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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】光学積層体、レンズ部および表示方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20241105BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241105BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
B32B7/023
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022212218
(22)【出願日】2022-12-28
(65)【公開番号】P2024095146
(43)【公開日】2024-07-10
【審査請求日】2023-10-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 理
(72)【発明者】
【氏名】北野 康平
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-540833(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0221079(US,A1)
【文献】国際公開第2022/075264(WO,A1)
【文献】特開2003-337221(JP,A)
【文献】特開2005-049652(JP,A)
【文献】特開2005-134713(JP,A)
【文献】国際公開第2021/145446(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B27/01-27/02
G02B5/30
G02F1/13
G02F1/1335
G02F1/13357
G02F1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光部材および第1のλ/4部材を介して出射された画像を表す光を、第2のλ/4部材を通過させるステップと、
前記第2のλ/4部材を通過した光を、反射型偏光部材で反射させるステップと、
前記反射型偏光部材で反射させた光を、前記第2のλ/4部材により前記反射型偏光部材を透過可能にするステップと、を有する、表示方法に用いられる光学積層体であって、
基材と表面処理層とを有する積層フィルムと、位相差部材と、を備え、
前記積層フィルムの基材と前記位相差部材とは隣接して配置され、
前記位相差部材は、第一位相差層と接着剤層と第二位相差層とをこの順に含み、
前記接着剤層は樹脂の硬化層であり、
前記接着剤層の厚みは0.5μm以上1.3μm以下であ
前記第一位相差層は、前記第2のλ/4部材に対応する、
光学積層体。
【請求項2】
積層体平滑性が0.7arcmin以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記積層フィルムの表面平滑性は0.5arcmin以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記積層フィルムの前記基材は(メタ)アクリル系樹脂を含む、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記積層フィルムの前記表面処理層は反射防止機能を有する、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記第一位相差層は、nx>ny≧nzの屈折率特性を示し、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を満たす、請求項1に記載の光学積層体:
ここで、Re(450)は23℃における波長450nmの光で測定した面内位相差を示し、Re(550)は23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差を示し、Re(650)は23℃における波長650nmの光で測定した面内位相差を示す。
【請求項7】
前記第二位相差層はnz>nx≧nyの屈折率特性を示す、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項8】
視感度補正単体透過率のY値が93%以上である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項9】
ユーザに対して画像を表示する表示システムに用いられるレンズ部であって、
画像を表す表示素子の表示面から前方に向けて出射され、偏光部材および第1のλ/4部材を通過した光を反射する反射型偏光部材と、
前記表示素子と前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第一レンズ部と、
前記表示素子と前記第一レンズ部との間に配置され、前記表示素子から出射された光を透過させ、前記反射型偏光部材で反射された光を前記反射型偏光部材に向けて反射させるハーフミラーと、
前記反射型偏光部材の前方に配置される第二レンズ部と、
前記ハーフミラーと前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される請求項1からのいずれか一項に記載の光学積層体と、を備え、
前記光学積層体は、前記偏光部材および前記第1のλ/4部材を介して出射された画像を表す光を、第2のλ/4部材を通過させるステップと、
前記第2のλ/4部材を通過した光を、前記反射型偏光部材で反射させるステップと、
前記反射型偏光部材で反射させた光を、前記第2のλ/4部材により前記反射型偏光部材を透過可能にするステップと、を有する、表示方法に用いられる光学積層体であって、
前記光学積層体の第一位相差層は、前記第2のλ/4部材に対応する、
レンズ部。
【請求項10】
偏光部材および第1のλ/4部材を介して出射された画像を表す光を、ハーフミラーおよび第一レンズ部を通過させるステップと、
前記ハーフミラーおよび前記第一レンズ部を通過した光を、請求項1からのいずれか一項に記載の光学積層体を通過させるステップと、
前記光学積層体を通過した光を、反射型偏光部材で前記ハーフミラーに向けて反射させるステップと、
前記反射型偏光部材および前記ハーフミラーで反射させた光を、前記光学積層体により前記反射型偏光部材を透過可能にするステップと、
前記反射型偏光部材を透過した光を、第二レンズ部を通過させるステップと、
を有する、表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体、レンズ部および表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置においては、画像表示を実現し、画像表示の性能を高めるために、一般的に、偏光部材、位相差部材等の光学部材が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、画像表示装置の新たな用途が開発されている。例えば、Virtual Reality(VR)を実現するためのディスプレイ付きゴーグル(VRゴーグル)が製品化され始めている。VRゴーグルは様々な場面での利用が検討されていることから、その軽量化、視認性の向上等が望まれている。軽量化は、例えば、VRゴーグルに用いられるレンズを薄型化することで達成され得る。一方で、薄型レンズを用いた表示システムに適した光学部材の開発も望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-103286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑み、本発明はVRゴーグルの軽量化、視認性の向上を実現し得る光学積層体の提供を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.本発明の実施形態による光学積層体は、基材と表面処理層とを有する積層フィルムと、位相差部材と、を備え、前記積層フィルムの基材と前記位相差部材とは隣接して配置され、前記位相差部材は、第一位相差層と接着剤層と第二位相差層とをこの順に含み、前記接着剤層の厚みは0.5μm以上1.3μm以下である。
2.上記1に記載の光学積層体は、積層体平滑性が0.7arcmin以下であってもよい。
3.上記1または2に記載の光学積層体において、上記接着剤層は樹脂の硬化層であってもよい。
4.上記1から3のいずれかに記載の光学積層体において、上記積層フィルムの表面平滑性は0.5arcmin以下であってもよい。
5.上記1から4のいずれかに記載の光学積層体において、上記積層フィルムの上記基材は(メタ)アクリル系樹脂を含んでもよい。
6.上記1から5のいずれかに記載の光学積層体において、上記積層フィルムの上記表面処理層は反射防止機能を有してもよい。
7.上記1から6のいずれかに記載の光学積層体において、上記第一位相差層は、nx>ny≧nzの屈折率特性を示してもよく、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を満たしてもよい。
8.上記1から7のいずれかに記載の光学積層体において、上記第二位相差層はnz>nx≧nyの屈折率特性を示してもよい。
9.上記1から8のいずれかに記載の光学積層体は、視感度補正単体透過率のY値が93%以上であってもよい。
10.本発明の実施形態によるレンズ部は、ユーザに対して画像を表示する表示システムに用いられるレンズ部であって、画像を表す表示素子の表示面から前方に向けて出射され、偏光部材および第1のλ/4部材を通過した光を反射する反射型偏光部材と、前記表示素子と前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第一レンズ部と、前記表示素子と前記第一レンズ部との間に配置され、前記表示素子から出射された光を透過させ、前記反射型偏光部材で反射された光を前記反射型偏光部材に向けて反射させるハーフミラーと、前記反射型偏光部材の前方に配置される第二レンズ部と、前記ハーフミラーと前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される上記1から9のいずれかに記載の光学積層体と、を備える。
11.本発明の実施形態による表示方法は、偏光部材および第1のλ/4部材を介して出射された画像を表す光を、ハーフミラーおよび第一レンズ部を通過させるステップと、前記ハーフミラーおよび前記第一レンズ部を通過した光を、上記1から9のいずれかに記載の光学積層体を通過させるステップと、前記光学積層体を通過した光を、反射型偏光部材で前記ハーフミラーに向けて反射させるステップと、前記反射型偏光部材および前記ハーフミラーで反射させた光を、前記光学積層体により前記反射型偏光部材を透過可能にするステップと、前記反射型偏光部材を透過した光を、第二レンズ部を通過させるステップと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態による光学積層体によれば、VRゴーグルの軽量化、視認性の向上を実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態に係る表示システムの概略の構成を示す模式図である。
図2図1に示す表示システムのレンズ部の詳細の一例を示す模式的な断面図である。
図3】反射型偏光フィルムに含まれる多層構造の一例を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚み、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、図面については、同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0010】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。
【0011】
図1は本発明の1つの実施形態に係る表示システムの概略の構成を示す模式図である。図1では、表示システム2の各構成要素の配置および形状等を模式的に図示している。表示システム2は、表示素子12と、反射型偏光部材14と、第一レンズ部16と、ハーフミラー18と、第一位相差部材20と、第二位相差部材22と、第二レンズ部24とを備えている。反射型偏光部材14は、表示素子12の表示面12a側である前方に配置され、表示素子12から出射された光を反射し得る。第一レンズ部16は表示素子12と反射型偏光部材14との間の光路上に配置され、ハーフミラー18は表示素子12と第一レンズ部16との間に配置されている。第一位相差部材20は表示素子12とハーフミラー18との間の光路上に配置され、第二位相差部材22はハーフミラー18と反射型偏光部材14との間の光路上に配置されている。
【0012】
ハーフミラー、もしくは、第一レンズ部から前方に配置される構成要素(図示例では、ハーフミラー18、第一レンズ部16、第二位相差部材22、反射型偏光部材14および第二レンズ部24)をまとめてレンズ部(レンズ部4)と称する場合がある。
【0013】
表示素子12は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイであり、画像を表示するための表示面12aを有している。表示面12aから出射される光は、例えば、表示素子12に含まれ得る偏光部材(代表的には、偏光フィルム)を通過して出射され、第1の直線偏光とされている。
【0014】
第一位相差部材20は、第一位相差部材20に入射した第1の直線偏光を第1の円偏光に変換し得る第1のλ/4部材を含む。第一位相差部材が第1のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第一位相差部材は第1のλ/4部材に相当し得る。第一位相差部材20は、表示素子12に一体に設けられてもよい。
【0015】
ハーフミラー18は、表示素子12から出射された光を透過させ、反射型偏光部材14で反射された光を反射型偏光部材14に向けて反射させる。ハーフミラー18は、第一レンズ部16に一体に設けられている。
【0016】
第二位相差部材22は、反射型偏光部材14およびハーフミラー18で反射させた光を、反射型偏光部材14を透過させ得る第2のλ/4部材を含む。第二位相差部材が第2のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第二位相差部材は第2のλ/4部材に相当し得る。第二位相差部材22は、第一レンズ部16に一体に設けられてもよい。
【0017】
第一位相差部材20に含まれる第1のλ/4部材から出射された第1の円偏光は、ハーフミラー18および第一レンズ部16を通過し、第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第2の直線偏光に変換される。第2のλ/4部材から出射された第2の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過せずにハーフミラー18に向けて反射される。このとき、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光部材14で反射される。
【0018】
反射型偏光部材14で反射された第2の直線偏光は第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第2の円偏光に変換され、第2のλ/4部材から出射された第2の円偏光は第一レンズ部16を通過してハーフミラー18で反射される。ハーフミラー18で反射された第2の円偏光は、第一レンズ部16を通過し、第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第3の直線偏光に変換される。第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。このとき、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。
【0019】
反射型偏光部材14を透過した光は、第二レンズ部24を通過して、ユーザの目26に入射する。
【0020】
例えば、表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と反射型偏光部材14の反射軸とは、互いに略平行に配置されてもよいし、略直交に配置されてもよい。表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と第一位相差部材20に含まれる第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。
【0021】
第1のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第1のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第1のλ/4部材は、好ましくは、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を満たす。第1のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0022】
第2のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第2のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第2のλ/4部材は、好ましくは、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を満たす。第2のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0023】
レンズ部4において、第一レンズ部16と第二レンズ部24との間には空間が形成され得る。この場合、第一レンズ部16と第二レンズ部24との間に配置される部材は、第一レンズ部16と第二レンズ部24のいずれかに一体に設けられることが好ましい。例えば、第一レンズ部16と第二レンズ部24との間に配置される部材は、接着層を介して第一レンズ部16と第二レンズ部24のいずれかに一体化させることが好ましい。このような形態によれば、例えば、各部材の取扱い性に優れ得る。接着層は、接着剤で形成されてもよいし、粘着剤で形成されてもよい。具体的には、接着層は、接着剤層であってもよいし、粘着剤層であってもよい。接着層の厚みは、例えば0.05μm~30μmである。
【0024】
図2は、図1に示す表示システムのレンズ部の詳細の一例を示す模式的な断面図である。具体的には、図2は、第一レンズ部と第二レンズ部とこれらの間に配置される部材を示している。レンズ部4は、第一レンズ部16と、第一レンズ部16に隣接して設けられる第一積層部100と、第二レンズ部24と、第二レンズ部24に隣接して設けられる第二積層部200を備えている。図2に示す例では、第一積層部100と第二積層部200とは離間して配置されている。図示しないが、ハーフミラーは、第一レンズ部16に一体に設けられ得る。以下、第一積層部を光学積層体と称する場合がある。
【0025】
第一積層部100は、第二位相差部材22と、第一レンズ部16と第二位相差部材22との間に配置される接着層(例えば、粘着剤層)41とを含み、接着層41により第一レンズ部16に一体に設けられている。第一積層部100は、第二位相差部材22の前方に配置される第一保護部材31をさらに含んでいる。第一保護部材31は、第二位相差部材22に接着層(例えば、粘着剤層)42を介して積層され、第二位相差部材22に隣接して配置されている。第一保護部材31は、第一積層部100の最表面に位置し得る。なお、本明細書において、隣接とは、直接隣り合っているだけでなく、接着層を介して隣り合っていることも包含する。
【0026】
図2に示す例では、第二位相差部材22は、第2のλ/4部材(第一位相差層)22aに加えて、屈折率特性がnz>nx≧nyの関係を示す部材(第二位相差層)22bを含んでいる。第二位相差部材22は、第一位相差層22aと第二位相差層22bとの積層構造を有している。nz>nx≧nyの関係を示す部材22bを用いることにより、光抜け(例えば、斜め方向の光抜け)を防止し得る。図2に示すとおり、第二位相差部材22において、nz>nx≧nyの関係を示す部材22bより第2のλ/4部材22aの方が前方に位置していることが好ましい。
【0027】
第2のλ/4部材(第一位相差層)22aとnz>nx≧nyの関係を示す部材(第二位相差層)22bとは、接着剤層50を介して積層されている。第二位相差部材22は、第一位相差層22aと接着剤層50と第二位相差層22bとを含んでいる。接着剤層50を用いて位相差層を積層することにより、位相差層の割れやクラックの発生を抑制し得る。また、位相差層間の剥がれを防止し得る。そして、耐久性に優れた光学積層体を得ることができる。例えば、第一位相差層と第二位相差層の少なくとも一方(例えば、第二位相差層)の厚みが10μm以下である場合、割れやクラックが生じやすい傾向にある。
【0028】
上記第2のλ/4部材は、好ましくは、屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。第2のλ/4部材のNz係数は、好ましくは0.9~3であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。
【0029】
第2のλ/4部材は、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で形成される。第2のλ/4部材は、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層であり得る。
【0030】
上記樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。組み合わせる方法としては、例えば、ブレンド、共重合が挙げられる。第2のλ/4部材が逆分散波長特性を示す場合、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)を含む樹脂フィルムが好適に用いられ得る。
【0031】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、任意の適切なポリカーボネート系樹脂を用いることができる。例えば、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、第2のλ/4部材に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂および第2のλ/4部材の形成方法の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0032】
樹脂フィルムの延伸フィルムで構成される第2のλ/4部材の厚みは、例えば10μm~100μmであり、好ましくは10μm~70μmであり、より好ましくは20μm~60μmである。
【0033】
上記液晶化合物の配向固化層は、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層である。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。第2のλ/4部材においては、代表的には、棒状の液晶化合物が第2のλ/4部材の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。棒状の液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーおよび液晶モノマーが挙げられる。液晶化合物は、好ましくは、重合可能である。液晶化合物が重合可能であると、液晶化合物を配向させた後に重合させることで、液晶化合物の配向状態を固定できる。
【0034】
上記液晶化合物の配向固化層(液晶配向固化層)は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0035】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0036】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性または架橋性である場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0037】
上記液晶化合物としては、任意の適切な液晶ポリマーおよび/または液晶モノマーが用いられる。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。液晶化合物の具体例および液晶配向固化層の作製方法は、例えば、特開2006-163343号公報、特開2006-178389号公報、国際公開第2018/123551号公報に記載されている。これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0038】
液晶配向固化層で構成される第2のλ/4部材の厚みは、例えば1μm~10μmであり、好ましくは1μm~8μmであり、より好ましくは1μm~6μmであり、さらに好ましくは1μm~4μmである。
【0039】
上記屈折率特性がnz>nx≧nyの関係を示す部材(第二位相差層)の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-260nm~-10nmであり、より好ましくは-230nm~-15nmであり、さらに好ましくは-215nm~-20nmである。1つの実施形態においては、第二位相差層は、その屈折率がnx=nyの関係を示す、いわゆる、ポジティブCプレートである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。例えば、Re(550)が10nm未満である場合も包含する。別の実施形態においては、第二位相差層は、その屈折率がnx>nyの関係を示す。この場合、第二位相差層の面内位相差Re(550)は、好ましくは10nm~150nmであり、より好ましくは10nm~80nmである。
【0040】
屈折率特性がnz>nx≧nyの関係を示す部材は、任意の適切な材料で形成され得る。好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムから構成される。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであってもよいし、液晶ポリマーであってもよい。このような液晶化合物およびフィルムの形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0042]に記載の液晶化合物および形成方法が挙げられる。この場合、厚みは、好ましくは0.1μm~5μmであり、より好ましくは0.5μm~4μmである。
【0041】
別の好ましい具体例として、屈折率特性がnz>nx≧nyの関係を示す部材は、特開2012-32784号公報に記載のフマル酸ジエステル系樹脂で形成された位相差フィルムであってもよい。この場合、厚みは、好ましくは5μm~50μmであり、より好ましくは10μm~35μmである。
【0042】
第二位相差部材22に含まれる接着剤層50は、任意の適切な接着剤で形成され得る。接着剤は、例えば、接着剤層を形成する過程で、その状態が液体から固体へ不可逆的に変化するものであり、塗布時には流動性を有し、硬化処理(例えば、活性エネルギー線照射、加熱)により硬化する性質を有する。接着剤としては、好ましくは、硬化型接着剤が用いられる。具体的には、接着剤層50は、樹脂の硬化層であることが好ましい。硬化型接着剤としては、好ましくは、紫外線硬化型接着剤が用いられる。
【0043】
上記紫外線硬化型接着剤は、硬化性モノマーとして、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物等の硬化性モノマーを含む。好ましくは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が用いられる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基をいう。
【0044】
位相差部材に含まれる接着剤層の厚みは、1.3μm以下であり、好ましくは1.1μm以下であり、より好ましくは0.9μm以下である。このような厚みによれば、極めて平滑性に優れた光学積層体を得ることができる。具体的には、接着剤層の形成に際し、接着剤は硬化収縮し得る。この硬化収縮は得られる光学積層体の平滑性に大きく影響し得る。上記表示システムにおいては、レンズ部において(例えば、凸レンズにより)画像が拡大され得、光学積層体の平滑性は視認性に大きく影響し得る。厚みの薄い接着剤層によれば、硬化収縮による影響を小さくして、平滑性に優れた光学積層体を得ることができる。また、このような光学積層体によれば、上記表示システムにおいて顕著に優れた視認性を実現し得る。例えば、ゆがみのない、明瞭な画像を実現し得る。一方、位相差部材に含まれる接着剤層の厚みは、例えば、耐久性の観点から、0.5μm以上であることが好ましい。
【0045】
上記第一保護部材は、代表的には、基材を含む。基材の厚みは、好ましくは5μm~80μmであり、より好ましくは10μm~50μmであり、さらに好ましくは15μm~40μmである。基材の表面平滑性は、好ましくは0.7arcmin以下であり、より好ましくは0.6arcmin以下であり、さらに好ましくは0.5arcmin以下である。なお、表面平滑性は、照射光を対象の表面にフォーカスさせることにより測定することができる。
【0046】
基材は、任意の適切なフィルムで構成され得る。基材を構成するフィルムの主成分となる材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の樹脂が挙げられる。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。1つの実施形態においては、基材は、(メタ)アクリル系樹脂で構成されることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂を採用することにより、押出し成形により、平滑性に優れた(例えば、上記表面平滑性を満足する)基材を製膜し得る。そして、平滑性に優れた保護部材が得られ得る。
【0047】
第一保護部材は、好ましくは、基材と基材上に形成される表面処理層とを有する積層フィルムで構成される。積層フィルムの厚みは、好ましくは10μm~80μmであり、より好ましくは15μm~60μmであり、さらに好ましくは20μm~45μmである。表面処理層の厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは1μm~7μmであり、さらに好ましくは2μm~5μmである。
【0048】
表面処理層は、代表的には、ハードコート層を含む。ハードコート層は、代表的には、基材にハードコート層形成材料を塗布し、塗布層を硬化させることにより形成される。ハードコート層形成材料は、代表的には、層形成成分としての硬化性化合物を含む。硬化性化合物の硬化メカニズムとしては、例えば、熱硬化型、光硬化型が挙げられる。硬化性化合物としては、例えば、モノマー、オリゴマー、プレポリマーが挙げられる。好ましくは、硬化性化合物として多官能モノマーまたはオリゴマーが用いられる。多官能モノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーまたはオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートまたはウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマー、エポキシ系モノマーまたはオリゴマー、シリコーン系モノマーまたはオリゴマーが挙げられる。
【0049】
ハードコート層の厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは1μm~7μmであり、さらに好ましくは2μm~5μmである。
【0050】
表面処理層は、機能層を含むことが好ましい。機能層は、好ましくは、反射防止層として機能する。好ましい実施形態においては、表面処理層は、上記基材側から、上記ハードコート層と反射防止層とをこの順に含む。機能層の厚みは、好ましくは0.05μm~10μmであり、より好ましくは0.1μm~5μmであり、さらに好ましくは0.1μm~2μmである。
【0051】
表面処理層を有する第一保護部材は、表面処理層が前方側に位置するように配置され得る。具体的には、表面処理層が第一積層部の最表面に位置し得る。表面処理層は、任意の適切な機能を有し得る。表面処理層は、例えば、空気との界面における光損失を抑制させる観点および視認性を向上させる観点から、反射防止機能を有することが好ましい。1つの実施形態においては、第一保護部材は、波長420nmから680nmの範囲における5°正反射率スペクトルの最大値が2.0%以下であることが好ましく、より好ましくは1.2%以下であり、さらに好ましくは1.0%以下であり、特に好ましくは0.8%以下である。ここで、5°正反射率は、例えば、粘着剤を用いて測定対象を黒アクリル板に貼り付けて測定サンプルを作製し、測定装置としては、分光光度計(日立ハイテクノロジー社製、商品名「U-4100」)を用い、測定サンプルに対する光の入射角は5°として測定することができる。
【0052】
第一保護部材の表面平滑性は、好ましくは0.5arcmin以下であり、より好ましくは0.4arcmin以下である。実質的には、第一保護部材の表面平滑性は、例えば0.1arcmin以上である。光学積層体100の積層体平滑性は、好ましくは0.7arcmin以下であり、より好ましくは0.6arcmin以下であり、さらに好ましくは0.5arcmin以下である。光学積層体がこのような積層体平滑性を満足することにより、拡散光の発生を抑制し、画像が不明瞭になることを抑制し得る。光学積層体100の積層体平滑性は、例えば0.1arcmin以上である。なお、積層体平滑性は、照射光を対象に照射して、対象(積層体)を構成する各部材の反射および透過具合を検出することにより得られ得る。
【0053】
光学積層体100は、優れた耐久性を有し得る。例えば、光学積層体100は、80℃の温度環境下に500時間置かれた後の積層体平滑性が、好ましくは0.7arcmin以下であり、より好ましくは0.6arcmin以下であり、さらに好ましくは0.5arcmin以下である。また、光学積層体100は、-40℃の温度環境下に500時間置いた後の積層体平滑性が、好ましくは0.7arcmin以下であり、より好ましくは0.6arcmin以下であり、さらに好ましくは0.5arcmin以下である。
【0054】
光学積層体100は、高い透過率を有し得る。例えば、光学積層体100は、視感度補正単体透過率のY値が、例えば90%以上であり、好ましくは93%以上であり、より好ましくは94%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。
【0055】
第二積層部200は、反射型偏光部材14と、反射型偏光部材14と第二レンズ部24との間に配置される接着層(例えば、粘着剤層)とを含んでいる。第二積層部200は、例えば、視認性向上の観点から、反射型偏光部材14と第二レンズ部24との間に配置される吸収型偏光部材28をさらに含んでいる。吸収型偏光部材28は、反射型偏光部材14の前方に接着層(例えば、粘着剤層)44を介して積層されている。反射型偏光部材14の反射軸と吸収型偏光部材28の吸収軸とは互いに略平行に配置され得、反射型偏光部材14の透過軸と吸収型偏光部材28の透過軸とは互いに略平行に配置され得る。接着層を介して積層することにより、反射型偏光部材14と吸収型偏光部材28とが固定され、反射軸と吸収軸(透過軸と透過軸)との軸配置のズレを防止することができる。また、反射型偏光部材14と吸収型偏光部材28との間に形成され得る空気層による悪影響を抑制することができる。
【0056】
第二積層部200は、反射型偏光部材14の後方に配置される第二保護部材32をさらに含んでいる。第二保護部材32は、反射型偏光部材14に接着層(例えば、粘着剤層)43を介して積層されている。第二保護部材32は、第二積層部200の最表面に位置し得る。第一保護部材31と第二保護部材32とは、空間を介して対向して配置されている。第二保護部材は、上記第一保護部材と同様、代表的には、基材と表面処理層とを有する積層フィルムであり得る。この場合、表面処理層が第二積層部の最表面に位置し得る。第二保護部材の詳細については、上記第一保護部材と同様の説明を適用することができる。具体的には、第二保護部材の反射特性とその効果、平滑性、厚みおよび構成材料については、上記第一保護部材と同様の説明を適用することができる。
【0057】
図2に示す例では、第二積層部200は、吸収型偏光部材28と第二レンズ部24との間に配置される第三位相差部材30をさらに含んでいる。第三位相差部材30は、吸収型偏光部材28に接着層(例えば、粘着剤層)45を介して積層されている。また、第三位相差部材30は、第二レンズ部24に接着層(例えば、粘着剤層)46を介して積層され、第二積層部200は、第二レンズ部24に一体に設けられている。第三位相差部材30は、例えば、第3のλ/4部材を含む。吸収型偏光部材28の吸収軸と第三位相差部材30に含まれる第3のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。このような部材を設けることにより、例えば、第二レンズ部16側からの外光の反射を防止することができる。第三位相差部材が第3のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第三位相差部材は第3のλ/4部材に相当し得る。
【0058】
上記反射型偏光部材は、その透過軸に平行な偏光(代表的には、直線偏光)をその偏光状態を維持したまま透過させ、それ以外の偏光状態の光を反射し得る。反射型偏光部材としては、代表的には、多層構造を有するフィルム(反射型偏光フィルムと称する場合がある)で構成される。この場合、反射型偏光部材の厚みは、例えば10μm~150μmであり、好ましくは20μm~100μmであり、さらに好ましくは30μm~60μmである。
【0059】
図3は、反射型偏光フィルムに含まれる多層構造の一例を示す模式的な斜視図である。多層構造14aは、複屈折性を有する層Aと複屈折性を実質的に有さない層Bとを交互に有する。多層構造を構成する層の総数は、50~1000であってもよい。例えば、A層のx軸方向の屈折率nxはy軸方向の屈折率nyより大きく、B層のx軸方向の屈折率nxとy軸方向の屈折率nyとは実質的に同一であり、A層とB層との屈折率差は、x軸方向において大きく、y軸方向においては実質的にゼロである。その結果、x軸方向が反射軸となり、y軸方向が透過軸となり得る。A層とB層とのx軸方向における屈折率差は、好ましくは0.2~0.3である。
【0060】
上記A層は、代表的には、延伸により複屈折性を発現する材料で構成される。このような材料としては、例えば、ナフタレンジカルボン酸ポリエステル(例えば、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネートおよびアクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)が挙げられる。上記B層は、代表的には、延伸しても複屈折性を実質的に発現しない材料で構成される。このような材料としては、例えば、ナフタレンジカルボン酸とテレフタル酸とのコポリエステルが挙げられる。上記多層構造は、共押出と延伸とを組み合わせて形成され得る。例えば、A層を構成する材料とB層を構成する材料とを押し出した後、多層化する(例えば、マルチプライヤーを用いて)。次いで、得られた多層積層体を延伸する。図示例のx軸方向は、延伸方向に対応し得る。
【0061】
反射型偏光フィルムの市販品として、例えば、3M社製の商品名「DBEF」、「APF」、日東電工社製の商品名「APCF」が挙げられる。
【0062】
反射型偏光部材(反射型偏光フィルム)の直交透過率(Tc)は、例えば0.01%~3%であり得る。反射型偏光部材(反射型偏光フィルム)の単体透過率(Ts)は、例えば43%~49%であり、好ましくは45%~47%である。反射型偏光部材(反射型偏光フィルム)の偏光度(P)は、例えば92%~99.99%であり得る。
【0063】
上記直交透過率、単体透過率および偏光度は、例えば、紫外可視分光光度計を用いて測定することができる。偏光度Pは、紫外可視分光光度計を用いて、単体透過率Ts、平行透過率Tpおよび直交透過率Tcを測定し、得られたTpおよびTcから、下記式により求めることができる。なお、Ts、TpおよびTcは、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。
偏光度P(%)={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
【0064】
上記吸収型偏光部材は、代表的には、二色性物質を含む樹脂フィルム(吸収型偏光膜と称する場合がある)を含み得る。吸収型偏光膜の厚みは、例えば1μm以上20μm以下であり、2μm以上15μm以下であってもよく、12μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0065】
上記吸収型偏光膜は、単層の樹脂フィルムから作製してもよく、二層以上の積層体を用いて作製してもよい。
【0066】
単層の樹脂フィルムから作製する場合、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理等を施すことにより吸収型偏光膜を得ることができる。中でも、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られる吸収型偏光膜が好ましい。
【0067】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。
【0068】
上記二層以上の積層体を用いて作製する場合の積層体としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる吸収型偏光膜は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を吸収型偏光膜とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる吸収型偏光膜の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を吸収型偏光膜の保護層としてもよく)、樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような吸収型偏光膜の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0069】
吸収型偏光部材(吸収型偏光膜)の直交透過率(Tc)は、0.5%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.05%以下である。吸収型偏光部材(吸収型偏光膜)の単体透過率(Ts)は、例えば41.0%~45.0%であり、好ましくは42.0%以上である。吸収型偏光部材(吸収型偏光膜)の偏光度(P)は、例えば99.0%~99.997%であり、好ましくは99.9%以上である。
【0070】
上記第3のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第3のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第3のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。第3のλ/4部材は、好ましくは、屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。第3のλ/4部材のNz係数は、好ましくは0.9~3であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。
【0071】
第3のλ/4部材は、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で形成される。第3のλ/4部材は、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層であり得る。樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層で構成される第3のλ/4部材については、上記第2のλ/4部材と同様の説明を適用することができる。第2のλ/4部材と第3のλ/4部材とは、構成(例えば、形成材料、厚み、光学特性等)が同じ部材であってもよく、異なる構成の部材であってもよい。
【0072】
上記各部材の積層に用いられる粘着剤層の厚みは、それぞれ、任意の適切な厚みに設定され得る。上記各部材の積層に用いられる粘着剤層のそれぞれの厚みは、好ましくは3μm以上20μm以下であり、15μm以下であってもよく、12μm以下であってもよく、7μm以下であってもよい。このような厚みによれば、粘着剤層表面の凹凸の度合いは抑制され得、積層部は平滑性に優れ得る。
【実施例
【0073】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、厚み、位相差値および表面平滑性は下記の測定方法により測定した値である。また、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
<厚み>
10μm以下の厚みは、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、製品名「JSM-7100F」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
<位相差値>
ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axometrics社製、製品名「Axoscan」)を用いて、23℃における各波長での位相差値を測定した。
<表面平滑性>
走査型白色干渉計(Zygo社製、製品名「NewView9000」)を用いて表面平滑性を測定した。具体的には、防振台つき測定台に測定試料を載せ、単一白色LED照明を用いて干渉縞を発生させ、基準面を持った干渉対物レンズ(1.4倍)をZ方向(厚み方向)にスキャンすることで、12.4mm□の視野範囲における測定対象最表面の平滑性(表面平滑性)を選択的に取得した。
測定対象が粘着剤層の場合は、マイクロスライドガラス(松浪硝子工業社製、製品名「S200200」)に粘着剤層を貼り合わせ、むき出しの粘着面の平滑性を測定した。測定対象がフィルムの場合は、上記ガラスに厚み5μmの凹凸の少ないアクリル系粘着剤層を形成し、この粘着面に測定対象のフィルムを異物や気泡、変形のスジが入り込まないようにラミネートし、粘着剤層と反対側の表面の平滑性を測定した。なお、上記厚み5μmの凹凸の少ないアクリル系粘着剤層の表面平滑性は0.30arcminであった。
解析については、角度の指標「Slope magnitude RMS」を2倍した値(2σに相当)を、表面平滑性(単位:arcmin)と定義した。
【0074】
[実施例1]
(λ/4部材の作製)
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン29.60質量部(0.046mol)、イソソルビド(ISB)29.21質量部(0.200mol)、スピログリコール(SPG)42.28質量部(0.139mol)、ジフェニルカーボネート(DPC)63.77質量部(0.298mol)及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2質量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネート系樹脂を水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
【0075】
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み135μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、幅方向に、延伸温度143℃、延伸倍率2.8倍で延伸し、厚み47μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムのRe(550)は143nmであり、Re(450)/Re(550)は0.86であり、Nz係数は1.12であった。
【0076】
(ポジティブCプレートの形成)
下記化学式(1)(式中の数字65および35はモノマーユニットのモル%を示し、便宜的にブロックポリマー体で表している:重量平均分子量5000)で示される側鎖型液晶ポリマー20重量部、ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名PaliocolorLC242)80重量部および光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製:商品名イルガキュア907)5重量部をシクロペンタノン200重量部に溶解して液晶塗工液を調製した。そして、垂直配向処理を施したPET基材に当該塗工液をバーコーターにより塗工した後、80℃で4分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。この液晶層に紫外線を照射し、液晶層を硬化させることにより、厚みが4μm、Rth(550)が-100nmのポジティブCプレートを基材上に形成した。
【化1】
【0077】
(保護部材の作製)
ラクトン環構造を有するアクリルフィルム(厚み40μm、表面平滑性0.45arcmin)に、下記のハードコート層形成材料を塗布して90℃で1分間加熱し、加熱後の塗布層に高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚み4μmのハードコート層が形成されたアクリルフィルム(厚み44μm、ハードコート層側の表面平滑性0.4arcmin)を作製した。
次いで、上記ハードコート層上に、下記の反射防止層形成用塗工液Aをワイヤーバーで塗工し、塗工した塗工液を80℃で1分間加熱し、乾燥させて塗膜を形成した。乾燥後の塗膜に、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射して塗膜を硬化させ、厚み140nmの反射防止層Aを形成した。
続いて、反射防止層A上に、下記の反射防止層形成用塗工液Bをワイヤーバーで塗工し、塗工した塗工液を80℃で1分間加熱し、乾燥させて塗膜を形成した。乾燥後の塗膜に、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射して塗膜を硬化させ、厚み105nmの反射防止層Bを形成した。
こうして、保護部材(厚み44μm、反射防止層側の表面平滑性0.4arcmin)を得た。
【0078】
(ハードコート層形成材料)
ウレタンアクリルオリゴマー(新中村化学社製、「NKオリゴ UA-53H」)50部、ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコート#300」)30部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業社製)20部、レベリング剤(DIC社製、「GRANDIC PC4100」)1部および光重合開始剤(チバ・ジャパン社製、「イルガキュア907」)3部を混合し、固形分濃度が50%になるようにメチルイソブチルケトンで希釈して、ハードコート層形成材料を調製した。
【0079】
(反射防止層形成用塗工液A)
多官能アクリレート(荒川化学工業株式会社製、商品名「オプスターKZ6728」、固形分20重量%)100重量部、レベリング剤(DIC社製、「GRANDIC PC4100」)3重量部、および光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」、固形分100重量%)3重量部を混合した。その混合物に、希釈溶媒として酢酸ブチルを用いて固形分が12重量%となるようにし、攪拌して反射防止層形成用塗工液Aを調製した。
【0080】
(反射防止層形成用塗工液B)
ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」、固形分100重量%)100重量部、中空ナノシリカ粒子(日揮触媒化成工業株式会社製、商品名「スルーリア5320」、固形分20重量%、重量平均粒子径75nm)150重量部、中実ナノシリカ粒子(日産化学工業株式会社製、商品名「MEK-2140Z-AC」、固形分30重量%、重量平均粒子径10nm)50重量部、フッ素元素含有添加剤(信越化学工業株式会社製、商品名「KY-1203」、固形分20重量%)12重量部、および光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」、固形分100重量%)3重量部を混合した。その混合物に、希釈溶媒としてTBA(ターシャリーブチルアルコール)、MIBK(メチルイソブチルケトン)およびPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を60:25:15重量比で混合した混合溶媒を添加して全体の固形分が4重量%となるようにし、攪拌して反射防止層形成用塗工液Bを調製した。
【0081】
(接着剤の調製)
ヒドロキシエチルアクリルアミド(興人社製、商品名「HEAA」)62重量部と、アクリロイルモルホリン(興人社製、商品名「ACMO」)25重量部と、PEG400#ジアクリレート(共栄社化学社製、商品名「ライトアクリレート9EG-A」)7重量部と、BASF社製の商品名「イルガキュア907」3重量部と、日本化薬社製の商品名「KAYACURE DETX-S」3重量部とを、60分間混合して、接着剤を調製した。
【0082】
(光学積層体の作製)
上記λ/4部材(延伸フィルム)に、上記接着剤を硬化後の厚みが0.6μmとなるように塗布して上記ポジティブCプレートを貼り合わせて、位相差部材を得た。
得られた位相差部材のλ/4部材側に、厚み12μmで、表面平滑性0.25arcminの粘着剤層を介して上記保護部材(ハードコート層および反射防止層が形成されたアクリルフィルム)を貼り合わせた。ここで、保護部材のアクリルフィルムがλ/4部材側に位置するように貼り合わせた。
次いで、位相差部材のポジティブCプレート側に、厚み12μmで、表面平滑性0.25arcminの粘着剤層を形成して光学積層体を得た。
【0083】
[実施例2]
λ/4部材に、接着剤を硬化後の厚みが0.9μmとなるように塗布してポジティブCプレートを貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を得た。
【0084】
[実施例3]
λ/4部材に、接着剤を硬化後の厚みが1.3μmとなるように塗布してポジティブCプレートを貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を得た。
【0085】
[比較例1]
λ/4部材に、接着剤を硬化後の厚みが1.5μmとなるように塗布してポジティブCプレートを貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を得た。
【0086】
[比較例2]
λ/4部材に、接着剤を硬化後の厚みが1.9μmとなるように塗布してポジティブCプレートを貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を得た。
【0087】
[比較例3]
λ/4部材にポジティブCプレートを貼り合わせる際に、接着剤のかわりに粘着剤(厚み5μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を得た。
【0088】
実施例および比較例で得られた光学積層体について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(1)積層体平滑性
位相シフト式レーザー干渉計(Zygo社製、製品名「DynaFiz」)を用いて積層体平滑性を測定した。具体的には、異物や気泡、変形のスジが入り込まないように、マイクロスライドガラス(松浪硝子工業社製、製品名「S200200」)に光学積層体をラミネートした。次いで、微小な気泡の影響を除去するため、加圧脱泡装置(オートクレーブ)による脱泡を行った。脱泡条件は、50℃、0.5MPa、30分とした。脱泡後、室温で30分以上放冷し、測定試料を得た。
防振台つき測定台に測定試料を載せ、単一波長(波長633nm)のレーザーを用いて、平坦度が保証された基準器と干渉させ、所定の領域(30mmφの円)内の相対変位を測定した。解析については、0.1/mm~1/mmの周波数の値を抜粋して得られる角度の指標「Slope magnitude RMS」を2倍した値(2σに相当)を、積層体平滑性(単位:arcmin)と定義した。
(2)見映え
光学レンズ(Thorabs社製、商品名「LA1145」)と、点光源(浜松ホトニクス社製、型番「L8425-01」)を用いて、光学積層体の見映え(レンズ透過光)を評価した。
具体的には、光学レンズの平坦側に、表面に異物や気泡、変形のスジが入り込まないように、45mmφの円形にカットした光学積層体をラミネートした。次いで、微小な気泡の影響を除去するため、加圧脱泡装置(オートクレーブ)による脱泡を行った。脱泡条件は、50℃、0.5MPa、30分とした。脱泡後、室温で30分以上放冷し、測定試料を得た。
点光源、光学レンズ(測定試料)およびスクリーンをこの順に設置し、光学レンズを介した点光源の光をスクリーンに映し、その見映えを評価した。ここで、光学レンズの凸側から点光源の光が入射する位置にレンズを保持具により保持した。点光源からスクリーンまでの距離は1050mmとし、光学レンズからスクリーンまでの距離は130mmとした。
なお、見映えは、10名の評価者によりスクリーンに映った光学レンズを介した光を目視により観察し、しわ・うねりの有無を判断することにより評価した。しわ・うねりが無と判断した評価者の数を表1に示す。
(3)耐久性
光学積層体について、冷熱衝撃装置(エスペック社製、製品名「TSA-303EL-W」)を用いて、冷熱衝撃試験を行った。
レーザー加工機を用いて45mmφの円形にカットした光学積層体をガラス板に貼り合わせた後、これを-40℃の温度環境下に0.5時間置いた後、85℃の温度環境下に0.5時間置いた。ここで、昇温および降温にかかる時間は6分以内とした。この操作を計100回繰り返した後、光学積層体の外観を目視で観察し、クラックおよび剥がれの有無を確認した。
(評価基準)
・良好:クラックおよび剥がれは確認されない
・不良:クラックおよび/または剥がれが確認される
(4)透過率
光学積層体について、紫外可視分光光度計(日本分光社製、V-7100)を用いて単体透過率Tsを測定した。Tsは、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。なお、光学積層体は、ガラス等の基板には貼り合わせない状態で測定に供した。
【0089】
【表1】
【0090】
耐久性の評価において、比較例3では、λ/4部材よりも厚みの薄いポジティブCプレートにおいてクラックが確認された。クラックの長さは10mm以上であり、試料端部から複数発生しており、目視で視認可能であった。
一方で、実施例1の光学積層体を80℃の温度環境下に500時間、または、-40℃の温度環境下に500時間置いた後、上記の各種評価に供したが、このような温度処理を施さないとき(表1に示す結果)と同様の結果が得られた。
【0091】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の実施形態に係る光学積層体は、例えば、VRゴーグル等の示表体に用いられ得る。
【符号の説明】
【0093】
2 表示システム、4 レンズ部、12 表示素子、14 反射型偏光部材、16 第一レンズ部、18 ハーフミラー、20 第一位相差部材、22 第二位相差部材、24 第二レンズ部、28 吸収型偏光部材、30 第三位相差部材、31 第一保護部材、32 第二保護部材、41 接着層、42 接着層、43 接着層、44 接着層、45 接着層、46 接着層、50 接着剤層、100 第一積層部(光学積層体)、200 第二積層部。
図1
図2
図3