(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0226 20230101AFI20241105BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20241105BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20241105BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20241105BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241105BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
G06Q30/0226
G06Q50/06
H02J3/00 180
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/38 130
H02J3/46
(21)【出願番号】P 2022187093
(22)【出願日】2022-11-24
【審査請求日】2022-11-24
【審判番号】
【審判請求日】2024-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 芳人
(72)【発明者】
【氏名】今村 旭志
【合議体】
【審判長】佐藤 智康
【審判官】田中 寛人
【審判官】月野 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-93652(JP,A)
【文献】特開2015-156195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
H02J3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ識別情報と関連付けて報酬が記憶部に記憶されるユーザであって、当該ユーザが利用する自家発電設備が供給する電力により充電可能であるとともに商用電力系統から供給された電力により充電可能な蓄電池の充放電を制御する電池制御部から、前記商用電力系統から供給された電力によって前記蓄電池を充電した充電実績と、前記蓄電池が放電した放電実績とを含む充放電実績を取得する実績取得部と、
前記商用電力系統から供給された電力によって前記蓄電池を充電した充電期間における単位電力あたりの電力の市場価格と、前記蓄電池を放電した放電期間における単位電力あたりの電力の市場価格との価格差により得られる収益を用いて
前記ユーザに設定する報酬付与率を算出する特定部と、
前記充放電実績に基づく前記蓄電池の放電実績及び前記報酬付与率を用いて
、前記収益を用いるサービス以外の他のサービスにおいて使用可能である報酬を算出し、算出した前記報酬を前記ユーザに関連付けて
前記記憶部に記録する報酬付与部と、を備え、
前記報酬付与部は、前記放電実績として前記蓄電池の所定時間毎に計測した放電電力を累積した累積放電電力
量を放電電力量とみなし、そのみなし放電電力量に前記報酬付与率を乗算して前記報酬を算出する情報処理システム。
【請求項2】
予測対象期間における電力取引市場での電力の市場価格を予測する予測部と、
予測される前記市場価格に基づいて、前記予測対象期間の前記蓄電池の充放電計画を作成する計画作成部と、
前記充放電計画に基づいて前記電池制御部に指令を送信する指令部と、を備える、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記特定部は、電力の削減要請に応じて前記蓄電池を制御した場合に得られる対応報酬を用いて前記報酬付与率を算出する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記特定部は、電気事業者の供給計画と実際の供給量との均衡を図るために送信された電力の削減要請に応じて前記蓄電池を制御した場合に削減できる料金を用いて前記報酬付与率を算出する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記価格差により得られる収益は、前記充電期間の単位電力あたりの託送従量料金、前記放電期間における単位電力あたりの託送従量料金の料金差により得られる収益
を含み、
前記特定部は、前記価格差により得られる収益の所定割合である還元価値を用いて前記報酬付与率を算出する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記電池制御部は、前記蓄電池に充電した電力を売電用電力として放電させ、
前記実績取得部は、前記蓄電池の売電実績を取得し、
前記特定部は、前記売電実績に基づいて前記報酬付与率を算出する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項7】
商品を販売するウェブサイトを提供する電子商取引サーバをさらに備え、
前記電子商取引サーバは、
前記ユーザが用いるユーザ装置が前記ウェブサイトにアクセスした場合に、前記充放電実績に基づいた商品の広告コンテンツを含むウェブデータを前記ユーザ装置に送信する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記電子商取引サーバは、
前記広告コンテンツに掲載された前記商品を前記ユーザが購入した場合の購入報酬を、前記蓄電池を利用しないユーザと比較して高くする、請求項7に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記蓄電池が放電した電力の消費量が少なくなる日時を含むスケジュールを
前記ユーザ毎に登録する登録部を備え、
前記電池制御部は、前記スケジュールに基づく充放電計画に基づいて
、前記ユーザの前記電力の消費量が少なくなる日時には前記商用電力系統からの受電電力量が少なくなるように前記蓄電池を制御する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項10】
1又は複数のコンピュータが、
ユーザ識別情報と関連付けて報酬が記憶部に記憶されるユーザであって、当該ユーザが利用する自家発電設備が供給する電力により充電可能であるとともに商用電力系統から供給された電力により充電可能な蓄電池の充放電を制御する電池制御部から、前記商用電力系統から供給された電力によって前記蓄電池を充電した充電実績と、前記蓄電池が放電した放電実績とを含む充放電実績を取得する実績取得処理と、
前記商用電力系統から供給された電力によって前記蓄電池を充電した充電期間における単位電力あたりの電力の市場価格と、前記蓄電池を放電した放電期間における単位電力あたりの電力の市場価格との価格差により得られる収益を用いて
前記ユーザに設定する報酬付与率を算出する特定処理と、
前記充放電実績に基づく前記蓄電池の放電実績及び前記報酬付与率を用いて
、前記収益を用いるサービス以外の他のサービスにおいて使用可能である報酬を算出し、算出した前記報酬を前記ユーザに関連付けて
前記記憶部に記録する報酬付与処理と、を実行し、
前記報酬付与処理では、前記放電実績として前記蓄電池の所定時間毎に計測した放電電力を累積した累積放電電力
量を放電電力量とみなし、そのみなし放電電力量に前記報酬付与率を乗算して前記報酬を算出する情報処理方法。
【請求項11】
1又は複数のコンピュータを、
ユーザ識別情報と関連付けて報酬が記憶部に記憶されるユーザであって、当該ユーザが利用する自家発電設備が供給する電力により充電可能であるとともに商用電力系統から供給された電力により充電可能な蓄電池の充放電を制御する電池制御部から、前記商用電力系統から供給された電力によって前記蓄電池を充電した充電実績と、前記蓄電池が放電した放電実績とを含む充放電実績を取得する実績取得部と、
前記商用電力系統から供給された電力によって前記蓄電池を充電した充電期間における単位電力あたりの電力の市場価格と、前記蓄電池を放電した放電期間における単位電力あたりの電力の市場価格との価格差により得られる収益を用いて
前記ユーザに設定する報酬付与率を算出する特定部と、
前記充放電実績に基づく前記蓄電池の放電実績及び前記報酬付与率を用いて
、前記収益を用いるサービス以外の他のサービスにおいて使用可能である報酬を算出し、算出した前記報酬を前記ユーザに関連付けて
前記記憶部に記録する報酬付与部、として機能させ、
前記報酬付与部は、前記放電実績として前記蓄電池の所定時間毎に計測した放電電力を累積した累積放電電力
量を放電電力量とみなし、そのみなし放電電力量に前記報酬付与率を乗算して前記報酬を算出するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般家庭、又は店舗等の施設において、商用電力系統から供給される電力を蓄積する蓄電設備が設置されている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載のシステムでは、商用電力系統から電力の供給を受ける需要家が、アグリゲータ等からの要請(デマンドレスポンス)に応じて蓄電池の電力を使用することによって、商用電力系統から供給される電力量を削減する。また、このシステムでは、要請に応じた需要家に対する報酬として、調整電力量に応じた適切な報酬を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記したシステムでは、需要家はデマンドレスポンスに対応した場合しか報酬を得ることができない。このため、需要家にとって、蓄電設備を利用することのインセンティブが十分ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、上記課題を解決する情報提供システムを提供する。前記情報提供システムは、ユーザに関連付けられた蓄電池の充放電を制御する電池制御部から、商用電力系統から供給された電力によって前記蓄電池を充電した充電実績と、前記蓄電池が放電した放電実績とを含む充放電実績を取得する実績取得部と、前記商用電力系統から供給された電力によって前記蓄電池を充電した充電期間における単位電力あたりの電力の市場価格と、前記蓄電池を放電した放電期間における単位電力あたりの電力の市場価格との価格差により得られる収益を用いて報酬付与率を算出する特定部と、前記充放電実績に基づく放電実績及び前記報酬付与率を用いて前記ユーザに付与される報酬を算出し、算出した前記報酬を前記ユーザに関連付けて記憶部に記録する報酬付与部と、を備える。
【0006】
一態様では、上記課題を解決する情報処理方法を提供する。前記情報処理方法は、1又は複数のコンピュータが、ユーザに関連付けられた蓄電池の充放電を制御する電池制御部から、商用電力系統から供給された電力によって前記蓄電池を充電した充電実績と、前記蓄電池が放電した放電実績とを含む充放電実績を取得する実績取得処理と、前記商用電力系統から供給された電力によって前記蓄電池を充電した充電期間における単位電力あたりの電力の市場価格と、前記蓄電池を放電した放電期間における単位電力あたりの電力の市場価格との価格差により得られる収益を用いて報酬付与率を算出する特定処理と、前記充放電実績に基づく放電実績及び前記報酬付与率を用いて前記ユーザに付与される報酬を算出し、算出した前記報酬を前記ユーザに関連付けて記憶部に記録する報酬付与処理と、を実行する。
【0007】
一態様では、上記課題を解決するプログラムを提供する。前記プログラムは、1又は複数のコンピュータを、ユーザに関連付けられた蓄電池の充放電を制御する電池制御部から、商用電力系統から供給された電力によって前記蓄電池を充電した充電実績と、前記蓄電池が放電した放電実績とを含む充放電実績を取得する実績取得部と、前記商用電力系統から供給された電力によって前記蓄電池を充電した充電期間における単位電力あたりの電力の市場価格と、前記蓄電池を放電した放電期間における単位電力あたりの電力の市場価格との価格差により得られる収益を用いて報酬付与率を算出する特定部と、前記充放電実績に基づく放電実績及び前記報酬付与率を用いて前記ユーザに付与される報酬を算出し、算出した前記報酬を前記ユーザに関連付けて記憶部に記録する報酬付与部、として機能させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、需要家であるユーザが蓄電設備を利用することによるインセンティブを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態の情報処理システムの概略構成を示す図である。
【
図2】同実施形態の情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】同実施形態の充放電管理サーバの機能を示すブロック図である。
【
図5】同実施形態のユーザ管理サーバの機能を示すブロック図である。
【
図6】同実施形態のユーザ情報の構造を示す模式図である。
【
図7】同実施形態の充放電管理情報の構造を示す模式図である。
【
図8】同実施形態の報酬付与処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】他の実施形態のECサイト画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
情報処理システム、情報処理方法及びプログラムの一実施形態について説明する。
<情報処理システム>
図1に示すように、需要家20は、蓄電設備14、自家発電設備18及び電力消費機器19を利用する。蓄電設備14は、商用電力系統から供給された電力又は自家発電設備18から供給された電力によって蓄電池16を充電する。需要家20は、小売電気事業者等の電気事業者と電気サービスを受ける契約を行うことによって、電気事業者が指定する価格(電気料金)で電力を受電する。単位電力量あたりの電気料金は、電力取引市場での取引価格又は電気使用量に連動して変化してもよく、一定であってもよい。電力取引市場は、例えばスポット市場である。スポット市場は、翌日に発電または販売する電気を前日までに入札し、売買を成立させるものである。
【0011】
自家発電設備18は、需要家20が利用する太陽光発電設備等の公知の設備である。電力消費機器19は、商用電力系統から供給された電力及び蓄電設備14から供給された電力を動力とすることが可能である。本実施形態における需要家20は、一般家庭又は施設である。施設は、店舗、工場、学校、ビル等である。電力消費機器19は、空調機器、冷蔵庫や洗濯機等の家電製品、電気自動車等である。なお、以下において需要家20を「ユーザ」として説明する。
【0012】
電力管理システム10は、商用電力系統とは別のシステムである。電力管理システム10は、充放電計画に従って蓄電設備14の充放電を制御する。また、電力管理システム10は、電力事業者が得た収益の一部をユーザに還元する。
【0013】
電力管理システム10は、ユーザ管理サーバ11、充放電管理サーバ12、蓄電設備14及びユーザ装置13を備える。これらの装置は、インターネット等のネットワークNWを介して各種データを送受信可能に接続されている。
【0014】
充放電管理サーバ12は、蓄電設備14の充放電計画をユーザ毎に作成する。充放電計画は、蓄電池16の充電及び放電のスケジュールを予め定めたものである。充放電計画には、充電期間及び充電を行う目標値と、放電期間及び放電の目標値が含まれる。目標値は、充電残量を示す充電状態(State Of Charge)又は蓄積された電力量を示す。また、充放電管理サーバ12は、充放電計画に従って、蓄電設備14に充電指令及び放電指令を送信する。また、充放電管理サーバ12は充放電実績を蓄電設備14から取得する。充放電管理サーバ12は、情報処理システムを構成する。
【0015】
ユーザ管理サーバ11は、充放電実績を充放電管理サーバ12から取得する。また、ユーザ管理サーバ11は、蓄電設備14の充放電によって得た電気事業者の収益を各ユーザに報酬として分配する。本実施形態では、ユーザ管理サーバ11は、情報処理システムを構成する。
【0016】
蓄電設備14は、充放電管理サーバ12の要求に基づいて蓄電池16の充放電を制御する。蓄電設備14は、電気料金が安価である期間に充電を行い、電気料金が高価である期間に放電を行う。
【0017】
蓄電設備14は、電池制御部15、蓄電池16、電力計測部17を備える。電池制御部15は、充放電管理サーバ12から受信した充電指令及び放電指令に従って蓄電池16を充放電する。蓄電池16は、充放電が可能な二次電池である。蓄電池16は、ユーザに関連付けられたものである。例えば、蓄電池16は、ユーザが所有するもの又は電気事業者から借りたものである。電力計測部17は、商用電力系統から受電した受電電力量を計測する計測部と、蓄電池16が充電した充電電力及び蓄電池16が放電した放電電力を計測する計測部とを有する。電力計測部17は、ユーザが受電した受電電力量(kWh)を所定期間(例えば30分)毎に計測する計量器を備える。この計量器は、計量法に準拠した検定済みの計量器である。また、電力計測部17は、蓄電池16の充放電の実績を所定期間毎に計測する計測器を備える。例えば、計測器は、蓄電池16の放電電力(kW)を所定時間毎(例えば10分間毎)に計測する。電力計測部17は、計測結果を含めた充放電実績を充放電管理サーバ12に送信する。
【0018】
ユーザ装置13は、ユーザが用いる装置であって、例えばパーソナルコンピューター、スマートフォン等の多機能電話機等である。ユーザ装置13は、ユーザが支払う予定の電気料金、ユーザに付与された報酬等を画面に表示する。
【0019】
<ハードウェア構成>
図2を参照して、ユーザ管理サーバ11を構成する情報処理装置H10のハードウェア構成を説明する。情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14及びプロセッサH15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。なお、入力装置H12及び表示装置H13は省略してもよい。
【0020】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立することによって、データの送受信を実行するインタフェースである。例えば、通信装置H11は、ネットワークインタフェースや無線インタフェース等である。
【0021】
入力装置H12は、担当者の操作に基づき各種情報の入力を受け付ける装置である。入力装置H12は、例えば、タッチパネル、マウス、キーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイ等である。
【0022】
記憶装置H14(コンピュータ可読媒体)は、ユーザ装置13の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する。記憶装置H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。記憶装置H14は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な記録媒体を含む。記憶装置H14には、蓄電設備14の充放電によって得た電気事業者の収益を各ユーザに報酬として分配するためのプログラム、及びプログラムの実行に用いられる各種のデータが記録されている。
【0023】
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、ユーザ装置13における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、プログラムをRAMに展開して、各処理のための各種プロセスを実行する。
【0024】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、以下のいずれかで構成し得る。
【0025】
〔1〕コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ
〔2〕各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路
〔3〕それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)
充放電管理サーバ12のハードウェア構成及びユーザ装置13のハードウェア構成は、情報処理装置H10と同様であるため、その説明を省略する。
【0026】
<充放電管理サーバの機能>
図3を参照して、充放電管理サーバ12の機能について説明する。充放電管理サーバ12は、予測部21、計画作成部22、指令部23、価格取得部24、実績取得部26、収益算出部25を備える。
【0027】
予測部21は、予測対象期間における電力取引市場での電力の取引価格を予測する。また、予測部21は、過去の充放電実績及び天気予報等に基づいて、ユーザの電力需要量、自家発電設備18の発電量を予測する。
【0028】
計画作成部22は、予測部21が予測した情報及び蓄電設備14の充放電実績に基づいて、蓄電池16の充放電計画を作成する。例えば充放電計画は、計画作成時点の翌日の計画であってもよいし、1時間後の計画であってもよい。計画作成部22は、作成した充放電計画を図示しない記憶部に記録する。
【0029】
指令部23は、充放電計画に基づいて電池制御部15に制御指令を送信する。例えば、指令部23は、充放電計画に基づいて、所定時間毎の充電指令及び放電指令を生成する。充電指令には、充電を行う目標値が含まれる。放電指令には、放電の目標値が含まれる。蓄電設備14は、受信した充電指令及び放電指令に基づいて、目標値に到達するように充電及び放電を行う。
【0030】
価格取得部24は、電力取引市場の単位電力あたりの取引価格を取得する。取引価格は、所定時間(例えば30分)毎の電力価格である。
実績取得部26は、蓄電池16の充放電実績を電池制御部15から取得する。充放電実績は、所定期間(例えば30分)毎の受電電力量、充電電力及び放電電力を識別可能な情報を含む。実績取得部26は、取得した充放電実績を充放電情報記憶部27に記録する。
【0031】
収益算出部25は、複数のケースに基づいて電気事業者の収益を算出する。算出した収益は充放電情報記憶部27に記録される。
図4を参照して、計画作成部22が作成する充放電計画について説明する。計画作成部22は、電力の取引価格が低い時間帯に蓄電池16を充電させるとともに取引価格が高い時間帯に商用電力系統からの受電電力量が抑制されるように計画を作成する。また、受電電力量の削減要請であるデマンドレスポンスの要請が発動されやすい時間帯には、受電電力量を削減できるように計画を作成する。
【0032】
図4は冬季における充放電計画の一例である。計画作成部22は、蓄電池16の充電状態の下限値を特定する。下限値は、0%、又は0%よりも大きい値である。充電状態の下限値は、停電等の非常事態においても蓄電池16の電力が使用できるように、例えば「30%」等の値に設定されていてもよい。計画作成部22は、下限値と上限値(例えば100%)との間で蓄電池16の充電状態が効率よく維持されるように充放電計画を作成する。
【0033】
計画作成部22は、電力取引市場での取引価格(以下、市場価格という)が低い夜間から早朝にかけての期間T1は、商用電力系統を介して供給された電力により蓄電池16を充電する期間とする。計画作成部22は、市場価格が高く且つユーザが消費する電力量が大きい期間T2は、蓄電池16を放電させて商用電力系統からの受電を抑制する期間とする。また、計画作成部22は、日射量が大きくなり且つユーザの電力の需要が低くなる期間T3は、自家発電設備18(ここでは太陽光発電設備)が発電した電力により蓄電池16を充電する期間とする。期間T4は、デマンドレスポンスが発動される可能性を想定して放電を停止する期間とする。市場価格が高く且つ消費電力量が大きい期間T5は、蓄電池16を放電させて商用電力系統からの受電を抑制する期間とする。
【0034】
指令部23は充電期間T1,T3に対して充電指令、放電期間T2,T5に対して放電指令を出力する。
<ユーザ管理サーバの機能>
図5を参照して、ユーザ管理サーバ11の機能について説明する。ユーザ管理サーバ11は、実績取得部30、特定部31及び報酬付与部32を備えている。また、ユーザ管理サーバ11は、ユーザ情報記憶部33を備えている。
【0035】
実績取得部30は、商用電力系統から供給された電力によって蓄電池16を充電した充電実績と、蓄電池16が放電した放電実績とを含む充放電実績を取得する。充放電実績は、商用電力系統から受電した受電電力量、蓄電池16が充電した充電電力を示す充電実績及び充電期間、蓄電池16が放電した放電電力を示す放電実績及び放電期間を含む。
【0036】
特定部31は、商用電力系統から供給された電力によって蓄電池16を充電した充電期間の単位電力あたりの市場価格P1、蓄電池16を放電した放電期間の単位電力あたりの市場価格P2の価格差ΔP(P2-P1)により得られる収益を用いて報酬付与率を算出する。つまり、電気料金が安い時間帯と電気料金が高い時間帯とでは、単位電力あたりの電力の市場価格に差が生じる。このため、電気料金が安い時間帯に蓄電池16を充電した後、電気料金が高い時間帯に放電した場合は、電気料金が高い時間帯に蓄電池16を介さずに商用電力系統から受電した電力で電力消費機器19を動作させる場合に比べ、電気料金を削減することができる。特定部31は、その削減された電気料金を収益として報酬付与率を算出する。
【0037】
報酬付与率は、本実施形態ではポイント率である。ポイントは、ユーザ100によって取得、保有、使用等され得る。ポイントは、蓄電池16を用いた電気サービス、又は他のサービスにおいて使用することができる。例えばユーザ100は、電子商取引システム(図示略)において、自身が保有するポイントと引き換えに商品を得ることができる。特定部31は、対象期間における電気事業者の収益の所定割合を、電気サービスを利用する全てのユーザの蓄電池16の放電電力(kW)で除算した値を報酬付与率とする。対象期間が1年である場合、収益の所定割合を全てのユーザの年間の放電電力を除算して報酬付与率(ポイント/kW)を算出する。なお、報酬付与率を算出する対象期間は、特に限定されない。例えば対象期間は、1カ月であってもよく、1年であってもよい。
【0038】
また、特定部31は、電池制御部15による制御を許容する蓄電池16の容量の許容範囲であってユーザ100によって予め設定された運用容量を取得する。そして特定部31は、運用容量が大きくなるほど、報酬を大きくする。具体的には、特定部31は、報酬付与率及びユーザ100毎の放電実績に基づく従量分の報酬に加え、運容容量に基づいて定額分の報酬をユーザ100に関連付ける。
【0039】
報酬付与部32は、充放電実績に基づく放電実績としてユーザ100毎の累積放電電力(kW)及び報酬付与率を用いて報酬を算出する。そして、算出した報酬をユーザ100に付与する。具体的には、報酬付与部32は、報酬付与率と、報酬の算出の対象となる付与期間内のユーザ100の累積放電電力とを乗算して、報酬を算出する。付与期間は、例えば1カ月である。このとき用いられる累積放電電力は付与期間内において蓄電池16が放電した電力(kW)を累積したものである。
【0040】
つまり、蓄電池16は、商用電力系統から供給された電力のほかに、自家発電設備18から供給された電力も蓄えるため、蓄電池16の放電電力量は、商用電力系統経由の受電電力量と等しくならない。報酬を算出するために蓄電池16の放電電力量(kWh)を計測する場合、電力量計測の制約により、検定済計量器を用いなければならない。しかし、商用電力系統からの受電電力量を計測する検定済計量器に加え、蓄電池16用の検定済計量器を蓄電設備14に設けると、コストが嵩む。このため、本実施形態では、充放電実績に含まれる放電電力を累積して累積放電電力を算出する。例えば電力計測部17の計測器が蓄電池16の放電電力を10分毎に計測する場合、実績取得部30は、放電電力が10分間一定であるとみなし、一つの計測値につき10分間分の放電電力量を算出する。さらに、各計測値に基づく10分間分の放電電力量を6回加算して、60分間分の累積放電電力を得る。この累積放電電力は、放電電力量(kWh)とみなすことができる。累積放電電力が大きくなるほど放電電力量も大きくなる。このように蓄電池16の放電電力量を計測しなくても、放電電力を用いることによって、電力量計測上の制約がある場合、又は、電力量計測が困難な事情がある場合であっても、蓄電池16の放電電力量を推定することが可能となる。
【0041】
報酬付与部32は、算出した報酬をユーザ100に関連付けてユーザ情報記憶部33に記録する。本実施形態では報酬はポイントである。つまり、累積放電電力が大きくなるほどユーザ100に付与されるポイントは多くなる。また、報酬付与率が大きくなるほどユーザ100に付与されるポイントは多くなる。
【0042】
特定部31による報酬付与率の決定方法について詳述する。
報酬付与率は、対象期間内で共通して用いられる。例えば、報酬付与率は、一定であってもよく、1年毎に更新されてもよい。又は、報酬付与率は報酬の付与期間毎(1カ月毎)に更新されてもよい。
【0043】
報酬付与率は、報酬付与率の算出対象期間内の複数のケースに基づき算出される。各ケースにおいては、電気事業者の収益である価値V1~V5が創出される。
特定部31は、単位電力当たりの価値V1~V5を合計した価値Vallの所定の割合である還元価値Vcを算出する。この還元価値Vcは、ユーザ100に還元される価値である。さらに特定部31は、還元価値Vcを、算出対象期間内における全てのユーザ100の放電電力の累積である放電電力Eで除算する(Vc/E)。その結果、特定部31は報酬付与率を取得する。
【0044】
価値V1~V5を算出する際に用いられる各ケースについて説明する。第1のケースは、裁定取引である。このケースで得られる価値V1(円/kWh)は、上述した市場価格P1,P2の価格差ΔP(円)と、対象期間内で裁定取引が行われた回数N1とを乗算することにより算出される。つまり、第1のケースの価値V1は、電気料金が安い期間に充電を行うとともに電気料金が高い期間に放電を行うことにより得られる価値である。
【0045】
第2のケースは、インバランス料金の削減である。インバランス料金は、電気事業者の供給計画と実際に供給した電力量との均衡がとれない場合に、その差分に対して電気事業者に課される料金である。このケースで得られる価値V2(円/kWh)は、蓄電池16の充放電を制御することで削減されたインバランス料金と、電力量削減指令に応じた回数N2を乗算することにより算出される。
【0046】
第3のケースは、デマンドレスポンスの要請への対応である。なお、デマンドレスポンスの指令(削減要請)及びこれに応じた電力削減量を含む実績の収集は、電気事業者とは別のアグリゲータが管理するようにしてもよい。デマンドレスポンスに対応することにより電気事業者は対応報酬を得ることができる。このケースで得られる価値V3(円/kWh)は、単位電力あたりの対応報酬に対象期間で発生した回数N3を乗算することにより算出される。
【0047】
第4のケースは、容量市場の指令への対応である。電力が逼迫した場合、一般送配電事業者からの発動指令(削減要請)があった場合、適切に対応することで対応報酬を得ることができる。例えば、電池制御部15は放電電力量の削減、又は余剰電力の商用電力系統への供給(逆潮流)を行う。このケースで得られる価値V4(円/kWh)は、単位電力あたりの対応報酬に対象期間で発生した回数N4を乗算することにより算出される。
【0048】
第5のケースは、託送従量料金の削減である。託送料金は、送配電網の利用料金として事業者が一般送配電事業者に支払う料金である。託送料金は時間帯に応じて変化する。このケースで得られる価値V5(円/kWh)は、託送料金が安い時間帯に送配電網を利用することにより削減できる単位電力当たりの利用料金と対象期間の利用回数N5とを乗算することにより算出される。なお、各ケースで用いられる回数は、全てのユーザ100を対象とした回数である。
【0049】
<電力管理システムが用いるデータ>
図6及び
図7を参照して、電力管理システム10が用いるユーザ情報40及び充放電管理情報41について説明する。
【0050】
図6は、ユーザ情報40の一例である。ユーザ情報40は、ユーザ情報記憶部33にユーザ毎に記録される。ユーザ情報40は、ユーザID、累積放電電力、予定報酬及び保有報酬を含んでいる。累積放電電力は、報酬が付与される付与期間内で、蓄電池16が放電した電力を累積した値である。予定報酬は、報酬が付与される確定日にユーザに付与される予定の報酬を示す。保有報酬は、保有報酬はユーザが保有している報酬である。報酬は、報酬が新たに付与された場合に増加する。また、保有報酬は、ユーザによる商品の購入等に伴い減少する。
【0051】
図7は、充放電管理情報41である。充放電管理情報41は、充放電情報記憶部27に記録されている。充放電管理情報41は、ユーザID、充放電実績、充放電計画を含む。充放電実績は、電池制御部15から取得した情報である。充放電計画は、所定時間毎に、充電、放電、及び充放電無のいずれを行うかを定めたものである。
【0052】
<動作>
図8を参照して、ユーザ管理サーバ11がユーザに付与する報酬を算出する手順について説明する。
【0053】
実績取得部30は、累積放電電力を取得する(ステップS1)。ここで取得される累積放電電力は、ユーザ毎の累積放電電力である。実績取得部30は、報酬の付与期間内の放電実績に含まれる放電電力を累積して累積放電電力を得る。
【0054】
特定部31は、予め算出された報酬付与率を特定する(ステップS2)。さらに、報酬付与部32は、充放電実績に含まれる累積放電電力及び報酬付与率を乗算することによって、報酬であるポイントを算出する(ステップS3)。報酬付与部32は、例えば報酬付与率を累積放電電力に乗算することによりポイントを算出する。報酬付与部32は、算出した報酬を、ユーザ情報40の保有報酬に加算することによって登録する(ステップS4)。
【0055】
図9は、ユーザ装置13の表示装置H13が表示する利用実績画面50である。ユーザ装置13は、ユーザ装置13にインストールされたアプリケーションを用いて利用実績画面50を表示する。この場合、このアプリケーションは、ウェブサーバに利用実績情報を要求する。ウェブサーバは、ユーザ管理サーバ11及び充放電管理サーバ12の少なくとも一方からユーザが支払う電気料金を取得する。また、ウェブサーバは、ユーザ管理サーバ11から予定報酬及び保有報酬を取得する。そして、ウェブサーバはこれらの情報をユーザ装置13に送信する。ユーザ装置13は、これらの情報を利用実績画面50に表示する。又はユーザ装置13は、ユーザ装置13にインストールされたブラウザプログラムによってウェブデータを読み込むことにより利用実績画面50を表示する。ウェブデータは、HTML等のマークアップ言語で記述されたファイル、そのファイルに埋め込まれる画像データ、JavaScript(登録商標)プログラム等を含む。
【0056】
利用実績画面50は、保有報酬51(保有ポイント)及び予定報酬52(獲得予定ポイント)を含む。また、利用実績画面50は、画面を閲覧した日が含まれる期間の電気料金53及び商用電力系統から供給された使用電力量54を含む。
【0057】
上記実施形態の効果について説明する。
(1)商用電力系統に接続する蓄電池16は、商用電力系統から供給された電力による充電及びその電力の放電を日常的に行う。上記実施形態によれば、電池制御部15は、電気料金が安いときに充電し、電気料金が高いときに放電を行うように蓄電池16を制御する。また、特定部31は、電気料金が安い時間帯であって蓄電池16を充電した期間の市場価格P1と、蓄電池16を放電した期間の単位電力あたりの市場価格P2との価格差ΔPにより得られる収益を用いて報酬付与率を算出するようにした。つまり、日常的に行われる充放電に応じて報酬付与率が算出されるため、ユーザに還元される収益(報酬)を多くすることができる。よって、ユーザに、蓄電池16を利用することに対するインセンティブが高いと感じさせることができる。これにより、蓄電池16の利用台数を増加させることができる。また、報酬はユーザ毎の放電実績に基づき算出されるため、放電実績が大きい場合には報酬を増加させることが可能となる。よって、ユーザの満足度を高めることができる。
【0058】
(2)報酬付与部32は、放電実績として蓄電池16の所定時間毎の放電電力を累積した累積放電電力(kW)を用いて報酬を算出する。これによれば、蓄電池16の放電電力量を計測する検定済計量器を用いることなく、蓄電池16の放電電力量を推定することができるので、蓄電設備14の設置に要するコストを低減することが可能となる。
【0059】
(3)充放電管理サーバ12の予測部21によって予測される市場価格に基づいて充放電計画が作成されるので、市場価格が安いときに蓄電池16を充電するとともに、市場価格が高いときに蓄電池16の電力を消費することができる。
【0060】
(4)上記実施形態によれば、電力削減要請に応じた場合の対応報酬を用いて報酬付与率が算出される。このため、ユーザに還元される報酬を増やすことが可能となる。
(5)上記実施形態によれば、電気事業者の供給計画と実際の供給量との均衡を図るために送信された電力の削減要請に応じて蓄電池16を制御した場合に削減できるインバランス料金に基づいて報酬付与率を算出する。このため、ユーザに還元される収益(報酬)を増やすことが可能となる。
【0061】
(6)上記実施形態によれば、託送従量料金の料金差を用いて報酬付与率が算出される。このため、ユーザに還元される収益(報酬)を増やすことが可能となる。
(7)上記実施形態によれば、自家発電設備18が供給する電力によって蓄電池16を充電させる。このためユーザは、商用電力系統から受電する電力の電気料金を削減することができる。また、報酬付与率は蓄電池16の放電実績を用いることから、自家発電設備18の供給電力により充電した電力を電力消費機器19に使用する場合であっても、報酬付与率に反映することができる。
【0062】
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
<売電による報酬の付与>
・上記実施形態では、蓄電設備14が充電した電力を、電力消費機器19の動力としてユーザが用いるようにした。これに代えて若しくは加えて、蓄電池16に充電した電力を売電用電力としてもよい。この態様では、電池制御部15が蓄電池16に充電した電力を売電用電力として放電させる。実績取得部30は、蓄電池16の売電実績を取得する。特定部31は、売電実績に基づいて報酬付与率を算出する。例えば計画作成部22は、売電価格が高い期間に蓄電設備14が放電を行うように充放電計画を作成する。そして、特定部31は、対象期間内で売電が行われた回数等に基づいて、創出される収益を算出する。さらに、特定部31は、算出した収益を用いて報酬付与率を算出する。
【0063】
ユーザ管理サーバ11は、蓄電設備14が送電した電力量である売電電力量を含む売電実績を電池制御部15から取得する。また、ユーザ管理サーバ11は、売電電力量に報酬付与率を乗算することによって売電における報酬を算出する。このとき用いられる報酬付与率は、上記実施形態の放電電力に対する報酬付与率とは同じであってもよく異なる値であってもよい。これによれば、ユーザは、売電時においても報酬を取得できるので、ユーザの満足度を高めることができる。
【0064】
<充放電計画>
・上記実施形態では、充放電管理サーバ12は、蓄電設備14の充放電計画をユーザ毎に作成するようにした。これに代えて、充放電管理サーバ12は、全てのユーザ又は複数のユーザが属するグループ毎に充放電計画を作成するようにしてもよい。例えばグループは、地域ごとに作成される。地域は、例えば寒冷地等、日射量や需要電力量に共通性があるか否かで区画される。又は地域は、送配電事業者の管内毎に区画してもよい。この態様においては、充放電管理サーバ12の処理の複雑化による処理負荷を軽減することができる。
【0065】
・ユーザ管理サーバ11は、ユーザのスケジュールをユーザ情報40に記録するようにしてもよい。この態様において、ユーザ管理サーバ11は、蓄電池16が放電した電力の消費量が少なくなる日時を含むスケジュールを登録する登録部(図示略)を備える。電池制御部15は、スケジュールに基づく充放電計画に基づいて蓄電池16を制御する。具体的には、充放電管理サーバ12は、ユーザ管理サーバ11からユーザのスケジュールを取得する。そして、計画作成部22はスケジュールに基づいて充放電計画を作成する。また、指令部23は、充放電計画に基づいて電池制御部15に指令を送信する。スケジュールは、ユーザ自身がユーザ装置13を用いてユーザ管理サーバ11に登録したものであってもよい。又は、スケジュールは、EC(Electronic Commerce)サイト等において商品の購入履歴から判定されるものであってもよい。例えば、スケジュールを判定するための購入履歴は、宿泊施設の予約又は交通機関の予約等である。例えばECサイトを提供する電子商取引サーバ(図示略)は、ユーザが旅行に関する予約を行った場合に、旅行計画のスケジュールをユーザ管理サーバ11に送信する。ユーザ管理サーバ11は、ユーザのスケジュール(在宅予定又は不在予定)を充放電管理サーバ12に送信する。充放電管理サーバ12は、ユーザのスケジュールに基づいて、ユーザが自宅に居ない場合は、ユーザが自宅にいる場合に比べ全体的に商用電力系統からの受電電力量を少なくした充放電計画を作成する。また、充放電管理サーバ12は、ユーザが帰宅する予定時刻等の目標時刻に合わせて、目標とする充電状態まで充電するように充放電計画を作成するようにしてもよい。
【0066】
上記実施形態では充放電管理サーバ12は、充放電実績に基づいて翌日又はそれ以降の充放電計画を作成するため、ユーザが長期間不在とする場合には、充放電計画は徐々に不在時に合わせたものに更新されていく。しかし、充放電管理サーバ12が、ユーザのスケジュールを予め取得することによって、そのスケジュールに合わせた充放電計画を事前に作成することができる。これによれば、ユーザのスケジュールに合った充放電計画に基づいて蓄電池16が制御されるため、不在期間において受電が必要な電力量(例えば不在時も駆動する家電製品が消費する電力量等)をはるかに上回る電力量を受電してしまうことが抑制される。このため、ユーザが対価として支払う電気料金を削減することができる。
【0067】
<報酬付与率>
・上記実施形態では、上記したケース1~5に応じた価値V1~V5を用いて報酬付与率を算出した。これに代えて、上記ケース1~5に応じた価値V1と、価値V2~V5の少なくとも一つを用いて報酬付与率を算出してもよい。
【0068】
・報酬付与率は、ユーザ毎に異なる値であってもよい。上記実施形態では特定部31は、全ユーザを対象として価値V1~V5を用いて報酬付与率を算出した。これに代えて、特定部31は、ユーザ毎に算出した価値V1~V5を用いて報酬付与率を算出するようにしてもよい。
【0069】
・上記実施形態では、報酬付与率は、対象期間における電気事業者の収益の所定割合を全てのユーザの放電電力で除算した値とした。これに代えて、特定部31は、上記収益の所定割合を、所定のセグメントに属する各ユーザの放電電力の合計値で除算することによって報酬付与率を算出してもよい。セグメントを分ける基準は特に限定されないが、ユーザ属性を用いることができる。ユーザ属性は、例えば、ユーザと電気事業者との間の契約の種類、電気サービス又は電気サービスを包含するサービスにおけるユーザのロイヤリティステータス(ユーザランク)を用いることができる。又は、上記セグメントとして、ターゲティング広告等で用いられるセグメント等を用いることができる。又は、セグメントは、ユーザの住所(蓄電池16の設置場所)が含まれる地域や、送配電事業者の管内といった地理的情報で分けられてもよい。
【0070】
・報酬付与率は、蓄電池16の利用期間に伴い段階的に増加するものであってもよい。また、報酬付与率は、ユーザが蓄電池16を電気事業者からレンタルするか又は購入するかに応じて、変化するものであってもよい。
【0071】
<充放電実績>
・上記実施形態では、実績取得部30が、放電実績に含まれる蓄電池16の放電電力を用いて累積放電電力を算出するようにした。これに代えて、蓄電設備14の電力計測部17又は充放電管理サーバ12の実績取得部26が、蓄電池16の放電電力を用いて累積放電電力を算出するようにしてもよい。
【0072】
<蓄電設備>
・上記実施形態では、蓄電設備14の電力計測部17は、蓄電池16の放電電力(kW)を所定時間毎に計測するようにした。これに代えて、電力計測部17は、蓄電池16の放電電力量(kWh)を計測するようにしてもよい。この場合には、電力計測部17は、計量法に準拠する検定済計量器を用いて放電電力量を計測する。
【0073】
<ECサイト>
・電力管理システム10は、商品を販売するECサイト(ウェブサイト)を提供する電子商取引サーバ(図示略)を備えていてもよい。電子商取引サーバは、ユーザが閲覧するホーム画面等に、ユーザの充放電実績に応じた商品の広告を表示する。なお、ここでいう広告とは、ユーザが商品を購入することのできる流入口となるものであれば、それを含むものとする。
【0074】
商品の広告を表示する一態様について説明する。電子商取引サーバは、ユーザ装置13からウェブデータの要求を受信した場合に、ユーザが蓄電池16を利用するとともに上記電気事業者から電力を購入する電気サービスを利用しているか否かを判定する。又は、ユーザの購入履歴に、蓄電池16の購入履歴があるか否かを判定する。電子商取引サーバは、ユーザ100が電気サービスを利用している又はユーザの購入履歴に蓄電池16の購入履歴が含まれると判定した場合、電力消費機器が掲載された広告コンテンツを、ウェブデータに含めてユーザ装置13に送信する。電気消費機器は、ユーザの購入履歴に含まれないものであってもよい。
【0075】
図10は、ホーム画面60の一例を示す。ホーム画面60には、電力消費機器として家電製品の広告コンテンツ61が含まれる。また、電子商取引サーバは、ユーザが広告コンテンツ61に掲載された商品を購入した場合に、ポイント等の報酬(購入報酬)を付与する。このとき、電気サービスを利用するユーザの購入報酬を、電気サービスを利用せず同じ商品を購入したユーザに比較して大きくしてもよい。これにより、電気サービスを利用するユーザに対し、商品を購入する際の特典を与えることができる。
【0076】
<情報処理システム>
・上記実施形態では、実績取得部30は、充放電管理サーバ12から充放電実績を受信するようにした。これに代えて、ユーザ管理サーバ11の実績取得部30は、充放電管理サーバ12を介さずに電池制御部15から充放電実績を受信してもよい。
【0077】
・上記実施形態では、ユーザ管理サーバ11が、実績取得部30、特定部31及び報酬付与部32を備えるようにした。これらの構成は、ユーザ管理サーバ11及び充放電管理サーバ12に分散させてもよく、ユーザ管理サーバ11及び充放電管理サーバ12のいずれか一方が備えていてもよい。また、ユーザ管理サーバ11は、予測部21、計画作成部22、指令部23、価格取得部24及び収益算出部25の少なくとも一つを具備してもよい。さらに、ユーザ管理サーバ11は、上記電子商取引サーバとして機能してもよい。さらに特許請求の範囲の情報処理システムは、蓄電設備14を備えるようにしてもよい。
【0078】
・上記実施形態では、ユーザ管理サーバ11の特定部31が、市場価格P1,P2の価格差ΔPに基づいて報酬付与率を算出するようにした。これに代えて、ユーザ装置13が特定部31を備える構成であってもよい。この態様においては、ユーザ装置13が、市場価格P1,P2及び充放電実績を取得する。情報の取得先は、充放電管理サーバ12、ユーザ管理サーバ11、及び蓄電設備14の少なくとも一つである。そして、ユーザ装置13を用いるユーザに対する報酬付与率をユーザ装置13が算出する。ユーザ装置13は、算出した報酬付与率をユーザ管理サーバ11に送信する。このようにすると、ユーザ管理サーバ11の処理負荷を軽減することができる。
【0079】
・上記実施形態では、ユーザ管理サーバ11の特定部31が、市場価格P1,P2の価格差ΔPに基づいて報酬付与率を算出するようにした。これに代えて、特定部31は、充放電管理サーバ12が算出した報酬付与率、又は他の装置が算出した報酬付与率を取得するようにしてもよい。
【0080】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
[A]ユーザに関連付けられた蓄電池の充放電を制御する電池制御部から、商用電力系統から供給された電力によって前記蓄電池を充電した充電実績と、前記蓄電池が放電した放電実績とを含む充放電実績を取得する実績取得部と、
前記商用電力系統から供給された電力によって前記蓄電池を充電した充電期間における単位電力あたりの電力の市場価格と、前記蓄電池を放電した放電期間における単位電力あたりの電力の市場価格との価格差により得られる収益を用いて報酬付与率を算出する特定部と、
前記充放電実績に基づく前記蓄電池の放電実績及び前記報酬付与率を用いて前記ユーザに付与される報酬を算出し、算出した前記報酬を前記ユーザに関連付けて記憶部に記録する報酬付与部と、を備える情報処理システム。
【0081】
[B]前記報酬付与部は、前記放電実績として前記蓄電池の所定時間毎の放電電力を累積した累積放電電力を用いる、[A]に記載の情報処理システム。
[C]予測対象期間における電力取引市場での電力の市場価格を予測する予測部と、
予測される前記市場価格に基づいて、前記予測対象期間の前記蓄電池の充放電計画を作成する計画作成部と、
前記充放電計画に基づいて前記電池制御部に指令を送信する指令部と、を備える、[A]又は[B]に記載の情報処理システム。
【0082】
[D]前記特定部は、電力の削減要請に応じて前記蓄電池を制御した場合に得られる対応報酬を用いて前記報酬付与率を算出する、[A]~[C]のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【0083】
[E]前記特定部は、電気事業者の供給計画と実際の供給量との均衡を図るために送信された電力の削減要請に応じて前記蓄電池を制御した場合に削減できる料金を用いて前記報酬付与率を算出する、[A]~[D]のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【0084】
[F]前記特定部は、前記充電期間の単位電力あたりの託送従量料金、前記放電期間における単位電力あたりの託送従量料金の料金差により得られる収益を用いて前記報酬付与率を算出する、[A]~[E]のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【0085】
[G]前記電池制御部は、前記ユーザが利用する自家発電設備が供給する電力により前記蓄電池を充電させる、[A]~[F]のいずれか1項に記載の情報処理システム。
[H]前記電池制御部は、前記蓄電池に充電した電力を売電用電力として放電させ、
前記実績取得部は、前記蓄電池の売電実績を取得し、前記特定部は、前記売電実績に基づいて前記報酬付与率を算出する、[A]~[G]のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【0086】
[I]商品を販売するウェブサイトを提供する電子商取引サーバをさらに備え、
前記電子商取引サーバは、
前記ユーザが用いるユーザ装置が前記ウェブサイトにアクセスした場合に、前記充放電実績に基づいた商品の広告コンテンツを含むウェブデータを前記ユーザ装置に送信する、[A]~[H]のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【0087】
[J]前記電子商取引サーバは、
前記広告コンテンツに掲載された前記商品を前記ユーザが購入した場合の購入報酬を、前記蓄電池を利用しないユーザと比較して高くする、[I]に記載の情報処理システム。
【0088】
[K]前記蓄電池が放電した電力の消費量が少なくなる日時を含むスケジュールを登録する登録部を備え、
前記電池制御部は、前記スケジュールに基づく充放電計画に基づいて前記蓄電池を制御する、[A]~[J]のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【0089】
[L]1又は複数のコンピュータが、
ユーザに関連付けられた蓄電池の充放電を制御する電池制御部から、商用電力系統から供給された電力によって前記蓄電池を充電した充電実績と、前記蓄電池が放電した放電実績とを含む充放電実績を取得する実績取得処理と、
前記商用電力系統から供給された電力によって前記蓄電池を充電した充電期間における単位電力あたりの電力の市場価格と、前記蓄電池を放電した放電期間における単位電力あたりの電力の市場価格との価格差により得られる収益を用いて報酬付与率を算出する特定処理と、
前記充放電実績に基づく前記蓄電池の放電実績及び前記報酬付与率を用いて前記ユーザに付与される報酬を算出し、算出した前記報酬を前記ユーザに関連付けて記憶部に記録する報酬付与処理と、を実行する情報処理方法。
【0090】
[M]1又は複数のコンピュータを、
ユーザに関連付けられた蓄電池の充放電を制御する電池制御部から、商用電力系統から供給された電力によって前記蓄電池を充電した充電実績と、前記蓄電池が放電した放電実績とを含む充放電実績を取得する実績取得部と、
前記商用電力系統から供給された電力によって前記蓄電池を充電した充電期間における単位電力あたりの電力の市場価格と、前記蓄電池を放電した放電期間における単位電力あたりの電力の市場価格との価格差により得られる収益を用いて報酬付与率を算出する特定部と、
前記充放電実績に基づく前記蓄電池の放電実績及び前記報酬付与率を用いて前記ユーザに付与される報酬を算出し、算出した前記報酬を前記ユーザに関連付けて記憶部に記録する報酬付与部、として機能させるプログラム。
【符号の説明】
【0091】
10…電力管理システム
11…ユーザ管理サーバ