(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】血管内の特性を判断するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20241105BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20241105BHJP
A61B 5/026 20060101ALI20241105BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20241105BHJP
A61B 6/00 20240101ALI20241105BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20241105BHJP
A61B 6/12 20060101ALI20241105BHJP
A61B 8/06 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
A61B10/00 K
A61B5/02 A
A61B5/026 140
A61B5/055 390
A61B6/00 570
A61B6/03 577
A61B6/12
A61B8/06
(21)【出願番号】P 2022511015
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(86)【国際出願番号】 EP2020073457
(87)【国際公開番号】W WO2021032869
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-06-26
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521130310
【氏名又は名称】アルテドローン
【氏名又は名称原語表記】ARTEDRONE
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プーレティ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノー,マエル
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/172312(WO,A1)
【文献】特開2014-000431(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0152309(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0253114(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管または心臓(V)における特性を判断するためのシステムであって、
-血管または心臓(V)に配置される要素(1)と、
-前記要素に作用する推進力(2)を判断するための手段と、
-前記要素(1)の加速度(3)および速度(4)の少なくとも1つ、好ましくは加速度(3)および速度(4)を判断するための手段と、
-前記推進力(2)と、前記要素(1)の加速度(3)および速度(4)のうちの少なくとも1つ、好ましくは加速度(3)および速度(4)とに基づいて、前記要素(1)の近隣媒体の少なくとも1つの特性を判断するための手段とを備える、システム。
【請求項2】
患者の血管または心臓(V)における特性を判断するための
システムの作動方法であって、
前記システムは、
-血管または心臓(V)に配置される要素(1)と、
-前記要素に作用する推進力(2)を判断するための手段と、
-前記要素(1)の加速度(3)および速度(4)の少なくとも1つを判断するための手段と、
-前記推進力(2)と、前記要素(1)の加速度(3)および速度(4)のうちの少なくとも1つとに基づいて、前記要素(1)の近隣媒体の少なくとも1つの特性を判断するための手段とを備え、前記システムは、
-
血管または心臓(V)に配置される前記要素(1)に作用する推進力(2)を判断するステップと、
-前記要素(1)の加速度(3)および速度(4)の少なくとも1
つを判断するステップと、
-前記推進力(2)と、前記要素(1)の加速度(3)および速度(4)のうちの少なくとも1
つとに基づいて、前記要素(1)の近隣媒体の少なくとも1つの特性を判断するステップとを
実行する、方法。
【請求項3】
前記推進力(2)は、前記要素(1)に含まれるセンサ(6)によって測定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記システムは、特にX線撮像、MRI、コンピュータ断層撮影、PET、および超音波画像化のうちの1つ
の撮像技術によって、前記要素(1)が位置する患者の領域を撮像するステップをさらに
実行する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記システムは、前記近隣媒体の前記少なくとも1つの特性
を、追加的に前記撮像データに基づいて判断
する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記システムは、前記要素(1)の位置を判断するステップをさらに
実行する、請求項
4に記載の方法。
【請求項7】
前記システムは、前記位置
を、前記撮像技術によって判断
する、請求
項6に記載の方法。
【請求項8】
前記システムは、前記位置および/または時間の関数として前記近隣媒体の前記少なくとも1つの特性をメモリ(15)に保存するステップをさらに
実行する、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
前記近隣媒体の前記少なくとも1つの特性を計算するステップは、ソフトウェアコードを実行するコンピュータによって実行される、請求項2から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記近隣媒体の前記少なくとも1つの特性は、機械的特性、血行動態特性、解剖学的特性、および組織学的特性のうちの1つである、請求項2から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記血管または前記心臓(V)内に配置された前記要素(1)は、磁気要素(1)を含み、前記推進力(2)を判断するステップは、
前記システムによって磁界(14)の磁界強度を判断するステップを含む、請求項2から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記システムは、前記要素(1)に作用する前記推進力(2)に基づいて前記要素(1)の理論上の加速度または速度を計算するステップをさらに
実行する、請求項
4に記載の方法。
【請求項13】
前記要素(1)
の加速度
または速度を計算するステップは
前記システムによって実行され、さらに、前記要素(1)の位置および前記撮像ステップで取得された撮像データに基づく、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記システムは、前記要素(1)の周囲の液
体の流速を測定するステップをさらに
実行し、
前記システムは、加えて、
前記流速(9)に基づいて、前記近隣媒体の前記少なくとも1つの特性の判
断する、請求項2から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記システムは、前記要素上もしくは前記患者の体内の所定の位置に配置された少なくとも1つの検出器またはマーカ(10)によって前記要素(1)を位置特定するステップをさらに
実行する、請求項2から請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載のシステムを用いて患者の体内の要素(1)の近隣媒体を分析するためのコンピュータプログラム製品であって、コンピュータ上で実行されると、推進力(2)と、前記要素(1)の加速度(3)および速度(4)のうちの少なくとも1つとに基づいて
、前記要素(1)の近隣媒体の少なくとも1つの特性を判断するステップを実行するように適合されたソフトウェアコードを備える、コンピュータプログラム製品。
【請求項17】
血管または心臓(V)の特性を判断するためのシステムであって、体液によって運ばれおよび/または体液中で能動的に移動する要素(1)と、測定ユニット(11)と、計算ユニット(12)とを備え、前記測定ユニット(11)は、前記要素(1)の加速度(3)および速度(4)の少なくとも1つを判断するように適合され、前記計算ユニットは
、請求項
2~14のいずれか1つに従う方法のステップを実行することによって、前記血管(V)の少なくとも1つの特性を判断するように適合される、システム。
【請求項18】
前記要素(1)が位置する患者の身体の領域を撮像するように適合される撮像装置(7)をさらに備える、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項のプリアンブルによる血管内の組織または流体の特性を判断するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、最小限に侵襲的な方法で血管を治療することが知られている。例えば、インプラントは、カテーテル装置を使用して送達することができる。そのような治療は、例えば、他の状態の中でもとりわけ、狭窄した血管または動脈瘤を治療するために使用される。同様に、従来技術では、患者の身体の内側部分を画像化および/または治療するために、マイクロロボットが使用されている。
【0003】
しかしながら、治療および診断用途の両方においてそのような装置で一貫して生じる問題は、装置の周囲についての正確な情報が入手可能できないことである。
【0004】
特に、最小侵襲的処置と組み合わせて使用される撮像技術は、典型的には、周囲組織の特性に関して限られた情報しか提供しない。例えば、X線を使用するコントラスト画像化は、血管系の解剖学的情報を提供するが、機械的特性または血流の流れの障害に関する情報を提供することができない場合がある。したがって、複数の方法が、通常、平行して必要であり、そのような情報の収集は、時間がかかり、費用がかかり、困難なものになる。低侵襲的方法による治療中にリアルタイムでこのような情報を得ることは特に困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を克服することであり、特に、人体を治療または診断するための装置の近隣の、血管内の組織または流体の異なる特性を、簡単な方法で判断することを可能にする方法およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的および他の目的は、本発明の独立請求項の特徴部分による方法およびシステムによって達成される。
【0007】
本発明は、患者の血管または心臓(V)における特性を判断するためのシステムに関する。システムは、血管または心臓に配置される要素を含む。システムは、さらに、要素に作用する推進力を判断するための手段と、要素の加速度および速度のうちの少なくとも1つを判断するための手段とを備える。好ましくは、システムは、要素の加速度および速度の両方を判断するための手段を含む。
【0008】
そのような手段は、特に、センサ、例えば加速度計、または患者の身体の内側または外側の基準点までの距離を測定するように適合されたセンサを備えてもよい。加えて、または代替として、推進力を判断するための手段はまた、撮像装置および/または撮像装置によって生成される画像を分析するためのコンピュータを備えてもよい。
【0009】
さらに、システムは、推進力と、加速度および速度の少なくとも1つとに基づいて、要素の近隣媒体の少なくとも1つの特性を判断するための手段を備える。例えば、そのような手段は、コンピュータ、好ましくはソフトウェアコードを実行するコンピュータを含んでもよい。好ましくは、手段は、要素の加速度および速度の両方に基づいて少なくとも1つの特性を判断する。
【0010】
本発明による方法は、患者の血管内の特性を判断する方法を提供する。それは、
-要素を血管または心臓に配置するステップと、
-要素に作用する推進力を判断するステップと、
-要素の有効加速度および有効速度の少なくとも1つ、特に有効加速度および有効速度の両方を判断するステップと、
-推進力と、要素の有効加速度および有効速度の少なくとも1つ、特に要素の有効加速度および有効速度の両方とに基づいて、要素の近隣媒体の少なくとも1つの特性を判断ステップとを含む。
【0011】
本明細書に記載される方法を用いて判断され得る血管の特性は、機械的特性、例えば、組織の弾性、剛性、延性、および/または硬度であり得る。演繹によって、組織の解剖学的または組織学的特性、特に壊死組織または癌組織の存在を判断することも可能であろう。もちろん、粘度および/または流速などの、血液の物理的特性を判断することも可能であり得る。加えて、または代替として、特性は、流れに影響を及ぼす血管の特性、例えば、血管内の血液の流れを妨害、減速もしくは加速するかまたは乱流を生成する障害物を含むことができる。他の診断上関連のある特性、例えば、動脈瘤、血餅/血栓、気泡、および/または血管壁の欠陥の存在が得られることも考えられる。
【0012】
近隣媒体は、特に、要素と相互作用することができる、要素の近傍のすべての生物学的材料として理解されるものとする。それは、液体、固体、気体であり得るか、または軟質材料を含み得る。
【0013】
要素は、人体内で、少なくとも一時的に、自由に移動するように適合された任意の装置として理解されるものとする。これは、特に、マイクロロボット、センサ、薬物担体、または浮遊要素であってもよい。特に、要素は、その内側および/またはその表面に強磁性粒子などの磁気要素を含んでもよい。それはまた、強磁性材料からなってもよい。
【0014】
特に、本方法は、血管の特性を分析するためにのみ用いられてもよい。具体的には、本方法は、対象の特定の特性を判断する唯一の目的のために実行することができる。したがって、要素は、方法を実行するためにデータを提供するために導入されるに過ぎず、その他の目的に供されない。
【0015】
しかしながら、追加的または代替的に、体内に導入されて別の動作を行う医療装置を用いて本方法を実行することも可能である。例えば、マイクロロボットを体内に導入して、薬物を送達するか、または標的部位を治療してもよい。次いで、本方法は、マイクロロボットがいつ標的部位に到達したかを判断するために、またはさらには最適な標的部位を規定するために、実行されてもよい。
【0016】
別の処理と並行して本方法を実行するために別個の要素を使用することも考えられる。
推進力は、典型的には、特に明記しない限り、患者の身体とのいかなる相互作用もない場合に要素に及ぼされる総力として理解されるものとする。例えば、要素が磁性であり、磁界によって作動される場合、推進力は、血流、または身体内の摩擦、血流、もしくは血栓からの閉塞等の身体的機能による他の力を考慮に入れることなく、磁界によって要素に及ぼされる力である。同様に、要素がプロペラまたはジェットなどの自己推進手段を含む場合、推進力は、この自己推進手段によって及ぼされる力となるであろう。自己推進手段と磁界との組み合わせが使用される場合、推進力は、これらの力の両方を含む。要素の所与の質量に対する推進力から理論上の加速度および速度を計算することが可能である。
【0017】
有効であり理論的な加速度ならびに速度は、摩擦、重力、抗力などの影響により決して同じではない。より洗練されたモデルでは、そのような影響が考慮され得る。
【0018】
例えば、装置の近隣の組織または流体のなんらかのパラメータが既知である場合、それらは、要素が推進力に基づいてその組織内で到達すべき理論的加速度または終端速度を計算するために考慮される。例えば、血液が要素に及ぼす速度依存抗力が既知である場合、要素の理論的終端速度を計算することができる。
【0019】
対照的に、要素の有効加速度および/または有効速度は、患者の身体に対する要素の実際の加速度および/または実際の速度として理解されるものとする。したがって、有効な加速度または速度と理論的な加速度または速度との差(これは、推進力を要素の質量で除することによって判断することができる)は、要素の環境(例えば、血液の粘度)または障害物に関する情報を提供する。
【0020】
したがって、有効推進力は、有効加速度と要素の質量との積として理解されるものとする。したがって、所与の要素について、有効加速度は、有効推進力と等価なパラメータである。
【0021】
推進力は、要素に作用する磁界などのアクチュエータのパラメータなどの既知のパラメータに基づいて測定または判断することができる。
【0022】
好ましくは、推進力は、要素に含まれるセンサに基づいて判断される。これは、要素の正確な位置が知られていないか、または判断が困難である場合に特に有利である。例えば、要素が大型血管内に位置し、磁界によって駆動される場合、要素の場所における磁界の正確な特性は、知られていない場合がある。したがって、磁界によって要素に及ぼされる力を測定することができれば、この問題は解決される。
【0023】
追加的にまたは代替的に、有効加速度を測定するために要素に含まれる他のセンサを使用することも考えられる。
【0024】
好ましくは、本方法は、要素が位置する患者の領域を撮像するステップをさらに含む。特に、画像化は、X線画像化、磁気共鳴画像化(MRI)、コンピュータ断層撮影、陽電子放出断層撮影(PET)、および超音波画像化のうちの1つを使用して行われ得る。これは、本方法を実施する際にいくつかの利点を提供することができる。一方で、特定の機械的特性が本方法によって判断される場合、撮像データは、正しい位置特定および解釈(例えば、特定のタイプの組織への割り当て)を支援することができる。一方で、撮像データを用いて要素の有効加速度および/または速度を測定することも考えられる。
【0025】
代替的または追加的に、要素をナビゲーションするためのデータまたは本発明による方法によって収集されたデータの較正ならびに解釈のために患者のデータベースを使用することも考えられる。そのようなデータベースには、典型的な患者または患者群に関する情報だけでなく、患者個人情報も記憶され得る。較正および解釈は、人工知能法を使用することによって行われてもよい。特に、較正または解釈に使用可能な特定の情報は、ディープラーニング法または機械学習法によって収集されてもよい。このような方法は、本発明による方法の間および/またはその準備において実施することができる。
【0026】
代替的または追加的に、第1の要素を使用することによって生成されたデータを使用して、後続の他の要素のためのナビゲーションに関連するパラメータ(例えば磁界)を変更することも考えられる。
【0027】
好ましくは、近隣媒体の少なくとも1つの特性は、追加的に撮像データに基づく。例えば、撮像データは、特定の数の異なるタイプの組織が存在するかどうかの情報を提供することができる。加えて、または代替として、撮像データは、血管内の障害物の存在を明らかにしてもよい。したがって、本発明の近隣媒体の1つの特性は、撮像データに基づいているが、他の特性は、異なる組織タイプまたは障害物の機械的特性などである。撮像データと機械的特性との組み合わせは、どのようなタイプの組織が存在するか、および/または血管内にどのような種類の障害物が存在するかを決定的に判断することを可能にし得る。
【0028】
当業者は、これが、撮像データが本発明による方法においてどのように有利に使用され得るかの単なる非限定的な例であることを理解するであろう。しかしながら、撮像データを伴わずに本方法を実施することが可能である。
【0029】
好ましくは、本方法は、要素の位置を判断するステップをさらに含む。これは、特定の組織タイプが患者の身体内のどこに位置するかのさらなる情報を提供する。これは、これらの組織が、例えば外科的技術によって治療または除去されることが計画される場合に特に有利である。
【0030】
好ましくは、その位置は、撮像技術によって判断される。
好ましくは、本方法は、近隣媒体の少なくとも1つの特性を位置または時間の関数としてメモリに保存するステップをさらに含む。これは、1回のセッション中に血管内の複数の位置を分析することを可能にする。特に、データは、続いて、1次元、2次元、または3次元の特性マップを作成するように分析されることができる。例えば、血管の狭窄または動脈瘤は、本発明による方法により、前記血管の長手方向軸に沿って判断することができる。狭窄または動脈瘤のレベルが判断され、複数の点で保存される場合、長手方向軸に沿った狭窄または動脈瘤を示すグラフを得ることができる。同様に、データは、2次元または3次元で収集されてもよい。
【0031】
好ましくは、近隣媒体の少なくとも1つの特性を計算するステップは、ソフトウェアコードを実行するコンピュータによって実行される。これは、特に、本方法を自動的に実行することを可能にし、したがって、迅速で、信頼性があり、安価である。好ましくは、近隣媒体の少なくとも1つの特性は、機械的特性、血行動態特性、解剖学的特性、および組織学的特性のうちの1つである。例えば、血液の粘度、組織のヤング率、血液の流速、および/または血管のサイズもしくは形状、特にその直径であってもよい。
【0032】
好ましくは、血管内に配置された要素は磁気要素を含み、推進力を判断するステップは磁界の磁界強度を判断するステップを含む。磁界強度を判断することは、特に、磁界を生成するユニットの既知のパラメータに基づいて空間における特定の点(特に要素の位置)で磁界の特性を計算することを包含するが、空間における特定の点で磁界を測定することも含むことができる。磁界の測定は、要素によって、したがって、その場所および/または基準点において行われてもよい。
【0033】
好ましくは、本方法は、要素に作用する推進力に基づいて要素の理論上の加速度または速度を計算するステップをさらに含む。
【0034】
好ましくは、要素の速度および加速度の理論値を計算するステップは、加えて、要素の位置と、撮像ステップで取得される撮像データとに基づく。例えば、血管のサイズおよび血液量は、撮像データに基づいて考慮されてもよい。加えて、または代替的に、血流の速度および拍動性は、特にドップラー超音波画像化によって測定および考慮されてもよい。特に、血管壁に対する要素の位置も考慮に入れてもよい。
【0035】
好ましくは、本方法は、要素の周囲の液体、特に血管または心臓内の血液の流速を測定するステップをさらに含む。加えて、近隣媒体の少なくとも1つの特性の判断は、流速に基づいてもよい。特に、流速は、ドップラー超音波画像化によって判断してもよい。しかしながら、要素内および/または要素上に含まれるセンサを用いて流速を測定することも考えられる。
【0036】
好ましくは、本方法は、少なくとも1つの検出器および/またはマーカを用いて要素の位置を特定するステップをさらに含む。マーカは、要素上に配置することができ、検出器は、患者の身体内の所定の位置または患者の身体に対する所定の位置に配置することができる。例えば、検出器は、血管の外側、頭蓋骨などの骨、または心臓などの臓器に配置され得る。検出器は、その近傍にある要素を検出するかまたは検出を助けるように適合された任意の装置として理解されるものとする。マーカは、要素に関連付けられ、特にセンサによって要素を検出するのに役立つ。
【0037】
検出器はまた、要素までの距離を測定するように適合されてもよい。検出器は、特に好ましくは、電気センサ、磁気センサまたは光学センサであってもよい。マーカは、NFCチップ、磁石または放射線不透過性材料であり得る。蛍光マーカまたは同位体マーカを使用することもできる。
【0038】
本発明はさらに、患者の身体内の要素の近隣媒体を分析するためのコンピュータプログラム製品を対象とする。それは、コンピュータ上で実行されると、推進力と、要素の有効加速度および有効速度のうちの少なくとも1つ、特に要素の有効加速度および有効速度の両方とに基づいて、要素の近隣媒体の少なくとも1つの特性を判断するステップを実行するように適合されたソフトウェアコードを備える。コンピュータプログラム製品は、特に、撮像データを処理し、好ましくは、撮像装置によって取得された近隣媒体の撮像データに基づいて、近隣媒体の少なくとも1つの特性を判断するように適合されてもよい。たとえば、コンピュータプログラム製品は、撮像データに基づいて要素の速度および加速度のうちの少なくとも1つを判断するように適合されてもよい。
【0039】
本発明はさらに、血管の特性を判断するためのシステムに関する。それは、体液によって運ばれるおよび/または体液中で能動的に移動するように適合された要素と、測定ユニットと、計算ユニットとを備える。測定ユニットは、要素の加速度および速度のうちの少なくとも1つを判断するように適合される。計算ユニットは、要素の加速度および速度の少なくとも1つに基づいて血管の少なくとも1つの特性を判断するように適合される。好ましくは、測定ユニットおよび計算ユニットの少なくとも一方は、要素に作用する推進力を判断するように適合される。例えば、計算することは、動作パラメータ、例えば磁界の特性に基づいて推進力を計算してもよい。追加的または代替的に、測定ユニットはまた、例えば磁界を測定することによって、要素に及ぼされる力を測定するように適合されてもよい。特に、計算ユニットは、本明細書に記載の方法を実行することによって、特に好ましくは、本明細書に記載の方法のステップを実行するように適合されたソフトウェアコードを実行することによって、血管の少なくとも特性を判断することができる。
【0040】
当業者は、本システムが、特に、本明細書に記載される方法ステップのいずれかを実行するように適合されてもよいことを理解するであろう。
【0041】
好ましくは、本システムは、要素が位置する患者の身体の領域を撮像するように適合された撮像装置を備える。これは、特に、撮像ユニットが採用され得る、本発明による方法の文脈において説明されるようなすべてのステップを行うことを可能にする。特に、撮像ユニットは、PET、MRI、超音波、X線、およびCTのいずれかであってもよい。
【0042】
以下において、本発明は、以下の図を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図4】血管内の要素および撮像装置を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、血管Vにおいて要素1を模式的に示す。ここで、要素1は、強磁性材料を含む移動要素である。したがって、外部磁石(不図示、
図8参照)によって印加される磁界が、血管V内で要素1を案内または推進してもよい。したがって、それは要素1に力2を及ぼすことができる。この場合、例えば血流、摩擦、または重力などの身体的機能による影響がないと仮定すると、磁界によって及ぼされる力2は、要素1に作用する唯一の力であろう。したがって、それは、この例における推進力を表す。しかしながら、流体抵抗により、要素はまた、抗力も受ける。ここで、抗力は未知であり、血液の流体特性および血管壁上の摩擦を判断するために、判断されるべきである。しかしながら、推進力に流体抵抗および摩擦を含むことも可能であろう。要素の有効加速度3または速度4を測定することも可能である。ここで、加速度3は、例えば、要素に含まれる加速度計によって測定される。代替的に、それは、例えば、撮像装置によって測定されてもよい。有効加速度3は、力2と抗力との差を表す。したがって、抗力を計算することができ、その結果、血液および血管の流体特性も計算することができる。これは、当然ながら、血液の流れ特性が条件によって影響を受ける場合に特に有利である。
【0045】
図2は、
図1に示されるものと同様の要素を模式的に示す。ここで、明確にするために、血管Vは示されていない。加えて、要素は、異なる形状を有し、準球状ではなく立方体を有する。しかしながら、それは、強磁性材料も含み、磁界によって推進されることができる。
図2に模式的に示す状態は、要素が終端速度4に達したときの平衡状態を表している。したがって、推進力2および抗力5は、等しいノルム値を有するが、反対の符号を有する。したがって、終端速度4を使用して、血液の粘度などの血液のパラメータを計算することができる。本方法の同様の実施形態では、磁界は、特定の周波数でその方向を変えてもよい。速度を測定する代わりに、要素の運動の周波数を測定し、それから血液の流体特性を判断してもよい。
【0046】
図3は、異なるタイプの要素1を模式的に示す。これは球状であり、血管V内の流体によって受動的に運ばれる。それは、要素1の有効加速度3を測定するように適合されたセンサをさらに備える。ここで、血管は、血液の流速を一時的に上昇させる狭窄部を有する。これにより、加速度計6は、一時的な加速度(および拡大領域における減速度)を検出する。この例では、要素1は受動的に運ばれるので、推進力はゼロである。したがって、有効加速度3を直接用いて、血管Vの特性、この場合は狭窄部の存在を、判断することができる。
【0047】
図4は、血管V内において液体によって運ばれる要素1を示す。明確にするために、推進手段のいずれもこの概略図には示されていないが、当業者は、装置を移動させる、操縦する、または案内する、説明された方法のいずれかが、この実施形態において採用され得ることを理解するであろう。ここでは、X線撮像装置を有する撮像ユニット7を用いる。要素1は、X線撮像において可視である。さらに、血液は造影剤を含有し、血管系もX線下で可視である。ドップラー撮像ユニット8は、血管系内の血液の流れ9を視覚化するために用いられる。当然ながら、ドップラー撮像ユニットおよびX線撮像装置は、各々1つのコンピュータに、または同じコンピュータ、例えば計算において撮像結果を使用するために本発明によるコンピュータプログラム製品を含むコンピュータに、接続されてもよい。
【0048】
図5は、要素1が血管V内を移動するのを示す。ここで、いくつかの検出器10が血管Vの周囲に配置される。それらは、血管の周りにおいて閉じた銅コイルによって形成される。要素は、その周囲に磁界を生成する永久磁石を含む。したがって、要素1が検出器10を通過するとき、移動する磁界は、検出可能な電流を検出器内に誘起する。ロボット上に放射チップを提供し、身体上に配置された受信器/検出器を提供することも可能であり、これはロボットの姿勢を三角測量することができる。
【0049】
図6は、本方法の別の用途を示す。ここでは、要素は、血管内を移動しており、その中に含まれる強磁性要素を介して要素1に力2を及ぼす磁界によって推進される。しかしながら、血管V内に血餅Cが形成され、血流を遮断または制限している。その結果、要素1も、血餅Cに当たると、同様に移動を停止する。したがって、要素の有効速度はゼロになり、一方、推進力2はゼロではない。これは、ある特性、この場合は血餅の存在の判断を可能にする。もちろん、要素1の有効加速度を加えて測定することも考えられ、それは、血餅Cの位置および/またはその機械的特性に関する情報をさらに与えるであろう(より柔らかい血餅Cは、より低い負の加速度値をもたらすであろう)。
【0050】
図7は、本発明によるシステムを模式的に示す。それは、センサ6が配置される要素1を含む。ここで示されるセンサは、要素の加速度を測定するように適合され、任意選択で、温度および安全性などの基本値を測定するように適合される。システムは、測定ユニット11および分析器ユニット12をさらに備える。測定ユニットは、特に、センサから加速度値を受け取るように適合される。しかしながら、それは、マーカまたは検出器10に基づいて値を測定することもできる。本方法を実施する必要はないが、特定の実施形態では、要素1に作用する有効推進力を測定することが有利である場合がある。したがって、この非限定的な例では、測定ユニット11はまた、特にセンサ6との相互作用によって、要素の位置における磁界を測定するように適合される。分析器ユニット12は、測定ユニット11から受信した値および測定ユニット11によって受信された値を処理するように適合される。加えて、それは、値を保存するためのメモリ15を含む。例えば、要素1に含まれるセンサ6から有効加速度値を受け取ってもよい。加えて、推進力は、外部磁気ユニット(
図8参照)のパラメータから既知でもよく、またはセンサ6によって測定されてもよい。いずれの場合も、分析器ユニットは、これらの値を処理し、それらを分析して、血管の少なくとも1つの特性を判断するように適合される。特性値は、任意選択でメモリ15に保存することができる。本システムを、メモリに保存された値に基づいて、データ、特に、患者の解剖学的構造の再構成などのデータの2次元および/または3次元画像を示すように適合されたディスプレイと組み合わせることも考えられる。本明細書に説明される実施例および実施形態のうちのいずれかが本システムとともに実現され得ることが、理解されるであろう。
【0051】
図8は、要素1を推進するために使用されてもよい磁気要素14を示す。ここでは、それは、磁界14を生成するために選択的にオンおよびオフにすることができる電磁石を含む。勿論、永久磁石を用いてもよい。インペラ、プロペラ、または別の推進手段を動作させるために電気エネルギーを使用することも考えられる。