IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エドワーズ リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-スクロールポンプ 図1
  • 特許-スクロールポンプ 図2
  • 特許-スクロールポンプ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】スクロールポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20241105BHJP
   F04C 27/00 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
F04C18/02 311X
F04C27/00 311
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022503842
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2020070630
(87)【国際公開番号】W WO2021013872
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】1910471.0
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ホルブルック アラン アーネスト キナード
(72)【発明者】
【氏名】ショフィールド ナイジェル ポール
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-126165(JP,A)
【文献】特開昭55-035155(JP,A)
【文献】特開2009-115055(JP,A)
【文献】米国特許第06146119(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/02
F04C 18/02
F04C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の螺旋壁と該第1の螺旋壁の径方向内方に位置する内壁とを含む第1のスクロールと、
基部と該基部から延び前記第1の螺旋壁と互いにかみ合う第2の螺旋壁を含む第2のスクロールと、
前記第1のスクロール及び前記第2のスクロールとは異なる材料から形成され、前記第1の螺旋壁及び前記第2の螺旋壁の半径方向外側に配置されている第1のパッドと、
前記第1のスクロール及び前記第2のスクロールとは異なる材料から形成され、前記第1のスクロールと前記第2のスクロールとの間で前記第1の螺旋壁及び前記第2の螺旋壁の半径方向内側、且つ、軸線方向において前記第1のスクロールの内壁と前記第2のスクロールの基部との間に配置されている第2のパッドであって、前記内壁と前記第2のパッドが前記第1のスクロールと第2のスクロールとの間の空間から中央開口への流体流出を阻止する第2のパッドと、
前記第1のパッド及び前記第2のパッド介して前記第1のスクロール及び前記第2のスクロールを互いに対して付勢させるように構成された付勢装置と、を備えている、
ことを特徴とするクロールポンプ。
【請求項2】
前記第1のパッド及び前記第2のパッドの一方又は両方は、ポリマー材料から形成され、前記第1のスクロール及び前記第2のスクロールは金属材料から形成されている、
請求項1に記載のスクロールポンプ。
【請求項3】
前記第1のパッド及び前記第2のパッドの一方又は両方が、ポリテトラフルオロエチレン材料から形成され、前記第1のスクロール及び前記第2のスクロールは、アルミニウムから形成されている、
請求項2に記載のスクロールポンプ。
【請求項4】
前記第1のスクロールと前記第2のスクロールとの間に配置されたチャンネルシールをさらに備えている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のスクロールポンプ。
【請求項5】
前記第1のパッド及び前記第2のパッドの一方又は両方は、前記チャンネルシールと一体形成されている、
請求項4に記載のスクロールポンプ。
【請求項6】
前記第1のパッド及び前記第2のパッドの一方又は両方は、前記チャンネルシールと同じ材料で形成されている、
請求項4又は5に記載のスクロールポンプ。
【請求項7】
前記第2のパッドは、前記第1のパッドと同じ材料から形成されている、
請求項1から6のいずれか1項に記載のスクロールポンプ。
【請求項8】
前記第1のスクロール及び前記第2スクロールの各々は中央開口を含み、前記第2のパッドは前記中央開口に隣接する、
請求項1から7のいずれか1項に記載のスクロールポンプ。
【請求項9】
前記第2のスクロールに結合され、前記第2のスクロールを前記第1のスクロールに対して旋回させるように構成された駆動軸をさらに備えている、
請求項1から8のいずれか1項に記載のスクロールポンプ。
【請求項10】
前記駆動軸は、前記中央開口を貫通して延びる、
請求項に従属する請求項9に記載のスクロールポンプ。
【請求項11】
前記第1のパッドは、複数の突出部を備える、
請求項1から10のいずれか1項に記載のスクロールポンプ。
【請求項12】
流体をポンプ送給するための請求項1から11のいずれか1項に記載のスクロールポンプの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロールポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
スクロールポンプは、様々な異なる産業(例えば、半導体製造)で使用される公知のタイプのポンプである。スクロールポンプは、流体をポンプ送給するために、2つの互いにかみ合った「スクロール」の相対運動を利用して動作する。
【0003】
スクロールポンプでは、2つのスクロールの間の接触部にシールを保持し、スクロールポンプの特定の領域に不要な流体が漏れるのを阻止することが望ましい傾向がある。また、スクロールポンプの構成要素の耐久性を向上させることが望ましい傾向がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、スクロールポンプが提供され、スクロールポンプは、第1の螺旋壁を含む第1のスクロールと;第1の螺旋壁と互いにかみ合う第2の螺旋壁を含む第2のスクロールと;第1のスクロール及び第2のスクロールとは異なる材料から形成されたパッドと;を備え、パッドは、第1のスクロールと第2のスクロールとの間で、第1の螺旋壁及び第2の螺旋壁の半径方向内側の配置されている。
【0005】
スクロールポンプは、パッドを介して第1のスクロール及び第2スクロールを互いに付勢させるように構成された付勢装置をさらに備えることができる。
パッドは、ポリマー材料から形成することができる。
【0006】
第1のスクロール及び/又は第2のスクロールは、金属材料から形成することができる。
パッドは、ポリテトラフルオロエチレン材料から形成することができる。
第1のスクロール及び/又は第2のスクロールは、アルミニウムから形成することができる。
【0007】
スクロールポンプは、第1のスクロールと第2のスクロールとの間に配置されたチャンネルシールをさらに備えることができる。
パッドは、チャンネルシールと一体形成することができる。
パッドは、チャンネルシールと同じ材料で形成することができる。
【0008】
スクロールポンプは、第1のスクロール及び第2のスクロールとは異なる材料から形成された第1のパッドを備えることができ、第1のパッドは、第1のスクロールと第2のスクロールとの間で、第1の螺旋壁及び第2の螺旋壁の半径方向外側に位置し、第1のスクロールと第2のスクロールとの間で、第1の螺旋壁及び第2の螺旋壁の半径方向内側に位置するパッドは、第2のパッドとすることができる。
【0009】
第2のパッドは、第1のパッドと同じ材料で形成することができる。
第1のパッド及び/又は第2のパッドは、チャンネルシールと同じ材料から形成することができる。
第1のパッド及び/又は第2のパッドは、チャンネルシールと一体形成することができる。
【0010】
第1のスクロール及び第2のスクロールの各々は、中央開口を備えることができる。第2のパッドは、中央開口に隣接することができる。
スクロールポンプは、第2のスクロールに結合され、第2のスクロールを第1のスクロールに対して旋回させるように構成された駆動軸をさらに備えることができる。
駆動軸は、中央開口を貫通して延びることができる。
パッドは、複数の突出部を備えることができる。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、流体をポンプ送給するための第1の態様のスクロールポンプの使用が提供される。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、スクロールポンプが提供され、スクロールポンプは、第1の螺旋壁を含む第1のスクロールと;第1の螺旋壁と互いにかみ合う第2の螺旋壁を含む第2のスクロールと;第1のスクロール及び第2のスクロールとは異なる材料から形成されたパッドと;を備え、パッドは、第1のスクロールと第2のスクロールとの間で、第1の螺旋壁及び第2の螺旋壁の半径方向外側の配置されている。
【0013】
スクロールポンプは、パッドを介して第1のスクロール及び第2スクロールを互いに付勢させるように構成された付勢装置をさらに備えることができる。
パッドは、ポリマー材料から形成することができる。
【0014】
第1のスクロール及び/又は第2のスクロールは、金属材料から形成することができる。
パッドは、ポリテトラフルオロエチレン材料から形成することができる。
第1のスクロール及び/又は第2のスクロールは、アルミニウムから形成することができる。
【0015】
スクロールポンプは、第1のスクロールと第2のスクロールとの間に配置されたチャンネルシールをさらに備えることができる。
パッドは、チャンネルシールと一体形成することができる。
パッドは、チャンネルシールと同じ材料で形成することができる。
【0016】
スクロールポンプは、第1のスクロール及び第2のスクロールとは異なる材料から形成された第2のパッドを備えることができ、第2のパッドは、第1のスクロールと第2のスクロールとの間で、第1の螺旋壁及び第2の螺旋壁の半径方向内側に位置し、第1のスクロールと第2のスクロールとの間で、第1の螺旋壁及び第2の螺旋壁の半径方向外側に位置するパッドは、第1のパッドとすることができる。
【0017】
第2のパッドは、第1のパッドと同じ材料で形成することができる。
第1のパッド及び/又は第2のパッドは、チャンネルシールと同じ材料から形成することができる。
第1のパッド及び/又は第2のパッドは、チャンネルシールと一体形成することができる。
【0018】
第1のスクロール及び第2のスクロールの各々は、中央開口を備えることができる。第2のパッドは、中央開口に隣接することができる。
駆動軸は、中央開口を貫通して延びることができる。
パッドは、複数の突出部を備えることができる。
【0019】
本発明の第4の態様によれば、流体をポンプ送給するための第3の態様のスクロールポンプの使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態によるスクロールポンプの断面図を示す概略図(縮尺通りではない)である。
図2】別の実施形態によるスクロールポンプの一部の断面図を示す概略図(縮尺通りではない)である。
図3図2に示すスクロールポンプの旋回スクロール及びチャンネルシールの斜視図を示す概略図(縮尺通りではない)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、一実施形態によるスクロールポンプ100を示す概略図(縮尺通りではない)である。
スクロールポンプ100は、シェル110、固定スクロール120、旋回スクロール130、駆動軸140、アクチュエータ150、複数の軸受160、付勢装置170、及びパッド180を備える。
【0022】
本実施形態では、シェル110と固定スクロール120とが一緒になってスクロールポンプ100の全体ハウジングを形成し、その中にスクロールポンプ100の残りの構成要素が配置されている。しかしながら、他の実施形態では、固定スクロール120は、スクロールポンプ100の全体ハウジングの一部を形成せず、代わりに全体ハウジングの中に完全に位置することができることが理解されるであろう。
【0023】
旋回スクロール130は、スクロールポンプ100の全体ハウジングの中に配置され、固定スクロール120と互いにかみ合う。旋回スクロール130は、スクロールポンプ100の入口(図示せず)からスクロールポンプ100の出口(図示せず)に流体をポンプ送給するために、固定スクロール120に対して旋回するように構成されている。固定スクロール120に対する旋回スクロール130の旋回によって流体がポンプ送給される物理的機構はよく知られており、本明細書では説明しない。
【0024】
固定スクロール120は、第1の基部122、第1の螺旋壁124、及び外壁126を備える。旋回スクロール130は、第2の基部132及び第2の螺旋壁134を備える。
【0025】
第1の螺旋壁124は、第1の基部122から第2の基部132に向かって垂直に延びる。外壁126は、第1の基部122から第2の基部132に向かって垂直に延びる。外壁126は、第1の螺旋壁124の半径方向外側に位置し、固定スクロール120の外周を規定する。従って、外壁126は、第1の螺旋壁124の周囲に広がる。第2の螺旋壁134は、第2の基部132から第1基部122に向かって垂直に延びる。第2の基部132は、第2の螺旋壁134の半径方向外側に位置し、旋回スクロール130の外周を規定する周縁部136を備える。本実施形態では、第1の基部122、第1の螺旋壁124、外壁126は、互いに一体的に形成される。また、本実施形態では、第2の基部132及び第2の螺旋壁134は、互いに一体的に形成される。
【0026】
第1の螺旋壁124及び第2の螺旋壁134は、第1の螺旋壁124の端面が第2の基部132の対向面と接触し、第2の螺旋壁134の端面が第1の基部122の対向面と接触するように、互いにかみ合う。このように、第1の基部122、第1の螺旋壁124、第2の基部132、及び第2の螺旋壁134は、一緒になって、固定スクロール120と旋回スクロール130との間の空間を規定し、この空間は、動作時にスクロールポンプ100によって流体をポンプ送給するために使用される。第1の螺旋壁124及び第2の螺旋壁134の各々は、螺旋壁の各巻きの間にそれぞれの螺旋形状のチャンネルを規定する。
【0027】
駆動軸140は、旋回スクロール130に結合され、旋回スクロール130の旋回を駆動するために回転するように構成されている。駆動軸140は、スクロールポンプ120の全体ハウジングの中に配置されている。本実施形態では、駆動軸140は、駆動軸140の回転を容易にする複数の軸受160を介して、旋回スクロール130及びシェル110に結合されている。
【0028】
アクチュエータ150(例えば、モータ)は、駆動軸140に結合され、駆動軸140を作動させて、旋回スクロール130の旋回を駆動するために駆動軸140を回転させるように構成されている。アクチュエータ150は、スクロールポンプ120の全体ハウジングの中に配置されている。
【0029】
付勢装置170は、固定スクロール120及び旋回スクロール130を互いに付勢させるように構成されている。より詳細的には、付勢装置170は、旋回スクロール130が固定スクロール120に対して軸方向に負荷をかけるように、旋回スクロール130を固定スクロール120に向かって付勢するように構成されている。より詳細には、付勢は、第1の螺旋壁124の端面が第2の基部132の対向面に押し付けられ、第2の螺旋壁134の端面が第1の基部122の対向面に押し付けられるようなものである。従って、固定スクロール120及び旋回スクロール130にかかる軸方向荷重の一部は、第1の螺旋壁124及び第2の螺旋壁134の端面によって支持される。付勢装置170によって引き起こされる軸方向荷重は、第1の螺旋壁124及び第2の螺旋壁134の端面と、第1の基部122及び第2基部132のそれぞれの対向面との間のシールを維持する。これは、固定スクロール120と旋回スクロール130との間の空間の異なる半径部分の間で流体の望ましくない漏れを防止するように作用する傾向がある。本実施形態では、付勢装置170は、駆動軸140を介して旋回スクロール130に力を及ぼして、旋回スクロール130を固定スクロール120に向かって付勢するように構成された1又は2以上のバネを備える。
【0030】
パッド180は、第1の螺旋壁124及び第2の螺旋壁134の半径方向外側に配置されている。より詳細には、パッド180は、固定スクロール120の外壁126と、旋回スクロール130の基部132との間に位置する。より詳細には、パッド180は、パッド180が外壁126及び周縁部136の両方に接触するように、外壁126と第2基部132の周縁部136との間に配置されている。換言すると、パッド180は、第2の基部132の外壁126と周縁部136との間に挟まれている。このように、パッド180は、固定スクロール120及び旋回スクロール130にかかる軸方向荷重の一部がパッド180によって支持されるように配置されている。従って、周縁部136は、パッド180を介して外壁126に対して付勢される。パッド180は、固定スクロール120及び旋回スクロール130とは異なる材料で形成されている。
【0031】
本実施形態では、パッド180は、固定スクロール120の外壁126に埋め込まれた環状リング材料である。パッド180は、固定スクロール120及び旋回スクロール130が作られた1又は複数の材料に接触して摺動した場合に耐摩耗性が高い材料から形成される。例えば、パッド180は、1年から10年の耐用年数で、0.2m/sから5m/sの摺動速度で10Nから1000Nの接触荷重に耐えることができる。例えば、第1のパッド180は、ポリマー材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン材料、耐摩耗性を向上させるために随意的に炭素及び/又はガラスを含む)から形成することができ、固定スクロール120及び旋回スクロール130は、金属材料(例えば、アルミニウム、マグネシウム、又はチタンなどの軽量金属材料)から形成することができる。アルミニウムは、比較的低コストの軽量材料であるため、特に好ましいであろう。
【0032】
本実施形態では、旋回スクロール130が固定スクロール120に対して旋回するスクロールポンプ100の動作時、第1の螺旋壁124及び第2の螺旋壁134の端面は、第1の基部122及び第2の基部124のそれぞれの対向面に接触して摺動する。これは、上述の軸方向荷重と相まって、スクロールポンプ100の動作時に端面が大きな摩擦力を受ける傾向があることを意味する。軸方向荷重の少なくとも一部を支持するパッド180の存在は、軸方向荷重のより小さな割合が第1の螺旋壁124及び第2の螺旋壁134の端面によって支持されることを意味する傾向がある。これは、結果的に、第1の螺旋状壁124及び第2の螺旋状壁134の端面にかかる摩擦力を減少させる傾向があり、これは、螺旋状壁124,134の摩耗を減少させる傾向がある。
【0033】
図2は、別の実施形態によるスクロールポンプ200の一部の断面図を示す概略図(縮尺通りではない)である。
スクロールポンプ200は、シェル210、固定スクロール220、旋回スクロール230、駆動軸240、アクチュエータ(図示せず)、複数の軸受(図示せず)、付勢装置(図示せず)、第1のパッド280と、第2パッド290、第1のチャンネルシール300、及び第2のチャンネルシール310を備える。
【0034】
本実施形態では、シェル210及び固定スクロール220は、一緒になってスクロールポンプ200の全体ハウジングを形成し、その中にスクロールポンプ200の残りの構成要素が配置されている。しかしながら、他の実施形態では、固定スクロール220は、スクロールポンプ200の全体ハウジングの一部を形成せず、代わりに全体ハウジングの中に完全に位置することができることが理解されるであろう。
【0035】
旋回スクロール230は、スクロールポンプ200の全体ハウジングの中に配置され、固定スクロール220と互いにかみ合う。旋回スクロール230は、スクロールポンプ200の入口(図示せず)からスクロールポンプ200の出口(図示せず)に流体をポンプ送給するために、固定スクロール220に対して旋回するように構成されている。固定スクロール220に対する旋回スクロール230の旋回によって流体がポンプ送給される物理的機構はよく知られており、本明細書では説明しない。
【0036】
固定スクロール220は、第1の基部222、第1の螺旋壁224、外壁226、及び内壁228を備える。旋回スクロール230は、第2の基部232及び第2の螺旋壁234を備える。本実施形態では、固定スクロール220及び旋回スクロール230の各々は、中央開口を有する。
【0037】
第1の螺旋壁224は、第1の基部222から第2に基部232に向かって垂直に延びる。外壁226は、第1の基部222から第2の基部232に向かって垂直に延びる。外壁226は、第1の螺旋壁224の半径方向外側に位置し、固定スクロール220の外周を規定する。従って、外壁226は、第1の螺旋壁224の周囲に広がる。第2の螺旋壁234は、第2の基部232から第1の基部222に向かって垂直に延びる。内壁228は、第1の基部222から第2の基部232に向かって垂直に延びる。内壁228は、中央開口と第1の螺旋壁224との間で、第1の螺旋壁224の半径方向内側に位置する。内壁228は、固定スクロール220の中央開口に隣接する。
【0038】
第2の基部232は、第2の螺旋壁234の半径方向外側に位置し、旋回スクロール230の外周を規定する周縁部236を備える。また、第2の基部232は、旋回スクロール230の中央開口と第の2螺旋壁234との間で、第2の螺旋壁234の半径方向内側に位置する半径方向内側部分238を備える。半径方向内側部分238は、中央開口に隣接する。本実施形態では、第1の基部222、第1の螺旋壁224、外壁226は、互いに一体的に形成される。また、本実施形態では、第2の基部232及び第2の螺旋壁234は、互いに一体的に形成される。
【0039】
第1のチャンネルシール300及び第2のチャンネルシール310は、固定スクロール220と旋回スクロール230との間のチャンネルに配置されたシールである。第1のチャンネルシール300は、第2の基部232に隣接し、第2の螺旋壁234によって規定されるチャンネルの幅に完全に広がる。第1のチャンネルシール300は、第1の螺旋壁224と第2の基部232との間に位置する。第2のチャンネルシール310は、第1の基部222に隣接し、第1の螺旋壁224によって規定されるチャンネルの幅に完全に広がる。第2のチャンネルシール310は、第2の螺旋壁234と第1の基部222との間に位置する。
【0040】
第1の螺旋壁224及び第2の螺旋壁234は、第1の螺旋壁224の端面が第1のチャンネルシール300の対向面と接触し、第2の螺旋壁234の端面が第2のチャンネルシール310の対向面と接触するように、互いにかみ合う。このように、第1のチャンネルシール300、第1の螺旋壁224、第2のチャンネルシール310、及び第2の螺旋壁234は、一緒になって、固定スクロール220と旋回スクロール230との間の空間を規定し、この空間は、動作時にスクロールポンプ200によって流体をポンプ送給するために使用される。
【0041】
駆動軸240は、旋回スクロール230に結合され、旋回スクロール230の旋回を駆動するために回転するように構成されている。駆動軸240は、スクロールポンプ220の全体ハウジングの中に配置されている。本実施形態では、駆動軸240は、駆動軸240の回転を容易にする複数の軸受を介して、旋回スクロール230及びシェル210に結合されている。本実施形態では、駆動軸240は、固定スクロール220及び旋回スクロール230の中央開口を貫通して延びている。この構成は、ポンプの排気口に軸受を配置することができる傾向があり、これは軸受のグリース及び汚染物をポンプの吸気口から遠ざける傾向がある。
【0042】
アクチュエータ(例えばモータ)は、駆動軸240に結合され、駆動軸240を作動させて、旋回スクロール230の旋回を駆動するために駆動軸240を回転させるように構成されている。アクチュエータは、スクロールポンプ220の全体ハウジングの中に配置されている。
【0043】
付勢装置は、固定スクロール220及び旋回スクロール230を互いに付勢させるように構成されている。より詳細には、付勢装置は、旋回スクロール230が固定スクロール220に対して軸方向に負荷をかけるように、旋回スクロール230を固定スクロール220に向かって付勢するように構成されている。より詳細には、付勢は、第1の螺旋壁224の端面が第1のチャンネルシール300の対向面に押し付けられ、第2の螺旋壁234の端面が第2のチャンネルシール310の対向面に押し付けられるようなものである。従って、固定スクロール220及び旋回スクロール230にかかる軸方向荷重の一部は、第1の螺旋壁224及び第2の螺旋壁234の端面によって支持される。付勢装置によって引き起こされる軸方向荷重は、第1の螺旋壁224及び第2の螺旋壁234の端面と、第1の基部222及び第2の基部232のそれぞれの対向面との間のシールを維持する。これは、固定スクロール220と旋回スクロール230の間の空間の異なる半径部分の間で流体の望ましくない漏れを防止するように作用する傾向がある。本実施形態では、付勢装置は、駆動軸240を介して旋回スクロール230に力を及ぼして、旋回スクロール230を固定スクロール220に向かって付勢するように構成された1又は2以上のバネを備える。
【0044】
第1のパッド280は、第1の螺旋壁224及び第2の螺旋壁234の半径方向外側に配置されている。より詳細には、第1のパッド280は、固定スクロール220の外壁226と、旋回スクロール230の基部232との間に位置する。より詳細には、第1のパッド280は、第1パッド280が外壁226及び周縁部236の両方に接触するように、外壁226と第2ベース232の周縁部236との間に配置されている。換言すると、第1のパッド280は、第2ベース232の外壁226と周縁部236との間に挟まれている。このように、第1のパッド280は、固定スクロール220及び旋回スクロール230にかかる軸方向荷重の一部が第1パッド280によって支持されるように配置されている。従って、周縁部236は、第1のパッド280を介して外壁226に対して付勢される。第1のパッド280は、固定スクロール220及び旋回スクロール230とは異なる材料で形成されている。
【0045】
本実施形態では、第1のパッド280は、第1のチャンネルシール300と一体形成されている。また、第1のパッド280は、第1のチャンネルシール300と同じ厚さである。換言すると、第1のパッド280は、第1のチャンネルシール300の延長線上にあると言うことができる。本実施形態では、第1パッド280は、固定スクロール220及び旋回スクロール230が作られた1又は複数の材料に接触して摺動した場合に耐摩耗性が高い材料から形成される。例えば、第1のパッド280は、1年から10年の耐用年数で、0.2m/sから5m/sの摺動速度で10Nから1000Nの接触荷重に耐えることができる。例えば、第1のパッド280は、ポリマー材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン材料、耐摩耗性を向上させるために随意的に炭素及び/又はガラスを含む)から形成することができ、固定スクロール220及び旋回スクロール230は、金属材料(例えば、アルミニウム、マグネシウム、チタンなどの軽量金属材料)から形成することができる。アルミニウムは、比較的低コストの軽量材料であるため、特に好ましいであろう。
【0046】
第2のパッド190は、第1の螺旋壁224及び第2の螺旋壁234の半径方向内側に配置されている。より詳細には、第2のパッド290は、固定スクロール220の内壁228と、旋回スクロール230の基部232との間に位置する。より詳細には、第2のパッド290は、第2のパッド290が内壁228及び半径方向内側部分238の両方と接触するように、内壁228と第2の基部232の半径方向内側部分238との間に配置されている。換言すると、第2パッド290は、内壁228と半径方向内側部分238との間に挟まれている。第2のパッド290は、固定スクロール220及び旋回スクロール230の中央開口と、第1の螺旋壁224及び第2の螺旋壁234との間で、第1の螺旋壁224及び第2の螺旋壁234の半径方向内側に位置する。第2のパッド290は、中央開口に隣接する。
【0047】
このように、第2のパッド290は、固定スクロール220及び旋回スクロール230にかかる軸方向荷重の一部が第2パッド290によって支持されるように配置されている。従って、半径方向内側部分238は、第2のパッド290を介して内壁228に対して付勢される。第2のパッド290は、固定スクロール220及び旋回スクロール230とは異なる材料で形成されている。
【0048】
本実施形態では、第2のパッド290は、第1のチャンネルシール300と一体形成されている。また、第2のパッド290は、第1のチャンネルシール300と同じ厚さである。換言すると、第2のパッド290は、第1のチャンネルシール300の延長線上にあると言うことができる。本実施形態では、第2のパッド290は、第1のパッド280と同じ材料から形成されている。本実施形態では、第2のパッド290は、固定スクロール220及び旋回スクロール230が作られた1又は複数の材料に接触して摺動した場合に耐摩耗性が高い材料から形成される。例えば、第2のパッド290は、1年から10年の耐用年数で、0.2m/sから5m/sの摺動速度で10Nから1000Nの接触荷重に耐えることができる。例えば、第2のパッド290は、ポリマー材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン材料、耐摩耗性を向上させるために随意的に炭素及び/又はガラスを含む)から形成しることができ、固定スクロール220及び旋回スクロール230は、金属材料(例えば、アルミニウム、マグネシウム、チタンなどの軽量金属材料)から形成することができる。アルミニウムは、比較的低コストの軽量材料であるため、特に好ましいであろう。
【0049】
本実施形態では、旋回スクロール230が固定スクロール220に対して旋回するスクロールポンプ200の動作時、第1の螺旋壁224及び第2の螺旋壁234の端面は、第1のチャンネルシール300及び第2のチャンネルシール310のそれぞれの対向面に接触して摺動する。これは、上述の軸方向荷重と相まって、第1の螺旋壁224及び第2の螺旋壁234の端面とチャンネルシール300、310のそれぞれの対向面とが、スクロールポンプ200の動作時に摩擦力を受ける傾向があることを意味する。
【0050】
軸方向荷重の少なくとも一部を支持する第1のパッド280及び第2のパッド290の存在は、軸方向荷重の小さな割合が第1の螺旋壁224及び第2の螺旋壁234の端面、並びにチャンネルシール300、310のそれぞれの対向面によって支持されることを意味する傾向がある。これは、結果的に、第1の螺旋壁224及び第2の螺旋壁234の端面、並びにチャンネルシール300、310のそれぞれの対向面にかかる摩擦力を減少させる傾向がある。
【0051】
また、第2のパッド290は、固定スクロールと旋回スクロールとの間の空間への望ましくない流体の流入及び流出を防止する傾向がある追加のシールを提供する。これは、スクロールポンプ200の他の部分(例えば、アクチュエータを含むハウジング部分)に真空が形成されるのを防止する傾向があり、また、ポンプ送給された流体がスクロールポンプ200の他の部分(例えば、アクチュエータを含むハウジング部分)に入るのを防止する傾向がある。
【0052】
図3は、旋回スクロール230及び第1のチャンネルシール300の斜視図を示す概略図(縮尺通りではない)である。
チャンネルシール300は、第2の螺旋壁234が螺旋状の隙間302を貫通してぴったりと嵌合することができるように、第2の螺旋壁234の形状及び大きさと一致する螺旋状の隙間302を備える。また、チャンネルシール300は、駆動軸240がチャンネルシール300を貫通して延びることができるように、旋回スクロール230の中央開口の形状及びサイズと一致する中央開口を備える。
【0053】
本実施形態では、第1のパッド280は、その間に切り欠き部分を有する複数の突出部282を備える。突起部の間の切り欠き部分は、スクロールポンプ200の他の部分が存在するための空間(例えば、旋回スクロールの回転を防止する機構のための空間及び/又は旋回スクロール上にカバーを固定するねじのための空間)を提供する。これは、突出部282がない第1のパッド280と比較して、ポンプ全体のサイズを小さくすることができる傾向がある。
結果としてスクロールポンプが提供される。
【0054】
好都合には、上述の実施形態では、スクロールポンプの動作時に、螺旋壁の摩耗が減少する傾向がある。従って、スクロールポンプは、全体的な耐久性が向上する傾向がある。
【0055】
好都合には、上述のスクロールポンプは、スクロールポンプの壁及びシールが損傷しないように、スクロールポンプの圧力-速度値を比較的低く保つことができる傾向がある。
【0056】
好都合には、チャンネルシールを含む実施形態では、チャンネルシールは、スクロールポンプの動作時に摩耗が減少する傾向がある。従って、チャンネルシールは、全体的な耐久性が向上する傾向がある。
【0057】
好都合には、パッドがチャンネルシールと一体形成される実施形態では、パッドは、別個に製造されるのではなく、チャンネルシールと一緒に製造することができるので、容易に製造することができる傾向がある。また、チャンネルシールとパッドを一体にすることで、チャンネルシール及びパッドを同じ厚さで容易に製造することができる傾向がある。このように、スクロール壁とチャンネルシールとの間の端部間隙をゼロに近づけることは、ポンプ送球された流体の漏れを最小限に抑え、ポンプ性能を最大化することができる傾向がある。
【0058】
上記の実施形態では、付勢装置は、1又は2以上のバネを備える。しかしながら、他の実施形態では、付勢装置は、1又は2以上のバネの代わりに、又はそれに加えて、付勢をもたらす別のタイプの装置を備える。
【0059】
上記の実施形態では、外壁は、固定スクロールから延びる。しかしながら、他の実施形態では、外壁は、代わりに旋回スクロールから延びる。
【0060】
図2の上記の実施形態では、スクロールポンプは、第2のパッドを備え、スクロールは、中央開口を備える。しかしながら、他の実施形態では、スクロールポンプは、中央開口がない第2のパッドを備える。いくつかの実施形態では、スクロールポンプは、第2のパッドなしで中央開口を備える。いくつかの実施形態では、第2のパッド及び中央開口の全てが省略される。
【0061】
図2の上記の実施形態では、パッド280,290に起因して、パッド280,290と一致するシール界面(すなわち、第1の螺旋壁224と第1のチャンネルシール300とで形成される界面)に対する螺旋壁上の摩耗速度が非常に低くなる傾向がある。いくつかの実施形態では、第2の螺旋壁234は、第1の螺旋壁224よりも高い(例えば、5から10ミクロンだけ)。これらの実施形態では、すべての荷重が最初に第2の螺旋壁234の端面にかかることになり、これにより、パッド280、290及び第1のチャンネルシール300が固定スクロール220と接触するまで、第2のチャンネルシール310が急速に摩耗することになる。これは、動作時にシール界面に対して両方の螺旋壁がほぼゼロの間隙を有することを保証する傾向がある。もしくは、いくつかの実施形態では、第2のチャンネルシール310は、ばね付勢されたチャンネルシールであり、これは、動作の最初の瞬間からシール界面に対して両方の螺旋壁がほぼゼロの間隙を有することを保証する傾向がある。
【符号の説明】
【0062】
100、200 スクロールポンプ
110、210 シェル
120、220 固定スクロール
122、222 第1の基部
124、224 第1の螺旋壁
126、226 外壁
130、230 旋回スクロール
132、232 第2の基部
134、234 第2の螺旋壁
136、236 周縁部
140、240 駆動軸
150,250 アクチュエータ
160 軸受
170 付勢装置
180 パッド
228 内壁
238 半径方向内側部分
280 第1のパッド
282 突起部
290 第2のパッド
300 第1のチャンネルシール
302 螺旋状の隙間
310 第2のチャンネルシール
図1
図2
図3