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特許7581305クロックリカバリ回路、誤り率測定装置、及び誤り率測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】クロックリカバリ回路、誤り率測定装置、及び誤り率測定方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/033 20060101AFI20241105BHJP
   G06F 1/04 20060101ALI20241105BHJP
   H03L 7/08 20060101ALI20241105BHJP
   H04B 1/7156 20110101ALI20241105BHJP
   H04L 7/04 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
H04L7/033
G06F1/04 512
H03L7/08 107
H04B1/7156
H04L7/04 300
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022190657
(22)【出願日】2022-11-29
(65)【公開番号】P2024078239
(43)【公開日】2024-06-10
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 一浩
【審査官】谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-255164(JP,A)
【文献】特開2013-093794(JP,A)
【文献】特開2011-176413(JP,A)
【文献】特開2022-147683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/033
G06F 1/04
H03L 7/08
H04B 1/7156
H04L 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SSC(Spread Spectrum Clock)変調されたリファレンスクロックを生成するリファレンスクロック生成部(10)と、
所定のSSC変調周波数でSSC変調されたデータ信号のSSC変調クロックを、前記リファレンスクロックに同期して再生するクロックリカバリ部(20)と、
前記クロックリカバリ部により再生された前記SSC変調クロックをFM復調してFM復調信号を生成するFM復調部(22)と、
前記FM復調信号の周期を表す周期情報と、前記FM復調信号の傾きを表す傾き情報とを取得し、取得した前記周期情報及び前記傾き情報に基づいて変調用信号を生成する変調用信号生成部(30)と、を備え、
前記リファレンスクロック生成部は、
入力される制御電圧に応じた周波数の出力信号を出力する電圧制御発振器(14)と、
所定の周波数を有する基準クロック源と、前記電圧制御発振器の前記出力信号との位相差に応じた位相差信号を出力する位相比較器(16)と、
前記位相差信号に従った充電/放電電流を生成するチャージポンプ(17)と、
前記充電/放電電流から高周波成分を除去した信号を出力するループフィルタ(12)と、
前記変調用信号生成部により生成された前記変調用信号と、前記ループフィルタの出力とを加算する信号合成部(11)と、を有し、
前記電圧制御発振器は、前記信号合成部の出力が前記制御電圧として入力されることにより、前記電圧制御発振器のクロックを変調して前記リファレンスクロックを生成し、生成した前記リファレンスクロックを前記出力信号として出力することを特徴とするクロックリカバリ回路。
【請求項2】
前記変調用信号生成部は、
前記周期情報を取得する周期情報取得部(31)と、
前記傾き情報を取得する傾き情報取得部(32)と、
前記周期情報及び前記傾き情報に基づいて三角波信号をデジタル演算により生成する三角波信号発生器(40)と、
前記三角波信号をデジタル-アナログ変換して前記変調用信号を生成するDAC(50)と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のクロックリカバリ回路。
【請求項3】
前記周期情報取得部は、前記FM復調信号の直流平均値レベルを第1閾値として、前記FM復調信号のレベルが連続して前記第1閾値以上になる期間、又は、前記FM復調信号のレベルが連続して前記第1閾値以下になる期間を前記周期情報として取得することを特徴とする請求項2に記載のクロックリカバリ回路。
【請求項4】
前記傾き情報取得部は、
前記FM復調信号のレベルが連続して前記第1閾値と異なる第2閾値以上になる高レベル期間、又は、前記FM復調信号のレベルが連続して前記第2閾値以下になる低レベル期間を取得する高低レベル期間取得部(32b)と、
前記周期情報と、前記高レベル期間又は前記低レベル期間との差分を算出する差分算出部(32c)と、
前記第1閾値と前記第2閾値との差分を、前記差分算出部により算出された差分の半分で除算した値の絶対値を前記傾き情報として出力する傾き情報出力部(32d)と、を含むことを特徴とする請求項3に記載のクロックリカバリ回路。
【請求項5】
前記三角波信号発生器は、
前記周期情報の半分の期間ごとにパルス信号を出力するパルス信号出力部(41)と、
前記パルス信号のタイミングで前記三角波信号の傾きの正負を表す周波数偏移方向情報を出力する周波数偏移方向情報出力部(42)と、
前記周波数偏移方向情報と前記傾き情報を掛け合わせて得られる前記傾きを出力する傾き出力部(43)と、
前記傾き出力部から出力された前記傾きに所定のクロック周期を掛けた値を、前記所定のクロック周期ごとの振幅変化量として算出する振幅変化量算出部(44)と、
前記振幅変化量算出部により算出された前記振幅変化量を前記所定のクロック周期ごとに累積加算することで、前記三角波信号を発生する累積加算回路(45)と、を含むことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載のクロックリカバリ回路。
【請求項6】
前記クロックリカバリ部により再生された前記SSC変調クロックを分周して、前記FM復調部に出力する分周器(21)と、
前記分周器の分周比を制御する分周比制御部(61)と、を更に備え、
前記FM復調部は、
前記分周器により分周された前記SSC変調クロックを遅延させて出力する遅延部(23a)と、
前記分周器の出力と、前記遅延部の出力との排他的論理和を演算する排他的論理和回路(23b)と、
前記排他的論理和回路の出力を平滑化して前記FM復調信号を生成するローパスフィルタ(24)と、を有し、
前記分周比制御部は、前記排他的論理和回路に入力される前記SSC変調クロックの最高周波数が、前記排他的論理和回路の動作上限周波数の1/4以下になるように、前記データ信号のビットレートに基づいて前記分周比を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクロックリカバリ回路。
【請求項7】
所定のSSC変調周波数でSSC変調されたデータ信号を受信する信号受信部(73)と、
前記信号受信部により受信された前記データ信号を構成するビット列データのビット誤り率を算出する誤り率算出部(75)と、を備える誤り率測定装置(100)であって、
前記信号受信部は、前記請求項1又は請求項2に記載のクロックリカバリ回路を有し、前記クロックリカバリ回路により前記データ信号から再生された前記SSC変調クロックのタイミングで前記データ信号を構成するビット列データを抽出することを特徴とする誤り率測定装置。
【請求項8】
所定のSSC変調周波数でSSC変調されたデータ信号を受信する信号受信ステップ(S2,S3)と、
前記信号受信ステップにより受信された前記データ信号を構成するビット列データのビット誤り率を算出する誤り率算出ステップ(S4)と、を含む誤り率測定方法であって、
前記信号受信ステップは、前記請求項1又は請求項2に記載のクロックリカバリ回路により前記データ信号から再生された前記SSC変調クロックのタイミングで前記データ信号を構成するビット列データを抽出することを特徴とする誤り率測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロックリカバリ回路、誤り率測定装置、及び誤り率測定方法に関し、特に、スペクトラム拡散クロックにより変調されたデータ信号からクロックを再生するためのクロックリカバリ回路、誤り率測定装置、及び誤り率測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCI Express(登録商標)(Peripheral Component Interconnect Express)規格は、世代と共にビットレートが速くなってきており、Gen5ではNRZ(Non Return to Zero)で32Gbit/sec、Gen6ではPAM4(Pulse Amplitude Modulation 4)で32Gbaud(すなわち、64Gbit/sec)となっている。PCI Express規格のコンプライアンステストでは規定されたロスの大きい伝送路にて試験を実施する。このため、受信側にて、CTLE(Continuous Time Linear Equalizer)やDFE(Decision Feedback Equalizer)等のイコライザによって、中域から高域周波数にかけての伝送路ロスを補償して、被測定物(Device Under Test:DUT)から出力されたデータ信号のアイ開口を再度開かせる処理が行われている。
【0003】
例えば、PCI Express規格のGen5では16GHzで36dB、PCI Express規格のGen6では16GHzで32dBのロスが規定されている。しかしながら、イコライザで復元したPAM4信号のMSB(Most Significant Bit)相当のアイをNRZ対応のリミッティングアンプで増幅すると、PAM4信号特有の符号間干渉(Inter-Symbol Interference:ISI)を含むアイ開口が劣化したNRZ波形が得られる。なお、PAM4信号のMSBのアイ開口は、理論上NRZ信号のアイ開口の1/3以下である。また、伝送路の周波数特性とイコライザの周波数特性との差異もアイ開口の劣化要因として想定される。
【0004】
近年、IoT(Internet of Things)やクラウドコンピューティングの普及により通信システムは膨大なデータを扱うようになり、通信システムを構成する各種の通信機器のインタフェースは高速化とシリアル伝送化が進んでいる。例えば、USB(登録商標)(Universal Serial Bus)やPCI Expressなどの高速シリアルバス(High Speed Serial Bus)の規格では、電磁両立性(Electro-Magnetic Compatibility:EMC)対策として、基準信号のスペクトラムを拡散したスペクトラム拡散クロック(Spread-Spectrum Clock:SSC)によるSSC変調が採用されている。
【0005】
SSC変調されたデータ信号(以下、「SSC変調データ信号」とも言う)は、図9(a)に示すような所定の変調周波数を有するSSC変調波により周波数掃引された基準クロックに同期したタイミングで生成される。例えば、PCI Express規格のSSC変調波は、図9(a)に示すような周期33kHzの三角波の波形形状を有している。
【0006】
ところで、通信機器における信号の品質評価の指標の一つとして、受信データのうちビット誤りが発生した数と受信データの総数との比較として定義されるビット誤り率(Bit Error Rate:BER)が知られている。
【0007】
近年、通信システムを構成する各種の通信機器の多くは、同期用のクロックを伝送せず、データ信号のみを伝送するようになっており、BERを測定する従来の誤り率測定装置は、受信したデータ信号からクロックを再生するクロックリカバリデバイスを備えている。
【0008】
10Gイーサネット(登録商標)規格等の高速シリアル通信用途向けの汎用クロックリカバリデバイスは通常±100ppm程度の周波数偏差又はビットレート偏差に対応できるようになっているが、このようなクロックリカバリデバイスに、例えば最大5300ppmの周波数偏移を有するPCI Express規格のSSC変調データ信号が入力されると、クロックリカバリデバイスがアンロックしたり誤動作したりする。また、クロックリカバリデバイスが動作していても、SSC変調の周波数偏移に追従しきれない場合がある。
【0009】
このような場合、クロックリカバリデバイスの出力をFM(Frequency Modulation)復調して得られるSSC変調波は、図9(a)に示した本来の三角波の頂点部分が削られたような歪な波形になってしまう。
【0010】
さらに、劣化したストレスのかかったSSC変調データ信号でクロックリカバリを行った場合は、クロックリカバリデバイスの出力をFM復調して得られるSSC変調波は、図9(b)の実線のグラフに示すように、破線で示す本来の三角波の頂点部分が削られたような歪な波形であることに加えて、クロックリカバリデバイスで再生されたクロックに位相雑音(ISIやジッタ)が重畳されることに起因した、雑音や揺らぎのある波形になってしまう場合がある。このような場合には、クロックリカバリデバイスに入力されるSSC変調データ信号とリファレンスクロックとの周波数偏差が、クロックリカバリデバイスの許容範囲を逸脱しており、正常なクロック再生が行われていないと考えられる。
【0011】
従来、図10に示すように、位相比較器51aと、ループフィルタ52aと、電圧制御発振器53aと、信号入力端子57aと、信号出力端子59aと、付加的なループである電圧追尾回路VT1とを有し、クロックリカバリデバイスとして利用可能な位相同期回路PS1が知られている(例えば、特許文献1参照)。電圧追尾回路VT1は、基準電圧発生器58aと、差動増幅器54aと、フィルタ55aと、加算器56aとによって構成されている。
【0012】
電圧追尾回路VT1は、位相比較器51aの出力電圧の平均値を、基準電圧発生器58aの出力電圧Vに一致させるように制御する。電圧追尾回路VT1は、位相比較器51aの出力電圧のデューティ比を保つようにフィードバック制御するので、電圧追尾回路VT1が存在しない場合の位相同期回路と比較すると、位相同期回路PS1では、ロックレンジが大幅に拡大されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2002-84189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に開示された電圧追尾回路VT1を備えた位相同期回路PS1を用いても、ロックレンジの拡大に限度があり、SSC変調による周波数偏移が大きく、劣化したストレスのかかったSSC変調データ信号に対応したクロック再生には適していないという問題があった。
【0015】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、SSC変調による周波数偏移が大きく、劣化したストレスのかかったSSC変調データ信号からクロックを再生することができるクロックリカバリ回路、誤り率測定装置、及び誤り率測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係るクロックリカバリ回路は、SSC(Spread Spectrum Clock)変調されたリファレンスクロックを生成するリファレンスクロック生成部と、所定のSSC変調周波数でSSC変調されたデータ信号のSSC変調クロックを、前記リファレンスクロックに同期して再生するクロックリカバリ部と、前記クロックリカバリ部により再生された前記SSC変調クロックをFM復調してFM復調信号を生成するFM復調部と、前記FM復調信号の周期を表す周期情報と、前記FM復調信号の傾きを表す傾き情報とを取得し、取得した前記周期情報及び前記傾き情報に基づいて変調用信号を生成する変調用信号生成部と、を備え、前記リファレンスクロック生成部は、入力される制御電圧に応じた周波数の出力信号を出力する電圧制御発振器と、所定の周波数を有する基準クロック源と、前記電圧制御発振器の前記出力信号との位相差に応じた位相差信号を出力する位相比較器と、前記位相差信号に従った充電/放電電流を生成するチャージポンプと、前記充電/放電電流から高周波成分を除去した信号を出力するループフィルタと、前記変調用信号生成部により生成された前記変調用信号と、前記ループフィルタの出力とを加算する信号合成部と、を有し、前記電圧制御発振器は、前記信号合成部の出力が前記制御電圧として入力されることにより、前記電圧制御発振器のクロックを変調して前記リファレンスクロックを生成し、生成した前記リファレンスクロックを前記出力信号として出力する構成である。
【0017】
この構成により、本発明に係るクロックリカバリ回路は、クロックリカバリ部の出力をFM復調してFM復調信号を生成し、FM復調信号の周期と傾きを有するSSC変調波である変調用信号を生成し、電圧制御発振器のクロックを変調用信号でSSC変調してリファレンスクロックを生成し、SSC変調されたリファレンスクロックをクロックリカバリ部にフィードバックするようになっている。この構成により、本発明に係るクロックリカバリ回路は、FM復調信号から本来のSSC変調周波数を有する変調用信号を復元できるため、SSC変調による周波数偏移が大きく、劣化したストレスのかかったSSC変調データ信号とリファレンスクロックとの周波数偏差を最小化させるように、SSC変調データ信号の周波数にリファレンスクロックの周波数を追従させることで、クロックリカバリ部の耐力を向上させて、SSC変調クロックを再生することができる。
【0018】
また、本発明に係るクロックリカバリ回路は、前記変調用信号生成部が、前記周期情報を取得する周期情報取得部と、前記傾き情報を取得する傾き情報取得部と、前記周期情報及び前記傾き情報に基づいて三角波信号をデジタル演算により生成する三角波信号発生器と、前記三角波信号をデジタル-アナログ変換して前記変調用信号を生成するDACと、を含む構成であってもよい。
【0019】
この構成により、本発明に係るクロックリカバリ回路は、FM復調信号の周期と傾きを有する三角波信号をデジタル演算により生成し、三角波信号をデジタル-アナログ変換して変調用信号を生成するようになっている。この構成により、本発明に係るクロックリカバリ回路は、FM復調信号から本来のSSC変調周波数を有する三角波信号を復元して、変調用信号を生成することができる。
【0020】
また、本発明に係るクロックリカバリ回路は、前記周期情報取得部が、前記FM復調信号の直流平均値レベルを第1閾値として、前記FM復調信号のレベルが連続して前記第1閾値以上になる期間、又は、前記FM復調信号のレベルが連続して前記第1閾値以下になる期間を前記周期情報として取得する構成であってもよい。
【0021】
この構成により、本発明に係るクロックリカバリ回路は、FM復調信号の直流平均値レベルを第1閾値として用いて、FM復調信号の周期の半分の期間を周期情報として取得することができる。
【0022】
また、本発明に係るクロックリカバリ回路は、前記傾き情報取得部が、前記FM復調信号のレベルが連続して前記第1閾値と異なる第2閾値以上になる高レベル期間、又は、前記FM復調信号のレベルが連続して前記第2閾値以下になる低レベル期間を取得する高低レベル期間取得部と、前記周期情報と、前記高レベル期間又は前記低レベル期間との差分を算出する差分算出部と、前記第1閾値と前記第2閾値との差分を、前記差分算出部により算出された差分の半分で除算した値の絶対値を前記傾き情報として出力する傾き情報出力部と、を含む構成であってもよい。
【0023】
この構成により、本発明に係るクロックリカバリ回路は、第1閾値と異なる第2閾値を用いて、高レベル期間又は低レベル期間を取得し、高レベル期間又は低レベル期間とFM復調信号の周期の半分の期間との差分から変調用信号の傾き情報を取得することができる。
【0024】
また、本発明に係るクロックリカバリ回路は、前記三角波信号発生器が、前記周期情報の半分の期間ごとにパルス信号を出力するパルス信号出力部と、前記パルス信号のタイミングで前記三角波信号の傾きの正負を表す周波数偏移方向情報を出力する周波数偏移方向情報出力部と、前記周波数偏移方向情報と前記傾き情報を掛け合わせて得られる前記傾きを出力する傾き出力部と、前記傾き出力部から出力された前記傾きに所定のクロック周期を掛けた値を、前記所定のクロック周期ごとの振幅変化量として算出する振幅変化量算出部と、前記振幅変化量算出部により算出された前記振幅変化量を前記所定のクロック周期ごとに累積加算することで、前記三角波信号を発生する累積加算回路と、を含む構成であってもよい。
【0025】
また、本発明に係るクロックリカバリ回路は、前記クロックリカバリ部により再生された前記SSC変調クロックを分周して、前記FM復調部に出力する分周器と、前記分周器の分周比を制御する分周比制御部と、を更に備え、前記FM復調部は、前記分周器により分周された前記SSC変調クロックを遅延させて出力する遅延部と、前記分周器の出力と、前記遅延部の出力との排他的論理和を演算する排他的論理和回路と、前記排他的論理和回路の出力を平滑化して前記FM復調信号を生成するローパスフィルタと、を有し、前記分周比制御部は、前記排他的論理和回路に入力される前記SSC変調クロックの最高周波数が、前記排他的論理和回路の動作上限周波数の1/4以下になるように、前記データ信号のビットレートに基づいて前記分周比を制御する構成であってもよい。
【0026】
この構成により、本発明に係るクロックリカバリ回路は、排他的論理和回路の復調分解能を確保しつつ、周波数偏移の大きなSSC変調データ信号からSSC変調クロックを再生することができる。
【0027】
また、本発明に係る誤り率測定装置は、所定のSSC変調周波数でSSC変調されたデータ信号を受信する信号受信部と、前記信号受信部により受信された前記データ信号を構成するビット列データのビット誤り率を算出する誤り率算出部と、を備える誤り率測定装置であって、前記信号受信部は、上記のいずれかのクロックリカバリ回路を有し、前記クロックリカバリ回路により前記データ信号から再生された前記SSC変調クロックのタイミングで前記データ信号を構成するビット列データを抽出する構成である。
【0028】
この構成により、本発明に係る誤り率測定装置は、被測定物から送信されるSSC変調データ信号を受信し、上記のいずれかのクロックリカバリ回路を用いてSSC変調データ信号からSSC変調クロックを生成することができる。さらに、本発明に係る誤り率測定装置は、生成したSSC変調クロックのタイミングで、SSC変調データ信号を構成するビット列データを抽出し、このビット列データのBERを測定することができる。
【0029】
また、本発明に係る誤り率測定方法は、所定のSSC変調周波数でSSC変調されたデータ信号を受信する信号受信ステップと、前記信号受信ステップにより受信された前記データ信号を構成するビット列データのビット誤り率を算出する誤り率算出ステップと、を含む誤り率測定方法であって、前記信号受信ステップは、上記のいずれかのクロックリカバリ回路により前記データ信号から再生された前記SSC変調クロックのタイミングで前記データ信号を構成するビット列データを抽出する構成である。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、劣化したストレスのかかったSSC変調データ信号からクロックを再生することができるクロックリカバリ回路、誤り率測定装置、及び誤り率測定方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1の実施形態に係るクロックリカバリ回路の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るクロックリカバリ回路が備えるクロックリカバリ部から出力されるSSC変調クロックの波形の例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るクロックリカバリ回路が備える遅延検波回路の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るクロックリカバリ回路が備える変調用信号生成部の構成を示すブロック図である。
図5】FM復調信号の周期と傾きを取得する方法を説明するための図であって、(a)は第2閾値が第1閾値よりも大きい場合、(b)は第2閾値が第1閾値よりも小さい場合の例を示している。
図6】本発明の第1の実施形態に係るクロックリカバリ回路が備えるリファレンスクロック生成部の構成を示すブロック図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る誤り率測定装置の構成を示すブロック図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る誤り率測定方法の処理を示すフローチャートである。
図9】(a)は所定のSSC変調周波数を有するSSC変調波の波形の例を示す図であり、(b)は従来のクロックリカバリデバイスの出力を復調して得られるSSC変調波の波形の例を示す図である。
図10】従来の位相同期回路の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るクロックリカバリ回路、誤り率測定装置、及び誤り率測定方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0033】
(第1の実施形態)
図1に示す本発明の第1の実施形態に係るクロックリカバリ回路1は、SSC変調されたリファレンスクロックを生成するリファレンスクロック生成部10と、クロックリカバリ部20と、分周器21と、FM復調部22と、増幅器25と、アナログスイッチ26と、操作部27と、変調用信号生成部30と、制御部60と、を備える。制御部60は、分周比制御部61と、ゲイン制御部62と、切替制御部63と、周波数補正制御部64と、閾値制御部65と、を含む。
【0034】
以下では、主に、後述するアナログスイッチ26が切替制御部63によりオンの状態(以下、「有効」とも言う)に設定されている場合の各部の構成及び動作について説明する。
【0035】
クロックリカバリ部20は、所定のSSC変調周波数でSSC変調されたSSC変調データ信号のSSC変調クロックを、リファレンスクロック生成部10により生成されるリファレンスクロックに同期して再生するようになっている。すなわち、SSC変調されたデータ信号をクロックリカバリ部20で再生したクロックは、データ信号と同様にSSC変調されたクロックである。クロックリカバリ部20としては、高速シリアル通信用途向けの汎用クロックリカバリデバイスを用いることができる。ここで、SSC変調周波数は、通信規格ごとに規定されており、例えば30~33kHzの範囲の周波数である。例えば、クロックリカバリ部20から出力されるSSC変調クロックは、SSC変調の周波数偏移とSSC変調周波数に応じて、図2に示すように、パルスの立ち上がり(又は立ち下がり)の間隔や、パルス幅が変化したものになっている。
【0036】
分周器21は、クロックリカバリ部20により再生されたSSC変調クロックを、後段のFM復調部22で扱いやすい周波数まで分周して、FM復調部22に出力するようになっている。FM復調部22がクロックリカバリ部20の出力をそのままFM復調できる場合には、分周器21はなくてもよい。
【0037】
FM復調部22は、クロックリカバリ部20により再生されたSSC変調クロックをFM復調して、通信規格で規定されたSSC変調周波数を有するFM復調信号を生成するようになっている。FM復調信号は、例えば、PCI Express規格であれば、図9(a)に示すような周期33kHzの三角波の波形形状を有する。FM復調には多種多様な方式があるが、本実施形態に係るクロックリカバリ回路1は、後述する誤り率測定装置で採用可能な広帯域(広いビットレート範囲)のクロックリカバリを実現するために、広帯域化に有利な遅延検波方式を採用した。すなわち、FM復調部22は、分周器21により分周されたSSC変調クロックを遅延検波するものであり、遅延検波回路23と、ローパスフィルタ(Low Pass Filter:LPF)24と、を有する。
【0038】
図3に示すように、遅延検波回路23は、遅延部23aと、高速動作の排他的論理和(Exclusive OR:EXOR)回路23bとで構成される。EXOR回路23bでの復調分解能を確保するために、EXOR回路23bに入力されるSSC変調クロックの最高周波数は、EXOR回路23bの動作上限周波数の1/4以下とすることが望ましい。このため、分周比制御部61は、EXOR回路23bに入力されるSSC変調クロックの最高周波数が、EXOR回路23bの動作上限周波数の1/4以下になるように、SSC変調データ信号のビットレートに基づいて分周器21の分周比を制御するようになっている。
【0039】
遅延部23aは、分周器21により分周されたSSC変調クロックを、その最高周波数の1/4周期分だけ遅延させて出力するようになっている。EXOR回路23bに入力されるSSC変調クロックの周波数が低いと、遅延部23aによる遅延時間が大きくなり、実装規模や遅延安定性とのトレードオフが生じるため、分周器21の分周比はこの点を考慮して設定されることが望ましい。
【0040】
遅延部23aは、例えば、固定遅延素子や可変遅延デバイスなどの素子又はデバイスにより構成することや、ケーブルやプリント配線板の伝送路を伸ばすなどの方法により構成することができる。
【0041】
EXOR回路23bは、分周器21により分周されたSSC変調クロックと、分周器21により分周されて遅延部23aにより遅延されたSSC変調クロックとの排他的論理和を演算するようになっている。遅延部23aから入力されたSSC変調クロックの最高周波数は1/4周期分だけ遅延しているため、EXOR回路23bは、EXOR回路23bに入力されたSSC変調クロックの2倍の周波数のクロックを出力する。
【0042】
LPF24は、EXOR回路23bの出力を平滑化して、通信規格で規定されたSSC変調周波数を有するFM復調信号を生成するようになっている。このとき、EXOR回路23bに入力されるSSC変調クロックの最高周波数において、遅延部23aによりSSC変調クロックに付加される遅延時間に誤差がなければ、EXOR回路23bの出力波形のデューティ比は50%となるため、LPF24の出力の直流平均値レベル(以下、「DCオフセット」とも言う)はEXOR回路23bの出力振幅の半分の電圧レベルとなる。
【0043】
LPF24は、FM復調信号の雑音に応じて、SSC変調周波数である33kHzの例えば3~10倍程度の範囲のカットオフ周波数を有するものを好適に用いることができる。LPF24は、このようにカットオフ周波数が比較的低いものであるため、1次のRCローパスフィルタで構成することができる。ただし、LPF24は、RCローパスフィルタ及びその次数に限定されず、オペアンプで構成したものであってもLCローパスフィルタで構成したものであってもよい。
【0044】
EXOR回路23bに入力されるSSC変調クロックの周波数範囲が変化すると、EXOR回路23bの出力波形のデューティ比が変化し、EXOR回路23b出力の直流平均値レベルも変化する。EXOR回路23bに入力されるSSC変調クロックの最高周波数がEXOR回路23bの動作上限周波数の1/4以上になった場合は、分周比制御部61は、EXOR回路23bに入力されるSSC変調クロックの最高周波数が、再度EXOR回路23bの動作上限周波数の1/4以下になるように、SSC変調データ信号のビットレートに基づいて分周器21の分周比を制御する。
【0045】
遅延部23aの遅延量が固定遅延量である場合は、EXOR回路23bへ入力されるSSC変調クロックの周波数が下がると、LPF24通過後のEXOR回路23bの出力のDCオフセットと検波効率が下がってしまう。
【0046】
このため、増幅器25は、ゲイン制御部62により設定されたゲインで、FM復調部22により生成されたFM復調信号を増幅するようになっている。例えば、ゲイン制御部62は、クロックリカバリ回路1に入力されたSSC変調データ信号のSSC変調の既知の周波数偏移量に応じたゲインを増幅器25に設定するようになっている。
【0047】
例えば、ゲイン制御部62は、周波数偏移量が既知のSSC変調データ信号がクロックリカバリ回路1に入力されることにより、SSC変調データ信号の周波数偏移量と、FM復調部22から出力されるFM復調信号の振幅との関係を、FM復調部22のFM復調特性に基づいてあらかじめ把握している。
【0048】
また、ゲイン制御部62は、後段のPLL部13の電圧制御発振器(Voltage-Controlled Oscillator:VCO)14の制御電圧に対する周波数変調特性に基づいて、リファレンスクロック生成部10により生成されるリファレンスクロックの周波数偏移量と、三角波信号発生器40により生成される三角波信号の振幅との関係を、あらかじめ把握している。
【0049】
さらに、これらの関係により、ゲイン制御部62は、リファレンスクロック生成部10において必要なSSC変調の周波数偏移量を得るために、増幅器25に設定すべきゲインをあらかじめ把握している。
【0050】
ゲイン制御部62は、増幅器25のゲインを調整することにより、後段のリファレンスクロック生成部10により生成されるリファレンスクロックの周波数偏移を調整して、SSC変調データ信号とリファレンスクロックとの周波数偏差が、クロックリカバリ部20のロック可能な範囲内でなるべく小さくなるようにする。
【0051】
なお、SSC変調クロックの周波数範囲によって変動してしまうDCオフセット成分は、後段のリファレンスクロック生成部10において不要である。このため、FM復調部22と増幅器25との間に、コンデンサや公知のDCオフセットキャンセル回路等を適宜設けることにより、増幅器25がLPF24の出力のAC成分、すなわちSSC変調波の波形だけを増幅できるようにすることが望ましい。
【0052】
あるいは、遅延量が可変な可変遅延デバイスを遅延部23aとして使用して、SSC変調クロックの周波数範囲に応じて、LPF24の出力のDCオフセットと検波効率の低下を抑制する最適な遅延量を設定する方法もある。
【0053】
変調用信号生成部30は、増幅器25により増幅されたFM復調信号の周期を表す周期情報と、増幅器25により増幅されたFM復調信号の傾きを表す傾き情報とを取得し、取得した周期情報及び傾き情報に基づいて変調用信号を生成するようになっている。すなわち、変調用信号生成部30により生成される変調用信号の波形は、周期情報に表された周期と、傾き情報に表された傾きを有する波形である。
【0054】
図4に示すように、変調用信号生成部30は、周期情報取得部31と、傾き情報取得部32と、PLL(Phase Locked Loop)33と、三角波信号発生器40と、DAC(Digital Analog Converter)50と、を含む。
【0055】
周期情報取得部31は、増幅器25により増幅されたFM復調信号の周期情報を取得するものであり、コンパレータ31aと、周期カウンタ31bと、周期情報出力部31cと、を含む。
【0056】
コンパレータ31aは、閾値制御部65により設定される第1閾値で、増幅器25により増幅されたFM復調信号を2値化するものである。第1閾値は、増幅器25により増幅されたFM復調信号の三角波の波形の中央部の値、すなわち、FM復調信号の直流平均値レベルに設定される。例えば、LPF24の後段でDCオフセットがキャンセルされている場合には、第1閾値の電圧は0Vとなる。
【0057】
図5(a)及び(b)の上段は、第1閾値がFM復調信号の三角波の波形の中央部に設定された場合の、コンパレータ31aの出力C1を示している。すなわち、FM復調信号のレベルが連続して第1閾値以上になる期間には、コンパレータ31aの出力C1は高レベルとなる。一方、FM復調信号のレベルが連続して第1閾値以下になる期間には、コンパレータ31aの出力C1は低レベルとなる。
【0058】
周期カウンタ31bは、コンパレータ31aの出力C1が連続して高レベル又は低レベルになる期間T1をカウントして取得するようになっている。つまり、周期カウンタ31bによりカウントされる期間T1は、FM復調信号の三角波の周期の半分である。
【0059】
周期情報出力部31cは、周期カウンタ31bによりカウントされた期間T1を、FM復調信号の周期情報として取得して、三角波信号発生器40に出力するようになっている。
【0060】
傾き情報取得部32は、FM復調信号の傾き情報を取得するものであり、コンパレータ32aと、デューティカウンタ32bと、差分算出部32cと、傾き情報出力部32dと、振幅情報算出部32eと、を含む。
【0061】
コンパレータ32aは、閾値制御部65により設定される第2閾値で、増幅器25により増幅されたFM復調信号を2値化するものである。例えば、図5(a)に示すように、第2閾値は、第1閾値よりも大きく、増幅器25により増幅されたFM復調信号の三角波の波形の頂点を超えない値に設定される。あるいは、図5(b)に示すように、第2閾値は、第1閾値よりも小さく、増幅器25により増幅されたFM復調信号の三角波の波形の頂点を超えない値に設定される。
【0062】
図5(a)の下段は、第2閾値が第1閾値よりも大きい値に設定された場合の、コンパレータ32aの出力C2を示している。すなわち、FM復調信号のレベルが連続して第2閾値以上になる期間には、コンパレータ32aの出力C2は高レベルとなる。一方、FM復調信号のレベルが連続して第2閾値以下になる期間には、コンパレータ32aの出力C2は低レベルとなる。
【0063】
図5(b)の下段は、第2閾値が第1閾値よりも小さい値に設定された場合の、コンパレータ32aの出力C2を示している。すなわち、FM復調信号のレベルが連続して第2閾値以上になる期間には、コンパレータ32aの出力C2は高レベルとなる。一方、FM復調信号のレベルが連続して第2閾値以下になる期間には、コンパレータ32aの出力C2は低レベルとなる。
【0064】
デューティカウンタ32bは、コンパレータ32aの出力C2が連続して高レベルになる高レベル期間T2h、又は、コンパレータ32aの出力C2が連続して低レベルになる低レベル期間T2lをカウントして取得するようになっている。デューティカウンタ32bは、高低レベル期間取得部を構成する。
【0065】
例えば、閾値制御部65は、周期情報出力部31cから出力されたFM復調信号の期間T1の2倍以上の期間にわたって、コンパレータ32aの出力が一定値である場合には、コンパレータ32aに設定された第2閾値がFM復調信号の三角波の波形の頂点を超えている可能性があり、適切でないと判断する。この場合には、閾値制御部65は、適切なデューティ比の出力C2が得られるように、コンパレータ32aに設定する第2閾値を変化させる。さらに、閾値制御部65は、SSC変調データ信号のSSC変調の周波数偏移量が未知の場合には、第2閾値を変化させながらコンパレータ32aの出力C2を監視して、FM復調信号の三角波の波形の頂点を超えない適切な第2閾値を探索することができる。この場合、探索時に使用される適切な第2閾値の候補は、DAC等でコンパレータ32aに設定可能にしておくとよい。
【0066】
さらに、閾値制御部65は、コンパレータ32aの出力が一定値にならない上限の第2閾値と、コンパレータ32aの出力が一定値にならない下限の第2閾値との差分をFM復調信号の振幅として算出することができる。閾値制御部65により算出されたFM復調信号の振幅は、ゲイン制御部62がSSC変調データ信号の周波数偏移量とFM復調部22から出力されるFM復調信号の振幅との関係を把握する際に、ゲイン制御部62に出力されてもよい。
【0067】
差分算出部32cは、周期情報取得部31により取得されたFM復調信号の期間T1と、デューティカウンタ32bにより取得された高レベル期間T2h又は低レベル期間T2lとの差分2×ΔTを算出するようになっている。
【0068】
傾き情報出力部32dは、第1閾値と第2閾値との差分ΔVを、差分算出部32cにより算出された差分の半分であるΔTで除算した値の絶対値を、FM復調信号の傾き情報として三角波信号発生器40に出力するようになっている。
【0069】
なお、FM復調信号の周期と、コンパレータ31a,32aの出力の高レベル又は低レベルの時間情報に揺らぎが生じている場合は、傾き情報出力部32dにおいて以下のような平均化を行うことで、揺らぎの影響を低減させることができる。
【0070】
例えば、傾き情報出力部32dは、ΔTを所定期間にわたって平均又は移動平均した値でΔVを除算した値の絶対値を、FM復調信号の傾き情報として三角波信号発生器40に出力するものであってもよい。
【0071】
あるいは、傾き情報出力部32dは、高レベル期間T2hを使用して差分算出部32cにより算出された差分の半分ΔThと、低レベル期間T2lを使用して差分算出部32cにより算出された差分の半分ΔTlとを平均又は移動平均した値でΔVを除算した値の絶対値を、FM復調信号の傾き情報として三角波信号発生器40に出力するものであってもよい。
【0072】
振幅情報算出部32eは、傾き情報出力部32dから出力された傾き情報と、周期情報出力部31cから出力された周期情報との積に基づいて、三角波信号の振幅を算出するようになっている。振幅情報算出部32eにより算出された三角波信号の振幅は、ゲイン制御部62がSSC変調の周波数偏移量と三角波信号の振幅との関係を把握する際に、ゲイン制御部62に出力されてもよい。
【0073】
なお、PCI Express規格のようにSSC変調の周波数偏移量が既知である場合は、本実施形態のクロックリカバリ回路1は、振幅情報算出部32eによる振幅情報の算出を省略して、周期情報出力部31cにより周期情報だけ取得すればよい。
【0074】
PLL33は、コンパレータ31aの2値化された出力C1を逓倍して得られるクロックを、動作クロックとして三角波信号発生器40に入力するようになっている。つまり、PLL33は、変調用信号生成部30に入力されるFM復調信号のタイミングに同期した動作クロックを三角波信号発生器40に入力するものである。また、動作クロックとして、FM復調信号の三角波の周期よりも十分に早いクロックを用いて、三角波信号発生器40を非同期に動作させてもよい。
【0075】
なお、コンパレータの個数は1個であってもよい。この場合は、変調用信号生成部30は、例えば、コンパレータ31aに第1閾値を設定して出力C1を取得した後に、コンパレータ31aに第2閾値を設定して出力C2を取得すればよい。
【0076】
コンパレータ31a,32aの代わりにADC(Analog Digital Converter)を用いることも可能ではあるが、ADCを用いた場合には、コストが高くなる問題や、三角波信号発生器40による三角波信号の発生開始のタイミングが遅延することにより、クロックリカバリ部20に入力されるSSC変調データ信号とリファレンスクロックとの周波数偏差が開いてしまうなどの問題が生じる。これに対して、コンパレータを用いれば、コストと三角波信号発生器40による三角波信号の出力の遅延を抑えた処理が可能になる。
【0077】
三角波信号発生器40は、周期情報取得部31により取得された周期情報と、傾き情報取得部32により取得された傾き情報とに基づいて三角波信号をデジタル演算により生成するものであり、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)上に構成される。三角波信号発生器40は、パルス信号出力部41と、周波数偏移方向情報出力部42と、傾き出力部43と、振幅変化量算出部44と、累積加算回路45と、を含む。
【0078】
パルス信号出力部41は、周期情報出力部31cから出力された周期情報に基づいて、期間T1の半分の期間、すなわち、三角波信号の波形の1/4周期ごとに、パルス信号を出力するようになっている。
【0079】
周波数偏移方向情報出力部42は、パルス信号出力部41から出力されたパルス信号のタイミング、すなわちFM復調信号の波形の1/4周期ごとに、三角波信号の波形の傾きの正負を表す+1又は-1の値からなる周波数偏移方向情報を出力するようになっている。例えば、周波数偏移方向情報は、-1,-1,+1,+1などとなる。
【0080】
傾き出力部43は、周波数偏移方向情報出力部42から出力された周波数偏移方向情報と、傾き情報取得部32により取得されたFM復調信号の傾き情報を掛け合わせて得られる値、すなわち、三角波信号の波形の傾きを出力するようになっている。
【0081】
振幅変化量算出部44は、傾き出力部43から出力された三角波信号の波形の傾きに、三角波信号発生器40の動作クロックの所定のクロック周期Tclkを掛けた値を、所定のクロック周期Tclkごとの振幅変化量として算出し、算出した振幅変化量を累積加算回路45に出力するようになっている。あるいは、振幅変化量算出部44は、累積加算回路45で得られる三角波信号の振幅が、振幅情報算出部32eにより算出された三角波信号の振幅となるように、クロック周期Tclkごとの振幅変化量を算出するものであってもよい。
【0082】
累積加算回路45は、振幅変化量算出部44により算出された振幅変化量を所定のクロック周期Tclkごとに累積加算することで、三角波信号を発生するようになっている。なお、パルス信号出力部41、周波数偏移方向情報出力部42、傾き出力部43、振幅変化量算出部44、及び、累積加算回路45には、上記の所定のクロック周期Tclkを与える動作クロックがPLL33から入力される。
【0083】
なお、三角波信号発生器40に入力される動作クロックとして、上記のPLL33から出力されるクロック以外のクロックを使用することも可能である。この場合は、変調用信号生成部30に入力されるFM復調信号と動作クロックとの時間誤差を解消するために、累積加算回路45は、三角波信号の波形の先頭のタイミングをクロック周期Tclkの分解能で不連続にずらして出力するなどの微調整処理を適宜行うことが望ましい。
【0084】
DAC50は、三角波信号発生器40により生成された三角波信号をデジタル-アナログ変換して変調用信号を生成するようになっている。
【0085】
アナログスイッチ26は、切替制御部63の制御に応じて、増幅器25により増幅されたFM復調信号の後段のリファレンスクロック生成部10へのフィードバックを「有効」又は「無効」に切り替えるようになっている。例えば、切替制御部63は、クロックリカバリ回路1に入力されるデータ信号がSSC変調データ信号である場合には、変調用信号をリファレンスクロック生成部10においてリファレンスクロックに重畳するためアナログスイッチ26を「有効」にする制御を行う。一方、切替制御部63は、クロックリカバリ回路1に入力されるデータ信号がSSC変調されていない信号である場合には、不要な変調用信号がリファレンスクロック生成部10においてリファレンスクロックに重畳されるのを防ぐため、アナログスイッチ26をオフの状態である「無効」にする制御を行う。
【0086】
切替制御部63によりアナログスイッチ26が「無効」から「有効」に切り替えられた直後は、FM復調部22から出力されるFM復調信号の波形は、図9(b)の実線のグラフに示すように三角波の頂点部分が削られたような歪な波形となっている。しかしながら、三角波が本来の傾きを持っている期間に、クロックリカバリ部20に入力されるSSC変調データ信号とリファレンスクロックとの周波数偏差が小さくなり、FM復調信号の波形が、図9(a)に示すような理想的な三角波の波形になる。なお、FM復調部22から出力されるFM復調信号は電圧信号であり、図9(a)及び(b)は、FM復調信号の電圧と、その電圧に比例する周波数偏移とを、任意単位で表示している。
【0087】
なお、クロックリカバリ回路1に入力されるデータ信号がSSC変調されていない信号である場合には、アナログスイッチ26が切替制御部63により「無効」に設定され、リファレンスクロック生成部10は、SSC変調されていないリファレンスクロックを生成することになる。
【0088】
なお、SSC変調データ信号のSSC変調の周波数偏移量が小さい場合は、傾き情報取得部32によるFM復調信号の傾きの検出が難しくなるが、クロックリカバリ部20でのSSC変調の周波数偏移量が許容範囲内である可能性が高いため問題にならないことが多い。例えば、閾値制御部65による第2閾値の設定の最小分解能を、クロックリカバリ部20でのSSC変調の周波数偏移量の許容範囲内にあらかじめ設定しておき、コンパレータ31a,32aの出力が第2閾値を変化させても常に一定値である場合には、アナログスイッチ26が切替制御部63により「無効」に設定されてもよい。
【0089】
図6に示すように、リファレンスクロック生成部10は、信号合成部11と、ループフィルタ12と、PLL部13と、を有する。PLL部13は、VCO14と、プログラマブル分周器である分周器15a~15cと、位相比較器16と、チャージポンプ17と、を有する。
【0090】
信号合成部11は、例えば、オペアンプによる加算回路で構成され、変調用信号生成部30により生成された変調用信号と、ループフィルタ12の出力と、を加算するようになっている。信号合成部11の出力は、VCO14に制御電圧として入力される。
【0091】
VCO14は、信号合成部11の出力が制御電圧として入力されることにより、VCO14のクロックを変調して、信号合成部11から入力される制御電圧にほぼ比例した周波数のリファレンスクロックを生成し、生成したリファレンスクロックを出力信号として出力するようになっている。VCO14は、クロックリカバリ部20に入力されたSSC変調データ信号とリファレンスクロックとの周波数偏差を小さくして、SSC変調データ信号の周波数にリファレンスクロックの周波数が追従するように制御する。
【0092】
分周器15aは、VCO14から出力されたリファレンスクロックを、例えば、SSC変調データ信号のボーレート(Baud rate)の1/Naの周波数まで分周して、クロックリカバリ部20に出力するようになっている。分周器15aの分周比Naは、VCO14から出力されたリファレンスクロックの周波数がクロックリカバリ部20の要求する周波数になるように、分周比制御部61により設定される。なお、VCO14から出力されたリファレンスクロックをそのままクロックリカバリ部20に入力すればよい場合には、分周器15aはなくてもよい。
【0093】
分周器15bは、VCO14から出力されたリファレンスクロックの中心周波数を、外部の信号源から分周器15cに入力される基準クロック源の分周及び逓倍関係になるように設定するものである。分周器15bは、VCO14からの出力信号をフィードバック信号として所定の分周比Nbで分周し、分周したフィードバック信号の中心周波数と、分周器15cの出力の周波数とを一致させる。分周器15bの分周比Nbは、周波数補正制御部64により設定される。
【0094】
分周器15cは、外部の信号源から入力される基準クロック源を所定の分周比Ncで分周して、位相比較器16に出力するようになっている。分周器15cの分周比Ncは、周波数補正制御部64により設定される。基準クロック源は、SSC変調されていない固定周波数(例えば、40MHz)のクロックである。
【0095】
周波数補正制御部64は、分周器15bにより分周されたリファレンスクロックの中心周波数と、分周器15cにより分周された基準クロック源の周波数とを一致させるように、分周比Nb及び分周比Ncを設定するようになっている。
【0096】
位相比較器16は、例えば排他的論理和(EXOR)回路で構成されており、分周器15bにより分周されたリファレンスクロックと、分周器15cにより分周された基準クロック源との位相差に比例したパルス幅の位相差信号を出力するようになっている。
【0097】
チャージポンプ17は、位相比較器16から入力される位相差信号に従った充電/放電電流を生成して、ループフィルタ12に供給するようになっている。
【0098】
ループフィルタ12は、チャージポンプ17から供給される充電/放電電流を電圧に変換し、変換した電圧の高周波成分を除去して平滑化した信号を信号合成部11に出力するようになっている。ループフィルタ12を含めたPLL部13のループ帯域幅は、VCO14のクロックをSSC変調する目的と、リファレンスクロックの中心周波数を安定化させる目的とを両立するために、SSC変調周波数30~33kHzよりも狭い周波数(例えば、10kHz)に設定されている。
【0099】
これにより、信号合成部11は、PLL部13のループ帯域外の成分を変調用信号に重畳して、VCO14に対して直接SSC変調を実施することができる。仮に、PLL部13のループ帯域内でSSC変調を実施しようとする場合には、変調はフィードバックにより打ち消されてしまうことになる。
【0100】
FM復調部22から出力されたFM復調信号のDCオフセット成分が、DCオフセットキャンセル回路等により除去されている場合には、リファレンスクロック生成部10により生成されたリファレンスクロックにセンタースプレッド方式相当のSSC変調が掛かっていることになる。このため、クロックリカバリ回路1に入力されるSSC変調データ信号がダウンスプレッド方式又はアップスプレッド方式のSSC変調が掛かったものである場合は、例えば、特開2018-156647号公報に開示されたような公知の方法で、リファレンスクロック生成部10により生成されるリファレンスクロックの周波数をダウンスプレッド方式又はアップスプレッド方式に合わせて換算することが望ましい。
【0101】
このため、周波数補正制御部64は、クロックリカバリ回路1に入力されるSSC変調データ信号のスプレッド方式に応じて、信号合成部11による変調用信号とループフィルタ12の出力との加算結果から得られるSSC変調周波数偏移の中心をずらす制御、すなわち、VCO14から出力されるリファレンスクロックの中心周波数をずらす制御を行うようになっている。例えば、周波数補正制御部64は、分周器15b,15cの分周比を制御して、リファレンスクロックの中心周波数を所望のスプレッド方式に対応する周波数に制御するようになっている。
【0102】
操作部27は、ユーザによる操作入力を受け付けるためのものであり、例えば表示装置の表示画面に対応する入力面への接触操作による接触位置を検出するためのタッチセンサを備えるタッチパネルで構成される。あるいは、操作部27は、キーボード又はマウスのような入力デバイスを含んで構成されてもよい。操作部27への操作入力は、制御部60により検知されるようになっている。
【0103】
ユーザによる操作部27への操作入力により、クロックリカバリ回路1に入力されるSSC変調データ信号からリファレンスクロックを生成するために必要な設定情報として、クロックリカバリ回路1に入力されるデータ信号がSSC変調データ信号であるか否か、SSC変調データ信号のビットレート、スプレッド方式の選択などの設定を行うことが可能である。
【0104】
制御部60は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成され、クロックリカバリ回路1を構成する上記各部の動作を制御するものであって、上述の分周比制御部61、ゲイン制御部62、切替制御部63、周波数補正制御部64、及び閾値制御部65を含む。また、制御部60は、ROM等に記憶された所定のプログラムをRAMに移して実行することにより、分周比制御部61、ゲイン制御部62、切替制御部63、周波数補正制御部64、及び閾値制御部65の少なくとも一部をソフトウェア的に構成することが可能である。なお、分周比制御部61、ゲイン制御部62、切替制御部63、周波数補正制御部64、及び閾値制御部65の少なくとも一部は、FPGAやASICなどのデジタル回路で構成することも可能である。あるいは、分周比制御部61、ゲイン制御部62、切替制御部63、周波数補正制御部64、及び閾値制御部65の少なくとも一部は、デジタル回路によるハードウェア処理と所定のプログラムによるソフトウェア処理とを適宜組み合わせて構成することも可能である。
【0105】
以上説明したように、本実施形態に係るクロックリカバリ回路1は、クロックリカバリ部20の出力をFM復調してFM復調信号を生成し、FM復調信号の周期と傾きを有するSSC変調波である変調用信号を生成し、VCO14のクロックを変調用信号でSSC変調してリファレンスクロックを生成し、SSC変調されたリファレンスクロックをクロックリカバリ部20にフィードバックするようになっている。この構成により、本実施形態に係るクロックリカバリ回路1は、FM復調信号から本来のSSC変調周波数を有する変調用信号を復元できるため、SSC変調による周波数偏移が大きく、劣化したストレスのかかったSSC変調データ信号とリファレンスクロックとの周波数偏差を最小化させるように、SSC変調データ信号の周波数にリファレンスクロックの周波数を追従させることで、クロックリカバリ部20の耐力を向上させて、SSC変調クロックを再生することができる。
【0106】
また、本実施形態に係るクロックリカバリ回路1は、FM復調信号の周期と傾きを有する三角波信号をデジタル演算により生成し、三角波信号をデジタル-アナログ変換して変調用信号を生成するようになっている。この構成により、本実施形態に係るクロックリカバリ回路1は、FM復調信号から本来のSSC変調周波数を有する三角波信号を復元して、変調用信号を生成することができる。
【0107】
また、本実施形態に係るクロックリカバリ回路1は、FM復調信号の直流平均値レベルを第1閾値として用いて、FM復調信号の周期の半分の期間T1を周期情報として取得することができる。
【0108】
また、本実施形態に係るクロックリカバリ回路1は、第1閾値と異なる第2閾値を用いて、高レベル期間T2h又は低レベル期間T2lを取得し、高レベル期間T2h又は低レベル期間T2lとFM復調信号の期間T1との差分から変調用信号の傾き情報を取得することができる。
【0109】
また、本実施形態に係るクロックリカバリ回路1は、EXOR回路23bに入力されるSSC変調クロックの最高周波数が、EXOR回路23bの動作上限周波数の1/4以下になるように、SSC変調データ信号のビットレートに基づいて、分周器21の分周比を制御するようになっている。この構成により、本実施形態に係るクロックリカバリ回路1は、EXOR回路23bの復調分解能を確保しつつ、周波数偏移の大きなSSC変調データ信号からSSC変調クロックを再生することができる。
【0110】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態に係る誤り率測定装置及び誤り率測定方法について、図面を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付して適宜説明を省略する。また、第1の実施形態と同様の動作についても適宜説明を省略する。
【0111】
図7に示すように、第2の実施形態に係る誤り率測定装置100は、被測定物(Device Under Test:DUT)200から送信されるSSC変調データ信号の誤り率を測定するものであって、データ記憶部71と、信号送信部72と、信号受信部73と、同期検出部74と、誤り率算出部75と、表示部76と、制御部77と、を備える。
【0112】
DUT200は、所定のSSC変調周波数でSSC変調されたSSC変調データ信号を出力するものである。DUT200が対応する規格の例としては、PCI Express Gen1~6、USB3.1~4、DP1.4~2などが挙げられる。
【0113】
データ記憶部71は、RAMなどのメモリによって構成され、基準になるビット列データをあらかじめ記憶している。ここで、ビット列データとは、2値以上の多値K(Kは2以上の整数)からなるPAM信号が取り得る0レベルからK-1レベルまでのK個のレベルに対応したデータである。例えば、4値のPAM信号であるPAM4信号のビット列データは、"00"、"01"、"10"、及び"11"のビットの組合せからなる。
【0114】
信号送信部72は、データ記憶部71から読み込んだビット列データを所定のSSC変調周波数でSSC変調してテスト信号を生成し、生成したテスト信号をDUT200に送信するようになっている。このとき、DUT200は、信号送信部72から送信されたテスト信号を受信して、受信したテスト信号をSSC変調データ信号として信号受信部73に送信することになる。すなわち、DUT200は、所定のSSC変調周波数でSSC変調されたK値のPAM信号をSSC変調データ信号として送信するものである。
【0115】
信号受信部73は、DUT200から送信されたSSC変調データ信号を受信し、受信したSSC変調データ信号のビット列データを同期検出部74に出力するようになっており、第1の実施形態のクロックリカバリ回路1と、ビット列データ抽出部78と、を有する。
【0116】
クロックリカバリ回路1は、DUT200から送信されたSSC変調データ信号からSSC変調クロックを再生する。
【0117】
ビット列データ抽出部78は、クロックリカバリ回路1により再生されたSSC変調クロックのタイミングで、DUT200から送信されたSSC変調データ信号を構成するビット列データを抽出するようになっている。例えば、ビット列データ抽出部78は、少なくとも1つの0/1判定器を有しており、各0/1判定器にクロックリカバリ回路1からのSSC変調クロックが入力されることで、DUT200から送信されたSSC変調データ信号のレベルの判定をSSC変調クロックのタイミングで行うことができる。なお、クロックリカバリ回路1から出力されるSSC変調クロックは、ビット列データ抽出部78に限らず、誤り率測定装置100を構成する各部で動作クロックとして使用されてもよい。
【0118】
同期検出部74は、データ記憶部71から読み込んだビット列データと、ビット列データ抽出部78により抽出されたSSC変調データ信号のビット列データとの同期を取るようになっている。そして、同期検出部74は、同期が取れたSSC変調データ信号のビット列データを誤り率算出部75に出力する。
【0119】
誤り率算出部75は、同期検出部74から出力されたSSC変調データ信号を構成するビット列データと、データ記憶部71に記憶されているビット列データとを順次比較することにより、SSC変調データ信号を構成するビット列データの誤りビットを検出するとともに、SSC変調データ信号を構成するビット列データのBERを算出するようになっている。
【0120】
表示部76は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などの表示機器で構成され、制御部77から出力される制御信号に応じて、誤り率算出部75により算出されたビット列データのBERなどの各種表示内容を表示するようになっている。さらに、表示部76は、制御部77から出力される制御信号に応じて、各種条件を設定するためのボタン、ソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象の表示を行うようになっている。
【0121】
制御部77は、第1の実施形態における制御部60と同様に構成され、誤り率測定装置100を構成する上記各部の動作を制御するようになっている。また、制御部77は、ROM等に記憶された所定のプログラムをRAMに移して実行することにより、誤り率算出部75の少なくとも一部をソフトウェア的に構成することが可能である。なお、誤り率算出部75の少なくとも一部は、FPGAやASICなどのデジタル回路で構成することも可能である。あるいは、誤り率算出部75の少なくとも一部は、デジタル回路によるハードウェア処理と所定のプログラムによるソフトウェア処理とを適宜組み合わせて構成することも可能である。なお、本実施形態における制御部77は、第1の実施形態における制御部60を兼ねていてもよい。
【0122】
以下、本実施形態の誤り率測定方法について、図8のフローチャートを参照しながらその処理の一例を説明する。
【0123】
まず、信号送信部72は、データ記憶部71から読み込んだビット列データを所定のSSC変調周波数でSSC変調してテスト信号を生成し、生成したテスト信号をDUT200に送信する(ステップS1)。
【0124】
次に、クロックリカバリ回路1は、所定のSSC変調周波数でSSC変調されたSSC変調データ信号をDUT200から受信して、SSC変調クロックを生成する(信号受信ステップS2)。
【0125】
次に、ビット列データ抽出部78は、クロックリカバリ回路1によりSSC変調データ信号から再生されたSSC変調クロックのタイミングで、SSC変調データ信号を構成するビット列データを抽出する(信号受信ステップS3)。
【0126】
次に、誤り率算出部75は、ステップS3により抽出されたSSC変調データ信号を構成するビット列データのBERを算出する(誤り率算出ステップS4)。
【0127】
以上説明したように、本実施形態に係る誤り率測定装置100は、DUT200から送信されるK値のPAM信号をSSC変調データ信号として受信し、第1の実施形態のクロックリカバリ回路1を用いてSSC変調データ信号からSSC変調クロックを生成することができる。さらに、本実施形態に係る誤り率測定装置100は、生成したSSC変調クロックのタイミングで、SSC変調データ信号を構成するビット列データを抽出し、このビット列データのBERを測定することができる。
【符号の説明】
【0128】
1 クロックリカバリ回路
10 リファレンスクロック生成部
11 信号合成部
12 ループフィルタ
13 PLL部
14 VCO
15a~15c 分周器
16 位相比較器
17 チャージポンプ
20 クロックリカバリ部
21 分周器
22 FM復調部
23 遅延検波回路
23a 遅延部
23b EXOR回路
24 LPF
25 増幅器
26 アナログスイッチ
30 変調用信号生成部
31 周期情報取得部
31a コンパレータ
31b 周期カウンタ
31c 周期情報出力部
32 傾き情報取得部
32a コンパレータ
32b デューティカウンタ
32c 差分算出部
32d 傾き情報出力部
32e 振幅情報算出部
33 PLL
40 三角波信号発生器
41 パルス信号出力部
42 周波数偏移方向情報出力部
43 傾き出力部
44 振幅変化量算出部
45 累積加算回路
50 DAC
61 分周比制御部
62 ゲイン制御部
63 切替制御部
64 周波数補正制御部
65 閾値制御部
71 データ記憶部
72 信号送信部
73 信号受信部
74 同期検出部
75 誤り率算出部
78 ビット列データ抽出部
100 誤り率測定装置
200 DUT
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10