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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】全帯域直交モード変換器
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/161 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
H01P1/161
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022509190
(86)(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 US2020045792
(87)【国際公開番号】W WO2021034549
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】16/542,906
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506145278
【氏名又は名称】シエラ・ネバダ・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アラメイ・アバキアン
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03434147(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/161
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全帯域導波管直交モード変換器(OMT)であって、
第1、第2、及び第3導波管部にして、前記第1、第2、及び第3導波管部が、各々、第1ポート、第2ポート、及び第3ポートを有し、前記第1、第2、及び第3導波管部それぞれが内端を有する第1、第2、及び第3導波管部;
前記第1導波管部の前記内端においてそれと同一の広がりを持つ第1ワイヤ格子偏波器にして、第1偏波を持つ電磁信号を透過し、かつ前記第1偏波に直交する第2偏波を持つ電磁信号を反射する第1ワイヤ格子偏波器;及び
前記第2導波管部の前記内端においてそれと同一の広がりを持つ第2ワイヤ格子偏波器にして、前記第2導波管部と前記第3導波管部の間の接合部に配置され、かつ前記第2偏波を持つ電磁信号を透過し、かつ前記第1偏波を持つ電磁信号を反射する第2ワイヤ格子偏波器を備え、
前記第2ワイヤ格子偏波器は、前記第1偏波を持つ電磁信号が前記第2導波管部に進入することを阻止するように設けられ、
前記第3導波管部は、前記第1偏波及び/又は前記第2偏波を有する電磁信号を送信及び/又は受信するように構成される、全帯域導波管OMT。
【請求項2】
前記第1及び第3導波管部が実質的に同一直線上にあり、前記第2導波管部が、前記第1及び第3導波管部に実質的に直角である、請求項1に記載の全帯域導波管OMT。
【請求項3】
前記第1導波管部が第1インピーダンス整合構造を含み、前記第2導波管部が第2インピーダンス整合構造を含む、請求項1又は2に記載の全帯域導波管OMT。
【請求項4】
前記第1インピーダンス整合構造は、徐々に増加する断面寸法を有する前記第1導波管部の中間部を含む、請求項3に記載の全帯域導波管OMT。
【請求項5】
前記第2インピーダンス整合構造は、前記第2導波管部の首部を含み、前記首部は、減じられた断面寸法を有する、請求項3又は4に記載の全帯域導波管OMT。
【請求項6】
前記第3導波管部は、前記第3導波管部の前記内端で前記第1導波管部に結合し、前記全帯域導波管OMTが、前記第3導波管部の前記内端にインピーダンス整合素子を更に備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の全帯域導波管OMT。
【請求項7】
前記インピーダンス整合素子が導電性ポストを備える、請求項6に記載の全帯域導波管OMT。
【請求項8】
前記第1ポートは、短い方の寸法が前記第1偏波に合わされた矩形であり、前記第2ポートは、短い方の寸法が前記第2偏波に合わされた矩形である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の全帯域導波管OMT。
【請求項9】
前記第1ポートの前記短い方の寸法と前記第2ポートの前記短い方の寸法が等しく、前記第1ポートが、前記第2ポートの長い方の寸法に等しい長い方の寸法を有し、前記第3ポートは、前記長い方の寸法に等しい辺を有する正方形である、請求項8に記載の全帯域導波管OMT。
【請求項10】
前記第1及び第3導波管部が軸を規定し、前記第1ワイヤ格子偏波器が前記軸に対して45度の角度で配向される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の全帯域導波管OMT。
【請求項11】
第1偏波を有する第1電磁信号と第2偏波を有する第2電磁信号を分離又は結合する方法であって、当該方法は、
(a)次の(i)及び(ii)により全帯域導波管直交モード変換器(OMT)を形成する工程にして、
(i)第1導波管ポートから第1内端に延びる第1導波管部、第2導波管ポートから第2内端に延びる第2導波管部、及び前記第1導波管部と実質的に同一直線上にあるように前記第1導波管部の前記第1内端に第1接合部で結合した第3内端に第3導波管ポートから延びる第3導波管部を設け、前記第1及び第3導波管部に実質的に直角になるように前記第2導波管部の前記第2内端が前記第3導波管部に第2接合部で結合され、及び
(ii)前記第1導波管部の前記第1内端にそれと同一の広がりを持つように第1ワイヤ格子偏波器を設け、前記第2導波管部の前記第2内端にそれと同一の広がりを持つように第2ワイヤ格子偏波器を設け、前記第1ワイヤ格子偏波器が、前記第1電磁信号を透過し、前記第2電磁信号を反射し、前記第2ワイヤ格子偏波器が、前記第2接合部に配置され、及び、前記第2ワイヤ格子偏波器は、前記第2電磁信号を透過し、前記第1電磁信号を反射する、工程;及び
(b)前記第1及び第2電磁信号の少なくとも一つを前記第3導波管部で送信及び/又は受信する工程を含む、方法。
【請求項12】
前記第1導波管部が第1インピーダンス整合構造を含み、前記第2導波管部が第2インピーダンス整合構造を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1インピーダンス整合構造は、徐々に増加する断面寸法を有する前記第1導波管部の中間部を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2インピーダンス整合構造は、前記第2導波管部の首部を含み、前記首部は、減じられた断面寸法を有する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記第3導波管部は、前記第3導波管部の前記第3内端で前記第1導波管部に結合し、前記第3導波管部の前記第3内端にインピーダンス整合素子が設けられる、請求項11乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、電磁信号、特には、RF及びマイクロ波信号用の変換器の分野に関する。より詳細には、本開示は、導波管型の直交モード変換器(OMT(orthomode transducers))に関する。
【背景技術】
【0002】
導波管直交モード変換器(OMT)は、偏波ダイバーシチが要求されるマイクロ波システム、特にレーダー及び放射測定において広範囲に使用されている。無線通信においては、OMTは、単一のアンテナにおいて、第1の偏波を持つ信号を受信し、第2の直交偏波を持つ信号を送信するように用いられる。典型的なOMTは、3ポートデバイスであり、2つの直交する偏波信号を分波及び/又は合波する。
【0003】
OMTにおいて探求される主な品質は、高い偏波純度、ポート間の高いアイソレーション、広い周波数のカバー帯域、及びコンパクトな寸法である。一般的にOMTが反射アンテナフィード(reflector antenna feeds)の一部として構成されるため、コンパクトさは、重要な特質である。中央フィード反射アンテナにおいては、小サイズのフィードは、アンテナの中央の妨害及び関連のビーム歪を低減するために重要である。幾つかの既存のOMT(例えば、米国特許第6842085号)は、相対的にコンパクトかもしれないが、典型的には相対的に狭い周波数帯域上でしか動作せず、なぜなら、それらの設計に固有の性質のため、ポート間のアイソレーションを低減し、交差偏波を増加させ、かつ電圧定在波比を増加させる高次導波管モードを励起する傾向があるためである。例えば、上述の米国特許第6842085号に開示されたような相対的にコンパクトな多くのOMTは、第1ポートを有する第1導波管部、第2ポートを有する第2導波管部、及び第3ポートを有する第3導波管部を有し、第1及び第3ポートが同一直線上にあり、第2ポートがサイドポートとして構成される。従って、第2(サイド)ポートは、第1及び第3ポート間を伝播する信号のために電磁非対称性を取り入れる。その非対称性は、高次導波管モードを励起する傾向があり得る。
【0004】
OMTにおいて高次モードを抑制し、これにより周波数の有効帯域を拡大する一つの方法は、米国特許第8816930号に開示のような、導波管アームが対称に配置されたOMTを設計することである。しかしながら、そのような対称なOMTは、大きすぎ、及び/又は、多くの用途にとって扱いにくく、また、製造するのに高価及び/又は複雑であると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、広い周波数帯域に亘って動作しつつも高い偏波純度と高いポート間アイソレーションを提供するように高次導波管モードの励起を抑制するシンプル、コンパクトな導波管OMTを提供することが関連技術において進歩になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、第1、第2、及び第3導波管部を備えるコンパクトな全帯域導波管OMTに関する。第1偏波を持つ信号の伝播をサポートする第1導波管部は、第1偏波を透過し、第1偏波に直交する第2偏波を反射する第1導電性ワイヤ格子偏波フィルタ(「ワイヤ格子偏波器」)を含む。第2偏波を持つ信号の伝播をサポートするように構成された第2導波管部は、第2偏波を透過し、第1偏波を反射する第2ワイヤ格子偏波器を含む。第1及び第2導波管部は、第1及び第2偏波の両方を持つ信号の伝播をサポートする第3導波管部に移行する。
【0007】
動作においては、第1導波管部のポートに進入した第1偏波の無線周波数信号は、第3導波管部に伝播し、第3導波管部のポートで第1偏波を持つ信号として受信される。第1偏波を持つ信号は、第2ワイヤ格子偏波器により第2導波管部に進入することから阻止される。互恵的に、第3導波管部のポートに進入した第1偏波の無線周波数信号は、第1導波管部に伝播し、第1導波管部のポートで第1偏波を持つ信号として受信される。繰り返すが、第1偏波を持つ信号は、第2ワイヤ格子偏波器により第2導波管部に進入することから阻止される。
【0008】
第2導波管部のポートに進入した第2偏波の無線周波数信号は、第3導波管部に伝播し、第3導波管部のポートで第2偏波を持つ信号として受信される。第2偏波を持つ信号は、第1ワイヤ格子偏波器により第1導波管部に進入することから阻止される。互恵的に、第3導波管部のポートに進入した第2偏波の無線周波数信号は、第2導波管部に伝播し、第2導波管部のポートで第2偏波を持つ信号として受信される。繰り返すが、第2偏波を持つ信号は、第1ワイヤ格子偏波器により第1導波管部に進入することから阻止される。
【0009】
他の態様の中でも、本開示に係るOMTは、ワイヤ格子偏波器の使用により、全導波管周波数帯に亘って高い偏波純度及び高いポート間アイソレーションを実現することができる。更には、これらの有利な特徴は、コンパクトで、製造し易い装置で実現され得る。本開示に係るOMSのこれら及び他の特徴、利益、及び属性は、後述の詳細な説明からより十分に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の実施形態に係る全帯域導波管直交モード変換器(OMT)の理想化された図である。
図2図2は、OMTの第1及び第3導波管ポート間で第1偏波を持つ信号のパスを示す図1のOMTの線図である。
図3図3は、OMTの第2及び第3導波管ポート間で第2偏波を持つ信号のパスを示す図1のOMTの線図である。
図4図4A及び4Bは、ワイヤ格子偏波器の偏波フィルタ機能の概略的な描写である。
図5図5は、本開示に係る模範的なOMTの周波数の関数としての電圧定在波比を示すグラフである。
図6図6は、本開示に係る模範的なOMTの周波数の関数としての第1及び第2導波管部間のアイソレーション(dB)を示すグラフである。
図7図7は、本開示に係る模範的なOMTの周波数の関数としての第1及び第2直交偏波を持つ信号間での(結合)交差偏波(dB)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本開示の実施形態に係る導波管直交モード変換器(OMT)10を示す。導波管OMT10は、お互いに結合した第1導波管部12、第2導波管部14及び第3導波管部16を備える。図示の実施形態においては、第1導波管部12及び第3導波管部16が単一体であり、実質的に同一直線上にあり、他方、第2導波管部14は、実質的に直角をなすように第1及び第3導波管部12、16に固定されるが、特定の用途及び/又は状況によっては他の構成が自ずと提案される。導波管部12、14,16は、断面にて実質的に矩形に図示されているが、特定の状況下では他の断面形状が適切又は好まれ得る。
【0012】
図1に図示の第1及び第2導波管12,14といった)矩形断面導波管の動作周波数帯は、導波管を通過する電磁波の基本(TE10)モードのものである。長い方の寸法がX軸を規定し、短い方の寸法がY軸を規定する断面を持つように矩形導波管が規定されるならば、波の伝播方向がZ軸を規定する。TE10モードにおいて、Z軸に沿って矩形導波管を伝播する電磁波の電場は、Y軸に平行であり、かつZ軸に直交する平面で振幅し、他方、磁場は、Z軸に平行な平面で振幅する成分を有する。矩形導波管を伝播する電磁波とは対照的に、自由空間を制約されずに伝播する電磁波においては(即ち、「平面波」)、電場及び磁場の両方が、伝播方向(即ち、Z軸)に直交する平面ら(電磁横又はTEMモード)で完全に振幅する;即ち、いずれの場もZ軸に沿って振幅する成分を有しない。後述から分かるように、本開示に係るOMTは、矩形導波管を通過する伝播波のこの異なる特性を利用する。
【0013】
米国での慣例の学名命名法に応じて、矩形断面導波管を「WRx」と名付け、「x」が2つの断面導波管寸法の大きい方を示す3と2300の間の数であり、小さい方の寸法が、典型的には、大きい方の寸法の半分である。従って、例えば、WR62導波管は、0.622インチの大きい方の内寸を有し、従って、小さい方の内寸が0.311インチであり、また、典型的には、12.4~18.0GHzの全周波数帯をカバーする。しかしながら、本開示は、導波管の標準的なサイズに限定されず、また如何なる特定の導波管形状にも限定されない。
【0014】
再び図1を参照すると、第1導波管部12は、有利にも中間部を有し、第1ポート18から内端に向けて個別の増分又は段差19で第1導波管部12の短い方の寸法(「Y軸」と呼ばれ得る)を増加することにより断面積が徐々に(incrementally)増加し、そこで、第2及び第3導波管部14,16に結合される。幾つかの実施形態では、第1導波管部12及び第3導波管部16の間のインピーダンス整合のために第1導波管部12の段差部が有利であるが、導波管分野で知られているように、内部セプタム(septum)、アイリス(iris)、又はダイアフラムが、第1ポート18で又はその近傍で第1導波管部12内に配置されてインピーダンス整合を提供し得る。幾つかの実施形態では、第1ポート18が矩形であり、短い方の寸法が第1電磁波偏波を規定する。第1ワイヤ格子偏波器20は、第1導波管部12の内端、第2導波管部14及び第3導波管部16とのその接合部又はその近傍に配置される。
【0015】
第2導波管部14は第2ポート22から減じられた断面又は「首」部23に延びて、第2ワイヤ格子偏波器24が配置された内端、3つの導波管部12、14,16の接合部又はその近傍で終端する。幾つかの実施形態では、首部23が、第2導波管部14及び第3導波管部16の間のインピーダンス整合のために有利である。幾つかの実施形態では、導波管分野で知られているように、アイリス(iris)、セプタム(septum)、又はダイアフラムが、このインピーダンス整合のために用いられる。幾つかの実施形態では、第2ポート22が矩形であり、短い方の寸法が、第1偏波に直交する第2電磁波偏波を規定する。
【0016】
第3導波管部16は、第3ポート26から、第1及び第2導波管部12、14の内端に結合した内端に延びる。第3ポート26は、好ましくは正方形であり、各辺が、第1ポート18及び第2ポート22それぞれの長い方の寸法に等しい長さを有するが、(例えば、円形といった)他の形状も適切であり得る。第3ポート26の構成(形状及び寸法)は、第1及び第2偏波のいずれかを持つ信号ら(signals)の送信及び/又は受信を可能にするのである。
【0017】
ワイヤ格子偏波器20、24は、典型的には、よく知られているように導電性ワイヤの格子から成る。断面円形のワイヤが典型的であるが、特定用途での使用のために他の断面形状も検討され得る。本開示に即して用いられるワイヤ格子偏波器20、24の簡素な描写が図4A及び4Bに示される。偏波器は、各々、後述の理由から、偏波器に入射する信号の波長λよりも有利には相当に小さい周期Pで間隔付けられた平行なワイヤ50の格子で形成される(即ち、P<<λ)。格子における各個別のワイヤ50は、有利には、円形断面の直径dを有し、又は、異なる断面形状の同等の寸法を有する。斯くの如く構成されると、図4Aに示すように、格子は、ワイヤ50に垂直な電場ベクトルEを持つ入射電磁波のみを透過する。対照的に、ワイヤ50に平行な電場ベクトルを持つ電磁波は、図4Bに示すように、格子により反射される。従って、格子は、「垂直」電場ベクトル(「所望の偏波」)を持つ電磁波のみを通過し、「平行」電場ベクトル(望まない偏波)を持つ電磁波を阻止することにより入射信号を効果的に偏波させる。
【0018】
信号波長よりもかなり小さくワイヤ周期Pを設けることにより、高次モードへの電磁波散乱が顕著に抑制される。詳細には、周期が小さくなるほど、「望まない」偏波の反射が大きくなり、従って、高次導波管モード励起の抑制も大きくなり、従って、ポート間アイソレーションが高まり、かつ広範囲の周波数帯に亘って交差偏波が低下する。しかしながら、周期が小さすぎると、所望の偏波の伝播の減衰が過度になり得る。従って、周期は、所望の偏波の最適な透過を許容し、かつ格子からの後方反射(電圧定在波反射又は「VSWR」)を最小にするのに十分な大きさにすべきである。当業者は、特定用途で最適なパフォーマンスを得るべく格子周期及び導体直径を即時に最適化することができる。
【0019】
上述のようにワイヤ格子偏波器20、24が構築及び最適化され、第1ポート18に進入する第1偏波を持つ信号は、第1ワイヤ格子偏波器20を即座に透過して第3ポート26に到達し、他方、第2ワイヤ格子偏波器24によって第2導波管部14に進入することから阻止される。同様、第1偏波に直交する第2偏波を持ち、第2ポート22に進入する信号は、第2ワイヤ偏波器24を即座に透過して第3ポート26に到達し、他方、第1ワイヤ格子偏波器20により第1導波管部12に進入することから阻止される。
【0020】
有利には、図1に示されるように、3つの導波管部12、14,16の接合部又はその近傍でOMT10にインピーダンス整合素子28が設けられ得る。例えば、図示の実施形態では、インピーダンス整合素子28は、第3導波管部16の内端又はその近傍、第1ワイヤ格子偏波器20の近傍に配置され得る。そのようなインピーダンス整合素子の使用は、RF波用導波管の設計において良く知られている。円柱として図示されているが、インピーダンス整合素子28は、任意の適切な断面形状から成り得る。
【0021】
第1ワイヤ格子偏波器20は、(既述の定義のように、例えば、Y軸に沿う)第1線形偏波を持つ電磁信号を透過するが、(既述の定義のように、例えば、X軸に沿う)第2の直交線形偏波を持つ放射を反射する。逆に、第2ワイヤ格子偏波器24は、第2線形偏波を持つ放射を透過するが、第1線形偏波を持つ信号を反射する。
【0022】
OMT10の動作が図2及び3に図式的に示されている。図2に示すように、第1導波管部12の第1ポート18に進入する(例えば、Y軸に沿う)第1偏波の無線周波数信号は、第3導波管部16に伝播し、第3導波管部16の第3ポート26で第1偏波を持つ信号として受信される。第1偏波を持つその信号は、第2ワイヤ格子偏波器24により第2導波管部14に進入することから妨げられる。互恵的に、第3導波管部16の第3ポート26に進入する第1偏波の無線周波数信号は、第1導波管部12に伝播し、また、第1導波管部12の第1ポート18で第1偏波を持つ信号として受信される。繰り返すが、第1偏波を持つその信号は、第2ワイヤ格子偏波器24により第2導波管部14に進入することから妨げられる。
【0023】
図3に示すように、第2導波管部14の第2ポート22に進入する(例えば、X軸に沿う)第2偏波の無線周波数信号が第3導波管部16に伝播し、第3導波管部16の第3ポート26で第2偏波を持つ信号として受信される。第2偏波を持つその信号は、第1ワイヤ格子偏波器20により第1導波管部12に進入することから妨げられる。互恵的に、第3導波管部16の第3ポート26に進入する第2偏波の無線周波数信号が第2導波管部に伝播し、第2導波管部14の第2ポート22で第2偏波を持つ信号として受信される。繰り返すが、第2偏波を持つその信号は、第1ワイヤ格子偏波器20により第1導波管部12に進入することから妨げられる。
【0024】
上述のところから、第2導波管部の第2ポート22に第2偏波を持つ信号が進入している間、第1偏波を持つ信号が第1導波管部12の第1ポート18に進入するならば、第3導波管部16の第3ポート26で受信される信号は、第1及び第2偏波の両方を持つことになる、と理解される。逆に、第1及び第2偏波の両方を持って第3導波管部の第3ポート26に信号が進入すると、第1偏波を持つ成分が第1導波管部12の第1ポート18にて受信され、第2直交偏波を持つ成分が、第2導波管部14の第2ポート22で受信されることに帰結する。
【0025】
図1~3に図示のように、第2ワイヤ格子偏波器24は、信号波の伝播方向を規定する軸に直交する平面にあり得、第1ワイヤ格子偏波器18は、有利には、伝播軸に関して45°の角度で配向され得る。この配向によって、有利にはお互いに直角である第2導波管部14及び第3導波管部16の間を伝播する第2偏波を持つ信号に対する反射「壁」としての第1ワイヤ格子偏波器18の機能が高められる。従って、第1ワイヤ格子偏波器18を45°の角度に配向することによって、第2導波管部14及び第3導波管部間の接合部で90°の「回転(ターン)」をする時の信号の反射が低下する。幾つかの実施形態では、あったとしても、そのような反射をどの程度減らすかに依存して、第1ワイヤ格子偏波器18の配向角が異なる。
【0026】
ワイヤ格子偏波器20、24により提供される偏波フィルタリングは、上述のように、矩形断面導波管を伝播する電磁波のTE10モードの電場及び磁場の特定の振動面に依拠して達成されるものと理解される。
【0027】
図5~7は、本開示に即した矩形導波管部を用いた模範的なOMTの全波3D電磁シミュレーション結果を示す。模範的なOMTは、第1導波管部12の第1ポート18から第3導波管部16の第3ポート26まで3.1インチ(7.9cm)の長さを有し、第2導波管部14の第2ポート22から第3導波管部16の遠い(内側)壁30まで1.83インチ(4.6cm)の長さに垂直な第2寸法(幅)を有していた。少なくとも第1及び第2導波管ポート18、22が、WR62寸法であった。第3導波管ポート26が、0.622インチ掛け0.622インチの正方形(内寸)であった。
【0028】
図5は、WR62導波管の12.4~18.0GHzの動作帯域に亘る周波数の関数の電圧定在波比(VSWR)を反映する2つの曲線を示す。両曲線は、上記の帯域に亘って約1.10と1.50の間で本質的に平坦なVSWRを示す。第1及び第2導波管部12、14の間のアイソレーションは、図6に示すように、上記の同じ周波数帯に亘って75dB及び80dBの間である。最後に、図7は、模範的なOMTを伝播する第1及び第2直交偏波の間の交差偏波(結合)が、動作周波数帯に亘って-59dBと-60dBの間であることを示し、第1及び第2偏波間の結合又は交差偏波が極めて低い度合いであることを示す。
【0029】
図5~7に図示の結果は、本開示に係るOMTが、装置製造が容易で、コンパクトで導波管の全帯域において高い偏波純度及び高いポート間アイソレーションを達成することを可能にすることを実証する。同様の結果が、広範囲のWRx値の矩形導波管部を有する本開示に即したOMTに予期されるものと確信する。
【0030】
本明細書で好適な実施形態を開示したが、開示の実施形態の変形例や修正、また代替の実施形態が、当業者には自ずと明白である。幾つかの変形例、修正、及び代替の実施形態が本開示において説明又は示唆されたが、排他的又は網羅的であるとは考えられない。そのような変形例、修正、及び代替は、本明細書に既述されているか否かにしろ、幾つか又は全ての側面において、本開示の主題に均等であり、また、本明細書に添付の請求項に包含されると考えられるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7