(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】苗移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
A01C11/02 351A
(21)【出願番号】P 2022050944
(22)【出願日】2022-03-25
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】竹山 智洋
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 創
(72)【発明者】
【氏名】坂垣内 貴保
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏典
(72)【発明者】
【氏名】田村 得雄
(72)【発明者】
【氏名】大井戸 直幸
(72)【発明者】
【氏名】水谷 三喜男
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-327617(JP,A)
【文献】特開平02-249416(JP,A)
【文献】実公昭52-032659(JP,Y1)
【文献】特開平04-210509(JP,A)
【文献】実開昭53-023730(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗載台上に載置した苗マットを機体の左右方向に沿う横送り方向に送るとともに、間欠的に苗マットを平面視で機体の前後方向に沿う縦送り方向に送りながら、植付爪によって前記苗マットを一部ずつ切り取って連続的に苗を圃場に植え付けていく苗移植機であって、
前記苗マットは、前記苗載台の載置面側と反対側の面である表面側に、前記植付爪による切取りの単位に対応するとともに前記縦送り方向に直交する方向に延伸した溝部を有するものであり、
前記苗載台の下側に設けられ、機体の左右方向に延伸し、前記苗載台上に載置された前記苗マットの下側の端面部の接触を受けて前記苗マットを支持することで、前記植付爪の軌道に対して前記苗マットの位置を規定するガイドレールを備え、
前記ガイドレールは、前記苗マットの下側の端面部の接触を受ける接触支持面部と、前記接触支持面部に対して凹状溝を形成し前記苗マットの下側の端面部との間に空間をなす溝形成部と、を有し、
前記接触支持面部は、前記苗マットの前記溝部を形成する溝形成面に沿う形状を有する
ことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記凹状溝の幅方向の寸法は、前記苗マットの裏面から前記溝部の下端までの前記苗マットの厚さ方向の寸法と同等または前記厚さ方向の寸法以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の苗移植機。
【請求項3】
前記ガイドレールは、前記苗マットのうち前記植付爪により切り取られる部分を位置させる切欠状の取口部を有し、
前記凹状溝の前記取口部に対する開口端部には、前記凹状溝の凹みを無くしたまたは前記凹みを小さくした切断補助部が設けられている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の苗移植機。
【請求項4】
前記溝形成部には、前記凹状溝内の空間を外部に連通させる一または複数の開口部が形成されている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の苗移植機。
【請求項5】
前記苗載台は、前記ガイドレールに対して、機体の左右方向に往復移動するように設けられており、
前記苗載台には、前記苗載台の前記左右方向の移動にともなって前記凹状溝内を移動して前記苗マットの切削屑を除去するための掃部材が設けられている
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗植付装置によって圃場に対して連続的に苗植え作業を行う苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、苗植付装置によって圃場に対して連続的に苗植え作業を行う苗移植機において、後下がりの傾斜状の苗載台上に載せられた板状の苗マットを横送りおよび縦送りしながら、苗植付装置が有する植付爪によって苗マットを連続的に一部ずつ掻き取って(切り取って)苗を植えていく構成を備えたものがある。このような構成において、植付爪による苗マットの掻取りが行われる部分には、苗マットの下側の縁部を支持することで植付爪の軌道に対して苗マットの位置を規定するガイドレールが設けられている。ガイドレールは、機体左右方向に延伸しており、苗マットの横送りをガイドする。
【0003】
苗マットを支持するガイドレールに関し、例えば、特許文献1および特許文献2には、苗マットを下側の側面部(端面部)から支持するガイド面をなす支持面部において、苗マットの下側の端面部の接触を受ける部分に対して凹部をなすように溝部を形成した構成のものがある。このような構成においては、ガイドレールの溝部により、苗マットの端面部とガイドレールの支持面部との間に空間が形成されることになる。この苗マットとガイドレールとの間の空間が、植付爪による苗マットの掻き取り跡において突部をなすように生じた切残り等を逃がす空間となり、ガイドレールに対する苗マットの位置ずれ等が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公昭52-32659号公報
【文献】実開昭53-23730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に開示されたガイドレールの構成の場合、例えば田植機用の苗マット等のように、苗マットの下側の端面部が、全体的に苗マットの底面(下面)に対して垂直状の面部となっている苗マットに対しては、溝部による逃がしの作用が得られると考えられる。
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に開示されたガイドレールの構成によれば、例えば野菜の苗マット等のように所定の形状に成形された苗マットに対しては、苗マットの端面部の形状に対応することができない場合がある。かかる場合、苗マットの切残りがガイドレールのガイド面に接触し、苗マットの縦送り量が不足したり、ガイドレールによる苗マットの端面部の支持が不安定となったりし、植付爪による苗マットの掻取り位置(切断位置)のずれが生じやすくなる。苗マットの掻取り位置のずれは、特に野菜の苗マットの場合、欠株や苗の損傷等の不具合を生じさせる原因となり得る。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、ガイドレールに対する苗マットの位置ずれを抑制することができ、植付爪による苗マットの掻取り位置の正確性を向上することができる苗移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る苗移植機は、苗載台上に載置した苗マットを機体の左右方向に沿う横送り方向に送るとともに、間欠的に苗マットを平面視で機体の前後方向に沿う縦送り方向に送りながら、植付爪によって前記苗マットを一部ずつ切り取って連続的に苗を圃場に植え付けていく苗移植機であって、前記苗マットは、前記苗載台の載置面側と反対側の面である表面側に、前記植付爪による切取りの単位に対応するとともに前記縦送り方向に直交する方向に延伸した溝部を有するものであり、前記苗載台の下側に設けられ、機体の左右方向に延伸し、前記苗載台上に載置された前記苗マットの下側の端面部の接触を受けて前記苗マットを支持することで、前記植付爪の軌道に対して前記苗マットの位置を規定するガイドレールを備え、前記ガイドレールは、前記苗マットの下側の端面部の接触を受ける接触支持面部と、前記接触支持面部に対して凹状溝を形成し前記苗マットの下側の端面部との間に空間をなす溝形成部と、を有し、前記接触支持面部は、前記苗マットの前記溝部を形成する溝形成面に沿う形状を有するものである。
【0009】
本発明に係る苗移植機は、前記苗移植機において、前記凹状溝の幅方向の寸法は、前記苗マットの裏面から前記溝部の下端までの前記苗マットの厚さ方向の寸法と同等または前記厚さ方向の寸法以上であるものである。
【0010】
本発明に係る苗移植機は、前記苗移植機において、前記ガイドレールは、前記苗マットのうち前記植付爪により切り取られる部分を位置させる切欠状の取口部を有し、前記凹状溝の前記取口部に対する開口端部には、前記凹状溝の凹みを無くしたまたは前記凹みを小さくした切断補助部が設けられているものである。
【0011】
本発明に係る苗移植機は、前記苗移植機において、前記溝形成部には、前記凹状溝内の空間を外部に連通させる一または複数の開口部が形成されているものである。
【0012】
本発明に係る苗移植機は、前記苗移植機において、前記苗載台は、前記ガイドレールに対して、機体の左右方向に往復移動するように設けられており、前記苗載台には、前記苗載台の前記左右方向の移動にともなって前記凹状溝内を移動して前記苗マットの切削屑を除去するための掃部材が設けられているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガイドレールに対する苗マットの位置ずれを抑制することができ、植付爪による苗マットの掻取り位置の正確性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る苗移植機の全体構成を示す左側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る苗移植機の全体構成を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る苗移植機の動力伝達構成を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る苗移植装置の構成を示す後方斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る苗移植装置の構成を示す背面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る苗植付装置の構成を示す前方斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る苗移植装置の下部の構成を示す後方斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る苗マットを示す斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る苗マットを示す平面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る苗マットを示す側面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るガイドレールおよび植付爪装置の構成を示す斜視図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るガイドレールおよび植付爪装置の構成を示す左側面図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係るガイドレールおよび植付爪装置の構成を示す平面図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る植付爪装置の動作のうち苗マットの掻取り動作についての説明図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係る植付爪装置の動作のうち苗ブロックの植付け動作についての説明図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係るガイドレールの構成およびガイドレールに対する苗マットの支持構成を示す左側面図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係るガイドレールおよび切断補助部の構成を示す左側面図である。
【
図18】本発明の一実施形態に係る切断補助部材を示す図である。
図18Aは切断補助部材の斜視図である。
図18Bは切断補助部材の平面図である。
図18Cは切断補助部材の側面図である。
図18Dは切断補助部材の正面図である。
【
図19】本発明の一実施形態に係るガイドレールおよび掃部材の構成を示す左側面図である。
【
図20】本発明の一実施形態に係るガイドレールおよび掃部材の構成を示す斜視図である。
【
図21】本発明の一実施形態に係るガイドレールおよび掃部材の構成を示す斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、苗移植機において、苗マットを載置させる苗載台の下縁部に沿って設けられたガイドレールの構成等を工夫することにより、苗マットの位置ずれを防止するとともに、植付爪による苗マットの切断位置の精度を向上しようとするものである。以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1から
図7を用いて、本実施形態に係る苗移植機1の全体構成について説明する。なお、以下の説明では、苗移植機1の前方に向かって左側(
図2における下側)および右側(
図2における上側)を、それぞれ苗移植機1における左側および右側とする。
【0017】
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る苗移植機1は、運転者であるオペレータを乗車させて走行しながら苗植え作業を行う乗用型の苗移植機であり、例えばキャベツ、タマネギ、トマト等の野菜の苗を圃場に対して順次移植するために用いられる。苗移植機1は、走行部を構成する走行機体2と、植付部を構成する苗移植装置3とを備える。苗移植装置3は、複数のリンクを含んで構成されたリンク装置4を介して走行機体2の後部に昇降可能に連結されている。苗移植装置3は、図示せぬ油圧シリンダの動作によって走行機体2に対して昇降する。
【0018】
走行機体2は、機体フレーム5と、左右の前輪6と、左右の後輪7とを有する。機体フレーム5は、複数のフレーム部材により枠組み状に構成されており、水平状のフレーム部分を構成する前フレーム部11と、前フレーム部11の後側において階段状に1段上がった段部をなす後フレーム部12とを有する。左右の前輪6は、前フレーム部11の下側に設けられており、左右の後輪7は、後フレーム部12の後下側に設けられている。左右の前輪6および左右の後輪7により、機体フレーム5が圃場に対して支持される。
【0019】
走行機体2において、前フレーム部11の上側には、車体カバー等により構成された水平状の床部13が設けられている。床部13上には、走行機体2および苗移植装置3を運転・操作するための運転部8が設けられている。後部の左右中央部には、シートマウントである座席支持台9が設けられており、座席支持台9上に運転用の座席10が設けられている。座席10の下方には、図示せぬ燃料タンクが設けられている。
【0020】
床部13上における前部には、座席10に着座したオペレータにより操作される操作部14が設けられている。操作部14には、座席10の前方に位置する操向ハンドル15等を配置したダッシュボード16、変速ペダル18等の各種操作ペダル、変速レバーや植付クラッチレバー等の各種操作レバー等が設けられている。操向ハンドル15は、ダッシュボード16から上側に突出したハンドル支軸15aの上端部に取り付けられている。
【0021】
床部13の前部の左右中央部であって操向ハンドル15の前下方には、駆動源としてのエンジン20が設けられている(
図1参照)。エンジン20は、ボンネット17で覆われている。エンジン20は、前フレーム部11の前部の下側に設けられたエンジンサポートフレーム部21に対してブラケットや防振ゴム等を介して搭載されている(
図1参照)。エンジンサポートフレーム部21は、正面視でU字状をなす前後2本のサポートフレーム21aを含む。エンジン20は、例えばディーゼルエンジンであり、出力軸の軸方向を左右方向とする向きで設けられている。
【0022】
エンジン20の後方には、ギア群やクラッチやブレーキ等を含んで構成された動力伝達機構を内蔵したミッションケース22が設けられている。ミッションケース22の左側には、無段変速機の一例であるHST23が取り付けられている。
【0023】
図3に示すように、エンジン20の動力は、エンジン20の出力軸20aから、プーリおよびベルト等により構成されたベルト伝動機構24を介して、HST23の入力軸23aに伝達される。入力軸23aに伝達された動力は、HST23からミッションケース22内の動力伝達機構に入力される。ここで、「HST」とは、油圧ポンプを駆動させることで発生させた油圧を油圧モータで再び回転力に変換する方式を採用した油圧式無段変速装置である。
【0024】
ミッションケース22の左右両側には、フロントアクスルケース25が取り付けられている。フロントアクスルケース25の下端部には前車軸26が回転可能に支持されており、前車軸26のフロントアクスルケース25からの左右外側への延出部分に、前輪6が取り付けられている。フロントアクスルケース25内には、ミッションケース22から左右両側に延出した前輪駆動軸の回転動力を前車軸26に伝達する動力伝達機構が設けられている。
【0025】
ミッションケース22の後方には、リアアクスルケース28が設けられている。リアアクスルケース28は、ミッションケース22の後部から延出した伝動軸27によりミッションケース22の動力の伝達を受ける。HST23からミッションケース22内の動力伝達機構に入力された動力は、伝動軸27を回転駆動させる。
【0026】
リアアクスルケース28は、左右両側に、ケース本体部に対して後向きに突出した張出しケース部28aを有する。左右のケース部28aには、後車軸29が回転可能に支持されており、後車軸29の張出しケース部28aからの左右外側への延出部分に、後輪7が取り付けられている。リアアクスルケース28内には、ミッションケース22から伝動軸27により入力された回転動力を左右の後車軸29に伝達する動力伝達機構が設けられている。
【0027】
また、ミッションケース22は、その後部から動力取出軸であるPTO出力軸31を後側に延出している。HST23から動力の入力を受けたミッションケース22内の動力伝達機構は、PTO出力軸31を回転駆動させる。
【0028】
PTO出力軸31の回転動力は、PTO伝動軸32を介して、株間変速ケース33の入力軸34に伝達される。PTO伝動軸32は、PTO出力軸31および入力軸34それぞれに対してユニバーサルジョイント等により連結されている。株間変速ケース33内には、増減速ギアや変速機構等により構成された変速装置36が設けられている。入力軸34に伝達された動力は、株間変速ケース33内の変速装置36により変速され、株間変速ケース33から後側に延出した植付駆動軸35により、苗移植装置3に伝達される。
【0029】
苗移植装置3は、植付駆動軸35により動力の伝達を受ける動力伝達機構を内蔵した植付ミッションケース40と、リンク装置4の後側に連結された植付フレーム41に設けられた苗載台42と、植付ミッションケース40から伝達される動力により駆動する苗植付装置43とを備えている。本実施形態では、左右一対の苗植付装置43を備えている。なお、苗植付装置43は、1つであっても3つ以上であってもよい。
【0030】
苗載台42には、複数の苗マット100が載置される。苗載台42は、表面側(後上側)に、苗マット100の載置を受ける載置面を有し、載置面を後下がりの傾斜状とするように設けられている。本実施形態に係る苗移植機1は、4条植えの構成を備えており、左右方向に並んだ4つの苗載台部46を有する。なお、図示においては、左から2番目の苗載台部46のみに苗マット100を載置した状態が示されているが、実際の植付け作業においては全ての苗載台部46に苗マット100が載置される。
【0031】
各苗載台部46は、板状の部材により構成され苗マット100の載置面部をなす台本体部46aと、台本体部46aの左右の縁部に沿って設けられた低い壁状のガイド部46bとを有する。ガイド部46bは、台本体部46aにおける苗マット100の載置面部に対する突条部分であり、台本体部46aの延伸方向の全体にわたって設けられている。苗載台42は、各苗載台部46の台本体部46aにおいて、セットされた苗マット100を間欠的に縦方向(下方)に移動させる縦送り構造を有する。
【0032】
各苗載台部46には、送出ベルト47が設けられている。本実施形態では、各苗載台部46において、横並びで2列の送出ベルト47が設けられている。送出ベルト47は、背面視で上下方向に沿う方向を送り方向とする無端状のベルトであり、台本体部46aの下部をなすように設けられている。送出ベルト47は、苗マット100の載置を受ける側を下側に移動させるように周回駆動するように構成されており、苗マット100を間欠的に縦送りする。
【0033】
苗載台42の下側には、機体の左右方向に直線状に延伸したガイドレール48が設けられている。ガイドレール48は、苗載台42の下縁部に沿うように設けられており、苗載台42の左右方向の幅よりも長い寸法を有する。ガイドレール48は、苗移植装置3において、植付フレーム41に対して所定の支持部材により支持され固定状態で設けられている。ガイドレール48は、苗載台42に載せられた苗マット100を下側から支持する。
【0034】
苗載台42は、各苗載台部46上に載置された苗マット100を、各植付ユニットに対して供給する。苗載台42は、苗マット100を左右方向(車幅方向)に横送りさせるため、図示せぬ駆動機構により左右方向に往復移動可能に構成されている。つまり、苗載台42は、ガイドレール48に対して、機体の左右方向に往復移動するように設けられている。また、苗載台42は、左右方向の往復移動について移動端に達したタイミングで、送出ベルト47の送り動作により、各苗載台部46上の苗マット100を下方に縦送りするように構成されている。苗載台42の左右方向の移動において、苗載台42上に載置された苗マット100は、ガイドレール48に下側から支持された状態でガイドレール48に沿って移動することになる。
【0035】
苗載台42の下方の位置には、植付フレーム41の一部を構成する横フレーム45が設けられている。横フレーム45は、四角筒状の外形を有する直線状のフレーム部材であり、左右方向に延伸するように横設されている。横フレーム45は、苗移植装置3において左右方向の略全体にわたる範囲に設けられている。
【0036】
横フレーム45上の中央部に、植付ミッションケース40が設けられている。植付ミッションケース40は、その後部を横フレーム45の後側に位置させるように張出し状に設けられており、後側への張出部を有する。横フレーム45の後側に、左右の苗植付装置43が設けられている。左右の苗植付装置43は、苗移植装置3の左右方向の中心に対して左右対称的に構成されている。
【0037】
苗植付装置43は、ロータリ式の植付装置であり、植付伝動ケース51と、植付伝動ケース51の左右両側に設けられた2つのロータリケース52と、各ロータリケース52に対して設けられた植付爪装置50とを有する。つまり、苗移植装置3は、4つの植付爪装置50を有し、4条植えの構成に対応している。植付伝動ケース51の左右両側において、ロータリケース52および植付爪装置50によって植付ユニットが構成されている。
【0038】
植付伝動ケース51は、前後方向を長手方向とした筒状の外形を有し、前端部を横フレーム45の後壁部に対して固定させており、横フレーム45の後側から後方に向けて延伸している。左右の植付伝動ケース51間には、左右方向を軸方向とした植付伝動軸55が設けられている。
【0039】
植付伝動軸55は、複数の軸体を継手等により同軸状に連結した軸であり、植付ミッションケース40に対して回転可能に支持されている。植付伝動軸55は、植付ミッションケース40の後部から左右両側に延出し、左右の植付伝動ケース51の前部において各植付伝動ケース51に対して回転可能に支持されている。植付伝動軸55は、植付ミッションケース40内に設けられた動力伝達機構による動力の伝達を受ける。植付伝動軸55により、植付ミッションケース40と左右の植付伝動ケース51との各ケース内の動力伝動機構同士が連動連結されている。
【0040】
植付伝動ケース51の後部の左右両側に、左右一対のロータリケース52が設けられている。ロータリケース52は、植付伝動ケース51の後端部に対して左右方向を軸方向とする駆動軸52aにより回転可能に取り付けられている。ロータリケース52は、長手状の外形を有し、長手方向の中央部を植付伝動ケース51に対して軸支させている。ロータリケース52の左右外側には、植付爪装置50が取り付けられている。
【0041】
植付爪装置50は、ロータリケース52の長手方向の一端側の部分に対して、左右方向を回転軸方向として回転可能に支持されている。植付爪装置50は、植付伝動ケース51に対するロータリケース52の回転動作に連動するようにロータリケース52に対して連結されている。植付爪装置50は、ロータリケース52の回転にともなって所定の植付け動作をするように構成されている。植付爪装置50は、植付け動作することにより、苗載台42に載置された苗マット100を順次一部ずつ(一株ずつ)掻き取って圃場に植え付ける。苗移植機1の機体の前進にともない、1つの植付爪装置50により1条分の苗の植付けが行われる。
【0042】
ガイドレール48には、苗マット100の被掻取り部分を位置させるとともに植付爪装置50の移動経路を確保する取口部49が設けられている。取口部49は、ガイドレール48の長手方向について、各植付爪装置50に対応する位置に設けられている。したがって、取口部49は、ガイドレール48において4箇所に設けられている。取口部49は、後側を開放側とするとともに平面視で矩形状に沿う形状を有する切欠き状の部分である。
【0043】
以上のような構成を備えた苗移植装置3は、植付ミッションケース40において、植付駆動軸35からの動力の入力を受ける。植付ミッションケース40に入力された駆動力は、植付ミッションケース40内の動力伝達機構によって植付伝動軸55に伝達される。植付伝動軸55の回転駆動力は、左右の苗植付装置43に分配され、植付伝動ケース51内に設けられた複数の伝動軸やギア等を介して、植付伝動ケース51の左右両側のロータリケース52の駆動軸52aに伝達される。駆動軸52aの回転駆動により、左右のロータリケース52が回転動作し、植付ユニットによる苗の連続的な植付け動作が行われる。
【0044】
苗移植機1の動力伝達系において、ロータリケース52の駆動軸52aに入力される回転動力は、HST23により、運転部8に設けられた変速ペダル18等の変速操作部材の操作量に応じて、走行機体2の走行速度とともに変速する。したがって、ロータリケース52の回転速度、つまり苗移植装置3の植付け速度は、走行機体2の走行速度に応じて変化する。詳細には、機体の走行速度が高速となるほど、ロータリケース52の回転周期は短くなり、機体の走行速度が低速となるほど、ロータリケース52の回転周期は長くなる。これにより、走行機体2の走行速度にかかわらず、苗の植付け間隔(株間)が一定となる。
【0045】
また、株間に関し、
図3に示すように、株間変速ケース33内の変速装置36により、ロータリケース52の回転速度を変更することができ、これにより、株間を変更することができる。株間変速ケース33内には、植付クラッチ37が設けられている。植付クラッチ37の操作により、変速装置36から植付駆動軸35への回転動力の断続が操作される。植付クラッチ37の接続/切断の切換え動作は、運転部8に設けられた植付クラッチレバーの操作により操作される。なお、植付クラッチ37の動作は、苗移植機1が備えるコントローラによっても制御可能となっている。
【0046】
苗移植装置3が備える4つの各植付ユニットの後方には、左右一対の覆土輪61が設けられている。覆土輪61は、円錐台状の外形を有し、外周面を圃場に対する作用面として回転自在に支持されている。一対の覆土輪61は、底面側同士を対向させる向きで、各覆土輪61の外周面の下側を略水平とするように傾斜状に設けられており、背面視で略「V」字状をなすように配置されている。
【0047】
覆土輪61は、平面視で苗植付装置43を囲むように枠状に構成された覆土輪支持フレーム62の後辺部62aに対して支持部材を介して支持されている。覆土輪支持フレーム62は、前側の端部を横フレーム45に対して支持させた状態で設けられている。一対の覆土輪61により、植付爪装置50による苗の植付けが行われた部分に対して植付けの直後に覆土輪61が作用することで鎮圧が行われる。
【0048】
また、苗移植装置3においては、植付フレーム41の下部の左右両側に、苗移植装置3を地面に対して支持するスタンド64が設けられている。スタンド64は、略「L」字状に屈曲形成されたパイプ状の部材により構成されており、一側の端部を、横フレーム45に対して支持金具等を介して前後方向を軸方向として回動可能に支持させている。スタンド64は、略水平状の収納状態から、一方の辺部を地面に沿わせるように立った状態となることで、地面に対して苗移植装置3を支持する使用状態となる。なお、図示においては、収納状態のスタンド64を示しており、
図5において使用状態のスタンド64を二点鎖線で示している。
【0049】
苗マット100について、
図8から
図10を参照して説明する。苗マット100は、複数の種子を所定の配列で播種させたものである。苗マット100に播種される種子は、例えばキャベツ、タマネギ、トマト等の野菜の種子である。ただし、種子は、水稲種子であってもよい。苗移植機1による苗の植付けに際し、苗マット100は、種子から苗を成長させた状態で用いられる。
【0050】
図8から
図10に示すように、苗マット100は、略矩形板状の外形を有し、全体として平板状に形成されている。苗マット100においては、矩形状の平面視外形における長手方向(
図9における上下方向)を縦方向とし、同外形における短手方向(
図9における左右方向)を横方向とする。縦方向と横方向とは、苗マット100の平面視において互いに直交する方向となる。
【0051】
苗マット100は、一方の板面側を表面部101とし、他方の板面側を裏面部102とする。苗マット100は、表面部101に、縦方向に所定の間隔を隔てて横方向に沿って形成された複数の表面側溝部103を有する。苗マット100は、横方向の両側の面部である側面部100aと、縦方向の両側の面部である端面部100bとを有する。
【0052】
表面側溝部103は、V字溝であり、苗マット100の側面視でV字状をなす一対の溝形成面103aにより形成されている。表面側溝部103は、その深さD1を、例えば苗マット100の厚さT1の1/3~1/2程度の寸法とするように形成されている。なお、苗マット100は、横方向視(側面視)での外形形状を横方向の全体について略一定としており、表面側溝部103の両端を苗マット100の側面部100aに開放させている。
【0053】
苗マット100において、表面部101側の表面側溝部103により区画された部分が、行ブロック部104となる。行ブロック部104は、表面部101側において、縦方向の両側の表面側溝部103により、相対的に突出した突条部をなしている。表面部101側において、行ブロック部104に複数の播種穴105が形成されている。
【0054】
図8から
図10に示す例では、苗マット100は、横方向に沿う行ブロック部104を縦方向に20行分つなげたものとなっている。なお、
図10において、隣り合う行ブロック部104間の境界を仮想線B1で示している。
【0055】
各行ブロック部104において、複数の播種穴105は、横方向に沿って1列に所定の間隔で設けられている。播種穴105は、例えば略円柱形状の穴部である。播種穴105には、一または複数の種子が入れられる。各行ブロック部104は、仮想平面A1に沿う上面104aを有する。播種穴105は、行ブロック部104の上面104aに臨んで開口している。
【0056】
播種穴105内の種子から成長した苗106は、播種穴105から伸び出て、表面部101から延出した状態となる。また、苗マット100は、播種穴105内の種子から裏面部102側において根が伸びることを許容する材料により形成されている。苗マット100を形成する材料は、有機物によって構成される繊維材料である有機質繊維資材を含む。有機質繊維資材は、例えば、ココピート、ピートモス、籾殻等である。また、苗マット100を形成する材料は、バインダー、土壌改良資材、肥料、土等を含むものであってもよい。なお、
図8および
図9においては苗106の図示を省略している。
【0057】
苗マット100においては、1つの播種穴105の形成部位が、植付爪装置50の植付け動作により1回に掻き取られる(切り取られる)1株分の単位ブロック部108となる。単位ブロック部108は、平面視で播種穴105を中心部とした略正方形状の範囲の部分であり、植付爪装置50によって苗マット100の厚さ方向の全体にわたって掻き取られることで、苗マット100から分離され、略直方体形状あるいは略立方体形状の苗ブロック110(
図14C参照)となる。あくまでも一例であるが、苗ブロック110は、一辺の長さを約30mm程度とした略立方体形状を有する。
【0058】
図8から
図10に示す例では、各行ブロック部104において横方向に10個の播種穴105が形成されており、各行ブロック部104は、植付爪装置50により掻き取られることで苗ブロック110となる単位ブロック部108が10個分つながった部分となっている。なお、
図8および
図9において、苗マット100の端に位置する1つの行ブロック部104について、隣り合う単位ブロック部108間の境界を仮想線B2で示している。
【0059】
また、苗マット100は、裏面部102に、縦方向に所定の間隔を隔てて横方向に沿って形成された複数の裏面側溝部107を有する。裏面側溝部107は、縦方向について、表面側溝部103に対応した位置に形成されている。したがって、裏面側溝部107は、表面側溝部103とともに、縦方向に隣り合う行ブロック部104間の繋がり部分の、苗マット100の厚さ方向(
図10における上下方向)の寸法を短くしている。
【0060】
裏面側溝部107は、U字溝であり、苗マット100の側面視でU字状をなす一対の側面および湾曲状の上湾曲面により形成されている。裏面側溝部107は、その深さD2を、例えば苗マット100の厚さT1の1/4~1/3程度の寸法とするように形成されている。裏面側溝部107は、両端を苗マット100の側面部100aに開放させている。なお、裏面側溝部107の形状はU字溝に限定されない。
【0061】
複数の行ブロック部104は、苗マット100の裏面部102側において、複数の裏面側溝部107により、表面部101側と同様のピッチで区画されている。行ブロック部104は、裏面部102側において、縦方向の両側の裏面側溝部107により、相対的に突出した突条部をなしている。各行ブロック部104は、仮想平面A1と平行な仮想平面A2に沿う下面104bを有する。
【0062】
裏面側溝部107は、送出ベルト47上に載置される苗マット100において、送出ベルト47に設けられた係止用の複数の突条部47a(
図7参照)の嵌合を受ける部分となる。突条部47aは、送出ベルト47の表面から突出した部分であり、左右方向に沿って直線状に形成されている。突条部47aは、例えば矩形状に沿う横断面形状を有する。複数の突条部47aの縦方向の間隔は、苗マット100における複数の裏面側溝部107の縦方向の間隔に対応している。裏面側溝部107は、突条部47aを嵌合させるように突条部47aよりもわずかに幅広に形成されている。
【0063】
苗マット100は、送出ベルト47上に載置された状態において、各裏面側溝部107に突条部47aを嵌合させることで、送出ベルト47に係止された状態となる。これにより、苗マット100は、縦送り動作として周回駆動する送出ベルト47に対して滑ることなく、送出ベルト47による縦送りの作用を確実に受けることができる。つまり、苗載台42は、送出ベルト47により、苗マット100を確実にガイドレール48側へと縦送りすることができる。また、各裏面側溝部107に突条部47aを嵌合させることによる送出ベルト47に対する苗マット100の係止作用により、苗マット100が自重により縦方向に圧縮されることを防止することができる。
【0064】
以上のような苗マット100は、苗移植装置3において、植付爪装置50によって次のようにして掻き取られて圃場に植え付けられる。すなわち、ガイドレール48により支持された部分となる下端の行ブロック部104の左右一側の端部である始端に位置する単位ブロック部108から、苗載台42の左右一方側への移動により、左右他側に向けて順次掻き取られる。つまり、苗マット100は、植付爪装置50による1回の掻取りを受ける周期で、横方向について1つの単位ブロック部108分の距離だけガイドレール48に沿って移動し、順次新たな単位ブロック部108が被掻取り位置である取口部49上に位置することになる。
【0065】
下端の行ブロック部104が始端側から順次掻き取られ、下端の行ブロック部104の左右他側の端部である終端の単位ブロック部108が掻き取られたタイミングで、送出ベルト47の動作により、苗マット100が行ブロック部104の一行分下側へと送られ(縦送りされ)、苗マット100は新たに下端に位置することになった行ブロック部104の端面部100b側からガイドレール48に支持された状態となる。つまり、新たな行ブロック部104が被掻取り部分としてガイドレール48上に位置した状態となる。そして、直前での終端側が始端側となり、折り返して左右他方側へ移動する苗載台42により苗マット100が移動しながら、単位ブロック部108が順次掻き取られる。
【0066】
このように、苗マット100は、苗載台42の左右往復移動による横送り、および送出ベルト47の間欠的な動作による縦送りにより、下側から上側にかけて左右方向に往復する順番で、所定の軌跡を描いて回転する植付爪装置50によって単位ブロック部108毎に掻き取られる。
【0067】
苗マット100において、ガイドレール48に支持される側となる端面部100bは、溝形成面103aと、裏面側溝部107の幅方向の略半分の形状に対応した溝形成面107aと、溝形成面103aと溝形成面107aとの間の中間面109aとを有する。苗マット100は縦方向について行ブロック部104を単位として周期的な形状を有することから、端面部100bの形状は、植付爪装置50による掻取りを受ける前の苗マット100における下側の端面部100bと、少なくとも一行の行ブロック部104が掻き取られた後の苗マット100における端面部100bとで略同じとなっている。植付爪装置50による掻取りを受けた状態の端面部100bにおいては、中間面109aが、植付爪装置50による切断面となる。
【0068】
植付爪装置50の構成について、
図6、
図11から
図13を用いて説明する。
図6、
図11から
図13に示すように、植付爪装置50は、アーム部71と、アーム部71に固定された状態で設けられた植付爪72と、アーム部71に対して移動可能に設けられた押出部材73と、植付爪72に対向するように設けられた保持部材としての保持板74と、保持板74を支持する保持板支持部75とを有する。
【0069】
植付爪装置50は、ロータリケース52に対する連結部分を基部70とし、アーム部71や植付爪72等を基部70から所定の方向に向けて直線状に延出させた延出部を有し、植付爪72の先端を延出部の先端としている。以下では、植付爪装置50における延出部の延出方向(
図12における矢印C1の方向)に沿う向きを「爪延出方向」とする。また、植付爪装置50において、爪延出方向についての植付爪72の先端側を前側とし、その反対側を後側とする。
【0070】
アーム部71は、植付爪装置50の爪延出方向を筒軸方向とした略筒状の部分である。アーム部71は、基部70と一体の部分として基部70から爪延出方向に延出している。
【0071】
植付爪72は、略矩形板状の爪基部81と、爪基部81の長手方向の一側から爪延出方向に延出した2つの爪本体部82とを有し、先端側を二股状とした構成を有する。植付爪72は、全体として略一定の幅を有し、幅方向を左右方向とするとともに、長手方向を爪延出方向に沿わせた向きで設けられている。
【0072】
爪基部81は、扁平な略「U」字状の横断面形状をなす屈曲板状の部分であり、平面部と左右両側の側壁部とを有する。爪基部81の前端部の上側から、爪本体部82が爪延出方向に延出している。
【0073】
植付爪72は、爪基部81において爪延出方向に間隔をあけて設けられた2箇所の固定部によりアーム部71の上側に固定されている。植付爪72の固定部は、アーム部71から上側に突出するとともに爪基部81の平面部を貫通した雄ネジ部83にナット84を螺合させた締結固定部である。
【0074】
一対の爪本体部82は、爪基部81の幅方向の両縁部から爪延出方向に沿って直線状に延出している。一対の爪本体部82は、互いの間に略一定幅の間隔をあけて平行状に形成されており、一対の爪本体部82の間には空間部85が形成されている。
【0075】
各爪本体部82は、先端部を先鋭状に形成された先鋭部82aとしている。一対の爪本体部82は、左右方向について略対称の形状を有する。各爪本体部82は、上面部82bと左右外側の側面部82cとにより、略「L」字状の横断面形状をなしている。左右の爪本体部82の側面部82c間の間隔は、苗ブロック110の横方向の寸法と略同じとなっている。つまり、苗マット100における単位ブロック部108の横方向の寸法は、左右の側面部82c間の間隔と略同じとなっている。
【0076】
押出部材73は、アーム部71の前側に設けられており、アーム部71に対して、爪延出方向に沿って往復移動するように設けられている。押出部材73は、植付爪72の一対の爪本体部82の下側に設けられている。押出部材73は、プッシュロッド86と、プッシュロッド86の先端側に設けられた押圧片87とを有する。
【0077】
プッシュロッド86は、アーム部71をシリンダ部としてアーム部71とともにシリンダ機構を構成するロッド部であり、アーム部71の先端から爪延出方向に沿って延出している。プッシュロッド86は、アーム部71からの突出量を変化させるようにアーム部71に対して往復移動する。プッシュロッド86は、先端部をロッド本体部に対して上側に向けて直角状に屈曲させた屈曲部86aとしている。
【0078】
押圧片87は、平板状の支持板部87aと、支持板部87aの幅方向の両側に設けられた左右の側壁部87bと、前壁部87cとを有する。前壁部87cは、プッシュロッド86の軸方向視で支持板部87aおよび左右の側壁部87bの形状に対応して、上側を開放側とした切欠部87d(
図13参照)によりプッシュロッド86の軸方向視で略「U」字状をなす形状を有する。
【0079】
押圧片87においては、前壁部87cの前側の壁面が、苗ブロック110に対する押圧面87eとなる。押圧片87においては、支持板部87a上における左右の側壁部87b間に、前側を切欠部87dにより開放させた空間部95が形成されている。押圧片87は、アーム部71に対してプッシュロッド86と一体的に移動する。
【0080】
押圧片87は、支持板部87aにプッシュロッド86の屈曲部86aを貫通させた状態で、プッシュロッド86に溶接等によって固定されている。押圧片87は、側壁部87bにおいて、後部に対して前部の上下方向の寸法を大きくした形状を有する。押圧片87は、左右の側壁部87bの前部の上縁部を、爪本体部82に沿わせるとともに略「L」字状の横断面形状を有する爪本体部82の内側に位置させている。
【0081】
押出部材73は、アーム部71に対する移動について、後端位置である保持位置(
図15A参照)と、前端位置である押出位置(
図15B参照)との間で往復移動する。
【0082】
押出部材73の保持位置は、植付爪装置50における押出部材73の待機位置であって、植付爪装置50が苗ブロック110を保持する状態での位置である。押出部材73が保持位置にある状態で、押圧片87は、爪延出方向について爪本体部82の中間部に位置する。
【0083】
押出部材73の押出位置は、アーム部71に対する押出部材73の前進端の位置であって、植付爪装置50が苗ブロック110を押し出した(放出した)状態での位置である。押出部材73が押出位置にある状態で、押圧片87は、爪延出方向について前端を爪本体部82の先鋭部82aと略同じ位置に位置させる。
【0084】
保持板74は、側面視で所定の屈曲形状を有する板状の部材であり、弾性変形を可能としている。保持板74は、幅方向を左右方向とした向きで、アーム部71における植付爪72の固定側と反対側である下側から爪延出方向に向けて延出している。保持板74は、一対の爪本体部82の下側において、爪本体部82に対向するように設けられている。保持板74は、例えば数ミリメートル程度の厚さの板金等によって形成されている。
【0085】
保持板74は、側面視での屈曲形状をなす部分として、後側(アーム部71側)から前側(爪本体部82の先端側)にかけて順に、基部板部74a、傾斜板部74b、および先端屈曲部74cを有する。保持板74は、爪突出方向について、先端の位置を、爪本体部82の先端の位置と略一致させている。
【0086】
基部板部74aは、爪延出方向に沿って延伸した部分であり、爪本体部82と平行状の部分である。基部板部74aは、保持板74の長手方向の略半分をなしている。傾斜板部74bは、基部板部74aに対して鈍角をなすように屈曲した部分である。側面視において基部板部74aと傾斜板部74bとがなす角度は例えば140°程度である。保持板74は、傾斜板部74bにより、後側から前側にかけて徐々に爪本体部82との間の間隔を狭くしている。
【0087】
先端屈曲部74cは、傾斜板部74bに対して直角状あるいは鈍角をなすように屈曲した部分である。側面視において傾斜板部74bと先端屈曲部74cとがなす角度は例えば100°程度である。保持板74は、先端屈曲部74cにより、爪本体部82との間の間隔を後側から前側にかけて徐々に広げている。
【0088】
保持板74は、傾斜板部74bと先端屈曲部74cとによる上側(爪本体部82側)に凸の稜線部74dを、爪本体部82の先端部近傍に位置させている。左右の爪本体部82と保持板74の稜線部74dとの間の間隔は、苗ブロック110の縦方向の寸法よりもわずかに小さくなっている。つまり、苗マット100における単位ブロック部108の縦方向の寸法は、爪本体部82と稜線部74dとの間の間隔に対してわずかに小さくなっている。
【0089】
保持板74は、爪本体部82により掻き取られた苗ブロック110を、爪本体部82とともに挟み込んで保持する板バネとして機能する。つまり、保持板74は、その自然状態に対して弾性変形によって爪本体部82との間の間隔を広げた状態で、付勢力を持って一対の爪本体部82とともに苗ブロック110を挟持する。保持板74は、保持板支持部75に固定された状態で支持されている。
【0090】
保持板支持部75は、左右方向を板厚方向とした板状の部材により構成されており、植付爪装置50の基部70に対して、左右方向について植付伝動ケース51側と反対側に取り付けられている。保持板支持部75は、ボルト88によって基部70に締結固定されている。
【0091】
保持板支持部75は、上縁部を、アーム部71の下方近傍に位置させている。保持板支持部75の前部の上縁部に、保持板74が固定されている。保持板74は、基部板部74aの左右一側(植付伝動ケース51側)に、基部板部74aに対して直角状に屈曲した固定面部74eを有する。保持板74は、固定面部74eを保持板支持部75の左右一側に沿わせた状態で、保持板支持部75を貫通するボルト89とこれに螺合するナット90によって前後2箇所で保持板支持部75に締結固定されている。なお、保持板74は、アーム部71に対して直接取り付けられたものであってもよい。
【0092】
以上のような構成を備えた植付爪装置50の動作について、
図14および
図15を用いて説明する。
図14A~
図14C、並びに
図15Aおよび
図15Bに示すように、植付爪装置50は、ロータリケース52(
図6参照)の駆動軸52aによる回転にともなって、ガイドレール48上に支持された苗マット100からの苗ブロック110の取出し(掻取り)、苗ブロック110を一時的に保持した状態での搬送、および苗ブロック110の植付けを繰り返し行うように連続的に回動する。
【0093】
図14Aは、植付爪装置50が苗マット100を掻き取る直前の状態を示している。
図14Aに示すように、植付爪装置50は、苗マット100を下側から支持したガイドレール48に対して爪本体部82を上後側から近付ける。植付爪装置50は、ガイドレール48に支持された苗マット100の下端の行ブロック部104の1つの単位ブロック部108を掻取り対象とし、その単位ブロック部108に爪本体部82を近付ける。掻取り対象の単位ブロック部108は、ガイドレール48の取口部49上に位置している。
【0094】
図14Bに示すように、植付爪装置50は、苗マット100に対し、爪本体部82の先端を、掻取り対象の単位ブロック部108の上側の表面側溝部103から切り込ませる。
【0095】
そして、植付爪装置50が振り下ろされる態様で前下側に移動することで、
図14Cに示すように、植付爪72により単位ブロック部108が掻き取られ、苗ブロック110として植付爪装置50に保持された状態となる。ここで、単位ブロック部108は、一対の爪本体部82と保持板74との間に挟まれながら掻き取られる。単位ブロック部108の掻取りにおいて、爪本体部82と保持板74との先端部間の間隔を広げた先端屈曲部74cによってガイド作用が得られる。また、掻取り対象の単位ブロック部108は、爪本体部82の先端を受け入れる表面側溝部103の溝形状によりガイド作用を受ける。
【0096】
苗マット100の掻取りにおいて、植付爪装置50は、ガイドレール48に対して、側面視で爪本体部82の先端部の移動軌跡について所定の軌跡E1(
図12参照)を描きながら苗マット100に作用する。軌跡E1は、ガイドレール48の近傍において上側を凸側とした湾曲形状を有し、全体としてループ状となる。爪本体部82の先端部は、側面視において、隣り合う行ブロック部104間の境界(
図10、仮想線B1)の近傍を通過する。
【0097】
図14Cに示すように、植付爪72により掻き取られた苗ブロック110は、一対の爪本体部82と保持板74との間に挟持されて保持される。一対の爪本体部82とともに苗ブロック110を保持する保持板74においては、稜線部74dが苗ブロック110に対する主な当接部分となる。例えば、苗ブロック110の保持状態において、保持板74の弾性変形により、一対の爪本体部82と保持板74との間の間隔が、苗ブロック110の保持前の状態と比べて広がる。
【0098】
植付爪装置50に保持された状態の苗ブロック110の後側には、押圧片87が位置している。また、植付爪装置50において、左右の爪本体部82間の空間部85および押圧片87の空間部95(
図11参照)は、保持された状態の苗ブロック110の苗106を位置させる空間部分となり、植付爪装置50に対する苗106の干渉が避けられる。
【0099】
図15Aに示すように、苗ブロック110を保持した状態の植付爪装置50は、植付爪72の先端部を下側に向けながら下方に移動する。そして、
図15Bに示すように、植付爪装置50は、植付爪72の先端部を圃場面91より下側の圃場内に位置させる所定のタイミングで、押出部材73により苗ブロック110を押し出す(放出する)。植付爪装置50は、アーム部71に対して押出部材73を前側に移動させることで、押出部材73により苗ブロック110を爪延出方向に向けて押し出す(矢印F1参照)。苗ブロック110は、押出部材73による押出しの勢いをともなって放出され圃場に対して所定の植付け深さで植え付けられる。
【0100】
押出部材73による苗ブロック110の押出しにおいて、押出部材73は、押圧片87の押圧面87eを苗ブロック110への接触面として苗ブロック110に押圧作用する。苗ブロック110に対する押圧面87eの接触面は、苗マット100における上面104aに相当する面となる。また、押出部材73は、アーム部71に対して付勢力をもって前側に移動し、苗ブロック110を弾き出す態様で押し出す。また、苗ブロック110は、圃場に植え付けられる際、保持板74により後側から覆われているため、圃場に対する衝突から保護される。
【0101】
圃場に苗ブロック110を植え付けた植付爪装置50は、押出位置にある押出部材73を徐々に保持位置に戻しながら、圃場面91に対して上昇するように移動する。そして、植付爪装置50は、植付爪72をガイドレール48の後上側に位置させる位置に戻り、次の掻取り対象の単位ブロック部108の掻取りおよび苗の植付けを行う。このように、植付爪装置50は、爪本体部82の先端部についてループ状の軌跡E1を描くように回動しながら、1サイクルで1つの単位ブロック部108の掻取りおよび苗ブロック110の植付けを行い、機体の前進にともなって一列に所定の株間で連続的な苗の植付けを行う。
【0102】
苗マット100においては、下端の行ブロック部104、つまりガイドレール48上に位置する行ブロック部104が、左右のいずれかの方向に向かう苗マット100の横送りの一行程における掻取り対象となる。苗マット100を左右一方へ横送りしながらの植付爪装置50による連続的な植付け動作により、下端に位置する行ブロック部104の単位ブロック部108がすべて掻き取られた所定のタイミングで、送出ベルト47により苗マット100が一行分縦送りされる。
【0103】
苗マット100の縦送り後、新たに下端に位置した行ブロック部104について、苗マット100を左右他方へ横送りしながらの単位ブロック部108の連続的な掻取りが順次行われる。このように、苗マット100は、横送りによって左右方向に往復移動しながら、間欠的に縦送りされ、植付爪装置50により、下側の行ブロック部104から順次掻き取られていく。
【0104】
以上のように、苗移植機1は、苗載台42上に載置した苗マット100を機体の左右方向に沿う横送り方向に送るとともに、間欠的に苗マット100を平面視で機体の前後方向に沿う縦送り方向に送りながら、植付爪72によって苗マット100を一部ずつ切り取って連続的に苗106を圃場に植え付けていくように構成されている。
【0105】
そして、苗移植機1が用いる苗マット100は、苗載台42の載置面側と反対側の面である表面側(表面部101側)に、植付爪72による切取りの単位に対応するとともに縦送り方向に直交する方向に延伸した溝部として表面側溝部103を有する。以上のように苗マット100を用いる苗移植機1に関し、ガイドレール48およびその周囲の構成について説明する。
【0106】
ガイドレール48およびその周囲の構成について、
図11から
図13、
図16から
図21を用いて説明する。ガイドレール48は、苗載台42の下側に設けられており、苗載台42上に載置された苗マット100の下側の端面部100bの接触を受けて苗マット100を支持することで、植付爪72の軌道に対して苗マット100の位置を規定する。
【0107】
ガイドレール48は、所定の屈曲形状を有する板状の部材により、長手方向の略全体にわたって両側の端面の形状(側面視形状)と同じ一定の横断面形状をなすように構成されている。ガイドレール48は、側面視形状をなす部分として、概略的に、苗載台42の載置面に沿うように後下がりに傾斜した前傾斜面部121と、前傾斜面部121とともに側面視で略「V」字状をなす後傾斜面部122とを有し、これらの面部によって樋状に構成されている。
【0108】
ガイドレール48は、平面視における前側の部分をなす第1レール部材123と、平面視における後側の部分をなす第2レール部材124とを複数の連結部材125により連結させた構成を有する。第1レール部材123により、前傾斜面部121の上側の部分が形成されており、第2レール部材124により、前傾斜面部121の下側の部分と後傾斜面部122とが形成されている。
【0109】
連結部材125は、第1レール部材123と第2レール部材124の端面同士の合わせ部120に跨るように、前傾斜面部121の裏側(苗マット100の載置側と反対側)に位置している。連結部材125は、左右方向を長手方向とした幅狭の板状部材であり、左右方向に複数設けられている。連結部材125は、第1レール部材123の後縁部および第2レール部材124の前縁部のそれぞれを貫通する固定ネジ126の螺挿を受けることで、第1レール部材123と第2レール部材124を互いに連結させている。なお、ガイドレール48は、一体のレール部材により構成されたものであってもよい。
【0110】
ガイドレール48は、長手方向の複数箇所(4箇所)に、苗マット100のうち植付爪72により切り取られる部分(単位ブロック部108)を位置させる切欠状の取口部49を有する。
図13に示すように、取口部49は、後側を開放側とした切欠き形状をなす部分として、左右方向に互いに対向する左右の側縁部49aと、左右方向に沿う前縁部49bとを有する。また、取口部49の開口縁部の左右両側の角部には、側縁部49aに対する傾斜辺をなす面取部49cが形成されている。左右の面取部49cにより、取口部49の開口端部の左右幅が拡開状に広がっている。取口部49は、平面視での前後方向について前傾斜面部121および後傾斜面部122の全体にわたる範囲に切欠き状に形成されている。
【0111】
図13に示すように、取口部49の左右の幅寸法G1、つまり左右の側縁部49a間の間隔は、所定の幅を有する植付爪72の幅寸法G2と略同じとなっている。詳細には、ガイドレール48は、取口部49の幅寸法G1について、植付爪72の幅寸法G2に対してわずかに大きい寸法を有する。
図13に示すように、植付爪装置50は、左右方向について、植付爪72の左右の側面を、取口部49の左右の側縁部49aに対して所定の隙間G3分内側に位置させるように設けられている。隙間G3の大きさは、例えば数ミリメートル(例えば3mm)である。なお、植付爪装置50は、左右方向について所定の位置を保持しながら植付け動作を行うように構成されており、植付爪装置50の植付け動作において、隙間G3の大きさは保持される。
【0112】
ガイドレール48は、苗マット100の下側の端面部100bの接触を受ける接触支持面部130と、接触支持面部130に対して凹状溝131を形成し苗マット100の下側の端面部100bとの間に空間132をなす溝形成部133とを有する。そして、接触支持面部130は、苗マット100の表面側溝部103を形成する溝形成面103aに沿う形状を有する。接触支持面部130は、溝形成面103aに沿う部分として、傾斜支持面部134を有する。
【0113】
接触支持面部130は、後傾斜面部122のうち、ガイドレール48の幅方向(平面視で前後方向に沿う方向)の後側の部分である。接触支持面部130は、概略的に後上がりの傾斜状の面部をなす後傾斜面部122における後上側の部分として設けられている。
【0114】
接触支持面部130において、傾斜支持面部134は、苗載台42上に載置されたセット状態の苗マット100の下側の端面部100bの溝形成面103aの接触を受ける部分となる。傾斜支持面部134は、苗マット100の表面側溝部103の形状等に応じて、セット状態の苗マット100の下側の端面部100bにおける溝形成面103aと平行または略平行となるように傾斜している。
【0115】
接触支持面部130は、傾斜支持面部134の後側に、ガイドレール48の後側の縁端部をなす縁端面部135を有する。接触支持面部130は、傾斜支持面部134と縁端面部135により、側面視で鈍角状をなす屈曲面部として形成されている。
【0116】
図16に示す例では、傾斜支持面部134は、側面視での苗載台42の載置面の傾斜方向(矢印H1参照、以下「載置面傾斜方向」という。)に対する垂直方向に対してなす角度θ1が約30°となるように傾斜している。ただし、傾斜支持面部134の傾斜角度は限定されるものではなく、苗マット100の表面側溝部103の形状等に対応して適宜定められる。
【0117】
以下では、側面視において載置面傾斜方向に直交する方向を載置面直交方向(
図16、矢印H2参照)とする。載置面傾斜方向は、苗マット100の縦送り方向に対応している。また、セット状態の苗マット100の縦方向が載置面傾斜方向に対応し、セット状態の苗マット100の厚さ方向が載置面直交方向に対応する。
【0118】
溝形成部133は、後傾斜面部122の前下側の部分と、前傾斜面部121の後下側の部分とにより形成されている。溝形成部133は、後傾斜面部122により形成された部分として、側面視で載置面傾斜方向に沿う面部である後溝側面部136と、側面視で載置面直交方向に沿う面部である溝底面部137とを有する。
【0119】
また、溝形成部133は、前傾斜面部121により形成された部分として、側面視で載置面傾斜方向に沿う前溝側面部138を有する。前溝側面部138は、前傾斜面部121の下端側の部分であって、載置面直交方向について後溝側面部136に対向した部分である。後溝側面部136および前溝側面部138は、それぞれ溝底面部137の載置面直交方向の両側において溝底面部137に対して角部を湾曲面部(R形状部)として直角状をなすように屈曲した部分である。
【0120】
このように、溝形成部133は、後溝側面部136および前溝側面部138並びに溝底面部137により、セット状態の苗マット100側を開放側とするとともに側面視で略矩形状に沿う略U字状の溝部を形成している。後溝側面部136の上側に傾斜支持面部134の下側が繋がっている。後溝側面部136と傾斜支持面部134は、側面視で鈍角状の屈曲面部を形成している。
【0121】
前溝側面部138の上側は、前傾斜面部121の上部として側面視で載置面傾斜方向に沿って延設されている。前傾斜面部121の上縁部に対しては、角部を湾曲面部として直角状をなすように前側に屈曲状に形成された支持縁部139が設けられている。
【0122】
図16に示すように、ガイドレール48に支持された苗マット100は、ガイドレール48に対して、端面部100bにおける溝形成面103aを傾斜支持面部134の内側面134aに接触させるとともに、溝形成面103aよりも下側(下面104b側)の部分を、凹状溝131内に臨ませた状態で支持されている。つまり、苗マット100は、端面部100bについて、傾斜支持面部134に接触する溝形成面103aによりガイドレール48に支持されるとともに、中間面109aおよび溝形成面107aを、空間132を介して溝底面部137に対向させた状態となる。傾斜支持面部134の内側面134aは、横送りされる苗マット100に対する摺動面つまりガイド面となる。
【0123】
ガイドレール48において、後側の縁部をなす縁端面部135は、側面視において、苗マット100に対して載置面直交方向について上面104aよりも上側に延出した部分となる。また、ガイドレール48において、前傾斜面部121の表面121aが、下端の行ブロック部104の下面104bの接触を受ける面となる。前傾斜面部121は、載置面傾斜方向について、少なくとも一行分の行ブロック部104の全体を含む長さ(幅)を有する。
【0124】
以上のように、ガイドレール48は、側面視での屈曲形状をなす部分として、下部を前溝側面部138とする前傾斜面部121と、前溝側面部138とともに凹状溝131を形成する後溝側面部136および溝底面部137と、接触支持面部130をなす傾斜支持面部134および縁端面部135とを有する。
【0125】
図16に示すように、ガイドレール48において、凹状溝131の幅方向の寸法J1は、苗マット100の裏面である下面104bから表面側溝部103の下端までの苗マット100の厚さ方向の寸法M1と同等または厚さ方向の寸法M1以上となっている。
【0126】
ガイドレール48の凹状溝131の幅の寸法J1は、後溝側面部136と前溝側面部138との間の間隔の寸法であり、載置面直交方向についての寸法である。つまり、寸法J1は、互いに対向した後溝側面部136および前溝側面部138の内側面間の寸法である。
【0127】
苗マット100における寸法M1は、載置面直交方向に対応する苗マット100の厚さ方向の寸法であり、
図10に示すように、苗マット100の厚さT1から表面側溝部103の深さD1を引いた寸法に相当する。つまり、寸法M1は、苗マット100の厚さ方向について、下面104bからV字溝である表面側溝部103の底部までの寸法である。
【0128】
図16に示す例では、凹状溝131の幅の寸法J1は、苗マット100における寸法M1と略同じ寸法となっている。ただし、凹状溝131の幅の寸法J1は、苗マット100における寸法M1より大きくてもよい。
【0129】
ガイドレール48において、凹状溝131の取口部49に対する開口端部には、凹状溝131の凹みを無くしたまたは凹状溝131の凹みを小さくした切断補助部140が設けられている。切断補助部140は、各取口部49の左右両側に設けられており、各取口部49の左右両側の切断補助部140は、左右方向について対称的に構成されている。なお、
図16においては切断補助部140の図示を省略している。
【0130】
切断補助部140は、取口部49の左右両側において、凹状溝131の深さ分、凹状溝131を部分的に底上げした部分である。切断補助部140は、ガイドレール48における凹状溝131の取口部49に対する開口端部に、切断補助部材150を取り付けることにより設けられている。切断補助部材150は、略矩形板状ないしブロック状の金属製の部材であり、凹状溝131に嵌った状態で、ガイドレール48に固定されている。
【0131】
図13、
図18A、
図18B、
図18Cおよび
図18Dに示すように、切断補助部材150は、平面視で矩形状の外形を有し、長手方向を凹状溝131の延伸方向とする向きで設けられている。切断補助部材150は、平面視外形をなす面として、長手方向の一側の端面である第1端面151と、長手方向の他側の端面である第2端面152と、短手方向両側の側面153とを有する。なお、
図18Aは切断補助部材150の斜視図であり、
図18Bは切断補助部材150の平面図であり、
図18Cは切断補助部材150の側面153側からの側面図であり、
図18Dは切断補助部材150の正面図(第1端面151側からの側面図)である。
【0132】
切断補助部材150は、その幅方向の寸法K1(
図18D参照)を、凹状溝131の幅の寸法J1(
図16参照)と略同じとしており、凹状溝131の後溝側面部136と前溝側面部138との間に嵌合した態様で設けられている。切断補助部材150は、両側の側面153を、後溝側面部136および前溝側面部138それぞれの内側面に対する接触面としている。
【0133】
また、切断補助部材150は、底面として水平な下面154を有し、下面154を、凹状溝131の溝底面部137の内側面である底面137aに対する接触面としている。切断補助部材150の下側の幅方向両側の角部には、面取り部155が形成されている。切断補助部材150は、面取り部155により、凹状溝131の底側の角部の湾曲形状に対応している。
【0134】
切断補助部材150は、上側の面のうち、長手方向について第1端面151側の略半分を、下面154と平行な水平状の上面156とし、長手方向について第2端面152側の略半分を傾斜面157としている。上面156は、第1端面151とともに直角状の稜線部159を形成している。
【0135】
傾斜面157は、切断補助部材150の長手方向について、第1端面151側から第2端面152側にかけて下るように傾斜している。つまり、切断補助部材150は、傾斜面157の形成部位について、第1端面151側から第2端面152側にかけて厚さを徐々に薄くした形状を有する。第2端面152は、切断補助部材150の厚さ方向について第1端面151の略半分の寸法を有する。
【0136】
切断補助部材150は、厚さの寸法K2(
図18C参照)を、ガイドレール48の凹状溝131の深さの寸法J2(
図17参照)に略一致させている。切断補助部材150の厚さの寸法K2は、切断補助部材150の下面154に対して垂直な方向の寸法であり、下面154と上面156との間の寸法である。凹状溝131の深さの寸法J2は、載置面傾斜方向について、溝底面部137の底面137aから、後溝側面部136と傾斜支持面部134との屈曲部までの寸法である。なお、切断補助部材150は、長手方向の寸法について、あくまでも一例であるが、厚さの寸法K2の略3倍の寸法を有する。
【0137】
切断補助部材150は、1本のネジ161によりガイドレール48に固定されている。ネジ161は、ガイドレール48の下側から、凹状溝131の溝底面部137を貫通し、切断補助部材150に形成されたネジ孔158に螺挿されている。ネジ孔158は、切断補助部材150の上面156の形成部位において、切断補助部材150の厚さ方向に貫通形成されている。溝底面部137には、ネジ161を貫通させるための孔部137bが形成されている。
【0138】
切断補助部材150は、第1端面151を、ガイドレール48の取口部49側とする向きで設けられている。切断補助部材150は、第1端面151を、取口部49の側縁部49aをなす端面と面一状とするように設けられている。
【0139】
以上のようにガイドレール48の凹状溝131に対して切断補助部材150を取り付けた構成において、上面156により、凹状溝131の底面137aをその溝深さ分底上げした切断補助面が形成されている。つまり、切断補助部140は、凹状溝131において凹みを無くした部分であり、切断補助部140においては、切断補助部材150により、切断補助部材150の厚さ分、凹状溝131の底面137aに対する底上げ面として上面156が形成されている。
【0140】
本実施形態では、切断補助部材150は、凹状溝131の深さと略同じ厚さを有し、凹状溝131における切断補助部材150の配設部位においては、凹状溝131の深さ方向の略全体が切断補助部材150により埋まっている。つまり、切断補助部材150の配設部位においては、切断補助部材150により凹状溝131の開口端部が塞がれ、凹状溝131の凹みが無くなっている。
【0141】
なお、切断補助部140は、凹状溝131の深さよりも小さい厚さの切断補助部材150を用いることで、切断補助部材150の配設部位の凹みを、凹状溝131の他の部分の凹みに対して小さくした部分であってもよい。つまり、切断補助部140を構成する切断補助部材150は、凹状溝131の深さ方向の全体を埋めるものでなくてもよく、凹状溝131の凹みを他の部分に対して浅くしたものであってもよい。
【0142】
また、本実施形態では、切断補助部140は、ガイドレール48とは別体の部材である切断補助部材150をガイドレール48に取り付けることにより構成されているが、このような構成に限定されない。切断補助部140は、ガイドレール48自体の形状部分として設けられてもよい。この場合、切断補助部140は、例えば、第2レール部材124を加工することにより、ガイドレール48における取口部49の形成部位において、切断補助部材150の上面156に相当する切断補助面をなす平面部が形成される。
【0143】
また、ガイドレール48において、溝形成部133には、凹状溝131内の空間132を外部に連通させる一または複数の開口部165が形成されている。
【0144】
開口部165は、溝形成部133の溝底面部137において、貫通状の円形の孔部として形成されている。開口部165は、溝底面部137の幅方向(載置面直交方向)の寸法の略半分の孔径を有し、溝底面部137の幅方向の略中央部に形成されている。
【0145】
本実施形態では、ガイドレール48において、左右方向に隣り合う取口部49の間の部分、および左右両端の取口部49よりも左右外側の部分の各部分において、4個の開口部165が左右方向について所定の間隔をあけて形成されている。したがって、ガイドレール48においては、合計で20個の開口部160が形成されている。
【0146】
なお、開口部165は、凹状溝131内の空間132を外部に連通させるものであれば、その形状、大きさ、個数、形成部位等は特に限定されるものではない。また、開口部165は、溝形成部133において、前溝側面部138に形成されてもよく、溝底面部137と前溝側面部138の角部分など、溝底面部137から前溝側面部138にわたる範囲に形成されてもよい。
【0147】
また、苗載台42がガイドレール48に対して左右方向に往復移動する構成において、苗載台42には、苗載台42の左右方向の移動にともなって凹状溝131内を移動して苗マット100の切削屑を除去するための掃部材170が設けられている。
【0148】
図19から
図21に示すように、掃部材170は、所定の板厚を有する矩形板状の部材である。掃部材170は、例えばゴム板等、柔軟性を有する弾性材料により形成されている。
【0149】
掃部材170は、板厚方向を左右方向とするとともに、平面視外形(板面視外形)における長手方向を載置面傾斜方向に沿わせた向きで設けられている。掃部材170は、ガイドレール48に対して、下側となる長手方向の一側の部分を、凹状溝131内に位置させた状態で設けられている。
【0150】
掃部材170は、平面視外形における短手方向の寸法である幅寸法L1(
図19参照)を、ガイドレール48の凹状溝131の幅の寸法J1(
図16参照)と同程度としている。
図19に示す例では、掃部材170は、幅方向について凹状溝131に対してわずかな隙間を有しながら、凹状溝131の幅方向の大部分の範囲にわたるように設けられている。
【0151】
掃部材170は、下端面171を、凹状溝131の溝底面部137の底面137aに接触または略接触させるように設けられている。このため、掃部材170は、凹状溝131の底側の角部の湾曲形状に対応するように、下側の幅方向両側の角部において面取り部172を有する。
【0152】
掃部材170は、苗載台42において、左右方向に並んだ4つの苗載台部46それぞれの左右のガイド部46bの下側に設けられている。したがって、苗載台42においては、合計で8箇所に掃部材170が設けられている(
図7参照)。
【0153】
掃部材170は、長手方向の他側を、載置面傾斜方向に沿って凹状溝131から上側に延出させており、長手方向の他側の部分を、各ガイド部46bを構成するカバー部材175に対して、所定の支持部材180を介して固定状態で設けられている。掃部材170は、支持部材180の下側において、凹状溝131内に入れ込まれるヒレ状の部分を構成している。
【0154】
カバー部材175は、突条部分であるガイド部46bの外形をなす部材であり、左右の側面部175aと、上面部175bと、下側の端面部175cと、固定面部175dとを有する。固定面部175dは、各苗載台部46において、左右外側となる側面部175aの下側から直角状に屈曲した面部であり、苗載台42を構成する所定のフレーム部分等に対するカバー部材175の固定部となる。固定面部175dは、カバー部材175を固定するためのリベット等の固定部材176を複数箇所で貫通させる。
【0155】
支持部材180は、カバー部材175に対して溶接やボルト等の固定部材により固定された状態で設けられている。支持部材180は、掃部材170を支持する部分として、左右方向を板厚方向とした支持板部181を有する。支持板部181は、ガイド部46bの下側において、側面視でカバー部材175の下縁部をなす端面部175cに沿うように設けられており、前下側の端部において掃部材170を支持している。なお、カバー部材175の端面部175cは、側面視で載置面直交方向と略同じ方向に沿っている。
【0156】
図7に示すように、本実施形態では、左端の苗載台部46の左側のガイド部46b、左から2番目の苗載台部46の右側のガイド部46b、左から3番目の左側のガイド部46b、および右端の苗載台部46の右側のガイド部46bについては、支持部材180として、各ガイド部46bに対して側面視で略逆「T」字状の一体の支持部材180Aが設けられている(
図1参照)。
【0157】
また、左端の苗載台部46の右側のガイド部46bと、左から2番目の苗載台部46の左側のガイド部46bとの2つの隣り合うガイド部46bに対しては、支持部材180として、これらのガイド部46b間に架設された一体の支持部材180Bが設けられている。同様に、左から3番目の苗載台部46の右側のガイド部46bと、左から4番目の苗載台部46の左側のガイド部46bとの2つの隣り合うガイド部46bに対して、一体の支持部材180Bが設けられている。
【0158】
各ガイド部46bに対して設けられた支持部材180Aは、1つの支持板部181を有し、隣り合う2つのガイド部46bに対して設けられた支持部材180Bは、左右方向について各ガイド部46bに対応した位置に設けられた2つの支持板部181を有する。なお、苗載台42が有する複数のガイド部46bに対する支持部材180の配設態様や支持部材180の形状等は限定されるものではない。
【0159】
掃部材170は、側面視で長手方向の他側の部分を支持部材180の支持板部181に対して左右いずれか一方側から重ねた状態で、固定ネジ185およびナット186により支持板部181に着脱可能に締結固定されている。固定ネジ185は、支持板部181および掃部材170を貫通し、ナット186に螺挿されている。掃部材170および支持板部181には、固定ネジ185を貫通させる孔部が形成されている。
【0160】
このようにガイドレール48に対して凹状溝131に嵌合した態様で係合した掃部材170を苗載台42に設けた構成によれば、苗載台42の左右方向の移動にともなって、弾性変形可能な掃部材170がガイドレール48の凹状溝131内をスイープするように移動する。なお、掃部材170の支持構成については、苗載台42の苗載台部46を構成するガイド部46bのカバー部材175に対して、支持部材180等を介することなく直接的に掃部材170を支持した構成であってもよい。
【0161】
以上のような構成を備えた本実施形態に係る苗移植機1によれば、ガイドレール48に対する苗マット100の位置ずれを抑制することができ、植付爪72による苗マット100の掻取り位置の正確性を向上することができる。
【0162】
ガイドレール48は、側面視での屈曲形状をなす部分として、苗マット100を支持する接触支持面部130と、凹状溝131を形成する溝形成部133とを有する。そして、ガイドレール48は、接触支持面部130において、苗マット100の端面部100bの溝形成面103aに沿う傾斜支持面部134を有する。すなわち、苗マット100の縦送り方向の下側の端面部100bを支持するガイドレール48の下部には、苗マット100から縦送り方向に遠ざかった溝底面部137をなす凹状溝131を設けられており、ガイドレール48の上部に、苗マット100の表面側溝部103の片側を形成する溝形成面103aに沿う傾斜支持面部134が設けられている。
【0163】
このような構成によれば、
図16に示すように、溝形成部133により、ガイドレール48に苗マット100が支持された状態において、苗マット100の下側に、凹状溝131による空間132を形成することができる。これにより、植付爪72による切断面である端面部100bにおいて掻取り跡に残存する切残り100Xが生じた場合であっても、凹状溝131内に切残り100Xを逃がすことができる。したがって、切残り100Xがガイドレール48に接触することを防止することができ、ガイドレール48に対する苗マット100の支持姿勢および支持位置を正しい状態に保持することができる。なお、
図16においては切残し100Xをハッチング部分で示している。
【0164】
また、ガイドレール48において、苗マット100の接触を受けて苗マット100を端面部100b側から支持する傾斜支持面部134は、溝形成面103aの接触を受けて苗マット100を支持する。溝形成面103aは、苗マット100の端面部100bにおいて、植付爪72による掻取りの影響を受けない、つまり植付爪72による切断に関係のない部分である。このため、ガイドレール48は、苗マット100における切残り100Xの有無にかかわらず、苗マット100の端面部100bに対して常に一定の接触状態で苗マット100を支持することができる。
【0165】
以上より、セット状態の苗マット100の姿勢を安定させることができるので、植付爪72による苗マット100の切断位置の位置ずれを抑制することができ、植付爪72による掻取り位置の精度を確保することができる。これにより、欠株や苗の損傷等の不具合を抑制することができる。
【0166】
また、ガイドレール48は、苗マット100との関係において、凹状溝131の幅方向の寸法(
図16、寸法J1参照)を、苗マット100の厚さ方向の寸法(
図16、寸法M1)と同等またはそれ以上となるように構成されている。
【0167】
このような構成によれば、苗マット100の端面部100bにおいて切残り100Xが発生しても、凹状溝131の上側の面部である後溝側面部136を切残り100Xよりも高い位置に位置させることができる。これにより、切残り100Xを、凹状溝131の幅の範囲内に位置させることができるので、切残り100Xを確実に凹状溝131内に逃がすことができる。つまり、苗マット100の端面部100bにおける溝形成面103aを確実に傾斜支持面部134に接触支持させることができる。これにより、植付爪72による苗マット100の切断位置の位置ずれを効果的に抑制することができる。
【0168】
また、ガイドレール48においては、凹状溝131の取口部49に対する開口端部に、切断補助部140が設けられている。このような構成によれば、ガイドレール48の取口部49における植付爪72による苗マット100の切断(掻取り)において、良好な切断性(切削性)を得ることができ、安定した掻取りを行うことが可能となる。具体的には次のとおりである。
【0169】
取口部49において、苗マット100は、植付爪72とガイドレール48との間、詳細には一対の爪本体部82とその左右両側の取口部49の側縁部49aとの間で、ガイドレール48側を固定刃とし、一対の爪本体部82側を可動刃とした剪断作用によって切断される。ここで、苗マット100の切断部において、苗マット100の下側に凹状溝131による空間132が存在すると、凹状溝131に対応する部分は、固定刃としてのガイドレール48による支持を受けない部分となる。
【0170】
このように、苗マット100の端面部100bについて、取口部49の左右両側においてガイドレール48により支持されない部分が存在すると、良好な剪断作用を得ることができず、苗マット100の切断面の全体にわたる均一な切断ができないおそれがある。
【0171】
そこで、ガイドレール48の取口部49の近傍部分に切断補助部140を設けることにより、上側から植付爪72による作用を受ける苗マット100の下側において、苗マット100の逃げ空間となる凹状溝131の空間132を埋めることができる。これにより、凹状溝131の形成部位においても苗マット100を下側から支持することができるので、苗マット100の逃げが防止され、良好な剪断作用を得ることができる。
【0172】
切断補助部140においては、切断補助部材150の上面156が、苗マット100の端面部100bの中間面109aに接触する支持面となるとともに、稜線部159を形成する上面156および第1端面151が、取口部49の側縁部49aとともに固定刃として作用し、植付爪72による苗マット100の切断が補助される。これにより、苗マット100の切断面において均一的な切断を行うことができ、植付爪72による苗マット100の良好な切断性を得ることができる。
【0173】
また、切断補助部140は、ガイドレール48に対して切断補助部材150を取り付けることにより設けられている。このような構成によれば、ガイドレール48とは別体として加工ができる部材により切断補助部140を構成することができるので、切断補助部140を容易に設けることができる。
【0174】
また、切断補助部140においては、切断補助部材150の傾斜面157により、凹状溝131において、取口部49における苗マット100の剪断部分の左右両外側に斜面部を設けることができる。これにより、傾斜面157が、ガイドレール48上を左右方向に移動する苗マット100に対するガイド面となり、苗マット100の端面部100bにおいて切残り100Xが発生していても、切断補助部材150に対する苗マット100の引っかかり等を抑制することができるので、切断補助部140上を通過する苗マット100のスムーズな移動を実現することができる。
【0175】
また、ガイドレール48においては、凹状溝131の底部をなす溝底面部137に複数の開口部165が設けられている。このような構成によれば、凹状溝131内に落ちた苗マット100の切削屑を開口部165から凹状溝131の外部に排出することができるので、凹状溝131内に苗マット100の切削屑が堆積して凹状溝131内が埋まることを抑制することができる。これにより、切残り100Xの逃げ空間を形成する凹状溝131による作用効果を継続的に得ることができるので、連続的な苗の植付け作業が可能となる。
【0176】
特に、取口部49の近傍に切断補助部140を設けた構成においては、苗マット100の端面部100bで生じた切残り100Xが切断補助部140上を通過する際に切断補助部140により削られることで、苗マット100の切削屑が生じやすくなる。このため、ガイドレール48に開口部165を設けることにより、凹状溝131内に苗マット100の切削屑が堆積することを効果的に抑制することができる。
【0177】
また、ガイドレール48に対しては、苗載台42側に、凹状溝131内の苗マットの切削屑を除去するための掃部材170が設けられている。このような構成によれば、ガイドレール48に対する苗載台42の左右方向の移動にともない、掃部材170によって凹状溝131内を掃除することができるので、凹状溝131内に苗マット100の切削屑が堆積することを抑制することができる。
【0178】
また、掃部材170は、ゴム板等の弾性材料により形成されている。これにより、左右方向に移動する苗載台42の進行方向に応じて掃部材170を弾性変形させることができるので、凹状溝131内の切削屑を取り残しなく効率的に除去することができる。また、ガイドレール48の溝底面部137に開口部165を形成した構成によれば、苗マット100の横送りにともなって掃部材170により凹状溝131内を移動させられる切削屑を開口部165から排出することができるので、切削屑を効率的に除去することができる。
【0179】
また、掃部材170は、支持部材180に対して着脱可能に設けられているため、掃部材170が摩耗した場合であっても容易に交換することができる。これにより、掃部材170として安価な部品を用いることができるとともに、部品を交換することで凹状溝131に対する切削屑の除去作用を継続的に得ることができる。
【0180】
また、苗載台42においては、掃部材170の支持構成として、カバー部材175の下側に支持板部181を位置させる支持部材180が設けられている。このような構成によれば、各苗載台部46の左右のガイド部46bの下側への延長線上に支持板部181を位置させることができる。これにより、ガイド部46bの下側においてガイド部46bとガイドレール48との間の空間部分を支持板部181により補完することができる。したがって、左右のガイド部46bとガイドレール48との間で苗マット100の横ずれを防止することができ、植付爪72による掻取り位置の精度を向上することができるため、安定した苗の植付けを行うことができる。
【0181】
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係る苗移植機は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
【符号の説明】
【0182】
1 苗移植機
3 苗移植装置
42 苗載台
48 ガイドレール
49 取口部
50 植付爪装置
72 植付爪
100 苗マット
100b 端面部
103 表面側溝部(溝部)
103a 溝形成面
110 苗ブロック
130 接触支持面部
131 凹状溝
132 空間
133 溝形成部
134 傾斜支持面部
140 切断補助部
150 切断補助部材
165 開口部
170 掃部材
180 支持部材
181 支持板部