(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】穿刺針及びカテーテル組立体
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
A61M25/06 580
A61M25/06 500
(21)【出願番号】P 2022509505
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2021009034
(87)【国際公開番号】W WO2021192964
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2020050609
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】山元 翔太
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05501671(US,A)
【文献】特開昭58-032774(JP,A)
【文献】米国特許第08202253(US,B1)
【文献】特開2004-216156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管に穿刺するための中空状の針体と前記針体の基端部に設けられた針ハブとを備えた穿刺針であって、
前記針ハブは、
前記針体の血管確保時に前記針体の内腔を介して血液が導入されるチャンバが形成された血液導入部と、
前記血液導入部に設けられてユーザが視認可能な視認部と、を備え、
前記視認部は、前記チャンバ内の圧力上昇により、第1状態から第2状態に見え方が変化し、前記チャンバ内の圧力低下により、前記第2状態から前記第1状態に戻
り、
前記視認部は、
視認マーカと、
前記視認マーカを収容する収容部と、を有し、
前記視認マーカは、前記チャンバ内の圧力の変化により、前記視認部が前記第1状態となる第1位置と前記視認部が前記第2状態となる第2位置とに可逆的に移動可能であり、
前記収容部は、前記第2位置にある前記視認マーカを外側から視認可能なように形成され、
前記視認部は、前記収容部内と前記チャンバとの間の空気の流通を許可する一方で前記チャンバから前記収容部内の血液の流入を阻止するフィルタ部を備える、穿刺針。
【請求項2】
血管に穿刺するための中空状の針体と前記針体の基端部に設けられた針ハブとを備えた穿刺針であって、
前記針ハブは、
前記針体の血管確保時に前記針体の内腔を介して血液が導入されるチャンバが形成された血液導入部と、
前記血液導入部に設けられてユーザが視認可能な視認部と、を備え、
前記視認部は、前記チャンバ内の圧力上昇により、第1状態から第2状態に見え方が変化し、前記チャンバ内の圧力低下により、前記第2状態から前記第1状態に戻り、
前記視認部は、
視認マーカと、
前記視認マーカを収容する収容部と、を有し、
前記視認マーカは、前記チャンバ内の圧力の変化により、前記視認部が前記第1状態となる第1位置と前記視認部が前記第2状態となる第2位置とに可逆的に移動可能であり、
前記収容部は、前記第2位置にある前記視認マーカを外側から視認可能なように形成され、
前記視認部は、前記収容部に設けられた空気流通部を有し、
前記空気流通部は、前記視認マーカが前記第1位置から前記第2位置に移動する際に前記収容部内の空気を前記針ハブの外側空間に排出する、穿刺針。
【請求項3】
血管に穿刺するための中空状の針体と前記針体の基端部に設けられた針ハブとを備えた穿刺針であって、
前記針ハブは、
前記針体の血管確保時に前記針体の内腔を介して血液が導入されるチャンバが形成された血液導入部と、
前記血液導入部に設けられてユーザが視認可能な視認部と、を備え、
前記視認部は、前記チャンバ内の圧力上昇により、第1状態から第2状態に見え方が変化し、前記チャンバ内の圧力低下により、前記第2状態から前記第1状態に戻り、
前記視認部は、
視認マーカと、
前記視認マーカを収容する収容部と、を有し、
前記視認マーカは、前記チャンバ内の圧力の変化により、前記視認部が前記第1状態となる第1位置と前記視認部が前記第2状態となる第2位置とに可逆的に移動可能であり、
前記収容部は、前記第2位置にある前記視認マーカを外側から視認可能なように形成され、
前記視認マーカは、着色液体である、穿刺針。
【請求項4】
血管に穿刺するための中空状の針体と前記針体の基端部に設けられた針ハブとを備えた穿刺針であって、
前記針ハブは、
前記針体の血管確保時に前記針体の内腔を介して血液が導入されるチャンバが形成された血液導入部と、
前記血液導入部に設けられてユーザが視認可能な視認部と、を備え、
前記視認部は、前記チャンバ内の圧力上昇により、第1状態から第2状態に見え方が変化し、前記チャンバ内の圧力低下により、前記第2状態から前記第1状態に戻り、
前記視認部は、
視認マーカと、
前記視認マーカを収容する収容部と、を有し、
前記視認マーカは、前記チャンバ内の圧力の変化により、前記視認部が前記第1状態となる第1位置と前記視認部が前記第2状態となる第2位置とに可逆的に移動可能であり、
前記収容部は、前記第2位置にある前記視認マーカを外側から視認可能なように形成され、
前記視認部は、前記視認マーカを前記第2位置から前記第1位置に復帰させるための復帰手段を有する、穿刺針。
【請求項5】
請求項
4に記載の穿刺針であって、
前記視認マーカは、固体であって、
前記復帰手段は、前記収容部内に設けられて前記視認マーカの前記第1位置から前記第2位置への移動によって弾性変形する弾性体を有する、穿刺針。
【請求項6】
血管に穿刺するための中空状の針体と前記針体の基端部に設けられた針ハブとを備えた穿刺針であって、
前記針ハブは、
前記針体の血管確保時に前記針体の内腔を介して血液が導入されるチャンバが形成された血液導入部と、
前記血液導入部に設けられてユーザが視認可能な視認部と、を備え、
前記視認部は、前記チャンバ内の圧力上昇により、第1状態から第2状態に見え方が変化し、前記チャンバ内の圧力低下により、前記第2状態から前記第1状態に戻り、
前記視認部は、前記血液導入部から外方に突出するように当該血液導入部に設けられた筒状部を有し、
前記筒状部のうち少なくとも前記血液導入部から突出している部分は、外側から内部が視認可能なように形成され、
前記筒状部の内腔は、前記チャンバに連通し、
前記視認部には、前記チャンバ内の空気を外部に逃がすための空気逃がし部が設けられている、穿刺針。
【請求項7】
請求項
6に記載の穿刺針であって、
前記筒状部の突出端部には、前記筒状部の前記内腔と前記筒状部の外側空間との間の空気の流通を許可する一方で前記筒状部の前記内腔から前記外側空間への血液の流出を阻止する空気流通部が設けられている、穿刺針。
【請求項8】
請求項
6又は
7に記載の穿刺針であって、
前記視認部は、前記筒状部の内腔に設けられて血液よりも比重の軽い視認マーカを有し、
前記視認マーカは、前記チャンバ内の圧力の変化により、前記視認部が前記第1状態となる第1位置と前記視認部が前記第2状態となる第2位置とに可逆的に移動可能である、穿刺針。
【請求項9】
請求項
8に記載の穿刺針であって、
前記視認部は、前記筒状部の突出端部に設けられて前記視認マーカを吊るすための吊り下げ部を有し、
前記視認マーカは、前記筒状部の内周面に対して液密且つ気密に接触した状態で前記筒状部の軸線方向に沿って摺動可能に設けられている、穿刺針。
【請求項10】
請求項
9に記載の穿刺針であって、
前記吊り下げ部は、前記視認マーカの前記第1位置から前記第2位置への移動によって弾性変形する弾性体である、穿刺針。
【請求項11】
血管に穿刺するための中空状の針体と前記針体の基端部に設けられた針ハブとを備えた穿刺針であって、
前記針ハブは、
前記針体の血管確保時に前記針体の内腔を介して血液が導入されるチャンバが形成された血液導入部と、
前記血液導入部に設けられてユーザが視認可能な視認部と、を備え、
前記視認部は、前記チャンバ内の圧力上昇により、第1状態から第2状態に見え方が変化し、前記チャンバ内の圧力低下により、前記第2状態から前記第1状態に戻り、
前記視認部は、前記チャンバ内の圧力の変化により拡張及び収縮するバルーンを有する、穿刺針。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか1項に記載の穿刺針と、
前記針体が挿通される内腔を有するカテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの基端部に設けられたカテーテルハブと、を備える、カテーテル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺針及びカテーテル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
留置針等の穿刺針は、血管に穿刺するための中空状の針体と針体の基端部に設けられた針ハブとを備える。針ハブは、針体の血管確保時に前記針体の内腔を介して血液が導入されるチャンバ(フラッシュバックチャンバ)が形成された血液導入部を有する(例えば、特開2009-233007号公報参照)。ユーザは、チャンバ内への血液流入(血液の流れ)を視認することにより、針体の血管確保を知ることができる。
【発明の概要】
【0003】
ところで、上述したような穿刺針では、チャンバ内への血液流入を確認する前にチャンバ内が血液で満たされると、ユーザは、その後の針体の血管確保を確認することができなくなる。特に、血圧の高い血管(例えば、動脈)に穿刺針を穿刺する場合には、チャンバ内の血液流入が開始してからチャンバ内が血液で満たされるまでの時間(血流確認時間)が短いため、針体の血管確保の確認が容易ではない。血流確認時間を長くするためにチャンバの容量を増大させると、血液導入部(針ハブ)が大型化するため、穿刺針の操作性が悪化したり穿刺針の廃棄量が多くなったりするおそれがある。
【0004】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、血液導入部の小型化を図ることができ、針体の血管確保を継続的に確認し続けることができる穿刺針及びカテーテル組立体を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の一態様は、血管に穿刺するための中空状の針体と前記針体の基端部に設けられた針ハブとを備えた穿刺針であって、前記針ハブは、前記針体の血管確保時に前記針体の内腔を介して血液が導入されるチャンバが形成された血液導入部と、前記血液導入部に設けられてユーザが視認可能な視認部と、を備え、前記視認部は、前記チャンバ内の圧力上昇により、第1状態から第2状態に見え方が変化し、前記チャンバ内の圧力低下により、前記第2状態から前記第1状態に戻り、前記視認部は、視認マーカと、前記視認マーカを収容する収容部と、を有し、前記視認マーカは、前記チャンバ内の圧力の変化により、前記視認部が前記第1状態となる第1位置と前記視認部が前記第2状態となる第2位置とに可逆的に移動可能であり、前記収容部は、前記第2位置にある前記視認マーカを外側から視認可能なように形成され、前記視認部は、前記収容部内と前記チャンバとの間の空気の流通を許可する一方で前記チャンバから前記収容部内の血液の流入を阻止するフィルタ部を備える、穿刺針である。
【0006】
本発明の他の態様は、上述した穿刺針と、前記針体が挿通される内腔を有するカテーテルシャフトと、前記カテーテルシャフトの基端部に設けられたカテーテルハブと、を備える、カテーテル組立体である。
【0007】
本発明によれば、針体の血管確保によりチャンバ内に血液が流入すると、チャンバ内の圧力が上昇するため、視認部の見え方が第1状態から第2状態に変化する。この場合、ユーザは、視認部の第2状態を視認することにより、針体の血管確保を知ることができる。一方、血管確保状態の針体が血管未確保状態になると、針体の内腔の血液に血圧が作用しなくなるため、チャンバ内の圧力が低下して視認部の見え方が第2状態から第1状態に戻る。この場合、ユーザは、視認部の第1状態を視認することにより、針体の血管未確保を知ることができる。このように、視認部の見え方は、チャンバ内の圧力に応じて第1状態と第2状態とに可逆的に変化する。これにより、針体の血管確保を継続的に確認し続けることができる。また、ユーザは、チャンバ内の血液流入(血液の流れ)を視認する必要がないため(血流確認時間を長くする必要がないため)、血液導入部の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るカテーテル組立体の斜視図である。
【
図2】
図1のカテーテル組立体の分解斜視図である。
【
図4】
図4Aは、
図3の視認部が第2状態である断面説明図であり、
図4Bは、
図3の視認部が第1状態である断面説明図である。
【
図5】第1変形例に係る視認部を備えた穿刺針の一部省略縦断面図である。
【
図6】
図6Aは、
図5の視認部が第2状態である断面説明図であり、
図6Bは、
図5の視認部が第1状態である断面説明図である。
【
図7】第2変形例に係る視認部を備えた穿刺針の一部省略縦断面図である。
【
図8】
図8Aは、
図7の視認部が第2状態である断面説明図であり、
図8Bは、
図7の視認部が第1状態である断面説明図である。
【
図9】第3変形例に係る視認部を備えた穿刺針の一部省略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る穿刺針及びカテーテル組立体について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0010】
本発明の一実施形態に係るカテーテル組立体10は、患者(生体)の血管内に輸液(薬液)を投与するための留置針として構成されている。
図1及び
図2に示すように、カテーテル組立体10は、カテーテル部材12及び穿刺針14を有する。カテーテル部材12は、カテーテルシャフト16と、カテーテルシャフト16の基端部に設けられたカテーテルハブ18とを有する。
【0011】
カテーテルシャフト16は、可撓性を有し患者の血管内に持続的に挿入可能な管状部材である。カテーテルシャフト16は、その全長に亘って軸線方向に沿って延在した内腔16aを有する。カテーテルシャフト16の先端には、内腔16aに連通する先端開口16bが形成されている。
【0012】
カテーテルシャフト16の構成材料は、特に限定されるものではないが、透明性を有する樹脂材料、特に軟質樹脂材料が好適であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂又はこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、オレフィン系樹脂とエチレン-酢酸ビニル共重合体との混合物等が挙げられる。
【0013】
カテーテルハブ18は、中空状(円筒状)に形成されている。カテーテルハブ18の内腔18aには、図示を省略するが、止血弁、シール部材及びプラグが配設される。カテーテルハブ18は、カテーテルハブ18の内腔18aに流入した血液をカテーテルハブ18の外側から視認可能なように透明性を有している。
【0014】
カテーテルハブ18は、カテーテルシャフト16よりも硬い材料によって構成されることが好ましい。カテーテルハブ18の構成材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート-ブチレン-スチレン共重合体、ポリウレタン、アクリル樹脂、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
【0015】
穿刺針14は、針体20と、針体20の基端部に設けられた針ハブ22とを備える。針体20は、患者の皮膚を穿刺可能な剛性を有する管状部材である。針体20は、軸線方向に沿って延在した内腔20aを有する。針体20は、カテーテル組立体10の初期状態(組立状態)で、カテーテルシャフト16の内腔16a及びカテーテルハブ18の内腔18aに挿通される(
図1参照)。
【0016】
針体20の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金のような金属材料が挙げられる。針体20は、カテーテルシャフト16に比べて充分に長く形成され、カテーテル組立体10の初期状態においてカテーテルシャフト16の先端開口16bから突出している(
図1参照)。
【0017】
図1及び
図2において、針体20の先端部には、針体20の軸線に対して傾斜した刃面24が形成されている。刃面24には、針体20の内腔20aに連通する先端開口20bが形成されている。
【0018】
図2及び
図3において、針ハブ22は、中空状(筒状)に形成されている。針ハブ22の構成材料は、上述したカテーテルハブ18の構成材料と同様のものが挙げられる。針ハブ22の全長は、3cm以上7cm以下に設定されるのが好ましく、4cm以上5cm以下に設定されるのがさらに好ましい。
【0019】
針ハブ22は、その先端部を形成する針体支持部26と、針体支持部26から基端側に延出した血液導入部28と、血液導入部28に設けられてユーザが視認可能な視認部30とを有する。針体支持部26には、針体20の基端部が固着される。血液導入部28は、外側から内部を視認することができないように不透明に形成されている。ただし、血液導入部28は、透明性を有してもよい。
【0020】
図3において、血液導入部28には、針体20の血管確保時に針体20の内腔20aを介して血液が導入されるチャンバ28aが形成されている。血液導入部28の基端開口は、封止部材32によって液密及び気密に封止されている。血液導入部28は、穿刺針14又はカテーテル組立体10を操作する際の操作部としても機能する。
【0021】
視認部30は、刃面24を上方に向けた際に、血液導入部28の壁部のうち上方に位置する側壁部34に設けられている(
図1及び
図2参照)。側壁部34と刃面24とは、針体20の周方向の位置が同じである。視認部30は、視認マーカ36と、視認マーカ36を移動可能に収容する収容部38とを有する。視認マーカ36は、血液とは異なる色(赤色以外の色)に着色された着色液体40である。着色液体40の詳細については後述する。
【0022】
収容部38は、チャンバ28a内に設けられた第1収容部42と、血液導入部28の外側に設けられた第2収容部44とを含む。第1収容部42は、針体20の軸線方向に沿って延在した第1管状部46と、第1管状部46から延出して血液導入部28の側壁部34に固定された第2管状部48とを有する。
【0023】
第1管状部46の一端部(針体支持部26側の端部)には、第2管状部48が連結している。第1管状部46の第1内腔46aは、着色液体40の全体が収容可能な大きさに設定されている。第1管状部46の他端部(封止部材32側の端部)には、チャンバ28a内と第1内腔46aとの間の空気の連通を許可する一方でチャンバ28aから第1内腔46aへの血液の流入を阻止するフィルタ部50が設けられている。フィルタ部50としては、例えば、疎水性フィルタを用いることができる。フィルタ部50は、第1管状部46の他端部に対して液密且つ気密に固着されている。
【0024】
第2管状部48は、第1管状部46の一端部から第1管状部46の延在方向と交差する方向(例えば、直交する方向)に延出している。第2管状部48は、血液導入部28の側壁部34に形成された貫通孔52に挿入されている。第2管状部48の外周面は、貫通孔52の内周面に対して液密且つ気密に固着されている。第2管状部48の第2内腔48aは、第1内腔46aと第2収容部44の内腔44aとを互いに連通する。
【0025】
第2収容部44の内腔44aは、着色液体40の全体が収容可能な大きさに設定されている。具体的に、第2収容部44の内腔44aの体積は、第1内腔46aの体積と略同一である。第2収容部44は、外部から内部が視認可能なように透明性を有している。
【0026】
第2収容部44は、血液導入部28の側壁部34の外面から外方に突出した周壁部54と、周壁部54の突出端部に設けられた天壁部56とを含む。周壁部54に形成された開口部58には、空気流通部60が設けられている。空気流通部60は、第2収容部44の内腔44aと針ハブ22の外側空間との間の空気の流通を許可する一方で第2収容部44の内腔44aから外側空間への着色液体40の流通を阻止する。空気流通部60としては、例えば、疎水性フィルタを用いることができる。空気流通部60は、開口部58の内面に対して液密且つ気密に固着されている。空気流通部60は、周壁部54ではなく天壁部56に設けられてもよい。
【0027】
視認マーカ36は、第1管状部46の第1内腔46a(第1位置)と第2収容部44の内腔44a(第2位置)とに可逆的に移動可能である。視認マーカ36は、チャンバ28a内の圧力上昇により、第1位置から第2位置に移動する(
図4A参照)。また、視認マーカ36は、チャンバ28a内の圧力が低下すると、視認マーカ36の自重と大気圧によって第2位置から第1位置に戻る(
図4B参照)。
【0028】
着色液体40の液柱圧は、血圧よりも小さい。これにより、着色液体40は、チャンバ28aへの血液の流入により(血圧により)第1位置から第2位置に移動可能となる。着色液体40は、例えば、水銀、テトラブロモエタン等の比較的比重の大きなものを用いることができる。この場合、着色液体40は、自重によって第2位置から第1位置に戻りやすくなる。また、着色液体40は、例えば、グリセリン水溶液等の比較的比重の小さなものを用いることもできる。この場合、視認マーカ36は、チャンバ28a内の圧力上昇によって第1位置から第2位置に移動し易くなる。
【0029】
【0030】
図1に示すように、カテーテル組立体10の初期状態で、刃面24は、上方に向いた状態でカテーテルシャフト16の先端開口16bから先端方向に突出している。また、カテーテル組立体10の初期状態で、視認マーカ36は、第1管状部46の第1内腔46a(第1位置)に位置する(
図3参照)。つまり、ユーザは、第2収容部44の内腔44aに視認マーカ36を視認することができない(又は視認マーカ36を視認し難い)。すなわち、視認部30は、針体20の血管未確保を示す第1状態になっている。
【0031】
ユーザは、カテーテル組立体10を初期状態のまま皮膚を介して血管に穿刺する。そして、針体20の先端開口20bが血管内に位置すると、血管内の血液は、針体20の内腔20aを介して血液導入部28のチャンバ28a内に流入する。そうすると、
図4Aに示すように、チャンバ28a内の圧力が上昇するため、チャンバ28a内の空気は、フィルタ部50を介して第1位置にある視認マーカ36を針体20の先端側に押圧する。なお、第1管状部46の流路断面積は、十分に小さく、フィルタ部50の断面積と同一或いはそれ未満である。そのため、チャンバ28a内の空気は、視認マーカ36を効果的に押圧することができる。
【0032】
空気により押された視認マーカ36は、第2管状部48の第2内腔48aを介して第2収容部44の内腔44a(第2位置)に移動する。この際、第2内腔48a及び第2収容部44の内腔44aに存在していた空気は、空気流通部60を介して針ハブ22の外側空間に排出される。これにより、視認部30は、針体20の血管未確保を示す第1状態から血管確保を示す第2状態に見え方が変化する。そして、ユーザは、視認部30の第2状態(第2収容部44の内腔44aに視認マーカ36が位置する状態)を視認することにより、針体20が血管確保状態であることを知ることができる。
【0033】
一方、血管確保状態であった針体20が血管未確保状態になった(例えば、針体20の先端開口20bが血管から外れた場所に位置した)場合、針体20の内腔20aの血液に血圧が作用しなくなる。そのため、針体20の内腔20aに存在していた血液は、大気圧と視認マーカ36の自重とによって針体20の外側に押し出される。
【0034】
この際、
図4Bに示すように、チャンバ28a内の圧力が低下するため、第2収容部44の内腔44a(第2位置)にあった視認マーカ36は、大気圧と視認マーカ36の自重とによって第2管状部48の第2内腔48aを介して第1管状部46の第1内腔46a(第1位置)に戻される。これにより、ユーザは、視認部30の第1状態(第2収容部44の内腔44aに視認マーカ36が位置しなくなった状態)を視認することにより、針体20が血管未確保状態であることを知ることができる。
【0035】
図4Bの状態において、針体20の血管確保が再度なされると、視認部30は、
図4Aの状態になる。つまり、視認部30の見え方は、第1状態から第2状態に変化する。そのため、ユーザは、針体20の血管確保を継続的に確認し続けることができる。
【0036】
本実施形態に係る穿刺針14及びカテーテル組立体10は、以下の効果を奏する。
【0037】
穿刺針14において、針ハブ22は、針体20の血管確保時に針体20の内腔20aを介して血液が導入されるチャンバ28aが形成された血液導入部28と、血液導入部28に設けられてユーザが視認可能な視認部30と、を備える。視認部30は、チャンバ28a内の圧力上昇により、第1状態から第2状態に見え方が変化し、チャンバ28a内の圧力低下により、第2状態から第1状態に戻る。
【0038】
このような構成によれば、針体20の血管確保によりチャンバ28a内に血液が流入すると、チャンバ28a内の圧力が上昇するため、視認部30の見え方が第1状態から第2状態に変化する。この場合、ユーザは、視認部30の第2状態を視認することにより、針体20の血管確保を知ることができる。
【0039】
一方、血管確保状態の針体20が血管未確保状態になると、針体20の内腔20aに血圧が作用しなくなるため、チャンバ28a内の圧力が低下して視認部30の見え方が第2状態から第1状態に戻る。この場合、ユーザは、視認部30の第1状態を視認することにより、針体20の血管未確保を知ることができる。
【0040】
このように、視認部30の見え方は、チャンバ28a内の圧力に応じて第1状態と第2状態とに可逆的に変化する。これにより、針体20の血管確保を継続的に確認し続けることができる。また、ユーザは、チャンバ28a内の血液流入(血液の流れ)を視認する必要がないため(血流確認時間を長くする必要がないため)、血液導入部28の小型化を図ることができる。
【0041】
視認部30は、視認マーカ36と、視認マーカ36を収容する収容部38とを有する。視認マーカ36は、チャンバ28a内の圧力の変化により、視認部30が第1状態となる第1位置と視認部30が第2状態となる第2位置とに可逆的に移動可能である。収容部38は、第2位置にある視認マーカ36を外側から視認可能なように形成されている。
【0042】
このような構成によれば、視認マーカ36が第1位置と第2位置とに移動することにより、視認部30の見え方を効果的に変化させることができる。
【0043】
視認部30は、収容部38内とチャンバ28aとの間の空気の流通を許可する一方でチャンバ28aから収容部38内の血液の流入を阻止するフィルタ部50を備える。
【0044】
このような構成によれば、チャンバ28a内の空気の圧力を、フィルタ部50を介して視認マーカ36に直接作用させて視認マーカ36を第1位置から第2位置に移動させることができる。また、フィルタ部50により、チャンバ28a内に流入した血液が収容部38内に流入することを阻止することができる。
【0045】
視認部30は、収容部38に設けられた空気流通部60を有する。空気流通部60は、視認マーカ36が第1位置から第2位置に移動する際に収容部38内の空気を針ハブ22の外側空間に排出する。
【0046】
このような構成によれば、視認マーカ36を第1位置から第2位置に円滑に移動させることができる。
【0047】
視認マーカ36は、着色液体40である。
【0048】
このような構成によれば、視認マーカ36を収容部38の形状に合わせて変形させることができるため、収容部38の設計の自由度が向上する。
【0049】
上述した穿刺針14及びカテーテル組立体10において、視認部30は、空気流通部60を有しなくてもよい。この場合、視認マーカ36は、針体20の血管確保時に、第2収容部44の内腔44aの空気を圧縮しながら第1位置から第2位置に移動する。また、視認マーカ36は、針体20の血管未確保時に、第2収容部44の内腔44aの圧縮された空気の圧力と視認マーカ36の自重とによって、第2位置から第1位置に移動する。
【0050】
(第1変形例)
次に、第1変形例に係る視認部30aについて説明する。
図5に示すように、本変形例に係る視認部30aは、収容部70、視認マーカ72、空気流通部74、弾性体76及びフィルタ部78を備える。
【0051】
収容部70は、筒状に形成されている。収容部70は、血液導入部28の側壁部34の外面に形成された凹部82に設けられている。収容部70は、収容部70の一部が凹部82から外方に突出するように凹部82に挿入されている。収容部70のうち少なくとも凹部82から突出している部位は、外側から内部を視認可能なように透明性を有している。収容部70は、凹部82を形成する壁面に対して液密且つ気密に固着されている。なお、収容部70は、血液導入部28に対して一体成形されてもよい。
【0052】
視認マーカ72は、収容部70の軸線方向に移動可能な状態で収容部70の内腔70aに配設されたピストン(固体)である。視認マーカ72は、収容部70の内腔70aを、収容部70の一端側の第1空間84と他端側の第2空間86とに仕切る(
図6A参照)。視認マーカ72は、収容部70の内周面に対して摺動する。視認マーカ72は、収容部70の内周面に対して液密且つ気密に接触する。視認マーカ72は、収容部70の一端側(血液導入部28側)の第1位置と収容部70の他端側(空気流通部74側)の第2位置とに可逆的に移動可能である。
【0053】
視認マーカ72は、第1位置で血液導入部28の凹部82内に位置する。そのため、ユーザは、第1位置にある視認マーカ72を針ハブ22の外側から見難い。一方、視認マーカ72は、第2位置で凹部82の外側に位置する。そのため、ユーザは、第2位置にある視認マーカ72を針ハブ22の外側から見易い。
【0054】
空気流通部74は、収容部70の他端部(突出端部)を形成する。空気流通部74は、第2空間86と針ハブ22の外側空間との間の空気の流通を許可する一方で血液の流通を阻止する。空気流通部74としては、例えば、疎水性フィルタを用いることができる。
【0055】
弾性体76は、収容部70の第2空間86に配設されている。換言すれば、弾性体76は、視認マーカ72と空気流通部74との間に介設されている。弾性体76は、視認マーカ72を収容部70の一端側(血液導入部28側)に付勢する。弾性体76は、ばね部材である。ただし、弾性体76は、弾性変形可能なゴム部材であってもよい。弾性体76は、視認マーカ72を第2位置から第1位置に復帰させるための復帰手段77として機能する。
【0056】
フィルタ部78は、血液導入部28の側壁部34に形成されてチャンバ28aと収容部70の内腔70a(第1空間84)とを互いに連通する貫通孔88に配設されている。フィルタ部78は、チャンバ28aと収容部70の第1空間84との間の空気の連通を許可する一方でチャンバ28aから収容部70の第1空間84への血液の流入を阻止する。フィルタ部78としては、例えば、疎水性フィルタを用いることができる。フィルタ部78は、貫通孔88の内面に対して液密且つ気密に固着されている。
【0057】
視認部30aにおいて、カテーテル組立体10の初期状態で、視認マーカ72は、収容部70の一端側の第1位置にある(
図5参照)。
図6Aに示すように、針体20の血管確保によりチャンバ28a内に血液が流入してチャンバ28a内の圧力が上昇すると、視認マーカ72は、チャンバ28a内の空気に押されて収容部70の一端側の第1位置から他端側の第2位置に移動する。この際、弾性体76は、視認マーカ72に押されて弾性変形(圧縮変形)する。また、視認マーカ72と空気流通部74との間の空気は、視認マーカ72に押されて空気流通部74を介して外側空間に排出される。
【0058】
すなわち、視認部30aは、針体20の血管未確保を示す第1状態(視認マーカ72が第1位置にある状態)から針体20の血管確保を示す第2状態(視認マーカ72が第2位置にある状態)に見え方が変化する。これにより、ユーザは、視認部30aの第2状態を視認することにより、針体20の血管確保を知ることができる。
【0059】
一方、血管確保状態であった針体20が血管未確保状態になった場合、チャンバ28a内の圧力が低下する。そうすると、
図6Bに示すように、第2位置にあった視認マーカ72は、視認マーカ72の自重、弾性体76の弾性力(復元力)及び大気圧により第1位置に戻される。これにより、ユーザは、視認部30aの第1状態を視認することにより、針体20が血管未確保状態であることを知ることができる。
【0060】
図6Bの状態において、針体20の血管確保が再度なされると、視認部30aは、
図6Aの状態になる。つまり、視認部30aの見え方は、第1状態から第2状態に変化する。そのため、ユーザは、針体20の血管確保を継続的に確認し続けることができる。
【0061】
本変形例において、視認部30aは、視認マーカ72を第2位置から第1位置に復帰させる復帰手段77を有する。
【0062】
このような構成によれば、復帰手段77により視認マーカ72を第2位置から第1位置に容易に復帰させることができる。
【0063】
視認マーカ72は、固体であって、復帰手段77は、収容部70内に設けられて視認マーカ72の第1位置から第2位置への移動によって弾性変形する弾性体76を有する。
【0064】
このような構成によれば、弾性体76の復元力により視認マーカ72を第2位置から第1位置に容易に復帰させることができる。
【0065】
視認部30aは、空気流通部74を有しなくてもよい。この場合、収容部70の突出端部は、空気及び血液を流通しない壁部により形成される。そうすると、視認マーカ72は、収容部70の第2空間86の空気を圧縮しながら第1位置から第2位置に移動する。また、視認マーカ72は、圧縮された第2空間86の空気の圧力と弾性体76の復元力とによって、第2位置から第1位置に移動する。このような形態の場合、収容部70の第2空間86の空気と弾性体76とは、視認マーカ72を第2位置から第1位置に復帰させるための復帰手段77として機能する。
【0066】
(第2変形例)
次に、第2変形例に係る視認部30bについて説明する。
図7に示すように、本変形例に係る視認部30bは、筒状部90、視認マーカ92、フィルタ部94、吊り下げ部96及び空気流通部98を備える。
【0067】
筒状部90は、血液導入部28の側壁部34から外方に突出するように側壁部34に設けられている。具体的に、筒状部90は、血液導入部28の側壁部34に形成された貫通孔100に挿入されている。筒状部90のうち少なくとも貫通孔100から突出している部分は、外側から内部が視認可能なように透明性を有している。筒状部90のうち貫通孔100に挿入されている部分は、貫通孔100の内周面に対して液密且つ気密に接触している。なお、筒状部90は、血液導入部28に対して一体成形されてもよい。
【0068】
視認マーカ92は、筒状部90の軸線方向に移動可能な状態で筒状部90の内腔90aに配設されたマーカ本体92aと、マーカ本体92aに設けられた錘部92bとを有する。マーカ本体92aは、筒状部90の内周面に対して摺動する。マーカ本体92aは、筒状部90の内周面に対して液密且つ気密に接触する。マーカ本体92aは、筒状部90の内腔90aを、筒状部90の一端側の第1空間102と筒状部90の他端側の第2空間104とに仕切る。筒状部90の第1空間102は、チャンバ28aに連通する。
【0069】
錘部92bは、視認マーカ92における血液導入部28とは反対側の面に固定されている。視認マーカ92の比重(マーカ本体92aと錘部92bとを合わせたものの比重)は、血液の比重よりも軽い。すなわち、視認マーカ92は、血液に対して浮くように形成されている。視認マーカ92は、チャンバ28a内の圧力の変化により(筒状部90内の血液の液面の変化により)、視認部30bが第1状態となる第1位置と視認部30bが第2状態となる第2位置とに可逆的に移動可能である。
【0070】
フィルタ部94は、マーカ本体92aに設けられている。フィルタ部94は、筒状部90の第1空間102と第2空間104との間の空気の流通を許可する一方で第1空間102から第2空間104への血液の流通を阻止する。フィルタ部94としては、例えば、疎水性フィルタを用いることができる。
【0071】
吊り下げ部96は、筒状部90の突出端部(空気流通部98)に設けられ、針体20の血管未確保の状態で視認マーカ92を第1位置に吊り下げるためのものである。吊り下げ部96は、視認マーカ92が第1位置から第2位置に移動することにより弾性変形する弾性体106である。弾性体106としては、例えば、ばね又はゴム等が用いられる。吊り下げ部96は、弾性体106に限定されず、例えば、糸であってもよい。
【0072】
吊り下げ部96の一端は、錘部92bに固着され、吊り下げ部96の他端は、空気流通部98に固着されている。吊り下げ部96の長さは、視認マーカ92に血液が接触していない状態で、筒状部90の軸線方向の中間に位置するように設定される。ただし、吊り下げ部96の長さは、適宜設定可能である。
【0073】
空気流通部98は、筒状部90の突出端部を形成する。空気流通部98は、筒状部90の第2空間104と針ハブ22の外側空間との間の空気の流通を許可する一方で第2空間104から外側空間への血液の流出を阻止する。空気流通部98としては、例えば、疎水性フィルタを用いることができる。フィルタ部94と空気流通部98とは、チャンバ28a内の空気を外部に逃がすための空気逃がし部108を形成する。
【0074】
視認部30bにおいて、カテーテル組立体10の初期状態で、視認マーカ92は、筒状部90の軸線方向の途中の第1位置にある(
図7参照)。また、筒状部90の第1空間102には、血液が存在していない。
【0075】
図8Aに示すように、針体20の血管確保によりチャンバ28aに血液が流入すると、チャンバ28a内の空気は、筒状部90の第1空間102からフィルタ部94、第2空間104及び空気流通部98を介して外側空間に排出される。そして、血液は、チャンバ28a内を満たした後で筒状部90の第1空間102に流入し、マーカ本体92aに接触する。
【0076】
そうすると、マーカ本体92aは、血液により上方に押圧されて第1位置から筒状部90の他端側の第2位置に移動する。この際、筒状部90の第2空間104の空気が空気流通部98を介して外部に排出されるとともに吊り下げ部96が弾性変形する。
【0077】
すなわち、視認部30bは、針体20の血管未確保を示す第1状態(視認マーカ92が第1位置にあるとともに第1空間102に血液が存在しない状態)から針体20の血管確保を示す第2状態(視認マーカ92が第2位置にあるとともに第1空間102に血液が存在する状態)に見え方が変化する。そのため、ユーザは、視認部30bの第2状態を視認することにより、針体20の血管確保を知ることができる。
【0078】
一方、血管確保状態であった針体20が血管未確保状態になった場合、筒状部90内の血液の液柱圧や大気圧によりチャンバ28a内の血液が針体20の内腔20aを介して外部に押し出されるため、チャンバ28a内の圧力が低下する。そうすると、
図8Bに示すように、視認マーカ92は、視認マーカ92の自重(マーカ本体92aの自重及び錘部92bの自重)、弾性体106(吊り下げ部96)の復元力及び大気圧により第2位置から第1位置に移動する。この際、視認マーカ92は、吊り下げ部96によって第1位置に停止する。そのため、ユーザは、視認部30bの第1状態を視認することにより、針体20が血管未確保状態であることを知ることができる。
【0079】
図8Bの状態において、針体20の血管確保が再度なされると、視認部30bは、
図8Aの状態になる。つまり、視認部30bの見え方は、第1状態から第2状態に変化する。そのため、ユーザは、針体20の血管確保を継続的に確認し続けることができる。
【0080】
本変形例において、視認部30bは、血液導入部28から外方に突出するように当該血液導入部28に設けられた筒状部90を有する。筒状部90のうち少なくとも血液導入部28から突出している部分は、外部から内部が視認可能なように形成されている。筒状部90の内腔90a(第1空間102)は、チャンバ28aに連通している。視認部30bには、チャンバ28a内の空気を外部に逃がすための空気逃がし部108が設けられている。
【0081】
このような構成によれば、針体20の血管確保時に、筒状部90の内腔90a(第1空間102)に血液を流入させることができる。また、針体20の血管未確保時に、筒状部90の内腔90a(第1空間102)から血液をチャンバ28a側に流出させることができる。そのため、筒状部90の内腔90aの血液によって、視認部30bの見え方を第1状態と第2状態とに変化させることができる。
【0082】
筒状部90の突出端部には、筒状部90の内腔90aと筒状部90の外側空間との間の空気の流通を許可する一方で筒状部90の内腔90aから外側空間への血液の流出を阻止する空気流通部98が設けられている。
【0083】
このような構成によれば、筒状部90の内腔90aに血液を円滑に流入させることができる。
【0084】
視認部30bは、筒状部90の内腔90aに設けられて血液よりも比重の軽い視認マーカ92を有している。視認マーカ92は、チャンバ28a内の圧力の変化により、視認部30bが第1状態となる第1位置と視認部30bが第2状態となる第2位置とに可逆的に移動可能である。
【0085】
このような構成によれば、視認マーカ92が第1位置と第2位置とに移動することにより、視認部30bの見え方を効果的に変化させることができる。
【0086】
視認部30bは、筒状部90の端部に設けられて視認マーカ92を吊るすための吊り下げ部96を有している。視認マーカ92は、筒状部90の内周面に対して液密且つ気密に接触した状態で筒状部90の軸線方向に沿って摺動可能に設けられている。
【0087】
このような構成によれば、筒状部90の内腔90aに血液が流入していない状態で吊り下げ部96により視認マーカ92を第1位置に位置させることができる。
【0088】
吊り下げ部96は、視認マーカ92の第1位置から第2位置への移動によって弾性変形する弾性体106である。
【0089】
このような構成によれば、弾性体106の復元力により、視認マーカ92を第2位置から第1位置に円滑に戻すことができる。
【0090】
空気逃がし部108は、フィルタ部94と空気流通部98とで形成されなくてもよい。空気逃がし部108は、フィルタ部94と同様に構成された疎水性フィルタを血液導入部28又は封止部材32に設けてもよい。視認マーカ92は、錘部92bを有しなくてもよい。つまり、視認マーカ92は、マーカ本体92aの重量により比重を調整してもよい。
【0091】
(第3変形例)
次に、第3変形例に係る視認部30cについて説明する。
図9に示すように、本変形例に係る視認部30cは、チャンバ28a内の圧力の変化により拡張及び収縮するバルーン110を有する。
【0092】
バルーン110は、ゴム等の弾性材料によって袋状に形成されている。バルーン110は、血液導入部28の側壁部34から外方に突出した突起112に固着される固定部114と、固定部114に設けられたバルーン本体116とを含む。突起112には、チャンバ28aとバルーン本体116の内腔116aとを互いに連通する貫通孔118が形成されている。固定部114は、突起112に対して気密に固着されている。バルーン本体116は、内圧が上昇することにより拡張し(膨らみ)、内圧が低下することにより収縮する(萎む)。
【0093】
視認部30cにおいて、カテーテル組立体10の初期状態で、バルーン本体116は収縮している(
図9参照)。
図10Aに示すように、針体20の血管確保によりチャンバ28a内に血液が流入してチャンバ28a内の圧力が上昇すると、バルーン本体116の内圧が上昇するため、バルーン本体116が拡張する。
【0094】
すなわち、視認部30cは、針体20の血管未確保を示す第1状態(バルーン本体116が収縮した状態)から針体20の血管確保を示す第2状態(バルーン本体116が拡張した状態)に見え方が変化する。これにより、ユーザは、視認部30cの第2状態を視認することにより、針体20の血管確保を知ることができる。
【0095】
一方、血管確保状態であった針体20が血管未確保状態になった場合、チャンバ28a内の圧力が低下する。そうすると、
図10Bに示すように、バルーン本体116の内圧が低下するため、バルーン本体116が収縮する。これにより、ユーザは、視認部30cの第1状態を視認することにより、針体20が血管未確保状態であることを知ることができる。
【0096】
図10Bの状態において、針体20の血管確保が再度なされると、視認部30cは、
図10Aの状態になる。つまり、視認部30cの見え方は、第1状態から第2状態に変化する。そのため、ユーザは、針体20の血管確保を継続的に確認し続けることができる。
【0097】
本変形例において、視認部30cは、チャンバ28a内の圧力の変化により拡張及び収縮するバルーン110を有する。
【0098】
このような構成によれば、ユーザは、バルーン110の拡張及び収縮を視認することにより、針体20の血管確保及び血管未確保を容易に知ることができる。
【0099】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0100】
以上の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0101】
上記実施形態は、血管に穿刺するための中空状の針体(20)と前記針体の基端部に設けられた針ハブ(22)とを備えた穿刺針(14)であって、前記針ハブは、前記針体の血管確保時に前記針体の内腔(22a)を介して血液が導入されるチャンバ(28a)が形成された血液導入部(28)と、前記血液導入部に設けられてユーザが視認可能な視認部(30、30a~30c)と、を備え、前記視認部は、前記チャンバ内の圧力上昇により、第1状態から第2状態に見え方が変化し、前記チャンバ内の圧力低下により、前記第2状態から前記第1状態に戻る、穿刺針を開示している。
【0102】
上記の穿刺針において、前記視認部は、視認マーカ(36、72)と、前記視認マーカを収容する収容部(38、70)と、を有し、前記視認マーカは、前記チャンバ内の圧力の変化により、前記視認部が前記第1状態となる第1位置と前記視認部が前記第2状態となる第2位置とに可逆的に移動可能であり、前記収容部は、前記第2位置にある前記視認マーカを外側から視認可能なように形成されてもよい。
【0103】
上記の穿刺針において、前記視認部は、前記収容部内と前記チャンバとの間の空気の流通を許可する一方で前記チャンバから前記収容部内の血液の流入を阻止するフィルタ部(50、78)を備えてもよい。
【0104】
上記の穿刺針において、前記視認部は、前記収容部に設けられた空気流通部(60、74)を有し、前記空気流通部は、前記視認マーカが前記第1位置から前記第2位置に移動する際に前記収容部内の空気を前記針ハブの外側空間に排出してもよい。
【0105】
上記の穿刺針において、前記視認マーカは、着色液体(40)であってもよい。
【0106】
上記の穿刺針において、前記視認部は、前記視認マーカを前記第2位置から前記第1位置に復帰させるための復帰手段(77)を有してもよい。
【0107】
上記の穿刺針において、前記視認マーカは、固体であって、前記復帰手段は、前記収容部内に設けられて前記視認マーカの前記第1位置から前記第2位置への移動によって弾性変形する弾性体(76)を有してもよい。
【0108】
上記の穿刺針において、前記視認部は、前記血液導入部から外方に突出するように当該血液導入部に設けられた筒状部(90)を有し、前記筒状部のうち少なくとも前記血液導入部から突出している部分は、外側から内部が視認可能なように形成され、前記筒状部の内腔は、前記チャンバに連通し、前記視認部には、前記チャンバ内の空気を外部に逃がすための空気逃がし部(108)が設けられてもよい。
【0109】
上記の穿刺針において、前記筒状部の突出端部には、前記筒状部の前記内腔と前記筒状部の外側空間との間の空気の流通を許可する一方で前記筒状部の前記内腔から前記外側空間への血液の流出を阻止する空気流通部(98)が設けられてもよい。
【0110】
上記の穿刺針において、前記視認部は、前記筒状部の内腔(90a)に設けられて血液よりも比重の軽い視認マーカ(92)を有し、前記視認マーカは、前記チャンバ内の圧力の変化により、前記視認部が前記第1状態となる第1位置と前記視認部が前記第2状態となる第2位置とに可逆的に移動可能であってもよい。
【0111】
上記の穿刺針において、前記視認部は、前記筒状部の突出端部に設けられて前記視認マーカを吊るすための吊り下げ部(96)を有し、前記視認マーカは、前記筒状部の内周面に対して液密且つ気密に接触した状態で前記筒状部の軸線方向に沿って摺動可能に設けられてもよい。
【0112】
上記の穿刺針において、前記吊り下げ部は、前記視認マーカの前記第1位置から前記第2位置への移動によって弾性変形する弾性体(106)であってもよい。
【0113】
上記の穿刺針において、前記視認部は、前記チャンバ内の圧力の変化により拡張及び収縮するバルーン(110)を有してもよい。
【0114】
本実施形態は、上述した穿刺針と、前記針体が挿通される内腔を有するカテーテルシャフト(16)と、前記カテーテルシャフトの基端部に設けられたカテーテルハブ(18)と、を備える、カテーテル組立体(10)を開示している。