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特許7581332封止化合物をフランジ付き継ぎ目に塗布するためのアプリケーター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】封止化合物をフランジ付き継ぎ目に塗布するためのアプリケーター
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20241105BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022512762
(86)(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2020071820
(87)【国際公開番号】W WO2021037493
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】102019122918.9
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504389784
【氏名又は名称】デュール システムズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Durr Systems AG
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】クラフト、ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ハルプゲヴァックス、マルティン
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/056226(WO,A1)
【文献】米国特許第04305528(US,A)
【文献】独国特許発明第102017001780(DE,B3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00
B05C 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品にコーティング剤を塗布するためのアプリケーター(8)であって、
a)前記コーティング剤を吐出するノズル(11)と、
b)前記ノズル(11)を運ぶ細長いノズルキャリア(10)であって、
b1)前記ノズル(11)が配置される遠位の第1脚(12)と、
b2)前記第1脚(12)に隣接し、前記第1脚(12)に対して特定の曲率角(α)で曲がっている第2脚(13)と、
b3)前記第2脚(13)に隣接し、前記第2脚(13)に対して特定の曲率角(β)で曲がっている第3脚(14)と、
b4)前記第3脚(14)に隣接し、前記第3脚(14)に対して特定の曲率角(χ)で曲がっている第4脚(15)と、
を備えるノズルキャリア(10)と、
c)ハンドリング装置上に前記アプリケーター(8)を装着するための装着フランジ(9)であって、前記ノズルキャリア(10)がその近位端で装着フランジ(9)に取り付けられている装着フランジ(9)と、
を有し、
中空の前記ノズルキャリア(10)は、前記アプリケーター(8)とコーティング対象の前記部品との間での接触の際に接触力(F)に対して弾性降伏できるようにするために、前記ノズルキャリア(10)の他の部分よりも前記ノズルキャリア(10)の耐曲げ性が大幅に小さい降伏領域(16)を有することを特徴とする、
アプリケーター(8)。
【請求項2】
前記ノズルキャリア(10)は、前記降伏領域(16)内で渦巻バネとして形成されており且つ実質的に共通平面内に位置する複数のターンを有る、請求項1に記載のアプリケーター(8)。
【請求項3】
a)前記ノズルキャリア(10)は、前記降伏領域(16)内でコイルバネとして形成されており且つ軸方向に特定のターンピッチで延在する複数のターンを有し、及び/又は、
b)前記コイルバネは、遠位方向に、先細りしている、
請求項1に記載のアプリケーター(8)。
【請求項4】
a)前記コイルバネの前記ターンピッチは、前記ノズルキャリア(10)の直径よりも大きく、及び/又は、
b)前記コイルバネの直径(d)は、
b1)前記コイルバネの個別のコイルの外径(d)の、5倍、8倍、又は10倍、及び/又は、
b2)前記コイルバネの軸長(L)、
よりも大きい、
請求項3に記載のアプリケーター(8)。
【請求項5】
a)前記第1脚(12)と前記第2脚(13)との間の前記曲率角(α)は、60°~120°、70°~110°、80°~100°、又は85°~95°の範囲であり、
b)前記第2脚(13)と前記第3脚(14)との間の前記曲率角(β)は、60°~120°、70°~110°、80°~100°、又は85°~95°の範囲であり、
c)前記第3脚(14)と前記第4脚(15)の間の前記曲率角(χ)は、60°~120°、70°~110°、80°~100°、又は85°~95°の範囲である、
請求項1からのいずれか1項に記載のアプリケーター(8)。
【請求項6】
a)前記第1脚(12)及び前記第3脚(14)は互いに実質的に平行であり、及び/又は、
b)前記第2脚(13)及び前記第4脚(15)は互いに実質的に平行であり、及び/又は、
c)前記ノズル(11)は前記第(14)の方向に前記第脚(13)に実質的に平行に前記コーティング剤を放出し、及び/又は、
d)前記第1脚(12)及び/又は前記第2脚(13)及び/又は前記第3脚(14)及び/又は前記第4脚(15)は共通平面内に位置し、及び/又は、
e)前記降伏領域(16)は前記ノズルキャリア(10)の前記第4脚(15)内に位置する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のアプリケーター(8)。
【請求項7】
a)前記アプリケーター(8)の脚(12~15)は、それぞれ、中空であり、且つ、塗布対象の前記コーティング剤を前記ノズル(11)に供給するための前記ノズル(11)につながる連続した導管流路を形成し、及び、
b)前記導管流路は、
b1)前記第4脚(15)では、前記第3脚(14)、前記第2脚(13)、及び/又は、前記第1脚(12)でよりも、大きい断面積を有し、及び/又は、
b2)前記降伏領域(16)では、前記ノズルキャリア(10)の他の部分よりも、大きい断面積を有する、
請求項1からのいずれか1項に記載のアプリケーター(8)。
【請求項8】
a)前記ノズル(11)を有する及び/又は装着フランジ(9)を有する前記ノズルキャリア(10)は、生成的製造工程により、一体に製造されており、又は、
b)前記降伏領域(16)は、生成的製造工程により、製造され、一方、他のノズルキャリア部位は、前記降伏領域(16)に、溶接、はんだ付け、接着、又は、圧着される、
請求項1からのいずれか1項に記載のアプリケーター(8)。
【請求項9】
a)前記アプリケーター(8)は特定の移動方向(v)での塗布移動のために構成されており、
b)特定の接触力(F)が塗布方向において前記ノズルキャリア(10)に作用する際に、前記アプリケーター(8)は前記ノズル(11)で前記移動方向に特定の変位(x)を示し、及び、
c)前記アプリケーター(8)は、前記移動方向において前記ノズルキャリア(10)に作用する前記接触力(F)とその結果として生じる前記移動方向における前記変位(x)との間の比率として定義されるバネ剛性を有し、前記バネ剛性は、10N/mm、8N/mm、7N/mm、又は6N/mm未満である、
請求項1からのいずれか1項に記載のアプリケーター(8)。
【請求項10】
前記ノズル(11)は、塗布材料を、
a)フラットジェット(11)、
b)ラウンドジェット(11)、
c)エアレスジェット(11)、
の1つとして、ワークピース表面に塗布するように構成されている、
請求項1からのいずれか1項に記載のアプリケーター(8)。
【請求項11】
a)前記ノズルキャリア内の供給管は遠位方向に減少する内側断面積を有し、及び/又は、
b)前記ノズルキャリアは遠位方向に先細りする外側断面積を有する、
請求項1から10のいずれか1項に記載のアプリケーター(8)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のアプリケーター(8)を有するコーティングロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング剤(例えば、封止剤)を部品(例えば、自動車車体部品)に塗布するためのアプリケーターに関する。
【背景技術】
【0002】
こうしたアプリケーターは、例えば、特許文献1から、既知である。この既知のアプリケーターは、フランジ付き継ぎ目の後側に封止剤を塗布するために、重なりのある自動車車体部品の間の隙間を貫き出ることのできる複数箇所で曲がった管状のノズルキャリアを有する。例えば、側方で重なりのある自動車車体部品として自動車ドアとフェンダーが挙げられる。既知のアプリケーターは、有利なことに、封止剤を自動車ドアの後部に塗布することをそのために自動車ドアを開く必要なく可能とする。しかし、この既知のアプリケーターを使う場合、アプリケーターがアプリケーターと自動車車体との間での接触により塑性変形して機能しなくなってしまう危険性がある。
【0003】
本発明の技術背景について、特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び、3D印刷により製造される所謂Grindaixノズルを参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許第2282845号明細書
【文献】独国特許発明第102017001780号明細書
【文献】独国特許発明第102008027994号明細書
【文献】独国特許出願公開第102016004257号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上を鑑み、本発明は、応分に改善されたアプリケーターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、主請求項に係る発明に係るアプリケーターにより解決される。
【0007】
本発明に係るアプリケーターは、コーティング剤を部品に塗布するためにも用いられる。コーティング剤は、例えば、封止剤であってもよいが、本発明の文脈で用いられる『コーティング剤』という用語は、封止剤に限られるわけではない。むしろ、本発明の文脈で用いられる『コーティング剤』という用語は、例えば、接着剤及び絶縁材料などの、他種のコーティング剤も含む。
【0008】
さらに、本発明に係るアプリケーターがコーティング剤(例えば、封止剤)を自動車車体部品に塗布するように構成されていることが好ましいことに言及すべきだろう。しかし、本発明の文脈で用いられる『部品』という用語は、自動車車体部品に限られるわけではなく、例えば、数例を挙げれば、自動車車体部品用付属部品又は風力システムの部品などの、他種の部品も含む。
【0009】
本発明に係るアプリケーターは、まず、冒頭に記載の既知のアプリケーターに倣って、コーティング剤を吐出するためのノズルを有する。例えば、このノズルは、フラットストリームノズル、ラウンドジェトノズル、エアレスノズル、又は、ビード封止用ノズルであってもよい。しかし、本発明は、ノズルの種類について上述の例に限られるわけではない。
【0010】
さらに、冒頭に記載の既知のアプリケーターに倣って、本発明に係るアプリケーターは、ノズルを支えノズルを位置決めする役割を果たす細長いノズルキャリアを含む。
【0011】
本発明に係るアプリケーターは、冒頭に記載の既知のアプリケーターとは、アプリケーターとコーティング対象の部品との間での接触の際に接触力に対して弾性降伏できるようにするためにノズルキャリアの他の部分よりもノズルキャリアの耐曲げ性が大幅に小さい降伏領域をノズルキャリアが有する点で、区別される。そして、ノズルキャリアの降伏領域は、ノズルキャリアを機械的に軟化させ、ノズルキャリアの塑性変形を大きく防ぐ。
【0012】
本発明の一変形例では、ノズルキャリアは、降伏領域内で渦巻バネとして形成されており且つ実質的に共通平面内に位置する複数のターンを有する。渦巻バネのターン数について、本発明は特定のターン数に限られるわけではない。例えば、渦巻バネのターン数は、少なくとも2、3、4、若しくは5であってもよく、及び/又は、多くとも20、15、10、7、若しくは5であってもよい。
【0013】
一方、本発明の別変形例では、ノズルキャリアは、降伏領域内でコイルバネとして形成されており且つ軸方向に特定のターンピッチで延在する複数の巻きを有する。本発明のこの変形例でも、コイルバネのターン数について特定のターン数に限られるわけではないということが当てはまる。例えば、コイルバネのターン数は、少なくとも2、3、4、若しくは5であってもよく、及び/又は、多くとも20、15、10、7、若しくは5であってもよい。
【0014】
降伏領域がコイルバネとして構成される場合、コイルバネは、遠位方向に(例えば、ノズルに向けて)、例えば、円錐状に、先細りしていていもよい。
【0015】
降伏領域内にコイルバネを有する本発明の変形例では、コイルバネのターンピッチは、個別のコイルが直に互いに接しないように、ノズルキャリアの直径よりも大きいことが好ましい。これはノズルキャリアの曲げ性への好適な作用を有する。例えば、コイルバネのターンピッチは、ノズルキャリアの直径の、2倍、3倍、又は4倍より大きくてもよい。
【0016】
コイルバネの直径は比較的に大きいことが好ましい。例えば、コイルバネの直径は、コイルバネの個別のターンのターン直径の、5倍、8倍、又は、10倍よりも大きくてもよい。コイルバネの直径は、コイルバネ又は降伏領域の軸長よりも大きいことも好ましい。
【0017】
ノズルキャリアが、少なくともその長さの一部にわたって、塗布対象のコーティング剤がその中を通ってノズルに送られる中空供給管であることが好ましいことにも言及すべきだろう。そして、この実施形態では、ノズルキャリアは2つの機能を持つ。一方では、ノズルキャリアはノズルを支えノズルを位置決めする役割を果たす。他方では、組み込まれた供給管により、ノズルキャリアはコーティング剤をノズルに供給する役割も果たす。
【0018】
また、この代わりに、供給管とノズルキャリアとが互いに独立していてもよい。この場合、それ故に、コーティング剤は、ノズルキャリアを通してではなく、独立した供給管を通して、ノズルに送られる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、多軸コーティングロボットなどのハンドリング装置上にアプリケーターを装着できるようにするために、ノズルキャリアはその近位端により装着フランジに取り付けられている。そして、このために、アプリケーターの装着フランジのみがコーティングロボットのロボットフランジ上に装着されねばならないが、これは従来技術から既知である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、ノズルキャリアは4つの脚を有しており、これらのそれぞれが2つ1組となって互いに角度を付けられており、この際、隣接する脚の間の曲率角は、60°~120°、70°~110°、80°~100°、又は85°~95°であってもよい。
【0021】
しかし、本発明の範囲内で、ノズルキャリアが、4本よりも少ない、例えば、たった1つ、2つ、又は3つの脚を有するのでもよい。
【0022】
冒頭に記載の既知のアプリケーターと同様に、ノズルキャリアの個別の脚が共通平面内に位置することが好ましいことに言及すべきだろう。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、アプリケーターの脚は、それぞれ、中空であり、且つ、塗布対象のコーティング剤をノズルに供給するためにノズルにつながる連続した導管流路を形成する。ここで、導管流路は、導管流路の長さにわたって一定ではないことが好ましい断面積を有する。むしろ、降伏領域は、長手方向において変化する導管断面積を持つ導管流路を可能とする。そして、降伏領域内の導管流路の断面積はノズルキャリアの他の部分よりも大きいことが好ましい。さらに、ノズルキャリアの近位にある脚内の導管流路の断面積がノズルキャリアのより遠位にある脚内よりも大きいことが好ましいことに言及すべきだろう。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、ノズルを有するノズルキャリアは、生成的製造工程により、特に、3D印刷により、一体に製造できる。ここで、アプリケーターの装着フランジも3D印刷工程の一部として製造されてもよい。材料出口開口(ノズル)は、通常は、例えば、浸食により、独立して導入される。
【0025】
また、この代わりに、降伏領域(例えば、渦巻バネ)のみが生成的製造工程により製造され、一方で、他のノズルキャリア部位が、降伏領域に、溶接、はんだ付け、接着、又は圧着されることも可能である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、アプリケーターは特定の移動方向での塗布移動のために構成されている。これは、アプリケーターが、運転中に、ハンドリング装置(例えば、コーティングロボット)により、移動方向に、例えば、フランジ付き継ぎ目に沿って、移動させられることを意味する。アプリケーターとコーティング対象の部品との間の接触により、ある接触力がノズルキャリアに作用し、それを変位させるかもしれない。アプリケーターはこの接触力にあるバネ剛性で抗し、このバネ剛性は移動方向においてノズルキャリアに作用する接触力とその結果として生じる移動方向における変位との間の比率として定義される。ここで、本発明に係る降伏領域(例えば、渦巻バネ、コイルバネ)は小さなバネ剛性を可能とし、このバネ剛性は10N/mm、8N/mm、7N/mm、又は6N/mm未満にできる。
【0027】
ノズルキャリア内の供給管が、遠位方向に、特に、ノズルに向けて、先細りする内側断面積を有することが好ましいことにも言及すべきだろう。同様に、ノズルキャリアが遠位方向にも先細りする外側断面積を有することが好ましい。
【0028】
さらに、本発明は上述の本発明に係るアプリケーターについての権利保護を要求するのみではないことに言及すべきだろう。むしろ、本発明は、こうしたアプリケーターを含むコーティングロボットについての権利保護も請求するものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の他の有利な更なる実施形態が、従属請求項に示され、また、以下で図面を参照しつつ本発明の好ましい実施形態の記載とともにより詳細に説明される。
【0030】
図1】フランジ付き継ぎ目を封止するための本発明に係るアプリケーターの模式図。
図2図1の交差線A-Aに沿った模式断面図。
図3図1及び2に示したアプリケーターのバネ剛性と従来のアプリケーターとの比較のための例示的特性曲線。
図4図1の変形例。
図5図1の更なる変形例。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は自動車ドア2とフェンダー3との間の隙間1の区域を示し、ここで、自動車ドア2は図面で示したように閉じた状態では衝突安全性を高めるためにフェンダー3と重なっている。
【0032】
自動車ドア2は内部パネル4と外部パネル5とを有しており、外部パネル5は内部パネルの角度のつけられた縁の周りでフランジ付けされている。角度のつけられた縁の領域で内部パネル4は継ぎ目接着剤6により外部パネル5に接続されている。この設計では、フランジ付き継ぎ目の区域で内部パネル4の角度のつけられた縁と外部パネル5のフランジのつけられた縁との間の隙間に湿気が侵入し、腐食が生じる危険性がある。そのため、内部パネル4と外部パネル5との間のフランジ付き継ぎ目は湿気がフランジ付き継ぎ目に侵入することを防ぐために封止ビード7により封止され、封止ビード7はフランジ付き継ぎ目の全長にわたって図示平面に直角に延びている。ここで、封止ビード7の塗布は本発明に係るアプリケーター8により実行されるが、これは以下で詳細に説明するように自動車ドア2とフェンダー3との間の隙間1を貫き出るものである。
【0033】
本発明に係るアプリケーターは、多軸ロボットにより位置決めされ、また、ロボット上に装着するための装着フランジ9を有する。ロボットは簡略化のために図示しない。
【0034】
管状のノズルキャリア10がアプリケーター8の装着フランジ9上に装着される。一方では、ノズルキャリア10は、ノズルキャリア10の遠位端に配置されたノズル11を機械的にガイドする役割を果たす。他方では、ノズルキャリア10は、封止ビード7の封止化合物を装着フランジ9からノズル11に導く役割も果たし、このために、ノズルキャリア10は中空である。
【0035】
ノズルキャリア10は4つの脚12、13、14、15を有しており、これらは、それぞれ、α=90°、β=90°、及び、χ=90°の曲率角で、互いに直角に配置されており、ノズルキャリア10の遠位にある脚12、13、14は内部パネル5の角度のつけられた縁の周りでフランジ付き継ぎ目に係合するU字部位を形成している。図示したアプリケーター8の形状は、ノズル11が自動車ドア2とフェンダー3との間の隙間1を貫き自動車ドア2及びフェンダー3の後側に出ることを、そこに位置するフランジ付き継ぎ目に封止ビード7の封止化合物を塗布するために、可能とする。事前に自動車ドア2を開いておく必要が無いので、自動車ドア2を開くためのマニュアルハンドリングロボットを省略することができる。
【0036】
ここで、ノズルキャリア10の近位の脚15は、コイルバネとして形成された降伏領域16を有する。そして、降伏領域16では、ノズルキャリア10の近位の脚15は、幾つかのターン数で螺旋状に延びている。これは、フェンダー3又は自動車ドア2との接触の際のノズルキャリア10の塑性変形を防ぐために、ノズルキャリア10の曲げ剛性を減少させる。なぜなら、こうしたノズルキャリア10の塑性変形の結果としてアプリケーター8が非機能的になるかもしれないからである。
【0037】
塗布運転中に、アプリケーター8は、隙間1に沿って、移動方向vに、例えば、図1では図示平面に直角に、また、図2では左から右に、移動させられる。一方のアプリケーター8と他方の自動車ドア2又はフェンダー3との間の接触の際に、接触力Fがアプリケーター8に作用し、これにより、図2に示すように、例えば、ノズル11に、接触力Fが作用し得る。可能性のある他の接触点は、例えば、脚13、14上にある。接触力Fは移動方向vに対する対応する変位xをもたらし、これにより、ノズルキャリア10は図2で破線で示す変形位置を取る。降伏領域16は、接触力Fとその結果生じる変位xとの間の比率としてのノズルキャリア10のバネ剛性が冒頭に記載の既知の従来のアプリケーターよりも大幅に小さいことを保証する。例えば、図3のダイアグラムは、本発明に係るアプリケーター8の対応するバネ特性17を従来のアプリケーターのバネ特性18と比較して示す。このダイアグラムから読み取れるように、本発明に係るアプリケーター8は曲げへの耐性がずっと低く、これは降伏領域16により実現されている。これにより、アプリケーター8が運転中にコーティング対象の部品との接触により損傷を受けることが防がれる。
【0038】
移動方向に示した接触力に加えて、更なる接触力も、例えばフランジ付き継ぎ目の表面と脚12の接触による移動方向に垂直なものも、生じ得る。更なる接触力はドアの縁と脚13の接触によっても生じ得る。こうした接触力がどこで生じようとも、組み込まれたバネ剛性(復元力)は有益な効果を持つ。
【0039】
図4は、本発明に係るアプリケーター8の変形例を示し、ここで、この変形実施形態は上述の実施形態と大体は一致するので、繰り返しを避けるために、上述の記載を参照するものであり、対応する細部については同じ符号を付す。
【0040】
この実施形態の特別な特徴は、降伏領域16がコイルバネではなく渦巻バネとして形成されている点である。なお、渦巻バネは図中では模式的にのみ示す。渦巻バネは、上述のコイルバネとは、渦巻バネのターンが実質的に同じ平面内に位置している点で異なる。
【0041】
図5は、本発明に係るアプリケーター8の変形例を示し、ここで、この変形実施形態は上述の実施形態と大体は一致するので、繰り返しを避けるために、上述の記載を参照するものであり、対応する細部については同じ符号を付す。
【0042】
この実施形態の特別な特徴は、降伏領域16(ここではコイルバネとして実装されている)が比較的に大きい直径dで設計されている点である。そして、コイルバネの直径dは、降伏領域16の軸長L又は当該降伏領域16を形成するコイルバネの軸長Lのおよそ2倍である。さらに、コイルバネの直径dがコイルバネの個別の巻きの直径dの10倍よりも大きいことに言及すべきだろう。
【0043】
本発明は上述の実施形態に限られるものではない。むしろ、本発明は、本発明の思想を利用し、それ故に、権利保護範囲に属する多数の変形例及び修正例を包含する。特に、本発明は、従属請求項の主題と特徴について、それぞれが引用する請求項とは独立して、特に、主請求項の特徴ぬきで、権利保護を請求する。したがって、本発明は、互いに独立した権利保護を享受する本発明の様々な態様を含む。
【0044】
[付記]
[付記1]
部品に、コーティング剤を、特に、自動車車体部品上のフランジ付き継ぎ目を封止するための封止剤を、塗布するためのアプリケーター(8)であって、
a)前記コーティング剤を吐出するノズル(11)と、
b)前記ノズル(11)を運ぶ細長いノズルキャリア(10)と、
を有し、
c)前記ノズルキャリア(10)は、前記アプリケーター(8)とコーティング対象の前記部品との間での接触の際に接触力(F)に対して弾性降伏できるようにするために、前記ノズルキャリア(10)の他の部分よりも前記ノズルキャリア(10)の耐曲げ性が大幅に小さい降伏領域(16)を有することを特徴とする、
アプリケーター(8)。
【0045】
[付記2]
前記ノズルキャリア(10)は、前記降伏領域(16)内で渦巻バネとして形成されており且つ実質的に共通平面内に位置する複数のターンを有し、特に、ターン数は、少なくとも2、3、4、若しくは5であり、及び/又は、多くとも20、15、10、7、若しくは5である、付記1に記載のアプリケーター(8)。
【0046】
[付記3]
a)前記ノズルキャリア(10)は、前記降伏領域(16)内でコイルバネとして形成されており且つ軸方向に特定のターンピッチで延在する複数のターンを有し、特に、ターン数は、少なくとも2、3、4、若しくは5であり、及び/又は、多くとも20、15、10、7、若しくは5であり、及び/又は、
b)前記コイルバネは、遠位方向に、特に、円錐状に、先細りしている、
付記1に記載のアプリケーター(8)。
【0047】
[付記4]
a)前記コイルバネの前記ターンピッチは、前記ノズルキャリア(10)の直径よりも大きく、特に、前記ノズルキャリア(10)の直径の、2倍、3倍、又は4倍よりも大きく、及び/又は、
b)前記コイルバネの直径(d)は、
b1)前記コイルバネの個別のコイルの外径(d)の、5倍、8倍、又は10倍、及び/又は、
b2)前記コイルバネの軸長(L)、
よりも大きい、
付記3に記載のアプリケーター(8)。
【0048】
[付記5]
前記ノズルキャリア(10)は、少なくともその長さの一部にわたって、中空供給管であり、この中を通って塗布対象の前記コーティング剤が前記ノズル(11)に送られる、付記1から4のいずれか1つに記載のアプリケーター(8)。
【0049】
[付記6]
ハンドリング装置上に、特に、多軸コーティングロボット上に、前記アプリケーター(8)を装着するために、前記ノズルキャリア(10)は、その近位端が装着フランジ(9)に取り付けられている、付記1から5のいずれか1つに記載のアプリケーター(8)。
【0050】
[付記7]
a)前記ノズルキャリア(10)は遠位の第1脚(12)を有し、遠位の前記第1脚(12)の上に、前記ノズル(11)が、特に、遠位の前記第1脚(12)内の開口として、配置されており、これは、管として、又は、材料出口を有する硬質金属インサートとして、構成されており、
b)前記ノズルキャリア(10)は第2脚(13)を有し、前記第2脚(13)は、前記第1脚(12)に隣接し、前記第1脚(12)に対して特定の曲率角(α)で曲がっており、前記第1脚(12)と前記第2脚(13)との間の前記曲率角(α)は、60°~120°、70°~110°、80°~100°、又は85°~95°の範囲であり、
c)前記ノズルキャリア(10)は第3脚(14)を有し、前記第3脚(14)は、前記第2脚(13)に隣接し、前記第2脚(13)に対して特定の曲率角(β)で曲がっており、前記第2脚(13)と前記第3脚(14)との間の前記曲率角(β)は、60°~120°、70°~110°、80°~100°、又は85°~95°の範囲であり、
d)前記ノズルキャリア(10)は第4脚(15)を有し、前記第4脚(15)は、前記第3脚(14)に隣接し、前記第3脚(14)に対して特定の曲率角(χ)で曲がっており、前記第3脚(14)と前記第4脚(15)の間の前記曲率角(χ)は、60°~120°、70°~110°、80°~100°、又は85°~95°の範囲である、
付記1から6のいずれか1つに記載のアプリケーター(8)。
【0051】
[付記8]
a)前記第1脚(12)及び前記第3脚(14)は互いに実質的に平行であり、及び/又は、
b)前記第2脚(13)及び前記第4脚(15)は互いに実質的に平行であり、及び/又は、
c)前記ノズル(11)は前記第4脚の方向に前記第4脚(13)に実質的に平行に前記コーティング剤を放出し、及び/又は、
d)前記第1脚(12)及び/又は前記第2脚(13)及び/又は前記第3脚(14)及び/又は前記第4脚(15)は共通平面内に位置し、及び/又は、
e)前記降伏領域(16)は前記ノズルキャリア(10)の前記第4脚(15)内に位置する、
付記7に記載のアプリケーター(8)。
【0052】
[付記9]
a)前記アプリケーター(8)の脚(12~15)は、それぞれ、中空であり、且つ、塗布対象の前記コーティング剤を前記ノズル(11)に供給するための前記ノズル(11)につながる連続した導管流路を形成し、及び、
b)前記導管流路は、
b1)前記第4脚(15)では、前記第3脚(14)、前記第2脚(13)、及び/又は、前記第1脚(12)でよりも、大きい断面積を有し、及び/又は、
b2)前記降伏領域(16)では、前記ノズルキャリア(10)の他の部分よりも、大きい断面積を有する、
付記1から8のいずれか1つに記載のアプリケーター(8)。
【0053】
[付記10]
a)前記ノズル(11)を有する及び/又は装着フランジ(9)を有する前記ノズルキャリア(10)は、生成的製造工程により、特に、3D印刷により、一体に製造されており、又は、
b)前記降伏領域(16)は、生成的製造工程により、特に、3D印刷により、製造され、一方、他のノズルキャリア部位は、前記降伏領域(16)に、溶接、はんだ付け、接着、又は、圧着される、
付記1から9のいずれか1つに記載のアプリケーター(8)。
【0054】
[付記11]
a)前記アプリケーター(8)は特定の移動方向(v)での塗布移動のために構成されており、
b)特定の接触力(F)が、塗布方向において、前記ノズルキャリア(10)に、特に、前記ノズル(11)で又は前記ノズルキャリア(10)の第2脚若しくは第3脚で、作用する際に、前記アプリケーター(8)は前記ノズル(11)で前記移動方向に特定の変位(x)を示し、及び、
c)前記アプリケーター(8)は、前記移動方向において前記ノズルキャリア(10)に作用する前記接触力(F)とその結果として生じる前記移動方向における前記変位(x)との間の比率として定義されるバネ剛性を有し、前記バネ剛性は、10N/mm、8N/mm、7N/mm、又は6N/mm未満である、
付記1から10のいずれか1つに記載のアプリケーター(8)。
【0055】
[付記12]
前記ノズル(11)は、塗布材料を、
a)フラットジェット(11)、
b)ラウンドジェット(11)、
c)エアレスジェット(11)、
の1つとして、ワークピース表面に塗布するように構成されている、
付記1から11のいずれか1つに記載のアプリケーター(8)。
【0056】
[付記13]
a)前記ノズルキャリア内の供給管は、遠位方向に、特に、連続して、減少する、内側断面積を有し、及び/又は、
b)前記ノズルキャリアは遠位方向に先細りする外側断面積を有する、
付記1から12のいずれか1つに記載のアプリケーター(8)。
【0057】
[付記14]
付記1から13のいずれか1つに記載のアプリケーター(8)を有するコーティングロボット。
【符号の説明】
【0058】
1 隙間
2 自動車ドア
3 フェンダー
4 内部パネル
5 外部パネル
6 継ぎ目接着剤
7 封止ビード
8 アプリケーター
9 アプリケーターの装着フランジ
10 ノズルキャリア
11 ノズル
12 材料出口開口(ノズル)を有する脚
13-15 脚
16 降伏領域
17 本発明に係るアプリケーターの例示的バネ特性
18 従来のアプリケーターの例示的バネ特性
F 接触力
V アプリケーターの移動方向
x アプリケーターの変位
α 脚12、13の間の曲率角
β 脚13、14の間の曲率角
χ 脚14、15の間の曲率角
図1
図2
図3
図4
図5