(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】D-キシルロース4-エピメラーゼ、その変異体及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07K 14/195 20060101AFI20241105BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20241105BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241105BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241105BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241105BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241105BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241105BHJP
C12P 19/24 20060101ALI20241105BHJP
C13K 13/00 20060101ALI20241105BHJP
C12N 15/61 20060101ALI20241105BHJP
C12N 9/90 20060101ALI20241105BHJP
C12N 15/10 20060101ALN20241105BHJP
【FI】
C07K14/195
C12N15/31
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P19/24
C13K13/00
C12N15/61 ZNA
C12N9/90
C12N15/10 200Z
(21)【出願番号】P 2022540978
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(86)【国際出願番号】 CN2020133395
(87)【国際公開番号】W WO2021135796
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】201911404948.2
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】524244340
【氏名又は名称】ナショナル センター オブ テクノロジー イノベーション フォー シンセティック バイオロジー カンパニー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】チャン イー-ホン パーシバル
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ウェイ
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】RODIONOVA, Irina A. et al.,“Tagaturonate-fructuronate epimerase UxaE, a novel enzyme in the hexuronate catabolic network in Thermotoga maritima”,Environmental Microbiology,2012年08月23日,Vol. 14,No. 11,pp.2920-2934,DOI: 10.1111/j.1462-2920.2012.02856.x
【文献】D-tagaturonate epimerase UxaE [Thermotoga maritima],NCBI Reference Sequence: WP_004081526.1 [online] 10-JUL-2019,2024年04月11日,<URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/WP_004081526.1?report=genbank&log$=prottop&blast_rank=1&RID=1F0K4ZEY013>
【文献】KIM, Jae-Eung,In Vitro Synthetic Biology Platform and Protein Engineering for Biorefinery,Dissertation for PhD in Biological Systems Engineering,the Virginia Polytechnic Institute and State University,2017年05月05日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00- 15/90
C07K 1/00- 19/00
C12N 1/00- 7/08
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
D-キシルロース4-エピメラーゼ活性を有するポリペプチドであって、
前記ポリペプチドは、配列番号33~122のいずれか1つで示され
るアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、
ポリペプチド。
【請求項2】
前記ポリペプチドは、テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)に由来する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
単離されたポリヌクレオチド、核酸コンストラクト、組み換え発現ベクター、又は組み換え宿主細胞であって、前記ポリヌクレオチド又は前記核酸コンストラクトは、請求項1~2のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、
前記組み換え発現ベクター又は組み換え宿主細胞は、請求項1~2のいずれか一項に記載のポリペプチドを発現する、単離されたポリヌクレオチド、核酸コンストラクト、組み換え発現ベクター、又は組み換え宿主細胞。
【請求項4】
請求項1~2のいずれか一項に記載のポリペプチドを産生する方法であって、
前記方法は以下の工程(a)を含む:
(a)ポリペプチドの産生に資する条件下で細胞又は菌株を培養する工程;
そのうち、前記細胞又は菌株は、前記ポリペプチドを産生し、前記細胞又は菌株は、請求項3に記載の核酸コンストラクト又は組み換え発現ベクターを含み、前記核酸コンストラクト又は前記組み換え発現ベクターは、前記ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む;
方法。
【請求項5】
請求項1~2のいずれか一項に記載のポリペプチドを用いて触媒反応を行うことを含む、D-キシルロースをL-リブロースに変換する方法。
【請求項6】
L-ペントースを調製する方法であって、前記方法は、以下の工程:
(a)D-キシルロース4-エピメラーゼを用いて、D-キシルロースをL-リブロースに変換すること、
を含み;
ここで、前記D-キシルロース4-エピメラーゼは、請求項1~2のいずれか一項に記載のD-キシルロース4-エピメラーゼ活性を有するポリペプチドである、方法。
【請求項7】
前記方法は、さらに以下の工程:
(b)D-キシロースイソメラーゼを用いて、D-キシロースをD-キシルロースに変換すること、
を含む;
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、さらに、
(i)L-アラビノースイソメラーゼを用いて、L-リブロースをL-アラビノースに変換することを含み、前記L-ペントースはL-アラビノースである;
(ii)L-リボースイソメラーゼ又はホスホマンノースイソメラーゼ又はそれらの組み合わせを用いて、L-リブロースをL-リボースに変換することを含み、前記L-ペントースはL-リボースである;
(iii)L-リブロース3-エピメラーゼを用いて、L-リブロースをL-キシルロースに変換することを含み、前記L-ペントースはL-キシルロースである;
(iv)L-リブロース3-エピメラーゼを用いて、L-リブロースをL-キシルロースに変換し、L-フコースイソメラーゼ又はD-アラビノースイソメラーゼ又はL-ラムノースイソメラーゼを用いて、L-キシルロースをL-キシロースに変換することを含み、前記L-ペントースはL-キシロースである;及び/又は
(v)L-リブロース3-エピメラーゼを用いて、L-リブロースをL-キシルロースに変換し、L-ラムノースイソメラーゼを用いてL-キシルロースをL-リキソースに変換することを含み、前記L-ペントースはL-リキソースである、
請求項6~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法の反応系には、さらに酵素反応液を含む、請求項6~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酵素反応液が金属イオンを含み、前記金属イオンは、Co
2+、Zn
2+、Mg
2+、Mn
2+、Ca
2+、Ni
2+、Cu
2+、Fe
2+、Sr
2+、Ba
2+、Cd
2+、Pb
2+、Fe
3+、Al
3+、Bi
3+、Ag
+、Li
+から選択される1つ以上であってもよい、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記反応は、好気性、微好気性又は嫌気性条件下で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記反応は、嫌気性、温度が45~55℃、pHが8.0、金属イオンがCo
2+又はMg
2+又はMn
2+又はそれらの組み合わせの条件下で行う、請求項10~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記反応は、インビトロ触媒反応又は全細胞生体触媒反応を含み;
前記反応は、インビトロ触媒反応であり、前記インビトロ触媒反応は、段階的又は同時に行うことができ;
前記インビトロ触媒反応は、段階的に行う場合、1つの反応容器又は直列の複数の反応容器において実施され;
前記反応容器は、バッチ供給バイオリアクター、固定化酵素を含む充填床バイオリアクター、酵素又は細胞リサイクルバイオリアクター、膜分離を含むバイオリアクター、及び連続供給バイオリアクターのうちの1つ又は複数から選択されるものであり;
前記インビトロ触媒反応における酵素は、遊離酵素、前記酵素を含む細胞溶解物、前記酵素を含む全細胞、固定化酵素の1つ又は複数の形態で存在する、
請求項6~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
L-ペントースの調製におけるポリペプチドの使用であって、前記ポリペプチドは、請求項1~2のいずれか一項に記載のポリペプチドから選択され;
前記L-ペントースは、L-アラビノース、L-リボース、L-リブロース、L-キシルロース、L-キシロース及びL-リキソースのうちの1つ又は複数から選択される、使用。
【請求項15】
D-キシルロース4-エピメラーゼ活性を有する酵素としてのポリペプチドの使用であって、前記ポリペプチドは、請求項1~2のいずれか一項に記載のポリペプチドから選択される、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、生物触媒および合成生物学の分野に関する。本開示は、D-キシルロースとL-リブロースとの間の相互変換を可逆的に触媒することができる、D-キシルロース4-エピメラーゼ(Xu4E)と名付けられた新規ポリペプチド(酵素)及びそれらの変異体に関する。さらに、複数の人工酵素経路を構築することにより、自然界で最も豊富なペントースであるD-キシロースからL-ペントース(即ち、L-アラビノース、L-リボース、L-リブロース、L-キシルロース、L-キシロース及びL-リキソース)を生成するための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
ペントース(又は五炭単糖)は、化学式がC5H10O5で、5個の炭素原子を持つ単糖である。それらは、アルドペントースとケトペントースの2種類に分けられる。8種類のアルドペントースと4種類のケトペントースがあり、それぞれのケトペントースは2種類のアルドペントースに対応している。12種類のペントースもL型糖とD型糖に分けられ、それぞれでは4種類のアルドペントースと2種類のケトペントースがある。D-キシロース、D-リボース、L-アラビノースは天然糖であるが、他のペントースは、自然界にごく少量しか存在しない希少糖である。D-キシロースは、自然界で最も豊富なペントースである。L-ペントースは、特に多くの重要な医薬品前駆体として、医療及び健康用途に大きな可能性があるため、多くの注目を集めている。
【0003】
自然界で最も豊富なペントースであるD-キシロースは、リグノセルロースから分離することができ、キシロース(wood sugar)と呼ばれている。D-キシロースはヘミセルロースキシランの主成分です。現在、D-キシロースは主にトウモロコシ穂軸とビートパルプの酸性又はアルカリ性加水分解物から分離されており、ほとんどのキシロースはゼロカロリーの甘味料であるキシリトールの変換に使用されている。
【0004】
L-アラビノースは、米国食品医薬品局(FDA)が承認した、ショ糖の50%の甘味を持つゼロカロリーの天然甘味料である(Antila et al.1997、Boku et al.2001)。さらに重要なのは、スクロースに3~4%のL-アラビノースを加えると、スクラーゼの活性を阻害し、スクロースの加水分解を防ぎ、スクロースの吸収を防ぐことができるため、カロリー摂取量によると、L-アラビノースはスクロース中和剤と見なされる(Morimoto et al.2001 )。同時に、腸内の未利用の糖は、有益なバクテリアの成長を促進し、それによって大腸での有害な微生物の成長を阻害するプレバイオティクスである。L-アラビノースは、出発物質として合成薬の製造に使用され、また分子生物学実験や工業発酵で広く使用されている生化学製品でもある。
【0005】
L-アラビノースは、高等植物のヘミセルロースにアラビナン、アラビノキシラン、アラビノガラクタンの形で存在している。日本では、L-アラビノースは、トウモロコシ繊維(Boku et al.2001)、アラビアガム、サトウダイコンパルプ(Antila et al.1997)などのヘミセルロースをアルカリ抽出した後、酸加水分解することによって得られた。中国では、L-アラビノースはトウモロコシの穂軸の酸加水分解によるD-キシロースの生成の副産物である。L-アラビノースの高価格と限られた供給は、その幅広い用途を大きく制限する。
【0006】
L-リボースは自然界では広く見られていない。これは、ヒト免疫不全ウイルス、肝炎ウイルス、及びサイトメガロウイルスに対する抗ウイルス薬などの製造に使用される多くの新規ヌクレオチド類似体の前駆体です(Kim et al.2014)。L-リボースは、グルコースデヒドロゲナーゼの競合的阻害剤としても機能する(Beerens et al.2012)。以前は、L-リボースは、中間体としてリビトールを使用した2段階の微生物変換によって生成されていた。現在では、L-リボースの生合成は、L-アラビノースイソメラーゼ(L-AI)、及びL-リボースイソメラーゼ(L-RI、EC5.3.1.B3)又はマンノース6-ホスホイソメラーゼ(MPI、EC5.3.1.8)によって、L-リブロースをL-リボースに変換するという2段階の酵素触媒反応ことで実施している(Kim et al.2014)。
【0007】
L-リブロースは、L-リボースとL-アラビノースを合成するための出発物質である。その5’-リン酸生成物であるL-リブロース5-リン酸は、ペントースリン酸経路の重要な代謝物である。
【0008】
L-キシルロースはα-グルコシダーゼの阻害剤として作用し、血糖値を下げるために使用できる。L-キシロースは、抗ウイルス薬の製造用のL-リボース、及び肝炎又は肝硬変の指標としてのL-キシロースなど、他の重要な希少糖の製造にも使用できる。
【0009】
動物用抗生物質アビラマイシンAの成分であるL-リキトースは、潜在的なL-フコシダーゼ阻害剤である。
【0010】
L-キシロースは、抗B型肝炎ウイルス(HBV)用ヌクレオシドの合成、及びL-リボフラノースとその誘導体の合成の出発物質である。
【0011】
【0012】
エピメラーゼは、複数の不斉中心を含む基質の不斉炭素原子のコンフォメーション変化を触媒するイソメラーゼの一種である。五炭単糖4-エピメラーゼは長い間検索されていたが、報告されたことはなかった(Beerens et al.2017)。L-リブロース5-リン酸4-エピメラーゼ(EC5.1.3.4)やUDP-D-キシロース4-エピメラーゼ(EC5.1 .3.5)などの自然界の4-エピメラーゼは、そのペントース基質がリン酸又はウリジン二リン酸(UDP)基を持っていることを必要とする。
【0013】
Ken Izumori教授は、希少糖生合成の完全な戦略を提案した(本開示の
図1で示される)。D-キシロースから出発し、L-リブロース3-エピメラーゼ(又はペントース3-エピメラーゼ)、アルドースイソメラーゼ、アルドースレダクターゼ及びポリオールデヒドロゲナーゼを使用することにより、他の11種類のペントースを生成することができる。従来の技術では、D-キシロースを原料とし、6種類のL-ペントースを製造する場合、キシリトール又はリビトールの製造工程を経る必要があるため、補酵素NAD(P)の必要な2種類のオキシドレダクターゼ、即ちアルドースレダクターゼ及びポリオールデヒドロゲナーゼを使用しなければならない。高価で不安定な補酵素(NAD(P))の使用や、可逆平衡反応及び関連中間体の生成物の複雑な分離が必要があるため、L-ペントースの高い製造コストをもたらす。
【発明の概要】
【0014】
発明の概要
発明が解決しようとする課題
既存のL-ペントース製造技術には高コストで複雑な製造工程の欠陥があるため、L-ペントースの新しい製造方法を提供する必要がある。
【0015】
一実施形態において、本開示は、D-キシルロース及びL-リブロースの相互変換を触媒する化学反応能力を有する野生型ポリペプチド(酵素)及びその変異体を提供する(
図2)。本公開における野生型D-キシルロース4-エピメラーゼ(D-xylulose
4-epimerase、Xu4E)及びその変異体は、天然で最も豊富なペントース、即ちD-キシロースを原料として利用してL-ペントースを製造することができる。一実施形態において、例示的なL-ペントースは、6種類のL体五炭単糖、即ち、L-アラビノース、L-リボース、L-リブロース、L-キシルロース、L-キシロース及びL-リキソースから選択される。
【0016】
別の実施形態において、本開示は、前述のXu4E変異体を調製するための方法を提供し、これは、分子生物学及び遺伝子工学的方法を介してXu4E変異体を調製する。
【0017】
別の実施形態において、本開示は、前述の野生型Xu4E及びその変異体の使用を提供し、それがL-ペントースを生成するために使用することができる。
【0018】
別の実施形態において、本開示は、L-ペントースを製造するための新しい方法を提供し、この方法は、原料としてD-キシロース又はD-キシルロースを使用してL-ペントースを製造する方法を含む。
【0019】
別の実施形態において、本開示は、L-ペントースを生成するための新規な方法を提供し、この方法は、Xu4E又はその変異体を使用してD-キシルロースをL-リブロースに変換するステップを含む。
【0020】
特定の実施形態において、本開示は、L-ペントースを製造するための前述の方法をさらに最適化するための方法を提供する。
【0021】
課題を解決するための手段
前述の課題を解決するための本開示の技術的な構成は以下の通りである。
【0022】
(1)D-キシルロース4-エピメラーゼ活性を有し、(a)~(d)からなる群のいずれか1つから選択されるポリペプチドであって:
【0023】
(a)配列番号2-32のいずれか1つで示される配列に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%の配列同一性を有する配列によってコードされるポリペプチド;
【0024】
(b)非常に高いストリンジェンシー条件下で(i)又は(ii)で示されるポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド:
【0025】
(i)配列番号2-32のいずれか1つで示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド;
【0026】
(ii)(i)の相補的ポリヌクレオチド全体;
【0027】
(c)配列番号2-32のいずれか一つで示されるポリペプチドの変異体であって、前記変異体は、1つ又は複数の位置での1つ又は複数のアミノ酸の置換、複製、欠失、又は付加を含み、前記ポリペプチドは依然としてD-キシルロース4-エピメラーゼ活性を有する、ポリペプチド;及び
【0028】
(d)(a)、(b)、(c)で示されるポリペプチドのフラグメントであり、そのフラグメントはD-キシルロース4-エピメラーゼ活性を持っている、前記ポリペプチド。
【0029】
(2)ポリペプチドは、変異体であり、前記ポリペプチドと配列番号2-32のいずれか1つで示されるポリペプチドと比較して、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する、(1)に記載のポリペプチド。
【0030】
(3)ポリペプチドは、配列番号2-32のいずれか1つで示されるポリペプチドの変異体であり、前記変異体は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個の部位にアミノ酸の変異を含み、前記ポリペプチドは依然としてD-キシルロース4-エピメラーゼ活性を持っている、(1)~(2)のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0031】
(4)前記ポリペプチドは、以下で示されるポリペプチドである、(1)~(3)のいずれか一項に記載のポリペプチドであって:
【0032】
(a)配列番号2で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、102、125、131、161、163、266、267、297、306、318、337、394、402及び403からなる群より選択される1つ以上である;
【0033】
(b)配列番号3で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、102、125、131、161、163、266、267、297、306、318、337、394、402及び403からなる群より選択される1つ以上である;
【0034】
(c)配列番号4で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、102、125、131、161、163、266、267、297、306、318、337、394、402及び403からなる群より選択される1つ以上である;
【0035】
(d)配列番号5で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、105、128、134、164、166、270、271、301、310、322、341、398、406、407からなる群より選択される1つ以上である;
【0036】
(e)配列番号6で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、105、128、134、164、166、269、270、300、309、321、340、397、405、406からなる群より選択される1つ以上である;
【0037】
(f)配列番号7で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、117、140、146、176、178、285、286、316、325、337、355、412、420、421からなる群より選択される1つ以上である;
【0038】
(g)配列番号8で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、125、148、154、184、186、293、294、324、333、345、363、420、428、429からなる群より選択される1つ以上である;
【0039】
(h)配列番号9で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、124、147、153、183、185、297、298、328、337、349、368、425、433、434からなる群より選択される1つ以上である;
【0040】
(i)配列番号10で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、108、131、137、167、169、276、277、307、316、328、346、403、411、412からなる群より選択される1つ以上である;
【0041】
(j)配列番号11で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、115、138、144、174、176、280、281、311、320、332、351、408、416、417からなる群より選択される1つ以上である;
【0042】
(k)配列番号12で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、107、130、136、166、168、272、273、303、312、324、343、400、408、409からなる群より選択される1つ以上である;
【0043】
(l)配列番号13で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、109、132、138、168、170、275、276、306、315、327、346、403、411、412からなる群より選択される1つ以上である;
【0044】
(m)配列番号14で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、103、126、132、162、164、267、268、298、307、319、338、395、403、404からなる群より選択される1つ以上である;
【0045】
(n)配列番号15で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、105、128、134、164、166、271、272、302、311、323、342、399、407、408からなる群より選択される1つ以上である;
【0046】
(o)配列番号16で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、64、88、94、123、125、236、237、267、274、286、373、381、382からなる群より選択される1つ以上である;
【0047】
(p)配列番号17で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、110、133、139、169、171、271、272、302、311、323、342、399、407、408からなる群より選択される1つ以上である;
【0048】
(q)配列番号18で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、102、125、131、161、163、266、267、297、306、318、337、394、402、403からなる群より選択される1つ以上である;
【0049】
(r)配列番号19で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、121、144、150、180、182、289、290、320、329、341、359、416、424、425からなる群より選択される1つ以上である;
【0050】
(s)配列番号20で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、107、130、136、166、168、273、274、304、313、325、344、401、409、410からなる群より選択される1つ以上である;
【0051】
(t)配列番号21で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、21、48、54、84、86、182、183、213、222、234、260、324、332、333からなる群より選択される1つ以上である;
【0052】
(u)配列番号22で示される配列と比較して、前記ポリペプチドのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸は、以下の部位に対応する位置に変異を含み、ここで、前記部位は、30、55、61、91、93、202、203、233、242、254、273、330、338、339からなる群より選択される1つ以上である、前記ポリペプチド。
【0053】
(5)前記ポリペプチドは、配列番号2に対応して以下の変異を有するポリペプチドである、(1)~(4)のいずれか一項に記載のポリペプチドであって:
(a)102番目での変異、
(b)125番目での変異、
(c)131番目での変異、
(d)161番目での変異、
(e)163番目での変異、
(f)266番目での変異、
(g)267番目での変異、
(h)297番目での変異、
(i)306番目での変異、
(j)318番目での変異、
(k)337番目での変異、
(l)394番目での変異、
(m)402番目での変異、
(n)403番目での変異
(o)267及び297番目での組み合わせ変異、
(p)306及び403番目での組み合わせ変異、
(q)125及び297番目での組み合わせ変異、
(r)163、267、403番目での組み合わせ変異、
(s)125、267及び297番目での組み合わせ変異、
(t)163、267、297及び403番目での組み合わせ変異、
(u)125、163、267及び297番目での組み合わせ変異、
(v)125、163、267、297及び403番目での組み合わせ変異、
(w)125、163、267、297、402及び403番目での組み合わせ変異、
(x)163、267、297、306、402及び403番目での組み合わせ変異、
(y)125、163、267、297、306、402及び403番目での組み合わせ変異、
(z)125、131、163、267、297、306、402及び403番目での組み合わせ変異、
(aa)
(bb)125、163、267、297、306、318、402及び403番目での組み合わせ変異、
(cc)125、131、163、267、297、306、318、402及び403番目での組み合わせ変異、前記ポリペプチド。
【0054】
(6)前記ポリペプチドは、配列番号2に対応して以下の部位のいずれか1つで変異したポリペプチドである、(5)に記載のポリペプチドであって:
(a)配列番号2の102番目に対応するアミノ酸がグリシン(G)からロイシン(L)に変異する、
(b)配列番号2の125番目に対応するアミノ酸がセリン(S)からアスパラギン酸(D)、システイン(C)、チロシン(Y)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、スレオニン(T)又はアスパラギン(N)に変異する、
(c)配列番号2の131番目に対応するアミノ酸がアルギニン(R)からアスパラギン酸(D)、スレオニン(T)、グルタミン酸(E)又はセリン(S)に変異する、
(d)配列番号2の161番目に対応するアミノ酸がアスパラギン酸(D)からアラニン(A)に変異する、
(e)配列番号2の163番目に対応するアミノ酸がバリン(V)からリジン(K)、アルギニン(R)、セリン(S)、イソロイシン(I)又はメチオニン(M)に変異する、
(f)配列番号2の266番目に対応するアミノ酸がグルタミン酸(E)からアラニン(A)に変異する、
(g)配列番号2の267番目に対応するアミノ酸がバリン(V)からロイシン(L)、メチオニン(M)又はイソロイシン(I)に変異する、
(h)配列番号2の297番目に対応するアミノ酸がアスパラギン(N)からフェニルアラニン(F)、チロシン(Y)又はリジン(K)に変異する、
(i)配列番号2の306番目に対応するアミノ酸がトリプトファン(W)からメチオニン(M)、セリン(S)又はスレオニン(T)に変異する、
(j)配列番号2の318番目に対応するアミノ酸がグルタミン(Q)からリジン(K)に変異する、
(k)配列番号2の337番目に対応するアミノ酸がリジン(K)からアスパラギン酸(D)に変異する、
(l)配列番号2の394番目に対応するアミノ酸がアスパラギン酸(D)からメチオニン(M)に変異する、
(m)配列番号2の402番目に対応するアミノ酸がセリン(S)からバリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)又はチロシン(Y)に変異する、
(n)配列番号2の403番目に対応するアミノ酸がチロシン(Y)からトリプトファン(W)、スレオニン(T)、イソロイシン(I)又はフェニルアラニン(F)に変異する。
【0055】
(7)前記ポリペプチドは、テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)、Thermotoga sp、サーモトガカルディフォンティス(Thermotoga caldifontis)、シュードサーモトガ・レティンガエ(Pseudothermotoga lettingae)、ハラナエロビウムコンゴレンス(Halanaerobium congolense)、サーモセディミバクターリトリペルエンシス(Thermosediminibacter litoriperuensis)、Rhodothermus marinus、Gracilibacillus timonensis、Thermotogae bacterium、Thermotogae bacterium、Candidatus Acetothermia bacterium、Pseudothermotoga thermarum、Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum、Thermofilum adornatus、Thermoanaerobacter italicus、Thermotoga naphthophila、Thermoclostridium stercorarium、Dictyoglomus thermophilum、Spirochaeta thermophila、Singulisphaera acidiphila、Thermotoga caldifontis、Pseudothermotoga lettingae、枯草菌(Bacillus subtilis)、Geobacillus zalihae、Geobacillus stearothermophilus,Parageobacillus thermoglucosidasius、Thermoanaero-bacterium thermosaccharolyticum又は大腸菌(Escherichia coli)に由来する、(1)~(6)のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0056】
(8)前記ポリペプチドは、配列番号2-32で示されるポリペプチドのN末端又は中部又はC末端に1個又は1個以上のアミノ酸残基が欠失したものを含む、(1)に記載のポリペプチド。
【0057】
(9)前記ポリペプチドは、以下からなる群から選択される:
(i)配列番号2で示されるポリペプチドのN末端に対応する位置から、1~100個のアミノ酸、好ましくは1~90個のアミノ酸、より好ましくは1~86個、より好ましくは1~50個、より好ましくは1~30個、最も好ましくは1~10個のアミノ酸の欠失によって形成され、且つD-キシルロースのL-リブロースへの変換を触媒する活性を有する、又は
(ii)配列番号2で示されるポリペプチドの196-236番目に対応するアミノ酸において、1~41個のアミノ酸、好ましくは1~30個、より好ましくは1~20個、最も好ましくは1~10個のアミノ酸の欠失によって形成され、且つD-キシルロースのL-リブロースへの変換を触媒する活性を有する、(8)に記載のポリペプチド。
【0058】
(10)前記ポリペプチドは、以下からなる群から選択される:
(i)配列番号2で示されるポリペプチドの1~86番目に対応するアミノ酸が欠失しており、且つD-キシルロースのL-リブロースへの変換を触媒する活性を有する、
(ii)配列番号2で示されるポリペプチドの196-236番目に対応するアミノ酸が欠失しており、且つD-キシルロースのL-リブロースへの変換を触媒する活性を有する、又は
(iii)配列番号2で示されるポリペプチドの1~86番目のアミノ酸及び196-236番目に対応するアミノ酸が欠失しており、且つD-キシルロースのL-リブロースへの変換を触媒する活性を有する、(8)~(9)のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0059】
(11)前記ポリペプチドは、配列番号33~122で示される配列に対して少なくとも96%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる;任意に、前記ポリペプチドは、配列番号33-122によってコードされるポリペプチドのいずれかに対して少なくとも98.3%、少なくとも98.5%、少なくとも98.7%、少なくとも98.9%、少なくとも99.1%、少なくとも99.3%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、(1)~(10)のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0060】
(12)前記ポリペプチドと配列番号2で示されるポリペプチドと比較して、D-キシルロース4-エピメラーゼ活性が向上している、(1)~(11)のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0061】
(13)前記ポリペプチドは、配列番号33-122で示される配列を含む配列によってコードされる、或いは、前記ポリペプチドは、配列番号33-122で示される配列によってコードされるポリペプチドである、(1)~(12)のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0062】
(14)ポリヌクレオチドは、(1)~(13)のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【0063】
(15)配列番号2-32のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列には、少なくとも1個の変異を含む;好ましく、前記ポリヌクレオチド配列は、配列番号33-122のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードする、(14)に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【0064】
(16)発現宿主におけるポリペプチドの産生を制御する制御配列の1個又は複数個に作動可能に連結される、(14)又は(15)に記載のポリヌクレオチドを含む、核酸コンストラクト。
【0065】
(17)(16)に記載の核酸コンストラクトを含む組み換え発現ベクター。
【0066】
(18)(16)に記載の核酸コンストラクト又は(17)に記載の組み換え発現ベクターを含む組み換え宿主細胞。
【0067】
(19)(1)~(13)のいずれか一項に記載のポリペプチドを産生する方法であって、
前記方法は以下の工程(a)を含む:
(a)ポリペプチドの産生に資する条件下で細胞又は菌株を培養する工程;
そのうち、前記細胞又は菌株は、前記ポリペプチドを産生し、前記細胞又は菌株は、(16)に記載の核酸コンストラクト又は(17)に記載の組み換え発現ベクターを含み、前記核酸コンストラクト又は前記組み換え発現ベクターは前記ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む;
任意に、さらに以下の工程(b)を含む:
(b)前記ポリペプチドを精製又は回収する、
前記方法。
【0068】
(20)(1)~(13)のいずれか一項に記載のポリペプチドを用いて触媒反応を行うことを含む、D-キシルロースをL-リブロースに変換する方法。
【0069】
(21)前記ポリペプチドは配列番号2-122のいずれか一つで示されるアミノ酸配列を含む配列によってコードされる、或いは、前記ポリペプチドは配列番号2-122のいずれか1つで示される配列によってコードされるポリペプチドである、(20)に記載の方法。
【0070】
(22)以下の工程を含む、L-ペントースを調製する方法であって、
(a)D-キシルロース4-エピメラーゼを用いて、D-キシルロースをL-リブロースに変換する、
任意に、さらに以下の工程を含む:
(b)D-キシロースイソメラーゼを用いて、D-キシロースをD-キシルロースに変換する、前記方法。
【0071】
(23)前記方法は、さらにL-アラビノースイソメラーゼを用いて、L-リブロースをL-アラビノースに変換することを含み、前記L-ペントースはL-アラビノースである、(22)に記載の方法。
【0072】
(24)前記方法は、さらにL-リボースイソメラーゼ又はマンノース6-ホスホイソメラーゼ又はそれらの組み合わせを用いて、L-リブロースをL-リボースに変換することを含み、前記L-ペントースはL-リボースである、(22)に記載の方法。
【0073】
(25)前記方法は、さらにL-リブロース3-エピメラーゼを用いて、L-リブロースをL-キシルロースに変換することを含み、前記L-ペントースはL-キシルロースである、(22)に記載の方法。
【0074】
(26)前記方法は、さらにL-リブロース3-エピメラーゼを用いて、L-リブロースをL-キシルロースに変換し、L-フコースイソメラーゼ又はD-アラビノースイソメラーゼ又はL-ラムノースイソメラーゼを用いて、L-キシルロース又はL-キシルロースとL-リブロースとの組合せをL-キシロースに変換することを含み、前記L-ペントースはL-キシロースである、(22)に記載の方法。
【0075】
(27)前記方法は、さらにL-リブロース3-エピメラーゼを用いて、L-リブロースをL-キシルロースに変換し、L-ラムノースイソメラーゼを用いてL-キシルロースをL-キシロースに変換することを含み、前記L-ペントースはL-リキソースである、(22)に記載の方法。
【0076】
(28)前記D-キシルロース4-エピメラーゼは(1)~(13)のいずれか一項に記載のポリペプチドから選択される;好ましくは、前記D-キシルロース4-エピメラーゼは配列番号2-122のいずれか一つで示されるアミノ酸配列を含む配列によってコードされる、或いは、前記酵素は、配列番号2-122のいずれか1つで示される配列によってコードされる酵素である、(22)~(27)のいずれか一項に記載の方法。
【0077】
(29)前記方法は、さらに前記L-ペントースを精製及び/又は分離する工程を含む、(22)~(28)のいずれか一項に記載の方法。
【0078】
(30)前記分離工程は、擬似移動床(SMB)を使用して単離する工程を含む、(29)に記載の方法。
【0079】
(31)前記方法の反応系には、さらに酵素反応液を含み、好ましくは、前記酵素反応液に金属イオンを含み、より好ましくは、前記金属イオンは、Co2+、Zn2+、Mg2+、Mn2+、Ca2+、Ni2+、Cu2+、Fe2+、Sr2+、Ba2+、Cd2+、Pb2+、Fe3+、Al3+、Bi3+、Ag +、Li +から選択される1つ以上であってもよい、(22)~(30)のいずれか一項に記載の方法。
【0080】
(32)前記反応は、好気性、微好気性又は嫌気性条件下で行う、(22)~(31)のいずれか一項に記載の方法。
【0081】
(33)前記反応は、30℃~90℃温度下で行い、好ましくは、前記反応は、40℃~80℃温度下で行う、(22)~(32)のいずれか一項に記載の方法。
【0082】
(34)前記反応は、pHが3.0から11.0の範囲内で行い、好ましくは、前記反応は、pHが4.0から10.0の範囲内で行う、(22)~(33)のいずれか一項に記載の方法。
【0083】
(35)前記反応は、嫌気性、温度が45~55℃、pHが8.0、金属イオンがCo2+又はMg2+又はMn2+又はそれらの組み合わせの条件下で行う、(22)~(34)のいずれか一項に記載の方法。
【0084】
(36)前記反応は、インビトロ触媒反応又は全細胞生体触媒反応を含む、(22)~(35)のいずれか一項に記載の方法。
【0085】
(37)前記反応は、インビトロ触媒反応であり、前記インビトロ触媒反応は、段階的又は同時に行うことができる、(36)に記載の方法。
【0086】
(38)前記インビトロ触媒反応は、段階的に行う場合、1つの反応容器又は直列の複数の反応容器において実施される、(37)に記載の方法。
【0087】
(39)前記反応容器は、バッチ供給バイオリアクター、固定化酵素を含む充填床バイオリアクター、酵素又は細胞リサイクルバイオリアクター、膜分離を含むバイオリアクター、及び連続供給バイオリアクターのうちの1つ又は複数から選択されるものである、(38)に記載の方法。
【0088】
(40)前記インビトロ触媒反応における酵素は、遊離酵素、前記酵素を含む細胞溶解物、前記酵素を含む全細胞、固定化酵素の1つ又は複数の形態で存在する、(22)~(39)のいずれか一項に記載の方法。
【0089】
(41)前記全細胞生体触媒反応の反応様式は、細胞工場を使用して反応を行うことであり、前記細胞は(16)記載の核酸コンストラクト又は(17)に記載の組み換え発現ベクターを含む、(36)に記載の方法。
【0090】
(42)L-ペントースの調製におけるポリペプチドの使用において、前記ポリペプチドは、(1)~(13)のいずれか一項に記載のポリペプチドから選択される、前記使用。
【0091】
(43)前記L-ペントースはL-アラビノース、L-リボース、L-リブロース、L-キシルロース、L-キシロース及びL-リキソースのうちの1つ又は複数から選択される、(42)に記載の使用。
【0092】
(44)D-キシルロース4-エピメラーゼ活性を有する酵素としてのポリペプチドの使用において、前記ポリペプチドは、(1)~(13)のいずれか一項に記載のポリペプチドから選択される、前記使用。
【0093】
発明の効果
一実施形態において、本公開は、D-キシルロースとL-リブロースとの相互変換の化学反応を触媒する能力を有する野生型D-キシルロース4-エピメラーゼ(Xu4E)及びその変異体を発見した。
【0094】
特定の実施形態において、本公開によって提供されるXu4E変異体は、野生型Xu4Eと比較して、改善された特性、例えば、改善された物理的及び/又は化学的特性を有する。例示的に、特定の実施形態において、Xu4E変異体は、野生型Xu4Eと比較して、酵素活性が増加した。別の特定の実施形態において、Xu4E変異体は、野生型Xu4Eと比較して、反応速率が増加した。別の特定の実施形態において、Xu4E変異体は、野生型Xu4Eと比較して、Kmが減少した。
【0095】
別の実施形態において、本公開は、従来技術の従来の製造方法と比較して、より単純な製造プロセスを有し、L-ペントースの製造コストを低減する、L-ペントースを調製するための新しい方法を発見した。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【
図1】
図1は、従来技術であるすべてのペントース同士の相互変換に関するIzumoring図を示している。
【
図2】
図2は、D-キシルロース4-エピメラーゼ(Xu4E)によって触媒されるD-キシルロース及びL-リブロースの相互変換に関する図を示している。
【
図3】
図3は、Xu4EによるD-キシロースを6種類のL-ペントースに変換するための人工多酵素経路を示している。ここで、D-XI:D-キシロースイソメラーゼ(EC5.3.1.5)、L-AI:L-アラビノースイソメラーゼ(EC5.3.1.4)、L-RI:L-リボースイソメラーゼ(EC5.3.1.B3)、MPI:ホスホマンノースイソメラーゼ(EC5.3.1.8)、D-LI:D-リボースイソメラーゼ(EC5.3.1.15)、Ru3E:L-リブロース3-エピメラーゼ(EC5.1.3.31)、L-Ful:L-フコースイソメラーゼ(EC5.3.1.25)、D-AI:D-アラビノースイソメラーゼ(EC5.3.1.3)、及びL-RaI:L-ラムノースイソメラーゼ(EC5.3.1.14)。
【
図4】
図4は、4種類の希少糖のHPLCクロマトグラフィーによる単離結果を示している。ここで、(a)は、Bio-Rad Aminex HPX-87H水素イオン交換カラムが使用された場合を示す。その分離条件は:カラム温度60℃、流動相が5mM 硫酸、流量が0.6mL/minである。(b)は、Bio-Rad Aminex HPX-87P鉛イオン交換カラムが使用された場合を示す。その分離条件は:カラム温度60℃、流動相が脱イオン水、流量が0.6mL/minである。(c)は、Waters Sugar Pak Iカルシウムイオン交換カラムが使用された場合を示す。その分離条件は:カラム温度80℃、流動相が脱イオン水、流量が0.5mL/minである。(d)は、Shodex Sugar KS-801ナトリウムイオン交換カラムが使用された場合を示す。その分離条件は:カラム温度70℃、流動相が脱イオン水、流量が0.5mL/minである。
【
図5】
図5は、野生型Xu4Eと、様々な反応条件下での指向性進化によって得られた8つの代表的なXu4E変異体の比活性の比較を示している。
【
図6】
図6は、野生型TmXu4Eに基づく単一アミノ酸残基の変化がその比活性に及ぼす影響を示している。
【
図7】
図7は、熱処理によって精製されたE.coli BL21(DE3)で発現した3種類の耐熱性酵素(即ち、D-XI、Xu4E、及びL-AI)のSDS-PAGE分析を示している。T:全細胞溶解物、S:上清、H:熱処理された細胞溶解物。
【
図8】
図8は、50mM D-キシロースからL-アラビノースへのワンポットプロセスを示している。L-アラビノースは、1U/mL XI及び1U/mL AI、0.2mM Co
2+、1mM Mn
2+、1mg/mL Xu4E(野生型又は変異体)を含む100mM HEPESバッファー(pH8.0)で生成された。反応は、50℃、嫌気性条件下で行う。
【
図9】
図9は、500mM D-キシロースからL-アラビノースへのワンポットプロセスを示している。反応は、10U/mL XI及び10U/mL AI、0.2mM Co
2+、1mM Mn
2+、10mg/mL Xu4E M87を含む100mM HEPESバッファー(pH8.0)で行った。反応は、50℃、嫌気性条件下で行う。
【
図10】
図10は、L-アラビノースに関する、生物変換及び擬似移動床(SMB)による製造・分離(a)と、高フルクトースコーンシロップ(HFCS)による工業化製造・分離(b)と、の比較を示している。
【
図11】
図11は、Xu4E触媒による基質(D-キシルロース)からの生成物(L-リブロース)のHPLC分離図を示している。ここで、HPLC単離されたピークは、一次質量分析(
図12)、及び二次質量分析(
図13)で確認された。
【
図12】
図12は、HPLC単離された基質(D-キシルロース)、及び生成物(L-リブロース)ピークの一次質量分析図を示している。
【
図13】
図13は、HPLC単離された基質(D-キシルロース)、及び生成物(L-リブロース)ピークの二次質量分析図を示している。
【
図14A】
図14A及び
図14Bは、異なる物種からのXu4E活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列分析比較の結果を示している。
【
図14B】
図14A及び
図14Bは、異なる物種からのXu4E活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列分析比較の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0097】
発明を実施するための形態
定義
本開示の特許請求の範囲及び/又は明細書において、特に断りがない限り、例えば、「1個の/1種類(a,an)」、「前記(said)」又は「前記(the)」などは、対象が単数形及び/又は複数形の両方を含むことが意図される。
【0098】
特許請求の範囲及び明細書で使用される場合、「含む」、「有する」、「包括する」、「所有する」、又は「含有する」という用語は、包括的又は自由形式を意味し、追加の引用されていない参照要素又は方法工程は除外されないことである。
【0099】
本開示で使用される場合、「約」という用語は、数値が、数値を決定するために使用されるデバイス又は方法の誤差の標準偏差を含むことを意味する。実例として、前述の標準偏差は、通常、元の値の20-30%の範囲内にある。
【0100】
本開示は、「又は」という用語の定義を代替物及び「及び/又は」としてのみ支持するが、特許請求の範囲における「又は」という用語は、明示的に代替物としてのみ又は代替物間で相互に排他的であると述べられていない限り、「及び/又は」を意味する。
【0101】
本開示で使用される場合、「変換(converting)」という用語は、他の有機又は無機触媒を使用することができるが、主に1つ又は複数のポリペプチド(酵素)によって触媒される1つの分子から別の分子への化学的変換を指す。その収率は、生成物のモル量と基質のモル量との間の比率(単位は%で)を指す。
【0102】
本開示で使用される場合、「単糖」は、加水分解されてより単純な糖を与えることができず、リン酸基又はUDP基などの化学基によって修飾されない任意の糖(例えば、D-グルコース、五炭単糖、D-キシロース、L-アラビノース)を指す。
【0103】
本開示で使用される場合、「ペントース」又は「五炭単糖」という用語は、D-キシロース及びL-アラビノースなど、分子に5つの炭素原子を含む任意の単糖を指す。
【0104】
本開示で使用される場合、「単糖」は、「D-」又は「L-」として標識され得る。前述の2つのシリーズの分割は、比較標準としてのグリセルアルデヒドの構造に基づいており、フィッシャー投影式の最も低い不斉炭素原子の構成に従って決定される。右旋性のグリセルアルデヒドは、フィッシャー投影式の右側にヒドロキシル基を持つ異性体として定義され、D-異性体と呼ばれる。左旋性のグリセルアルデヒドは、左側にヒドロキシル基を持つグリセルアルデヒドとして定義され、L-異性体と呼ばれる。つまり、単糖のキラル炭素原子がD-グリセルアルデヒドと同じであり、ヒドロキシル基が右端にあり、D-単糖としてラベル付けされている。単糖のキラル炭素原子がL-グリセルアルデヒドと同じである場合、ヒドロキシル基は左端にあり、L-単糖としてラベル付けされている。
【0105】
本開示で使用される場合、「4-エピメラーゼ」という用語は、糖の4番目の炭素でのヒドロキシル基を交換することができる酵素を指す。例示的に、「4-エピメラーゼ」は、D-タガトース及びD-フルクトースの4番目の炭素でのヒドロキシル基を交換できる酵素、D-キシルロース及びL-リブロースの4番目の炭素でのヒドロキシル基を交換できる酵素、D-グルコース及びD-ガラクトースの4番目の炭素でのヒドロキシル基を交換できる酵素、D-キシロース及びL-アラビノースの4番目の炭素のヒドロキシル基を交換できる酵素である。
【0106】
本開示で使用される場合、「ポリペプチド」、「酵素」、「ポリペプチド又は酵素」、「ポリペプチド/酵素」という用語は同じ意味を有し、本開示を通して交換可能である。前記用語は、ペプチド結合を介して多くのアミノ酸で構成されるポリマーを指し、リン酸基やホルミル基などの修飾を含む場合と含まない場合がある。
【0107】
本開示で使用される場合、「D-キシルロース4-エピメラーゼ」(D-xylulose4-epimerase)及びその略称「Xu4E」という用語は、D-キシルロースとL-リブロースの相互変換を触媒できるポリペプチド(酵素)をを指す。
【0108】
本開示で使用される場合の、1つの「酵素活性の単位(U)」は、1分間あたり、酵素反応によって基質から1μmolの生成物を生成するのに必要な酵素の量として定義される。
【0109】
本開示で使用される場合、「比活性」という用語は、「相対活量」又は「Relative activity」としても表現され、これらは、本開示において同じ意味を有し、交換可能に使用することができる。これは、ポリペプチド(酵素)のミリグラムあたりの酵素活性(U/mg)を指す。
【0110】
本開示で使用される場合、2つの核酸又はポリペプチドの比較における「配列同一性」又は「同一性パーセント」という用語は、ヌクレオチド又はアミノ酸残基配列アライメントアルゴリズムを使用して測定される場合、又は目視検査によって測定される場合、最大の対応、それらは同一であるか、同一の配列の特定のパーセンテージを持っている。つまり、ヌクレオチド又はアミノ酸配列の同一性は、以下の比率を使用して定義することができる。この比率は、同一のヌクレオチド又はアミノ酸の数に応じて2つ以上のヌクレオチド又はアミノ酸配列を最大に比較し、必要に応じてギャップを追加して、整列時に同じ数のヌクレオチド又はアミノ酸を達成する方法であり、整列部分のヌクレオチド又はアミノ酸の総数の比率である。
【0111】
本開示で使用されるように、2つ以上のポリヌクレオチド又はポリペプチド間の配列同一性は、以下の方法によって測定され得る:ポリヌクレオチド又はポリペプチドのヌクレオチド又はアミノ酸配列を整列させ、同じヌクレオチド又はアミノ酸残基を含む整列したポリヌクレオチド又はポリペプチドの位置の数をスコアリングし、整列したポリヌクレオチド又はポリペプチドの位置の数と比較する異なるヌクレオチド又はアミノ酸残基が比較される。ポリヌクレオチドは、例えば、異なるヌクレオチドを含むか、又は欠落したヌクレオチドによって、ある位置で異なる可能性がある。ポリペプチドは、例えば、異なるアミノ酸を含むか、又は欠落しているアミノ酸によって、1つの位置で異なる可能性がある。配列同一性は、同じヌクレオチド又はアミノ酸残基を含む位置の数を、ポリヌクレオチド又はポリペプチド中のアミノ酸残基の総数で割ることによって計算することができる。例えば、同一性パーセントは、同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基を含む位置の数を、ポリヌクレオチド又はポリペプチド中のヌクレオチド又はアミノ酸残基の総数で割って、100を掛けることによって計算することができる。
【0112】
例示的に、本開示において、2つ以上の配列又は部分配列は、配列アライメントアルゴリズムを使用して最大の対応のために比較及び整列された場合、又は目視検査「配列同一性」又は「同一性パーセント」によって測定された場合、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のヌクレオシド又はアミノ酸残基が「配列同一性」又は「同一性パーセント」を有する。「配列同一性」又は「同一性パーセント」の決定/計算は、配列の任意の適切な領域に基づくことができる。例えば、長さに関して、少なくとも約50残基の長さの領域、少なくとも約100残基の領域、少なくとも約200残基の領域、少なくとも約400残基の領域、又は少なくとも約500残基の領域である。ある特定の実施形態において、配列は、比較される生体高分子(即ち、核酸又はポリペプチド)のいずれか又は両方の全長にわたって実質的に同一である。
【0113】
本開示で使用されるように、異なる配列のヌクレオチド又はアミノ酸の番号付けは、ヌクレオチド又はアミノ酸残基配列比較アルゴリズムを使用して、又は目視検査によって測定されたときの最大の対応に基づいて比較される。それは、「配列同一性」又は「パーセント同一性」をさらに判断する場合、基準ヌクレオチド又は基準アミノ酸と比較した標的ヌクレオチド又は標的アミノ酸の番号付けである。例示的に、本開示において、「配列番号5で示される配列は、配列番号2で示される配列に従って番号が付けられる」とは、配列番号5(標的アミノ酸に相当)で示される配列及び配列番号2(参照アミノ酸に相当)で示される配列が「配列同一性」又は「パーセント同一性」について判断される場合や、配列番号5で示される配列が、最大の対応を有する配列番号2で示される配列と比較又は整列される場合、配列番号2で示される配列に対応する番号、即ち、配列番号5に示されている配列の番号を意味する。
【0114】
本開示で使用される場合、「アミノ酸変異」又は「ヌクレオチド変異」という用語は、「1つ又は複数のアミノ酸又はヌクレオチドの置換、複製、欠失又は付加」を含む。本開示において、「変異」という用語は、ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列の変化を指す。特定の実施形態において、「変異」という用語は「置換」を指す。
【0115】
一実施形態において、本開示の「変異」は、「保存的変異」から選択され得る。本開示において、「保存的変異」という用語は、通常、タンパク質の機能を維持する変異を指す。保存的変異の代表的な例は、保存的置換である。
【0116】
本開示で使用される場合、「保存的置換」という用語は、類似の側鎖を有するアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置換に関する。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で定義されており、且つアルカリ性側鎖(例えば、リジン、アルギニン及びヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、及びシステイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン及びトリプトファン)、β-分岐鎖(例えば、スレオニン、バリン及びイソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン及びヒスチジン)が含まれる。
【0117】
本開示で使用される場合、「保存的置換」は、通常、タンパク質の1つ又は複数の部位で1つのアミノ酸を交換している。そのような置換は保守的である可能性がある。具体的には、保存的置換と見なされる置換には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。また、保存的変異には、遺伝子が由来する個体差、株、及び種の違いに起因する自然発生の変異も含まれる。
【0118】
本開示で使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドから構成されるポリマーを指す。ポリヌクレオチドは、個々のフラグメントの形態であり得るか、又は数又は濃度において少なくとも1回単離されたヌクレオチド配列に由来するより大きなヌクレオチド配列構造の一部であり得る。配列及びそれらの構成要素であるヌクレオチド配列は、標準的な分子生物学的方法(例えば、クローニングベクターを使用する)によって同定、操作、及び回収することができる。ヌクレオチド配列がDNA配列(即ち、A、T、G、C)で表される場合、これには、「U」が「T」に置き換わるRNA配列(即ち、A、U、G、C)も含まれる。言い換えれば、「ポリヌクレオチド」は、他のヌクレオチド(個々のフラグメント又はフラグメント全体)から除去されたヌクレオチドのポリマーを指し、又は発現ベクター又はポリシストロン配列などのより大きなヌクレオチド構造の構成成分又は成分であり得る。ポリヌクレオチドには、DNA、RNA、cDNA配列が含まれる。「組換えポリヌクレオチド」は「ポリヌクレオチド」の一種である。
【0119】
本開示で使用される場合、「組換えポリヌクレオチド」という用語は、自然界で一緒に連結されていない配列を持つポリヌクレオチドを指す。組換えポリヌクレオチドは適切なベクターに含まれ得、そしてベクターは適切な宿主細胞への形質転換に使用され得る。組換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、「組換え宿主細胞」と呼ばれる。次に、ポリヌクレオチドは、組換え宿主細胞で発現されて、例えば、「組換えポリペプチド」を産生する。
【0120】
本開示で使用される場合、「発現」という用語は、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、及び分泌を含むが、これらに限定されない;ポリペプチドの産生に関与する任意のステップを含む。
【0121】
本開示で使用される場合、「発現ベクター」という用語は、ポリペプチドをコードし、その発現のために制御配列に作動可能に連結されたポリヌクレオチドを含む線状又は環状DNA分子を指す。
【0122】
本開示で使用される場合、「組み換え発現ベクター」という用語は、例えば、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現するために使用されるDNAコンストラクトを指す。組換え発現ベクターは、例えば、i)プロモーター及びエンハンサーなどの、遺伝子発現に対して調節効果を有する遺伝子要素のコレクション;ii)mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される構造又はコード配列;及びiii)適切な転写及び翻訳の開始及び終結配列を有する転写サブユニット;を含むことができる。組換え発現ベクターは、任意の適切な方法で構築される。ベクターの性質は重要ではなく、プラスミド、ウイルス、ファージ、トランスポゾンなど、あらゆるベクターを使用できる。本開示で使用することができるベクターには、細菌プラスミド、ファージDNA、酵母プラスミドなどの染色体、非染色体、及び合成DNA配列が含まれるが、これらに限定されない。例としては、細菌プラスミド、ファージDNA、酵母プラスミド、及びプラスミドとファージDNAの組み合わせに由来するベクター、ワクチン、アデノウイルス、鶏痘、バキュロウイルス、SV40、及び偽狂犬病などのウイルスに由来するDNAがある。
【0123】
本開示で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、コード配列の発現を指示するように、調節配列がポリヌクレオチドのコード配列に対して所定の位置に配置される構成を指す。例示的に、調節配列は、プロモーター及び/又はエンハンサーによってコードされる配列から選択され得る。
【0124】
本開示で使用される場合、「核酸コンストラクト」という用語は、適切な調節配列に作動可能に連結されたポリペプチド又はドメイン又はモジュールをコードするポリヌクレオチドを含む。調節配列は、選択した細胞又は株でのポリヌクレオチドの発現に必要である。
【0125】
本開示で使用される場合、「内因性」という用語は、生物又は細胞内で自然に発現又は産生されるポリヌクレオチド、ポリペプチド、又は他の化合物を指す。つまり、内因性ポリヌクレオチド、ポリペプチド又は他の化合物は外因性ではない。例えば、「内因性」ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、それが最初に自然から単離されたときに細胞内に存在する。
【0126】
本開示で使用される場合、「外因性」という用語は、発現が望まれる特定の細胞又は生物において自然に見出されるか又は発現される任意のポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。外因性ポリヌクレオチド、ポリペプチド又は他の化合物は内因性ではない。
【0127】
本開示で使用される場合、「野生型」という用語は、自然界に見出される可能性のある物体を指す。例えば、生物に存在し、自然界の供給源から単離することができ、実験室で人間によって意図的に改変されていないポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は、自然に発生している。本開示で使用されるように、「天然に存在する」及び「野生型」は同義語である。
【0128】
本開示で使用される場合、「変異体」という用語は、「野生型」又は「比較基準」ポリヌクレオチド又はポリペプチドヌクレオチド又はポリペプチドに対して1つ又は複数(例えば、いくつか)の位置に変化(即ち、置換、挿入及び/又は欠失)を含むポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。ここで、置換とは、ある位置を占めるヌクレオチド又はアミノ酸を別のヌクレオチド又はアミノ酸で置き換えることを指す。欠失とは、位置を占めるヌクレオチド又はアミノ酸の除去を指す。挿入とは、その位置を占めるヌクレオチド又はアミノ酸に隣接し、その直後にヌクレオチド又はアミノ酸を付加することを指す。例示的に、本開示における「変異体」は、D-キシルロース4-エピメラーゼ(Xu4E)活性を依然として有するポリペプチドである。
【0129】
本開示で使用されるように、「過剰発現された」組換え遺伝子は、微生物において対応する天然に存在する遺伝子よりも多くのRNA及び/又はタンパク質を産生する。RNA及びタンパク質の量を測定するための方法は、当技術分野で知られている。過剰発現は、酵素活性などのタンパク質活性を測定することによっても決定できる。本開示の実施形態によれば、「過剰発現」は、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、又は少なくとも50%以上の量である。過剰発現されたポリヌクレオチドは通常、宿主細胞に固有のポリヌクレオチドであり、その生成物は、宿主細胞で通常生成される量よりも多い量で生成される。例えば、限定されないが、過剰発現は、ポリヌクレオチドをポリヌクレオチドの天然プロモーター以外のプロモーターに作動可能に連結することによって、又はポリヌクレオチドの追加のコピーを宿主細胞に導入することによって達成される。
【0130】
本開示で使用される場合、「フラグメント」という用語は、成熟ポリペプチド又はドメインのアミノ末端及び/又はカルボキシ末端から1つ又は複数(例えば、いくつか)のアミノ酸が欠失しているポリペプチド又は触媒又は炭水化物結合部分を意味する。本開示の技術的な構成において、前記フラグメントは、D-キシルロース4-エピメラーゼ(Xu4E)活性を有する。
【0131】
本開示で使用される場合、「単離された」という用語は、自然界には見られない形態又は環境の物質を意味する。単離された物質の非限定的な例には、(1)天然に存在しないあらゆる物質;(2)酵素、変異体、核酸、タンパク質、ペプチド、又は補因子を含むがこれらに限定されない物質、この物質は、本質的に関連している1つ又は複数又はすべての天然成分から少なくとも部分的に除去される;(3)自然界に存在する物質と比較して人工的に改変された物質;或いは、(4)自然に関連する他の成分と比較して物質の量を増やすことによって変更された物質(例えば、宿主細胞での組換えプロセス、物質をコードする遺伝子の複数のコピー、及び物質をコードする遺伝子に自然に関連するプロモーターよりも強力なプロモーターの使用)が含まれる。分離された物質は、発酵ブロスサンプルに存在する可能性がある。例えば、宿主細胞は、本開示のポリペプチドを発現するように遺伝子改変することができる。宿主細胞からの発酵ブロスは、単離されたポリペプチドを含む。分離された物質は、生体内変化液のサンプルに存在する可能性がある。例えば、標的生成物であるL-アラビノースは、酵素的に触媒された多糖類混合液体から分離することができる。
【0132】
本開示で使用される場合、「高ストリンジェンシー条件」という用語は、少なくとも100ヌクレオチドの長さのプローブについては、標準的なサザンブロッティング手順に従い、42℃で5X SSPE(生理食塩水リン酸ナトリウムEDTA)、0.3%SDS、200マイクログラム/mlの剪断及び変性サーモン精子DNA及び50%ホルムアミド中で12~24時間プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションを行ったということを指す。最後に、担体材料を、2X SSC、0.2%SDSを使用して65℃で15分間3回洗浄した。
【0133】
本開示で使用される場合、「非常に高ストリンジェンシー条件」という用語は、少なくとも100ヌクレオチドの長さのプローブについては、標準的なサザンブロッティング手順に従い、42℃で5X SSPE(生理食塩水リン酸ナトリウムEDTA)、0.3%SDS、200マイクログラム/mlの剪断及び変性サーモン精子DNA及び50%ホルムアミド中で12~24時間プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションを行ったということを指す。最後に、担体材料を、2X SSC、0.2%SDSを使用して70℃で15分間3回洗浄した。
【0134】
本開示で使用される場合、「遊離酵素」という用語は、生物を含まない酵素を指す。本開示の遊離酵素は、それらが発現される細胞の溶解後、部分的又は高度に精製された後、溶液中に懸濁され得る。それは、可溶性であるか、又は不溶性マトリックスに結合され得る。
【0135】
本開示で使用される場合、「固定化酵素」という用語は、特定の空間範囲内で触媒的に作用し、繰り返しかつ連続的に使用することができる酵素を指す。酵素触媒反応は通常水溶液中で行われ、固定化酵素は水溶性酵素を物理的又は化学的方法で処理して水に不溶性になるが、それでも酵素活性を有するものである。
【0136】
本開示で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本開示のポリヌクレオチドを含む核酸構築物又は発現ベクターによる形質転換、トランスフェクション、形質導入などに適した任意の細胞型を意味する。「宿主細胞」という用語は、複製中に起こる変異のために親細胞とは異なる親細胞の任意の子孫を包含する。
【0137】
本開示で使用される場合、「全細胞微生物」という用語は、それらの細胞膜を完全に溶解していない全細胞を指す。前記酵素を含む全細胞微生物を直接使用するか、安定性とリサイクル性のために固定化するか、又は全細胞を透過処理して反応速度を速くすることができる。
【0138】
本開示で使用される場合、「触媒反応」という用語は、触媒の作用下で起こる化学反応を指す。触媒は特定の反応を選択的に加速することしかできず、化学反応を熱力学的に可能ないくつかの方向の1つに進行させる可能性がある。触媒と反応物が同じ相にある場合、均一系触媒反応 (Homogeneous Catalytic Reaction)と呼ばれ、異なる相にある場合、不均一系触媒反応(Heterogeneous Catalytic Reaction)と呼ばれる。生物学的触媒-酵素が関与する反応は、酵素触媒反応(Enzymic Catalytic Reaction)と呼ばれる。
【0139】
特定の実施形態において、前記触媒反応は、インビトロで酵素又は複数の酵素によって触媒され得、前述の触媒反応は、「酵素触媒反応」とも呼ばれ得、これは、酵素を使用する化学変換のプロセスを指す。触媒として、この反応プロセスは生物変換(biotransformation)又は生物触媒(biocatalysis)とも呼ばれる。
【0140】
別の特定の実施形態において、前記触媒反応は、インビボ/細胞内で実施することができ、前述の触媒反応は、「細胞内触媒反応」と呼ばれることもある。
【0141】
本開示で使用される場合、「細胞内触媒反応」という用語は、「全細胞生体触媒反応」と呼ばれることもあり、無傷の生物(即ち、細胞全体、組織、さらには個体)を触媒として利用する化学変換のプロセスを指す。全細胞生体触媒反応で一般的に使用される有機触媒は主に微生物であり、これは本質的に、1つ又は複数の微生物細胞内の1つ又は複数の酵素によって触媒される。動物細胞、植物細胞、さらには生物学的個体を使用する生体内変化法も開発されている。全細胞生体内変化の一般的に使用される方法には、反応面への細胞の固定化、ミクロスフェアの懸濁、及び多孔性固相担体が含まれる。
【0142】
本開示で使用される場合、「発酵生成物」という用語は、細胞発酵によって生成され、回収及び/又は精製が全く又は最小限に抑えられる調製物を指す。発酵生成物は、発酵の終わりに得られる発酵材料の未分画又は分画された内容物を含み得る。典型的には、発酵生成物は分画されておらず、例えば、遠心分離による微生物細胞(例えば、糸状菌細胞)の除去後に存在する使用済み培地及び細胞破片を含む。いくつかの実施形態において、発酵生成物は、使用済み細胞培養培地、細胞外酵素、及び生存可能及び/又は生存不能な微生物細胞を含む。
【0143】
本開示で使用される場合、「生体触媒生成物」という用語は、回収及び/又は精製が全く又は最小限に抑えられる生体触媒(ポリペプチド又は酵素又は全細胞)によって生体触媒される調製物を指す。生体触媒作用は、金属イオンを含む生体触媒による水性緩衝液中で実施される。いくつかの実施形態において、生体触媒には、反応のための遊離酵素、前記酵素を含む細胞溶解物、前記酵素を含む全細胞生物、前記酵素を固定化及び架橋する凝集体を含む。
【0144】
本開示で使用される場合、「バイオリアクター」という用語は、生物(例えば、微生物)が保有する酵素又は生物学的機能を利用して生体内変化反応を実行する装置システムである。それは、発酵槽、固定化酵素、固定化細胞リアクターなどの生体機能シミュレーターである。
【0145】
特に定義されていない限り、又は文脈によって明確に示されていない限り、本開示で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0146】
D-キシルロース4-エピメラーゼ及び変異体
一実施形態において、D-キシルロースとL-リブロースの相互変換を可能にする、これまでに報告されたことのないペントース4-エピメラーゼを発見した。D-キシルロース4-エピメラーゼ(Xu4E)と名付けた(
図2)。
【0147】
特定の実施形態において、本発明者らは、2つの酵素ファミリーからのいくつかの酵素においてXu4E様酵素活性:タガチュロネート(tagaturonate)3-エピメラーゼ(EC5.1.2.7)及びL-リブロース5-リン酸4-エピメラーゼ(EC5.1.3.4)を初めて発見した。
【0148】
別の実施形態において、野生型Xu4Eを使用してxu4eのDNA変異体のライブラリーを作成し、それから物理化学的特性が変化したXu4E変異体を同定した。
【0149】
例示的に、特定の実施形態において、Xu4E変異体は、野生型Xu4Eと比較して、比活性が増加した。別の特定の実施形態において、Xu4E変異体は、野生型Xu4Eと比較して、反応速率が増加した。別の特定の実施形態において、Xu4E変異体は、野生型Xu4Eと比較して、Kmが減少した。
【0150】
L-ペントース生産のための人工酵素経路
補酵素NAD(P)が必要ではない、Xu4EによりD-キシロースを6つのL-ペントースに変換するための人工多酵素触媒経路を設計した(表2)。Xu4Eとその変異体に用いて、人工的な多酵素触媒経路を設計し、4-エピメラーゼ、3-エピメラーゼ及びアルドースイソメラーゼによって(
図3及び表2)、D-キシロースから6つのL-ペントース(即ち、L-アラビノース、L-リボース、L-リブロース、L-キシロース、L-リキソース及びL-キシルロース)が調製された。これらの人工多酵素経路は、高価な2つのNAD(P)依存性オキシドレダクターゼ(即ち、アルドースレダクターゼとポリオールデヒドロゲナーゼ)を必要としない。
【0151】
例示的に、本開示で示されるL-ペントースの製造において、
図1で示されるキシリトール又はリビトールを通る経路は必要とされない。
【0152】
【0153】
酵素及び/又はそれらの変異体
本開示で開示される新規酵素は、様々な生物において自然に存在する。所望の活性を有する特定の酵素が実施例で使用されているが、他の酵素が同様の活性を有し、使用することができるので、本開示はこれらの酵素に限定されない。例えば、D-キシルロースとL-リブロースの相互変換を触媒することもできるいくつかの新しいペプチドが発見される可能性がある。本開示に記載されている他の反応は、この実施形態に記載されていない酵素によって触媒することができ、この実施形態にも含まれる。
【0154】
いくつかの特定の実施形態において、例えば、酸性又は塩基性条件下でより活性で安定であるこれらの酵素の変異体を、本開示で使用することができる。ポリペプチドのアミノ酸配列変異体には、置換、挿入、又は欠失変異体が含まれ、変異体は、未修飾酵素と実質的に相同又は実質的に同一であり得る。いくつかの特定の実施形態において、変異体は、酵素の少なくともいくらかの生物学的活性、例えば、触媒活性を保持する。他の変異体には、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%、そして最も好ましくは少なくとも約90%の生物学的活性を保持する酵素変異体が含まれる。
【0155】
生物に由来するポリペプチド又はポリヌクレオチドは、天然のアミノ酸配列又はヌクレオチド配列に対する1つ又は複数の修飾を含み、天然酵素よりも優れていないとしても同様の活性(例えば、少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、又は少なくとも110%、又はさらに高い酵素活性)を示している。例えば、場合によっては、酵素活性は、親/天然に存在する配列の指向性進化によって改善される。あるいは、任意に、コード配列を変異させて、所望の特性を得る。例示的に、「所望の特性」は、より良い熱安定性、増加した反応速度、最適なpH、又は金属補因子の好みなどから選択される。
【0156】
酵素の形
本開示で使用される遊離酵素又は酵素を含む細胞溶解物は水溶性である。通常、固定化酵素を使用するのが最適である。固定化酵素は一般的に、より安定していて耐久性がある。固定化酵素はまた、回収及び複数の触媒サイクルでの使用が容易であり、製造プロセスのコストを削減する。酵素固定化の多くの方法が当技術分野で知られている。酵素はまた、架橋されて架橋酵素凝集体(Cross-linked enzyme aggregate,CLEA)を形成することができ、これは一般により安定であり、回収及び再利用がより容易である。多くの酵素が生物に存在し、希少糖を製造するための生体触媒として機能することができるが、人工微生物で異種発現することもでき、生体触媒として使用することができる。
【0157】
本開示で使用されるリコンビナーゼは、完全な細胞溶解なしに細胞全体に留まることができる。細胞全体には1つ又は複数の酵素が含まれている。通常、固定化された全細胞を使用するのが最適です。細胞全体は、有機溶媒処理、化学試薬処理、又は熱処理などの多くの技術によって透過処理することができる。固定化された細胞はまた、複数の触媒サイクルにわたってリサイクル及び再利用が容易であり、これにより製造プロセスのコストを削減する。全細胞透過性及び全細胞固定化の多くの方法が当技術分野で知られている。本開示は、本開示に記載される反応を触媒する全細胞の固定化及び架橋の方法に関する。
【0158】
エラープローンPCR
エラープローンPCRは、DNAポリメラーゼを使用してプロモーター配列を増幅する場合、マグネシウムイオンの濃度向上、マンガンイオンの追加、体系内の4つのdNTPの濃度の変更、忠実度の低いDNAポリメラーゼの使用等反応条件を調整することによって、ターゲットDNA配列にランダムに変異を導入して、ターゲット配列に対してランダムな変異体を取得する方法である。
【0159】
L-ペントースの製造方法
(1)製造・分離・精製過程
本開示の方法及び組成物は、様々な従来の発酵又は酵素バイオリアクター(例えば、バッチ、流加、細胞又は酵素のリサイクル及び連続発酵又は連続酵素触媒作用)に適合させることができる。
【0160】
本開示の実施例において、単位時間あたりに形成される生体触媒生成物の量は、一般に、酵素の触媒活性条件(例えば、pH、温度、金属イオン)及び触媒プロセスに存在する酵素の量の関数である。
【0161】
本開示の実施形態において、金属イオンを含む溶液は、1つ又は複数の金属イオンを含み得る。例示的に、前記金属イオンを含む溶液は、CuCl2、FeCl3、ZnCl2、CaCl2、MgCl2、CoCl2、NiCl2又はMnCl2を含む溶液から選択され得る。
【0162】
効率的な微生物触媒発酵プロセスの重要なパラメーターのいくつかには、微生物をより大きな細胞密度への成長、所望の生成物の収量の増加、体積生産性の量の増加、望ましくない共代謝物の除去、安価な炭素及び窒素源の利用の改善、発酵槽条件の変化への適応、細菌増殖産生の増加、組換え酵素の合成の増加、酸性条件に対する耐性の増加、アルカリ性条件に対する耐性の増加、有機溶媒に対する耐性の増加、高塩分条件に対する耐性の増加、及び高温又は低温耐性に対する耐性の増加などが含まれる。
【0163】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される複数の酵素は、1つ以上の遊離酵素、酵素を含む細胞溶解物、酵素を含む全細胞、固定化酵素として存在し得、生体触媒作用は、ペントース基質を含む反応溶液中で行われ、変換された生成物が反応溶液に形成される。一実施形態において、酵素的に触媒された最終生成物は、当技術分野で知られている任意の適切な方法を使用して、反応溶液から単離することができる。
【0164】
L-ペントースは、多酵素、反応物、反応中間体、及び生体触媒生成物から単離することができ、生体触媒生成物は、当技術分野で知られている様々な方法を使用して、反応物及び反応中間体から回収及び/又は精製することができる。いくつかの実施形態において、生体触媒生成物は、バイオリアクターから回収される。一実施形態では、微生物を破壊し、培養培地又は溶解物を遠心分離して、粒子状の細胞破片を除去し、細胞膜を分離して、L-ペントースの生成を触媒することができる酵素を含む可溶性タンパク質画分をもたらす。L-ペントースの分離及び精製方法には、クロマトグラフィー、擬似移動床クロマトグラフィー、結晶化、イオン性、疎水性及びサイズ排除樹脂に基づく吸着及び放出、濾過、精密濾過、限外濾過、ナノ濾過、遠心分離、抽出、塩又は溶媒による沈殿、乾燥、又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。所望の分離は、酵素の除去/回収に限定されず、残りの生成物及び反応物(D-キシロース、D-キシルロース、L-ペントース及び金属イオンを含む)の混合物の一部又はすべての回収も含み、所望の分離は、さらなる精製を必要としない場合がある。D-キシロース、D-キシルロース及びL-リブロースの回収の有無、ならびに酵素の精製、固定化及び回収は、本開示に含まれるさらなる実施形態である。
【0165】
(2)改変微生物細胞におけるポリペプチド(酵素)の産生
反応の一部又はすべてを触媒する本開示に記載の酵素は、非天然の、操作された異種生物で発現させることができる。具体的には、経路の酵素をコードする遺伝子を単離し、生産生物を形質転換するために使用される発現ベクターに挿入し、ゲノムに組み込み、酵素を直接発現させることができる。微生物を操作するための方法は、「分子生物学における現代の方法」(Online ISBN:9780471142720,John Wiley and Sons,Inc.)、「微生物代謝工学:方法及びプロトコル」(Qiong Cheng Ed.,Springer)、及び「システム代謝工学:方法及びプロトコル」(Hal S.Alper Ed.,Springer)などの出版物で説明されているように、当技術分野で知られている。
【0166】
変異体は、挿入、破壊、置換、又は欠失などの当技術分野で周知の方法を使用して、ポリヌクレオチドの発現をアップレギュレート又はダウンレギュレートすることによって構築することができる。例えば、修飾又は不活化されるポリヌクレオチドは、活性に必要なコード領域又はその一部、あるいはコード領域の発現に必要な調節エレメントであり得る。そのような調節又は制御配列の例は、プロモーター配列又はその機能的部分、即ち、ポリヌクレオチドの発現に影響を与えるのに十分な部分であり得る。改変することができる他の制御配列には、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、シグナルペプチド配列、転写ターミネーター、及び転写活性化因子が含まれるが、これらに限定されない。
【0167】
当業者は、操作された微生物細胞を増殖させて酵素を産生することができる。微生物細胞による組換え酵素の生産に関するガイドラインとプロトコルは、「発酵及び生物化学工学ハンドブック:原理、プロセス設計、及び機器」(2nd Edition,Henry C.Vogel and Celeste L.Todaro,Noyes Publications1997)、「発酵技術の原則」(2nd Edition,P.F.Stanbury et.al.,Butterworth Heineman,2003)などの出版物に記載されている。
【0168】
(3)生物学的反応条件
本開示のいくつかの実施形態において、複数の酵素を混合して、D-キシロースなどの原材料又は他の中間体(D-キシルロース)をL-ペントースに変換し、L-ペントースを回収することができる人工多酵素経路を形成する。生物学的反応プロセスは、好気性、微小好気性又は嫌気性条件下で実施することができる。本開示の別のいくつかの実施形態において、生体触媒反応は、嫌気性条件下(即ち、検出可能な酸素なしで)で実行される。
【0169】
本開示のいくつかの実施形態において、生物学的反応プロセスは、30℃~90℃の条件下で実施される。本開示のいくつかの実施形態において、生物学的反応プロセスは、40℃~80℃の条件下で実施される。本開示いくつかの実施形態において、生物学的反応プロセスは、50℃~70℃の条件下で実施される。本開示いくつかの実施形態において、生物学的反応プロセスは、60℃~70℃の条件下で実施される。
【0170】
プラスミド及び組み換えタンパク質調製
すべての組換えタンパク質の過剰発現は、E。coli BL21(DE3)を使用して実行された。本開示に含まれるすべての組換えタンパク質発現/過剰発現方法は、「分子生物学実験ガイド」に記載されている技術的な構成に従って実施することができる。
【0171】
例示的に、対応するタンパク質のコード遺伝子を保有するpETプラスミドは、以下のように調製される。
【0172】
Xu4E酵素活性を有する可能性のあるL-リブロース5-リン酸-4-エピメラーゼ(RP4E)を調製するために、サーマスマリヌス(T.maritima)、大腸菌(E.coli)、バチルス(Bacillus subtilis168)及びゲオバチルス ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)のrp4e遺伝子は、対応するゲノムから増幅された。拡張オーバーラップエクステンションPCR(POE-PCR)に基づく単純なクローニング技術(You,C.,X.-Z.Zhang and Y.-H.P.Zhang(2012)."Simple Cloning:direct transformation of PCR product(DNA multimer)to Escherichia coli and Bacillus subtilis."Appl.Environ.Microbiol.78:1593-1595.)により、それらをpET20bプラスミドに挿入し、対応するプラスミドpET20b-TmRP4E、pET20b-EcRP4E、pET20b-BsRP4E、及びpET20b-GsRP4Eを構築した。POE-PCRの反応条件は次の通りである。250ngのpET20bプラスミドバックボーンと等モルの標的遺伝子フラグメント、0.2mM の様々なdNTP、及び0.02U/μlのQ5DNAポリメラーゼ; PCR増幅条件:98℃で1分間、98℃で20秒間、60℃で20秒間、72℃で72秒間、30サイクル、72℃で5分間。
【0173】
Xu4E酵素活性を有する可能性のある野生型D-キシルロース4-エピメラーゼ(Xu4E)を調製するために、一対のプライマーF_UxaE(F)とR_UxaE(R)を使用した:
【0174】
F(配列番号123):5’-GAGATATACCCATATGGTCTTGAAAGTGTTCAAAGACC-3’、
【0175】
R(配列番号124):GGTGGTGGTGCTCGAGCCCCTCCAGCAGATCCACGTGCC-3’。
【0176】
PCR法により、サーモスポラマリーナ(Thermusmarinus)のゲノムからuxaE遺伝子を増幅した。
【0177】
pET28aに基づいて、1対のプライマーF_pET28a(F)とR_pET28a(R)を使用して増幅した:
【0178】
F(配列番号125):5’-GCTGGAGGGGCTCGAGCACCACCACCACCACCACTG-3’、
【0179】
R(配列番号126):5’-CTTTCAAGACCATATGGGTATATCTCCTTCTTAAAG-3’。
【0180】
POE-PCR法により、マルチマープラスミドを増幅して大腸菌TOP10に形質転換し、プラスミドpET28a-tm_UxaEを得た。
【0181】
L-アラビノースイソメラーゼ(L-AI)を調製するために、バチルス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)に由来するAIのDNA配列をコドン最適化し、Universal Bio(Anhui、China)によって合成して、プラスミドpET20b-BsAIを得た。
【0182】
Thermus thermophiles由来の耐熱性キシロースイソメラーゼ(D-XI)をコードするプラスミドpET20b-TtcXIは、参考文献(Wu et al.2018)から入手した。
【0183】
特に断りのない限り、すべての組換え酵素にはヒスチジン融合タグがあり、ニッケルイオン樹脂を使用したアフィニティー吸着によって精製される。標的タンパク質をコードする遺伝子を保有するpETプラスミドを、大腸菌E.coli BL21細胞を使用して250mlのLB培地で37℃の温度で培養した。細胞の吸光度A600が約0.6-0.8に達した時、0.1mM IPTGを添加してタンパク質の発現を誘導した。タンパク質の発現は、37℃で6時間、又は18℃で16時間行った。遠心分離により細胞を回収した後、ペレットを0.1M 塩化ナトリウムと10mM イミダゾールを含む50mM HEPESバッファー(pH7.5)に再懸濁した。超音波処理により細胞膜を破壊し、遠心分離後、酵素を含む上清のサンプルをニッケルイオン樹脂精製カラムにロードした。目的の酵素は、0.1M 塩化ナトリウムと150-500mM イミダゾールを含む50mM HEPESバッファー(pH7.5)を使用して溶出することにより精製した。酵素濃度は、標準品としてウシ血清アルブミンを使用して、Bradford測定法によって決定することができる。組換えタンパク質の発現レベルとタンパク質の純度は、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を使用して検出され、Image Labソフトウェア(Bole、Hercules、CA、USA)のアバンダンス分析機能を使用して定量化した。
【0184】
L-アラビノース合成に使用される熱安定性酵素は、Thermus thermophiles由来のD-キシロースイソメラーゼ、T.maritimaに由来する野生型Xu4E及びXu4E変異体M8、及び(Geobacillus stearothermophilus)に由来するL-アラビノースイソメラーゼであり、それらは熱処理(50~80℃、10~60分)によって精製することができる。細胞溶解物を熱処理して遠心分離し、上記の3つの酵素を含む上清を混合する。これはD-キシロースからL-アラビノースへの変換に使用できる。
【0185】
スクリーニン用グプラスミドpGS-Xu4E及びスクリーニン用宿主大腸菌JZ919の構築
スクリーニン用グプラスミドpGS-Xu4Eには、PBADプロモータープロモーターの制御下にあるmCherry遺伝子、在PAraCプロモーターの制御下にある野生型araC遺伝子、及びPtacプロモーターの制御下にあるxu4e遺伝子が含まれる。大腸菌細胞では、Xu4E陽性変異体がより多くのL-アラビノースを産生し、これにより大腸菌細胞がより高レベルのmCherry蛍光タンパク質を発現し、より強い蛍光シグナルが得られた。スクリーニングプラスミドは、標準的なDNAアセンブリ技術を使用して構築された。
【0186】
大腸菌JZ919(TOP10ΔxylB:: araA)をスクリーニン用宿主として構築し、スクリーニン用グプラスミドpGS-Xu4Eとともに使用した。スクリーニン用グプラスミドpGS-Xu4Eは、細胞内L-アラビノース濃度を検出し、mCherry蛍光シグナルを表示できる遺伝子センサーを搭載している。L-アラビノースを蓄積するために、D-キシルロースとL-リブロースの利用に関連する2つの遺伝子を大腸菌宿主細胞でノックアウトし、araA遺伝子を大腸菌ゲノムに挿入した。大腸菌E.coli Top10(ΔaraABCD)から、ゲノム内のxylB遺伝子をaraA遺伝子に置き換え、ノックアウトと挿入を同時に行った。
【0187】
Xu4E変異体ライブラリーの構築
xu4e遺伝子の変異ライブラリーは、変異率の低いエラープローンPCR(ep-PCR)を使用して確立された。
【0188】
プラスミドpET28a-UxaEをDNAテンプレートとして使用し、プライマーは:MUxaE-IF(配列番号127):5’-CCATATGGTCTTGAA-3’、MUxaE-IR(配列番号128):5’-GGTGGTGGTGCTCGAGCCCCTCCAGCAGATCCACG TGCC-3’であった。
【0189】
変異体ライブラリーは、PCR増幅によって得られた。MUxaE-IFは5’末端リン酸化プライマーである。MUxaE-IRの5’末端の最後の28bp配列は、プラスミドバックボーンの配列と相同な相補配列である。50μlのep-PCR反応系には、1ng/μlプラスミドpGS-Xu4E、0.2mM dATP、0.2mM dGTP、1mM dCTP、1mM dTTP、5mM MgCl2、0.05mM MnCl2、0.4μMプライマー(MUxaE-IF及びMUxaE-IR)、及び0.05U/μl NEB Taqポリメラーゼが含まれる。
【0190】
Xu4E変異体ライブラリーのハイスループットスクリーニング
E.coli JZ919の化学的コンピテントセルは、従来技術に従って、例えば、「分子生物学実験ガイド」に記載されている方法によって調製することができる。さらに、uxaE変異体ライブラリーを保有する大腸菌JZ919細胞を、D-キシロースを含むLB固形培地で培養した。37℃で12時間培養した後、4時間ごとにコロニーの色が観察された。コロニーの蛍光強度を検出するために、目視観察又は紫外線照射によって陽性クローンを選んだ。より強い蛍光強度を示すクローンを選び、D-キシロースを添加した0.5mlのLB培地を含む96ディープウェルプレートで培養し、37℃で12時間培養した。SynergyMx多機能マイクロプレートリーダー(Berton、Vermont、USA)を使用して、96ウェルプレートの細胞培養培地からの蛍光シグナルを測定した。蛍光励起スキャンは589nmで実行され、発光スキャンは610nmで実行された。
【0191】
ポリペプチド/酵素がXu4E酵素活性を有するかどうかを判断するための測定方法
D-キシロース/D-キシルロース混合液を用意した。D-キシロース/D-キシルロース混合物は、1Mキシロース、5mM MgCl2及び50mgの固定化D-XIを含む1mlの50mM HEPESバッファー(pH7.5)で調製し、XIはSigma-Aldrich(G4166)から購入した。70℃で一晩反応させた後、固定化されたXIを遠心分離により除去した。D-キシロース/D-キシルロース混合物は、約700mM のキシロース及び300mM のキシルロースを含んでいた。
【0192】
Xu4Eの酵素活性アッセイは、段階的な酵素活性測定方法を使用して実施された。反応溶液は、70mM キシロース、30mM キシルロース、及び0.2mM Co2+又は2mM Zn2+を含む50mM Trisバッファーでした。特に指定のない限り、Xu4E酵素活性アッセイは30~80℃で15分~24時間実施し、酵素タンパク質の溶解度は0.001~10g/Lであった。Xu4Eが反応を触媒した後、65μLの反応溶液をピペットで取り、35μLの1.88M HClO4と混合し、13.5μLの5MKOHを混合物に加えて中和した。遠心分離して沈殿物を除去した後、10U/mL(過剰)L-AIと1mM Mn2+を含む50mM HEPESバッファー(pH7.5)でL-リブロースを含む上清をL-アラビノースへの2回目の変換反応を行い、酵素反応は50℃で15分間行った。L-アラビノース濃度は、メガザイムL-アラビノース/D-ガラクトースアッセイキット(K-ARGA、ブレイ、アイルランド)を使用して決定した。
【0193】
速度論的パラメーターを決定するために、Xu4Eの酵素活性アッセイを、50℃で0.2mM Co2+を含む50mM Trisバッファー(pH8.5)で実施した。D-キシロースとD-キシルロースの合計濃度は1.5~1000mM であり、D-キシルロースの濃度は0.5~300mM であった。酵素活測定在50℃行う15min。酵素活性アッセイは50℃で15分間行った。D-キシルロースに対するXu4Eの見かけKm及びkcat定数は、ミカエリス式の非線形フィッティングに基づいてGraphPad Prism5ソフトウェア(Graphpad Software、Inc.,Los Angeles、CA、USA)を使用して計算した。
【0194】
D-キシロースからのL-アラビノースの生産
50mM D-キシロースからのL-アラビノースの生成は、1mlの反応系で実施され、反応系は、0.2mM Co2+、1mM Mn2+、1g/L Xu4E(DNA配列が配列番号1で示される野生型、及びアミノ酸配列が配列番号40で示される代表的な変異体M8)、1U/mL D-XI及び1U/mL L-AIを含む100mM HEPESバッファー(pH8.0)であった。L-アラビノースが500mM D-キシロースから生成された場合、Xu4Eの濃度は10g/Lに増加し、D-XI及びL-AIの濃度も10U/mLに増加した。3つの酵素を混合した後、反応溶液を50℃で反応させた。L-アラビノースの濃度は、メガザイムL-アラビノース/D-ガラクトースアッセイキット(K-ARGA、ブレイ、アイルランド)を使用して測定し、D-キシロース、D-キシルロース及びL-リブロースの濃度は、示差屈折率検出器を備えた島津高速液体クロマトグラフィーを使用して検出され、Bio-Rad AminexHPLCHPX-87H液体カラムを使用して分離された。
【0195】
Xu4EがD-キシルロースを使用して製造した産物がL-リブロースであることの確認
野生型又は変異型Xu4Eにより、得られた生成物について、LC-ESI-QTOF-MSにてL-リブロースに確認された。1 mLの反応系には、50mM Trisバッファー(pH8.5)、10mM D-キシルロース、0.2mM Co2+及び1g/L Xu4Eが含まれる。反応を50℃で1時間実施し、次に538μLのHClO4を添加することにより反応を停止させた。207μLの5MKOHを加えることにより混合物を中和した。不活性化されたタンパク質と沈殿物を遠心分離で除去し、サンプルを島津高速液体クロマトグラフィーで分離し、エレクトロスプレーイオン化(ESI)を備えた四重極飛行時間型タンデム質量分析QTOF(compact QTOF、Bruker、ドイツ)で生成物を検出した。Waters Sugar Pak Iカルシウムイオン交換カラム(300 x6.5 mm、10μm粒子サイズ)をサンプル分離の固定相として使用しました(Waters Co、米国マサチューセッツ州ミルフォード)。移動相は脱イオン水、流量は0.5mL/minであった。カラム温度は80℃、サンプルローディングは20μlであった。ESIは負イオンモードを使用した。キャピラリー電圧は4500V、噴霧器圧力は2bar、乾燥ヒーターは200℃、乾燥気流は8L/minであった。
【0196】
発酵生成物又は細胞溶解物
本開示はまた、本開示のポリペプチドを含む発酵生成物又は細胞溶解物に関する。発酵生成物には、全細胞(目的のポリペプチドを産生するために使用される本開示のポリペプチドをコードする遺伝子を含む宿主細胞を含む)、又は細胞溶解物などの発酵プロセスで使用される他の成分がさらに含まれる。いくつかの実施形態において、該組成物は、前記酵素を含む死滅した全細胞、前記酵素を含む細胞溶解物、及び培地を含む前記酵素を含む細胞死滅した全培養液である。
【0197】
擬似移動床による分離
擬似移動床(SMB)は、液体分離操作に吸着の原理を利用する物質移動装置であり、逆流連続操作モードで実行されている。工業用SMBは、有機酸、アミノ酸、希少糖などの低付加価値の生物学的製品を分離するためにますます使用されている。酵素固定化とSMB分離を組み合わせることで、必要なL-ペントースの製造コストを効果的に削減し、基質の利用効率を向上させることができる。例示的に、SMB樹脂には、Shodex Sugar KS-801ナトリウムイオン交換カラム、Waters Sugar Pak Iカルシウムイオン交換カラム、Bio-Rad Aminex HPX-87P鉛イオン交換カラム又はBio-Rad Aminex HPX-87H水素イオン交換カラムのいずれかが含まれる。或いは、類似の樹脂、又はそれらのシリーズの組み合わせである。
【実施例】
【0198】
実施例
本開示の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本開示の特定の実施形態を示す一方で、この詳細な説明を読んだ後、様々な変形例及び修正が当業者に明らかになるので、詳細な説明及び特定の例は例示の目的でのみ与えられることを理解されたい。
【0199】
実施例で使用されるすべての試薬は、特に断りのない限り、市販されているものである。
【0200】
材料及び方法
【0201】
試薬及び材料
【0202】
特に明記されていない限り、すべての薬剤は分析グレード以上であり、Sigma-Aldrich(セントルイス、ミズーリ州、米国)又はChina Sinopharm Group(上海、中国)から購入した。サーモスポラマリーナ(Thermotoga maritima)MSB8及びAquifexaeolicusのゲノムDNAは、American Type Culture Collection(Manassas、Virginia、USA)から購入した。大腸菌TOP10及びDH5α(Thermo Fisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)をDNA操作及びプラスミド増幅に使用した。組換えタンパク質の発現には、大腸菌E.coli BL21(DE3)(Invitrogen Biotech Co.,Ltd.、Carlsbad、CA、USA)を使用した。
【0203】
本開示の技術的な構成において、記載のヌクレオチド及びアミノ酸配列リストの番号によって表される意味は以下の通りである:
【0204】
配列番号1に示されているのは、テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)MSB8の野生型タガチュロネート(tagaturonate)3-エピメラーゼ遺伝子(NCBI参照配列:WP_004081526.1、KEGG ID TM0440)のヌクレオチド配列である。
【0205】
配列番号2に示されているのは、テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)MSB8の野生型タガチュロネート3-エピメラーゼ遺伝子(NCBI参照配列:WP_004081526.1、KEGG ID TM0440)のアミノ酸配列である。
【0206】
配列番号3に示されているのは、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)のタガチュロネート3-エピメラーゼ遺伝子(NCBI参照配列:WP_015918744.1)のアミノ酸配列である。
【0207】
配列番号4に示されているのは、Thermotoga sp SG1のタガチュロネート3-エピメラーゼ遺伝子(NCBI参照配列:WP_101512888.1)のアミノ酸配列である。
【0208】
配列番号5に示されているのは、サーモトガカルディフォンティス(Thermotoga caldifontis)的タガチュロネート3-エピメラーゼ遺伝子(NCBI参照配列:WP_041077375.1)のアミノ酸配列である。
【0209】
配列番号6に示されているのは、シュードサーモトガ・レティンガエ(Pseudothermotoga lettingae)のタガチュロネート3-エピメラーゼ遺伝子(NCBI参照配列:WP_012002872.1)のアミノ酸配列である。
【0210】
配列番号7に示されているのは、ハラナエロビウムコンゴレンス(Halanaerobium congolense)のタガチュロネート3-エピメラーゼ遺伝子(NCBI参照配列:WP_081374543.1)のアミノ酸配列である。
【0211】
配列番号8に示されているのは、サーモセディミバクターリトリペルエンシス(Thermosediminibacter litoriperuensis)の4-エピメラーゼ遺伝子(NCBI参照配列:TYP53248.1)のアミノ酸配列である。
【0212】
配列番号9に示されているのは、Rhodothermus marinusの4-エピメラーゼ遺伝子(NCBI参照配列:WP_012844026.1)のアミノ酸配列である。
【0213】
配列番号10に示されているのは、Gracilibacillus timonensisの4-エピメラーゼ遺伝子(NCBI参照配列:WP_066188474.1)のアミノ酸配列である。
【0214】
配列番号11に示されているのは、サーモトガ(Thermotogae bacterium)の4-エピメラーゼ遺伝子(NCBI参照配列:HCZ06146.1)のアミノ酸配列である。
【0215】
配列番号12に示されているのは、Thermotogae bacteriumの4-エピメラーゼ遺伝子(NCBI参照配列:RKX45454.1)のアミノ酸配列である。
【0216】
配列番号13に示されているのは、Candidatus Acetothermia bacteriumの4-エピメラーゼ遺伝子(NCBI参照配列:HAF71394.1)のアミノ酸配列である。
【0217】
配列番号14に示されているのは、Pseudothermotoga thermarumの4-エピメラーゼ遺伝子(Kegg ID:Theth_1083)のアミノ酸配列である。
【0218】
配列番号15に示されているのは、Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticumDSM571の4-エピメラーゼ遺伝子(Kegg ID:Tthe_2391)のアミノ酸配列である。
【0219】
配列番号16に示されているのは、Thermofilum adornatus1505の4-エピメラーゼ遺伝子(Kegg ID:TCARB_0828)のアミノ酸配列である。
【0220】
配列番号17に示されているのは、Thermoanaerobacter italicusの4-エピメラーゼ遺伝子(Kegg ID:Thit_1746)のアミノ酸配列である。
【0221】
配列番号18に示されているのは、Thermotoga naphthophilaの4-エピメラーゼ遺伝子(Kegg ID:Tnap_0222)のアミノ酸配列である。
【0222】
配列番号19に示されているのは、Thermoclostridium stercorarium DSM8532の4-エピメラーゼ遺伝子(Kegg ID:Cst_c08510)のアミノ酸配列である。
【0223】
配列番号20に示されているのは、Dictyoglomus thermophilumの4-エピメラーゼ遺伝子(Kegg ID:DICTH_1923)のアミノ酸配列である。
【0224】
配列番号21に示されているのは、Spirochaeta thermophila DSM6192の4-エピメラーゼ遺伝子(Kegg ID:STHERM_c04350)のアミノ酸配列である。
【0225】
配列番号22に示されているのは、Singulisphaera acidiphilaの4-エピメラーゼ遺伝子(Kegg ID:Sinac_2806)のアミノ酸配列である。
【0226】
配列番号23に示されているのは、Thermotoga maritima MSB8的D-キシルロース5-リン酸4-エピメラーゼ遺伝子(Kegg ID:TM0283)のアミノ酸配列である。
【0227】
配列番号24に示されているのは、サーモトガカルディフォンティス(Thermotoga caldifontis)的D-キシルロース5-リン酸4-エピメラーゼ遺伝子(NCBI Reference Sequence:WP_041077291.1)のアミノ酸配列である。
【0228】
配列番号25に示されているのは、Thermotoga neapolitana DSM4359的D-キシルロース5-リン酸4-エピメラーゼ遺伝子(GenBank:ACM22577.1)のアミノ酸配列である。
【0229】
配列番号26に示されているのは、Pseudothermotoga lettingaeのIIアルドラーゼ(GenBank:KUK21094.1)のアミノ酸配列である。
【0230】
配列番号27に示されているのは、枯草菌(Bacillus subtilis)のD-キシルロース5-リン酸4-エピメラーゼ遺伝子(Kegg ID:BSU28780)のアミノ酸配列である。
【0231】
配列番号28に示されているのは、Geobacillus zalihae的D-キシルロース5-リン酸4-エピメラーゼ遺伝子(NCBI Reference Sequence:WP_060788488.1)のアミノ酸配列である。
【0232】
配列番号29に示されているのは、Geobacillus stearothermophilus的D-キシルロース5-リン酸4-エピメラーゼ遺伝子(GenBank:KFL15052.1)のアミノ酸配列である。
【0233】
配列番号30に示されているのは、Parageobacillus thermoglucosidasius的D-キシルロース5-リン酸4-エピメラーゼ遺伝子(NCBI Reference Sequence:WP_042385633.1)のアミノ酸配列である。
【0234】
配列番号31に示されているのは、Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticumのD-キシルロース5-リン酸4-エピメラーゼ遺伝子(NCBI Reference Sequence:WP_094043878.1)のアミノ酸配列である。
【0235】
配列番号32に示されているのは、大腸菌(Escherichia coli)K-12MG1655のD-キシルロース5-リン酸4-エピメラーゼ遺伝子(Kegg ID:b0061)のアミノ酸配列。
【0236】
配列番号33~122に示されているのは、本発明者らによって構築された変異体である。変異体の特定の変異部位については、本開示の表3の説明を参照されたい。
【0237】
なお、先行技術(例えば、GenBank)のデータベースに開示された内容によれば、配列番号3~32で示されるアミノ酸配列に対応するヌクレオチド配列もまた、当技術分野の当業者に知られている。
【0238】
実施例1.ペントースの分離と検出
【0239】
D-キシロース、D-キシルロース、D-リブロース及びL-アラビノースは、以下の(1)~(4)に記載されている方法のいずれかを使用して分離された:
【0240】
(1)Bio-Rad Aminex HPLC HPX-87H液相イオン交換カラムを使用して分離した。その分離条件は:カラム温度が60℃、流動相が5mM 硫酸、流量が0.6mL/minであった。
【0241】
(2)Bio-Rad Aminex HPX-87P鉛イオン交換カラム、カラム温度が80℃、流動相が脱イオン水、流量が0.6mL/minであった。
【0242】
(3)Waters Sugar Pak Iカルシウムイオン交換カラム、カラム温度が80℃、流動相が脱イオン水、流量が0.5mL/minであった。
【0243】
(4)Shodex Sugar KS-801ナトリウムイオン交換カラム、カラム温度が70℃、流動相が脱イオン水、流量が0.5mL/minであった。
【0244】
上記(1)~(4)の方法で分離したD-キシルロース、D-キシロース、D-リブロース、L-アラビノースの場合、その濃度は、示差屈折率検出器を備えた島津高速液体クロマトグラフィーで検出できる。
【0245】
実験結果:D-キシロース、D-キシルロース、D-リブロース及びL-アラビノースについて、上記(1)~(4)に示したHPLCによるクロマトグラフィー分離の効果を
図4に示した。その中で、(1)に示すHPLC分離条件が最も優れた分離効果を示している。
【0246】
実施例2.L-リブロース-5-リン酸4-エピメラーゼからのXu4E機能を持つ酵素のマイニング
【0247】
基質構造の類似性と類似な酵素触媒メカニズムを考慮して、L-リブロース-5-リン酸4-エピメラーゼファミリー(RP4E、EC5.1.3.4)からD-キシルロースをL-リブロースに変換する可能性のあるXu4E酵素を選択した。我々が、枯草菌(Bacillus subtilis168)、Geobacillus stearothermophilus、大腸菌(Escherichia coli)、サーモスポラマリーナ(T.maritima)のそれぞれから4つのRP4Eをクローニングし、pETプラスミドにクローニングした。発現プラスミドを保有するE.coli BL21(DE3)を増殖させ、組換えタンパク質を発現させた。
【0248】
His-tag付きタンパク質をアフィニティー吸着により精製した後、本開示に記載の「ポリペプチド/酵素がXu4E酵素活性を有するかどうかを判断するための測定方法」により、得られた組換えタンパク質を検出した。試験結果から、サーモスポラマリーナ(Thermusmarinus)、枯草菌及びバチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)に由来する3つのRP4Eは、ある程度のXu4E活性を示し、比活性は約0.0002~0.0003U /mgであったが、E.coli由来のRP4Eの比活性は0.0001U/mg未満であった。
【0249】
上記の実験結果に基づいて、L-リブロース-5-リン酸4-エピメラーゼファミリー(RP4E、EC5.1.3.4)を保有する多くの微生物から対応するrp4e遺伝子をクローニングし、それらをpETプラスミドにクローニングした。前述の発現プラスミドを保有する大腸菌BL21(DE3)を培養し、組換えタンパク質を発現させた。さらに、得られた組換えタンパク質は、本開示に記載の「ポリペプチド/酵素がXu4E酵素活性を有するかどうかを判断するための測定方法」によって検出された。
【0250】
前述の実験方法により、Xu4E酵素活性を有する天然酵素は、配列番号23~32で示される配列によってコードされる酵素であることが見出された。
【0251】
実施例3.タガチュロネート3-エピメラーゼからのXu4E機能を有する新しい酵素のマイニング
【0252】
基質構造の類似性と類似な酵素触媒作用メカニズムを考慮して、例2と同様の方法を使用して、タガチュロネート3-エピメラーゼ(UxaE、EC5.1.2.7)からD-キシルロースをL-リブロースに変換する機能を持つ可能な新しい酵素を選択した。様々な微生物から複数のuxae遺伝子をクローニングし、それらをpETプラスミドにクローニングした。発現プラスミドを保有するE.coli BL21(DE3)を増殖させ、組換えタンパク質を発現させた。
【0253】
His-tag付きタンパク質をアフィニティー吸着により精製した後、本開示に記載の「ポリペプチド/酵素がXu4E酵素活性を有するかどうかを判断するための測定方法」により、得られた組換えタンパク質を検出した。試験結果から、サーモスポラマリーナ(Thermusmarinus)由来のタガチュロネート3-エピメラーゼ(Tm0440)は、最適化された反応条件なしで、約0.012 U/mgの比活性を示した。
【0254】
前述の実験方法により、Xu4E酵素活性を有する天然酵素は、配列番号2~22で示される配列によってコードされる酵素であることが見出された。
【0255】
実施例4.活性の増強されたXu4E変異体M4
【0256】
指向性進化のための天然酵素として、熱安定性が高く、触媒作用のある無差別活性が高いサーモスポラマリーナ(Thermusmarinus)由来のタガチュロネート3-エピメラーゼ(TmXu4E)を使用した。ここで、前述のTmXu4Eのアミノ酸配列は、配列番号2で示される配列であり、前述のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列は、配列番号1で示される配列である。
【0257】
xu4e変異体のライブラリーを構築するために、変異率が低い(即ち、遺伝子ごとに約1つの変異部位を生成する)Error-prone PCRを使用した。プラスミドpGS-Xu4Eに挿入された変異体のライブラリーを宿主大腸菌JZ919に形質転換し、D-キシロースを含むLB培地の固体プレートにプレーティングした。プレート上で約10,000クローンをスクリーニングし、陽性変異体を選択して96ウェルプレートに播種し、D-キシロースを含むLB培地で培養した。本開示に記載の「Xu4E変異体ライブラリーのハイスループットスクリーニング」法を使用して、マイクロプレートリーダーを使用して、マイクロプレート内の細胞培養液の蛍光シグナルを検出し、陽性変異体を確認した。1回ごとにいくつかの陽性変異体を選んだ。
【0258】
スクリーニングされた変異体から、S125Dを含む変異体M4を選択した。変異体M4の比活性の検出を行った。M4は、天然酵素と比較して比活性が25%増加したことが分かった(
図5)。
【0259】
実施例5.活性を高め続けるXu4E変異体M47
【0260】
実施例4より選択した変異体M2から、変異率が低い(つまり、遺伝子ごとに約1つの変異部位を生成する)Error-prone PCRを使用して、xu4e変異体のライブラリーを構築した。プラスミドpGS-Xu4Eに挿入された変異体のライブラリーを宿主大腸菌JZ919に形質転換し、D-キシロースを含むLB培地の固体プレートに塗布した。プレート上で約10,000クローンをスクリーニングし、陽性変異体を選択して96ウェルプレートに播種し、D-キシロースを含むLB培地で培養した。マイクロプレートリーダーを使用してマイクロプレート内の細胞培養液の蛍光シグナルを検出することにより、陽性変異体を確認した。
【0261】
スクリーニングで得られた変異体から、2つのアミノ酸変異S125D/N297Fを含む変異体M47を選択した。前述の変異体M47の比活性の検出を行った。M47はより高い比活性を示すことが分かった(
図5)。
【0262】
実施例6.活性を高め続けるXu4E変異体M57
【0263】
実施例5で選択された変異体M47から出発して、低い変異率(即ち、遺伝子あたり約1つの変異部位を生成する)でError-prone PCRを使用して、xu4e変異体のライブラリーを構築した。プラスミドpGS-Xu4Eに挿入された変異体のライブラリーを宿主E.coli JZ919に形質転換し、D-キシロースを含むLB培地の固体プレートに塗布した。プレート上で約10,000クローンをスクリーニングし、陽性変異体を選択して96ウェルプレートに播種し、D-キシロースを含むLB培地で培養した。マイクロプレートリーダーを使用してマイクロプレート内の細胞培養液の蛍光シグナルを検出することにより、陽性変異体を確認した。
【0264】
スクリーニングで得られた変異体から、3つのアミノ酸変異S125D/V267I/N297Fを含む変異体M57を選択した。前述の変異体M57の比活性の検出を行った。結果として、M57はより高い比活性を示すことが分かった(
図5)。
【0265】
実施例7.活性を高め続けるXu4E変異体M61
【0266】
実施例6で選択された変異体M57から出発して、低い変異率(即ち、遺伝子あたり約1つの変異部位を生成する)でError-prone PCRを使用して、xu4e変異体のライブラリーを構築した。プラスミドpGS-Xu4Eに挿入された変異体のライブラリーを宿主E.coli JZ919に形質転換し、D-キシロースを含むLB培地の固体プレートに塗布した。プレート上で約20,000クローンをスクリーニングし、陽性変異体を選択して96ウェルプレートに播種し、D-キシロースを含むLB培地で培養した。マイクロプレートリーダーを使用してマイクロプレート内の細胞培養液の蛍光シグナルを検出することにより、陽性変異体を確認した。
【0267】
スクリーニングで得られた変異体から、4つのアミノ酸変異S125D/V163K/V267I/N297Fを含む変異体M61を選択した。前述の変異体M61の比活性の検出を行った。結果として、M61はより高い比活性を示すことが分かった(
図5)。
【0268】
実施例8.活性を高め続けるXu4E変異体M64
【0269】
実施例7で選択された変異体M61から出発して、低い変異率(即ち、遺伝子あたり約1つの変異部位を生成する)でError-prone PCRを使用して、xu4e変異体のライブラリーを構築した。プラスミドpGS-Xu4Eに挿入された変異体のライブラリーを宿主E.coli JZ919に形質転換し、D-キシロースを含むLB培地の固体プレートに塗布した。プレート上で約15,000クローンをスクリーニングし、陽性変異体を選択して96ディープウェルプレートに播種し、D-キシロースを含むLB培地で培養した。マイクロプレートリーダーを使用してマイクロプレート内の細胞培養液の蛍光シグナルを検出することにより、陽性変異体を確認した。
【0270】
スクリーニングで得られた変異体から、5つのアミノ酸変異S125D/V163K/V267I/N297F/Y403Wを含む変異体M64を選択した。前述の変異体M64の比活性の検出を行った。結果として、M64はより高い比活性を示すことが分かった(
図5)。
【0271】
実施例9.活性を高め続けるXu4E変異体M72
【0272】
実施例8で選択された変異体M64から出発して、低い変異率(即ち、遺伝子あたり約1つの変異部位を生成する)でError-prone PCRを使用して、xu4e変異体のライブラリーを構築した。プラスミドpGS-Xu4Eに挿入された変異体のライブラリーを宿主E.coli JZ919に形質転換し、D-キシロースを含むLB培地の固体プレートに塗布した。プレート上で約12,000クローンをスクリーニングし、陽性変異体を選択して96ウェルプレートに播種し、D-キシロースを含むLB培地で培養した。マイクロプレートリーダーを使用してマイクロプレート内の細胞培養液の蛍光シグナルを検出することにより、陽性変異体を確認した。
【0273】
スクリーニングで得られた変異体から、6つのアミノ酸変異S125D/V163K/V267I/N297F/S402V/Y403Wを含む変異体M72を選択した。前述の変異体M72の比活性の検出を行った。結果として、M72はより高い比活性を示すことが分かった(
図5)。
【0274】
実施例10.活性を高め続けるXu4E変異体M75
【0275】
実施例9で選択された変異体M72から出発して、低い変異率(即ち、遺伝子あたり約1つの変異部位を生成する)でError-prone PCRを使用して、xu4e変異体のライブラリーを構築した。プラスミドpGS-Xu4Eに挿入された変異体のライブラリーを宿主E.coli JZ919に形質転換し、D-キシロースを含むLB培地の固体プレートに塗布した。プレート上で約18,000クローンをスクリーニングし、陽性変異体を選択して96ウェルプレートに播種し、D-キシロースを含むLB培地で培養した。マイクロプレートリーダーを使用してマイクロプレート内の細胞培養液の蛍光シグナルを検出することにより、陽性変異体を確認した。
【0276】
スクリーニングで得られた変異体から、7つのアミノ酸変異S125D/V163K/V267I/N297F/W306M/S402V/Y403Wを含む変異体M75を選択した。前述の変異体M75の比活性の検出を行った。結果として、M75はより高い比活性を示すことが分かった(
図5)。
【0277】
実施例11.活性を高め続けるXu4E変異体M87
【0278】
実施例9で選択された変異体M72から出発して、低い変異率(即ち、遺伝子あたり約1~2つの変異部位を生成する)でError-prone PCRを使用して、xu4e変異体のライブラリーを構築した。プラスミドpGS-Xu4Eに挿入された変異体のライブラリーを宿主E.coli JZ919に形質転換し、D-キシロースを含むLB培地の固体プレートに塗布した。プレート上で約25,000クローンをスクリーニングし、陽性変異体を選択して96ディープウェルプレートに播種し、D-キシロースを含むLB培地で培養した。マイクロプレートリーダーを使用してマイクロプレート内の細胞培養液の蛍光シグナルを検出することにより、陽性変異体を確認した。
【0279】
スクリーニングで得られた変異体から、9つのアミノ酸変異S125D/R131S/V163K/V267I/N297F/W306M/Q318K/S402V/Y403Wを含む変異体M87を選択した。前記変異体M87的アミノ酸配列は、配列番号119で示される配列である。
【0280】
実施例12.M87変異体の比活性の測定
【0281】
実施例11で得られた変異体M87の比活性を野生型Xu4Eと比較した(
図5)。
【0282】
比較結果から、変異体M87の比活性は約2U/mgであった。つまり、野生型Xu4Eと比較して、変異体の比活性が大幅に改善されている。
【0283】
実施例13.単一変異の変異体の調製
【0284】
野生型TmXu4Eから出発して、本開示に記載の「Xu4E変異体ライブラリーの構築」の方法により、部位飽和変異誘発により野生型TmXu4E上の1つのアミノ酸を変更することにより、9つの単一アミノ酸部位の変異体ライブラリーを調製した。ここで、前述の野生型TmXu4Eのアミノ酸配列は、配列番号2で示される配列であり、前述のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列は、配列番号1で示される配列である。
【0285】
9つのアミノ酸変異部位が変異体M87から選択され、これらは、それぞれ125位のセリンで、131位のアルギニン、161位のバリン、267位のバリン、297位のアスパラギン、306位のトリプトファン、318位のグルタミン、402位のセリン、又は403位のチロシンである。9つの変異体ライブラリーを宿主大腸菌JZ919のプラスミドpGS-Xu4Eに挿入し、D-キシロースを含む各LB培地にプレーティングした。陽性変異体は、本開示に記載されている「Xu4E変異体ライブラリーのハイスループットスクリーニング」法によってスクリーニングされた。陽性変異体は野生型酵素と比較して96ウェルマイクロプレートで検証され、DNAシーケンシングによってシーケンシングされた。
【0286】
スクリーニングにより得られた変異体から、以下の9つの変異体:S125D、R131S、V163K、V267I、N297F、W306M、Q318K、S402V及びY403Wが選択された。ここで、前述の変異体におけるアミノ酸の番号付けは、配列番号2に従って番号が付けられている。
【0287】
上記の9つの変異体は、大腸菌BL21(DE3)で過剰発現し、ニッケル含有イオン樹脂へのアフィニティー吸着によって精製された。変異体S125D、V163K、V267I、N297F、W306M、Q318K、S402V及びY403WのXu4E酵素の比活性を
図6に示す。これらのうち、8つの変異体は野生型TmXu4Eよりも高い比活性を示し、R131S変異体は野生型TmXu4Eよりもわずかに低い比活性を示した。
【0288】
実施例14.Xu4E多重変異体の調製及び比活性の測定
【0289】
実施例4-実施例11と同じ方法で、Xu4E変異体をさらにスクリーニングした。
【0290】
スクリーニング後、Xu4Eに基づいて以下のアミノ酸多重変異体を得た(ここで、前述のXu4E変異体はすべて配列番号2に従って番号が付けられている):
【0291】
M41(二重変異):V267I/N297F、
【0292】
M46(二重変異):W306M/Y403W、
【0293】
M50(3つの変異):V163K/V267I/Y403W、
【0294】
M58(4つの変異):V163K/V267I/N297F/Y403W、
【0295】
M68(6つの変異):V163K/V267I/N297F/W306M/S402V/Y403W、
【0296】
M78(7つの変異):R131S/V163K/V267I/N297F/W306M/S402V/Y403W。
【0297】
上記の変異体の比活性は、本開示に記載されている「Xu4E酵素活性測定」の方法によって検出された。
【0298】
実験結果から、M41、M46、M50、M58、M68、M78の酵素活性は、それぞれ約0.30U/mg、0.21U/mg、0.18U/mg、0.33U/mg、0.41U/mg、0.57U/mgであった。
【0299】
実施例15.単一変異のXu4E変異体の調製及び比活性の測定
【0300】
実施例4と同じ方法で、Xu4E変異体ライブラリーを取得した。
【0301】
得られたXu4E変異体は以下の通りである(ここで、前述のXu4E変異体はすべて配列番号2に従って番号が付けられている):
【0302】
M13(単一変異):D161A、
【0303】
M19(単一変異):E266A、
【0304】
M1(単一変異):G102L、
【0305】
M30(単一変異):K337D、
【0306】
M31(単一変異):D394M。
【0307】
実験結果から、M13、M19、M1、M30、M31の比活性は、それぞれ約0.008U/mg、0.013U/mg、0.03U/mg、0.06U/mg、0.04U/mgであった。
【0308】
上記の実験結果から、上記のXu4E変異体の比活性は野生型TmXu4E(0.09 U / mg)よりも低いが、それでもXu4E酵素活性を有している。
【0309】
実施例16.組換え熱安定性酵素の単純な精製
【0310】
T.thermophiles由来のD-キシロースイソメラーゼ、サーモスポラマリーナ(T.maritima)由来のXu4E、及びバチルス・ステアロサーモフィラス(G.stearothermophilus)由来のL-アラビノースイソメラーゼは、大腸菌E.coli BL21(DE3)で異種発現した。細胞を回収して破砕した後、細胞溶解物の上清を熱処理(70℃、20 min)した。遠心分離後、3つの熱安定性酵素を含む上清を混合して、それによりD-キシロースからL-アラビノースへの生物変換を行った。SDS-PGAEにより、標的タンパク質の発現量と精製タンパク質の純度を検出した(
図7)。
【0311】
実施例17.D-キシロースからのL-リブロースの合成
【0312】
D-キシロースイソメラーゼ(D-XI)、及びXu4E変異体M87を含む2酵素システムを構築した。基質は50mM D-キシロースであった。反応混合物には、100mM HEPESバッファー(pH8.0)、0.2mM Co2+、1mM Mn2+、1g/L Xu4E M8及び1U/mL XIが含まれる。反応溶液を穏やかに混合し、次に嫌気性条件下で50℃で反応させた。
【0313】
12時間の反応後、L-リブロースがHPLCにより検出され、L-リブロースの取得に成功した。人工ルートの結果は設計と一致していることが証明されている。
【0314】
実施例18.50mM D-キシロースを使用したL-アラビノースの合成
【0315】
D-キシロースイソメラーゼ(D-XI)、Xu4E変異体M87及びL-アラビノース合成酵素(L-AI)を含む3酵素システムを構築した。基質は50mM D-キシロースであった。反応混合物は、0.2mM Co2+、1mM Mn2+、1g/L Xu4E(ここで、Xu4Eは野生型又はM87変異体から選択される)、1U/mL D-XI及び1U/mL L-AIを含む100mM Trisバッファー(pH8.0)である。3つの酵素と基質を含む反応液を混合した後、50℃で反応を行った。
【0316】
Xu4E変異体M87を含む3酵素システムは8時間の反応後に21mM のL-アラビノースを生成したが、野生型を含む3酵素システムは24時間の反応でわずか1.25mM のL-アラビノースを生成した(
図8)。
【0317】
実施例19.500mM D-キシロースを使用したL-アラビノースの合成
【0318】
D-キシロースイソメラーゼ(D-XI)、Xu4E変異体M87及びL-アラビノース合成酵素(L-AI)を含む3酵素システムを構築した。基質は500mM D-キシロースであった。反応混合物には、100mM Trisバッファー(pH8.0)、0.2mM Co2+及び1mM Mn2+を含む。Xu4Eの濃度が15g/Lで、XI及びAIの濃度が20U/mLに増加した。
【0319】
M87を含む3酵素系は、4時間の反応後に175mM L-アラビノースを生成した。そのL-アラビノースの比容積生産率は6.56g/リットル/時間に達した。8時間の反応後、反応が平衡に達したとき、基質のD-キシロースは207mM 、中間生成物のD-キシルロースとL-リブロースは、それぞれ55mMと42mM 、生成物のL-アラビノースは196mMであった(
図9)。
【0320】
実施例20.D-キシロースからのL-リボースの生産
【0321】
D-キシロースイソメラーゼ(D-XI)、Xu4E変異体M87及びリン酸マンノースイソメラーゼ(MPI)を含む3酵素システムを構築した。基質は50mM D-キシロースであった。G.thermodenitrificans由来のmpi遺伝子をクローン化し、pETプラスミドに挿入した(Kim et al.2014)。反応混合物は、0.2mM Co2+、1mM Mn2+、1g/L Xu4E(M87変異体)、1U/mL XI及び1U/mL MPIを含む50mM Trisバッファー(pH8.0)である。3つの酵素と基質を含む反応溶液とを混合した後、触媒反応を40℃で実施した。
【0322】
24時間の反応後、L-リボースがHPLCで検出され、この人工経路の結果が設計と一致していることが証明された。
【0323】
実施例21.L-ペントースの製造と分離
【0324】
エピメラーゼとイソメラーゼによって触媒される反応は反応平衡状態で存在するため、標的基質を酵素及び基質/中間体から効果的に分離することが非常に重要である。例えば、D-グルコースを使用して高フルクトースシロップを製造するには、擬似移動床(SMB)を使用してD-グルコースとフルクトースシロップを分離し、未利用のD-グルコースをさらにリサイクルし、高フルクトース含有シロップを取得する(
図10)。固定化キシロースイソメラーゼ及びキシロースイソメラーゼを含む固定化微生物全細胞は、高フルクトースシロップの工業生産に広く使用されている(
図10)。精製リコンビナーゼ又は過剰発現リコンビナーゼを含む粗細胞溶解物に限定されないが、複数の酵素の共固定化は、酵素の耐用年数を延長し、酵素及び生成物/中間体の分離を容易にし、酵素コストの使用を削減する。さらに、酵素を含む微生物の全細胞を固定化して、生体触媒の安定性及び生体触媒の再利用性を改善することは、オプションのソリューションである。さらに、反応速度を上げるために、微生物の全細胞の透過処理もオプションのソリューションでもある。
【0325】
本実施例では、擬似移動床(SMB)を使用しているが、充填樹脂はShodex Sugar KS-801ナトリウムイオン交換カラム、Waters Sugar Pak Iカルシウムイオン交換カラム、Bio-Rad Aminex HPX-87P鉛イオン交換カラム、Bio-Rad Aminex HPX-87H水素イオン交換カラム、又は同様の機能を備えたクロマトグラフィー分離カラムがあるが、これらに限定されない。
【0326】
L-アラビノースの製造を例にとると、擬似移動床(SMB)を使用して、未使用のD-キシロース及び中間生成物であるL-リブロースとD-キシルロースからL-アラビノースを分離できる(
図10)。
【0327】
実施例22.Xu4E触媒による生成物L-リブロースの特徴付け
【0328】
基質D-キシルロースの反応は、野生型Xu4E及びXu4E変異体M87で触媒された。野生型Xu4Eは50℃で24時間行い、Xu4E変異体M87は50℃で10分間行った。基質のD-キシルロースと生成物のL-リブロースを、Waters Sugar Pakカラムを備えたHPLCで分離した。
【0329】
HPLCクロマトグラムを
図11に示す。生成物(L-リブロース)の保持時間は15.49分で新しいピーク(黒い実線)であり、L-リブロース標準の保持時間と同じである。HPLCで分離された生成物のピークは、D-キシルロース及びL-リブロース標準品と比較して、一次質量分析(
図12)及び二次質量分析(
図13)によって特徴づけられた。
【0330】
実験結果は、野生型Xu4E及びXu4E変異体M87がD-キシルロースからL-リブロースへの酵素反応を触媒できることを明確に示している。
【0331】
実施例23. 異なる由来の野生型Xu4Eの変異体の機能の検出
【0332】
バイオインフォマティクスの方法に基づいて、実施例3、実施例14及び実施例15で得られた異なる野生型Xu4Eの配列を分析及び比較した。その中で、*は異なる由来の野生型Xu4Eの保存されたアミノ酸部位を示す。
【0333】
同時に、本出願の実施例に記載の試験方法により配列番号2に示す配列と比較して配列同一性を算出する際に、前述の異なる野生型Xu4Eのアミノ酸に番号を付けた。
【0334】
図14A及び
図14Bで示されるように、前述の異なる野生型Xu4Eについて、配列番号2で示される前述の番号付けに対応して番号付けされる場合、配列番号2で示される番号付けの以下の部位に対応するアミノ酸は、変異後も依然としてXu4E活性を有する:G102、S125、R131、D161、V163、E266、V267、N297、W306、Q318、K337、D394、S402、Y403。
【0335】
実施例24. 短縮された配列を有するXu4E変異体の構築
【0336】
本発明者らは、野生型Xu4Eをコードする配列を切断して、1~86位及び196-236位をコードするアミノ酸配列を別々に又は一緒に除去し、本開示に記載の方法によって、切断したXu4E変異体の生物活性を測定した。
【0337】
実験結果は、配列切断後のタンパク質の活性が、90%(1~86番目のアミノ酸除去)、87%(196~236番目のアミノ酸除去)、又は85%(196~236番目のアミノ酸除去)、85%(196-236番目アミノ酸を同時に除去)であるXu4Eの活性を依然として維持していることを示している。
【0338】
実施例25.本開示におけるXu4E活性を有する酵素の統計
【0339】
本開示の実施例4~16に記載の方法により、Xu4E活性を有する酵素の配列及びその酵素活性の実験結果を得た。
【0340】
実験結果を表3に示す。
【0341】
【0342】
この仕様で開示されているすべての技術的特徴は、任意の組み合わせで組み合わせることができる。 この仕様で開示されている各特徴は、同じ、同等、又は類似の目的を果たす他の特徴に置き換えることもできる。 したがって、特に明記しない限り、開示される各特徴は、一連の同等又は類似の特徴の例にすぎない。
【0343】
さらに、前述の説明から、当業者は、本開示からその主要な特徴を容易に理解することができ、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な異なる目的に適応するために本発明に多くの修正を加えることができる。使用条件、したがってそのような変更も、添付の特許請求の範囲に含まれることを意図している。
【0344】
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【図 】
【配列表】