(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】電気化学装置及び該電気化学装置を備える電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20241105BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241105BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241105BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20241105BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20241105BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20241105BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241105BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20241105BHJP
H01G 11/28 20130101ALI20241105BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20241105BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20241105BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/70 A
H01M10/0587
H01M10/052
H01M50/531
H01G11/28
H01G11/70
H01G11/74
(21)【出願番号】P 2022543155
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(86)【国際出願番号】 CN2020087515
(87)【国際公開番号】W WO2021217423
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】劉 暁静
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-018646(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0044234(US,A1)
【文献】特開2000-077055(JP,A)
【文献】特開2016-018654(JP,A)
【文献】特開2006-032052(JP,A)
【文献】特開2012-084412(JP,A)
【文献】特開2014-225326(JP,A)
【文献】特開2009-163929(JP,A)
【文献】特開2000-106167(JP,A)
【文献】特開2019-046592(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0207212(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1949580(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110459730(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/0587
H01M 10/052
H01M 50/531
H01G 11/70
H01G 11/74
H01G 11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学装置であって、
正極と、
セパレータと、
負極と、を備え、
前記負極は、
負極集電体と、
シリコン系材料を含む負極活物質層と、
前記負極集電体の長軸側辺に設置されて
おり、且つ、前記負極集電体の、前記負極活物質層両端の間の領域に配置される負極タブと、を備え、前記負極タブの中心位置から長軸方向において前記負極活物質層のいずれか一端までの距離を第1長さとし、前記負極活物質層の長軸の長さを第2長さとし、前記負極は以下の関係式(I)を満たし、
【数1】
ここで、Dは
前記第2長さに対する前記第1長
さの比の値であり、Gは前記負極活物質層に対する前記シリコン系材料の重量比であり、且つ前記負極活物質層に対する前記シリコン系材料の重量比は
0.7以下である、
電気化学装置。
【請求項2】
前記負極集電体の厚さは、4μm~30μmであり、且つ前記負極は以下の関係式(II)を満たし、
【数2】
ここで、前記負極集電体の厚さはS
1であり、前記負極タブの厚さはS
2であり、前記負極活物質層の厚さはS
3である
請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記シリコン系材料は、シリコン単体、シリコン化合物、シリコン合金、及びシリコン酸素材料のうちの少なくとも一種を含む
請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記負極集電体の長軸の長さに対する前記負極活物質層の長軸の長
さの比の値は、0.8~1.0である
請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記電気化学装置は、巻回式構造であり、且つ、前記負極タブは、前記巻回式構造の中心から3層以上離れた位置に設置されている
請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記正極の正極タブは、前記負極タブの位置に対して前記巻回式構造の中心から外側へ1層だけ離れた位置に設置されている
請求項5に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記シリコン系材料は、前記シリコン系材料の表面の少なくとも一部に設置されている材料層をさらに含み、前記材料層は、重合体、無機粒子、アモルファスカーボン、及びカーボンナノチューブのうちの少なくとも一種を含む
請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記無機粒子は、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、シリコン単体、シリコン化合物、シリコン合金、及びシリコン酸素材料のうちの少なくとも一種を含み、前記重合体は、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリル酸、ポリ塩化ビニール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、及びアラミドのうちの少なくとも一種を含む
請求項7に記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記負極に凹溝が設置されており、前記負極タブが前記凹溝内に設置されている
請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項10】
電子装置であって、請求項1~9のいずれか一項に記載の電気化学装置を備える、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、エネルギー貯蔵の技術分野に関し、特に、負極構造及び該負極構造を備える電気化学装置、並びに電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル電子技術の急速な発展に伴い、人々は携帯電話、タブレット、ノートパソコン、ドローンなどのモバイル電子装置を使用頻度及び使用体験に対する要求がますます高まっている。したがって、電子装置にエネルギーを供給する電気化学装置(リチウムイオン電池など)は、より高いエネルギー密度、より高いレート、より高い安全性、及び充放電サイクル後のより少ない容量減衰を示す必要がある。
【0003】
電気化学装置のエネルギー密度とサイクル性能は、その負極材料と密接に関連している。現在、シリコン系の単体、合金又は化合物の少なくとも1つのシリコン系材料は高い1グラムあたりの理論容量を有するため、既存の黒鉛材料の代わりにシリコン系材料を用いることが広く検討されている。しかしながら、シリコン系材料は、導電率が低すぎ、高温膨張率が高すぎるという問題があるため、更にシリコン系材料を有する負極材料の負極構造に対する改善及び最適化を行う必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本願は、関連技術分野に存在する少なくとも1つの問題を少なくともある程度解決しようとするために、電気化学装置及び該電気化学装置を備える電子装置を提供する。
【0005】
本願の一態様によれば、本願は、正極と、セパレータと、負極とを備える電気化学装置を提供し、ここで、前記負極は、負極集電体と、負極活物質層と、負極タブとを備える。前記負極活物質層はシリコン系材料を含み、前記負極タブが前記負極集電体の長軸側辺に設置されて前記負極活物質層と接触し、ここで、前記負極タブが前記負極集電体の長軸側辺に設置されており、前記負極タブの中心位置から長軸方向において前記負極活物質層のいずれか一端までの距離を第1長とし、前記負極活物質層の長軸の長さを第2長さとし、且つ前記負極は以下の関係式(I)を満たす。
【数1】
ここで、Dは前記第1長さと前記第2長さとの比の値であり、Gは前記シリコン系材料の重量比であり、且つ前記シリコン系材料の重量比は70%以下である。
【0006】
本願の電気化学装置は、上記の設置を満たす負極タブを使用することで、負極のインピーダンスを効果的に低減し、セルの昇温を制御することができ、さらに、電気化学装置のサイクル膨張率を低減し、そのサイクル性能を向上させる。
【0007】
本願の別の形態によれば、本願は、上記の電気化学装置を備える電子装置をさらに提供する。
【0008】
本願の実施形態の他の態様及び利点は、部分的に後続の説明において、記載、表現、又は本願の実施形態の実施によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下、本願実施例または従来技術を容易に説明するために、本願実施例または従来技術を説明するための必要な図面を簡単に説明する。下記に記載の図面は本願の一部の実施例であり、当業者であれば、進歩性を有する努力をせずに、これらの図面に例示した構造に基づいて他の実施例の図面を得ることが明らかである。
【0010】
【
図1】
図1は、従来技術による負極構造の概略断面図である。
【
図2】
図2は、従来技術による負極構造の概略上面図である。
【
図3】
図3は、従来技術による巻回式セルの構造の概略図である。
【
図4】
図4は、本願の実施形態による負極構造の概略断面図である。
【
図5】
図5は、本願の実施形態による負極構造の概略上面図である。
【
図6】
図6は、本願の実施形態による巻回式セルの構造の概略図である。
【
図7】
図7は、負極タブが負極長軸の両端に設置された場合の電流分布の概略図である。
【
図8】
図8は、負極タブが負極長軸の中央部に設置された場合の電流分布の概略図である。
【
図9】
図9は、本願の実施形態による負極タブの設置位置、負極活物質のシリコン系材料含有量、及びセルの昇温を示す三次元グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願の実施例を詳細に説明する。本願明細書の全体において、同一又は類似の構成要素及び同一又は類似の機能を有する構成要素は、同様の符号で示されている。ここで、図面に関して記載されている実施例は、説明的で、図式的であり、本願を基本的に理解するために用いられる。本願の実施例は、本願を制限するものであると理解されるべきではない。
【0012】
本明細書で使用される「ほぼ」、「大体」、「実質的に」、及び「約」という用語は、小さな変化を描写及び説明するために用いられる。イベント又は状況と組み合わせて使用される場合、上記用語は、イベント又は状況が正確に発生する例、及びイベント又は状況に極めて類似的に発生する例を指すことができる。例として、数値と組み合わせて使用される場合、用語は、該数値の±10%以下の変化範囲を指すことができる。例えば、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、±0.05%以下である。例として、2つの数値の差が当該値の平均値の±10%以下(例えば、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、±0.05%以下)である場合、該2つの数値は「大体」同じであると考えられる。
【0013】
本明細書では、特に指定又は限定されない限り、例えば、「中央の」、「縦方向の」、「側方の」、「前方の」、「後方の」、「右側の」、「左側の」、「内部の」、「外部の」、「低い」、「高い」、「水平の」、「垂直の」、「よりも高い」、「よりも低い」、「上方の」、「下方の」、「上部の」や「底部の」という相対的な用語とその派生的な用語(例えば、「水平に」、「下向きに」、「上向きに」等)は、検討で記載され、又は図面に示される方向を引用すると解釈されるべきである。これらの相対的な用語は、説明の便宜上のために使用され、本願が特定の方向に構築又は動作されることを必要としない。
【0014】
また、本明細書では、範囲の形式で量、割合、及び他の数値を説明することがある。このような範囲の形式は、説明の利便性及び簡潔性のためのものであり、明確に規定された範囲で限定される数値を含むだけではなく、その範囲内に包含される全ての個別的な数値又はサブ範囲を含むことが柔軟に理解されるべきである。
【0015】
具体的な実施形態及び特許請求の範囲において、用語「…のうちの少なくとも一方」、「…のうちの少なくとも1つ」、「…のうちの少なくとも一種」、又は他の類似した用語によって接続されるアイテムのリストは、列挙されたアイテムの任意の組み合わせを意味する。例えば、アイテムA及びBが列挙されている場合、「A及びBの少なくとも一方」というフレーズは、Aのみ、Bのみ、あるいはAとBを意味する。別の例として、アイテムA、B及びCが列挙されている場合、「A、B及びCのうちの少なくとも一方」というフレーズは、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとB(Cを除く)、AとC(Bを除く)、BとC(Aを除く)、あるいはA、B、C全部を意味する。アイテムAは、単一の要素又は複数の要素を含むことができる。アイテムBは、単一の要素又は複数の要素を含むことができる。アイテムCは、単一の要素又は複数の要素を含むことができる。
【0016】
シリコン系材料自体は、半導体の特性を有し、シリコン系材料の粉末導電率が従来の黒鉛材料の粉末導電率よりもはるかに低いため、シリコン系材料を含む負極材料については、電子やイオンのいずれもインピーダンスが大きい。充放電サイクル過程では、特に高レートの充放電条件で、シリコン系材料を含有するセルの内部インピーダンスが高いため、その発熱によるエネルギー消費が増加させるとともに、セルの温度が著しく上昇するにより、サイクル容量の減衰の加速や放電レートの低下などの電気化学的性能が低下し、さらに、電気化学装置の熱暴走による潜在的な安全問題を引き起こす可能性がある。
【0017】
図1及び
図2は、従来技術における一般商業的に利用される負極構造の概略上面図である。
図3は、従来技術における巻回式構造を有するセルの概略図である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、従来技術において、負極活物質層102は負極集電体101の表面に設置されており、負極集電体101の長手方向の両端は負極活物質層102が設置されていない空箔領域であり、負極タブ103は負極集電体の一端の未塗布領域に設置されている。該負極、正極及びセパレータ107が巻回されてセルに形成する巻回式構造は
図3に示す。従来技術において、負極タブ106を負極集電体101の一端の空箔領域に設置し、正極タブ106を正極集電体104の一端の正極活物質層105無しの空箔領域に設置することにより、巻回工程中に負極タブ103及び正極タブ106がセルの最中央に設置されることを確保できる。この設計によれば、電気化学装置を調製するときの加工性を効果的に向上させるとともに、製造コストを低減することができる。しかしながら、1グラムあたりの容量が高い負極活物質(例えば、シリコン系材料)を使用する場合、負極活物質中のシリコン系材料の含有量が多いほど、負極材料層の導電率が小さくなり、負極の内部インピーダンスの増加と発熱電力の上昇を引き起こし、更に電気化学装置のサイクル性能が低下し、熱暴走という安全問題が発生する恐れがある。さらに、正極と負極に空箔領域を設置すると、電気化学装置のエネルギー密度を低下させる。
【0019】
本願の一態様によれば、本願は、負極タブの位置及びシリコン系材料の含有量を限定することにより、負極活物質層のインピーダンスを低減するとともに、負極の各部分の電流密度を改善し、更に充放電サイクルを行うときに負極の内部抵抗による発熱電力を低減することで、電気化学装置のサイクル性能及び安全性能を向上させる。
【0020】
図4及び
図5は、本願における一部の実施形態の負極構造の断面及び上面の概略図である。
【0021】
図4及び5に示されるように、本願は、負極集電体201と、負極活物質層202と、負極タブ203とを含む負極を提供し、負極タブ203が負極集電体201の長軸側辺に設置されて負極活物質層202と接触している。負極活物質層202は、シリコン系材料を含み、ここで、負極タブ203の中心位置から長軸方向において負極活物質層202のいずれか一端までの距離を第1長さ204とし、負極活物質層の長軸の長さを第2長さ205とする。上記の負極は、以下の関係式(I)を満たす。
【数2】
ここで、Dは第1長さ204と第2長さ205との比の値であり、Gは負極活物質層202中のシリコン系材料の重量比であり、且つシリコン系材料の重量比Gは70%以下である。
【0022】
上記の関係式(I)に適合する負極を備える電気化学装置は、動作中の充放電サイクル過程により上昇される温度が15℃未満である。従来技術と比較し、充放電サイクル過程において、本願の負極は、負極活物質層のおける電流の一部が負極活物質層を流れる伝導距離を効果的に低下することができ、それにより、負極自体の内部インピーダンス及び負極タブの周囲の電極シート領域の電流密度を低下し、セルの極化を低下するのに有利である。別の実施形態において、シリコン系材料の重量比Gが70%を超える場合、負極タブ203の中心位置を負極活物質層202の中央(即ち、第1長さ204と第2長さ205との比の値Dが0.5である場合)に設置することにより、電気化学装置の動作中の充放電サイクル過程により上昇される温度を下げることができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、
図4に示すように、負極は、以下の関係式(II)を満たす。
【数3】
ここで、負極集電体201の厚さはS
1であり、負極タブ203の厚さはS
2であり、負極活物質層202の厚さはS
3である。上記の設置により、負電極シートの厚さをより均一にすることができる。それを巻回ったり積層したりしてセルを形成する場合、電極シートの厚さの不均一による膨れや窪みなどの欠陥を回避し、サイクル過程中のセルの構造安定性を向上させ、電気化学装置の安全性能及びサイクル性能を向上させることができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、
図5に示すように、上記負極活物質層202は、凹溝206を更に備え、該凹溝が上記負極活物質層202により規定され、上記負極集電体201の一部を露出させ、ここで、上記負極タブ203が該凹溝内に設置されている。別の実施形態において、負極タブと正極活物質層又は正極タブとの間の接触による短絡を回避するように、絶縁材料及び/又は接着材料が上記凹溝内に設置されて上記負極タブ203を取り囲むことができる。該絶縁材料及び該接着材料は、当技術分野で一般的な任意の適切な材料であり得ると理解される。
【0025】
図7及び
図8は、それぞれ負極タブが負極長軸の両端又は中央部に設置された場合の電流分布の概略図である。
【0026】
負極集電体の各部分に対して、以下の式により、集電体を流れる電流のオーム熱量Qとそれに対応する抵抗値Rとを算出することができる。
【数4】
ここで、Q
iは負極集電体の各部分の電流発熱電力であり、R
iは負極集電体の各部分のインピーダンスであり、tは電流のサイクル時間であり、ρは負極集電体の抵抗率であり、dxは負極集電体の各部分の長さであり、Aは負極集電体の断面積である。
図7に示すように、負極タブが集電体近づく一端に設置されている場合、負極タブから最も遠い端のX
n部分で流れ出した電流の一部は、負極集電体のX
1部分からX
n部分まで流れる必要があり、X
3部分で流れ出した電流は、負極集電体のX
1部分からX
3部分まで流れる必要がある。外部の放電電流をIとし、各部分の反応電流をIaとすると、負極集電体のX
1部を流れる電流はn*Iaであり、負極集電体のX
2部分を流れる電流は(n-1)Iaであり、負極集電体のX
3部分を流れる電流は(n-2)Iaであり、負極集電体のX
n部分を流れる電流はIaである。
【0027】
図8に示すように、負極タブが負極集電体の中央部に設置されている場合、負極タブから最も遠い端のX
n/2部で流れ出した電流の一部は、X
1部からX
n/2部だけを流れてよく、もう一端のX
n/2’部で流れ出した電流の一部はX
1’部からX
n/2’部だけを流れてよい。本願の負極構造は、同じ放電電流強度で、放電中に負極集電体を流れる電流強度を効果的に低減することができ、さらに、負極の内部インピーダンスを低減し、負極の過熱や昇温の状況を低減するとともに、負極材料中のシリコン系材料の熱膨張状態を回避することができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、上記負極集電体201は、銅箔又はニッケル箔であってもよいが、当技術分野で一般的に使用される他の負極集電体を採用してもよく、これに対して限定されない。
【0029】
いくつかの実施形態において、負極集電体201の厚さは約4μmから約30μmである。別の実施形態において、上記負極集電体201の厚さは、例えば、約4.0μm、約5.0μm、約10.0μm、約15.0μm、約20.0μm、約25.0μm、約30.0μm、又はこれらの数値のいずれか2つからなる範囲である。
【0030】
上記負極活物質層202は、シリコン系材料に加えて、リチウム(Li)を吸収し析出する負極材料(以下、「リチウムLiを吸収/析出可能な負極材料」と呼ばれる場合がある)を含む。リチウムLiを吸収/析出可能な負極材料として、例えば、炭素材料、金属化合物、酸化物、硫化物、LiN3などのリチウム窒化物、リチウム金属、リチウムと合金を形成する金属及びポリマー材料を挙げる。いくつかの実施形態において、上記シリコン系材料は、シリコン単体、シリコン化合物、シリコン合金、及びシリコン酸素材料のうちの少なくとも一種を含む。いくつかの実施形態において、上記シリコン酸素材料は、SiOxで表されるシリコン酸化物であり、ここで、xは約0.5~約1.5であり、上記シリコン酸素材料は、晶質状態、非晶質状態、又はこの2つの組み合わせを含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、上記シリコン系材料は、上記シリコン系材料の表面の少なくとも一部に設置されている材料層をさらに含み、上記材料層は、重合体、無機粒子、アモルファスカーボン、及びカーボンナノチューブのうちの少なくとも一種を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、上記無機粒子は、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、シリコン単体、シリコン化合物、シリコン合金、及びシリコン酸素材料のうちの少なくとも一種を含み、前記重合体は、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリル酸、ポリ塩化ビニール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、及びアラミドのうちの少なくとも一種を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、上記負極活物質層の全重量に対して、上記負極活物質層におけるシリコン系材料の重量比Gは約0%を超えて70%以下である。別の実施形態において、上記負極活物質層におけるシリコン系材料の重量比Gは、例えば、約0%、約10%、約20%、約30%、約50%、約70%、又はこれらの数値のいずれか2つからなる範囲である。
【0034】
いくつかの実施形態において、上記負極活物質層の長軸の長さと上記負極集電体の長軸の長さとの比の値は約0.8~約1.0である。いくつかの実施形態において、上記負極活物質層の長軸の長さと前記負極集電体の長軸の長さとの比の値は約0.9~約0.95である。負極集電体の両端の負極活物質層を設置していない領域の面積、及び負極タブの空箔の面積をなくすことで、負極集電体の利用率を高め、電気化学装置のエネルギー密度をさらに高めることができる。
【0035】
本願の別の態様によれば、本願は、本願の負極を備える電気化学装置を提供する。いくつかの実施形態において、該電気化学装置は、リチウムイオン電池である。該リチウムイオン電池は、正極と、セパレータと、上記実施形態にかかる負極とを備え、セパレータが正極と負極との間に設けられている。
【0036】
図6は、本願の実施形態の一部による電気化学装置の巻回式構造有するセルの概略図である。
【0037】
図6に示すように、いくつかの実施形態において、上記電気化学的装置は、正極、負極、及びセパレータが順に積層又は巻回される巻回式構造であり、負極は、負極集電体201と、負極活物質層202と、該巻回式構造の中心から3層以上離れた位置に設置されている負極タブ203と、を備える。
【0038】
いくつかの実施形態において、上記正極の正極タブ209は、上記負極タブ203の位置に対して上記巻回式構造の中心から内側又は外側へ1層だけ離れた位置に設置されている。正極タブ209と負極タブ203とを外側へ1層だけ間隔することにより、正極タブ209と負極タブ203との短絡リスクを低下することができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、本願における負極集電体上に負極タブを設置することは、負極タブと負極集電体上の設置部位とを溶接することによって行われる。上記の設置部位は、負極活物質層を超音波で洗浄することで形成するため、正極及び負極活物質層を塗布する場合、商業的な電気化学装置の正極及び負極にはウォーターマーク問題が存在せず、かつ溶接される負極集電体の設置部位と負極タブとの距離を短くすることができ、負極タブのインピーダンスを更に低下するのに有利である。
【0040】
いくつかの実施形態において、
図6に示すように、上記負極活物質層202及び上記正極活物質層208は、上記負極タブ203又は上記正極タブ209の周囲に設置されている凹溝206を更に含み、該凹溝206が上記負極活物質層202又は上記正極活物質層208によって規定され、且つ上記負極集電体201又は上記正極集電体207の一部を露出させる。別の実施形態において、上記凹溝206は、さらに上記負極タブ203又は上記正極タブ209に対応する正極材料層又は負極材料層の領域206’に設置されることができる。別の実施形態において、絶縁材料及び/又は接着材料を上記凹溝206内に設置して上記凹溝を充填することができる。上記絶縁材料及び上記接着材料は、当技術分野で一般的な任意の適切な材料であり得ると理解される。上記の凹溝と、絶縁材料と、接着材料とを設置することで、セル構造の短絡リスクをさらに低減することできる。
【0041】
いくつかの実施形態において、上記正極は、正極集電体207及び正極活物質層208を更に含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、上記正極集電体207は、アルミニウム箔又はニッケル箔であってよいが、正極集電体として当技術分野で一般的に使用される他の材料を採用してもよく、これに対して限定されない。
【0043】
上記正極活物質層208は、リチウム(Li)を吸収し析出する正極材料(以下、「リチウムLiを吸収/析出可能な正極材料」と呼ばれる場合がある)を含む。いくつかの実施形態において、リチウムLiを吸収/析出可能な正極材料は、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、リチウムマンガン酸塩、リチウム鉄マンガンリン酸塩、リン酸バナジウムリチウム、リン酸バナジウム酸素リチウム、リン酸鉄リチウム、チタン酸リチウム、及びリチウムマンガン系材料のうちの一種又は複数種を含んでもよい。
【0044】
上記正極材料において、コバルト酸リチウムの化学式は、LiyCoaM1bO2-cであってよい。ここで、M1は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ボロン(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ジルコニウム(Zr)、シリコン(Si)のうちの少なくとも一種を選択することを示し、y、a、b、cの値は、それぞれ0.8≦y≦1.2、0.8≦a≦1、0≦b≦0.2、-0.1≦c≦0.2である範囲にある。
【0045】
上記正極材料において、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム又はニッケルコバルトアルミン酸リチウムの化学式は、LizNidM2eO2-fであってよい。ここで、M2は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ボロン(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、シリコン(Si)のうちの少なくとも一種を選択することを示し、z、d、e、fの値は、それぞれ0.8≦z≦1.2、0.3≦d≦0.98、0.02≦e≦0.7、-0.1≦f≦0.2である範囲にある。
【0046】
上記正極材料において、マンガン酸リチウムの化学式はLiuMn2-gM3gO4-hであってよい。ここで、M3は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ボロン(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)のうちの少なくとも一種を選択することを示し、z、g、hの値は、それぞれ0.8≦u≦1.2、0≦g<1.0、及び-0.2≦h≦0.2である範囲にある。
【0047】
いくつかの実施形態において、上記正極は、接着剤及び導電剤のうちの少なくとも一種をさらに含んでよい。当業者にとって、これらに限定されることなく、実際の必要に応じて当分野の従来の接着剤及び導電剤を選択することができると理解される。
【0048】
いくつかの実施形態において、セパレータは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド及びアラミドから選択される少なくとも一種を含んでよいが、これに対して限定されない。一例として、ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、及び超高分子量ポリエチレンから選択される少なくとも一種の成分を含む。特に、ポリエチレンやポリプロピレンは、短絡の防止に優れ、ターンオフ効果によりリチウムイオン電池の安定性を改善することができる。
【0049】
本願の電気化学装置は、電解質を更に含み、該電解質は、ゲル電解質、固体電解質、及び電解液のうちの一種又は複数種であってよく、電解液はリチウム塩や非水性溶媒を含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、上記リチウム塩は、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C6H5)4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)3、LiSiF6、LiBOB、及びジフルオロホウ酸リチウムから選択される一種又は複数種である。一例として、高いイオン伝導率を与え、サイクル特性を改善できるため、リチウム塩はLiPF6を選択する。
【0051】
上記非水性溶媒は、カーボネート化合物、カルボキシレート化合物、エーテル化合物、他の有機溶媒、又はこれらの組み合わせであってよい。
【0052】
上記カーボネート化合物は、鎖状カーボネート化合物、環状カーボネート化合物、フルオロカーボネート化合物、又はそれらの組み合わせであってよい。
【0053】
上記他の有機溶媒の例として、ジメチルスルホキシド、1,2-ジオキソラン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドン、ホルムアミド、ジメチルメタンアミド、アセトニトリル、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、及びホスフェートエステル、及びそれらの組み合わせであってよい。
【0054】
いくつかの実施形態において、非水性溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、メチルアセテート、エチルプロピオネート、フルオロエチレンカーボネート、及びこれらの組み合わせに形成されるグループから選択される。
【0055】
本願の実施形態における正極、負極、セパレータ、及びリチウムイオン電池の調製方法は、本願の精神から逸脱することなく、特定の必要に応じて当分野の適切な従来の方法を任意に選択することができるが、これに限定されないと理解すべきである。電気化学装置を調製する方法の1つの実施形態において、上記リチウムイオン電池の調製方法は、上記実施形態における正極、セパレータ、負極を順次に巻回してセルを形成し、該セルをアルミプラスチックフィルム内に配置し、電解液を注入し、その後、真空封止、静置、化成、成形などの工程を行うことにより、リチウムイオン電池が得られる。
【0056】
本願の電気化学装置のセルは、巻回式構造を有するだけでなく、いくつかの実施形態では、積層構造及び折畳み構造も有する。
【0057】
上記では、リチウムイオン電池を例として説明したが、当業者であれば、本願によれば、本願の負極を他の適切な電気化学装置に使用することができると考えられる。このような電気化学装置は、電気化学反応を生じる任意の装置を含み、具体例として、一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池、又はコンデンサーのあらゆる種類を含む。特に、該電気化学装置は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池又はリチウムイオンポリマー二次電池を含むリチウム二次電池である。
【0058】
本願のいくつかの実施形態は、本願の実施形態における電気化学装置を備える電子装置をさらに提供する。
【0059】
本願の実施形態に係る電子装置は、特に限定されるものではなく、従来技術で既存の任意の電子装置であってよい。いくつかの実施形態において、電子装置は、ノートパソコン、ペン入力式コンピューター、モバイルコンピューター、電子書籍プレーヤー、携帯電話、ポータブルファックス機、ポータブルコピー機、ポータブルプリンター、ステレオヘッドフォン、ビデオレコーダ、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、ポータブルCDプレーヤー、ミニディスク、トランシーバー、電子メモ帳、計算機、メモリカード、ポータブルレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、電動アシスト自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、フラッシュ、カメラ、家庭用大型バッテリー、リチウムイオンコンデンサーを含んでよいが、これに限定されない。
実施例
【0060】
以下、本願の技術案をより明瞭に説明するために、いくつかの実施例を挙げ、それぞれ電気化学装置(リチウムイオン電池)に対して直流抵抗のテスト、放電レートのテスト、サイクル性能のテスト、及びセル表面昇温のテストを行う。
【0061】
一、テスト方法
1.1 直流抵抗のテスト:
直流抵抗は、R=(U0.1C-U1C)/(I1C-I0.1C)で算出し、ここで、Rは直流抵抗であり、I1Cは放電レートが1Cであるリチウムイオン電池の電流であり、I0・1Cは放電レートが0.1Cであるリチウムイオン電池の電流であり、U1Cは1Cの放電レートで1秒間放電後のリチウムイオン電池の末端電圧であり、U0・1Cは0.1Cの放電レートで1秒間放電後のリチウムイオン電池の末端電圧である。直流抵抗テストの流れは以下であり、下記実施例のリチウムイオン電池を満充電した後、0.1Cの定電流で10秒間放電し、電流I0・1Cと末端電圧U0・1Cを記録し、その後、1Cの定電流で1秒間を放電し、電流I1Cと末端電圧U1Cを記録する。各グループのテスト用の電池として4つのリチウムイオン電池を用いて、リチウムイオン電池の直流抵抗の平均値を算出する。
【0062】
1.2 放電レートのテスト:
下記実施例のリチウムイオン電池を25℃±2℃の恒温器に2時間静置し、0.5Cの定電流で4.35Vに充電し、その後、4.35Vの定電圧で0.05Cに充電して15分間静置し、さらに0.2Cの定電流で3.0Vまでに放電する。リチウムイオン電池を0.5Cの定電流で4.35Vに充電し、その後、4.35Vの定電圧で0.05Cに満充電し、1.0Cの定電流で3.0Vまでに放電する。0.2Cの定電流で放電する場合、及び1.0Cの定電流で放電する場合の、リチウムイオン電池の放電容量を記録する。
【0063】
各グループのテスト用の電池として4つのリチウムイオン電池を用いて、リチウムイオン電池の放電レートの平均値を算出する。放電レート=1.0Cの定電流での放電容量(mAh) /0.2Cの定電流での放電容量(mAh)。
【0064】
1.3 サイクル性能のテスト:
下記実施例のリチウムイオン電池を25℃±2℃の恒温器に2時間静置し、0.5Cの定電流で4.35Vに充電し、その後、4.35Vの定電圧で0.05Cに充電して15分間静置し、さらに0.5Cの定電流で3.0Vまでに放電することは、一回の充放電サイクル過程とする。リチウムイオン電池の初回サイクルの放電容量を記録し、そして、上記方法を繰り返して複数回の充放電サイクル過程を行い、100回サイクル後の放電容量を記録する。
【0065】
各グループのテスト用の電池として4つのリチウムイオン電池を用いて、リチウムイオン電池の容量保持率の平均値を算出する。リチウムイオン電池の100回サイクルの容量保持率=100回サイクルの放電容量(mAh)/初回サイクルの放電容量(mAh) ×100%。
【0066】
1.4 セル表面昇温のテスト:
下記実施例のリチウムイオン電池を25℃±2℃の密封の恒温器に静置するとともに、リチウムイオン電池のセル表面の4つの異なる位置の温度を監視する。具体的な昇温テストの流れは以下の通りである。リチウムイオン電池を1.0Cの定電流で2.8Vまでに放電して30分間静置した後、1.0Cの定電流で4.35Vに充電して5分間静置し、更に1.0Cの定電流で2.8Vまでに放電することは、一回の充放電サイクル過程とする。充放電サイクルを3回繰り返す。リチウムイオン電池のセル表面昇温の平均値を算出する。
【0067】
二、調製方法
2.1 正極の調製
コバルト酸リチウム、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを94:3:3の割合でN-メチルピロリドン(NMP)溶液に溶解させ、正極スラリーを形成した。アルミニウム箔を正極集流体として、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス、裁断などの工程を経た後、正極を得た。
【0068】
2.2 セパレータの調製
ポリフッ化ビニリデンを水に溶解させ、机械的に撹拌することで均一なスラリーを形成し、両面にセラミックコーティングを塗布した多孔質基材(ポリエチレン)の両側の表面にスラリーを塗布して乾燥し、セパレータを形成した。
【0069】
2.3 電解液の調製
含水量が10ppm未満の環境で、ヘキサフルオロリン酸リチウムと非水有機溶媒(重量比で、エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC):プロピレンカーボネート(PC):プロピオン酸プロピル(PP):ビニレンカーボネート(VC)=20:30:20:28:2)を8:92の重量比で配合し、電解液を形成した。
【0070】
実施例1-1
人造黒鉛と単体シリコンを一定の重量比で脱イオン水に均一に分散させ、負極スラリーを形成した。銅箔を負極集電体として、負極スラリーを厚さが8μmである負極集電体に塗布し、塗布質量が105mgであり、乾燥、冷間プレス、裁断などの工程を経て、厚さが80μmである負極タブを負極集電体の長軸方向の一端に設置し、負極を得た。ここで、負極活物質層に対する単体シリコンの重量比は20%である。セパレータが正極と負極との間で隔離の作用を果たすように、正極、セパレータ、負極を順に積層してセルを巻回し、セルの層数が7層(両面の正極と負極は1層)である。その後、このセルをアルミプラスチックフィルムに入れ、80℃で水分を抜いてドライセルを得た。そして、上記電解液をドライセルに注入し、真空実装、静置、化成、成形などの工程を経てリチウムイオン電池を得た。
【0071】
実施例1-2
実施例1-2では、人造黒鉛とシリコン炭素を混合して脱イオン水に溶解させて負極スラリーを形成し、負極活物質層に対する単体シリコンの重量比は40%であることに加えて、実施例1-1の調製方法と同じである。
【0072】
実施例1-3
実施例1-3では、人造黒鉛とシリコン炭素を混合して脱イオン水に溶解させて負極スラリーを形成し、負極活物質層に対する単体シリコンの重量比は50%であることに加えて、実施例1-1の調製方法と同じである。
【0073】
実施例1-4
実施例1-4では、人造黒鉛とシリコン炭素を混合して脱イオン水に溶解させて負極スラリーを形成し、負極活物質層に対する単体シリコンの重量比は70%であることに加えて、実施例1-1の調製方法と同じである。
【0074】
実施例1-5
実施例1-5では、人造黒鉛とシリコン炭素を混合して脱イオン水に溶解させて負極スラリーを形成し、負極活物質層に対する単体シリコンの重量比は90%であることに加えて、実施例1-1の調製方法と同じである。
【0075】
実施例2-1~2-5
実施例2-1~2-5では、負極タブの設置位置から負極活物質層の長軸方向において最も近い一端までの距離は負極活物質層の長軸の長さの0.125倍になり、かつ、その正極タブは負極タブに対して上記巻回式構造の中心から外側へ1層だけ離れた位置に設置されていることに加えて、実施例1-1の調製方法と同じである。実施例2-1~2-5における負極活物質は、人造黒鉛とシリコン炭素を含み、負極活物質層中のシリコン炭素の重量比は、順に20%、40%、50%、70%、90%である。
【0076】
実施例3-1~3-5
実施例3-1~3-5では、負極タブの設置位置から負極活物質層の長軸方向において最も近い一端までの距離は負極活物質層の長軸の長さの0.25倍になり、かつ、その正極タブは負極タブに対して上記巻回式構造の中心から外側へ1層だけ離れた位置に設置されていることに加えて、実施例1-1の調製方法と同じである。実施例3-1~3-5における負極活物質は、人造黒鉛とシリコン炭素を含み、負極活物質層中のシリコン炭素の重量比は、順に20%、40%、50%、70%、90%である。
【0077】
実施例4-1~4-5
実施例4-1~4-5では、負極タブの設置位置から負極活物質層の長軸方向において最も近い一端までの距離は負極活物質層の長軸の長さの0.5倍になり、かつ、その正極タブは負極タブに対して上記巻回式構造の中心から外側へ1層だけ離れた位置に設置されていることに加えて、実施例1-1の調製方法と同じである。実施例4-1~4-5における負極活物質は、人造黒鉛とシリコン炭素を含み、負極活物質層中のシリコン炭素の重量比は、順に20%、40%、50%、70%、90%である。
【0078】
実施例5-1~5-2
実施例5-1及び5-2では、負極タブの設置位置から負極活物質層の長軸方向において最も近い一端までの距離はそれぞれ負極活物質層の長軸の長さの0.1倍と0.15倍になり、且つ、負極集電体に塗布される負極活物質塗布層の厚さはそれぞれ35μmと45μmであり、その正極タブは負極タブに対して上記巻回式構造の中心から外側へ1層だけ離れた位置に設置されていることに加えて、実施例1-1の調製方法と同じである。実施例5-1及び5-2における負極活物質は、人造黒鉛とシリコン炭素を含み、負極活物質層中のシリコン炭素の重量比は20%である。
【0079】
実施例5-3~5-4
実施例5-3及び5-4では、負極タブの設置位置から負極活物質層の長軸方向において最も近い一端までの距離は負極活物質層の長軸の長さの0.125倍になり、かつ、その正極タブは負極タブに対して上記巻回式構造の中心から外側へ1層だけ離れた位置に設置されていることに加えて、実施例1-1の調製方法と同じである。実施例5-3及び5-4における負極集電体の厚さはそれぞれ4μmと30μmであり、実施例5-3及び5-4における負極活物質層中のシリコン炭素の重量比は20%である。
【0080】
以上の実施例におけるリチウムイオン電池に対して直流抵抗のテスト、放電レートのテスト、サイクル性能のテスト、及びセル表面昇温のテストを行い、そのテスト結果を記録した。
【0081】
全ての実施例におけるリチウムイオン電池の直流抵抗のテスト、放電レートのテスト、サイクル性能のテスト、セル表面昇温のテストの結果は、以下の表1‐5に示す。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
図9は、本願の表1~4の実施例による負極タブの設置位置、負極活物質のシリコン系材料含有量、及びセルの昇温を示す三次元グラフである。
図9に示すように、本願実施例では、負極タブの設置位置及びシリコン含有量が電気化学装置のサイクル性能及び安全性能に与える影響を明らかに示す。表1の結果によれば、実施例1-1、2-1、2-2、3-1、3-2、3-3、4-1、4-2、4-3、4-4の負極タブの中心から長軸方向において上記負極活物質層のいずれか一端までの距離と負極活物質層の長軸の長さとの比の値D、及び上記負極活物質層中のシリコンの重量比Gは、関係式D≧0.6×Gを満たす。上記実施例から分かるように、本願実施例に係る電気化学装置は、充放電サイクル過程中にセルの上昇温度が15℃未満になるように効果的に低下することができる。
【0088】
実施例5-1~5-4によれば、負極タブの厚さが80μmである場合、負極集電体の厚さS1、負極タブの厚さS2、負極活物質層の厚さS3は、関係式0.9×(S1+2S3)≦S1+S2≦1.1×(S1+2S3)を満たす。セルの昇温は負極集電体の厚さの増加に伴って低下するため、集電体の強度とセルのエネルギー密度を総合的に評価すると、実施例では8μmの集電体が好ましい。負極タブの設置位置とシリコン含有量との関係を制御することにより、同じシリコン含有量の負極材料を有する場合、本願実施例に係る電気化学装置は、より低い直流抵抗及びより良い放電レートを有するとともに、より良いサイクル容量を示すことができる。また、本願実施例における負極タブの設置位置とシリコン含有量との関係の範囲に合致する実施例は、セル表面の平均上昇温度を効果的に制御することができ、更に電気化学装置の安全性能を確保することができる。
【0089】
上記実施例を比較することにより、本願の電気化学装置は、負極タブの設置位置とその負極活物質層中のシリコンの重量比との関係を制限することにより、電気化学装置のサイクル性能及び安全性能を著しく向上させることができる。
【0090】
本明細書の全体において、「いくつかの実施例」、「一部の実施例」、「一つの実施例」、「別の例として」、「例として」、「具体的な例として」又は「一部の例として」を引用することは、本願では、少なくとも一つの実施例又は例には該実施例又は例における説明した特定の特徴、構造、材料又は特性が含まれていることを意味する。従って、本明細書全体の説明は、例えば、「いくつかの実施例において」、「実施例において」、「一つの実施例において」、「別の例において」、「一例において」、「特定の例において」又は「例において」は必ずしも本願における実施例又は例を引用することではない。また、本明細書における特定の特徴、構造、材料又は特性は、1つ又は複数の実施例又は例において任意の適切な形で組み合わせることができる。
【0091】
例示的な実施例を示して説明したが、当業者にとって、上記実施例が本願の制限として解釈されず、本願の精神、原理及び範囲から逸脱することなく、実施例を変更、代替及び修正することができると理解される。