(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】制御装置、レンズ装置、および、撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/08 20210101AFI20241105BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20241105BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20241105BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20241105BHJP
G03B 13/34 20210101ALI20241105BHJP
G03B 13/32 20210101ALI20241105BHJP
H04N 23/67 20230101ALI20241105BHJP
【FI】
G02B7/08 C
G02B7/04 E
G02B7/28 Z
G03B13/36
G03B13/34
G03B13/32
H04N23/67
(21)【出願番号】P 2022203804
(22)【出願日】2022-12-20
(62)【分割の表示】P 2020014227の分割
【原出願日】2020-01-30
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】豊田 由美
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-219584(JP,A)
【文献】特開2015-041901(JP,A)
【文献】特開平02-312456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G02B 7/28-7/40
G03B 13/36
G03B 13/34
G03B 13/32
H04N 23/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカスレンズを合焦位置に自動で調整する第一の制御手段と、
前記フォーカスレンズをユーザの操作に基づいて調整する第二の制御手段と、
前記フォーカスレンズを駆動する第三の制御手段と、を有
する制御装置であって、
前記第一の制御手段および前記第二の制御手段は、前記フォーカスレンズの第一の駆動領域において有効であり、
前記第一の制御手段は、前記フォーカスレンズの第二の駆動領域において無効であり、
前記第二の制御手段は、前記第二の駆動領域において有効であ
り、
前記第三の制御手段は、前記フォーカスレンズが前記第一の駆動領域に位置するとき、被写体距離を維持する際に前記フォーカスレンズの位置が前記第二の駆動領域に含まれるように、ズームレンズの位置または絞り値に応じて前記第二の駆動領域が変化した場合、前記フォーカスレンズが前記第一の駆動領域に位置するように前記フォーカスレンズを駆動することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記第三の制御手段は、前記フォーカスレンズが前記第一の駆動領域に位置するとき、前記被写体距離を維持する際に前記フォーカスレンズの位置が前記第一の駆動領域に含まれるように
、前記ズームレンズの位置または前記絞り値に応じて前記第二の駆動領域が変化した場合、前記被写体距離を維持するように前記フォーカスレンズを駆動することを特徴とする請求項
1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第三の制御手段は、前記フォーカスレンズが前記第二の駆動領域に位置するとき、前記被写体距離を維持する際に前記フォーカスレンズの位置が前記第一の駆動領域に含まれるように
、前記ズームレンズの位置または前記絞り値に応じて前記第二の駆動領域が変化した場合、前記被写体距離を維持するように前記フォーカスレンズを駆動することを特徴とする請求項
1または
2に記載の制御装置。
【請求項4】
フォーカスレンズを合焦位置に自動で調整する第一の制御手段と、
前記フォーカスレンズをユーザの操作に基づいて調整する第二の制御手段と、を有する制御装置であって、
前記第一の制御手段および前記第二の制御手段は、前記フォーカスレンズの第一の駆動領域において有効であり、
前記第一の制御手段は、前記フォーカスレンズの第二の駆動領域において無効であり、
前記第二の制御手段は、前記第二の駆動領域において有効であり、
前記第二の駆動領域は、ズームレンズの位置に応じて変化することを特徴とす
る制御装置。
【請求項5】
前記ズームレンズの位置が広角端である場合、前記第二の駆動領域は第一の広さを有し、
前記ズームレンズの位置が望遠端である場合、前記第二の駆動領域は前記第一の広さよりも狭い第二の広さを有することを特徴とする請求項
4に記載の制御装置。
【請求項6】
フォーカスレンズを合焦位置に自動で調整する第一の制御手段と、
前記フォーカスレンズをユーザの操作に基づいて調整する第二の制御手段と、を有する制御装置であって、
前記第一の制御手段および前記第二の制御手段は、前記フォーカスレンズの第一の駆動領域において有効であり、
前記第一の制御手段は、前記フォーカスレンズの第二の駆動領域において無効であり、
前記第二の制御手段は、前記第二の駆動領域において有効であり、
前記第二の駆動領域は、絞り値に応じて変化することを特徴とす
る制御装置。
【請求項7】
前記絞り値が第一の絞り値である場合、前記第二の駆動領域は第三の広さを有し、
前記絞り値が前記第一の絞り値よりも小さい第二の絞り値である場合、前記第二の駆動領域は前記第三の広さよりも狭い第四の広さを有することを特徴とする請求項
6に記載の制御装置。
【請求項8】
フォーカスレンズを合焦位置に自動で調整する第一の制御手段と、
前記フォーカスレンズをユーザの操作に基づいて調整する第二の制御手段と、
前記フォーカスレンズを駆動する第三の制御手段と、を有する制御装置であって、
前記第一の制御手段および前記第二の制御手段は、前記フォーカスレンズの第一の駆動領域において有効であり、
前記第一の制御手段は、前記フォーカスレンズの第二の駆動領域において無効であり、
前記第二の制御手段は、前記第二の駆動領域において有効であり、
前記第二の駆動領域は、ズームレンズの位置または絞り値に応じて変化し、
前記第三の制御手段は、全駆動領域における前記第二の駆動領域の割合の増減変化に基づいて、前記フォーカスレンズを駆動することを特徴とす
る制御装置。
【請求項9】
フォーカスレンズと、
請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の制御装置と、を有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項10】
撮像素子と、
請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の制御装置と、を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカスレンズを駆動して焦点調節が可能な制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォーカスレンズを駆動して焦点調節を行う方法として、オートフォーカス(AF)およびマニュアルフォーカス(MF)が知られている。AFは、AFセンサから生成されるAF評価値に基づいてフォーカスレンズの合焦位置を算出して焦点調節を行う方法である。MFは、ユーザが手動でフォーカスリングを操作して焦点調節を行う方法である。
【0003】
また、ズームレンズを駆動した際に生じる像面変動を、フォーカスレンズを駆動することにより補正し、合焦状態を維持するズームトラッキング制御が知られている。特許文献1には、ズームの際に合焦状態を維持するズームレンズ位置とフォーカスレンズ位置との関係を示す電子カム(トラッキング曲線)情報に基づいて、領域モードを切り替える方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、ユーザのズーム操作によるズームトラッキング制御の際に、ユーザが意図せず、領域モードが切り替わる場合がある。ここで領域モードは、AFとMFの両方で焦点調節が可能なAF可能領域、および、MFでのみ焦点調節が可能なMF専用領域に関するモードを含む。
【0006】
MF専用領域では、フォーカスレンズの駆動と撮像センサからの画像取得は可能であるが、AFセンサへ入る光線の入射角等の制限によってAFを行うことができない。このため、ズーム操作等のMF操作以外の操作によりユーザが意図せずAF可能領域からMF専用領域へ切り替わると、AF状態から強制的にMF状態に変わり、ユーザが混乱する可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、ユーザが意図せずAF可能領域からMF専用領域へ切り替わることを防止し、ユーザの操作性を向上させることが可能な制御装置、レンズ装置、および、撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての制御装置は、フォーカスレンズを合焦位置に自動で調整する第一の制御手段と、前記フォーカスレンズをユーザの操作に基づいて調整する第二の制御手段と、前記フォーカスレンズを駆動する第三の制御手段と、を有する制御装置であって、前記第一の制御手段および前記第二の制御手段は、前記フォーカスレンズの第一の駆動領域において有効であり、前記第一の制御手段は、前記フォーカスレンズの第二の駆動領域において無効であり、前記第二の制御手段は、前記第二の駆動領域において有効であり、前記第三の制御手段は、前記フォーカスレンズが前記第一の駆動領域に位置するとき、被写体距離を維持する際に前記フォーカスレンズの位置が前記第二の駆動領域に含まれるように、ズームレンズの位置または絞り値に応じて前記第二の駆動領域が変化した場合、前記フォーカスレンズが前記第一の駆動領域に位置するように前記フォーカスレンズを駆動する。
【0009】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザが意図せずAF可能領域からMF専用領域へ切り替わることを防止し、ユーザの操作性を向上させることが可能な制御装置、レンズ装置、および、撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】各実施例における撮像装置のブロック図である。
【
図2】各実施例における被写体距離ごとの電子カムデータを示す図である。
【
図3】各実施例におけるAF可能領域およびMF専用領域を示す図である。
【
図4】実施例1におけるズームレンズ位置と最短撮影距離との関係を示す図である。
【
図5】実施例1における制御方法のフローチャートである。
【
図9】実施例2における制御方法のフローチャートである。
【
図10】実施例2における制御方法の説明図である。
【
図11】実施例3における絞り値と最短撮影距離との関係を示す図である。
【
図12】実施例3における制御方法のフローチャートである。
【
図13】実施例3における制御方法の説明図である。
【
図14】実施例3における制御方法の説明図である。
【
図15】実施例3における制御方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
まず、各実施例における撮像装置の構成について説明する。
図1は、撮像装置10のブロック図である。撮像装置10は、カメラ本体(撮像装置本体)200と、カメラ本体200に着脱可能な交換レンズ(レンズ装置)100とを備えて構成される。ただし各実施例の撮像装置は、これに限定されるものではなく、カメラ本体とレンズ装置とが一体的に構成されていてもよい。
【0014】
交換レンズ100は、カメラ本体200に不図示のマウントを介して機械的および電気的に接続されている。交換レンズ100は、前述したマウントに設けられた不図示の電源端子を介して、カメラ本体200から電力の供給を受ける。そして交換レンズ100は、カメラ本体200から受けた電力を用いて、後述する各種アクチュエータやレンズマイコン(レンズマイクロコンピュータ)111を制御する。カメラ本体200は、前述したマウントに設けられた不図示の通信端子部を介して、交換レンズ100と通信を行い、交換レンズ100に制御コマンドを送信することで交換レンズ100を制御する。
【0015】
カメラ本体200は、位相差AFセンサ機能を有する撮像素子201と、信号処理回路202と、記録処理部203と、表示部204と、操作部205と、カメラマイコン(カメラマイクロコンピュータ)206とを有する。撮像素子201は、CMOSセンサやCCDセンサを有し、交換レンズ100内の撮像光学系により形成された被写体像(光学像)を光電変換して電気信号(アナログ信号)を出力する。撮像素子201から出力されたアナログ信号は、不図示のA/D変換回路によりデジタル信号に変換される。
【0016】
信号処理回路202は、A/D変換回路からのデジタル信号に対して各種画像処理を行い、映像信号を生成する。また信号処理回路202は、映像信号から被写体像のコントラスト状態、すなわち撮像光学系の焦点状態を示すフォーカス情報や露出状態を表す輝度情報を生成する。また信号処理回路202は、映像信号を表示部204に出力し、表示部204は映像信号を構図やピント状態等の確認に用いられるライブビュー画像として表示する。また信号処理回路202は、映像信号を記録処理部203に出力する。記録処理部203は、映像信号を静止画像や動画像データとして外部メモリ等に記憶する。
【0017】
カメラ制御部としてのカメラマイコン206は、操作部205に含まれる撮像指示スイッチおよび各種設定スイッチ等の入力に応じて、カメラ本体200を制御する。またカメラマイコン206は、カメラ通信部を介して、輝度情報に応じた絞りユニット103の光量調節動作やフォーカス情報に応じたフォーカスレンズ105の焦点調節動作に関する制御コマンドをレンズマイコン111に送信する。
【0018】
交換レンズ100は、撮像光学系と、撮像光学系を駆動する各アクチュエータを制御する各制御部と、フォーカスレンズ105を操作するための操作リング110と、レンズマイコン111とを有する。
【0019】
レンズマイコン111は、交換レンズ100内の各部の動作を制御するレンズ制御部(制御装置)である。レンズマイコン111は、通信部を介して、カメラ本体200から送信された制御コマンドを受信し、レンズデータの送信要求を受ける。またレンズマイコン111は、制御コマンドに対応するレンズ制御を行い、送信要求に対応するレンズデータをカメラ本体200に送信する。またレンズマイコン111は、制御コマンドのうち光量調節に関するコマンドやフォーカシングに関するコマンドに応答して、絞り制御部107およびフォーカスレンズ制御部109に指令を出力する。絞り制御部107およびフォーカスレンズ制御部109は、レンズマイコン111からの指令に従って、絞りユニット103およびフォーカスレンズ105をそれぞれ駆動する。これにより、絞りユニット103およびフォーカスレンズ105による光量調節処理、および焦点調節動作を制御するオートフォーカス処理を行うことができる。またレンズマイコン111は、操作リング110の操作量に応じて、フォーカスレンズ制御部109に指令を出力してフォーカスレンズ105を駆動し、焦点調節動作を制御する。
【0020】
各実施例において、レンズマイコン111は、第一の制御手段111a、第二の制御手段111b、および、第三の制御手段111cを有する。第一の制御手段111aは、フォーカスレンズ105を合焦位置に自動で調整する(すなわち第一の制御手段111aはAF制御を実現する機能を有する)。第二の制御手段111bは、フォーカスレンズ105を手動で(ユーザの操作量に基づいて)調整する(すなわち第二の制御手段111bはMF制御を実現する機能を有する)。第三の制御手段111cは、フォーカスレンズ105を駆動する(ズームトラッキング制御など)。
【0021】
第三の制御手段111cは、後述のように、フォーカスレンズ105の第一の駆動領域(AF可能領域)やフォーカスレンズ105の第二の駆動領域(MF専用領域)が変化した際に、フォーカスレンズ105を制御する。すなわち第三の制御手段111cは、フォーカスレンズ105のAF可能領域やMF専用領域が変化した場合、フォーカスレンズ105を適切な位置に位置させるようフォーカスレンズ105を駆動または静止させる機能を有する。
【0022】
なお、本実施例ではレンズマイコン111が第一の制御手段111a、第二の制御手段111b、第三の制御手段111cを有する例について説明した。これは、レンズマイコン111が第一の制御手段111aの機能に相当する機能、第二の制御手段111bの機能に相当する機能、第三の制御手段111cの機能に相当する機能を有することと等価としてとらえることもできる。
【0023】
後述のように、第一の制御手段111aおよび第二の制御手段111bはフォーカスレンズ105の第一の駆動領域(AF可能領域)において有効であり、第一の制御手段111aはフォーカスレンズ105の第二の駆動領域(MF専用領域)において無効である。第三の制御手段111cは、第二の駆動領域の変化(全駆動領域における前記第二の駆動領域の割合の増減変化)に基づいてフォーカスレンズ105を駆動する。
【0024】
撮像光学系は、フィールドレンズ101と、変倍を行うズームレンズ102と、光量を調節する絞りユニット103と、像振れ補正レンズ104と、焦点調節を行うフォーカスレンズ105とを含む。ズームレンズ102は、図中に破線で示される光軸OAに沿った方向(光軸方向)に移動可能であり、不図示のズーム機構に連結されたズーム操作部がユーザに操作されることで光軸方向に駆動される。これにより、ズームレンズ102の移動によって撮影光学系の焦点距離が変更される変倍(ズーム)が行われる。
【0025】
ズームレンズ位置検出部106は、可変抵抗等の位置検出センサを用いてズームレンズ位置を検出し、ズームレンズ102の位置データをレンズマイコン111に出力する。ズームレンズ位置検出部106から出力された位置データは、レンズマイコン111にて後述するズームトラッキング制御などに用いられる。
【0026】
絞りユニット103は、絞り羽根やホール素子等のセンサを備えて構成される。絞り羽根の状態は、前述のセンサにより検出され、レンズマイコン111に出力される。絞り制御部107は、レンズマイコン111からの指令に従って、駆動信号を出力してステッピングモータやボイスコイルモータ等のアクチュエータを駆動する。これにより、絞りユニット103による光量調節を行うことができる。
【0027】
像振れ補正レンズ104は、撮像光学系の光軸OAに直交する方向に移動することで、手振れ等に起因する像振れを低減する。像揺れ補正レンズ制御部108は、振動ジャイロ等の不図示の振れセンサにより検出された振れに応じて、レンズマイコン111からの指令に従って、駆動信号を出力して防振アクチュエータを駆動する。これにより、像揺れ補正レンズ104のシフト動作を制御する防振処理を行うことができる。
【0028】
フォーカスレンズ105は、光軸方向に移動可能であり、フォトインタラプタ等の位置検出センサを用いてフォーカスレンズ105の位置を検出し、位置データをレンズマイコン111に出力する。フォーカスレンズ制御部109は、レンズマイコン111からの指令に従って、駆動信号を出力してステッピングモータ等のアクチュエータを駆動し、フォーカスレンズ105を移動させることで焦点調節を行う。
【0029】
またフォーカスレンズ105は、ズームレンズ102による変倍に伴う像面変動を補正する。リアフォーカス式の変倍光学系において、ズームレンズ102を移動させて変倍を行う際に生じる像面変動を、フォーカスレンズ105を移動させることによって補正し、合焦状態を維持するズームトラッキング制御を行う。
【0030】
ここで、
図2を参照して、ズームトラッキング制御について説明する。
図2は、被写体距離ごとの電子カムデータを示す図である。
図2において、横軸はズームレンズ102の位置(ズームレンズ位置)、縦軸はフォーカスレンズ105の位置(フォーカスレンズ位置)をそれぞれ示す。ズームトラッキング制御を行うため、レンズマイコン111に搭載された不図示のメモリ(内部メモリ)には、電子カムデータ(トラッキング曲線)の情報が記憶されている。電子カムデータは、
図2に示されるように、被写体距離に応じて合焦状態を保持するように設定されたズームレンズ位置とフォーカスレンズ位置との関係を示すデータである。レンズマイコン111は、電子カムデータに基づいて、フォーカスレンズ制御部109に制御指令を出力し、フォーカスレンズ105を駆動してトラッキング制御を行う。
【0031】
各実施例において、電子カムデータは、フォーカスレンズ105の単位駆動量に対する像面移動量であるフォーカス敏感度に基づいて作成される。ただし、
図2に示されるように、実際にメモリに記憶されている電子カムデータは、代表的な複数の被写体距離A~Dに対応するデータであり、かつ代表的なズームレンズ位置(代表点)に対するフォーカスレンズ位置を示すデータである。代表点以外のズームレンズ位置に近い複数の代表点に対する距離の比率を算出し、その比率に応じて線形補完を行うことによりフォーカスレンズ位置を算出することができる。
【0032】
次に、
図3を参照して、AF可能領域およびMF専用領域について説明する。
図3は、AF可能領域およびMF専用領域を示す図である。ここで、AF可能領域はAFとMFの両方で焦点調節が可能な領域であり、MF専用領域はMFでのみ焦点調節が可能な領域である。本実施例において、AF可能領域はAF・MF無限端とAF資金端との間の領域であり、MF専用領域はMF至近端とAF至近端との間の領域である。また本実施例において、AF可能領域とMF専用領域とを合わせた領域が全駆動領域である。
【0033】
各実施例の撮像装置10は、自動で焦点調節を行うオートフォーカス(AF)と、手動で焦点調節を行うマニュアルフォーカス(MF)とでフォーカスレンズ105を駆動して焦点調節を行うことが可能である。AFにおいて、カメラマイコン206は、撮像素子201で生成される映像信号に応じたAF評価値に基づいてフォーカスレンズ105の合焦位置を算出し、フォーカシングに関する制御コマンドをカメラ通信部を介してレンズマイコン111へ送信する。レンズマイコン111は、カメラマイコン206から送信された制御コマンドに応答して、フォーカスレンズ制御部109に指令を出力し、フォーカスレンズ105を駆動して焦点調節動作を制御する。MFにおいて、レンズマイコン111は、操作リング110の操作量に応じて、フォーカスレンズ制御部109に指令を出力して、フォーカスレンズ105を駆動して焦点調節動作を制御する。
【0034】
図3に示されるAF可能領域は、AFおよびMFの両方により焦点調節が可能な領域である。このため、AF可能領域に存在する被写体Bは、AFおよびMFの両方で合焦させることが可能である。一方、
図3に示されるMF専用領域は、AF評価値を正確に算出することができないため、AFによる焦点調節を行うことができず、MFによる焦点調節のみが可能な領域である。このため、MF専用領域に存在する被写体Aは、MFにおいてのみ合焦させることが可能である。
【0035】
以下、各実施例において、撮像装置10の制御方法に関して詳述する。
【実施例1】
【0036】
まず、本発明の実施例1について説明する。本実施例では、ズームトラッキング処理によるフォーカスレンズ制御の流れについて説明する。
図4は、ズームレンズ位置と最短撮影距離との関係を示す図である。
図4において、縦軸はズームレンズ位置(ズームレンズ102の位置)、横軸は最短撮影距離をそれぞれ示す。
図4に示されるように、最短撮影距離はズームレンズ102の位置に応じて変化し、WIDE側でAF可能領域であった撮影距離位置はTELE側でMF専用領域となる。このように本実施例では、ズーム位置に応じてAF可能領域(AF・MF可能領域)とMF専用領域とが切り替わる。
【0037】
次に、
図5を参照して、本実施例におけるズームトラッキング処理によるAF可能領域(第一の駆動領域)とMF専用領域(第二の駆動領域)との切り替わりの際のフォーカスレンズ制御(制御方法)の流れについて説明する。
図5は、本実施例における制御方法のフローチャートである。
【0038】
まずステップS500において、レンズマイコン111は、処理を開始する。続いてステップS501において、レンズマイコン111は、ズームレンズ位置検出部106の位置検出センサにより検出された信号を用いてズームレンズ102の位置データ(ズームレンズ位置)を取得する。続いてステップS502において、レンズマイコン111は、前回取得したズームレンズ位置とステップS501にて検出されたズームレンズ位置とを比較し、ズーム操作が行われたか否かを判定する。ステップS502にてズーム操作があった場合、ステップS503へ進む。一方、ズーム操作がない場合、ステップS501へ戻る。
【0039】
ステップS503において、レンズマイコン111は、ズームレンズ位置とフォーカスレンズ位置との関係を示す電子カムデータ(トラッキング曲線)に基づいて、現在のズームレンズ位置における被写体距離を維持する目標フォーカスレンズ位置を算出する。なお電子カムデータは、例えばレンズマイコン111のメモリに記憶されている。
【0040】
ここで、
図6を参照して、被写体距離を維持する目標フォーカスレンズ位置について説明する。
図6は、本実施例における制御方法の説明図であり、ズームトラッキング処理前のフォーカスレンズ位置がAF可能領域であったときのAF可能領域を維持するフォーカス制御を示す。
図6において、縦軸はフォーカスレンズ位置、横軸はズームレンズ位置をそれぞれ示す。
図6に示されるように、現在フォーカスレンズ位置a1が被写体距離Aの電子カム上にあるとする。このとき、ズーム操作が行われズームレンズ位置が焦点距離Aから焦点距離Bに移動すると、被写体距離Aを維持する目標フォーカスレンズ位置はb1となる。
【0041】
続いて、
図5のステップS504において、レンズマイコン111は、ステップS503にて算出した目標フォーカスレンズ位置が現在のズームレンズ位置におけるMF専用領域の範囲内であるか否かを判定する。レンズマイコン111のメモリは、各ズームレンズ位置におけるAF可能領域の至近端データ(AF至近端)を記憶している。このためレンズマイコン111は、目標フォーカスレンズ位置がAF至近端よりも至近側か無限側にあるかに応じて、目標フォーカスレンズ位置がAF可能領域またはMF専用領域のいずれの範囲内にあるかを判定することができる。
図6に示されるように、目標フォーカスレンズ位置b1はAF至近端よりも至近側である。このため目標フォーカスレンズ位置b1は、MF専用領域であると判定される。
【0042】
続いてステップS505において、レンズマイコン111は、現在フォーカスレンズ位置がAF至近端よりも至近側または無限側のいずれにあるかにより、現在フォーカスレンズ位置がAF可能領域またはMF専用領域のいずれの範囲内にあるかを判定する。ステップS505にて現在フォーカスレンズ位置がAF可能領域であると判定された場合、ステップS507へ進む。ステップS507において、レンズマイコン111(第三の制御手段111c)は、フォーカスレンズ制御部109に制御指令を出力し、フォーカスレンズ105をAF至近端へ駆動する。
図6に示されるように、現在フォーカスレンズ位置a1はAF至近端よりも無限側にある。このためレンズマイコン111は、現在フォーカスレンズ位置a1がAF可能領域であると判定し、フォーカスレンズ105をAF至近端c1へ駆動してAF可能領域を維持する。すなわち第三の制御手段111cは、フォーカスレンズがAF可能領域に位置するとき、被写体距離を維持する際にフォーカスレンズの位置がMF専用領域に含まれるようにMF専用領域が変化した場合、AF可能領域に位置するようにフォーカスレンズを駆動する。
【0043】
ステップS504にて目標フォーカスレンズ位置がAF可能領域であると判定された場合、ステップS506へ進む。ステップS506において、レンズマイコン111(第三の制御手段111c)は、フォーカスレンズ制御部109に制御指令を出力し、フォーカスレンズ105を目標フォーカス位置へ駆動する。すなわち第三の制御手段111cは、フォーカスレンズがAF可能領域に位置するとき、被写体距離を維持する際にフォーカスレンズの位置がAF可能領域に含まれるようにMF専用領域が変化した場合、被写体距離を維持するようにフォーカスレンズを駆動する。また第三の制御手段111cは、フォーカスレンズがMF専用領域に位置するとき、被写体距離を維持する際にフォーカスレンズの位置がAF可能領域に含まれるようにMF専用領域が変化した場合、被写体距離を維持するようにフォーカスレンズを駆動する。
【0044】
図7は、本実施例における制御方法の説明図であり、ズームトラッキング処理前のフォーカスレンズ位置がAF可能領域にあるときの被写体距離を維持するフォーカス制御を示す。
図7において、縦軸はフォーカスレンズ位置、横軸はズームレンズ位置をそれぞれ示す。
図7に示されるように、目標フォーカスレンズ位置b2はAF至近端よりも無限側にある。このためレンズマイコン111は、目標フォーカスレンズ位置b2がAF可能領域の範囲内である判定し、フォーカスレンズ105を現在フォーカスレンズ位置a2から目標フォーカス位置b2へ駆動して被写体距離を維持する。
【0045】
ステップS505にて現在フォーカスレンズ位置がMF専用領域であると判定された場合、ステップS506へ進む。ステップS506において、レンズマイコン111は、フォーカスレンズ制御部109に制御指令を出力し、フォーカスレンズ105を目標フォーカスレンズ位置へ駆動させる。
【0046】
図8は、本実施例における制御方法の説明図であり、ズームトラッキング処理前のフォーカスレンズ位置がMF専用領域にあるときの被写体距離を維持するフォーカス制御を示す。
図8において、縦軸はフォーカスレンズ位置、横軸はズームレンズ位置をそれぞれ示す。
図8に示されるように、現在フォーカスレンズ位置a3は、AF至近端よりも至近側にある。このためレンズマイコン111は、現在フォーカスレンズ位置a3がMF専用領域の範囲内にあると判定し、フォーカスレンズ105を目標フォーカス位置b3へ駆動して被写体距離を維持する。
【0047】
本実施例において、MF専用領域は、ズームレンズの位置に応じて変化する。また本実施例において、ズームレンズの位置が広角端(WIDE)である場合、MF専用領域は第一の広さを有し、ズームレンズの位置が望遠端(TELE)である場合、MF専用領域は第一の広さよりも狭い第二の広さを有する。ただし本実施例は、これに限定されるものではなく、ズームレンズの位置(広角端、望遠端)とMF専用領域の広さ(第一の広さ、第二の広さ)との関係が逆であってもよい。
【0048】
以上のように、本実施例において、現在フォーカスレンズ位置がAF可能領域であって、ズームトラッキング処理により被写体距離を維持する目標フォーカスレンズ位置がMF専用領域となる場合、レンズマイコン111はフォーカスレンズ105の移動を制限する。すなわちこの場合、レンズマイコン111は、ユーザのMF操作以外によるAF可能領域からMF専用領域へのフォーカスレンズ105の移動を禁止する。これにより、ユーザが意図せず、フォーカスレンズ105がAF可能領域からMF専用領域へ移動することを防ぐことができる。一方、ズームトラッキング処理前のフォーカスレンズ位置(現在フォーカスレンズ位置)がMF専用領域にある場合、フォーカスレンズ105を被写体距離を維持する目標フォーカスレンズ位置へ駆動する。これにより、被写体のピント状態を維持することが可能となり、ユーザの操作性を向上させることができる。
【実施例2】
【0049】
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例では、実施例1のズームトラッキング処理によるAF可能領域からMF専用領域への切り替えを防ぐため、フォーカスレンズ105をAF至近端へ駆動した後のズームトラッキング処理によるフォーカスレンズ制御の流れについて説明する。
【0050】
図9を参照して、フォーカスレンズ105をAF至近端へ駆動した後のズームトラッキング処理によるフォーカスレンズ制御(制御方法)の流れについて説明する。
図9は、本実施例における制御方法のフローチャートである。
【0051】
まずステップS900において、レンズマイコン111は、フォーカスレンズ105をAF至近端へ駆動した後に処理を開始する。続いてステップS901において、レンズマイコン111は、MF駆動またはAF駆動があったか否かを判定する。ここで、MF駆動はユーザによる操作リング110の操作に基づくフォーカスレンズ115の駆動であり、AF駆動はカメラマイコン206から送信されたフォーカシングに関する制御コマンドに基づくフォーカスレンズ115の駆動である。
【0052】
ステップS901にてMF駆動またはAF駆動があったと判定された場合、ステップS902へ進む。ステップS902にて、レンズマイコン111は、メモリに記憶されたズームレンズ位置とフォーカスレンズ位置との関係を示す電子カムデータ(トラッキング曲線)から現在のズームレンズ102とフォーカスレンズ105の位置に対応する電子カムを更新する。続いてステップS903において、レンズマイコン111は、ズームレンズ位置検出部106の位置検出センサにより検出された信号を用いてズームレンズ102の位置データ(ズームレンズ位置)を取得する。続いてステップS904において、レンズマイコン111は、前回取得したズームレンズ位置とステップS903にて検出されたズームレンズ位置とを比較し、ズーム操作が行われたか否かを判定する。ステップS904にてズーム操作があった場合、ステップS905へ進む。一方、ズーム操作がない場合、ステップS901へ戻り、レンズマイコン111は、MF駆動またはAF駆動の検出とズームレンズ位置の検出とを行う。
【0053】
ステップS905において、レンズマイコン111は、現在のズームレンズ位置における被写体距離を維持する目標フォーカスレンズ位置を算出する。この目標フォーカスレンズ位置は、メモリに記憶されたズームレンズ位置とフォーカスレンズ位置との関係を示す電子カムデータ(トラッキング曲線)と現在保持している電子カム情報とに基づいて算出される。
【0054】
続いてステップS906において、レンズマイコン111は、ステップS905にて算出した目標フォーカスレンズ位置が現在のズームレンズ位置におけるAF可能領域の範囲内にあるか否かを判定する。レンズマイコン111は、メモリに各ズームレンズ位置におけるAF可能領域の至近端データ(AF至近端)を記憶している。このためレンズマイコン111は、目標フォーカスレンズ位置がAF至近端よりも至近側か無限側にあるかに応じて、目標フォーカスレンズ位置がAF可能領域またはMF専用領域のいずれの範囲内にあるかを判定することができる。
【0055】
ステップS906にて目標フォーカスレンズ位置がAF可能領域にあると判定された場合、ステップS907へ進む。ステップS907において、レンズマイコン111は、フォーカスレンズ制御部109に制御指令を出力し、フォーカスレンズ105を目標フォーカス位置へ駆動する。一方、ステップS906にて目標フォーカスレンズ位置がMF専用領域にあると判定された場合、ステップS908へ進む。ステップS908において、レンズマイコン111は、フォーカスレンズ制御部109に制御指令を出力し、フォーカスレンズ105をAF至近端へ駆動する。
【0056】
図10は、本実施例における制御方法の説明図であり、ズームトラッキング処理前のフォーカスレンズ位置(現在のフォーカスレンズ位置)がAF可能領域にあるときの被写体距離に復帰するフォーカス制御を示す。
図10において、縦軸はフォーカスレンズ位置、横軸はズームレンズ位置をそれぞれ示す。
【0057】
図10に示されるように、保持されている電子カムが被写体距離Aに対応する電子カムであって、ズーム操作が行われズームレンズ位置が焦点距離Aから焦点距離Bに駆動された場合、被写体距離Aを維持する目標フォーカスレンズ位置はb4となる。目標フォーカスレンズ位置b4はAF至近端よりも至近側となるため、目標フォーカスレンズ位置b4はMF専用領域と判定される。このためレンズマイコン111は、フォーカスレンズ105をAF至近端c4へ駆動し、AF可能領域を維持する。
【0058】
さらにズーム操作が行われてズームレンズ位置が焦点距離Bから焦点距離Cに移動した場合、被写体距離Aを維持する目標フォーカスレンズ位置はd4となる。目標フォーカスレンズ位置d4はAF至近端よりも無限側であるため、目標フォーカスレンズ位置d4はAF可能領域であると判定される。このためレンズマイコン111は、フォーカスレンズ105を目標フォーカスレンズ位置d4へ駆動し、保持されていた被写体距離に復帰する。
【0059】
本実施例において、フォーカスレンズ105をAF至近端へ駆動した後、被写体距離を維持するフォーカスレンズ目標位置がMF専用領域からAF可能領域となった場合、フォーカスレンズ105を前回の被写体距離を維持する目標フォーカスレンズ位置へ駆動する。これにより、ズームトラッキング処理によるAF可能領域からMF専用領域への切り替えを防ぎつつ、被写体のピント状態を復帰させることが可能となり、ユーザの操作性を向上させることができる。
【実施例3】
【0060】
次に、本発明の実施例3について説明する。本実施例の交換レンズ100において、被写体像の光量を制限する絞りユニット103により撮像素子201の位相差AFセンサに届く光束が小さくなると、AF評価値の精度が低下して高精度なAFが実現できない領域(AF不可能領域)が存在する。本実施例では、絞りユニット103の影響により高精度なAFが実現できない領域をMF専用領域とする。
【0061】
図11は、絞り値(F値)と最短撮影距離との関係を示す図である。
図11において、縦軸は絞り値、横軸は最短撮影距離をそれぞれ示す。
図11に示されるように、最短撮影距離は絞り値に応じて変化し、開放側でAF可能領域であった撮影距離位置は小絞り側でMF専用領域となる。このように本実施例では、絞り値に応じてAF可能領域(AF・MF可能領域)とMF専用領域とが切り替わる。
【0062】
次に、
図12を参照して、本実施例における絞り値の変化によるAF可能領域とMF専用領域との切り替わりの際のフォーカスレンズ制御(制御方法)の流れについて説明する。
図12は、本実施例における制御方法のフローチャートである。
【0063】
まずステップS1200において、レンズマイコン111は、処理を開始する。続いてステップS1201において、レンズマイコン111は、カメラ本体200から送信された制御コマンドに応じて設定された絞り値を取得する。続いてステップS1202において、レンズマイコン111は、前回取得した絞り値とステップS1201にて取得した絞り値とを比較し、絞り値が変化したか否かを判定する。ステップS1202にて絞り値が変化したと判定された場合、ステップS1203へ進む。一方、絞り値が変化していないと判定された場合、ステップS1201へ戻り、レンズマイコン111は絞り値を取得する。
【0064】
ステップS1203において、レンズマイコン111は、絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置がAF可能領域の範囲内であるか否かを判定する。レンズマイコン111は、メモリに各絞り値におけるAF可能領域の至近端データ(AF至近端)を保持している。そしてレンズマイコン111は、絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置がAF至近端よりも至近側または無限側のいずれにあるかにより、絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置がAF可能領域またはMF専用領域のいずれにあるかを判定する。
【0065】
図13は、本実施例における制御方法の説明図であり、絞り値の変更前のフォーカスレンズ位置がAF可能領域であるときの被写体距離を維持するフォーカス制御を示す。
図13において、縦軸はフォーカスレンズ位置、横軸は絞り値をそれぞれ示す。
図13に示されるように、絞り値が絞り値Aから絞り値Bに変更された場合、絞り値の変化前(絞り値A)のフォーカスレンズ位置a5はAF至近端よりも無限側になる。このためレンズマイコン111は、絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置a5がAF可能領域にあると判定する。
【0066】
ステップS1203にて絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置はAF可能領域であると判定された場合、ステップS1204へ進む。ステップS1204において、レンズマイコン111は、絞り値の変化後のフォーカスレンズ位置がAF可能領域の範囲内であるか否かを判定する。レンズマイコン111は、絞り値の変化後のフォーカスレンズ位置がAF至近端よりも至近側か無限側にあるかにより、絞り値の変化後のフォーカスレンズ位置がAF可能領域またはMF専用領域のいずれにあるかを判定する。
図13に示されるように、絞り値の変化後(絞り値B)のフォーカスレンズ位置b5はAF至近端よりも無限側にある。このためレンズマイコン111は、絞り値の変化後のフォーカスレンズ位置b5がAF可能領域にあると判定し、フォーカスレンズ105を駆動させず被写体距離を維持する。
【0067】
ステップS1203にて絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置がMF専用領域にあると判定された場合、レンズマイコン111はフォーカスレンズ105を駆動しない。
【0068】
図14は、本実施例における制御方法の説明図であり、絞り値の変更前のフォーカスレンズ位置がMF専用領域にあるときの被写体距離を維持するフォーカス制御を示す。
図14において、縦軸はフォーカスレンズ位置、横軸は絞り値をそれぞれ示す。
図14に示されるように、絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置a6は、AF至近端よりも至近側にある。このためレンズマイコン111は、絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置a6がMF専用領域にあると判定し、フォーカスレンズ105を駆動させず被写体距離を維持する。
【0069】
ステップS1204にて絞り値の変化後のフォーカスレンズ位置がMF専用領域にあると判定された場合、ステップS1205へ進む。ステップS1205において、レンズマイコン111は、フォーカスレンズ制御部109に制御指令を出力し、フォーカスレンズ105をAF至近端へ駆動する。
【0070】
図15は、本実施例における制御方法の説明図であり、絞り値の変更前のフォーカスレンズ位置がAF可能領域になるときのAF可能領域を維持するフォーカス制御を示す。
図15において、縦軸はフォーカスレンズ位置、横軸は絞り値をそれぞれ示す。
図15に示されるように、絞り値の変化後のフォーカスレンズ位置b7は、AF至近端よりも至近側にある。このためレンズマイコン111は、絞り値の変化後のフォーカスレンズ位置b7がMF専用領域にあると判定し、フォーカスレンズ105をAF至近端c7へ駆動してAF可能領域を維持する。
【0071】
以上のように、本実施例において、MF専用領域は、絞り値(F値)に応じて変化する。また本実施例において、絞り値が第一の絞り値(小絞り状態)である場合、MF専用領域は第三の広さを有し、絞り値が第一の絞り値よりも小さい第二の絞り値(開放状態)である場合、MF専用領域は第三の広さよりも狭い第四の広さを有する。ただし本実施例は、これに限定されるものではなく、絞り値の大小とMF専用領域の広さ(第三の広さ、第四の広さ)との関係が逆であってもよい。
【0072】
本実施例において、絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置がAF可能領域であり、絞り値の変更によりMF専用領域に切り替わる場合、ユーザのMF操作以外でAF可能領域からMF専用領域へ切り替わらないようにフォーカスレンズ105を制御する。すなわちレンズマイコン111は、フォーカスレンズ105をAF可能領域の範囲まで駆動することで、ユーザが意図せずMF専用領域に切り替わることを防ぐことができる。一方、絞り値の変化前のフォーカスレンズ位置がMF専用領域である場合、レンズマイコン111は、フォーカスレンズ105を駆動しないため、被写体のピント状態を維持することが可能となり、ユーザの操作性を向上させることができる。
【0073】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施例の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0074】
各実施例によれば、ユーザが意図せずAF可能領域からMF専用領域へ切り替わることを防止し、ユーザの操作性を向上させることが可能な制御装置、レンズ装置、撮像装置、制御方法、および、プログラムを提供することができる。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0076】
各実施例において、レンズマイコン111は、第一の制御手段111a、第二の制御手段111b、および第三の制御手段111cとしての機能を実行するが、これに限定されるものではない。例えば、制御装置としてのカメラマイコン206が、第一の制御手段、第二の制御手段、または第三の制御手段の少なくとも一つの機能を実行するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0077】
111 レンズマイコン(制御装置)
111a 第一の制御手段
111b 第二の制御手段
111c 第三の制御手段