(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】線状外科用ステープラ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/072 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
A61B17/072
(21)【出願番号】P 2022507856
(86)(22)【出願日】2020-08-03
(86)【国際出願番号】 IB2020057330
(87)【国際公開番号】W WO2021028775
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-06-15
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506157570
【氏名又は名称】シラグ・ゲーエムベーハー・インターナショナル
【氏名又は名称原語表記】Cilag GMBH International
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】シングス・ブライアン・ディー
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト・ウィリアム・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ・ジェイソン・ディー
(72)【発明者】
【氏名】ウィン・キャロル・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ナラガトラ・アニル・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】デック・アンドリュー・シー
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-504807(JP,A)
【文献】特表2017-511217(JP,A)
【文献】特開平05-208018(JP,A)
【文献】特表2014-531263(JP,A)
【文献】特表2016-515425(JP,A)
【文献】特表2017-501807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用ステープラと共に使用するように構成されたステープルカートリッジであって、
(a)カートリッジ本体と、
(b)前記カートリッジ本体によって画定されるデッキであって、前記外科用ステープラのアンビルに対して組織を圧縮するように構成されている、デッキと、
(c)前記デッキ内に形成された複数のステープル開口部と、
(d)前記ステープル開口部内に配設された複数のステープルであって、前記ステープルのそれぞれが、
クラウン、及び、前記クラウンから延出する一対の脚部を含む、複数のステープルと、
(e)前記ステープル開口部内に配設された複数のステープルドライバであって、組織を通してかつ前記アンビルに対して前記ステープルを打ち込んで前記脚部を形成するように作動可能であり、前記ステープルドライバのそれぞれが、
(i)
それぞれの前記ステープルの前記クラウンを支持する上端を有する、ドライバ本体と、
(ii)前記ドライバ本体の第1の側面上に配設された第1のポケットと、
(iii)前記ドライバ本体の第2の側面上に配設された第2のポケットと、を含み、
前記第1のポケット及び前記第2のポケットは、前記脚部が前記アンビルに対して形成されるときに
、前記脚部が前記ドライバ本体に接触しないように、それぞれの前記ステープルの前記脚部を受容するように構成されている、複数のステープルドライバと、を備
え、
前記第1のポケットが、前記ドライバ本体の前記第1の側面上の第1の面取り面によって画定され、前記第2のポケットが、前記ドライバ本体の前記第2の側面上の第2の面取り面によって画定されている、ステープルカートリッジ。
【請求項2】
前記第1のポケット及び前記第2のポケットが、前記ドライバ本体の
前記上端に開口している、請求項1に記載のステープルカートリッジ。
【請求項3】
前記ステープルドライバのそれぞれが、前記ドライバ本体の前記第1の側面上に配設された第1のボスと、前記ドライバ本体の前記第2の側面上に配設された第2のボスと、を更に含み、前記第1のボスが前記第1のポケットの側壁を画定し、前記第2のボスが前記第2のポケットの側壁を画定する、請求項1に記載のステープルカートリッジ。
【請求項4】
前記ステープルドライバの各々が、隣接する前記ステープルドライバと相互接続されている、請求項1に記載のステープルカートリッジ。
【請求項5】
前記第1の面取り面及び前記第2の面取り面の上部部分が、互いに向かって角度付けされている、請求項4に記載のステープルカートリッジ。
【請求項6】
前記デッキ上に配設された複数のスタンドオフ部材を更に備え、前記スタンドオフ部材が、前記デッキから離れる方向に突出し、組織と係合するように構成されている、請求項1に記載のステープルカートリッジ。
【請求項7】
前記スタンドオフ部材の少なくとも一部のそれぞれが、隣接するステープル開口部の一部分の周囲を包囲する端部分を含む、請求項6に記載のステープルカートリッジ。
【請求項8】
前記端部分は、前記ステープルドライバが作動されるときに前記ステープルドライバのそれぞれ1つに対面するように構成された、丸みを帯びた端面を含む、請求項7に記載のステープルカートリッジ。
【請求項9】
前記スタンドオフ部材が、前記デッキの遠位端に配設されたランプ機構を含む、請求項6に記載のステープルカートリッジ。
【請求項10】
前記デッキの遠位端に配設されたポストを更に備え、前記ランプ機構が、前記ステープルカートリッジの長手方向軸に沿って前記ポストの遠位方向に、かつ前記ポストと長手方向に整列して配置されている、請求項9に記載のステープルカートリッジ。
【請求項11】
(a)前記デッキ内に形成された細長いスロットであって、内部を通る切断部材を摺動可能に受容するように構成され、前記ステープル開口部が、前記細長いスロットと並んで配置されている、細長いスロットと、
(b)前記デッキ上に配設された一対の細長いリブであって、前記細長いスロットの両側の側面に沿って長手方向に延びる、一対の細長いリブと、を更に備える、請求項1に記載のステープルカートリッジ。
【請求項12】
前記カートリッジ本体が、
前記外科用ステープラの長手方向軸に沿って直線状に延びている、請求項1に記載のステープルカートリッジ。
【請求項13】
外科用ステープラであって、
(a)アンビルを支持する第1の遠位部分を有する第1のステープラ半体と、
(b)第2の遠位部分を有する第2のステープラ半体と、
(c)請求項1に記載のステープルカートリッジと、を備え、
前記第2の遠位部分が、前記ステープルカートリッジを受容するように構成され、
前記第1のステープラ半体と前記第2のステープラ半体とが互いに解放可能に連結されて、前記アンビルと前記ステープルカートリッジとの間に組織をクランプするように構成されている、外科用ステープラ。
【請求項14】
前記アンビルは、前記脚部が形成されるときに各ステープルの脚先端部が互いからかつ前記クラウンの両側で前記クラウンから横方向にオフセットされるように、前記ステープルの前記脚部を形成するように構成されている、請求項13に記載の外科用ステープラ。
【請求項15】
アンビルを支持する遠位部分を有する第1の細長い部材と、ステープルカートリッジを受容するように構成された遠位部分を有する第2の細長い部材であって、前記第1の細長い部材及び前記第2の細長い部材が、互いに解放可能に連結されて、前記アンビルと前記ステープルカートリッジとの間に組織をクランプするように構成されている、第2の細長い部材と、をさらに備え、
前記第2のステープラ半体が、
(i)発射アセンブリであって、前記ステープルドライバを作動させて、前記ステープル開口部から、組織を通してかつ前記アンビルに対して前記ステープルを打ち込むように遠位方向に選択的に作動可能であり、前記発射アセンブリの下面が凹部を含む、発射アセンブリと、
(ii)弾性部材と、を含み、
前記ステープルカートリッジが前記第2の遠位部分に存在しないとき、前記弾性部材は、前記発射アセンブリをロックアウト状態に付勢し、それにより前記発射アセンブリの遠位作動を防げるように構成され、
前記ステープルカートリッジが最初に前記第2の細長い部材の内部に着座されるとき、前記発射アセンブリは、前記発射アセンブリが偏向状態の前記弾性部材上を遠位方向に並進可能であり、そのため、前記弾性部材の一部分が前記発射アセンブリの前記凹部内に受容されている、発射状態をとるように構成されている、請求項13に記載の外科用ステープラ。
【請求項16】
前記第2のステープラ半体が、チャネルを有するガイド部材を更に含み、前記弾性部材が前記チャネルを通って長手方向に延び、前記弾性部材は、前記発射アセンブリが遠位方向に前進されるときに前記チャネル内で弾性的に偏向するように構成されている、請求項15に記載の外科用ステープラ。
【請求項17】
外科用ステープラと共に使用するように構成されたステープルカートリッジであって、
(a)カートリッジ本体と、
(b)前記カートリッジ本体によって画定されるデッキであって、前記外科用ステープラのアンビルに対して組織を圧縮するように構成されている、デッキと、
(c)前記デッキ内に形成された複数のステープル開口部と、
(d)前記ステープル開口部内に配設された複数のステープルであって、前記ステープルのそれぞれが、
クラウン、及び、前記クラウンから延出する第
1及び第2の脚部を含む、複数のステープルと、
(e)前記ステープル開口部内に配設された複数のステープルドライバであって、組織を通してかつ前記アンビルに対して前記ステープルを打ち込んで前記
第1及び第2の脚部を形成するように作動可能であり、前記ステープルドライバのそれぞれが、
(i)それぞれの前記ステープルの前記クラウンを支持する上端を有する、ドライバ本体と、
(
ii)
前記ドライバ本体の第1の側面に配設された第1の面取り面
と、
(
iii)
前記ドライバ本体の第2の側面に配設された第2の面取り面
と、を含み、
前記第1の脚部及び前記第2の脚部が前記アンビルに対して形成されるときに、前記第1の面取り面は、
非接触、かつ、対面配置でそれぞれのステープルの前記第1の脚部を受容するように構成され、前記第2の面取り面は、
非接触、かつ、対面配置で前記それぞれのステープルの前記第2の脚部を受容するように構成されている、複数のステープルドライバと、を備える、ステープルカートリッジ。
【請求項18】
前記第1の面取り面及び前記第2の面取り面が前記上端まで延びている、請求項17に記載のステープルカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
胃腸吻合術などの一部の外科手術では、組織の1つ以上の層をクランプし、クランプされた層を切断し、同時に層を通してステープルを打ち込んで、組織の切断された層をそれらの切断された端部の近くで実質的に互いに封止することが望ましい場合がある。かかる手術で使用され得るこのような器具の1つは、線状外科用ステープラであり、「線状カッター」とも称される。線状外科用ステープラは、一般に、ステープルカートリッジ(又は「再装填部」)を支持するように構成された遠位ジョーを有する第1の半体(「カートリッジ半体」又は「再装填半体」と称される)と、ステープル形成機構を有するアンビル面を支持する遠位ジョーを有する第2の半体(「アンビル半体」と称される)と、を含む。ステープラは、ステープラ半体を互いに解放可能にクランプするように構成された可動クランプレバーを更に含む。ステープラ半体は、クランプレバーが閉鎖されるときに、互いに対して枢動することで2つの遠位ジョーの間に組織を受容してクランプするように構成される。ステープラの発射アセンブリは、クランプされた層を切断し、同時に切断線の両側の組織を通してステープルを打ち込むよう作動するように構成される。ステープラを発射した後、クランプレバーは開放されてよく、ステープラ半体は、切断されステープル留めされた組織を解放するために分離されてよい。
【0002】
様々な種類の外科用ステープル留め器具及び関連構成要素が製造及び使用されてきたが、本発明者ら以前の誰も、添付の特許請求の範囲に記載されている発明を製造又は使用したことがないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0003】
本明細書に組み込まれ、かつその一部をなす添付の図面は、本発明の実施形態を例示するものであり、上記の本発明の一般的な説明、及び以下の実施形態の詳細な説明と共に、本発明の原理を説明する役割を果たすものである。
【
図1】互いに連結されたステープラのカートリッジ半体とアンビル半体を示し、カートリッジ半体のクランプレバーが完全閉鎖位置にある、例示的な線状外科用ステープラの斜視図である。
【
図2】
図1の線状外科用ステープラの分解斜視図である。
【
図3】カートリッジ半体の内部機構を示すためにカートリッジチャネルの断面及び開放位置にあるクランプレバーを示す、
図1の線状外科用ステープラのカートリッジ半体の近位部分の斜視図である。
【
図4】
図1の線状外科用ステープラの発射アセンブリの上面斜視図である。
【
図5A】互いから分離されたステープラ半体を示す、
図1の線状外科用ステープラの側面立面図である。
【
図5B】互いに連結されたステープラ半体の近位端を示す、
図1の線状外科用ステープラの側面立面図である。
【
図5C】カートリッジ半体のクランプレバージョーによって受容されたアンビル半体の遠位ピンを示す、
図1の線状外科用ステープラの側面立面図である。
【
図5D】ステープラ半体を互いに完全にクランプするためのクランプレバーの閉鎖を示す、
図1の線状外科用ステープラの側面立面図である。
【
図5E】ステープラ半体が完全にクランプされた状態での発射アセンブリの遠位作動を示す、
図1の線状外科用ステープラの側面立面図である。
【
図6】
図1の線状外科用ステープラと共に使用するように構成された例示的なステープルカートリッジの斜視図である。
【
図7】
図6のステープルカートリッジの分解斜視図である。
【
図8】ステープルカートリッジのデッキ面の長さに沿って配設された組織把持機構を示す、
図6のステープルカートリッジの拡大斜視図である。
【
図9】
図6の切断線9-9に沿った
図6のステープルカートリッジの端面断面図である。
【
図10】
図6のステープルカートリッジのデッキ面上に配設された組織把持機構の拡大上部平面図である。
【
図11】
図6のステープルカートリッジのデッキ面の遠位端に配設された組織把持機構の拡大斜視図である。
【
図12】
図6のステープルカートリッジの例示的なステープルドライバの対及びそれぞれのステープルの斜視図である。
【
図13】
図12のステープルドライバの上部の拡大斜視図である。
【
図15】協働して一対のステープルを形成するステープラ部分を示す、
図6のステープルカートリッジの一部分と
図1の外科用ステープラのアンビル半体のアンビル面の対面部分の側面立面図である。
【
図16】形成後状態の
図15のステープルの対の平面図である。
【
図17】
図6のステープルカートリッジと共に使用するように構成された別の例示的なステープルドライバの対の斜視図である。
【
図18】
図17のステープルドライバの上部の拡大斜視図である。
【
図20】
図17のステープルドライバのうちの1つと、
図1の線状外科用ステープラのアンビル半体のアンビルポケットと協働するステープルドライバによって形成されたステープルとの組み合わせの拡大斜視図である。
【
図21】
図1の線状外科用ステープラと共に使用するように構成された、
図4の発射アセンブリの近位部分の下面の斜視図である。
【
図22】発射アセンブリの発射ビームがこれを通って並進するように構成されている例示的なガイドブロックを示す、
図1の線状外科用ステープラのカートリッジ半体の一部分の拡大断面斜視図である。
【
図23】
図22のカートリッジ半体のガイドブロック及びロックアウトばねの斜視図である。
【
図25】
図22の構成のガイドブロック、ロックアウトばね、及び発射ビームの平面図である。
【
図26】
図22の構成のガイドブロック及び発射ビームと組み合わせた別の例示的なロックアウトばねの平面図である。
【
図27A】未使用のステープルカートリッジの挿入前のガイドブロックに対してせり上がったロックアウト位置にある発射アセンブリのナイフビームを示す、
図1の線状外科用ステープラのカートリッジ半体の拡大側面断面図である。
【
図27B】ステープルカートリッジの拡張されたスイングタブの概略図で表される、未使用のステープルカートリッジの挿入後のガイドブロックに対して下がった発射位置にあるナイフビームを示す、
図1の線状外科用ステープラのカートリッジ半体の拡大側面断面図である。
【
図27C】発射アセンブリのロックアウトばね上での遠位作動を示す、
図1の線状外科用ステープラのカートリッジ半体の拡大側面断面図である。
【
図28】発射アセンブリの発射ビームがこれを通って並進するように構成されている例示的な別のガイドブロックを示す、
図1の線状外科用ステープラのカートリッジ半体の一部分の拡大断面斜視図である。
【
図29】
図28のカートリッジ半体のガイドブロック及びロックアウトばねの斜視図である。
【
図30A】未使用のステープルカートリッジの挿入前のガイドブロックに対してせり上がったロックアウト位置にある発射アセンブリのナイフビームを示す、
図28のカートリッジ半体の拡大側面断面図である。
【
図30B】ステープルカートリッジの拡張されたスイングタブの概略図で表される、未使用のステープルカートリッジの挿入後のガイドブロックに対して下がった発射位置にあるナイフビームを示す、
図28のカートリッジ半体の拡大側面断面図である。
【
図30C】発射アセンブリのロックアウトばね上での遠位作動を示す、
図28のカートリッジ半体の拡大側面断面図である。
【
図31】凹状湾曲取り付け面を有する遠位ジョー部分と、同様の凹状の曲率を有するアンビルプレートを示す、線状外科用ステープラの別の例示的なアンビル半体の遠位部分の側面図である。
【
図32A】遠位先端部構造が省略された、
図31の切断線32A-32Aに沿った
図31のアンビル半体の遠位ジョー部分の端面断面図である。
【
図32B】
図31の切断線32B-32Bに沿った、
図31のアンビル半体の遠位ジョー部分の端面断面図である。
【
図32C】
図31の切断線32C-32Cに沿った、
図31のアンビル半体の遠位ジョー部分の端面断面図である。
【
図33A】ステープラ半体のシュラウドが省略され、アンビルプレートが凹状湾曲構成を呈する部分的にクランプされた状態のステープラ半体を示す、
図31のアンビル半体及び
図1のカートリッジ半体を有する線状外科用ステープラの遠位部分の側面立面図である。
【
図33B】アンビルプレートが真っ直ぐな構成をとる完全にクランプされた状態のステープラ半体を示す、
図33Aの線状外科用ステープラの遠位部分の側面立面図を示す。
【
図34】異なる高さのステープルドライバを有するステープルカートリッジを示す、線状外科用ステープラのアンビル半体の別の例示的なステープルカートリッジ及び遠位部分の概略側面立面図である。
【0004】
図面は、いかなる方式でも限定することを意図しておらず、本発明の様々な実施形態は、図面に必ずしも描写されていないものを含め、他の様々な方式で実施し得ることが企図される。本明細書に組み込まれ、かつその一部をなす添付図面は、本発明のいくつかの態様を例示するものであり、説明と共に本発明の原理を説明する役割を果たすものである。しかしながら、本発明が、示される正確な配置に限定されない点は理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の特定の実施例の以下の説明文は、本発明の範囲を限定する目的で用いられるべきではない。本発明の他の実施例、特徴、態様、実施形態、及び利点は、本発明を実施するために想到される最良の形態の1つを実例として示す以下の説明文より、当業者には明らかとなろう。理解されるように、本発明は、いずれも本発明から逸脱することなく、他の異なるかつ明白な態様が可能である。したがって、図面及び説明は、限定的な性質のものではなく、例示的な性質のものとみなされるべきである。
【0006】
本開示を明確にするために、本明細書において、「近位」及び「遠位」という用語は、遠位外科用エンドエフェクタを有する外科用器具を握持する外科医又は他の操作者に対して定義される。「近位」という用語は、外科医のより近くに配置された要素の位置を指し、「遠位」という用語は、外科用器具の外科用エンドエフェクタのより近くにかつ外科医からより遠くに配置された要素の位置を指す。また、図面を参照して「上部」、「下部」、「垂直」、「水平」などの空間的用語が本明細書で使用される限り、このような用語は例示的な記述目的にのみ使用されて、限定も絶対も意図していないことが理解されるであろう。その点において、本明細書に開示されるものなどの外科用器具を、本明細書で図示及び記載するものに限定されない様々な配向及び位置で使用してもよいことが理解されよう。
【0007】
本明細書で使用される場合、任意の数値又は範囲の「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は集合が、本明細書で記載されているその本来の目的のために機能することを可能とするような好適な寸法の許容範囲を示すものである。
【0008】
I.例示的な線状外科用ステープラ
A.線状外科用ステープラの概要
図1及び
図2は、胃腸吻合手術などの様々な切断及びステープル留め手術における使用に適した例示的な線状外科用ステープラ(10)(「線状カッター」とも呼ばれる)を示す。線状外科用ステープラ(10)は、クランプされた組織の同時切断及びステープル留めのために、解放可能に一緒に連結してそれらの間に組織をクランプするように構成された、カートリッジ半体(12)(又は「再装填半体」とも呼ばれる)及びアンビル半体(14)を含む。
【0009】
カートリッジ半体(12)は、近位フレーム部分(18)及び遠位ジョー部分(20)を有する細長いカートリッジチャネル(16)を含む。近位フレーム部分(18)は、発射アセンブリ(100)を摺動可能に保持し、横方向に対向する一対の直立側部フランジ(22)を含む。各側部フランジ(22)は、その遠位端に配置された垂直スロット(24)と、その近位端に配置されたテーパ状ノッチ(26)と、を含む。外向きに突出している補強リブ(28)は、各側部フランジ(22)の遠位スロット(24)と近位ノッチ(26)との間に長手方向に延び、剛性を高めた側部フランジ(22)を提供するように構成されている。外向きにフレア状の上部セグメント(30)は、各側フランジ(22)の近位部分の上縁部を画定し、カートリッジ半体(12)によるアンビル半体(14)の受容を容易にするように構成されている。各側部フランジ(22)は、近位ノッチ(26)と遠位スロット(24)との間で、側部フランジ(22)の下側に沿って長手方向に延在する細長い発射スロット(32)を更に含む。細長い発射スロット(32)は、発射アセンブリ(100)を近位位置と遠位位置との間で誘導するように構成されている。発射アセンブリ(100)については、
図4に関連して以下により詳細に述べる。カートリッジチャネル(16)の遠位ジョー部分(20)は、ステープルカートリッジ(130)を受容(又は「再装填」)するように構成されており、これについては
図6~
図20に関連して下記により詳細に述べる。
【0010】
カートリッジ半体(12)は、カートリッジチャネル側部フランジ(22)の遠位スロット(24)とおよそ整列して配置された、クランプレバー枢動ピン(42)を用いてカートリッジチャネル(16)に枢動可能に連結されたクランプレバー(40)(「ラッチレバー」とも呼ばれる)を更に含む。クランプレバー(40)は、自由近位端(46)と、枢動ピン(42)を用いてカートリッジチャネル(16)の下部に枢動可能に連結された遠位端と、を有する細長いレバーアーム(44)を含む。一対の対向したジョー(48)は、カートリッジチャネル側部フランジ(22)と近接して、レバーアーム(44)の遠位端から遠位方向に延在する。各ジョー(48)は、以下に記載されるように、閉鎖近位端と、アンビル半体(14)のラッチピン(68)を受容するように構成された開放遠位端と、を有する湾曲スロット(50)を含む。
【0011】
クランプレバー(40)は、レバーアーム(44)の近位端(46)がカートリッジチャネルフレーム部分(18)から離間した開放位置と、近位端(46)がカートリッジチャネルフレーム部分(18)と向かい合う閉鎖位置との間でカートリッジチャネル(16)に対して枢動するように動作可能である。
図5C~
図5Dに関連して以下に示され、述べられるように、クランプレバー(40)の開放位置から閉鎖位置までの作動は、クランプレバーのジョースロット(50)内でラッチピン(68)の両側の横方向端部を捕捉するように機能し、それによりアンビル半体(14)をカートリッジ半体(12)に対してクランプする。この点に関して、各ジョースロット(50)の曲率は、クランプレバー(40)が枢動可能に閉鎖されると、ラッチピン(68)のそれぞれの横方向端部に係合してこれをカートリッジチャネル(16)に向かって引くように構成されたそれぞれの上側カム表面及び下側カム表面を画定する。平坦ばね(52)の形態で示される弾性部材は、レバーアーム(44)を開放位置に向かって付勢する。したがって、平坦ばね(52)は、閉鎖位置から開放位置に向かうクランプレバー(40)の初期前進時に、クランプレバージョー(48)のアンビル半体ラッチピン(68)からの係合解除を促進する。
図2及び
図3に最も分かりやすく示されるように、クランプレバー(40)は、レバーアーム(44)の近位端(46)に配置されたラッチ部材(54)を更に含む。クランプレバーラッチ部材(54)は、カートリッジチャネルのフレーム部分(18)の近位端と弾性的かつ解放可能に係合し、それにより、例えばステープラ(10)が発射される間にクランプレバー(40)を閉鎖位置に解放可能に保持するように構成されている。
【0012】
線状外科用ステープラ(10)のアンビル半体(14)は、近位フレーム部分(62)及び遠位ジョー部分(64)を有する細長いアンビルチャネル(60)を含む。近位フレーム部分(62)は、アンビル半体(14)がカートリッジ半体(12)と連結されたときにカートリッジチャネル側部フランジ(22)の間に受容されるように構成された、横方向に対向する一対の直立側部フランジ(66)を含む。ラッチピン(68)の形態の遠位ラッチ突出部は、アンビルチャネル側部フランジ(66)の遠位端を通って横方向に延在し、近位ピン(70)の形態の近位枢動突出部は、アンビルチャネル側部フランジ(66)の近位端を通って横方向に延在する。アンビルピン(68、70)は、以下に記載されるように、アンビル半体(14)とカートリッジ半体(12)との連結を容易にするように構成されている。
【0013】
アンビル半体(14)の遠位ジョー部分(64)は、例えば下記により詳細に述べるように、ステープラ(10)が発射されるときにステープルカートリッジ(130)によって射出されるステープル(170)の脚部(174)を変形させるように構成された複数のステープル形成ポケット(74)(
図15を参照)を有するアンビル面を画定するアンビルプレート(72)を支持する。いくつかの変形例では、アンビル面は、遠位ジョー部分(64)と一体に形成することができる。アンビル半体(14)の遠位ジョー部分(64)は、テーパ状遠位先端部材(76)を更に支持する。いくつかの変形例では、本明細書に参照によりその開示内容の全体を援用するところの2018年10月19日出願の発明の名称が「Decoupling Mechanism for Linear Surgical Stapler」である米国特許出願第16/165,587号の教示に従って、遠位先端部材(76)を遠位ジョー部分(64)に対して選択的に拡張可能とすることができる。
【0014】
図2に示されるように、線状外科用ステープラ(10)は、ステープラ(10)の選択部分を覆い、使用中に操作者によるステープラ(10)の効果的な把持及び操作を促進する複数のシュラウド(56、78)を更に含む。本実施例では、クランプレバーシュラウド(56)は、クランプレバーシュラウド(56)が、カートリッジチャネル(16)に対してクランプレバー(40)と共に枢動するように構成されるように、クランプレバー(40)の外向きの側面に固着され、それを覆う。更に、アンビルシュラウド(78)は、アンビルチャネル(60)の外向きの側面に固着され、それを覆う。いくつかの変形例では、本明細書に参照によりその開示内容を援用するところの2018年8月13日出願の発明の名称が「Clamping Assembly for Linear Surgical Stapler,」である米国特許出願第16/102,170号の教示に従って、アンビルシュラウド(78)をアンビルチャネル(60)と連結することができる。他の変形例では、シュラウド(56、78)は、当業者には容易に明らかな様々な他の適当な方法で、クランプレバー(40)及びアンビルチャネル(60)と連結できることが理解されよう。
【0015】
図3に最も分かりやすく示されるように、カートリッジ半体(12)の近位端は、アンビル半体(14)と発射アセンブリ(100)の部分を解放可能に保持するように構成された保持アセンブリ(80)を含む。本実施例の保持アセンブリ(80)は、アンビルラッチ部材(82)及び戻り止め部材(84)を含み、これらは共に、発射スロット(32)の近位に配置された横方向に延在するピン(86)を介してカートリッジチャネル(16)の近位端と回転可能に連結される。ねじりばね(340)(図示せず)は、ピン(86)によって画定される横軸を中心として、アンビルラッチ部材(82)及び戻り止め部材を反対の回転方向に弾性的に付勢するように構成されている。
【0016】
アンビルラッチ部材(82)は、ピン(70)がカートリッジチャネル(16)の近位テーパノッチ(26)内に案内され、それによりステープラ半体(12、14)の近位端が連結されるときに近位アンビルピン(70)を解放可能に捕捉するように構成された上部フィンガー(88)を含む。アンビルラッチ部材(82)の下端は、クランプレバー(40)がラッチフィンガー(88)から近位ピン(70)を解放するための開放位置にあり、それによりステープラ半体(12、14)の近位端を分離することができるときに、操作者によって押し込まれるように構成された解放ボタン(90)を画定する。戻り止め部材(84)は、発射アセンブリ(100)が
図3に示される近位ホーム位置にあるときに発射アセンブリ(100)の摺動ブロック(102)の近位端を解放可能に捕捉するように構成された遠位フィンガー(88)を含む。戻り止め部材(84)は、摺動ブロック(102)がその近位ホーム位置の遠位方向に位置付けられている間にクランプレバーラッチ部材(54)の上端部を解放可能に捕捉するように構成された近位フック(94)を更に含み、それにより、ステープラ(10)の発射中にクランプレバーラッチ部材(54)の作動及びクランプレバー(40)が開くことを防止する。発射アセンブリ(100)がその近位ホーム位置にあるとき(すなわちステープラ(10)の発射の前又は後)、戻り止め部材(84)の近位フック(94)は、操作者による作動に応じてクランプレバーラッチ部材(54)がカートリッジチャネル(16)の近位フレーム部分(18)を回転可能に係合解放することを可能とする。その結果、次いで、クランプレバー(40)を開くことができる。カートリッジ半体(12)の保持アセンブリ(80)及び関連する構成要素については、本明細書に参照によりその開示内容を援用するところの発明の名称が「Firing System for Linear Surgical Stapler,」である2018年8月13日出願の米国特許出願第16/102,164号の教示の少なくとも一部に従って更に構成され、動作可能であってよい。
【0017】
図4に最も分かりやすく示されるように、カートリッジ半体(12)の発射アセンブリ(100)は、摺動ブロック(102)と、摺動ブロック(102)に枢動可能に連結された一対のアクチュエータ(104、106)(又は「発射ノブ」)と、摺動ブロック(102)から遠位方向に延びる複数の細長いビーム(108、112)と、を含む。一対の側部ビーム(108)は、それらの近位端で摺動ブロック(102)の遠位端に連結され、一対のカムランプ(110)内で遠位方向に終端する。カムランプ(110)は、ステープルカートリッジ(130)内に収容されたステープルドライバ(180)の下面と係合して(
図7を参照)ステープルドライバ(180)を上方に作動させることにより、ステープル(170)をカートリッジ(310)からステープルカートリッジ(310)とアンビルプレート(72)との間にクランプされた組織中に打ち込む(又は「発射する」)ように構成されている。中央ビーム(112)は、摺動ブロック(102)から遠位方向に離間したブリッジ要素(114)(又は「ナイフブロック」)を介して側部ビーム(108)と連結されている。中央ビーム(112)は、ステープラ半体(12、14)の遠位部分間にクランプされた組織を切断するように構成された遠位刃先(118)を有する遠位方向に角度付けされたナイフ部材(116)で遠位方向に終端する。中央ビーム(112)の遠位部分は、ナイフ部材(116)の近位側で上方に突出する係止要素(120)と、係止要素(120)の近位側で遠位方向に面するロックアウト突起(122)と、を更に含む。
【0018】
発射アセンブリ(100)の各アクチュエータ(104、106)は、例えば上記に参照によって援用する、米国特許出願公開第16/102,164号により詳細に記載されるように、一度に一方のアクチュエータ(104、106)のみが展開されるように展開位置と格納位置との間で摺動ブロック(102)に対して回転可能であるように構成されている。展開位置において、アクチュエータ(104、106)は、操作者によって遠位方向に駆動されて、発射アセンブリ(100)をステープラ(10)を通って遠位方向に作動させることにより、ステープラ半体(12、14)の間にクランプされた組織の切断及びステープル留めを同時に行うことができる。
【0019】
B.線状外科用ステープラの例示的な使用
図5A~
図5Eは、ステープラ半体(12、14)の例示的な連結、及び外科手術中の組み立てられたステープラ(10)のその後の発射を示す。
図5Aに示されるように、カートリッジ半体(12)のクランプレバー(40)が開放位置で与えられており、ジョースロット(50)がカートリッジチャネル側部フランジ(22)の垂直スロット(24)と整列している。更に、発射アセンブリ(100)は、上記に述べた
図3に示されるように、保持アセンブリ(80)の戻り止め部材(84)によってその近位ホーム位置に維持されている。この段階で、ステープル留め及び切断しようとする組織の部分(図示せず)を、カートリッジ半体(12)の遠位ジョー部分(20)内に配設されたステープルカートリッジ(130)の上に位置付けることができる。あるいは、組織は、後述するステープラ半体(12、14)の近位端を連結した後でステープルカートリッジ(130)上に位置付けることもできる。
【0020】
図5A~
図5Bに示されるように、ステープラ半体(12、14)の近位端部は互いに整列され、近位アンビルピン(70)がカートリッジチャネル(16)の近位テーパノッチ(26)内に下方に案内されてアンビルラッチ部材(82)の上部フィンガー(88)と係合している。この係合によってアンビルラッチ部材(82)が強制的に時計回りに弾性的に回転させられることにより、アンビルラッチ部材(82)の上部フィンガー(88)がアンビルピン(70)を捕捉し、それにより、
図5Bに見られるように、ステープラ半体(12、14)の近位端が互いに解放可能に連結される。
図5Cに示されるように、クランプレバー(40)が開放位置にある状態で、アンビル半体(14)が近位アンビルピン(70)を中心としてアンビル半体(14)に向かって回転させられることにより、アンビル半体(14)の遠位ラッチピン(68)がカートリッジチャネル側部フランジ(22)の垂直スロット(24)及びクランプレバー(40)のジョースロット(50)内に受容される。この時点で、ステープラ半体(12、14)の遠位ジョー部分(20、64)は、それらの間に受容された組織をクランプする前に最終的に調整することができるように、部分的に近接させられた状態にある。
【0021】
図5Dに示されるように、クランプレバー(40)が閉鎖されてジョースロット(50)の閉鎖近位端に対してアンビルラッチピン(68)が引きつけられることにより、カートリッジ半体(12)に対してアンビル半体(14)が完全にクランプされ、組織(図示せず)がステープルカートリッジ(130)とアンビルプレート(72)との間にクランプされる。ステープルカートリッジ(130)の組織隙間ポスト(146)によってステープルカートリッジ(130)とアンビルプレート(72)との間にわずかな横方向の隙間が画定されており(
図6を参照)、これにより組織はそれらの間に所定の組織圧縮度で収容される。
図6に示されるように、組織隙間ポスト(146)がステープルカートリッジ(130)の遠位端に配設されており、ステープラ(10)が
図5Dに示される完全にクランプされた状態にあるときにアンビルプレート(72)の遠位端に接触するように構成されている。
【0022】
図5Eに示されるように、完全にクランプされた状態に達した時点で、ステープラ(10)は、発射アセンブリ(100)の展開されたアクチュエータ(104、106)をカートリッジ半体(12)の近位フレーム部分(18)に沿って遠位方向に駆動することにより発射させることができる。
図4に関連して上記に述べたように、この動作によって、発射アセンブリ(100)の細長いビーム(108、112)をステープルカートリッジ(130)内に形成された対応するチャネルを通って遠位方向に並進させ、これによりカムランプ(110)及びステープルドライバ(180)によってクランプされた組織内にステープルが発射され、同時にナイフ部材(116)がクランプされた組織を切断する。発射ストロークの完了後、発射アセンブリ(100)は、アクチュエータ(104、106)によってその近位ホーム位置に戻される。次いで、クランプレバーラッチ部材(54)を押し込むことでクランプレバー(40)の近位端をカートリッジチャネル(16)から解放し、これによりクランプレバー(40)を再び開くことが可能となる。次いで、保持アセンブリ(80)の解放ボタン(90)を押し込むことでアンビル半体(14)をカートリッジ半体(12)から解放することができ、そのため、ステープラ半体(12、14)を互いから分離し、それにより新たにステープル留めされ、切断された組織を解放することができる。いくつかの変形例では、ステープラ(10)は、参照によって本明細書に援用するところの米国特許出願公開第16/165,587号に開示される機構と同様のステープラ半体(12、14)の分離を促進する機構を含むことができる点は理解されよう。
【0023】
II.3次元ステープルの適切な成型を促すステープルドライバ及び組織把持機構を有する例示的なステープルカートリッジ
図15~
図16に関連して以下に述べるように、線状外科用ステープラ(10)のステープルカートリッジ(130)は、脚先端部が互いから横方向にオフセットされるように各ステープル(170)の脚部が形成されることで非平面形状の形成後ステープル(170)を与える、3次元(「3D」)の形成構成を有するステープル(170)を適用するように構成されている。かかるステープルの構成は、患者組織に適用された得られたステープルラインに沿った高い止血性及び更には圧縮力の均一な分布を与える点で有利である。加えて、ステープルカートリッジ(130)にはスタンドオフ部材(152、160、162、164)が設けられていることにより、上記に述べたステープル留め及び切断工程の間に、ステープルカートリッジ(130)がステープルカートリッジ(130)とアンビルプレート(72)との間にクランプされた組織を効果的に把持する能力が高められる。したがって、ステープル(170)の適切な3D形成を促す適当なクリアランスを与え、ステープルの形成不良を防止するために、ステープルカートリッジ(130)の特定の機構を適当な形状にすることが望ましい場合がある。かかるクリアランスが設けられることは、ステープルカートリッジ(130)を発射するために発射アセンブリ(100)を遠位方向に作動させるのに必要なユーザによる入力の力を低減させる点でも有利である。
【0024】
以下に示され、述べられる機構は、線状外科用ステープラ(10)のステープルカートリッジ(130)との関連で示されるが、かかる機構は様々な他のタイプの外科用ステープラと共に使用するように構成されたステープルカートリッジにも適用できる点は理解されよう。
【0025】
A.例示的なステープルカートリッジの概要
図6及び
図7に示されるように、ステープルカートリッジ(130)は、細長いカートリッジ本体(132)、並びにカートリッジ本体(132)内に収容された複数のステープル(170)及びステープルドライバ(180)を含む。スイングタブ(144)の形態のロックアウトバイパス機構が、カートリッジ本体(132)の近位端に回転可能に連結されており、以下でより詳細に述べる。いくつかの変形例では、ステープルカートリッジ(130)は、カートリッジ本体(132)の下側に沿って延在し、カートリッジ本体(132)内のステープル(170)及びステープルドライバ(180)の保持を助ける底部トレイ(図示せず)を更に含むことができる。
【0026】
図12を簡単に参照すると、各ステープル(170)は、中央クラウン(172)と、クラウン(172)から離れる方向に延び、脚先端部(176)を有する一対の脚部(174)とを有している。ステープル(170)の未形成状態では、クラウン(172)と脚部(174)とがU字形状を形成し、この形状では脚先端部(176)がクラウン(172)から離れる方向に延び、クラウン(172)と脚部(174)とが共通の平面内にあるために未形成ステープル(170)は2次元形状を有している。
図15及び
図16を簡単に参照すると、ステープル(170)の3D形成後の状態では、各脚部(174)は、アンビルプレート(72)の対応するステープル形成ポケット(74)によって、各脚先端部(176)がクラウン(172)に向かって延びるように曲げられている。より具体的には、
図16に示されるように、各形成された脚先端部(176)は、互いから、かつクラウン(172)の両側でクラウン(172)から横方向にオフセットされており、これにより上記に述べたような機能的利点を備えた3次元形状を有する形成後ステープル(170)を与える。
【0027】
図6及び
図7に戻ると、本実施例のカートリッジ本体(132)は、長手方向軸に沿って、一対のフック(134)を有する近位端とテーパ状ノーズ(136)を有する遠位端との間で直線状に延びている。近位フック(134)は、ステープルカートリッジ(130)がカートリッジチャネル(16)の遠位ジョー部分(20)内に着座されるときにクランプレバーの枢動ピン(42)を解放可能に捕捉し、カートリッジチャネル(16)の床に形成された対応する開口部を通って下方に延びるように構成されている。カートリッジ本体(132)の側面の近位端の近くに配設された一対の翼状タブ(138)は、遠位ジョー部分(20)に対するステープルカートリッジ(130)の挿入及び取り出しを容易にするように構成されている。
【0028】
図6~
図9に最も分かりやすく示されるように、カートリッジ本体(132)の上面はデッキ(140)を画定している。細長いナイフスロット(142)が、デッキ(140)を通ってステープルカートリッジ(130)の長手方向軸に沿って長手方向に延び、上記に述べたような発射アセンブリ(100)のナイフ部材(116)の遠位作動に応じて、そのナイフ部材をナイフスロットを通じて摺動可能に受容するように構成されている。スイングタブ(144)の形態の発射ロックアウトバイパス機構が、ナイフスロット(142)の近位端においてカートリッジ本体(132)に回転可能に連結されている。スイングタブ(144)は、スイングタブ(144)がナイフスロット(142)の近位端を垂直に横切って延びる展開位置と、スイングタブ(144)がナイフスロット(142)と平行に延びる格納位置との間で回転するように構成されている。
図27A~
図27Bに関連して以下に示され、述べられるように、スイングタブ(144)は展開位置では、発射アセンブリ(100)をロックアウト状態から、発射ビーム(108、112)がステープルカートリッジ(130)を通って遠位方向に並進して、ステープラ(10)によってクランプされた組織のステープル留め及び切断を行うことができる発射状態へと付勢するように構成されている。
【0029】
剛性の組織隙間ポスト(146)がナイフスロット(142)の遠位端に固定され、カートリッジデッキ(140)から離れる方向に上方に突出している。組織隙間ポスト(146)の丸みを帯びた上端部は、アンビルプレート(72)の遠位端に接触するように構成されており、それにより、ステープラ半体(12、14)が上記に述べたような形で互いにクランプされるときにカートリッジデッキ(140)とアンビルプレート(72)と間に組織隙間を画定する。
【0030】
一対の細長いリブ(148)がナイフスロット(142)及び細長いリブ(148)の両側に沿って延在しており、デッキ(140)から離れる方向に突出してせり上がった表面を画定している。細長いリブ(148)はナイフスロット(142)の近位端と遠位端で終端し、ナイフスロット(142)に沿った組織の高い把持性を促進するように構成されており、これによりナイフ部材(116)による切断中の組織を安定化させる。
図11に示されるように、本変形例の細長いリブ(148)は、組織隙間ポスト(146)の近位に配設されたテーパした遠位端を有している。
【0031】
ステープルカートリッジ(130)のカートリッジ本体(132)は、カートリッジ本体(132)を通って横断方向に延在し、デッキ(140)に開口する複数のステープル開口部(150)を更に含む。本実施例では、ステープル開口部(150)は、ナイフスロット(142)の両側に沿って第1及び第2の平行な列に配置されており、各列のステープル開口部(150)は、隣接する列のステープル開口部(150)に対して長手方向に互い違いとなっている。ステープル開口部(150)の様々な適当な配置及び量が、ステープルカートリッジ(130)の他の変形例で提供され得る点は理解されよう。各ステープルキャビティ(150)は、それぞれのステープルドライバ(180)及びステープル(170)を内部に収容するように構成されている。上記に述べたように、発射アセンブリの各カムランプ(110)は、ステープルドライバ(180)の下面に係合し、ステープル開口部(150)内でステープルドライバ(180)を上方に作動させることによってステープル開口部(150)から組織内へ、更にアンビルプレート(72)に対してステープル(170)を打ち込む(すなわち「発射する」)ように構成されている。
【0032】
図8~
図11に最も分かりやすく示されるように、ステープルカートリッジ(130)は、カートリッジデッキ(140)上に配置され、カートリッジデッキから上方に突出するスタンドオフ部材(152、160、162、164)の形態の複数の組織把持部材を更に含む。スタンドオフ部材(152、160、162、164)はデッキ(140)の長さに沿って分布されており、ナイフスロット(142)及び細長いリブ(148)から横方向にオフセットされて、それぞれの1つ以上のステープル開口部(150)と整列してそのステープル開口部に開口している。下記に述べるように、スタンドオフ部材(152、160、162、164)は、デッキ(140)とアンビルプレート(72)とが互いにクランプされるときに組織を把持することによって組織を安定化させ、更には、ステープル位置における組織の圧縮を最適化して組織の効果的なステープル留め及び切断を促すように構成されている。本変形例ではスタンドオフ部材(152、160、162、164)はカートリッジ本体(132)と一体に形成されているが、他の変形例では、スタンドオフ部材(152、160、162、164)をカートリッジ本体(132)とは別体として形成して、カートリッジ本体と連結してもよい点は理解されよう。
【0033】
図8~
図10に示されるように、ステープルデッキ(140)上の第1の群のスタンドオフ部材は、ナイフスロット(142)の長さに沿ってステープル開口部(150)と位置を合わせて個別に配置されたクリート(152)の形態として示されている。各クリート(152)は、長手方向の反対側に面する一対の端部機構(154)を含む。詳細には、第1の端部機構(154)は、ステープル開口部(150)の所与の列内の第1のステープル開口部(150)の端部分に開口してその周囲を部分的に包囲し、反対側の第2の端部機構(154)は、ステープル開口部(150)の同じ列内の隣接する第2のステープル開口部(150)の端部分に開口してその周囲を部分的に包囲している。第1及び第2の端部機構(154)は凹状ブリッジ機構(156)によって一体に接続されている。
【0034】
クリート(152)の各端部機構(154)は、クリート(152)の高さに沿って、デッキ(140)に平行に延びる平面内でほぼU字状の断面を有している。各端部機構(154)はまた、それぞれのステープル開口部(150)の内壁につながり、そこから外側に突出する内壁を画定している。このようにして、各端部機構(154)は、それぞれのステープル開口部(150)に開口して、そのステープル開口部と連通している。したがって、各端部機構(154)は、ステープルドライバ(180)によってステープル(170)がステープル開口部(150)から上方に射出されるときに、対応するステープル(170)(
図12を参照)のそれぞれのステープル脚部(174)、及びそれぞれのステープルドライバ(180)を案内するように構成されている。したがって、各端部形成部(154)は、隣接するクリート(152)の対面する端部機構(154)と、又は下記に述べるエンドキャップ(160)(
図11を参照)と協働して、このようなステープル(170)及びステープルドライバ(180)の案内を与える。
【0035】
図8及び
図10に最も分かりやすく示されるように、クリート(152)の各端部機構(154)は、クリート(152)の高さに沿ってそれぞれの凹状ブリッジ機構(156)に向かってデッキ(140)から離れる方向にテーパしているため、各クリート(152)に台形の側断面が与えられる。これに関して、
図10に最も分かりやすく示されるように、各端部機構(154)は、凹状ブリッジ機構(156)に向かって傾斜しており、その高さに沿って丸みを帯びた、角度付き端面(155)を含む。角度付き端面(155)のこの丸みを帯びた構成によって、各端部機構(154)がそれぞれのステープル脚部(174)及びそれぞれのステープルドライバ(180)と対面し、それによりステープル(170)及びステープルドライバ(180)を効果的に上方に案内することができる一方で、ステープル脚部(174)の適正な3D形成を促すための効果的なクリアランスが与えられる。特に、角度付き端面(155)の丸みを帯びた構成は、ステープル脚部(174)の形成不良を誘発させる可能性がある、ステープル脚部(174)がアンビルプレート(72)によって形成されるときにステープル脚部(174)の先端部が端部機構(154)と衝突するリスクを低減する。
【0036】
図8及び
図10に示されるように、本実施例のカートリッジデッキ(140)上のクリート(152)の横方向に最も外側の列には、ステープルカートリッジ(130)の長さに対して角度が付けられた平坦面(158)を有する外側側面が形成されている。したがって、これらの特定のクリート(152)はそれらの長手方向軸を中心として非対称であり、これは、カートリッジ本体(132)を形成するための型成形プロセスを容易とする助けとなり得る。
【0037】
本実施例のクリート(152)は、各クリート(152)が独立し、隣接するクリート(152)から離間するように、互いに対して個別に形成されているが、他の変形例では、クリート(152)は、カートリッジデッキ(140)の1つ以上の部分に沿って互いに相互接続されてもよい。
【0038】
図11に示されるように、カートリッジデッキ(140)は、ステープル開口部(150)の列の遠位端に配設された、近位側に面したエンドキャップ(160)の形態の更なるスタンドオフ部材を含む。本変形例では、各エンドキャップ(160)の近位部分は、上記に述べたクリートの端部機構(154)と同様の形状となっている。詳細には、各エンドキャップ(160)の近位部分はU字形状を有しており、それぞれのステープル開口部(150)の遠位端部分の周囲を部分的に包囲している。したがって、各エンドキャップ(160)は、ステープルカートリッジ(130)の発射の間に、同じ列内の隣接するクリート(152)の対面する端部機構(154)と協働して、それぞれのステープル(170)及びステープルドライバ(180)を案内する。本実施例では、各エンドキャップ(160)は、カートリッジノーズ(136)に向かって遠位方向にテーパした遠位ランプ機構(162)を更に含む。同様のランプ機構(164)が、組織隙間ポスト(146)の遠位側に組織隙間ポストと長手方向に整列して位置付けられている。ランプ機構(162、164)は、組織がクリート(152)、エンドキャップ(160)、又は組織隙間ポスト(146)にひっかかったり、又は他の形で付着したりすることなく、組織構造内又はその下側へのステープラ(10)のカートリッジ半体(12)の遠位端の滑らかな挿入を促すように構成されている。
【0039】
本実施例では、スタンドオフ部材(152、160、162、164)は、均一な最大高さでカートリッジデッキ(140)から突出し、したがってせり上がった組織係合面を集合的に画定している。他の変形例では、スタンドオフ部材(152、160、162、164)は、異なる高さでカートリッジデッキ(140)から突出し、したがって2つ以上のせり上がった組織係合面を画定してもよい。
【0040】
図12~
図14は、ステープルカートリッジ(130)の例示的なステープルドライバ(180)の対を示す。本実施例では、ステープルドライバ(180)の各対は、ステープルドライバ(180)をそれらの下端(186)で相互接続するブリッジ要素(182)を有するドライバユニット(181)として一体に形成されている。ドライバユニット(181)のステープルドライバ(180)は、ステープルカートリッジ(130)の長手方向軸に対して互いから横方向かつ長手方向にオフセットされた互い違いの形で配置されており、そのため、ステープルドライバ(180)はカートリッジ本体(132)の対応するステープル開口部(150)と整列するように構成されている。
図12に示されるように、各ステープルドライバ(180)は、上端(184)、下端(186)、第1の側面(188)、及び反対側の第2の側面(190)を含む。
図14に見られるように、本実施例のステープルドライバ(180)は、その高さに沿って形成されており、第1の側面及び第2の側面(188,190)を画定する細長い八角形の形状を有する横断面を有している。ステープルドライバ(180)の上端(184)は、対応するステープル(170)のクラウン(172)を受容して支持するように構成された溝(192)を含む。
【0041】
本実施例の各ステープルドライバ(180)には、上端(184)に開口し、かつステープラ(10)が発射されるときのアンビルプレート(72)によるステープル脚部(174)の形成時にステープルの脚先端部(176)を受容するように構成されたポケット(194a、194b)が形成されている。詳細には、ドライバ(180)の第1の側面(188)は、第1の隣接するポケットの対(194a)を上端(184)に含み、第2の側面(190)は、第2の隣接するポケットの対(194b)を上端(184)に含む。本変形例では、ポケット(194a、194b)は均一な形状を有しており、第1の側面(188)の各ポケット(194a)と第2の側面(190)の反対側のポケット(194b)とが整列するように対称的に配置されている。
【0042】
ステープルドライバ(180)の各ポケット(194a、194b)は、上端(184)のそれぞれの面取り面(196)によって画定され、それぞれの側面(188、190)の中央に位置付けられたボス(198)によって同じ側面(188、190)の隣接するポケット(194a、194b)から分離されている。各面取り面(196)は溝(192)に向かって角度付けされているため、第1の側面(188)のポケット(194a、194b)と第2の側面(190)のポケット(194a、194b)とはそれらの上端において互いに向かって角度付けされている。各ポケット(194a、194b)は下端(186)に向かう方向に幅がテーパしているため、ほぼ台形の形状を有している。これに対して、各ボス(198)は上端(184)に向かう方向に幅がテーパしており、ほぼ三角形の形状を有している。更に、各ボス(198)が上部溝(192)の中央付近で各対応するポケット(194a、194b)の内側側壁を画定しているのに対して、各ポケット(194a、194b)は上部溝(192)の対応する端部付近で反対側の側面に開口している。ボス(198)は、ステープルカートリッジ(130)の組み立て時の上部溝(192)内のステープルクラウン(172)の適正な着座を助けるように構成されている。
【0043】
図15に示されるように、ステープルドライバ(180)の各ポケット(194a、194b)は、ステープル(170)の形成時にステープル脚先端部(176)を受容するように構成されており、そのため、各ステープル脚先端部(176)はステープルドライバ(180)のそれぞれの面取り面(196)と対面する(必ずしも接触はしない)。その結果、また、有利な点として、ステープルドライバ(180)にポケット(194a、194b)が設けられていることは、上記に述べたクリート(152)の丸みを帯びた角度付き端面(155)と併せて、ステープル(170)の形成不良を誘発するような形でステープル脚部(174)がステープルドライバ(180)の側面又はクリート(152)の端部機構(154)に衝突することなく、ステープル(170)の適正な3D形成を可能とする。
【0044】
図15に示されるように、ステープル(170)の第1の脚先端部(176)は、3Dステープル形成時にドライバ(180)の第1の側面(188)のポケット(194a)内に受容される。同様に、第2の脚先端部(176)は、第1のポケット(194a)から対角線上で反対にある第2の側面(190)のポケット(194b)内に受容される。したがって、第1の側面(188)の残りのポケット(194a)と対角線上で反対にある第2の側面(190)の残りのポケット(194b)は、本実施例では使用されないままである。しかしながら、ステープルドライバ(180)の各側面(188、190)に一対のポケット(194a、194b)が設けられていることにより、ステープルドライバ(180)は、アンビルプレート(72)のステープル形成ポケット(74)の別の構成及びその結果として得られるステープル(170)の3D形成された構成に適合できる点は理解されよう。例えば、いくつかの変形例では、上記に代えて、アンビルプレート(72)のステープル形成ポケット(74)の少なくとも一部のものを、
図15に示される、対角線上で反対にあるポケット(194a、194b)の未使用の対にステープル脚部(174)を方向付けるように構成することもできる。したがって、各ステープルドライバ(180)は、
図16に示される3D構成に対して鏡像関係にある3D構成を有するステープル(170)の形成に適合するように構成されている。
【0045】
B.ステープルカートリッジの例示的な代替的ステープルドライバ
用途によっては、上記の代わりに、ステープルカートリッジ(130)を、異なる厚さの患者組織への発射に適合するように構成することが望ましい場合がある。例えば、上記の代わりに、カートリッジデッキ(140)及びスタンドオフ部材(152、160、162、164)の寸法を、例えば、血管構造の組織などの比較的薄い組織のステープル留めに適合するように構成することができる。そのようなステープルカートリッジ(130)の代替的な変形例では、ステープル(170)は
図16に示されるステープル形状に対して若干異なる3D形成された形状をとることができる。例えば、ステープル脚部(174)を、形成後ステープル(170)がより小さな形成後高さ(例えば、およそ0.035インチ~0.040インチ)を有し、
図20に示されるように、脚先端部(176)がクラウン(172)の両端よりもクラウン(172)の中心の近くに位置付けられるように形成することができる。その結果、ステープルドライバ(180)のポケット(194a、194b)及びボス(198)は、ステープルの形成不良及びその結果生じる外科用ステープラ(10)を発射するために必要とされるユーザ入力の力の増大につながり得る、ステープルドライバ(180)の機構に対するステープル脚部(174)の望ましくない衝突を生じることなく、そのようなステープル(170)の3D形成の違いに適合するような若干の再構成を許容し得る。ステープルドライバ(180)のそのような例示的な変形形態について、以下により詳細に述べる。
【0046】
図17~
図19は、ステープルカートリッジ(130)と共に使用するように構成された例示的な別のステープルドライバ(200)の対を示している。ステープルカートリッジ(200)は、以下に述べる点を除いて、上記に述べたステープルカートリッジ(180)と同様である。ステープルドライバ(180)と同様、ステープルドライバ(200)は、ステープルドライバ(200)が互い違いの構成で配置されるように、ステープルドライバ(200)をそれらの下端(206)において相互接続するブリッジ要素(202)を有するドライバユニット(201)として一体に形成されている。更に、各ステープルドライバ(200)は、上端(204)、下端(204)、第1の側面(208)、反対側の第2の側面(210)、上端(204)における溝(212)、及びその高さに沿って横断方向に細長い八角形の形状を有している。
【0047】
ステープルドライバ(180)と異なり、ステープルドライバ(200)の各側面(208、210)は、ステープル(170)の形成時にステープル脚部(174)を受容するように構成された単一のポケット(194)を含む。各ポケット(194)は、上部溝(212)に対して中央に位置付けられており、その上端において溝(212)に向かって角度付けされた対応する面取り面(216)によって画定されている。各面取り面(216)は、一対のボス(218)によってその2つの側面で境界が与えられており、各ボス(218)は、溝(212)の長さに沿って上部溝(212)の中心から等距離だけオフセットされている。各ボス(218)は、対応するポケット(194)のそれぞれの側壁を画定し、ボス(218)は、ほぼ長方形の形状を有する各面取り面(216)を与えるような形状となっている。更に、各ボス(218)は、上端(204)に向かう方向にその高さに沿ってテーパするように、面取りされた側面を有している。ステープルドライバ(200)の各側面(208、210)は、ボス(218)の外側側面に当接し、それぞれの面取り面(216)と同一平面上にある三角形の面(220)を画定する一対の側部リリーフカットを更に含む。
【0048】
図20に示されるように、各ポケット(194)は、アンビルプレート(72)のステープル形成ポケット(74)によるステープルの3D形成時にステープル(170)のそれぞれの脚先端部(176)を受容するように構成されている。ステープルドライバ(180)のポケット(194a、194b)と同様、ステープルドライバ(200)のポケット(214)は、脚先端部(176)が面取り面(216)と対面するように(ただし、必ずしも接触はしない)、ステープルの脚先端部(176)を受容するように構成されている。したがって、ステープルドライバ(200)は、例えばおよそ0.035インチ~0.040インチの形成後のステープル高さが望ましい比較的薄い組織のような組織中でのステープル(170)の適正な3D形成を促すように構成されている。
【0049】
III.線状外科用ステープラの発射ロックアウトばねの塑性変形を最小限に抑制するための例示的な機構
上記に述べたように、線状外科用ステープラ(10)の発射アセンブリ(100)は、近位ホーム位置(
図5Dを参照)から遠位発射位置(
図5Eを参照)へとカートリッジチャネル(16)内で遠位方向に並進可能であることによって、ステープラ半体(12、14)の遠位部分間にクランプされた組織のステープル留め及び切断を同時に行う。下記により詳細に述べるように、カートリッジ半体(12)は、カートリッジ半体(12)の遠位ジョー部分(20)内に未発射(すなわち「未使用」)のステープルカートリッジ(130)が存在しない場合に、ロックアウト状態に向かって発射アセンブリ(100)を付勢するように構成された板ばねの形態の弾性ロックアウト部材(250)を更に含む。未使用のステープルカートリッジ(130)がカートリッジ半体(12)内に着座されるとき、ロックアウトばね(250)はステープルカートリッジ(130)の展開されたスイングタブ(144)によって下方に偏向され、それにより、発射アセンブリ(100)を発射状態に移行させる。発射状態では、発射アセンブリ(100)は偏向状態のロックアウトばね(250)上を遠位方向に自由に作動可能であり、それによりステープラ(10)を発射する。発射の完了後、発射アセンブリ(100)をそのホーム位置に近位方向に後退させることでロックアウトばね(250)をその初期状態に復帰させ、使用済みステープルカートリッジ(130)が未使用のステープルカートリッジ(130)に交換されるまで発射アセンブリ(100)をロックアウト状態に付勢することができる。
【0050】
発射アセンブリ(100)は、発射ストローク中に遠位方向に作動されると、ロックアウトばね(250)をカートリッジチャネル(16)の床に向かって押し込む。場合によっては、この押し込みによってロックアウトばね(250)の塑性変形が生じる場合があり、これにより、ロックアウトばね(250)がその後のステープラ(10)の発射時に効果的に動作する能力を不要に妨げる可能性がある。したがって、そのような塑性変形のリスクを最小限に抑える機構をステープラ(10)のカートリッジ半体(12)に設けることが望ましい場合がある。
【0051】
図21に示されるように、発射アセンブリ(100)の摺動ブロック(102)の下面は、摺動ブロック(102)の遠位端に開口し、近位方向に延在する第1の凹部(124)を含む。更に、ブリッジ要素(114)の下面は、ブリッジ要素(114)の軸方向厚さ全体にわたって延在する第2の凹部(126)を含む。下記に述べるように、これらの下面の凹部(124、126)は、発射アセンブリ(100)が完全な発射状態へと遠位方向に作動されるときにロックアウトばね(250)の一部分を受容するように構成されており、それにより、発射ストローク中にロックアウトばね(250)が偏向させられる量を低減する助けとなる。
【0052】
A.線状外科用ステープラの例示的な発射ロックアウトシステム
図22~
図24に示されるように、線状外科用ステープラ(10)のカートリッジ半体(12)は、ガイドブロック(230)(「スペーサブロック」とも呼ばれる)及びロックアウトばね(250)を含む発射ロックアウトシステムを備える。ガイドブロック(230)は、ガイドブロック(230)内に形成された開口部を通って横方向に延びるクランプレバー枢動ピン(42)を介して遠位スロット(24)と概ね整列するようにしてカートリッジチャネル(16)の床(34)に固定されている。
【0053】
図23に示されるように、ガイドブロックは、第1の横幅を有する近位本体部分(232)と、より狭い第2の幅を有する遠位本体部分(234)とを含む。中央スロット(236)が、ガイドブロック(230)の中心線に沿って近位本体部分及び遠位本体部分(232、234)を通って長手方向に延び、内部を通る発射アセンブリ(100)の中央ビーム(112)を摺動可能に受容するように構成されている。
図22に示されるように、中央スロット(236)の遠位部分は、遠位本体部分(234)の上面を通って開口し、ナイフ部材(116)を摺動可能に受容するように構成されている。一対の側部スロット(238)が中央スロット(236)の両側に沿って近位本体部分(232)を通って長手方向に延びており、内部を通る発射アセンブリ(100)の側部ビーム(108)を摺動可能に受容するように構成されている。
図23及び
図27A~
図27Cに最も分かりやすく示されるように、近位本体部分(232)は、中央スロット(236)の下端に沿って長手方向に延びる下部チャネル(240)を更に含む。下記により詳細に述べられるように、下部チャネル(240)は、ステープラ(10)の発射時に下部チャネル(240)内でのロックアウトばね(250)のベースアーム(252)の上向きの偏向を可能にするのに適した横方向寸法を有するサイズとなっている。遠位本体部分(234)は、ロックアウトばね(250)の一対の遠位アンカークリップ(258)を受容して保持するように構成された横方向の反対側にある一対の凹部(242)を含む。
【0054】
図23に最も分かりやすく示されるように、ロックアウトばね(250)は、平坦なベースアーム(252)と、上向きの角度でベースアーム(252)から近位方向に延び、下向きに湾曲した先端部(256)を有する板ばね(254)の形態で示されている。一対のアンカークリップ(258)が、ベースアーム(252)の遠位端から上方に延びている。
図23及び
図27A~
図27Cに示されるように、アンカークリップ(258)は遠位凹部(242)内で遠位本体部分(234)を把持し、ベースアーム(252)は、遠位本体部分(234)の下面に沿ってクランプレバー枢動ピン(42)を越えて、かつ近位本体部分(232)の下部チャネル(240)を通って延びている。角度付けされたばね脚部(254)が、中央スロット(236)と長手方向に整列して下部チャネル(240)から近位方向に延びている。
【0055】
図25及び
図27A~
図27Cに示されるように、発射アセンブリ(100)の中央ビーム(112)がロックアウトばね(250)のばね脚部(254)上に長手方向に位置付けられており、中央ビーム(112)はばね脚部(254)上でばね脚部と直接接触して並進するように構成されている。
図26は、ロックアウトばね(260)がばね脚部(264)の少なくとも中間及び遠位部分よりも幅広の下方に湾曲した近位先端部(266)を含む点以外はロックアウトばね(250)と同様の例示的な代替ロックアウトばね(260)を示す。幅広の先端部(266)は、発射アセンブリ(100)の長手方向の作動の全体を通じて中央ビーム(112)をばね脚部(264)との係合状態に維持するように構成されている。
【0056】
図27Aに示されるように、カートリッジチャネル(16)からの未使用のステープルカートリッジ(130)が存在していない場合、ばね脚部(254)は中心ビーム(112)を弾性的に上方に付勢し、それにより、中央ビーム(112)のロックアウト突起(122)がガイドブロック(230)の近位面(233)と係合する。この係合により、中央ビーム(112)はガイドブロック(230)に対して長手方向にロックされ、したがって発射アセンブリ(100)の遠位方向への並進が妨げられる。
図27Bは、カートリッジチャネル(16)内に未使用のステープルカートリッジ(130)が着座される際に、中央ビーム(112)がカートリッジチャネルの床(34)に向かって下方に枢動される様子を示している。
図27B及び
図30Bにおいて、未使用のステープルカートリッジ(130)は、展開位置にあるスイングタブ(144)の概略的描写によって示されている点は理解されよう。上記に述べたように、展開位置にあるスイングタブ(144)は、ステープルカートリッジ(130)のナイフスロット(142)を横断方向にわたって延びている。したがって、カートリッジチャネル(16)内に未使用のステープルカートリッジ(130)が着座されることで、スイングタブ(144)がナイフ部材(116)と係止要素(120)との間で中央ビーム(112)の上面と係合して、中央ビーム(112)を下方に駆動して発射状態の発射アセンブリ(100)を与える。このように、カートリッジチャネル(16)内に未使用のステープルカートリッジ(130)が着座されると、ロックアウトばね(250)のばね脚部(254)がカートリッジの床(34)に向かって下方に圧縮される。
【0057】
図27Cに示されるように、次いで、発射状態の発射アセンブリ(100)が、摺動ブロック(102)のアクチュエータ(104、106)によって遠位方向に駆動される(
図4を参照)。これにより、発射ビーム(108、112)が押されてガイドブロック(230)を通ってステープルカートリッジ(130)内へと遠位方向に並進し、それによりステープルドライバ(180)が上方に作動されてステープル(170)を組織内に打ち込み、同時にナイフ部材(116)によって組織を切断する。発射アセンブリ(100)が
図27Cに示される完全発射位置に向かってばね脚部(254)を越えて遠位方向に前進すると、ばね脚部(254)がブリッジ要素(114)の下面凹部(126)を通ってかつ摺動ブロック(102)の下面凹部(124)内に受容される。更に、ばねアーム先端部(256)がカートリッジチャネルの床(34)に形成された開口部(36)内に受容される。同時に、ロックアウトばね(250)のベースアーム(252)がガイドブロック(230)の下部チャネル(240)内で弾性的に上方に偏向できるようになるが、これは、ばね脚部(254)が、発射アセンブリ(100)の下面凹部(124、126)内で必要なだけ長手方向に摺動できることにもよる。このようにして、ロックアウトばね(250)は、発射アセンブリ(100)の完全発射状態におけるロックアウトばねの塑性変形を最小限に抑える、偏向状態をとることができる。
【0058】
B.例示的な代替的発射ロックアウトシステム
場合によっては、上記の代わりに、上記に述べたガイドブロック(230)を、線状外科用ステープラ(10)が発射されるときのロックアウトばね(250)の塑性変形を低減するのに適した他の形で構成することが望ましい場合がある。
図28~
図30Cは、下記に述べる点を除いて、上記に述べたガイドブロック(230)と同様の例示的な代替的ガイドブロック(270)(又は「スペーサブロック」)を備えたカートリッジ半体(12)を示している。この点に関し、ガイドブロック(270)を、ロックアウトばね(250)と共働するガイドブロック(230)及び上記に述べたカートリッジ半体(12)の他の構成要素に置き換えることにより、線状外科用ステープラ(10)の発射ロックアウトシステムを規定することができる点は理解されよう。
【0059】
ガイドブロック(270)は、カートリッジチャネルの床(34)に固定されており、第1の横幅を有する近位本体部分(272)、より狭い第2の幅を有する遠位本体部分(274)、近位本体部分及び遠位本体部分(272、274)を通って長手方向に延びる中央スロット(276)、並びに中央スロット(276)の両側に沿って近位本体部分(272)を通って長手方向に延びる一対の側部スロット(278)を有している。近位本体部分(272)は、中央スロット(276)の下端に沿って長手方向に延びる下部チャネル(280)を更に含む。遠位本体部分(274)は、ロックアウトばね(250)の遠位アンカークリップ(258)を受容して保持するように構成された横方向の反対側にある一対の凹部(282)を含む。
【0060】
図30Aに示されるように、近位本体部分(272)は、クランプレバー枢動ピン(42)の近位側において下部チャネル(280)の両側の壁から横方向内側に突出する一対のばね支持要素(284)を含む。ロックアウトばね(250)のベースアーム(252)が下部チャネル(240)を通って長手方向に延びており、そのため、ベースアーム(252)はクランプレバー枢動ピン(42)及びばね支持要素(284)と接触して、それらによって垂直方向に支持されている。
【0061】
細長い近位部材(286)がガイドブロック(270)の近位本体部分(272)に一体に接合されており、カートリッジチャネル(16)の近位フレーム部分(18)内のカートリッジチャネルの床(34)に沿って近位方向に延びている。細長近位部材(286)の上面は、下部チャネル(280)と連通して、ステープラ(10)の発射時にロックアウトばね(250)のばね脚部(254)が下方に偏向される際にその内部にばね脚部(254)を受容するように構成された細長凹部(288)を有している。細長近位部材(286)の近位端は、カートリッジチャネルの床(34)の開口部を通って下方に突出するユーザ把持機構(図示せず)を含むことができる。かかるユーザ把持機構は、ユーザの指の支点として機能するように構成することができ、それにより、ユーザは同じ方の手の対応する親指を使用して、上記に述べた保持アセンブリ(80)の解放ボタン(90)を遠位方向に押し込むことができる。
【0062】
細長い遠位部材(290)がガイドブロック(270)の遠位本体部分(274)に一体に接合されており、カートリッジチャネル(16)の遠位ジョー部分(20)内のカートリッジチャネルの床(34)に沿って遠位方向に延びている。細長い遠位部材(290)の遠位端は、カートリッジチャネル(16)の遠位ジョー部分(20)に対して細長い遠位部材(290)を軸方向に固定するように構成された機械的接地機構(図示せず)を含むことができる。
図30A~
図30Cに示され、下記に述べるように、発射アセンブリ(100)は、細長い近位部材及び遠位部材(286、290)上をガイドブロック(270)を通って並進するように構成されている。
【0063】
図30Aに示されるように、カートリッジチャネル(16)からの未使用のステープルカートリッジ(130)が存在していない場合、ばね脚部(254)は中心ビーム(112)を弾性的に上方に付勢し、そのため、中央ビーム(112)のロックアウト突起(122)がガイドブロック(270)の近位本体部分(272)の近位面(273)と係合する。この係合により発射アセンブリ(100)は、
図27A~
図27Cに関連して上記に述べたものと同様のロックアウト状態となる。
図30Bは、カートリッジチャネル(16)内に未使用のカートリッジ(130)が着座されたときに未使用のステープルカートリッジ(130)の展開されたスイングタブ(144)によって中央ビーム(112)が細長い近位部材(286)に向かって下方に枢動されている様子を示しており、これにより発射アセンブリ(100)が発射状態となっている。未使用のステープルカートリッジ(130)が着座されると、ロックアウトばね(250)のばね脚部(254)も細長い近位部材(286)に向かって下方に圧縮される。
【0064】
図30Cに示されるように、次に発射状態の発射アセンブリ(100)が遠位方向に駆動され、これにより発射ビーム(108、112)が押されてガイドブロック(270)を通ってステープルカートリッジ(130)内へと遠位方向に並進し、それによりステープルドライバ(180)が上方に作動されてステープル(170)を組織内に打ち込み、同時にナイフ部材(116)によって組織を切断する。発射アセンブリ(100)が
図30Cに示される完全発射位置に向かってばね脚部(254)を越えて遠位方向に前進すると、
図27A~
図27Cに関連して上記に述べたのと同様の要領で、ばね脚部(254)がブリッジ要素(114)の下面凹部(126)を通って摺動ブロック(102)の下面凹部(124)内に受容される。更に、ばね脚部(254)及びその近位先端部(256)が細長い近位部材(286)の細長凹部(288)内に受容される。同時に、
図30に示されるように、ロックアウトばね(250)のベースアーム(252)の中間部分がクランプレバー枢動ピン(42)及びばね支持要素(284)の一方又は両方によって垂直方向に支持される一方で、ベースアーム(252)の近位部分はガイドブロック(270)の下部チャネル(280)内で弾性的に偏向することができる。このようにして、ロックアウトばね(250)は、発射アセンブリ(100)の完全発射状態におけるロックアウトばねの塑性変形を最小限に抑える、偏向状態をとることができる。
【0065】
IV.形成後ステープルの均一な高さを促すための例示的な機構
場合によっては、クランプレバー(40)の閉鎖によってカートリッジ半体(12)に対して線状外科用ステープラ(10)のアンビル半体(14)がクランプされると、アンビルチャネル(60)の遠位ジョー部分(64)がカートリッジ半体(12)に対してその長さに沿って変形する可能性がある。より詳細には、そのような変形により、アンビルプレート(72)及び遠位ジョー部分(64)の対応する側壁取り付け面が、例えば、説明の目的で遠位ジョー部分(64)の曲率を誇張して示す
図34に示されるように、カートリッジ半体(12)のステープルカートリッジデッキ(140)に対して凸状の曲率をとる。その結果、ステープルカートリッジデッキ(140)とアンビルプレート(72)との間に形成される長手方向に延びる組織隙間は、ステープルカートリッジ(130)及びアンビルプレート(72)の長さに沿ってそのサイズが一貫しなくなる可能性がある。詳細には、組織隙間は、例えば
図34に示されるように、ステープルカートリッジ(130)及びアンビルプレート(72)の中間位置でより小さくなり、ステープルカートリッジ(130)及びアンビルプレート(72)の近位端の位置及び遠位端の位置でより大きくなる可能性がある。組織間隙サイズのこのような非一貫性によって、クランプされた組織内に形成されるステープル(170)の高さが一貫しなくなる可能性があり、望ましくない。したがって、アンビル半体(14)及び/又はカートリッジ半体(12)が、このようなアンビルチャネル(60)の偏向に適合し、ステープルカートリッジ(130)及びアンビルプレート(72)の長さに沿ったステープル(170)の形成後高さの一貫性を確実とする機構を備えることが望ましい場合がある。
【0066】
A.湾曲したアンビルプレートを有する例示的なアンビル半体
図31~
図33Bは、以下に述べる点を除いて、上記に述べたアンビル半体(14)と同様である例示的な別のアンビル半体(300)を示している。
図31に示されるように、アンビル半体(300)は、アンビルプレート(308)が取り付けられる一対の凹状湾曲取り付け面(306)を画定する一対の側壁を備えた遠位ジョー部分(304)を有するアンビルチャネル(302)を含む。アンビルプレート(308)自体がアンビルチャネル(302)の凹状湾曲取り付け面(306)に形状が一致しているため、取り付け面(306)及びアンビルプレート(308)は同じ凹状湾曲経路に沿って長手方向に延びている。
【0067】
いくつかの変形例では、アンビルプレート(308)は、最初に真っ直ぐで平坦な構成で形成された後、アンビル半体(302)の製造時にアンビルチャネル(302)の湾曲取り付け面(306)に対して圧縮されて取り付け面に(例えば溶接により)固定されるときに、湾曲した構成に変形させることができる。他の変形例では、アンビルプレート(308)は、湾曲取り付け面(306)に固定される前に取り付け面(306)と同じ凹状曲率で予め形成することができる。いずれの場合も、湾曲取り付け面(306)、したがってアンビルプレート(308)の凹状曲率は、ステープラ半体(12、300)が互いに完全にクランプされるときに遠位ジョー部分(304)がカートリッジ半体(12)のステープルカートリッジデッキ(140)に対してとることが予想される凸状曲率の逆数として選択される。
【0068】
図31に示されるように、本変形例における取り付け面(306)及びアンビルプレート(308)の凹状曲率は、遠位ジョー部分(304)の長さに沿って不均一である。したがって、遠位ジョー部分(304)とアンビルプレート(308)との組み合わせによって規定される横断方向の高さは、遠位ジョー部分(304)の長さに沿って不均一に異なる。詳細には、
図32A~
図32Cに示されるように、アンビル半体(302)は、遠位ジョー部分(304)の中間位置で最小の横断方向高さ(H1)を、遠位ジョー部分(304)の遠位端で最大の横断方向高さ(H2)を、遠位ジョー部分(304)の近位端で中間の横方向高さ(H3)を有する。いくつかの他の変形例では、遠位の横断方向高さ及び近位の横断方向高さ(H2、H3)は等しくてもよい。
【0069】
図33Aは、上記に述べたカートリッジ半体(12)に対して部分的にクランプされた状態にあるアンビル半体(302)を示す。この状態では、アンビルプレート(308)の遠位端は、カートリッジ半体(12)の組織隙間ポスト(146)に対してクランプし始める。一方、アンビル半体(300)のアンビルプレート(308)及び取り付け面(306)は、ステープルカートリッジ(130)のデッキ(140)に対して依然として凹状に湾曲した構成となっている。
図33Bに示されるように、クランプレバー(40)がその完全閉鎖位置へと閉鎖されると、アンビルチャネル(302)の遠位ジョー部分(304)がラッチピン(307)の遠位でその長さに沿ってわずかに変形させられる。この変形によって、アンビル半体(302)の取り付け面(306)及びアンビルプレート(308)が平坦化する一方で、同時に遠位ジョー部分(304)の上面(309)に凹状曲率が形成される。その結果、アンビルプレート(308)はカートリッジデッキ(140)に平行に延びることになり、したがって、それらの間にその長さに沿って均一な組織隙間(G)が画定される。この均一な組織隙間(G)は、アンビルプレート(308)及びカートリッジデッキ(140)の長さに沿って均一な高さを有するステープル(170)の形成を促す。
【0070】
B.異なる高さのステープルドライバを有する例示的なステープルカートリッジ
図34は、例示的な別のステープルカートリッジ(310)に対して完全にクランプされた状態にあるアンビルチャネル(60)を概略的に示している。ステープルカートリッジ(310)は、ステープルカートリッジ(310)がステープルカートリッジ(310)の長さに沿って異なる高さ(H1、H2、H3)を有する複数のステープルドライバ(312a、312b、312c)を含む点を除いて、上記に述べたステープルカートリッジ(130)と同様である。詳細には、本変形例では、ステープルカートリッジ(310)の中間部分は最小の高さ(H1)のステープルドライバ(312a)を含み、ステープルカートリッジ(310)の遠位端は最大の高さ(H2)のステープルドライバ(312b)を含み、ステープルカートリッジ(310)の近位端は中間の高さ(H3)のステープルドライバ(312c)を含む。いくつかの他の変形例では、遠位ステープルドライバ及び近位ステープルドライバ(312b、312c)の高さ(H2、H3)は等しくてもよい。図には示されていないが、遠位ドライバ(312b)と中間ドライバ(312a)との間に位置付けられるステープルドライバの高さは、遠位ドライバの高さ(H2)から中間ドライバの高さ(H1)へと徐々に変化させることができることが理解されよう。同様に、中間ドライバ(312a)と近位ドライバ(312c)との間に位置付けられるステープルドライバの高さは、中間ドライバの高さ(H1)から近位ドライバの高さ(H3)へと徐々に変化させることができる。
【0071】
図34に示され、また上記に述べたように、アンビルチャネル(60)の遠位ジョー部分(64)は、カートリッジ半体(12)に対してクランプされるときにステープルカートリッジ(310)に向かって凸状に曲がる。その結果、アンビルチャネル(60)の遠位ジョー部分(64)は、その長さに沿ってアンビルプレート(72)とステープルカートリッジ(310)との間に変化する組織隙間を与える湾曲した状態をとる。詳細には、アンビルプレート(72)の中間部分は最小の組織隙間(G1)を画定し、アンビルプレート(72)の遠位端は最大の組織隙間(G2)を画定し、アンビルプレート(72)の近位端は中間の組織隙間(G3)を画定する。異なる高さ(H1、H2、H3)のステープルドライバ(312a、312b、312c)が提供されることで、カートリッジ(310)の中間部分ではより短い距離で、近位及び遠位に向かう方向では徐々に大きな距離でステープル(170)が駆動されることにより、組織隙間(G1、G2、G3)のこのような変動が補正される。その結果、アンビルチャネル(60)の曲率及び組織隙間(G1、G2、G3)の不均一性にもかかわらず、ステープルカートリッジ(310)の全長に沿って均一な高さを有するステープル(170)が形成される。
【0072】
V.例示的な組み合わせ
以下の実施例は、本明細書の教示を組み合わせるか又は適用することができる、種々の非網羅的な方法に関する。以下の実施例は、本出願における又は本出願の後の書類提出における任意の時点で提示され得るいずれの特許請求の適用範囲をも限定することを意図したものではないことを理解されたい。一切の権利放棄を意図するものではない。以下の実施例は、あくまでも例示的な目的で与えられるものに過ぎない。本明細書の種々の教示は、その他の多くの方式で構成及び適用が可能であると考えられる。また、いくつかの変形形態では、以下の実施例において言及される特定の特徴を省略してよいことも考えられる。したがって、本発明者らによって又は本発明者らの利益の承継者によって、後日そうである旨が明示的に示されない限り、以下に言及される態様又は特徴のいずれも重要なものとしてみなされるべきではない。いずれの特許請求が、本出願において、又は以下に言及される特徴以外の更なる特徴を含む本出願に関連する後の書類提出において示される場合、それらの更なる特徴は、特許性に関連するいかなる理由によっても追加されたものとして仮定されるべきではない。
【実施例1】
【0073】
外科用ステープラと共に使用するように構成されたステープルカートリッジであって、(a)カートリッジ本体と、(b)カートリッジ本体によって画定されるデッキであって、外科用ステープラのアンビルに対して組織を圧縮するように構成されている、デッキと、(c)デッキ内に形成された複数のステープル開口部と、(d)ステープル開口部内に配設された複数のステープルであって、ステープルのそれぞれが、一対の脚部を含む、複数のステープルと、(e)ステープル開口部内に配設されたステープルドライバであって、ステープルを組織を通してかつアンビルに対して打ち込んで脚部を形成するように作動可能であり、ステープルドライバのそれぞれが、(i)ドライバ本体と、(ii)ドライバ本体の第1の側面上に配設された第1のポケットと、(iii)ドライバ本体の第2の側面上に配設された第2のポケットと、を含み、第1のポケット及び第2のポケットは、脚部がアンビルに対して形成されるときにそれぞれのステープルの脚部を受容するように構成されている、複数のステープルドライバと、を備える、ステープルカートリッジ。
【実施例2】
【0074】
第1のポケット及び第2のポケットが、ドライバ本体の上端に開口している、実施例1に記載のステープルカートリッジ。
【実施例3】
【0075】
ステープルドライバのそれぞれが、ドライバ本体の第1の側面上に配設された第1のボスと、ドライバ本体の第2の側面上に配設された第2のボスと、を更に含み、第1のボスが第1のポケットの側壁を画定し、第2のボスが第2のポケットの側壁を画定する、実施例1又は2に記載のステープルカートリッジ。
【実施例4】
【0076】
第1のポケットが、ドライバ本体の第1の側面上の第1の面取り面によって画定され、第2のポケットが、本体の第2の側面上の第2の面取り面によって画定されている、実施例1~3のいずれか1つに記載のステープルカートリッジ。
【実施例5】
【0077】
第1の面取り面及び第2の面取り面の上部部分が、互いに向かって角度付けされている、実施例4に記載のステープルカートリッジ。
【実施例6】
【0078】
デッキ上に配設された複数のスタンドオフ部材を更に備え、スタンドオフ部材が、デッキから離れる方向に突出し、組織と係合するように構成されている、実施例1~5のいずれか1つに記載のステープルカートリッジ。
【実施例7】
【0079】
スタンドオフ部材の少なくとも一部のそれぞれが、隣接するステープル開口部の一部分の周囲を包囲する端部分を含む、実施例6に記載のステープルカートリッジ。
【実施例8】
【0080】
端部分は、ステープルドライバが作動されるときにステープルドライバのそれぞれ1つに対面するように構成された、丸みを帯びた端面を含む、実施例7に記載のステープルカートリッジ。
【実施例9】
【0081】
スタンドオフ部材が、デッキの遠位端に配設されたランプ機構を含む、実施例6~8のいずれか1つに記載のステープルカートリッジ。
【実施例10】
【0082】
デッキの遠位端に配設されたポストを更に備え、ランプ機構が、ステープルカートリッジの長手方向軸に沿ってポストの遠位方向に、かつポストと長手方向に整列して配置されている、実施例9に記載のステープルカートリッジ。
【実施例11】
【0083】
(a)デッキ内に形成された細長いスロットであって、内部を通る切断部材を摺動可能に受容するように構成され、ステープル開口部が、細長いスロットと並んで配置されている、細長いスロットと、(b)デッキ上に配設された一対の細長いリブであって、細長いスロットの両側の側面に沿って長手方向に延びる、一対の細長いリブと、を更に備える、実施例1~10のいずれか1つに記載のステープルカートリッジ。
【実施例12】
【0084】
カートリッジ本体が、長手方向軸に沿って直線状に延びている、実施例1~11のいずれか1つに記載のステープルカートリッジ。
【実施例13】
【0085】
外科用ステープラであって、(a)アンビルを支持する第1の遠位部分を有する第1のステープラ半体と、(b)第2の遠位部分を有する第2のステープラ半体と、(c)請求項1に記載のステープルカートリッジと、を備え、第2の遠位部分が、ステープルカートリッジを受容するように構成され、第1のステープラ半体と第2のステープラ半体とが互いに解放可能に連結されて、アンビルとステープルカートリッジとの間に組織をクランプするように構成されている、外科用ステープラ。
【実施例14】
【0086】
ステープルのそれぞれは、一対の脚が延出するクラウンを含み、アンビルは、脚部が形成されるときに各ステープルの脚先端部が互いからかつクラウンの両側でクラウンから横方向にオフセットされるように、ステープルの脚部を形成するように構成されている、実施例13に記載の外科用ステープラ。
【実施例15】
【0087】
第2のステープラ半体が、(i)発射アセンブリであって、ステープルドライバを作動させて、ステープル開口部から、組織を通してかつアンビルに対してステープルを打ち込むように遠位方向に選択的に作動可能であり、発射アセンブリの下面が凹部を有する、発射アセンブリと、(ii)弾性部材と、を含み、ステープルカートリッジが第2の遠位部分に存在しないとき、弾性部材は、発射アセンブリをロックアウト状態に付勢し、それにより発射アセンブリの遠位作動を防げるように構成され、ステープルカートリッジが最初に第2の細長い部材の内部に着座されるとき、発射アセンブリは、発射アセンブリが向状態の記弾性部材上を遠位方向に並進可能であり、そのため、弾性部材の一部分が発射アセンブリの凹部内に受容されている、発射状態をとるように構成されている、実施例13又は14に記載の外科用ステープラ。
【実施例16】
【0088】
第2のステープラ半体が、チャネルを有するガイド部材を更に含み、弾性部材がチャネルを通って長手方向に延び、弾性部材は、発射アセンブリが遠位方向に前進されるときにチャネル内で弾性的に偏向するように構成されている、実施例15に記載の外科用ステープラ。
【実施例17】
【0089】
外科用ステープラと共に使用するように構成されたステープルカートリッジであって、(a)カートリッジ本体と、(b)カートリッジ本体によって画定されるデッキであって、外科用ステープラのアンビルに対して組織を圧縮するように構成されている、デッキと、(c)デッキ内に形成された複数のステープル開口部と、(d)ステープル開口部内に配設された複数のステープルであって、ステープラのそれぞれが、第1の脚部及び第2の脚部を含む、複数のステープルと、(e)ステープル開口部内に配設された複数のステープルドライバであって、組織を通してかつアンビルに対してステープルを打ち込んで脚部を形成するように作動可能であり、ステープルドライバのそれぞれが、(i)第1の面取り面を有する第1の側面と、(ii)第2の面取り面を有する第2の側面と、を含み、第1の脚部及び第2の脚部がアンビルに対して形成されるときに、第1の面取り面は、対面配置でそれぞれのステープルの第1の脚部を受容するように構成され、第2の面取り面は、対面配置でそれぞれのステープルの第2の脚部を受容するように構成されている、複数のステープルドライバと、を備える、ステープルカートリッジ。
【実施例18】
【0090】
ステープルドライバのそれぞれの上端がそれぞれのステープルを支持するように構成され、第1の面取り面及び第2の面取り面が上端まで延びている、実施例17に記載のステープルカートリッジ。
【実施例19】
【0091】
外科用ステープラであって、(a)アンビルを支持する遠位部分を有する第1の細長い部材と、(b)ステープルカートリッジを受容するように構成された遠位部分を有する第2の細長い部材であって、第1の細長い部材及び第2の細長い部材が、互いに解放可能に連結されて、アンビルとステープルカートリッジとの間に組織をクランプするように構成されている、第2の細長い部材と、(c)第2の細長い部材に固定されたガイド部材と、(d)ガイド部材に固定された弾性部材と、(e)第2の細長い部材と摺動可能に連結された発射アセンブリと、を備え、発射アセンブリの下面が凹部を含み、ガイド部材が、第2の細長い部材に対する発射アセンブリの一部分の並進を案内するように構成され、ステープルカートリッジが第2の細長い部材に存在しないとき、弾性部材は、発射アセンブリをロックアウト状態に付勢し、それにより発射アセンブリの遠位作動を防げるように構成され、未使用のステープルカートリッジが第2の細長い部材の内部に着座されるとき、発射アセンブリは、発射アセンブリが偏向状態の弾性部材上を遠位方向に並進可能であり、そのため、弾性部材の近位端が発射アセンブリの凹部内に受容されている、発射状態をとるように構成されている、外科用ステープラ。
【実施例20】
【0092】
弾性部材がガイド部材を通って長手方向に延び、弾性部材は、発射アセンブリが遠位方向に前進されるときにガイド部材内で弾性的に偏向するように構成されている、実施例19に記載の外科用ステープラ。
【0093】
VI.その他
本明細書に記載の教示、表現、実施形態、実施例などのうちのいずれか1つ以上を、本明細書に記載の他の教示、表現、実施形態、実施例などのうちのいずれか1つ以上と組み合わせることができる点が理解されるべきである。したがって、上記の教示、表現、実施形態、実施例などは、互いに対して独立して考慮されるべきではない。本明細書の教示を組み合わせることができる種々の好適な方法が、本明細書の教示を考慮することにより当業者には容易に明らかとなるであろう。このような修正及び変形形態は、特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0094】
更に、本明細書に記載の教示、表現、実施形態、実施例などのいずれか1つ以上は、2018年2月6日に出願された、発明の名称「Release Mechanism for Linear Surgical Stapler」の米国特許出願第15/889,363号;2018年2月6日に出願された、発明の名称「Lockout Assembly for Linear Surgical Stapler」の米国特許出願第15/889,370号;2018年2月6日に出願された、発明の名称「Features to Align and Close Linear Surgical Stapler」の米国特許出願第15/889,374号;2018年2月6日に出願された、発明の名称「Releasable Coupling Features for Proximal Portions of Linear Surgical Stapler」の米国特許出願第15/889,376号;2018年2月6日に出願された、発明の名称「Firing Lever Assembly for Linear Surgical Stapler」の米国特許出願 第15/889,388号;2018年2月6日に出願された、発明の名称「Clamping Mechanism for Linear Surgical Stapler」の米国特許出願第15/889,390号;2018年8月13日に出願された、発明の名称「Firing System for Linear Surgical Stapler」の米国特許出願第16/102,164号;2018年8月13日に出願された、発明の名称「Clamping Assembly for Linear Surgical Stapler」の米国特許出願第16/102,170号;2018年10月11日に出願された、発明の名称「Anvil Assembly for Linear Surgical Stapler」の米国特許出願第16/157,599号;2018年10月11日に出願された、発明の名称「Closure Assembly for Linear Surgical Stapler」の米国特許出願第16/157,605号;及び/又は2018年10月19日に出願された、発明の名称「Decoupling Mechanism for Linear Surgical Stapler」の米国特許出願第16/165,587号に記載の教示、表現、実施形態、実施例などのいずれか1つ以上と組み合わせることができる。これらの出願のそれぞれの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
本明細書に参照により組み込まれると言及されるあらゆる特許、公報、又はその他の開示内容は、全体的に又は部分的に、組み込まれる内容が現行の定義、見解、又は本開示に記載されるその他の開示内容とあくまで矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれることを理解されたい。それ自体、また必要な範囲で、本明細書に明瞭に記載される開示内容は、参照により本明細書に組み込まれるあらゆる矛盾する記載に優先するものとする。参照により本明細書に組み込まれると言及されているが、現行の定義、見解、又は本明細書に記載される他の開示内容と矛盾する任意の内容、又はそれらの部分は、組み込まれた内容と現行の開示内容との間に矛盾が生じない範囲においてのみ、組み込まれるものとする。
【0096】
上記の装置の変形例は、医療専門家により行われる従来の治療及び処置における用途のみではなく、ロボット支援された治療及び処置における用途をも有することができる。ほんの一例として、本明細書の種々の教示は、ロボット外科用システム、例えばIntuitive Surgical,Inc.(Sunnyvale,California)によるDAVINCI(商標)システムなどに容易に組み込まれてもよい。
【0097】
上述の装置の変形例は、1回の使用後に処分するように設計することができ、又はそれらは、複数回使用するように設計することができる。変形例は、一方又はその両方の場合においても、少なくとも1回の使用後に再利用のために再調整されてもよい。再調整は、装置の分解工程、それに続く特定の部品の洗浄又は交換工程、及びその後の再組み立て工程の、任意の組み合わせを含んでもよい。特に、装置のいくつかの変形例は分解することができ、また、装置の任意の数の特定の部分若しくは部品を、任意の組み合わせで選択的に交換又は取り外してもよい。特定の部品の洗浄及び/又は交換後、装置のいくつかの変形例を、再調整用の施設において、又は処置の直前にユーザによってのいずれかで、その後の使用のために再組み立てすることができる。装置の再調整において、分解、洗浄/交換、及び再組み立てのための種々の技術を利用してもよいことが当業者には理解されよう。かかる技術の使用、及び結果として得られる再調整された装置は、全て本出願の範囲内にある。
【0098】
ほんの一例として、本明細書に記載される変形例は、処置の前及び/又は後に滅菌されてもよい。1つの滅菌技術では、装置をプラスチック製又はTYVEK製のバックなど、閉鎖及び封止された容器に入れる。次に、容器及び装置を、γ線、X線、又は高エネルギー電子線などの、容器を透過し得る放射線場に置いてもよい。放射線は、装置上及び容器内の細菌を死滅させ得る。次に、滅菌された装置を、後の使用のために、滅菌容器内に保管してもよい。β線若しくはγ線、エチレンオキシド、又は水蒸気が挙げられるがこれらに限定されない、当該技術分野で周知のその他の任意の技術を用いて、装置を滅菌してもよい。
【0099】
以上、本発明の種々の実施形態を示し、記載したが、当業者による適切な修正により、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法及びシステムの更なる適合化を実現してもよい。このような可能な修正のうちのいくつかについて述べたが、その他の修正が当業者には明らかとなるであろう。例えば、上記の実施例、実施形態、形状、材料、寸法、比率、工程などは例示的なものであって、必須のものではない。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲の観点から考慮されるべきものであり、本明細書及び図面に示され記載された構造及び動作の細部に限定されないものとして理解される。
【0100】
〔実施の態様〕
(1) 外科用ステープラと共に使用するように構成されたステープルカートリッジであって、
(a)カートリッジ本体と、
(b)前記カートリッジ本体によって画定されるデッキであって、前記外科用ステープラのアンビルに対して組織を圧縮するように構成されている、デッキと、
(c)前記デッキ内に形成された複数のステープル開口部と、
(d)前記ステープル開口部内に配設された複数のステープルであって、前記ステープルのそれぞれが、一対の脚部を含む、複数のステープルと、
(e)前記ステープル開口部内に配設された複数のステープルドライバであって、組織を通してかつ前記アンビルに対して前記ステープルを打ち込んで前記脚部を形成するように作動可能であり、前記ステープルドライバのそれぞれが、
(i)ドライバ本体と、
(ii)前記ドライバ本体の第1の側面上に配設された第1のポケットと、
(iii)前記ドライバ本体の第2の側面上に配設された第2のポケットと、を含み、
前記第1のポケット及び前記第2のポケットは、前記脚部が前記アンビルに対して形成されるときにそれぞれの前記ステープルの前記脚部を受容するように構成されている、複数のステープルドライバと、を備える、ステープルカートリッジ。
(2) 前記第1のポケット及び前記第2のポケットが、前記ドライバ本体の上端に開口している、実施態様1に記載のステープルカートリッジ。
(3) 前記ステープルドライバのそれぞれが、前記ドライバ本体の前記第1の側面上に配設された第1のボスと、前記ドライバ本体の前記第2の側面上に配設された第2のボスと、を更に含み、前記第1のボスが前記第1のポケットの側壁を画定し、前記第2のボスが前記第2のポケットの側壁を画定する、実施態様1に記載のステープルカートリッジ。
(4) 前記第1のポケットが、前記ドライバ本体の前記第1の側面上の第1の面取り面によって画定され、前記第2のポケットが、前記本体の前記第2の側面上の第2の面取り面によって画定されている、実施態様1に記載のステープルカートリッジ。
(5) 前記第1の面取り面及び前記第2の面取り面の上部部分が、互いに向かって角度付けされている、実施態様4に記載のステープルカートリッジ。
【0101】
(6) 前記デッキ上に配設された複数のスタンドオフ部材を更に備え、前記スタンドオフ部材が、前記デッキから離れる方向に突出し、組織と係合するように構成されている、実施態様1に記載のステープルカートリッジ。
(7) 前記スタンドオフ部材の少なくとも一部のそれぞれが、隣接するステープル開口部の一部分の周囲を包囲する端部分を含む、実施態様6に記載のステープルカートリッジ。
(8) 前記端部分は、前記ステープルドライバが作動されるときに前記ステープルドライバのそれぞれ1つに対面するように構成された、丸みを帯びた端面を含む、実施態様7に記載のステープルカートリッジ。
(9) 前記スタンドオフ部材が、前記デッキの遠位端に配設されたランプ機構を含む、実施態様6に記載のステープルカートリッジ。
(10) 前記デッキの遠位端に配設されたポストを更に備え、前記ランプ機構が、前記ステープルカートリッジの長手方向軸に沿って前記ポストの遠位方向に、かつ前記ポストと長手方向に整列して配置されている、実施態様9に記載のステープルカートリッジ。
【0102】
(11) (a)前記デッキ内に形成された細長いスロットであって、内部を通る切断部材を摺動可能に受容するように構成され、前記ステープル開口部が、前記細長いスロットと並んで配置されている、細長いスロットと、
(b)前記デッキ上に配設された一対の細長いリブであって、前記細長いスロットの両側の側面に沿って長手方向に延びる、一対の細長いリブと、を更に備える、実施態様1に記載のステープルカートリッジ。
(12) 前記カートリッジ本体が、長手方向軸に沿って直線状に延びている、実施態様1に記載のステープルカートリッジ。
(13) 外科用ステープラであって、
(a)アンビルを支持する第1の遠位部分を有する第1のステープラ半体と、
(b)第2の遠位部分を有する第2のステープラ半体と、
(c)実施態様1に記載のステープルカートリッジと、を備え、
前記第2の遠位部分が、前記ステープルカートリッジを受容するように構成され、
前記第1のステープラ半体と前記第2のステープラ半体とが互いに解放可能に連結されて、前記アンビルと前記ステープルカートリッジとの間に組織をクランプするように構成されている、外科用ステープラ。
(14) 前記ステープルのそれぞれは、前記一対の脚部が延出するクラウンを含み、前記アンビルは、前記脚部が形成されるときに各ステープルの脚先端部が互いからかつ前記クラウンの両側で前記クラウンから横方向にオフセットされるように、前記ステープルの前記脚部を形成するように構成されている、実施態様13に記載の外科用ステープラ。
(15) 前記第2のステープラ半体が、
(i)発射アセンブリであって、前記ステープルドライバを作動させて、前記ステープル開口部から、組織を通してかつ前記アンビルに対して前記ステープルを打ち込むように遠位方向に選択的に作動可能であり、前記発射アセンブリの下面が凹部を含む、発射アセンブリと、
(ii)弾性部材と、を含み、
前記ステープルカートリッジが前記第2の遠位部分に存在しないとき、前記弾性部材は、前記発射アセンブリをロックアウト状態に付勢し、それにより前記発射アセンブリの遠位作動を防げるように構成され、
前記ステープルカートリッジが最初に前記第2の細長い部材の内部に着座されるとき、前記発射アセンブリは、前記発射アセンブリが偏向状態の前記弾性部材上を遠位方向に並進可能であり、そのため、前記弾性部材の一部分が前記発射アセンブリの前記凹部内に受容されている、発射状態をとるように構成されている、実施態様13に記載の外科用ステープラ。
【0103】
(16) 前記第2のステープラ半体が、チャネルを有するガイド部材を更に含み、前記弾性部材が前記チャネルを通って長手方向に延び、前記弾性部材は、前記発射アセンブリが遠位方向に前進されるときに前記チャネル内で弾性的に偏向するように構成されている、実施態様15に記載の外科用ステープラ。
(17) 外科用ステープラと共に使用するように構成されたステープルカートリッジであって、
(a)カートリッジ本体と、
(b)前記カートリッジ本体によって画定されるデッキであって、前記外科用ステープラのアンビルに対して組織を圧縮するように構成されている、デッキと、
(c)前記デッキ内に形成された複数のステープル開口部と、
(d)前記ステープル開口部内に配設された複数のステープルであって、前記ステープルのそれぞれが、第1の脚部及び第2の脚部を含む、複数のステープルと、
(e)前記ステープル開口部内に配設された複数のステープルドライバであって、組織を通してかつ前記アンビルに対して前記ステープルを打ち込んで前記脚部を形成するように作動可能であり、前記ステープルドライバのそれぞれが、
(i)第1の面取り面を有する第1の側面と、
(ii)第2の面取り面を有する第2の側面と、を含み、
前記第1の脚部及び前記第2の脚部が前記アンビルに対して形成されるときに、前記第1の面取り面は、対面配置でそれぞれのステープルの前記第1の脚部を受容するように構成され、前記第2の面取り面は、対面配置で前記それぞれのステープルの前記第2の脚部を受容するように構成されている、複数のステープルドライバと、を備える、ステープルカートリッジ。
(18) 前記ステープルドライバのそれぞれの上端が前記それぞれのステープルを支持するように構成され、前記第1の面取り面及び前記第2の面取り面が前記上端まで延びている、実施態様17に記載のステープルカートリッジ。
(19) 外科用ステープラであって、
(a)アンビルを支持する遠位部分を有する第1の細長い部材と、
(b)ステープルカートリッジを受容するように構成された遠位部分を有する第2の細長い部材であって、前記第1の細長い部材及び前記第2の細長い部材が、互いに解放可能に連結されて、前記アンビルと前記ステープルカートリッジとの間に組織をクランプするように構成されている、第2の細長い部材と、
(c)前記第2の細長い部材に固定されたガイド部材と、
(d)前記ガイド部材に固定された弾性部材と、
(e)前記第2の細長い部材と摺動可能に連結された発射アセンブリと、を備え、前記発射アセンブリの下面が凹部を含み、前記ガイド部材が、前記第2の細長い部材に対する前記発射アセンブリの一部分の並進を案内するように構成され、
ステープルカートリッジが前記第2の細長い部材に存在しないとき、前記弾性部材は、前記発射アセンブリをロックアウト状態に付勢し、それにより前記発射アセンブリの遠位作動を防げるように構成され、
未使用のステープルカートリッジが前記第2の細長い部材の内部に着座されるとき、前記発射アセンブリは、前記発射アセンブリが偏向状態の前記弾性部材上を遠位方向に並進可能であり、そのため、前記弾性部材の近位端が前記発射アセンブリの前記凹部内に受容されている、発射状態をとるように構成されている、外科用ステープラ。
(20) 前記弾性部材が前記ガイド部材を通って長手方向に延び、前記弾性部材は、前記発射アセンブリが遠位方向に前進されるときに前記ガイド部材内で弾性的に偏向するように構成されている、実施態様19に記載の外科用ステープラ。