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特許7581363太陽電池、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】太陽電池、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/072 20120101AFI20241105BHJP
   H01L 31/0725 20120101ALI20241105BHJP
【FI】
H01L31/06 400
H01L31/06 410
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022555253
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(86)【国際出願番号】 JP2020038402
(87)【国際公開番号】W WO2022074850
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】芝崎 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】保西 祐弥
(72)【発明者】
【氏名】中川 直之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 六月
(72)【発明者】
【氏名】水野 幸民
(72)【発明者】
【氏名】西田 靖孝
(72)【発明者】
【氏名】山本 和重
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-098479(JP,A)
【文献】特開2019-057536(JP,A)
【文献】国際公開第2020/059053(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110112225(CN,A)
【文献】CHUA, Danny et al.,Enhancement of the open circuit voltage of Cu2O/Ga2O3 heterojunction solar cells through the mitigation of interfacial recombination,AIP Advances,2019年05月02日,Vol. 9, No. 5,pp. 055203-1 - 055203-6,DOI: 10.1063/1.5096283
【文献】MINAMI, Tadatsugu et al.,Heterojunction solar cell with 6% efficiency based on an n-type aluminum-gallium-oxide thin film and p-type sodium-doped Cu2O sheet,Applied Physics Express,2015年01月28日,Vol. 8, No. 2,pp. 022301-1 - 022301-4,DOI: 10.7567/APEX.8.022301
【文献】MINAMI, Tadatsugu et al.,Cu2O-based heterojunction solar cells with an Al-doped ZnO/oxide semiconductor/thermally oxidized Cu2O sheet structure,Solar Energy,2014年05月04日,Vol. 105,pp. 206 - 217,DOI: 10.1016/j.solener.2014.03.036
【文献】西祐希 ほか,多元系酸化物薄膜をn形半導体層に用いたCu2O系ヘテロ接合太陽電池,第60回応用物理学会春季学術講演会 講演予稿集,2013年03月27日,第06-204頁,講演番号: 30a-F2-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
p電極と、
n電極と、
前記p電極と前記n電極の間に位置する亜酸化銅を主体とするp型光吸収層と、
前記p型光吸収層と前記n電極の間に位置し、Gax1M1x2M2x3M3x4M4x5x6で表される化合物を主体とする層であって、前記M1はHf又は/及びZrであり、M2はIn、Ti及びZnからなる群から選ばれる1種以上であり、前記M3はAl又は/及びBであり、前記M4はSn、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上であり、前記x1、x2及びx6は、0より大きい数値であり、前記x3、x4及びx5は0以上の数値であり、前記x1、x2、x3、x4及びx5の和は2であり、前記x6は3.0以上3.8以下である第1n型層と、
し、
前記p型光吸収層の伝導帯下端と前記第1n型層の伝導帯下端の差は、0.0eV以上0.4eV以下である太陽電池。
【請求項2】
(x1+x2)/(x1+x2+x3+x4+x5)は、0.60以上1.00以下であり、
x2/(x1+x2)は、0.10以上0.60以下であり。
x3/(x1+x2+x3+x4+x5)は、0.00以上0.40以下である請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
(x1+x2)/(x1+x2+x3+x4+x5)は、0.80以上1.00以下であり、
x2/(x1+x2)は、0.30以上0.55以下であり、
x3/(x1+x2+x3+x4+x5)は、0.00以上0.10以下であり、
x4/(x1+x2+x3+x4+x5)は、0.00以上0.10以下であり、
x5/(x1+x2+x3+x4+x5)は、0.00以上0.10以下である請求項1又は2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記Ga、M1の元素、M2の元素、M3の元素及びM4の元素からなる群より選ばれる1以上は、前記第1n型層中で前記第1n型層の膜厚方向に組成比率が変化している請求項1ないし3のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第1n型層と前記n電極の間にGay1M1y2M2y3M3y4M4y5y6で表される化合物を主体とする第2n型層を有し、
前記y2は、x2より小さく、
前記y1及びy6は、0より大きい数値であり、
前記y2、y3、y4及びy5は0以上の数値であり、
前記y1、y2、y3、y4及びy5の和は2であり、y6は3.0以上3.8以下であり、
前記第2n型層の伝導帯下端は、前記第1n型層の伝導帯下端よりも低く、
前記第2n型層の伝導体下端は、前記第1n型層の伝導帯下端と前記n電極の伝導帯下端の間にある請求項1ないし4に記載の太陽電池。
【請求項6】
y2/(y1+y2)は、0.00以上0.30以下であり、
(y1+y2)/(y1+y2+y3+y4+y5)は、0.80以上1.00以下であり、
y3/(y1+y2+y3+y4+y5)は、0.00以上0.10以下であり、
y4/(y1+y2+y3+y4+y5)は、0.00以上0.10以下であり、
y5/(y1+y2+y3+y4+y5)は、0.00以上0.10以下である請求項5に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記y2/(y1+y2)は、0.00以上0.20以下であり、
前記(y1+y2)/(y1+y2+y3+y4+y5)は、0.90以上1.00以下であり、
前記y3/(y1+y2+y3+y4+y5)は、0.00以上0.10以下であり、
前記y4/(y1+y2+y3+y4+y5)は、0.00以上0.05以下である請求項5又は6に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記y2は、前記x2の70%以下である請求項5ないし7のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記Ga、M1の元素、M2の元素、M3の元素及びM4の元素からなる群より選ばれる1以上は、前記第2n型層中で前記第2n型層の膜厚方向に組成比率が変化している請求項5ないし7のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記第1n型層と前記n電極の間にGaz1Znz2Snz3M5z4z5で表される化合物を主体とする第3n型層を有し、
前記M5はHf、Zr、In、Ti、Al、B、Si、Mg及びGeからなる群より選ばれる1種以上であり、
前記z1、z2、z3、z4及びz5は0以上の数値であり、
前記z1、z2、z3及びz4の和は2であって前記z5は2.2以上3.6以下であり、
前記第3n型層中のZnとSnの元素比率の合計は、前記第1n型層の中のZnとSnの元素比率の合計より大きく、
前記第3n型層中のZnとSnの元素比率の合計は、前記第2n型層の中のZnとSnの元素比率の合計より大きい請求項5ないし8に記載の太陽電池。
【請求項11】
(z1+z2)/(z1+z2+z3+z4)は、0.65以上0.90以下であり、
z3/(z1+z2+z3+z4)は、0.10以上0.30以下であり、
z4/(z1+z2+z3+z4)は0.00以上0.05以下である請求項10に記載の太陽電池。
【請求項12】
Ga及びM5の元素からなる群より選ばれる1以上は、第3n型層中で第3n型層の膜厚方向に組成比率が変化している請求項10又は11に記載の太陽電池。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の太陽電池と、
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の太陽電池のp型光吸収層よりもバンドギャップの小さい光吸収層を有する太陽電池とを有する多接合型太陽電池。
【請求項14】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の太陽電池を用いた太陽電池モジュール。
【請求項15】
請求項14に記載の太陽電池モジュールを用いて太陽光発電を行う太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
新しい太陽電池の1つに、亜酸化銅(CuO)を光吸収層に用いた太陽電池がある。CuOはワイドギャップ半導体である。CuOは地球上に豊富に存在する銅と酸素からなる安全かつ安価な材料であるため、高効率かつ低コストな太陽電池が実現できると期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-46196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、変換効率に優れた太陽電池、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の太陽電池は、p電極と、n電極と、p電極とn電極の間に位置する亜酸化銅を主体とするp型光吸収層と、p型光吸収層とn電極の間に位置し、Gax1M1x2M2x3M3x4M4x5x6で表される化合物を主体とする層であって、M1はHf又は/及びZrであり、M2はIn、Ti及びZnからなる群から選ばれる1種以上であり、M3はAl又は/及びBであり、M4はSn、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上であり、x1、x2及びx6は、0より大きい数値であり、x3、x4及びx5は0以上の数値であり、x1、x2、x3、x4及びx5の和は2であり、x6は3.0以上3.8以下である第1n型層と、有する。p型光吸収層の伝導帯下端と第1n型層の伝導帯下端の差は、0.0eV以上0.4eV以下である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態の太陽電池の断面図。
図2図2は、実施形態の太陽電池の分析スポットを説明する図。
図3図3は、実施形態の太陽電池の断面図。
図4図4は、実施形態の太陽電池の断面図。
図5図5は、実施形態の太陽電池の断面図。
図6図6は、実施形態の太陽電池の断面図。
図7図7は、実施形態の多接合型太陽電池の断面図。
図8図8は、実施形態の太陽電池モジュールの斜視図。
図9図9は、実施形態の太陽電池モジュールの断面図。
図10図10は、実施形態の太陽光発電システムの構成図。
図11図11は、実施形態の車両の概念図。
図12図12は、実施例の表。
図13図13は、実施例の表。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、特に記載が無い限り、25℃、1気圧(大気)における値を示している。
(第1実施形態)
第1実施形態は、太陽電池に関する。図1に、第1実施形態の太陽電池100の断面図を示す。図1に示すように、本実施形態に係る太陽電池100は、基板1、第1電極であるp電極2と、p型光吸収層3と、第1n型層4Aと、第2電極であるn電極5を有する。n型層4の第1n型層4Aとn電極5との間等には、図示しない中間層が含まれていてもよい。太陽光はn電極5側、p電極2側いずれから入射しても良いが、n電極5側から入射するのがより好ましい。実施形態の太陽電池100は、透過型の太陽電池であるため、多接合型太陽電池のトップセル(光入射側)に用いることが好ましい。図1では基板1をp電極2のp型光吸収層3側とは反対側に設けているが、基板1をn電極5の第1n型層4A側とは反対側に設けてもよい。以下は、図1に示す形態について説明するが、基板1の位置が異なること以外はn電極5側に基板1が設けられた形態も同様である。実施形態の太陽電池100は、n電極5側からp電極2側に向かって光が入射する。
【0008】
基板1は、透明な基板である。基板1には、光を透過するアクリル、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリプロピレン(PP)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)など)、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォンやポリエーテルイミドなどの有機系の基板やソーダライムガラス、白板ガラス、化学強化ガラスや石英などの無機系の基板を用いることができる。基板1は、上記に挙げた基板を積層してもよい。
【0009】
p電極2は、基板1上に設けられており、基板1とp型光吸収層3との間に配置されている。p電極2は、p型光吸収層3側に設けられた光透過性を有する導電層である。p電極2の厚さは、典型的には、100nm以上2,000nm以下である。図1では、p電極2は、光吸収層3と直接接している。p電極2は、1層以上の酸化物透明導電膜を含むことが好ましい。酸化物透明導電膜としては、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide;ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(Al-doped Zinc Oxide;AZO)、ボロンドープ酸化亜鉛(Boron-doped Zinc Oxide;BZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(Gallium-doped Zinc Oxide;GZO)、ドープされた酸化スズ、チタンドープ酸化インジウム(Titanium-doped Indium Oxide;ITiO)、酸化インジウム酸化亜鉛(Indium Zinc Oxide;IZO)や酸化インジウムガリウム亜鉛(Indium Gallium Zinc Oxide;IGZO)、水素ドープ酸化インジウム(Hydrogen-doped Indium Oxide;IOH)など特に限定されない。酸化物透明導電膜は、複数の膜を持つ積層膜であってもよい。酸化スズなどの膜へのドーパントとしては、In、Si、Ge、Ti、Cu、Sb、Nb、Ta、W、Mo、F及びClなどからなる群から選ばれる1種以上であれば特に限定されない。p電極2は、In、Si、Ge、Ti、Cu、Sb、Nb、Ta、W、Mo、F及びClなどからなる群から選ばれる1種以上の元素がドープされた酸化スズ膜が含まれることが好ましい。ドープされた酸化スズ膜において、In、Si、Ge、Ti、Cu、Sb、Nb、Ta、W、Mo、F及びClなどからなる群から選ばれる1種以上の元素は、酸化スズ膜に含まれるスズに対して10原子%以下含まれることが好ましい。p電極2として、酸化物透明導電膜と金属膜を積層した積層膜を用いることができる。金属膜は、厚さが10nm以下であることが好ましく、金属膜に含まれる金属(合金を含む)は、Mo、Au、Cu、Ag、Al、TaやWなど特に限定されない。またp電極2は、酸化物透明導電膜と基板1の間、又は、酸化物透明導電膜とp型光吸収層3の間にドット状、ライン状もしくはメッシュ状の電極(金属、合金、グラフェン、導電性窒化物及び導電性酸化物からなる群より選ばれる1種以上)を含むことが好ましい。ドット状、ライン状もしくはメッシュ状の金属は、透明導電膜に対して開口率が50%以上であることが好ましい。ドット状、ライン状もしくはメッシュ状の金属は、Mo、Au、Cu、Ag、Al、TaやWなど特に限定されない。第1電極1に金属膜を用いる場合、透過性の観点から5nm以下程度の膜厚とすることが好ましい。ライン状やメッシュ状の金属膜を用いる場合、透過性は開口部で確保されるため、金属膜の膜厚に関してはこの限りではない。
【0010】
p型光吸収層3は、p型の半導体層である。p型光吸収層3は、p電極2と直接的に接していても良いし、p電極2とのコンタクトを確保できる限り、他の層が存在していても良い。p型光吸収層3は、電極2と第1n型層4Aとの間に配置される。p型光吸収層3は第1n型層4Aとpn接合を形成する。p型光吸収層3としては、Cuを主成分とする金属の酸化物の半導体層である。Cuを主成分とする金属の酸化物は、亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物である。p型光吸収層3の90wt%以上は亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物であることが好ましい。p型光吸収層3の95wt%以上は亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物であることがより好ましい。p型光吸収層3の98wt%以上は亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物であることがさらにより好ましい。p型光吸収層3は、異相であるCu又は/及びCuOをほとんど含まないことが好ましい。p型光吸収層3に含まれる異相が少なく結晶性が良いとp型光吸収層3の透光性が高くなるため好ましい。Cuを主成分とする金属の酸化物は、Cuが60.0atom%以上67.0atom%以下であり、O(酸素)が32.5atom%以上34.0atom%以下である。亜酸化銅の複合酸化物には、Cu以外の金属が含まれる。亜酸化銅の複合酸化物に含まれる金属は、Cuに加えて、Sn、Sb、Ag、Li、Na、K、Cs、Rb、Al、Ga、In、Zn、Mg及びCaからなる群より選ばれる1種以上の金属である。Cu以外にAg、Li、Na、K、Cs、Rb、Al、Ga、In、Zn、Mg及びCaからなる群より選ばれる1種以上の金属が含まれると、p型光吸収層3のバンドギャップを調整することができる。p型光吸収層3のバンドギャップは、2.0eV以上2.2eV以下であることが好ましい。かかる範囲のバンドギャップであると、Siを光吸収層に用いた太陽電池をボトムセルに用い、実施形態の太陽電池をトップセルに用いた多接合型太陽電池において、トップセル及びボトムセルの両方で太陽光を効率よく利用できる。p型光吸収層3には、SnやSbをさらに含んでもよい。p型光吸収層3のSnやSbは、光吸収層3に添加されたものでもよいし、p電極2に由来するものでもよい。p型光吸収層3は、Cuで表される酸化物の層である。Mは、Sn、Sb、Ag、Li、Na、K、Cs、Rb、Al、Ga、In、Zn、Mg及びCaからなる群より選ばれる1種以上の金属である。a、b及びcは、1.80≦a≦2.01、0.00≦b≦0.20及び0.98≦c≦1.02を満たすことが好ましい。上記p型光吸収層3の組成比は、p型光吸収層3の全体の組成比である。また、上記のp型光吸収層3の化合物組成比は、p型光吸収層3において全体的に満たすことが好ましい。なお、Sn及びSbのp型光吸収層3中の濃度が高いと、欠陥が増加して、キャリア再結合が増えてしまう。そこで、p型光吸収層3中のSb及びSnの合計体積濃度は、1.5x1019atoms/cm以下が好ましい。p型光吸収層3と第1n型層4Aの組成は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)で求められる。分析位置は、p電極2と同じで求められた値の平均値を各層組成とすることができる。
【0011】
p型光吸収層3の厚さは、電子顕微鏡による断面観察や、段差計によって求められ、1,000nm以上10,000nm以下が好ましい。
【0012】
p型光吸収層3は、例えばスパッタなどによって成膜されることが好ましい。
【0013】
第1n型層4Aは、n型の半導体層である。第1n型層4Aは、p型光吸収層3とn電極5との間に配置される。第1n型層4Aは、p型光吸収層3のp電極2と接した面とは反対側の面と直接接している。第1n型層4AはGaを含む酸化物半導体層であって、Gaをベースとする化合物を含むことが好ましい。第1n型層4AはGaをベースとする酸化物に他の酸化物が混合していてもよいし、Gaをベースとする酸化物に他の元素がドープしていてもよいし、他の元素がドープしたGaベースの酸化物と他の酸化物が混合していてもよい。
【0014】
第1n型層4Aは、Gax1M1x2M2x3M3x4M4x5x6で表される化合物を主体(50wt%以上)とする層であって、M1はHf又は/及びZrであり、M2はIn、Ti及びZnからなる群から選ばれる1種以上であり、M3はAl又は/及びBであり、M4はSn、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。x1、x2及びx6は、0より大きい数値である。x3とx4及びx5は0以上の数値である。x1、x2、x3、x4及びx5の和を2とする場合、x6は3.0以上3.8以下であることが好ましい。Gaをベースとする酸化物に他の酸化物が混合した形態、Gaをベースとする酸化物に他の元素がドープしている形態及び他の元素がドープしたGaベースの酸化物と他の酸化物が混合した形態のいずれもGax1M1x2M2x3M3x4M4 x6で表している。
【0015】
第1n型層4Aの90wt%以上は、Gax1M1x2M2x3M3x4M4x5 で表される化合物であることが好ましい。第1n型層4Aの95wt%以上は、Ga M1x2M2x3M3x4M4x5x6で表される化合物であることがより好ましい。第1n型層4Aの98wt%以上は、Gax1M1x2M2x3M3x4M4x5 で表される化合物であることがさらにより好ましい。第1n型層4AはGax1M1 M2x3M3x4M4x5x6で表される化合物で構成されていることがより好ましい。残りの組成成分には例えば、MgOなどが入っていても良い。例えば、Znが構成元素に入っている際のZnとMgの比率に関しては、n電極側に向いZnが増大しMgが減少する依存性がみられることで伝導帯のつながりが良くなるので好ましい。
【0016】
なお、第1n型層4Aの化合物の組成は、特に条件を付けなければ第1n型層4A全体の平均組成である。第1n型層4Aの組成は、第1n型層4Aの厚さをdとする場合、p型光吸収層3側の第1n型層4Aの表面から0.2d、0.5d、0.8dの深さにおける組成の平均値である。第1n型層4Aの化合物の元素組成比が傾斜しているといった条件がある場合を除き各深さにおいて、第1n型層4Aは、上記及び下記の好適な組成を満たすことが好ましい。なお、第1n型層4Aが非常に薄い場合(例えば5nm以下)は、p型光吸収層3側の第1n型層4Aの表面から0.5dの深さにおける組成を第1n型層4Aの全体の組成とみなすことができる。なお、分析はn型層の表面からの各距離において図2の分析スポットに示すような等間隔に可能な限り隔たり無く分布した分析スポットを例えば二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry;SIMS)で分析することで求められる。図2は太陽電池100を光の入射側から見た模式図である。D1は第1n型層4Aの幅方向の長さであり、D2は第1n型層4Aの奥行き方向の長さである。
【0017】
第1n型層4Aの膜厚は、典型的には、3nm以上100nm以下である。第1n型層4Aの厚さが3nm未満であると第1n型層4Aのカバレッジが悪い場合にリーク電流が発生し、特性を低下させてしまう場合がある。カバレッジが良い場合は上記膜厚に限定されない。第1n型層4Aの厚さが50nmを超えると第1n型層4Aの過度の高抵抗化による特性低下や、透過率低下による短絡電流低下が起こる場合がある。従って、第1n型層4Aの厚さは3nm以上30nm以下がより好ましく、5nm以上30nm以下がさらにより好ましい。
【0018】
p型光吸収層3の伝導帯下端(Conduction Band Minimum:CBM)と第1n型層4Aの伝導帯下端の差が小さくなる第1n型層4Aが好ましい。Gaはp型光吸収層3に対して伝導帯下端がとても低く、伝導帯下端の差を小さくするために、M1の元素が第1n型層4Aの化合物に含まれる。p型光吸収層3の伝導帯下端と第1n型層4Aの伝導帯下端の差([p型光吸収層3の伝導帯下端]-[第1n型層4Aの伝導帯下端])は、0.0eV以上0.4eV以下であることが好ましい。
【0019】
M1の元素の酸化物とGaが混合した第1n型層4Aは、Ga層と比べて屈折率が下がらない(実質的に下がらない)。そこで、M1の元素を含むGax1M1 M2x3M3x4M4x5x6で表される化合物が第1n型層4Aに含まれることが好ましい。CuOの屈折率は大きく、n電極5の屈折率は、CuOに比べて小さい。そこで、p型光吸収層3に入射される光量を増やすために、p型光吸収層3からn電極5間の光の透過率を上げるために、第1n型層4Aの屈折率はp型光吸収層3の屈折率の1.0倍以下でn電極5の屈折率の1.0倍以上であることが好ましい。Gaに加え、Hf又は/及びZrが比較的多く含まれる酸化物の屈折率は、Gaそのものの屈折率よりも低くならないことから上記の好適な屈折率の間に調整することが容易である。そこで伝導体下端と屈折率を考慮するとM1の元素としてHf又は/及びZrを用いることが好ましい。HfやZrなどGaより重い元素を添加することで第1n型層の屈折率を大きくすることができ、光吸収層3やn電極5との屈折率差を調整することができるため、各層界面での屈折率差由来の反射が抑制され、n型層の膜厚が厚くても短絡電流の低下が抑制できる。
【0020】
実施形態の第1n型層4Aは、主にGaとM1の元素によって伝導帯下端が調整されている。M1の元素比率を高めることで第1n型層4Aの伝導帯下端が上がり、p型光吸収層3の伝導帯下端の差を少なくすることができる。第1n型層4Aにおいて、(x1+x2)/(x1+x2+x3+x4+x5)は、0.60以上1.00以下が好ましい。同観点から、第1n型層4Aにおいて、(x1+x2)/(x1+x2+x3+x4+x5)は、0.80以上1.00以下が好ましく、0.90以上1.00以下がより好ましい。
【0021】
x2/(x1+x2)は、0.10以上0.60以下が好ましい。x2/(x1+x2)が0.10未満である場合は、pn接合界面の伝導帯が不連続となる大きなクリフが生じてVocが低いため、変換効率の高い太陽電池を得ることは難しい。また、x2/(x1+x2)が0.60より大きい場合は、pn接合界面の伝導帯が不連続となるスパイクが生じてFFが低くなるため、変換効率の高い太陽電池を得ることは難しい。HfとZrは上述の通りGaベースの酸化物のn型層の屈折率を下げないため、好適な量のM1の元素が含まれるGax1M1x2M2x3M3x4M4x5x6で表される化合物はさらにJscが向上することで、太陽電池100の変換効率の向上に寄与する。上記観点から、x2/(x1+x2)は、0.20以上0.55以下がより好ましい。
【0022】
第1n型層4Aの化合物にはM2で表されるIn、Ti及びZnからなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。M2の元素は第1n型層4Aの屈折率を高くすることができる元素である。また、M2の元素は、第1n型層4Aの伝導帯下端を調整することができる。M2の元素が多すぎると第1n型層4Aとp型光吸収層3の伝導帯下端の差が大きくなる場合があるため、x3/(x1+x2+x3+x4+x5)は、0.00以上0.40以下であることが好ましく、0.00以上0.10以下がより好ましく、0.00以上0.05以下がより好ましい。
【0023】
第1n型層4Aの化合物にはM3で表されるAl又は/及びBを含むことができる。M3の元素はM2の元素と異なり、第1n型層4Aの屈折率を下げる元素である。実施形態では、これらの元素は少ないことが好ましく、x4/(x1+x2+x3+x4+x5)は、0.00以上0.20以下であることが好ましく、0.00以上0.10以下がより好ましい。M3の元素が含まれると第1n型層4Aの伝導帯下端も変化するため、第1n型層4Aの伝導帯下端を調整する目的でM3の元素の比率を選択することができる。
【0024】
第1n型層4Aの化合物にはM4で表されるSn、Si及びGeからなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。M4の元素が第1n型層4Aに含まれると、第1n型層4Aのキャリア濃度を高くすることができる。x5/(x1+x2+x3+x4+x5)は、0.00以上0.20以下であることが好ましく、0.00以上0.10以下であることがより好ましく、0.00以上0.05以下がより好ましい。
【0025】
Ga、M1の元素、M2の元素、M3の元素及びM4の元素からなる群より選ばれる1以上は、第1n型層4A中で第1n型層4Aの膜厚方向に組成比率が変化していてもよい。M2及びM4の元素は、p型光吸収層3側で少なく、n電極5側で多いことが好ましい。M3の元素は、p型光吸収層3側で多く、n電極5側で少ないことが好ましい。M1は他の元素の組成比率の変化に応じて組成を変化させることが好ましい。組成の変化は、傾斜的、階段状又は傾斜的な変化と階段状の変化が組み合わさっていることが好ましい。また、組成の変化は太陽電池100の各層の積層方向に全体的又は部分的である。これらの元素の組成分布を変えることで、p型光吸収層3側からn電極5側に向かって、キャリア濃度、伝導帯下端及び屈折率を調整することができ、変換効率の向上に寄与することができる。
【0026】
第1n型層4Aは、例えばスパッタやALD(Atomic Layer Deposition)などによって成膜されることが好ましい。
【0027】
n電極5は、可視光に対して、光透過性を有する第1n型層4A側の電極である。n電極5とp型光吸収層3によって第1n型層4Aを挟んでいる。第1n型層4Aとn電極5の間には、図示しない中間層を設けることができる。この中間層にはメッシュやライン形状の電極を含むことができる。中間層を設けた場合も、第1n型層4Aとn電極5は直接的に接していることが好ましい。n電極5には、酸化物透明導電膜を用いることが好ましい。n電極5で用いられる酸化物透明導電膜としては、酸化インジウムスズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ボロンドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、チタンドープ酸化インジウム、酸化インジウムガリウム亜鉛及び水素ドープ酸化インジウムからなる群より選ばれる1種以上の透明導電膜であることが好ましい。n電極5には、グラフェンも用いることができる。グラフェンは、銀ナノワイヤと積層させることが好ましい。
【0028】
n電極5の厚さは、電子顕微鏡による断面観察や、段差計によって求められ、特に限定はないが、典型的には、1nm以上2μm以下である。
【0029】
n電極5は、例えばスパッタなどによって成膜されることが好ましい。
【0030】
(第2実施形態)
第2実施形態は太陽電池に関する。図3に第2実施形態の太陽電池101の断面概念図を示す。第2実施形態の太陽電池101は、第1n電極4Aと第2n型層4Bが積層したn型層4を有することなどが第1実施形態の太陽電池100と異なることである。第1実施形態と第2実施形態で共通する説明は省略する。
【0031】
第2n型層4Bは、第1n型層4Aとn電極5との間に位置する。第2n型層4Bの第1n型層4A側の面は、第1n型層4Aと直接的に接している。第2n型層4BはGaを含む酸化物半導体層であって、Gaをベースとする化合物を含むことが好ましい。第1n型層4Aと第2n型層4Bの界面は明瞭な場合と不明瞭な場合がある。第2n型層4BはGaをベースとする酸化物に他の酸化物が混合していてもよいし、Gaをベースとする酸化物に他の元素がドープしていてもよいし、他の元素がドープしたGaベースの酸化物と他の酸化物が混合していてもよい。第2n型層4Bとn電極5の間には、図示しない中間層を設けることができる。反射低減の観点から、第2n型層4Bの屈折率は第1n型層4Aの屈折率より小さくなることが好ましい。
【0032】
第2n型層4Bは、Gay1M1y2M2y3M3y4M4y5y6で表される化合物を主体(50wt%以上)とする層であって、M1はHf又は/及びZrであり、M2はIn、Ti及びZnからなる群から選ばれる1種以上であり、M3はAl又は/及びBであり、M4はSn、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。y1及びy6は、0より大きい数値である。y2、y3、y4及びy5は0以上の数値である。y1、y2、y3、y4及びy5の和を2とする場合、y6は3.0以上3.8以下であることが好ましい。Gaをベースとする酸化物に他の酸化物が混合した形態、Gaをベースとする酸化物に他の元素がドープしている形態及び他の元素がドープしたGaベースの酸化物と他の酸化物が混合した形態のいずれもGay1M1y2M2y3M3y4M4 y6で表している。
【0033】
第2n型層4Bの90wt%以上は、Gay1M1y2M2y3M3y4M4y5 で表される化合物であることが好ましい。第2n型層4Bの95wt%以上は、Ga M1y2M2y3M3y4M4y5y6で表される化合物であることがより好ましい。第2n型層4Bの98wt%以上は、Gay1M1y2M2y3M3y4M4y5 で表される化合物であることがさらにより好ましい。第2n型層4BはGay1M1 M2y3M3y4M4y5y6で表される化合物で構成されていることがより好ましい。
【0034】
第2n型層4Bは、主にGaとM1の元素によって伝導帯下端が調整されている。M1の元素比率を第1n型層4Aよりも少なくすることで第2n型層4Aの伝導帯下端が第1n型層4Aよりも下がる。そして、第1n型層4Aからn電極5の間の伝導帯下端の接続の連続性が向上する。第2n型層4Bにおいて、(y1+y2)/(y1+y2+y3+y4+y5)は、0.60以上1.00以下が好ましい。同観点から、第2n型層4Bにおいて、(y1+y2)/(y1+y2+y3+y4+y5)は、0.80以上1.00以下が好ましく、0.90以上1.00以下がより好ましい。
【0035】
第2n型層4Bは、第1n型層4Aよりも伝導帯下端が低い層であり、第2n型層4Bの伝導下端は、第1n型層4Aとn電極5の間にある。第2n型層4Bを用いることで、p型光吸収層3からn電極5まで伝導帯下端が連続的につながりFF及びVocが向上して変換効率の向上に寄与する。y2が0より大きな数値である場合は、第1n型層4Aと共通するM1の元素を第2n型層4Bも有すことが好ましい。つまり、第1n型層4AにHfが含まれれば第2n型層4BにHfが含まれないことよりもHfが含まれることが好ましい。そして、y1はx1より大きく、y2はx2より小さいことに起因して第2n型層4Bの伝導体下端を第1n型層4Aの伝導帯下端よりも低くなり、伝導帯下端の接続の連続性が向上する。同観点からy2/(y1+y2)は、0.00以上0.30以下が好ましく、0.00以上0.20以下がより好ましい。また、x2とy2が近い値であると第2n型層4Bを設けることによる伝導帯下端の接続の連続性の向上が少ない。そこでy2はx2の90%以下が好ましく、y2はx2の80%以下がより好ましく、y2は、x2の70%以下がより好ましい。
【0036】
y3、y4及びy5の数値は、第1実施形態のx3、x4及びx5の好適な数値が好ましい。従って、y3/(y1+y2+y3+y4+y5)は、0.00以上0.40以下であることが好ましく、0.00以上0.10以下がより好ましく、0.00以上0.05以下がより好ましい。y4/(y1+y2+y3+y4+y5)は、0.00以上0.10以下が好ましい。y5/(y1+y2+y3+y4+y5)は、0.00以上0.20以下が好ましく、0.00以上0.10以下であることがより好ましく0.00以上0.05以下がさらにより好ましい。
【0037】
第1n型層4Aの膜厚と第2n型層4Bの膜厚の和は、典型的には、3nm以上100nm以下である。第1n型層4Aの膜厚と第2n型層4Bの膜厚の和が3nm未満であると第1n型層4Aと第2n型層4Bのカバレッジが悪い場合にリーク電流が発生し、特性を低下させてしまう場合がある。カバレッジが良い場合は上記膜厚に限定されない。第1n型層4Aの膜厚と第2n型層4Bの膜厚の和が50nmを超えると第1n型層4A及び第2n型層4Bを合わせたn型層の過度の高抵抗化による特性低下や、透過率低下による短絡電流低下が起こる場合がある。従って、第1n型層4Aの膜厚と第2n型層4Bの膜厚の和は3nm以上30nm以下がより好ましく、5nm以上30nm以下がさらにより好ましい。
【0038】
Ga、M1の元素、M2の元素、M3の元素及びM4の元素からなる群より選ばれる1以上は、第2n型層4B中で第2n型層2Bの膜厚方向に組成比率が変化していてもよい。M2及びM4の元素は、p型光吸収層3側で少なく、n電極5側で多いことが好ましい。M3の元素は、p型光吸収層3側で多く、n電極5側で少ないことが好ましい。組成の変化は、傾斜的、階段状又は傾斜的な変化と階段状の変化が組み合わさっていることが好ましい。また、組成の変化は太陽電池100の各層の積層方向に全体的又は部分的である。これらの元素の組成分布を変えることで、p型光吸収層3側からn電極5側に向かって、キャリア濃度、伝導帯下端及び屈折率を調整することができ、変換効率の向上に寄与することができる。
【0039】
(第3実施形態)
第3実施形態は太陽電池に関する。図4に第3実施形態の太陽電池102の断面概念図を示す。第3実施形態の太陽電池102は、第1領域4aと第2領域4bを有する第1n型層4Aを有することなどが第1実施形態の太陽電池100と異なることである。第1実施形態から第2実施形態と第3実施形態で共通する説明は省略する。
【0040】
第1領域4aは、第3n型層4Aのp型光吸収層3側に位置する。また、第2領域4bは、第1n型層4Aのn電極5側に位置する。第3実施形態の第1n型層4Aにおいて、p型光吸収層3側とn電極5側では組成が明確に異なるが、第1領域4aと第2領域4bの界面は確認されない。第1n型層4Aのp型光吸収層3側の表面からn電極5側に向かって第1n型層4Aの厚さの半分までを第1領域4aとする。また、第1n型層4Aのn電極5側の表面からp型光吸収層3側に向かって第1n型層4Aの厚さの半分までを第2領域4bとする。なお、分析は第1実施形態と同様にn型層の表面からの各距離において図2の分析スポットに示すような等間隔に可能な限り隔たり無く分布した分析スポットを例えばSIMSで分析することで求められる。
【0041】
第1領域4a中の化合物の組成は、特に条件を付けなければ第1領域4a全体の平均組成である。第1領域4aの組成は、第1n型層4Aの厚さをdとする場合、p型光吸収層3側の第1n型層4Aの表面から0.10d、0.25d、0.40dの深さにおける組成の平均値である。第1n型層4Aの厚さが非常に薄い(10nm以下)場合は、第1n型層4Aの表面から0.25dの深さにおける組成を第1領域4a全体の平均組成とみなす。第2領域4bの組成は、第1n型層4Aの厚さをdとする場合、p型光吸収層3側の第1n型層4Aの表面から0.60d、0.75d、0.80dの深さにおける組成の平均値である。第1n型層4Aの厚さが非常に薄い(10nm以下)場合は、第1n型層4Aの表面から0.75dの深さにおける組成を第2領域4b全体の平均組成とみなす。
【0042】
第1領域4a中において、(x1+x2)/(x1+x2+x3+x4+x5)は、0.80以上1.00以下が好ましく、0.90以上1.00以下がより好ましい。また、第2領域4b中において、(x1+x2)/(x1+x2+x3+x4+x5)は、0.60以上1.00以下であり、0.80以上1.00以下が好ましく、0.90以上1.00以下がより好ましい。
【0043】
M1の元素の組成比率であるx2は、第1n型層4Aのp型光吸収層3側からn電極5に向かって傾斜的、階段状、又は、傾斜的な変化と階段状が組み合わさったように変化することが好ましい。M1の組成比率が膜厚方向に変化する場合、Gaの組成比率はM1の変化に対応するように膜厚方向に変化することが好ましい。また、組成の変化は太陽電池100のp型光吸収層3と第1n型層4Aの積層方向に全体的又は部分的である。M1の元素が第1領域4a側で高く第2領域4b中で低いと、伝導帯下端の接続の連続性が向上することが好ましい。第2領域4b中のx2は、第1領域4a中のx2よりも低いことが好ましく、第1領域4a中のx2よりも20%以上低いことがより好ましい。そこで、第1領域4a中のx2/(x1+x2)は、0.20以上0.55以下が好ましく、第2領域4b中のx2/(x1+x2)は、0.00以上0.30以下であることが伝導帯下端の接続の連続性を考慮すると好ましい。
【0044】
M2の元素が含まれる場合、M2の元素は、第1n型層4Aのp型光吸収層3側からn電極5に向かって傾斜的、階段状、又は、傾斜的な変化と階段状が組み合わさったように変化することが好ましい。また、組成の変化は太陽電池100のp型光吸収層3と第1n型層4Aの積層方向に全体的又は部分的である。M2の組成の変化のさせ方は、領域の位置や接している層の伝導帯下端と屈折率を考慮して適宜選択される。例えば、伝導帯下端の接続の連続性を考慮すると、第1領域4a中のx3は、第2領域4b中のx3よりも低いことが好ましく、第2領域4b中のx3よりも20%以上低いことがより好ましい。屈折率を考慮すると、第1領域4a中のx3は、第2領域4b中のx3よりも低いことが好ましく、第2領域4b中のx3よりも20%以上低いことがより好ましい。
【0045】
M3の元素が含まれる場合、M3の元素は、第1n型層4Aのp型光吸収層3側からn電極5に向かって傾斜的、階段状、又は、傾斜的な変化と階段状が組み合わさったように変化することが好ましい。また、組成の変化は太陽電池100のp型光吸収層3と第1n型層4Aの積層方向に全体的又は部分的である。伝導帯下端の接続の連続性を考慮すると、第2領域4b中のx4は、第1領域4a中のx4よりも低いことが好ましく、第1領域4a中のx4よりも20%以上低いことがより好ましい。
【0046】
M4の元素が含まれる場合、M4の元素は、第1n型層4Aのp型光吸収層3側からn電極5に向かって傾斜的、階段状、又は、傾斜的な変化と階段状が組み合わさったように変化することが好ましい。また、組成の変化は太陽電池100のp型光吸収層3と第1n型層4Aの積層方向に全体的又は部分的である。n電極5側のキャリア濃度を考慮すると、第1領域4a中のx5は、第2領域4b中のx5よりも低いことが好ましく、第2領域4b中のx5よりも20%以上低いことがより好ましい。
【0047】
第3実施形態の第1領域4aと第2領域4bの関係と第2実施形態の第1n型層4Aと第2n型層4Bの関係は、元素の組成比率が対応している。従って、第3実施形態において説明した傾斜的な組成変化等については第2実施形態の太陽電池101等においても同様である。
【0048】
(第4実施形態)
第4実施形態は太陽電池に関する。図5に第4実施形態の太陽電池103の断面概念図を示す。第4実施形態の太陽電池103は、第1n型層4A、第2n型層4Bと第3n型層4Cが積層したn型層4を有することなどが第2実施形態の太陽電池101と異なることである。第1実施形態から第3実施形態と第4実施形態で共通する説明は省略する。
【0049】
第3n型層4Cは、第2n型層4Bとn電極5との間に位置する。第3n型層4Cの第2n型層4B側の面は、第2n型層4Bと直接的に接している。第3n型層4CはGa又は/及びZnを含む酸化物半導体層であって、Ga又は/及びZnをベースとする化合物を含むことが好ましい。第2n型層4Bと第3n型層4Cの界面は明瞭な場合と不明瞭な場合がある。第3n型層4CはGaベースとする酸化物に他の酸化物が混合していてもよいし、Ga又は/及びZnをベースとする酸化物に他の元素がドープしていてもよいし、他の元素がドープしたGa又は/及びZnベースの酸化物と他の酸化物が混合していてもよい。第3n型層4Cとn電極5の間には、図示しない中間層を設けることができる。
【0050】
第3n型層4Cは、Gaz1Znz2Snz3M5z4z5で表される化合物を主体(50wt%以上)とする層であって、M5はHf、Zr、In、Ti、Al、B、Si、Mg及びGeからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。z1、z2、z3、z4及びz5は0以上の数値である。z1、z2、z3及びz4の和を2とする場合、z5は2.2以上3.6以下であることが好ましい。z3、z5は0より大きいことが好ましい。Ga又は/及びZnをベースとする酸化物に他の酸化物が混合した形態、Ga又は/及びZnをベースとする酸化物に他の元素がドープしている形態及び他の元素がドープしたGa又は/及びZnをベースの酸化物と他の酸化物が混合した形態のいずれもGaz1Znz2Snz3M5z4z5で表している。
【0051】
第3n型層4Cの90wt%以上は、Gaz1Znz2Snz3M5z4z5で表される化合物であることが好ましい。第3n型層4Cの95wt%以上は、Gaz1Zn Snz3M5z4z5で表される化合物であることがより好ましい。第3n型層4Cの98wt%以上は、Gaz1Znz2Snz3M5z4z5で表される化合物であることがさらにより好ましい。第3n型層4Cは、Gaz1Znz2Snz3M5z4 で表される化合物で構成されていることがより好ましい。
【0052】
第3n型層4Cは、主にGa、ZnとSnによって第2n型層4B及びn電極5との伝導帯下端の差が少なくなるように調整されている。ZnO及びSnOの伝導体下端は、Gaの伝導帯下端よりも低いため、第3n型層4Cは、Gaよりもn電極5との伝導帯下端の差を小さくすることができる。ZnとSnの元素比率を第1n型層4A及び第2n型層4BのZnとSnの元素比率よりも高めることで第3n型層4Cの伝導帯下端が第1n型層4Aよりも下がる。そして、第1n型層4Aからn電極5の間の伝導帯下端の接続の連続性が向上する。第3n型層4Cにおいて、(z1+z2)/(z1+z2+z3+z4)は、0.60以上0.98以下が好ましい。同観点から、第3n型層4Cにおいて、(z1+z2)/(z1+z2+z3+z4)は、0.65以上0.95以下が好ましく、0.70以上0.90以下がより好ましい。
【0053】
第3n型層4Cは、n型層において最もn電極5側に位置し、好ましくは第3n型層4Cはn電極5と直接的に接している。第1n型層4A及び第2n型層4BにZnやSnが含まれる場合、それらの組成比率は、第3n型層4C中のZnとSnのそれぞれの濃度よりも低いことが好ましい。
【0054】
また、第3n型層4Cには、Snが含まれていることが好ましい。Snが第3n型層4Cに含まれていると伝導帯下端の接続の連続性が向上しキャリア濃度が増えることが好ましい。そこで、z3/(z1+z2+z3+z4)は、0.10以上0.50以下が好ましく、0.15以上0.30以下がより好ましい。
【0055】
M5の元素は第3n型層4Cに含まれていてもよいし含まれていなくてもよい。M5の元素が含まれる場合は、その組成比率は低いことが好ましい。そこで、z4/(z1+z2+z3+z4)は0.00以上0.05以下であることが好ましい。M5の元素は、第2n型層4Bに含まれる元素と共通していることが好ましい。
【0056】
第3n型層4Cにおいても、Ga、Zn、Sn及びM5の元素は、p型光吸収層3側からn電極5に向かって傾斜的、階段状、又は、傾斜的な変化と階段状が組み合わさったように変化してもよい。例えば、Snはn電極5側に多く、Ga及びZnは第2n型層4b側に多くすることが好ましい。
【0057】
第1n型層4Aの膜厚、第2n型層4Bの膜厚と第3n型層4Cの膜厚の和は、典型的には、3nm以上100nm以下である。第1n型層4Aの膜厚、第2n型層4Bの膜厚と第3n型層4Cの膜厚の和が3nm未満であると第1n型層4Aの膜厚、第2n型層4Bの膜厚と第3n型層4Cの膜厚の和のカバレッジが悪い場合にリーク電流が発生し、特性を低下させてしまう場合がある。カバレッジが良い場合は上記膜厚に限定されない。第1n型層4Aの膜厚、第2n型層4Bの膜厚と第3n型層4Cの膜厚の和が50nmを超えると第1n型層4Aから第3n型層4Cをまでのn型層の過度の高抵抗化による特性低下や、透過率低下による短絡電流低下が起こる場合がある。従って、第1n型層4Aの膜厚、第2n型層4Bの膜厚と第3n型層4Cの膜厚の和は3nm以上30nm以下がより好ましく、5nm以上30nm以下がさらにより好ましい。
【0058】
Ga、Zn、Sn及びM5の元素からなる群より選ばれる1以上は、第3n型層4C中で第3n型層3Cの膜厚方向に組成比率が変化していてもよい。
【0059】
第2n型層4Bが含まれないn型層、つまり第1n型層4Aと第3n型層4Cとで構成されるn型層を有する太陽電池等が第4実施形態の変形例に含まれる。
【0060】
(第5実施形態)
第5実施形態は、太陽電池に関する。図6に第5実施形態の太陽電池104の断面概念図を示す。第5実施形態の太陽電池104は、第1n型層4Aが第1領域4a、第2領域4b及び第3領域4cを有することなどが第3実施形態の太陽電池102と異なることである。第1実施形態から第4実施形態と第5実施形態で共通する説明は省略する。第5実施形態の第3領域4cは、第4実施形態の第3n型層4Cに相当する。
【0061】
第3領域4cは、第3n型層4Aのn型層5側に位置する。また、第3領域4cと第1領域4aの間に第2領域4bが位置している。第5実施形態の第1n型層4Aにおいて、p型光吸収層3側とn電極5側では組成が明確に異なるが、第1領域4aと第2領域4bの界面と第2領域4bと第3領域4cの界面は確認されない。第1n型層4Aの厚さをdとする場合、第1n型層4Aのp型光吸収層3側の表面からn電極5側に向かって0.33dまでを第1領域4aとする。また、第1n型層4Aのn電極5側の表面からp型光吸収層3側に向かって0.33dまでを第3領域4cとする。第1領域4aと第3領域4cの間を第2領域4bとする。
【0062】
第1領域4a中の化合物の組成は、特に条件を付けなければ第1領域4a全体の平均組成である。第1領域4aの組成は、第1n型層4Aの厚さをdとする場合、p型光吸収層3側の第1n型層4Aの表面から0.10d、0.20d、0.30dの深さにおける組成の平均値である。第1n型層4Aの厚さが非常に薄い(10nm以下)場合は、第1n型層4Aの表面から0.20dの深さにおける組成を第1領域4a全体の平均組成とみなす。第2領域4bの組成は、第1n型層4Aの厚さをdとする場合、p型光吸収層3側の第1n型層4Aの表面から0.40d、0.50d、0.60dの深さにおける組成の平均値である。第1n型層4Aの厚さが非常に薄い(10nm以下)場合は、第1n型層4Aの表面から0.50dの深さにおける組成を第2領域4b全体の平均組成とみなす。第3領域4cの組成は、第1n型層4Aの厚さをdとする場合、p型光吸収層3側の第1n型層4Aの表面から0.70d、0.80d、0.90dの深さにおける組成の平均値である。第1n型層4Aの厚さが非常に薄い(10nm以下)場合は、第1n型層4Aの表面から0.80dの深さにおける組成を第3領域4c全体の平均組成とみなす。
【0063】
第1領域4a、第2領域4b、第3領域4cの組成は、第4実施形態の第1n型層4A、第2n型層4B、第3n型層4Cのそれぞれに対応する。
【0064】
(第6実施形態)
第6実施形態は、多接合型太陽電池に関する。図7に第6実施形態の多接合型太陽電池の断面概念図を示す。図7の多接合型太陽電池200は、光入射側に第1実施形態の太陽電池(第1太陽電池)100と、第2太陽電池201を有する。第2太陽電池201の光吸収層のバンドギャップは、第1実施形態の太陽電池100のp型光吸収層3よりも小さいバンドギャップを有する。なお、実施形態の多接合型太陽電池は、3以上の太陽電池を接合させた太陽電池も含まれる。なお、第6実施形態において、第1実施形態の太陽電池100の代わりに第2実施形態から第5実施形態の太陽電池101-104を用いてもよい。
【0065】
第1実施形態の第1太陽電池100のp型光吸収層3のバンドギャップが2.0eV-2.2eV程度であるため、第2太陽電池200の光吸収層のバンドギャップは、1.0eV以上1.6eV以下であることが好ましい。第2太陽電池の光吸収層としては、Inの含有比率が高いCIGS系、CuZnSnSSe系、及びCdTe系からなる群から選ばれる1種以上の化合物半導体層、結晶シリコン及びペロブスカイト型化合物からなる群より選ばれる1種であることが好ましい。
【0066】
(第7実施形態)
第7実施形態は、太陽電池モジュールに関する。図8に第6実施形態の太陽電池モジュール300の斜視図を示す。図8の太陽電池モジュール300は、第1太陽電池モジュール301と第2太陽電池モジュール302を積層した太陽電池モジュールである。第1太陽電池モジュール301は、光入射側であり、第1実施形態の太陽電池100を用いている。第2の太陽電池モジュール302には、第2太陽電池201を用いることが好ましい。
【0067】
図9に太陽電池モジュール300の断面図を示す。図9では、第1太陽電池モジュール301の構造を詳細に示し、第2太陽電池モジュール302の構造は示していない。第2太陽電池モジュール301では、用いる太陽電池の光吸収層などに応じて適宜、太陽電池モジュールの構造を選択する。図9の太陽電池モジュールは、複数の太陽電池100(太陽電池セル)が横方向に並んで配線304で電気的に直列に接続した破線で囲われたサブモジュール303が複数含まれ、複数のサブモジュール303が電気的に並列もしくは直列に接続している。隣り合うサブモジュール303は、バスバー305で電気的に接続している。
【0068】
隣り合う太陽電池100は、上部側のn電極5と下部側のp電極2が配線304によって接続している。第3実施形態の太陽電池100も第1実施形態の太陽電池100と同様に、基板1、p電極2、p型光吸収層3、第1n型層4Aとn電極5を有する。サブモジュール303中の太陽電池100の両端は、バスバー305と接続し、バスバー305が複数のサブモジュール303を電気的に並列もしくは直列に接続し、第2太陽電池モジュール302との出力電圧を調整するように構成されていることが好ましい。なお、第4実施形態に示す太陽電池100の接続形態は一例であり、他の接続形態によって太陽電池モジュールを構成することができる。
【0069】
(第8実施形態)
第8実施形態は太陽光発電システムに関する。第7実施形態の太陽電池モジュールは、第8実施形態の太陽光発電システムにおいて、発電を行う発電機として用いることができる。実施形態の太陽光発電システムは、太陽電池モジュールを用いて発電を行うものであって、具体的には、発電を行う太陽電池モジュールと、発電した電気を電力変換する手段と、発電した電気をためる蓄電手段又は発電した電気を消費する負荷とを有する。図10に実施形態の太陽光発電システム400の構成図を示す。図10の太陽光発電システムは、太陽電池モジュール401(300)と、コンバーター402と、蓄電池403と、負荷404とを有する。蓄電池403と負荷404は、どちらか一方を省略しても良い。負荷404は、蓄電池403に蓄えられた電気エネルギーを利用することもできる構成にしてもよい。コンバーター402は、DC-DCコンバーター、DC-ACコンバーター、AC-ACコンバーターなど変圧や直流交流変換などの電力変換を行う回路又は素子を含む装置である。コンバーター402の構成は、発電電圧、蓄電池403や負荷404の構成に応じて好適な構成を採用すればよい。
【0070】
太陽電池モジュール300に含まれる受光したサブモジュール301に含まれる太陽電池セルが発電し、その電気エネルギーは、コンバーター402で変換され、蓄電池403で蓄えられるか、負荷404で消費される。太陽電池モジュール401には、太陽電池モジュール401を常に太陽に向けるための太陽光追尾駆動装置を設けたり、太陽光を集光する集光体を設けたり、発電効率を向上させるための装置等を付加することが好ましい。
【0071】
太陽光発電システム400は、住居、商業施設や工場などの不動産に用いられたり、車両、航空機や電子機器などの動産に用いられたりすることが好ましい。実施形態の変換効率に優れた太陽電池を太陽電池モジュールに用いることで、発電量の増加が期待される。
【0072】
太陽光発電システム400の利用例として車両を示す。図11に車両500の構成概念図を示す。図15の車両500は、車体501、太陽電池モジュール502、電力変換装置503、蓄電池504、モーター505とタイヤ(ホイール)506を有する。車体501の上部に設けられた太陽電池モジュール501で発電した電力は、電力変換装置503変換されて、蓄電池504にて充電されるか、モーター505等の負荷で電力が消費される。太陽電池モジュール501又は蓄電池504から供給される電力を用いてモーター505によってタイヤ(ホイール)506を回転させることにより車両500を動かすことができる。太陽電池モジュール501としては、多接合型ではなく、第1実施形態の太陽電池100等を備えた第1太陽電池モジュールだけで構成されていてもよい。透過性のある太陽電池モジュール502を採用する場合は、車体501の上部に加え、車体501の側面に発電する窓として太陽電池モジュール502を使用することも好ましい。
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)
ガラス基板上に、裏面側のp電極として、ガラスと接する側に上面にITO(In:Sn=90:10、膜厚20nm)とATO(Sn:Sb=98:2、膜厚150μm)を堆積する。透明なp電極上に酸素、アルゴンガス雰囲気中でスパッタリング法により500℃で加熱してCuO光吸収層を成膜する。その後、ALD法により、n型層として組成傾斜の無いGa1.20Hf0.803.4を10nm堆積し、表面側のn電極としてAZO透明導電膜を堆積する。そして、反射防止膜としてMgF膜を成膜することで太陽電池を得る。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。なお、n型層の酸素組成比は金属酸化物の金属の種類と組成比から求めている。
【0074】
太陽電池の透光性を評価する。太陽電池の透過性は、分光光度計で波長700-1200nmを測定した際の平均透過率である。
【0075】
(実施例2-38、比較例)
図12、13に実施例の表を表している。図12の表に実施例及び比較例のn型層の条件を示している。n型層の条件以外は、実施例1と同様である。実施例で2層又は3層のn型層を形成している場合は、各n型層の厚さを6nmとしている。実施例32においては、第1n型層のTiがp型光吸収層側で多く、n電極側で少なくなるようにTiの組成を傾斜的に変化させている。実施例33においては第1n型層のAlがp型光吸収層側で多く、n電極側で少なくなるようにAlの組成を階段状に変化させている。実施例34においては、第1n型層のHfがp型光吸収層側で多く、n電極側で少なくなるようにHfの組成を傾斜的に変化させている。実施例35から実施例38はn型層が1層で表に示している組成比になるようにターゲット比率を傾斜的に変えていて、n型層中に界面が無く、図12の表に示す複数のn型領域が含まれるようにn型層を形成している。
【0076】
AM1.5Gの光源を模擬したソーラーシミュレータを用い、その光源下で基準となるSiセルを用いて1sunになるように光量を調節する。測定は大気圧下で測定室内の気温は25℃とする。電圧をスイープし、電流密度(電流をセル面積で割ったもの)を測定する。横軸を電圧、縦軸を電流密度とした際に、横軸と交わる点が開放電圧Vocとなり、縦軸と交わる点が短絡電流密度Jscとなる。測定曲線上において、電圧と電流密度を掛け合わせ、最大になる点をそれぞれVmpp、Jmpp(mpp:マキシマムパワーポイント)とすると、FF=(Vmpp*Jmpp)/(Voc*Jsc)であり、変換効率Eff.はEff.=Voc*Jsc*FFで求まる。
【0077】
表2に実施例及び比較例の短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性をまとめて示す。
【0078】
透光性は、700nm以上1200nm以下の波長帯の光の透光率が75%以上である場合をAと評価し、700nm以上1200nm以下の波長帯の光の透光率が70%以上75%未満である場合をBと評価し、700nm以上1200nm以下の波長帯の光の透光率が70%未満である場合をCと評価する。
【0079】
Jscは、比較例1の変換効率に対して1.02倍以上である場合をAと評価し、比較例1のJscに対して0.95倍以上1.02倍未満である場合をBと評価して、比較例1のJscに対して0.95倍未満である場合をCと評価する。
【0080】
Vocは、比較例1の変換効率に対して1.30倍以上である場合をAと評価し、比較例1のVocに対して1.00倍以上1.30倍未満である場合をBと評価して、比較例1のVocに対して1.00倍未満である場合をCと評価する。
【0081】
FFは、比較例1の変換効率に対して1.01倍以上である場合をAと評価し、比較例1のFFに対して0.70倍以上1.01倍未満である場合をBと評価して、比較例1のFFに対して0.7倍未満である場合をCと評価する。
【0082】
変換効率は、比較例1の変換効率に対して1.3倍以上である場合をAと評価し、比較例1の変換効率に対して1.01倍以上1.3倍未満である場合をBと評価して、比較例1の変換効率に対して1.01倍未満である場合をCと評価する。
【0083】
図13の表から分るように、
短絡電流密度JscはTi、Snが多いときや多層化の際に大きくなる傾向がある。これは、TiOやSnOの屈折率がGaに比べて大きいため、CuOからn電極にかけての屈折率分布が改善して、CuO内部での光吸収量が増えたことに対応していると考えられる。比較例2から4もIn、Znを導入することで、屈折率が増大した結果、短絡電流密度が増大したものと考えられる。また、多層化することで界面での再結合が抑制された結果でも増えている様子が見える。さらに、n型層内部に組成傾斜を形成することで、n型層内部で電子が再結合しにくくなっている様子も見て取れる。フィルファクターにも多層化の影響は表れており、多層化するほど大きくなっていることも見て取れる。開放電圧に関しては、第1n型層(第1領域)のHf、Zr量が多い場合に大きくなる傾向があり、CuOと第1n型層(第1領域)の伝導帯位置の差を小さくすることが寄与していると考えられる。ただ、Hf、Zrが多すぎると伝導帯位置がCuOの伝導帯位置よりも高くなりすぎ、結果として変換効率の低下要因になりうる場合がある。実施例の太陽電池をトップセルとして用い、Siを光吸収層とする太陽電池をボトムセルとする多接合型太陽電池において、トップセルの高い透光率と変換効率によって、多接合型太陽電池においても優れた変換効率が得られる。
明細書中一部の元素は、元素記号のみで示している
【0084】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態そのままに限定解釈されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成することができる。例えば、変形例の様に異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0085】
100,101…太陽電池(第1太陽電池)、1…基板、2…p電極(第1p電極2a、第2p電極2b)、3…p型光吸収層、4…n型層、5…n電極
200…多接合型太陽電池、201…第2太陽電池、
300…太陽電池モジュール、6…基板、301第1太陽電池モジュール、302…第2太陽電池モジュール、303…サブモジュール、304…バスバー、
400…太陽光発電システム、401…太陽電池モジュール、402…コンバーター、403…蓄電池、404…負荷
500…車両、501…車体、502…太陽電池モジュール、503…電力変換装置、504…蓄電池、505…モーター、506…タイヤ(ホイール)


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13