(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】炭素質材料の変換のための反応器及び方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/00 20170101AFI20241105BHJP
B01J 8/24 20060101ALI20241105BHJP
C04B 7/36 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
C01B32/00
B01J8/24 301
C04B7/36
(21)【出願番号】P 2022559867
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 EP2021058478
(87)【国際公開番号】W WO2021198358
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-28
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】510001021
【氏名又は名称】エフ・エル・スミス・エー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】スミト,イーバ・ブランケンベア
(72)【発明者】
【氏名】ドリフスホルム,モーデン・ヴィズビェア
(72)【発明者】
【氏名】スィーダーゴー,ニルス・オーレ
(72)【発明者】
【氏名】イェンスン,ラース・スコールプ
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/125579(WO,A1)
【文献】実公昭60-000636(JP,Y2)
【文献】特開昭57-165028(JP,A)
【文献】特表2010-521282(JP,A)
【文献】特開2015-131869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00
B01J 8/24
C04B 7/36
F27B 15/00 - 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質材料を変換するための反応器であって、固体粉末材料を収容するように構成され、上部及び下部を有する反応器であり、
固体炭素質材料及び粉末材料を前記反応器に供給するための少なくとも1つの固体材料入口と、
変換された炭素質材料及び/又は粉末材料を取り出すことができるように構成された少なくとも1つの固体材料出口であって、前記反応器内の固体材料の高さ又は量を調節するように構成された調節手段を備える、少なくとも1つの固体材料出口と、
粉末材料を流動化させるように構成された流動化手段と、
ガス出口と、
ガスを固体材料から分離するように構成されたガス-固体分離手段であって、前記反応器の前記下部よりも大きな流路面積を有する、前記反応器の前記上部の一部分であり、垂直方向の流れにおいてガスと固体を分離し、前記ガスの速度を前記固体の飛沫同伴速度より低くまで下げるように構成された、ガス-固体分離手段とを備え、
前記炭素質材料の前記変換が、前記炭素質材料が、加熱された前記粉末材料と接触し、加熱された前記粉末材料によって加熱されると起きるように構成され、
前記少なくとも1つの固体材料入口が、前記炭素質材料が前記反応器の、より大きな前記流路面積を有する前記一部分に提供されるように前記反応器の上部に配置された、炭素質材料を変換するための反応器。
【請求項2】
前記ガス出口が、前記反応器の上部に配置された、請求項1に記載の炭素質材料を変換するための反応器。
【請求項3】
前記固体材料出口が、前記粉末材料が流動化されたとき、前記反応器内の固体材料の高さを調節する前記調節手段を提供する流体トラップ構成を有する、請求項1又は2に記載の炭素質材料を変換するための反応器。
【請求項4】
前記流体トラップ構成が、前記反応器の前記下部に流体的に接続された第1の導管を備え、第2の導管の下部が前記第1の導管に流体的に接続され、それによって粉末が前記反応器から前記第1の導管を通って前記第2の導管の上部に流れることができる、請求項3に記載の炭素質材料を変換するための反応器。
【請求項5】
前記第1の導管は、上部導管壁および下部導管壁を備え、前記上部導管壁と前記下部導管壁の間を前記粉末材料が流れるように構成されており、
前記第1の導管が、前記第1の導管の長さを通して断面寸法値を変えることによって前記上部導管壁と前記下部導管壁の間に固体の保護層を設けるように構成された、請求項4に記載の炭素質材料を変換するための反応器。
【請求項6】
前記第1の導管が内部の網を備える、請求項4
または5に記載の炭素質材料を変換するための反応器。
【請求項7】
前記ガス出口が前記第2の導管に流体的に接続された、請求項4~6のいずれか一項に記載の炭素質材料を変換するための反応器。
【請求項8】
前記少なくとも1つの固体材料入口が、上流のプロセスガスが前記炭素質材料及び/又は粉末材料とともに前記反応器に流入するのを防止するように構成された、請求項1~7のいずれか一項に記載の炭素質材料を変換するための反応器。
【請求項9】
反応器の少なくとも1つの固体材料入口を介して変換温度を有する炭素質材料を供給するステップと、
前記少なくとも1つの固体材料入口を介して前記炭素質材料の前記変換温度よりも高い温度を有する粉末材料を供給するステップと、
炭素をCO
2に部分的にだけ酸化するように構成された雰囲気中で前記炭素質材料と前記粉末材料とを接触させて、前記炭素質材料を、変換された材料と揮発性生成物とに少なくとも部分的に変換するステップと、
前記炭素質材料及び加熱された前記粉末材料を流動化させるステップと、
前記反応器の下部よりも大きな流路面積を有する、前記反応器の上部の一部分であるガス-固体分離手段により、前記揮発性生成物を含むガス流を上方向に向けることによって比重により分離して、前記揮発性生成物を含む部分と、追加成分を含む第2の部分とを提供するステップであって、前記追加成分が、前記粉末材料、変換された材料、及び、任意選択で、変換されなかった又は部分的に変換された炭素質材料である、ステップと、
固体材料出口を通して前記第2の部分を取り出して、流動化された固体材料の高さを調節するステップとを含み、
前記炭素質材料と前記粉末材料との間の前記接触が、少なくとも2つの異なる流れ形態で起き、
前記炭素質材料の前記変換が、前記炭素質材料が、加熱された前記粉末材料と接触し、加熱された前記粉末材料によって加熱されると起き、
前記少なくとも1つの固体材料入口が、前記炭素質材料が前記反応器の、より大きな前記流路面積を有する前記一部分に提供されるように前記反応器の前記上部に配置された、炭素質材料の変換のための方法。
【請求項10】
前記ガス流の上方向の速度が、前記追加成分の飛沫同伴速度より低くまで下げられる、請求項9に記載の炭素質材料の変換のための方法。
【請求項11】
ガスのパルスが、前記炭素質材料及び加熱された前記粉末材料を流動化させるように供給される、請求項9又は10に記載の炭素質材料の変換のための方法。
【請求項12】
炭素をCO
2に部分的にだけ酸化するように構成された雰囲気中に反応ガス、又は、任意選択で、反応ガスのための前駆物質を供給するステップと、
任意選択で、前記前駆物質を加熱して前記反応ガスを発生させるステップと、
前記反応ガスを、加熱された前記粉末材料と前記炭素質材料との混合物と接触させるステップと
をさらに含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の炭素質材料の変換のための方法。
【請求項13】
前記粉末材料と前記炭素質材料がまず、炭素をCO
2に部分的にだけ酸化するように構成された雰囲気中において飛沫同伴流内で接触し、第1の方向に輸送され、前記ガスのパルス及び/又は前記反応ガスが、前記第1の方向とは反対の第2の方向からの対向流で供給される、請求項11を引用する請求項12に記載の炭素質材料の変換のための方法。
【請求項14】
前記粉末材料がセメントミールである、請求項9~13のいずれか一項に記載の炭素質材料の変換のための方法。
【請求項15】
前記セメントミールの加熱が
、セメントクリンカー製造プロセスで実行される、請求項14に記載の炭素質材料の変換のための方法。
【請求項16】
前記セメントミールの加熱が、セメントクリンカー製造プロセスの予熱器により実行される、請求項15に記載の炭素質材料の変換のための方法。
【請求項17】
前記炭素質材料が、代替燃料、廃棄物、及び/又はバイオマス燃料を含む群から選択される、請求項9~16のいずれか一項に記載の炭素質材料の変換のための方法。
【請求項18】
請求項1~8のいずれか一項に記載の反応器を備えるセメントクリンカー製造プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、代替燃料などの炭素質燃料を還元条件下で揮発性物質と変換材料とに変換し、揮発性物質を実質的に分離する方法に関する。本発明は、この方法を実行するのに適した反応器にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
セメントの製造は、CO2などの排出物の大きな放出源であることが知られている。この製造をより持続可能にするために、代替燃料を利用してセメント製造作業に熱エネルギーを供給することが望ましい。これまで、これは、か焼炉に代替燃料を直接投入することによって利用されていた。しかしながら、このような燃料の乾燥とその後の脱揮発分に要する時間は、燃料の含水量、燃料粒子の大きさ及び形状、並びに燃料の化学組成に依存し、これらすべては、代替燃料に対して大きく変化する。代替燃料の滞留時間が不十分な場合、典型的には、粒子の滞留時間が限られることにより、か焼炉での代替燃料の燃焼が不完全になり、か焼炉の温度プロファイルが影響を受ける。その結果、ほとんどの例では、か焼炉が代替燃料から得ることができる熱エネルギーの量は限られる。
【0003】
セメントは高温で製造され、したがって、セメント製造設備は代替燃料を利用するのに望ましい設備となり得る。それは、セメント原料を加熱するためにすでに使用されているエネルギーの一部は、低品位の代替燃料を変換するように、又は有害廃棄物を安全に燃やすように利用することができるからである。セメント原料ミールは粉末を形成する微粒子からなり、それは流動化することが困難である。その主な理由の1つは、粒子凝集を促進する粒子間凝集力が大きいことである。1973年、D.Geldartは、粉末をその流動化特性に従って分類する粉末分類システムを開発した(Geldart,D.,Powder Technol.,7,(1973),285)。Geldartの分類システムのタイプの1つは、流動化に適さないことによって特徴付けられたタイプCの材料、又はGeldart Cの材料である。セメント原料ミールは、このようなGeldart C粒子を多量に含んでおり、Geldart C材料のような流動挙動を示す。したがって、このような材料を流動化させようと試みると、亀裂及び溝が生じ、その結果、流動化が乏しく不安定になる。
【0004】
Geldart C材料は、典型的には30マイクロメートルより小さく、凝集性であると考えられる。この大きさの粒子は、単一の独立した粒子というよりも、粒子クラスタとしてふるまう傾向がある。
【0005】
粗い粒子と細かい粒子との混合物の流動化挙動は、広い組成範囲の中の細粒部分の流動化挙動によって規定される。したがって、微粒子のセメント原料ミールと粗いチャー粒子との混合物は、典型的には、セメント原料ミールと同様の流動化挙動を示し、粗粒部分が支配的になるときだけ、粗い粒子の流動化特性が流動化挙動を決める。
【0006】
欧州特許第3405728号では、代替燃料は、ガスのパルスが粒子を流動化させて、固体の反応器内の移動をしやすくするU字形ループシール反応器内で初期熱分解を受けることによって利用される。運転時、還元雰囲気中で代替燃料と高温のセメントミールとを混合すると、大量のガスが生じる。このような解決策では、定常運転を行うためには適切な大きさが重要であり、その結果、設置面積が大きくなり、設備投資が増大することがある。定常運転中、パルス状空気は高密度床を形成し、反応器内の固体の流れはプラグフローパターンである。高密度床に達する前に燃料と高温のセメントミールが適切に混合されることが重要であり、そうでないと、ホットスポット又はコールドスポットが形成され、低変換又は高温腐食の危険性につながることがある。
【0007】
代替燃料は、典型的には、セメントミールよりも実質的に大きな固体粒子からなることがある。したがって、ミール床より密度の大きな粒子は、ミール床から沈降することがある。これは、炭素質材料、並びに石及び金属などの非炭素質粒子の両方を含むことがある。セメントミールより大きな粒子が導入されることに加え、粒子はまた、床で凝集又は合体してより大きな粒子、塊、又は堆積物を形成することがある。効果的にエアーレーションされていない床の領域があると、床の材料が固まりになる傾向がある場合、特に堆積物を形成しやすい。これは、高温のセメントキルンの揮発性物質、又は部分的に溶けた炭素質材料によって促進される。沈降は効果的なエアーレーションを妨げることがあり、時間が経つにつれ、エアーレーションされたセメントミールが流れる導管のかなりの部分を塞ぐことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、代替燃料を効率的に利用することができ、適切なエアーレーションを行うことができ、運転を妨げることのある堆積物の形成及び沈降の危険性を低減することができる新規の反応器及び方法を有することは有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、このような背景では、本発明の目的は、先行技術の欠点のいくつかを軽減することができる方法を提供することである。本発明の第1の態様では、これら及びさらなる目的は、
変換温度を有する炭素質材料を供給するステップと、
炭素質材料の変換温度よりも高い温度を有する粉末材料を供給するステップと、
炭素をCO2に部分的にだけ酸化するように構成された雰囲気中で炭素質材料と粉末材料とを接触させて、炭素質材料を、変換された材料と揮発性生成物とに少なくとも部分的に変換するステップと、
揮発性生成物を含むガス流を実質的に上方向に向けることによって比重により分離して、揮発性生成物を実質的に含む第1の部分と、追加成分を実質的に含む第2の部分とを提供するステップとを含み、炭素質材料と粉末材料との間の接触が、少なくとも2つの異なる流れ形態で起きる、炭素質材料の変換のための方法によって得られる。
【0010】
この方法は、炭素質材料を、変換された材料と揮発性生成物とに効率的に変換し、それらは分離されて、したがって別々にさらに処理することができる。揮発性物質は、例えば、燃料として使用することができる。変換プロセスへのエネルギー担体として固体材料を使用することの利点は、特に、生成物の流れに存在するガスがより少なく、典型的には不活性であることである。加えて、粉末材料の熱吸収は温度を安定させるのに役立ち、それによって、吸熱反応による温度低下、及び、例えば、炭素質材料の部分酸化による温度上昇に対して弾力性のあるプロセスを提供する。
【0011】
炭素質材料と粉末材料とが接触すると、炭素質材料が変換されて揮発性生成物が形成される。揮発性生成物はプロセス条件ではガスの形態であり、固体材料よりも大きな体積を有するので、揮発性生成物が形成されると実質的に上向きのガス流が生じる。ガス流の速度が固体の飛沫同伴速度より速い場合、ガス流は粒子を実質的に上方向に運ぶことができる。
【0012】
炭素質材料、粉末材料、及び/又は変換された材料が少なくとも2つの異なる流れ形態で接触するように、例えば、粉末材料の入口温度、粉末材料の量、及び/又は炭素質材料と粉末材料との接触時間を調節することにより、揮発性物質の発生が制御されるべきである。流れ形態は、下部の高密度な相と、より多くの揮発性物質を含む上部の希薄な相とであることが好ましい。希薄な相は、炭素質材料及び粉末材料を上向きの流れにする揮発性物質の形成及び上向きの流れによって形成される。揮発性物質を含むガスと炭素質材料及び粉末材料との上向きの流れは、ガスが第1の部分に分離されるまで続き、その後、炭素質材料及び粉末材料は重力により下向きに流れる。
【0013】
2つの流れ形態により、炭素質材料と粉体材料とはより良く混合及び接触し、より安定した変換状態となってホットスポット及びコールドスポットの形成を回避する。
粉末材料とは、粒径分布に関係なく、パルス状のエアーレーションを受けたときに粉末のように挙動し、この挙動を損なわない濃度まで他の固体成分を含む材料を意味する。これは、一例として、セメントミールの場合がある。
【0014】
追加成分は、粉末材料、変換された材料、及び、任意選択で、変換されなかった又は部分的に変換された炭素質材料を含む場合がある。
炭素質材料は炭素を含み、炭素に蓄えられたエネルギーを有する材料であり、その結果、炭素質材料を燃料として利用することができる。炭素質材料は、固体又は流体の形態の代替燃料及び廃棄物、バイオマス燃料、又はそれらの混合物である場合が好ましい。
【0015】
炭素をCO2に部分的にだけ酸化するように構成された雰囲気は、限られた量の酸素、すなわち供給された炭素質材料を完全に酸化するのに必要な酸素の量よりも少ない量の酸素を含む。したがって、この雰囲気は、炭素を部分的にだけ酸化するように構成することができる。この雰囲気は、還元性ガスを含む還元性雰囲気である場合が好ましい。この雰囲気は、炭素を実質的に酸化しないように、実質的に酸素を含まなくてさえよい。
【0016】
炭素質材料の少なくとも部分的な変換とは、炭素質材料の少なくとも一部分が変換されることを意味する。粉末材料は、実質的にすべての炭素質材料が粉末材料と接触した後に変換される量及び温度で加えられることが好ましい。
【0017】
揮発性物質は、H2、CO、CO2、CH4、H2Oなど、プロセス条件でガス状態にある生成物、より一般的にはCxHyOzNvSwClu(ここで、x、y、z、v、w、uは異なる値をとることができる)として記述される生成物又はそれらの混合物である。
【0018】
炭素質材料の変換とは、その材料がその化学組成を変える、及び/又はその材料が相変化を受ける高い温度でのプロセスである。炭素質材料の変換は、中間種と同様に、熱分解、ガス化、クラッキング、部分酸化、又はそれらの組合せを含むことがある。この変換は、炭素質材料を含む反応の生成物の選択性と同様に、一緒に供給される選択的な共試薬又はそれらの前駆物質、例えばガス、液体、溶解状態又は固体状態のH2O、アルカリ性又は酸性共試薬によって制御することができる。さらに、所与のプロセス環境において、触媒特性を有する固体を一緒に加えることにより、反応を操作することができる。一緒に加えられる触媒的に活性な固体は、炭素質材料又は選択された中間生成物に直接作用することができる。
【0019】
一例として、合成ガスCO+H2の形成を促進するために、ニッケル含有触媒が加えられることある。
変換温度とは、炭素質材料がこのような変換を受け始める温度を意味する。
【0020】
揮発性生成物を含むガス流は、任意選択で、さらに加えられたガスを含む炭素質材料の変換によって形成されたガスであってもよい。
「揮発性生成物を実質的に含む第1の部分」という表現は、炭素質材料、粉末材料、及び変換された材料のうちの少なくとも50重量%が揮発性物質から分離されたことを意味する。75重量%、さらには90重量%より多くが分離されていることが好ましい。「追加成分を実質的に含む第2の部分」という表現は、変換中に発生した揮発性物質の最大30体積%が第2の部分に存在することを意味する。好ましくは、変換中に発生した揮発性物質の最大20体積%が第2の部分に存在することが好ましく、最大10体積%が存在することがより好ましい。
【0021】
言及する方向はすべて、地球の重力の方向に対する方向である。
本発明の好ましい実施形態では、実質的に上方向のガス流の速度は、追加成分の飛沫同伴速度より低い速度に下げられる。
【0022】
速度を飛沫同伴速度より低くまで下げることにより、固体が下方に落ちる噴出区域を形成することができ、それによって、より少ない固体材料を含むガスを供給し、希薄区域の上方に位置する第3の流れ形態、いわゆる沈降区域を形成することができる。沈降区域は、噴出区域/希薄区域よりも固体が少なく、実質的に揮発性生成物を含む。速度が飛沫同伴速度に向かって下がるにつれて、ガス流が運ぶ固体は徐々に少なくなり、したがってより希薄になる。ガス流の速度が飛沫同伴速度より低くなると、固体はもはやガス流によって運ばれない。このようにして、揮発性物質を含むガス流は、実質的に固体を含まないものになり、この方法によって揮発性物質を含むより純粋なガスを得ることができる。
【0023】
ガス流の速度は、変換中の揮発性物質の発生に依存する。高い変換が達成される場合、又は多くの揮発性物質が得られる場合には、速度は典型的には高い。変換が低い場合、及び/又は得られる揮発性物質が少ない場合には、速度は追加成分の飛沫同伴速度に近いか、又はそれより低くさえある場合もある。この場合、ガス流又はガス前駆物質を供給してガス量を増加させ、したがってガス速度を固体の飛沫同伴速度より上げる必要がある。したがって、ガス流は下げられていなければならない、又は追加成分の飛沫同伴速度より低くなければならないと言える。
【0024】
飛沫同伴速度は、粒径、密度、形状、及び重量に依存する。また、これは、ガスが特定の粒子を捉えることができる速度であるので、捕捉速度又は最低輸送速度と呼ばれることもある。ガス流の速度を低下させる特定のやり方は、ガスの流路面積を増大させること、すなわち、ガスの流路面積を第1の流路面積からより大きな第2の流路面積に増大させることによるものである。
【0025】
好ましい実施形態では、本方法は、炭素質材料及び加熱された粉末材料を流動化させるさらなるステップを含む。
炭素質材料及び加熱された粉末材料を流動化させると、粒子が動的な流体のような状態になるため、これらの材料はより良く混合する。粒子の流動化は、流動化流体、例えば蒸気、窒素、又は空気などのガスの実質的に上向きの流れを供給することによって達成することができる。流動化効果はまた、プロセス環境又は前調整ユニットと接触したときに流動化流体に変換される前駆物質を導入することによっても達成されることがある。
【0026】
炭素質材料及び加熱された粉末材料に流動化ガス又は前駆物質を加えることは、いかなる方向から加えてもよいと言える。加えられると、流動化ガスは、その低密度により、上向きに流れる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、炭素質材料及び加熱された粉末材料の流動化は、流体のパルスを、好ましくは実質的に上方向に供給することによって達成される。
流体のパルスによって粒子を流動化させるために必要な空気などの流体の量は、連続的な流体の流れによって流動化させる場合よりもはるかに少ない。これにより、流動化はより効率的になり、流動化流体を反応器へ加える量はより少なくなり、流体の輸送量はより少なくなり、その後の除塵及び/又は洗浄のための流体はより少なくなる。
【0028】
加えて、いくつかの場合には、実質的に一定の流れとパルス状の流れを組み合わせて流動化流体を導入することが好ましい場合があり、この場合、組成は、異なるタイプの流動化流において、類似していても異なっていてもよい。別の好ましい解決策は、プロセスに入る前に流動化流体と接触したときに適切な蒸気圧を有する化合物によって富化された一定の流れの流動化流を有することである。これは、例えば、液体を通して空気などのガス流をバブリングし、それによって蒸気圧に対応して液体の蒸気で飽和させることによって達成することができる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、本方法は、反応ガスを供給するステップと、反応ガスを、加熱された微粉材料と炭素質材料との混合物に接触させるステップとをさらに含む。
反応ガスは、炭素質材料及び/又は加熱された微粉材料とともに加えられ、それによってこれらの材料を反応器内に輸送するために利用することができる。これに代えて、反応ガスは、炭素をCO2に部分的にだけ酸化するように構成された雰囲気中に直接加えられてもよい。反応物はまた、固体、液体、又は溶解状態で加えられてもよく、それらは、次いで、プロセス条件で蒸発する。加えて、反応物は前駆物質の形態で加えられてもよく、これはプロセス環境に曝されると反応物に変換される。
【0030】
反応ガスは、空気、純酸素、及び/又はCO2などの酸素を含むガスであってもよい。
炭素をCO2に部分的にだけ酸化するように構成された雰囲気に反応ガスを供給することによって、燃焼前の酸素の含有量がないか少ない雰囲気で、炭素質材料を熱分解又はガス化することが可能であり、これは反応ガスを加えた後にのみ起きる。これにより、酸化された炭素材料と酸化されていない炭素材料の量を特定の目的のためにバランスさせることができるという効果が得られる。一例として、H2Oは、ガス化を促進するため、又は生成物の組成を調節するために加えることができる。O2は、発熱反応、例えば、チャーの酸化を促進するために加えることができる。O2を加えることは、それによって、生成物の収量及び組成に望ましくない影響を与えることなく、吸熱熱分解反応と発熱反応による炭素材料の変換のバランスをとるのに役立ち、すなわち、エネルギーバランスを改善する。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、粉末材料と炭素質材料とは、炭素を部分的にだけ酸化するように構成された雰囲気中、飛沫同伴流内で接触し、輸送される。飛沫同伴流は、実質的に下方向であることが好ましい。粒子が流動化される場合、流動化流体は、飛沫同伴流と実質的に反対の方向から対向流で供給されることが好ましい。
【0032】
飛沫同伴流により、炭素質材料と粉体材料との接触時間を制御することができる。飛沫同伴流は、揮発性物質を含むガス流の方向と逆方向であるので、飛沫同伴流により、炭素質材料と粉体材料との混合が良好になる。これにより、ガスと、粉末と、炭素質材料との間の熱伝達が改善され、その結果、炭素質材料の変換が改善される。
【0033】
流動化流体は反応ガスであってもよい。この構成により、炭素質材料は、飛沫同伴流での輸送中に少なくとも部分的に変換され、その後、反応ガスが入ることにより、少なくとも部分的に燃焼する。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、炭素質材料と粉末材料は、質量比1:20~1:2、例えば、1:5で供給される。
この比率は、固体複合材の床が制御可能な粉末材料として対応するための良好な基礎を提供する。この比率により、粉末と炭素質材料との間の接触が良好になり、炭素質材料が粘着性(ガム)になった場合、粉末材料内で確実に被覆される。これは、炭素質材料が、加熱を受けると粘着性の中間物を形成する大きな炭素質材料片、例えば、大きなプラスチック片又はタイヤ片を含む場合に特に重要である。加えて、この比率は、粉末材料の熱吸収能力が、低温及び高温の変動に対してプロセス温度を安定させることができることを確実にする。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、炭素を部分的にだけ酸化するように構成された雰囲気に反応ガスを供給した後の雰囲気全体に対する酸素の比率、すなわちラムダは、0.1未満、好ましくは0.05、より好ましくは0.03など0.2未満である。
【0036】
炭素を部分的にだけ酸化するようにプロセス環境への酸素(O2)を制御することは、形成された炭化水素のCO2と水への酸化(所望の生成物の収量を制限する)を含む二次反応を制限する。さらに、過剰な酸化は、不要な温度上昇を生じさせ、プロセス環境を不安定にすることがあり、また、不要な生成物組成をもたらす。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、粉末材料と炭素質材料は、少なくとも120秒など、少なくとも30秒接触させられ、変換温度より高く維持される。粉末材料と炭素質材料は、最長600秒接触させられることが好ましい。
【0038】
典型的には、容易に変換される炭素質材料の変換時間は、変換温度より高い温度で約30秒~120秒である。しかしながら、最長600秒の接触時間は、粗大な木片、タイヤ、及び分解しにくい他の材料などのかさばる炭素質材料を、確実に、少なくとも部分的に変換することができる。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、加熱された粉末材料の温度は、約600℃~1000℃であり、800℃など、700℃~850℃が好ましい。
この温度は、プロセスへの酸素の侵入が少なく、その結果、部分燃焼となり、それによって、漏れに対する備えの必要性が低くなることを確実にする。この温度は、炭素質材料を揮発性物質に高速で変換するのに十分である。安全上の理由から、加熱された粉末材料は、例えば、漏れによる大量の酸素同伴の場合に爆発を回避するために、揮発性物質を含む混合物の自己着火温度より高い温度で変換を行うのに十分な温度にすべきである。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、粉末材料はセメントミールであり、この場合、セメントミールの加熱が、セメントクリンカー製造プロセスの予熱器又はか焼炉など、セメントクリンカー製造プロセスで実施されることが好ましい。
【0041】
好ましい実施形態では、炭素質材料は、代替燃料及び廃棄物、バイオマス燃料、並びに化石燃料を含む群から選択することができる。
代替燃料は、都市ごみ、破砕タイヤ、家具、カーペット、廃材、庭ごみ、台所及びその他家庭ごみ、ペーパースラッジ、紙、下水汚泥、液体ごみ、漂白土、自動車部品、プラスチック、プラスチックベール、並びに危険な医療廃棄物を含むリストから選択することができる。
【0042】
化石燃料は、褐炭、無煙炭、瀝青炭、石油コークスなどであってもよい。
バイオマスは、わら、木などを含む。
別の態様によれば、本発明は、炭素質材料を変換するための反応器に関し、本反応器は、固体粉末材料を収容するように構成され、上部及び下部を有し、
炭素質材料及び/又は粉末材料などの固体材料を反応器に供給するための少なくとも1つの固体入口であって、好ましくは、反応器の上部に配置された、少なくとも1つの固体入口と、
反応器内の固体材料の量を調節するように構成された調節手段を備える少なくとも1つの固体材料出口と、
好ましくは、反応器の上部に配置されたガス出口と、
ガスを固体材料から分離するように構成されたガス-固体分離手段であって、好ましくは、反応器の上部に配置された、ガス-固体分離手段と
を備える。
【0043】
本発明による反応器を有することにより、固体とガスの主要な分離は、例えば近くにあるサイクロンではなく、反応器内で起きる。したがって、本発明により、サイクロンへの輸送導管及び追加のサイクロンが余剰となるので、設置面積を削減することができる。
【0044】
炭素質材料と加熱された粉体材料の形態の固体材料が反応器の上部に加えられる。炭素質材料の変換は、炭素質材料が、固体出口に向かう加熱された粉末材料と接触し、固体出口に向かう加熱された粉末材料によって加熱されると起きる。変換中、揮発性物質がガス出口に向かう上向きの流れを形成する。固体入口及びガス出口を両方とも上部に配置するこの構成により、固体とガスとの間は対向流となり、反応器に加えられた固体と反応器内にすでにある固体及びガスとの間の接触時間が長くなる。より良い混合及び熱伝達も達成される。
【0045】
反応器は、固体の少なくとも90%など、少なくとも75%をガスから分離することができることが好ましい。対向流のフローパターンはまた、形成された炭化水素を含む二次反応の悪影響を低減する。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、ガス-固体分離手段は、ガスの速度を固体の飛沫同伴速度より低くまで下げるために、支配的な力として重力を用いてガスと固体とを分離するように構成される。
【0047】
1つ又は複数の実施形態では、反応器は、少なくとも2つの異なる流れ形態を与えるように構成することができる。
速度が飛沫同伴速度より低くまで下がると、概ね反応器の下部には高密度な相が形成され、速度低下が起こる概ね反応器の上部には希薄な相が形成される。速度が飛沫同伴速度より低く落ちた反応器の領域では、噴出区域が形成される。
【0048】
反応器は、少なくとも3つの異なる流れ形態を与えるように構成することができることが好ましい。第3の流れ形態は、実質的にガスを含む沈降区域である。沈降区域は、噴出区域/高密度区域の上方に位置し、概ねガス出口の近くに位置する。
【0049】
好ましい実施形態では、反応器は、噴出区域に配置された少なくとも1つの固体材料入口、及び/又は沈降区域に配置された少なくとも1つの固体材料入口を備える。
支配的な力が重力であるガス-固体分離手段は、水平方向の流れを有することが好ましく、上方向の流れを有することがより好ましい。上方向とは、水平方向から垂直方向に角度を付けた任意の方向を意味する。
【0050】
ガスと固体の流れが、例えば導管において、水平又は水平に対して比較的に小さな角度を有するガス-固体分離手段において分離される場合、固体粒子は、重力、及び固体と導管表面との間の摩擦により導管の底に沈降する。流れの方向が水平よりも垂直に近いとき、固体は、例えば導管に蓄積することが防止され、代わりに反応器の下部に向かって下方に落ちるという利点が得られる。後者の構成では、反応器内の位置が高いほどガスが含む固体は少ないので、反応器内の異なる高さに異なる区域が与えられる。反応器の下部では、ガスは高密度であり、すなわち多量の固体を含み、反応器の上部では、ガスは希薄であり、すなわち少量の固体を含む。
【0051】
反応器内のガス速度は、主に揮発性物質の発生によるものであり、典型的には1~10m/sである。この範囲の速度を持つ流れは、典型的には、ファンを設けて又はガスを追加供給して速度を増加させなければ、サイクロンで分離するには低すぎる。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、ガス-固体分離手段は、下部よりも大きな断面寸法値を有する反応器の上部の一部分である。
この断面寸法値は、反応器の形状に応じて、直径又は断面であってもよい。断面寸法値を増大させると、ガス流の速度は低下する。反応器の上部は、ガスの速度を飛沫同伴速度より低くまで下げる断面寸法値を有することが好ましい。このように流路面積を増大させることで、高さが低いところで速度減少が大きくなり、よりコンパクトな反応器が可能になる。
【0053】
本発明の好ましい実施形態では、固体材料出口は、反応器の下部に配置される。調節手段は、反応器内の固体の高さ又は量を調節する。
この調節は、反応器内の固体の柱の重量又は高さに基づいており、反応器を出る固体の量を調整することができる。
【0054】
調節手段は、一例として、スクリューフィーダであってもよい。スクリューフィーダは、入力パラメータに基づいて、固体が反応器から取り出される速度を調整することができる。入力パラメータは、反応器内に安定した量の固体が存在するように、レーザーからの高さ測定、はかりの重量測定、粒子状物質センサーなどに基づいてもよい。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、反応器はさらに、固体粉末材料を流動化させるように構成された流動化手段を備える。流動化手段は、反応器の下部に配置されることが好ましく、調節手段は、流体トラップ構成を有する導管である。
【0056】
流動化手段は、反応器内の粒子の効率的な混合を提供する。加えて、流動化された粒子が動的な流体のような状態であることによって、調節手段は、流体トラップ/サイホンとして構成することができる。このようにして、流体トラップ構成の形状が反応器内の粉末材料の量を決定し、より詳細には、流体トラップの高さが反応器内の材料の高さを決定する。この量より多い粉末材料が反応器内に存在する場合、高さの増大は「流体」の圧力の増大となり、したがって粉末材料は単に流体トラップを通って流れて圧力差を等しくする。
【0057】
流動化手段は、流体、又は好ましくはガスを供給するために反応器の下部に分配された複数のノズルであってもよい。ガスは、例えば、焼結金属板、多孔質セラミック材料、及び好ましくは約5ミクロン~約100ミクロンの間の気孔を有する同様の多孔質材料からなるガス透過性分配器を通して供給することができることが好ましい。透過性分配器は、反応器、及びガスが供給される下にあるエアーレーション室の局所的な運転状態に耐えることができなければならない。
【0058】
流体トラップ構成は、第1及び第2の導管を備えてもよい。第1の導管は、反応器と第2の導管との間の中央に配置されている。それは、反応器の下部及び第2の導管の下部に流体的に取り付けられ、それによって、粉末は、反応器から、第1の導管を通って、第2の導管の上部へ流れることができる。それによって、第2の導管の高さが反応器内の固体の量を決定する。
【0059】
好ましい実施形態では、反応器は実質的に垂直方向の流れを提供するように向けられ、第1の導管は実質的に水平方向の流れを提供するように向けられ、第2の導管は実質的に垂直方向の流れを提供するように向けられる。
【0060】
第1及び/又は第2の導管は、流動化手段をさらに備えることが好ましい。反応器は、第1の導管及び第2の導管とともに、サイホン効果/流体トラップを与える実質的にU字形又はJ字形を有することが好ましい。
【0061】
反応器と第2の導管との間に配置された第1の導管は、粉末材料を流動化させて反応器から第2の導管へ案内するように構成されたエアーレーション手段を備える床を有することができることが好ましい。
【0062】
第1の導管は、高密度及び/又は不燃性粒子が1つ又は複数の出口点の方へ案内されることを確実にする手段を有して構成されることが好ましい。出口点は、例えば第1の導管の下部など、反応器と第2の導管の間に配置された排出点であってもよい。
【0063】
材料は、沈降した材料を含む出口付近の材料を優先的に取り出す水門システムによって、この排出点の開口から排出することができる。
より効果的に排出するために、材料の連続的な流れが排出点に供給され、材料が排出点に到達する前に滞留しないことが好ましい。排出点は、連続運転中、ミール流が止められたとき、材料を排出するとき、又はメンテナンス中に、意図しない材料の堆積又は蓄積を取り除くために使用することができる。
【0064】
好ましい実施形態では、床の一部分は、水平面に対して少なくとも40°の角度で傾斜している。床は、41°、42°、43°、44°、45°、46°、47°、48°、又は50°など、40°~50°の角度で傾斜することができることが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、したがって、固体材料の流れは、実質的に垂直方向の流れとして反応器内で始まり、その後、第1の導管の傾斜した床に沿って、第1の導管の下部及び中央部に向かって部分的に下方向に流れる。次いで、粉末材料は、第2の導管に到達する前に、反対側に配置された傾斜した床に沿って部分的に上向きに流れることができる。
【0065】
第1の導管の断面は、軸方向中心線に対して傾斜していることが好ましい。
エアーレーション手段は、第1の導管の床にわたって分配されることが好ましい。
傾斜した床は、高密度で不燃性の材料が第1の導管の中央下部に向けて案内されること、並びに第1の導管、反応器、及び/又は第2の導管の底/床への堆積を回避することを確実にする。
【0066】
また、材料入口に流体トラップ構成を設けることも可能である。これにより、2つの流体トラップ間に閉じた環境、すなわち他の結合されたプロセスから分離された隔離された反応器が提供される。
【0067】
流動化手段は、ガスのパルスを供給することによって粉末材料を流動化させるように構成されることが好ましい。
凝集性粉末、例えばGeldart C粉末の流動化の問題を克服するためには、粉末床に形成された亀裂及び溝を破壊又は中断することが必要である。これは、流動化ガスの少なくとも一部分をパルスとして加えることによって達成することができる。これにより、流動化媒体を導入する際に形成された亀裂又は溝は、パルスの間の休止時に崩壊し、その結果、流動化媒体の次のパルスが導入される前に粉末床の再配置が生じる。したがって、亀裂又は溝の形成と崩壊が繰り返される結果、一定の流れによっては流動化されない粒子よりなっているにもかかわらず、流動床と同様の特性を有する準流動床が生じる。
【0068】
連続したガス流の代わりに、ガスのパルスによって流動化させることはまた、より少ないガスでより効率的な流動化を可能にする。
本発明の好ましい実施形態では、第2の導管は、ガス-固体分離手段を備える。ガス-固体分離手段は、より大きな流路面積を与えるより大きな断面寸法値を有する第2の導管の一部分であることが好ましい。流路面積を増大させることにより、第2の導管は、ガスの速度を低下させ、それによって少なくとも2つの異なる流れ形態、下部の高密度な相と、上部の噴出区域/希薄区域を提供するように構成される。
【0069】
第2の導管は、少なくとも3つの異なる流れ形態を提供するように構成することができることが好ましい。第3の流れ形態は、実質的にガスを含む沈降区域である。沈降区域は、噴出区域/高密度区域の上方で位置し、概ねガス出口の近くに位置する。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、反応器は、2つの異なる噴出区域、及び、任意選択で、2つの異なる沈降区域を備えるように構成される。
本発明の好ましい実施形態では、第1の導管は、第1の導管の下面の少なくとも一部分の上方に固体の保護層を設けるように構成される。
【0071】
これは、第1の導管の断面寸法値を導管の長さを通して変えることによって達成される。断面寸法値は、導管に沿って増大させ、次いで減少させることができることが好ましい。断面寸法値は、導管の半分の点に向かって増大させ、次いで減少させることが好ましい。第1の導管は、半分の点において、反応器及び第2の導管の断面寸法値よりも大きな断面寸法値を有することが好ましい。
【0072】
この設計は、流体トラップ構成の拡張半径設計と呼ばれることがある。
流体トラップ構成のフローパターンは、プラグフロー型のパターンを有することが観察されている。これは、旋回点に対する「内側」ベクトルが外側ベクトルと比較して短い滞留時間を有するベクトルパターンをもたらす。第1の導管において断面寸法値が増大すると、導管は入口脚部の水力直径を超える。この直径の「外側」のベクトルは徐々に減少してゼロになる、すなわち準定常層を形成することが見出された。
【0073】
したがって、拡張半径設計は、運動する固体と静止した表面との間の保護層として作用する材料の準定常層の自動形成をもたらす。この拡張半径はまた、形状が粉末の流れの方向の変化を可能にする他の状況にも直接適用可能である。
【0074】
本発明の好ましい実施形態では、第1の導管は、内部の網を備える。
保護層の形成は、導管の材料側に適切な格子又は網を配置することによって強化することができる。最適なピッチ寸法と形状は、処理される材料のタイプ、及びユニットで処理される材料と大きく異なる特性を有する異物の存在の可能性に応じて異なる。これらの異物は、耐火物の破片或いはSRFからの小石又は金属片のような上流構造の一部の場合がある。したがって、格子は、これらの異物が格子を塞がないように、又はエアーレーション機能の誤動作を引き起こしたりしないように設計されなければならない。網目の大きさは、15~50mmの開口に対応していることが好ましい。
【0075】
本発明の好ましい実施形態では、反応器は、反応器の上部及び第2の導管の上部に取り付けられたバイパス導管によって第2の導管に流体的に接続される。これにより、希薄な、すなわち少ない量の固体を含む反応器の上部のガスが、第2の導管に向かって流れることができる。
【0076】
反応器においてガス種の導入又は揮発性物質の形成が著しいときには、安定した運転を確立するために、反応器と第2の導管との間の大きな圧力差を避けるように構成することが優先される。これは、ガスが希薄である場所で2つの導管を接続することによって得られる。好ましい実施形態では、ガス出口は、反応器と第2の導管との間のバイパス導管に隣接して配置される。
【0077】
現在好ましいさらなる実施形態及びさらなる利点は、以下の詳細な説明及び添付の従属請求項から明らかになるであろう。
本発明は、現在好ましい実施形態の非限定的な例によって、また、以下の概略図を参照して、以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】本発明の実施形態による、炭素質材料を変換するための反応器の概略断面図である。
【
図2】本発明の別の実施形態による、炭素質を変換するための反応器の概略断面図であり、反応器は、反応器内の固体材料を調整するための材料送りねじを備える。
【
図3】本発明の別の実施形態による、炭素質材料を変換するための反応器の概略断面図であり、反応器は、反応器とともに本質的なU字形を形成する第1及び第2の導管を備える。
【
図4】本発明のさらに別の実施形態による、炭素質材料を変換するための反応器の概略断面図であり、反応器は、ガスバイパス導管を備える。
【
図5】本発明の別の実施形態による、炭素質材料を変換するための反応器の概略断面図であり、第2の導管は、流路面積が増大されている。
【
図6】本発明の別の実施形態による、炭素質材料を変換するための反応器の概略断面図であり、反応器は拡張半径設計を有する。
【
図7】本発明の一実施形態による、反応器を備えるセメント製造プロセスの抜粋の全体概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
図1は、炭素質材料を変換するための反応器1の概略図である。反応器1は、固体粉末材料を収容するように構成された反応器室2を有する。反応器1は、下部10及び上部11を有し、反応器1の上部11に固体材料を供給するための固体材料入口20を備える。固体材料入口20は、図示のように側部又は頂部に配置されてもよい。固体材料入口20は、炭素質材料及び/又は粉末材料を反応器に入れるのに適する。
【0080】
ガス出口26は反応器1の上部11に配置され、固体材料出口21は反応器1の下部10に配置される。固体材料出口21は、反応器内での固体材料の高さ及び/又は量を調節するように構成された調節手段を備える。
【0081】
反応器室2、並びに固体材料入口20、ガス出口26、及び固体材料出口21の位置は、ガス-固体分離ができるように配置される。特定の実施形態では、これは、上部11にガス出口、下部10に固体材料出口を有し、ガス出口でのガス流の速度が飛沫同伴速度より低くなるように、これらを、間隔を空けて異なる高さに配置することによって達成される。
【0082】
意図する使用中、変換温度の炭素質材料が、炭素質材料の変換温度より高い温度の粉末材料とともに反応室2に加えられる。固体は、空気圧で反応器室2に運ばれてもよいし、機械的に供給されてもよい。
図1では、粉末材料及び炭素質材料の両方が固体材料入口20を通して加えられるが、
図2に示すように、異なる入口を通して加えられてもよい。反応器1は、反応器室2内の環境が、炭素をCO
2に部分的にだけ酸化するように構成された状態で運転される。好ましくは、反応室内の全雰囲気に対する酸素の比率(ラムダ)は、0.15より低いことが好ましく、例えば0.12より低く、0.05が好ましく、0.03がより好ましい。
【0083】
炭素質材料と粉末材料は、接触しながら反応室2内を下方に落ちる。炭素質材料が変換温度以上に加熱されると、変換された材料及び揮発性生成物への炭素質材料の変換が起きる。変換された材料は、粉末材料及び未変換の炭素質材料とともに、反応室2の底部に向かってさらに落ちる。固体材料出口21の調節手段は、反応器室2の下部10にある固体材料の量を調節する。この調節は、固体材料の柱の所望の高さに従って、且つ/又は、炭素質材料を変換することができる所望の保持時間を得るように行うことができる。保持時間は少なくとも30秒とすべきであるが、炭素質燃料の仕様(タイプ、大きさ、変換温度など)に応じて、保持時間は少なくとも120秒、最長で約600秒としてもよい。
【0084】
炭素質材料から変換された揮発性物質は、固体の下向きの流れに逆らって、ガス出口26に向かって上向きに流れる。これは、固体間のより良い混合及び熱伝達を確実にする。反応器1の寸法は、ガス出口26のガス速度が飛沫同伴速度より低くなるように構成され、その結果、ガス出口26を通って運び出される固体はほとんど又は全くない。ガス速度は、反応器1内の温度を調節すること、保持時間を調節すること、又はガス入口25を通してガスを加えることによって制御することができる。
【0085】
次に、本発明の別の実施形態による反応器1を示す
図2を参照する。この反応器は、下部10及び上部11を有する反応器室2を備える。反応器室2の流路面積は、反応器室2の断面寸法値(直径)を増大させることによって、反応器室2の上部11において増大する。揮発性物質が下部10から上部11に上向きに流れるとき、ガスの圧力、及び速度も、固体の飛沫同伴速度よりも低く下げられる。図示の実施形態では、反応器1は、ともに上部11に配置された2つの固体材料入口20a及び20bを有する。炭素質材料は、材料入口20aを通して反応器室2に加えることができ、これにより、炭素質材料は、固体材料入口20bを通って反応器室に入る粉末材料と接触する前に高温の揮発性物質と熱交換することができる。固体材料出口21は、送りねじ22に隣接して下部10に配置される。送りねじ22は、反応器室2の下部10から固体材料を機械的に輸送する。送りねじ22の回転速度は、反応器室2内の固体材料の高さを一定に保つように調節することができる。
【0086】
次に、本発明のさらに別の実施形態による反応器1を示す
図3を参照すると、反応器1の下部10はU字形の形態の流体トラップ構成を有し、反応器1内の固体材料を調節するための手段は、流体を注入しそれによって粉末材料を流動化させるように構成された1つ又は複数の流体入口25である。反応器1は、断面で見て、2つの開口が上方に向けられた、本質的に半環状形を有する第1の導管5を備える。第1の導管の一端は、反応器室2の下部に流体的に接続されている。第2の導管6は、実質的に垂直方向に向けられ、その下端は第1の導管5の他端に流体的に取り付けられている。流体入口25は、第1の導管5の底部に配置される。流体入口25を通して流体を注入し、反応器1内の粉末材料を流動化させることにより、反応器1内の粉末の量を決めるのは、固体材料出口21の位置とともに反応器室2及び第2の導管6内の材料の柱の重量である。上部11の少なくとも一部の直径は、反応器室2の頂部に向かって徐々に増大して円錐形部分15を提供する。これにより、反応器室内の流路面積は徐々に増大する。流路面積の増大は、急激な増大であってもよいと言える。
【0087】
次に、
図4を参照して、炭素質材料を変換する方法及び反応器1内の流路をより詳細に説明する。
図4には、反応器室2の上部11を第2の導管6の上端と流体的に接続するバイパス導管28を備える反応器1が示されている。ガス出口27は、バイパス導管28に配置される。
【0088】
意図する使用中、炭素質材料及び粉末材料は、固体材料入口20a、20b、及び/又は20cを通して反応器室2に加えられる。炭素質材料の温度は変換温度であり、粉末材料の温度は変換温度よりも高い。反応器室2に加えられると、炭素質材料と粉末材料とが接触し、炭素質材料が変換された材料と揮発性生成物とに変換し始める。反応器室2内の雰囲気は、炭素をCO2に部分的にだけ酸化するように構成されている。使用中、固体(すなわち、炭素質材料、粉末材料、及び変換された材料)は、重力により上部11から下部10に向かって落ち、第1の導管5を満たす。流体入口25を通してガスを注入することにより、固体は流動化され、反応器室2の下部10と、第1の導管5と、第2の導管6との間で分配される。点線50は、反応器室2及び第2の導管6内の流動化された固体の柱が同じ密度を有する、すなわちそれらが同じ高さである状態での固体の柱の高さを示す。点線50の下では、固体は高密度な相で存在する。導管6の上縁51は、導管6内の流動化された固体の柱の高さを決め、それによって、反応器室2の下部10の流動化された固体の柱の高さも決める。固体が高さ50よりもさらに堆積すると、固体は、プラグフロー型のパターンで第1の導管5及び第2の導管6を通って上縁51を越えて流れ、流動化された固体の2つの柱の重量間でのバランスを調節する。固体の流れ方向は、「S」の矢印で示されている。揮発性物質及び変換された材料への炭素質材料の変換は、反応室2、第1導管5、及び第2の導管6の両方で起きる。揮発性物質と流動化ガスの流れ方向は、(G)の矢印で示されている。揮発性物質の発生により、反応器室2の下部10における上向きのガス流の速度は、典型的には、固体の飛沫同伴速度よりも高い。したがって、固体は、ガスによって捉えられ、反応器室2の上部11に向かって上方に持ち上げられ、反応器室内に低濃度の固体の領域、すなわち希薄な区域を形成する。この区域は、点線50の上方に位置する。ガス及び固体が円錐形部分15に達すると、速度は飛沫同伴速度よりも低下し、固体はもはやガスによって浮遊することができない。これは、固体が再び反応器室2の下部10に向かって下方に落ち、ガスが実質的に固体を含まずに上がり続ける噴出区域を提供する。この固体の流れは噴水に類似しており、反応器室2の上部11に矢印「S」で示されている。運転中、固体は、「S」の矢印によって示されるように、いくつかの方向に流れるが、全体の物質収支の観点から見ると、固体は上部11から下部10、第1の導管5、及び第2の導管6を通って移動する。
【0089】
第2の導管6内で発生したすべての揮発性物質は、固体とともに上向きに流れる。固体とガスの流れが上縁51を通過すると、実質的にすべての固体は固体材料出口21を通って流れ、一方、ガスはガス出口26及び/又は27に向かってバイパス導管28を通って上がり続ける。
【0090】
流体入口25を通して供給されるガスは、より少ないガス量でより効率的に流動化させるパルス状で供給されることが好ましい。このガスは、反応ガス、不活性ガス、又はそれらの組合せを含んでもよい。
【0091】
次に、さらに別の実施形態による反応器1を示す
図5を参照すると、第2の導管6の流路面積は増大している。流路面積の増大は、第2の導管内のすべてガス流の速度が固体の飛沫同伴速度より低くまで下げることができるように、徐々に増大しても、急激に増大してもよい。
図5に示す実施形態は2つの噴出区域を有する。これは、反応器室2では炭素質材料の部分的な変換だけが起こり、多くの変換が第1の導管5、又は第2の導管6でさえ起こることがあるときに有益である。第2の導管6が、発生した揮発性物質を収めるような適切な大きさでない場合、揮発性物質の発生の結果、固体の飛沫同伴速度を超えるガス速度が生じることがある。この結果、第2の導管6内の高密度な相が希薄になり、ガス出口27への揮発性物質及び固体の流れを含む望ましくないフローパターンが生じる。第2の導管6の一部分の断面寸法を増大させて、増大した流路面積を有する部分を提供することにより、同伴された粉末が落ち、最終的に固体材料出口21に向かって縁51を越えてこぼれる噴出及び沈降区域が確立される。この結果、反応器室2から出口21への安定した固体流れが生じ、それによって、プロセス全体の動作が著しく改善され、第2の導管6の大きさをより小さくすることができる。反応器1が容易に変換可能な炭素質材料で運転される場合、揮発性物質の発生は本質的に反応器室2で起こる。このような状況では、
図4の実施形態が、安定した運転のためには十分な場合がある。反応器1がより大きな炭素質材料片又は変換しにくい炭素質材料で運転される場合、揮発性物質の発生は反応器全体、又は主に第2の導管でさえ起こることがある。この状況では、第2の導管、又は反応器室2と第2の導管6との両方の噴出区域及び沈降区域が、反応器1の安定した運転のために有益である。
【0092】
次に、さらに別の実施形態による反応器1を示す
図6を参照すると、第1の導管5は、いわゆる拡張半径設計を有している。上部導管壁32と下部導管壁31との間の断面積値(すなわち、距離)が、第1の導管5を通して変化していることが分かる。網30が、任意選択で、上部導管壁32から一定の距離で第1の導管5内に配置される。これにより、網30の下方に固体のない空隙35が設けられる。網により、固体が下部導管壁31と直接接触しないことが確実になる。反応ガスが流体入口25を通して供給されると、炭素質材料の酸化により局所的な温度上昇が見られることがある。網30は、例えば、塩化物及び/又は硫黄を含む代替燃料で焼成するときに予想することができる材料の堆積又は高温腐食によって、下部導管壁31が高温によって損傷されないことを確実にする。網30は、第1の導管5と比較して、容易に交換可能である。
【0093】
図5に示す反応器1は、ガス出口27だけしかない。したがって、反応器室2からの揮発性物質及び反応ガスは、反応物室2の上部11からバイパス導管28を通ってガス出口27に向かって流れる。
【0094】
次に、セメントクリンカー製造プラントの予熱タワー100、か焼炉110、及びキルン120と接続されて設置された反応器1を示す
図7を参照する。キルン120とか焼炉110は、キルンライザー115によって接続される。セメント原料ミールは、最上段の予熱器サイクロン150dの原料ミール入口に供給される。その点から、原料ミールは、ロータリーキルン120からの高温の排気ガスに対して対向流で、予熱器のサイクロン及びか焼炉110を通ってロータリーキルン120に向かって流れ、それによって原料ミールを加熱し、か焼する。か焼されたミールは、か焼炉110から最下段のサイクロン150aに導かれ、ここで、か焼されたミールは、か焼炉の排気ガスから分離される。か焼された原料ミールはロータリーキルン120で焼成されてセメントクリンカーとなり、セメントクリンカーは後続のクリンカークーラーで大気によって冷却される(図示せず)。このようにして加熱された空気の一部は、クリンカークーラーからダクトを通って、いわゆる三次空気としてか焼炉110に導かれる(図示せず)。
【0095】
反応器1は、か焼炉110及びキルンライザー115に隣接して配置され、任意選択で、高温のセメントミールがサイクロン段150bから重力によって移動するように配置される。150bからの高温のセメントミールは、0~100%の間の調節可能な比率で、反応器1と、キルンライザー115と、か焼炉110との間で分けられる。反応器1に向けられる高温のセメントミールの量は、代替燃料の入力速度と変換時間に依存する。高温のセメントミールの残りは、キルンライザー115とか焼炉110との間で分けられる。典型的には、高温のセメントミールの50~70%がか焼炉110に導かれ、残りの大部分は反応器1に送られる。サイクロン150bからの高温のセメントミールの温度は、典型的には、730~830℃の範囲となる。150bからの高温のセメントミールは、本質的に変換生成物が150bに流入すること、及び150bからのガスが反応器1に流入することを防止するガスバリアとして機能するループシール130を優先的に通過する。
【0096】
未変換の代替燃料及び高温のセメントミールは、パイロシステムに、最も好ましくはキルンライザー115を通ってか焼炉110に導かれる。反応器1からの変換生成物の一部又は全部は、キルンライザー115に導入されて、キルン120で生成されたNOxを還元するために還元区域を生成することができる、又はか焼炉110に直接導入することができる。別の実施形態では、反応器1からの変換生成物すなわち揮発性ガスの一部又は全部は、ロータリーキルンバーナーで利用することができる。さらなる実施形態では、変換生成物ガスの一部又は全部は、可燃性ガスを作るプロセスなど、セメントプロセスの外部で利用することができる。
【0097】
これに代えて、高温のセメントミールは、150c又は150aなどの予熱器の他のサイクロンから反応器1に向けることができる。高温のセメントミールは、任意選択で、反応器1の材料入口へのガスバリアとして機能するループシール130を通過させられる。ループシールの底は、任意選択で、特大粒子のための底部出口を備えてもよく、この出口は、キルンライザー115、キルン入口、又は別個の容器に接続されてもよい。
【0098】
予熱器は、個々のサイクロン間でガス及び固体を完全又は部分的に分けるサイクロンの数を変えた多数の構成で設計することができる。いくつかの場合には、か焼炉110における所望のプロセス状態を得るために、他のサイクロンからの固体の一部又はその混合物をとることが好ましい場合がある。
【0099】
図6に描かれたか焼炉110の構成は、か焼炉が、キルン排気ガスのすべてがか焼炉110を通過するようにキルンライザー115に対して配置されたいわゆる「インラインか焼炉」システムである。本発明の方法はまた、キルン燃焼ガスがか焼炉を通過しないようにか焼室がキルンライザー115から少なくとも部分的にずらされており、か焼炉用の燃焼空気が別の三次空気ダクトを通って引き込まれる「別ラインか焼炉」システムを含む他の構成でも有効に使用することができる。