切換弁。
【請求項7】
流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器と、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段と、請求項1~のうち何れか一項に記載のスライド式切換弁と、を備えたことを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機等の冷凍サイクルシステムに用いられ、冷媒の流路を切り換えるスライド式切換弁及び冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状の弁本体の両端それぞれの開口が蓋部材で塞がれた弁ハウジングの内部に、スライド駆動力をピストンで受けてスライドするスライド弁体が収められたスライド式切換弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のスライド式切換弁では、蓋部材が大径部と小径部と有して形成され、大径部が弁本体の開口に圧入されるとともに開口端縁に溶接固定されている。また、蓋部材の小径部は、弁本体の内部に向かって突出しており、この小径部にピストンが当接してスライドが止まることでスライド弁体の作動範囲が規定されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-027262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のスライド式切換弁では、蓋部材の小径部にピストンを当接させてスライド弁体のスライドを止める際に、ピストンが傾く可能性があり、スライド動作が繰り返された際に耐久性の低下が懸念される。
【0005】
本発明の目的は、スライド弁体のスライド動作が繰り返された際の耐久性の低下を抑制することができるスライド式切換弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスライド式切換弁は、筒状の弁本体の両端それぞれの開口が蓋部材で塞がれた弁ハウジングと、前記弁本体の周壁に当該弁本体の内部と連通するように少なくとも一対接続された配管と、前記弁本体の内部に、当該弁本体の軸方向にスライド可能に設置されて前記配管の連通状態を切換えるスライド弁体と、を備え、前記スライド弁体が、前記軸方向にスライドすることで前記配管の連通状態を切換える弁体と、前記軸方向について前記弁体を挟むように一対設けられて前記軸方向のスライド駆動力を受けるピストンと、前記弁体に一対の前記ピストンを連結する連結板と、各前記ピストンよりも前記蓋部材に近い位置に前記連結板に設けられて前記弁体のスライド時に前記蓋部材に当接してスライドを止めるストッパ板と、前記連結板に前記ピストンとともに前記ストッパ板を固定する固定部材と、を備え、前記蓋部材が、前記軸方向について前記弁本体の前記開口の外側に位置し、前記軸方向に対する交差方向に、前記開口の開口面積よりも狭い延在面積で延在する板状の底部と、前記底部の周縁から前記軸方向について前記開口に向かって延びる筒部と、前記筒部における前記弁本体の前記開口の側の端縁から前記筒部の外側に向かって鍔状に延在し、その外周端部が、前記弁本体において前記開口を囲む開口端に固定される鍔部と、を備え、前記鍔部には、前記軸方向に対する交差方向について、前記開口の中心側に向かって平面状に延在し、前記ストッパ板を当接させることで前記スライド弁体の前記軸方向の作動範囲を規定する平面部が設けられ、前記鍔部の前記外周端部には、前記平面部よりも外周側となる位置に、前記弁本体の前記軸方向について前記底部側に凹んだ段差部が設けられ、前記段差部は、前記軸方向に対する前記交差方向に延在する第一面と前記軸方向に延在する第二面を有し、前記弁本体の前記開口端が、前記段差部における前記第一面に当接することを特徴とする。
【0007】
このスライド式切換弁では、蓋部材の鍔部に形成された平面部にスライド弁体のストッパ板を当接させることでスライド弁体の作動範囲が規定される。この構成によれば、スライド駆動力を受けるピストンがスライド時に蓋部材に当接して力を受けるようなことがない。また、ストッパ板の当接先が、弁本体の軸方向と直交する平面部であることからストッパ板と平面部との当接も安定的に行われる。その結果、当接時のピストンの傾きが抑制されることとなり、スライド弁体のスライド動作が繰り返された際の耐久性の低下を抑制することができる。
【0008】
ここで、前記鍔部には、前記筒部の内周面と前記平面部とを繋ぐ曲面部が設けられ、前記曲面部が、前記底部に対面する方向からの平面視において、前記筒部の外周面よりも前記筒部の中心寄りに位置していることが好適である。
【0009】
この構成によれば、鍔部において曲面部が筒部の外周面の更に外側にまで延在する場合に比べて、鍔部における平面部を大きくとることができる。これにより、平面部に対するストッパ板の当接が更に安定するので、スライド弁体のスライド動作が繰り返された際の耐久性の低下を一層抑制することができる。また、鍔部の外径サイズを変えずに平面部を大きくとることができるので、鍔部全体としては小さくて済む。
【0010】
また、前記スライド弁体における前記固定部材は、前記蓋部材に向かって前記ストッパ板から突出する突出部を有し、前記突出部は、前記鍔部の前記平面部に前記ストッパ板が当接した状態において、前記蓋部材における前記底部及び前記筒部で区画される内部空間に位置することが好適である。
【0011】
この構成によれば、鍔部の平面部にストッパ板が当接した状態において、蓋部材の鍔部と固定部材における突出部とが干渉することがない。このため、平面部と固定部材の突出部との接触を回避するためのスペーサ等が不要であり、部品点数を削減しつつ平面部に対するストッパ板の当接を安定させることができる。つまり、上記の構成によれば、スライド弁体のスライド動作が繰り返された際の耐久性の低下を、部品点数を削減しつつ抑制することができる。
【0012】
また、上述のスライド式切換弁では、前記鍔部の前記外周端部には、前記平面部よりも外周側となる位置に、前記弁本体の前記軸方向について前記底部側に凹んだ段差部が設け
られ、前記段差部は、前記軸方向に対する前記交差方向に延在する第一面と前記軸方向に延在する第二面を有し、前記弁本体の前記開口端が、前記段差部における前記第一面に当接することが好適である。
【0013】
この構成によれば、組立時に、段差部に弁本体の開口端を収めることで、弁本体の開口に対する蓋部材の位置決めがなされるので、弁本体の開口に対する蓋部材の接合についての作業性が向上し、この接合を容易に行うことができる。
【0014】
また、前記弁本体が円筒状の部材であり、前記段差部の前記第二面が、前記弁本体の内径寸法以下の径寸法で形成された円筒面であることが更に好適である。
【0015】
この構成によれば、組立時に、段差部の第二面を弁本体の開口に圧入することなく、段差部に弁本体の開口端を収めることができる。これにより、組立時に弁本体が変形して蓋部材が傾いた状態で組付けられる等といった事態が効果的に回避される。その結果、当接時のピストンの傾きが更に抑制されることとなり、スライド弁体のスライド動作が繰り返された際の耐久性の低下を更に抑制することができる。また、上記の構成によれば、段差部の軸方向の深さ寸法が、圧入のための圧入代が不要となるために最小限の深さ寸法でよく、段差部の加工について容易化することもできる。
【0016】
また、前記段差部は、前記鍔部において前記平面部を有する板部分よりも肉厚が薄肉化された部位であることが更に好適である。
【0017】
この構成によれば、例えば鍔部の厚みはそのままに外周端部を軸方向に変形させて段差部を形成する場合に比べ、切削等により段差部を容易に形成することができる。
【0018】
また、前記弁本体の前記開口端の内周側に面取りが形成されていることが更に好適である。
【0019】
この構成によれば、段差部における第一面と第二面との境界部に隅Rが形成されていても、面取りで隅Rを避けつつ弁本体の開口端を段差部における第一面に安定的に当接させることができる。これにより、組立時に蓋部材が傾いた状態で弁本体に組付けられる等といった事態が効果的に回避される。その結果、当接時のピストンの傾きが更に抑制されることとなり、スライド弁体のスライド動作が繰り返された際の耐久性の低下を更に抑制することができる。
【0020】
また、本発明の冷凍サイクルシステムは、流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器と、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段と、上述のスライド式切換弁と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
この冷凍サイクルシステムによれば、上述のスライド式切換弁を備えているので、スライド弁体のスライド動作が繰り返された際の耐久性の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のスライド式切換弁及び冷凍サイクルシステムによれば、スライド弁体のスライド動作が繰り返された際の耐久性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態のスライド式切換弁について、弁ハウジングの軸方向に沿った断面を示す断面図である。
図2図1における領域A11を、溶接前の状態で示す拡大図である。
図3図2における領域A12を、溶接後の状態で示す図である。
図4図1に示されている蓋部材とスライド弁体のストッパ板及びピストンとの分解図である。
図5図1~3に示されているスライド式切換弁を備える冷凍サイクルシステムを示す模式図である。
図6】第2実施形態のスライド式切換弁について、弁ハウジングの軸方向に沿った断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第1実施形態に係るスライド式切換弁を図1図5に基づいて説明する。
【0025】
図1は、第1実施形態のスライド式切換弁について、弁ハウジングの軸方向に沿った断面を示す断面図である。図2は、図1における領域A11を、溶接前の状態で示す拡大図であり、図3は、図2における領域A12を、溶接後の状態で示す図である。また、図4は、図1に示されている蓋部材とスライド弁体のストッパ板及びピストンとの分解図であり、図5は、図1~4に示されているスライド式切換弁を備える冷凍サイクルシステムを示す模式図である。尚、以下の説明では、図1及び図5においては、E継手管13eが図示されている側を左側と呼び、C継手管13cが図示されている側を右側と呼ぶ。図2及び図4においては、蓋部材12Lが図示されている側を左側と呼び、ピストン22Lが図示されている側を右側と呼ぶ。図3においては、鍔部123が図示されている側を左側と呼び、弁本体11が図示されている側を右側と呼ぶ。
【0026】
図1に示すように、本実施形態のスライド式切換弁10は、4つの配管の連通状態を切換える四方切換弁であり、弁ハウジング1内に、スライド弁体2を備えた構造を有している。
【0027】
弁ハウジング1は、両端が閉塞された筒状の部材であって、円筒形状の弁本体11と2つの蓋部材12L,12Rとで構成されている。蓋部材12L,12Rは、弁本体11の両端それぞれの開口11aを塞ぐように弁本体11に取り付けられている。本実施形態では、蓋部材12L,12Rは弁本体11に溶接により固定されている。この蓋部材12L,12Rについて、図2には溶接前の状態が示されており、図3には溶接後の状態が示されている。弁本体11と蓋部材12L、12Rは、ステンレスや真鍮等の金属製からなる。このような金属製の部材どうしの固定方法としては溶接やろう付けが挙げられるが、本実施形態のように溶接を採用する場合には、固定対象物である弁本体11と蓋部材12L、12Rをステンレス製とすることが好ましい。また、弁本体11および蓋部材12L,12Rの中心軸が弁ハウジング1の軸線Xとなっている。この弁ハウジング1の周壁には、詳細については後述するD継手管13d、E継手管13e、S継手管13s、C継手管13cという4つの配管が、弁ハウジング1の内部と連通するように連結されている。
【0028】
弁本体11の内周面にはスライド弁体2が摺擦する弁座15が設けられている。この弁座15は弁本体11内の中間部に配設され、弁本体11の中間部の弁座15と対向する位置には、弁本体11内に開口する高圧配管としてのD継手管13dが取り付けられている。また、弁座15には、弁ハウジング1の軸線X方向に一直線上に並んで、一対の導管としてのE継手管13e及びC継手管13cと、低圧配管としてのS継手管13sが取り付けられている。
【0029】
スライド弁体2は、弁本体11の内部に、当該弁本体11の軸方向D11にスライド可能に設置されて上記の4つの配管の連通状態を切換える部材である。このスライド弁体2は、弁体21と、一対のピストン22L,22Rと、連結板23と、一対のストッパ板24L,24Rと、固定部材25を、を備えている。
【0030】
弁体21は、軸方向D11にスライドすることで上記の4つの配管の連通状態を切換える。この弁体21にはその内側に椀状凹部21Aが形成されている。そして、弁体21は、図1の左側の端部位置において、S継手管13sとE継手管13eとを椀状凹部21Aにより連通する。このとき、C継手管13cは、弁ハウジング1の内部に一対のピストン22L,22Rによって区画される高圧室11A内で主に連結板23の透孔23aを介してD継手管13dに連通する。また、弁体21は、図1においてスライド弁体2が右側に移動した右側の端部位置において、S継手管13sとC継手管13cとを椀状凹部21Aにより連通する。このとき、E継手管13eは高圧室11A内で主に透孔23aを介してD継手管13dに連通する。
【0031】
一対のピストン22L,22Rは、軸方向D11について弁体21を挟むように一対設けられ、軸方向D11のスライド駆動力を受ける。各ピストン22L,22Rは、パッキン221を弁本体11の内周面に押圧しながら往復移動可能となっている。弁ハウジング1の内部は、2つのピストン22L,22Rにより、中央部の高圧室11Aと、高圧室11Aの両側に位置する第1作動室12Aと第2作動室12Bとに仕切られている。第1作動室12Aと第2作動室12Bには、図5に示されているパイロット弁3から駆動流体が流通し、一対のピストン22L,22Rは、当該駆動流体を介してスライド駆動力を受ける。一対のピストン22L,22Rは、図1に示すように鏡映対称な構造になっている。ピストン22L,22Rは、それぞれパッキン221と、固定円板222と、板ばね223とを備えている。これらのパッキン221と、固定円板222と、板ばね223とは、後述のストッパ板24L,24Rとともに軸線Xを中心として同軸に配置され、リベット224により一体に固定されている。本実施形態では、板ばね223及びストッパ板24L,24Rはステンレス製等の金属製であり、パッキン221は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製等の比較的摩擦係数が小さい樹脂製となっている。
【0032】
連結板23は、弁体21に一対のピストン22L,22Rを連結する金属板である。この連結板23は、弁ハウジング1の軸線X上に配置されるようにピストン22L,22Rの間に架設されるとともに、その中央に弁体21を保持している。また、連結板23には透孔23aが形成されている。そして、弁体21はピストン22L,22Rが移動すると連結板23に連動して弁座15上を摺動し、ピストン22L,22Rに併設されるストッパ板24L,24Rが蓋部材12L,12Rに当接した左右の位置で停止する。また、本実施形態では、この連結板23は、ステンレス製等の金属製となっている。
【0033】
各ストッパ板24L,24Rは、各ピストン22L,22Rよりも蓋部材12L,12Rに近くなるように連結板23に設けられて弁体21のスライド時に蓋部材12L,12Rに当接してスライドを止める円形の板部材である。
【0034】
固定部材25は、連結板23における軸方向D11の両端に各ピストン22L,22Rとともに各ストッパ板24L,24Rを固定するボルトである。連結板23の両端は、それぞれ軸方向D11と直交するようにL字型に曲げられ、各ピストン22L,22R及び各ストッパ板24L,24Rを固定するための固定部231となっている。各ピストン22L,22Rとともに各ストッパ板24L,24Rは、この連結板23の固定部231に当接した、軸方向D11に対する直交姿勢で固定部材25によりボルト締結されている。
【0035】
図5に示されている冷凍サイクルシステム30において、D継手管13dは圧縮機31の吐出口に接続される高圧配管となっており、S継手管13sは圧縮機31の吸入口に接続される低圧配管となっている。C継手管13cは室外熱交換機32(第一熱交換器)に接続される導管であり、E継手管13eは室内熱交換機33(第二熱交換器)に接続される導管である。室外熱交換機32と室内熱交換機33は絞り装置34(膨張手段)を介して接続される。C継手管13cから室外熱交換機32、絞り装置34、室内熱交換機33およびE継手管13eからなる経路と、S継手管13sから圧縮機31およびD継手管13dからなる経路とにより、冷凍サイクルシステム30が構成される。なお、冷凍サイクルシステム30における冷媒中には、圧縮機31およびその他機器の保護のため、微量の冷凍機油が含まれている。
【0036】
図5に示されているパイロット弁3は、弁ハウジング1の内部において軸方向D11にスライド弁体2を挟む一対の空間、即ち、第1作動室12A及び第2作動室12Bの両方に駆動流体を流通させて、スライド弁体2を軸方向D11にスライド移動させる。本実施形態では、このパイロット弁3が、第1作動室12A及び第2作動室12Bの一方に高圧配管としてのD継手管13dの流体を流通させるとともに他方に低圧配管としてのS継手管13sの流体を流通させることでスライド弁体2をスライド移動させる。
【0037】
パイロット弁3は、スライド式切換弁10と同様な構造であり、パイロット弁ハウジングの内部のパイロット弁体をスライド移動させて流路を切り換える。パイロット弁体は、圧縮機31の吸入口と接続された低圧配管としてのS継手管13sに連通する低圧継手用細管14sの連通先を、次のように切り替える。即ち、パイロット弁体は、低圧継手用細管14sの連通先を、スライド式切換弁10の第1作動室12Aに接続された第1ハウジング用細管14Lと、第2作動室12Bに接続された第2ハウジング用細管14Rとで切り換える。同時に、圧縮機31の吐出口と接続された高圧配管としてのD継手管13dに連通する高圧継手用細管14dの連通先を第2ハウジング用細管14Rと第1ハウジング用細管14Lとで切り換える。これにより、圧縮機31の吸入圧力及び吐出圧力が導入された第1作動室12Aの圧力と第2作動室12Bの圧力との間に圧力差を発生させ、当該圧力差により、スライド弁体2を軸方向D11に高圧側から低圧側へとスライド移動させる。そして、このスライド移動により、スライド弁体2における弁体21の位置が切り換えられて冷凍サイクルシステム30の流路が切り換えられる。
【0038】
以上の構成により、圧縮機31で圧縮された高圧の冷媒はD継手管13dから高圧室11A内に流入し、冷房運転の状態(冷却モード時)では、高圧冷媒はC継手管13cから室外熱交換機32に流入される。また、弁体21の位置を切り換えた暖房運転の状態(暖房モード時)では、高圧冷媒はE継手管13eから室内熱交換機33に流入される。すなわち、冷房運転時には、圧縮機31から吐出される冷媒はC継手管13c→室外熱交換機32→絞り装置34→室内熱交換機33→E継手管13eと循環する。この循環において、室外熱交換機32が凝縮器(コンデンサ)、室内熱交換機33が蒸発器(エバポレータ)として機能し、冷房がなされる。絞り装置34は、室外熱交換機32と室内熱交換機33との間にて冷媒を膨張させて減圧する。また、暖房運転時には冷媒は逆に循環され、室内熱交換機33が凝縮器、室外熱交換機32が蒸発器として機能し、暖房がなされる。
【0039】
ここで、本実施形態では、一対の蓋部材12L,12Rが次のような構成を有している。尚、一対の蓋部材12L,12Rは、図1に示すように鏡映対称な構造になっており、以下では、図2及び図4に拡大して示されている左側の蓋部材12Lを代表例として挙げ、その構造について説明する。
【0040】
蓋部材12Lは、底部121と、筒部122と、鍔部123と、を備えた有底円筒状の部材である。底部121は、弁本体11の軸方向D11について弁本体11の開口11aの外側に位置し、軸方向D11に対する交差方向D12に、開口11aの開口面積よりも狭い延在面積で延在する板状の部位である。即ち、底部121は、開口11aの内径寸法φ11よりも小径の円板状に形成され、開口11aと同軸かつ外側に位置する部位となっている。筒部122は、底部121の周縁から軸方向D11について開口11aに向かって延びる円筒状の部位である。この筒部122の外径も、開口11aの内径寸法φ11よりも小径となっている。鍔部123は、筒部122における弁本体11の開口11aの側の端縁から筒部122の外側に径方向に向かって鍔状に延在した部位である。この鍔部123は、開口11aの内側から径方向の外側に、開口11aの外径と同径になるまで円環状に延在している。そして、この鍔部123の外周端部が、弁本体11において開口11aを囲む開口端11a-1に固定されることで、蓋部材12Lは弁本体11の開口11aを塞いでいる。また、本実施形態では、筒部122の周壁を貫通して第1作動室12Aに達するように第1ハウジング用細管14Lが接続されている。そして、上記の鍔部123には、軸方向D11に対する交差方向D12について、開口11aの中心側(具体的には円形の開口11aの径方向内側)に向かって平面状に延在する平面部123aが設けられている。平面部123aは軸方向D11と直交している。この平面部123aは、ストッパ板24Lを当接させることでスライド弁体2の軸方向D11の作動範囲を規定する円環状の部位である。スライド弁体2のこの作動範囲は、左側のストッパ板24Lが左側の蓋部材12Lにおける平面部123aに当接する位置から、右側のストッパ板24Rが右側の蓋部材12Rにおける平面部123aに当接する位置までの範囲である。
【0041】
ここで、本実施形態では、スライド弁体2における上記の固定部材25は、蓋部材12Lの側からストッパ板24Lを貫通するように取り付けられるボルトであり、ボルト頭部は、蓋部材12Lに向かってストッパ板24Lから突出する突出部251となっている。この突出部251は、鍔部123の平面部123aにストッパ板24Lが当接した状態において、蓋部材12Lにおける底部121及び筒部122で区画される内部空間124に位置するように構成されている。
【0042】
また、本実施形態では、鍔部123には、筒部122の内周面122aと平面部123aとを繋ぐ曲面部123bが設けられている。平面部123aは、プレス(面打ち)あるいは切削加工が施されており、曲面部123bが小さくなるようにされており、この曲面部123bは、底部121に対面する方向からの平面視において、筒部122の外周面122bよりも筒部122の中心寄りに位置している。また、平面部123aに施されたプレス(面打ち)あるいは切削加工により、平面部123aの平坦度を確保することができ、ピストン22L,22Rの傾きをより抑制することができる。更に、鍔部123の外周端部には、平面部123aよりも外周側となる位置に、弁本体11の軸方向D11について底部121側に凹んだ円環状の段差部123cが設けられている。この段差部123cは、軸方向D11に対する交差方向D12に延在する円環状の第一面123c-1と軸方向D11に延在する円筒面状の第二面123c-2を有している。弁本体11の開口端11a-1は、この段差部123cにおける第一面123c-1に当接して溶接により固定される。その結果、図3に示されているように、鍔部123と弁本体11との境界には、全周に亘って溶接部125が形成されている。また、段差部123cの第二面123c-2は、弁本体11の内径寸法φ11以下の径寸法φ12で形成された円筒面となっている。
【0043】
また、本実施形態では、段差部123cは、鍔部123において平面部123aを有する板部分よりも肉厚が例えば切削加工等により薄肉化された部位となっている。更に、本実施形態では、弁本体11の開口端11a-1の内周側に面取り11a-2が形成され、外周側にも面取り11a-3が形成されている。
【0044】
以上に説明した第1実施形態のスライド式切換弁10及び冷凍サイクルシステム30では、蓋部材12L,12Rの鍔部123に形成された平面部123aにスライド弁体2のストッパ板24L,24Rを当接させることでスライド弁体2の作動範囲が規定される。この構成によれば、スライド駆動力を受けるピストン22L,22Rがスライド時に蓋部材12L,12Rに当接して力を受けるようなことがない。また、ストッパ板24L,24Rの当接先が、弁本体11の軸方向D11と直交する平面部123aであることからストッパ板24L,24Rと平面部123aとの当接も安定的に行われる。その結果、当接時のピストン22L,22Rの傾きが抑制されることとなり、スライド弁体2のスライド動作が繰り返された際の耐久性の低下を抑制することができる。
【0045】
ここで、本実施形態では、鍔部123に設けられた曲面部123bが筒部122の外周面122bよりも筒部122の中心寄りに位置している。この構成によれば、鍔部123において曲面部123bが筒部122の外周面122bの更に外側にまで延在する場合に比べて、鍔部123における平面部123aを大きくとることができる。これにより、平面部123aに対するストッパ板24L,24Rの当接が更に安定するので、スライド弁体2のスライド動作が繰り返された際の耐久性の低下を一層抑制することができる。また、鍔部123の外径サイズを変えずに平面部123aを大きくとることができるので、鍔部123全体としては小さくて済む。
【0046】
また、本実施形態では、固定部材25の突出部251が、平面部123aへのストッパ板24L,24Rの当接時に蓋部材12L,12Rの内部空間124に位置する。この構成によれば、上記の当接時に、蓋部材12L,12Rの鍔部123と固定部材25における突出部251とが干渉することがない。このため、平面部123aと固定部材25の突出部251との接触を回避するためのスペーサ等が不要であり、部品点数を削減しつつ平面部123aに対するストッパ板24L,24Rの当接を安定させることができる。つまり、上記の構成によれば、スライド弁体2のスライド動作が繰り返された際の耐久性の低下を、部品点数を削減しつつ抑制することができる。
【0047】
また、鍔部123の平面部123aがストッパ板24L,24Rの外周端部と円環状に当接するため、当接時のピストン22L,22Rの傾きが一層抑制されることとなる。これにより、スライド弁体2のスライド動作が繰り返された際の耐久性の低下を更に抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、鍔部123の外周端部に段差部123cが設けられ、弁本体11の開口端11a-1が段差部123cの第一面123c-1に当接する。この構成によれば、組立時に、段差部123cに弁本体11の開口端11a-1を収めることで、弁本体11の開口11aに対する蓋部材12L,12Rの位置決めがなされる。その結果、弁本体11の開口11aに対する蓋部材12L,12Rの接合についての作業性が向上し、この接合を容易に行うことができる。
【0049】
また、本実施形態では、段差部123cの第二面123c-2が、弁本体11の内径寸法φ11以下の径寸法φ12で形成された円筒面となっている。この構成によれば、組立時に、段差部123cの第二面123c-2を弁本体11の開口11aに圧入することなく、段差部123cに弁本体11の開口端11a-1を収めることができる。これにより、組立時に弁本体11が変形して蓋部材12L,12Rが傾いた状態で組付けられる等といった事態が効果的に回避される。本実施形態では、蓋部材12の固定に溶接が用いられているが、一般的に、圧入部に対する溶接固定の場合、圧入の残留応力と溶接の熱により、固定対象物が傾いた状態になりやすい。これに対し、本実施形態では、上記のように、組立時に、段差部123cの第二面123c-2を弁本体11の開口11aに圧入することなく、段差部123cに弁本体11の開口端11a-1が収められる。その結果、当接時のピストン22L,22Rの傾きが更に抑制されることとなり、スライド弁体2のスライド動作が繰り返された際の耐久性の低下を更に抑制することができる。また、上記の構成によれば、段差部123cの軸方向D11の深さ寸法が、圧入のための圧入代が不要となるために最小限の深さ寸法でよく、段差部123cの加工について容易化することもできる。
【0050】
また、本実施形態では、段差部123cは、鍔部123における他の板部分よりも肉厚が薄肉化された部位となっている。この構成によれば、例えば鍔部123の厚みはそのままに外周端部を軸方向D11に変形させて段差部123cを形成する場合に比べ、切削等により段差部123cを容易に形成することができる。
【0051】
また、本実施形態では、図2に示されているように、段差部123cにおける第一面123c-1と第二面123c-2との境界部に隅R123c-3が形成されている。これに対し、本実施形態では、弁本体11の開口端11a-1の内周側に面取り11a-2が形成されている。この構成に依れば、面取り11a-2で隅R123c-3を避けつつ弁本体11の開口端11a-1を段差部123cにおける第一面123c-1に安定的に当接させることができる。これにより、組立時に蓋部材12L,12Rが傾いた状態で弁本体11に組付けられる等といった事態が効果的に回避される。その結果、当接時のピストン22L,22Rの傾きが更に抑制されることとなり、スライド弁体2のスライド動作が繰り返された際の耐久性の低下を更に抑制することができる。
【0052】
以上で第1実施形態の説明を終了し、次に第2実施形態について図6に基づいて説明する。この第2実施形態は、第1実施形態における蓋部材12L,12Rの鍔部123に対する変形例となっている。以下では、第2実施形態について、第1実施形態との相違点に注目して説明する。また、冷凍サイクルシステムについては第1実施形態と同等であるので図示や説明を割愛する。
【0053】
図6は、第2実施形態のスライド式切換弁について、弁ハウジングの軸方向に沿った断面を示す断面図である。尚、この図6では、図1に示されている第1実施形態の構成要素と同等な構成要素については、説明に必要なものにのみ図1と同じ符号が付されて示されている。尚、以下の説明では、図6において、蓋部材52Lが図示されている側を左側と呼び、蓋部材52Rが図示されている側を右側と呼ぶ。
【0054】
第2実施形態のスライド式切換弁50では、弁ハウジング5において弁本体11の両端を塞ぐ蓋部材52L,52Rが次のような構成を有している。各蓋部材52L,52Rは、第1実施形態と同等の底部121及び筒部122を有するとともに、第1実施形態に対する変形例としての鍔部523を有している。この鍔部523では、弁本体11の開口端11a-1を収める段差部523cが、第1実施形態のような薄肉加工ではなく例えば軸方向D11のプレス変形等といった変形加工によって形成されている。その結果、鍔部523における段差部523cの裏側は、段差部523cにおける図6の右側の凹み分に応じて軸方向D11に弁本体11から離れる図6の左側へと膨出した膨出部523dとなっている。この膨出部523dは、軸線X側の一部が、スライド弁体2のストッパ板24L,24Rが当接する平面部523aと重なるように形成され、当接強度が強化されている。また、本実施形態でも、上述の第1実施形態と同様に、鍔部523は弁本体11に溶接によって固定されており、鍔部523と弁本体11との境界には、全周に亘って溶接部525が形成されている。
【0055】
以上に説明した第2実施形態によっても、上述の第1実施形態と同様に、スライド弁体2のスライド動作が繰り返された際の耐久性の低下を抑制することができることは言うまでもない。
【0056】
尚、以上に説明した第1及び第2実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、これに限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によっても尚本発明のスライド式切換弁の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0057】
例えば、上述の第1及び第2実施形態では、スライド式切換弁の一例として、4本の配管の連通状態を切換える四方切換弁としてのスライド式切換弁10,50が例示されているが、スライド式切換弁は四方切換弁に限るものではない。スライド式切換弁は、弁ハウジングに少なくとも一対の配管が接続されたものであれば、例えば3本の配管のうちの一対の配管を連通させるときの連通対象の配管を、スライド弁体を用いて切換える三方切換弁であってもよい。または、2本の配管の相互間を、スライド弁体を用いて開閉する二方切換弁等であってもよい。スライド式切換弁における配管の数や、連通状態の切換え方等については、スライド式切換弁の適用対象等に応じて適宜に設定し得るものである。
【0058】
また、上述の第1及び第2実施形態では、蓋部材の一例として、鍔部123,523に筒部122の外周面122bよりも中心寄りに曲面部123bが設けられた蓋部材12L,12R,52L,52Rが例示されている。しかしながら、蓋部材は、これに限るものではなく、如何なる曲面部も設けられていないものであってもよく、曲面部が設けられる場合であっても、筒部の外周面の更に外側にまで延在するように曲面部が設けられることとしてもよい。ただし、筒部122の外周面122bよりも中心寄りに曲面部123bを設けることで、スライド弁体2のスライド動作が繰り返された際の耐久性の低下を一層抑制することができる点は上述した通りである。また、上記のように曲面部123bを設けることで、鍔部123全体としては小さくて済む点も上述した通りである。
【0059】
また、上述の第1及び第2実施形態では、スライド式切換弁の一例として、固定部材25の突出部251が、ストッパ板24L,24Rの当接時に蓋部材12L,12R,52L,52Rの内部空間124に位置するスライド式切換弁10,50が例示されている。また、第1及び第2実施形態では、固定部材25としてボルトが採用されている。しかしながら、スライド式切換弁はこれに限るものではない。ボルト以外の例えばリベット等を固定部材として用いてもよい。更に、固定部材におけるストッパ板からの突出部が、蓋部材の内部空間には収まらず、突出部と蓋部材の接触を回避するためにスペーサ等を用いることとしてもよい。ただし、固定部材25の突出部251を蓋部材12L,12R,52L,52Rの内部空間124に収める構成によれば、スライド弁体2のスライド動作が繰り返された際の耐久性の低下を、部品点数を削減しつつ抑制することができる点は上述した通りである。
【0060】
また、上述の第1及び第2実施形態では、蓋部材の一例として、鍔部123,523における段差部123c,523cの第一面123c-1に、弁本体11の開口端11a-1が当接する蓋部材12L,12R,52L,52Rが例示されている。しかしながら、蓋部材は、これに限るものではなく、鍔部に如何なる段差部も設けないこととしてもよい。ただし、段差部123c,523cの第一面123c-1に、弁本体11の開口端11a-1を当接させる構成によれば、弁本体11の開口11aに対する蓋部材12L,12R,52L,52Rの接合を容易に行うことができる点は上述した通りである。
【0061】
また、上述の第1及び第2実施形態では、蓋部材における段差部の一例として、第二面123c-2が、弁本体11の内径寸法φ11以下の径寸法φ12で形成された円筒面となった段差部123c,523cが例示されている。しかしながら、蓋部材における段差部は、これに限るものではなく、第二面が、弁本体の内径寸法を超える径寸法で形成された円筒面となって、この段差部を有する蓋部が弁本体の開口に圧入されることとしてもよい。ただし、第二面123c-2が、弁本体11の内径寸法φ11以下の径寸法φ12で形成された円筒面となった段差部123c,523cを採用することで、組立時における弁本体11の変形が効果的に回避される点は上述した通りである。また、圧入代が不要となるので段差部123cの加工について容易化できる点も上述した通りである。
【0062】
また、上述の第1実施形態では、蓋部材における段差部の一例として、鍔部123における他の板部分よりも薄肉化された段差部123cが例示されている。しかしながら、蓋部材における段差部は、これに限るものではなく、例えば第2実施形態において例示されているように、鍔部523における他の板部分と同厚、あるいは他の板部分よりも厚肉となったものであってもよい。薄肉化された段差部123cは、切削等により容易に形成することができる点は上述した通りである。
【0063】
また、上述の第1及び第2実施形態では、蓋部材の段差部に収められる弁本体の開口端の一例として、内周側に面取り11a-2が形成された弁本体11の開口端11a-1が例示されている。しかしながら、弁本体の開口端は、これに限るものではなく、内周側に如何なる面取りも形成されていないものであってもよい。ただし、弁本体11の開口端11a-1の内周側に面取り11a-2を形成することで、段差部123c,523cにおける隅R123c-3を面取り11a-2で効果的に避けることができる点は上述した通りである。また、上述の第1及び第2実施形態では、弁本体11の開口端11a-1の外周側にも面取り11a-3が形成された形態が例示されているが、開口端の内周側にのみ面取りを設けることとしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1,5 弁ハウジング
2 スライド弁体
10,50 スライド式切換弁
11 弁本体
11A 高圧室
11a 開口
11a-1 開口端
11a-2,11a-3 面取り
12L,12R,52L,52R 蓋部材
12A 第1作動室
12B 第2作動室
13c C継手管
13d D継手管
13e E継手管
13s S継手管
14L 第1ハウジング用細管
14R 第2ハウジング用細管
14d 高圧継手用細管
14s 低圧継手用細管
15 弁座
21 弁体
21A 椀状凹部
22L,22R ピストン
23 連結板
23a 透孔
24L,24R ストッパ板
25 固定部材
30 冷凍サイクルシステム
31 圧縮機
32 室外熱交換機(第一熱交換器)
33 室内熱交換機(第二熱交換器)
121 底部
122 筒部
122a 内周面
122b 外周面
123,523 鍔部
123a,523a 平面部
123b 曲面部
123c,523c 段差部
123c-1 第一面
123c-2 第二面
123c-3 隅R
124 内部空間
125,525 溶接部
221 パッキン
222 固定円板
223 板ばね
224 リベット
231 固定部
251 突出部
523d 膨出部
D11 軸方向
D12 交差方向
X 軸線
φ11 内径寸法
φ12 径寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6