(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料、その調製方法およびその適用
(51)【国際特許分類】
C01G 53/00 20060101AFI20241105BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20241105BHJP
B01J 37/14 20060101ALI20241105BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20241105BHJP
B01J 37/03 20060101ALI20241105BHJP
B01J 37/18 20060101ALI20241105BHJP
B01J 35/53 20240101ALI20241105BHJP
B01J 33/00 20060101ALI20241105BHJP
B01J 23/755 20060101ALI20241105BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20241105BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20241105BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20241105BHJP
【FI】
C01G53/00 A
B01J37/02 301P
B01J37/14 ZNM
B01J37/10 ZAB
B01J37/03 B
B01J37/18
B01J35/53
B01J33/00 C
B01J23/755 A
B01D53/86 222
B01D53/86 275
B01D53/86 280
B82Y30/00
B82Y40/00
(21)【出願番号】P 2022523622
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(86)【国際出願番号】 CN2020122099
(87)【国際公開番号】W WO2021078113
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】201911001564.6
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911001557.6
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】栄峻峰
(72)【発明者】
【氏名】于鵬
(72)【発明者】
【氏名】謝靖新
(72)【発明者】
【氏名】呉耿煌
(72)【発明者】
【氏名】宗明生
(72)【発明者】
【氏名】林偉国
(72)【発明者】
【氏名】紀洪波
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108856706(CN,A)
【文献】特開2007-152263(JP,A)
【文献】特開2004-230317(JP,A)
【文献】特表2011-513167(JP,A)
【文献】特表2015-536235(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0065619(US,A1)
【文献】国際公開第2019/020086(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108212035(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107469824(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106872545(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104815983(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101811052(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00-47/00
49/10-99/00
49/00 49/08
B01J 21/00-38/74
B01D 53/73
53/86-53/90
53/94
53/96
B82Y 5/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料であって、外側シェルおよび内側コアを有するコア-シェル構造を含み、前記外側シェルは黒鉛化炭素膜であり、前記内側コアは酸化ニッケルおよびアルミナを含み、前記ナノ複合材料の総重量に基づいて、酸化ニッケル含有量が69%~
79%、アルミナ含有量が20%~
30%、炭素含有量が1%以下であることを特徴とする、炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料。
【請求項2】
前記酸化ニッケル含有量が69%~79%であり、前記アルミナ含有量が20%~30%であり、前記炭素含有量が0.3%~1%であることを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合材料。
【請求項3】
前記ナノ複合材料において、元素分析により決定された炭素元素含有量に対するX線光電子分光法により決定された炭素元素含有量の重量比が10以上であることを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合材料。
【請求項4】
1320cm
-1付近に位置するDピークの強度に対する1580cm
-1付近に位置するGピークの強度の比率が2より大きいラマンスペクトルを有することを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合材料。
【請求項5】
前記コアが、ナノ複合材料の重量に対して5重量%以下の量のアルカリ金属酸化物をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合材料。
【請求項6】
前記ナノ複合材料が1%以下、0.5%以下、0.1%以下、または0.01%以下の量のニッケル元素を含むことを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合材料。
【請求項7】
ニッケル-アルミニウム前駆体を調製する工程と、
前記ニッケル-アルミニウム前駆体に対して昇温熱処理を行い、炭素源ガスとして低級アルカンを用いることにより蒸着を行う工程と、
蒸着後に得られた生成物に対して酸素処理を行い、ナノ複合材料を得る工程と、を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料を調製する方法。
【請求項8】
前記酸素処理は、前記蒸着後に得られた生成物に標準ガスを導入して加熱することを含み、前記標準ガスは、酸素とバランスガスとを含み、10~40体積%の酸素濃度を有することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記酸素処理は、200℃~500℃の温度で0.5時間~10時間行われることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ニッケル-アルミニウム前駆体が、共沈および/または水熱結晶化の様式によって調製されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記ニッケル-アルミニウム前駆体は、アルカリ溶液と、3価のアルミニウム塩および2価のニッケル塩を含む水溶液とを同時に水中に滴下して沈殿処理し、その結果、3価のアルミニウム塩と2価のニッケル塩とが共沈物を生成することと、前記共沈物を熟成させることと、を含む工程によって調製されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記3価のアルミニウム塩は硝酸アルミニウムおよび/または塩化アルミニウムを含み、前記2価のニッケル塩は硝酸ニッケルおよび/または塩化ニッケルを含み、前記3価のアルミニウム塩中のアルミニウムと前記2価のニッケル塩中のニッケルとのモル比は1:(2~4)であり;
前記アルカリ溶液は水酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムを含む水溶液であり、水酸化ナトリウムアルカリ溶液の濃度は0.2~4mol/Lであり、アルカリ溶液中の炭酸ナトリウムの濃度は0.1~2mol/Lであり;
水酸化ナトリウムと前記3価のアルミニウム塩および前記2価のニッケル塩中のアルミニウムおよびニッケルの総モルとのモル比は(2~4):1であり、炭酸ナトリウムと前記3価のアルミニウム塩および前記2価のニッケル塩中のアルミニウムおよびニッケルの総モルとのモル比は(0.5~2):1であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
沈殿処理は40℃から100℃未満の温度で行われ、熟成処理は40℃から100℃未満の温度で2~48時間行われることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
昇温熱処理を受けた前記ニッケル-アルミニウム前駆体を水素と接触させて、500~900℃の処理で120~480分間、30~50ml/(分 gニッケル-アルミニウム前駆体)の水素流量で還元処理を実施することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記ニッケル-アルミニウム前駆体とアルカリ金属の塩溶液とを混合して共沈反応させ、次いで得られた沈殿物に対して昇温熱処理を行うことをさらに含み、ニッケルに対する前記アルカリ金属のモル比が0.2以下である、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記昇温熱処理は保護ガスの存在下で前記ニッケル-アルミニウム前駆体の温度を500~900℃に上昇させることを含み、前記保護ガスは窒素および/またはアルゴンであり、前記保護ガスの流量は10~500ml/(分・gニッケル-アルミニウム前駆体)であり、昇温速度は1~5℃/分であり;
前記蒸着は750~900℃で5~240分間行われ;
前記炭素源ガスはメタンまたはエタンであり、これは10~500ml/(分・gニッケル-アルミニウム前駆体)の流量で使用されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
触媒材料、エネルギー貯蔵材料または電磁材料としての、請求項1~6のいずれか1項に記載のナノ複合材料の使用。
【請求項18】
触媒を亜酸化窒素と接触させて触媒分解反応させ、窒素および酸素を生成することを含む、亜酸化窒素の分解のための触媒としての、請求項1~6のいずれか1項に記載のナノ複合材料の使用。
【請求項19】
揮発性有機化合物の酸化反応を触媒するための触媒として、請求項1~6のいずれか1項に記載のナノ複合材料を使用することを含む、揮発性有機化合物を触媒燃焼させる方法。
【請求項20】
前記酸化反応は、揮発性有機化合物と、酸素を含む標準ガスとを含む混合ガスを触媒と接触させることによる、前記混合ガスの触媒燃焼を含み、前記標準ガスは、酸素とバランスガスとを含み、10~40体積%の酸素濃度を有することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記混合ガスが、0.01~2体積%の揮発性有機化合物と、5~20体積%の酸素とを含むことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
揮発性有機化合物が、1~4個の炭素原子を有する炭化水素からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記酸化反応は、1000~5000mlの反応ガス/(時間・g触媒)の空間速度で行われることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記酸化反応は、300℃~450℃の温度で行われることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は触媒の技術分野に関し、特に、炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料、その調製方法および使用、例えば揮発性有機化合物を触媒燃焼させる方法に関する。
【0002】
〔背景〕
遷移金属酸化物は優れた触媒性能および電磁性能を有し、無機材料の分野における研究のホットスポットであり、エネルギー貯蔵材料、触媒材料、磁気記録材料および生物医学において広く使用されている。近年、炭素被覆ナノ材料は、電気触媒、スーパーキャパシタ材料、リチウムイオン電池アノード材料、バイオエンジニアリングなどの分野で広く使用されている。
【0003】
アジピン酸を製造するための従来の方法の1つは、硝酸によるシクロヘキサノールの酸化であるが、これは反応中に大量のN2Oを生成する。そのため、アジピン酸装置の排ガスの浄化、ならびにN2Oの効果的な制御および除去が環境触媒の分野で研究の焦点となっている。
【0004】
直接触媒分解法はN2Oを窒素および酸素に分解することができ、N2Oを除去するための最も効果的でクリーンな技術である。中でも触媒が直接触媒分解法の核心である。現在、研究報告されているN2O分解用触媒は、主に貴金属触媒、イオン交換モレキュラーシーブ触媒および遷移金属酸化物触媒を含むが、貴金属触媒の大規模な使用は、高価格によって制限される。モレキュラーシーブ触媒および遷移金属酸化物触媒の価格は、貴金属の価格よりも明らかに低いが、N2OのN2O触媒分解のための2つの触媒の活性は現在低く、効率的な分解のための温度範囲は450~550℃であり、分解は高濃度のN2Oを約0.5~2%に希釈することによってのみ行うことができ、その結果、工業コストが大幅に増大する。
【0005】
従って、低コストで高活性な触媒の開発は、N2Oの排出低減に重要な意義を有する。
【0006】
揮発性有機化合物(VOC)は、室温で飽和蒸気圧が70Paを超え、大気圧での沸点が260℃以下の有機化合物である。VOCは種々のタイプであり、主にアルカン、芳香族化合物、エステル、アルデヒド、ハロゲン化炭化水素等を含む。
【0007】
VOCの浄化処理には2つの主要なタイプがあり、第1のタイプは物理的吸収または吸着である。第2のタイプは、化学反応プロセスである。化学反応プロセスの中でも、燃焼技術が広く応用されており、特に直接火炎燃焼と触媒燃焼とに分けられる。
【0008】
触媒は、触媒燃焼技術の核心である。現在の研究で報告されているVOCの触媒燃焼のための触媒は、主に貴金属触媒および非貴金属酸化物触媒を含む。中でも、貴金属触媒(例えば、Pt、Ru、Au、Pdなど)は良好な性能を有するが、高価であり、被毒しやすい;一方、非貴金属酸化物触媒(例えば、Co2O3、MnO2、CeO2、CuO、TiO2、ペロブスカイトなど)は低コストであり、耐被毒性であるが、触媒活性は低い。
【0009】
従って、低コストで高活性な触媒の開発は、VOCの触媒燃焼の分野において解決すべき緊急の課題である。
【0010】
前述の背景の項で開示された情報は本発明の背景の理解を促進するためだけのものであり、したがって、当業者に既に知られている先行技術を形成しない情報を含み得ることに留意されたい。
【0011】
〔発明の概要〕
本発明の主な目的は、先行技術の上述の欠点の少なくとも1つを克服することおよび炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料を提供することである。当該ナノ複合材料は、黒鉛化炭素シェルと酸化ニッケルおよびアルミナの内側コアとを含むコア-シェル構造を有し、このナノ複合材料は触媒としての活性に優れ、亜酸化窒素の分解を有効に触媒することができ、アジピン酸プラント、硝酸プラント等の製造プロセスで発生する高濃度のN2O排気ガスの除去の課題を解決するために役立つ。ナノ複合材料はまた、揮発性有機化合物の触媒燃焼の方法のための触媒として使用することができ、低温でのVOCの酸化および燃焼を高効率で触媒することができ、VOCの浄化の課題を解決するために有益である。
【0012】
上記目的のために、本発明は以下の技術的解決策を提供する:
本発明の第1の態様は、炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料であって、シェルとしての外側膜および内側コアを有するコア-シェル構造を含み、前記外側膜が黒鉛化炭素膜であり、前記内側コアが酸化ニッケルおよびアルミナを含み、前記ナノ複合材料の総重量に基づいて、酸化ニッケル含有量が59%~80%、アルミナ含有量が19%~40%、炭素含有量が1%以下である、炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料を提供する。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、前記酸化ニッケル含有量は69%~79%であり、前記アルミナ含有量は20%~30%であり、前記炭素含有量は0.3%~1%である。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、前記ナノ複合材料は、ニッケル元素を実質的に含まない。本発明によれば、例えば、前記ナノ複合材料は、ニッケル元素の含有量が1%以下、0.5%以下、0.1%以下、または0.01%以下である。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、前記ナノ複合材料において、元素分析により決定された炭素元素含有量に対するX線光電子分光法により決定された炭素元素含有量の重量比は10以上である。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、前記ナノ複合材料は、1320cm-1付近に位置するDピークの強度に対する1580cm-1付近に位置するGピークの強度の比率が2より大きいラマンスペクトルを有する。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、前記コア-シェル構造は、2nm~100nm、好ましくは5nm~80nmの粒径を有する。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、前記コアはまた、ナノ複合材料の重量に対して5重量%以下、好ましくは2.5重量%以下の量のアルカリ金属酸化物を含む。例えば、アルカリ金属酸化物の含有量は、前記ナノ複合材料に対して0.1~5重量%、好ましくは0.5~2.5重量%である。
【0019】
本発明の第2の態様は、ニッケル-アルミニウム前駆体を調製する工程と、前記ニッケル-アルミニウム前駆体に対して熱処理を行い、炭素源ガスとして低級アルカンを用いることにより蒸着を行う工程と、蒸着後に得られた生成物に対して酸素処理を行い、ナノ複合材料を得る工程とを含む、炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料を調製する方法を提供する。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、前記酸素処理は、前記蒸着後に得られた生成物に標準ガスを導入して加熱することを含み、標準ガスは、酸素およびバランスガスを含み、10~40体積%の酸素濃度を有する。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、前記酸素処理は、200℃~500℃の温度で0.5時間~10時間行われる。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、前記ニッケル-アルミニウム前駆体は、共沈および/または水熱結晶化の様式によって調製される。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、前記ニッケル-アルミニウム前駆体は、アルカリ溶液と、3価のアルミニウム塩および2価のニッケル塩を含む水溶液とを同時に水中に滴下して沈殿処理し、その結果、3価のアルミニウム塩と2価のニッケル塩とが共沈物を生成することと、前記共沈物を熟成させることとを含む工程によって調製される。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、前記3価のアルミニウム塩は硝酸アルミニウムおよび/または塩化アルミニウムを含み、前記2価のニッケル塩は硝酸ニッケルおよび/または塩化ニッケルを含み、前記3価のアルミニウム塩中のアルミニウムと前記2価のニッケル塩中のニッケルとのモル比は、1:(2~4)である。前記アルカリ溶液は水酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムを含む水溶液であり、アルカリ溶液中の水酸化ナトリウムの濃度は0.2~4mol/Lであり、炭酸ナトリウムの濃度は0.1~2mol/Lアルカリ溶液である。水酸化ナトリウムと3価のアルミニウム塩および2価のニッケル塩中のアルミニウムおよびニッケルの総モルとのモル比は(2~4):1であり、炭酸ナトリウムと3価のアルミニウム塩および2価のニッケル塩中のアルミニウムおよびニッケルの総モルとのモル比は(0.5~2):1である。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、沈殿処理は40℃から100℃未満の温度で行われ、熟成処理は40℃から100℃未満の温度で2~48時間行われる。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、昇温熱処理を受けた前記ニッケル-アルミニウム前駆体を水素と接触させて、500~900℃の処理で120~480分間、30~50ml/(分 gニッケル-アルミニウム前駆体)の水素流量で還元処理を実施する工程をさらに含む。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、ニッケル-アルミニウム前駆体とアルカリ金属の塩溶液とを混合して共沈反応させ、次いで得られた沈殿物に対して昇温熱処理を行うことをさらに含み、ニッケルに対する前記アルカリ金属のモル比は0.2以下である。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、前記昇温熱処理は保護ガスの存在下で前記ニッケル-アルミニウム前駆体の温度を500~900℃に上昇させることを含み、前記保護ガスは窒素および/またはアルゴンであり、前記保護ガスの流量は10~500ml/(分・gニッケル-アルミニウム前駆体)であり、昇温速度は1~5℃/分である。前記蒸着は750~900℃、好ましくは780~850℃、好ましくは5~240分間、10~500ml/(分・gニッケル/アルミニウム前駆体)の炭素源ガスの流量で行われる。好ましくは、前記蒸着は30~100ml/(分・gニッケル-アルミニウム前駆体)の炭素源ガスの流量で60~120分間行われる。前記炭素源ガスはメタンまたはエタンである。
【0029】
本発明の第3の態様は、触媒材料、エネルギー貯蔵材料、または電磁材料としての上記ナノ複合材料の使用を提供する。
【0030】
本発明の第4の態様は、触媒を亜酸化窒素と接触させて触媒分解反応させ、窒素および酸素を生成することを含む、亜酸化窒素を分解するための触媒としての上記ナノ複合材料の使用を提供する。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、前記触媒分解反応は、300℃~400℃の温度で行われる。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、前記触媒分解反応は、1000~3000mLの反応ガス/(時間・g触媒)の空間速度で実施される。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、前記亜酸化窒素は、30体積%~40体積%の濃度で存在する。
【0034】
上記の技術的解決策によれば、前記炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料、ならびにその調製方法および使用は、以下の利点およびプラスの効果を有する:
本発明により提供される炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料は、黒鉛化炭素膜のシェルと酸化ニッケルおよびアルミナのコアとを有するコア-シェル構造を含み、独特の構造および組成によりN2Oの分解反応を触媒するための触媒として使用される場合に優れた活性を有し、より低温での工業的製造において生成される高濃度の亜酸化窒素排ガスを触媒および分解するために使用することができ、ここで分解速度は99%を超えることができ、前記炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料は、工業的排ガス中のN2Oを希釈し、次いで処理する必要がある従来の触媒と比較して、環境を保護し、大気汚染を低減するために重要な意義を有し、良好な工業的用途の見通しを有する。
【0035】
別の態様では、本発明は、揮発性有機化合物を触媒燃焼させる方法であって、前記炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料を触媒として使用して揮発性有機化合物を触媒し、酸化反応させることを含む方法を提供する。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、前記酸化反応は、揮発性有機化合物と、酸素を含む標準ガスとを含む混合ガスを触媒と接触させることによる、前記混合ガスの触媒燃焼を含む。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、前記混合ガスは、0.01~2体積%の揮発性有機化合物と、5~20体積%の酸素とを含む。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、前記揮発性有機化合物は、1~4個の炭素原子を有する炭化水素からなる群から選択される1種以上である。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、前記酸化反応は、1000~5000mlの反応ガス/(時間・g触媒)の空間速度で行われる。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、前記酸化反応は300℃~450℃の温度で行われる。
【0041】
上記の技術的解決策によれば、揮発性有機化合物の触媒燃焼は、以下の利点およびプラスの効果を有する:
本発明により提供される揮発性有機化合物の触媒燃焼方法は優れた触媒活性を有し、低温でのVOCの酸化燃焼を高効率で触媒することができ、VOCの浄化の問題を解決するのに有益であり、大気汚染を低減し、良好な工業的用途の見通しを有する。
【0042】
〔図面〕
図面は本発明をさらに理解するために提供され、以下の実施形態と共に、本発明を限定せずに本発明の原理を説明するのに役立ち、本明細書の一部を構成する。
【0043】
図1は、実施例1のナノ複合材料のX線回折パターンである;
図2aおよび
図2bは、種々の倍率における実施例1のナノ複合材料のTEM像である;
図3は、実施例1のナノ複合材料のラマンスペクトルである;
図4は、実施例2のナノ複合材料のX線回折パターンである;
図5aおよび
図5bは、種々の倍率での実施例2のナノ複合材料のTEM像である;
図6は、実施例2のナノ複合材料のラマンスペクトルである。
【0044】
〔本発明の実施形態〕
以下の説明は、当業者が本明細書の説明を参照して本発明を実施することを可能にするために、様々な実施形態または実施例を提供する。もちろん、これらは単なる例であり、限定を意図するものではない。本願に開示される範囲の終点および任意の値は、正確な範囲または値に限定されず、これらの範囲または値に近い値を包含すると理解されるべきである。数値範囲についてはそれぞれの範囲の終点間、それぞれの範囲の終点と個々の値との間、および個々の値の間の値の組み合わせは1つ以上の新しい数値範囲をもたらすことができ、そのような新しい数値範囲は本明細書で具体的に開示されているとみなされるべきである。
【0045】
本明細書中で直接的に定義されない任意の用語は、本発明の分野において一般に理解されるように、それらに関連する意味を有すると理解されるべきである。本明細書全体を通して使用される以下の用語は別段の指示がない限り、以下の意味を有すると理解されるべきである。
【0046】
本発明における用語「コア-シェル構造」は、黒鉛化炭素膜である外側膜のシェルと、酸化ニッケルおよびアルミナナノ粒子を含む内側コアとを有するコア-シェル構造を指す。酸化ニッケルとアルミナナノ粒子とを黒鉛化炭素膜で被覆して形成された複合材料は球状または回転楕円状である。
【0047】
用語「黒鉛化炭素膜」は、主に黒鉛化炭素から構成された薄膜構造を指す。
【0048】
用語「X線光電子分光法により決定された炭素元素含有量」等は、X線光電子分光計を分析ツールとして用いた定量的元素分析により測定された、材料表面の炭素元素の相対含有量を指す。
【0049】
用語「元素分析により決定された炭素元素含有量」は、元素分析装置を分析ツールとして用いた元素定量分析により測定された材料の全炭素元素の相対含有量を指す。
【0050】
ナノ複合材料中の成分の量/含有量に言及する場合、含有量は特に明記しない限り、ナノ複合材料の総重量に基づく重量/含有量である。
【0051】
本発明の第1の態様は炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料を提供し、このナノ複合材料はシェルとしての外側膜および内側コアを有するコア-シェル構造を含み、外側膜は黒鉛化炭素膜であり、内側コアは酸化ニッケルおよびアルミナを含み、ナノ複合材料の総重量に基づいて、酸化ニッケル含有量が59%~80%、アルミナ含有量が19%~40%、炭素含有量が1%以下である。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明のナノ複合材料は、69%~79%の酸化ニッケル含有量、20%~30%のアルミナ含有量、および0.3%~1%の炭素含有量を有する。いくつかの実施形態では、炭素含有量が好ましくは0.95%以下、または0.90%以下である。
【0053】
本発明によれば、炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料は外側膜層および内側コアを含むコア-シェル構造を有し、外側膜層は主に黒鉛化炭素膜から構成され、内側コアは酸化ニッケルおよびアルミナを含む。黒鉛化炭素膜は主に黒鉛化炭素から構成される薄膜構造であり、酸化ニッケルおよびアルミナナノ粒子の表面を被覆している。本発明者らは予想外にも、黒鉛化炭素膜で被覆された外層を有するコア-シェル構造が、当該膜層中の炭素含有量は比較的低いものの、材料全体の性能、特に触媒性能を大幅に改善することを発見した。具体的には、コア-シェル構造は、一定の閉じ込め効果を生じさせることができ、内側コア中の酸化ニッケルおよびアルミナナノ粒子の凝集および成長を効果的に回避することができ、複合材料の触媒活性が安定であることを確実にすることができるだけでなく、複合材料全体の触媒活性を相乗的に増大させることができ、炭素膜で被覆されていないニッケル-アルミニウム材料と比較して触媒活性を明らかに改善することができる。
【0054】
いかなる公知の理論によっても限定されないが、本発明のコア-シェル構造において、黒鉛化炭素膜はコアを実質的にカプセル化すると考えられる。一実施形態において、「実質的(に)」カプセル化とは、内側コアの外表面積の少なくとも70%、または少なくとも80%が黒鉛化炭素膜によって覆われていることを意味する。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、ナノ複合材料において、元素分析により決定された炭素元素含有量に対するX線光電子分光法により決定された炭素元素含有量の重量比(単に、2つの方法により決定された炭素元素含有率と呼ぶことができる)は10以上である。いくつかの実施形態では、2つの方法によって決定された炭素元素含有率は15以上、または20以上である。いくつかの実施形態では、2つの方法によって決定された炭素元素含有率は45以下である。なお、上述したように、X線光電子分光法により決定された炭素元素含有量とは、X線光電子分光計を分析ツールとして用いた定量的元素分析により測定された、材料表面の炭素元素の相対含有量を指す。元素分析において決定された炭素元素含有量とは、元素分析装置を分析ツールとして用いた元素定量分析によって測定された材料の全炭素元素の相対含有量を指す。元素分析により決定された炭素元素含有量に対するX線光電子分光法により決定された炭素元素含有量の比率が比較的大きい場合、ナノ複合材料全体の炭素の大部分は材料の表面に集中して炭素膜層を形成し、コア-シェル構造を形成する。
【0056】
いくつかの実施形態では、本発明のナノ複合材料は、1320cm-1付近のDピークの強度に対する1580cm-1付近のGピークの強度の比率が2以上のラマンスペクトルを有する。いくつかの実施形態では、Dピーク強度に対するGピーク強度の比率が3以下である。当業者に知られているように、DピークおよびGピークは共にC原子結晶のラマン特徴的なピークであり、Dピークは炭素原子格子の欠損を表し、GピークはC原子のsp2混成の面内伸縮振動を表す。Dピーク強度に対するGピーク強度の比率が比較的大きいことは、非晶質炭素原子よりも多くの黒鉛状炭素原子がナノ複合材料中に存在することを示すと理解される。すなわち、本発明のナノ複合材料中の炭素元素は、主に黒鉛状炭素の形態で存在する。黒鉛状炭素はより良好な耐酸化性を有し、コアナノ粒子と協働することによって触媒活性を増大させることができ、それによって複合材料全体の性能を向上させることができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、前述のコア-シェル構造は一般に2nm~100nm、好ましくは5nm~80nmの粒径を有する。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明のナノ複合材料のコアはまた、実際の用途の要件に応じて、物質の性能を高めるためにアルカリ金属酸化物を含んでいてもよく、ナノ複合材料は5重量%以下、好ましくは2.5重量%以下の量のアルカリ金属酸化物を含む。
【0059】
本発明の第2の態様は、ニッケル-アルミニウム前駆体を調製する工程と、ニッケル-アルミニウム前駆体に対して熱処理を行い、炭素源ガスとして低級アルカンを用いて蒸着を行う工程と、蒸着後に得られた生成物に対して酸素処理を行い、ナノ複合材料を得る工程とを含む、炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料を調製する方法を提供する。
【0060】
本明細書で提供される揮発性有機化合物を触媒燃焼させる方法のために、いくつかの実施形態では、揮発性有機化合物は、1~4個の炭素原子を有する炭化水素からなる群から選択される1種以上である。例えば、n-ブタン、n-プロパン、エタンおよびメタンが有用である。
【0061】
いくつかの実施形態では、酸化反応は、揮発性有機化合物および標準ガスを含有する混合ガスを触媒と接触させることによる触媒燃焼を含み、標準ガスは酸素を含有し、そのバランスガスは窒素またはアルゴン等の不活性ガスであってもよく、混合ガスは0.01~2体積%の揮発性有機化合物および5~20体積%の酸素を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、酸化反応は、1000~5000mlの反応ガス/(時間・g触媒)の空間速度で行われる。本発明によって可能とされる高い反応空間速度は、当該反応が適用される場合、本発明の触媒が高い活性および大きなデバイス処理能力を有することを示す。
【0063】
いくつかの実施形態では、酸化反応は、300℃~450℃、好ましくは350℃~400℃の温度で行われる。これは、本発明の触媒を用いることにより、触媒酸化反応が低温で良好に実施され得ることを示す。
【0064】
本発明によれば、上述したように、工業的排ガスは揮発性有機化合物(VOC)を含むことが多く、VOCは光化学スモッグの主な原因の一つであり、窒素酸化物、吸入性粒子等とともに重要な大気汚染物質と考えられており、また、有害性、発がん性等が高く、それゆえ、優れた性能を有する触媒酸化材料が救済策として緊急に求められている。
【0065】
本発明は、優れた触媒活性および低温での安定性を示す、VOCを触媒して燃焼させるための新規な触媒を使用する。当該触媒は外側膜層および内側コア層を含むコア-シェル構造を有し、外側膜層は主に黒鉛化炭素膜から構成され、黒鉛化炭素膜は、酸化ニッケルおよびアルミナの表面を被覆する黒鉛化炭素から主に構成される薄膜構造である。本発明者らは予想外にも、黒鉛化炭素膜で被覆された外層を有するコア-シェル構造が、当該膜層中の炭素含有量は比較的低いものの、材料全体の性能、特に触媒性能を大幅に改善することを発見した。具体的には、コア-シェル構造は、一定の閉じ込め効果を生じさせることができ、内側コア中の酸化ニッケルおよびアルミナナノ粒子の凝集および成長を効果的に回避することができ、複合材料の触媒活性が安定であることを確実にすることができるだけでなく、複合材料全体の触媒活性を相乗的に増大させることができ、炭素膜で被覆されていないニッケル-アルミニウム材料と比較して触媒活性を明らかに改善することができる。
【0066】
炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料を調製する方法は、ニッケル-アルミニウム前駆体を調製する工程と、ニッケル-アルミニウム前駆体に対して熱処理を行い、炭素源ガスとして低級アルカンを用いて蒸着を行う工程と、蒸着後に得られた生成物に対して酸素処理を行い、炭素被覆ナノ複合材料を得る工程とを含む。
【0067】
本発明によって提供される調製方法によれば、ニッケル-アルミニウム前駆体が調製され、次いで、黒鉛シェルが蒸着によってニッケル-アルミニウムコアの外表面上を包む。本発明によって調製されるニッケル-アルミニウム前駆体は一般にハイドロタルサイト結晶構造を有し、当業者によって、共沈および/または水熱結晶化等の種々の方法により調製され得る。
【0068】
具体的には、ニッケル-アルミニウム前駆体は以下の方法によって調製され得るが、これに限定されない。
【0069】
本発明の具体的な実施形態によれば、ニッケル-アルミニウム前駆体は、アルカリ溶液と、3価のアルミニウム塩および2価のニッケル塩を含む水溶液とを同時に水中に滴下して沈殿処理し、その結果、3価のアルミニウム塩と2価のニッケル塩とが共沈物を生成する工程と、共沈物を熟成させる工程と、を含む共沈法によって調製される。3価のアルミニウム塩および2価のニッケル塩を含む水溶液の供給量は、目的とする炭素被覆ニッケル-アルミニウム複合材料中のニッケル/アルミニウム含有量に応じて制御することができ、3価のアルミニウム塩および2価のニッケル塩が完全に沈殿するようにアルカリ溶液の添加量を制御する。水へのアルカリ溶液、3価のアルミニウム塩および2価のニッケル塩の同時添加は、初期滴下中のアルカリ溶液、アルミニウム塩およびニッケル塩の分散効果を改善することができる。また、3価のアルミニウム塩および2価のニッケル塩は水に可溶であれば本発明において特に限定されず、アルカリ溶液中の塩基は3価のアルミニウム塩および2価のニッケル塩を沈殿させることができるものであれば特に限定されない。例えば、3価のアルミニウム塩は硝酸アルミニウムおよび/または塩化アルミニウムを含んでいてもよく、2価のニッケル塩は硝酸ニッケルおよび/または塩化ニッケルを含んでいてもよく、3価のアルミニウム塩中のアルミニウムと2価のニッケル塩中のニッケルとのモル比は1:(2~4)であってもよく、前記3価のアルミニウム塩は、0.3~0.6mol/lのモル濃度で使用され得る。アルカリ溶液は水酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムを含む水溶液であってもよく、水酸化ナトリウムアルカリ溶液の濃度は0.2~4mol/Lであり、アルカリ溶液中の炭酸ナトリウムの濃度は0.1~2mol/Lである。水酸化ナトリウムと、3価のアルミニウム塩および2価のニッケル塩中のアルミニウムおよびニッケルの総モルとのモル比は(2~4):1であってもよく、炭酸ナトリウムと、3価のアルミニウム塩および2価のニッケル塩中のアルミニウムおよびニッケルの総モルとのモル比は(0.5~2):1であってもよい。
【0070】
本発明によれば、沈殿処理とは、アルカリ溶液を用いることにより3価のアルミニウム塩と2価のニッケル塩とから沈殿物を生成させるプロセスを指し、アルカリ溶液は滴下、ポンプ圧送または流し込みなどの様々な方法で、3価のアルミニウム塩および2価のニッケル塩と混合することができる。熟成処理とは、沈殿処理により生成した沈殿物をさらに反応させてニッケル-アルミニウムハイドロタルサイト結晶を得ることを指す。沈殿処理および熟成処理の工程は、ニッケル-アルミニウム前駆体が得られる限り本発明において特に限定されない。例えば、前記処理は、沈殿プロセスのスピードを上げるために、室温から100℃未満、好ましくは40℃から100℃未満の温度の条件下で操作され得る。滴下を開始した後、ニッケルイオンおよびアルミニウムイオンは、7を超える、好ましくは8~9のpH値を含む条件下で沈殿するように制御され、そのために、特定の操作は、アルカリ溶液の滴下速度によって水溶液のpH値を8~9に制御すること、および8未満のpH値が所望される場合にはアルカリ溶液の滴下速度を加速すること、ならびに9より高いpH値が所望される場合にはアルカリ溶液の滴下速度を減速することを含み得る。熟成処理は、40℃から100℃未満の温度で2~72時間、好ましくは6~72時間、より好ましくは24~48時間操作され得る。熟成処理により得られたニッケル-アルミニウムハイドロタルサイト結晶をさらに洗浄して中性とし、乾燥させることにより、ニッケル-アルミニウム前駆体を得ることができる。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、昇温熱処理は、保護ガスの存在下でニッケル-アルミニウム前駆体の温度を500~900℃に上昇させることを含み、保護ガスは窒素および/またはアルゴンであり、保護ガスの流量は10~500ml/(分・gニッケル-アルミニウム前駆体)であり、昇温速度は1~5℃/分である。保護ガスはニッケル-アルミニウム前駆体の昇温プロセスにおいてキャリアガスとして使用され、その結果、ニッケル-アルミニウム前駆体は、還元反応および炭素堆積反応の間に空気と接触して危険を引き起こすことが防止され、黒鉛シェルは、黒鉛シェルを用いて被覆した後に空気と接触して高温で酸化されることが防止される。
【0072】
いくつかの実施形態では、黒鉛炭素シェルが蒸着によって材料の表面上に形成される。蒸着は750~900℃、好ましくは780~850℃の温度で5~240分間、好ましくは60~120分間行われる。炭素源ガスは好ましくはメタンまたはエタンであり、10~500ml/(分・gニッケル-アルミニウム前駆体)、好ましくは30~100ml/(分・gニッケル-アルミニウム前駆体)、より好ましくは30~60ml/(分・gニッケル-アルミニウム前駆体)の流量で使用される。
【0073】
本発明によれば、ニッケル-アルミニウム前駆体が得られた後、昇温熱処理を受けたニッケル-アルミニウム前駆体をさらに水素と接触させて還元処理する。還元処理は一方では水酸化物(ハイドロタルサイト)の形態で存在するニッケル-アルミニウム前駆体がさらに脱水され、他方では生成されたニッケル-アルミニウム酸化物が還元されて、活性中心としてニッケル元素を生成する機能を有する。水素還元処理は、500~900℃の温度で120~480分間、30~50ml/(分・gニッケル-アルミニウム前駆体)の水素流量で操作され得る。
【0074】
本発明によれば、ニッケル-アルミニウム前駆体が得られた後、昇温熱処理を受けたニッケル-アルミニウム前駆体をさらに水素と接触させて還元処理する。還元処理は、一方では水酸化物(ハイドロタルサイト)の形態で存在するニッケル-アルミニウム前駆体がさらに脱水されてニッケル‐アルミニウム酸化物を生成し、他方では生成されたニッケル-アルミニウム酸化物が還元されて、活性中心としてニッケル元素を生成する機能を有し、その結果、アルミナと酸化ニッケルとが結合して非晶質構造を形成し、黒鉛シェル中のカルボキシル酸素の割合が低減され得る。水素還元処理は、500~900℃の温度で120~480分間、30~50ml/(分・gニッケル-アルミニウム前駆体)の水素流量で操作され得る。水素還元処理の条件は、500~900℃の温度、120~480分の時間、および30~50ml/(分 gニッケル-アルミニウム前駆体)の水素流を含み得る。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、ニッケル-アルミニウム前駆体とアルカリ金属の塩溶液とを混合して共沈反応させ、次いで得られた沈殿物に対して昇温熱処理を行うことをさらに含み、ニッケルに対する前記アルカリ金属のモル比が0.2以下である。本発明の発明者らは、昇温熱処理に先立ち、上記の少量のアルカリ金属との共沈により、複合材料が、N2O等の酸性酸化物を触媒する触媒として用いられた場合に、さらに改善された触媒活性を示し得ることを見出した。
【0076】
いくつかの実施形態では、蒸着後に得られた生成物に対して酸素処理を行うことをさらに含み、それによって黒鉛化炭素膜の具体的な構造が形成される。
【0077】
いくつかの実施形態では、酸素処理は、蒸着後に得られた生成物に標準ガスを導入して加熱することを含み、標準ガスは、酸素およびバランスガスを含み、10%~40体積%、任意で10%~30体積%の酸素濃度を有する。バランスガスは窒素またはアルゴン等の不活性ガスであってもよいが、本発明はこれに限定されない。
【0078】
いくつかの実施形態では、酸素処理は、200℃~500℃、好ましくは300℃~400℃で0.5h~10h行われ、その後、本発明による炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料を得ることができる。
【0079】
当業者であれば、炭素が高温で酸素と接触すると酸化反応を受けて気体を形成することが理解でき、蒸着後の生成物は、約3%~8%の炭素含有量を有するニッケルアルミニウムコアを被覆する黒鉛化炭素シェルを有するナノ複合材料を形成することが理解されるであろう。生成物を酸素で処理した後、材料中の炭素の大部分は、酸化反応と共に失われる。しかしながら、本発明の発明者らは予想外にも、酸素処理された材料については、炭素の大部分が燃え尽きる一方で、コアのニッケルおよびアルミニウムが酸化されるだけでなく、少量の炭素が残存することを見出した。上述のように、XPSおよびラマンスペクトル検出分析により、炭素の一部は酸化ニッケルおよびアルミナの表面を被覆している黒鉛化炭素膜層であり、この炭素膜層はさらに複数の優れた特性を有することから、ナノ複合材料は、触媒材料、エネルギー貯蔵材料および電磁材料に大きな応用可能性を有することが判明した。
【0080】
本発明の一実施形態によれば、X線回折パターン(XRD)において、酸化ニッケルの特徴的なピークのみが、ニッケル元素の特徴的なピークなしに存在し、これはコアのニッケルが完全に酸化されていることを示し、それゆえ、結果として得られるナノ複合材料のコアは酸化ニッケルおよびアルミナからなる。本発明によれば、ナノ複合材料は、1%以下、0.5%以下、0.1%以下、または0.01%以下のニッケル元素の含有量を有し得る。
【0081】
当業者であれば、炭素が高温で酸素と接触すると酸化反応を受けて気体を形成することが理解でき、蒸着後の生成物は、約3%~8%の炭素含有量を有するニッケルアルミニウムコアを被覆する黒鉛化炭素シェルを有するナノ複合材料を形成することが理解されるであろう。生成物を酸素で処理した後、材料中の炭素の大部分は、酸化反応と共に失われる。しかしながら、本発明の発明者らは予想外にも、酸素処理された材料については、炭素の大部分が燃え尽きる一方で、コアのニッケルおよびアルミニウムが酸化されるだけでなく、少量の炭素が残存することを見出した。上述のように、XPSおよびラマンスペクトル検出分析により、炭素の一部は酸化ニッケルおよびアルミナの表面を被覆している黒鉛化炭素膜層であり、この炭素膜層はさらに複数の優れた特性を有することから、ナノ複合材料は、触媒材料、エネルギー貯蔵材料および電磁材料、特に触媒活性に大きな応用可能性を有することが判明した。ナノ複合材料は、揮発性有機化合物の触媒燃焼に有用であり、優れた触媒活性および安定性を示し、低温でVOCの酸化燃焼を高効率で触媒することができ、VOCの浄化の問題を解決するのに有益であり、大気汚染を低減するのに重要な意味を有する。
【0082】
本発明はまた、触媒を亜酸化窒素と接触させて触媒分解反応させ、窒素および酸素を生成することを含む、亜酸化窒素を分解するための触媒としての上記ナノ複合材料の使用を提供する。具体的には、触媒を設置した反応器に一酸化二窒素を含むガスを導入し、触媒分解反応を実施する。
【0083】
いくつかの実施形態では、触媒分解反応が300℃~400℃、好ましくは350℃~380℃の温度で行われる。触媒分解反応は、1000~3000mlの反応ガス/(時間・g触媒)の空間速度で行われる。本発明によって可能とされる高い反応空間速度は、当該反応が適用される場合、本発明の触媒が高い活性およびデバイスのための大きな処理能力を有することを示す。
【0084】
本発明によれば、上述したように、現在研究および報告されているN2Oの分解用触媒は、主に貴金属触媒、イオン交換モレキュラーシーブ触媒および遷移金属酸化物触媒である。貴金属触媒は低い分解温度を有するが、貴金属触媒は高価であり、大規模な工業生産には適していない。他のモレキュラーシーブ触媒および遷移金属酸化物触媒は450~550℃の高効率分解温度を有し、反応に必要な高温は、工業コストを大幅に増大させる。また、亜酸化窒素の分解により酸素が発生し、触媒が失活しやすくなる。
【0085】
しかしながら、本発明の発明者らは、本発明の炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料を触媒として使用することにより、亜酸化窒素を窒素と酸素とに効果的に分解することができ、反応において優れた触媒活性安定性を示すことを見出した。また、既存の触媒を亜酸化窒素の分解の触媒に用いる場合、工業生産から高濃度で得られる亜酸化窒素を一般に約0.5%~2%に希釈する必要があるが、本発明の触媒は、直接的に分解に用いて、希釈せずに高分解速度を達成することができる。すなわち、体積濃度が30~40%の場合に、亜酸化窒素を99%以上の分解率で触媒分解反応させることができるため、工業コストが大幅に低減され、本方法は工業的利用の見通しが良好である。
【0086】
〔実施例〕
以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、それに限定されるものではない。特に明記しない限り、本発明で使用される全ての試薬は分析的に純粋である。
【0087】
本発明によれば、材料の表面上の元素は、X線光電子スペクトル分析器(XPS)によって検出された。使用したX線光電子スペクトル分析器はAvantage V5.926ソフトウェアを搭載したVG Scientific社製のESCALab220i-XL光電子分析器であり、X線光電子スペクトル分析器の分析および試験条件は、電力330Wの単色化A1KαX線の励起源と、分析試験用の3×10-9mbarのベース真空とを含んでいた。
【0088】
炭素(C)元素の分析は、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)および窒素(N)の4元素を分析するために主に使用されていたElementar Micro Cube元素分析装置で行われ、具体的な操作方法および条件としては、サンプル1~2mgを錫カップに秤量し、サンプルを自動サンプル供給ディスクに入れ、燃焼用ボールバルブを通してサンプルを燃焼管に供給し、燃焼温度を1000℃(サンプル供給中の雰囲気による干渉を避けるため、パージにはヘリウムガスを採用した)とし、次いで還元銅を用いて燃焼ガスを還元して窒素、二酸化炭素、および水を生成した。混合ガスを3つの脱着カラムによって分離し、検出のためにTCD検出器に連続的に供給した。酸素元素は、サンプル中の酸素を熱分解によって炭素触媒の作用下でCOに変換し、次いでTCDを用いてCOを検出することによって分析される。本発明の複合材料は炭素および金属酸化物のみを含むため、炭素元素の含有量から金属酸化物の総含有量を知ることができた。
【0089】
異なる金属酸化物の比率を蛍光X線分光計(XRF)によって測定し、複合材料中の異なる金属酸化物の含有量を、炭素元素の既知の含有量に従って計算した。本発明で使用した蛍光X線スペクトル分析器(XRF)はRigaku 3013蛍光X線分光計であり、分析および試験条件は、100秒の走査時間および空気雰囲気であった。
【0090】
本発明で使用されたラマン検出は、日本、HORIBA社製のレーザ波長325nmのLabRAM HR UV-NIRレーザ共焦点ラマン分光計であった。
【0091】
本発明により使用された高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)は、JEM-2100(HRTEM)(JEOL.)であり、高分解能透過型電子顕微鏡の試験条件は、加速電圧200kVを含んでいた。
【0092】
本発明により使用されたXRD回折装置は、XRD-6000 X線粉末回折装置(日本、島津)であり、XRD試験条件は、Cuターゲット、Kα線(波長λ=0.154nm)、管電圧40kV、管電流200mA、走査速度10°(2θ)/分を含んでいた。
【0093】
実施例1
この実施例は、本発明に係る炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料の調製を例示した。
【0094】
(1)硝酸ニッケル六水和物11.64g(0.04mol)および硝酸アルミニウム九水和物7.5g(0.02mol)を秤量し、脱イオン水60mlを加えて混合塩溶液を調製した。脱イオン水120mlに水酸化ナトリウム5.40g(0.135mol)および無水炭酸ナトリウム5.08g(0.048mol)を加え、混合アルカリ溶液を調製した。2つの混合溶液を、撹拌しながら、脱イオン水100mlを予め充填した三つ口フラスコに60℃の一定温度で同時に滴下し、三つ口フラスコ中の3価のアルミニウム塩および2価のニッケル塩の沈殿物をpH=8.4(すなわち8.3~8.5)に厳密に制御し、滴下後60℃で連続的に撹拌し、30分間、80℃で24時間熟成し、遠心洗浄して中性にし、80℃で4時間乾燥し、次いで炭酸カリウム0.14g(0.001mol)と混合し、脱イオン水150mlを加え、60℃で10時間撹拌し、80℃で10時間乾燥して、アルカリ金属と共沈したニッケル-アルミニウム前駆体を得た。
【0095】
(2)工程(1)で得られたニッケル-アルミニウム前駆体1.0gを秤量し、セラミックボートに入れ、次いで当該セラミックボートを窒素保護雰囲気下、管状炉に入れ、100mL/分の窒素流量、5℃/分の温度プログラムで、500℃に加熱した後、30mL/分の水素を180分間導入し、水素を閉鎖した。温度を連続的に800℃に上げ、その温度で50mL/分のメタンを導入し、60分間反応させた。反応終了後、メタンを閉鎖し、窒素雰囲気中で自然に温度を下げ、蒸着後の炭素シェルで被覆された複合材料を得た。
【0096】
(3)工程(2)で得られた材料をセラミックボートに入れ、次いで当該セラミックボートを管状炉の一定温度領域に入れ、標準ガス(酸素15%およびバランスガス)を100mL/分の流量、2℃/分の温度プログラミングで導入し、350℃に加熱し、温度を8時間保持した後、加熱を停止し、標準ガスの雰囲気中で室温まで冷却し、黒色固体、すなわち本発明のナノ複合材料を得た。
【0097】
材料の特徴付け:
図1は実施例1のナノ複合材料のX線回折(XRD)スペクトルであり、
図1から、ナノ複合材料中のニッケルは、穏やかな酸化処理後に酸化物として存在することが分かった。
図2aおよび
図2bはそれぞれ異なった倍率での実施例1のナノ複合材料の透過型電子顕微鏡写真(TEM)であり、そこから、炭素層膜が材料の表面上に形成されており、粒径が約5~20nmであることが観察された。
【0098】
蛍光X線分光法(XRF)および元素分析は、ナノ複合材料が0.79重量%の炭素、77.14重量%の酸化ニッケル、20.05重量%のアルミナ、および2.02重量%の酸化カリウムを含有することを示した。X線光電子分光法(XPS)分析は、炭素、酸素、ニッケル、アルミニウム、およびカリウムがナノ複合材料の表面層元素として検出され、表面層の炭素元素含有量と全炭素元素含有量との比率は32.7/1であることを示した。ナノ複合材料中の炭素は、主にコア-シェル構造の表面上に存在することが分かった。
図3はナノ複合材料のラマンスペクトルを示し、Gピーク(1580cm
-1)の強度とDピーク(1320cm
-1)の強度との比率は、2.1/1であった。この材料中の炭素の大部分は黒鉛状炭素であることが分かった。
【0099】
実施例2
この実施例は、本発明による炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料の調製を例示した。
【0100】
(1)硝酸ニッケル六水和物11.64g(0.04mol)および硝酸アルミニウム九水和物7.5g(0.02mol)を秤量し、脱イオン水60mlを加えて混合塩溶液を調製した。脱イオン水120mlに水酸化ナトリウム5.40g(0.135mol)および無水炭酸ナトリウム5.08g(0.048mol)を加え、混合アルカリ溶液を調製した。2つの混合溶液を、撹拌しながら、脱イオン水100mlを予め充填した三つ口フラスコ中に60℃の一定温度で同時に滴下し、三つ口フラスコ中の3価のアルミニウム塩および2価のニッケル塩の沈殿物をpH=8(すなわち、7.9~8.1に制御)に厳密に制御し、滴下後60℃で連続的に撹拌し、30分間、80℃で24時間熟成し、遠心洗浄して中性にし、80℃で乾燥し、アルカリ金属と共沈したニッケル-アルミニウム前駆体を得た。
【0101】
(2)工程(1)で得られたニッケル-アルミニウム前駆体1.0gを秤量し、セラミックボートに入れ、次いで当該セラミックボートを窒素保護雰囲気下、管状炉に入れ、100mL/分の窒素流量、5℃/分の温度プログラムで、500℃に加熱した後、30mL/分の水素を240分間導入し、水素を閉鎖した。温度を連続的に800℃に上げ、その温度で50mL/分のメタンを導入し、60分間反応させた。反応終了後、メタンを閉鎖し、窒素雰囲気中で自然に温度を下げ、蒸着後の炭素シェルで被覆された複合材料を得た。
【0102】
(3)工程(2)で得られた材料をセラミックボートに入れ、次いで当該セラミックボートを管状炉の一定温度領域に入れ、標準ガス(酸素15%およびバランスガス)を100mL/分の流量、2℃/分の温度プログラミングで導入し、350℃に加熱し、温度を10時間保持した後、加熱を停止し、標準ガスの雰囲気中で室温まで冷却し、黒色固体、すなわち本発明のナノ複合材料を得た。
【0103】
材料の特徴付け:
図4は実施例2のナノ複合材料のX線回析(XRD)スペクトルであり、
図4から、ナノ複合材料中のニッケルは、穏やかな酸化処理後に酸化物として存在することが分かった。
図5aおよび
図5bはそれぞれ異なった倍率での実施例2のナノ複合材料の透過型電子顕微鏡写真であり、そこから、炭素層膜が物質の表面上に形成されており、粒径が約5~20nmであることが観察された。
【0104】
蛍光X線分光法(XRF)および元素分析は、ナノ複合材料が0.95重量%の炭素、77.14重量%の酸化ニッケル、および21.64重量%のアルミナを含有することを示した。X線光電子分光法(XPS)分析は、炭素、酸素、ニッケル、アルミニウム、およびカリウムがナノ複合材料の表面層元素として検出され、表面層の炭素元素含有量と全炭素元素含有量との比率は43/1であることを示した。ナノ複合材料中の炭素は、主にコア-シェル構造の表面上に存在することが分かった。
図6はナノ複合材料のラマンスペクトルを示し、Gピーク(1580cm
-1)の強度とDピーク(1320cm
-1)の強度との比率は、2.4/1であった。この材料中の炭素の大部分は黒鉛状炭素であることが分かった。
【0105】
比較例1
実施例1の工程(1)で得られたニッケル-アルミニウム前駆体を秤量し、セラミックボートに入れ、次いで当該セラミックボートを窒素保護雰囲気下、管状炉に入れ、100mL/分の窒素流量、5℃/分の温度プログラムで、500℃に加熱した後、30mL/分の水素を180分間導入し、水素を閉鎖し、水素雰囲気下で自然に冷却し、中間生成物を得た。
【0106】
中間生成物をセラミックボートに入れ、次いで当該セラミックボートを管状炉の一定温度領域に入れ、標準ガス(酸素15%およびバランスガス)を流量100mL/分、2℃/分の温度プログラミングで導入し、350℃に加熱し、温度を3時間保持した後、加熱を停止し、標準ガスの雰囲気下で室温まで冷却し、炭素膜被覆なしのニッケル-アルミニウム複合酸化物を得た。
【0107】
蛍光X線分光法(XRF)および元素分析は、材料が76.94重量%の酸化ニッケル、20.87重量%のアルミナ、および2.19重量%の酸化カリウムを含有することを示した。
【0108】
比較例2
実施例1の工程(1)で得られたニッケル-アルミニウム前駆体を秤量し、セラミックボートに入れ、次いで当該セラミックボートを窒素保護雰囲気下、管状炉に入れ、100mL/分の窒素流量、5℃/分の温度プログラムで、500℃に加熱した後、30mL/分の水素を240分間導入し、水素を閉鎖し、水素雰囲気下で自然に冷却し、中間生成物を得た。
【0109】
中間生成物をセラミックボートに入れ、次いで当該セラミックボートを管状炉の一定温度領域に入れ、標準ガス(酸素15%およびバランスガス)を流量100mL/分、2℃/分の温度プログラミングで導入し、350℃に加熱し、温度を3時間保持した後、加熱を停止し、標準ガスの雰囲気下で室温まで冷却し、炭素膜被覆なしのニッケル-アルミニウム複合材料を提供した。
【0110】
蛍光X線分光法(XRF)および元素分析は、材料が77.96重量%の酸化ニッケルおよび22.04重量%のアルミナを含有することを示した。
【0111】
応用例1
この応用例は、触媒として実施例1のナノ複合材料を使用して亜酸化窒素の分解を触媒する反応を例示した。
【0112】
0.5gの触媒を連続流固定床反応器に入れ、反応ガスは38.0%のN2Oおよびバランスガスとしての窒素を含み、反応ガスの流量は15ml/分であった。活性の評価は、300℃~500℃の温度で行い、異なる温度での触媒の触媒分解によるN2Oの転化率を表1に示した。
【0113】
応用例2
実施例2のナノ複合材料を触媒として用いたこと以外は応用例1に従った方法を用いて分解を行い、その結果を表1に示した。
【0114】
比較応用例1
比較例1の材料を触媒として用いたこと以外は、応用例1の方法を用いて分解反応を行い、その結果を表1に示した。
【0115】
比較応用例2
比較例2の材料を触媒として用いたこと以外は、応用例1の方法を用いて分解反応を行い、その結果を表1に示した。
【0116】
【0117】
上記表1から、本発明の方法によって調製された炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料は、被覆されていないニッケル-アルミニウム酸化物と比較してN2Oを分解するための触媒性能が良好であり、これは比較的低温域でN2Oを高効率で分解することができたが、比較例1および2の材料は、99%を超えるN2O転化率を達成し、比較的完全な分解を達成するためには少なくとも430℃または465℃を必要としたことが分かる。また、複合材料にはアルカリ金属酸化物がある程度含まれていたため、触媒性能はある程度向上した。
【0118】
本発明のナノ複合材料は亜酸化窒素の分解に良好な触媒効果を有し、低温でN2Oを高能率で分解および除去できることが分かった。工業生産排ガスN2O、例えばアジピン酸プラント、硝酸プラントの製造プロセスで発生する高濃度のN2O排ガスの処理に使用した場合、当該ナノ複合材料は、反応温度およびエネルギー消費を大幅に低減することができ、それゆえ工業的用途の見通しが良好であった。
【0119】
応用例3
この応用例は、触媒として実施例1のナノ複合材料を使用するVOCの触媒燃焼を例示した。
【0120】
0.2gの触媒を連続流固定床反応器に入れ、反応ガスは0.5%のn-ブタン、8体積%の酸素、およびバランスガスとしての窒素を含み、反応ガスの流量は15ml/分であった。活性の評価は300℃~500℃の温度で行い、異なる温度での触媒の触媒燃焼によるVOCの転化率を表2に示した。
【0121】
応用例4
実施例2のナノ複合材料を触媒として用いたこと以外は、実施例3に係る方法を用いてVOCの触媒燃焼反応を行い、その結果を表2に示した。
【0122】
比較応用例3
比較例1の材料を触媒として用いたこと以外は、応用例3の方法により分解反応を行い、その結果を表2に示した。
【0123】
比較応用例4
比較例2の材料を触媒として用いたこと以外は、応用例3の方法により分解反応を行い、その結果を表2に示した。
【0124】
【0125】
上記表2から分かるように、モデル分子としてn-ブタンを用いて実施した触媒燃焼評価実験では、本発明の方法によって調製された炭素被覆ニッケル-アルミニウムナノ複合材料は、炭素膜で被覆されていないニッケル-アルミニウム酸化物と比較して、VOCを触媒して燃焼させる性能が良好であり、したがって、n-ブタンを効果的に触媒して、比較的低温で二酸化炭素および水を生成するように完全に燃焼させることができ、反応温度を大幅に低下させ、エネルギー消費を低減させ、良好な工業的用途の見通しを有していた。
【0126】
本発明の記載された実施形態は単に例示的なものであり、様々な他の置換、変更、および改変が本発明の範囲内でなされ得ることが、当業者によって留意されるべきである。したがって、本発明は、上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【
図1】実施例1のナノ複合材料のX線回折パターンである。
【
図2a】種々の倍率における実施例1のナノ複合材料のTEM像である。
【
図2b】種々の倍率における実施例1のナノ複合材料のTEM像である。
【
図3】実施例1のナノ複合材料のラマンスペクトルである。
【
図4】実施例2のナノ複合材料のX線回折パターンである。
【
図5a】種々の倍率での実施例2のナノ複合材料のTEM像である。
【
図5b】種々の倍率での実施例2のナノ複合材料のTEM像である。
【
図6】実施例2のナノ複合材料のラマンスペクトルである。