(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】内部電流リミッタと内部電流インターラプタを備えた充電式電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20241105BHJP
H01M 50/581 20210101ALI20241105BHJP
H01M 50/583 20210101ALI20241105BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M50/581
H01M50/583
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022195376
(22)【出願日】2022-12-07
(62)【分割の表示】P 2020185235の分割
【原出願日】2015-11-25
【審査請求日】2023-01-05
(32)【優先日】2015-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517182778
【氏名又は名称】アメリカン・リシアム・エナジー・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】American Lithium Energy Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】ジアン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】デングオ・ウー
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-243708(JP,A)
【文献】特表2017-537441(JP,A)
【文献】特開2021-048764(JP,A)
【文献】特開2012-074359(JP,A)
【文献】特開2000-077061(JP,A)
【文献】特開2010-146726(JP,A)
【文献】特開2005-011540(JP,A)
【文献】特開平07-220755(JP,A)
【文献】特表2014-505335(JP,A)
【文献】国際公開第2004/049494(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0123492(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第103194161(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 4/64-4/84
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良された高エネルギー密度の充電式電池であって、
第1の部分と第2の部分とからなる第1の電極、
電子を伝達するための第1の集電体、
前記第1の電極とは反対の極性を有する第2の電極、
前記第1の電極と前記第2の電極を分離するセパレータであって、前記セパレータの破損により発生する、前記第1の電極と前記第2の電極との間の内部放電を防止するように構成されている前記セパレータ、
前記第1の電極の第1の部分と前記第1の集電体との間に介挿された前記第1の電極の第2の部分、および
前記第1の電極の前記第1の部分と第2の部分との間に介挿された電流インターラプタを有し、
前記電流インターラプタは、温度トリガーまたは電圧トリガーにより活性化されて、前記第1の電極
の第1の部分と第2の部分との間に非導電性ギャップの形成をもたらすガスを発生するように構成された感熱性材料を含んでおり、前記非導電性ギャップの形成は、前記第1の
電極の第1の部分から第2の部分を電気的に分離するものであり、
前記電流インターラプタは、無機ガス発生化合物と有機ガス発生化合物とを含む層を有する、
該充電式電池。
【請求項2】
電流リミッタをさらに含む請求項1記載の充電式電池。
【請求項3】
第2の集電体をさらに含む請求項1または2記載の充電式電池。
【請求項4】
第2の電極が第2の電極の第1の部分と第2の部分とからなり、
前記電流リミッタは、前記第2の電極の第1の部分と第2の部分との間に介挿されている、請求項
2記載の充電式電池。
【請求項5】
前記電流リミッタと前記電流インターラプタは、前記第1の電極の第1の部分と第2の部分との間に積層により介挿された単一の保護層の中に、同時に組み込まれている、請求項2
または4のいずれか1項に記載の充電式電池。
【請求項6】
前記電流リミッタの抵抗率は、標準動作のための温度範囲を超える温度における前記第1の電極の内部抵抗率より大きい、請求項2
、4および5のいずれか1項に記載の充電式電池。
【請求項7】
前記電流リミッタの抵抗率は、標準動作のための温度範囲内の温度では移行しない、請求項2
、4および5のいずれか1項に記載の充電式電池。
【請求項8】
前記電流リミッタの抵抗率は、標準動作のための温度範囲内の温度における前記第1の電極の内部抵抗率より小さい、請求項2
、4および5のいずれか1項に記載の充電式電池。
【請求項9】
前記温度トリガーは、温度が標準動作のための温度範囲を超えると作動する、請求項1~8のいずれか1項に記載の充電式電池。
【請求項10】
前記電圧トリガーは、電圧が標準動作のための電圧範囲を超えると作動する、請求項1~9のいずれか1項に記載の充電式電池。
【請求項11】
前記第1の電極の第1の部分と第2の部分は、前記電流インターラプタが係合構成に有る時には、前記電流インターラプタにより提供される積層接続を介して電気的に結合し、前記非導電性ギャップの形成は、前記第1の電極の第1の部分と第2の部分との間の前記積層接続を剥離する、請求項1~10のいずれか1項に記載の充電式電池。
【請求項12】
前記感熱性材料は、少なくとも前記温度トリガーが作動すると、気化してガスを形成する液体を少なくとも発生させることにより前記非導電性ギャップを形成する、請求項1~11のいずれか1項に記載の充電式電池。
【請求項13】
前記感熱性材料は、少なくとも前記温度トリガーが作動すると、前記電池に含まれる、前記第1の電極、前記第1の集電体、前記セパレータ、および電解質の1種以上と反応してガスを形成する液体を少なくとも発生させることにより前記非導電性ギャップを形成する、請求項1~12のいずれか1項に記載の充電式電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年5月15日に出願され、名称が“内部電流リミッタと内部電流インターラプタを備えた充電式電池”である米国特許出願第14/714,160号だけでなく、以下の5件の仮出願に対しても優先権を主張する:2014年11月25日に出願され、名称が“電池安全装置”である米国仮出願第62/084,454号;2015年2月9日に出願され、名称が“安全性向上のための、抵抗層を有する充電式電池”である米国仮出願第62/114,001号;2015年2月9日に出願され、名称が“温度活性化電流インターラプタを備えた充電式電池”である米国仮出願第62/114,006号;2015年2月9日に出願され、名称が“電圧電流インターラプタ”である米国仮出願第62/114,007号;および2015年2月10日に出願され、名称が“内部電流リミッタと内部電流インターラプタを備えた充電式電池”である米国仮出願第62/114,508号。出典明示により、それらのすべての開示内容は、本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、内部短絡または過充電が原因となる熱暴走から電池を保護するために用いられる内部電流リミッタまたは内部電流インターラプタに関する。特に、安全性の向上した高エネルギー密度の充電式(HEDR)電池に関する。
【背景技術】
【0003】
高エネルギー密度を有し、およびそれにより単位体積当りおよび/または単位重量当りに大量の電気エネルギーを貯蔵および供給することができる安全性の高い充電式電池システムが必要とされている。このような安定した高エネルギー電池システムは、軍事装置、通信装置、およびロボットを含む多くの用途において重要な有用性を有している。
【0004】
一般に使用されている高エネルギー密度の充電式(HEDR)電池の一例は、リチウムイオン電池である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リチウムイオン電池は、放電時にはリチウムイオンが負極から正極に移動し、充電時にはリチウムイオンがその逆に移動する充電式電池である。リチウムイオン電池は、ある条件下では危険であり、安全上の問題がある。リチウムコバルト酸化物電池の火災エネルギー含量(電気的+化学的)は、アンペア時当り約100~150kJであり、そのほとんどは化学的なものである。過充電または過熱により、リチウムイオン電池は熱暴走とセル(cell)破裂を被る場合がある。極端な場合、これが燃焼を引き起こす場合がある。また、外部あるいは内部で電池が短絡すると、電池が過熱し、発火する場合がある。
【0006】
過充電
リチウムイオン電池では、閉じた外部回路を電子が流れる場合に有用な仕事が実行される。しかし、電荷の中性を維持するため、外部回路を流れる各電子については、一方の電極から他方の電極へ移動する、対応するリチウムイオンが存在しなければならない。この移動を促進する電気ポテンシャルは、遷移金属を酸化することにより獲得される。例えば、コバルト(Co)は、充電時にはCo
3+からCo
4+へと変化し、放電時にはCo
4+からCo
3+へと還元される。従来は、Li
1-xCoO
2が用いられており、ここで係数xは、リチウムイオンと、CoO
2の酸化状態、すなわちCo
3+またはCo
4+、との両方のモル分率を表す。これらの慣例を用いると、リチウムコバルト電池の正極半反応は、以下のように表される:
負極半反応は、以下のように表される:
コバルトの電極反応は、x<0.5に限定し、サイクル寿命の問題やLiCoO
2の安定性のために、許容可能な放電深度に制限すれば可逆的である。
過充電は、以下のようにコバルト(IV)酸化物の生成をもたらす:
LiCoO
2は、CoO
2に分解し、大量の熱と酸素を放出する。放出された酸素は、電解質を酸化し、それは熱暴走をもたらす。このプロセスは不可逆的である。そのため、実際の分解以下で、あるいはその分解の前に分解できる装置または構造が必要とされている。この装置は、セルを熱膨張から保護し得る。
【0007】
熱暴走
リチウムイオン電池から発生する熱がその放熱能力を超えると、電池は熱暴走の影響を受けやすくなり、過熱状態となり、火災や爆発等の破壊的な結果に至る場合がある。熱暴走は、温度の上昇が温度をさらに上昇させるようにシステムを変化させる正のフィードバックループである。過度の熱は、電池の誤操作、電池の故障、事故、またはその他の原因によるものである。しかしながら、過度の発熱は、過剰な内部電流または正極と負極との間の発熱反応に起因するジュール加熱の増加に起因することが多い。過度の内部電流の原因は様々あるが、一因としては、セパレータを貫通する導電性粒子等によるセパレータの短絡による内部抵抗の低下が考えられる。セパレータの短絡に起因する熱は、セパレータ内でのさらなる破損を引き起こし、負極と正極の試薬の混合と、結果として発熱反応によるさらなる熱の発生をもたらす。
【0008】
内部短絡
リチウムイオン電池は、リチウムイオンを通過させる一方、2つの電極を互いに電気的に分離するために、正極と負極との間にセパレータを用いる。電池が、外部回路を通して電子を通過させることにより仕事を行う時、セパレータのリチウムイオン浸透性は、電池が回路を閉じることを可能にする。セパレータを横切る短絡は、不適切な充電および放電、または金属不純物および電極製造時の金属破片形成のような電池製造時の欠陥に起因し得る。より具体的には、不適切な充電は、負極の表面上に金属リチウムデンドライトを析出させ、これらのデンドライトは成長してセパレータを貫通して、一方の電極から他方の電極への電子の伝導経路を提供する。さらに、1.5V以下での不適切な放電は銅の溶解を引き起こし、最終的に負極の表面上に金属銅デンドライトが形成され、ナノポアを通ってセパレータを貫通して成長することもある。これらの導電経路の低抵抗は、急速放電と大きなジュール熱の発生をもたらす。過熱や熱暴走の原因となる。
【0009】
火災および/または爆発を回避するため、必要とされたのは、内部電流リミッタと内部電流インターラプタの組み合わせであり、それにより、内部放電の速度が不十分に制限されている場合、ジュール熱の発生を減少させるために内部短絡に起因する内部放電をまず制限し、また内部短絡を遮断して、温度上昇に関係なく、内部放電の速度をさらに抑制することができた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様では、本明細書のいくつかの実施例に記載された、改良された高エネルギー密度の充電式(HEDR)電池が提供され、該充電式電池は、反対極性の2つの電極であって、各電極が抵抗、安全動作温度範囲、および安全充電電圧で特徴付けられる該2つの電極と、前記2つの電極を分離し、それらの間の内部放電を防止するセパレータを含む。HEDR電池は、電子を移動させるための集電体を用いる少なくとも1つの電極を含み、セパレータは短絡をもたらす危険があり、短絡は前記2つの電極の間の短絡を潜在的に許容し、前記2つの電極の間の急速な内部放電はそれによるジュール熱の急速発生を許容し、ジュール熱の急速発生は潜在的に熱暴走を許容する。HEDR電池では、2つの電極には、安全な充電電圧を超える過充電の危険性があり、それにより短絡が形成され、および2つの電極には、安全な動作温度範囲を超える熱暴走の危険があり得る。HEDR電池は、短絡に起因する内部放電の速度を遅くするため、そこからのジュール熱の発生を遅くするため、および熱暴走の危険性を低減するため、の改良を含むことができ、前記改良は、電極の1つとそれに対応する集電体との間の電気的結合を形成する電流リミッタであって、通過する電流を抵抗的に阻止するためと、セパレータが短絡を形成する場合には、それが接続されている電極集電体から電流をそらすためと、2つの電極の間の内部放電の速度を減少させるための、抵抗率を有する前記電流リミッタと、電流インターラプタであって、係合構成、非係合構成、および係合構成から非係合構成へ前記電流インターラプタを切り換えるガス発生要素を有する前記電流インターラプタとを含む。ガス発生要素は、ガスを発生させるためのトリガーを有することができ、該トリガーは、温度トリガーと電圧トリガーからなる群から選択され、前記温度トリガーは、安全動作温度範囲を超えても動作可能であり得る。電圧トリガーは、係合構成においては、安全充電電圧を超えても動作可能であり、前記電流インターラプタを、電極の1つとそれに対応する集電体との間を積層接続を用いて電気的に結合し、非係合構成においては、前記積層接続は剥離され、前記電流インターラプタは前記電極とそれに対応する集電体との間の電気的結合を遮断する非導電性ギャップを形成する。電流インターラプタは、トリガーに応答してガス発生要素の動作を開始させて、係合構成から非係合構成に移行し、生成したガスは、電極とそれに対応する集電体との間の電気的結合を遮断するために、前記積層構造を剥離させる。電流リミッタと電流インターラプタを組み合わせて用いることで、セパレータの短絡、電極の過充電、および電極の過熱による熱暴走の危険性を減少させる。
【0011】
以下の特徴は、任意の適切な組み合わせで、改良された高エネルギー密度の充電式(HEDR)電池の中に存在し得る。電流リミッタと電流インターラプタは、同じ電極と集電体との間に介在する保護層に積層により同時に組み込むことができる。HEDR電池は、第1の集電体および第2の集電体を含む2つの集電体と、第1の電極と第2の電極を含む2つの電極を含むことができ、第1の電極は第1の部分と第2の部分とを含み、第1の電極の第2の部分は、第1の電極の第1の部分と第1の集電体との間に介在しており、前記改良はさらに以下のように特徴付けられる:電流リミッタは、第1の電極の第1の部分と第1の電極の第2の部分との間に積層され、電流インターラプタは、第1の電極の第2の部分と第1の集電体との間に積層される。電流リミッタは、第1の電極の第2の部分と第1の集電体との間に積層することができ、電流インターラプタは、第1の電極の第1の部分と第1の電極の第2の部分との間に積層することができる。HEDR電池は,第1の集電体と第2の集電体を含む2つの集電体と、第1の電極と第2の電極を含む2つの電極とを含むことができ、電流リミッタは、第1の電極と第1の集電体との間に積層することができ、電流インターラプタは、第2の電極と第2の集電体との間に積層することができる。HEDR電池では、各電極は安全動作のための温度範囲と内部抵抗率を有することができ、電流リミッタは、安全動作のための温度範囲内で、前記電流リミッタとともに積層される電極の内部抵抗率よりも大きい抵抗率を有することができる。電流リミッタは、安全動作のための温度範囲内の温度での抵抗率移行スイッチが欠いていてもよい。HEDR電池は、各電極が標準動作のための温度範囲を持つことができ、電流リミッタは、標準動作のための温度範囲では電極の内部抵抗率より小さい抵抗率であり、標準動作のための温度範囲を超えると電極の内部抵抗率よりも大きい抵抗率となる、抵抗率移行を有することができる。HEDR電池は、各電極が標準動作のための温度範囲を有し、電流インターラプタが、標準動作のための温度範囲を超える温度で作動するようにすることができる。いくつかの実施形態では、HEDR電池は、各電極が、標準動作のための温度範囲と安全動作のための温度範囲を有し、電流インターラプタが、標準動作のための温度範囲を超える温度であって、安全動作のための温度範囲内の温度で作動するようなタイプであってもよい。いくつかの実施形態では、HEDR電池は、各電池が、安全動作のための温度範囲内で内部抵抗を有し、電流リミッタが、安全動作のための温度範囲内で、前記電流リミッタとともに積層される電極の内部抵抗率よりも大きい抵抗率を有していてもよい。電流リミッタと電流インターラプタは、同じ電極と集電体との間に介挿された保護層に積層により同時に組み込むことができる。HEDR電池は、各電極が標準動作のための電圧範囲を有し、電流インターラプタが、標準動作のための電圧範囲を超える電圧で活性化されるようなタイプであってもよい。HEDR電池は、各電池が、標準動作のための電圧範囲と安全動作のための電圧範囲を有し、電流インターラプタが、標準動作のための電圧範囲を超える電圧であって、安全動作のための電圧範囲内にある電圧で活性化されるようなタイプであってもよい。電流リミッタと電流インターラプタは、同じ電極と集電体との間に介挿された保護層に積層により同時に組み込むことができる。
【0012】
関連する態様では、本明細書に記載された、改良された高エネルギー密度の充電式(HEDR)電池が提供され、該充電式電池は、反対極性の2つの電極と、前記2つの電極を分離するセパレータと、前記2つの電極の一方に電気的に結合する少なくとも1つの集電体とを含むものであって、前記セパレータは前記2つの電極の間の内部放電を防止し、前記セパレータの破損は前記2つの電極の間の内部放電を潜在的にもたらし、前記内部放電は潜在的な危険としてジュール熱の発生をもたらすものであって、前記充電式電池は、熱作動型電流インターラプタと電圧作動型電流インターラプタを含む。熱作動型電流インターラプタは、前記集電体の1つと前記電極の1つとの間に積層法により積層することができ、該熱作動型電流インターラプタは、非作動時には、前記集電体とともに積層されている電極に前記集電体を電気的に結合する一方、作動時には、前記集電体とともに積層されている電極から前記集電体を電気的に分離するために、非導電性ギャップを形成して前記集電体から剥離するものであって、電気的分離は、セパレータが破損した場合には、2つの電極間の内部放電の速度を遅くする。電圧作動型電流インターラプタは、前記集電体の1つと前記電極の1つとの間に積層法により積層することができ、該電圧作動型電流インターラプタは、非作動時には、前記集電体とともに積層されている電極に前記集電体を電気的に結合する一方、作動時には、前記集電体とともに積層されている電極から前記集電体を電気的に分離するために、非導電性ギャップを形成して前記集電体から剥離するものであって、電気的分離は、セパレータが破損した場合には、2つの電極間の内部放電の速度を遅くする。HEDR電池では、セパレータの破損の際、熱作動型電流インターラプタまたは電圧作動型電流インターラプタのいずれかの作動により、潜在的な危険を減少させるために、ジュール熱の発生を遅くすることができる。
【0013】
さらなる関連する態様では、本明細書に記載のいくつかの実施形態において、セパレータの破損により内部放電が起こる高エネルギー密度の充電式電池の内部の熱暴走を回避する方法が提供され、該方法は、電極と集電体との間に介挿された遮断層内に、感熱性ガス発生材料からガスを発生させることにより電池内の電極を集電体から剥離することを含み、剥離により、集電体から電極を電気的に分離して、内部放電の速度を遅くする。
【0014】
第1の態様では、本明細書において、改良された高エネルギー密度の充電式(HEDR)電池が提供され、該充電式電池は、アノードエネルギー層と、カソードエネルギー層と、前記アノードエネルギー層と前記カソードエネルギー層との間に配置され内部放電を防止するセパレータと、前記アノードエネルギー層または前記カソードエネルギー層の一方と電子のやりとりをする少なくとも1つの集電体と、前記セパレータと前記集電体の1つとの間に介挿された抵抗層とを含み、前記アノードエネルギー層および前記カソードエネルギー層は、それぞれ内部抵抗率を有し、前記HEDR電池は、電流を放電するための好ましい温度範囲と上限温度安全限界(upper temperature safety limit)とを有し、前記抵抗層は、セパレータの破損およびそれによるジュール熱の発生の際にセパレータを通る内部放電の速度を制限するように構成され、前記抵抗層は、好ましい温度範囲と上限温度安全限界との間の温度で一定の抵抗率を有し、前記抵抗層の前記一定の抵抗率は、いずれかのエネルギー層の内部抵抗率よりも大きく、前記抵抗層は、セパレータの破損の際には、上限温度安全限界を超える温度を回避するためのものである。
【0015】
以下の特徴は、適切に組み合わせることで、HEDR電池に含ませることができる。いくつかの実施形態では、HEDR電池の抵抗層は、多孔質でもよく、間隙空間を規定するセラミック粉末、前記セラミック粉末を結合するために前記間隙空間を部分的に充填するバインダー、および前記バインダー内に分散し、前記抵抗層に抵抗率を付与する導電性成分とを含み、前記間隙空間は、前記抵抗層に多孔性と透過性を付与するために部分的に未充填である。未充填の間隙空間を減らし、バインダーによるセラミック粉末の結合を増加させるために、抵抗層を圧縮することができる。抵抗層は、30重量%より多いセラミック粉末を含んでもよい。抵抗層は、50重量%より多いセラミック粉末を含んでもよい。抵抗層は、70重量%より多いセラミック粉末を含んでもよい。抵抗層は、75重量%より多いセラミック粉末を含んでもよい。抵抗層は、80重量%より多いセラミック粉末を含んでもよい。HEDR電池の抵抗層は、イオン性電荷キャリアの移動に対する透過性を有することができる。抵抗層は多孔質でもよく、非導電性フィラー、前記非導電性フィラーを結合するバインダー、および前記バインダーに分散し、前記抵抗層に抵抗率を付与する導電性成分を含む組成物を含むこともできる。前記抵抗層は、イオン性電荷キャリアの移動に対して不透過性でもよい。HEDR電池の抵抗層の一定の抵抗率は、いずれかのエネルギー層の内部抵抗率の少なくとも2倍とすることができる。HEDR電池の抵抗層の一定の抵抗率は、いずれかのエネルギー層の内部抵抗率の少なくとも5倍とすることができる。HEDR電池の抵抗層の一定の抵抗率は、いずれかのエネルギー層の内部抵抗率の少なくとも10倍とすることができる。抵抗層は、最大動作温度と上限温度安全限界との間の温度で抵抗層の抵抗率を低抵抗率から高抵抗率に変換させるための固相から非固相への変換がなくてもよい。抵抗層は、上限温度安全限界より低い温度で非犠牲的でもよい。抵抗層は、上限温度安全限界より高い温度で犠牲的でもよい。抵抗層は、難燃性ガスを発生させるために、上限温度安全限界より高い温度で化学的に分解するセラミック粉末を含むことができる。抵抗層は、抵抗層から集電体を剥離させるためのガスを発生させるために、上限温度安全限界より高い温度で化学的に分解するセラミック粉末を含むことができる。集電体は、アノードエネルギー層と電子のやりとりを行うためのアノード集電体を含むことができ、抵抗層はセパレータとアノード集電体との間に介挿されている。抵抗層が、アノード集電体とアノードエネルギー層との間に介挿されていてもよい。抵抗層が、アノードエネルギー層とセパレータとの間に介挿されていてもよい。いくつかの実施形態では、HEDR電池のアノードエネルギー層は、第1のアノードエネルギー層、および該第1のアノードエネルギー層とセパレータとの間に介挿された第2のアノードエネルギー層を含み、抵抗層は第1のアノードエネルギー層と第2のアノードエネルギー層との間に介挿されている。集電体は、カソードエネルギー層との電子のやりとりを行うために、カソード集電体を含むことができ、抵抗層はセパレータとカソード集電体との間に介挿されている。抵抗層は、カソード集電体とカソードエネルギー層との間に介挿されてもよい。抵抗層は、カソードエネルギー層とセパレータとの間に介挿されてもよい。カソードエネルギー層は、第1のカソードエネルギー層と、該第1のカソードエネルギー層とセパレータとの間に介挿された第2のカソードエネルギー層を含むことができ、抵抗層は、第1のカソードエネルギー層と第2のカソードエネルギー層との間に介挿されている。いくつかの実施形態では、HEDR電池は、2つの集電体を含むことができ、該2つの集電体は、アノードエネルギー層と電子のやりとりを行うアノード集電体と、カソードエネルギー層と電子のやりとりを行うカソード集電体とを含み、抵抗層がアノード抵抗層とカソード抵抗層を含み、前記アノード抵抗層はセパレータとアノード集電体との間に介挿され、前記カソード抵抗層はセパレータとカソード集電体との間に介挿されている。
【0016】
関連する態様では、本明細書に記載の、高エネルギー密度の充電式(HEDR)電池内部でのセパレータの破損に起因するエネルギー層の内部放電の速度を制限する方法が提供され、該方法は、抵抗層を用いて内部放電に抵抗することを含み、前記抵抗層は、HEDR電池内のセパレータと集電体との間に介挿され、前記抵抗層は、エネルギー層を放電するための好ましい温度範囲と上限温度安全限界との間の温度で一定の抵抗率を有し、前記抵抗層の前記一定の抵抗率は、エネルギー層の内部抵抗率より大きい。
【0017】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、高エネルギー密度の充電式(HEDR)金属イオン電池が提供され、該電池は、アノードエネルギー層、カソードエネルギー層、前記カソードエネルギー層から前記アノードエネルギー層を分離するセパレータ、アノードエネルギー層またはカソードエネルギー層のいずれか一方と電子をやりとりする少なくとも1つの集電体、および上限温度安全限界の温度またはそれを超える温度に曝されると、高エネルギー密度の充電式金属イオン電池の内部の電流を遮断するように作動する遮断層を含み、前記高エネルギー密度の充電式金属イオン電池は、熱暴走を回避するための上限温度安全限界を有し、前記遮断層は前記セパレータと前記集電体の1つの集電体との間に介挿され、前記遮断層は、非作動時には、前記セパレータと前記集電体の1つの集電体との間に積層されて、通電させる一方、作動時には、高エネルギー密度の充電式金属イオン電池を流れる電流を遮断するために剥離されるものであって、前記遮断層は、上限温度安全限界の温度またはそれを超える温度に曝されると分解する感温性分解性成分を含み、前記感温性分解性成分は分解時にガスを発生し、発生した前記ガスは、高エネルギー密度の充電式金属イオン電池を流れる電流を遮断するために前記遮断層を剥離するものであり、高エネルギー密度の充電式金属イオン電池は、高エネルギー密度の充電式金属イオン電池内の電流を遮断するために、上限温度安全限界の温度またはそれを超える温度に曝すことで遮断層を作動させることにより熱暴走を回避する。
【0018】
以下の特徴は、適切に組み合わせることで、HEDR金属イオン電池内に存在させることができる。遮断層は多孔質でもよい。感温性分解性成分はセラミック粉末を含むことができる。遮断層は、セラミック粉末、バインダー、および導電性成分を含む組成物を含むことができる。セラミック粉末は間隙空間を規定することができる。バインダーは、セラミック粉末を結合するために間隙空間を部分的に充填することができる。導電性成分は、前記遮断層に導電性を付与するためにバインダー内に分散させることができる。前記間隙空間は、前記遮断層に多孔性と透過性を付与するために部分的に未充填である。遮断層は、30重量%より多いセラミック粉末を含むことができる。遮断層は、50重量%より多いセラミック粉末を含むことができる。遮断層は、70重量%より多いセラミック粉末を含むことができる。遮断層は、75重量%より多いセラミック粉末を含むことができる。遮断層は、80重量%より多いセラミック粉末を含むことができる。遮断層は、イオン電荷キャリアの移動に対する透過性を有することができる。遮断層は多孔質でもよく、非導電性フィラー、前記非導電性フィラーを結合するバインダー、および前記バインダーに分散し、前記遮断層に抵抗率を付与する導電性成分を含む組成物を含むこともできる。前記遮断層は、イオン性電荷キャリアの移動に対して不透過性でもよい。遮断層は、上限温度安全限界より高い温度で犠牲的でもよい。遮断層は、難燃性ガスを発生させるために、上限温度安全限界より高い温度で化学的に分解するセラミック粉末を含むことができる。集電体は、アノードエネルギー層と電子のやりとりを行うためのアノード集電体を含むことができ、遮断層はセパレータとアノード集電体との間に介挿されている。遮断層が、アノード集電体とアノードエネルギー層との間に介挿されていてもよい。遮断層が、アノードエネルギー層とセパレータとの間に介挿されていてもよい。HEDR電池のアノードエネルギー層は、第1のアノードエネルギー層と、該第1のアノードエネルギー層とセパレータとの間に介挿された第2のアノードエネルギー層を含み、遮断層は第1のアノードエネルギー層と第2のアノードエネルギー層との間に介挿されている。集電体は、カソードエネルギー層との電子のやりとりを行うために、カソード集電体を含むことができ、遮断層はセパレータとカソード集電体との間に介挿されている。遮断層は、カソード集電体とカソードエネルギー層との間に介挿されてもよい。遮断層は、カソードエネルギー層とセパレータとの間に介挿されてもよい。カソードエネルギー層は、第1のカソードエネルギー層と、該第1のカソードエネルギー層とセパレータとの間に介挿された第2のカソードエネルギー層を含むことができ、遮断層は、第1のカソードエネルギー層と第2のカソードエネルギー層との間に介挿されている。HEDR電池は、2つの集電体をさらに含むことができ、該2つの集電体は、アノードエネルギー層と電子のやりとりを行うアノード集電体と、カソードエネルギー層と電子のやりとりを行うカソード集電体とを含み、遮断層がアノード遮断層とカソード遮断層を含み、前記アノード遮断層はセパレータとアノード集電体との間に介挿され、前記カソード遮断層はセパレータとカソード集電体との間に介挿されている。
【0019】
関連する態様では、熱暴走を回避するために、上限温度安全限界の温度またはそれを超える温度に曝されることで高エネルギー密度の充電式金属イオン電池内を流れる電流を遮断する方法が提供され、該方法は、高エネルギー密度の充電式金属イオン電池の温度を上限温度安全限界よりも高くすること、および高エネルギー密度の充電式金属イオン電池を流れる電流を遮断する遮断層を作動させることを含む。高エネルギー密度の充電式金属イオン電池は、アノードエネルギー層、カソードエネルギー層、前記カソードエネルギー層から前記アノードエネルギー層を分離するセパレータ、前記カソードエネルギー層または前記アノードエネルギー層のいずれか一方と電子のやりとりをする集電体、および遮断層を含み、前記遮断層は、セパレータと前記集電体の1つの集電体との間に介挿され、前記遮断層は、非作動時には、セパレータと前記集電体の1つの集電体との間に積層されて通電させる一方、作動時には、リチウムイオン電池を流れる電流を遮断するように剥離されるものであって、前記遮断層は、上限温度安全限界の温度またはそれを超える温度に曝されると分解する感温性分解性成分を含み、該感温性分解性成分は分解するとガスを発生し、発生した前記ガスは遮断層を剥離させて、高エネルギー密度の充電式金属イオン電池を流れる電流を遮断し、それにより、高エネルギー密度の充電式金属イオン電池の熱暴走が、電池を流れる電流を遮断することで回避される。
【0020】
本明細書のいくつかの実施形態では、高エネルギー密度の充電式(HEDR)金属イオン電池が提供され、該電池は、アノードエネルギー層、カソードエネルギー層、前記カソードエネルギー層から前記アノードエネルギー層を分離するセパレータ、前記アノードエネルギー層と電子のやりとりをするアノード集電体、および最大安全電圧を超える電圧に曝されると、前記高エネルギー密度の充電式金属イオン電池内の電流を遮断するように作動する遮断層を含み、前記高エネルギー密度の充電式金属イオン電池は、再充電可能であり、過充電を回避するための最大安全電圧により特徴付けられ、前記遮断層は、前記カソードエネルギー層と前記カソード集電体との間に挟持され、前記遮断層は、非作動時には、前記アノード集電体に積層されて通電する一方、作動時には、前記アノード集電体から剥離されて電流を遮断するものであり、前記遮断層は、最大安全電圧を超える電圧に曝されると分解する電圧感応性分解性成分を含み、前記電圧感応性分解性成分は分解時にガスを発生し、発生した前記ガスは前記アノード集電体から前記遮断層を剥離して電流を遮断し、それにより、前記高エネルギー密度の充電式金属イオン電池は、最大安全電圧を超える電圧に曝されると、前記遮断層が作動して電流を遮断することで過充電を回避する。
【0021】
以下の特徴は、適切に組み合わせることで、高エネルギー密度の充電式金属イオン電池の中に存在させることができる。HEDR電池の遮断層は、多孔質でもよく、また間隙空間を規定するセラミック粉末、セラミック粉末を結合するために間隙空間を部分的に充填するバインダー、および前記遮断層に導電性を付与するために前記バインダー内に分散させる導電性成分を含む組成物を含むこともでき、前記間隙空間は、前記遮断層に多孔性と透過性を付与するために部分的に未充填である。未充填の間隙空間を減少させるとともに、バインダーによるセラミック粉末の結合を増加させるために、遮断層を圧縮することができる。遮断層は、30重量%より多いセラミック粉末を含むことができる。遮断層は、50重量%より多いセラミック粉末を含むことができる。遮断層は、70重量%より多いセラミック粉末を含むことができる。遮断層は、75重量%より多いセラミック粉末を含むことができる。遮断層は、80重量%より多いセラミック粉末を含むことができる。遮断層は、イオン電荷キャリアの移動に対する透過性を有することができる。HEDR電池の遮断層は、多孔質でもよく、また非導電性フィラー、前記非導電性フィラーを結合するバインダー、および前記バインダーに分散し、前記遮断層に抵抗率を付与する導電性成分を含む組成物を含むこともできる。前記遮断層は、イオン性電荷キャリアの移動に対して不透過性でもよい。遮断層は、再充電のための最大安全電圧を超える電圧で犠牲的でもよい。遮断層は、ガスを発生させるために、最大安全電圧を超える電圧で化学的に分解するセラミック粉末を含むことができる。そのガスは、難燃性ガスでもよい。
【0022】
関連する態様では、過充電を回避するために、最大安全電圧の電圧またはそれを超える電圧に曝されると、高エネルギー密度の充電式金属イオン電池の再充電プロセスを遮断する方法が提供され、前記高エネルギー密度の充電式金属イオン電池は、アノードエネルギー層、カソードエネルギー層、前記カソードエネルギー層から前記アノードエネルギー層を分離するセパレータ、前記アノードエネルギー層と電子のやりとりをするアノード集電体を含む。前記方法は、再充電のための最大安全電圧を超えるように電圧を増加させるために、前記高エネルギー密度の充電式金属イオン電池を過充電すること、および前記アノード集電体に積層された遮断層内の電圧感応性分解性成分の分解によりガスを発生させることで過充電を遮断することを含み、発生した前記ガスは、前記アノード集電体から前記遮断層を剥離させ、それにより、前記高エネルギー密度の充電式金属イオン電池の過充電が、前記遮断層内でのガス発生により前記アノード集電体から前記遮断層が剥離することで、遮断される。
【0023】
本開示の1つの態様は、改良された高エネルギー密度の充電式(HEDR)電池に関するものであり、反対極性の2つの電極(12と14)を含むタイプである。各電極は、その抵抗率、その安全作動温度範囲、およびその安全充電電圧を特徴とする。HEDRは、さらに、2つの電極(12と14)を分離し、その2つの電極の間の内部放電を防止するセパレータ2と、電子を伝達するための集電体4を用いる少なくとも1つの電極(12または14)とを含むタイプである。セパレータ2には、短絡を形成する危険性がある。短絡は、2つの電極(12と14)の間の急激な内部放電をもたらす可能性があり、それによりジュール熱の急激な発生がもたらされる可能性があり、そのジュール熱の急激な発生は熱暴走をもたらす可能性がある。前記2つの電極(12と14)は、安全充電電圧を超える過充電と、それに起因する短絡の形成の危険性がある。前記2つの電極(12と14)は、安全作動温度範囲を超える温度で熱暴走の危険性がある。
【0024】
本開示の第1の態様に対する改良は、短絡に起因する内部放電の速度を遅くすること、それに起因するジュール熱の発生を遅くすること、および熱暴走の危険性を低減することに対して用いることができる。
【0025】
改良は、電流インターラプタ8と組み合わせた電流リミッタ6をHEDR電池に追加することを含む。
【0026】
電流リミッタ6は、電極の1つ(12または14)とそれに対応する集電体4との間に電気的結合を形成する。電流リミッタ6は、抵抗率を有し、該抵抗率は、電流を抵抗的に阻止するとともに、セパレータ2が短絡を形成する場合には、結合している電極集電体4から電流をそらし、および2つの電極(12と14)の間の内部放電の速度を減少させる。
【0027】
電流インターラプタ8は、係合構成、非係合構成、および電流インターラプタ8を係合構成から非係合構成へ移行させるガス発生要素を有している。ガス発生要素は、ガスを発生させるためのトリガーを有している。トリガーは、温度トリガーと電圧トリガーから成る群から選択される。
【0028】
温度トリガーは、安全作動温度範囲を超える温度で作動する。
【0029】
電圧トリガーは、安全充電電圧を超える電圧で作動する。
【0030】
係合構成では、電流インターラプタ8は、電極の1つ(12または14)とそれに対応する集電体4とを積層接続により電気的に結合する。
【0031】
非係合構成では、積層接続は剥離し、電流インターラプタ8は、非導電性ギャップを形成して、電極(12または14)とそれに対応する集電体4との間の電気的結合を遮断する。
【0032】
電流インターラプタ8は、トリガーに応答してガス発生要素の動作を開始させることにより、係合構成から非係合構成に移行する。発生したガスは、電極(12または14)とそれに対応する集電体4との間の電気的結合を遮断するために、積層接続を剥離する。
【0033】
本開示の第1の態様では、電流リミッタ6と電流インターラプタ8は、組み合わせて構成され、セパレータの短絡、電極の過充電、および電極の過熱に起因する熱暴走の危険性を低減する。
【0034】
本開示の第1の態様の1つの実施形態では、電流リミッタ6と電流インターラプタ8は、同じ電極(12または14)と集電体4との間に積層により介挿させることにより、保護層の中に同時に組み込まれる。
【0035】
本開示の第1の態様の別の実施形態では、電池は、第1の集電体4と第2の集電体4を含む2つの集電体4を含むタイプである。2つの電極(12と14)は、第1の電極と第2の電極を含んでいる。第1の電極は第1の部分と第2の部分を含む。第1の電極の第2の部分は、第1の電極の第1の部分と第1の集電体4との間に介挿されている。本開示の本実施形態の改良のさらなる特徴は、第1の電極の第1の部分と第1の電極の第2の部分との間に電流リミッタ6が積層されていること、および第1の電極の第2の部分と第1の集電体4との間に電流インターラプタ8が積層されていることである。本開示の第1の態様のサブ実施形態では、電流リミッタ6が、第1の電極の第2の部分と第1の集電体4との間に積層され、電流インターラプタ8が、第1の電極の第1の部分と第1の電極の第2の部分との間に積層されている。
【0036】
本開示の第1の態様の別の実施形態では、電池は、第1の集電体4と第2の集電体4を含む2つの集電体4と、第1の電極と第2の電極を含む2つの電極(12と14)とを含むタイプであり、改良はさらなる特徴を有する。本実施形態では、電流リミッタ6は、第1の電極と第1の集電体4との間に積層され、電流インターラプタ8は、第2の電極と第2の集電体4との間に積層されている。
【0037】
本開示の第1の態様の別の実施形態では、電池は、各電極(12または14)が、安全動作のための温度範囲と内部抵抗率とを有するタイプである。本実施形態では、電流リミッタ6は、安全動作のための温度範囲内で、該電流リミッタ6とともに積層されている電極(12または14)の内部抵抗率より大きい抵抗率を有する。
【0038】
本開示の第1の態様の別の実施形態では、改良のさらなる特徴は、安全動作のための温度範囲内の温度で、電流リミッタ6が抵抗率移行スイッチを欠いていることである。
【0039】
本開示の第1の態様の別の実施形態では、電池は、各電極(12と14)が標準動作のための温度範囲を有しているタイプである。本実施形態では、電流リミッタ6が、標準動作のための温度範囲内では電極(12および/または14)の内部抵抗率より低い抵抗率で、および標準動作のための温度範囲を超える温度では電極(12および/または14)の内部抵抗率より高い抵抗率で、抵抗率移行を行う。
【0040】
本開示の第1の態様の別の実施形態では、電池は、各電極(12および14)が標準動作のための温度範囲を有するタイプである。本実施形態では、電流インターラプタ8は、標準動作のための温度範囲を超える温度で作動する。
【0041】
本開示の第1の態様の別の実施形態では、電池は、各電極(12および14)が標準動作のための温度範囲と安全動作のための温度範囲とを有するタイプである。本実施形態では、電流インターラプタ8は、標準動作のための温度範囲を超える温度であり、かつ安全動作のための温度範囲内の温度で作動する。
【0042】
本開示の第1の態様の別の実施形態では、電池は、各電池(12と14)が、安全動作のための温度範囲内で内部抵抗率を有する。本実施形態では、電流リミッタ6は、安全動作のための温度範囲内で、電流リミッタ6とともに積層された電極(12または14)の内部抵抗率よりも高い抵抗率を有する。本実施形態の代替として、電流リミッタ6と電流インターラプタ8は、同じ電極(12または14)と集電体4との間に積層により介挿された保護層の中に同時に組み込まれる。
【0043】
本開示の第1の態様の別の実施形態では、電池は、各電極(12と14)が標準動作のための電圧範囲を有するタイプである。本実施形態では、電流インターラプタ8は、標準動作のための電圧範囲を超える電圧で作動する。
【0044】
本開示の第1の態様の別の実施形態では、電池は、各電極(12と14)が標準動作のための電圧範囲と安全動作のための電圧範囲を有している。本実施形態では、電流インターラプタ8は、標準動作のための電圧範囲を超える電圧であって、安全動作の電圧範囲内の電圧で作動する。本実施形態の代替として、電流リミッタ6と電流インターラプタ8は、同じ電極(12または14)と集電体4との間に積層により介挿された保護層の中に同時に組み込まれる。
【0045】
本開示の第2の態様は、別の改良された高エネルギー密度の充電式電池であり、該電池は、反対極性の2つの電極(12と14)、前記2つの電極(12と14)を分離するセパレータ2、および前記電極の1つ(12または14)を電気的に結合する少なくとも1つの集電体4を有するタイプである。セパレータ2は、前記2つの電極(12と14)の間の内部放電を防止する。セパレータ2の破損は、前記2つの電極(12と14)の間の内部放電をもたらす可能性がある。内部放電は、潜在的な危険としてのジュール熱の発生をもたらす。
【0046】
本開示の第2の態様の改良は、熱作動型電流インターラプタ8と電圧作動型電流インターラプタ8を含む。
【0047】
熱作動型電流インターラプタ8は、集電体4の1つと電極の1つ(12または14)との間に積層法により積層される。熱作動型電流インターラプタ8は、非作動時には、ともに積層されている電極(12または14)に集電体4を電気的に結合する。作動時には、熱作動型電流インターラプタ8は、ともに積層されていた電極(12または14)から集電体4を電気的に分離するための非導電性ギャップを形成するため、集電体4から剥離する。その電気的分離により、セパレータの破損の際には、2つの電極(12と14)の間の内部放電の速度が遅くなる。
【0048】
電圧作動型電流インターラプタ8は、集電体4の1つと電極の1つ(12または14)との間に積層法により積層される。電圧作動型電流インターラプタ8は、非作動時には、ともに積層されている電極(12または14)に集電体4を電気的に結合する。電圧作動型電流インターラプタ8は、作動時には、ともに積層されていた電極(12または14)から集電体4を電気的に分離するための非導電性ギャップを形成するため、集電体4から剥離する。その電気的分離により、セパレータの破損の際には、2つの電極(12と14)の間の内部放電の速度が遅くなる。本開示の第2の態様では、セパレータの破損の際に、熱作動型電流インターラプタ8または電圧作動型電流インターラプタ8の一方が作動することで、ジュール熱の発生を遅くして潜在的な危険性を減らすことができる。
【0049】
本開示の第2の態様は、セパレータの破損による内部放電を被る高エネルギー密度の充電式電池内の熱暴走を回避する方法に関する。該方法は、電極(12または14)と集電体4との間に介挿された遮断層内の感熱性ガス発生材料からガスを発生させることにより、集電体4から電池内の電極(12または14)を剥離する工程を含む。その剥離は、内部放電の速度を遅くするために、集電体から電極(12または14)を電気的に分離する。
【0050】
本開示の第3の態様は、電圧過充電によるセパレータの破損を被る危険性のある高エネルギー密度の充電式電池内の熱暴走を回避する方法に関する。該方法は、電極(12または14)と集電体4との間に介挿された遮断層内の感熱性ガス発生材料からガスを発生させることにより、集電体4から電池内の電極(12または14)を剥離する工程を含む。その剥離は、電圧過充電を遮断するために、集電体から電極(12または14)を電気的に分離する。
【0051】
本開示の第4の態様は、電圧過充電によるセパレータの破損を被る危険性のある高エネルギー密度の充電式電池内の熱暴走を回避する方法に関する。該方法は、電解質や電極(12または14)等の電池要素と反応する分解化合物(高電圧での)を介して間接的にガスを形成する、電圧感応性材料または感温性材料からガスを発生させることにより、集電体4から電池内の電極(12または14)を剥離する工程を含む。この電圧感応性材料または感温性材料は、ガス発生剤とも呼ばれ、電極(12または14)と集電体4との間に介挿された遮断層の中に含めることができる。その剥離は、電圧過充電を遮断するために、集電体から電極(12または14)を電気的に分離する。
【0052】
本開示は、添付の図面を参照することでより詳細に記載されており、本開示のいくつかの例示的な実施形態が示されている。当業者には理解されるように、記載された実施形態は、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、様々な異なる方法で修正することが可能である。したがって、図面および説明は、本質的に例示であり、限定的ではないと見なされるべきである。図面においては、層および領域の厚さは、わかりやすくするために誇張されている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1A-1Gは、電流リミッタ6として機能する1層以上の抵抗層を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の例示的な構成を示す模式図であり、内部短絡が発生した場合には過熱から電池を保護し、温度の上昇により熱的に作動する電流インターラプタ8と組み合わせることで、電池が過熱しているか、危険な温度に到達する場合に、自己放電プロセスを不可逆的に遮断する。
【
図2】
図2A-2Bは、電流リミッタ6と電流インターラプタ8の組み合わせとして機能する1層以上の層を有するフィルム型リチウムイオン電池の例示的な構成を示す模式図であり、内部短絡が発生した場合には過熱から電池を保護し、電圧の増加により流電的に(voltaicly)に作動可能な電流インターラプタ8と組み合わせることで、電池が過充電された場合には、自己放電プロセスを不可逆的に遮断する。
【
図3】
図3A、3Bは、内部短絡が発生した場合には過熱から電池を保護する電流リミッタ6として機能する1層以上の抵抗層を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の例示的な構成を示す模式図であり、温度の上昇により熱的に作動する電流インターラプタ8と組み合わせることで、電池が過熱しているか、危険な温度に到達する場合に、自己放電プロセスを不可逆的に遮断し、さらに、電圧の増加により作動する電流インターラプタ8と組み合わせることで、電池が過充電された場合には、自己放電プロセスを不可逆的に遮断する。
【
図4】
図4A-4Dは、先行技術のフィルムタイプのリチウムイオン電池の断面図(
図4A,4B)と、本開示のフィルムタイプのリチウムイオン電池の断面図(
図4C,4D)を示す。
【
図5】
図5A-5Dは、先行技術のフィルムタイプのリチウムイオン電池の断面図(
図5A,5B)と、本開示のフィルムタイプのリチウムイオン電池の断面図(
図5C,5D)を示す。
【
図6】
図6A-6Dは、先行技術のフィルムタイプのリチウムイオン電池の断面図(
図6A,6B)と、本開示のフィルムタイプのリチウムイオン電池の断面図(
図6C,6D)を示す。
【
図7】
図7A-7Dは、先行技術のフィルムタイプのリチウムイオン電池の断面図(
図7A,7B)と、本開示のフィルムタイプのリチウムイオン電池の断面図(
図7C,7D)を示す。
【
図8】
図8A-8Dは、先行技術のフィルムタイプのリチウムイオン電池の断面図(
図8A,8B)と、本開示のフィルムタイプのリチウムイオン電池の断面図(
図8C,8D)を示す。
【
図9】
図9A-9Dは、先行技術のフィルムタイプのリチウムイオン電池の断面図(
図9A,9B)と、本開示のフィルムタイプのリチウムイオン電池の断面図(
図9C,9D)を示す。
【
図10】
図10A-10Dは、先行技術のフィルムタイプのリチウムイオン電池の断面図(
図10A,10B)と、本開示のフィルムタイプのリチウムイオン電池の断面図(
図10C,10D)を示す。
【
図11】
図11A-11Dは、先行技術のフィルムタイプのリチウムイオン電池の断面図(
図11A,11B)と、本開示のフィルムタイプのリチウムイオン電池の断面図(
図11C,11D)を示す。
【
図12】
図12A-12Cは、組み合わされた電流リミッタ6と電流インターラプタ8の例示的な構造を示す。
【0054】
【
図14】
図14は、化学分解電圧測定に用いられた様々な正極14の配合を示す。
【
図15】
図15は、温度上昇に伴う、3.6V対グラファイトにおけるセルNo.2のベースライン抵抗を示す。温度上昇に伴い、抵抗は約10倍低下する。
【
図16】
図16は、温度上昇に伴う、0Vおよび3.655V対グラファイトにおけるセルNo.4(Al
2O
3およびCaCO
3セラミック層を有する正極14)の抵抗を示す。抵抗は、ゼロ電圧でわずかに増加し、3.646Vおよび4.11Vで顕著に増加する。
【
図17】
図17は、温度上昇に伴う、0V、3.646Vおよび4.11V対グラファイトにおけるセルNo.3(CaCO
3セラミック層を有する正極14)の抵抗を示す。抵抗は、ゼロ電圧でわずかに増加し、3.655Vで顕著に増加する。
【
図18】
図18は、1A,3A,6A,および10Aでの、セル電圧とベースラインセルNo.1(抵抗層なし)の放電容量の関係を示す。
【
図19】
図19は、1A,3A,6A,および10Aでの、セル電圧とベースラインセルNo.3(85.2%CaCO
3ベースの抵抗層6)の放電容量の関係を示す。この特定の抵抗層6を用いると、セル放電電流の増加とともに、セルの放電能力が顕著に低下する。
【
図20】
図20は、1A,3A,6A,および10Aでのセルインピーダンスと放電容量と、セルNo.1(基準),3,4,5,6の1Aでの容量に対する、3A,6A,または10Aでの容量の比率をまとめたものである。1kHzでのセルインピーダンスは、抵抗およびガス発生層があると上昇する。セルの放電容量は個々のケースに依存するが、抵抗層6を有するすべてのセルのインピーダンスが大きくなるので、抵抗層6はセルインピーダンスの増大をもたらした。
【
図22】
図22は、セルNo.1(基準),3,5,6の衝撃試験時のセル温度のプロファイルを示す。スチール棒がセルに衝撃を与えると、試験したすべてのセルの電圧が直ぐに低下した。抵抗およびガス発生層を有するすべてのセルは、試験に合格したが、抵抗層6のないセルは、試験に不合格であった(発火した)。衝撃試験時の最高セル温度を、
図23にまとめた。
【
図23】
図23は、セルNo.1(基準),3,4,5,6の衝撃試験のセル最高温度をまとめたものである。
【
図24】
図24は、セルNo.6について、衝撃試験時間と、セル電圧および温度の関係を示す。衝撃開始時間は2分に設定されている。セルに衝撃が加えられると、直ぐにセル電圧はゼロに低下した。セル温度が急激に上昇したことがわかる。
【
図25】
図25は、セルNo.3(保護層なし)について、過充電時間と、セル電圧および温度の関係を示す。セル電圧は40分まで徐々に増加し、次いで僅かに低下し、約56分で急激に最大充電電圧までジャンプし、同時にセル温度は顕著に600℃を超える温度まで上昇した。接続を解除すると、セル電圧と温度は、非常に小さな値に減少し、セルは発火した。過充電電流はセルが発火するまで2Aであり、次いで1~2分間、0.2Aまで低下し、その後セルが短絡したので2Aまで戻った。セルは燃焼した。
【
図26】
図26は、セルNo.3(CaCO
3層)について、過充電時間と、セル電圧および温度の関係を示す。セル電圧は40分まで徐々に増加し、次いで約55分で急激に12Vの最大充電電圧まで増大した。セル温度は開始から約40分で80℃を超える温度まで上昇し、次いで、急激に低下した。55℃で過充電電流は顕著に減少し、試験時間の残りの時間は0.2Aを維持した。試験後、セルは、顕著に膨れていた。
【
図27】
図27は、セルNo.5(Na
2O
7Si
3+Al
2O
3層)について、過充電時間と、セル電圧および温度の関係を示す。セル電圧は40分まで徐々に増加し、次いで約75分で急激に12Vの最大充電電圧まで増大した。セルの過充電プロファイルは、CaCO
3ベースの抵抗層6のものとは大きく異なり、これはCaCO
3の分解とNa
2O
7Si
3の分解との違いを示している。セル温度は開始から約40分で75℃を超える温度まで顕著に上昇し、次いで、徐々に低下した。75分で過充電電流は顕著に減少し、試験時間の残りの時間は1Aを維持した。試験後、セルは、顕著に膨れていた。
【
図28】
図28は、セルNo.1(基準),3,4,5,6について、過充電試験(2A/12V)におけるセルの最高温度をまとめたものである。
【
図29】
図29は、セルNo.3(CaCO
3抵抗層6)のサイクル寿命を示す。セルは100サイクル後、約1.8%の損失を示したが、それは、抵抗層を含まないセルの場合(平均で、~2.5%、不図示)よりも低い値である。
【
図30】
図30は、セルNo.4(CaCO
3およびAl
2O
3抵抗層6)のサイクル寿命を示す。セルは100サイクル後、約1.3%の損失を示したが、それは、抵抗層を含まないセルの場合(平均で、~2.5%、不図示)よりも低い値である。
【
図31】
図31は、異なる動作電圧を有する充電式電池に使用される可能性のある異なるアニオンを含む化合物(ガス発生剤)の室温における、電圧に対する電流プロファイルを示す。ピーク電流とピーク電圧を
図32に示す。Cu(NO
3)
2のピーク電流は最大であり、一方CaCO
3のピーク電流は最小であった。Cu(NO
3)
2のピーク電圧は最小であり、一方CaCO
3のピーク電圧は最大であった。そのため、Cu(NO
3)
2は、リン酸鉄リチウム正極を用いるリチウムイオンセル等の比較的低い動作電圧を有するリチウムイオン電池(典型的な最大充電電圧が3.7V)に有用である。CaCO
3は、リチウムコバルト酸化物等の高電圧正極を用いる高動作電圧リチウムイオンセル(典型的な最大充電電圧が4.2V)またはリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物等の高電圧正極を用いる高動作電圧リチウムイオンセル(典型的な最大充電電圧が4.3または4.4V)に有用である。
【
図32】
図32は、異なるアニオンを含む化合物のピーク電流とピーク電圧をまとめたものである。
【
図33】
図33は、異なる動作電圧を有する充電式電池に使用される可能性のある異なるアニオンを用いた場合と用いない場合における、ポリマー(有機ガス発生剤)についての、電圧に対する電流のプロファイルを示す。PVDFは比較として用いた。ピーク電流とピーク電圧を
図34に示す。カーボポール(Carbopol)、AI-50、PVDFのピーク電流は、同様の値で、CMCが最も低い値であった。カーボポールのピーク電圧は最も低く、CMCが最も高い値であった。よって、CO
3
2-アニオンを含むカーボポールは、リン酸鉄リチウム正極を用いるリチウムイオンセル等の比較的動作電圧の低いリチウムイオン電池(典型的な最大充電電圧が3.7V)に有用である。CMCは、リチウムコバルト酸化物等の高電圧正極を用いる高動作電圧リチウムイオンセル(典型的な最大充電電圧が4.2V)またはリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物等の高電圧正極を用いる高動作電圧リチウムイオンセル(典型的な最大充電電圧が4.3または4.4V)に有用である。水は、CMC分解化合物の1つであり、100℃以上で蒸気またはガスになるだけでなく、電解質や負極グラファイト電極のインターカレートされたリチウムと反応し、フッ化水素(HF)、酸素(O
2)等のガスを発生させる。
【
図34】
図34は、異なるアニオン含む場合または含まない場合の、ピーク電流とピーク電圧をまとめたものである。
【
図35】
図35は、室温での2A/12V過充電試験における、セル温度と過充電電圧のプロファイルを示す。
【
図36】
図36は、以下の実施例9~12に記載されたセル1,3,4,5,および6について、異なる電流における、セルのインピーダンスと容量を示す。
【
図37】
図37は、温度上昇に対する、セル2(基準、抵抗層なし)の3.6V対グラファイトにおける抵抗の変化を示す。温度の上昇とともに、抵抗は約10倍減少した。
【
図38】
図38は、温度上昇に対する、セル3の4.09V対グラファイトにおける抵抗の変化を示す。温度の上昇とともに、抵抗は、わずかに減少し、そして約3倍増加し、次いで約3倍減少した。
【
図39】
図39は、1A,3A,6A,および10Aにおけるセル4のセル電圧と放電容量の関係を示す。この特定の抵抗層を有する場合、セル放電電流の増加に伴い、セル放電能力は顕著に減少した。
【
図40】
図40は、実施例9~12に記載されているセル1,3,4,5,および6についての衝撃試験の時の、セル温度プロファイルを示す。抵抗層を有するすべてのセルは試験に合格したが、抵抗層を持たないセルはすべて不合格であった(発火した)。衝撃試験の時の最高セル温度を
図41に示す。
【
図41】
図41は、実施例9~12に記載されているセル1,3,4,5,および6についての衝撃試験の時の、最大温度を示す。
【
図42】
図42は、セル3のサイクル寿命を示す。100サイクル後、セルは約2%を失い、それは抵抗層のないセルの場合と同様の値であった(平均で、~2.5%。不図示)。
【発明を実施するための形態】
【0055】
リチウムイオン電池を含む、安全で長期間動作可能な高エネルギー密度の充電式電池は、電池製造業者の目標である。安全な電池動作の一態様は、充電式電池により発生する熱を制御することである。上記のように多くの要因が、例えば、電池の破損、事故、過剰な内部電流が、充電式電池によって発生した熱を、その放熱能力を超えて増大させる。電池で発生する熱が、その放熱能力を超える場合、電池は、熱暴走、過熱、あるいは火災や激しい爆発を受けやすくなる。以下では、充電式電池の内部回路を遮断して、熱暴走を防止する、熱作動型内部電流インターラプタに関連する装置および方法について説明する。
【0056】
安全な電池動作の別の態様は、電池の充電と放電の両方における、これら充電式電池の電極での反応を制御することである。上記のように、使用時には外部回路を通して、電池の外側に電流が流れるが、イオンは、電池の一方の電極から他方の電極に移動する。場合によっては、過充電が起こり、電池内に熱暴走をもたらすことがある。以下では、内部短絡がある場合の、充電式電池の内部放電の速度を制限する内部電流リミッタに関連する装置と方法について説明する。
【0057】
安全な電池動作のさらなる態様は、これら充電式電池の放電を制御することである。上記のように、イオンは電池を通って流れることができるが、電流は外部回路を通して電池の外側を流れるようにした充電式電池において、セパレータまたはバリア層は、負極と正極を分離するために用いられる。多くの要因によりセパレータが裂けることがあり、充電式電池内で短絡が発生する場合がある。短絡は、急激な放電、場合により過熱と熱暴走をもたらす。以下では、内部短絡がある場合の、充電式電池の内部放電の速度を制限する内部電流リミッタに関連する装置と方法について説明する。
【0058】
本明細書で用いられる用語は、いくつかの特定の例示的な実施形態のみを説明することを目的とするものであり、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で用いられているように、文脈において明らかにそうでないことが示されない限り、単数形は複数形も含んでいる。用語“含む”(comprises)および/または“含む”(comprising)は、本明細書中で用いられる場合、規定された特徴、整数、工程、操作、および/または成分の存在を特定するものであるが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、操作、要素、成分および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。
【0059】
本明細書において、“第1”、“第2”等の用語は、様々な部材、要素、領域、層、および/または部品を記載するために用いられるが、これらの部材、領域、層、および/または部品はこれらの用語により限定されるべきではない。これらの用語は、1つの部材、要素、領域、および/または部品を、他の部材、要素、領域、層、および/または部品と単に区別するために用いられる。よって、例えば、以下で説明する第1の部材、要素、領域、層、および/または部品は、本開示の教示から逸脱することなく、第2の部材、要素、領域、層、および/または部品と呼ぶことができる。
【0060】
図1A-1Gは、電流リミッタとして機能する1層以上の抵抗層(
図4A-4Dの6)を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の例示的な構成を示す模式図であり、該層は、内部短絡が発生した場合に過熱から電池を保護し、温度の上昇により熱的に活性化される電流インターラプタ8と組み合わせることで、電池が過熱する場合または危険な温度に達する場合に、自己放電プロセスを不可逆的に遮断する。
図1A,1Cは、カソード集電体101、カソードエネルギー層102、セパレータ103、アノードエネルギー層104、抵抗リミッタおよび熱遮断層105、およびアノード集電体106を有する電池の構成を示している。
図1Bに示す構成は、カソード集電体101、カソードエネルギー層102、セパレータ103、第1のアノードエネルギー層107、抵抗リミッタおよび熱遮断層105、第2のアノードエネルギー層108、およびアノード集電体106を有している。
図1Dは、カソード集電体101、第1のカソードエネルギー層109、セパレータ103、第2のカソードエネルギー層110、抵抗リミッタおよび熱遮断層105、アノードエネルギー層104、アノード集電体106を有する構成を示す。
図1E-1Gは、カソード集電体101、カソードエネルギー層102、セパレータ103、アノードエネルギー層104、第1の抵抗リミッタおよび熱遮断層111、第2の抵抗リミッタおよび熱遮断層112、アノードエネルギー層104、およびアノード集電体106を有する電池の構成を示す。
【0061】
図2A,2Bは、組み合わされた電流リミッタ6および電流インターラプタ8として機能する1層以上の層を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の例示的な構成を示す模式図であり、該層は、内部短絡が発生した場合に過熱から電池を保護し、電圧の増加により電圧的に活性化される電流インターラプタ8と組み合わせることで、電池が過熱する場合に、自己放電プロセスを不可逆的に遮断する。
図2Aは、アノード集電体201、アノードエネルギー層202、セパレータ203、カソードエネルギー層204、抵抗リミッタおよび熱遮断層205、およびカソード集電体206を有する電池の構成を示している。
図2Bに示す構成は、アノード集電体201、アノードエネルギー層202、セパレータ203、第1のカソードエネルギー層207、抵抗リミッタおよび熱遮断層205、第2のカソードエネルギー層208、およびカソード集電体206を有している。
【0062】
図3A,3Bは、電流リミッタ6として機能する1層以上の抵抗層を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の例示的な構成を示す模式図であり、該層は、内部短絡が発生した場合に過熱から電池を保護し、温度の上昇により熱的に活性化される電流インターラプタ8と組み合わせることで、電池が過熱する場合または危険な温度に達する場合に、自己放電プロセスを不可逆的に遮断し、さらに、電圧の増加により活性化される電流インターラプタ8と組み合わせることで、電池が過充電される場合に、自己放電プロセスを不可逆的に遮断する。
図3Aは、アノード集電体301、アノードエネルギー層302、セパレータ303、カソードエネルギー層304、抵抗リミッタ、熱遮断および電圧遮断層305、およびカソード集電体306を有する電池の構成を示している。
図3Bに示す構成は、アノード集電体301、アノードエネルギー層302、セパレータ303、第1のカソードエネルギー層307、抵抗リミッタ、熱遮断および電圧遮断層305、第2のカソードエネルギー層308、およびカソード集電体306を有している。
【0063】
図4C,4Dは、
図1A,2A,または3Aのフィルムタイプのリチウムイオン電池を示している。さらに詳しくは、
図4A-4Dは、負荷(L)に電力を供給するために放電を受けるフィルムタイプのリチウムイオン電池を流れる電流を示す。
図4A,4Cは、無損傷の完全動作セパレータ2(短絡無し)を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の電流の流れを示す。
図4B,4Dは、電流リミッタ6として機能する抵抗層を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の電流の流れを示すものであって、セパレータ2は、導電性デンドライト10が貫通し短絡している。
図4B,4Dでは、セパレータ2を貫通するデンドライト10による内部放電を受けている。短絡のないセパレータ2を有する装置(
図4A,4C)と、短絡したセパレータ2を有する従来の装置(
図4B)では、一方の集電体4から他方の集電体に電流が流れることに留意されたい。しかし、短絡したセパレータ2と抵抗層6を有する本開示の例示的な装置では(
図4D)、電流は集電体4からそらされて大きく減少する。
図4Dでは、インターラプタ8は、トリガーされていない。
【0064】
図5C,5Dは、
図1A,2A,または3Aのフィルムタイプのリチウムイオン電池を示している。さらに詳しくは、
図5A-5Dは、スマート電源(PS)で充電されている時のフィルムタイプのリチウムイオン電池を通る電流の流れを示すものであり、異常な充電電圧を検知した時は、充電を停止する。
図5A,5Cは、無損傷の完全動作セパレータ2(短絡無し)を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の電流の流れを示す。
図5B,5Dは、導電性デンドライト10により短絡したセパレータ2を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の電流の流れを示すものである。短絡のないセパレータ2を有する装置(
図5A,5C)と、短絡したセパレータ2を有する従来の装置(
図5B)では、一方の集電体4から他方の集電体に電流が流れることに留意されたい。しかし、短絡したセパレータ2と抵抗層6を有する本開示の例示的な装置では(
図5D)、電流は集電体4からそらされて大きく減少する。
図5Dでは、インターラプタ8は、トリガーされていない。
【0065】
図6C,6Dは、
図1A,2A,または3Aのフィルムタイプのリチウムイオン電池であって、過剰の温度または電圧によりインターラプタ8がトリガーされた後のものを示している。さらに詳しくは、
図6A-6Dは、負荷(L)に電力を供給するために放電を受けるフィルムタイプのリチウムイオン電池を流れる電流を示す。
図6A,6Cは、無損傷の完全動作セパレータ2(短絡無し)を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の電流の流れを示す。
図6B,6Dは、セパレータ2を貫通する導電性デンドライト10により短絡したフィルムタイプのリチウムイオン電池の電流の流れを示すものである。短絡のないセパレータ2を有する装置(
図6A,6C)と、短絡したセパレータ2を有する従来の装置(
図6B)では、一方の集電体4から他方の集電体に電流が流れることに留意されたい。しかし、短絡したセパレータ2と、抵抗層(電流リミッタ6)および電流インターラプタ8の両方を有する本開示の例示的な装置(
図6D)では、電流は集電体4からそらされて大きく減少する。
図6Dでは、インターラプタ8は、トリガーされている。
【0066】
図7C,7Dは、
図1A,2A,または3Aのフィルムタイプのリチウムイオン電池であって、過剰の温度または電圧によりインターラプタ8がトリガーされた後のものを示している。さらに詳しくは、
図7は、スマート電源(PS)で充電されている時のフィルムタイプのリチウムイオン電池を通る電流の流れを示すものであり、異常な充電電圧を検知した時は、充電を停止する。
図7A,7Cは、無損傷の完全動作セパレータ2(短絡無し)を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の電流の流れを示す。
図7B,7Dは、導電性デンドライト10により短絡したセパレータ2により発生した短絡を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の電流の流れを示すものである。短絡のないセパレータ2を有する装置(
図7A,7C)と、短絡したセパレータ2を有する従来の装置(
図7B)では、一方の集電体4から他方の集電体に電流が流れることに留意されたい。しかし、短絡したセパレータ2と抵抗層(電流リミッタ6)を有する本開示の例示的な装置(
図7D)では、電流は集電体4からそらされて大きく減少する。
図7Dでは、インターラプタ8は、トリガーされている。
【0067】
図8C,8Dは、
図1A,2A,または3Aのフィルムタイプのリチウムイオン電池を示す。さらに詳しくは、
図8A-8Dは、負荷(L)に電力を供給するために放電を受けるフィルムタイプのリチウムイオン電池を流れる電流を示す。
図8A,8Cは、無損傷の完全動作セパレータ2(短絡無し)を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の電流の流れを示す。
図8B,8Dは、電流リミッタ6として機能する抵抗層を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の電流の流れを示すものであり、セパレータ2は、破損16により短絡している。
図8B,8Dでは、セルは、セパレータ2を貫通する裂け目16により内部放電を受けている。短絡のないセパレータ2を有する装置(
図8A,8C)と、短絡したセパレータ2を有する従来の装置(
図8B)では、一方の集電体4から他方の集電体に電流が流れることに留意されたい。しかし、短絡したセパレータ2と抵抗層6を有する本開示の例示的な装置(
図8D)では、電流は集電体4からそらされて大きく減少する。
図8Dでは、インターラプタ8は、トリガーされていない。
【0068】
図9C,9Dは、
図1A,2A,または3Aのフィルムタイプのリチウムイオン電池を示す。さらに詳しくは、
図9A-9Dは、スマート電源(PS)で充電されている時のフィルムタイプのリチウムイオン電池を通る電流の流れを示すものであり、異常な充電電圧を検知した時は、充電を停止する。
図9A,9Cは、無損傷の完全動作セパレータ2(短絡無し)を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の電流の流れを示す。
図9B,9Dは、破損部16により短絡したセパレータ2を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の電流の流れを示すものである。短絡のないセパレータ2を有する装置(
図9A,9C)と、短絡したセパレータ2を有する従来の装置(
図9B)では、一方の集電体4から他方の集電体に電流が流れることに留意されたい。しかし、短絡したセパレータ2と抵抗層6を有する本開示の例示的な装置(
図9D)では、電流は集電体4からそらされて大きく減少する。
図9Dでは、インターラプタ8は、トリガーされていない。
【0069】
図10C,10Dは、
図1A,2A,または3Aのフィルムタイプのリチウムイオン電池であって、過剰の温度または電圧によりインターラプタ8がトリガーされた後のものを示している。さらに詳しくは、
図10A-10Dは、負荷(L)に電力を供給するために放電を受けるフィルムタイプのリチウムイオン電池を流れる電流を示す。
図10A,10Cは、無損傷の完全動作セパレータ2(短絡無し)を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の電流の流れを示す。
図10B,10Dは、破損部16による短絡を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の電流の流れを示すものである。短絡のないセパレータ2を有する装置(
図10A,10C)と、短絡したセパレータ2を有する従来の装置(
図10B)では、一方の集電体4から他方の集電体に電流が流れることに留意されたい。しかし、短絡したセパレータ2と、抵抗層(電流リミッタ6)および電流インターラプタ8の両方を有する本開示の例示的な装置(
図10D)では、電流は集電体4からそらされて大きく減少する。
図10Dでは、インターラプタ8は、トリガーされている。
【0070】
図11C,11Dは、
図1A,2A,または3Aのフィルムタイプのリチウムイオン電池であって、過剰の温度または電圧によりインターラプタ8がトリガーされた後のものを示している。さらに詳しくは、
図11A-11Dは、スマート電源(PS)で充電されている時のフィルムタイプのリチウムイオン電池を通る電流の流れを示すものであり、異常な充電電圧を検知した時は、充電を停止する。
図11A,11Cは、無損傷の完全動作セパレータ2(短絡無し)を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の電流の流れを示す。
図11B,11Dは、破損部16により短絡したセパレータ2を有するフィルムタイプのリチウムイオン電池の電流の流れを示すものである。短絡のないセパレータ2を有する装置(
図11A,11C)と、短絡したセパレータ2を有する従来の装置(
図11B)では、一方の集電体4から他方の集電体に電流が流れることに留意されたい。しかし、短絡したセパレータ2と抵抗層(電流リミッタ6)を有する本開示の例示的な装置(
図11D)では、電流は集電体4からそらされて大きく減少する。
図11Dでは、インターラプタ8は、トリガーされている。
【0071】
図12Aは、バインダーで被覆されたセラミック粒子の割合が高い抵抗層6を示す。被覆されたセラミック粒子間の介在空隙は、抵抗層6を多孔質にする。
図12Bは、バインダー粒子により互いに結合されたセラミック粒子の割合が高い抵抗層6を示す。被覆されたセラミック粒子間の介在空隙は、抵抗層6を多孔質にする。
図12Cは、バインダーと共に保持されたセラミック粒子の中間的な割合(80%未満)を有する抵抗層6を示す。抵抗層6は、被覆されたセラミック粒子間の介在空隙を欠いており、非多孔質である。
【0072】
電流リミッタ
本開示の第1の態様は、改良された高エネルギー密度のHEDR電池に関するものであり、該電池は、アノードエネルギー層12と、カソードエネルギー層14と、前記アノードエネルギー層12前記カソードエネルギー層14との間に配置され内部放電を防止するセパレータ2と、前記アノードエネルギー層または前記カソードエネルギー層の一方と電子のやりとりをする少なくとも1つの集電体とを有するタイプである。前記アノードエネルギー層および前記カソードエネルギー層は、それぞれ内部抵抗率を有している。HEDR電池は、電流を放電するための好ましい温度範囲と、上限温度安全限界を有している。セパレータが破損した場合、破損したセパレータを通る内部放電の速度と、それによるジュール熱の発生を制限するための改良を用いることができる。さらに詳しくは、その改良は、セパレータが破損した場合、破損したセパレータを通る内部放電の速度を制限するために、セパレータと集電体4の1つとの間に介挿された抵抗層6を含む。抵抗層6は、好ましい温度範囲と上限温度安全限界との間の温度で一定の抵抗率を有している。抵抗層6の一定の抵抗率は、いずれかのエネルギー層の内部抵抗率よりも大きい。抵抗層6は、セパレータの破損時に、電池が上限温度安全限界を超える温度になるのを回避することを補助する。
【0073】
本開示のいくつかの実施形態は、以下のタイプの改良された高エネルギー密度の充電式電池を含む:
1.反対極性の2つの電極(12と14)は、抵抗率、安全動作温度範囲、および安全充電電圧が特徴であり、前記2つの電極は、安全充電電圧を超える過充電とそれによる短絡形成の危険に曝されて、前記2つの電極は、安全動作温度範囲を超える熱暴走の危険にさらされている。
2.2つの電極を分離し、それらの間の内部放電を防止するセパレータ2であり、前記セパレータは、短絡の形成の危険に曝され、前記短絡は前記2つの電極間の急激な内部放電を潜在的に許容するものであり、前記2つの電極間の前記急激な内部放電は、それらからのジュール熱の急激な生成を潜在的に許容し、前記ジュール熱の急激な生成は、潜在的に熱暴走を許容するものである。
3.電子伝達のために集電体4を用いる少なくとも1つの電極。
4.電極の1つとそれに対応する集電体との間の電気的結合を形成する電流リミッタ6であり、前記電流リミッタは、電流を抵抗的に阻止する抵抗率を有し、セパレータが短絡を形成する場合には、結合する電極集電体から電流をそらし、および前記2つの電極間の内部放電の速度を低減する。
5.電流インターラプタ8であって、係合構成と、非係合構成と、前記係合構成から前記非係合構成へと前記電流インターラプタを移行させるガス発生要素とを有し、前記ガス発生要素は、ガスを発生させるトリガーを有し、前記トリガーは、温度トリガーと電圧トリガーから成る群から選択され、前記温度トリガーは安全動作温度範囲を超える温度で作動し、前記電圧トリガーは安全充電電圧を超える電圧で作動し、前記係合構成では、前記電流インターラプタは、積層結合により、前記電極の1つとそれに対応する集電体とを電気的に結合する一方、非係合構成では、前記積層結合が剥離するとともに、前記電流インターラプタは、前記電極とそれに対応する集電体との間の電気的結合を遮断する非導電性ギャップを形成し、前記電流インターラプタは、トリガーに反応する前記ガス発生要素の動作を開始させることにより前記係合構成から前記非係合構成に移行させ、発生した前記ガスは、前記電極とそれに対応する集電体との間の電気的結合を遮断するために、前記積層結合を剥離し、それにより、前記電流リミッタと前記電流インターラプタとを組み合わせて、セパレータの短絡、電極の過充電、および電極の過熱に起因する熱暴走の危険を減少させる。
【0074】
いくつかの実施形態では、電流インターラプタは温度により動作を開始する。
【0075】
いくつかの実施形態では、電流インターラプタは、温度により動作を開始する単一のガス発生要素を含む層を有する。
【0076】
いくつかの実施形態では、電流インターラプタは電圧により動作を開始する。
【0077】
いくつかの実施形態では、電流インターラプタは、電圧により動作を開始する単一のガス発生要素を含む層を有する。
【0078】
いくつかの実施形態では、電流インターラプタは温度と電圧により動作を開始する。
【0079】
いくつかの実施形態では、電流インターラプタは、温度と電圧により動作を開始する単一のガス発生要素を含む層を有する。
【0080】
いくつかの実施形態では、電流インターラプタは、2つのガス発生要素を有し、一方は温度により動作を開始し、他方は電圧により動作を開始する。
【0081】
いくつかの実施形態では、電流インターラプタは、特定の温度または電圧でガスを発生する1以上の無機ガス発生化合物を含む層を有する。
【0082】
いくつかの実施形態では、前記無機ガス発生化合物は、
図32に開示されているように、CaCO
3,La
2(CO
3)
3,Na
2SO
3,ZnCO
3Zn(OH)
2,CuCO
3Cu(OH)
2,およびCu(NO
3)
2からなる群から選択される。
【0083】
いくつかの実施形態では、電流インターラプタは、特定の温度または電圧でガスを発生する1以上の有機ガス発生化合物を含む層を有する。
【0084】
いくつかの実施形態では、前記有機ガス発生化合物は、
図34に開示されているように、カーボポール、トーロン、AI-50、CMC、およびPVDFからなる群から選択される。
【0085】
いくつかの実施形態では、電流インターラプタは、特定の温度または電圧でガスを発生する無機および有機のガス発生化合物を含む層を有する。
【0086】
改良された高エネルギー密度の充電式電池のいくつかの実施形態では、
図1A,1C,および2Aに開示されているように、電流リミッタと電流インターラプタは、同一の電極と集電体との間に積層により介挿された保護層の中に同時に組み込まれる。
【0087】
改良された高エネルギー密度の充電式電池のいくつかの実施形態では、
図3Aに開示されているように、電流リミッタと、温度と電圧の両方で動作を開始する電流インターラプタは、同一の電極と集電体との間に積層により介挿された保護層の中に同時に組み込まれる。
【0088】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、第1の集電体と第2の集電体の2つの集電体と、第1の電極と第2の電極の2つの電極を含むタイプであり、改良は以下の特徴を含む:
図1Eに開示されているように、
電流リミッタと電流インターラプタは、第1の電極と第1の集電体との間に積層により介挿された第1の保護層に同時に組み込まれ、および
電流リミッタと電流インターラプタは、第2の電極と第2の集電体との間に積層により介挿された第2の保護層に同時に組み込まれる。
【0089】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、第1の集電体と第2の集電体の2つの集電体と、第1の電極と第2の電極の2つの電極を含むタイプであり、改良は以下の特徴を含む:
図1Fに開示されているように、
電流リミッタと電流インターラプタは、第1の電極と第1の集電体との間に積層により介挿された第1の保護層に同時に組み込まれ、および
電流リミッタと電流インターラプタは、第2の電極とセパレータとの間に積層により介挿された第2の保護層に同時に組み込まれている。
【0090】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、第1の集電体と第2の集電体の2つの集電体と、第1の電極と第2の電極の2つの電極を含むタイプであり、改良は以下の特徴を含む:
図1Gに開示されているように、
電流リミッタと電流インターラプタは、第1の電極とセパレータとの間に積層により介挿された第1の保護層に同時に組み込まれ、および
電流リミッタと電流インターラプタは、第2の電極と第2の集電体との間に積層により介挿された第2の保護層に同時に組み込まれている。
【0091】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、第1の集電体と第2の集電体の2つの集電体と、第1の電極と第2の電極の2つの電極とを含み、第1の電極が第1の部分と第2の部分を含み、第1の電極の第2の部分が、第1の電極の第1の部分と第1の集電体との間に介挿されているタイプであり、改良は以下の特徴を含む:
1.電流リミッタは、第1の電極の第1の部分と第1の電極の第2の部分との間に積層され;および
2.電流インターラプタは、第1の電極の第2の部分と第1の集電体との間に積層されている。
【0092】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、第1の集電体と第2の集電体の2つの集電体と、第1の電極と第2の電極の2つの電極とを含み、第1の電極が第1の部分と第2の部分を含み、第1の電極の第2の部分が、第1の電極の第1の部分と第1の集電体との間に介挿されているタイプであり、改良はさらに以下の特徴を含む:
図1B,2Bに開示されているように、電流リミッタと電流インターラプタは、第1の電極の第1の部分と第2の部分との間に積層により介挿された保護層に同時に組み込まれている。
【0093】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、第1の集電体と第2の集電体の2つの集電体と、第1の電極と第2の電極の2つの電極とを含み、第1の電極が第1の部分と第2の部分を含み、第1の電極の第2の部分が、第1の電極の第1の部分と第1の集電体との間に介挿されているタイプであり、改良はさらに以下の特徴を含む:
図3Bに開示されているように、電流リミッタと、温度と電圧の両方により動作を開始する電流インターラプタは、第1の電極の第1の部分と第2の部分との間に積層により介挿された保護層に同時に組み込まれている。
【0094】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、第1の集電体と第2の集電体の2つの集電体と、第1の電極と第2の電極の2つの電極とを含み、第2の電極が第1の部分と第2の部分を含み、第2の電極の第1の部分が、第2の電極の第2の部分と第2の集電体との間に介挿されているタイプであり、改良は以下の特徴を含む:
1.電流リミッタは、第2の電極の第1の部分と第2の電極の第2の部分との間に積層され;および
2.電流インターラプタは、第2の電極の第2の部分と第2の集電体との間に積層されている。
【0095】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、第1の集電体と第2の集電体の2つの集電体と、第1の電極と第2の電極の2つの電極とを含み、第2の電極が第1の部分と第2の部分を含み、第2の電極の第1の部分が、第2の電極の第2の部分と第2の集電体との間に介挿されているタイプであり、改良は以下の特徴を含む:
1.電流リミッタは、第2の電極の第1の部分と第2の電極の第2の部分との間に積層され;および
2.電流インターラプタは、第2の電極の第2の部分と第2の集電体との間に積層されている。
【0096】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、第1の集電体と第2の集電体の2つの集電体と、第1の電極と第2の電極の2つの電極とを含み、第1の電極が第1の部分と第2の部分を含み、第2の電極の第1の部分が、第2の電極の第2の部分と第2の集電体との間に介挿されているタイプであり、改良はさらに以下の特徴を含む:
図1Dに開示されているように、電流リミッタと電流インターラプタは、第2の電極の第1の部分と第2の部分との間に積層により介挿された保護層に同時に組み込まれている。
【0097】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、第1の集電体と第2の集電体の2つの集電体と、第1の電極と第2の電極の2つの電極とを含み、第1の電極が第1の部分と第2の部分を含み、第1の電極の第2の部分が、第1の電極の第1の部分と第1の集電体との間に介挿されているタイプであり、改良はさらに以下の特徴を含む:
1.電流リミッタは、第1の電極の第2の部分と第1の集電体との間に積層され;および
2.電流インターラプタは、第1の電極の第1の部分と第1の電極の第2の部分との間に積層されている。
【0098】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、第1の集電体と第2の集電体の2つの集電体と、第1の電極と第2の電極の2つの電極とを含むタイプであり、改良はさらに以下の特徴を含む:
1.電流リミッタは、第1の電極と第1の集電体との間に積層され;および
2.電流インターラプタは、第2の電極と第2の集電体との間に積層されている。
【0099】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、各電極が安全動作のための温度範囲と、内部抵抗率を有するタイプであり、改良はさらに以下の特徴を含む:安全動作のための温度範囲内で、電流リミッタは、該電流リミッタがともに積層される電極の内部抵抗率よりも大きい抵抗率を有する。
【0100】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、改良がさらに以下の特徴を含む:電流リミッタは、安全動作のための温度範囲内の温度で、抵抗率移行スイッチを欠いている。
【0101】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、各電極が標準動作のための温度範囲を有するタイプであり、改良はさらに以下の特徴を含む:電流リミッタは、標準動作のための温度範囲内で、電極の内部抵抗率より低い抵抗率を有し、標準動作のための温度範囲を超える温度では電極の内部抵抗率よりも大きい抵抗率を有する。
【0102】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、各電極が標準動作のための温度範囲を有するタイプであり、改良はさらに以下の特徴を含む:電流インターラプタは、標準動作のための温度範囲を超える温度で作動する。
【0103】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、各電極が標準動作のための温度範囲を有するタイプであり、改良はさらに以下の特徴を含む:電流インターラプタは、標準動作のための温度範囲を超える温度であって、安全動作のための温度範囲内の温度で作動する。
【0104】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、各電極が安全動作のための温度範囲内で内部抵抗率を有するタイプであり、改良はさらに以下の特徴を含む:電流リミッタは、安全動作のための温度範囲内で、該電流リミッタとともに積層される電極の内部抵抗率よりも大きい抵抗率を有する。
【0105】
改良された高エネルギー密度の充電式電池のいくつかの実施形態では、改良はさらに以下の特徴を含むものであって、電流リミッタと電流インターラプタは、同一の電極と集電体との間に積層により介挿された保護層の中に同時に組み入れられている。
【0106】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、各電極が安全動作のための電圧範囲を有するタイプであり、改良はさらに以下の特徴を含む:電流インターラプタは、標準動作のための電圧範囲を超える電圧で作動する。
【0107】
いくつかの実施形態では、改良された高エネルギー密度の充電式電池は、各電極が標準動作のための電圧範囲と安全動作のための電圧範囲とを有するタイプであり、改良はさらに以下の特徴を含む:電流インターラプタは、標準動作のための電圧範囲を超える電圧であって、安全動作のための電圧範囲内の電圧で作動する。
【0108】
改良された高エネルギー密度の充電式電池のいくつかの実施形態では、改良はさらに以下の特徴を含む:電流リミッタと電流インターラプタは、同一の電極と集電体との間に積層により介挿された保護層の中に同時に組み込まれている。
【0109】
本開示の別の実施形態は、改良された高エネルギー密度の充電式(HEDR)電池を含み、該充電式電池は、反対極性の2つの電極と、前記2つの電極を分離するセパレータと、前記電極の1つと電気的に結合する少なくとも1つの集電体とを含み、前記セパレータは前記2つの電極間の内部放電を防止し、前記セパレータの破損は前記2つの電極間の内部放電を潜在的にもたらすものであり(
図6A-6Bと
図7A-7Bに示すように)、前記内部放電は潜在的な危険としてジュール熱の発生をもたらすものであり、前記の改良は以下のものを含む:
1.熱作動型電流インターラプタと電圧作動型電流インターラプタであって、熱作動型電流インターラプタは、前記集電体の1つと前記電極の1つとの間に積層法により積層することができ、該熱作動型電流インターラプタは、非作動時には、前記集電体とともに積層されている電極に前記集電体を電気的に結合する一方、作動時には、前記集電体とともに積層されている電極から前記集電体を電気的に分離するために、非導電性ギャップを形成して前記集電体から剥離するものであって(
図6C-6Dと
図7C-7Dに示す)、電気的分離は、セパレータが破損した場合には、2つの電極間の内部放電の速度を遅くする;
2.電圧作動型電流インターラプタは、前記集電体の1つと前記電極の1つとの間に積層法により積層することができ、該電圧作動型電流インターラプタは、非作動時には、前記集電体とともに積層されている電極に前記集電体を電気的に結合する一方、作動時には、前記集電体とともに積層されている電極から前記集電体を電気的に分離するために、非導電性ギャップを形成して前記集電体から剥離するものであって、電気的分離は、セパレータが破損した場合には、2つの電極間の内部放電の速度を遅くする(
図6C-6Dと
図7C-7Dに示す);
それにより、セパレータの破損の際、熱作動型電流インターラプタまたは電圧作動型電流インターラプタのいずれかの作動により、潜在的な危険を低減するために、ジュール熱の発生を遅くすることができる。
【0110】
本開示のいくつかの実施形態は、セパレータの破損による内部放電を受ける高エネルギー密度の充電式電池内部の熱暴走を回避する方法を含み、該方法は、電極と集電体との間に介挿された遮断層内に感熱性ガス発生材料からガスを発生さセルことにより、電池内の電極を集電体から剥離することを含み、前記の剥離は、内部放電の速度を遅くするために、集電体から電極を電気的に分離する。
【0111】
本開示のいくつかの実施形態は、電圧過充電によるセパレータの破損を被る危険性のある(
図7A-7Bに示す)高エネルギー密度の充電式電池内部の熱暴走を回避する方法を含み、該方法は、電極と集電体との間に介挿された遮断層内に電圧感応性ガス発生材料からガスを発生させることにより、電池内の電極を集電体から剥離することを含み、前記の剥離は、電圧過充電を遮断するために、集電体から電極を電気的に分離する(
図7C-7Dに示す)。
【0112】
以下の略号は、以下の意味を有する。
カーボポール(Carbopol)(登録商標)-934=ルブリゾール・アドバンスト・マテリアル社から供給される架橋ポリアクリレートポリマー
CMC=カルボキシメチルセルロース
CMC-DN-800H=カルボキシメチル基のナトリウム塩がアンモニウムで置換されているCMC(ダイセルファインケミカル社から供給される)
MCMB=メソカーボンマイクロビーズ
NMC=ニッケル、マンガン、及びコバルト
NMP=N-メチルピロリドン
PTC=正の温度係数
PVDF=ポリビニリデンフルオライド
SBR=スチレンブタジエンゴム
スーパー(Super)(登録商標)P=ティムカル社から供給される導電性カーボンブラック
トーロン(Torlon)(登録商標)AI-50=トーロン4000TFの水溶性誘導体
トーロン(Torlon)(登録商標)4000TF=純樹脂ポリアミドーイミド(PAI)部粉末
【0113】
抵抗層と電極活性層の作製方法は、電池セルの組立とともに以下に記載する。
【0114】
抵抗層(第1層)の一般的な作製工程を以下に示す:
i.適切な溶媒にバインダーを溶解する。
ii.バインダー溶液に導電性添加剤とセラミック粉末を添加する。
iii.工程iiで調製したスラリーを、金属箔の表面に塗布し、次いで乾燥して前記金属箔の表面に抵抗層を形成する。
【0115】
電極作製(第1層の上面に)の一般的な手順を以下に示す:
i.適切な溶媒にバインダーを溶解する。
ii.バインダー溶液に導電性添加剤とセラミック粉末を添加する。
iii.工程vで調製したスラリーの中にカソード材料またはアノード材料を添加し、混合して電極塗布用のスラリーを形成する。
iv.工程viで調製した電極スラリーで、工程iiiで得られた層の表面に塗布する。
v.電極を目的の厚さに圧縮する。
【0116】
セルの組立の一般的な工程は以下の通りである:
i.正極は125℃で10時間、負極は140℃で10時間乾燥する。
ii.電極タブを有する個片に電極を打ち抜く。
iii.中間層としてのセパレータとともに正極と負極を積層する。
iv.工程xiで作製したゼリーロールをアルミニウム製の複合袋の中に入れる。
【0117】
本明細書に記載の電池セルについて、
図21に示すような衝撃試験を行うための一般的な手順を以下に示す。
i.セルを2A,4.2Vで3時間充電する。
ii.セルをコンクリート等の硬い平面の上に置く。
iii.高温用テープでセルの表面に熱電対を取り付け、正負のタブを電圧計に接続する。
iv.スチール棒(直径が15.8mm±0.1mm、長さが約70mm)を、その側面がセルの中心を横切るように置く。
v.セルの上の610±25mmの高さに、9.1±0.46Kgのスチールブロック(直径が75mm、高さが290mm)を吊り下げる。
vi.収容管(内径8cm)を用いてスチールブロックを保護し、管の中でスチールブロックを離し、セルの表面上に寝かせているスチール棒の上に自由落下させて、温度を記録しながら、セパレータを破損させる。
vii.セルの温度が室温近くまで安定するように、スチール棒とスチールブロックをセルの表面に放置する。
viii.試験終了。
【0118】
過充電試験を行うための一般的な工程を以下に示す:
i.セルを2A,4.2Vで3時間充電する。
ii.充電したセルを室温オーブンの中に置く。
iii.セルを電源に(ヒューレット・パッカード社製)に接続する。
iv.電源の電圧と電流を12Vと2Aに設定する。
v.電源のスイッチを入れ、温度と電圧を記録しながら過充電試験を行う。
vi.セルの温度が低下し、室温付近で安定した時に試験を終了する。
【0119】
抵抗測定試験を行うための一般的な工程を以下に示す:
i.タブを備えた1平方の銅箔(4.2×2.8cm)を金属板(~12×~8cm)の上に置く。次に、感熱テープを小さく切断し、1平方の銅箔を注意して覆う。
ii.銅箔よりも少し大きくなるように、電極を小さく切断する。電極を銅箔の上に置く。
iii.タブを備えた別の銅箔(4.2×2.8cm)を電極の表面に置き、それを用いて工程i-iiを繰り返す。
iv.この時点で、それらをまとめ、高温テープで覆い、そして気泡を除く。
v.両方のタブから、V字形状の金属片を切り取る。
vi.完成したストリップに金属クランプを取り付け、ネジで締め付ける。ネジがきつく締まっていることを確認する。
vii.タブをバッテリー・ハイテスタ(Battery HiTester)(日置USA製)のコネクタに取り付け、測定用の良好なサンプルが作製されたことを確認するために、抵抗の測定を行う。
viii.金属クランプをオーブンの中に置き、V字形状のタブをコネクタに接続し、ネジを締める。金属クランプの上に熱電対をテープで固定する。
ix.オーブンからの配線をバッテリー・ハイテスタに取り付ける。正極配線と負極配線を間違えないようにすること。
x.オーブンを閉め、4℃/分で200℃まで昇温させ、試験を開始する。15秒毎にデータを記録する。
xi.金属クランプとオーブンの温度が200℃を僅かに超えた時にデータに記録を停止する。
xii.オーブンとバッテリー・ハイテスタのスイッチを切る。
xiii.試験終了。
【0120】
サイクル寿命試験手順を行うための一般的な工程を以下に示す:
i.5分間休止する。
ii.1Aで2.8Vまで放電する。
iii.20分間休止する。
iv.0.7Aで4.2Vまで270分間充電する。
v.10分間休止する。
vi.0.7Aで2.8Vまで放電する。
vii.10分間休止する。
viii.工程iii~viiを100回繰り返す。
ix.試験終了。
【0121】
抵抗層を有する電池セルについて、1A,3A,6A,および10Aでの放電試験の一般的な工程を以下に示す:
i.5分間休止する。
ii.1Aで2.8Vまで放電する。
iii.20分間休止する。
iv.0.7Aで4.2Vまで270分間充電する。
v.10分間休止する。
vi.1Aで2.8Vまで放電する。
vii.10分間休止する。
viii.0.7Aで4.2Vまで270分間充電する。
ix.10分間休止する。
x.3Aで2.8Vまで放電する。
xi.0.7Aで4.2Vまで270分間充電する。
xii.10分間休止する。
xiii.6Aで2.8Vまで放電する。
xiv.0.7Aで4.2Vまで270分間充電する。
xv.10分間休止する。
xvi.10Aで2.8Vまで放電する。
xvii.10分間休止する。
xviii.試験終了。
【0122】
定義
特に指定しない限り、本明細書で用いられる全ての技術的用語および科学的用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有している。本明細書に用語に関し、複数の定義が存在する場合、特に指定しない限り、本セクションの定義が優先する。
【0123】
本明細書で用いられている“高エネルギー密度の充電式(HEDR)電池”は、単位重量当り約50W-hr/kg以上のオーダーの比較的大量の電気エネルギーを貯蔵することができる電池であって、再使用のために設計されている電池を意味し、繰り返し使用後の再充電が可能である。HEDRの限定されない例には、金属イオン電池や金属電池が含まれる。
【0124】
本明細書で用いられている“金属イオン電池”は、放電時には、負極から正極に金属イオンが移動し、充電時にはその逆に移動する、あらゆる充電可能な電池のタイプを意味している。金属イオン電池の限定されない例には、リチウムイオン、アルミニウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、およびその他が、含まれる。
【0125】
本明細書で用いられている“金属イオン電池”は、アノードが金属または金属合金である、あらゆる充電可能な電池のタイプを意味している。アノードは、固体でも液体でもよい。放電時には、負極から正極に金属イオンが移動し、充電時にはその逆に移動する。金属電池の限定されない例には、M-S,M-NiCl2,M-V2O5,M-Ag2VP2O8,M-TiS2,M-TiO2,M-MnO2,M-Mo3S4,M-MoS6Se2,M-MoS2,M-MgCoSiO4,M-Mg1.03Mn0.97SiO4,およびその他が含まれ、M=Li,Na、K、Mg、AlまたはZnである。
【0126】
本明細書で用いられている“リチウムイオン電池”は、放電時には、負極から正極にリチウムイオンが移動し、充電時にはその逆に移動する、あらゆる充電可能な電池のタイプを意味している。リチウムイオン電池の限定されない例には、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リン酸鉄リチウム(LiFeO4)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO4)、(LiMnO3)x(LiMO2)(M=Ni,Co,Mn)等のリチウム過剰層状酸化物、オリビン、LiMSiO4(M=鉄、コバルト、ニッケルおよびバナジウム)、リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNiMnCoO2)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNiCoAlO2)、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)、二チタン酸リチウム、リチウム/グラフェン、リチウム/グラフェン酸化物被覆硫黄、リチウム-硫黄、リチウム-プルプリン、およびその他が含まれる。リチウムイオン電池は、シリコン-カーボンナノ複合体アノード等を含む種々のアノードも備えることができる。リチウムイオン電池は、小さな円筒状(端子なしの固体)、大きな円筒状(大きなネジ端子付き固体)、角柱状(大きなネジ端子付き半硬質プラスチックケース)、およびパウチ(ソフトなフラット体)等を含む種々の形状をとることができる。リチウムイオン電池は、ソフト包装またはパウチの中に入れてもよい。これら電池の電解質は、液体電解質(カーボネート系またはイオン系等)、固体電解質、ポリマー系電解質またはこれら電解質の混合物でもよい。
【0127】
本明細書で用いられている“アルミニウムイオン電池”は、放電時には、負極から正極にアルミニウムイオンが移動し、充電時にはその逆に移動する、あらゆる充電可能な電池のタイプを意味している。アルミニウムイオン電池の限定されない例には、AlnM2(XO4)3、ここでX=Si,P,S,Mo,As等、およびM=Fe,Ca,Mg,V,Cr等であり、およびAlx(V4O8),AlxNiS2,AlxFeS2,AlxVS2,AlxWS2等のアルミニウム遷移金属酸化物(AlxMO2、ここでM=Fe,Mn,Ni,Mo,Co,Cr,Ti,V等)が含まれる。
【0128】
本明細書で用いられている“カリウムイオン電池”は、放電時には、負極から正極にカリウムイオンが移動し、充電時にはその逆に移動する、あらゆる充電可能な電池のタイプを意味している。カリウムイオン電池の限定されない例には、KnM2(XO4)3、ここでX=Si,P,S,Mo,As等、およびM=Fe,Ca,Mg,V,Cr等であり、およびカリウム遷移金属酸化物(KMO2、ここでM=Fe,Mn,Ni,Mo,Co,Cr,Ti,V等)が含まれる。
【0129】
本明細書で用いられている“ナトリウムイオン電池”は、放電時には、負極から正極にナトリウムイオンが移動し、充電時にはその逆に移動する、あらゆる充電可能な電池のタイプを意味している。ナトリウムイオン電池の限定されない例には、NanM2(XO4)3、ここでX=Si,P,S,Mo,As等、およびM=Fe,Ca,Mg,V,Cr等;NaV1-xCrxPO4F、NaVPO4F、Na4Fe3(PO4)2(P2O7)、Na2FePO4F、Na2FeP2O7、Na2/3[Fe1/2Mn1/2]O2、Na(Ni1/3Fe1/3Mn1/3)O2、NaTiS2、NaFeF3;Na2/3[Fe1/2Mn1/2]O2、Na(Ni1/3Fe1/3Mn1/3)O2、NaxMo2O4、NaFeO2、Na0.7CoO2、NaCrO2、NaMnO2、Na0.44MnO2、Na0.7MnO2、Na0.7MnO2.25、Na2/3Mn2/3Ni1/3O2、Na0.61Ti0.48Mn0.52O2等のナトリウム遷移金属酸化物(NaMO2、ここでM=Fe,Mn,Ni,Mo,Co,Cr,Ti,V等);Na1+xV3O8、NaxV2O5、およびNaxVO2(x=0.7,1)等のバナジウム酸化物が含まれる。
【0130】
本明細書で用いられている“マグネシウムイオン電池”は、放電時には、負極から正極にマグネシウムイオンが移動し、充電時にはその逆に移動する、あらゆる充電可能な電池のタイプを意味している。マグネシウムイオン電池の限定されない例には、MgnM2(XO4)3、ここでX=Si,P,S,Mo,As等、およびM=Fe,Ca,Mg,V,Cr等;マグネシウム遷移金属酸化物(MgMO2、ここでM=Fe,Mn,Ni,Mo,Co,Cr,Ti,V等)が含まれる。
【0131】
本明細書で用いられている“シリコンイオン電池”は、放電時には、負極から正極にシリコンイオンが移動し、充電時にはその逆に移動する、あらゆる充電可能な電池のタイプを意味している。シリコンイオン電池の限定されない例には、SinM2(XO4)3、ここでX=Si,P,S,Mo,As等、およびM=Fe,Ca,Mg,V,Cr等;シリコン遷移金属酸化物(SiMO2、ここでM=Fe,Mn,Ni,Mo,Co,Cr,Ti,V等)が含まれる。
【0132】
本明細書で用いられている“バインダー”は、機械的接着性と、大きな体積変化に対する無限の許容性を提供するあらゆる材料を意味する。バインダーの限定されない例には、スチレンブタジエンゴム(SBR)系バインダー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系バインダー、カルボキシメチルセルロース(CMC)系バインダー、ポリアクリル酸(PAA)系バインダー、ポリビニル酸(PVA)系バインダー、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)系バインダー等が含まれる。
【0133】
本明細書で用いられている“導電性添加剤”は、材料の導電性を増加させるあらゆる材料を意味する。導電性添加剤の限定されない例には、カーボンブラック添加剤、グラファイト非水系超微細カーボン(UFC)懸濁液、カーボンナノチューブ複合体(CNT)添加剤(単層および多層)、カーボンナノオニオン(CNO)添加剤、グラフェン系添加剤、還元グラフェン酸化物(rGO)、導電性アセチレンブラック(AB)、導電性ポリ(3-メチルチオフェン)(PMT)、繊維状ニッケル粉末添加剤、アルミニウム粉末、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物等の電気化学的に活性な酸化物が含まれる。
【0134】
本明細書で用いられている“金属箔”は、高電圧の下でも安定なあらゆる金属箔を意味する。金属箔の限定されない例には、アルミニウム箔、銅箔、チタン箔、スチール箔、ナノカーボンペーパー、グラフェンペーパー、炭素繊維シート等が含まれる。
【0135】
本明細書で用いられている“セラミック粉末”は、焼成されていない、あらゆる電気絶縁体または導電体を意味する。セラミック粉末の限定されない例には、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ジルコニウムバリウム、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)、チタン酸カルシウムマグネシウム、チタン酸亜鉛(ZnTiO3)、チタン酸ランタン(LaTiO3)、チタン酸ネオジム(Nd2Ti2O7)、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、ニオブ酸鉛マグネシウム、ニオブ酸鉛亜鉛、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、スズ酸バリウム(BaSnO3)、スズ酸カルシウム(CaSnO3)、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ケイ酸ナトリウム(NaSiO3)、ケイ酸マグネシウム(MaSiO3)、タンタル酸バリウム(BaTa2O6)、酸化ニオブ、チタン酸ジルコニウムスズ、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化チタン(TiO2)等が含まれる。
【0136】
本明細書で用いられている“ガス発生材料”は、高温または高電圧で分解してガスを発生する材料であって、ガス発生材料から直接的にガスを発生させるか、電池内に含まれる別の材料(例えば、電解質と電極)とガス発生材料が反応して生成する分解生成物の反応により間接的にガスを発生するあらゆる材料を意味する。ガス発生材料の限定されない例には、Mn(CO3)m、Mn(SO3)m、Mn(NO3)m、1Mn
2Mn(CO3)m、NaSiO3
*H2O、CuCO3Cu(OH)2等の無機カーボネートや、ポリメタクリル酸塩[-CH2-C(CH3)(COOM)-]pやポリアクリル酸塩[-CH2-CH(COOM)-]p等の有機カーボネート等が含まれ、M、1M、2Mは、Ba,Ca,Cd,Co,Cu,Fe,K,Li,Mg,Mn,Na,Ni,Pb,Sr,およびZnからなる群から独立に選択され、nは1~3、mは1~4である。いくつかの実施形態では、Mは、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、および4級アンモニウムイオンからなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、ガス発生材料は分解して液体(例えば水)を生成してもよい。液体は、電池内に含まれる別の材料と反応してガスを形成し、このガスは電極を剥離さセル(例えば、水は電解質[LiFP6]と反応して、負極に気体のHFとリチウムを形成し、水素ガス(H2)を発生させる。セルの温度が液体の気化温度を超える場合、液体が相変化してガスを形成することがあり、このガスも電極を剥離させる。
【0137】
サンク・メタル社製の自動塗工装置(コンパクトコーター、モデルNo.3R250W-2D)により、金属箔の上に層を塗布した。次に、Beijing Sevenstar Huachuang Electronics社製のカレンダー装置(モデルNo.X15-300-1-DZ)を用いて、層を所望の厚さに圧縮した。
【実施例】
【0138】
以下の実施例を用いて本開示をより詳細に説明するが、本開示は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0139】
実施例1
基準電極、正極および負極の作製、並びに抵抗測定、50℃における放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命の評価に用いる完成セルNo.1の作製について以下に記載する。
【0140】
A)正極作製の一例としてのPOS1Aの作製
i)PVDF(21.6g)をNMP(250g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(18g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2(NMC)(560.4g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)粘度調整のためにいくらかのNMPを添加した;
v)約80℃に設定した第1加熱領域と約130℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約15.55mg/cm2であった。次に正極層を圧縮して、約117μmの厚さにした。作製した電極は、標準黒鉛電極に対してゼロ電圧とみなし、温度との関係を調べる、0Vでのインピーダンス測定に用い、セル組立のために乾燥した。
【0141】
B)負極作製の一例としてのNEG2Aの作製
i)CMC(5.2g)を脱イオン水(~300g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(8.4g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)負極用活性黒鉛(JFEケミカル社、黒鉛化メソフェーズ・カーボン・マイクロ・ビード(MCMB)と合成黒鉛(TIMCAL))(全体で378.4g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)SBR(固形分50%、水懸濁液)(16.8g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで5分間混合した;
v)滑らかな塗布のために、粘度を調整した;
vi)約70℃に設定した第1加熱領域と約100℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ9μmの銅箔の上に塗布し、水を蒸発させた。最終的な固体担持量は約9.14mg/cm2であった。次に負極層を圧縮して、約117μmの厚さにした。作製した負極は、セル組立のために乾燥した。
【0142】
C)評価のためのセルの作製
i)電極を打ち抜き、電極タブを有する個片を作製した;
ii)正極は125℃で10時間乾燥し、負極は140℃で10時間乾燥した;
iii)セパレータを中間層として正極と負極を積層した;
iv)工程iiiで作製したゼリーロールを、アルミニウム複合バッグの中に平らに寝かせた;
v)工程ivからのバッグを真空オーブン中、70℃で乾燥した;
vi)工程vからのバッグに、LiPF6を含む有機カーボネート系電解質を充填した;
vii)工程viからのバッグを密封した;
viii)16時間静置した;
ix)セルをC/20のレートで4.2Vまで5時間充電し、次いで0.5Cのレートで4.2Vまで2時間充電し、次いで20分間休止し、次いで、0.5Cのレートで2.8Vまで放電した。真空下、セルに穴を開けてガスを放出させ、その後、再密封した。作製したセルを評価と、50℃での放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命試験等の他の試験に用いた。
【0143】
図15は、3.6Vのセルを分解して(autopsying)回収した正極について、温度上昇に対する抵抗の変化を示す。抵抗は約10倍減少した。
図18は、放電電流1,3,6,10Aにおける放電容量を示している。
図20は、1kHzにおけるセルインピーダンスと、電流1A,3A,6A,10Aでの容量と、1Aでの容量に対する3,6,10Aでの容量の比率を示している。
図22は、衝撃試験の時のセルの温度プロファイルを示している。
図23は、衝撃試験におけるセルの最高温度を示している。セルは、衝撃試験の時に発火した。
図25は、12V/2Aでの過充電試験の時の、セルの電圧と温度のプロファイルを示している。セルは、過充電試験の時に発火した(
図28)。
【0144】
実施例2
CaCO3系ガス発生剤、抵抗層、正極および負極の作製、並びに抵抗測定、50℃における放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命の評価に用いる完成セルNo.3の作製について以下に記載する。
【0145】
A)ガス発生剤と抵抗層(第1層)作製の一例としての正極POS3B
i)トーロン(登録商標)4000TF(0.8g)をNMP(10g)に溶解した;
ii)PVDF(4.8g)をNMP(~70g)に溶解した;
iii)工程iとiiで調製した溶液を混合し、次いでカーボンブラック(0.32g)を添加し、6500rpmで10分間混合した;
iv)ナノCaCO3粉末(34.08g)を、工程iiiで調製した溶液に添加し、6500rpmで20分間混合し、流動性スラリーを作製した;
v)約135℃に設定した第1加熱領域と約165℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約1mg/cm2であった。
【0146】
B)正極作製の一例としてのPOS3Aの作製(第2層)
i)PVDF(21.6g)をNMP(250g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(18g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NMC)(560.4g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)粘度調整のためにいくらかのNMPを添加した;
v)約85℃に設定した第1加熱領域と約135℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーをPOS3B(実施例2A)の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約19.4mg/cm2であった。次に正極層を圧縮して、約153μmの厚さにした。作製した電極は、標準黒鉛電極に対してゼロ電圧とみなし、温度との関係を調べる、0Vでのインピーダンス測定に用いた。
【0147】
C)負極作製の一例としてのNEG3Aの作製
i)CMC(13g)を脱イオン水(~1000g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(20g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)負極用活性黒鉛(JFEケミカル社、黒鉛化メソフェーズ・カーボン・マイクロ・ビード(MCMB)と合成黒鉛(TIMCAL))(全体で945.92g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)SBR(固形分50%、水懸濁液)(42g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで5分間混合した;
v)滑らかな塗布のために、粘度を調整した;
vi)約100℃に設定した第1加熱領域と約130℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ9μmの銅箔の上に塗布し、水を蒸発させた。最終的な固体担持量は約11.8mg/cm2であった。次に負極層を圧縮して、約159μmの厚さにした。作製した負極は、セル組立のために乾燥した。
【0148】
D)評価のためのセルの作製
i)電極を打ち抜き、電極タブを有する個片を作製した;
ii)正極は125℃で10時間乾燥し、負極は140℃で10時間乾燥した;
iii)セパレータを中間層として正極と負極を積層した;
iv)工程iiiで作製したゼリーロールを、アルミニウム複合バッグの中に平らに寝かせた;
v)工程ivからのバッグを真空オーブン中、70℃で乾燥した;
vi)工程vからのバッグに、LiPF6を含む有機カーボネート系電解質を充填した;
vii)工程viからのバッグを密封した;
viii)16時間静置した;
ix)セルをC/50のレートで4.2Vまで8時間充電し、次いで0.5Cのレートで4.2Vまで2時間充電し、次いで20分間休止し、次いで、0.5Cのレートで2.8Vまで放電した;
x)真空下、セルに穴を開けてガスを放出させ、その後、再密封した。作製したセルを評価と、50℃での放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命試験等の他の試験に用いた。
【0149】
図16は、0,3.6,および4.09Vのセルを分解して回収した正極についての温度上昇に対する抵抗の変化を示す。抵抗は温度の上昇とともに増加し、特に、電圧3.66Vと4Vを有するセルから得られた正極では増加した。
図19は、50℃での、1,3,6Aにおける放電容量を示している。電流の増加とともに、セル容量は顕著に減少し、抵抗層からの強い影響を示している。
図20は、1kHzにおけるセルインピーダンスと、電流1A,3A,6A,10Aでの容量と、1Aでの容量に対する3,6,10Aでの容量の比率を示している。
図26は、過充電試験の時の過充電のプロファイルを示している。
図28は、過充電試験の時のセルの最高温度と、過充電試験終了時の残留電流を示す。
図29は、サイクル数に対する放電容量を示す。セルは約1%の容量を喪失し、それは基準セルのそれ(2.5%)よりも、約100%優れている。
図22は、衝撃試験の時のセルの温度プロファイルを示している。
図23は、衝撃試験におけるセルの最高温度を示している。
【0150】
実施例3
50%Al2O3と50%CaCO3を含むガス発生剤、抵抗層、正極および負極の作製、並びに抵抗測定、50℃における放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命の評価に用いる完成セルNo.4の作製について以下に記載する。
【0151】
A)ガス発生剤と抵抗層(第1層)作製の一例としての正極POS4B
i)トーロン(登録商標)4000TF(0.8g)をNMP(10g)に溶解した;
ii)PVDF(4.8g)をNMP(~70g)に溶解した;
iii)工程iとiiで調製した溶液を混合し、次いでカーボンブラック(0.32g)を添加し、6500rpmで10分間混合した;
iv)ナノCaCO3粉末(17.04g)とAl2O3粉末(17.04g)を、工程iiiで調製した溶液に添加し、6500rpmで20分間混合し、流動性スラリーを作製した;
v)約135℃に設定した第1加熱領域と約165℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約1mg/cm2であった。
【0152】
B)正極作製の一例としてのPOS4Aの作製(第2層)
i)PVDF(21.6g)をNMP(250g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(18g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NMC)(560.4g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)粘度調整のためにいくらかのNMPを添加した;
v)約85℃に設定した第1加熱領域と約135℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーをPOS4B(実施例3A)の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約19.4mg/cm2であった。次に正極層を圧縮して、約153μmの厚さにした。作製した電極は、標準黒鉛電極に対してゼロ電圧とみなし、温度との関係を調べる、0Vでのインピーダンス測定に用いた。
【0153】
C)負極作製の一例としてのNEG4Aの作製
i)CMC(13g)を脱イオン水(~1000g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(20g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)負極用活性黒鉛(JFEケミカル社、黒鉛化メソフェーズ・カーボン・マイクロ・ビード(MCMB)と合成黒鉛(TIMCAL))(全体で945.92g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)SBR(固形分50%、水懸濁液)(42g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで5分間混合した;
v)滑らかな塗布のために、粘度を調整した;
vi)約100℃に設定した第1加熱領域と約130℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ9μmの銅箔の上に塗布し、水を蒸発させた。最終的な固体担持量は約11.8mg/cm2であった。次に負極層を圧縮して、約159μmの厚さにした。作製した負極は、セル組立のために乾燥した。
【0154】
D)評価のためのセルの作製
i)電極を打ち抜き、電極タブを有する個片を作製した;
ii)正極は125℃で10時間乾燥し、負極は140℃で10時間乾燥した;
iii)セパレータを中間層として正極と負極を積層した;
iv)工程iiiで作製したゼリーロールを、アルミニウム複合バッグの中に平らに寝かせた;
v)工程ivからのバッグを真空オーブン中、70℃で乾燥した;
vi)工程vからのバッグに、LiPF6を含む有機カーボネート系電解質を充填した;
vii)工程viからのバッグを密封した;
viii)16時間静置した;
ix)セルをC/50のレートで4.2Vまで8時間充電し、次いで0.5Cのレートで4.2Vまで2時間充電し、次いで20分間休止し、次いで0.5Cのレートで2.8Vまで放電した;
x)真空下、セルに穴を開けてガスを放出させ、その後、再密封した。作製したセルを評価と、50℃での放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命試験等の他の試験に用いた。
【0155】
図20は、1kHzにおけるセルインピーダンスと、電流1A,3A,6A,10Aでの容量と、1Aでの容量に対する3,6,10Aでの容量の比率を示している。
図22は、衝撃試験の時のセルの温度プロファイルを示している。
図23は、衝撃試験におけるセルの最高温度を示している。
図26は、12V/2Aの過充電試験の時の過充電のプロファイルを示している。
図28は、過充電試験の時のセルの最高温度を示す。
【0156】
実施例4
Al2O3とケイ酸ナトリウム(NaSiO3)を混合したガス発生剤、抵抗層、正極および負極の作製、並びに抵抗測定、50℃における放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命の評価に用いる完成セルNo.5の作製について以下に記載する。
【0157】
A)ガス発生剤と抵抗層(第1層)作製の一例としての正極POS5B
i)トーロン(登録商標)4000TF(0.8g)をNMP(~10g)に溶解した;
ii)PVDF(4.8g)をNMP(60g)に溶解した;
iii)工程iとiiで調製した溶液を混合し、次いでカーボンブラック(0.32g)を添加し、6500rpmで10分間混合した;
iv)ナノAl2O3粉末(17.04g)とNaSiO3(17.04g)を、工程iiiで調製した溶液に添加し、6500rpmで20分間混合し、流動性スラリーを作製した;
v)約135℃に設定した第1加熱領域と約165℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約0.7mg/cm2であった。
【0158】
B)正極作製の一例としてのPOS5Aの作製(第2層)
i)PVDF(21.6g)をNMP(270g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(18g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NMC)(560.4g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)粘度調整のためにいくらかのNMPを添加した;
v)約85℃に設定した第1加熱領域と約135℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーをPOS5B(実施例4A)の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約19.4mg/cm2であった。次に正極層を圧縮して、約153μmの厚さにした。作製した電極は、標準黒鉛電極に対してゼロ電圧とみなし、温度との関係を調べる、0Vでのインピーダンス測定に用いた。
【0159】
C)負極作製の一例としてのNEG5Aの作製
i)CMC(13g)を脱イオン水(~1000g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(20g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)負極用活性黒鉛(JFEケミカル社、黒鉛化メソフェーズ・カーボン・マイクロ・ビード(MCMB)と合成黒鉛(TIMCAL))(全体で945.92g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)SBR(固形分50%、水懸濁液)(42g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで5分間混合した;
v)滑らかな塗布のために、粘度を調整した;
vi)約100℃に設定した第1加熱領域と約130℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ9μmの銅箔の上に塗布し、水を蒸発させた。最終的な固体担持量は約11.8mg/cm2であった。次に負極層を圧縮して、約159μmの厚さにした。作製した負極は、セル組立のために乾燥した。
【0160】
D)評価のためのセルの作製
i)電極を打ち抜き、電極タブを有する個片を作製した;
ii)正極は125℃で10時間乾燥し、負極は140℃で10時間乾燥した;
iii)セパレータを中間層として正極と負極を積層した;
iv)工程iiiで作製したゼリーロールを、アルミニウム複合バッグの中に平らに寝かせた;
v)工程ivからのバッグを真空オーブン中、70℃で乾燥した;
vi)工程vからのバッグに、LiPF6を含む有機カーボネート系電解質を充填した;
vii)工程viからのバッグを密封した;
viii)16時間静置した;
ix)セルをC/50のレートで4.2Vまで8時間充電し、次いで0.5Cのレートで4.2Vまで2時間充電し、次いで20分間休止し、次いで0.5Cのレートで2.8Vまで放電した;
x)真空下、セルに穴を開けてガスを放出させ、その後、再密封した。作製したセルを評価と、50℃での放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命試験等の他の試験に用いた。
【0161】
図20は、1kHzにおけるセルインピーダンスと、電流1A,3A,6A,10Aでの容量と、1Aでの容量に対する3,6,10Aでの容量の比率を示している。
図22は、衝撃試験の時のセルの温度プロファイルを示している。
図23は、衝撃試験におけるセルの最高温度を示している。
図28は、12V/2Aの過充電試験の時のセルの最高温度を示す。
【0162】
実施例5
52%CaCo3と48%PVDFを含むガス発生剤、抵抗層、正極および負極の作製、並びに抵抗測定、50℃における放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命の評価に用いる完成セルNo.6の作製について以下に記載する。
【0163】
A)ガス発生剤と抵抗層(第1層)作製の一例としての正極POS6B
i)PVDF(23.25g)をNMP(~250g)に溶解した;
ii)工程iで調製した溶液を混合し、次いでカーボンブラック(1.85g)を添加し、6500rpmで10分間混合した;
iv)ナノCaCo3粉末(24.9g)を、工程iiiで調製した溶液に添加し、6500rpmで20分間混合し、流動性スラリーを作製した;
v)約135℃に設定した第1加熱領域と約165℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約1mg/cm2であった。
【0164】
B)正極作製の一例としてのPOS6Aの作製(第2層)
i)PVDF(24g)をNMP(300g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(12g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)LiNi0.4Co0.3Mn0.4Co0.3O2(NMC)(558g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)粘度調整のためにいくらかのNMPを添加した;
v)約85℃に設定した第1加熱領域と約135℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーをPOS6B(実施例5A)の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約22mg/cm2であった。次に正極層を圧縮して、約167μmの厚さにした。作製した電極は、標準黒鉛電極に対してゼロ電圧とみなし、温度との関係を調べる、0Vでのインピーダンス測定に用いた。
【0165】
C)負極作製の一例としてのNEG6Aの作製
i)CMC(9g)を脱イオン水(~530g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(12g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)負極用活性黒鉛(JFEケミカル社、黒鉛化メソフェーズ・カーボン・マイクロ・ビード(MCMB))(564g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)SBR(固形分50%、水懸濁液)(30g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで5分間混合した;
v)滑らかな塗布のために、いくらか水を添加して粘度を調整した;
vi)約95℃に設定した第1加熱領域と約125℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ9μmの銅箔の上に塗布し、水を蒸発させた。最終的な固体担持量は約12mg/cm2であった。次に負極層を圧縮して、約170μmの厚さにした。作製した負極は、セル組立のために乾燥した。
【0166】
D)評価のためのセルの作製
i)電極を打ち抜き、電極タブを有する個片を作製した;
ii)正極は125℃で10時間乾燥し、負極は140℃で10時間乾燥した;
iii)セパレータを中間層として正極と負極を積層した;
iv)工程iiiで作製したゼリーロールを、アルミニウム複合バッグの中に平らに寝かせた;
v)工程ivからのバッグを真空オーブン中、70℃で乾燥した;
vi)工程vからのバッグに、LiPF6を含む有機カーボネート系電解質を充填した;
vii)工程viからのバッグを密封した;
viii)16時間静置した;
ix)セルをC/50のレートで4.2Vまで8時間充電し、次いで0.5Cのレートで4.2Vまで2時間充電し、次いで20分間休止し、次いで0.5Cのレートで2.8Vまで放電した;
x)真空下、セルに穴を開けてガスを放出させ、その後、再密封した。作製したセルを評価と、50℃での放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命試験等の他の試験に用いた。
【0167】
図20は、1kHzにおけるセルインピーダンスと、電流1A,3A,6A,10Aでの容量と、1Aでの容量に対する3,6,10Aでの容量の比率を示している。
図22は、衝撃試験の時のセルの温度プロファイルを示している。
図23は、衝撃試験におけるセルの最高温度を示している。
図28は、過充電試験の時のセルの最高温度を示す。
【0168】
実施例6
化学分解電圧測定のための正極の作製について以下に記載する。
【0169】
以下の方法に基づきPOS7Bを作製した:
i)脱イオン水(~300g)をカーボポール(登録商標)-934(19.64g)に混合した;
ii)工程iで調製したスラリーに、スーパーP(登録商標)(160mg)とLiOH(200mg)を添加し、5000rpmで30分間混合した;
iii)適切な量の脱イオン水を加えてスラリーを調整し、塗布可能なスラリーを形成した;
iv)約135℃に設定した第1加熱領域と約165℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを15μmのアルミニウム箔の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約0.7mg/cm2であった。
【0170】
以下の方法に基づきPOS8Bを作製した:
i)脱イオン水(~100g)をAI-50(19.85g)に混合した;
ii)工程iで調製したスラリーに、スーパーP(登録商標)(160mg)を添加し、5000rpmで30分間混合した;
iii)適切な量の脱イオン水を加えてスラリーを調整し、塗布可能なスラリーを形成した;
iv)約135℃に設定した第1加熱領域と約165℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを15μmのアルミニウム箔の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約0.7mg/cm2であった。
【0171】
以下の方法に基づきPOS9Bを作製した:
i)脱イオン水(~322g)を19.85gのCMC-DN-800Hに混合した;
ii)工程iで調製したスラリーに、スーパーP(登録商標)(160mg)を添加し、5000rpmで30分間混合した;
iii)適切な量の脱イオン水を加えてスラリーを調整し、塗布可能なスラリーを形成した;
iv)約135℃に設定した第1加熱領域と約165℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを15μmのアルミニウム箔の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約0.7mg/cm2であった。
【0172】
以下の方法に基づきPOS13Bを作製した:
i)トーロン(登録商標)4000TF(400mg)をNMP(4g)に溶解した;
ii)PVDF-A(2.4g)をNMP(30g)に溶解した;
iii)上記の2つの溶液を混合し、そしてスーパーP(登録商標)(160mg)を添加し、5000rpmで30分間混合した;
iv)約13℃に設定した第1加熱領域と約16℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを15μmのアルミニウム箔の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約0.7mg/cm2であった。
【0173】
実施例7
ガス発生層で被覆された正極の電気化学試験について以下に記載する。
【0174】
すべての抵抗層の分解電圧は、3電極構成(作用電極としての抵抗層、基準電極および対極としてのリチウム金属)を用い、VMP2マルチチャンネル・ポテンショスタット装置を用いた線形掃引ボルタンメトリーにより室温で行った。抵抗層の0.3cm×2.0mの一片が作用電極であり、リチウムの0.3cm×2.0mの一片が基準電極と対極である。これらの電極を、LiPF
6エチレンカーボネート系電解質(5g)を含むガラスの中に入れた。掃引速度は、0~6Vの電圧範囲内で5mV/秒である。
図31,33は、これら化合物の分解電圧プロファイルを示す。
図32,34は、試験した化合物のそれぞれのピーク電流とピーク電圧を示す。
【0175】
実施例8
CaCO3系ガス発生剤、抵抗層、正極および負極の作製、並びに抵抗測定、50℃における放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命の評価に用いる完成セルNo.7の作製について以下に記載する。ガス発生層の抵抗率が電池の放電エネルギーの大部分(>50%)を提供するエネルギー層または層の抵抗率よりも大きくなるような(少なくとも50%以上)特定の範囲に導電性添加剤の含有量があれば、ガス発生層は抵抗層となることができる。ガス発生層の含有量は2%~99%とすることができる。
【0176】
A)ガス発生層(第1層)作製の一例としての正極POS71A
i)トーロン(登録商標)4000TF(0.9g)をNMP(10g)に溶解した;
ii)PVDF(5.25g)をNMP(~68g)に溶解した;
iii)工程iとiiで調製した溶液を混合し、次いでカーボンブラック(1.8g)を添加し、約6500rpmの速度で10分間混合した;
iv)ナノCaCo3粉末(7.11g)と134.94gのLiNi0.33Al0.33Co0.33O2を工程iiiで調製した溶液に添加し、6500rpmで20分間混合し、流動性スラリーを作製した;
v)約90℃に設定した第1加熱領域と約140℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約4mg/cm2であった。
【0177】
B)正極作製の一例としてのPOS071Bの作製(第2層)
i)PVDF(25.2g)をNMP(327g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(21g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)LiNi0.82Al0.03Co0.15O2(NCA)(649g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)粘度調整のためにいくらかのNMPを添加した;
v)約85℃に設定した第1加熱領域と約135℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーをPOS71Aの上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約20.4mg/cm2であった。次に正極層を圧縮して、約155μmの厚さにした。
【0178】
C)負極作製の一例としてのNEG015Bの作製
i)CMC(15g)を脱イオン水(~951g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(15g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)負極用活性黒鉛(JFEケミカル社、黒鉛化メソフェーズ・カーボン・マイクロ・ビード(MCMB))(945g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)SBR(固形分50%、水懸濁液)(50g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで5分間混合した;
v)滑らかな塗布のために、いくらか水を添加して粘度を調整した;
vi)約100℃に設定した第1加熱領域と約130℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ9μmの銅箔の上に塗布し、水を蒸発させた。最終的な固体担持量は約11mg/cm2であった。次に負極層を圧縮して、約155μmの厚さにした。作製した負極は、セル組立のために乾燥した。
【0179】
D)評価のためのセルの作製
i)電極を打ち抜き、電極タブを有する個片を作製した;
ii)正極は~125℃で10時間乾燥し、負極は~140℃で10時間乾燥した;
iii)セパレータを中間層として正極と負極を積層した;
iv)工程iiiで作製したゼリーロールを、アルミニウム複合バッグの中に平らに寝かせた;
v)工程ivからのバッグを真空オーブン中、70℃で乾燥した;
vi)工程vからのバッグに、カーボネート系電解質を充填した;
vii)工程viからのバッグを密封した;
viii)16時間静置した;
ix)セルをC/50のレートで4.2Vまで8時間充電し、次いで0.5Cのレートで4.2Vまで2時間充電し、次いで20分間休止し、次いで0.5Cのレートで2.8Vまで放電した。作製したセルを評価と、過充電試験等の他の試験に用いた。
【0180】
図35は、過充電試験(2Aおよび12V)の時の、過充電電圧、セル温度、およびオーブンチャンバ温度を示す。過充電試験の時のセルの最高温度は約83℃であり、セルは過充電試験に合格した。本主題の実施例は、限定されるものではないが、製品(例えば、装置、システム等)、製造方法または使用方法、材料組成物等の本明細書の記載と整合するものを含むことができる。
【0181】
実施例9
Al2O3系ガス発生剤、抵抗層、正極および負極の作製、並びに抵抗測定、50℃における放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命の評価に用いる完成セル3の作製について以下に記載する。
【0182】
A)抵抗層(第1層)作製の一例としての正極POS3B
i)トーロン(登録商標)4000TF(1g)をNMP(10g)に溶解した;
ii)PVDF(6g)をNMP(70g)に溶解した;
iii)工程iとiiで調製した溶液を混合し、次いでカーボンブラック(0.4g)を添加し、約6500rpmの速度で10分間混合した;
iv)ナノAl2O3粉末(42g)を工程iiiで調製した溶液に添加し、6500rpmで20分間混合し、流動性スラリーを作製した;
v)約130℃に設定した第1加熱領域と約160℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約1mg/cm2であった。
【0183】
B)正極作製の一例としてのPOS071Bの作製(第2層)
i)PVDF(21.6g)をNMP(250g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(18g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NMC)(560.4g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)粘度調整のためにいくらかのNMPを添加した;
v)約85℃に設定した第1加熱領域と約135℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーをPOS3Bの上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約19.4mg/cm2であった。次に正極層を圧縮して、約153μmの厚さにした。作製した電極は、標準黒鉛電極に対してゼロ電圧とみなし、温度との関係を調べる、0Vでのインピーダンス測定に用いた。
【0184】
C)負極作製の一例としてのNEG3Aの作製
i)CMC(13g)を脱イオン水(~1000g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(20g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)負極用活性黒鉛(JFEケミカル社、黒鉛化メソフェーズ・カーボン・マイクロ・ビード(MCMB)と合成黒鉛(TIMCAL))(全体で945.92g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)SBR(固形分50%、水懸濁液)(42g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで5分間混合した;
v)滑らかな塗布のために、いくらか水を添加して粘度を調整した;
vi)約100℃に設定した第1加熱領域と約130℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ9μmの銅箔の上に塗布し、水を蒸発させた。最終的な固体担持量は約11.8mg/cm2であった。次に負極層を圧縮して、約159μmの厚さにした。作製した負極は、セル組立のために乾燥した。
【0185】
D)評価のためのセルの作製
i)電極を打ち抜き、電極タブを有する個片を作製した;
ii)正極は125℃で10時間乾燥し、負極は140℃で10時間乾燥した;
iii)セパレータを中間層として正極と負極を積層した;
iv)工程iiiで作製したゼリーロールを、アルミニウム複合バッグの中に平らに寝かせた;
v)工程ivからのバッグを真空オーブン中、70℃で乾燥した;
vi)工程vからのバッグに、LiPF6を含む有機カーボネート系電解質を充填した;
vii)工程viからのバッグを密封した;
viii)16時間静置した;
ix)セルをC/50のレートで4.2Vまで8時間充電し、次いで0.5Cのレートで4.2Vまで2時間充電し、次いで20分間休止し、次いで0.5Cのレートで2.8Vまで放電した。真空下、セルに穴を開けてガスを放出させ、その後、再密封した。作製したセルを評価と、50℃での放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命試験等の他の試験に用いた。
【0186】
図38は、4.09Vのセルを分解して回収した正極についての温度上昇に対する抵抗の変化を示す。抵抗の変化は、基準セルのそれと比較して(
図37)、小さい。
図42はサイクル数と放電容量の関係を示す。セルは約2%の容量を喪失し、それは基準セルのそれ(2.5%)と同様である。
図36は、1kHzにおけるセルインピーダンスと、電流1A,3A,6A,10Aでの容量と、1Aでの容量に対する3,6,10Aでの容量の比率を示している。
図40は、衝撃試験の時のセル温度のプロファイルを示している。
図41は、衝撃試験の時のセルの最高温度を示している。
【0187】
実施例10
50%ポリアクリルラテックスと50%チタン酸バリウム(BaTiO2)を含む抵抗層、正極および負極の作製、並びに抵抗測定、50℃における放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命の評価に用いる完成セル4の作製について以下に記載する。
【0188】
A)抵抗層(第1層)作製の一例としての正極POS4B
i)CMC(0.375g)を脱イオン水(~30g)に溶解した;
ii)工程iで調製した溶液を混合し、次いでカーボンブラック(1.75g)を添加し、数分間混合した;
iii)ナノBaTiO2粉末(25g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで20分間混合し、流動性スラリーを作製した;
v)約90℃に設定した第1加熱領域と約140℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の上に塗布し、水を蒸発させた。最終的な固体担持量は約0.7mg/cm2であった。
【0189】
B)正極作製の一例としてのPOS4Aの作製(第2層)
i)PVDF(14.4g)をNMP(~160g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(12g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2(NMC)(373.6g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)粘度調整のためにいくらかのNMPを添加した;
v)約80℃に設定した第1加熱領域と約130℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーをPOS4B(実施例2A)の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約15.2mg/cm2であった。次に正極層を圧縮して、約113μmの厚さにした。作製した電極は、標準黒鉛電極に対してゼロ電圧とみなし、温度との関係を調べる、0Vでのインピーダンス測定に用いた。
【0190】
C)負極作製の一例としてのNEG3Aの作製
i)CMC(7.8g)を脱イオン水(~800g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(12g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)負極用活性黒鉛(JFEケミカル社、黒鉛化メソフェーズ・カーボン・マイクロ・ビード(MCMB)と合成黒鉛(TIMCAL))(全体で568.6g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)SBR(固形分50%、水懸濁液)(25.2g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで5分間混合した;
v)滑らかな塗布のために、いくらか水を添加して粘度を調整した;
vi)約70℃に設定した第1加熱領域と約100℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ9μmの銅箔の上に塗布し、水を蒸発させた。最終的な固体担持量は約8.99mg/cm2であった。次に負極層を圧縮して、約123μmの厚さにした。作製した負極は、セル組立のために乾燥した。
【0191】
D)評価のためのセルの作製
i)電極を打ち抜き、電極タブを有する個片を作製した;
ii)正極は125℃で10時間乾燥し、負極は140℃で10時間乾燥した;
iii)セパレータを中間層として正極と負極を積層した;
iv)工程iiiで作製したゼリーロールを、アルミニウム複合バッグの中に平らに寝かせた;
v)工程ivからのバッグを真空オーブン中、70℃で乾燥した;
vi)工程vからのバッグに、LiPF6を含む有機カーボネート系電解質を充填した;
vii)工程viからのバッグを密封した;
viii)16時間静置した;
ix)セルをC/50のレートで4.2Vまで8時間充電し、次いで0.5Cのレートで4.2Vまで2時間充電し、次いで20分間休止し、次いで0.5Cのレートで2.8Vまで放電した。真空下、セルに穴を開けてガスを放出させ、その後、再密封した。作製したセルを評価と、50℃での放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命試験等の他の試験に用いた。
【0192】
図39は、50℃における、電流1A,3A,6Aでの放電容量を示す。セルの容量は、電流の増加とともに急激に減少し、抵抗層の強い影響を示している。
図36は、1kHzにおけるセルインピーダンスと、電流1A,3A,6A,10Aでの容量と、1Aでの容量に対する3,6,10Aでの容量の比率を示している。
図40は、衝撃試験の時のセル温度のプロファイルを示している。
図41は、衝撃試験の時のセルの最高温度を示している。
【0193】
実施例11
負極中の抵抗層、正極および負極の作製、並びに抵抗測定、50℃における放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命の評価に用いる完成セル5の作製について以下に記載する。
【0194】
A)正極作製の一例としてのPOS5Aの作製
i)PVDF(31.5g)をNMP(~340g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(13.5g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2(NMC)(855g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)粘度調整のためにいくらかのNMPを添加した;
v)約80℃に設定した第1加熱領域と約130℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを15μmのアルミニウム箔の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約14.8mg/cm2であった。次に正極層を圧縮して、約113μmの厚さにした。作製した電極は、標準黒鉛電極に対してゼロ電圧とみなし、温度との関係を調べる、0Vでのインピーダンス測定に用い、セル組立のために乾燥した。
【0195】
B)負極作製の一例としてのNEG5Bの作製(第1層)
i)CMC(0.375g)を脱イオン水(~90g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(1.75g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)BaTiO2(全体で25g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)SBR(固形分50%、水懸濁液)(45.6g)を工程iiiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで5分間混合した;
v)滑らかな塗布のために、粘度を調整した;
vi)約90℃に設定した第1加熱領域と約140℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ9μmの銅箔の上に塗布し、水を蒸発させた。
【0196】
C)負極作製の一例としてのNEG5Aの作製(第2層)
i)CMC(3.9g)を脱イオン水(~350g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(6g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)負極用活性黒鉛(JFEケミカル社、黒鉛化メソフェーズ・カーボン・マイクロ・ビード(MCMB)と合成黒鉛(TIMCAL))(全体で283.8g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)SBR(固形分50%、水懸濁液)(25.2g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで5分間混合した;
v)滑らかな塗布のために、粘度を調整した;
vi)約70℃に設定した第1加熱領域と約100℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーをNEG5Bの上に塗布し、水を蒸発させた。最終的な固体担持量は約9.8mg/cm2であった。次に負極層を圧縮して、約114μmの厚さにした。作製した負極は、セル組立のために乾燥した。
【0197】
D)評価のためのセルの作製
i)電極を打ち抜き、電極タブを有する個片を作製した;
ii)正極は125℃で10時間乾燥し、負極は140℃で10時間乾燥した;
iii)セパレータを中間層として正極と負極を積層した;
iv)工程iiiで作製したゼリーロールを、アルミニウム複合バッグの中に平らに寝かせた;
v)工程ivからのバッグを真空オーブン中、70℃で乾燥した;
vi)工程vからのバッグに、LiPF6を含む有機カーボネート系電解質を充填した;
vii)工程viからのバッグを密封した;
viii)16時間静置した;
ix)セルをC/20のレートで4.2Vまで5時間充電し、次いで0.5Cのレートで4.2Vまで2時間充電し、次いで20分間休止し、次いで0.5Cのレートで2.8Vまで放電した。真空下、セルに穴を開けてガスを放出させ、その後、再密封した。作製したセルを評価と、50℃での放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命試験等の他の試験に用いた。
【0198】
図36は、1kHzにおけるセルインピーダンスと、電流1A,3A,6A,10Aでの容量と、1Aでの容量に対する3,6,10Aでの容量の比率を示している。
図40は、衝撃試験の時のセル温度のプロファイルを示している。
図41は、衝撃試験の時のセルの最高温度を示している。
【0199】
実施例12
Al2O3とケイ酸ナトリウム(NaSiO3)を混合した抵抗層、正極および負極の作製、並びに抵抗測定、50℃における放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命の評価に用いる完成セル6の作製について以下に記載する。
【0200】
A)抵抗層(第1層)作製の一例としての正極POS6B
i)トーロン(登録商標)4000TF(0.8g)をNMP(~10g)に溶解した;
ii)PVDF(4.8g)をNMP(60g)に溶解した;
iii)工程iとiiで調製した溶液を混合し、次いでカーボンブラック(0.32g)を添加し、約6500rpmの速度で10分間混合した;
iv)ナノAl2O3粉末(17.04g)とNaSiO3(17.04g)を工程iiiで調製した溶液に添加し、6500rpmで20分間混合し、流動性スラリーを作製した;
v)約135℃に設定した第1加熱領域と約165℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約0.7mg/cm2であった。
【0201】
B)正極作製の一例としてのPOS6Aの作製(第2層)
i)PVDF(21.6g)をNMP(270g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(18g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NMC)(560.4g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)粘度調整のためにいくらかのNMPを添加した;
v)約85℃に設定した第1加熱領域と約135℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーをPOS6B(実施例1A)の上に塗布し、NMPを蒸発させた。最終的な固体担持量は約19.4mg/cm2であった。次に正極層を圧縮して、約153μmの厚さにした。作製した電極は、標準黒鉛電極に対してゼロ電圧とみなし、温度との関係を調べる、0Vでのインピーダンス測定に用いた。
【0202】
C)負極作製の一例としてのNEG6Aの作製
i)CMC(13g)を脱イオン水(~1000g)に溶解した;
ii)カーボンブラック(20g)を添加し、6500rpmで15分間混合した;
iii)負極用活性黒鉛(JFEケミカル社、黒鉛化メソフェーズ・カーボン・マイクロ・ビード(MCMB)と合成黒鉛(TIMCAL))(全体で945.92g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで30分間混合し、流動性スラリーを作製した;
iv)SBR(固形分50%、水懸濁液)(42g)を工程iiで調製したスラリーに添加し、6500rpmで5分間混合した;
v)滑らかな塗布のために、粘度を調整した;
vi)約100℃に設定した第1加熱領域と約130℃に設定した第2加熱領域を備えた自動塗工装置を用いて、このスラリーを厚さ9μmの銅箔の上に塗布し、水を蒸発させた。最終的な固体担持量は約11.8mg/cm2であった。次に負極層を圧縮して、約159μmの厚さにした。作製した負極は、セル組立のために乾燥した。
【0203】
D)評価のためのセルの作製
i)電極を打ち抜き、電極タブを有する個片を作製した;
ii)正極は125℃で10時間乾燥し、負極は140℃で10時間乾燥した;
iii)セパレータを中間層として正極と負極を積層した;
iv)工程iiiで作製したゼリーロールを、アルミニウム複合バッグの中に平らに寝かせた;
v)工程ivからのバッグを真空オーブン中、70℃で乾燥した;
vi)工程vからのバッグに、LiPF6を含む有機カーボネート系電解質を充填した;
vii)工程viからのバッグを密封した;
viii)16時間静置した;
ix)セルをC/20のレートで4.2Vまで8時間充電し、次いで0.5Cのレートで4.2Vまで2時間充電し、次いで20分間休止し、次いで0.5Cのレートで2.8Vまで放電した。真空下、セルに穴を開けてガスを放出させ、その後、再密封した。作製したセルを評価と、50℃での放電能力試験、衝撃試験、サイクル寿命試験等の他の試験に用いた。
【0204】
図36は、1kHzにおけるセルインピーダンスと、電流1A,3A,6A,10Aでの容量と、1Aでの容量に対する3,6,10Aでの容量の比率を示している。
図40は、衝撃試験の時のセル温度のプロファイルを示している。
図41は、衝撃試験の時のセルの最高温度を示している。
【0205】
上記の説明および特許請求の範囲において、“少なくとも1つの”または“1以上の”等の句は、その後に要素または特徴の連結的な記載が続く場合がある。“および/または”の用語は、2以上の要素または特徴の記載の中にみられる場合がある。それが用いられている文脈により暗黙的にまたは明示的に矛盾しない限り、それらの句は、記載された要素または特徴の個々のものを意味する、あるいは他の記載された要素または特徴のいずれかと組み合わせたものを意味することが意図されている。例えば、“AとBの少なくとも1つ”、“AとBの1以上”、および“Aおよび/またはB”の句は、それぞれ、“Aのみ、Bのみ、またはAとBの両方”を意味することが意図されている。3以上の項目を含む記載についても、同様の解釈がなされることが意図されている。例えば、“A,B,およびCのすくなくとも1つ”、および“A,B,および/またはC”の句は、それぞれ、“Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBの両方、AとCの両方、BとCの両方、またはA,B,Cのすべて”を意味することが意図されている。上記の説明および特許請求の範囲における“基づく”という用語の使用は、記載されていない特徴または要素が許容されるように、“少なくとも一部に基づく”を意味することが意図されている。
【0206】
本明細書に記載された主題は、所望の構成に応じて、システム、装置、方法、および/または物品に具体化することができる。上記の説明に記載された実施例は、本明細書に記載された主題と整合する全ての実施例を表すものではない。むしろ、それらは、記載された主題に関係する態様と整合するいくつかの例に過ぎない。上記の説明において、少ない変形例について詳細に記載されているが、別の変更または付加が可能である。特に、本明細書に記載されたものに加えて、さらなる特徴および/または変形を提供することが可能である。例えば、上述の実施例を、開示された特徴の様々な組み合わせおよび部分的な組み合わせ、および/または開示された複数のさらなる特徴の組み合わせおよび部分的な組み合わせに向けることができる。加えて、添付の図面に示されかつ本明細書で説明された論理フローは、所望の結果を達成するためには、示された特定の順序または順番を必ずしも必要とするものではない。他の実施例は以下の特許請求の範囲の範囲内である。