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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】電解システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/00 20060101AFI20241105BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20241105BHJP
   C25B 1/23 20210101ALI20241105BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241105BHJP
【FI】
C25B15/00 302A
C25B1/042
C25B1/23
C25B9/00 A
C25B9/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022047670
(22)【出願日】2022-03-24
(65)【公開番号】P2023141378
(43)【公開日】2023-10-05
【審査請求日】2022-11-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】米田 英昭
(72)【発明者】
【氏名】毛里 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】牧 美里
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 和貴
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-022978(JP,A)
【文献】特開2019-35102(JP,A)
【文献】特開2014-183032(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0253551(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0358123(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0073345(US,A1)
【文献】特開2005-232526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と、前記電解質膜を挟持する燃料極および酸素極である一対の電極とを含み、二酸化炭素ガスおよび水蒸気を含む混合ガスを電解する電解装置と、前記電解により生成される水素含有ガスに基づいて炭化水素を生成する炭化水素生成装置と、を有する電解システムであって、
前記燃料極に前記混合ガスを供給するか、前記酸素極に酸素ガスを供給するかを切り替える弁装置と、
前記一対の電極間の電流を計測する電流計と、
前記混合ガスが前記電解装置に供給されている状態において、前記電流が所定の第1閾値を下回った場合に、前記弁装置を制御して、前記電解装置への供給を前記混合ガスから前記酸素ガスに切り替え、前記燃料極に析出する炭素を、前記酸素極に供給される前記酸素ガスから生じて前記電解質膜を透過する酸素イオンと化学反応させる制御装置と、
を備える、電解システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電解システムであって、
前記酸素ガスが前記電解装置に供給されている状態において、前記電流が所定の第2閾値を下回った場合に、前記制御装置は、前記弁装置を制御して、前記電解装置への供給を前記酸素ガスから前記混合ガスに切り替える、電解システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電解システムであって、
前記制御装置は、前記電流に基づいて、前記混合ガスを電解する電解モードと、前記燃料極に析出する炭素を消費する消費モードとのいずれかを前記電解装置に実行させる、電解システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電解システムであって、
前記化学反応により生成された前記二酸化炭素ガスを貯留する二酸化炭素タンクを備え、
前記弁装置は、前記二酸化炭素タンクに貯留された前記二酸化炭素ガスと前記水蒸気とを含む前記混合ガスを前記燃料極に供給する、電解システム。
【請求項5】
請求項4に記載の電解システムであって、
前記弁装置は、前記混合ガスに含まれる前記二酸化炭素ガスを、前記二酸化炭素タンクと、前記二酸化炭素タンク以外の二酸化炭素源との少なくとも一方から供給可能であり、
前記二酸化炭素タンク内のガス圧が所定の下限値を下回った場合に、前記制御装置は、前記弁装置を制御して、前記二酸化炭素源からの前記二酸化炭素ガスの供給を開始する、電解システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電解システムであって、
前記電解により前記酸素極に生成される前記酸素ガスを貯留する酸素タンクを備え、
前記弁装置は、前記酸素タンクから前記酸素ガスを前記燃料極に供給する、電解システム。
【請求項7】
請求項6に記載の電解システムであって、
前記制御装置は、前記電解により前記酸素極に生成される前記酸素ガスを、前記酸素タンク内のガス圧が所定の上限値になるまで前記酸素タンクに貯留させる、電解システム。
【請求項8】
請求項1に記載の電解システムであって、
前記電解質膜と前記一対の電極とを含み、前記混合ガスを電解する第2電解装置を有し、
前記弁装置は、前記第2電解装置の前記燃料極に前記混合ガスを供給することにより、前記電解装置の前記酸素極に前記酸素ガスを供給する、電解システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会または脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、エネルギーの効率化に貢献する電解システムに関する研究開発が行われている。
【0003】
下記特許文献1には、メタノールおよびメタンの併産方法が開示されている。この方法は、電解工程と、メタノール合成工程とを含む。電解工程では、水蒸気と二酸化炭素との混合ガスが固体酸化物形電解セルで還元され、水素、一酸化炭素、二酸化炭素および水蒸気を含む合成ガスが生成される。メタノール合成工程では、メタノール合成触媒に通じて合成ガスからメタノールが合成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-022978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1では、固体酸化物形電解セルにおける原料ガスの利用率が高まるほど、燃料極(カソード電極)に炭素が析出する傾向がある。炭素が析出すると、混合ガスの電解効率が低減する。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、電解質膜と、前記電解質膜を挟持するカソード電極およびアノード電極である一対の電極とを含み、二酸化炭素ガスおよび水蒸気を含む混合ガスを電解する電解装置と、前記電解により生成される水素含有ガスに基づいて炭化水素を生成する炭化水素生成装置と、を有する電解システムであって、前記カソード電極に前記混合ガスを供給するか、前記アノード電極に酸素ガスを供給するかを切り替える弁装置と、前記一対の電極間の電流を計測する電流計と、前記混合ガスが前記電解装置に供給されている状態において、前記電流が所定の第1閾値を下回った場合に、前記弁装置を制御して、前記電解装置への供給を前記混合ガスから前記酸素ガスに切り替え、前記カソード電極に析出する炭素を前記酸素ガスと化学反応させる制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記の態様によれば、カソード電極に析出する炭素を削減することができる。その結果、混合ガスの電解効率の低減を抑制することができる。延いてはエネルギー効率の改善に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態による電解システムの構成を示す概略図である。
図2図2は、電解モードが実行される場合の流体の流れを示す図である。
図3図3は、消費モードが実行される場合の流体の流れを示す図である。
図4図4は、電解制御処理の手順を示すフローチャートである。
図5図5は、消費制御処理の手順を示すフローチャートである。
図6図6は、第2実施形態による電解システムの構成を示す概略図である。
図7図7は、電解装置に対して電解モードが実行され、第2電解装置に対して消費モードが実行される場合の流体の流れを示す図である。
図8図8は、電解装置に対して消費モードが実行され、第2電解装置に対して電解モードが実行される場合の流体の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態による電解システム10の構成を示す概略図である。電解システム10は、水源12と、二酸化炭素源14と、ヒータ16と、電解装置18と、炭化水素生成装置20とを有する。
【0011】
水源12は、電解装置18に供給される水蒸気源である水を出力する。水源12は、給水装置であってもよいし、水タンクであってもよい。また、水源12は、プラント設備の排液から所定の純度の水を抽出する水抽出装置であってもよい。
【0012】
二酸化炭素源14は、電解装置18に供給される二酸化炭素ガスを出力する。二酸化炭素源14は、大気から二酸化炭素ガスを分離する二酸化炭素ガス分離装置であってもよい。また、二酸化炭素源14は、プラント設備の排ガスから所定の純度の二酸化炭素ガスを抽出する二酸化炭素ガス抽出装置であってもよい。なお、二酸化炭素ガス抽出装置は、上記の水抽出装置と同じプラント設備に設けられてもよいし、当該水抽出装置と異なるプラント設備に設けられてもよい。
【0013】
ヒータ16は、水流路30、二酸化炭素ガス流路32および混合ガス流路34の各々を流れる流体を加熱する。水流路30、二酸化炭素ガス流路32および混合ガス流路34の各々の一部は、ヒータ16の内部に配置される。
【0014】
水流路30は、水源12と混合ガス流路34とを繋ぐ。水源12から水流路30に流入する水はヒータ16により加熱され、当該加熱により気化した水蒸気は混合ガス流路34に流入する。
【0015】
二酸化炭素ガス流路32は、二酸化炭素源14と混合ガス流路34とを繋ぐ。二酸化炭素源14から二酸化炭素ガス流路32に流入する二酸化炭素ガスはヒータ16により加熱され、混合ガス流路34に流入する。
【0016】
混合ガス流路34は、水流路30および二酸化炭素ガス流路32の各流路と、電解装置18のカソード入口部41とを繋ぐ。混合ガス流路34に流入する二酸化炭素ガスと水蒸気とを含む混合ガスはヒータ16により加熱され、カソード入口部41から電解装置18に流入する。
【0017】
電解装置18は、二酸化炭素ガスおよび水蒸気を電解する装置である。電解装置18は、カソード入口部41と、カソード出口部42と、アノード入口部43と、アノード出口部44と、複数の単位セル45とを有する。
【0018】
各単位セル45には、電解質膜46がカソード電極47とアノード電極48とで挟持される膜電極構造体(MEA)が備えられる。電解質膜46は、固体酸化物形電解質膜である。カソード電極47は燃料極と称される場合がある。アノード電極48は酸素極と称される場合がある。カソード電極47およびアノード電極48には電源49が接続される。
【0019】
電解装置18は、電源49から供給される電圧を各単位セル45のカソード電極47およびアノード電極48に印加する。また、電解装置18は、カソード入口部41から流入する混合ガスを各単位セル45のカソード電極47に供給する。
【0020】
カソード電極47およびアノード電極48に電圧が印加された状態において、カソード電極47に混合ガスが供給されると、各単位セル45は、混合ガスに含まれる二酸化炭素ガスおよび水蒸気の電解を開始する。二酸化炭素ガスおよび水蒸気の電解が開始されると、カソード電極47で一酸化炭素ガスおよび水素ガスが生成され、アノード電極48で酸素ガスが生成される。
【0021】
電解装置18は、各単位セル45で生成された酸素ガスを集め、当該酸素ガスを、アノード出口部44から酸素ガス流路36に出力する。また、電解装置18は、各単位セル45で生成された一酸化炭素ガスおよび水素ガスを集め、当該一酸化炭素ガスおよび水素ガスを含む水素含有ガスを、カソード出口部42から水素含有ガス流路38に出力する。水素含有ガスは、各単位セル45で生成された一酸化炭素ガスおよび水素ガスに加えて、電気分解されなかった水蒸気および二酸化炭素を含む。水素含有ガス流路38に流入する水素含有ガスは、熱交換機、除湿機等を経由して、炭化水素生成装置20に流入する。
【0022】
炭化水素生成装置20は、電解装置18で生成される水素含有ガスに含まれる一酸化炭素ガスおよび水素ガスから触媒反応によって炭化水素を生成する。炭化水素生成装置20は、フィッシャー・トロプシュ法を用いて炭化水素を生成してもよい。
【0023】
本実施形態による電解システム10は、酸素タンク50と、第1ポンプ52と、二酸化炭素タンク54と、第2ポンプ56と、弁装置58と、電流計60と、制御装置62とをさらに有する。
【0024】
酸素タンク50は、酸素ガスを貯留する。酸素タンク50に貯留される酸素ガスは、電解装置18の電解によりアノード電極48で生成される。酸素タンク50内のガス圧は、ガス圧センサ64によって計測される。ガス圧センサ64は、酸素タンク50に設けられる。
【0025】
酸素タンク50は、酸素ガス流路36上に設置される。酸素ガス流路36は、電解装置18のアノード出口部44と、電解装置18のアノード入口部43とを繋ぐ。酸素タンク50と、電解装置18のアノード入口部43との間の酸素ガス流路36の一部はヒータ16に配置される。酸素タンク50から酸素ガス流路36に流入する酸素ガスはヒータ16により加熱され、電解装置18のアノード入口部43から電解装置18に流入する。
【0026】
第1ポンプ52は、酸素タンク50と電解装置18のアノード出口部44との間の酸素ガス流路36上に設置される。第1ポンプ52は、電解装置18のアノード出口部44から酸素ガス流路36に流入する酸素ガスを酸素タンク50に供給する。なお、酸素タンク50内のガス圧が所定の上限値を超える場合、酸素ガス流路36における酸素ガスのガス圧が上昇する。酸素ガス流路36における酸素ガスのガス圧が所定のガス圧閾値を超えると、パージ流路37に設けられる逆止弁37Xが開き、酸素ガス流路36から酸化剤ガスが排出される。パージ流路37は、本実施形態では、酸素タンク50とアノード出口部44との間の酸素ガス流路36に接続される。
【0027】
二酸化炭素タンク54は、二酸化炭素含有ガスを貯留する。二酸化炭素タンク54に貯留される二酸化炭素含有ガスは、二酸化炭素ガスと酸素ガスとを含む。この二酸化炭素ガスは、カソード電極47に析出した炭素と、電解質膜46を透過した酸素イオンとの化学反応により生成される。二酸化炭素タンク54内のガス圧は、ガス圧センサ66によって計測される。ガス圧センサ66は、二酸化炭素タンク54に設けられる。
【0028】
二酸化炭素タンク54は、第2二酸化炭素ガス流路39上に設置される。第2二酸化炭素ガス流路39は、水素含有ガス流路38から分岐し、二酸化炭素源14とヒータ16との間の二酸化炭素ガス流路32に合流する。二酸化炭素タンク54から第2二酸化炭素ガス流路39に流入する二酸化炭素含有ガスはヒータ16により加熱され、電解装置18のアノード入口部43から電解装置18に流入する。
【0029】
第2ポンプ56は、二酸化炭素タンク54と水素含有ガス流路38との間の第2二酸化炭素ガス流路39上に設置される。第2ポンプ56は、電解装置18のカソード出口部42から水素含有ガス流路38に流入する二酸化炭素含有ガスを、第2二酸化炭素ガス流路39に送り出す。
【0030】
弁装置58は、電解装置18のカソード電極47に混合ガスを供給するか、電解装置18のアノード電極48に酸素ガスを供給するかを切り替え可能に構成される。弁装置58は、第1開閉弁58-1と、第2開閉弁58-2と、第3開閉弁58-3と、第4開閉弁58-4と、三方弁58-5とを含む。
【0031】
第1開閉弁58-1は、水流路30に設置される。第2開閉弁58-2は、二酸化炭素ガス流路32に設置される。第3開閉弁58-3は、酸素タンク50とヒータ16との間の酸素ガス流路36に設置される。第4開閉弁58-4は、二酸化炭素タンク54と合流部分MPとの間の第2二酸化炭素ガス流路39に設置される。合流部分MPは、二酸化炭素ガス流路32に第2二酸化炭素ガス流路39が合流する部分である。三方弁58-5は、分岐部分BPに設置される。分岐部分BPは、水素含有ガス流路38から第2二酸化炭素ガス流路39が分岐する部分である。
【0032】
電流計60は、カソード電極47およびアノード電極48と、電源49とで形成される閉回路に接続される。電流計60は、カソード電極47とアノード電極48との間の電流を計測する。この計測電流は、複数の単位セル45のカソード電極47とアノード電極48との間の電流であってもよいし、1つの単位セル45のカソード電極47とアノード電極48との間の電流であってもよい。ただし、計測電流は、複数の単位セル45のカソード電極47とアノード電極48との間の電流であることが望ましい。
【0033】
制御装置62は、電解システム10の起動命令を受けた場合に、ヒータ16を制御してヒータ16をオンにする。その後、制御装置62は、電流計60によって計測される電流に基づいて、電解モードと消費モードとのいずれかを電解装置18に実行させる。電解モードは、混合ガスを電解するモードである。消費モードは、カソード電極47に析出する炭素を消費するモードである。
【0034】
図2は、電解モードが実行される場合の流体の流れを示す図である。制御装置62は、電解モードを電解装置18に実行させる場合、電源49、弁装置58および第1ポンプ52を制御する。この場合、制御装置62は、第1ポンプ52をオンにし、カソード電極47およびアノード電極48に電圧を印加する。また、制御装置62は、第1開閉弁58-1、第2開閉弁58-2および第4開閉弁58-4を開弁し、第3開閉弁58-3を閉弁する。これに加えて、制御装置62は、三方弁58-5を制御して、水素含有ガス流路38を開け、第2二酸化炭素ガス流路39を閉じる。
【0035】
なお、制御装置62は、第2開閉弁58-2および第4開閉弁58-4の双方を同時に開弁してもよい。或いは、制御装置62は、第4開閉弁58-4を開弁した後に第2開閉弁58-2を開弁してもよい。この場合、ガス圧センサ66により計測される二酸化炭素タンク54内のガス圧が所定の下限値を下回った場合に、制御装置62は、第2開閉弁58-2を開弁し、二酸化炭素源14からの二酸化炭素ガスの供給を開始する。
【0036】
電解モードが実行されると、水源12から出力される水から得られる水蒸気と、二酸化炭素源14または二酸化炭素タンク54から出力される二酸化炭素ガスとがカソード入口部41から電解装置18に流入する。電解装置18に流入する水蒸気および二酸化炭素ガスは、カソード電極47およびアノード電極48に印加される電圧に基づいて、電解される。
【0037】
電解によりカソード電極47で生成される一酸化炭素ガスおよび水素ガスは、水素含有ガスとして、電解装置18のカソード出口部42から水素含有ガス流路38を介して炭化水素生成装置20に供給される。また、電解によりアノード電極48で生成される酸素ガスは、電解装置18のアノード出口部44から酸素ガス流路36に出力される。酸素ガス流路36に出力された酸素ガスは、第1ポンプ52によって酸素タンク50に供給され、当該酸素タンク50に貯留される。
【0038】
制御装置62は、ガス圧センサ64によって計測される酸素タンク50内のガス圧が所定の上限値になるまで、酸素タンク50に酸素ガスを貯留させる。ガス圧が上限値を超えると、制御装置62は、第1ポンプ52をオフにする。
【0039】
また、制御装置62は、電解モードの実行中に電流計60によって計測される電流(電解電流)を監視する。カソード電極47に炭素が析出すると、その炭素が抵抗体として機能し、電解電流が下がる。このため、炭素の析出量が多くなるほど、電解電流の低下量が大きくなる。電解電流が所定の第1閾値を下回った場合、制御装置62は、カソード電極47に所定量を超える炭素が析出していると判定する。この場合、制御装置62は、カソード電極47およびアノード電極48への電圧の印加を停止し、消費モードを電解装置18に実行させる。
【0040】
なお、酸素タンク50内のガス圧が上限値になるまでに、電流(電解電流)が第1閾値を下回った場合、制御装置62は、電圧の印加を停止するとともに第1ポンプ52をオフにする。
【0041】
図3は、消費モードが実行される場合の流体の流れを示す図である。制御装置62は、消費モードを電解装置18に実行させる場合、第2ポンプ56および弁装置58を制御する。この場合、制御装置62は、第2ポンプ56をオンにする。また、制御装置62は、第3開閉弁58-3を開弁し、第1開閉弁58-1、第2開閉弁58-2および第4開閉弁58-4を閉弁することで、電解装置18への供給を混合ガスから酸素ガスに切り替える。これに加えて、制御装置62は、三方弁58-5を制御して、水素含有ガス流路38を閉じ、第2二酸化炭素ガス流路39を開ける。
【0042】
消費モードが実行されると、酸素タンク50から出力される酸素ガスがアノード入口部43から電解装置18に流入する。電解装置18に流入する酸素ガスは、アノード電極48に供給される。電圧の印加を停止した状態で酸素ガスが酸素極(アノード電極48)に供給されると、酸素極(アノード電極48)はカソード極として機能するとともに、燃料極(カソード電極47)はアノード極として機能し、当該酸素ガスから生じる酸素イオンは電解質膜46を透過する。
【0043】
電解質膜46を透過した酸素イオンは、カソード電極47に析出する炭素と化学反応する。この化学反応により生成される二酸化炭素ガスは、炭素と化学反応しなかった余剰の酸素ガスを含む二酸化炭素含有ガスとして、電解装置18のカソード出口部42から第2二酸化炭素ガス流路39に流出する。第2二酸化炭素ガス流路39に流出する二酸化炭素含有ガスは、第2ポンプ56によって二酸化炭素タンク54に供給され、当該二酸化炭素タンク54に貯留される。
【0044】
制御装置62は、ガス圧センサ66によって計測される二酸化炭素タンク54内のガス圧が所定の上限値になるまで、二酸化炭素タンク54に二酸化炭素含有ガスを貯留させる。ガス圧が上限値を超えると、制御装置62は、第2ポンプ56をオフにする。
【0045】
また、制御装置62は、消費モードの実行中に電流計60によって計測される電流(発電電流)を監視する。カソード電極47に供給される酸素ガスと化学反応する炭素量が少なくなるほど、当該化学反応により得られる発電電流の低下量が大きくなる。発電電流が所定の第2閾値を下回った場合、制御装置62は、カソード電極47に析出する炭素が許容量であると判定する。この場合、制御装置62は、電解モードを電解装置18に実行させる。この実行により、電解装置18への供給が混合ガスから酸素ガスに切り替えられる。
【0046】
二酸化炭素タンク54内のガス圧が上限値になるまでに、電流(発電電流)が第2閾値を下回った場合、制御装置62は、第2ポンプ56をオフにし、電解モードを電解装置18に実行させる。なお、消費モードの実行中に得られる発電電流は、蓄電池に蓄電されてもよいし、電解システム10における電子機器に駆動用電流として供給されてもよい。これにより、電解システム10のエネルギーに補填できるので効率改善に繋がる。
【0047】
図4は、電解制御処理の手順を示すフローチャートである。電解制御処理は、電解装置18に電解モードを実行させるための処理である。なお、図4では、第1ポンプ52の制御は省略している。また、図4では、第4開閉弁58-4が開弁した後に第2開閉弁58-2が開弁する場合の例を示している。
【0048】
ステップS1において、制御装置62は、カソード電極47およびアノード電極48に電圧を印加する。その後、電解制御処理はステップS2に移行する。
【0049】
ステップS2において、制御装置62は、第1開閉弁58-1および第4開閉弁58-4を開弁し、二酸化炭素ガスおよび水蒸気を電解装置18に供給する。第1開閉弁58-1および第4開閉弁58-4が開弁されると、電解制御処理はステップS3に移行する。
【0050】
ステップS3において、制御装置62は、三方弁58-5を制御して、水素含有ガス流路38を開け、第2二酸化炭素ガス流路39を閉じる。水素含有ガス流路38が開けられると、電解制御処理はステップS4に移行する。
【0051】
ステップS4において、制御装置62は、第3開閉弁58-3を閉弁し、電解装置18で生成される酸素ガスの酸素タンク50への貯留を開始する。第3開閉弁58-3が閉弁されると、電解制御処理はステップS5に移行する。
【0052】
ステップS5において、制御装置62は、電流計60によって計測される電流(電解電流)を所定の第1閾値と比較する。電流が第1閾値以上である場合(ステップS5:NO)、電解制御処理はステップS6に移行する。逆に、電流が第1閾値を下回る場合、(ステップS5:YES)、電解制御処理はステップS8に移行する。
【0053】
ステップS6において、制御装置62は、ガス圧センサ66により計測される二酸化炭素タンク54内のガス圧を第1圧力閾値と比較する。ガス圧が第1圧力閾値以上である場合(ステップS6:NO)、電解制御処理はステップS5に戻る。逆に、ガス圧が第1圧力閾値を下回る場合(ステップS6:YES)、電解制御処理はステップS7に移行する。
【0054】
ステップS7において、制御装置62は、第2開閉弁58-2を開弁し、二酸化炭素源14から電解装置18への二酸化炭素ガスの供給を開始する。第2開閉弁58-2が開弁されると、電解制御処理はステップS5に戻る。なお、第2開閉弁58-2が開弁されると、制御装置62は、ステップS6における第1圧力閾値との比較を停止する。この場合、電解制御処理は、電流が第1閾値を下回るまでステップS5に留まる。
【0055】
ステップS8において、制御装置62は、カソード電極47およびアノード電極48への電圧の印加を停止する。その後、電解制御処理は終了する。
【0056】
図5は、消費制御処理の手順を示すフローチャートである。消費制御処理は、電解装置18に消費モードを実行させるための処理である。なお、図5では、第2ポンプ56の制御は省略している。
【0057】
ステップS11において、制御装置62は、第1開閉弁58-1、第2開閉弁58-2および第4開閉弁58-4を閉弁し、電解装置18への二酸化炭素ガスおよび水蒸気の供給を停止する。なお、電解モードにおいて第2開閉弁58-2が開弁されなかった場合、制御装置62は、第1開閉弁58-1および第4開閉弁58-4だけを閉弁する。閉弁が終了すると、消費制御処理はステップS12に移行する。
【0058】
ステップS12において、制御装置62は、三方弁58-5を制御して、水素含有ガス流路38を閉じ、第2二酸化炭素ガス流路39を開ける。第2二酸化炭素ガス流路39が開けられると、消費制御処理はステップS13に移行する。
【0059】
ステップS13において、制御装置62は、第3開閉弁58-3を開弁し、電解装置18への酸素ガスの供給を開始する。第3開閉弁58-3が開弁されると、消費制御処理はステップS14に移行する。
【0060】
ステップS14において、制御装置62は、電流計60によって計測される電流を所定の第2閾値と比較する。電流が第2閾値以上である場合(ステップS14:NO)、電解モードはステップS14に留まる。逆に、電流が第2閾値を下回る場合、(ステップS14:YES)、消費制御処理は終了する。
【0061】
以上のように第1実施形態では、電解装置18の電解によりカソード電極47およびアノード電極48の間に生じる電流が所定の第1閾値を下回ると、制御装置62は消費モードを電解装置18に実行させる。この場合、制御装置62は、電解装置18へのガスの供給を混合ガスから酸素ガスに切り替えて、カソード電極47に析出する炭素を酸素ガスと化学反応させる。これにより、カソード電極47に析出する炭素を削減することができる。その結果、混合ガスの電解効率の低減を抑制することができる。
【0062】
〔第2実施形態〕
図6は、第2実施形態による電解システム10の構成を示す概略図である。図6では、第1実施形態において説明した構成要素と同等の構成要素には同一の符号が付されている。なお、本実施形態では、第1実施形態と重複する説明は割愛する。
【0063】
本実施形態による電解システム10では、第2電解装置18Xと、第2混合ガス流路34Xと、第2水素含有ガス流路38Xと、第3二酸化炭素ガス流路39Xと、第3ポンプ56Xとが新たに備えられる。
【0064】
第2電解装置18Xは、第1実施形態の電解装置18とは別の電解装置である。この第2電解装置18Xの構成は、第1実施形態の電解装置18の構成と同じである。すなわち、第2電解装置18Xは、カソード入口部41と、カソード出口部42と、アノード入口部43と、アノード出口部44と、複数の単位セル45とを有する。単位セル45のカソード電極47およびアノード電極48には電源49Xが接続され、電源49とカソード電極47およびアノード電極48とで形成される回路に電流計60Xが接続される。
【0065】
第2電解装置18Xは、電解装置18と同様に、カソード入口部41から流入する二酸化炭素ガスおよび水蒸気を電解する。第2電解装置18Xは、電解によりカソード電極47で生成される一酸化炭素ガスおよび水素ガスを、水素含有ガスとしてカソード出口部42から出力する。また、第2電解装置18Xは、電解によりアノード電極48で生成される酸素ガスをアノード出口部44から出力する。
【0066】
また、第2電解装置18Xは、電解装置18と同様に、カソード電極47に析出した炭素を、アノード入口部43から供給される酸素ガスとの化学反応により消費する。第2電解装置18Xは、カソード電極47に析出した炭素と、電解質膜46を透過した酸素イオンとの化学反応により生成される二酸化炭素ガスを、二酸化炭素含有ガスとしてカソード出口部42から出力する。
【0067】
第2混合ガス流路34Xは、第2電解装置18Xのカソード入口部41と混合ガス流路34とを繋ぐ。混合ガス流路34から第2混合ガス流路34Xに流入する混合ガスは、第2電解装置18Xのカソード入口部41から電解装置18に流入する。第2混合ガス流路34Xと混合ガス流路34との接続部分CPには、第2三方弁58-6が設置される。
【0068】
第2水素含有ガス流路38Xは、第2電解装置18Xのカソード出口部42と、水素含有ガス流路38とを繋ぐ。カソード出口部42から第2水素含有ガス流路38Xに流入する水素含有ガスは、炭化水素生成装置20に供給される。
【0069】
第3二酸化炭素ガス流路39Xは、第2水素含有ガス流路38Xから分岐し、第2二酸化炭素ガス流路39に合流する。第3二酸化炭素ガス流路39Xが第2水素含有ガス流路38Xから分岐する分岐部分BPXには、第3三方弁58-7が設置される。なお、本実施形態の第2二酸化炭素ガス流路39に、二酸化炭素タンク54は設置されない。
【0070】
第3ポンプ56Xは、第3二酸化炭素ガス流路39X上に設置される。第3ポンプ56Xは、第2電解装置18Xのカソード出口部42から第2水素含有ガス流路38Xに流入する二酸化炭素含有ガスを、第3二酸化炭素ガス流路39Xに送り出す。
【0071】
また、本実施形態による電解システム10では、酸素ガス流路36は、第2電解装置18Xのアノード出口部44と電解装置18のアノード入口部43とを繋ぐ。これに加えて、酸素ガス流路36は、電解装置18のアノード出口部44と第2電解装置18Xのアノード入口部43とを繋ぐ。したがって、酸素ガスは、酸素ガス流路36を介して、電解装置18のアノード電極48と第2電解装置18Xのアノード電極48との間を循環する。本実施形態の酸素ガス流路36上に、酸素タンク50は設置されない。一方、パージ流路37は、第1実施形態と同様に酸素ガス流路36に接続され、当該パージ流路37に逆止弁37Xが設けられる。
【0072】
また、本実施形態による電解システム10では、第1開閉弁58-1、第2開閉弁58-2、第3開閉弁58-3および第4開閉弁58-4は、取り除かれる。つまり、弁装置58は、第1開閉弁58-1、第2開閉弁58-2、第3開閉弁58-3および第4開閉弁58-4を含まない。本実施形態の弁装置58は、三方弁58-5、第2三方弁58-6および第3三方弁58-7を含む。
【0073】
制御装置62は、電解モードおよび消費モードの一方を電解装置18に実行させ、電解モードおよび消費モードの他方を第2電解装置18Xに実行させる。電解モードと消費モードとを相互に切り替えるための指標値は、電解装置18の電流計60によって計測される電流であってもよいし、第2電解装置18Xの電流計60Xによって計測される電流であってもよい。
【0074】
すなわち、電解装置18(または第2電解装置18X)の電流計60によって計測される電流(電解電流)が所定の第1閾値を下回った場合、制御装置62は、電解装置18に対して消費モードを実行させる。この場合、制御装置62は、第2電解装置18Xに対しては電解モードを実行させる。
【0075】
一方、電解装置18(または第2電解装置18X)の電流計60によって計測される電流(発電電流)が所定の第2閾値を下回った場合、制御装置62は、電解装置18に対して電解モードを実行させる。この場合、制御装置62は、第2電解装置18Xに対しては消費モードを実行させる。
【0076】
なお、電解モードと消費モードとを相互に切り替えるための指標値は、電解装置18および第2電解装置18Xの双方の電流計60であってもよいことに留意されたい。
【0077】
図7は、電解装置18に対して電解モードが実行され、第2電解装置18Xに対して消費モードが実行される場合の流体の流れを示す図である。制御装置62は、電解装置18に対して電解モードを実行させ、第2電解装置18Xに対して消費モードを実行させる場合、電源49、弁装置58および第3ポンプ56Xを制御する。
【0078】
この場合、制御装置62は、第3ポンプ56Xをオンにし、電解装置18のカソード電極47およびアノード電極48に電圧を印加する。また、制御装置62は、三方弁58-5を制御して、水素含有ガス流路38を開け、第2二酸化炭素ガス流路39を閉じる。また、制御装置62は、第2三方弁58-6を制御して、混合ガス流路34を開け、第2混合ガス流路34Xを閉じる。また、制御装置62は、第3三方弁58-7を制御して、第3二酸化炭素ガス流路39Xを開け、第2水素含有ガス流路38Xを閉じる。
【0079】
電解装置18に対して電解モードが実行され、第2電解装置18Xに対して消費モードが実行されると、水源12から出力される水から得られる水蒸気と、二酸化炭素源14から出力される二酸化炭素ガスとがカソード入口部41から電解装置18に流入する。電解装置18に流入する水蒸気および二酸化炭素ガスは、カソード電極47およびアノード電極48に印加される電圧に基づいて、電解される。
【0080】
電解によりカソード電極47で生成される一酸化炭素ガスおよび水素ガスは、水素含有ガスとして、電解装置18のカソード出口部42から水素含有ガス流路38を介して炭化水素生成装置20に供給される。
【0081】
一方、電解によりアノード電極48で生成される酸素ガスは、電解装置18のアノード出口部44から、酸素ガス流路36を経由して、第2電解装置18Xのアノード入口部43に流れる。アノード入口部43から第2電解装置18Xに流入する酸素ガスは、アノード電極48に供給され、電解質膜46を透過してカソード電極47に供給される。
【0082】
第2電解装置18Xのカソード電極47に供給される酸素ガスは、カソード電極47に析出する炭素と化学反応する。この化学反応により生成される二酸化炭素ガスは、炭素と化学反応しなかった余剰の酸素ガスを含む二酸化炭素含有ガスとして、第2電解装置18Xのカソード出口部42から第2水素含有ガス流路38Xに流出する。第2水素含有ガス流路38Xに流出する二酸化炭素含有ガスは、第3ポンプ56Xによって二酸化炭素ガス流路32に供給される。二酸化炭素ガス流路32に供給される二酸化炭素含有ガスは、二酸化炭素源14から供給される二酸化炭素ガスとともに、混合ガス流路34を経由して電解装置18に供給される。
【0083】
このように、電解装置18の電解により得られる酸素ガスは、第2電解装置18Xのカソード電極47に析出する炭素との化学反応に用いられる。さらに、炭素との化学反応により得られる二酸化炭素ガスは、電解装置18の電解に用いられる。したがって、酸素ガスおよび二酸化炭素ガスを大気中に排気することを抑制することができ、さらにガスの利用効率化を図ることができる。これに加えて、酸素タンク50および二酸化炭素タンク54を取り除くことができ、その結果、電解システム10の小型化を図ることができる。
【0084】
図8は、電解装置18に対して消費モードが実行され、第2電解装置18Xに対して電解モードが実行される場合の流体の流れを示す図である。制御装置62は、電解装置18に対して消費モードを実行させ、第2電解装置18Xに対して電解モードを実行させる場合、電源49、弁装置58、第1ポンプ52および第2ポンプ56を制御する。
【0085】
この場合、制御装置62は、第1ポンプ52および第2ポンプ56をオンにし、第2電解装置18Xのカソード電極47およびアノード電極48に電圧を印加する。また、制御装置62は、三方弁58-5を制御して、水素含有ガス流路38を閉じ、第2二酸化炭素ガス流路39を開ける。また、制御装置62は、第2三方弁58-6を制御して、混合ガス流路34を閉じ、第2混合ガス流路34Xを開ける。また、制御装置62は、第3三方弁58-7を制御して、第3二酸化炭素ガス流路39Xを閉じ、第2水素含有ガス流路38Xを開ける。
【0086】
電解装置18に対して消費モードが実行され、第2電解装置18Xに対して電解モードが実行されると、水源12から出力される水から得られる水蒸気と、二酸化炭素源14から出力される二酸化炭素ガスとは、第2混合ガス流路34Xを経由して、カソード入口部41から第2電解装置18Xに流入する。第2電解装置18Xに流入する水蒸気および二酸化炭素ガスは、カソード電極47およびアノード電極48に印加される電圧に基づいて、電解される。
【0087】
電解によりカソード電極47で生成される一酸化炭素ガスおよび水素ガスは、水素含有ガスとして、第2電解装置18Xのカソード出口部42から第2水素含有ガス流路38Xを介して炭化水素生成装置20に供給される。
【0088】
一方、電解によりアノード電極48で生成される酸素ガスは、第1ポンプ52によって、第2電解装置18Xのアノード出口部44から電解装置18のアノード入口部43に、酸素ガス流路36を介して供給される。アノード入口部43から電解装置18に流入する酸素ガスは、アノード電極48に供給され、電解質膜46を透過してカソード電極47に供給される。
【0089】
電解装置18のカソード電極47に供給される酸素ガスは、カソード電極47に析出する炭素と化学反応する。この化学反応により生成される二酸化炭素ガスは、炭素と化学反応しなかった余剰の酸素ガスを含む二酸化炭素含有ガスとして、電解装置18のカソード出口部42から水素含有ガス流路38に流出する。水素含有ガス流路38に流出する二酸化炭素含有ガスは、第2ポンプ56によって二酸化炭素ガス流路32に供給される。二酸化炭素ガス流路32に供給される二酸化炭素含有ガスは、二酸化炭素源14から供給される二酸化炭素ガスとともに、第2混合ガス流路34Xを経由して第2電解装置18Xに供給される。
【0090】
このように、第2電解装置18Xの電解により得られる酸素ガスは、電解装置18のカソード電極47に析出する炭素との化学反応に用いられる。さらに、炭素との化学反応により得られる二酸化炭素ガスは、第2電解装置18Xの電解に用いられる。したがって、酸素ガスおよび二酸化炭素ガスを大気中に排気することを抑制することができ、さらにガスの利用効率化を図ることができる。これに加えて、酸素タンク50および二酸化炭素タンク54を取り除くことができ、その結果、電解システム10の小型化を図ることができる。
【0091】
〔変形例〕
第1実施形態または第2実施形態の電解装置18は、複数有してもよい。この場合、各電解装置18のカソード入口部41は、混合ガス流路34に対して並列接続される。同様に、各電解装置18のカソード出口部42は、水素含有ガス流路38に対して並列接続される。同様に、各電解装置18のアノード入口部43およびアノード出口部44は、酸素ガス流路36に対して並列接続される。
【0092】
第2実施形態の第2電解装置18Xは、複数有してもよい。この場合、各第2電解装置18Xのカソード入口部41は、第2混合ガス流路34Xに対して並列接続される。同様に、各第2電解装置18Xのカソード出口部42は、第2水素含有ガス流路38Xに対して並列接続される。同様に、各第2電解装置18Xのアノード入口部43およびアノード出口部44は、酸素ガス流路36に対して並列接続される。
【0093】
〔発明〕
以上の記載から把握し得る発明および効果について以下に記載する。
【0094】
(1)本発明は、電解質膜(46)と、前記電解質膜を挟持するカソード電極(47)およびアノード電極(48)である一対の電極とを含み、二酸化炭素ガスおよび水蒸気を含む混合ガスを電解する電解装置(18)と、前記電解により生成される水素含有ガスに基づいて炭化水素を生成する炭化水素生成装置(20)と、を有する電解システム(10)であって、前記カソード電極に前記混合ガスを供給するか、前記アノード電極に酸素ガスを供給するかを切り替える弁装置(58)と、前記一対の電極間の電流を計測する電流計(60)と、前記混合ガスが前記電解装置に供給されている状態において、前記電流が所定の第1閾値を下回った場合に、前記弁装置を制御して、前記電解装置への供給を前記混合ガスから前記酸素ガスに切り替え、前記カソード電極に析出する炭素を前記酸素ガスと化学反応させる制御装置(62)と、を備える。
【0095】
これにより、カソード電極に析出する炭素を削減することができる。その結果、混合ガスの電解効率の低減を抑制することができる。
【0096】
(2)本発明は、電解システムであって、前記酸素ガスが前記電解装置に供給されている状態において、前記電流が所定の第2閾値を下回った場合に、前記制御装置は、前記弁装置を制御して、前記電解装置への供給を前記酸素ガスから前記混合ガスに切り替えてもよい。これにより、カソード電極に析出する炭素が削減された状態で電解を再開させることができる。
【0097】
(3)本発明は、電解システムであって、前記制御装置は、前記電流に基づいて、前記混合ガスを電解する電解モードと、前記カソード電極に析出する炭素を消費する消費モードとのいずれかを前記電解装置に実行させてもよい。これにより、電解システムの運転時における電解効率の低減を抑制することができる。
【0098】
(4)本発明は、電解システムであって、前記化学反応により生成された前記二酸化炭素ガスを貯留する二酸化炭素タンク(54)を備え、前記弁装置は、前記二酸化炭素タンクに貯留された前記二酸化炭素ガスと前記水蒸気とを含む前記混合ガスを前記カソード電極に供給してもよい。これにより、大気中への二酸化炭素ガスの排出を抑制することができ、また二酸化炭素ガスの利用効率化を図ることができる。
【0099】
(5)本発明は、電解システムであって、前記弁装置は、前記混合ガスに含まれる前記二酸化炭素ガスを、前記二酸化炭素タンクと、前記二酸化炭素タンク以外の二酸化炭素源(14)との少なくとも一方から供給可能であり、前記二酸化炭素タンク内のガス圧が所定の下限値を下回った場合に、前記制御装置は、前記弁装置を制御して、前記二酸化炭素源からの前記二酸化炭素ガスの供給を開始してもよい。これにより、二酸化炭素ガスの利用効率化を図ることができる。
【0100】
(6)本発明は、電解システムであって、前記電解により前記アノード電極に生成される前記酸素ガスを貯留する酸素タンク(50)を備え、前記弁装置は、前記酸素タンクから前記酸素ガスを前記カソード電極に供給してもよい。これにより、大気中への酸素ガスの排出を抑制することができ、また酸素ガスの利用効率化を図ることができる。
【0101】
(7)本発明は、電解システムであって、前記制御装置は、前記電解により前記アノード電極に生成される前記酸素ガスを、前記酸素タンク内のガス圧が所定の上限値になるまで前記酸素タンクに貯留させてもよい。これにより、酸素タンク内への過度の酸素ガスの貯留を抑制することができる。
【0102】
(8)本発明は、電解システムであって、前記電解質膜と前記一対の電極とを含み、前記混合ガスを電解する第2電解装置(18X)を有し、前記弁装置は、前記第2電解装置の前記カソード電極に前記混合ガスを供給することにより、前記電解装置の前記アノード電極に前記酸素ガスを供給してもよい。これにより、酸素ガスおよび二酸化炭素ガスを大気中に排気することを抑制することができ、さらにガスの利用効率化を図ることができる。これに加えて、酸素タンクおよび二酸化炭素タンクを取り除くことができ、その結果、電解システムの小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0103】
10…電解システム 12…水源
14…二酸化炭素源 18…電解装置
18X…第2電解装置 20…炭化水素生成装置
46…電解質膜 47…カソード電極
48…アノード電極 50…酸素タンク
54…二酸化炭素タンク 58…弁装置
60…電流計 62…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8