(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】高周波誘導加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/04 20060101AFI20241105BHJP
H05B 6/08 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
H05B6/04 321
H05B6/08
(21)【出願番号】P 2022173477
(22)【出願日】2022-10-28
(62)【分割の表示】P 2020211268の分割
【原出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000217653
【氏名又は名称】電気興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(72)【発明者】
【氏名】新井 亮
(72)【発明者】
【氏名】下鳥 利六
(72)【発明者】
【氏名】平石 大地
(72)【発明者】
【氏名】今増 寿尚
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-330159(JP,A)
【文献】特開2004-011020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/04
H05B 6/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波発振機に対し整合部を通じて接続される給電コイルと、
前記給電コイルから非接触方式で高周波電力が供給される受電コイルと、
前記受電コイルに接続され、被加熱物を誘導加熱する加熱コイルと
を備え、
前記加熱コイルによる誘導加熱時に前記給電コイルと前記受電コイルと
が同軸となるように、かつ軸方向
にギャップを置いて設けられ、前記ギャップが調整可能であり、
前記受電コイル及び前記加熱コイルの組み合わせは一体として、受電コイル及び加熱コイルの別の組み合わせに取替え可能である、
高周波誘導加熱装置。
【請求項2】
前記ギャップが大きくなるにつれ、前記加熱コイルに供給される高周波電力の周波数が低下する、請求項1に記載の高周波誘導加熱装置。
【請求項3】
前記受電コイルは、
一本の角パイプが略リング状となるように曲げられてなる受電コイル本体部と、
前記受電コイル本体部の一端部及び他端部からそれぞれ径方向外側に延び出るように形成された延出部と
を有し、
前記加熱コイルは、一本の角パイプが略リング状となるように曲げられてなり、前記加熱コイルの両端部が前記延出部に接続されている、
請求項1
又は2に記載の高周波誘導加熱装置。
【請求項4】
前記受電コイル本体部及び前記加熱コイルは非同軸であり、前記受電コイル本体部の軸と前記加熱コイルの軸とは平行かつ前記延出部の長手方向と直交する、請求項3に記載の高周波誘導加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高周波誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に高周波焼入装置が記載されている。この高周波焼入装置は、高周波発振機
と整合部と高周波加熱コイルとを備えている。整合部は、ディスク型変成器と整合コンデ
ンサとを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高周波発振機から出力された高周波電力を被加熱物に対して効率的に送るために、加熱
条件に合わせて整合部にて整合処理を行うことが求められる。従来の高周波誘導加熱装置
では、斯かる整合処理が煩雑であるという問題がある。
【0005】
本発明は、高周波誘導加熱を行う際に、加熱条件に応じた整合処理を容易に行えるよう
にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る高周波誘導加熱装置は、高周波発振機に対し整合部を通じて接続される給電コイルと、前記給電コイルから非接触方式で高周波電力が供給される受電コイルと、前記受電コイルに接続され、被加熱物を誘導加熱する加熱コイルとを備える。前記加熱コイルによる誘導加熱時に前記給電コイルと前記受電コイルとが同軸となるように、かつ軸方向にギャップを置いて設けられ、前記ギャップが調整可能である。前記受電コイル及び前記加熱コイルの組み合わせは一体として、受電コイル及び加熱コイルの別の組み合わせに取替え可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高周波誘導加熱を行う際に、加熱条件に応じた整合処理を容易に行う
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】高周波誘導加熱装置の給電コイル組立体の平面図である。
【
図3】高周波誘導加熱装置の受電コイル組立体及び加熱コイルの平面図である。
【
図4】給電コイルと小型の加熱コイルが接続された受電コイルとの間のギャップと、周波数との関係を示すグラフである。
【
図5】給電コイルと中型の加熱コイルが接続された受電コイルとの間のギャップと、周波数との関係を示すグラフである。
【
図6】給電コイルと大型の加熱コイルが接続された受電コイルとの間のギャップと、周波数との関係を示すグラフである。
【
図7】加熱コイルのサイズと、給電コイルと受電コイルとの間のギャップと、周波数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明
する実施の形態によって限定されるものではない。
【0010】
図1~
図3に高周波誘導加熱装置1を示す。高周波誘導加熱装置1は、給電コイル組立
体2と受電コイル組立体3と加熱コイル4とを備えている。また、高周波誘導加熱装置1
は、図示はしないが、高周波発振機及び整合部をも有している。整合部は、変成器とコン
デンサとを有している。
【0011】
給電コイル組立体2は給電コイル21を有する。給電コイル21は、一本の角パイプが
略リング状となるように曲げられてなる給電コイル本体部21aと、給電コイル本体部2
1aの一端部及び他端部からそれぞれ径方向外側に延び出るように形成された延出部21
bとを有する。延出部21bは、上記整合部を通じて上記高周波発振機へ接続される。上
記角パイプは銅製とすることができる。
【0012】
受電コイル組立体3は受電コイル31を有する。受電コイル31は、一本の角パイプが
略リング状となるように曲げられてなる受電コイル本体部31aと、受電コイル本体部3
1aの一端部及び他端部からそれぞれ径方向外側に延び出るように形成された延出部31
bとを有する。上記角パイプは銅製とすることができる。
【0013】
給電コイル本体部21aと受電コイル本体部31aとは、大きさが略等しい。給電コイ
ル本体部21aと受電コイル本体部31aとは、互いに同軸となるように、かつ軸方向に
ギャップGを置いて配置されている。このギャップGは調整可能である。なお、給電コイ
ル本体部21a及び受電コイル本体部31aを支持する機構については図示を省略する。
【0014】
給電コイル組立体2は、給電コイル本体部21aの周囲を、受電コイル本体部31aと
対向する部分を除いて、かつ延出部21bと干渉しないように覆うコア22をも有する。
また、受電コイル組立体3は、受電コイル本体部31aの周囲を、給電コイル本体部21
aと対向する部分を除いて、かつ延出部31bと干渉しないように覆うコア32をも有す
る。コア22及び32には、給電コイル21及び受電コイル31と導通しないように、絶
縁処理が施されている。
【0015】
受電コイル31には、延出部31bを通じて加熱コイル4が接続されている。加熱コイ
ル4は、一本の角パイプが略リング状となるように曲げられてなり、その両端部が延出部
31bに接続されている。上記角パイプは銅製とすることができる。加熱コイル4は、被
加熱物(不図示)のサイズに応じて別の加熱コイルに取替え可能である。このとき、給電
コイル21を取り替えることなく、受電コイル31及び加熱コイル4の組み合わせを、受
電コイル及び加熱コイルの別の組み合わせに取り替えることができる。
【0016】
給電コイル本体部21a及び受電コイル31a並びに加熱コイル4は、中空断面構造を
有する角パイプで形成されているため、その内部に冷却水を流すことができる。
【0017】
以上のような高周波誘導加熱装置1において、上記高周波発振機から上記整合部及び延
出部21bを通じて給電コイル本体部21aへ高周波電力が供給される。給電コイル本体
部21aは、高周波発振機から供給された高周波電力を非接触方式で受電コイル本体部3
1aへと送る。受電コイル本体部31aは、給電コイル本体部21aから供給された高周
波電力を、延出部31bを通じて加熱コイル4へ送る。そして、加熱コイル4により被加
熱物の誘導加熱が行われる。
【0018】
このように、高周波誘導加熱装置1においては、高周波発振機から加熱コイル4へ高周
波電力を送る際に、給電コイルから受電コイルに向けて非接触給電が行われる。斯かる高
周波誘導加熱装置1によれば、給電コイル21と受電コイル31との間のギャップGを調
整することで、加熱条件に合わせた周波数の整合処理を行うことができる。
【0019】
図4に、小型の加熱コイル(内径40mm)を用いた場合の、ギャップと周波数との関
係を示す。横軸は加熱時間(単位:秒)であり、縦軸は高周波発振機から出力された高周
波電力の周波数(単位:kHz)である。ギャップが1mmの場合、加熱開始直後と加熱
終了直前を除き、周波数は約9.1kHzである。同様に、ギャップが2mmの場合に周
波数は約8.7kHzであり、ギャップが4mmの場合に周波数は約8.1kHzである
。
【0020】
図5に、中型の加熱コイル(内径60mm)を用いた場合の、ギャップと周波数との関
係を示す。横軸は加熱時間(単位:秒)であり、縦軸は高周波発振機から出力された高周
波電力の周波数(単位:kHz)である。ギャップが1mmの場合、加熱開始直後と加熱
終了直前を除き、周波数は約8.5kHzである。同様に、ギャップが2mmの場合に周
波数は約8.1kHzであり、ギャップが4mmの場合に周波数は約7.7kHzである
。
【0021】
図6に、大型の加熱コイル(内径80mm)を用いた場合の、ギャップと周波数との関
係を示す。横軸は加熱時間(単位:秒)であり、縦軸は高周波発振機から出力された高周
波電力の周波数(単位:kHz)である。ギャップが1mmの場合、加熱開始直後と加熱
終了直前を除き、周波数は約8.0kHzである。同様に、ギャップが2mmの場合に周
波数は約7.7kHzであり、ギャップが4mmの場合に周波数は約7.4kHzである
。
【0022】
図4~
図6から、加熱コイルが小型、中型及び大型のいずれであっても、ギャップが大
きくなると周波数が低下することがわかる。なお、
図4~
図6に示した、高周波発振機か
ら出力された高周波電力の周波数は、受電コイルに供給される高周波電力の周波数と等し
く、また、加熱コイルに供給される高周波電力の周波数とも等しい。
【0023】
図7に、
図4(小型の加熱コイル)の、ギャップ4mmの場合のグラフと、
図5(中型
の加熱コイル)の、ギャップ2mmの場合のグラフと、
図6(大型の加熱コイル)の、ギ
ャップ1mmの場合のグラフとをまとめて示す。すなわち、加熱コイルが小型の場合、ギ
ャップを4mmとすることで周波数が約8.1kHzとなり、加熱コイルが中型の場合、
ギャップを2mmとすることで周波数が約8.1kHzとなり、加熱コイルが大型の場合
、ギャップを1mmとすることで周波数が約8.0kHzとなる。このように、使用する
加熱コイルが小型、中型及び大型のいずれであっても、ギャップを変えることで、同程度
の周波数を得ることができる。
【0024】
以上のように、高周波誘導加熱装置1によれば、給電コイル本体部21aと受電コイル
本体部31aとの間のギャップGを調整することで、加熱条件に合わせた周波数の整合処
理を行うことができる。
【0025】
従来の高周波加熱誘導装置においては、被加熱物のサイズ(加熱条件の一つ)に合わせ
て加熱コイルを取り替えた場合、整合部内のコンデンサのタップ及び変成器のタップを変
更する必要がある。また、同一の被加熱物及び同一の加熱コイルであっても、被加熱物の
加熱部位により加熱条件が異なるため、複数の整合部を予め用意し、加熱条件に応じて選
択される整合部を用いて加熱が行われる。複数の整合部を用意しておく必要があるため、
装置全体が大型化している。
【0026】
これに対し、高周波加熱誘導装置1によれば、加熱条件に合わせてギャップGを調整す
ることにより周波数の整合処理を比較的簡易に行うことができる。さらに、整合部は一つ
で済むため、複数の整合部を必要とする従来の高周波誘導加熱装置に比べて装置全体の小
型化が実現できる。
【0027】
また、高周波加熱誘導装置1によれば、給電コイルを取り替えることなく、受電コイル
及び加熱コイルの取替えを行うことができる。すなわち、取替えに伴う作業時間の短縮が
図られる。
【0028】
これまでに説明した実施形態に関し、以下の付記を開示する。
[付記1]
高周波発振機に対し整合部を通じて接続される給電コイルと、
前記給電コイルからギャップを置いて設けられ、前記給電コイルから非接触方式で高周
波電力が供給される受電コイルと、
前記受電コイルに接続され、被加熱物を誘導加熱する加熱コイルと
を備える高周波誘導加熱装置。
[付記2]
前記給電コイルと前記受電コイルとが、同軸となるように、かつ軸方向に前記ギャップ
を置いて設けられ、
前記ギャップが調整可能である、
付記1に記載の高周波誘導加熱装置。
[付記3]
前記受電コイル及び前記加熱コイルは、受電コイル及び加熱コイルの別の組み合わせに
取替え可能である、付記1又は2に記載の高周波誘導加熱装置。
【0029】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるも
のではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 高周波誘導加熱装置
2 給電コイル組立体
21 給電コイル
21a 給電コイル本体部
21b 延出部
22 コア
3 受電コイル組立体
31 受電コイル
31a 受電コイル本体部
31b 延出部
32 コア
4 加熱コイル
G ギャップ